説明

中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体、それからなる食品製剤、化粧品及び抗肥満剤

【課題】 副作用が弱く、優れた中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体、それからなる食品製剤、化粧品及び抗肥満剤を提供する。
【解決手段】 ここでいうアリイン脂肪酸結合体は、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、ガンマ−リノレン酸、エイコサテトラエン酸、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸又はアルファ−リポ酸のいずれから選択される脂肪酸の側鎖がアリインのスルホニル基と結合したものである。また、アリイン脂肪酸結合体は、ギョウジャニンニク、タマネギ又はニンニクの粉砕物、食用魚類の粉砕物、大豆粉砕物及び納豆菌を添加して発酵させた発酵物をアルカリ還元化後、柿の葉エキス含有大豆油により分離される油溶性部分を採取して得られるものである。食品製剤、化粧品及び抗肥満剤は、アリイン脂肪酸結合体を含有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、肥満の改善効果又は予防効果を有し、中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体、それからなる食品製剤、化粧品及び抗肥満剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
肥満は、メタボリック症候群を含めた生活習慣病と密接に関連しており、飢餓に苦しむ人類が存在する一方で、肥満人口は、世界で1億6千万人ともいわれる。日本においても、平成12年の国民栄養調査によれば、2300万人が肥満又はその前段階の人口と言われている。また、肥満は、重症の場合には肥満症として疾病にも位置付けられており、薬物療法や外科療法が実施され、治療薬の開発も進められている。
【0003】
さらに、肥満は、高脂血症が原因で発症するケースがあり、糖尿病、高血圧症、動脈硬化症を代表とした生活習慣病の原因の一つであり、過剰な脂肪の蓄積が引き金と考えられている。特に、中性脂肪は、生体内でも生合成され、食事由来の中性脂肪ともに組織に蓄積されて、実質臓器の機能を低下させる。また、過剰の中性脂肪は血管内皮細胞を攻撃し、血管平滑筋細胞の働きにも影響を及ぼし、動脈硬化の一因にもなる。
【0004】
中性脂肪の除去には、外科療法として脂肪吸引法が考案されているものの、一時的な対症療法であり、体質の改善には至らないため、再度の脂肪蓄積が認められる。その脂肪減少の効果は一時的であり、体液量の変化や手術による痛み、後遺症などの問題もある(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
肥満で認められる中性脂肪は血中から脂肪組織に移行して蓄積され、種々の生活習慣病を発症させる。肥満を改善するためには、中性脂肪を減少させることが課題である。
【0006】
中性脂肪の減少のためには、中性脂肪を体内に吸収させない手段、血中に移行した中性脂肪を脂肪組織に蓄積させない手段、蓄積した中性脂肪を消失させる手段などが外科的、内科的又は栄養学的に設定されている。
【0007】
中性脂肪の分解にはリパーゼという中性脂肪分解酵素が関与している。定常状態での活動及びアドレナリンなどの神経伝達物質刺激によりこのリパーゼの生成が誘導され、その活性が活性化される場合がある(例えば、非特許文献2参照。)。
【0008】
中性脂肪を減少させる方法として、特に、脂肪細胞の細胞膜にあるベータ3アドレナリン受容体が活性化され、アドニレートシクラーゼが活性化、さらに、サイクリックAMPが増加して、脂肪細胞型リパーゼが活成化されて、中性脂肪を分解する過程が注目されており、その働きを増強することが肥満の改善にもつながることから(例えば、非特許文献3参照。)、リパーゼ活性化作用を有する物質の探索及び開発が進められているものの、産業上の利用には至っていない。
【0009】
リパーゼに関する発明としては、リパーゼの安定化方法があり、中性脂肪測定試薬において、リパーゼにポリオキシエチレン直鎖アルキルエーテルを共存させることを特徴とするリパーゼの安定化方法について報告されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
また、特定のリパーゼ基質およびリパーゼ基質可溶化剤である1,2−ジフタノイル−グリセロ−3−ホスホコリンを少なくとも含有する酵素活性測定用又はリパーゼ基質溶液およびそれを利用したリパーゼ活性測定用試薬キットについて報告されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0011】
また、組換プラスミドおよびこれをベクターとして用いる異種蛋白質の分泌生産方法がみられる(例えば、特許文献3参照。)。
【0012】
一方、脂質代謝に関する発明には、天然物由来の中性脂肪の低下を目的とした植物であるバナバに関しての報告があり、成分としてコロソリン酸が同定されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0013】
また、化学合成されたリパーゼ活性化剤の報告は少なく、たとえば、デキストラン硫酸とクロフィブラートがある。しかし、デキストラン硫酸には抗凝血、下痢などの副作用が報告され、問題となるケースが多い。また、クロフィブラートやベザフィブレートについても、筋肉痛、肝臓障害、CPK値の上昇などの副作用が認められる。
【0014】
魚類より得られる魚油を摂食することにより、動脈硬化症の発症の抑制が報告されている。この働きは、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸などの多価不飽和脂肪酸に起因していることが研究されている。
【0015】
アリインは、ニンニク、タマネギ、ギョウジャニンニクに含有されるスルホン基を有するアミノ酸誘導体であり、筋肉増強作用や滋養強壮作用が知られているものの、脂肪組織に対する働きについては、報告がない。
【0016】
エイコサペンタエン酸による脂肪分解作用に関する発明として、脂肪ブレンドの発明があり、ここでは、油類,脂肪類および/またはレシチン類をベースにして、多不飽和脂肪酸類も含む脂肪ブレンドが提供されている(例えば、特許文献5参照。)。しかし、組成物の発明であり、エイコサペンタエン酸などの多価不飽和脂肪酸とアリインとの結合体に関する発明は、見当たらない。
【0017】
中性脂肪と化粧品に関係について皮膚の土台である皮下組織や脂肪組織を維持する化粧品の例は少ない。つまり、皮膚組織の皮下脂肪の過剰な増加は、皮膚の健康状態を左右し、血流やリンパの流れを阻害することから、皮膚における中性脂肪を適切に維持することは、重要であり、中性脂肪量を調整する化粧品は新しいコンセプトを持つ製品群になる可能性がある。
【0018】
加えて、ベータ3アドレナリン受容体に特異的に結合するベータ3アドレナリン受容体作動薬が開発されつつあるものの、完成されておらず、産業上の利用に至っていない。
【特許文献1】特開2002−369681
【特許文献2】特開平11−318494
【特許文献3】特開平5−284973
【特許文献4】特開2002−205949
【特許文献5】特表2001−526908
【非特許文献1】Markantonis、SLら、Clin.Ther.26、271−281、2004。
【非特許文献2】Berman Mら、Obes. Res.12、32−39、2004。
【非特許文献3】Faulds、Gら、J.Clin.Endocrinol.Metab.88、2269−2273、2003。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
前記したように中性脂肪を減少させるために、化学合成されたリパーゼ活性化剤は、筋肉痛、血液凝固系の異常、下痢などの副作用を発生させる問題がある。
【0020】
一方、天然由来の物質についてその安全性は高いものの、その効果が軽度であるという問題がある。そこで、副作用が弱く、効果の優れた脂肪減少効果を示す天然物由来物質が望まれている。
【0021】
この発明は上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、副作用が弱く、優れた中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体を提供することである。
【0022】
ギョウジャニンニク、タマネギ又はニンニクの粉砕物、食用魚類の粉砕物、大豆粉砕物、納豆菌を添加して発酵させた発酵物をアルカリ還元化後、柿の葉エキス含有大豆油により分離される油溶性部分を採取して得られるリパーゼ活性化作用を呈する中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体を提供することである。
【0023】
中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体を含有する副作用が弱く、優れた食品製剤を提供することにある。
【0024】
中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体を含有する副作用が弱く、優れた化粧品を提供することにある。
【0025】
中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体を含有する副作用が弱く、優れた抗肥満剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、下記の式(1)で示される中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体に関するものである。
【0027】
【化1】

Xは、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、ガンマ−リノレン酸、エイコサテトラエン酸、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸、アルファ−リポ酸のいずれから選択される一つ。
【0028】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の結合体のうち、Xがエイコサペンタエン酸である下記の式(2)で示される中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体に関するものである。
【0029】
【化2】

【0030】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の結合体のうち、Xがドコサヘキサエン酸である下記の式(3)で示される中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体に関するものである。
【0031】
【化3】

【0032】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の結合体のうち、Xがアルファ−リポ酸である下記の式(4)で示される中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体に関するものである。
【0033】
【化4】

【0034】
請求項5に記載の発明は、ギョウジャニンニク、タマネギ又はニンニクの粉砕物、食用魚類の粉砕物、大豆粉砕物及び納豆菌を添加して発酵させた発酵物をアルカリ還元化後、柿の葉エキス含有大豆油により分離される油溶性部分を採取して得られる請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4に記載の中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体に関するものである。
【0035】
請求項6に記載の発明は、請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4に記載の中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体1重量をエタノールに溶解し、ジアシルグリセロール0.3〜3重量、キトサン0.5〜5重量を添加し、攪拌し、加温してエタノールを除去して得られる組成物からなる食品製剤に関するものである。
【0036】
請求項7に記載の発明は、請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4に記載の中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体1重量に、アスタキサンチン0.3〜3重量、クロロゲン酸エステラーゼ0.005〜0.05重量を添加し、加温して得られる組成物からなる化粧品に関するものである。
【0037】
請求項8に記載の発明は、請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4に記載の中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体からなる抗肥満剤に関するものである。
【発明の効果】
【0038】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4又は請求項5に記載の中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体によれば、副作用が弱く、優れた肥満改善効果が発揮される。
【0039】
請求項6に記載の食品製剤によれば、副作用が弱く、優れた肥満改善効果が発揮される。
【0040】
請求項7に記載の化粧品によれば、副作用が弱く、優れた肥満改善効果が発揮される。
【0041】
請求項8に記載の抗肥満剤によれば、副作用が弱く、優れた肥満改善効果が発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、この発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0043】
まず、本実施形態の中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体は、下記の式(1)で示されるものである。
【0044】
【化5】

