説明

中間転写体、中間転写体の製造方法、及び画像形成装置

【課題手段】長期にわたって優れた転写性およびクリーニング性を維持できる中間転写体およびその製造方法、ならびに画像形成装置を提供すること。
【解決手段】ポリフェニレンスルフィドおよびポリアミドを含有する基材175上に、体積固有抵抗1×10〜1×1013Ωcmの半導電性無機層176を有する中間転写体170。ポリフェニレンスルフィドおよびポリアミドを含有する基材175上に無機層176をプラズマCVD法により形成する中間転写体の製造方法。上記中間転写体を備えた画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写体、中間転写体の製造方法、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置が知られている。そのような画像形成装置としては中間転写体を用いたものが一般的である。中間転写体は、トナー画像を第1のトナー画像担持体から自己の表面に第1の転写手段によって1次転写されるものである。転写されたトナー画像は中間転写体に担持され、搬送された後、第2の転写手段によって記録紙等に2次転写される。
【0003】
中間転写体としては、中間転写体の表面にシリコン酸化物や酸化アルミニウム等を被覆させることによりトナー画像の剥離性を向上させ、記録紙等への転写効率向上を図るものが提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1には蒸着法或いはスパッタリング法により金属酸化物層を形成する方法が開示されている。しかしながら、真空蒸着法やスパッタリング法で得られた金属酸化物層は電気抵抗が極めて高いという問題点があった。そのため、使用した場合、金属酸化物層に電荷が蓄積するため、十分な転写性とクリーニング性は発揮できなかった。また真空蒸着法では基材上に形成された金属酸化物層と基材との密着性が悪く、スパッタリング法では金属酸化物層の生成速度が極めて遅いと共に、高分子基材上ではクラックが生じやすいという問題点があった。
【0004】
そこで、熱CDV法やウエットコーティング法により金属酸化物層を形成する方法が考えられる。しかしながら、熱CVD法は基材の熱エネルギーによって原料ガスを酸化・分解して薄膜を形成する方法のため、基材を高温度にしなければならず、基材温度は300〜500℃程度が必要となり、熱CVD法でプラスティックフィルム上に金属酸化物層を形成することは困難であった。さらに、ゾルゲル法等によるウエットコーティング法では、金属酸化物層の薄膜化、膜質の均一化、膜厚制御が困難であった。しかも、ウエットコーティング法は一般に気相法に比べて膜が脆弱であり、長い時間で転写効率を維持することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−212004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、表面の無機層に半導電性を付与することにより、長期にわたって優れた転写性およびクリーニング性を維持できる中間転写体およびその製造方法、ならびに画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリフェニレンスルフィドおよびポリアミドを含有する基材上に、体積固有抵抗1×10〜1×1013Ωcmの半導電性無機層を有することを特徴とする中間転写体に関する。
【0008】
本発明はまた、ポリフェニレンスルフィドおよびポリアミドを含有する基材上に無機層をプラズマCVD法により形成することを特徴とする中間転写体の製造方法に関する。
【0009】
本発明はまた、上記中間転写体を備えたことを特徴とする画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリフェニレンスルフィドおよびポリアミドを含有する基板に対して無機層をプラズマCVD法、好ましくは大気圧プラズマCVD法により形成することにより、当該無機層に半導電性を付与できる。
そのため、本発明に係る中間転写体は表面の無機層が半導電性を有し、電荷の蓄積を防止できるので、長期にわたって優れた転写性およびクリーニング性を維持できる。また表面の無機層はプラズマCVD法で形成されるので、無機層は基材との密着性が高く、クラックが生じ難い。
本発明において無機層を大気圧プラズマCVD法で形成すると、転写性およびクリーニング性がより一層向上し、真空装置等の大がかりな設備を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】カラー画像形成装置の1例を示す断面構成図である。
【図2】中間転写体の層構成を示す概念断面図である。
【図3】中間転写体を製造する製造装置の説明図である。
【図4】中間転写体を製造する第2の製造装置の説明図である。
【図5】プラズマにより中間転写体を製造する第1の製造装置の説明図である。
【図6】プラズマにより中間転写体を製造する第2の製造装置の説明図である。
【図7】ロール電極の一例を示す概略図である。
【図8】固定電極の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る中間転写体は、電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に好適に用いられる。中間転写体は、感光体の表面に担持されたトナー画像を自己の表面に1次転写させ、転写されたトナー画像を保持し、保持したトナー画像を記録紙等の被転写物の表面に2次転写させるものである。以下、本発明に係る中間転写体がベルト形状を有する場合について説明するが、ドラム形状を有していても良い。
【0013】
[画像形成装置]
