説明

レンズアレイおよびこれを備えた光モジュール

【課題】モニタ光を効率的に得ることができ、更なる小型化および多チャンネル化を図ることができるレンズアレイおよび光モジュールを提供する。
【解決手段】第1のレンズ部材3の複数列の第1のレンズ面11に入射した複数列の発光素子8ごとの光を、第1の傾斜面14において全反射させた後に、反射/透過層17によって第3の傾斜面16側および複数列の第3のレンズ面13側に分光させ、第3の傾斜面16側に透過された各列の発光素子8ごとの光を、複数列の第2のレンズ面12によって光伝送体6の端面6a側に出射させ、複数列の第3のレンズ面13側に反射された各列の発光素子8ごとのモニタ光を、各列の第3のレンズ面13によって複数列の受光素子9側に出射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズアレイおよびこれを備えた光モジュールに係り、特に、複数の発光素子と光伝送体の端面とを光学的に結合するのに好適なレンズアレイおよびこれを備えた光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、システム装置内または装置間もしくは光モジュール間において信号を高速に伝送する技術として、いわゆる光インターコネクションの適用が広まっている。ここで、光インターコネクションとは、光部品をあたかも電気部品のように扱って、パソコン、車両または光トランシーバなどに用いられるマザーボードや回路基板等に実装する技術をいう。
【0003】
このような光インターコネクションに用いられる光モジュールには、例えば、メディアコンバータやスイッチングハブの内部接続、光トランシーバ、医療機器、テスト装置、ビデオシステム、高速コンピュータクラスタなどの装置内や装置間の部品接続等の様々な用途がある。
【0004】
そして、この種の光モジュールに適用される光学部品としては、マルチチャンネルの光通信をコンパクトな構成で実現するのに有効なものとして、複数の小径のレンズが整列配置されたレンズアレイの需要が益々高まりつつある。
【0005】
ここで、レンズアレイは、従来から、複数の発光素子(例えば、VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)を備えた光電変換装置が取り付け可能とされるとともに、光伝送体としての複数の光ファイバが取り付け可能とされていた。
【0006】
そして、レンズアレイは、このように光電変換装置と複数の光ファイバとの間に配置された状態で、光電変換装置の各発光素子から出射された光を、各光ファイバの端面に光学的に結合させることにより、マルチチャンネルの光送信を行うことが可能とされていた。
【0007】
また、光電変換装置の中には、発光素子の出力特性を安定させるべく、発光素子から出射された光(特に、強度もしくは光量)をモニタ(監視)するためのモニタ用の受光素子を備えたものもあり、このような光電変換装置に対応するレンズアレイは、発光素子から出射された光の一部を、モニタ光としてモニタ用の受光素子側に反射させるようになっていた。
【0008】
このようなモニタ光を発生させる反射機能を備えたレンズアレイとしては、これまでも、本発明者によって、例えば、特許文献1に示すような提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−262222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載のレンズアレイは、反射/透過面における透過とフレネル反射とを利用して、発光素子から出射された光を光ファイバの端面に結合する光とモニタ光とに分光することによって、モニタ光を確実に得ることができるようになっている。
【0011】
本発明者は、このような特許文献1に記載のレンズアレイの利点を更に向上させるべく鋭意研究を行った結果、モニタ光の効率的な取得、コンパクト化および多チャンネル化により好適な本発明をなすに至った。
【0012】
本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、モニタ光を効率的に得ることができ、更なる小型化および多チャンネル化を図ることができるレンズアレイおよびこれを備えた光モジュールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するため、本発明の請求項1に係るレンズアレイの特徴は、複数の発光素子およびこれらから発光された光をモニタするための各発光素子ごとのモニタ光をそれぞれ受光する複数の受光素子が形成された光電変換装置と、光伝送体との間に配置され、前記複数の発光素子と前記光伝送体の端面とを光学的に結合可能とされたレンズアレイであって、前記光電変換装置として、前記発光素子が所定の第1の方向に沿って複数整列されてなる前記発光素子の列が、前記第1の方向に直交する所定の第2の方向に沿って複数列並列されるとともに、前記複数列の発光素子に対して前記第2の方向側であって前記光伝送体側の位置に、前記受光素子が前記第1の方向に沿って複数整列されてなる前記受光素子の列が、前記第2の方向に沿って複数列並列されたものが配置され、前記光電変換装置に対して前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向において臨む第1のレンズ部材と、この第1のレンズ部材に接合され、前記光伝送体の端面に対して前記第2の方向において臨む第2のレンズ部材とを備え、前記第1のレンズ部材は、前記光電変換装置に臨む面に、前記第1の方向に沿って複数整列形成されるとともに前記第2の方向に沿って複数列並列形成され、前記複数列の発光素子ごとに発光された光がそれぞれ入射する複数列の第1のレンズ面と、前記光電変換装置に臨む面における前記複数列の第1のレンズ面に対して前記第2の方向側であって前記光伝送体側の位置に、前記第1の方向に沿って複数整列形成されるとともに前記第2の方向に沿って複数列並列形成され、前記第1のレンズ部材の内部側から入射した前記複数列の発光素子ごとのモニタ光を前記複数列の受光素子に向けてそれぞれ出射させる複数列の第3のレンズ面と、前記光電変換装置に臨む面に対して前記光電変換装置と反対側に配置され、前記光電変換装置に臨む面に対してこの面から離間するにしたがって前記光伝送体側に傾斜するような所定の傾斜角を有し、前記複数列の第1のレンズ面にそれぞれ入射した前記複数列の発光素子ごとの光を前記光伝送体側に向けて全反射させる第1の傾斜面と、前記光電変換装置に臨む面に対して前記光電変換装置と反対側であって、前記第1の傾斜面に対して前記光伝送体側に配置され、前記光電変換装置に臨む面に対してこの面から離間するにしたがって前記光伝送体と反対側に傾斜するような所定の傾斜角を有し、前記第1の傾斜面によって全反射された前記複数列の発光素子ごとの光が入射する第2の傾斜面とを有し、前記第2のレンズ部材は、前記光