Xは、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、ガンマ−リノレン酸、エイコサテトラエン酸、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸、アルファ−リポ酸のいずれから選択される一つ。
【0045】
中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体の基本的な構造は、アリインのスルホン基に結合したアリル基に替わり、脂肪酸の炭素基が結合した構造である。
【0046】
この結合は、脂肪酸のカルボキシル基側ではなく、脂肪側鎖部分の炭素との結合である。
【0047】
アリインは別名がアリルスルホニルシステインであることから、前記のアリイン脂肪酸結合体は、脂肪酸スルホニルシステインである。
【0048】
このアリイン脂肪酸結合体は、脂肪細胞の細胞膜に入りこみ、細胞膜の流動性を高めて脂肪細胞を軟らかくする働きがあり、軟らかくなった脂肪細胞は、脂肪部分を分離しやすくして、中性脂肪を減少させる。
【0049】
また、このアリイン脂肪酸結合体は、スルホニルシステインがリパーゼを活性化させることにより、脂肪細胞や脂肪組織の中性脂肪をグリセリンと脂肪酸に分解し、中性脂肪を減少させる。
【0050】
さらに、このアリイン脂肪酸結合体は、脂肪酸が結合して、油溶性が増すことから、アリインの脂肪組織への結合性が高まる。
【0051】
加えて、このアリイン脂肪酸結合体は、脂肪組織の周辺にある血管及びリンパ管を拡張させ、循環を改善して分解された脂肪酸を排泄して、中性脂肪を減少させる。
【0052】
さらに、このアリイン脂肪酸結合体は、脂肪細胞の増殖に必要な細胞増殖因子である血小板由来成長因子の働きを抑制することにより、脂肪細胞の増殖を抑制することにより、中性脂肪を減少させる。
【0053】
Xは、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、ガンマ−リノレン酸、エイコサテトラエン酸、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸、アルファ−リポ酸のいずれから選択される一つである。
【0054】
一方、リパーゼは消化液である膵液にも含有され、膵液リパーゼは食塊の消化分解を促進する。しかし、脂肪細胞に存在するリパーゼと膵液リパーゼとはそのアミノ酸の構造と性質に著しい差異があり、前記のアリイン脂肪酸結合体は、脂肪細胞に特有のリパーゼを特異的に活性化するものの、膵液のリパーゼには作用しない。
【0055】
脂肪細胞に存在するリパーゼは中性、酸性、アルカリ性のいずれのpH領域でも、活性を呈する酵素である。中性脂肪とは、グリセリンと脂肪酸がエステル結合した物質であり、グリセリンに対する脂肪酸の結合数により、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドがある。
【0056】
ここでいうリパーゼは、トリグリセリドに対して働き、ジグリセリドと脂肪酸を生じる。又は、トリグリセリドに対して働き、モノグリセリドと脂肪酸を2分子生じる。又は、トリグリセリドに対して働き、グリセリンと脂肪酸を3分子生じる。
【0057】
ここでいうリパーゼは、ジグリセリドに対して働き、モノグリセリドと脂肪酸を生じる。又は、ジグリセリドに対して働き、グリセリンと脂肪酸を2分子生じる。
【0058】
ここでいうリパーゼは、モノグリセリドに対して働き、グリセリンと脂肪酸を生じる。生成された脂肪酸とグリセリンは細胞内で分解されてエネルギーを産生させる。
【0059】
前記のアリイン脂肪酸結合体のうち、Xがエイコサペンタエン酸の場合、目的とする結合体は、エイコサペンタエニルスルホニルシステインである。このエイコサペンタエニルスルホニルシステインは、エイコサペンタエン酸の不飽和脂肪酸残基が炎症性プロスタグランジン産生抑制作用を呈することから、脂肪組織が分解され、アラキドン酸より生じる炎症性プロスタグランジンの量を減少させることから好ましい。
【0060】
前記のアリイン脂肪酸結合体のうち、Xがドコサヘキサエン酸の場合、目的とする結合体は、ドコサヘキサエニルスルホニルシステインである。このドコサヘキサエニルスルホニルシステインは、ドコサヘキサエン酸の不飽和脂肪酸残基が血小板凝集抑制及び動脈拡張の作用を呈することから、脂肪組織に侵入する血管の血流が改善されて分解された脂肪酸が排出されやすいことから好ましい。
【0061】
前記のアリイン脂肪酸結合体のうち、Xがドコサペンタエン酸の場合、目的とする結合体は、ドコサペンタエニルスルホニルシステインである。このドコサペンタエニルスルホニルシステインは、ドコサペンタエン酸の不飽和脂肪酸残基が毛細血管拡張の作用を呈することから、脂肪組織に侵入する血管の血流が改善されて分解された脂肪酸が排出されやすいことから好ましい。
【0062】
前記のアリイン脂肪酸結合体のうち、Xがガンマ−リノレン酸の場合、目的とする結合体は、ガンマ−リノレニルスルホニルシステインである。このガンマ−リノレニルスルホニルシステインは、ガンマ−リノレン酸の不飽和脂肪酸残基が細動脈の血管拡張の作用を呈することから、脂肪組織に侵入する血管の血流が改善されて分解された脂肪酸が排出されやすいことから好ましい。
【0063】
前記のアリイン脂肪酸結合体のうち、Xがエイコサテトラエン酸の場合、目的とする結合体は、エイコサテトラエニルスルホニルシステインである。このエイコサテトラエニルスルホニルシステインは、エイコサテトラエン酸の不飽和脂肪酸残基がリポタンパク質の活性化を生じ、過剰な脂質をリポタンパク質として吸着する作用が併行して生じ、中性脂肪を相乗的に減少させることから好ましい。
【0064】
前記のアリイン脂肪酸結合体のうち、Xがテトラコサペンタエン酸の場合、目的とする結合体は、テトラコサペンタエニルスルホニルシステインである。このテトラコサペンタエニルスルホニルシステインは、テトラコサペンタエン酸の不飽和脂肪酸残基が脂肪細胞のベータ酸化酵素活性を活性し、脂肪酸代謝を活性化し、中性脂肪を相乗的に減少させることから好ましい。
【0065】
前記のアリイン脂肪酸結合体のうち、Xがテトラコサヘキサエン酸の場合、目的とする結合体は、テトラコサヘキサエニルスルホニルシステインである。このテトラコサヘキサエニルスルホニルシステインは、テトラコサヘキサエン酸の不飽和脂肪酸残基がリンパ管の流れを増加させ、脂肪などの老廃物を排泄し、セルライトを減少させて中性脂肪を相乗的に減少させることから好ましい。
【0066】
前記のアリイン脂肪酸結合体のうち、Xがアルファ−リポ酸の場合、目的とする結合体は、アルファ−リポニルスルホニルシステインである。このアルファ−リポニルスルホニルシステインは、アルファ−リポ酸の活性基がクエン酸回路にアシル基を転移させることにより、脂肪酸を筋肉や機能細胞で消費させて中性脂肪を相乗的に減少させることから好ましい。
【0067】
前記のアリイン脂肪酸結合体は、脂肪酸と結合しているために、細胞膜になじみやすく、脂肪細胞内部に浸透できることから、吸収率が良く、さらに、システインのアミノ基及びカルボキシル基により水溶性も高まり、両性物質として作用することから好ましい。
【0068】
前記のアリイン脂肪酸結合体は、過剰に摂取された場合には、肝臓において脂質分解酵素により分解され、脂肪酸とアリインが生成される。したがって、このアリイン脂肪酸結合体は、体内に過剰に蓄積されないことから、その安全性も高く、その毒性は、脂肪酸とアリインの毒性と同等である。
【0069】
前記の脂肪酸及びアリインはいずれも安全性が確認されており、その食経験や医薬品としての経験も豊富であることから、アリイン脂肪酸結合体の安全性も高い。
【0070】
前記のアリイン脂肪酸結合体は、化学的に合成することができる。原料としてアリインをギョウジャニンニクやニンニクより抽出し、精製し、脂肪酸として魚油より精製した精製魚油由来脂肪酸をニッスイ製薬、日水漁業、東洋漁業より入手することができる。
【0071】
これらの原料から酵素反応によりアリイン脂肪酸結合体を得る場合には、エステル結合反応を生じる酵素、たとえば、アマノエンザイム製のリパーゼAY「アマノ」30G、リパーゼG「アマノ」50、リパーゼF−AP15、ニューラーゼF3Gなどが用いられる。化学合成反応による場合には、マグネシウム、アルミニウムなどの金属触媒とともに、加温される。
【0072】
これらの原料は、反応槽にいれられ、溶媒とともに、反応が行われる。また、前記の反応物は、溶媒を除去されて粗生成物として得ることは、精製に要するコストを削減し、かつ、原料が安全であることから好ましい。一方、前記の反応物から、目的とするアリイン脂肪酸結合体を精製することは純度の高い物質として摂取量を減少させることができる点から好ましい。
【0073】
この分離及び精製の方法としては、分離用の樹脂などの精製操作を利用することが好ましい。分離の場合、柿の葉エキス含有大豆油を用いることは、柿の葉エキスによる抗酸化作用により目的とする結合体が安定に維持されることから好ましい。
【0074】
すなわち、分離用担体又は樹脂により分離され、分取される。分離用担体又は樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1〜300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
【0075】
例えば、逆相担体又は樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、疎水性の高い物質の分離に利用される。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。
【0076】
また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。特異的な抗体をコーティングした場合には、特異的な物質のみを分離するアフィニティ担体又は樹脂として利用される。
【0077】
アフィニティ担体又は樹脂は、抗原抗体反応を利用して抗原の特異的な調製に利用される。分配性担体又は樹脂は、シリカゲル(メルク社製)等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、それらの物質の単離に利用される。
【0078】
これらのうち、製造コストを低減することができる点から、吸着性担体又は樹脂、分配性担体又は樹脂、分子篩用担体又は樹脂及びイオン交換担体又は樹脂が好ましい。さらに、分離用溶媒に対して分配係数の差異が大きい点から、逆相担体又は樹脂及び分配性担体又は樹脂はより好ましい。
【0079】
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体又は樹脂が用いられる。また、医薬品製造又は食品製造に利用される担体又は樹脂は好ましい。
【0080】
これらの点から吸着性担体としてダイヤイオン(三菱化学(株)社製)及びXAD−2又はXAD−4(ロームアンドハース社製)、分子篩用担体としてセファデックスLH−20(アマシャムファルマシア社製)、分配用担体としてシリカゲル、イオン交換担体としてIRA−410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。これらのうち、ダイヤイオン、セファデックスLH−20及びDM1020Tはさらに好ましい。
【0081】
得られた抽出物は、分離前に分離用担体又は樹脂を膨潤化させるための溶媒に溶解される。その量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して1〜50倍量が好ましく、3〜20倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から4〜30℃が好ましく、10〜25℃がより好ましい。
【0082】
分離用溶媒には、水、又は、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。
【0083】
セファデックスLH−20を用いる場合、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール、酢酸又はそれらの混合液が好ましい。
【0084】
ダイヤイオン及びDM1020Tを用いる場合、分離用溶媒はメタノール、エタノール等の低級アルコール又は低級アルコールと水の混合液が好ましい。
【0085】
採取後、乾燥又は真空乾燥により溶媒を除去し、目的とする結合体を粉末又は濃縮液として得ることは溶媒による影響を除外できることから、好ましい。
【0086】
また、目的とするアリイン脂肪酸結合体を天然の素材から抽出し、あるいは、精製することにより得ることができる。天然の素材には、植物、海藻、キノコ、食用動物、食用魚類、軟体動物、昆虫、甲殻類などがある。特に、食用魚類の頭部やウナギの頭部には、抽出しやすいという特徴がある。
【0087】
産業上、これらの食用魚類の頭部は食用魚類の加工時に除去され、廃棄物として廃棄されており、利用されていない。この食用魚類の頭部やウナギの頭部を原料として抽出、又は、精製することは廃棄物を有効に利用し、廃棄物の量を軽減することから好ましい。
【0088】
前記のアリイン脂肪酸結合体を微生物や酵母を用いた発酵により得ることは食用として安全性が確認されており、食経験も豊富であることから好ましい。この場合、用いる微生物としては、納豆菌、乳酸菌、紅麹、枯草菌があり、酵母としてはビール酵母や酒精酵母があり、これらはいずれも食品、医薬品、化粧品原料として使用経験が豊富で、安全性も担保されていることから好ましい。
【0089】
前記の発酵は大豆や牛乳などの発酵ベースに前記の微生物又は酵母を添加して発酵タンクを用いて実施される。この発酵後、微生物又は酵母と発酵液の混合物から目的とする前記のアリイン脂肪酸結合体を得ることができる。また、魚油、魚肉、緑茶、コーヒー、タンポポ、大麦若葉、葛の花、トウガラシ、ローヤルゼリー、プロポリスなどを加えて前記のように発酵させて目的とするアリイン脂肪酸結合体を得ることができる。
【0090】
また、前記のアリイン脂肪酸結合体をギョウジャニンニク、タマネギ、ニンニクとともに発酵させて得ることができる。たとえば、ギョウジャニンニク、タマネギ又はニンニクの粉砕物、食用魚類の粉砕物、大豆粉砕物及び納豆菌を添加して発酵させた発酵物をアルカリ還元化後、柿の葉エキス含有大豆油により分離される油溶性部分を採取して得ることは、廃棄される魚類の頭部や内臓を有効利用できることから好ましい。
【0091】
植物から抽出する場合、ギョウジャニンニク、タマネギ、ニンニク、大豆、ギジギシ、カンゾウ、ツリフネソウ、ハナイカダ、大麦若葉、葛の花、トウガラシ、カキ、梨、栗、緑茶、タラ、ワサビ、ワラビ、稲、小麦、トウモロコシ、ダイコン、菜の花、サクラ、マツ、アオキ、アカネ、アカメガシワ、アケビ、アマチャズル、アマドコロ、アロエ、イカリソウ、イタドリ、イノコズチ、イブキジャコウソウ、ウコギ、ウツボグサ、ウド、ウメ、ウラジロガシ、エビスグサ、オウレン、オオバコ、オケラ、オクラ、オトギリソウ、オナモミ、オミナエシ、カキドオシ、カラスウリ、カラスビシャク、カワラケツメイ、カワラナデシコ、カンアオイ、キクイモ、キキョウ、キササゲ、キハダ、キランソウ、キンミズヒキ、クガイソウ、クコ、クサボケ、クズ、クチナシ、コウホネ、コブシ、サイカチ、サボンソウ、サルトリイバラバッケツ、サンシュユ、ジャノヒゲ、シラン、スイカズラ、セリ、センブリ、タムシバ、タラノキ、タンポポ、チガヤ、ツリガネニンジン、ツワブキ、ドクダミ、トチノキ、トチバニンジン、ナンテン、ノイバラ、ハコベ、ハトムギ、ハハコグサ、ヒキオコシ、ヒシ、ヒトツバ、ビワ、フキ、フクジュソウ、フジ、マタタビ、メハジキ、ヤマノイモ、ユキノシタ、ヨモギ、リンドウ、レンギョウ、ロウバイ、ワレモコウの葉、花又は根は、入手しやすいことから好ましい。
【0092】
藻類から抽出する場合、アオサ、アオノリ、アマノリ、アラメ、イワノリ、エゴノリ、オゴノリ、カワノリ、エナガオニコンブ、ガゴメコンブ、ナガコンブ、ホソメコンブ、マコンブ、ミツイシコンブ、リシリコンブ、スイゼンジノリ、テングサ、トサカノリ、ヒジキ、ヒトエグサ、フノリ、マツモ、ムカデノリ、オキナワモズク、モズク、ワカメ、クキワカメ、メカブワカメの葉部、茎又は根は、入手しやすいことから好ましい。
【0093】
このようにして得られたアリイン脂肪酸結合体は、液体又は粉末として得られる。得られたアリイン脂肪酸結合体は医薬品、食品製剤又は化粧品に利用される。医薬品としては、抗肥満剤、脂肪分解剤、シワ除去剤、脂肪肝抑制剤、高脂血症改善剤、抗動脈硬化剤などに利用される。
【0094】
食品製剤としては、中性脂肪の減少、肥満の改善又は予防、高脂血症の改善又は予防、生活習慣病の改善又は予防、体脂肪の低減の目的などで使用される。
【0095】
化粧品としては、セルライトの減少又は予防、脂肪過多による体形の異常の改善、二重あごの改善又は予防、シワやタルミの改善又は予防の目的で利用される。
【0096】
次に、前記に記載の結合体のうち、Xがエイコサペンタエン酸である下記の式(2)で示される中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体について説明する。
【0097】
【化6】