先ず、本発明の中間転写体を有する画像形成装置について、タンデム型フルカラー複写機を例に取り説明する。
【0014】
図1は、カラー画像形成装置の1例を示す断面構成図である。
このカラー画像形成装置1は、タンデム型フルカラー複写機と称せられるもので、自動原稿送り装置13と、原稿画像読み取り装置14と、複数の露光手段13Y、13M、13C、13Kと、複数組の画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、中間転写体ユニット17と、給紙手段15及び定着手段124とから成る。
【0015】
画像形成装置の本体12の上部には、自動原稿送り装置13と原稿画像読み取り装置14が配置されており、自動原稿送り装置13により搬送される原稿dの画像が原稿画像読み取り装置14の光学系により反射・結像され、ラインイメージセンサCCDにより読み込まれる。
【0016】
ラインイメージセンサCCDにより読み取られた原稿画像を光電変換されたアナログ信号は、図示しない画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を行った後、露光手段13Y、13M、13C、13Kに各色毎のデジタル画像データとして送られ、露光手段13Y、13M、13C、13Kにより対応する第1の像担持体としてのドラム状の感光体(以下感光体とも記す)11Y、11M、11C、11Kに各色の画像データの潜像を形成する。
【0017】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kは、垂直方向に縦列配置されており、感光体11Y、11M、11C、11Kの図示左側方にローラ171、172、173、174を巻回して回動可能に張架された半導電性でエンドレスベルト状の第2の像担持体である本発明の中間転写体(以下中間転写ベルトと記す)170が配置されている。
【0018】
本発明の中間転写ベルト170は図示しない駆動装置により回転駆動されるローラ171を介し矢印方向に駆動されている。
【0019】
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、感光体11Yの周囲に配置された帯電手段12Y、露光手段13Y、現像手段14Y、1次転写手段としての1次転写ローラ15Y、クリーニング手段16Yを有する。
マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、感光体11M、帯電手段12M、露光手段13M、現像手段14M、1次転写手段としての1次転写ローラ15M、クリーニング手段16Mを有する。
シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、感光体11C、帯電手段12C、露光手段13C、現像手段14C、1次転写手段としての1次転写ローラ15C、クリーニング手段16Cを有する。
黒色画像を形成する画像形成部10Kは、感光体11K、帯電手段12K、露光手段13K、現像手段14K、1次転写手段としての1次転写ローラ15K、クリーニング手段16Kを有する。
【0020】
トナー補給手段141Y、141M、141C、141Kは、現像装置14Y、14M、14C、14Kにそれぞれ新規トナーを補給する。
【0021】
1次転写ローラ15Y、15M、15C、15Kは、図示しない制御手段により画像の種類に応じて選択的に作動され、それぞれ対応する感光体11Y、11M、11C、11Kに中間転写ベルト170を押圧し、感光体上の画像を転写する。
【0022】
このようにして、画像形成部10Y、10M、10C、10Kにより感光体11Y、11M、11C、11K上に形成された各色の画像は、1次転写ローラ15Y、15M、15C、15Kにより、回動する中間転写ベルト170上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。即ち、中間転写ベルトは感光体の表面に担持されたトナー画像をその表面に1次転写され、転写されたトナー画像を保持する。
【0023】
給紙カセット151内に収容された記録媒体としての記録紙Pは、給紙手段15により給紙され、次いで複数の中間ローラ122A、122B、122C、122D、レジストローラ123を経て、2次転写手段としての2次転写ローラ117まで搬送され、2次転写ローラ117により中間転写体上の合成されたトナー画像が記録紙P上に一括転写される。即ち、中間転写体上に保持したトナー画像を被転写物の表面に2次転写する。
【0024】
2次転写ローラ117は、ここを記録紙Pが通過して2次転写を行なう時にのみ、記録紙Pを中間転写ベルト170に圧接させる。
カラー画像が転写された記録紙Pは、定着装置124により定着処理され、排紙ローラ125に挟持されて機外の排紙トレイ126上に載置される。
【0025】
一方、2次転写ローラ117により記録紙Pにカラー画像を転写した後、記録紙Pを曲率分離した中間転写ベルト170は、クリーニング手段8により残留トナーが除去される。
【0026】
[中間転写ベルト]
本発明の中間転写ベルト170は、基材上に半導電性無機層を有するものである。図2に、中間転写ベルト170の概略断面図を示す。図2において、175が基材を示し、176が半導電性無機層を示す。
【0027】
基材175はポリフェニレンスルフィド(PPS)およびポリアミドを含有するものである。
【0028】
PPSは、いわゆるエンジニアリングプラスチックとして有用なものである。PPSの分子量は特に制限されないが、溶融流動性の向上の観点から、ゲル浸透クロマトグラフ法で求められた分子量分布のピーク分子量がMwで5000〜1000000、特に40000〜90000のものを使用するのが好ましい。
【0029】
