説明

両面塗布装置および塗液の両面塗布方法

【課題】複数枚の被処理基板に対して塗布した場合であっても、塗布量のばらつきが少なく、塗布量を高精度で制御できる両面塗布装置および塗液の両面塗布方法を提供する。
【解決手段】被処理基板2の厚み方向が水平方向となるように被処理基板2を保持する保持機構3aと、被処理基板2を周回りに回転させる回転駆動機構と、被処理基板2の両主面2aに塗液を噴出する塗液用ノズル18aと、リンス液を噴出させて塗液用ノズル18aを洗浄するヘッドリンス用ノズル19aとを備える両面塗布装置1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面塗布装置および塗液の両面塗布方法に関し、特に、複数枚の被処理基板に対して塗布した場合であっても、塗布量のばらつきが少なく、塗布量を高精度で制御できる両面塗布装置および塗液の両面塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置、フレキシブルディスク装置、磁気テープ装置等の磁気記録装置には、磁気記録媒体が用いられている。近年、磁気記録媒体の表面にトラックに沿った凹凸を形成し、記録トラック同士を磁気的に分離することによって、トラック密度を上げようとする試みがなされている。このような磁気記録媒体をディスクリートトラック媒体と称する。
【0003】
ディスクリートトラック媒体を製造するには、何層かの薄膜からなる磁気記録媒体を形成した後にトラックを形成する方法と、予め基板表面に直接、あるいはトラック形成のための薄膜層に、凹凸パターンを形成した後、磁気記録媒体の薄膜形成を行う方法とがある(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。このうち、前者の方法は、磁気層加工型と呼ばれており、後者の方法は、エンボス加工型と呼ばれている。このようなディスクリートトラック媒体の製造方法では、リソグラフィー技術が使われる場合が多く、基板にレジストや感光性樹脂をコーティング等することが必要となる場合がある。
【0004】
ところで、基板にコーティングを施す装置として、円盤状の基板を垂直面に沿って保持しながら、その周回りに回転させるとともに、液体材料を収容したコーティング容器に対し回転中の基板を上下させて基板を液体材料に浸漬し、液体材料から基板を引き上げ、該基板に付着した余分な液体材料を基板の回転により振り落として均一化することができる装置が知られている(特許文献3参照)。
【0005】
更に、レジスト塗布装置として、円盤状のウエハの外周部を爪により把持して水平な面内で回転自在に保持し、該基板の上方と下方に個別にノズルを配置して回転している基板の上下両面にレジストの塗布ができる装置が知られている(特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2004−178793号公報
【特許文献2】特開2004−198794号公報
【特許文献3】特開2004−306032号公報
【特許文献4】特開平7−245255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、磁気層加工型の製造方法を用いてディスクリートトラック媒体を製造した場合、媒体形成後に表面に対する物理的加工が実施されるため、物理的加工工程中に媒体が汚染されやすいという問題や、製造工程が極めて複雑になるという問題があった。
また、エンボス加工型の製造方法を用いてディスクリートトラック媒体を製造した場合、製造工程中の汚染は発生し難いが、基板に形成された凹凸形状が成膜後の膜にも引き継がれることになるため、磁気記録媒体上を浮上しながら記録再生を行う記録再生ヘッドの浮上姿勢や浮上高さが安定しないという問題があった。
【0007】
そこで、本願発明者らは、従来のディスクリートトラック媒体の製造方法における上記の問題を解消すべく検討を重ねた。その結果、磁性層を形成した後に、磁気記録トラック及びサーボ信号パターン(磁気記録パターン)以外の領域を反応性プラズマに曝すことにより、磁気記録トラック同士を磁気的に分離可能であるとの知見を得た。このような反応性プラズマを用いる方法では、磁性層の全面にレジストを塗布してレジスト層を形成し、このレジスト層を磁気記録パターンに対応するようにパターニングした後、磁性層を反応性プラズマにさらす。このことにより、磁性層上におけるレジスト層の形成されていない領域の磁気特性が改質され、磁性層の磁気記録トラック同士が磁気的に分離される。
【0008】
上記の反応性プラズマを用いる方法では、凹凸加工を行わないので、凹凸加工に起因する媒体の汚染を回避しつつ、簡易な工程でディスクリートトラック媒体を製造することができる。また、このような方法により得られたディスクリートトラック媒体は、凹凸を有していないので、浮上型ヘッドを安定に浮上走行させることができる。
【0009】
ところで、上記の反応性プラズマを用いる方法では、磁性層の全面にレジストを塗布してレジスト層を形成する必要がある。また、例えば、ディスクリートトラック媒体として、磁気ディスク装置で用いられる磁気記録媒体(磁気ディスク)を製造する場合には、基板の両面に磁性層を形成する必要があるため、基板の両面にレジストを塗布して、基板の両面にレジスト層を形成する必要がある。
【0010】
しかしながら、従来の塗布装置では、複数枚の被処理基板に対して塗布した場合に、塗布量のばらつきが大きく、塗布量を精度よく制御できないことが問題となっていた。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、複数枚の被処理基板に対して塗布した場合であっても、塗布量のばらつきが少なく、塗布量を高精度で制御できる両面塗布装置および塗液の両面塗布方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本願発明者は鋭意研究した結果、本願発明に到達した。
(1)被処理基板の両主面に塗液を供給し、前記被処理基板を回転操作して前記塗液を両主面に拡げることにより前記被処理基板の両主面に塗膜を形成する両面塗布装置であって、前記被処理基板の厚み方向が水平方向となるように前記被処理基板を保持する保持機構と、前記被処理基板を周回りに回転させる回転駆動機構と、前記被処理基板の両主面に塗液を噴出する塗液用ノズルと、リンス液を噴出させて前記塗液用ノズルを洗浄するヘッドリンス用ノズルとを備えることを特徴とする両面塗布装置。
(2)前記塗液用ノズルが、前記被処理基板の一方の主面に塗液を噴出する第1塗液用ノズルと、前記被処理基板の他方の主面に塗液を噴出する第2塗液用ノズルとからなり、前記第1塗液用ノズルと前記第2塗液用ノズルとが、前記被処理基板の厚み中心面に対して対称に配置され、前記ヘッドリンス用ノズルが、前記第1塗液用ノズルの上方に前記第1塗液用ノズルに隣接して設けられた第1ヘッドリンス液用ノズルと、前記第2塗液用ノズルの上方に前記第2塗液用ノズルに隣接して設けられた第2ヘッドリンス液用ノズルとからなることを特徴とする(1)に記載の両面塗布装置。
(3)前記第1塗液用ノズルおよび前記第1ヘッドリンス液用ノズルを支持し、前記第1塗液用ノズルを前記被処理基板の前記一方の主面と離間しつつ前記一方の主面に沿って前記被処理基板の直径方向に移動させる第1の塗液用ノズル移動機構と、前記第2塗液用ノズルおよび前記第2ヘッドリンス液用ノズルを支持し、前記第2塗液用ノズルを前記被処理基板の前記他方の主面と離間しつつ前記他方の主面に沿って前記被処理基板の直径方向に移動させる第2の塗液用ノズル移動機構とを備えていることを特徴とする(2)に記載の両面塗布装置。
(4)前記塗液用ノズルに前記塗液を供給する塗液供給手段と、前記ヘッドリンス用ノズルに前記リンス液を供給するリンス液供給手段とが備えられ、前記塗液供給手段には、前記塗液用ノズルと塗液用タンクとを接続する塗液用配管が備えられ、前記リンス液供給手段には、前記ヘッドリンス用ノズルとリンス液用タンクとを接続するリンス液用配管とが備えられ、前記リンス液用配管は、接続配管によって前記塗液用配管と接続されており、前記接続配管には切替用バルブが接続されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の両面塗布装置。
【0013】
(5)被処理基板の両主面に塗液を供給し、前記被処理基板を回転操作して前記塗液を両主面に拡げることにより前記被処理基板の両主面に塗膜を形成する塗液の両面塗布方法であって、前記被処理基板の厚み方向が水平方向となるように前記被処理基板を保持し、前記被処理基板を周回りに回転させ、前記被処理基板の両主面に塗液を噴出する塗液用ノズルから前記被処理基板に向かって塗液を噴出させる塗布工程と、ヘッドリンス用ノズルからリンス液を噴出させて前記塗液用ノズルを洗浄する塗液用ノズル洗浄工程とを備えていることを特徴とする塗液の両面塗布方法。
