説明

レーザースクライブを形成する装置

【解決課題】薄膜光起電デバイスの個々のセルを形成するために用いられるレーザースクライブを形成する装置を提供する。
【解決手段】1又はそれ以上のレーザースクライブを形成するための装置であって、レーザー1と、レーザー1によって発生したレーザービーム5を拡幅するビーム拡大器10と、ビーム拡大器10を通過した後にレーザービーム12を集束する手段15と、レーザービームを走査するスキャナー20と、を含む装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光起電セル及びモジュール、及びこれらの製造方法に関する。特に、本発明は、例えばモジュール内に個々の直列連結セルを製造するために用いられるスクライブ又は溝が、モジュールの表面上にわたって走査するレーザービームを利用する高速プロセスにより形成されたものである、アモルファスシリコン、CdS/CdTe、CIS及び他の薄膜をベースとする光起電セル及びモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
慣用の薄膜光起電モジュールは、典型的には、基板上に配設された、例えば錫酸化物又は酸化亜鉛などの金属酸化物製のフロント接点と、p−n(又はPN)、p−i−n(又はPIN)接合などの光起電活性領域又は層と、例えばアルミニウムなどの金属製のバックもしくはリア接点と、を含む。最も単純なp−i−n又はPIN接合は、p−型ドーパントでドープされてp−層を形成する半導体物質の一層と、真性層又はi−層を形成する半導体物質の未ドープ層と、n−型ドーパントでドープされてn−層を形成する半導体物質の一層と、を含む。光起電活性領域は、フロント接点とバック接点との間に位置づけられている。基板上の入射光は、基板と、フロント接点と、p−i−n接合を通過する。光は、リア接点により反射されて、p−i−n接合に戻される。
【0003】
このような光起電モジュールを製造する典型的な方法は、1種又は複数のレーザーを用いて、ほぼ平行な溝又はスクライブの一列をモジュールの上述の金属酸化物層、半導体層及び金属層に形成して、モジュールを個々の直列連結セルの集合体に分割又はセグメント化する。本明細書に参照として組み込まれる米国特許U.S.Patent No.4,532,371号明細書は、光起電デバイスの製造方法を開示する。従来のプロセスにおいては、これらのスクライブラインは、半導体及び金属層を含む基板をレーザー光ビームの下方で、例えば空気ベアリングテーブルを用いて基板を移動させることにより形成されていた。このようなプロセスは、ゆっくりで、費用がかかる設備を必要とし、より大きな基板をレーザービームの下方で移動させるために必要となる移動テーブル又は他の装置のサイズゆえに、現存の標準的な0.65×1.2mモジュールよりも実質的に大きい光起電モジュールの製造には特に不適切である。しかし、より大きなサイズのモジュールは、ビルディング又は他の構造物の面に用いられていたガラスを光起電モジュールで置換して、構造及び審美的機能と光起電力発生能を一体化する場合のような建築用途には好ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、薄膜光起電デバイスの個々のセルを形成するために用いられるレーザースクライブを製造するためのより迅速で、より効率的な方法が必要である。本発明は、このような方法及びこのような方法により製造された光起電モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、1又はそれ以上のレーザースクライブを形成するための装置であって、レーザーと、当該レーザーによって発生したレーザービームを拡幅するビーム拡大器と、当該ビーム拡大器を通過した後にレーザービームを集束する手段と、当該レーザービームを走査するスキャナーと、を含む装置である。
【0006】
本発明は、基板上光起電デバイスを製造する方法である。本方法は、
(a)基板上に、透明で電気導電性の膜をデポジットして、フロント接点層を形成する工程と、
(b)該フロント接点層に、レーザービームを走査することによって実質的に平行な複数の第1の溝をレーザースクライブして、モノリシック基板上に複数のフロント接点セグメントを形成する工程と、
(c)該フロント電極セグメント上に半導体物質の一層又は複数層をデポジットし且つ形成して、該半導体物質で該第1の溝を充填する工程と、
(d)該半導体物質の一層又は複数層に、該第1の溝に隣接する位置にてレーザービームを走査することによって、第2の溝をレーザースクライブする工程と、
(e)該半導体物質の一層又は複数層上に、金属を含むバック接点層をデポジットし且つ形成して、金属で該第2の溝を充填して、フロント電極セグメントとバック接点層とを接続する一列の接続部を形成する工程と、
(f)第2の溝に隣接する位置にてレーザービームを走査することで、該バック接点層に第3の溝をレーザースクライブする工程と、
を含む。
【0007】
また本発明は、フロント接点層と、光起電活性半導体物質の一層又は複数層と、金属を含むバック接点層とを含み、フロント接点層と、半導体層と、バック接点層とは、直列連結された複数のセルを形成するために、レーザーを走査することにより形成されたスクライブを有する、担持基板上に直列連結された光起電セルを含む光起電モジュールでもある。
[発明の詳細な説明]
放射線及び特に太陽放射線を有用な電気エネルギーに変換する光起電セルは、例えば、本願明細書に参照として組み込まれる米国特許U.S.Patent No.4.064,521号明細書に開示されているアモルファスシリコンPIN構造又は硫化カドミウム/カドミウムテルライド(CdS/CdTe)構造などのある種の半導体構造を2個の電極の間にサンドウィッチすることにより製作することができる。CdS/CdTe光起電デバイスの製作方法は、例えば、N.R.Pavaskar,et al.,J.Electrochemical Soc.124(1967)p.743;I.Kaur,et al.,J.Electrochem Soc.127(1981)p.943;Panicker,et al.,“Cathodic Deposition of CdTe from Aqueous Electolytes”J.Electrochem Soc.125,No.4,1978,pp.556−572;米国特許U.S.Patent No.4,400,244明細書;欧州特許EP Patent 244963;米国特許U.S.Patent No.4,458,681明細書;欧州特許EP Patent 0538041;米国特許U.S.Patent No.4,388,483;米国特許U.S.Patent No.4,735,662明細書;米国特許U.S.Patent No.4,456,630明細書;米国特許U.S.Patent No.5,472,910明細書;米国特許U.S.Patent No.4,243,432明細書;米国特許U.S.Patent No.4,383,022明細書、”Large Area Apollo(登録商標) Module Performance and Reliability”28th IEEE Photovoltaic Specialists Conference,Anchorage,Alaska,September 2000(以上はすべて本明細書に参照として組み込まれる)に開示されている。
【0008】