PPSの製造方法は特に制限されず、例えば、特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載された方法等のような公知の方法によって製造可能である。
PPSはまた、市販のポリフェニレンサルファイドとして東レ(株)、大日本インキ化学工業(株)等より入手することもできる。
【0030】
PPSは、本発明の効果を損なわない範囲内で、種々の処理を施した上で使用することができる。そのような処理として、例えば、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、熱水などによる洗浄処理、および酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化などが挙げられる。
【0031】
ポリアミドは、いわゆるナイロンとも呼ばれるポリマーである。ポリアミドは、特に制限されず、各種ポリアミドが使用可能である。具体例として、例えば、ε−カプロラクタム、ω−ドデカラクタムなどラクタム類の開環重合によって得られるポリアミド;6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのアミノ酸から導かれるポリアミド;エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4,4´−アミノシクロヘキシル)メタン、メタおよびパラキシリレンジアミンなどの脂肪族、脂環族または芳香族ジアミンと、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,3−および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびダイマー酸などの脂肪族、脂環族または芳香族ジカルボン酸、またはそれらの酸ハロゲン化物(例えば酸クロリド)などの酸誘導体とから導かれるポリアミドおよびこれらの共重合ポリアミド;ならびにそれらの混合ポリアミド等が挙げられる。本発明においてはこれらのうち通常は、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とのポリアミド、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)およびこれらのポリアミド原料を主成分とする共重合ポリアミドが有用である。
【0032】
ポリアミドの重合度は特に制限されず、例えば、相対粘度(ポリマー1gを98%濃硫酸100mlに溶解し、25℃で測定)が2.0〜5.0の範囲内にあるポリアミドを目的に応じて任意に選択できる。
【0033】
ポリアミドの重合方法は特に制限されず、通常は公知の溶融重合法、溶液重合法およびこれらを組合せた方法を採用することができる。
ポリアミドはまた、市販の6ナイロン(東レ社製)、MXD6(三菱ガス化学社製)、4,6ナイロン(DSMジャパンエンプラ社製)、ザイテル(デュポン社製)等として入手することもできる。
【0034】
基材175におけるPPSとポリアミドとの含有比は通常、重量比で70/30〜95/5であり、無機層の導電性の観点から好ましくは85/15〜95/5である。
【0035】
基材175には、他のポリマーが含有されてもよい。他のポリマーとして、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、エトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)等の樹脂材料やフッ素系樹脂、EPDM、NBR、CR、ポリウレタン等のゴム材料が挙げられる。
【0036】
基材175における他のポリマーの含有量は、無機層の導電性の観点から、15重量%以下が好ましい。
【0037】
基材175にはさらに導電性物質が含有されることが好ましい。導電性物質としては、含有されることによって導電性を付与できるものであれば特に制限されず、粉体状態での体積固有抵抗が10Ω・cm以下の物質が好ましく使用される。そのような導電性物質として、例えば、電子写真用転写ベルトの分野で従来から使用されている公知の導電性物質が使用可能である。具体例として、例えば、カーボン;酸化スズ、酸化亜鉛、インジウムドープ酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ等の金属酸化物微粒子;ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン等の導電性高分子;有機物の熱分解物(例えばカルボン酸で修飾されたカーボン)、ポリスチレンスルフォン酸等のイオン性導電材料等が挙げられる。導電性物質としてはカーボンが好ましく使用される。
【0038】
導電性物質の含有量は基材175の体積固有抵抗が後述する範囲内になるような量であればよい。
【0039】
基材175の厚みは、本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではなく、例えば、50〜150μmが好ましい。
【0040】
基材175の体積固有抵抗は通常、1×10〜1×1012Ωcmであり、1×10〜1×1011Ωcmであることが好ましい。
【0041】
基材の体積固有抵抗はJIS−K6911に準拠した値であり、ハイレスタMCP−HT450型(三菱化学アナリテック社製)によって任意の10点で測定された値の平均値を用いている。
【0042】
基材175のガラス転移温度(Tg)は本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではなく、例えば、80〜90℃、特に85〜88℃が好ましい。
【0043】
基材のガラス転移温度はDSC(セイコー電子社製)によって測定された値を用いている。
【0044】