(6)(4)に記載の両面塗布装置を用いて被処理基板の両主面に塗膜を形成する塗液の両面塗布方法であって、前記被処理基板の厚み方向が水平方向となるように前記被処理基板を保持し、前記被処理基板を周回りに回転させ、前記被処理基板の両主面に塗液を噴出する塗液用ノズルから前記被処理基板に向かって塗液を噴出させる塗布工程と、前記切替用バルブを切り替えて、前記切替用バルブよりも前記塗液用ノズル側の前記塗液用配管および前記塗液用ノズルを洗浄する塗液用配管洗浄工程を備えていることを特徴とする塗液の両面塗布方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の両面塗布装置は、被処理基板の厚み方向が水平方向となるように前記被処理基板を保持する保持機構と、前記被処理基板を周回りに回転させる回転駆動機構と、前記被処理基板の両主面に塗液を噴出する塗液用ノズルと、リンス液を噴出させて前記塗液用ノズルを洗浄するヘッドリンス用ノズルとを備えるものであるので、塗液用ノズルから被処理基板に向かって塗液を噴出させた後、ヘッドリンス用ノズルからリンス液を噴出させて塗液用ノズルを洗浄することができる。したがって、本発明の両面塗布装置では、塗液用ノズルが目詰まりすることを防止できるとともに、塗液用ノズルに塗液や塗膜が付着することよる噴出量のばらつきを防止でき、複数枚の被処理基板に対して塗布した場合であっても、塗布量のばらつきが少なく、塗布量を高精度で制御できるものとなる。また、本発明の両面塗布装置によれば、被処理基板を周回りに回転させて、塗液用ノズルから被処理基板の両主面に塗液を噴出することができるので、塗液用ノズルから噴出させる塗液の量および回数を制御することで、塗布量が少量であっても多量であっても容易に塗布量の制御を行うことができる。
【0015】
これに対し、例えば、基板の上方と下方に個別にノズルを配置して回転している基板の上下両面にレジストの塗布する場合、ノズルが目詰まりしたり、ノズルに塗液や塗膜が付着したりすることよって噴出量がばらつくので、複数枚の被処理基板に対して塗布した場合に、塗布量を高精度で制御することは困難であった。特に、基板の下方に配置されたノズルにレジストが付着しやすいため、基板の下面における塗布量のばらつきが大きかった。また、基板の上方と下方に個別にノズルを配置して回転している基板の上下両面にレジストの塗布する場合、基板の上面に対する塗布と下面に対する塗布とにおいて重力に起因する差異が生じるため、基板の上下面に対する塗布量の制御が困難であった。
また、基板を垂直面に沿って保持し、液体材料を収容したコーティング容器に対し回転中の基板を上下させて基板を液体材料に浸漬する場合、被処理基板の一方の主面に対する塗布と他方の主面に対する塗布とにおいて重力に起因する差異はないし、ノズルに塗液や塗膜が付着したりノズルが目詰まりしたりすることよる噴出量のばらつきも生じないが、基板を液体材料に浸漬することによって塗布するため、塗布量の制御が困難であった。
【0016】
また、本発明の塗液の両面塗布方法は、被処理基板の厚み方向が水平方向となるように前記被処理基板を保持し、前記被処理基板を周回りに回転させ、前記被処理基板の両主面に塗液を噴出する塗液用ノズルから前記被処理基板に向かって塗液を噴出させる塗布工程と、ヘッドリンス用ノズルからリンス液を噴出させて前記塗液用ノズルを洗浄する塗液用ノズル洗浄工程とを備えているので、塗液用ノズルが目詰まりすることを防止できるとともに、塗液用ノズルに塗液や塗膜が付着することよる噴出量のばらつきを防止でき、複数枚の被処理基板に対して塗布した場合であっても、塗布量のばらつきが少なく、塗布量を高精度で制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の両面塗布装置および塗液の両面塗布方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
<ディスクリート型磁気記録媒体>
まず、本発明の両面塗布装置を用いて塗膜が形成される被処理基板の一例として、ディスクリート型磁気記録媒体の一例について説明する。図1は、ディスクリート型磁気記録媒体の一例を示した断面図である。
【0018】
図1に示す磁気記録媒体100は、中心開口部101aを有する非磁性基板101の両方の主面(上面と下面)に、それぞれ、軟磁性層、中間層などを含む複層構造の下地層102と、磁性層103と、改質部104と、保護膜105とが形成されたものであり、最表面には潤滑膜(図示略)が形成されている。
なお、図1においては、非磁性基板101の厚さに対して、下地層102、磁気的パターンを有する磁性層103、改質部104、保護膜105の厚さをそれぞれ誇張して大きく記載しているが、実際の非磁性基板101の厚さは、これらの層や膜より遙かに厚いことは勿論であり、図1においてはこれらの層や膜を見易くするために実際より誇張して厚く記載している。
【0019】
非磁性基板101としては、Alを主成分とした例えばAl−Mg合金等のAl合金基板や、通常のソーダガラス、アルミノシリケート系ガラス、結晶化ガラス類、シリコン、チタン、セラミックス、各種樹脂からなる基板など、非磁性基板であれば任意のものを用いることができる。
【0020】
磁性層103は、磁気記録トラック及びサーボ信号パターン部に相当する磁気記録パターンである。磁性層103は、面内磁気記録層でも垂直磁気記録層でもかまわないがより高い記録密度を実現するためには垂直磁気記録層が好ましい。磁気記録層103は主としてCoを主成分とする合金から形成するのが好ましい。
例えば、面相磁気記録媒体用の磁気記録層としては、非磁性のCrMo下地層と強磁性のCoCrPtTa磁性層からなる積層構造が利用できる。
垂直磁気記録媒体用の磁気記録層としては、例えば軟磁性のFeCo合金(FeCoB、FeCoSiB、FeCoZr、FeCoZrB、FeCoZrBCuなど)、FeTa合金(FeTaN、FeTaCなど)、Co合金(CoTaZr、CoZrNB、CoBなど)等からなる裏打ち層と、Pt、Pd、NiCr、NiFeCrなどの配向制御膜と、必要によりRu等の中間膜、及び60Co−15Cr−15Pt合金や70Co−5Cr−15Pt−10SiO合金からなる磁性層を積層したものを利用することができる。
磁気記録層の厚さは、例えば3nm以上20nm以下、好ましくは5nm以上15nm以下とする。
【0021】
また、図1に示すように、磁性層103の形成されていない領域には、磁性層103の磁気特性が改質されてなる非磁性部である改質部104が形成されている。改質部104によって、磁性層103を構成する磁気記録パターンが磁気的に分離されており、隣接する磁性層103の磁気記録パターン間の信号干渉が防止されるようになっている。
【0022】
磁性層103の磁気特性の改質とは、具体的には、非磁性基板101上に均一な膜として形成された磁性層の保磁力、残留磁化等を部分的に変化させることを指し、その変化の一例として、保磁力を下げ、残留磁化を下げることを指す。
磁気特性の改質は、例えば、非磁性基板101上に均一な膜として成膜された磁性層の磁気記録パターンとなる領域以外の領域を、反応性プラズマに曝すことによってなすことができ、反応性プラズマに曝した部分が改質部104とされる。
【0023】
また、保護膜105としては、炭素(C)、水素化炭素(HxC)、窒素化炭素(CN)、アモルファスカーボン、炭化珪素(SiC)等の炭素質層やSiO、Zr、TiNなど、通常用いられている保護膜材料を用いることができる。また、保護膜105が2層以上の層から構成されていてもよい。
保護膜105の上には適宜潤滑層を形成することが好ましい。潤滑層に用いる潤滑剤としては、フッ素系潤滑剤、炭化水素系潤滑剤及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0024】
図1に示す磁気記録媒体100は、磁性層103の磁気記録パターン以外の領域の磁気特性が改質されて改質部104とされていることにより、磁気記録パターンが磁気的に確実に分離されているので、隣接パターン間の信号干渉の影響を受けず、優れた高記録密度特性を得ることができる。
【0025】
<両面塗布装置>
次に、本発明の両面塗布装置の一実施形態について説明する。
図2は、本発明の両面塗布装置の全体構成を説明するための概略図であり、被処理基板の一方の主面側から見た正面図である。また、図3は図2に示す両面塗布装置の一部を示した縦断面図であり、図4は、図2に示す両面塗布装置の一部を示した上面図である。
図2〜図4に示す両面塗布装置1は、ドーナツ円盤状の被処理基板2の一方の主面2aおよび他方の主面2bに塗液を供給し、被処理基板2を回転操作して塗液を一方の主面2aおよび他方の主面2bに拡げることにより被処理基板2の一方の主面2aおよび他方の主面2bに塗膜を形成し、両主面2a、2bに塗液の塗布された被処理基板2のエッジリンスを行うものである。
【0026】
図2〜図4に示すように、両面塗布装置1は、保持機構3aと、回転駆動機構3と、第1の塗液用ノズル移動機構17aと、第2の塗液用ノズル移動機構17bと、第1塗液用ノズル18a(塗液用ノズル)と、第2塗液用ノズル18b(塗液用ノズル)と、第1ヘッドリンス液用ノズル19a(ヘッドリンス液用ノズル)と、第2ヘッドリンス液用ノズル19b(ヘッドリンス液用ノズル)と、エッジリンス手段40と、吸引手段43と、被処理基板収納部6とを備えている。