伝送体の端面に臨む面に対してこの面から離間するにしたがって前記光電変換装置と反対側に傾斜するような所定の傾斜角を有するとともに、前記第2の傾斜面に対して所定の間隙をもって臨み、前記第2の傾斜面に入射した前記複数列の発光素子ごとの光が入射する第3の傾斜面と、前記光伝送体の端面に臨む面に、前記第1の方向に沿って複数整列形成されるとともに前記第3の方向に沿って複数列並列形成され、前記第3の傾斜面に入射した前記複数列の発光素子ごとの光を、前記光伝送体の端面に向けてそれぞれ出射させる複数列の第2のレンズ面とを有し、前記第2の傾斜面と前記第3の傾斜面との間には、前記第1のレンズ部材および前記第2のレンズ部材との屈折率差が所定値以下とされた充填材が充填され、前記第2の傾斜面上または前記第3の傾斜面上には、前記第2の傾斜面に入射した前記複数列の発光素子ごとの光を、所定の反射率で前記複数列の発光素子ごとのモニタ光として前記複数列の第3のレンズ面側に反射させるとともに、所定の透過率で前記第3の傾斜面側に透過させる反射/透過層が形成されている点にある。
【0014】
そして、この請求項1に係る発明によれば、複数列の第1のレンズ面に入射した複数列の発光素子ごとの光を、第1の傾斜面において全反射させた後に反射/透過層によって第3の傾斜面側および複数列の第3のレンズ面側にそれぞれ分光させ、第3の傾斜面側に分光された複数列の発光素子ごとの光を、複数列の第2のレンズ面によって光伝送体の端面側に出射させることができるとともに、複数列の第3のレンズ面側に十分な反射率で分光された複数列の発光素子ごとのモニタ光を、複数列の第3のレンズ面によって複数列の受光素子側に出射させることができる。これにより、複数列の発光素子と光伝送体の端面との光学的な結合を適正に行うことができるとともにモニタ光を確実かつ効率的に得ることができ、また、第2の傾斜面と第3の傾斜面との間隙部を、反射/透過層および充填材の配置に利用することによって、コンパクトな構成を実現することが可能となる。さらに、第1のレンズ部材および第2のレンズ部材と充填材との屈折率差を所定値以下に形成することで、第1のレンズ部材における第1の傾斜面と第2の傾斜面との間の光路と第2のレンズ部材の光路との直線性を確保することができるので、製品検査の際に複数列の第2のレンズ面に入射する光が各レンズ面の中心からずれていることが確認された場合に、これを解消するための寸法調整を要する箇所を削減することができ、ひいては、製造の容易化に寄与することができる。
【0015】
また、請求項2に係るレンズアレイの特徴は、請求項1において、更に、前記第3の傾斜面は、前記充填材を充填させる空間を確保するように凹入形成された凹入面とされ、前記第2のレンズ部材は、前記第3の傾斜面の外側に、前記第3の傾斜面よりも前記第1のレンズ部材側に突出されるとともに前記第2の傾斜面に平行とされた段差面を有し、前記第2の傾斜面は、前記第3の傾斜面および前記段差面に対応する範囲にわたって平坦な面に形成され、前記反射/透過層は、前記第2の傾斜面上に形成され、前記第1のレンズ部材と前記第2のレンズ部材とは、前記段差面と前記第2の傾斜面とを当接させた状態で接合されている点にある。
【0016】
そして、この請求項2に係る発明によれば、充填材の配置空間を簡易な構成によって確保することができ、また、全反射機能(第1の傾斜面)と分光機能(反射/透過層)とを同一部材(第1のレンズ部材)上に集約させることによって更に容易な設計が可能となり、さらに、段差面と第2の傾斜面とを当接させることによって第1のレンズ部材と第2のレンズ部材との接合を安定的に行うことができる。
【0017】
さらに、請求項3に係るレンズアレイの特徴は、請求項1において、更に、前記第2の傾斜面は、前記充填材を充填させる空間を確保するように凹入形成された凹入面とされ、前記第1のレンズ部材は、前記第2の傾斜面の外側に、前記第2の傾斜面よりも前記第2のレンズ部材側に突出されるとともに前記第3の傾斜面に平行とされた段差面を有し、前記第3の傾斜面は、前記第2の傾斜面および前記段差面に対応する範囲にわたって平坦な面に形成され、前記反射/透過層は、前記第3の傾斜面上に形成され、前記第1のレンズ部材と前記第2のレンズ部材とは、前記段差面と前記第3の傾斜面とを当接させた状態で接合されている点にある。
【0018】
そして、この請求項3に係る発明によれば、充填材の配置空間を簡易な構成によって確保することができ、また、段差面と第3の傾斜面とを当接させることによって第1のレンズ部材と第2のレンズ部材との接合を安定的に行うことができる。
【0019】
さらにまた、請求項4に係るレンズアレイの特徴は、請求項2または3において、更に、前記第1のレンズ部材および前記第2のレンズ部材には、前記段差面およびこれに当接する前記傾斜面のそれぞれから延出され、前記段差面および前記傾斜面に対して所定の角度を有した状態で互いに当接する前記第1のレンズ部材側の当接面および前記第2レンズ部材側の当接面がそれぞれ形成されている点にある。
【0020】
そして、この請求項4に係る発明によれば、第1のレンズ部材側の当接面と第2レンズ部材側の当接面とを当接させることによって、第1のレンズ部材と第2のレンズ部材との接合を更に安定的かつ高精度に行うことができる。
【0021】
また、請求項5に係るレンズアレイの特徴は、請求項1〜4のいずれか1項において、更に、前記充填材は、透光性の接着材からなり、前記第1のレンズ部材と前記第2のレンズ部材とは、前記充填材によって接合されている点にある。
【0022】
そして、この請求項5に係る発明によれば、充填材が接着材を兼ねることによって、第1のレンズ部材と第2のレンズ部材とを確実に接合することができるとともに部品点数を削減することができる。
【0023】
さらに、請求項6に係るレンズアレイの特徴は、請求項1〜5のいずれか1項において、更に、前記第1の傾斜面は、前記光電変換装置に臨む面に対して45°の傾斜角を有するように形成され、前記第2の傾斜面は、前記第1の傾斜面に対して直角かつ前記光電変換装置に臨む面に対して45°の傾斜角を有するように形成され、前記第3の傾斜面は、前記光伝送体の端面に臨む面に対して45°の傾斜角を有するように形成されている点にある。
【0024】
そして、この請求項6に係る発明によれば、第1〜第3の傾斜面を45°の傾斜面に形成することによって、各傾斜面の寸法精度の測定を簡便に行うことができ、取り扱い性を向上させることができる。
【0025】
さらにまた、請求項7に係るレンズアレイの特徴は、請求項1〜6のいずれか1項において、更に、前記第1のレンズ部材と前記第2のレンズ部材とは、同一の材料によって形成されている点にある。
【0026】
そして、この請求項7に係る発明によれば、第1のレンズ部材と第2のレンズ部材との屈折率を統一することによって更に容易な設計が可能となるとともに、同一の材料を用いることによって更なるコストの削減が可能となる。
【0027】
