説明

中子孔検査方法

【課題】高価な画像処理装置を用いることなく中子孔の狭窄・閉塞状態の良否判定を短時間で行うことができる中子孔検査方法およびその装置を目的とする。
【解決手段】 内面が微細凹凸粗面で非直線状の中子孔3の開口2から投光器4の検査光を孔内面に照射し、孔内面形状を表した投影光を一つ以上の屈曲孔部4で拡散反射させて孔内面照射用の面光源を一つ以上得、該面光源からの反射光を他方の開口2に臨ませた受光器6により検出し、検出された光量を良否判定器15で閾値と比較して中子孔3の狭窄・閉塞状態を判定するものとしたから、一方の開口2から他方の開口2までの屈曲孔部形状と孔内面形状に基く光量が反射光として検出され、中子孔の良否判定を簡単且つ短時間で行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中子を用いた鋳造品に形成される中子孔の狭窄や閉塞状態を検査して成形品の良否判定を行う中子孔検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シリンダヘッドやエンジンブロック等の鋳造品等に形成される中子孔の閉塞や狭窄等を検査する検査装置は、シリンダヘッドの冷却水路を構成する通路の所望の開口に挿入し、該開口内部に向けて投光を行う投光部と、前記通路を通過して他の所定の開口から射出される光を二次元平面的に受光して撮像する撮像部と、撮像画像の特徴を識別して冷却水路等の通路の閉塞有無を判別する検査部を備えたものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかし、撮像部により撮像された撮像画像の特徴を検査部により識別するため、画像の演算処理が必要となり閉塞の有無の判別に時間がかかるうえに、撮像部や画像を演算処理するコンピュータが必要となり装置が高価になるという問題がある。しかも、光量不足を補うため投光部を通路の開口に挿し込むことにより開口縁に生じる狭窄を検出することができないという問題がある。
【特許文献1】特開平09−171554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は高価な画像処理装置を用いることなく中子孔の狭窄・閉塞状態の良否判定を短時間で行うことができる中子孔検査方法を提供すること目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、内面が微細凹凸粗面で非直線状の中子孔の開口から投光器の検査光を孔内面に照射し、孔内面形状を表した投影光を一つ以上の屈曲孔部で拡散反射させて孔内面照射用の面光源を一つ以上得、該面光源からの反射光を他方の開口に臨ませた受光器により検出し、検出された光量を良否判定器で閾値と比較して中子孔の狭窄・閉塞状態を判定する中子孔検査方法であり、該中子孔検査方法において、検査光を平行光線としたり、他方の開口からの反射光をレンズにより収束させて受光器に入射したりすればより好ましいものとなる。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、内面が微細凹凸粗面で非直線状の中子孔の開口から投光器の検査光を孔内面に照射し、孔内面形状を表した投影光を一つ以上の屈曲孔部で拡散反射させて孔内面照射用の面光源を一つ以上得、該面光源からの反射光を他方の開口に臨ませた受光器により検出し、検出された光量を良否判定器で閾値と比較して中子孔の狭窄・閉塞状態を判定するものとしたから、一方の開口から他方の開口までの屈曲孔部形状と孔内面形状に基く光量が反射光として検出され、中子孔の良否判定を簡単且つ短時間で行うことができる。また、投光器の検査光は屈曲孔部により散乱反射されて受光器に入射されるため、光量の減衰が抑えられ検出精度の低下を防ぐことができる。
【0007】
しかも、投光器と受光器からなる簡単な装置により検査ができるので装置が安価なものとなるうえに、画像処理を行う必要がないので検査時間を大幅に短縮できるものとなる。また、投光器の検査光は屈曲孔部により散乱反射されて受光器に入射されるため、光量の減衰が抑えられ検出精度の低下を防ぐことができるものとなる。
【0008】
請求項2のように、検査光を平行光線とすることにより、中子孔内面形状の輪郭がより明瞭な投影光となるため光量の検出精度を高めることができる。
【0009】
請求項3のように、他方の開口からの反射光をレンズにより収束させて受光器に入射させることにより、受光される光量が増えるため検出精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、シリンダヘッドの中子孔を検査する本発明の好ましい実施の形態を図1〜3に基いて詳細に説明する。
図1、2、3中、1は中子を用いて鋳造されたシリンダヘッドであり、該シリンダヘッド1には外部に通じる円形や長円形の開口2を多数形成した非直線状の中子孔3が形成されている。該中子孔3の内面は中子砂により微細凹凸粗面となっているので、非直線状の中子孔3に形成される一つ以上の屈曲孔部4周辺に投影される投影光は散乱反射されて孔径より大きな面光源となって孔内面を照射するものとなる。
【0011】
5は一方の開口2を通じて中子孔3に検査光を照射する投光器であり、該投光器5はLEDやレーザよりなるものとしている。6は中子孔3の他方の開口2側に配置される受光器であり、該受光器6はホトトランジスタやホトダイオードよりなる。投光器5からの検査光は孔内面を照射して屈曲孔部4により散乱反射される。そして、屈曲孔部4で検査光は散乱反射して面光源が生成され、該面光源の反射光は孔内面を照射して受光器6に入射されるものとしている。
【0012】
15は中子孔3の狭窄・閉塞状態を判定する良否判定器であり、該良否判定器15は受光器6により検出された光量を予め設定された閾値と比較して狭窄の度合いを判定するものである。また、閾値は狭窄度合い対応する光量をデータに基づいて設定する。
【0013】
このように構成されたものは、図1、2に示されるように、シリンダヘッド1に形成される隣接される長円形の開口2間(X部)に投光器5と受光器6とを配設するか、図2、3に示されるように、シリンダヘッド1に形成される隣接される円形と長円形の開口2間(Y部)に投光器5と受光器6とを配設する。このとき受光器6は投光器5からの検査光が散乱反射されて入射されるように配置する。