被処理基板収納部6は、本体6aとヘッドリンス部6bとを有している。図2に示すように、被処理基板収納部6内の本体6aの中央部には、保持機構3aに保持された被処理基板2が収容されており、回転駆動機構3により被処理基板2の一方の主面2aが時計回りに回転するようになっている。また、ヘッドリンス部6bは、被処理基板2の中心に対して3時の方向に設けられ、本体6aに接合されている。
【0027】
また、図2に示すように、被処理基板収納部6には、被処理基板収納部6のヘッドリンス部6bからパージガスを供給するガス供給手段27と、被処理基板収納部6の本体6aからガスを排出するための排ガス手段26とが設けられている。パージガスとしては、例えば、乾燥空気、窒素、水素、二酸化炭素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなどが用いられる。
排ガス手段26は、排ガスタンク26aと、本体6aと排ガスタンク26aとを接続する配管26bとを備えている。また、被処理基板収納部6には、被処理基板収納部6のヘッドリンス部6bおよび本体6aからそれぞれ排液を排出するための排液手段25が設けられている。排液手段25は、排液タンク25aと、排液タンク25aと本体6aとを接続する排液配管25bと、排液配管25bから分岐してヘッドリンス部6bと接続された分岐排液配管25cとを備えている。
【0028】
また、図2〜図4において、実線は、第1の塗液用ノズル移動機構17a、第2の塗液用ノズル移動機構17b、エッジリンス手段40、吸引手段43の各部材の退避時における位置を示し、点線は、各部材の塗布時またはエッジリンス時における位置を示している。
図2〜図4に示すように、塗布時には、被処理基板2の一方の主面2a側から見たとき、被処理基板2の中心に対して3時の方向(図2においては右方向)に、第1の塗液用ノズル移動機構17aおよび第2の塗液用ノズル移動機構17bが配置される。また、エッジリンス時には、被処理基板2の一方の主面2a側から見たとき、被処理基板2の中心に対して6時の方向(図2においては下方向)にエッジリンス手段40が配置され、7時〜9時の方向(図2においては左下方向)に吸引手段43が配置される。
【0029】
また、図4に示すように、退避時には、第1の塗液用ノズル移動機構17aおよび第2の塗液用ノズル移動機構17bと、エッジリンス手段40および吸引手段43とが、被処理基板2の交換などを行う際に支障を来たすことのないように、平面視で被処理基板2を挟んで、十分な間隔を空けて対向して配置されている。また、塗布時やエッジリンス時などには、第1の塗液用ノズル移動機構17aおよび第2の塗液用ノズル移動機構17bと、エッジリンス手段40および吸引手段43とが、逆方向から被処理基板2に向かって水平移動してきて被処理基板2に近づけられるようになっている。このことにより、第1の塗液用ノズル移動機構17aおよび第2の塗液用ノズル移動機構17bと、エッジリンス手段40および吸引手段43とが、移動時に接触することがないようになっている。
【0030】
保持機構3aは、被処理基板2の厚み方向が水平方向となるように被処理基板2を保持するものであり、被処理基板2が取り付けられるチャッキング部11と回転軸12とからなる。チャッキング部11は、回転軸12の端部に設けられており、チャッキング部11に被処理基板2の中心開口部が嵌め込まれることにより被処理基板2が固定されて、回転軸12と一体化した状態で被処理基板2が回転されるようになっている。
【0031】
回転駆動機構3は、図2に示すように、保持機構3aに保持された被処理基板2を周回りに(本実施形態においては、一方の主面2aを時計回りに)回転させるものである。回転駆動機構3は、図3に示すように、スピンドルモータ8と、スピンドルモータ8の駆動軸であるスピンドル軸9と、スピンドル軸9の先端に取り付けられたプーリ10とを備えており、スピンドル軸9と保持機構3aの回転軸12とが連動して回転するようになっている。したがって、図3に示す回転駆動機構3では、スピンドルモータ8が駆動されると回転軸12が回転駆動されて、回転軸12に保持された被処理基板2が、スピンドルモータ8の回転方向および回転数に応じて回転されるようになっている。
【0032】
第1の塗液用ノズル移動機構17aおよび第2の塗液用ノズル移動機構17bは、水平方向に向かって延在するアームである。図4に示すように、第1の塗液用ノズル移動機構17aは、第1塗液用ノズル18aおよび第1ヘッドリンス液用ノズル19aを支持するものであり、第2の塗液用ノズル移動機構17bは、第2塗液用ノズル18bおよび第2ヘッドリンス液用ノズル19bを支持するものである。第1塗液用ノズル移動機構17aおよび第2塗液用ノズル移動機構17bの先端部には、取り付け部16a、16bがそれぞれ形成されている。
第1塗液用ノズル移動機構17aの取り付け部16aの被処理基板2と対向配置される面には、第1塗液用ノズル18aが取り付けられ、第2塗液用ノズル移動機構17bの取り付け部16bの被処理基板2と対向配置される面には、第2塗液用ノズル18bが取り付けられている。また、取り付け部16aにおける第1塗液用ノズル18aの上方には、第1塗液用ノズル18aに隣接して第1ヘッドリンス液用ノズル19aが取り付けられ、取り付け部16bにおける第2塗液用ノズル18bの上方には、第2塗液用ノズル18bに隣接して第2ヘッドリンス液用ノズル19bが取り付けられている。
【0033】
第1の塗液用ノズル移動機構17aは、第1塗液用ノズル18aを被処理基板2の一方の主面2a上で被処理基板2の厚み方向(図4における左右方向)に移動させるとともに、第1塗液用ノズル18aを被処理基板2の一方の主面2aと離間しつつ一方の主面2aに沿って被処理基板2の直径方向である水平方向(図2における左右方向であって、図4における上下方向)に移動させるものである。また、第2の塗液用ノズル移動機構17bは、第2塗液用ノズル18bを被処理基板2の他方の主面2b上で被処理基板2の厚み方向(図4における左右方向)に移動させるとともに、第2塗液用ノズル18bを被処理基板2の他方の主面2bと離間しつつ他方の主面2bに沿って被処理基板2の直径方向である水平方向(図2における左右方向であって、図4における上下方向)に移動させるものである。
図4に示すように、第2の塗液用ノズル移動機構17bと第1の塗液用ノズル移動機構17aとは、被処理基板2の厚み中心面に対して対称に配置されており、第1塗液用ノズル18aと第2塗液用ノズル18bとが、第2の塗液用ノズル移動機構17bおよび第1の塗液用ノズル移動機構17aによって、被処理基板2の厚み中心面に対して対称に連動して動くようにされている。
【0034】
第1塗液用ノズル18a(塗液用ノズル)および第2塗液用ノズル18b(塗液用ノズル)は、被処理基板2の両主面2a、2bに向かって同時に塗液を噴出するものである。第1塗液用ノズル18aは、被処理基板2の一方の主面2aに塗液を噴出するものであり、第2塗液用ノズル18bは、被処理基板2の他方の主面2bに塗液を噴出するものである。第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bには、図2に示す塗液供給手段20によって塗液が供給される。
塗液供給手段20は、塗液用タンク20aと、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bと塗液用タンク20aとを接続する塗液用配管20bと、塗液用バルブ20cとを備えている。塗液用バルブ20cの開閉操作により、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bからの塗液噴出量や、塗液噴出時間、噴出回数などが制御される。
塗液としては、紫外線硬化型のアクリル酸エステル樹脂などの紫外線硬化型樹脂などからなる各種レジストを溶媒に溶解した溶液等が挙げられる。
【0035】
また、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bは、被処理基板2の外周部に噴出する塗液の量よりも内周部に噴出する塗液の量が多くなるものである。このような第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bの例を、図5を用いて説明する。
図5(a)および図5(b)は、第1塗液用ノズル18aおよび/または第2塗液用ノズル18bが有する塗液噴出口の形状を説明するための図である。なお、図5(a)および図5(b)においては、被処理基板2と、被処理基板2に対向する第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bの塗液噴出口の形状との対応関係を説明するために、塗液噴出口の形状(斜線部分)とともに塗液噴出口に対向配置された被処理基板2を示す。
【0036】
図5(a)に示す例では、4つの塗液噴出口32、33、34、35が、被処理基板2の外周部23に対向する位置から内周部22に対向する位置に向かって並べられている。図5(a)に示す例では、4つの塗液噴出口32、33、34、35はすべて円形であり、外周部23側の塗液噴出口程小さい面積とされ、内周部22側の塗液噴出口程大きい面積とされている。
