説明

レーザー加工表示装置及びこれを用いたロボットの教示方法

【課題】レーザー加工の教示作業を迅速に行うことができるレーザー加工表示装置及びこれに用いたロボットの教示方法を提供すること。
【解決手段】レーザー加工表示装置1は、ロボット7のエンドエフェクタ72に装着して加工用レーザー光Aを照射するレーザー加工手段2と、被加工対象8に測長用レーザー光Bを照射して、測長用レーザー光Bの出射位置311から被加工対象8までの距離を計測する測長手段31と、加工用レーザー光Aの出射位置231から被加工対象8における各部までの距離を算出し、被加工対象8の表面断面形状を特定する算出手段と、表面断面形状82を表示すると共に、表面断面形状における各部が加工用レーザー光Aの焦点距離の調整可能範囲T内に入るか否かを表示する表示手段を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットのエンドエフェクタに装着し、レーザー光によって加工を行う位置の決定を支援するレーザー加工表示装置及びこれを用いたロボットの教示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場の生産ライン等においてはロボットが多用されている。例えば、レーザー光によって溶接、切断等の加工を行う工程においては、レーザー照射装置をロボットのエンドエフェクタに装着し、レーザー照射装置における反射ミラーによって焦点距離及び照射方向を調整して、被加工対象における加工設定位置にレーザー光を照射するリモートレーザー加工方法が知られている。
このリモートレーザー加工方法においては、加工用レーザー光と同軸状に出射した十字の可視光を被加工対象に照射(投影)し、この十字の可視光の交点と、ポインターレーザーから出射した直進可視光とが一致したときに、加工用レーザー光の焦点が被加工対象における加工設定位置に合ったことを示すようにしたものがある。
【0003】
また、例えば、特許文献1のリモート溶接教示装置においては、レーザ溶接装置に対し、このレーザ溶接装置から射出されるレーザの照射可能範囲を示す可視光を投影する投影手段を設けることが開示されている。これにより、溶接位置から離れたところからレーザを照射するリモート溶接において、ロボットの動作教示作業を容易にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−346740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記リモートレーザー加工方法においては、教示者(ティーチングをする者)は、加工用レーザー光による照射加工可能範囲がどれだけあるかを知ることができない。そのため、教示者は、トライ&エラーを繰り返して、被加工対象における加工設定位置に、十字の可視光の交点と直進可視光とを一致させなければならない。
特許文献1のリモート溶接教示装置においては、教示者は、可視光によってレーザの照射方向の調整可能範囲を知ることはできるが、レーザの焦点距離の調整可能範囲を知ることはできない。
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、ロボット及びレーザー加工表示装置を用いたレーザー加工の教示作業を迅速に行うことができるレーザー加工表示装置及びこれに用いたロボットの教示方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、ロボットのエンドエフェクタに装着し、焦点距離及び照射方向を調整して被加工対象における加工設定位置に加工用レーザー光を照射するよう構成したレーザー加工手段と、
該レーザー加工手段又は上記エンドエフェクタに取り付け、上記被加工対象に測長用レーザー光を照射して、該測長用レーザー光の出射位置から上記被加工対象までの距離を計測する測長手段と、
該測長手段によって計測した距離データに基づいて、上記加工用レーザー光の出射位置から上記被加工対象における各部までの距離を算出し、該被加工対象の表面形状を特定する算出手段と、
該算出手段によって特定した上記被加工対象の表面形状を表示すると共に、該表面形状における各部が上記加工用レーザー光の焦点距離の調整可能範囲内に入るか否かを表示する表示手段とを備えていることを特徴とするレーザー加工表示装置にある(請求項1)。
【0008】
