説明

乗用型作業車両

【課題】操縦席の前方にエンジンルームを設けている乗用型作業車両において、ボンネットの取付け強度のアップと位置調節の容易性向上とを図る。
【手段】エンジンルーム5と操縦席7とは鋼板製の隔壁28で仕切られている。操縦席7にはダッシュボードフレーム40が配置されて、このダッシュボードフレーム40に、メータ類が取り付くダッシュボード32を固定している。ダッシュボードフレーム40にはボンネットフレーム41が固定されており、ボンネットフレーム41の前端部にボンネット21が回動可能に取付けられている。ボンネットフレーム41は隔壁28にボルト63で固定されている。隔壁28の背面には補強フレーム52が固定されており、補強フレーム52に隔壁28を介してサイドブラケット54がボルトで固定されている。サイドブラケット54にサイドカバー20の後部が取付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えば農業用トラクタのように跳ね上げ式ボンネットで覆われたエンジンルームを有する乗用型作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農業用のトラクタは車輪で走行自在に支持された走行機体を備えており、走行機体のうちその前部にエンジンルームを設けて、走行機体のうちエンジンルームの後方の部分に操縦席(運転席)を設けており、走行機体の後端部に耕耘機等の作業機が連結されている。エンジンルームの前面はフロントカバーで覆われて左右側面はサイドカバーで覆われ、そして上面はボンネットで覆われている(フロットカバーがボンネットに一体化しているタイプもある。)。また、エンジンルームと操縦席とは隔壁で仕切られている。なお、隔壁は、「遮蔽板」「仕切板」「センターカバー」「エアカットパネル」「エアカットプレート」と言った名称で呼ばれることもある。
【0003】
ボンネットの開閉方式として、前端を中心にして後端が上下する後開き方式と後端を中心にして前端が上下する前開き方式とがあり、後者の前開き方式による取付け構造の一例として、本願出願人の出願に係る特許文献1には、ダッシュボードステーにボンネットを取り付けることが開示されている。
【0004】
すなわち、操縦席にはメータ類を取付けるダッシュボードが配置されており、このダッシュボードはダッシュボードステーに固定されているが、特許文献1では、ダッシュボードステーを板材でカバー状に構成して、このダッシュボードステーにボンネットを連結している。また、特許文献1では、サイドカバーもダッシュボードステーに取付けている。
【特許文献1】特開2005−59731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダッシュボードステーをカバー状に構成した場合、特許文献1の構成を採用するとボンネットの取付けのための部材点数を抑制して構造を簡単化できる利点があるが、このような利点を有する反面、その後の研究により、問題点として、ボンネットが僅かながらふらつく場合がある点や、ボンネットとサイドカバーとの相対位置の調節を行いにくい場合がある点が判明した。
【0006】
前記問題点のうち、前者のボンネットのふらつきは、ダッシュボードステーがカバー状であるために剛性が高くないことに起因しており、また、後者のボンネットとサイドカバーとの相対位置の調節が面倒である点は、ボンネットとサイドカバーとが共にダッシュボードステーに取付けられていることに起因しているものであった。
【0007】
本願発明は、このような知見を基にして成されたものであり、主たる目的は、エンジンルームと操縦席とを仕切る隔壁を有効利用してより品質の高い乗用型作業車両を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、農業用トラクタのような乗用型作業車両を対象にしており、この乗用型作業車両は、車輪又はクローラで支持された走行機体に、エンジンルームと操縦席とが隔壁を挟んで前後に隔てて設けられており、前記エンジンルームは固定式のサイドカバーと開閉式のボンネットとを有する防護手段で覆われている一方、前記操縦席にはメーター類を取付けたダッシュボードが配置されており、前記ダッシュボードはダッシュボードフレームに固定されている。
【0009】