【0098】
ここでいうアリイン脂肪酸結合体とは、前記のアリイン脂肪酸結合体のうち、Xがエイコサペンタエン酸からなるものであり、すなわち、エイコサペンタエニルスルホニルシステインである。
【0099】
このエイコサペンタエニルスルホニルシステインは、エイコサペンタエン酸の不飽和脂肪酸残基が炎症性プロスタグランジン産生抑制作用を呈することから、脂肪組織が分解され、アラキドン酸より生じる炎症性プロスタグランジンの量を減少させる。
【0100】
得られたアリイン脂肪酸結合体は、前記のように、脂肪組織を軟らかくし、周囲の循環を良くし、リパーゼを活性化し、脂肪を分解させ、さらに、脂肪細胞の増殖を抑制する。
【0101】
さらに、このアリイン脂肪酸結合体は、脂肪細胞の増殖に必要な細胞増殖因子である血小板由来成長因子の働きを抑制することにより、脂肪細胞の増殖を抑制することにより、中性脂肪を減少させる。
【0102】
前記のアリイン脂肪酸結合体は、リパーゼの活性中心に反応し、中性脂肪を認識する部位を活性化させる。同時に、このアリイン脂肪酸結合体はリパーゼにより分解された脂肪酸の遊離を促すことにより、中性脂肪の排泄を促進する。この2つの機序により脂肪分解のターンオーバーが活性化されるという特徴を有する。
【0103】
特に、脂肪細胞に存在するリパーゼは中性、酸性、アルカリ性のいずれのpH領域でも、活性を呈する酵素である。中性脂肪とは、グリセリンと脂肪酸がエステル結合した物質であり、グリセリンに対する脂肪酸の結合数により、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドがあり、リパーゼはいずれにも作用して、脂肪酸とグリセリンに分解する。
【0104】
前記のアリイン脂肪酸結合体は、脂肪酸と結合しているために、細胞膜になじみやすく、脂肪細胞内部に浸透できることから、吸収率が良く、さらに、スルホニルシステインの水溶性側鎖により水溶性も高まり、両性物質として作用する。
【0105】
前記のアリイン脂肪酸結合体は、過剰に摂取された場合には、肝臓において脂質分解酵素により分解され、脂肪酸とスルホニルシステインが生成される。したがって、アリイン脂肪酸結合体は、体内に過剰に蓄積されないことから、その安全性も高く、その毒性は、脂肪酸とアリインの毒性と同等である。
【0106】
ここでいうリパーゼ活性化作用を呈するアリイン脂肪酸結合体は、前記のように、化学的に合成することができ、前記のように酵素的にも得ることができ、さらに、抽出により得ることができる。
【0107】
前記の反応物から、目的とするアリイン脂肪酸結合体を精製することは純度の高い物質として摂取量を減少させることができる点から好ましく、分離の場合、柿の葉エキス含有大豆油を用いることは、柿の葉エキスによる抗酸化作用により目的とする結合体が安定に維持されることから好ましい。この精製の方法としては、分離用の樹脂などの精製操作を利用することが好ましい。
【0108】
産業上、食用魚類の頭部は食用魚類の加工時に除去され、廃棄物として廃棄されており、利用されていない。この食用魚類の頭部やウナギの頭部を原料として抽出、又は、精製することは廃棄物を有効に利用し、廃棄物の量を軽減することから好ましい。
【0109】
また、前記の中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体をギョウジャニンニク、タマネギ又はニンニクの粉砕物とともに発酵させて得ることができる。たとえば、ギョウジャニンニク、タマネギ又はニンニクの粉砕物、食用魚類の粉砕物、大豆粉砕物及び納豆菌を添加して発酵させた発酵物をアルカリ還元化後、柿の葉エキス含有大豆油により分離される油溶性部分を採取して得ることは、廃棄される魚類の頭部や内臓を有効利用できることから好ましい。
【0110】
このようにして得られたアリイン脂肪酸結合体は、液体又は粉末として得られる。得られたアリイン脂肪酸結合体は医薬品、食品製剤又は化粧品に利用される。医薬品としては、抗肥満剤、脂肪分解剤、シワ除去剤、脂肪肝抑制剤、高脂血症改善剤、抗動脈硬化剤などに利用される。
【0111】
食品製剤としては、中性脂肪の減少、肥満の改善又は予防、生活習慣病の改善又は予防、体脂肪の低減の目的などで使用される。
【0112】
化粧品としては、セルライトの減少又は予防、脂肪過多による体形の異常の改善、二重あごの改善又は予防、シワやタルミの改善又は予防の目的で利用される。
【0113】
次に、前記に記載の結合体のうち、Xがドコサヘキサエン酸である下記の式(3)で示される中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体について説明する。
【0114】
【化7】