第2の発明は、ロボットのエンドエフェクタに装着し、焦点距離及び照射方向を調整して被加工対象における加工設定位置に加工用レーザー光を照射するよう構成したレーザー加工手段と、
該レーザー加工手段又は上記エンドエフェクタに取り付け、上記加工用レーザー光の照射方向範囲と一致又は近似する照射方向範囲に、出射位置から離れるほど円形又は楕円形の照射範囲が拡大する拡大可視光を照射する第1可視光照射手段と、
上記レーザー加工手段又は上記エンドエフェクタに取り付け、上記加工用レーザー光の焦点距離の調整可能範囲の最短位置と最長位置とに一致又は近似する位置において、上記拡大可視光に対して交わる直進可視光を照射する第2可視光照射手段とを備えており、
上記加工設定位置を含めて上記被加工対象に照射された上記拡大可視光の内側に上記直進可視光が入るときには、上記加工用レーザー光の焦点距離の調整可能範囲内に当該加工設定位置があることを認識し、上記加工設定位置を含めて上記被加工対象に照射された上記拡大可視光の外側に上記直進可視光が外れるときには、上記加工用レーザー光の焦点距離の調整可能範囲外に当該加工設定位置があることを認識できるよう構成してあることを特徴とするレーザー加工表示装置にある(請求項3)。
【0009】
第3の発明は、上記レーザー加工表示装置を用いて、上記ロボットのエンドエフェクタの移動経路を教示する方法であって、
上記表示手段によって表示された上記被加工対象の表面形状を視認しながら、上記被加工対象における加工設定位置が上記焦点距離の調整可能範囲内に入る位置・姿勢になるよう上記エンドエフェクタを移動させ、
上記加工用レーザー光の焦点距離及び照射方向を調整し、上記加工設定位置に上記加工用レーザー光の焦点を合わせて、上記ロボットの教示作業を行うことを特徴とするレーザー加工表示装置を用いたロボットの教示方法にある(請求項4)。
【0010】
第4の発明は、上記レーザー加工表示装置を用いて、上記ロボットのエンドエフェクタの移動経路を教示する方法であって、
上記被加工対象における加工設定位置が上記拡大可視光の内側に入ると共に該拡大可視光の内側に上記直進可視光が入る位置・姿勢になるよう上記エンドエフェクタを移動させ、
上記加工用レーザー光の焦点距離及び照射方向を調整し、上記加工設定位置に上記加工用レーザー光の焦点を合わせて、上記ロボットの教示作業を行うことを特徴とするレーザー加工表示装置を用いたロボットの教示方法にある(請求項5)。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明のレーザー加工表示装置は、ロボットの教示者(ティーチングする者)が、レーザー加工の教示作業を行う際に、被加工対象における加工設定位置が、加工用レーザー光の焦点距離の調整可能範囲内に入るかを認識することができるものである。
具体的には、レーザー加工表示装置は、測長手段及び算出手段によって、加工用レーザー光の出射位置から被加工対象における各部までの距離を算出し、被加工対象の表面形状を特定する。そして、レーザー加工表示装置は、表示手段によって被加工対象の表面形状を表示すると共に、表面形状における各部が加工用レーザー光の焦点距離の調整可能範囲内に入るか否かを表示する。
【0012】
これにより、教示者は、表示手段によって表示された画面上において、被加工対象の表面形状を視認して、被加工対象における加工設定位置が焦点距離の調整可能範囲内に入るか否かを認識し、エンドエフェクタ及びレーザー加工手段の教示を行うことができる。
それ故、第1の発明のレーザー加工表示装置によれば、教示者は、ロボット及びレーザー加工表示装置を用いたレーザー加工の教示作業を迅速に行うことができる。
【0013】
第2の発明のレーザー加工表示装置も、ロボットの教示者が、レーザー加工の教示作業を行う際に、被加工対象における加工設定位置が、加工用レーザー光の焦点距離の調整可能範囲内に入るかを認識することができるものである。
具体的には、レーザー加工表示装置は、第1可視光照射手段による拡大可視光と、第2可視光照射手段による直進可視光とを利用して、加工設定位置が、加工用レーザー光の焦点距離の調整可能範囲内にあるか否かを容易に認識することができるよう構成してある。
【0014】