また、請求項8に係る光モジュールの特徴は、請求項1〜7のいずれか1項に記載のレンズアレイと、請求項1に記載の光電変換装置とを備えた点にある。
【0028】
そして、この請求項8に係る発明によれば、複数列の発光素子と光伝送体の端面との光学的な結合を適正に行うことができるとともにモニタ光を確実かつ効率的に得ることができ、また、第2の傾斜面と第3の傾斜面との間隙部を、反射/透過層および充填材の配置に利用することによって、コンパクトな構成を実現することが可能となり、さらに、第1のレンズ部材における第1の傾斜面と第2の傾斜面との間の光路と第2のレンズ部材の光路との直線性を確保して、製品検査の際に複数列の第2のレンズ面に入射する光が各レンズ面の中心からずれていることが確認された場合に、これを解消するための寸法調整を要する箇所を削減することができるので、製造の容易化に寄与することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、モニタ光を効率的に得ることができ、更なる小型化および多チャンネル化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る光モジュールの実施形態を示す概略構成図
【図2】本発明に係るレンズアレイの実施形態において、第1レンズ部材を示す縦断面図
【図3】本発明に係るレンズアレイの実施形態において、第2レンズ部材を示す縦断面図
【図4】図2の下面図
【図5】図3の左側面図
【図6】本発明の第1の変形例を示す図
【図7】本発明の第2の変形例を示す図
【図8】本発明の第3の変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係るレンズアレイおよびこれを備えた光モジュールの実施形態について、図1〜図8を参照して説明する。
【0032】
ここで、図1は、本実施形態における光モジュール1の概要を本実施形態におけるレンズアレイ2の縦断面図とともに示した概略構成図である。また、図2は、レンズアレイ2を構成する第1のレンズ部材3の縦断面図である。さらに、図3は、第1のレンズ部材3に接合された状態で第1のレンズ部材3とともにレンズアレイ2を構成する第2のレンズ部材4の縦断面図である。さらにまた、図4は、図2の下面図である。また、図5は、図3の左側面図である。
【0033】
図1に示すように、本実施形態におけるレンズアレイ2は、光電変換装置5と光伝送体としての光ファイバ6との間に配置されるようになっている。
【0034】
ここで、光電変換装置5は、半導体基板7におけるレンズアレイ2に臨む面に、この面に対して垂直方向(図1における上方向)にレーザ光Laを出射(発光)する複数の発光素子8を有しており、これらの発光素子8は、前述したVCSEL(垂直共振器面発光レーザ)を構成している。なお、各発光素子8によるレーザ光Laの出射方向は、本発明における第3の方向に相当する。また、発光素子8は、所定の第1の方向としての図1における紙面垂直方向に沿って等ピッチで複数(本実施形態においては12個)整列されることによって発光素子8の列(一列)をなすとともに、このような発光素子8の列が所定の第2の方向としての図1における横方向に沿って複数列(本実施形態においては2列)並列されるようにして形成されている。なお、本実施形態においては、発光素子8の各列同士の間で発光素子8の個数が同一とされているとともに、各列同士の間で発光素子8の整列方向における位置が一致しているが、本発明は、このような構成に限定されるものではない。さらに、図1に示すように、光電変換装置5は、半導体基板7におけるレンズアレイ2に臨む面であって、複数列の発光素子8に対して第2の方向側かつ光伝送体側の位置としての図1における左方近傍位置に、複数列の発光素子8からそれぞれ出射されたレーザ光Laの出力(例えば、強度や光量)をモニタするためのモニタ光Mを受光する発光素子8と同数の受光素子9を有している。受光素子9は、発光素子8と同様に、図1における紙面垂直方向に沿って等ピッチで複数(12個)整列されることによって受光素子9の列をなすとともに、このような受光素子9の列が図1における横方向に沿って複数列(2列)並列されるようにして形成されている。また、各列の受光素子9は、光学的に対応する(光をモニタする関係にある)発光素子8の列との間において、整列方向の一方から数えて同じ順番の素子8,9同士の整列方向における位置が互いに一致している。ただし、このような位置の一致は、発光素子8の各列同士の間で発光素子8の整列方向における位置を揃える(一致させる)ような構成を採る場合には、光学的に対応しない発光素子8の列と受光素子9の列との間においても成立することになる。なお、図1においては、右から数えて第1列目の発光素子8に、左から数えて第1列目の受光素子9が光学的に対応しているとともに、右から第2列目の発光素子8に、左から第2列目の受光素子9が光学的に対応している。受光素子9は、フォトディテクタであってもよい。さらに、図示はしないが、光電変換装置5には、受光素子9によって受光されたモニタ光Mの強度や光量に基づいて発光素子8から発光されるレーザ光Laの出力を制御する制御回路が接続されている。このような光電変換装置5は、図1に示すように、半導体基板7を第1のレンズ部材3に当接させた状態で、第1のレンズ部材3に対して対向配置されるようになっている。そして、この光電変換装置5は、例えば、クランプバネ等の不図示の公知の固定手段によって第1のレンズ部材3に取付けられることにより、レンズアレイ2とともに光モジュール1を構成するようになっている。
【0035】
また、本実施形態における光ファイバ6は、発光素子8および受光素子9と同数配設されており、図1における紙面垂直方向に沿って複数本(12本)整列されて列をなすとともに、この列が図1における縦方向(第3の方向)に沿って複数列(2列)並列されるように配置されている。これら複数列の光ファイバ6は、光学的に対応する(光が結合する関係にある)発光素子8の列との間において、整列方向の一方から数えて同じ順番の光ファイバ6・発光素子8同士の整列方向における位置が互いに一致している。ただし、このような位置の一致は、発光素子8の各列同士の間で発光素子8の整列方向における位置を揃えるような構成を採る場合には、光学的に対応しない発光素子8の列と光ファイバ6の列との間においても成立することになる。なお、図1においては、上から数えて第1列目の光ファイバ6が、右から第2列目の発光素子8に光学的に対応しているとともに、上から第2列目の光ファイバ6の列が、右から第1列目の発光素子8に光学的に対応している。各列の光ファイバ6は、例えば、互いに同寸法のマルチモード方式の光ファイバ6とされているとともに、その端面6a側の部位がMT(Mechanically Transferable)コネクタ等の多心一括型の光コネクタ10内に保持されている。このような複数列の光ファイバ6は、図1に示すように、光コネクタ10における第2のレンズ部材4側の端面を第2のレンズ部材4に当接させた状態で、不図示の公知の固定手段(例えば、クランプバネ等)によって第2のレンズ部材4に取付けられるようになっている。