電極のひとつは典型的には、透明で太陽放射線が半導体物質に到達できるようになされている。この「フロント」電極(又は接点)は、酸化錫や酸化亜鉛などの透明導電性酸化物物質の薄膜、例えば厚みが10マイクロメーター未満の薄膜で構成することができ、通常はガラス製又はプラスチック製の透明担体と光起電半導体物質との間に形成される。フロント電極とは反対側の半導体物質の表面上に形成される「バック」又は「リア」電極(又は接点)は、一般に、例えばアルミニウムもしくは銀などの少なくとも1種の金属の薄膜、又は半導体物質と金属薄膜との間に金属の薄膜及び酸化亜鉛などの金属酸化物の薄膜を含む。金属酸化物は、臭素もしくはアルミニウムでドープされてもよく、典型的には、低圧化学蒸着により蒸着される。
【0009】
図1は、例えばガラスである透明基板14上に形成され、基板14を通過する太陽放射線もしくは他の光16に晒される複数の直列接続光起電セル12から構成される薄膜光起電モジュール10を示す。(1列の光起電セルはモジュールである)。各光起電セル12は、透明な導電性酸化物のフロント電極18と、例えば水素化アモルファスシリコンなどの半導体物質から作られた透明な光起電要素20と、アルミニウムなどの金属のバック又はリア電極22と、を含む。光起電要素20は、例えば、PINもしくはPN構造を含み得る。隣接するフロント電極18は、光起電要素20の半導体物質で充填されている第1の溝24により分離されている。第1の溝24内の誘電性半導体物質は、隣接するフロント電極18とは電気的に絶縁されている。隣接する光起電要素20は、1個のセルのフロント電極及び隣接するセルのバック電極の間の直列接続を与えるためにバック電極22の金属で充填されている第2の溝26により分離されている。これらの接続を本明細書において「インターコネクト(相互接続)」という。隣接するバック電極22は、第3の溝28によって互いに電気的に絶縁されている。本発明の方法において、このようなフロント電極をセグメントに分離するスクライブ又は溝の1個以上、このようなインターコネクトを形成するために用いられるスクライブ又は溝、及びこのような電気的に絶縁された電極を形成するバック電極内のスクライブ又は溝は、モジュール製作工程中に、モジュール上にわたって走査するレーザービームによって形成される。好ましくは、走査プロセスにおいて、レーザーは、定置に固定され、レーザービームはスキャナーを通過し、ここで、X−Yミラーは好ましくはガルバノメーターにより操作されてレーザービームを反射してモジュール上の適切な位置に方向付けて、所望のレーザースクライブ又は溝を形成する。適切には、レーザービームは、スキャナデバイスに入る前に、ビーム拡大器を通過して、次いで自動集束光学機器ユニット(dynamic focusing optical unit)を通過する。よって、本発明の方法においては、レーザースクライブを形成するために、スクライビング方向に沿って、種々の金属酸化物、半導体及び金属層を含む基板を移動させる必要はない。むしろ、レーザービームは、好ましくはスキャナーの操作により、基板上全体を走査して、所望のスクライブを形成する。この方法によって、迅速且つ効果的な態様で、大型モジュールを含む広範囲の寸法を有する光起電モジュール上に、所望のスクライブを形成することが可能である。
【0010】
図1に示したような薄膜光起電モジュールは、典型的には、デポジッション(堆積)・パターンニング方法によって製作される。基板上に、アモルファスシリコン半導体物質をデポジット(堆積)させる適切な技術の一例は、例えば米国特許U.S.Patent No.4,064,521明細書に記載されているように、シラン中グロー放電を用いることである。数種類のパターンニング技術は、上述のように隣接する光起電セルを分離する溝を形成するために慣用的に知られており、レジストマスクでのシルクスクリーニング方法、ポジ又はネガのフォトレジストでのエッチング方法、機械的スクライビング方法、放電スクライビング方法、及びレーザースクライビング方法を含む。レーザースクライビング方法は、薄膜アモルファスシリコン光起電モジュールを含む薄膜半導体デバイスの実用的で、費用効果的で、大容量の製作プロセスとして出現してきたものである。レーザースクライビング方法は、例えば典型的なシルクスクリーン方法による約300〜500マイクロメーターの幅の溝と比較して、25マイクロメーター未満の幅を有する分離溝を形成することによって、マルチセルデバイス内の隣接するセルを分離することができるので、有利である。よって、レーザースクライビング方法で製作された光起電モジュールは、電力の発生に能動的に関与する表面の比率が大きく、したがって、例えばシルクスクリーニング方法により製作されたモジュールよりも高効率を有する。光起電モジュールの層をレーザースクライブする従来の方法は、米国特許U.S.Patent No.4,292,092明細書(本明細書中に参照として組み入れる)に開示されている。
【0011】
図1を参照する。レーザースクライビング方法を用いるマルチセル光起電モジュールの製作方法は、透明基板14上に透明導電性酸化物の連続膜をデポジットさせる工程と、第1の溝24をレーザークスライブして透明導電性酸化物膜をフロント電極18に分離する工程と、フロント電極18の頂部及び第1の溝24内に半導体物質の連続膜を製造する工程と、第1の溝24に平行に且つ隣接して第2の溝26をレーザースクライブして半導体物質を個々の光起電要素20(又はセグメント)に分離し、第2の溝の底部にてフロント電極18の部分を露出させる工程と、金属がフロント電極18との電気的接続、すなわちインターコネクトを形成するようにセグメント20上及び第2の溝26内に金属の連続膜を形成する工程と、次いで、第2の溝26に平行に且つ隣接して第3の溝28をレーザースクライブして隣接するバック電極22を分離して電気的に絶縁させる工程と、を含む。図1に示すように、第3の溝28は、バック接点側すなわち光起電セルの面側から金属のバック電極内にスクライブされる。しかし、本明細書に記載するように、バック電極のスクライビングは、モジュールの他の側から生じてもよい。本発明の方法において、スクライブ又は溝は、迅速且つ制御された態様で製作工程中にレーザーを基板上全体に走査して所望のスクライブを形成する高速高効率レーザー走査プロセスにより形成される。
【0012】
モジュールの最初と最後のセルは、一般に、モジュールとワイヤ又は他の導電性要素とを接続する手段を提供する母線を有する。母線は、一般に、最初と最後のセルの外側の長い部分の長さ方向に沿って走る。
【実施形態の説明】
【0013】
添付図面は、本発明の原理を説明する記載とともに本発明の少なくとも1の実施形態を説明する。添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0014】