拡大可視光は、加工用レーザー光の照射方向範囲と一致又は近似する照射方向範囲に照射しており、直進可視光は、加工用レーザー光の焦点距離の調整可能範囲の最短位置と最長位置とに一致又は近似する位置において拡大可視光に対して交わっている。これにより、教示者は、拡大可視光及び直進可視光を被加工対象に照射(投影)したときに、拡大可視光の内側に直進可視光が入っているか否かを視認するだけで、簡単に被加工対象における加工設定位置が焦点距離の調整可能範囲内に入るか否かを認識し、レーザー加工の教示を行うことができる。
それ故、第2の発明のレーザー加工表示装置によっても、教示者は、ロボット及びレーザー加工表示装置を用いたレーザー加工の教示作業を迅速に行うことができる。
【0015】
第3の発明のロボットの教示方法においては、レーザー加工の位置・姿勢の教示(ティーチング)の仕方に工夫をして、この教示作業の短縮化を図っている。
具体的には、教示者は、表示手段によって表示された被加工対象の表面形状を視認しながらロボットのエンドエフェクタを移動させる。そして、エンドエフェクタの位置・姿勢を、被加工対象における加工設定位置が焦点距離の調整可能範囲内に入る位置・姿勢にする。次いで、この状態において、教示者は、加工用レーザー光の焦点距離及び照射方向を調整する。そして、加工設定位置に加工用レーザー光の焦点を合わせて、ロボットによるレーザー加工の教示作業を行う。
これにより、第3の発明においては、教示者は、ロボット及びレーザー加工表示装置を用いたレーザー加工の教示作業を迅速に行うことができる。
【0016】
第4の発明のロボットの教示方法においても、レーザー加工の位置・姿勢の教示(ティーチング)の仕方に工夫をして、この教示作業の短縮化を図っている。
具体的には、教示者は、被加工対象に照射される拡大可視光及び直進可視光を視認しながら、ロボットのエンドエフェクタを移動させる。そして、エンドエフェクタの位置・姿勢を、被加工対象における加工設定位置が拡大可視光の内側に入ると共に拡大可視光の内側に直進可視光が入る位置・姿勢にする。
次いで、この状態において、教示者は、加工用レーザー光の焦点距離及び照射方向を調整する。そして、加工設定位置に加工用レーザー光の焦点を合わせて、ロボットによるレーザー加工の教示作業を行う。
これにより、第4の発明においても、教示者は、ロボット及びレーザー加工表示装置を用いたレーザー加工の教示作業を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1における、レーザー加工表示装置の装置構成を示す説明図。
【図2】実施例1における、レーザー加工表示装置のレーザー加工手段及び測長手段の周辺を示す説明図。
【図3】実施例1における、レーザー加工表示装置の表示手段によって表示する画像を示す説明図。
【図4】実施例2における、レーザー加工表示装置の装置構成を示す説明図。
【図5】実施例2における、レーザー加工表示装置のレーザー加工手段、第1可視光照射手段及び第2可視光照射手段の周辺を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上述した第1〜第4の発明における好ましい実施の形態につき説明する。
第1、第3の発明において、上記測長手段は、その上記測長用レーザー光を、上記レーザー加工手段による上記加工用レーザー光の出射位置と同心状に出射させることができる。この場合には、算出手段による加工用レーザー光の出射位置から被加工対象における各部までの距離の算出を容易にすることができる。一方、測長手段は、その測長用レーザー光を、レーザー加工手段による加工用レーザー光の出射位置の周辺から出射させることができる。この場合には、測長手段の構造を簡単にすることができ、その配設を容易にすることができる。
【0019】
第2、第4の発明において、上記第1可視光照射手段は、その上記拡大可視光を、上記レーザー加工手段による上記加工用レーザー光の出射位置と同心状に出射させることができる。この場合には、加工用レーザー光の照射方向範囲とほぼ一致する照射方向範囲に、出射位置から離れるほど円形又は楕円形の照射範囲が拡大する拡大可視光を照射することができる。一方、第1可視光照射手段は、その拡大可視光を、レーザー加工手段による加工用レーザー光の出射位置の周辺から出射させることもできる。この場合には、加工用レーザー光の照射方向範囲と近似した照射方向範囲に、出射位置から離れるほど円形又は楕円形の照射範囲が拡大する拡大可視光を照射することができる。
【0020】