【0115】
ここでいうアリイン脂肪酸結合体とは、前記のアリイン脂肪酸結合体のうち、Xがドコサヘキサエン酸からなるものであり、すなわち、ドコサヘキサエニルスルホニルシステインである。
【0116】
このドコサヘキサエニルスルホニルシステインは、ドコサヘキサエン酸の不飽和脂肪酸残基が血小板凝集抑制及び動脈拡張の作用を呈することから、脂肪組織に侵入する微細血管の血流や滞ったリンパの流れが改善されて分解された脂肪酸が排出されやすく、中性脂肪の減少が著しく、脂肪組織減少及び抗肥満作用を呈する。
【0117】
得られたアリイン脂肪酸結合体は、前記のように、脂肪組織を軟らかくし、周囲の循環を良くし、リパーゼを活性化し、脂肪を分解させ、さらに、脂肪細胞の増殖を抑制する。
【0118】
さらに、このアリイン脂肪酸結合体は、脂肪細胞の増殖に必要な細胞増殖因子である血小板由来成長因子の働きを抑制することにより、脂肪細胞の増殖を抑制することにより、中性脂肪を減少させる。
【0119】
前記のアリイン脂肪酸結合体は、リパーゼの活性中心に反応し、中性脂肪を認識する部位を活性化させる。同時に、このアリイン脂肪酸結合体はリパーゼにより分解された脂肪酸の遊離を促すことにより、中性脂肪の排泄を促進する。この2つの機序により脂肪分解のターンオーバーが活性化されるという特徴を有する。
【0120】
特に、脂肪細胞に存在するリパーゼは中性、酸性、アルカリ性のいずれのpH領域でも、活性を呈する酵素である。中性脂肪とは、グリセリンと脂肪酸がエステル結合した物質であり、グリセリンに対する脂肪酸の結合数により、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドがあり、リパーゼはいずれにも作用して、脂肪酸とグリセリンに分解する。
【0121】
前記のアリイン脂肪酸結合体は、脂肪酸と結合しているために、細胞膜になじみやすく、脂肪細胞内部に浸透できることから、吸収率が良く、さらに、スルホニルシステインの水溶性側鎖により水溶性も高まり、両性物質として作用する。
【0122】
前記のアリイン脂肪酸結合体は、過剰に摂取された場合には、肝臓において脂質分解酵素により分解され、脂肪酸とスルホニルシステインが生成される。したがって、アリイン脂肪酸結合体は、体内に過剰に蓄積されないことから、その安全性も高く、その毒性は、脂肪酸とアリインの毒性と同等である。
【0123】
ここでいうリパーゼ活性化作用を呈するアリイン脂肪酸結合体は、前記のように、化学的に合成することができ、前記のように酵素的にも得ることができ、さらに、抽出により得ることができる。
【0124】
前記の反応物から、目的とするアリイン脂肪酸結合体を精製することは純度の高い物質として摂取量を減少させることができる点から好ましく、分離の場合、柿の葉エキス含有大豆油を用いることは、柿の葉エキスによる抗酸化作用により目的とする結合体が安定に維持されることから好ましい。この精製の方法としては、分離用の樹脂などの精製操作を利用することが好ましい。
【0125】
産業上、食用魚類の頭部は食用魚類の加工時に除去され、廃棄物として廃棄されており、利用されていない。この食用魚類の頭部やウナギの頭部を原料として抽出、又は、精製することは廃棄物を有効に利用し、廃棄物の量を軽減することから好ましい。
【0126】
また、前記の中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体をギョウジャニンニク、タマネギ又はニンニクの粉砕物とともに発酵させて得ることができる。たとえば、ギョウジャニンニク、タマネギ又はニンニクの粉砕物、食用魚類の粉砕物、大豆粉砕物及び納豆菌を添加して発酵させた発酵物をアルカリ還元化後、柿の葉エキス含有大豆油により分離される油溶性部分を採取して得ることは、廃棄される魚類の頭部や内臓を有効利用できることから好ましい。
【0127】
このようにして得られたアリイン脂肪酸結合体は、液体又は粉末として得られる。得られたアリイン脂肪酸結合体は医薬品、食品製剤又は化粧品に利用される。医薬品としては、抗肥満剤、脂肪分解剤、シワ除去剤、脂肪肝抑制剤、高脂血症改善剤、抗動脈硬化剤などに利用される。
【0128】
食品製剤としては、中性脂肪の減少、肥満の改善又は予防、生活習慣病の改善又は予防、体脂肪の低減の目的などで使用される。
【0129】
化粧品としては、セルライトの減少又は予防、脂肪過多による体形の異常の改善、二重あごの改善又は予防、シワやタルミの改善又は予防の目的で利用される。
【0130】
次に、前記に記載の結合体のうち、Xがアルファ−リポ酸である下記の式(4)で示される中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体について説明する。
【0131】
【化8】