図2(g)は、概して符号110で示されるマルチセル薄膜光起電モジュールの概略断面図である。光起電モジュール110は、平坦な透明基板114上に形成された複数の直列接続光起電セル112から構成される。運転時には、光起電モジュール110は、好ましくはガラスで形成される基板114を通過する光116、特に太陽放射線に応答して、電力を発生する。各光起電セル112は、透明導電性酸化物を含むフロント電極セグメント118、例えば水素化アモルファスシリコンなどの半導体物質を含む光起電要素120、及び好ましくはアルミニウム、場合によっては酸化亜鉛などの金属酸化物である金属を含むバック電極122を含む。隣接するフロント電極セグメント118は、光起電要素120の半導体物質で充填されている第1の溝124によって分離される。隣接する光起電要素120は、第2の溝126によって、及び第3の溝128によって分離される。半導体物質の不活性部分130は、第2の溝126及び第3の溝128の間に位置づけられる。部分130は、光116を電力に変換可能ではないという意味において不活性である。第2の溝126は、バック電極122の物質で充填されて、1個のセルのフロント電極及び隣接するセルのバック電極の間に直列接続を与える。これらの接続は、インターコネクトといわれる。第3の溝128の頂部に位置づけられているギャップ129は、隣接するバック電極122を分離して電気的に絶縁する。図2(g)に示されるように、光起電セル112の列は、モジュールを構成する。モジュールは、個々のセルを多数個有し得る。2個以上のモジュールは、平行に接続されて、光起電デバイスの電流を増加させることができる。1個の光起電セル112の列を用いる場合には、モジュールによって発生する電流を使用するデバイス又はシステムにモジュールを接続させるために、ワイヤ又は他の導電性要素に取り付けるべく最初と最後のセルの接点を用いることができるに違いない。一般に、導電性ストリップすなわち「母線」は、モジュールの最初と最後のセルの外側に(すなわち溝に平行に)追加される。これらの母線を用いて、モジュールが光に晒されたときに発生する電流を利用するデバイスへの電気的接続を作ることができる。母線を塗布する方法及び高電流を有するモジュールを達成するために平行にサブモジュールを接続させる方法は、米国特許U.S.Patent No.5,593,901明細書(本明細書に参照として組み入れる)に開示されている。
【0015】
光起電モジュール110を形成する方法を図2(a)〜2(g)を参照しながら説明する。しかし、以下の記載はアモルファスシリコン含有薄膜光起電モジュールに関するものであるが、本発明はこれらに限定されず、光起電活性要素として、CdS/CdTe、銅−インジウムセレナイド(CIS)、有機染料及び他の物質を含む薄膜光起電デバイスなどの他の光起電デバイスを製作するためにも用いることができることは理解されるべきである。
【0016】
例えば、インジウム−錫−酸化物、亜鉛酸化物、錫酸カドミウム(cadmium stannate)、又は錫酸化物、好ましくはフッ化錫酸化物の1種以上などの導電性透明酸化物(CTO)は、ガラスなどの基板上に堆積して、フロント接点層132を形成する。又は、ガラス上にすでに堆積している錫酸化物などの導電性酸化物を有するガラスを適切なガラス供給者より得ることができる。CTO層は、好ましくは約10,000Å未満の厚みを有する。CTO層は、滑らかな表面又はテクスチャード表面を有するものでもよい。テクスチャード表面は、最大の電力発生効率が望ましい本発明の光起電デバイスの用途に好ましい。次に、導電性物質、好ましくは銀(Ag)含有物質のビーズもしくはストリップをCTO層132の2つの反対側の外側縁部に堆積させて、母線を形成する。
【0017】
必要に応じて、導電性物質のビーズもしくはストリップの熱硬化に続いて、フロント接点層132をレーザースクライブして、スクライブライン124を形成する。
【0018】
これらのスクライブは、例えば、約10マイクロメーターないし約150マイクロメーターの幅であってもよく、好ましくは約15マイクロメーターないし約80マイクロメーターの幅であり、適切には約0.5cmないし約2.5cm互いに離隔しており、より好ましくは約0.8cmないし約1.2cm互いに離隔している。これらのスクライブの離間は、光起電モジュール上の個々のセルの最大幅を決定するであろう。典型的にはフロント接点内のこれらのレーザースクライブは、基板の一方の縁部近くから反対側の縁部まで、例えば基板の縁部から約0.5cmないし約2.0cm、走る。しかし、スクライブは、基板の縁部あるいは縁部近くまで延びてもよい。スクライブは、典型的には、互いに平行であり、典型的には直線であり、典型的には基板の縁部に平行である。基板が矩形である場合には、これらのスクライブは基板の長いほうの縁部に平行に走ることが好ましい。
【0019】
フロント接点内にこれらのスクライブを形成するために、1種以上のレーザービームが基板に向けられ、フロント接点物質の表面を横断して走査し、こうして所望のパターンでフロント接点物質を取り除く。基板がスクライブを形成するために用いられるレーザー波長にて透過性である物質から作られている限り、スクライブは基板のいずれかの側、すなわち基板上に堆積されたフロント接点を有する側から、もしくはレーザービームを基板に通過させることによって反対側から、なされてもよい。選択されたレーザー、並びに、レーザー光の波長、レーザーのパルス幅、レーザービーム形状及び反復速度は、フロント接点を効果的に取り除くように選択される。本発明の方法においてフロント接点内にスクライブを形成するために用いられるレーザーは、好ましくは、エキシマレーザーであり、例えば、ArF(193nm)、KrF(248nm)、XeCl(308nm)、XeF(351nm)レーザーであり、あるいは固体レーザーであり、例えば、Nd:YAG、Nd:YLFもしくはNd:YVOレーザーである。固体レーザーとしては、2次高調波が好ましく用いられる。フロント接点内にスクライブを形成するために用いられるレーザーは、好ましくは、約190ナノメーター(nm)ないし約1,200nmの波長にて、適切には約1ナノ秒(ns)ないし約500nsのパルス幅、より好ましくは約5nsないし約100nsのパルス幅にて、適切には約100ヘルツ(Hz)ないし約400Hzの繰り返し速度(反復(reprate)又はパルス周波数)、より好ましくは約1kHzないし約200kHzの繰り返し速度にて、適切にはトップハットデルタ関数(top hat,delta function)又はガウス形(Gauusian)であるビーム形状にて、作用する。好ましくは、ガウス形(Gauusian)である。商業的に入手可能な光学部品を用いて、所望のビーム形状又はプロファイルにレーザービームを形作ることもできる。スクライブを形成するために、約0.1m/secないし約50m/secである速度にて、より好ましくは約0.5m/secないし約20m/secである速度にて、フロント接点を走査することが好ましい。1m/sec以上、又は5m/sec以上、又は10m/sec以上の速度もまた用いることができる。スクライブライン124のレーザースクライビングに続いて、図2(c)〜2(g)に示すような光起電モジュールの製造の残りの工程を以下のように行う。
【0020】
図2(a)〜2(g)において、フロント接点層132は示されているが母線は示されていないことに留意すべきである。しかし、母線は、典型的には、上述の態様にて、フロント接点層132上に堆積された後、図2(c)〜2(g)に示した工程が行われる。
【0021】