そして、本願発明は、上記の乗用型作業車両において、前記ダッシュボードフレームには、前記隔壁の上部の前方に突出した前部を有するボンネットフレームが固定されており、このボンネットフレームは前記隔壁に固定されており、かつ、前記ボンネットフレームの前部に、前記ボンネットがその後端部を中心に跳ね上げ回動できるように取付けられている一方、前記サイドカバーは前記ボンネットフレームとは別の部材に取付けられている。
【0010】
本願発明には幾つかのバリエーションが含まれている。第1のバリエーションとして、請求項2に記載したように、請求項1の構成において、前記ボンネットフレームは、前記ダッシュボードフレームに固定された左右のサイドメンバーと、前記左右のサイドメンバーをその前部において繋ぐ左右横長のフロントメンバーとを備えており、前記フロントメンバーは前記隔壁の前方に配置されており、このフロントメンバーか又は左右サイドメンバーの前端部かに前記ボンネットがヒンジ手段によって連結されている。
【0011】
第2のバリエーションの発明は、請求項3に記載したように、請求項1又は2の構成において、前記隔壁の左右両側部のうち左右サイドカバーの後方部に、前記隔壁から前向きに突出したサイドブラケットが直接に又は他の部材を介して固定されており、前記サイドブラケットに前記サイドカバーの後部が取付けられている。
【0012】
第3のバリエーションの発明は、請求項4に記載したように、請求項3の構成において、前記隔壁の裏側には、前記左右のサイドブラケットと前後方向に重なる部分を有する補強フレームが配置されており、前記サイドブラケットと隔壁とは補強フレームに固定されており、かつ、前記補強フレームは、シリンダブロック又はミッションケースに直接に又は他の部材を介して固定されている。
【発明の効果】
【0013】
本願発明では、ボンネットフレームはダッシュボードフレームから前向きに延びているが、ボンネットフレームはダッシュボードフレームの手前に配置された隔壁にも固定されているため、隔壁がつっかい棒の役割を果たしており、その結果、ボンネットフレームはしっかりと支持されている。このためボンネットをガタツキのない安定した状態に保持できる。また、隔壁とボンネットフレームとは互いに補強し合う関係になっており、このため隔壁はその厚さを厚くすることなく剛性を向上させることができる。
【0014】
また、サイドカバーはボンネットフレームとは別の部材に取付けられているため、ボンネットとサイドカバーとの相対位置の調節も容易である。更に、ボンネットフレームは隔壁の前方に突出していてその前端部にボンネットが取付けられているため、ボンネットを開けるとボンネットフレームの前端は露出することになり、従って、ボンネットの取付けや位置の調節を簡単に行うことができる。また、サイドカバーはボンネットフレームとは別の部材に取付けられているため、サイドカバーとは関係なく取付けることができる。このため、サイドカバーについても取付け作業や位置の調節を簡単に行える。
【0015】
ボンネットフレームは様々の形態を採用できるが、請求項2のように構成すると、左右のサイドメンバーの間には空間が空いているためボンネットフレームの全体としての重量が過度に大きくなることはなく、しかも、左右のサイドカバーの前端部にはフロントメンバーが固定されているためボンネットフレームは全体として堅牢な構造になっている。従って、請求項2の発明では、ボンネットフレームの過度の重量増大をもたらすことなくボンネットをしっかりと支持できる。
【0016】
サイドカバーの取付け手段には様々の方法を採用できるが、請求項3の発明を採用すると、隔壁がサイドカバーの支持部材に兼用されるため、サイドカバーの取付け構造を簡単化できる利点がある。更に、請求項4の発明では、サイドブラケットは補強フレームに固定されているためサイドカバーの支持強度が格段に高くなっており、また、補強フレームの存在によって隔壁の剛性が格段に向上しているため、ボンネットの支持強度も格段に高くなっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は農業用トラクタに適用している。
【0018】
(1).トラクタの概要
まず、図1〜図3に基づいて概要を説明する。図1はトラクタの全体の側面図、図2は一部の部材を省略した状態での前方からの斜視図、図3は一部の部材を省略した状態での後方からの斜視図である。
【0019】