なお、図5(a)に示す例では、塗液噴出口の数は4つとされているが、被処理基板2の外周部23に対向する位置から内周部22に対向する位置に向かって並べられる塗液噴出口の数は複数であればよく、2つや3つでもよいし、5以上でもよい。また、面積の小さい塗液噴出口は、面積の大きい塗液噴出口と比較して、安定して塗液を供給できる。したがって、図5(a)に示す4つの塗液噴出口32、33、34、35では、塗液噴出口の数が1つであって塗液噴出口の合計の面積が同じである場合と比較して、安定して塗液を供給できる。
また、図5(a)に示す例では、安定して塗液を供給できるように各塗液噴出口32、33、34、35の形状が全て円形とされているが、塗液噴出口の形状は円形でなくてもよく、例えば、外周部23方向に頂点を向け、内周部22方向に底辺を向けて配置された二等辺三角形などにしてもよく、特に限定されない。
【0037】
また、図5(b)に示す例では、塗液噴出口31が、被処理基板2の外周部23に対向する位置から内周部22に対向する位置に向かって被処理基板2の周回り方向の幅が徐々に広くなる形状となっている。図5(b)に示す例では、塗液噴出口31の形状は、外周部23方向に頂点を向け、内周部22方向に底辺を向けて配置された二等辺三角形とされている。
なお、図5(a)および図5(b)に示す例では、塗液噴出口の形状を変化させることによって、内周部22に噴出する塗液の量が被処理基板2の外周部23に噴出する塗液の量よりも多くなるようにしているが、例えば、塗液噴出口として、外周部23に噴出する塗液噴出口と、内周部22に噴出する塗液噴出口とからなる同面積の2つの塗液噴出口を設け、外周部23に噴出する塗液噴出口からの塗液の圧力を、内周部22に噴出する塗液噴出口からの塗液の圧力よりも低くすることで、被処理基板2の内周部22に噴出する塗液の量が外周部23に噴出する塗液の量よりも多くなるようにしてもよい。
【0038】
第1ヘッドリンス液用ノズル19aおよび第2ヘッドリンス液用ノズル19bは、第1塗液用ノズル18aおよび/または第2塗液用ノズル18bを洗浄するための洗浄液であるリンス液を噴出するものである。第1、第2ヘッドリンス液用ノズル19a、19bは、第1、第2塗液用ノズル移動機構17a、17bの取り付け部16a、16bに、被処理基板2と対向する方向に突出して取り付けられており、図4に示すように、第1、第2塗液用ノズル18a、18bよりも被処理基板2と対向する方向に張り出して配置されている。また、第1ヘッドリンス液用ノズル19aは、図6に示すように、第1塗液用ノズル18aの上方に取り付けられており、第2ヘッドリンス液用ノズル19bは、第2塗液用ノズル18bの上方に取り付けられている。
【0039】
したがって、第1ヘッドリンス液用ノズル19a(第2ヘッドリンス液用ノズル19b)によって第1塗液用ノズル18a(第2塗液用ノズル18b)を洗浄する際には、第1ヘッドリンス液用ノズル19a(第2ヘッドリンス液用ノズル19b)から下方に向かってリンス液を噴出させればよい。
また、第1ヘッドリンス液用ノズル19a(第2ヘッドリンス液用ノズル19b)によって第2塗液用ノズル18b(第1塗液用ノズル18a)を洗浄する際には、第1ヘッドリンス液用ノズル19a(第2ヘッドリンス液用ノズル19b)から前方斜め下に向かってリンス液を噴出させればよい。なお、効果的に洗浄するためには、第1ヘッドリンス液用ノズル19a(第2ヘッドリンス液用ノズル19b)の正面に近い位置に、第2塗液用ノズル18b(第1塗液用ノズル18a)が配置されることが好ましいので、第1ヘッドリンス液用ノズル19a(第2ヘッドリンス液用ノズル19b)と、第1塗液用ノズル18a(第2塗液用ノズル18b)とは近接して配置されることが好ましい。
また、第1ヘッドリンス液用ノズル19a(第2ヘッドリンス液用ノズル19b)によって第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bを洗浄する際には、第1ヘッドリンス液用ノズル19a(第2ヘッドリンス液用ノズル19b)から下方および前方斜め下に向かってリンス液を噴出させればよい。
【0040】
第1ヘッドリンス液用ノズル19aおよび第2ヘッドリンス液用ノズル19bには、図2に示すリンス液供給手段21によってリンス液が供給される。
リンス液としては、塗液(および塗膜)を溶解除去しうるものが用いられる。具体的には、リンス液としてアセトン等が挙げられる。
【0041】
リンス液供給手段21は、リンス液用タンク21aと、第1ヘッドリンス液用ノズル19aおよび第2ヘッドリンス液用ノズル19bとリンス液用タンク21aとを接続するリンス液用配管21bと、リンス液用バルブ21cとを備えている。図6に示すように、リンス液用配管21bは、リンス液用バルブ21cよりも第1、第2ヘッドリンス液用ノズル19a、19b側の位置で分岐されており、第1ヘッドリンス液用ノズル19aと第2ヘッドリンス液用ノズル19bとにそれぞれリンス液を供給できるようになっている。そして、第1ヘッドリンス液用ノズル19aおよび第2ヘッドリンス液用ノズル19bからのリンス液噴出量及びリンス液噴出時間は、リンス液用バルブ21cの開閉操作により制御されるようになっている。
【0042】
また、図2および図6に示すように、リンス液用配管21bは、接続配管28aによって塗液供給手段20の塗液用配管20bと接続されている。接続配管28aの塗液用配管20b側の端部には切替用バルブ28が接続されている。本実施形態の両面塗布装置1では、切替用バルブ28を切り替えることによって、塗布時には第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bに塗液が供給される。また、後述するライン洗浄時には、切替用バルブ28より第1、第2塗液用ノズル18a、18b側の塗液用配管20bおよび第1、第2塗液用ノズル18a、18bに、リンス液が供給されるようになっている。
【0043】
また、リンス液供給手段21は、後述するエッジリンス手段40の容器41にリンス液を供給するために、リンス液用配管21bから分岐して容器41と接続された分岐配管21dと、リンス液バルブ21eとを備えている。リンス液バルブ21eの開閉操作により、容器41へのリンス液の供給量が制御される。
【0044】
図2および図4に示すように、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bは、第1の塗液用ノズル移動機構17aおよび第2の塗液用ノズル移動機構17bの移動によって、塗布時には被処理基板2に近づけられ、被処理基板2を脱着する際や、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bの洗浄を行う際には被処理基板2から離される。
【0045】
より詳細には、塗布時には、第1の塗液用ノズル移動機構17aおよび第2の塗液用ノズル移動機構17bによって、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bを移動させ、被処理基板2の一方の主面2aに対する第1塗液用ノズル18aの位置、および被処理基板2の他方の主面2bに対する第2塗液用ノズル18bの位置を、所定の位置に配置させる。このことにより、図2および図6に示すように、第1塗液用ノズル18aと第2塗液用ノズル18bとが、下に向かって回転する被処理基板2を挟み込むように被処理基板2の厚み中心面に対して対称に配置される。
したがって、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bから被処理基板2に向かって同時に塗液を噴出させることで、被処理基板2の両主面2a、2bにおける同位置に同時に塗液が供給される。このことにより、被処理基板2の一方の主面2aに対する塗布と他方の主面2bに対する塗布とにおいて重力に起因する差異や、塗布位置に起因する差異がなく、被処理基板2の両主面2a、2bに均一に塗液を塗布することができる。
【0046】
また、被処理基板2を脱着する際には、第1の塗液用ノズル移動機構17aおよび第2の塗液用ノズル移動機構17bによって、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bを被処理基板収納部6に設けられたヘッドリンス部6b内に退避させることができる。したがって、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bが、被処理基板2を脱着する際の作業性を低下させることはなく、容易に被処理基板2の脱着を行うことができる。
また、第1ヘッドリンス液用ノズル19aおよび第2ヘッドリンス液用ノズル19bからリンス液を噴出させる際には、第1の塗液用ノズル移動機構17aおよび第2の塗液用ノズル移動機構17bによって、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bをヘッドリンス部6b内に移動させて行なうことができる。このように、ヘッドリンス部6b内で、第1ヘッドリンス液用ノズル19aおよび第2ヘッドリンス液用ノズル19bからリンス液を噴出させることで、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bの洗浄や後述するライン洗浄によって発生する排液が、被処理基板収納部6の本体6a内に飛び散ることを防止できる。