【0132】
ここでいうアリイン脂肪酸結合体とは、前記のアリイン脂肪酸結合体のうち、Xがアルファ−リポ酸からなるものであり、すなわち、アルファ−リポニルスルホニルシステインである。
【0133】
このアルファ−リポニルスルホニルシステインは、アルファ−リポ酸の活性基が分解された脂肪酸をクエン酸回路で消費させる。すなわち、アルファ−リポニルスルホニルシステインのアルファ−リポ酸部分の活性基がアルファ−ケト酸の酸化的脱炭酸反応及びリポ酸アセチルトランスフェラーゼを活性化し、脂肪酸を消費させることから好ましい。
【0134】
得られたアリイン脂肪酸結合体は、前記のように、脂肪組織を軟らかくし、周囲の循環を良くし、リパーゼを活性化し、脂肪を分解させ、さらに、脂肪細胞の増殖を抑制する。
【0135】
さらに、このアリイン脂肪酸結合体は、脂肪細胞の増殖に必要な細胞増殖因子である血小板由来成長因子の働きを抑制することにより、脂肪細胞の増殖を抑制することにより、中性脂肪を減少させる。
【0136】
前記のアリイン脂肪酸結合体は、リパーゼの活性中心に反応し、中性脂肪を認識する部位を活性化させる。同時に、このアリイン脂肪酸結合体はリパーゼにより分解された脂肪酸の遊離を促すことにより、中性脂肪の排泄を促進する。この2つの機序により脂肪分解のターンオーバーが活性化されるという特徴を有する。
【0137】
特に、脂肪細胞に存在するリパーゼは中性、酸性、アルカリ性のいずれのpH領域でも、活性を呈する酵素である。中性脂肪とは、グリセリンと脂肪酸がエステル結合した物質であり、グリセリンに対する脂肪酸の結合数により、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドがあり、リパーゼはいずれにも作用して、脂肪酸とグリセリンに分解する。
【0138】
前記のアリイン脂肪酸結合体は、脂肪酸と結合しているために、細胞膜になじみやすく、脂肪細胞内部に浸透できることから、吸収率が良く、さらに、スルホキイシステインの水溶性側鎖により水溶性も高まり、両性物質として作用する。
【0139】
前記のアリイン脂肪酸結合体は、過剰に摂取された場合には、肝臓において脂質分解酵素により分解され、脂肪酸とスルホニルシステインが生成される。したがって、アリイン脂肪酸結合体は、体内に過剰に蓄積されないことから、その安全性も高く、その毒性は、脂肪酸とアリインの毒性と同等である。
【0140】
ここでいうリパーゼ活性化作用を呈するアリイン脂肪酸結合体は、前記のように、化学的に合成することができ、前記のように酵素的にも得ることができ、さらに、抽出により得ることができる。
【0141】
前記の反応物から、目的とするアリイン脂肪酸結合体を精製することは純度の高い物質として摂取量を減少させることができる点から好ましく、分離の場合、柿の葉エキス含有大豆油を用いることは、柿の葉エキスによる抗酸化作用により目的とする結合体が安定に維持されることから好ましい。この精製の方法としては、分離用の樹脂などの精製操作を利用することが好ましい。
【0142】
産業上、食用魚類の頭部は食用魚類の加工時に除去され、廃棄物として廃棄されており、利用されていない。この食用魚類の頭部やウナギの頭部を原料として抽出、又は、精製することは廃棄物を有効に利用し、廃棄物の量を軽減することから好ましい。
【0143】
また、前記の中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体をギョウジャニンニク、タマネギ又はニンニクの粉砕物とともに発酵させて得ることができる。たとえば、ギョウジャニンニク、タマネギ又はニンニクの粉砕物、食用魚類の粉砕物、大豆粉砕物及び納豆菌を添加して発酵させた発酵物をアルカリ還元化後、柿の葉エキス含有大豆油により分離される油溶性部分を採取して得ることは、廃棄される魚類の頭部や内臓を有効利用できることから好ましい。
【0144】
このようにして得られたアリイン脂肪酸結合体は、液体又は粉末として得られる。得られたアリイン脂肪酸結合体は医薬品、食品製剤又は化粧品に利用される。医薬品としては、抗肥満剤、脂肪分解剤、シワ除去剤、脂肪肝抑制剤、高脂血症改善剤、抗動脈硬化剤などに利用される。
【0145】
食品製剤としては、中性脂肪の減少、肥満の改善又は予防、生活習慣病の改善又は予防、体脂肪の低減の目的などで使用される。
【0146】
化粧品としては、セルライトの減少又は予防、脂肪過多による体形の異常の改善、二重あごの改善又は予防、シワやタルミの改善又は予防の目的で利用される。
【0147】
次に、ギョウジャニンニクの粉砕物、食用魚類の粉砕物、大豆粉砕物及び納豆菌を添加して発酵させた発酵物をアルカリ還元化後、柿の葉エキス含有大豆油により分離される油溶性部分を採取して得られる中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体について説明する。
【0148】
ここでいうアリイン脂肪酸結合体とは、前記に記載のアリイン脂肪酸結合体であり、すなわち、Xがエイコサペンタエン酸の場合であるエイコサペンタエニルスルホニルシステイン、Xがドコサヘキサエン酸の場合であるドコサヘキサエニルスルホニルシステイン、Xがドコサペンタエン酸の場合であるドコサペンタエニルスルホニルシステイン、Xがガンマ−リノレン酸の場合であるガンマ−リノレニルスルホニルシステイン、Xがエイコサテトラエン酸の場合であるエイコサテトラエニルスルホニルシステイン、Xがテトラコサペンタエン酸の場合であるテトラコサペンタエニルスルホニルシステイン、Xがテトラコサヘキサエン酸の場合であるテトラコサヘキサエニルスルホニルシステイン、Xがアルファ−リポ酸である場合アルファ−リポニルスルホニルシステインである。
【0149】
原料となるギョウジャニンニク、タマネギ又はニンニクの粉砕物とは、ギョウジャニンニク、タマネギ又はニンニクを粉砕した生成物又は抽出物であり、アリインを含有するものである。
【0150】
ギョウジャニンニクはその葉、茎、根が古くから日本で食に供されている植物である。アリインを大量に含有することから、アリインの供給源として好ましい。
【0151】
タマネギは、その地下茎が食用に供されている野菜であり、アリインを含有し、さらに、抗動脈硬化作用を有するケルセチンなどのポリフェノールを含有することから、好ましい。
【0152】
ニンニクは、古くから食用に供されている植物であり、アリインを大量に含有している。
【0153】
前記のギョウジャニンニク、タマネギ又はニンニクは、日本、中国、台湾、アジア各国、アメリカ、アフリカ、南米などで栽培されたものが用いられる。前記のギョウジャニンニクの粉砕物は、生又は乾燥されたギョウジャニンニク、タマネギ又はニンニクを家庭用ミキサー、業務用ミキサー、粉砕機、すりばちなどで、粉砕されたものである。
【0154】
原料となる食用魚類とは、日本の河川、湖沼、海洋、又は、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカ、オセアニアの河川、湖沼又は海洋で養殖、捕獲又は採取され、食用として利用されている魚類である。
【0155】
このうち、ウナギ、サンマ、カツオ、イワシ、サバ、マグロ、トビウオ、タチウオ、アンコウ、フナ、コイ、ライギョ、マス、ニジマス、ソウギョ、アユ、ウグイ、イワナ、カレイ、ハゼ、イトウ、マダイ、クロダイ、イシダイ、ホッケ、カジカ、クロイソ、ヒラメ、ニシン、ブリ、ハマチ、サケ、メジナ、メバル、アロワナ、キハダ、マンボウ、シイラ、サメ、クエ、キス、ナサゴ、カンパチなどが入手しやすいことから、好ましい。
【0156】
前記の食用魚類は、生きたままでも、冷凍されたものでも、いずれでも良い。前記の食用魚類の頭部、内臓、皮、ウロコ又はヒレが切断され、採取される。
【0157】
この食用魚類の頭部、内臓、皮、ウロコ又はヒレは生きたまま又は凍結した食用魚類又は焼いた又は煮沸した食用魚類から採取される。
【0158】
さらに、食用魚類の頭部、内臓、皮、ウロコ、ヒレ又は肉部には、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、ガンマ−リノレン酸、エイコサテトラエン酸、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸及びアルファ−リポ酸が含有されていることから好ましい。
【0159】
加えて、食用魚類の頭部、内臓、皮、ウロコ又はヒレは、廃棄物として廃棄されることから、この廃棄物を有効的に利用でき、廃棄によって生じる富栄養による環境汚染を予防できることから好ましい。
【0160】
この頭部、内臓、皮、ウロコ又はヒレは採取後に、洗浄されることが好ましい。また、内臓と頭部と同時に採取する場合、水で洗浄することが好ましい。
【0161】
採取された頭部、内臓、皮、ウロコ又はヒレは洗浄されることが好ましい。乾燥することも、生のまま用いることも、煮沸することもできる。乾燥することにより保存性が向上することから好ましい。中山技術研究所製のミニ乾燥機CHにより乾燥することは好ましい。
【0162】
採取された頭部、内臓、皮、ウロコ又はヒレは粉砕される。粉砕の前に、裁断され、粉砕は、水とともに、乾燥したままの水分を含まないままのいずれでも良い。粉砕は、ハサミ、スリコギ、家庭用ミキサー、業務用ミキサー、粉砕機を用いて行われる。
【0163】
このうち、中山技術研究所製DM−6、卓上両用型粉砕機FDS、両用型粉砕機FMなどの業務用ミキサーを用いることは、大量の製造のために好ましい。粉砕物の大きさは、10〜10000μmが好ましい。粉砕された粉砕物は懸濁され、粉末粉砕物として凍結されて保存されることは好ましい。
【0164】
原料となる大豆粉砕物は、日本産、中国産、アメリカ産などの海外産のいずれも、用いられる。洗浄、乾燥した後、加熱され、さらに、ミキサーで粉砕して用いられる。この大豆粉砕物は、大豆を洗浄後、蒸す又は煮ることにより、加熱処理されることは、発酵を効率良く実施することができることから、好ましい。
【0165】
ここで用いる納豆菌は、枯草菌の一種であり、古来より日本人の食生活に関与してきた有用菌であり、その安全性も担保されている。
【0166】
ここでは、食品加工用に用いられるものが好ましく、この結果、脂肪酸とアリインが結合され、目的とするアリイン脂肪酸結合体が得られる。
【0167】
このような過程で得られたものは、天然物質から生成されるものであり、化学的に合成されたものではないことから、有害な触媒や溶媒を含有しないものであり、その安全性は高い。
【0168】
さらに、発酵された発酵物は、アルカリ還元化される。すなわち、得られた発酵液は、脂肪酸とアリインの結合を安定化させるために、アルカリ還元化される。アルカリ還元化により脂肪酸の側鎖とアリインのスルホン部分が還元されて、安定な構造を呈する。
【0169】
このアルカリ還元装置としては、株式会社ゼノン製の家庭用電解水生成装置であるセルラキッス、アクアステラ、アリビオ、日本トリム社製の、TI−700型、TI−800型などが用いられる。
【0170】
前記の発酵液を配管に流してアルカリ還元装置に供して得られる。目的とするアリイン脂肪酸が液体として得られる。
【0171】
前記のように得られたアルカリ還元化されたアリイン脂肪酸から柿の葉エキス含有大豆油により分離される油溶性部分が採取される。この柿の葉エキス含有大豆油は、柿の葉の油溶性ポリフェノールを含有する抗酸化作用に優れた大豆油であり、目的とする結合体を安定的に分離できることから好ましい。
【0172】
前記のアルカリ還元化物を清浄なステンレスタンクに入れ、前記の脂溶性の溶媒が添加され、攪拌し、混合後、上層に油溶性部分が液体として採取される。
【0173】
また、この液体を凍結乾燥装置、たとえば、日本エフディ製凍結乾燥機、株式会社ユスジマ製凍結乾燥機、東洋技研製TGD−250LF2などに供し、粉末として、アリイン脂肪酸結合体が得られる。
【0174】
食用魚類の粉砕物1重量に対し、ギョウジャニンニクの粉砕物は0.01〜0.1重量であり、大豆粉砕物は1〜3重量であり、納豆菌は0.0001〜0.003重量である。
【0175】
食用魚類の粉砕物1重量に対し、ギョウジャニンニク、タマネギ又はニンニクの粉砕物の添加量が0.01重量を下回る場合、素材となるアリインが不足し、アリイン脂肪酸結合体が生成されないおそれがある。
【0176】
食用魚類の粉砕物1重量に対し、ギョウジャニンニク、タマネギ又はニンニクの粉砕物の添加量が0.1重量を上回る場合、素材となるギョウジャニンニク、タマネギ又はニンニクの粉砕物の量が多くなりすぎるために、製造装置が大きくなり、産業上利用できないおそれがある。
【0177】
食用魚類の粉砕物1重量に対し、大豆粉砕物の添加量が1重量を下回る場合、納豆菌の生育源となる栄養が不足し、アリイン脂肪酸結合体が生成されないおそれがある。
【0178】
食用魚類の粉砕物1重量に対し、大豆粉砕物の添加量が3重量を上回る場合、栄養過多となり、納豆菌によるアリイン脂肪酸結合体の生成量が減少するおそれがある。
【0179】
食用魚類の粉砕物1重量に対し、納豆菌の添加量が0.0001重量を下回る場合、結合を生じる納豆菌が不足し、アリイン脂肪酸結合体の生成量が減少するおそれがある。
【0180】
食用魚類の粉砕物1重量に対し、納豆菌の添加量が0.003重量を上回る場合、過剰の納豆菌により死亡する納豆菌が増加して生成されたアリイン脂肪酸結合体が分解されるおそれがある。
【0181】
発酵は、清浄なタンクで行われ、発酵時間としては、24〜72時間が過剰の納豆菌生育による腐敗を防止することから、好ましい。
【0182】
発酵物は、固体又は液体として得られ、次の還元化のために、液体として採取されることが好ましく、発酵物に清浄な水を添加して、液体として抽出することは好ましい。
ここでいうアリイン脂肪酸結合体は、液体又は粉末して得られ、医薬品素材、食品素材、化粧品素材として利用できる。
【0183】
このアリイン脂肪酸結合体は、体内に吸収された後、過剰量は、エステラーゼにより分解され、肝臓において代謝されることから、安全性も高く、副作用も少ない。
【0184】
前記の反応物から、目的とするアリイン脂肪酸結合体を分離し、精製することは純度の高い物質として摂取量を減少させることができる点から好ましい。この精製の方法としては、分離用の樹脂などの精製操作を利用することが好ましい。
【0185】
分離用担体又は樹脂としては、表面がコーティングされた、多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。適切な分離用溶媒により分離し、精製され、溶媒を除去して目的とするアリイン脂肪酸結合体を得ることは好ましい。
【0186】
次に、前記のアリイン脂肪酸結合体1重量をエタノールに分散し、ジアシルグリセロール0.3〜3重量、キトサン0.5〜5重量を添加し、攪拌し、加温してエタノールを除去して得られる組成物からなる食品製剤について説明する。
【0187】
ここでいうアリイン脂肪酸結合体とは、前記に記載のアリイン脂肪酸結合体である。このアリイン脂肪酸結合体は、粗生成物、混合物、合成された物、抽出して精製された純度の高い物質のいずれもでもよい。
【0188】
エタノールは、食品加工用に用いられる品質の酒精であり、液体が好ましい。たとえば、今津薬品工業株式会社製エタノール、株式会社キマタ製エタノールがある。
【0189】
ジアシルグリセロールは植物由来の中性脂肪であり、たとえば、花王製のエコナである。
【0190】
キトサンとは、カニ、エビの甲羅や外皮から加工され、製造されるグルコサミンからなる多糖類である。富士バイオ株式会社、焼津水産株式会社、日本生物化学株式会社製がある。
【0191】
前記のアリイン脂肪酸結合体は、食品加工用ステンレス製寸胴に入れられ、エタノールを添加されて分散される。分散性が低い場合には、加温される。この状態に、ジアシルグリセロールが溶液として添加され、キトサンが粉末として添加される。
【0192】
アリイン脂肪酸結合体1重量に対し、添加されるジアシルグリセロールの量は、0.3〜3重量である。ジアシルグリセロールの量が0.3重量を下回る場合、アリイン脂肪酸結合体とジアシルグリセロールの反応物が得られないおそれがある。ジアシルグリセロールの量が3重量を上回る場合、最終生成物の脂溶性が高まり、粘性が高くなりすぎるおそれがある。
【0193】
また、アリイン脂肪酸結合体1重量に対し、添加されるキトサンの量は、0.5〜5重量である。キトサンの量が0.5重量を下回る場合、キトサンによるジアシルグリセロールの保持能力が保たれず、最終生成物が得られないおそれがある。キトサンの量が5重量を上回る場合、粉末状となり、剤形が保たれないおそれがある。