【0036】
そして、レンズアレイ2は、このようにして光電変換装置5と光ファイバ6との間に配置された状態で、複数列の発光素子8と対応する複数列の光ファイバ6の端面6aとを光学的に結合させるようになっている。
【0037】
このレンズアレイ2についてさらに詳述すると、図1に示すように、第1のレンズ部材3は、透光性材料(例えば、樹脂材料)からなり、その縦断面の外形が略三角形状に形成されている。図1に示すように、第1のレンズ部材3の下端面3aは、光電変換装置5に対して上方から臨む面となっており、この下端面3aには、発光素子8と同数の平面円形状の第1のレンズ面(凸レンズ面)11が形成されている。ここで、図2および図4に示すように、第1のレンズ面11は、図2における紙面垂直方向(図4における縦方向)に沿って等ピッチで複数(12個)整列されることによって第1のレンズ面11の列をなすとともに、このような列が図2および図4における横方向に沿って複数列(2列)並列されるようにして形成されている。各列の第1のレンズ面11は、同寸法に形成されているとともに、光学的に対応する(光が入射する関係にある)発光素子8の列との間において、整列方向の一方から数えて同じ順番の第1のレンズ面11・発光素子8同士の整列方向における位置が互いに一致している。ただし、このような位置の一致は、発光素子8の各列同士の間で発光素子8の整列方向における位置を揃えるような構成を採る場合には、光学的に対応しない発光素子8の列と第1のレンズ面11の列との間においても成立することになる。なお、図1においては、右から数えて第1列目の第1のレンズ面11が、これらに下方から正対する右から数えて第1列目の発光素子8に光学的に対応しているとともに、右から第2列目の第1のレンズ面11が、これらに下方から正対する右から第2列目の発光素子8に光学的に対応している。なお、図4に示すように、整列方向(縦方向)および並列方向(横方向)において互いに隣位する第1のレンズ面11同士は、それぞれの周端部を互いに接触させた隣接状態に形成されていてもよい。また、図1に示すように、各第1のレンズ面11の光軸OA(1)は、各第1のレンズ面11にそれぞれ光学的に対応する各発光素子8から出射されるレーザ光Laの中心軸に一致することが望ましい。より好ましくは、各第1のレンズ面11の光軸OA(1)は、下端面3aに直交するようにする。
【0038】
このような各列の第1のレンズ面11には、図1に示すように、光学的に対応する発光素子8の列ごとに出射されたレーザ光Laが入射する。より具体的には、第1のレンズ面11の列に属する任意の1つの第1のレンズ面11には、光学的に対応する発光素子8の列に属する各発光素子8のうちの整列方向の一方から数えて任意の1つの第1のレンズ面11と同じ順番の1つの発光素子8の出射光が入射する。そして、各列の第1のレンズ面11は、入射した各列の発光素子8ごとのレーザ光Laを第1のレンズ部材3の内部(上方)へと進行させる。なお、各列の第1のレンズ面11は、入射した各列の発光素子8ごとのレーザ光Laをコリメートさせてもよいし、または、収束させてもよい。あるいは、第1のレンズ面11を凹レンズ面に形成して、入射したレーザ光Laを発散させるようにしてもよい。
【0039】
また、第1のレンズ部材3の下端面3a上であって、各列の第1のレンズ面11に対する左方近傍位置には、発光素子8と同数の平面円形状の第3のレンズ面(凸レンズ面)13が形成されている。ここで、図2および図4に示すように、第3のレンズ面13は、図2における紙面垂直方向(図4における縦方向)に沿って等ピッチで複数(12個)整列されることによって第3のレンズ面13の列をなすとともに、このような列が図2および図4における横方向に沿って複数列(2列)並列されるようにして形成されている。各列の第3のレンズ面13は、同寸法に形成されているとともに、光学的に対応する(光が入射する関係にある)発光素子8の列との間において、整列方向の一方から数えて同じ順番の第3のレンズ面13・発光素子8同士の整列方向における位置が互いに一致している。ただし、このような位置の一致は、発光素子8の各列同士の間で発光素子8の整列方向における位置を揃えるような構成を採る場合には、光学的に対応しない発光素子8の列と第3のレンズ面13の列との間においても成立することになる。なお、図1においては、左から数えて第1列目の第3のレンズ面13が、右から数えて第1列目の発光素子8に光学的に対応しているとともに、左から第2列目の第3のレンズ面13が、右から第2列目の発光素子8に光学的に対応している。なお、図4に示すように、整列方向および並列方向において互いに隣位する第3のレンズ面13同士は、それぞれの周端部を互いに接触させた隣接状態に形成されていてもよい。また、各列の第3のレンズ面13の光軸OA(3)は、各列の第3のレンズ面13にそれぞれ光学的に対応する(光を結合させる関係にある)各列の受光素子9の受光面の中心軸に一致することが望ましい。より好ましくは、各列の第3のレンズ面13の光軸OA(3)は、下端面3aに直交するようにする。
【0040】
このような各列の第3のレンズ面13には、図1に示すように、第1のレンズ部材3の内部側(上方)から各列の第3のレンズ面13にそれぞれ対応する各列の発光素子8ごとのモニタ光Mが入射する。そして、各列の第3のレンズ面13は、入射した各列の発光素子8ごとのモニタ光Mを、収束させて各列の第3のレンズ面13に光学的に対応する各列の受光素子9に向けてそれぞれ出射させる。なお、モニタ光Mを発生させる手段については後述する。
【0041】
さらに、図1に示すように、第1のレンズ部材3は、下端面3aに対して光電変換装置5と反対側(上側)に配置された第1の傾斜面14を有している。図1に示すように、第1の傾斜面14は、これの下端部が下端面3aにおける右端部の近傍に配置されているとともに、下端面3aに対して、下端面3aから上方に離間するにしたがって光ファイバ6側(左側)に傾斜するような所定の傾斜角を有している。
【0042】
このような第1の傾斜面14には、図1に示すように、各列の第1のレンズ面11にそれぞれ入射した各列の発光素子8ごとのレーザ光Laが、第1のレンズ部材3の内部の光路上を進行した後に、臨界角より大きな入射角で下方から内部入射する。そして、第1の傾斜面14は、内部入射した各列の発光素子8ごとのレーザ光Laを、光ファイバ6側(左方)に向けて全反射させる。
【0043】
さらにまた、図1に示すように、第1のレンズ部材3は、下端面3aに対して光電変換装置5と反対側(上側)であって、第1の傾斜面14に対して光ファイバ6側(左側)に配置された第2の傾斜面15を有している。図1に示すように、第2の傾斜面15は、これの下端部が下端面3aにおける左端部の近傍に配置されているとともに、上端部が第1の傾斜面14の上端部に連接されている。また、図1に示すように、第2の傾斜面15は、下端面3aに対して、下端面3aから上方に離間するにしたがって光ファイバ6と反対側(右側)に傾斜するような所定の傾斜角を有している。