【0047】
なお、本実施形態においては、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bを支持して移動させる第1の塗液用ノズル移動機構17aおよび第2の塗液用ノズル移動機構17bを備えた両面塗布装置1を例に挙げて説明したが、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bを移動させることなく、被処理基板2を脱着することが可能であれば、第1の塗液用ノズル移動機構17aおよび第2の塗液用ノズル移動機構17bを備えていなくてもよい。この場合、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bは、被処理基板収納部6内の本体6a内における所定の位置に固定することができる。
【0048】
エッジリンス手段40は、塗液の塗布された被処理基板2の両主面2a、2bの外縁部に付着した余分な塗液を除去する(エッジリンス)ためのものである。図2〜図4に示すように、エッジリンス手段40は、リンス液の収容された移動自在な容器41を備えている。図4に示すように、容器41の上面には、開口部41aが形成されており、容器41の上面からリンス液の液面が露出されるようになっている。容器41の開口部41aの被処理基板2の厚み方向の幅は、図4に示すように、被処理基板2の厚みよりも広くなっている。
【0049】
容器41には、図2に示すリンス液供給手段21によってリンス液が供給される。また、図2に示すように、容器41には、排液タンク25dと、容器41と排液タンク25dとを接続する排液配管25eと、排液バルブ25fとを備える排液手段25gが接続されている。
【0050】
また、エッジリンス手段40には、水平方向に向かって延在するアームであって、容器41を支持し、容器41を水平方向および上下方向に移動させる容器移動機構42が備えられている。図2に示すように、エッジリンス手段40の容器41は、容器移動機構42によって、エッジリンス時には被処理基板2に近づけられ、被処理基板2を脱着する際や、塗布時には被処理基板2から離される。
より詳細には、エッジリンス時には、容器移動機構42によって、被処理基板収納部6の外から本体6a内に容器41を移動させ、図2〜図4に示すように、回転している被処理基板2の外縁部が下側からリンス液に浸漬される位置に容器41を配置させる。このことにより、被処理基板2の両主面2a、2bの外縁部がリンス液に浸漬されて、被処理基板2の外縁部に付着した余分な塗液が除去される。
【0051】
また、被処理基板2を脱着する際には、容器移動機構42によって、容器41を被処理基板収納部6の外に退避させることができる。したがって、容器41が、被処理基板2を脱着する際の作業性を低下させることはなく、容易に被処理基板2の脱着を行うことができる。
また、塗布時には、容器41を被処理基板収納部6の本体6a内における被処理基板2の近傍で待機させることができる。ここでの被処理基板2の近傍とは、被処理基板2とリンス液の液面との距離が0.5cm〜10cmの範囲であることを意味する。被処理基板2とリンス液の液面との距離が上記範囲よりも近いと、塗布時に飛散する塗液によってリンス液が汚染されやすくなるため好ましくない。また、被処理基板2とリンス液の液面との距離が上記範囲よりも近いと、エッジリンスを行うには不適切な塗布時の回転数で被処理基板2とリンス液の液面とが接触してしまい、精度よく塗布およびエッジリンスを行うことができない場合がある。また、被処理基板2とリンス液の液面との距離が上記範囲よりも遠いと、塗布終了後にエッジリンスを開始するまでの間に容器41を所定の位置に移動させることができない場合がある。
塗布時に、容器41を被処理基板収納部6の本体6a内で待機させることで、塗布後に行われるエッジリンス時における容器41の移動距離および移動時間を短くすることができる。なお、容器41は、塗布時にも被処理基板2を脱着する際と同様に、被処理基板収納部6の外に退避させておいてもよい。この場合、塗布時に飛散する塗液によってリンス液が汚染されることを防止できる。
【0052】
吸引手段43は、被処理基板2のエッジリンス時に発生するリンス液からなる霧状の微細な液滴を吸引するとともに、エッジリンス時の装置内のガスを吸引することによりエッジリンス時における装置内のガスの流れを制御する吸引部43aを備えている。
図4に示すように、吸引部43aの被処理基板2の厚み方向中心部には、溝からなるスリット43bが形成され、スリット43b内には、吸引装置に接続された吸引口(図示略)が設けられている。このことにより、被処理基板2のエッジリンス時に発生するリンス液からなる霧状の微細な液滴が飛び散って被処理基板2に付着することをより効果的に防止できるとともに、エッジリンス時における被処理基板2に対するガスの流れをより効果的に安定化させることができる。
【0053】
吸引装置としては、被処理基板2のエッジリンス時に発生するリンス液からなる霧状の微細な液滴を吸引できるとともに、エッジリンス時の装置内のガスを吸引できるものであれば、いかなるものを用いてもよいが、吸引力が1〜10m/分であるものを用いることが好ましい。
また、吸引装置には、排液用配管(図示略)を介して、排液タンク(図示略)が接続されている。なお、吸引装置には、エッジリンス手段40の容器41に接続された排液手段25gが接続されていてもよい。
【0054】
また、図2および図4に示すように、スリット43bの底部である被処理基板2の側面と対向する内壁面43cは、断面視円弧状とされており、スリット43b内にエッジリンスされた被処理基板2が挟み込まれたときに、被処理基板2の側面と内壁面43cとの距離が等間隔となるようにされている。このことにより、エッジリンス時における被処理基板2に対するガスの流れをより効果的に安定化させることができる。
【0055】
また、図4に示す吸引部43aの被処理基板2の側面側の外壁43dは、図2に示すように、被処理基板2の主面側から見た幅が上から下に向かって徐々に広くなっており、吸引部43aの下面が容器41と対向するようにされている。このことにより、吸引部43aが、エッジリンス手段40から発生するリンス液からなる霧状の微細な液滴の飛び散りを効果的に防止できるものとされている。
【0056】
また、吸引手段43には、吸引部43aを支持し、吸引部43aを水平方向および上下方向に移動させる吸引部移動機構44が備えられている。本実施形態においては、図2に示すように、吸引部移動機構44が容器移動機構42に固定されて一体化されており、吸引部移動機構44が容器移動機構42に連動して移動するようになっている。したがって、本実施形態においては、エッジリンス手段40と吸引手段43とが一体化された状態で移動されるようになっており、移動によってエッジリンス手段40と吸引手段43との位置関係がずれないようになっている。一体化されたエッジリンス手段40と吸引手段43とでは、図4に示すように、容器41の開口部41aの被処理基板2の厚み方向の幅の中心と、スリット43bの被処理基板2の厚み方向の幅の中心とが一致するように位置合わせされている。
なお、吸引部移動機構44と容器移動機構42とは、一体化されていてもよいが、個別に設けられていてもよい。
【0057】
本実施形態においては、図2に示すように、吸引手段43の吸引部43aは、吸引部移動機構44(容器移動機構42)によって、エッジリンス時には被処理基板2に近づけられ、被処理基板2を脱着する際や、塗布時には被処理基板2から離される。
より詳細には、エッジリンス時には、吸引部移動機構44(容器移動機構42)によって、エッジリンス手段40とともに被処理基板収納部6の外から本体6a内に吸引部43aを移動させ、エッジリンス手段40の被処理基板2の回転方向(図2においては時計方向)側の位置に、エッジリンス手段40に隣接して吸引部43aを配置させ、吸引部43aのスリット43b内に被処理基板2を挟み込ませる。このことにより、被処理基板2のエッジリンス時に発生するリンス液からなる霧状の微細な液滴を吸引部43aに吸引させることができるとともに、エッジリンス時における装置内のガスを吸引部43aに吸引させることができる。
【0058】
また、被処理基板2を脱着する際には、吸引部移動機構44(容器移動機構42)によって、エッジリンス手段40とともに吸引部43aを被処理基板収納部6の外に退避させる。したがって、吸引部43aが、被処理基板2を脱着する際の作業性を低下させることはなく、容易に被処理基板2の脱着を行うことができる。
また、塗布時には、吸引部43aをエッジリンス手段40とともに被処理基板収納部6の本体6a内における被処理基板2の近傍で待機させる。このことにより、塗布後に行われるエッジリンス時における吸引部43aの移動距離および移動時間を短くすることができる。
【0059】