基材175は、PPSおよびポリアミド、ならびに所望の材料を混合し、溶融・混練した後、環状金型ダイから押し出し、冷却することによって、容易にシームレスベルト形状で製造できる。
【0045】
基材における無機層176形成面には、無機層形成前にプラズマ、火炎、紫外線照射等公知の表面処理方法により前処理しても良い。
【0046】
無機層176は半導電性を有するものであり、詳しくは体積固有抵抗が1×10〜1×1013Ωcm、好ましくは1×10〜1×1013Ωcmである無機層である。無機層の体積固有抵抗が大きすぎると、蓄積した電荷を放電できず、ベルトが帯電した状態になり画像ノイズを引き起こし、優れた転写性およびクリーニング性を十分に維持できない。体積固有抵抗が小さすぎる無機層はベルトを帯電させた時に、電流が流れ、やはり画像ノイズを引き起こす。
【0047】
無機層176の体積固有抵抗はJIS−K6911に基づく値であり、ハイレスタMCP−HT450型(三菱化学アナリテック社製)によって任意の10点で測定された値の平均値を用いている。
【0048】
無機層176の厚みは本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではなく、通常は10〜300nmであり、無機層の導電性の観点から好ましくは10〜170nmである。
【0049】
無機層176を構成する材料は金属酸化物であり、例えば、珪素酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物、亜鉛酸化物、ジルコニウム酸化物およびスズ酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種類の酸化物を含む。無機層を構成する好ましい材料は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、またはそれらの混合物である。
【0050】
前記したPPSおよびポリアミドを含有する基材175上に所定の無機層をプラズマCVD法によって形成すると、当該無機層176に半導電性が付与される。真空蒸着法、スパッタリング法、熱CVD、またはゾルゲル法等のような方法では十分な導電性を有する無機層は形成できない。前記基材にプラズマCVD法を行うことによって、無機層に半導電性が付与されるメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のメカニズムに基づくものと考えられる。PPSおよびポリアミドを含む基材上でプラズマCVD法を行うと、基材表面に所定の無機層が形成されながらも、プラズマによって、当該基材表面に基材中のポリアミドが滲出して分解される。そのため、無機層中、特に無機層における基板と接触する部分にはポリアミド分解物が含有され、その結果として、無機層が半導電性を有するようになる。
【0051】
プラズマCVD法(Plasma Chemical Vapor Deposition Method)は、少なくとも放電ガスと所望の無機層の原料ガスとの混合ガスをプラズマ化して、原料ガスに応じた膜を堆積・形成する方法であり、大気圧下で行っても、または減圧下で行ってもよい。本発明においては、中間転写ベルトの転写性およびクリーニング性をより一層向上させる観点から、大気圧またはその近傍下でプラズマCVD法を行う大気圧プラズマCVD法を採用することが好ましい。減圧下で行うと、基材表面に滲出したポリアミドの一部が蒸発するため、大気圧またはその近傍下で行う場合と比較して、無機層の体積固有抵抗が大きくなるためである。
【0052】
大気圧またはその近傍の圧力とは20kPa〜110kPa程度であり、本発明に記載の良好な効果を得るためには、93kPa〜104kPaが好ましい。
成膜温度(基材の表面温度)は50℃以上、基材のガラス転移温度未満である。成膜温度が高すぎると、無機層が有する半導電性が低下する。
【0053】
放電ガスとしては、例えば、アルゴンガス、窒素ガス、酸素ガス、水素ガス等が使用可能である。
【0054】
珪素酸化物層の原料ガスとしては、例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラクロロシラン等が使用可能である。
【0055】
アルミニウム酸化物の原料ガスとしては、例えば、塩化アルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリメトキシアルミニウム等が使用可能である。
【0056】
チタン酸化物層の原料ガスとしては、例えば、塩化チタン、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン等が使用可能である。
【0057】
亜鉛酸化物層の原料ガスとしては、例えば、ジエトキシ亜鉛、塩化亜鉛等が使用可能である。
スズ酸化物層の原料ガスとしては、例えば、テトラエトキシスズ、塩化スズ等が使用可能である。
【0058】
以下、中間転写体の無機層を大気圧プラズマCVDにより形成する場合を例に取り、装置及び方法について説明する。
図3は、中間転写体を製造する製造装置の説明図である。
中間転写体の製造装置2(放電空間と薄膜堆積領域が略同一部で、プラズマを基材に晒して堆積・形成するダイレクト方式)は基材上に無機層を形成するもので、エンドレスベルト状の中間転写体の基材175を巻架して矢印方向に回転するロール電極20と従動ローラ201、及び、基材表面に無機層を形成する成膜装置である大気圧プラズマCVD装置3より構成されている。
【0059】
大気圧プラズマCVD装置3は、ロール電極20の外周に沿って配列された少なくとも1式の固定電極21と、固定電極21とロール電極20との対向領域で且つ放電が行われる放電空間23と、少なくとも原料ガスと放電ガスとの混合ガスGを生成して放電空間23に混合ガスGを供給する混合ガス供給装置24と、放電空間23等に空気の流入することを軽減する放電容器29と、固定電極21に接続された第1の電源25と、ロール電極20に接続された第2の電源26と、使用済みの排ガスG’を排気する排気部28とを有している。