トラクタは、前輪2及び後輪3で支持された走行機体1を備えている。走行機体1は主要要素としてフレーム構造の車台4を備えており、走行機体1の略前半部にはエンジンルーム5が設けられ、略後半部にはシート6を有する操縦席7が設けられている。走行機体1の後端部には変速機構を内蔵した作業用駆動部8が搭載されており、この作業用駆動部8と車台4とに複数のリンク9,10が連結されている。耕耘機等の作業機は、複数のリンク9,10からなる三点リンク機構に昇降可能に連結される。シート6の左右両側には後輪3を覆うサイドフエンダー11を設けている。
【0020】
操縦席7の床下箇所のうち左右中間部にセンターカバー12で覆われた走行ミッション13が配置されており、走行ミッション13からフロントドライブシャフト14を介して前輪2に動力が伝達される。また、後輪には図示しない伝動機構で動力が伝達される。前輪2は平面姿勢を変更可能であり、ハンドル15を回転操作するとフロントアクスル装置16によって前輪2の姿勢が変わり、これによって走行機体1が舵取りされる。作業用駆動部8の後端から出力軸17が突出している。
【0021】
エンジンルーム5は、固定式のフロントカバー(フロントフエンダー)19及び左右サイドカバー20と開閉式のボンネット21とで背面を除いた部分が覆われている。ボンネット21の前面部に左右一対のフロントライトを設けており、また、フロントカバー19とサイドカバー20には吸気穴が空いている。また、サイドカバー20にも吸気穴が空いている。フロントカバー19とサイドカバー20とには吸気口が空いている。なお、フロントカバー19をボンネット21に一体化することも可能である。
【0022】
図2,3から理解できるように、エンジンルーム5は防塵シート23を介して前部エリア5aと後部エリア5bとに分けられており、前部エリア5aにはボッテリー24やラジェータ25等の補機類が配置されており、後部エリア5bには、シリンダブロック26を有するエンジン27や各種補機類が配置されている。
【0023】
エンジンルーム5と操縦席7とは金属板製の隔壁28で仕切られており、エンジン27の主要要素であるシリンダブロックは、エンジンルーム5の後部側に隔壁28と重なった状態で配置されている。防塵シート23は金属製の補助フレーム29に取付けられており、また、隔壁28の周縁のうち下端縁を除いた部分には中空状のシール材30が装着されている。
【0024】
操縦席7には、既述したシート6及びハンドル15の他に、クラッチレバー31、ダッシュボード32などが配置されている。ダッシュボード32は操縦席7の左右中間部に配置されており、側面視で水平に対してやや後傾した上面部32aと、上面部32aと一体に連続した上下長手の胴部32bとを備えている。ダッシュボード32の上面部32aに、スピードメータやエンジン回転数メータのようなメータ類(図示せず)が取付けられている。ダッシュボード32の上面部32aには変速レバー33も設けられている。また、ハンドル軸34はダッシュボード32の上面部32aに貫通している。
【0025】
ダッシュボード32のうち変速レバー33が取り付いている部分は平面視で後ろ向きに突出した形態になっている。このため、操縦者は両足を伸ばすことができる。ダッシュボード32は樹脂又は金属板で製造されている。上面部32aと胴部32bと別体に構成することも可能である。
【0026】
図1に示すように、操縦席7は、ダッシュボード32を除いた部分を覆う前カバー35を備えている。従って、前カバー35の空所にダッシュボード32が嵌まった状態になっている。ダッシュボード32と前カバー35とを一体化することも可能である。また、ダッシュボード32を複数の部材で構成することも可能である。なお、図2,3に示す符号36は排気管、符号37は燃料パイプである。
【0027】
(2).要部の概要
次に、従前の図に加えて図4〜図8を参照して本願発明の要部の概要を説明する。図4のうち(A)は隔壁28を中心にした部分を前方からの斜視図、(B)は隔壁28の斜視図、図5は隔壁28を中心にした部分を後方から見た斜視図、図6は隔壁28を省略して主要部材を左後方から見た斜視図、図7は隔壁28を省略して主要部材を右後方から見た斜視図、図8は隔壁28を省略して主要部材を右前方の下方から見た斜視図である。
【0028】