【0044】
このような第2の傾斜面15には、図1に示すように、第1の傾斜面14によって全反射されて第1のレンズ部材3の内部の光路上を進行した後の各列の発光素子8ごとのレーザ光Laが右方から内部入射する。
【0045】
一方、図1に示すように、第2のレンズ部材4は、透光性材料(例えば、樹脂材料)からなり、その縦断面の外形が略三角形状を呈しているとともに、その左端面4aが、光ファイバ6の端面6aに臨む面とされている。また、図1に示すように、第2のレンズ部材4は、第2の傾斜面15に対して所定の間隙をもって臨む第3の傾斜面16を有している。図1に示すように、第3の傾斜面16は、これの下端部が、左端面4aにおける下端部の近傍に配置されており、また、左端面4aに対して、この左端面4aから右方に離間するにしたがって光電変換装置5と反対側(上側)に傾斜するような所定の傾斜角を有している。なお、第3の傾斜面16は、第2の傾斜面15に対して平行に形成されていてもよい。
【0046】
このような第3の傾斜面16には、図1に示すように、第2の傾斜面15に入射した各列の発光素子8ごとのレーザ光Laが右方から入射する。
【0047】
また、図3および図5に示すように、第2のレンズ部材4の左端面4aには、発光素子8と同数の平面円形状の第2のレンズ面(凸レンズ面)12が形成されている。ここで、図3および図5に示すように、第2のレンズ面12は、図3における紙面垂直方向(図5における横方向)に沿って等ピッチで複数(12個)整列されることによって第2のレンズ面12の列をなすとともに、このような列が図3および図5における縦方向に沿って複数列(2列)並列されるようにして形成されている。各列の第2のレンズ面12は、同寸法に形成されているとともに、光学的に対応する(光が入射する関係にある)発光素子8の列との間において、整列方向の一方から数えて同じ順番の第2のレンズ面12・発光素子8同士の整列方向における位置が互いに一致している。ただし、このような位置の一致は、発光素子8の各列同士の間で発光素子8の整列方向における位置を揃えるような構成を採る場合には、光学的に対応しない発光素子8の列と第2のレンズ面12の列との間においても成立することになる。なお、図1においては、上から数えて第1列目の第2のレンズ面12が、右から数えて第2列目の発光素子8に光学的に対応しているとともに、上から第2列目の第2のレンズ面12が、右から第1列目の発光素子8に光学的に対応している。なお、図5に示すように、整列方向および並列方向において互いに隣位する第2のレンズ面12同士は、それぞれの周端部を互いに接触させた隣接状態に形成されていてもよい。また、図1に示すように、各第2のレンズ面12の光軸OA(2)は、各第2のレンズ面12にそれぞれ光学的に対応する(光を結合させる関係にある)各光ファイバ6の端面6aの中心軸に一致することが望ましい。より好ましくは、各第2のレンズ面12の光軸OA(2)は、左端面4aに直交するようにする。
【0048】
このような各列の第2のレンズ面12には、図1に示すように、第3の傾斜面16に入射した後に第2のレンズ部材4の内部の光路上を進行した各列の発光素子8ごとのレーザ光Laが入射する。より具体的には、第2のレンズ面12の列に属する任意の1つの第2のレンズ面12には、光学的に対応する発光素子8の列に属する各発光素子8のうちの整列方向の一方から数えて任意の1つの第2のレンズ面12と同じ順番の発光素子8の出射光が、同じ順番の第1のレンズ面11を経由して入射する。このとき、各列の発光素子8ごとのレーザ光Laの中心軸は、対応する各列の第2のレンズ面12の光軸OA(2)と一致することが望ましい。そして、各列の第2のレンズ面12は、入射した各列の発光素子8ごとのレーザ光Laを、収束させて各列の第2のレンズ面12に対応する各列の光ファイバ6の端面6aに向けてそれぞれ出射させる。
【0049】
このようにして、各列の発光素子8と各列の光ファイバ6の端面6aとが各列の第1のレンズ面11および各列の第2のレンズ面12を介して光学的に結合されるようになっている。
【0050】
さらに、図1に示すように、レンズアレイ2は、第2の傾斜面15上に全面形成された厚みが薄い反射/透過層17を有している。この反射/透過層17は、Ni、CrまたはAl等の単一の金属からなる単層膜もしくは互いに誘電率が異なる複数の誘電体(例えば、TiOとSiO)を交互に積層することによって得られる誘電体多層膜を、第2の傾斜面15上にコーティングすることによって形成してもよい。この場合に、コーティングには、インコーネル蒸着等の公知のコーティング技術を用いることができる。このようなコーティングを用いる場合には、反射/透過層17を、例えば、1μm以下の極めて薄い厚さに形成することができる。
【0051】
このような反射/透過層17には、図1に示すように、第2の傾斜面15に内部入射した各列の発光素子8ごとのレーザ光Laが直ちに入射する。そして、反射/透過層17は、入射した各列の発光素子8ごとのレーザ光Laを、所定の反射率で、各列の発光素子8にそれぞれ対応する各列の発光素子8ごとのモニタ光Mとして、各モニタ光Mに対応する各列の第3のレンズ面13側(下方)に向かって反射させるとともに、所定の透過率で、第3の傾斜面16側(左方)に透過させる。このとき、反射/透過層17の厚みが薄いことによって、反射/透過層17を透過するレーザ光Laの屈折は無視する(直進透過とみなす)ことができる。なお、反射/透過層17の反射率および透過率としては、レーザ光Laの出力をモニタするために十分とみなされる光量のモニタ光Mを得ることができる限度において、反射/透過層17の材質や厚み等に応じた所望の値を設定することができる。例えば、反射/透過層17を、前述した単層膜によって形成する場合には、その厚みにもよるが、反射/透過層17の反射率を20%、透過率を60%(吸収率20%)とすることもできる。また、例えば、反射/透過層17を、前述した誘電体多層膜によって形成する場合には、その厚みや層数にもよるが、反射/透過層17の反射率を10%、透過率を90%とすることもできる。
【0052】
このようにして反射/透過層17によって反射された各列の発光素子8ごとのモニタ光Mは、第1のレンズ部材3の内部の光路上を進行した後に、対応する各列の第3のレンズ面13に内部入射する。そして、各列の第3のレンズ面13からこれらに対応する各列の受光素子9に向けてそれぞれ出射される。
【0053】