ここで、固定電極21に第2の電源26、ロール電極20に第1の電源25を接続しても良い。
混合ガス供給装置24は所定の無機層を形成する原料ガスと、放電ガスとを混合した混合ガスを放電空間23に供給する。
【0060】
従動ローラ201は張力付勢手段202により矢印方向に付勢され、基材175に所定の張力を掛けている。張力付勢手段202は基材175の掛け替え時等は張力の付勢を解除し、容易に基材175の掛け替え等を可能としている。
【0061】
第1の電源25は周波数ω1の電圧を出力し、第2の電源26は周波数ω1より高い周波数ω2の電圧を出力し、これらの電圧により放電空間23に周波数ω1とω2とが重畳された電界Vを発生する。そして、電界Vにより混合ガスGをプラズマ化して混合ガスGに含まれる原料ガスに応じた膜(無機層)が基材175の表面に堆積される。
【0062】
他の形態として、ロール電極20と固定電極21との内、一方の電極をアースに接続して、他方の電極に電源を接続しても良い。この場合の電源は第2の電源を使用することが緻密な薄膜形成を行え好ましく、特に放電ガスにアルゴン等の希ガスを用いる場合に好ましく用いられる。
【0063】
なお、複数の固定電極の内、ロール電極の回転方向下流側に位置する複数の固定電極と混合ガス供給装置で無機層を積み重ねるように堆積し、無機層の厚さを調整するようにしても良い。
また、無機層と基材との接着性を向上させるために、無機層を形成する固定電極と混合ガス供給装置の上流に、アルゴンや酸素或いは水素などのガスを供給するガス供給装置と固定電極を設けてプラズマ処理を行い、基材の表面171aを活性化させるようにしても良い。
【0064】
図4は、中間転写体を製造する第2の製造装置の説明図である。
中間転写体の第2の製造装置2a(放電空間と薄膜堆積領域が異なり、プラズマを基材に噴射して堆積・形成するプラズマジェット方式)は基材上に無機層を形成するもので、エンドレスベルト状の中間転写体の基材175を巻架して矢印方向に回転するロール203と従動ローラ201、及び、基材表面に無機層を形成する成膜装置である大気圧プラズマCVD装置3aより構成されている。
【0065】
大気圧プラズマCVD装置3aは前述した大気圧プラズマCVD装置3と、電極に対する電源の接続と混合ガスの供給と膜の堆積に係る部分とが異なり、以下異なる部分について説明する。
【0066】
大気圧プラズマCVD装置3aは、ロール203の外周に沿って配列された少なくとも1対の固定電極21と、固定電極21の一方の固定電極21aと他方の固定電極21bとの対向領域で且つ放電が行われる放電空間23aと、少なくとも原料ガスと放電ガスとの混合ガスGを生成して放電空間23aに混合ガスGを供給する混合ガス供給装置24aと、放電空間23a等に空気の流入することを軽減する放電容器29と、一方の固定電極21aに接続された第1の電源25と、他方の固定電極21bに接続された第2の電源26と、使用済みの排ガスG’を排気する排気部28とを有している。
ここで、固定電極21aに第2の電源26、固定電極21bに第1の電源25を接続しても良い。
混合ガス供給装置24aは所定の無機層を形成する原料ガスと、放電ガスとを混合した混合ガスを放電空間23aに供給する。
【0067】
第1の電源25は周波数ω1の電圧を出力し、第2の電源26は周波数ω1より高い周波数ω2の電圧を出力し、これらの電圧により放電空間23aに周波数ω1とω2とが重畳された電界Vを発生する。そして、電界Vにより混合ガスGをプラズマ化(励起)し、プラズマ化(励起)した混合ガスを基材175の表面に噴射し、噴射されたプラズマ化(励起)した混合ガスに含まれる原料ガスに応じた膜(無機層)が基材175の表面に堆積・形成される。
更に他の形態として、1対の固定電極(21a、21b)の内、一方の固定電極をアースに接続して、他方の固定電極に電源を接続しても良い。この場合の電源は第2の電源を使用することが緻密な薄膜形成を行え好ましく、特に放電ガスにアルゴン等の希ガスを用いる場合に好ましい。
【0068】
中間転写体は円筒状の回転ドラムでも良く、図3及び図4において、図3のロール電極20および基材175を円筒状の基材に置き代えて良く、また図4のロール203および基材175を円筒状の基材に置き代えても良い。
【0069】
以下に基材上に無機層を形成する各種の大気圧プラズマCVD装置の形態について詳細に説明する。なお、下記の図5、6は図3、4の破線部を主に抜き出したものである。
【0070】
図5は、プラズマにより中間転写体を製造する第1の製造装置の説明図である。
図5を参照して、無機層の形成に好適に用いられる大気圧プラズマCVD装置の第1の形態の1例を説明する。
【0071】
第1の大気圧プラズマCVD装置3は前述したように混合ガス供給装置24、固定電極21、第1の電源25、第1のフィルタ25a、ロール電極20、ロール電極を矢印方向に駆動回転させる駆動手段20a、第2の電源26、第2のフィルタ26aとを有しており、前述したように放電空間23でプラズマ放電を行わせて原料ガスと放電ガスを混合した混合ガスGを励起させ励起した混合ガスG1を基材表面175aに晒し、その表面に無機層を堆積・形成するものである。即ち放電空間は薄膜形成領域でもある。
【0072】
そして、固定電極21に第1の電源25から周波数ω1の第1の高周波電圧が印加され、ロール電極20に第2の電源26から周波数ω2の高周波電圧が印加されるようになっており、それにより、固定電極21とロール電極20との間に電界強度V1で周波数ω1と電界強度V2で周波数ω2とが重畳された電界が発生し、固定電極21に電流I1が流れ、ロール電極20に電流I2が流れ、電極間にプラズマが発生する。