半導体物質の実質的に連続の薄膜134から構成される光起電領域は、図2(c)に示すように、フロント電極118及び第1の溝124の上全体に作られる。第1の溝124を充填する半導体物質は、隣接するフロント電極118の間に電気的な絶縁を提供する。好ましくは、光起電領域は、慣用的なPIN構造(図示せず)内に水素化されたアモルファスシリコンを含み、適切には約30Å〜約250Åの厚み、好ましくは約150Å未満の厚み、典型的には約100Åの厚みを有するp−層と、約2,000〜4,500Åの厚みのi−層と、約200Å〜約400Åの厚みのn−層とを典型的に含む典型的には約5,000Å以下の厚みである。堆積は、好ましくはシランもしくはシランと水素との混合物中でのグロー放電により、例えば米国特許U.S.Patent No.4,064,521に記載されているように、なされる。あるいは、半導体物質は、CdS/CuInSe、CdS/CdTeもしくは光起電的に活性な物質であってもよい。CdS/CdTeを作る方法は上述した。半導体層は、単独のPIN型層を含み得る。しかし、本発明の光起電デバイスは、追加の半導体層を有していてもよく、例えばタンデムもしくはトリプル接合構造でもよい。本発明の光起電デバイスに有用な適切な半導体層及びその製造方法は、例えば、英国特許出願U.K.Patent Application No.9916531.8(公開No.2339963、2000年2月9日)(参照として本明細書に組み入れる)に記載されている。
【0022】
次いで、半導体層又は膜134は、レーザーでスクライブされて、第2の所定のラインパターンに沿って半導体物質が溶融除去されて、第2の溝126が形成され、半導体膜134を図2(d)に示すように複数の光起電要素120に分割する。フロント電極118は、第2の溝126の底部にて露出している。スクライビングは、フロント電極118の導電性酸化物に影響を与えずに、半導体物質を溶融除去するレベルまで出力密度を典型的には低下させる点を除いて、透明な導電性酸化物層132をスクライブするために用いたレーザーと同じレーザーで行うことができる。半導体膜134のレーザースクライビングは、基板114のいずれの側から行ってもよい。第2の溝126は、好ましくは、第1の溝124に隣接して且つ平行に、約10〜約1,000マイクロメーター幅、好ましくは約30マイクロメーター〜約150マイクロメーター幅、好ましくは約40マイクロメーター〜約80マイクロメーター幅にて、フロント接点内のスクライブから適切には約25マイクロメーター〜約150マイクロメーター離間して、より好ましくは約25マイクロメーター〜約100マイクロメーター離間して、スクライブされる。
【0023】
本発明の方法によって、アモルファスシリコン層又は他の光起電活性層にスクライブを形成するために、1種以上のレーザービームをアモルファスシリコン層に向けて、所望のパターンにてアモルファスシリコン層の表面を横断するように走査して、アモルファスシリコン層を除去するが、このようなスクライブの下方に位置づけられているフロント接点層の導電性酸化物を除去しない。選択されたレーザー、並びに、レーザー光の波長、レーザーのパルス幅、レーザービーム形状及び繰り返し速度は、スクライブを形成するため所望領域でアモルファスシリコン層を効果的に除去するように選択される。例えば、レーザーは、約532nmの波長にて作用するNd:YAGレーザーでもよい。レーザーは、Nd:YLFレーザーもしくはNd:YVOベースのレーザーでもよい。1064nmにおける基本波長及び532nm及び335nmにおける高調波の両者を用いることができる。エキシマレーザー、例えば、ArF(193nm)、KrF(248nm)、XeCl(308nm)及びXeF(351nm)レーザーもまた、半導体層内にスクライブを形成するために用いることができる。用いられるレーザーは、適切には、約1ns〜約500nsのパルス幅、より好ましくは約5ns〜約100nsのパルス幅を有し、約10kHz〜約400kHzの反復速度、より好ましくは約30kHz〜約200kHzの反復速度を有し、適切にはガウス形、トップハットデルタ関数であるビーム形状を有する。好ましくは、インターコネクトスクライブを形成するためにアモルファスシリコン層をスクライブするビーム形状は、ガウス形である。インターコネクトスクライブを形成するために、約0.1m/sec〜約50m/secの速度にて、より好ましくは約0.8m/sec〜約20m/secの速度にて、半導体層を走査することが好ましい。1m/sec以上の速度、又は5m/sec以上の速度、又は10m/sec以上の速度もまた用いることができる。半導体層内のインターコネクトスクライブとして、スクライブは断続的であってもよい。つまり、スクライブは、その長さ全体を横断して連続していなくてもよい。例えば、半導体層が除去されなかったスペースによって分離される円形状もしくは直線形状のホールなどの一連の離間したホールであってもよい。
【0024】
銀、モリブデン、白金、銅、金、スチール、鉄、ニオブ、チタン、クロム、ビスマス、アンチモン、金属合金好ましくはアルミニウムの1種以上などの金属の薄膜136は、図2(e)に示すように、光起電要素120の上及び第2の溝126内全体に作られる。第2の溝126を充填する導電性物質は、膜136及び第2の溝126の底部にて露出したフロント電極118の部分の間に電気的接続を提供する。導電性膜136は、例えば、スパッタリング又は他の周知の技術によって形成される。膜136の厚みは、モジュールの意図された用途に依存する。例として、12ボルト容量の電池を充電するために十分な出力を発生させることを目的とするモジュールについては、金属膜136は典型的にはアルミニウムで作られ、約2,000〜6,000Åの厚みを有し得る。
【0025】
次の工程は、金属膜136をレーザーでスクライブして、ラインのパターンに沿って金属を溶融除去して、金属膜136を複数のバック電極に分割する一連のスクライブを形成することである。本発明の方法によって、バック接点金属層内にスクライブを形成するために、1種以上のレーザービームを金属層に向けて、所望のパターンにて金属層表面を走査して、金属層を除去する。
【0026】
レーザーによりバック接点を直接、溶融又は除去するために、レーザーをバック接点の頂部に向けることもできる。好ましい技術において、特に光起電活性領域が1種以上のアモルファスシリコン含有層を含む場合、レーザービームは透明基板及び透明アモルファスシリコン含有層を通過して向けられ、リア接点を溶融・除去(アブレート)する。したがって、金属膜136の形成後、金属膜136の下層にある光起電領域120は、好ましくは第2の溝126に平行で且つ隣接する第3のラインの所定パターンに沿って半導体物質を溶融するために十分な出力密度であるが、フロント電極118の導電性酸化物又は膜136の金属を溶融するには不十分な出力密度にて運転されるレーザーでスクライブされることが好ましい。特に、レーザーは、第3のラインに沿って位置づけられた金属膜の部分を貫通するように半導体物質を溶融して、構造的に脆弱で破裂する微粒子を生成して、第3のラインに沿って金属膜内に実質的に連続するギャップを形成し、金属膜を複数のバック電極に分離する出力レベルにて運転されることが好ましい。図2(e)に示されるように、レーザービームは符号138で概略的に示され、下層にある半導体物質の溶融による金属膜136のレーザーパターンニングは、基板114を貫通して行われる。運転の好ましい方法において、高いレーザービームエネルギーの短いパルスを用いることによって、レーザーは衝撃波を発生させるために用いられる。これは、バック接点の除去を強化して、短絡化(シャンティング)を減少させる。
【0027】