また、第2、第4の発明において、上記第2可視光照射手段は、上記直進可視光の照射方向を調整可能に構成することができる。そして、上記加工用レーザー光の焦点距離の調整可能範囲は、直線可視光の照射方向の調整によって適宜設定することができる。また、焦点距離の調整可能範囲は、上記レーザー加工手段によるレーザー加工可能な範囲又はこれに若干の余裕度を見た範囲とすることもできる。
【0021】
第1の発明において、上記表示手段は、上記加工用レーザー光によってレーザー加工が可能な照射加工可能範囲も表示するよう構成してあることが好ましい(請求項2)。
この場合には、教示者は、表示手段によって表示する画面において、表面形状の表示と照射加工可能範囲(照射方向の調整可能範囲及び焦点距離の調整可能範囲)の表示とを照合して視認することができ、被加工対象における加工設定位置が照射加工可能範囲内に入るか否かを認識することができる。そのため、ロボットによるレーザー加工の教示作業を一層容易に行うことができる。
【実施例】
【0022】
以下に、本発明のレーザー加工表示装置及びこれを用いたロボットの教示方法に係る実施例につき、図面を参照して説明する。
(実施例1)
本例のレーザー加工表示装置1は、図2に示すごとく、ロボット7の教示者(ティーチングする者)が、レーザー加工の教示作業を行う際に、被加工対象8に対してレーザー加工を行う加工設定位置81が、加工用レーザー光Aの焦点距離の調整可能範囲T内に入るかを認識することができるものである。
【0023】
レーザー加工表示装置1は、図1に示すごとく、次のレーザー加工手段2、測長手段31、算出手段4、表示手段32を備えており、レーザー加工の教示作業を簡単かつ迅速に行えるようにしたものである。
図2に示すごとく、レーザー加工手段2は、ロボット7のエンドエフェクタ72に装着し、焦点距離及び照射方向を調整して被加工対象8に対してレーザー加工を行う加工設定位置81に加工用レーザー光Aを照射するよう構成してある。測長手段31は、レーザー加工手段2に取り付けてあり、被加工対象8に測長用レーザー光Bを照射して、測長用レーザー光Bの出射位置311から被加工対象8までの距離を計測するよう構成してある。
【0024】
図1に示すごとく、算出手段4は、測長手段31によって計測した距離データに基づいて、加工用レーザー光Aの出射位置231から被加工対象8における各部までの距離を算出し、被加工対象8の表面断面形状82を特定するよう構成してある。図3に示すごとく、表示手段32は、算出手段4によって特定した被加工対象8の表面断面形状82を表示すると共に、表面断面形状82における各部が加工用レーザー光Aの焦点距離の調整可能範囲T内に入るか否かを表示するよう構成してある。
そして、レーザー加工表示装置1は、ロボット7の教示を行う教示者が、表示手段32によって被加工対象8の表面断面形状82を視認し、レーザー加工を行う加工設定位置81が焦点距離の調整可能範囲T内に入るか否かを認識できるよう構成してある。
【0025】
以下に、本例のレーザー加工表示装置1及びこれを用いたロボット7の教示方法につき、図1〜図3を参照して詳説する。
ここで、図1は、レーザー加工表示装置1の装置構成を示す。図2は、測長手段31によって、測長用レーザー光Bの出射位置311から被加工対象8までの距離を計測する状態を示す。図3は、表示手段32によって、被加工対象8の表面断面形状82と、加工用レーザー光Aの照射加工可能範囲Rとを表示する状態を示す。
【0026】
図1に示すごとく、本例のレーザー加工表示装置1は、6つの回転軸71を備えた多関節ロボット7のエンドエフェクタ72に配設してある。多関節ロボット7における各回転軸はサーボモータによって構成されており、各サーボモータは、制御コントローラ6によって制御される。
また、エンドエフェクタ72の位置・姿勢、移動軌道、移動速度、各回転軸の角度等は、ティーチングユニット61によって調整、教示が可能である。
【0027】
図2に示すごとく、本例のレーザー加工手段2は、ロボット7のエンドエフェクタ72に取り付けたレーザー照射本体部20と、このレーザー照射本体部20に供給するレーザーエネルギーを発生させるレーザーエネルギー発生装置200とを備えている。レーザー照射本体部20は、加工用レーザー光Aを出射するレーザー光源21と、レーザー光源21から出射された加工用レーザー光Aの焦点距離を可変させる焦点レンズ22と、焦点レンズ22を通過した加工用レーザー光Aの照射方向を可変させる反射ミラー23とを有している。また、レーザーエネルギー発生装置200は、発振機、チラー等から構成されている。また、レーザー光源21は、ファイバーケーブル等によってレーザーエネルギー発生装置200に配線されている。