<ディスクリート磁気記録媒体の製造>
次に、図2に示す両面塗布装置1を用いる塗液の両面塗布方法を、図1に示すディスクリート磁気記録媒体の製造方法におけるレジスト層の形成工程に適用した場合を例に挙げて説明する。
図7〜図9は、図1に示すディスクリート磁気記録媒体の製造工程を説明するための工程図である。また、図10は、図2に示す両面塗布装置1の動作を説明するための図であって、被処理基板2の一方の主面2a側から見た正面図である。
【0060】
図1に示すディスクリート磁気記録媒体を製造するには、まず、中心開口部を有する非磁性基板101の両方の主面に、常法に従って、軟磁性層及び中間層などからなる下地層102を形成する。次に、下地層102の上に磁性層103を形成する。磁性層103は、例えばスパッタ法などの成膜法により、薄膜として下地層102の上面全域に形成する。以上のようにして、図7に示すように、下地層102と磁性層103とが形成された被磁性基板101とする。
【0061】
次に、図7に示す磁性層103の表面全域にレジスト層を形成する。ここでのレジスト層の形成には、図7に示す下地層102と磁性層103とが形成された被磁性基板101を被処理基板2とし、図2に示す両面塗布装置1を用いて以下のようにして行う。
まず、図2に示すように、両面塗布装置1を構成する第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bを、第1の塗液用ノズル移動機構17aおよび第2の塗液用ノズル移動機構17bによって、被処理基板収納部6に設けられたヘッドリンス部6b内に退避させておく。また、図2に示すように、容器移動機構42(吸引部移動機構44)によって、容器41および吸引部43aを被処理基板収納部6の外に退避させておく。
【0062】
次に、被処理基板2の中心開口部を保持機構3aのチャッキング部11に嵌め込み、被処理基板2の厚み方向が水平方向となるように保持機構3aに被処理基板2を固定する。これにより被処理基板2が回転軸12と一体化される。
次に、被処理基板2の一方の主面2aおよび他方の主面2bに塗液の塗布を行う。まず、回転駆動機構3のスピンドルモータ8を駆動させて、被処理基板2の一方の主面2aが時計回りとなるように回転させる。ここでの被処理基板2の回転数は、特に限定されないが、被処理基板2に供給された塗液に対する重力の影響を十分に抑制でき、均一で十分な膜厚を有する塗膜を得るために、塗布時の被処理基板2の回転数を数百〜1000rpm程度とすることが好ましい。
【0063】
次いで、図10(a)に示すように、第1の塗液用ノズル移動機構17aおよび第2の塗液用ノズル移動機構17bによって、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bを移動させ、第1塗液用ノズル18aと第2塗液用ノズル18bとが被処理基板2を挟み込むように被処理基板2の厚み中心面に対して対称に配置させる。また、吸引部移動機構44(容器移動機構42)によって、被処理基板収納部6の外から本体6a内における被処理基板2の近傍にエッジリンス手段40および吸引部43aを移動させる。
【0064】
その後、塗液用バルブ20cを開けて第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bから、第1塗液用ノズル18aと第2塗液用ノズル18bとの間を上から下に向かって回転する被処理基板2の一方の主面2aおよび他方の主面2bに向かって同時に塗液を噴出させ(塗布工程)て、被処理基板2の両主面2a、2bに塗液を拡げる。
次いで、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bを、第1の塗液用ノズル移動機構17aおよび第2の塗液用ノズル移動機構17bによって、被処理基板収納部6に設けられたヘッドリンス部6b内に退避させる。
その後、被処理基板2の回転数を4000〜5000rpm程度とし、被処理基板2に付着した余分な塗液を振り落として均一化する。
【0065】
また、退避させた第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bは、必要に応じてヘッドリンス部6b内で洗浄する。第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bの洗浄は、例えば、被処理基板2の塗布を1枚行うごとに行うことが望ましい。
第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bの洗浄は、第1ヘッドリンス液用ノズル19aおよび/または第2ヘッドリンス液用ノズル19bからリンス液を噴出することによって行われる(塗液用ノズル洗浄工程)。第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bの洗浄は、対向する側のヘッドリンス液用ノズルからリンス液を噴出させて行う(すなわち、第1塗液用ノズル18aであれば第2ヘッドリンス液用ノズル19bから)方が、第1、第2塗液用ノズル18a、18bに対して正面に近い前方斜め上からリンス液を供給して効果的に洗浄できるため好ましいが、同じ側のヘッドリンス液用ノズルから(すなわち、第1塗液用ノズル18aであれば第1ヘッドリンス液用ノズル19aから)下方にリンス液を噴出させて行ってもよいし、両方行ってもよい。
【0066】
また、本実施形態においては、被処理基板2の塗布を数枚〜十数枚行うごとに切替用バルブ28を切り替えて、切替用バルブ28よりも第1、第2塗液用ノズル18a、18b側の塗液用配管20bおよび第1、第2塗液用ノズル18a、18bを洗浄するライン洗浄(塗液用配管洗浄工程)を行うことが好ましい。ライン洗浄は、両面塗布装置1の使用を長期間停止する前や長期間停止した後にも行うことが好ましい。
【0067】
なお、本実施形態においては、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bを移動させる前に被処理基板2の回転を開始したが、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bを移動させてから被処理基板2の回転を開始し、所定の回転速度になった後に、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bから塗液を噴出させてもよい。また、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bを退避させてから、被処理基板2に付着した余分な塗液を振り落とすと、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bに被処理基板2に付着した余分な塗液が付着することを防止できるため望ましいが、余分な塗液を振り落とした後に、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bを退避させてもよい。また、図10(b)に示すように、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bを退避させずにエッジリンスを行い、エッジリンスが終了した後に、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bを退避させてもよい。
【0068】
次に、被処理基板2の外縁部に付着した余分な塗液を除去(エッジリンス)する。エッジリンス時の被処理基板2の回転数は、500〜3000rpm程度とすることが好ましい。エッジリンス時の被処理基板2の回転数が上記範囲未満であると、表面張力および重力により、リンス液が被処理基板2の内部に侵入し、また、リンス液の液だれが起きる場合がある。また、エッジリンス時の被処理基板2の回転数が上記範囲を超えると、被処理基板2とリンス液とが接触した時点でリンス液の液はねが発生し、はねたリンス液が被処理基板2の表面に付着し、その付着箇所でレジストの溶解が発生する場合がある。
【0069】
また、塗液の噴出を終了してからエッジリンスを開始する(被処理基板2の外縁部をリンス液に浸漬する)までの間の時間は、1秒〜10分程度とされることが好ましい。塗液の噴出を終了してからエッジリンスを開始するまでの時間が上記範囲よりも短いと、エッジリンスを開始するまでの間に、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bを退避させることができない場合がある。また、リンス液の液面は、容器41の移動により振動するが、エッジリンスを開始するまでの時間が上記範囲よりも短いと、容器41の移動によるリンス液の液面の振動が収まらず、リンス液の液面状態が安定しない。さらに、エッジリンスを開始するまでの時間が上記範囲よりも短いと、塗液が被処理基板収納部6内に残存している場合がある。また、塗液の噴出を終了してからエッジリンスを開始するまでの時間が上記範囲よりも長いと、塗液の乾燥が進んで、余分な塗液が除去されにくくなる場合がある。
【0070】