バック接点の所望の区域を除去するために用いられるレーザーは、好ましくは連続波レーザーであり、より好ましくはパルスレーザーである。レーザーは、エキシマレーザー、例えばArF(193nm)、KrF(248nm)、XeCl(308nm)もしくはXeF(351nm)レーザーなどの紫外線レーザーであってもよく、Nd:YAGレーザー、Nd:YLFレーザー又はNd:YVOレーザーの3次高調波もしくは4次高調波であってもよい。レーザーは、さらに、可視光レーザーでも赤外線レーザーでもよい。最も好ましくは、用いられるレーザーは、可視光レーザーであり、好ましくは緑色レーザー、例えば、周波数が2倍になった(frequency doubled)Nd−YAG、Nd−YLFレーザーもしくはNd:YVOレーザーである。Nd:YVOレーザーなどの高い反復速度、高出力レーザーを用いることが好ましい。好ましくは、用いられるレーザーは、例えば0.1〜約0.2mmのスポットサイズで、約20kHz〜100kHzにて、例えば約1〜20m/secの迅速なスクライブ速度にて、運転する。
【0028】
用いられるレーザーは、適切には約10ns〜約100nsのパルス幅、より好ましくは約10ns〜約30nsのパルス幅を有し、適切には約1kHz〜約200kHzの反復速度、より好ましくは約10kHz〜約30kHzの反復速度を有し、適切にはガウス形、トップハットデルタ関数であるビーム形状を有する。あるスクライブに対して、ガウス形ビーム形状は、レーザーエネルギーをスポットの中心に濃縮する傾向にあるから、不利であるかもしれない。したがって、トップハットレーザープロファイルが好ましいかもしれない。トップハットレーザープロファイルは、一般にレーザースポット内に、より均一なエネルギー分布を提供するからである。本発明の方法におけるバック接点をレーザースクライブするために、このようなトップハットレーザープロファイルが好ましい。バック接点内に所望のスクライブを形成するために、約0.1m/sec〜約50m/secの速度、より好ましくは約0.8m/sec〜約20m/secの速度で、アモルファスシリコン層を走査することが好ましい。1m/sec以上のスクライブ速度、又は5m/sec以上のスクライブ速度、又は10m/sec以上のスクライブ速度もまた用いることができる。
【0029】
バック接点金属内の第3の溝又はスクライブ128は、好ましくは約10マイクロメーター〜約150マイクロメーター幅であり、好ましくは約40マイクロメーター〜約80マイクロメーター幅であり、半導体層内の溝126に平行で且つ適切には約25マイクロメーター〜約100マイクロメーター、好ましくは約40マイクロメーター〜約80マイクロメーターの間隔で半導体物質の不活性部分130によって第2の溝126から好ましくは適切に離隔している。
【0030】
上述のように、第3の溝128内にあった半導体物質の溶融は、微粒子を生じさせる。例えば、アモルファスシリコンの溶融からは微粒子シリコンが生じる。この微粒子は、構造的に脆弱で、溶融した半導体物質の下層にある金属膜136の部分を貫通して破裂して、膜136を複数のバック電極122に分割するギャップ129を形成する。ギャップ129は、好ましくは、図2(f)の平面に直交するラインに沿って示されるように、実質的に連続している。金属膜136内に連続ギャップ129を形成するために必要なレーザーパラメーターは、もちろん、金属膜の厚み及び材質、選択されたレーザーの特性波長、レーザーの出力密度、レーザーのパルス反復速度及びパルス持続時間、スクライビング供給速度などの多数の因子に依存する。バック接点の除去後、特にレーザー方法を用いる除去後、好ましくは超音波浴を用いて光起電セルを洗浄することが好ましい。洗浄プロセスは、汚染粒子及びスクライブパターンの縁部に沿って溶融した物質を除去するので、短絡化(シャンティング)を減少させる。本発明の光起電モジュールを形成するレーザースクライビングに続いて、モジュールをアニールすることが好ましい。モジュールのアニーリングは、例えば短絡化(シャンティング)損失を減少させることにより、モジュールの性能を改良する。例えば、スクライブされたモジュールは、空気中で、約150℃〜約175℃の温度にて、約0.5時間〜約1.0時間にわたり、アニールされてもよい。
【0031】
上述のように、本発明のレーザースクライビング方法は、CdS/CdTeモジュールなどの薄膜光起電モジュールの製造中に、スクライブを形成するために用いられてもよい。CdS/CdTe光起電デバイスを製造する方法は、上述の参照文献に開示されている。好ましい方法において、CdS/CdTeモジュールの製造は、CTO層を含む基板上にCdSの一層を堆積させることによって始める。次に、CdTeの一層を堆積させる。CTO、CdS及びCdTe層を貫通してレーザースクライブする。これらのスクライブは、互いに離隔しており、好ましくは互いに平行である。得られるスクライブは、フォトレジストで充填され、フォトレジストは硬化される。カーボンの一層を塗布して、カーボン、CdS及びCdTeを貫通する第2のレーザースクライブが、CTO、CdS及びCdTe層を貫通するスクライブに平行にかつ離隔して加えられる。金属バック接点層を塗布して、好ましくは第2のスクライブに平行に且つ離隔している第3のレーザースクライブが、金属、カーボン、CdTe及びCdS層を貫通するがCTOを貫通せずに形成される。CdS/CdTeモジュールを形成するための上述のレーザースクライブの1種以上は、本発明の方法を用いて作られてもよい。
【0032】
本発明の方法において、線形レーザービーム形状を用いて、上述のように、薄膜光起電デバイスの種々の層内に、所望のスクライブを形成することもできる。商業的に入手可能な筒状光学部品を用いて、レーザービームを線形ビーム形状に集束してもよい。筒状光学部品は、自動集束ユニット(dynamic focusing unit)などの集束ユニットの一部であってもよいし、自動集束ユニットの前段階に適切に位置づけられる別個のユニットであってもよい。線形ビームとは、基板表面上に当たるレーザービームが長さ及び幅を有するバンド形状であることを意味する。例えば、長さは約0.01mm〜約1mであってもよく、より好ましくは約10cm〜約1mであってもよく、幅は約5ミクロン〜約500ミクロンであってもよく、より好ましくは約20ミクロン〜約100ミクロンであってもよい。このようなビームを用いて、シングルパルス内でビームの長さ及び幅を有する所望のスクライブを形成することができる。線形ビーム形状が望ましい場合には、上述のエキシマレーザーなどのエキシマレーザー、好ましくは248nmで作動するKrFエキシマレーザーが好ましい。なぜなら、このようなエキシマレーザーは、非常に高いピーク出力、短い波長、高いパルスエネルギー、及び短いパルス持続時間を典型的に有するからである。線形形状を用いることは、ビームの長い方向がスクライビング方向と同じである場合に、スクライビングをスピードアップさせることができるので有利である。さらに、線形ビーム形状を用いて、スクライブ幅を狭小化することができるので、最終的なモジュールにおいて、電気エネルギーを発生させるために光起電的により活性な表面を得ることができる。
【0033】
本発明の方法において、スクライブの幅は、好ましくは、おおよそスクライブを形成するために用いられたレーザーの幅である。しかし、スクライブ幅は、スクライブを作るために1回以上の走査を用いた場合には、より大きくすることができる。本発明の方法において、種々の層にスクライブを形成するために基板上に集束され且つ基板上を走査するビームの平均出力は、フロント接点もしくはCTO層をスクライブするために適切には約20W〜約1,000Wであり、半導体及び金属バック接点層をスクライブするために適切には約10W〜約20Wである。しかし、所望のスクライブを完了するために必要なレーザーの出力は、スクライビング速度、選択されたレーザー、基板プレート上の層に集束されたレーザースポットの寸法、及びスクライブされる物質などの複数の因子の関数であることは理解されるであろう。