【0073】
ここで、周波数ω1と周波数ω2の関係、及び、電界強度V1と電界強度V2および放電ガスの放電を開始する電界強強度IVとの関係が、ω1<ω2で、V1≧IV>V2、または、V1>IV≧V2を満たし、前記第2の高周波電界の出力密度が1W/cm2以上となっている。
【0074】
窒素ガスの放電を開始する電界強強度IVは3.7kV/mmの為、少なくとも第1の電源25から印可する電界強度V1は3.7kV/mm、またはそれ以上とし、第2の高周波電源60から印可する電界強度V2は3.7kV/mm、またはそれ未満とすることが好ましい。
【0075】
また、第1の大気圧プラズマCVD装置3に利用可能な第1の電源25(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
A1 神鋼電機 3kHz SPG3−4500
A2 神鋼電機 5kHz SPG5−4500
A3 春日電機 15kHz AGI−023
A4 神鋼電機 50kHz SPG50−4500
A5 ハイデン研究所 100kHz* PHF−6k
A6 パール工業 200kHz CF−2000−200k
A7 パール工業 400kHz CF−2000−400k
等の市販のものを挙げることが出来、何れも使用することが出来る。
【0076】
また、第2の電源26(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
B1 パール工業 800kHz CF−2000−800k
B2 パール工業 2MHz CF−2000−2M
B3 パール工業 13.56MHz CF−5000−13M
B4 パール工業 27MHz CF−2000−27M
B5 パール工業 150MHz CF−2000−150M
等の市販のものを挙げることが出来、何れも使用することが出来る。
【0077】
なお、上記電源のうち、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。それ以外は連続サイン波のみ印加可能な高周波電源である。
【0078】
本発明において、第1及び第2の電源から対向する電極間に供給する電力は、固定電極21に1W/cm2以上の電力(出力密度)を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、薄膜を形成する。固定電極21に供給する電力の上限値としては、好ましくは50W/cm2、より好ましくは20W/cm2である。下限値は、好ましくは1.2W/cm2である。なお、放電面積(cm2)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0079】
また、ロール電極20にも、1W/cm2以上の電力(出力密度)を供給することにより、高周波電界の均一性を維持したまま、出力密度を向上させることが出来る。これにより、更なる均一高密度プラズマを生成出来、更なる製膜速度の向上と膜質の向上が両立出来る。好ましくは5W/cm2以上である。ロール電極20に供給する電力の上限値は、
好ましくは50W/cm2である。
【0080】
ここで高周波電界の波形としては、特に限定されない。連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モード等があり、そのどちらを採用してもよいが、少なくともロール電極20に供給する高周波は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
【0081】
また、固定電極21と第1の電源25との間には、第1フィルタ25aが設置されており、第1の電源25から固定電極21への電流を通過しやすくし、第2の電源26からの電流をアースして、第2の電源26から第1の電源25への電流が通過しにくくなるようになっている。ロール電極20と第2の電源26との間には、第2フィルター26aが設置されており、第2の電源26からロール電極20への電流を通過しやすくし、第1の電源21からの電流をアースして、第1の電源25から第2の電源26への電流を通過しにくくするようになっている。
【0082】
電極には前述したような強い電界を印加して、均一で安定な放電状態を保つことが出来る電極を採用することが好ましく、固定電極21とロール電極20には強い電界による放電に耐えるため少なくとも一方の電極表面には下記の誘電体が被覆されている。
【0083】
以上の説明において、電極と電源の関係は、固定電極21に第2の電源26を接続して、ロール電極20に第1の電源25を接続しても良い。
更に他の形態として、一方の電極をアースに接続しても良く、他方の電極に接続する電源は第2の電源を使用することが緻密な薄膜形成を行え好ましく、とくに放電ガスにアルゴン等の希ガスを用いる場合に好ましい。
【0084】
図6は、プラズマにより中間転写体を製造する第2の製造装置の説明図である。
図6を参照して、無機層の形成に用いられる大気圧プラズマ装置の第2の形態の1例を説明する。
【0085】
大気圧プラズマ装置4は、1対の固定電極21a、21bを有し、固定電極21aに第1フィルタ25a及び第1の電源25が接続され、固定電極21bに第2フィルター26a及び第2の電源26が接続され、ロール電極20がアースに接続されている以外は図5の大気圧プラズマCVD装置3と同様な構成を有している。
【0086】
以下に作用を説明すると、固定電極21aに第1の電源25から周波数ω1の第1の高周波電圧が印加され、固定電極21bに第2の電源26から周波数ω2の高周波電圧が印加され、それにより、固定電極21aと21bとの間に電界強度V1で周波数ω1と電界強度V2で周波数ω2とが重畳された電界が発生し、固定電極21aに電流I1が流れ、固定電極21bに電流I2が流れ、電極間にプラズマが発生する。