【0028】
本例において、レーザー加工手段2による焦点距離とは、反射ミラー23の中心から被加工対象8までの加工用レーザー光Aの照射距離のことをいう。また、レーザー加工手段2による照射方向とは、反射ミラー23の中心から被加工対象8に対して向けられる加工用レーザー光Aの照射方向のことをいう。
【0029】
焦点レンズ22及び反射ミラー23は、それぞれサーボモータ等の駆動源によって移動動作が可能であり、これらの駆動源は、多関節ロボット7の制御コントローラ6によって制御される。また、焦点レンズ22及び反射ミラー23を構成する駆動源の移動動作は、ティーチングユニット61によって調整、教示が可能である。
【0030】
同図に示すごとく、本例の測長手段31は、測長用レーザー光Bを出射し、この測長用レーザー光Bが障害物(被加工対象8)に衝突して戻って来るまでの時間を測ることによって、測長用レーザー光Bの出射位置311から障害物までの距離を計測するものである。本例の測長手段31は、被加工対象8の表面に対して直線状(ライン状)に測長用レーザー光Bを走査し、被加工対象8の表面断面形状82を検出するよう構成してある。また、測長手段31は、直線状の測長用レーザー光Bの走査を複数行い、所定の平面範囲に測長用レーザー光Bを出射して、所定の平面の形状を検出することもできる。
測長用レーザー光Bを走査するラインLは、レーザー加工手段2における一定方向とすることができる。また、この測長用レーザー光Bを走査するラインLは、レーザー加工手段2における複数の方向に可変させることもできる。
【0031】
算出手段4は、専用のコンピュータによって構成してある。
図2に示すごとく、表示手段32は、液晶画像装置等のモニターによって構成してある。本例の表示手段32は、測長手段31によって計測し算出手段4によって算出した被加工対象8の表面断面形状82と、レーザー加工手段2の照射加工可能範囲R(すなわちレーザー加工手段2による加工用レーザー光Aの照射方向の調整可能範囲S及び加工用レーザー光Aの焦点距離の調整可能範囲T)とを照合して表示する。
照射加工可能範囲Rは、加工用レーザー光Aの出射位置231から離れるほど円形又は楕円形の照射範囲が拡大する範囲であって、所定の焦点距離の調整が可能な範囲内に設定されている。照射加工可能範囲Rは、加工用レーザー光Aが到達可能な円錐状のエリアに対して、出射位置231から最も距離が短いレーザー照射加工可能な最短位置Z1と、出射位置231から最も距離が長いレーザー照射加工可能な最長位置Z2との間に形成される。この照射加工可能範囲Rは、レーザー加工手段2の性能として、算出手段4に記憶されている。
【0032】
図3に示すごとく、本例の表示手段32は、モニターの表示画面において、被加工対象8の表面断面形状82と照射加工可能範囲Rを表示する際に、加工用レーザー光Aの現在の焦点位置A1から各照射加工可能範囲端までの距離を表示するよう構成してある。すなわち、表示手段32は、加工用レーザー光Aの現在の焦点位置A1から焦点距離の調整可能範囲Tの最短位置Z1までの距離h1、加工用レーザー光Aの現在の焦点位置A1から焦点距離の調整可能範囲Tの最長位置Z2までの距離h2、加工用レーザー光Aの現在の焦点位置A1から照射方向の調整可能範囲Sの右端位置X1までの距離w1、加工用レーザー光Aの現在の焦点位置A1から照射方向の調整可能範囲Sの左端位置X2までの距離w2、加工用レーザー光Aの現在の焦点位置A1から照射方向の調整可能範囲Sの前側位置Y1までの距離d1、加工用レーザー光Aの現在の焦点位置A1から照射方向の調整可能範囲Sの後側位置Y2までの距離d2を表示するよう構成してある。
【0033】
次に、本例のレーザー加工表示装置1を用いたロボット7の教示方法及び作用効果について説明する。
本例の教示方法においては、レーザー加工の位置・姿勢の教示(ティーチング)の仕方に工夫をして、この教示作業の短縮化を図っている。具体的には、次のエンドエフェクタ72の移動とレーザー加工手段2の焦点合わせとを行って、ロボット7の教示作業(エンドエフェクタ72の位置・姿勢、レーザー加工手段2の教示作業)を行う。
【0034】