一方、図1に示すように、反射/透過層17と第3の傾斜面16との間には、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等の透光性の接着材からなる充填材18が充填されている。したがって、第1のレンズ部材3と第2のレンズ部材4とは、充填材18の接着力によって互いに接着(接合)されている。また、充填材18は、第1のレンズ部材3および第2のレンズ部材4との屈折率差が所定値以下とされている。この屈折率差は、好ましくは0.01以下とされ、より好ましくは、0.005以下とされている。例えば、第1のレンズ部材3および第2のレンズ部材4を、ポリエステルとしての大阪ガスケミカル社製のOKP4HTによって形成する場合には、充填材18を、紫外線硬化性樹脂としての大阪ガスケミカル社製のEA−0200によって形成してもよい。この場合には、第1のレンズ部材3、第2のレンズ部材4および充填材18の屈折率を、波長850nmの光に対していずれも1.61とすることができる。
【0054】
このような充填材18には、図1に示すように、反射/透過層17によって透過された各列の発光素子8ごとのレーザ光Laが直ちに入射する。このとき、充填材18に対する各列の発光素子8ごとのレーザ光Laの入射方向は、反射/透過層17に対する各列の発光素子8ごとのレーザ光Laの入射方向と同一とみなすことができる。これは、反射/透過層17が非常に薄く、この層17でのレーザ光Laの屈折を無視できることによるものである。
【0055】
このようにして充填材18に入射した各列の発光素子8ごとのレーザ光Laは、充填材18の内部の光路上を第3の傾斜面16側に向かって進行する。このとき、充填材18と第1のレンズ部材3との屈折率差が十分に小さいことによって、各列の発光素子8ごとのレーザ光Laが充填材18に入射する際に、各レーザ光Laに屈折が生じることはない。
【0056】
次いで、充填材18の内部の光路上を僅かな距離だけ進行した各列の発光素子8ごとのレーザ光Laは、第3の傾斜面16に入射する。このとき、充填材18と第2のレンズ部材4との屈折率差が十分に小さいことによって、各列の発光素子8ごとのレーザ光Laが第3の傾斜面16に入射する際に、各レーザ光Laに屈折が生じることはない。
【0057】
そして、このようにして第3の傾斜面16に入射した各列の発光素子8ごとのレーザ光Laは、前述のように、各列の第2のレンズ面12によって、各列の光ファイバ6の端面6aに向けてそれぞれ出射される。
【0058】
このような構成によれば、各列の第1のレンズ面11に入射した各列の発光素子8ごとのレーザ光Laを、第1の傾斜面14において全反射させた後に反射/透過層17によって第3の傾斜面16側および各列の第3のレンズ面13側にそれぞれ分光させることができる。そして、第3の傾斜面16側に分光(透過)された各列の発光素子8ごとのレーザ光Laを、各列の第2のレンズ面12によって各列の光ファイバ6の端面6a側に出射させ、各列の第3のレンズ面13側に十分な反射率で分光(反射)された各列の発光素子8ごとのモニタ光Mを、各列の第3のレンズ面13によって各列の受光素子9側に出射させることができる。これにより、各列の発光素子8と各列の光ファイバ6の端面6aとの光学的な結合を適正に行うことができるとともにモニタ光を確実かつ効率的に得ることができ、多チャンネル(24ch)の光送信を安定的に行うことができる。また、第2の傾斜面15と第3の傾斜面16との間隙部を、反射/透過層17の配置(すなわち、分光)および充填材18の配置(すなわち、レンズ部材の接合)に利用し、なおかつ、全反射機能14と分光機能17とを1つの部材3上の互いに近い位置に集約させることによって、コンパクトかつ容易な設計が可能となる。さらに、第1のレンズ部材3および第2のレンズ部材4と充填材18との屈折率差を所定値以下に形成することで、第1のレンズ部材3における第1の傾斜面14と第2の傾斜面15との間の光路と第2のレンズ部材4の光路との直線性を確保することができるので、製品検査の際に各列の第2のレンズ面12に入射するレーザ光Laが各レンズ面12の中心からずれていることが確認された場合に、これを解消するための寸法調整を要する箇所を削減することができ、製造の容易化に寄与することができる。具体的には、仮に、第1の傾斜面14と第2の傾斜面15との間の光路と第2のレンズ部材4の光路との直線性を確保できない構成の場合には、第2のレンズ面12に対する入射光の軸ずれを許容限度内に補正するために、第2の傾斜面15および第3の傾斜面16の傾斜角の調整を要する場合がある。これに対して、本実施形態においては、第1の傾斜面14における全反射方向が適正に確保されていれば、第2の傾斜面15および第3の傾斜面16に最適な角度を設定し直すような煩雑な寸法調整は要しない。また、前述のように、第1のレンズ部材3および第2のレンズ部材4を同一の材料によって形成すれば、両レンズ部材3、4の屈折率を統一することによって更に容易な設計が可能となるとともに、同一の材料を用いることによって更なるコストの削減が可能となる。さらに、本実施形態においては、充填材18が接着剤を兼ねることによって、部品点数を削減することができる。
【0059】
上記構成に加えて、更に、本実施形態においては、図1に示すように、第3の傾斜面16が、充填材18を充填させる空間を確保するように第3の傾斜面16の外側の面20よりも凹入形成された凹入面とされ、このことによって、外側の面20が、第3の傾斜面16よりも第1のレンズ部材3側に突出された段差面20とされている。図1に示すように、段差面20は、第2の傾斜面15に対して平行とされている。一方、第2の傾斜面15は、第3の傾斜面16および段差面20に対応する範囲にわたって平坦な面に形成されている。そして、第1のレンズ部材3と第2のレンズ部材4とは、段差面20と第2の傾斜面15とを当接させた状態で接合されている。
【0060】
このような構成によれば、第1のレンズ部材3と第2のレンズ部材4との接合を、両レンズ部材3、4を互いに当接させつつ安定的に行うことができる。
【0061】
上記構成に加えて、更に、本実施形態においては、図1および図2に示すように、第1の傾斜面14の傾斜角が、第1のレンズ部材3の下端面3aを基準(0°)として同各図における時計回りに45°とされている。また、本実施形態においては、第2の傾斜面15の傾斜角が、下端面3aを基準として同各図における反時計回りに45°とされている。すなわち、第2の傾斜面15は、第1の傾斜面14に対して直角をなしている。一方、図1および図3に示すように、第3の傾斜面16の傾斜角は、第2のレンズ部材4の左端面4aを基準として同各図における時計回りに45°とされている。
【0062】
このような構成によれば、第1〜第3の傾斜面14〜16を45°の傾斜面に形成することによって、各傾斜面14〜16の寸法精度の測定を簡便に行うことができ、取り扱い性を向上させることができる。また、第1の傾斜面14における反射角を90°にすることができるため、光路設計が更に容易となる。
【0063】
