説明

ローラの成型用金型、ローラの製造方法、及びこれらによって製造されたローラ

【課題】芯材およびそれを支持する駒の表面等に、バリやキズの発生を抑制し、耐久性等にも優れたローラの成型用金型、ローラの製造方法、及びこれらによって製造されたローラを提供する。
【解決手段】芯材5と、該芯材の外周に円筒状の弾性層を形成するパイプ金型2と、該パイプ金型の両端部に設けられ該パイプ金型内で前記芯材を保持する芯材保持部を備えた少なくとも2つの駒1、3と、を有するローラ成型用金型において、前記2つの駒における芯材保持部11の少なくとも前記芯材と接触する部分を高硬度化し、表面硬度をロックウェルC硬さ(HRC)50〜70に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラの成型用金型、ローラの製造方法、及びこれらによって製造されたローラに関するものである。特に、電子写真感光体や静電記録誘導体からなる像担持体上に形成した静電潜像を現像して、可視化するのに使用される現像装置に搭載されるローラの成型用金型、ローラの製造方法、及びこれらによって製造されたローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真装置の小型化、高画質化、低価格化の要求に伴い、電子写真装置に組み込まれているトナー供給ローラ、帯電ローラ、転写ローラ等の機能性ローラに対する、高精度化、低価格化が要求されてきた。
一方、これらの要求に対しては、機能性ローラの品質を維持しながら、製造コストを下げる努力が払われてきた。
また、ローラの量産においては、製造装置をある程度自動化することが不可欠であり、そのため、ローラの品質を維持しながら自動化が容易な製造装置が求められてきた。
【0003】
こうした中で、このような機能性ローラの一つである芯材の外周に円筒状の弾性部を有するローラは、従来においてはパイプ状の成形金型の内部に配した芯材を、該金型の両端に設けた駒で支持し、該金型の内部に、原料を注入して発泡、固化させて、製造する方法等が一般的に用いられてきた。
ところで、このような製造方法による場合、特に、芯材の外周に形成される弾性からなるローラの偏心量をできるだけ少なくし、外径振れ精度を向上させることが求められる。このような要求は、画像の高画質化の進捗に伴い、益々、高まっている。
【0004】
そのため、特許文献1では、金型の両端に設けた駒の芯金保持部を、駒の材質より線膨張係数の高い材料で形成し、外径振れ精度を向上させる提案がなされている。これは成型時の加熱による芯金保持部の膨張によって、芯金のセンター出しをし、芯金の位置精度を向上させ、結果として外径振れ精度を向上させるようにしたものである。
また、特許文献2では、芯体保持部の奥により大径の芯体挿入孔を設けて、外径振れ精度の向上を図る提案がなされている。これによると、上記大径の芯体挿入孔を設けることにより、成型時に芯体に曲げの力が働かないようにして、外径振れ精度の向上が図られている。
【特許文献1】特開2002−292637号公報
【特許文献2】特開2001−205639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来例のものにおいては、パイプ金型の中心に芯材を配置し、該金型の両端に設けられた駒の芯材保持部で該芯材を保持する際、これら芯材と芯材保持部との接触する部分の表面に、バリやキズが発生することとなる。
このようなバリやキズは、成型品のローラ外径振れを悪化させる原因となり、更には、現像装置へ該ローラを組付ける際にも悪影響を及ぼすものである。特に成型時に芯材配置を製造装置による自動化とした場合、芯材配置位置の微少なずれ、力加減の難しさのため、バリやキズが発生し易くなる。
しかしながら、上記従来例のものにおいては、このようなバリやキズの発生を防止する上で、必ずしも満足のいくものではなかった。また、これら接触部の耐久性についても、更なる改善が求められていた。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、芯材およびそれを支持する駒の表面等に、バリやキズの発生を抑制し、耐久性等にも優れたローラの成型用金型、ローラの製造方法、及びこれらによって製造されたローラを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を達成するために、以下のように構成したローラの成型用金型、ローラの製造方法、及びこれらによって製造されたローラを提供するものである。
すなわち、本発明のローラの成型用金型は、芯材と、該芯材の外周に円筒状の弾性層を形成するパイプ金型と、該パイプ金型の両端部に設けられ該パイプ金型内で前記芯材を保持する芯材保持部を備えた少なくとも2つの駒と、を有するローラ成型用金型において、前記2つの駒における芯材保持部の少なくとも前記芯材と接触する部分が、高硬度化されていることを特徴としている。その際、前記高硬度化による表面硬度が、ロックウェルC硬さ(HRC)50〜70とし、あるいはロックウェルC硬さ(HRC)63〜68とすることがより望ましい。