既述のとおり、エンジンルーム5の後部エリア5bと操縦席7とは鋼板製の隔壁28で仕切られており、隔壁28により、エンジン27の熱気が操縦席に伝わることを抑制している。そして、エンジンルーム5の後部エリアにはシリンダブロックが配置されており、図4及び図5に示すように、シリンダブロックの後面には走行用ミッションケース13が固定されている(走行用ミッションケース13にはクラッチケースも固定されている。)。
【0029】
そして、図4(B)から容易に理解できるように、隔壁28は、全体的には正面視四角形に近い形態ながら、走行用ミッションケース13との干渉を回避するために、下部には下方及び左側方に開口した凹所39が切欠き形成されている。
【0030】
特に図5〜図8から容易に理解できるように、走行用ミッションケース13の上面にはダッシュボードフレーム40がボルトで固定されており、このダッシュボードフレーム40の上端にボンネットフレーム41が固定されている。ボンネットフレーム41のうちダッシュボードフレーム40の上方の部分にはダッシュボードステー42がボルトで固定されており、このダッシュボードスター42に既述のダッシュボード32が固定されている。
【0031】
ボンネットフレーム41の前部は隔壁28の前方に突出しており、ボンネットフレーム41の前端部に左右横長のヒンジ体43が左右横長のヒンジピン44が回動自在に連結されている。ボンネット21の後端部はヒンジ体43にボルトで固定されている。
【0032】
図4から容易に理解できるように、補助フレーム29とヒンジ体43には、ボンネット21を開いた状態に保持するためのリンク機構45が連結されている。リンク機構45は、補助フレーム29にブラケット46を介して回動自在に連結されたフロントリンク47と、ヒンジ体43に後部が固定されたリアリンク48と、フロントリンク47及びリアリンク48に相対回動自在に連結されたミドルリンク49との3つの部材から成っており、フロントリンク47には閉じ操作用の取っ手50を設けている。図4,8に符号51で示す部材は、ボンネット21をゆっくり閉じ回動させるためのダンパー装置である。
【0033】
図5〜図8から容易に理解できるように、隔壁28のうちボンネットフレーム41より下方の部位には左右横長の第1補強フレーム52が固定されており、この第1補強フレーム52の左右両端部に、隔壁28を介して前向きのサイドブラケット54が固定されている。そして、サイドブラケット54にサイドカバー20の後端部が取付けられている。
【0034】
また、例えば図8から容易に理解できるように、第1補強フレーム52には下向きに延びる左右一対の第2補強フレーム53が溶接によって固着されており、第2補強フレーム53は隔壁28にボルトで固定されている。
【0035】
(3).ボンネットの支持機構の詳細
次に、ダッシュボードフレーム40やボンネットフレーム41を中心にしたボンネット支持機構の詳細を図9〜図13も参照して説明する。図9はダッシュボードフレーム40とボンネットフレーム41とダッシュボードステー42との分離斜視図、図10は要部の側面図、図11は要部の平面図、図12のうち(A)は分離平面図、(B)は組立た状態での(A)のB−B視断面図、図13は図11の XIII-XIII視断面図である。
【0036】
ダッシュボードフレーム40は板金加工品であり、例えば図6及び図9に明瞭に示されているように、左右横長の底板40aと、底板40aの左右両端部から立ち上がった縦長部40bとから成っている。縦長部40bは下部と上部とが別部材で構成されており、上部は前板と側板とを有する平面視L形になっている。
【0037】
ボンネットフレーム41は、図9を中心にして図6,8,10〜12に示されているように、左右外向きに開口した前後長手で溝型の第1サイドメンバー56と、第1サイドメンバー56の溝部内に配置された前後長手で溝型の第2サイドメンバー57と、第1サイドメンバー56の内側面に配置された前後長手で内向き開口溝型の第3サイドメンバー58と、第1サイドメンバー56の前端に固定された第4サイドメンバー59と、左右の第4サイドメンバー59に掛け渡すように配置された左右横長で断面L形の第1フロントメンバー60と、第1フロントメンバー60の前面にボルトで固定された第2フロントメンバー61とを備えている。
【0038】