【0014】
そして、図1または図3に示されるように、投光器5より長円形の開口2を通じて検査光を横孔あるいは斜孔により連通される非直線状の中子孔3内に照射すれば、この検査光の照射により孔内面を通過する通過光は孔内面形状を投影したものとなる。このように孔内面形状を表す投影光は中子孔3の屈曲孔部4に投影されることとなる。このため孔内面に狭窄があれば影として写し出されるので投影光の光量は狭窄に応じて低下し、閉塞があれば投影光は生じないこととなる。
【0015】
屈曲孔部4に投影される投影光は中子砂により形成される微細凹凸粗面により散乱反射されて面光源となる。この面光源の大きさは次の孔内面(内径)より大きいことが必要となる。また、屈曲孔部4に生成される面光源の光量は開口2から屈曲孔部4までの孔内面に生じる狭窄の度合いにより変動し、閉塞している場合には面光源が生成されないことはいうまでもない。
【0016】
そして、面光源からの反射光を他方の隣接する長円形または円形の開口2に臨ませた受光器6により検出すれば、面光源から他方の開口2までの孔内面形状の狭窄度合いに基く光量が検出されることとなる。このように、他方の開口2からでる反射光の光量は一方の開口2と屈曲孔部4間の孔内面形状および他方の開口2から屈曲孔部4間の孔内面形状に従うものとなるから、いずれか一方にのみ狭窄があっても、双方に狭窄があっても、中子孔3の狭窄状態を検査することができる。
【0017】
そして、受光器6により検出された反射光の光量を良否判定器15に設定された閾値と比較し、閾値より少ない光量であれば狭窄の状態が許容値を越えていると判定し、光量が検出されなければ中子孔は閉塞されていることが検知される。
【0018】
図4は、投光器5から照射される検査光を平行光線とする、例えばテレセントリック光学系よりなるレンズ10を投光器5に前方に設けた例を示す説明図であり、1は例えばシリンダヘッドであり、2はシリンダヘッド1に形成される開口であり、3は内面を微細凹凸粗面とした非直線状の中子孔である。11は受光器6に入射される通過光を収束させるレンズである。
【0019】
前記レンズ10によって検査光を平行光線とすることにより、孔内面に平行な検査光を照射できるので、孔内面形状の輪郭が明確な投影光となり、正確な光量が検出されるので検査精度を高めることができる。また、通過光を収束させる前記レンズ11により反射光を収束させることにより減衰された反射光の光量を補うことができるので、光量検出精度を向上させることができる。
【0020】
また、検査光を平行光線とすると、図4に示されるように屈曲孔部4が描く円弧が大きい場合、屈曲孔部4の内側に比較的大きな検査不能部が生まれることとなるので、図5に示されるように、投光器5からの検査光を平行光線とせず、投光器5の検査光を放射状に照射される拡散光とする。こうすることにより屈曲孔部4の内側に生じる検査不能部を小さくすることができる。また、このとき投光器5と受光器6とを開口2に近接させることにより光の減衰を抑えることができる。
【0021】
しかし、投光器5と受光器6とを開口2に近接させることにより、両開口2口縁に僅かではあるが検査不能部が生じることとなる。この両開口2の口縁に生じる検査不能部をなくしたい場合には、図6に示されるように、投光器5と受光器6とを開口2から若干遠ざけることにより、開口2の口縁に生じる検査不能部をなくすことができるが、投影光の減衰が大きくなるので投光器5の光量を大きくすることにより検出精度の低下を抑えることができる。
【0022】
図7はシリンダヘッド1に形成される中子孔3を略L形としたものである。また、図8は中子孔3がU字状で屈曲孔部4が複数形成されるものであり、投光器5からの検査光を中子孔内に照射し、その孔内面形状の投影光を最初の屈曲孔部4で散乱反射させて面光源を得て、該面光源の反射光を続く孔内面に照射して、その孔内面形状の投影光を次の屈曲孔部4で散乱反射させて新しい面光源を得て、該新しい面光源の反射光を他方の開口2に通じる孔内面を照射し、他方の開口からの反射光を受光器6に入射させて、その光量を検出するものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の好ましい実施の形態を示す断面図である。
【図2】同じく底面図である。
【図3】同じく他の中子孔を検査する状態を示す断面図である。
【図4】中子孔に平行光線を照射して検査を行う説明図である。
【図5】中子孔を開口に近接させた投光器と受光器により検査を行う説明図である。
【図6】中子孔を開口より遠ざけた投光器と受光器により検査を行う説明図である。
【図7】直交した中子孔の検査を行う説明図である。
【図8】U字状に屈曲した中子孔の検査を行う説明図である。
【符号の説明】
【0024】
2 開口
3 中子孔
4 屈曲孔部
5 投光器
6 受光器
15 良否判定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面が微細凹凸粗面で非直線状の中子孔の開口から投光器の検査光を孔内面に照射し、孔内面形状を表した投影光を一つ以上の屈曲孔部で拡散反射させて孔内面照射用の面光源を一つ以上得、該面光源からの反射光を他方の開口に臨ませた受光器により検出し、検出された光量を良否判定器で閾値と比較して中子孔の狭窄・閉塞状態を判定することを特徴とする中子孔検査方法。
【請求項2】
検査光を平行光線とすることを特徴とする請求項1に記載の中子孔検査方法。
【請求項3】
他方の開口からの反射光をレンズにより収束させて受光器に入射させることを特徴とする請求項1または2に記載の中子孔検査方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−26050(P2008−26050A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196537(P2006−196537)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(393011038)菱栄エンジニアリング株式会社 (59)
【Fターム(参考)】