そしてプラズマ化された混合ガスG2が薄膜形成領域41で基材175表面に噴射され無機層176を堆積・形成する。
【0087】
また、一方の電極をアースに接続しても良く、他方の電極に接続する電源は第2の電源を使用することが緻密な薄膜形成を行え好ましく、とくに放電ガスにアルゴン等の希ガスを用いる場合に好ましい。
【0088】
以上説明した第1の大気圧プラズマCVD装置3或いは大気圧プラズマ装置4のような、2台の電源により異なる周波数と電圧が重畳された電界でプラズマを発生する方式は、放電ガスとして窒素を用いる場合に好ましく用いられ、第1の電源により高電圧を掛け第2の電源により高周波を掛けることにより安定して放電を開始し且つ放電を継続することができる。
【0089】
図7は、ロール電極の一例を示す概略図である。
ロール電極20(203)の構成について説明すると、図7(a)において、ロール電極20は、金属等の導電性母材200a(以下、「電極母材」ともいう。)に対しセラミックスを溶射後、無機材料を用いて封孔処理したセラミック被覆処理誘電体200b(以下、単に「誘電体」ともいう。)を被覆した組み合わせで構成されている。また、溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、更に好ましく用いられる。
【0090】
また、図7(b)に示すように、金属等の導電性母材200Aにライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体200Bを被覆した組み合わせでロール電極20’を構成してもよい。ライニング材としては、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ゲルマン酸塩系ガラス、亜テルル酸塩ガラス、アルミン酸塩ガラス、バナジン酸塩ガラス等が好ましく用いられるが、この中でもホウ酸塩系ガラスが加工し易いので、更に好ましく用いられる。
【0091】
金属等の導電性母材200a、200Aとしては、銀、白金、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属等が挙げられるが、加工の観点からステンレスが好ましい。
尚、本実施の形態においては、ロール電極の母材200a、200Aは、冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材を使用している(不図示)。
【0092】
図8は、固定電極の一例を示す概略図である。
図8(a)において、角柱或いは角筒柱の固定電極21は上記記載のロール電極20と同様に、金属等の導電性母材21cに対しセラミックスを溶射後、無機材料を用いて封孔処理したセラミック被覆処理誘電体21dを被覆した組み合わせで構成されている。また、図8(b)に示す様に、角柱或いは角筒柱型の固定電極21’は金属等の導電性母材21Aへライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体21Bを被覆した組み合わせで構成してもよい。
【0093】
以下に、中間転写体の製造方法の工程の内、基材175上に無機層176を堆積・形成する成膜工程を、図3、5及び図4、6を参照して説明する。
図3、5において、ロール電極20及び従動ローラ201に基材175を張架後、張力付勢手段202により基材175に所定の張力を掛け、ロール電極20を所定の回転数で回転駆動する。
混合ガス供給装置24から上述した混合ガスGを生成し、放電空間23に放出する。
【0094】
第1の電源25から周波数ω1の電圧を出力して固定電極21に印加し、第2の電源26から周波数ω2の電圧を出力してロール電極20に印加し、これらの電圧により放電空間23に周波数ω1とω2とが重畳された電界Vを発生させる。
電界Vにより放電空間23に放出された混合ガスGを励起しプラズマ状態にする。そして、プラズマ状態の混合ガスGを基材表面に晒し混合ガスG中の原料ガスにより無機層176(図5)を基材175上に形成する。
【0095】
また図4、6において、第1の電源25から周波数ω1の電圧を出力して固定電極21aに印加し、第2の電源26から周波数ω2の電圧を出力して固定電極21bに印加し、これらの電圧により放電空間23aに周波数ω1とω2とが重畳された電界Vを発生させる。
電界Vにより放電空間23aを通過する混合ガスGを励起しプラズマ状態にして、プラズマ化された混合ガスG2(図6)は薄膜形成領域41に放出され、薄膜形成領域41で基材表面に晒される。該混合ガスG2中の原料ガスにより無機層176を基材175上に形成する。
【実施例】
【0096】
(実施例1)
PPS(ポリフェニレンサルファイド;東レ社製)94重量部、6ナイロン(東レ社製)6重量部、および酸性カーボン(デグサ社製)9重量部を混合し、混合物を連続式二軸混練機(KTX30;神戸製鋼社製)で290℃で300rpmにて混練した。混練物を環状金型ダイから押出成形して、シームレスベルト形状の基材(厚み110μm)を得た。この基材の体積固有抵抗を任意の10点で測定し、それらの平均値を求めた。
【0097】
シームレスベルト形状の基材表面に、大気圧プラズマCVD法によりSiO2層を形成した。詳しくは、図5に示すプラズマCVD装置を用いて、以下の条件で層を形成した。この無機層の体積固有抵抗を測定した。
【0098】
放電ガス=酸素ガス
放電ガス流量=10slm(スタンダード・リットル/分)
原料ガス=TEOS
原料ガス流量=2slm(スタンダード・リットル/分)
印加電力=1.6KW
【0099】
(実施例2〜9/比較例1〜6)