【0034】
フロント接点、1層又は複数層の半導体層、及びバック接点内に溝を形成するために、光起電モジュールを横断してレーザービームを走査させるために適切な装置を図4に示す。図4において、例えば、ArF(193nm)、KrF(248nm)、XeCl(308nm)、XeF(351nm)などのエキシマレーザー又は例えばNd:YAG、Nd:YLFもしくはNd:YVOレーザーなどの固体レーザーであるレーザー1は、所望の波長及びビーム形状を有するレーザービーム5を生じさせる。
【0035】
レーザービーム5は、ビーム拡大器10に入射して、拡幅されたレーザービーム12を生じさせる。適切なビーム拡大器は、例えば、CVI、Special Optics、OptoSigma、Coherentその他のソースから入手可能である。ビーム拡大器は、レーザービーム発散を低下させ、一般にビームクオリティを改良する。拡幅されたビーム12は、自動集束ユニット15に入射する。非常に大きな基板、例えば約10平方フィートもしくは約15平方フィートよりも大きな面積を有する基板に対して、基板の加工表面とレーザー集束光学部品との間の距離は、プレートのレーザービーム位置の関数として変動する。自動集束光学部品又は他の集束手段を用いて、基板上のビームの位置にかかわらず、走査中に、レーザービームを基板プレート上に集束させる。適切な自動集束ユニットは、例えば、Scanlab又はGeneral Scanningから入手することができる。自動集束ユニットを用いて、レーザービームは加工表面にて集束される。ビームが集束されない場合には、エネルギー密度はより小さい。ビームが適切な寸法のスポットに集束されると、エネルギー密度は除去されるべき物質の溶融閾値を越えるので、レーザースクライビングを効果的に行うことができる。集束されたビーム18は、自動集束ユニット15を出て、スキャナーユニット20に入る。スキャナーユニット20にて、レーザービームは、所望のパターンにて光起電基板30に向けられて、上述のように、フロント接点内、半導体層、バック金属接点内にスクライブを形成する。スキャナーは、適切には、ガルバノメーターで制御されたX−Y座標走査ミラーを利用する。ガルバノメーターは、好ましくはコンピュータボートでありX−Yミラー及び自動集束ユニットを制御するスキャナーコントローラに電気的に接続されていることが好ましい。スキャナーコントロールは、Xミラー及びYミラーを方向付けて、基板30上に所望のパターンにてビームを反射させる。よって、スキャナーを出たレーザービーム25が迅速に基板の表面上全体を走査して所望の溝又はスクライブを形成する間、基板30は動かないままである。直交形状に2個のミラー(X及びY)を有するガルバノメータースキャナーは、本発明の方法によりレーザースクライブを行うために用いることができる単純で、迅速で経済的な装置である。本発明の方法に用いることができるレーザースキャナーは、General Scanning及びScanlabなどのいくつかの企業から入手可能である。好ましくは、本発明の方法を行うための装置において、レーザー、自動集束ユニット及びX−Yスキャナーは、レーザーを切り替える(ゲートコントロール)時、及び所望の集束条件にてビームを向ける場所を決定する共通のコンピュータで制御される。例えば、市販されているHewlett Packard製などの標準的なPentium(登録商標)タイプPCコンピュータ、あるいはMicrosoft Visual Basic又は同等の制御ソフトウェアを用いる同等のコンピュータなどが、本発明の方法によりコンピュータ制御された運転を行うための適切なシステムである。
【0036】
上記に詳述したように、フロント接点又は透明導電性酸化物(TCO)層が好ましくは最初にスクライブされる。スクライブは、好ましくは互いに平行である。アモルファスシリコン層などの光起電活性層は、フロント接点層の後に基板に塗布される。上述したように、別のレーザースクライブのセットは、好ましくはフロント接点層内のスクライブに平行に且つ該スクライブの次に作られる。スクライブは、好ましくは互いに交差しないから、スクライブの第2のセットは好ましくはフロント接点層内のスクライブを基準とする(the second set of scribes is preferably referenced to the scribes in the front contact layer)。本発明の方法にて、フロント接点層内のスクライブのセットを検出して、光起電活性層内のスクライブ(インターコネクトスクライブ)並びにバックもしくはリア接点層のスクライブの第3のセットの配置及び位置を設定するために、いくつかの方法を用いることができる。一方法において、スキャナーを用いて、低出力レーザービーム、例えばレーザーダイオード電流を低下させることによって生じさせたビームを走査する。好ましくは、低出力ビームもまた、非常に高い反復速度を有する。低出力と高反復速度とを用いて、レーザーピーク出力を減少させ、さもなければモジュールの表面を走査する際に走査レーザーによって引き起こされるかもしれないいかなる損傷をも最小化し好ましくは排斥する。好ましくは、レーザーの出力は、約10mW以下であり、好ましくは約1〜約10mWである。好ましくは、反復速度は、少なくとも約100kHzであり、好ましくは約100kHz〜約1,000kHzである。低出力レーザービームは、モジュールの表面を走査するにつれ、フロント接点内のスクライブを通過する際に、このようなスクライブのないモジュール上での位置と比較して、より多くのレーザー出力がスクライブを通過するようになる。フロント接点内のスクライブは、スクライブのないモジュール上の領域と種々比較して、低出力レーザービームを反射し散乱させる。スクライブの縁部にて、レーザービームの反射及び散乱は、他の領域におけるものとは明瞭に異なる。スクライブ位置は、低出力レーザービームの透過差、反射又はスキャッタリングのいずれかを検出することにより、位置づけられる。好ましくは、CCD(電荷結合装置)などのカメラを用いて、全体の面積をモニターして、低出力レーザービームの透過がより大きな場所もしくはレーザービーム光が散乱又は反射する場所を識別する。望遠鏡をカメラに結合させて、プロセスをある距離にてモニターすることができるようにする。光ファイバベースのカメラを用いて、自由なハンドリングを行うことができる。カメラからのデータは、制御コンピュータ又は他のスキャナー制御手段に送られ、スキャナーを方向付けて所望のスクライブを形成するために用いられる。フロント接点内にスクライブを位置づけるこの方法は、赤外(IR)レーザービーム、例えば上述のNd:YAG又は他の固体レーザーの基本波長からのビームをフロント接点層内のスクライブを走査するために低出力ビームとして用いる場合に、アモルファスシリコンベースの光起電デバイスに特に有用である。なぜなら、IRレーザービームは、アモルファスシリコン層を通過して、フロント接点層にて反射するからである。走査されたビームがフロント接点層内のスクライブと出会うときに、ビーム出力のほとんどは層を貫通して透過し、ビームがスクライブされていないフロント接点層の一部上にある場合、ビームのほとんどは反射される。反射したビームと比較して透過したビーム内のこの差は、フロント接点層内のスクライブを位置づけるために用いられ、半導体層内及びバック接点層内のスクライブを位置づけるためにスキャナーを方向付ける指標として用いられ、その後、上述のように半導体層及びバック接点層内にスクライブを形成する。異なる出力レベルにて運転する同じレーザー及び同じスキャナーを用いて、フロント接点層内のスクライブを位置づけて、アモルファスシリコン光起電活性層内及びバック接点層内のスクライブを形成することができる。別の方法において、フロント接点層内のスクライブを位置づけるかもしくは照合するために、第2の別個のスキャナー及び場合によっては第2の別個のレーザーを用いることができる。