【0194】
前記のアリイン脂肪酸結合体、ジアシルグリセロール及びキトサンは、製造用容器の中で攪拌される。1〜10回/秒の攪拌速度は、反応を効率的に実施させるために、好ましい。攪拌中に加温されることは、好ましい。加温温度は、20〜40℃が反応を効率的に実施させるために、好ましい。攪拌時間は、4〜24時間が反応を効率的に実施させるために、好ましい。
【0195】
反応後、前記の反応液は、加温され、エタノールが除外される。この加温温度は、40〜60℃が好ましい。この加温時間は、3〜24時間が好ましい。加温に、真空乾燥機、乾燥機を使用することは、好ましい。
【0196】
このようにして組成物が得られる。組成物には、前記のアリイン脂肪酸結合体、ジアシルグリセロール及びキトサンが含有され、キトサンの内部にアリイン脂肪酸結合体とジアシルグリセロールがエステル体として封入される。
【0197】
この組成物は、前記のアリイン脂肪酸結合体を少しずつ、持続的に放出させて、持続性組成物となることから、好ましい。この組成物は、前記のアリイン脂肪酸結合体の単独に比べて、持続性を示す特徴を有する。
【0198】
さらに、前記の組成物が他の原料とともに加工され、食品製剤になる。この場合、種々の食品素材又は飲料品素材に添加することによって、例えば、粉末状、錠剤状、液状(ドリンク剤等)、カプセル状等の形状の食品製剤にすることができる。また、基材、賦形剤、添加剤、副素材、増量剤等を適宜添加してもよい。
【0199】
前記の食品製剤は、1日数回に分けて経口摂取される。1日の摂取量は0.2〜10gが好ましく、0.3〜6gがより好ましく、0.5〜4gがさらに好ましい。1日の摂取量が、0.2gを下回る場合、十分な中性脂肪減少作用が発揮されないおそれがある。1日の摂取量が、10gを越える場合、コストが高くなるおそれがある。上記の他に、飴、せんべい、クッキー、飲料等の形態で使用することができる。
【0200】
ここでいう食品製剤とは、人間が食する保健機能食品、健康補助食品、一般食品、病院で用いる病院用食品、また、動物用の飼料又はペット用サプリメント、ペットフードである。
【0201】
この食品製剤は肥満の予防又は改善、体脂肪の増加を改善又は予防、内臓脂肪の増加、脂肪肝を改善又は予防、高脂血症の改善又は予防の目的で、適用される。
【0202】
次に、前記のアリイン脂肪酸結合体1重量に、アスタキサンチン0.3〜3重量、クロロゲン酸エステラーゼ0.005〜0.05重量を添加し、加温して得られる組成物からなる化粧品について説明する。
【0203】
ここでいうアリイン脂肪酸結合体とは、前記に記載の中性脂肪の減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体である。このアリイン脂肪酸結合体は製造された混合物、抽出して精製された高い純度の物質のいずれも用いることができる。
【0204】
アスタキサンチンとは、カロチノイド系色素の一種であり、ヘマトコッカス藻が太陽光に当たり生成される赤色の色素である。サケ、イクラにも含有される天然の物質であり、その安全性と強い抗酸化力が検証されている。
【0205】
クロロゲン酸エステラーゼは、アリイン脂肪酸結合体のフリーのアミノ基とアスタキサンチンの酸素部位との間でエステルを形成させる酵素である。ここでは、クロロゲン酸エステラーゼは、前記に記載のアリイン脂肪酸結合体とアスタキサンチンを反応させ、エステル結合体を生成させる目的で添加される。
【0206】
このクロロゲン酸エステラーゼはキッコーマン製のコウジ菌より生成される酵素を用いることは、純度が高いことから好ましい。また、このクロロゲン酸エステラーゼはコーヒーから抽出して用いることができる。
【0207】
前記のアリイン脂肪酸結合体とアスタキサンチンとクロロゲン酸エステラーゼは、加温される。加温の前に、混合されることは好ましい。加温条件として温度は30〜45℃であり、加温時間は6〜40時間である。
【0208】
加温温度が30℃を下回る場合、十分な反応が生じないおそれがある。加温温度が45℃を上回る場合、酸化により生成された反応物が褐色に変色するおそれがある。加温時間が6時間を下回る場合、十分な生成物が得られないおそれがある。加温時間が40時間を上回る場合、酸化により生成された生成物が褐色に変色するおそれがある。
【0209】
前記のアリイン脂肪酸結合体1重量に対し、アスタキサンチン0.3〜3重量、クロロゲン酸エステラーゼ0.005〜0.05重量である。
【0210】
アリイン脂肪酸結合体1重量に対し、アスタキサンチンが0.3重量を下回る場合、アスタキサンチンが不足し、十分な生成物が得られないおそれがあり、アスタキサンチンが3重量を上回る場合、アスタキサンチンが高価であることから、生成物が高価になり、経済的ではない。
【0211】
アリイン脂肪酸結合体1重量に対し、クロロゲン酸エステラーゼが0.005重量を下回る場合、酵素が欠乏し、十分な生成物が得られないおそれがあり、クロロゲン酸エステラーゼが0.05重量を上回る場合、クロロゲン酸エステラーゼが高価であることから、経済的ではない。
【0212】
このように構成することにより、アリイン脂肪酸結合体がアスタキサンチンの抗酸化力により安定に維持されて酸化による分解が抑制される。特に、不飽和脂肪酸の二重結合が酸化から守られて構造を維持する。
【0213】
さらに、種々の酸化刺激やプロテアーゼによりアリイン脂肪酸結合体が分解される危険性を減少させ、体内に維持されやすく、吸収率が向上されて中性脂肪減少作用が持続される。
【0214】
上記にようにすることにより、アリイン脂肪酸結合体、アスタキサンチンとクロロゲン酸エステラーゼからなる組成物が得られる。
【0215】
さらに、化粧品として前記の組成物が他の原料とともに加工される。その後、常法に従って油分、界面活性化剤、ビタミン剤、紫外線吸収剤、増粘剤、保湿剤、副素材等とともに用いることができる。
【0216】
化粧水、クリーム、軟膏、ローション、乳液、パック、オイル、石鹸、洗顔料、香料、オーディコロン、浴用剤、シャンプー、リンス等の形態とすることができる。化粧品製剤の形態は任意であり、溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、固形状又は粉末状として用いることができる。
【0217】
化粧品として皮膚に1日数回に分けて塗布される。1日の塗布量は0.01〜10gが好ましく、0.05〜3gがより好ましく、0.1〜2gがさらに好ましい。1日の塗布量が、0.01gを下回る場合、シワやタルミの治療または防止効果が発揮されないおそれがある。1日の塗布量が、10gを越える場合、コストが高くなるおそれがある。
【0218】
ここでいう化粧品とは、人間に用いる化粧品である基礎化粧品、美白化粧品、毛髪洗浄剤、トリートメント剤、染め剤、育毛剤、養毛剤、ボディウォッシュ、医薬部外品である。その他に、動物に用いる皮膚改善剤又はペット用シャンプー、ボディウォッシュである。
【0219】
この化粧品は中性脂肪の減少作用を呈し、また、血管拡張作用やリンバ管の拡張作用を呈することから、セルライトの抑制又は生成の予防に効果的である。特に、体の脂肪太りの局所に対する痩身効果に優れる。また、脂肪の増加による二重アゴの改善又は予防にも働く。さらに、皮下組織の脂肪増加によるシワやタルミにも脂肪減少による改善が期待される。
【0220】
次に、アリイン脂肪酸結合体からなる抗肥満剤について説明する。
【0221】
ここでいうアリイン脂肪酸結合体とは、前記に記載の中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体である。このアリイン脂肪酸結合体は製造された混合物、抽出して精製された高い純度の物質、酵素反応により合成された物質のいずれも用いることができる。
【0222】
医薬品として用いる場合には、不純物による影響を除去することが必要となるために、酵素反応により合成され、溶媒の残留の少ない前記の構造のアリイン脂肪酸結合体を用いることが好ましい。
【0223】
医薬品として経口剤又は非経口剤として利用され、医薬部外品としては、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、歯磨き粉等に配合されて利用される。
【0224】
経口剤としては、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。前記の錠剤及びカプセル剤に混和される場合には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。前記の錠剤は、シェラック又は砂糖で被覆することもできる。
【0225】
また、前記のカプセル剤の場合には、上記の材料にさらに油脂等の液体担体を含有させることができる。前記のシロップ剤及びドリンク剤の場合には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤等を含有させることができる。
【0226】
非経口剤としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に、注射剤が挙げられる。ここで用いる外用剤の基材としては、ワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールド等が用いられ、通常の方法によって軟膏剤やクリーム剤等とすることができる。注射剤には、液剤があり、その他、凍結乾燥剤がある。これは使用時、注射用蒸留水や生理食塩液等に無菌的に溶解して用いられる。
【0227】
ここでいう抗肥満剤は、肥満症の改善又は予防を目的とした医薬品又は医薬部外品製剤である。肥満は、病的な場合、肥満症として病名が付けられる。また、脂肪の蓄積により、内臓脂肪の蓄積した脂肪肝、腎臓の脂肪沈着、心臓の脂肪沈着が発症するおそれがある。ここでいう抗肥満剤は、これらの脂肪の増加や肥満による病的症状に対して治療又は予防効果を発揮する。
【0228】
さらに、脂肪が蓄積した肥満の方は、手術が難しいという欠点があるが、この抗肥満薬は手術前の利用により脂肪を減少させることにより、手術を実施しやすくするものである。
【0229】
加えて、肥満した家畜、ペットの治療を目的とした獣医用医薬品としても利用できる。
【0230】
以下、前記実施形態を実施例及び試験例を用いて具体的に説明する。ただし、以下の説明は例であり、形態を変化させて実施することができる。
【0231】
まず、発酵により得られるアリイン脂肪酸結合体について説明する。
【実施例1】
【0232】
浜名湖湖畔で養殖されて成長したウナギ(学名Anguilla japonica)100匹を原料として用いた。成長したウナギを解体場で屠殺後解体し、頭部及び内臓を切断し、採取した。体部は、食用に供し、頭部及び内臓を集めた。集められた頭部及び内臓1.6kgを包丁により裁断し、中山技術研究所製DM−6にて粉砕した。
【0233】
これを清浄な培養用タンク50L容量に入れ、水道水3.2Lを添加した。これに北海道で栽培されたギョウジャニンニク2kgの茎と根を生のまま水道水で洗浄後、包丁で裁断し、中山技術研究所製DM−6にて粉砕してギョウジャニンニクの粉砕物を得た。この160gを前記の寸胴に添加した。これに、中国産大豆を水洗後、30分間煮沸して粉砕した大豆粉砕物3.2kgを添加した。
【0234】
さらに、納豆素本舗製納豆菌3.2gを添加した。48時間、30〜35℃の温度で、攪拌しながら、発酵させた。
【0235】
発酵が終了したタンクに、水道水6.4Lを添加し、攪拌後、液体部分を採取した。この液体を株日本トリム社製TI−800型のアルカリイオン還元装置に供し、アルカリ還元化した。この液体を寸胴に移し、柿の葉エキス含有大豆油の5Lを添加して1時間攪拌し、混合した。
【0236】
これを静置して上層に分離した柿の葉エキス含有大豆油により分離される油溶性部分を液体として採取した。水分を除去するために、東洋技研製TGD−250LF2に供し、粉末として、アリイン脂肪酸結合体を得た。これを実施例1の検体とした。
【0237】
次に、酵素合成により得られるアリイン脂肪酸結合体について説明する。
【実施例2】
【0238】
株式会社花王製エコナ5Lを20L容量ステンレス製寸胴に入れ、株式会社武田紙器より購入したアリイン1kgを添加して懸濁し、ここに、日水製薬製エイコサペンタエン酸1kgを添加して攪拌した。
【0239】
さらに、アマノエンザイム製のニューラーゼF3Gを100g添加し、35℃に設定した加温機に入れて攪拌しながら、24時間酵素反応させた。反応終了後、精製水10Lを添加して攪拌後、表層の油部分を採取した。この油部分に、食品加工用エタノール80%と精製水20%からなる含水エタノール10Lを添加して攪拌し、含水エタノール部分を採取した。
【0240】
これを減圧乾燥機に供してエタノールを除去した後、日本エフディ製の凍結乾燥機により、アリイン脂肪酸結合体を粗生成物として350gを得た。これを実施例2のアリイン脂肪酸結合体の検体とした。
【0241】
以下に、アリイン脂肪酸結合体の精製物について説明する。
【実施例3】
【0242】
実施例2で得られたアリイン脂肪酸結合体をエタノールに溶解し、三菱化学製ダイアイオンの500gを充填したカラムに供して、100%エタノール1Lで洗浄した。さらに10%含水エタノール1Lで洗浄後、30%含水エタノール1Lで溶出してこの分画を採取した。
【0243】
これを減圧乾燥機に供してエタノールを除去した後、日本エフディ製の凍結乾燥機によりアリイン脂肪酸結合体の精製物を得た。これを実施例3の検体とした。
【0244】
以下に、アリイン脂肪酸結合体の同定試験について説明する。
(試験例1)
【0245】
上記のように得られた実施例1、実施例2及び実施例3の検体を精製エタノールに溶解し、質量分析器付き高速液体クロマトグラフィ(HPLC、島津製作所)で分析し、さらに、核磁気共鳴装置(NMR、ブルカー製、AC−250)で解析した。
【0246】
その結果、実施例1の検体からは、アリイン脂肪酸結合体としてエイコサペンタエニルスルホニルシステイン、ドコサヘキサエニルスルホニルシステイン、ドコサペンタエニルスルホニルシステイン、ガンマ−リノレニルスルホニルシステイン、エイコサテトラエニルスルホニルシステイン、テトラコサペンタエニルスルホニルシステイン、テトラコサヘキサエニルスルホニルシステイン及びアルファ−リポニルスルホニルシステインが同定された。
【0247】
実施例1の検体中におけるエイコサペンタエニルスルホニルシステイン、ドコサヘキサエニルスルホニルシステイン、ドコサペンタエニルスルホニルシステイン、ガンマ−リノレニルスルホニルシステイン、エイコサテトラエニルスルホニルシステイン、テトラコサペンタエニルスルホニルシステイン、テトラコサヘキサエニルスルホニルシステイン及びアルファ−リポニルスルホニルシステインの含有率は、それぞれ6.6%、3.9%、2.4%、2.5%、2.3%、2.2%、1.3%及び2.9%であった。
【0248】
実施例2の検体を試験した結果、エイコサペンタエニルスルホニルシステインが同定され、その含有率は、61%であった。
【0249】
実施例3の検体を試験した結果、エイコサペンタエニルスルホニルシステインが同定され、その含有率は、94%であった。
【0250】
以下に、脂肪細胞を用いた中性脂肪減少作用の測定試験について述べる。
(試験例2)
【0251】
和光純薬製のヒト由来白色脂肪細胞培養キットを購入し、培養することにより増殖させ、ヒト由来脂肪細胞とした。
【0252】
増殖した脂肪細胞10,000個を培養液とともに培養用シャーレに播種し、37℃で、5%炭酸ガス下で、24時間培養した。これに、ジメチルスルホキシドに溶解したラード0.1gを添加し、さらに、上記の実施例で得られた検体を最終濃度0.1mgとなるように添加して、さらに、24時間培養した。
【0253】
24時間後、シャーレをリン酸緩衝生理食塩液で、洗浄し、トリプシン溶液で細胞を剥離した。細胞数を測定後、蒸留水に懸濁して超音波による細胞破砕機にて細胞を破砕した。中性脂肪の含量を中性脂肪測定試薬であるテストワコーで測定した。細胞1,000個当たりの中性脂肪量を算出した。4枚のシャーレの平均値で求めた。
【0254】
なお、検体の代わりに、リン酸緩衝生理食塩液のみを添加したものを溶媒対照とした。
【0255】
また、アリイン、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、ガンマ−リノレン酸、エイコサテトラエン酸、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸及びアルファ−リポ酸を最終濃度0.1mgとなるように添加した群を設け、それぞれの脂肪細胞内中性脂肪量を測定した。