基材の組成および厚みを表1に記載のように変更したこと、無機層の形成方法および形成条件を表1に記載のように変更したこと以外、実施例1と同様の方法により、中間転写ベルトを製造した。
【0100】
比較例3において無機層は、公知の方法により真空蒸着で基材上にSiO2層を形成した。
【0101】
比較例4において無機層は、スパッタリング装置としてマグネトロンスパッタリング装置を用いてスパッタリング法により形成した。
供給ガス アルゴンガス:5cm/m、圧力:0.67Pa、
供給電力 1.2KW
ターゲット材料=シリコン
【0102】
比較例5において無機層は、公知の方法により塗布で基材上にSiO2層を形成した(塗布法1)。詳しくはテトラエトキシシラン580gとエタノール1144gを混合し、これにクエン酸水溶液(クエン酸1水和物5.4gを水272gに溶解したもの)を添加した後に、室温(25℃)にて1時間攪拌することでテトラエトキシシラン加水分解物Aを調製した。
この加水分解物Aを添加した以下の配合でワイヤーバーを用いて1μmの膜厚(ウェット膜厚)で塗布を行い、80℃2分乾燥した。
プロピレングリコールモノメチルエーテル 303質量部
イソプロピルアルコール 305質量部
テトラエトキシシラン加水分解物A 139質量部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBM503) 1.6質量部
【0103】
比較例6において無機層は、塗布で基材上にSiO2層を形成した(塗布法2)。詳しくは塗布法1と同様に加水分解物Aを用いて次の処方で1.8μmの膜厚(ウェット膜厚)で塗布を行い、80℃2分乾燥した。
プロピレングリコールモノメチルエーテル 303質量部
イソプロピルアルコール 305質量部
テトラエトキシシラン加水分解物A 139質量部
【0104】
【表1】

【0105】
(評価)
製造された中間転写ベルトをプリンタに搭載し、当該プリンタの標準条件で評価を行った。
【0106】
・転写性
転写性は、所定枚数画像形成を行い、その間に用紙に形成された画像を目視し、中抜け状態を確認することによって評価した。10万枚の画像形成終了まで中抜けのないものを◎、5万枚の画像形成終了まで中抜けのないものを○、5万枚の画像形成終了時に中抜けが僅かなものを△(実用上問題なし)、5万枚未満の画像形成で中抜けがあるものを×(実用上問題あり)とした。
【0107】
・クリーニング性
クリーニング性は、所定枚数画像形成を行い、その間に中間転写ベルトを目視し、トナーの付着状態を確認することによって評価した。20万枚の画像形成終了までトナーの付着のないものを◎、15万枚の画像形成終了までトナーの付着のないものを○、10万枚の画像形成終了時にトナーの付着が僅かなものを△(実用上問題なし)、5万枚未満の画像形成でトナーの付着があるものを×(実用上問題あり)とした。
【符号の説明】
【0108】
1;カラー画像形成装置
2;中間転写体の製造装置
3;大気圧プラズマCVD装置
4;大気圧プラズマCVD装置
17;中間転写体ユニット
20;ロール電極
21;固定電極
23;放電空間
24;混合ガス供給装置
25;第1の電源
26;第2の電源
41;薄膜形成領域
117;2次転写ローラ
170;中間転写ベルト
175;基材
176;無機層
201;従動ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンスルフィドおよびポリアミドを含有する基材上に、体積固有抵抗1×10〜1×1013Ωcmの半導電性無機層を有することを特徴とする中間転写体。
【請求項2】
半導電性無機層がプラズマCVD法によって形成されたことを特徴とする請求項1に記載の中間転写体。
【請求項3】
半導電性無機層が大気圧プラズマCVD法によって形成されたことを特徴とする請求項1に記載の中間転写体。
【請求項4】
半導電性無機層が、珪素酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物、亜鉛酸化物、ジルコニウム酸化物およびスズ酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種類の酸化物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の中間転写体。
【請求項5】
基材におけるポリフェニレンスルフィドとポリアミドとの含有比が重量比で70/30〜95/5であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の中間転写体。
【請求項6】
基材の体積固有抵抗が1×10〜1×1012Ωcmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の中間転写体。
【請求項7】
基材のガラス転移温度が80〜88℃であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の中間転写体。
【請求項8】
ポリフェニレンスルフィドおよびポリアミドを含有する基材上に無機層をプラズマCVD法により形成することを特徴とする中間転写体の製造方法。
【請求項9】
前記無機層を大気圧プラズマCVD法により形成することを特徴とする請求項8に記載の中間転写体の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の中間転写体を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−250088(P2010−250088A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99760(P2009−99760)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】