また、本発明のローラ製造方法は、芯材と、該芯材の外周に円筒状の弾性層を形成するパイプ金型と、該パイプ金型の両端部に設けられ該パイプ金型内に配された芯材を保持する芯材保持部を備えた少なくとも2つの駒とを有し、前記芯材の外周に円筒状の弾性層からなるローラを製造するローラ製造方法であって、前記ローラの製造に際し、上記したローラ成型用金型を用い、前記芯材の外周に円筒状の弾性層からなるローラを製造することを特徴としている。
また、本発明のローラは、芯材と、該芯材の外周に形成された円筒状の弾性層と、を有するローラであって、上記したローラ成型用金型、または上記したローラの製造方法によって製造されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、芯材およびそれを支持する駒の表面等に、バリやキズの発生を抑制し、耐久性等にも優れたローラの成型用金型、ローラの製造方法、及びこれらによって製造されたローラを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態の成型用金型の一例として、発泡体からなる弾性ローラ(以下、発泡弾性体ローラと記す。)の成型用金型について、図を用いて説明する。
図1に本発明の実施の形態の一例である発泡弾性体ローラの成型用金型の構成を示す。
また、図3に本発明の実施の形態における上記成型用金型で成型された発泡弾性体ローラの構成を示す。
図1において、1は上駒、2はパイプ金型、3は下駒、4は液受けカップ、5は芯材である。
また、6は図3に示されるように成型後に円筒状のパイプ金型2から取り出された芯材5を有する発泡体であり、7は下駒3に形成された発泡材料充填口である。
また、11は上駒1と下駒3に形成された芯材5を保持するための芯材保持部である。
【0010】
最初に、このような構成の成型用金型を用いて発泡弾性体ローラを成型する際の概略を説明をする。
先ず、パイプ金型2内に芯材5を配し、この芯材5の上下部を上駒1と下駒3の芯材保持部11で保持して芯材5をセットし、所定温度で予熱する。一方、所定温度に余熱した液受けカップ4内に発泡材料を吐出した後、これを成型金型2に組み付ける。この液受けカップ4内の発泡材料が自然発泡により、発泡材料充填口7を介してパイプ金型2内に充填される。その後所定温度に所定時間、温度制御して発泡材料を硬化させ、脱型することによって発泡弾性体ローラを得る。
【0011】
以上が、本実施の形態における発泡弾性体ローラ成型過程の概略である。その際、本実施の形態では芯材5と芯材保持部11との接触する部分の硬度をHRC50〜70、好ましくはHRC63〜68とし、バリやキズの発生を抑制するようにした点に、特徴を有するものである。
従来の一般金型用鋼材では、硬度HRC50未満であり表面硬さが十分でなかった。そのため、上駒1と下駒3の芯材保持部11で芯材を保持する際に、芯材5と芯材保持部11とが接触する部分にバリやキズが付き易いものであった。このようなバリやキズが一度発生すると、その後の成型において更なるバリやキズを生み、悪循環となる課題を有していた。また、表面硬さがHRC70以上の高い硬度の場合にも、靭性低下の点から好ましくない。
【0012】
これに対して、本実施の形態のように、芯材5と芯材保持部11との接触する部分の硬度を、HRC50〜70、好ましくはHRC63〜68とすることによって、芯材と駒が接触して力が加わった場合に、バリやキズがつきにくく、安定した良品成型を長期にわたり維持することが可能となる。その際、高硬度化した部分の表面粗さが小さいことがなお望ましい。
本実施の形態において、高硬度化の手段としては特に限定されず、例えば、炭素工具鋼(SK)、高速度工具鋼(SKH)、合金工具鋼(SKS、SKD)、クロムモリブデン鋼(SCM)、等を熱処理する手段を用いることができる。あるいは、これら以外にも、硬質クロムメッキ、硬質アルマイト、タフトライド、DLC処理等で表面硬化させる手段等を用いることができる。
【0013】
また、高硬度化する部分については、少なくとも前記芯材と接触する部分が、高硬度処理されていればよいが、特に制限されるものではない。その一例を図2に示す。図2において、11aは芯材保持部11の芯材5と接触する部分に、高硬度処理された芯材支持部材である。このように、上駒1と下駒3に部分的に高硬度処理された芯材支持部材を設けるだけでなく、駒全体を高硬度化してもよい。しかし、駒全体を高硬度化た場合は、上述した高硬度化手段による支持部材の変形や仕上げ加工性が悪くなるため、芯材保持部11における芯材との接触部分のみを高硬度化するのがより好ましい。
【0014】
以上のように、部分的に高硬度化した場合、高硬度部分以外の金型材質としては、金型部材として特に限定されるものではない。例えば、鉄などの鋼材にニッケルやクロムなどのメッキを施した金属部材、鉄、銅、アルミニウム、ステンレス鋼、プリハードン鋼などの金属部材のほか、PEEK、セラミックス等のエンジニアリングプラスチック等を適宜使用することができる。
【実施例】
【0015】