エッジリンスは、吸引部移動機構44(容器移動機構42)によって、被処理基板収納部6の外から本体6a内にエッジリンス手段40および吸引部43aを移動させ、回転している被処理基板2の下側の外縁部の例えば0.1〜0.2mmがリンス液に浸漬される位置に容器41を配置させることによって行う(エッジリンス工程)。エッジリンス工程は、エッジリンス手段40の被処理基板2の回転方向側の位置に、エッジリンス手段40に隣接して吸引部43aを配置させ、吸引部43aのスリット43b内に被処理基板2を挟み込ませることによって、リンス液からなる液滴を吸引しながら行う。このことにより、被処理基板2の両主面2a、2bの外縁部がリンス液に浸漬されて、被処理基板2の両主面2a、2bの外縁部に付着した余分な塗液が同時に除去される。なお、エッジリンス時に発生するリンス液からなる霧状の微細な液滴や、エッジリンス時における装置内のガスが吸引部43aによって吸引される。
【0071】
エッジリンスを開始してから終了するまでの時間(被処理基板2の一部をリンス液に浸漬させている時間)は1〜10秒間程度であることが好ましい。エッジリンスを開始してから終了するまでの時間が1秒未満であると、被処理基板2の外縁部に付着した余分な塗液を十分に除去できない場合がある。また、エッジリンスを開始してから終了するまでの時間が10秒を超えると、エッジリンスの効果が向上せずに、生産性が低下するので好ましくない。
【0072】
その後、容器移動機構42(吸引部移動機構44)によって、容器41および吸引部43aを、被処理基板収納部6の外に退避させる。
以上のようにしてレジスト層106が形成された被磁性基板101の断面構造を図8に示す。
【0073】
次に、図9に示すように、レジスト層106を磁気記録パターンに対応する平面形状でパターニングし、レジストパターン107を形成する。
レジスト106層をパターニングする方法としては、レジスト層106の上から直接スタンパを密着させ、高圧でプレスする方法等を用いることができる。また、レジストとして、紫外線硬化型樹脂を用いた場合には、フォトリソグラフィー技術を適用してパターン形成を行ってもよい。
【0074】
レジスト106層をパターニングする際に用いられるスタンパは、例えば、金属プレートに電子線描画などの方法を用いて微細なトラックパターンを形成したものが使用できる。具体的には、例えば、スタンパとしてNiスタンパなどが使用できる。スタンパには、通常のデータを記録するトラックの他にバーストパターン、グレイコードパターン、プリアンブルパターンといったサーボ信号のパターンも形成できる。
【0075】
次に、レジストパターン107の形成されていない領域の磁性層103の磁気特性を改質し、磁性層103の磁気特性が改質されてなる非磁性部である改質部104を形成し、磁気記録パターンを磁気的に分離する領域を形成する。
磁性層103の磁気特性の改質は、磁性層103上にレジストパターン107が形成された被磁性基板101を、反応性プラズマに曝すことによって行うことができる。反応性プラズマとしては、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)や反応性イオンプラズマ(RIE;Reactive Ion Plasma)などが例示できる。
次に、レジストパターン107を除去する。レジストパターン107の除去は、ドライエッチング、反応性イオンエッチング、イオンミリング、湿式エッチング等の手法を用いて行うことができる。
【0076】
次に、磁性層103の上に、保護膜105と潤滑剤層とを形成する。保護膜105は、一般的には、P−CVD法などを用いてダンヤモンド状カーボン(Diamond Like Carbon)の薄膜を成膜する方法などによって形成できる。また、潤滑剤層は、例えば、潤滑剤を含有する溶液を、保護膜105の表面に塗布した後、乾燥することによって形成できる。
【0077】
このようなディスクリート磁気記録媒体の製造方法では、磁性層103の表面に磁気記録パターンに合致させたレジストパターン107を形成し、その表面を反応性プラズマにより処理した後、レジストパターン107を除去して保護層105と潤滑材とを順次形成して磁気記録媒体を製造している。図1に示す磁気記録媒体100では、磁気的に分離された磁気記録パターンが、非磁性基板101上に凹凸を形成することなく得られたものであるので、表面の平滑性に優れ、磁気ヘッドの低浮上化を実現可能なものとなる。
【0078】
しかし、ディスクリート磁気記録媒体の製造方法は上述した方法に限定されるものではなく、例えば、次のような方法を用いてもよい。
すなわち、磁性層の上に保護層を形成し、その表面に本発明の両面塗布装置を用いて磁気記録パターンに合致させたレジストパターンを形成し、その後、反応性プラズマによる磁性層の改質処理を行ってもよい。このような方法では、反応性プラズマ処理の後に保護膜を形成する必要がなく、生産性の向上および磁気記録媒体の製造工程における汚染の低減の効果が得られる。なお、本発明者らは、磁性層の表面に保護膜を形成した後においても、磁性層と反応性プラズマとの反応を生じさせることが可能であることを確認している。
【0079】
本実施形態の両面塗布装置1は、被処理基板2の厚み方向が水平方向となるように被処理基板2を保持する保持機構3aと、被処理基板2を周回りに回転させる回転駆動機構3と、被処理基板2の両主面2a、2bに塗液を噴出する第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bと、リンス液を噴出させて第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bを洗浄する第1ヘッドリンス液用ノズル19aおよび第2ヘッドリンス液用ノズル19bとを備えているものであるので、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bから被処理基板2に向かって塗液を噴出させた後、第1ヘッドリンス液用ノズル19aおよび第2ヘッドリンス液用ノズル19bからリンス液を噴出させて第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bを洗浄することができる。したがって、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bが目詰まりすることを防止できるとともに、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bに塗液や塗膜が付着することよる噴出量のばらつきを防止でき、複数枚の被処理基板2に対して塗布した場合であっても、塗布量のばらつきが少なく、塗布量を高精度で制御できる。
【0080】
また、本実施形態の両面塗布装置1は、塗液用ノズルが、被処理基板2の一方の主面2aに塗液を噴出する第1塗液用ノズル18aと、被処理基板2の他方の主面2bに塗液を噴出する第2塗液用ノズル18bとからなり、第1塗液用ノズル18aと第2塗液用ノズル18bとが、被処理基板2の厚み中心面に対して対称に配置され、ヘッドリンス用ノズルが、第1塗液用ノズル18aの上方に第1塗液用ノズル18aに隣接して設けられた第1ヘッドリンス液用ノズル19aと、第2塗液用ノズル18bの上方に第2塗液用ノズル18bに隣接して設けられた第2ヘッドリンス液用ノズル19bとからなるものであるので、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bの洗浄は、対向する側のヘッドリンス液用ノズルからリンス液を噴出させて行うこともできるし、同じ側のヘッドリンス液用ノズルから下方にリンス液を噴出させて行うこともできるし、両方行なうこともでき、適宜最適な方法を選択して行うことができる。
【0081】
また、本実施形態の両面塗布装置1は、第1塗液用ノズル18aおよび第1ヘッドリンス液用ノズル19aを支持し、第1塗液用ノズル18aを被処理基板2の一方の主面2aと離間しつつ一方の主面2aに沿って被処理基板2の直径方向に移動させる第1の塗液用ノズル移動機構17aと、第2塗液用ノズル18bおよび第2ヘッドリンス液用ノズル19bを支持し、第2塗液用ノズル18bを被処理基板2の他方の主面2bと離間しつつ他方の主面2bに沿って被処理基板2の直径方向に移動させる第2の塗液用ノズル移動機構17bとを備えているので、第1の塗液用ノズル移動機構17aおよび第2の塗液用ノズル移動機構17bによって、第1、第2塗液用ノズル18a、18bおよび第1、第2ヘッドリンス液用ノズル19a、19bを、被処理基板収納部6に設けられたヘッドリンス部6b内などに退避させて、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bの洗浄を行うことができる。よって、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bの洗浄によって発生する排液が、被処理基板収納部6の本体6a内に飛び散ることを防止できる。
【0082】