上記構成以外にも、図1および図4に示すように、第1のレンズ部材3は、光電変換装置5を保持するためのデバイス側周状凸部21を有している。このデバイス側周状凸部21は、下端面3aを四方から包囲するようにして下端面3aおよび第1のレンズ面11よりも光電変換装置5側(図1における下方)に突出するように形成されているとともに、先端面(下端面)において光電変換装置5を当接保持するようになっている。なお、デバイス側周状凸部21の先端面は、面一かつ下端面3aに平行とされている。一方、図1および図5に示すように、第2のレンズ部材4は、光ファイバ6を保持するためのファイバ側周状凸部22を有している。このファイバ側周状凸部22は、左端面4aを四方から包囲するようにして左端面4aおよび第2のレンズ面12よりも光ファイバ6側(図1における左方)に突出するように形成されているとともに、先端面(左端面)において光ファイバ6(コネクタ10)を当接保持するようになっている。なお、ファイバ側周状凸部22の先端面は、面一かつ左端面4aに平行とされている。この他にも、第1のレンズ部材3および光電変換装置5(半導体基板7)には、互いに機械的または光学的に係合することによってレンズアレイ2に対する光電変換装置5の位置決めを行うための位置決め手段が形成されていてもよい。この位置決め手段としては、第1のレンズ部材3および光電変換装置5のいずれか一方に形成されたピンと、他方に形成されたピン挿入用の孔または穴との組合わせや、第1のレンズ部材3および光電変換装置5の所定の位置に形成された光学的に検出可能なマーク等を挙げることができる。同様に、第2のレンズ部材4および光ファイバ6(コネクタ10)にも、互いに機械的または光学的に係合することによってレンズアレイ2に対する光ファイバ6の位置決めを行うための位置決め手段(ピンと孔/穴との組合わせや光学マーク等)が形成されていてもよい。なお、図1、3、5には、位置決め手段の一例として、第2のレンズ部材4に形成されたピン30が示されている。
【0064】
更に、前述した構成以外にも、本発明には、種々の変形例を適用することができる。
【0065】
(第1の変形例)
例えば、前述のように第3の傾斜面16を凹入面に形成する代わりに、図6に示すように、第2の傾斜面15を凹入面に形成してもよい。ただし、この場合には、図6に示すように、第2の傾斜面15の外側に、第2の傾斜面15よりも第2のレンズ部材4側に突出された段差面20が形成されることになる。また、図6に示すように、第3の傾斜面16は、第2の傾斜面15および段差面20に対応する範囲にわたって平坦な面に形成するとともに、第3の傾斜面16上に反射/透過層17を形成する。
【0066】
このような構成においても、充填材18の充填空間を確保することができるとともに、第3の傾斜面16と段差面20とを当接させることによって、第1のレンズ部材3と第2のレンズ部材4との接合を安定的に行うことができる。
【0067】
(第2の変形例)
また、図7に示すように、第1のレンズ部材3および第2のレンズ部材4に、第2の傾斜面15および段差面20以外の当接面を追加してもよい。すなわち、図7に示すように、本変形例において、第1のレンズ部材3は、デバイス側周状凸部21の左端部から左方に延出された延出部23を有しており、この延出部23の上端面23aは、第2の傾斜面15の下端部から左方に延出された第1のレンズ部材3側の当接面23aとされている。一方、図7に示すように、ファイバ側周状凸部22の下端面22aは、段差面20の下端部から左方に延出された第2のレンズ部材4側の当接面22aとされている。そして、これら第1のレンズ部材3側の当接面23aと第2のレンズ部材4側の当接面22aとは、第2の傾斜面15および段差面20に対して所定の角度を有した状態で互いに当接している。
【0068】
このような構成によれば、第1のレンズ部材3と第2のレンズ部材4とが、全体的にくの字状の当接面を介して安定的に当接することができるので、第1のレンズ部材3と第2のレンズ部材4との接合を更に安定的かつ高精度に行うことができる。
【0069】
なお、第1のレンズ部材3側に延出部23を形成する代わりに、第2のレンズ部材4側に、ファイバ側周状凸部22の下端部から下方に延出する延出部を形成し、この延出部の右端面を、第2のレンズ部材4側の当接面としてもよい。この場合には、延出部を有しない状態のデバイス側周状凸部21の左端面を、第1のレンズ部材3側の当接面とすればよい。
【0070】
(第3の変形例)
さらに、図8に示すような光信号の受信にも対応した構成を採用してもよい。すなわち、図8に示すように、各列の光ファイバ6の下部近傍には、複数の受信用の光ファイバ6’が、紙面垂直方向に沿って整列配置されている。また、図8に示すように、第2のレンズ部材4の左端面4aにおける受信用の光ファイバ6’の端面6a’に臨む位置には、受信用の光ファイバ6’と同数の受信用の第4のレンズ面24が、紙面垂直方向に沿って整列形成されている。さらに、図8に示すように、第2の傾斜面15の下端部は、反射/透過層17の下端部よりも延長されている。さらにまた、図8に示すように、第1のレンズ部材3の下端面3aには、受信用の光ファイバ6’と同数の受信用の第5のレンズ面25が、紙面垂直方向に沿って整列形成されている。また、図8に示すように、光電変換装置5は、受信用の光ファイバ6’と同数の受信用の受光素子27を備えている。
【0071】
このような構成によれば、受信用の光ファイバ6’の端面6a’から出射された受信用のレーザ光La’を、第4のレンズ面24において収束させ、第3の傾斜面16、充填材18および第2の傾斜面15の延長部を順次透過(直進)させた後に、第1の傾斜面14において第5のレンズ面25側に全反射させ、そして、第5のレンズ面25において収束させて受信用の受光素子27に適正に結合させることができる。
【0072】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限度において種々変更することができる。
【0073】
例えば、発光素子8、受光素子9、第1〜第3のレンズ面11〜13は、3列以上設けてもよい。また、第4のレンズ面24および第5のレンズ面25は、2列以上設けてもよい。さらに、本発明は、光導波路等の光ファイバ以外の光伝送体にも有効に適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 光モジュール
2 レンズアレイ
3 第1のレンズ部材
4 第2のレンズ部材
5 光電変換装置
6 光ファイバ
8 発光素子
9 受光素子
11 第1のレンズ面
12 第2のレンズ面
13 第3のレンズ面
14 第1の傾斜面
15 第2の傾斜面
16 第3の傾斜面
17 反射/透過層
18 充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子およびこれらから発光された光をモニタするための各発光素子ごとのモニタ光をそれぞれ受光する複数の受光素子が形成された光電変換装置と、光伝送体との間に配置され、前記複数の発光素子と前記光伝送体の端面とを光学的に結合可能とされたレンズアレイであって、