ロボット7の教示者は、まず、エンドエフェクタ移動作業として、表示手段32によって表示された被加工対象8の表面断面形状82を視認しながら、ティーチングユニット61を用いてロボット7のエンドエフェクタ72を移動させる。そして、エンドエフェクタ72の位置・姿勢を、被加工対象8における加工設定位置81がレーザー加工手段2による加工用レーザー光Aの照射加工可能範囲R内に入る位置・姿勢にする。
【0035】
このとき、測長手段31が被加工対象8に測長用レーザー光Bを照射して、測長用レーザー光Bの出射位置311から被加工対象8までの距離を計測する。また、算出手段4は、測長手段31によって計測した距離データに基づいて、加工用レーザー光Aの出射位置231から被加工対象8における各部までの距離を算出し、被加工対象8の表面断面形状82を特定する。そして、表示手段32は、算出手段4によって特定した被加工対象8の表面断面形状82と、加工用レーザー光Aの照射加工可能範囲Rとを表示する。
【0036】
次いで、教示者は、エンドエフェクタ72の位置・姿勢を維持して、焦点レンズ22及び反射ミラー23を駆動して加工用レーザー光Aの焦点距離及び照射方向を調整する。そして、加工設定位置81に加工用レーザー光Aの焦点を合わせて、ロボット7によるレーザー加工の教示作業を行う。
なお、必ずしも加工設定位置81が測長手段31及び算出手段4によって求めた表面断面形状82上に位置するとは限らない。これに対し、教示者は、被加工対象8の形状を直接視認すると共に表示手段32によって表示された画面を視認することによって、表面断面形状82の周辺の加工設定位置81が照射加工可能範囲R内に入るか否かを認識することができる。
【0037】
教示者は、表示手段32によって表示された画面上において、被加工対象8の表面断面形状82を視認して、被加工対象8における加工設定位置81が照射加工可能範囲R内に入るか否かを認識し、エンドエフェクタ72及びレーザー加工手段2の教示を行うことができる。
また、複数の加工設定位置81が表面断面形状82上に位置する場合には、エンドエフェクタ72の位置・姿勢を維持して、この複数の加工設定位置81に対して加工用レーザー光Aの焦点を合わせて、ロボット7によるレーザー加工の教示作業を行うことができる。
なお、レーザー加工によっては、被加工対象8としての金属部材の溶接、切断等を行うことができる。
【0038】
それ故、本例のレーザー加工表示装置1及びこれを用いたロボット7の教示方法によれば、教示者は、ロボット7及びレーザー加工表示装置1を用いたレーザー加工の教示作業を迅速に行うことができる。
【0039】
(実施例2)
本例のレーザー加工表示装置1は、図4に示すごとく、第1可視光照射手段51による拡大可視光Cと、第2可視光照射手段52による直進可視光Dとを利用して、レーザー加工を行う加工設定位置81が、加工用レーザー光Aの焦点距離の調整可能範囲T内にあるか否かを容易に認識することができるよう構成してある。
レーザー加工表示装置1は、次のレーザー加工手段2、第1可視光照射手段51及び第2可視光照射手段52を備えており、レーザー加工の教示作業を簡単かつ迅速に行えるようにしたものである。
【0040】
レーザー加工手段2の構成は上記実施例1に示したものと同様である。
図5に示すごとく、本例の第1可視光照射手段51は、レーザー加工手段2に取り付けた可視光発生源によって、加工用レーザー光Aの照射方向の調整可能範囲Sと一致又は近似する照射方向範囲S’に、出射位置511から離れるほど円形又は楕円形の照射範囲が拡大する拡大可視光Cを照射するよう構成してある。本例の第2可視光照射手段52は、レーザー加工手段2に取り付けた可視光発生源によって、加工用レーザー光Aの焦点距離の調整可能範囲Tの最短位置Z1と最長位置Z2とに一致又は近似する位置において、拡大可視光Cに対して交わる直進可視光Dを照射するよう構成してある。
【0041】
レーザー加工表示装置1は、ロボット7の教示を行う教示者が拡大可視光C及び直進可視光Dを直接視認し、加工設定位置81を含めて被加工対象8に照射された拡大可視光Cの内側に直進可視光Dが入るとき(図5中、D1で示す。)には、加工用レーザー光Aの
焦点距離の調整可能範囲T内に当該加工設定位置81があることを認識し、加工設定位置81を含めて被加工対象8に照射された拡大可視光Cの外側に直進可視光Dが外れるときには、加工用レーザー光Aの焦点距離の調整可能範囲T外に当該加工設定位置81があることを認識できるよう構成してある。