【0037】
また別の方法において、CCDカメラなどのカメラシステムを用いて、フロント接点層におけるスクライブ位置を決定することができる。この方法の一実施形態において、中心に穴を有するミラーをレーザービームが自動集束ユニットに入る直前の場所に位置付けることもできる。ミラーは、レーザービームを穴に通過させて、フロント接点層におけるスクライブを含む基板の像をカメラに反射させる。走査されている基板の像は、カメラから制御コンピュータに送られる。自動集束ユニットを有する走査システムは望遠鏡に似た機能を奏するから、フロント接点層におけるスクライブの像は、自動集束光学機器を通してみる場合に現出する。この像及びそこから派生したデータは、半導体層及びバック接点におけるスクライブを位置づけるために用いられる。図5は、図4の装置を示す。ただし、図5は、レーザービーム12が穴を通過することができるような穴を有するミラー40をさらに含む。図5に示すようなカメラ45は、プレート30の像を検出して、データを制御コンピュータに送る。この制御コンピュータは、レーザー及びスキャナーの運転を制御する。こうして、基板30上の層における所望のスクライブを正確な位置に作ることができる。図4及び図5における同じ符号が付された成分は、同じ成分を表す。
【0038】
また別の方法において、CCDカメラなどのカメラは、自動集束ユニットの後方位置に配置されて、基板上のフロント接点層におけるスクライブを直接「見る」ためのX−Yミラー像を見るように位置づけられる。図6は、図4の装置を示す。ただし、図6は、さらに、ミラー40及びカメラ45を含み、カメラ及びミラーはX−Yミラー(図示せず)を見るようにスキャナー内に位置づけられている。この装置で、カメラ45はプレート30の像を検出し、データを制御コンピュータに送る。この制御コンピュータは、レーザー及びスキャナーの運転を制御する。こうして、基板30上の層における所望のスクライブを正確な位置に作ることができる。図4及び図6における同じ符号が付された成分は、同じ成分を表す。別の実施形態において、ミラー40は用いられず、カメラ45はスキャナー内のX−Yミラーを直接、見る。スクライビングのために線形ビームが望ましい場合には、図4〜6における自動集束ユニット15内に線形ビーム光学部品を含むものでもよく、あるいはこのような光学部品を分離して、図4〜6に示すように、ビーム拡大器10及び集束ユニット15の間に適切に位置づけてもよい。
【0039】
本発明の方法において、単一のレーザー及び単一のスキャナーを用いて、本明細書に記載された1種以上の異なるタイプのスクライブを形成することができる。しかし、本発明は限定されるものではない。2種以上のレーザーを用いて、2種以上のスキャナーを用いて、所望のスクライブを形成してもよい。
【0040】
光起電モジュールを作るために本発明の方法において用いられる基板は、任意の寸法及び形状でよい。しかし、本発明の方法は、より大きな寸法の光起電モジュールを作るために、特に建築用途において用いられる大きな寸法の光起電モジュールを作るために、特に望ましい。このような用途において、基板及び結果として得られる光起電モジュールは、ガラスで作られることが好ましく、約10〜15平方フィート乃至約200平方フィートの寸法であり、矩形形状又は四角形のいずれかの形状であることが好ましいが、本発明はこれらに限定されない。本発明のプロセスのひとつの特徴は、処理装置を変えることなく、基板形状及び寸法の範囲または多様性を有する能力である。よって、本発明のプロセスは、例えば特定の建築用途に適切な光起電デバイスを製作するために用いることができる。基板の厚みもまた変動し得るし、一般に光起電デバイスの用途の観点で選択される。例えば、光起電デバイスが基板としてガラスを用いる場合には、ガラスの厚みは0.088インチ〜約0.500インチの厚み範囲であり得て、より好ましくは約0.125インチ〜約0.250インチの範囲である。例えば、ガラスが少なくとも約60平方フィート、又は少なくとも約200平方フィートなどの大きな寸法で用いられる場合には、ガラスは、好ましくは少なくとも約0.125インチの厚みであり、より好ましくは少なくとも約0.187インチの厚みである。ガラス基板が少なくとも約0.187インチの厚みもしくは少なくとも約0.250インチの厚みを有する場合には、好ましくは低鉄ガラス(low iron glass)である。低鉄ガラスとは、好ましくは、鉄を約0.1wt%以下有するガラスを意味し、より好ましくは鉄を約0.1wt%未満有するガラスを意味する。好ましくは、本発明の方法において用いられる基板は、モノリシック、すなわち、一片の基板であり、こうしてモノリシックモジュールを形成する。
【0041】
本明細書にて記載したように、種々の層の堆積及び該層のスクライビングの完了時に、形成された光起電デバイスは、一般に別の基板に対してシールされて、シールされたモジュールを形成する。シーリングは、モジュールの性能を低下させ得る水分及び他の環境要素への暴露から光起電要素を保護する。モジュールをシーリングする方法は、当業者には公知である。しかし、ひとつの方法は、薄膜光起電デバイスを含む基板と第2のガラスシートなどの第2の基板との間にポリエチレンビニルアセテート(EVA)などの重合性カプセル化物質のシートを置き、次いで、基板及び第2のガラスシートを一緒に加熱しプレスして光起電デバイスを基板と第2のガラスシートとの間にシーリングする。Tedlarタイププラスチック、Nuvasilタイププラスチック、Tefzelタイププラスチック、紫外線硬化コーティングなど及びこれらの組み合わせなどのEVA以外の他のカプセル化剤をEVAに代えて又はEVAと一緒に用いることもできる。
【0042】
本明細書において上述したように、本発明の方法は、所望のスクライブを形成するために、レーザービームの下方で基板の移動を必要としない。むしろ、レーザービームが基板の上方で迅速に走査される。しかし、基板を本発明の方法に従って、例えば、モジュールを製作する一連のプロセス工程に沿って基板を起動させるアセンブリライン内にて、移動させてもよい。
【0043】
本発明のモジュールは、さらに、半透明性もしくは部分的に透明な薄膜モジュール、例えば、光を通過させてモジュールを通して像を見ることができるように金属接点の部分が除去された薄膜モジュールであってもよい。このようなモジュールは、発明の名称を「一部透明光起電モジュール(Partially Transparent Photovoltaic Modules)」とする2001年6月26日に出願された米国特許出願U.S.Patent Application No.09/891,752(本明細書に参照として組み込まれる)に開示されている。