第1サイドメンバー56と第3サイドメンバー58とは隔壁28を貫通している。このため、隔壁28の上部には、図4(B)に示すように左右一対の逃がし穴62が空いている。そして、第2サイドメンバー57の前端部は第1サイドメンバー56の外側に突出した前板57aになっており、この前板57aがボルト63で隔壁28に固定されている。このため、隔壁28のうち逃がし穴62の左右外側にはサイドメンバー用取付け穴64が空いている。
【0039】
第1サイドメンバー56と第2サイドメンバー57はダッシュボードフレーム40における縦長部40bの外側面にボルト65で固定されており、第1サイドメンバー56の上面にダッシュボードステー42がボルトで固定されている。また、第1サイドメンバー56と第2サイドメンバー57と第3サイドメンバー58とはボルト66で共締めされている。
【0040】
この場合、図10に示すように、第1〜第3サイドメンバー58をボルト66で締結するにおいて、第1サイドメンバー56及び第3サイドメンバー58のボルト挿通穴67を前後に長い長穴になっており、このため、第2サイドメンバー57と第3サイドメンバー58との前後位置を調節できる。従って、隔壁28とダッシュボードフレーム40との間隔に誤差があってもその誤差を吸収できる。
【0041】
例えば図10に示すように、第1サイドメンバー56に設けた前板56aと前第4サイドメンバー59に設けた後板59aとは互いに重なっており、両板56a,59aをボルト68で締結している。この場合、両板56a,59aのうちのいずれか一方又は両方のボルト挿通穴を上下長手の長穴とすることにより、第4サイドメンバー59の上下位置を調節可能としている。
【0042】
更に、例えば図9に示すように、第1フロントメンバー60は第4サイドメンバー59に重なる側板60aを備えており、そして、図10に示すように、第1フロントメンバー60の側板60aと第4サイドメンバー59とはボルト69で締結されている。この場合、第4サイドメンバー59のボルト挿通穴を前後長手の長穴しており、このため、ボンネット21の前後位置を調節できる。
【0043】
第2フロントメンバー61は第1フロントメンバー60に対して左右位置調節可能な状態でボルト70(図13参照)で固定されている。また、第2フロントメンバー61は第1フロントメンバー60の上方にはみ出ており、この上向きはみ出し部に筒部61aを曲げ形成している。他方、例えば図7,8,11,12から理解できるように、ヒンジ体43は左右横長の板状になっているが、左右両端部には前記筒部61aに外側から重なる耳片43aが一体に形成されており、耳片43aと筒部61aとがヒンジピン44で連結されている。筒部61aは左右に分断されているが、これはヒンジピン44のこじれを防止するためである。
【0044】
図13に例示するように、ボンネット21はヒンジ体43とリアリンク48とにボルト71で固定されている。ボンネット21はゴム製のスペーサ72を介してヒンジ体43及びリアリンク48に固定されている。なお、ボンネット21はヒンジ体43のみに固定することも可能であるが、この場合でも、リアリンク48とボンネット21との間にスペーサ72を介在させるのが好ましい。
【0045】
図13に示すように、隔壁28の上縁部と左右縁部とには縁部材73が固定されており、縁部材73に男性変形可能なシール材30が一体に取付けられている。シール材30は前カバー35の内面に当接しており、このためエンジンルーム5の熱気が操縦席7に進入することが阻止されている。また、前カバー35の前端縁にも縁部材73を介してシール材30が取付けられており、このためボンネット21と前カバー35との間は隙間なくシールされている。
【0046】
(4).サイドカバーの取付け構造
次に、従前の図に加えて図14も参照してサイドカバー20の取付け構造を説明する。図14のうち(A)は分離斜視図、(B)は(A)のB−B視断面図である。
【0047】
例えば図7や図10に示すように、第1補強フレーム52は基本的には側面視L形であり、その背面に更に補強のために断面L形のリブ材75が溶接によって固定されている。他方、第2補強フレーム53は平面視L形である。第2補強フレーム53は隔壁28を介してエンジンのシリンダブロック26(図10参照)にボルト53′で固定されている。このため、図4(B)に示すように、隔壁28には補強材用取付け穴76が空いている。
【0048】