【0256】
その結果、実施例1、実施例2及び実施例3を添加した脂肪細胞内の中性脂肪量は、それぞれ、溶媒対照の値に比し、43、24及び11%となり、実施例1、実施例2及び実施例3を添加した脂肪細胞では中性脂肪量が減少していた。これらのアリイン脂肪酸結合体には中性脂肪減少作用が確認された。
【0257】
一方、アリイン、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、ガンマ−リノレン酸、エイコサテトラエン酸、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸及びアルファ−リポ酸を添加した脂肪細胞内の中性脂肪量は、それぞれ、溶媒対照の値に比し、81、90、91、97、97、101、98、99%及び102%となった。
【0258】
この結果、アリイン、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、ガンマ−リノレン酸、エイコサテトラエン酸、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸及びアルファ−リポ酸には脂肪細胞に対する中性脂肪の減少作用は認められないか、あるいは、非常に軽度であった。
【0259】
以下に、SCIDマウスとヒト由来脂肪細胞を用いた脂肪減少効果の試験について説明する。
(試験例3)
【0260】
ここで用いたSCIDマウスとは重症複合免疫不全マウスであり、免疫機能が低下していることから、種々のヒト由来細胞や組織が移植可能で、ヒト由来脂肪細胞を体内で増殖及び成育させることができる。
【0261】
このSCIDマウスの背部に、前記のように培養したヒト由来脂肪細胞10万個を移植した。餌としてマウス飼育用固形試料を食べさせた。移植の翌日より、実施例1〜3で得られたアリイン脂肪酸結合体0.1mgを水に懸濁して10日間、経口投与した。なお、対照群には、水を投与した。
【0262】
1群の動物数を5匹とし、投薬10日後に、エーテル麻酔下で、腹部動脈より採血し、遠心分離して得られた血清を用いて血中中性脂肪量を和光純薬製キット(アセチルアセトン法)にて測定した。
【0263】
その結果、対照群の血中中性脂肪値に比し、実施例1で得られたアリイン脂肪酸結合体を0.1mg経口投与したSCIDマウスの血中の中性脂肪値は、5匹の平均値として61%となり、実施例1で得られたアリイン脂肪酸結合体は、中性脂肪を減少させる効果が確認された。
【0264】
また、対照群の値に比し、実施例1で得られたアリイン脂肪酸結合体0.1mgの経口投与の背部に移植したヒト由来脂肪組織の重量は平均値で対照群の51%となり、脂肪組織の減少効果も認められた。
【0265】
さらに、対照群の値に比し、実施例1で得られたアリイン脂肪酸結合体0.1mgの体重は、平均値で対照群の78%であり、実施例1による体重の減少効果も認められた。
【0266】
実施例2の結果については、対照群の血中中性脂肪値に比し、実施例2で得られたアリイン脂肪酸結合体を0.1mg経口投与したSCIDマウスの血中の中性脂肪値は、平均値として50%となり、実施例2で得られたアリイン脂肪酸結合体は、中性脂肪を減少させる効果が確認された。
【0267】
また、対照群の値に比し、実施例2で得られたアリイン脂肪酸結合体0.1mgの経口投与の背部に移植したヒト由来脂肪組織の重量は44%となり、脂肪組織の減少効果も認められた。
【0268】
さらに、対照群の値に比し、実施例2で得られたアリイン脂肪酸結合体0.1mgの体重は81%であり、体重の減少効果も認められた。
【0269】
実施例3の結果については、対照群の血中中性脂肪値に比し、実施例3で得られたアリイン脂肪酸結合体を0.1mg経口投与したSCIDマウスの血中の中性脂肪値は、平均値として31%となり、実施例3で得られたアリイン脂肪酸結合体は、中性脂肪を減少させる効果が確認された。
【0270】
また、対照群の値に比し、実施例3で得られたアリイン脂肪酸結合体0.1mgの経口投与の背部に移植したヒト由来脂肪組織の重量は42%となり、脂肪組織の減少効果も認められた。
【0271】
さらに、対照群の値に比し、実施例3で得られたアリイン脂肪酸結合体0.1mg投与群の体重は78%であり、体重の減少効果も認められた。
【0272】
一方、実施例1〜3で得られたアリイン脂肪酸結合体の投与により、脂肪以外の臓器、例えば、肝臓、腎臓、脾臓、脳、心臓などの主要臓器には肉眼的な異常は観察されず、アリイン脂肪酸結合体の安全性が確認された。
【0273】
なお、アリイン、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、ガンマ−リノレン酸、エイコサテトラエン酸、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸及びアルファ−リポ酸の0.1mgを前記と同様に、投与した試験を対照試験として実施した結果、アリイン、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、ガンマ−リノレン酸、エイコサテトラエン酸、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸及びアルファ−リポ酸投与よる血中の中性脂肪値は、対照群の値に比し、それぞれ、91、92、97、94、97、101、98、100%及び102%となった。
【0274】
これらの結果、アリイン、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、ガンマ−リノレン酸、エイコサテトラエン酸、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸及びアルファ−リポ酸は、いずれも血中の中性脂肪値を減少させなかった。
【0275】
次に、アリイン脂肪酸結合体からなる食品製剤について説明する。
【実施例4】
【0276】
食品加工用のステンレス製寸胴に、前記の実施例3で得られたアリイン脂肪酸結合体100gを入れ、エタノール2Lを添加して分散した。これに、花王製ジアシルグリセロール200gを添加し、さらに、焼津水産株式会社キトサン300gを添加した。これを30℃の加温器に入れて攪拌装置を利用して5回/秒の速度で24時間攪拌した。
【0277】
攪拌終了後、45℃の加温機で20時間加温してエタノールを除去し、粉末として前記のアリイン脂肪酸結合体、ジアシルグリセロール及びキトサンが含有される組成物250gを得た。
【0278】
一方、前記の実施例3で得られたアリイン脂肪酸結合体の替わりに、アリインのみを用いた対照となる組成物を同様の方法で得た。これを対照組成物とした。
【0279】
食品用混合機(NV型、西村製作所製)に前記の組成物1kgを添加し、バナバの葉の抽出物1g及びカキの葉の抽出物10g、ステビア粉末(ダイエーワーク製)30g、食用セルロース(旭化成製)1.8kg、アスコルビン酸(武田食品製)0.1gの比率で添加し、混合した。
【0280】
これを常法によりブタゼラチン由来1号カプセル(カプスゲル製)に300mgずつ充填し、食品製剤を得た。これを実施例4の食品製剤とした。
【0281】
一方、前記の対照組成物についても、同様に、前記の組成物の替わりとして食品製剤を調製してアリインのみからなる対照食品製剤とした。
【0282】
以下に、アリイン脂肪酸結合体からなる食品製剤の試験について説明する。
(試験例4)
【0283】
166〜206mg/dLの中性脂肪値を示す男性3名及び女性3名に、実施例4で得られた食品製剤を毎食後に3錠(900mg)ずつ、1日3回、28日間摂取させた。試験実施前及び摂取28日間後の血中中性脂肪値を検査した。
【0284】
その結果、実施例4の食品製剤の摂取は、摂取前に比して中性脂肪値が男性の平均値で26%、女性の平均値で23%ずつ、いずれも減少させた。また、血糖値も男性の平均値で11%、女性の平均値で12%ずつ、いずれも減少が認められた。なお、食品製剤摂取による体調の変化はなく、血液検査、その他の血液生化学検査、尿検査の検査値にも、いずれも、副作用は認められなかった。
【0285】
一方、164〜204mg/dLの中性脂肪値を示す男性3名及び女性3名に、前記のアリインのみからなる対照食品製剤を毎食後に3錠(900mg)ずつ、1日3回、28日間摂取させた。試験実施前及び摂取28日間後の血中中性脂肪値を検査した。
【0286】
その結果、対照食品製剤の摂取は、摂取前に比して中性脂肪値が男性の平均値で5%、女性の平均値で5%の減少に留まった。また、血糖値も男性の平均値で1%の増加、女性の平均値で5%の増加となった。
【0287】
これらの結果、アリインのみからなる対照食品製剤では、中性脂肪の減少は認められず、実施例4で得られた食品製剤との差異が確認された。
【0288】
次に、アリイン脂肪酸結合体からなる化粧品について説明する。
【実施例5】
【0289】
清浄なステンレス製寸胴に、ナチュラルラボラトリーズ製ヤシ油10kgを添加し、ここに、実施例1で得られたアリイン脂肪酸結合体1kgを添加した。さらに、武田紙器製アスタキサンチン1kg、キッコーマン製のクロロゲン酸エステラーゼ10gを添加した。
【0290】
これを35℃の加温器に入れて攪拌しながら、36時間加温した。これをアリイン脂肪酸結合体を含有する組成物とした。
【0291】
小型混合機(ホソカワ粉体製)にモノステアリン酸ポリエチレングリコール1g、親油型モノステアリン酸グリセリン1g、馬油エステル2g及びオレイン酸3gを加熱し、溶解した。得られた溶液に、前記のアリイン脂肪酸結合体を含有する組成物20g、プロピレングリコール2g、グリチルリチン酸ジカリウム0.1g、α−トコフェロール0.1g及び精製水70gを添加した。これらを溶解した後、冷却してボディ用化粧品を得た。
【0292】
一方、前記のアリイン脂肪酸結合体を含有する組成物を除外した基材のみからなるボディ用化粧品を製造し、対照検体として調製した。
【0293】
以下に、アリイン脂肪酸結合体からなる化粧品の試験について説明する。
(試験例5)
【0294】
臍部側腹部の皮下脂肪の厚みが33mm〜53mmの42〜77才の女性7人に、実施例5で得られた化粧品1gを右部に、14日間塗布した。対称となる左部には前記の対照検体1gを塗布した。塗布前及び塗布14日に、左右それぞれの臍部側腹部について皮下脂肪の厚みをノギスにて測定した。
【0295】
その結果、実施例5で得られた化粧品の塗布をした右部の皮下脂肪の厚みは、塗布前の平均値が43.4mmであったのに対し、塗布後の値は17.1mmであり、皮下脂肪の減少が認められた。
【0296】
一方、対照検体の塗布をした左部の皮下脂肪の厚みは、塗布前の平均値が42.7mmであったのに対し、塗布後の値は37.7mmであり、実施例5に比して皮下脂肪の減少は認められなかった。
【0297】
なお、実施例5の化粧品の塗布による症状、体感、皮膚の状態などに異常は認められず、安全性が確認された。
【0298】
次に、アリイン脂肪酸結合体からなる抗肥満薬について説明する。
【実施例6】
【0299】
清浄なステンレス製溶解槽に、前記の実施例3で得られたアリイン脂肪酸結合体50g、ラノリン300g、マクロゴールド200g、ミツロウ20g、オゾケライト30gを添加し、1時間溶解した。これを混練機に供し、混合した。これを再度、溶解槽で溶解して、過熱し、脱気装置により脱気させて、目的とする抗肥満薬を軟膏剤として得た。
【0300】
なお、対照として前記の実施例3で得られたアリイン脂肪酸結合体をラノリンに替えた対照となる検体を対照検体として得た。
【0301】
以下に、アリイン脂肪酸結合体からなる抗肥満薬の試験について説明する。
(試験例6)
【0302】
肥満度(BMI)28.0以上で、かつ、体脂肪率31.1%以上の女性6名(年齢46〜66歳)に、前記の実施例6で得られた抗肥満薬10gを臍部側腹部の右部に供し、塗布した。
【0303】
一方、肥満度28.0以上で、かつ、体脂肪率31.0%以上の女性6名(年齢41〜55歳)に、前記の対照検体を臍部側腹部の右部に供し、塗布した。
【0304】
塗布は一日一回とし、30日間行った。塗布30日後に、皮下脂肪の厚み、体重、体脂肪率及び血中中性脂肪値を測定した。
【0305】
その結果、前記の実施例6で得られた抗肥満薬を塗布した女性について右部の皮下脂肪の厚みについては、塗布前の平均値が37.7mmであり、一方、塗布後の値は18.8mmであり、一方、塗布していない左部の塗布前の平均値は39.4mmであり、塗布後の値は23.1mmとなり、やはり、皮下脂肪の厚みの減少が認められた。
【0306】
また、塗布前の体重は、平均値で、55.6kgであり、前記の実施例6で得られた抗肥満薬の塗布後には、47.4kgであり、体重の減少が認められた。
【0307】
さらに、塗布前の体脂肪率は、平均値で、32.2%であったものの、前記の実施例6で得られた抗肥満薬の塗布後には、22.4%であり、体脂肪率の減少が認められた。
【0308】
加えて、塗布前の血中中性脂肪の値は、平均値で、334mg/dLであったものの、前記の実施例6で得られた抗肥満薬の塗布後には、141mg/dLとなり、血中中性脂肪値の減少が認められた。
【0309】
これに対して、対照検体を塗布した女性について右部の皮下脂肪の厚みは、塗布前の平均値は34.3mmであり、塗布後の値は34.9mmであった。一方、塗布していない左部の塗布前の平均値は33.3mmであり、塗布後の値は32.8mmとなり、皮下脂肪の減少は認められなかった。
【0310】
また、塗布前の体重は、平均値で、54.8kgであり、対照検体の塗布後には、54.4kgとなり、体重の減少は認められなかった。
【0311】
さらに、塗布前の体脂肪率は、平均値で、33.1%であり、対照検体の塗布後の塗布後には、33.0%となり、体脂肪率の減少は認められなかった。
【0312】
加えて、塗布前の血中中性脂肪の値は、平均値で、313mg/dLであり、対照検体の塗布後には、332mg/dLとなり、血中中性脂肪値の減少は認められなかった。
【0313】
一方、前記の実施例6で得られた抗肥満薬の使用により、脂肪の減少以外の体感、一般臨床症状、皮膚の状態、血液学的検査値、血液性化学的検査値、尿の検査値のいずれにも、異常は、認められず、実施例6の安全性が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0314】
本発明である抗肥満効果、中性脂肪減少効果、セルライト改善を目的とした副作用の弱い優れた中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体は、脂肪組織の脂肪細胞の増殖を抑制し、中性脂肪の分解を促進して、脂肪組織周辺の血流を改善することにより、種々の脂肪増加、脂肪蓄積、肥満、セルライトに苦しむ患者又は半健康人のQOLを改善する可能性を有するものである。
【0315】
また、食用魚類の頭部、内臓、皮、ウロコ又はヒレは、加工処理工程で廃棄物として処理されている。本発明は、この廃棄物を有効に利用する点から廃棄物を減少させ、廃棄物による海洋の富栄養による環境汚染を予防でき、かつ、漁業資源の活用が期待され、漁業の発展に寄与する可能性を有するものである。
【0316】
中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体からなる食品製剤は、肥満の改善又はその発症を予防し、国民生活の質的向上に寄与する可能性を有するものである。
【0317】
さらに、中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体からなる化粧品は、脂肪分解機能の低下によるセルライトに対して改善又は予防効果を示し、高齢者や肥満者の生活の質を向上させる可能性を有する。
【0318】
加えて、中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体からなる抗肥満剤によれば、肥満に伴う生活習慣病の改善又は予防に貢献し、国民生活を向上させる。この抗肥満剤は内臓脂肪や皮下脂肪の増加を改善することにより、医療及び医薬品業界の活性化に寄与する可能性を有するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1)で示される中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体。
【化1】