【0044】
本発明の数種の実施形態だけを上記に記載した。上述の記載から別の実施形態及び種々の変形例が当業者には明らかであろう。これら及び他の変形例は、本発明の範囲と等価であり、本発明の範囲に含まれる。
【実施例】
【0045】
図5に示した装置を用いて、フッ素でドープされた酸化錫の0.6〜0.8マイクロメーターの層を有する48インチ長さ×26インチ幅の厚み1/8インチのガラス板をスクライブして、約1m/secの速度で酸化錫層上方を走査する平均レーザー出力5Wを繰り返し送る32nm、30kHzでのNd:YVOレーザーを用いて、酸化錫を除去した。スクライブは、ガラス板の長さ方向に平行に且つ約9mmの距離で互いに離間させて、約50マイクロメーターの幅で、セットした。このような走査の結果、ガラス基板の表面全体を横断する幅50マイクロメーターのスクライブによって分離された約9mm幅の酸化錫層の一列のストリップを得た。銀含有フリットペーストのビーズを導電性酸化物の最初と最後のストリップの外側縁部に沿って置くことによって、母線を加えた。ビーズは、基板の一端の中心近傍のポイントまで延在し、モジュールに対する電気的接続を作るための正及び負のターミナルポイントとして機能する。フリットは、モジュールを約550℃にて約5分間加熱することによって硬化される。(母線は、酸化錫層のスクライブ前に加えられる。)化学蒸着技術を用いて、酸化錫層の上に、アモルファスシリコン製の光起電活性p−i−n接合を堆積させ、続いて酸化亜鉛の層を蒸着する。アモルファス層は約2000Åの厚みである。アモルファス層は、導電性酸化錫内に作られたスクライブを充填する。スクライブの第2のセットは、532nm、50kHz反復、約5W平均出力のNd:YVOレーザーからのレーザービームを走査することによって、アモルファスシリコン及び酸化亜鉛層内に作られる。スクライビング速度は、約5m/secであり、スクライブ幅は100マイクロメーターである。アモルファスシリコン及び酸化亜鉛層内のスクライブは、酸化錫層内のスクライブと平行で酸化錫層内のスクライブから約150マイクロメーター離間している。酸化亜鉛層上方をマグネトロンスパッタリングして、アモルファスシリコン層内のスクライブをアルミニウムで充填することによって、約4000Åのアルミニウム層が堆積される。スクライブのダイ3のセットは、アルミニウム層内のスクライブが形成されるべきアルミニウム層の下方のアモルファスシリコン層に、532nm、50kHz反復、約4W平均出力のNd:YVOレーザーからのレーザービームを走査することによって、アルミニウム層内に作られる。スクライビング速度は、約4m/secであり、スクライブ幅は150マイクロメーターである。第3のスクライブは、第2のスクライブと平行で第2のスクライブから約150マイクロメーター離間している。酸化錫層を貫通する第1のスクライブに対する第2及び第3のスクライブの配置は、低出力(約5mW)で運転されるNd:YVOレーザーで基板を走査することによって、且つ酸化錫層内のスクライブを横断する際の低出力レーザーの反射、散乱又は透過の差を検出することにより第1のスクライブの配置を記録するためのカメラを用いて、決定される。コンピュータは、カメラによって第1のスクライブの配置が決定されたならば、150マイクロメーターの距離だけ、第2及び第3のスクライブのために、ビームを自動的にオフセットする。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、本発明により製作することができる典型的な薄膜光起電モジュールの概略斜視図である。
【図2a】図2(a)は、本発明により製作することができる薄膜光起電モジュールの別のタイプを製作するための方法における工程を示す概略断面図である。
【図2b】図2(b)は、本発明により製作することができる薄膜光起電モジュールの別のタイプを製作するための方法における工程を示す概略断面図である。
【図2c】図2(c)は、本発明により製作することができる薄膜光起電モジュールの別のタイプを製作するための方法における工程を示す概略断面図である。
【図2d】図2(d)は、本発明により製作することができる薄膜光起電モジュールの別のタイプを製作するための方法における工程を示す概略断面図である。
【図2e】図2(e)は、本発明により製作することができる薄膜光起電モジュールの別のタイプを製作するための方法における工程を示す概略断面図である。
【図2f】図2(f)は、本発明により製作することができる薄膜光起電モジュールの別のタイプを製作するための方法における工程を示す概略断面図である。
【図2g】図2(g)は、本発明により製作することができる薄膜光起電モジュールの別のタイプを製作するための方法における工程を示す概略断面図である。
【図3】図3は、図2(g)のモジュールの概略斜視図である。
【図4】図4は、本発明の方法に有用なレーザー走査装置の概略図である。
【図5】図5は、本発明の方法に有用なレーザー走査装置の概略図である。
【図6】図6は、本発明の方法に有用なレーザー走査装置の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又はそれ以上のレーザースクライブを形成するための装置であって、
レーザーと、当該レーザーによって発生したレーザービームを拡幅するビーム拡大器と、当該ビーム拡大器を通過した後にレーザービームを集束する手段と、当該レーザービームを走査するスキャナーと、を含む装置。
【請求項2】
前記スキャナーは、X−Yミラーを含む請求項1に記載の装置。
【請求項3】
線形レーザービーム形状を形成するための筒状光学部品をさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記レーザービームを集束する手段は、自動集束ユニットである、請求項1記載の装置。
【請求項5】
カメラを更に含む,請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記カメラは、電荷結合素子(CCD)カメラである、請求項5記載の装置。
【請求項7】
穴を有するミラーを更に含み、当該ミラーは前記ビーム拡大器と前記自動集束ユニットとの間に位置づけられている、請求項5記載の装置。
【請求項8】
前記スキャナー内にX−Yミラーを見るように位置づけられているカメラとミラーを更に含む,請求項2記載の装置。
【請求項9】
線形ビーム形状を有するレーザービームでスクライブを形成することを含む、薄膜光起電装置の層内にスクライブを形成する方法。
【請求項10】
前記線形ビーム形状の長さは約0.01mm〜約1mである、請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図2g】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−72831(P2009−72831A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330608(P2008−330608)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【分割の表示】特願2003−561002(P2003−561002)の分割
【原出願日】平成14年1月7日(2002.1.7)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】