図14(A)に示すように、サイドブラケット54は、共に前後長手の上アーム材77と下アーム材78とを主要要素として構成されている。上部材は上片と側片とを有する断面L形でその後端には隔壁28に重なる上基板77aが溶接によって固着されている。他方、下アーム材78は、その前部は上板78aと内外の側板78b,78cを有する下向きに開口した溝形になっている。そして、内側板78bは隔壁28まで延びており、内側板78bの後端には、隔壁28に重なる下基板78dが曲げ形成されている。
【0049】
サイドブラケット54の上下基板77a,78dと隔壁28と第1補強フレーム52とはボルト79で共締めされている。このため、図4(B)に示すように隔壁28にはサイドブラケット用取付け穴80が空いている。
【0050】
サイドブラケット54を構成する下アーム材78の上板78aには上向きの突片81が切り起こし形成されており、この突片81がボルト82で上アーム材77に固定されている。また、下アーム材78の外側板78cには、外向きのストッパー片83aを有する第1支持片83とその外面に重なった第2支持片84とが配置されており、両支持片84はスポット溶接等によって下アーム材78に一体に固定されている。
【0051】
そして、サイドカバー20の上部は内向きの第1段部20aと第2段部20bとを有して階段状に曲げ形成されており、サイドブラケット54の第2支持片83には、サイドカバー20の上段部20bが重なり得る水平片83aが曲げ形成されている。ボンネット21の下端は第1段部20bの箇所に位置している。
【0052】
また、サイドカバー20の上段部にはその全長にわたって上向きのリブ片20cが形成されており、リブ片20cに、ストッパー片83aに嵌まるスリット85を有する突部20dが形成されている。ストッパー片83aには、コッターピンや割り方式スナップピンのような抜け止め手段86が嵌まる穴87を設けている。
【0053】
従って、サイドカバー20の突部20dをサイドブラケット54のストッパー片83aに嵌め入れてからストッパー片83aに抜け止め部材86を挿入すると、サイドカバー20はその後部においてずれ不能に保持される。第1支持片83には、サイドカバー20における突部20dの後端に当接し得る規制片83bを曲げ形成している。抜け止め手段86にビスを使用することも可能である。
【0054】
(5).まとめ
以上の構成において、ボンネット21はボンネットフレーム41のヒンジ体43に取付けられているが、ヒンジ体43は隔壁28の手前に位置して露出しているためボンネット21の取付け作業は容易である。特に、本実施形態では、第2フロントメンバー61は第1フロントメンバー60に対して左右位置調節可能で、第1フロントメンバー60は第4サイドメンバー59に対して左右位置調節可能で、第4サイドメンバー59は第2サイドメンバー57に対して上下位置調節可能であるため、結果としてボンネット21は上下左右前後の各位置を調節可能であり、このため、部材の加工誤差や組み立て誤差があっても正確な位置に取り付けることができる。
【0055】
そして、ボンネットフレーム41を構成する第2サイドメンバー57は隔壁28に固定されているため、ボンネットフレーム41はダッシュボードフレーム40から前向きに突出した状態でありながら高い支持強度が発揮されている。従って、ボンネット21がふらつくことはない。
【0056】
なお、ボンネットフレーム41を構成するサイドメンバーは1つの部材で構成しても良いが、本実施形態のように複数の部材で構成して部材の相互位置を調節可能とすると、上記のとおり、ボンネット21の位置の調節が容易である。
【0057】
また、隔壁28に補強フレーム52,53とボンネットフレーム41とが固定されているため、隔壁28は薄くとも剛性が格段に向上しており、従って、エンジンの振動によって騒音が発生することも防止できる。更に、また、サイドブラケット54は隔壁28と第1補強フレーム52とに固定されているため、サイドカバー20をしっかりと保持できる。
【0058】
(6).その他
本願発明は上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、ボンネットフレームや補強フレームをパンプ材やチャンネル材で構成するといったことも可能である。ダッシュボードフレームも必要に応じて様々の形態を採用できる。ダッシュボードステーをダッシュボードフレームに一体化することも可能である。ヒンジ手段としては、市販のヒンジを使用することも可能である。