Xは、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、ガンマ−リノレン酸、エイコサテトラエン酸、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸、アルファ−リポ酸のいずれから選択される一つ。
【請求項2】
請求項1に記載の結合体のうち、Xがエイコサペンタエン酸である下記の式(2)で示される中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体。
【化2】

【請求項3】
請求項1に記載の結合体のうち、Xがドコサヘキサエン酸である下記の式(3)で示される中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体。
【化3】

【請求項4】
請求項1に記載の結合体のうち、Xがアルファ−リポ酸である下記の式(4)で示される中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体。
【化4】

【請求項5】
ギョウジャニンニク、タマネギ又はニンニクの粉砕物、食用魚類の粉砕物、大豆粉砕物及び納豆菌を添加して発酵させた発酵物をアルカリ還元化後、柿の葉エキス含有大豆油により分離される油溶性部分を採取して得られる請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4に記載の中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体。
【請求項6】
請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4又は請求項5に記載の中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体1重量をエタノールに分散し、ジアシルグリセロール0.3〜3重量、キトサン0.5〜5重量を添加し、攪拌し、加温してエタノールを除去して得られる組成物からなる食品製剤。
【請求項7】
請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4又は請求項5に記載の中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体1重量に、アスタキサンチン0.3〜3重量、クロロゲン酸エステラーゼ0.005〜0.05重量を添加し、加温して得られる組成物からなる化粧品。
【請求項8】
請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4又は請求項5に記載の中性脂肪減少作用を呈するアリイン脂肪酸結合体からなる抗肥満剤。

【公開番号】特開2007−99715(P2007−99715A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−293302(P2005−293302)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(504447198)
【Fターム(参考)】