以下に、本発明を適用した実施例における発泡ゴムローラの製造方法について説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
本実施例では成型用金型として、図1に示す成型用金型と基本的に同様の構成のものを用いた。
本実施例では、上駒1および下駒3との芯材保持部11において、図2に示す合金工具鋼SKS31を熱処理し硬度をHRC64前後とした部材11aを、材質HPM38(プリハードン鋼)の駒部材10aに圧入した。他の金型の材質として、パイプ金型がSUS304、液受けカップがHPM38(プリハードン鋼)の化学ニッケルを表面処理で施したものを用いた。
【0016】
次に成型したローラの材料と成形条件、製造の手順を示す。
実施にあたり、図3に示す形状をしたローラを成形した。
まず、混合ポリオールとして、FA−908(三洋化成株式会社製ポリエーテルポリオール)100重量部、ジエタノールアミン0.5重量部、L5366(日本ユニカー株式会社製シリコーン系整泡剤)1重量部、ToyoCat−ET(東ソー株式会社製第3級アミン触媒)0.1重量部、TEDA−L33(東ソー株式会社製第3級アミン触媒)0.5重量部、水(発泡剤)2重量部を混合した。その後、T80(三井武田ケミカル株式会社製イソシアネート、NCO%=48)29.5重量部、M200(三井武田ケミカル株式会社製イソシアネート、NCO%=31)7.4部とをNCOインデックス100となるように混合攪拌したものを発泡材料とした。本実施例のローラ成型金型(以下金型)にシリコンオイル離型剤を塗布し、その後金型にφ5×260mm(L)の芯金をセットして65℃に予熱した。一方、混合攪拌した該発泡材料を65℃に予熱して液受けカップに吐出し金型と組付けた。発泡材料であることから、自然発泡により金型内は材料で充填される。その後、10min間、65℃に温度制御された熱盤において硬化させて脱型し、本実施例のローラを得た。該ローラの発泡体外径はφ12であり、発泡体部長さは220mmである。
従来の成型金型で発生していたバリやキズが、本実施例の成型金型を使用することで見られなくなった。このように本実施例の金型によれば、芯材にバリやキズのない発泡ローラを安定して成型することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態の一例である発泡弾性体ローラの成型用金型の構成を示す図。
【図2】本発明の実施の形態における芯材保持部における芯材との接触部に高硬度処理された芯材保持部材が設けられた駒の構成を示す。
【図3】本発明の実施の形態における上記成型用金型で成型された発泡弾性体ローラの構成を示す図。
【符号の説明】
【0018】
1:上駒
2:パイプ金型
3:下駒
4:液受けカップ
5:芯材
6:発泡体
7:発泡材料充填口
10a:材質HPM38(プリハードン鋼)の駒部材
11:芯材保持部
11a:硬度処理された芯材支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、該芯材の外周に円筒状の弾性層を形成するパイプ金型と、該パイプ金型の両端部に設けられ該パイプ金型内で前記芯材を保持する芯材保持部を備えた少なくとも2つの駒と、を有するローラ成型用金型において、
前記2つの駒における芯材保持部の少なくとも前記芯材と接触する部分が、高硬度化されていることを特徴とするローラ成型用金型。
【請求項2】
前記芯材保持部の前記芯材と接触する部分に、高硬度化された芯材支持部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のローラ成型用金型。
【請求項3】
前記高硬度化による表面硬度が、ロックウェルC硬さ(HRC)50〜70であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のローラ成型用金型。
【請求項4】
芯材と、該芯材の外周に円筒状の弾性層を形成するパイプ金型と、該パイプ金型の両端部に設けられ該パイプ金型内に配された芯材を保持する芯材保持部を備えた少なくとも2つの駒とを有し、前記芯材の外周に円筒状の弾性層からなるローラを製造するローラ製造方法であって、
前記ローラの製造に際し、請求項1〜3のいずれか1項に記載のローラ成型用金型を用い、前記芯材の外周に円筒状の弾性層からなるローラを製造することを特徴とするローラの製造方法。
【請求項5】
芯材と、該芯材の外周に形成された円筒状の弾性層と、を有するローラであって、該ローラが請求項1〜3のいずれか1項に記載のローラ成型用金型、または請求項4に記載のローラの製造方法によって製造されたことを特徴とするローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−15117(P2007−15117A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195823(P2005−195823)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】