【0042】
また、本例のレーザー加工表示装置1は、加工設定位置81が拡大可視光Cの内側に入る状態で、拡大可視光Cの内側に直進可視光Dが入るようにして、エンドエフェクタ72の教示位置及びレーザー加工手段2の教示位置を決定できるよう構成してある。
第1可視光照射手段51は、可視光発生源511によって円形又は楕円形の照射範囲の全体に拡大可視光Cが照射されるよう構成することができる。一方、第1可視光照射手段51は、可視光発生源511によって円形又は楕円形の照射範囲の外縁に拡大可視光Cが照射されるよう構成することもできる。第2可視光照射手段52は、直進可視光Dの照射方向を調整可能に構成してある。そして、本例の焦点距離の調整可能範囲Tは、レーザー加工手段2によるレーザー加工可能な許容範囲に設定してある。
【0043】
次に、本例のレーザー加工表示装置1を用いたロボット7の教示方法及び作用効果について説明する。
本例のロボット7の教示者は、被加工対象8に照射される拡大可視光C及び直進可視光Dを直接視認しながら、ティーチングユニット61を用いてロボット7のエンドエフェクタ72を移動させる。このとき、第1可視光照射手段51によって拡大可視光Cが照射され、第2可視光照射手段52によって直進可視光Dが照射される。そして、エンドエフェクタ72の位置・姿勢を、被加工対象8における加工設定位置81が拡大可視光Cの内側に入ると共に拡大可視光Cの内側に直進可視光Dが入る位置・姿勢にする。
【0044】
次いで、この状態において、教示者は、ティーチングユニット61を用いて焦点レンズ22及び反射ミラー23を駆動させて、加工用レーザー光Aの焦点距離及び照射方向を調整する。そして、加工設定位置81に加工用レーザー光Aの焦点を合わせて、ロボット7によるレーザー加工の教示作業を行う。これにより、教示者は、ロボット7及びレーザー加工表示装置1を用いたレーザー加工の教示作業を迅速に行うことができる。
【0045】
本例のレーザー加工表示装置1においては、教示者は、加工設定位置81が、照射方向の調整可能範囲S内にあるかも推定して認識することができる。
具体的には、本例の第1可視光照射手段51は、その拡大可視光Cを、レーザー加工手段2による加工用レーザー光Aの出射位置511の周辺から出射させている。そして、加工用レーザー光Aの照射可能方向S(図2参照)と拡大可視光Cの照射方向範囲S’とは若干ずれている。そのため、加工設定位置81が照射可能方向Sの近傍に位置するときには、実際には、加工設定位置81が照射可能方向S内にあっても照射方向範囲S’の外にあると認識されることもあり得る。この場合は、教示者の経験に基づき判断することができる。
一方、第1可視光照射手段51は、その拡大可視光Cを、レーザー加工手段2による加工用レーザー光Aの出射位置231と同心状に出射させることができる。この場合には、加工用レーザー光Aの照射可能方向Sと拡大可視光Cの照射方向範囲S’とを一致させることができる。
【0046】
本例において、拡大可視光Cは、加工用レーザー光Aの照射方向の調整可能範囲Sと近似した照射方向範囲S’に照射しており、直進可視光Dは、加工用レーザー光Aの焦点距離の調整可能範囲Tの最短位置Z1と最長位置Z2とに一致する位置において拡大可視光Cに対して交わっている。これにより、教示者は、拡大可視光C及び直進可視光Dを被加工対象8に照射(投影)したときに、拡大可視光Cの内側に直進可視光Dが入っているか否かを直接視認するだけで、簡単に被加工対象8における加工設定位置81が焦点距離の調整可能範囲T内に入るか否かを認識し、レーザー加工の教示を行うことができる。
【0047】
それ故、本例のレーザー加工表示装置1及びこれを用いたロボット7の教示方法によっても、教示者は、ロボット7及びレーザー加工表示装置1を用いたレーザー加工の教示作業を迅速に行うことができる。
本例においても、レーザー加工表示装置1のその他の構成は上記実施例1と同様であり、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 レーザー加工表示装置
2 レーザー加工手段
31 測長手段
32 表示手段
4 算出手段
51 第1可視光照射手段
52 第2可視光照射手段
6 制御コントローラ
61 ティーチングユニット
7 ロボット
72 エンドエフェクタ
8 被加工対象
81 加工設定位置