前記光電変換装置として、前記発光素子が所定の第1の方向に沿って複数整列されてなる前記発光素子の列が、前記第1の方向に直交する所定の第2の方向に沿って複数列並列されるとともに、前記複数列の発光素子に対して前記第2の方向側であって前記光伝送体側の位置に、前記受光素子が前記第1の方向に沿って複数整列されてなる前記受光素子の列が、前記第2の方向に沿って複数列並列されたものが配置され、
前記光電変換装置に対して前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向において臨む第1のレンズ部材と、
この第1のレンズ部材に接合され、前記光伝送体の端面に対して前記第2の方向において臨む第2のレンズ部材と
を備え、
前記第1のレンズ部材は、
前記光電変換装置に臨む面に、前記第1の方向に沿って複数整列形成されるとともに前記第2の方向に沿って複数列並列形成され、前記複数列の発光素子ごとに発光された光がそれぞれ入射する複数列の第1のレンズ面と、
前記光電変換装置に臨む面における前記複数列の第1のレンズ面に対して前記第2の方向側であって前記光伝送体側の位置に、前記第1の方向に沿って複数整列形成されるとともに前記第2の方向に沿って複数列並列形成され、前記第1のレンズ部材の内部側から入射した前記複数列の発光素子ごとのモニタ光を前記複数列の受光素子に向けてそれぞれ出射させる複数列の第3のレンズ面と、
前記光電変換装置に臨む面に対して前記光電変換装置と反対側に配置され、前記光電変換装置に臨む面に対してこの面から離間するにしたがって前記光伝送体側に傾斜するような所定の傾斜角を有し、前記複数列の第1のレンズ面にそれぞれ入射した前記複数列の発光素子ごとの光を前記光伝送体側に向けて全反射させる第1の傾斜面と、
前記光電変換装置に臨む面に対して前記光電変換装置と反対側であって、前記第1の傾斜面に対して前記光伝送体側に配置され、前記光電変換装置に臨む面に対してこの面から離間するにしたがって前記光伝送体と反対側に傾斜するような所定の傾斜角を有し、前記第1の傾斜面によって全反射された前記複数列の発光素子ごとの光が入射する第2の傾斜面と
を有し、
前記第2のレンズ部材は、
前記光伝送体の端面に臨む面に対してこの面から離間するにしたがって前記光電変換装置と反対側に傾斜するような所定の傾斜角を有するとともに、前記第2の傾斜面に対して所定の間隙をもって臨み、前記第2の傾斜面に入射した前記複数列の発光素子ごとの光が入射する第3の傾斜面と、
前記光伝送体の端面に臨む面に、前記第1の方向に沿って複数整列形成されるとともに前記第3の方向に沿って複数列並列形成され、前記第3の傾斜面に入射した前記複数列の発光素子ごとの光を、前記光伝送体の端面に向けてそれぞれ出射させる複数列の第2のレンズ面と
を有し、
前記第2の傾斜面と前記第3の傾斜面との間には、前記第1のレンズ部材および前記第2のレンズ部材との屈折率差が所定値以下とされた充填材が充填され、
前記第2の傾斜面上または前記第3の傾斜面上には、前記第2の傾斜面に入射した前記複数列の発光素子ごとの光を、所定の反射率で前記複数列の発光素子ごとのモニタ光として前記複数列の第3のレンズ面側に反射させるとともに、所定の透過率で前記第3の傾斜面側に透過させる反射/透過層が形成されていること
を特徴とするレンズアレイ。
【請求項2】
前記第3の傾斜面は、前記充填材を充填させる空間を確保するように凹入形成された凹入面とされ、
前記第2のレンズ部材は、前記第3の傾斜面の外側に、前記第3の傾斜面よりも前記第1のレンズ部材側に突出されるとともに前記第2の傾斜面に平行とされた段差面を有し、
前記第2の傾斜面は、前記第3の傾斜面および前記段差面に対応する範囲にわたって平坦な面に形成され、
前記反射/透過層は、前記第2の傾斜面上に形成され、
前記第1のレンズ部材と前記第2のレンズ部材とは、前記段差面と前記第2の傾斜面とを当接させた状態で接合されていること
を特徴とする請求項1に記載のレンズアレイ。
【請求項3】
前記第2の傾斜面は、前記充填材を充填させる空間を確保するように凹入形成された凹入面とされ、
前記第1のレンズ部材は、前記第2の傾斜面の外側に、前記第2の傾斜面よりも前記第2のレンズ部材側に突出されるとともに前記第3の傾斜面に平行とされた段差面を有し、
前記第3の傾斜面は、前記第2の傾斜面および前記段差面に対応する範囲にわたって平坦な面に形成され、
前記反射/透過層は、前記第3の傾斜面上に形成され、
前記第1のレンズ部材と前記第2のレンズ部材とは、前記段差面と前記第3の傾斜面とを当接させた状態で接合されていること
を特徴とする請求項1に記載のレンズアレイ。
【請求項4】
前記第1のレンズ部材および前記第2のレンズ部材には、前記段差面およびこれに当接する前記傾斜面のそれぞれから延出され、前記段差面および前記傾斜面に対して所定の角度を有した状態で互いに当接する前記第1のレンズ部材側の当接面および前記第2レンズ部材側の当接面がそれぞれ形成されていること
を特徴とする請求項2または3に記載のレンズアレイ。
【請求項5】
前記充填材は、透光性の接着材からなり、
前記第1のレンズ部材と前記第2のレンズ部材とは、前記充填材によって接合されていること
を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のレンズアレイ。
【請求項6】
前記第1の傾斜面は、前記光電変換装置に臨む面に対して45°の傾斜角を有するように形成され、
前記第2の傾斜面は、前記第1の傾斜面に対して直角かつ前記光電変換装置に臨む面に対して45°の傾斜角を有するように形成され、
前記第3の傾斜面は、前記光伝送体の端面に臨む面に対して45°の傾斜角を有するように形成されていること
を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のレンズアレイ。
【請求項7】
前記第1のレンズ部材と前記第2のレンズ部材とは、同一の材料によって形成されていること
を特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のレンズアレイ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のレンズアレイと、
請求項1に記載の光電変換装置と
を備えたことを特徴とする光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−255932(P2012−255932A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129151(P2011−129151)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000208765)株式会社エンプラス (403)
【Fターム(参考)】