【0059】
また、本願発明の適用対象は農業用トラクタタには限らず、乗用型芝刈機や小麦用コンバインなどの乗用型農作業機、或いは運搬車などにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】トラクタの側面図である。
【図2】一部の部材を省略した状態で要部を前方から見た斜視図である。
【図3】一部の部材を省略した状態で要部を後方から見た斜視図である。
【図4】(A)は隔壁を中心にした部分を前方からの斜視図、(B)は隔壁の斜視図である。
【図5】隔壁を中心にした部分を後方から見た斜視図である。
【図6】隔壁を省略して主要部材を左後方から見た斜視図である。
【図7】隔壁を省略して主要部材を右後方から見た斜視図である。
【図8】隔壁を省略して主要部材を右前方の下方から見た斜視図である。
【図9】ダッシュボードフレームとボンネットフレームとダッシュボードステーとの分離斜視図である。
【図10】要部の側面図である。
【図11】要部の平面図である。
【図12】(A)は分離平面図、(B)は組立た状態での(A)のB−B視断面図である。
【図13】図11の XIII-XIII視断面図である。
【図14】(A)は分離斜視図、(B)は(A)のB−B視断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 走行機体
5 エンジンルーム
7 操縦席
19 フロントカバー
20 サイドカバー
21 ボンネット
26 エンジンブロック
27 エンジン
32 ダッシュボード
25 ハンドル
28 隔壁
40 ダッシュボードフレーム
41 ボンネットフレーム
42 ダッシュボードステー
43 ヒンジ体
44 ヒンジピン
54 サイドブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪又はクローラで支持された走行機体に、エンジンルームと操縦席とが隔壁を挟んで前後に隔てて設けられており、前記エンジンルームは固定式のサイドカバーと開閉式のボンネットとを有する防護手段で覆われている一方、前記操縦席にはメーター類を取付けたダッシュボードが配置されており、前記ダッシュボードはダッシュボードフレームに固定されている、
という乗用型作業車両であって、
前記ダッシュボードフレームには、前記隔壁の上部の前方に突出した前部を有するボンネットフレームが固定されており、このボンネットフレームは前記隔壁に固定されており、かつ、前記ボンネットフレームの前部に、前記ボンネットがその後端部を中心に跳ね上げ回動できるように取付けられている一方、前記サイドカバーは前記ボンネットフレームとは別の部材に取付けられている、
乗用型作業車両。
【請求項2】
前記ボンネットフレームは、前記ダッシュボードフレームに固定された左右のサイドメンバーと、前記左右のサイドメンバーをその前部において繋ぐ左右横長のフロントメンバーとを備えており、前記フロントメンバーは前記隔壁の前方に配置されており、このフロントメンバーか又は左右サイドメンバーの前端部かに前記ボンネットがヒンジ手段によって連結されている、
請求項1に記載した乗用型作業車両。
【請求項3】
前記隔壁の左右両側部のうち左右サイドカバーの後方部に、前記隔壁から前向きに突出したサイドブラケットが直接に又は他の部材を介して固定されており、前記サイドブラケットに前記サイドカバーの後部が取付けられている、
請求項1又は請求項2に記載した乗用型作業車両。
【請求項4】
前記隔壁の裏側には、前記左右のサイドブラケットと前後方向に重なる部分を有する補強フレームが配置されており、前記サイドブラケットと隔壁とは補強フレームに固定されており、かつ、前記補強フレームは、シリンダブロック又はミッションケースに直接に又は他の部材を介して固定されている、
請求項3に記載した乗用型作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−1139(P2009−1139A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163555(P2007−163555)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】