82 表面断面形状
A 加工用レーザー光
B 測長用レーザー光
C 拡大可視光
D 直進可視光
R 照射加工可能範囲
S 照射方向の調整可能範囲
T 焦点距離の調整可能範囲
Z1 最短位置
Z2 最長位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットのエンドエフェクタに装着し、焦点距離及び照射方向を調整して被加工対象における加工設定位置に加工用レーザー光を照射するよう構成したレーザー加工手段と、
該レーザー加工手段又は上記エンドエフェクタに取り付け、上記被加工対象に測長用レーザー光を照射して、該測長用レーザー光の出射位置から上記被加工対象までの距離を計測する測長手段と、
該測長手段によって計測した距離データに基づいて、上記加工用レーザー光の出射位置から上記被加工対象における各部までの距離を算出し、該被加工対象の表面形状を特定する算出手段と、
該算出手段によって特定した上記被加工対象の表面形状を表示すると共に、該表面形状における各部が上記加工用レーザー光の焦点距離の調整可能範囲内に入るか否かを表示する表示手段とを備えていることを特徴とするレーザー加工表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザー加工表示装置において、上記表示手段は、上記加工用レーザー光によってレーザー加工が可能な照射加工可能範囲も表示するよう構成してあることを特徴とするレーザー加工表示装置。
【請求項3】
ロボットのエンドエフェクタに装着し、焦点距離及び照射方向を調整して被加工対象における加工設定位置に加工用レーザー光を照射するよう構成したレーザー加工手段と、
該レーザー加工手段又は上記エンドエフェクタに取り付け、上記加工用レーザー光の照射方向範囲と一致又は近似する照射方向範囲に、出射位置から離れるほど円形又は楕円形の照射範囲が拡大する拡大可視光を照射する第1可視光照射手段と、
上記レーザー加工手段又は上記エンドエフェクタに取り付け、上記加工用レーザー光の焦点距離の調整可能範囲の最短位置と最長位置とに一致又は近似する位置において、上記拡大可視光に対して交わる直進可視光を照射する第2可視光照射手段とを備えており、
上記加工設定位置を含めて上記被加工対象に照射された上記拡大可視光の内側に上記直進可視光が入るときには、上記加工用レーザー光の焦点距離の調整可能範囲内に当該加工設定位置があることを認識し、上記加工設定位置を含めて上記被加工対象に照射された上記拡大可視光の外側に上記直進可視光が外れるときには、上記加工用レーザー光の焦点距離の調整可能範囲外に当該加工設定位置があることを認識できるよう構成してあることを特徴とするレーザー加工表示装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のレーザー加工表示装置を用いて、上記ロボットのエンドエフェクタの移動経路を教示する方法であって、
上記表示手段によって表示された上記被加工対象の表面形状を視認しながら、上記被加工対象における加工設定位置が上記焦点距離の調整可能範囲内に入る位置・姿勢になるよう上記エンドエフェクタを移動させ、
上記加工用レーザー光の焦点距離及び照射方向を調整し、上記加工設定位置に上記加工用レーザー光の焦点を合わせて、上記ロボットの教示作業を行うことを特徴とするレーザー加工表示装置を用いたロボットの教示方法。
【請求項5】
請求項3に記載のレーザー加工表示装置を用いて、上記ロボットのエンドエフェクタの移動経路を教示する方法であって、
上記被加工対象における加工設定位置が上記拡大可視光の内側に入ると共に該拡大可視光の内側に上記直進可視光が入る位置・姿勢になるよう上記エンドエフェクタを移動させ、
上記加工用レーザー光の焦点距離及び照射方向を調整し、上記加工設定位置に上記加工用レーザー光の焦点を合わせて、上記ロボットの教示作業を行うことを特徴とするレーザー加工表示装置を用いたロボットの教示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−194476(P2011−194476A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60414(P2010−60414)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】