また、本実施形態の両面塗布装置1は、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bに塗液を供給する塗液供給手段20と、第1ヘッドリンス液用ノズル19aおよび第2ヘッドリンス液用ノズル19bにリンス液を供給するリンス液供給手段21とが備えられ、塗液供給手段20には、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bと塗液用タンク20aとを接続する塗液用配管20bが備えられ、リンス液供給手段21には、第1ヘッドリンス液用ノズル19aおよび第2ヘッドリンス液用ノズル19bとリンス液用タンク21aとを接続するリンス液用配管21bとが備えられ、リンス液用配管21bは、接続配管28aによって塗液用配管20bと接続されており、接続配管28aには切替用バルブ28が接続されているので、切替用バルブ28を切り替えて、切替用バルブ28よりも第1、第2塗液用ノズル18a、18b側の塗液用配管20bおよび第1、第2塗液用ノズル18a、18bを洗浄するライン洗浄を行うことができ、切替用バルブ28よりも第1、第2塗液用ノズル18a、18b側の塗液用配管20bおよび第1、第2塗液用ノズル18a、18bに塗液や塗膜が付着することよる噴出量のばらつきを防止できる。
【0083】
また、本実施形態の両面塗布方法は、第1ヘッドリンス液用ノズル19aおよび第2ヘッドリンス液用ノズル19bからリンス液を噴出させて第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bを洗浄する塗液用ノズル洗浄工程を備えているので、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bが目詰まりすることを防止できるとともに、第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bに塗液や塗膜が付着することよる噴出量のばらつきを防止でき、複数枚の被処理基板に対して塗布した場合であっても、塗布量のばらつきが少なく、塗布量を高精度で制御できる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の活用例として、中心開口部を有するディスク基板の両側に設けられた磁性層の上に、レジスト層を形成するための塗液を塗布する両面塗布装置が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、ディスクリート型磁気記録媒体の一例を示した断面図である。
【図2】図2は、本発明の両面塗布装置の全体構成を説明するための概略図であり、被処理基板の一方の主面側から見た正面図である。
【図3】図3は図2に示す両面塗布装置の一部を示した縦断面図である。
【図4】図4は、図2に示す両面塗布装置の一部を示した上面図である。
【図5】図5(a)および図5(b)は、第1塗液用ノズル18aおよび/または第2塗液用ノズル18bが有する塗液噴出口の形状を説明するための図である。
【図6】第1塗液用ノズル18aおよび第2塗液用ノズル18bと、被処理基板2との配置を説明するための概略拡大図である。
【図7】図7は、図1に示すディスクリート磁気記録媒体の製造工程を説明するための工程図である。
【図8】図8は、図1に示すディスクリート磁気記録媒体の製造工程を説明するための工程図である。
【図9】図9は、図1に示すディスクリート磁気記録媒体の製造工程を説明するための工程図である。
【図10】図10は、図2に示す両面塗布装置1の動作を説明するための図であって、被処理基板2の一方の主面2a側から見た正面図である。
【符号の説明】
【0086】
1…両面塗布装置、2…被処理基板、2a…一方の主面、2b…他方の主面、3a…保持機構、3…回転駆動機構、6…被処理基板収納部、6a…本体、6b…ヘッドリンス部、8…スピンドルモータ、11…チャッキング部、12…回転軸、9…スピンドル軸、10…プーリ、16a、16b…取り付け部、17a…第1の塗液用ノズル移動機構、17b…第2の塗液用ノズル移動機構、18a…第1塗液用ノズル(塗液用ノズル)、18b…第2塗液用ノズル(塗液用ノズル)、19a…第1ヘッドリンス液用ノズル(ヘッドリンス液用ノズル)、19b…第2ヘッドリンス液用ノズル(ヘッドリンス液用ノズル)、20…塗液供給手段、20a…塗液用タンク、20b…塗液用配管、20c…塗液用バルブ、21…リンス液供給手段、21a…リンス液用タンク、21b…リンス液用配管、21c…リンス液用バルブ、21d…分岐配管、21e…リンス液バルブ、22…内周部、23…外周部、25…排液手段、25a…排液タンク、25b…排液配管、25c…分岐排液配管、25d…排液タンク、25e…排液配管、25f…排液バルブ、25g…排液手段、26…排ガス手段、26a…排ガスタンク、26b…配管、27…ガス供給手段、31、32、33、34、35…塗液噴出口、40…エッジリンス手段、41…容器、41a…開口部、42…容器移動機構、43…吸引手段、43a…吸引部、43b…スリット、43c…内壁面、43d…外壁、44…吸引部移動機構、100…磁気記録媒体、101…非磁性基板、101a…中心開口部、102…下地層、103…磁性層、104…改質部、105…保護膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板の両主面に塗液を供給し、前記被処理基板を回転操作して前記塗液を両主面に拡げることにより前記被処理基板の両主面に塗膜を形成する両面塗布装置であって、
前記被処理基板の厚み方向が水平方向となるように前記被処理基板を保持する保持機構と、
前記被処理基板を周回りに回転させる回転駆動機構と、
前記被処理基板の両主面に塗液を噴出する塗液用ノズルと、
リンス液を噴出させて前記塗液用ノズルを洗浄するヘッドリンス用ノズルとを備えることを特徴とする両面塗布装置。
【請求項2】
前記塗液用ノズルが、前記被処理基板の一方の主面に塗液を噴出する第1塗液用ノズルと、前記被処理基板の他方の主面に塗液を噴出する第2塗液用ノズルとからなり、前記第1塗液用ノズルと前記第2塗液用ノズルとが、前記被処理基板の厚み中心面に対して対称に配置され、
前記ヘッドリンス用ノズルが、前記第1塗液用ノズルの上方に前記第1塗液用ノズルに隣接して設けられた第1ヘッドリンス液用ノズルと、前記第2塗液用ノズルの上方に前記第2塗液用ノズルに隣接して設けられた第2ヘッドリンス液用ノズルとからなることを特徴とする請求項1に記載の両面塗布装置。
【請求項3】
前記第1塗液用ノズルおよび前記第1ヘッドリンス液用ノズルを支持し、前記第1塗液用ノズルを前記被処理基板の前記一方の主面と離間しつつ前記一方の主面に沿って前記被処理基板の直径方向に移動させる第1の塗液用ノズル移動機構と、
前記第2塗液用ノズルおよび前記第2ヘッドリンス液用ノズルを支持し、前記第2塗液用ノズルを前記被処理基板の前記他方の主面と離間しつつ前記他方の主面に沿って前記被処理基板の直径方向に移動させる第2の塗液用ノズル移動機構とを備えていることを特徴とする請求項2に記載の両面塗布装置。
【請求項4】
前記塗液用ノズルに前記塗液を供給する塗液供給手段と、前記ヘッドリンス用ノズルに前記リンス液を供給するリンス液供給手段とが備えられ、
前記塗液供給手段には、前記塗液用ノズルと塗液用タンクとを接続する塗液用配管が備えられ、前記リンス液供給手段には、前記ヘッドリンス用ノズルとリンス液用タンクとを接続するリンス液用配管とが備えられ、
前記リンス液用配管は、接続配管によって前記塗液用配管と接続されており、前記接続配管には切替用バルブが接続されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の両面塗布装置。
【請求項5】
被処理基板の両主面に塗液を供給し、前記被処理基板を回転操作して前記塗液を両主面に拡げることにより前記被処理基板の両主面に塗膜を形成する塗液の両面塗布方法であって、
前記被処理基板の厚み方向が水平方向となるように前記被処理基板を保持し、前記被処理基板を周回りに回転させ、前記被処理基板の両主面に塗液を噴出する塗液用ノズルから前記被処理基板に向かって塗液を噴出させる塗布工程と、
ヘッドリンス用ノズルからリンス液を噴出させて前記塗液用ノズルを洗浄する塗液用ノズル洗浄工程とを備えていることを特徴とする塗液の両面塗布方法。
【請求項6】
請求項4に記載の両面塗布装置を用いて被処理基板の両主面に塗膜を形成する塗液の両面塗布方法であって、
前記被処理基板の厚み方向が水平方向となるように前記被処理基板を保持し、前記被処理基板を周回りに回転させ、前記被処理基板の両主面に塗液を噴出する塗液用ノズルから前記被処理基板に向かって塗液を噴出させる塗布工程と、
前記切替用バルブを切り替えて、前記切替用バルブよりも前記塗液用ノズル側の前記塗液用配管および前記塗液用ノズルを洗浄する塗液用配管洗浄工程を備えていることを特徴とする塗液の両面塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−245514(P2009−245514A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90575(P2008−90575)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】