説明

二つのプラスチック表面の接着方法

二つのプラスチック表面を接着するための方法であって、前記接着が一つの熱活性化型接着剤によって行われ、i)少なくとも一つの、軟化温度または溶融温度が90〜120℃の範囲にある熱可塑性材料が使用され、その際、接着すべき複数のプラスチック表面の少なくとも一つが、接着に必要な前記熱活性化型接着剤の活性化エネルギを伝達するのに十分な大きさの熱伝導性を有する基材に属することを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特に+85℃までの温度において高い反発抵抗を有する熱活性化型接着剤に関し、かつ消費財電子構成部品内でのプラスチック/プラスチック接着におけるその利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
消費財電子機器内でプラスチック構成部品を接着するためには通常両面感圧接着テープが使用される。このために必要とされる接着力は、固定および取付けに十分なものである。しかしながら携帯用消費財電子商品に対する要求は高くなり続けている。一つにはこれらの商品がますます小さくなり、この結果これに伴って接着面もより小さくなっている。他方で、携帯用商品はより広い温度範囲内で使用され、また加えて機械的負荷(衝突、落下など)にさらされる可能性があるため、接着は付加的な要求を満たさなければならない。別の傾向はフレキシブルプリント基板の使用である。フレキシブルプリント基板は既存のリジッド基板に対して、明らかにより薄いことと、多数の柔軟な電気構成部品を相互に組み合わせることができるという利点を備えている。こうしてFPC(フレキシブルプリント基板Flexible printed circuits;flexible Leiterplatten)は、特にノートブックPCにおいて、また折りたたみ式携帯電話においても柔軟である、ディスプレイの制御によく使用される。フレキシブルプリント基板はカメラのレンズの制御またはLCDディスプレイ(Liquid Crystal Displays,Fluessigkristalldatenanzeigen)のバックライト照明ユニットにも使用される。ますます多くの構成部品が柔軟に構成されることが可能になり、またそれにもかかわらず電気的に接続可能な状態が保てるため、この傾向はデザインをさらに多様にしている。しかしフレキシブルプリント基板の使用は、フレキシブルプリント基板もしばしばハウジング内で部分的に固定されるため、新しい接着テープによる解決策を必要とする。通常はこのために感圧接着剤または両面感圧接着テープが使用される。しかし、フレキシブルプリント基板の曲げ剛性によって一定の反発力が働き、この反発力を感圧接着剤が補償しなければならないため、この場合の負荷は比較的高い。加えて消費財電子機器は、外部の気候の影響をシミュレーションするために、しばしば気候変化試験が課される。ここでは通常−40℃〜+85℃の温度範囲がカバーされる。低い温度では、感圧接着剤は硬化し、したがって内部強度が上昇するので問題が無いが、特に高い温度では、感圧接着剤はますます流動しやすくなり、内部強度を失い、感圧接着剤または感圧接着テープは凝集して、反発力のもとで裂けるので、問題がある。この困難な環境にもかかわらず、既に数多くの感圧接着テープが開発されている。例えば日東電工株式会社の製品5606Rまたは5608Rはこれについて賞賛されている。ペースト塗布量の増加と共に接着強度も上昇するので、感圧接着剤または感圧接着テープの層厚を厚くするという可能性も存在する。
【0003】
消費財電子商品の領域での構成部品接着の他の可能性は、熱活性化型フィルムである。熱活性化型接着剤は2つのカテゴリーに分類できる。
a)熱可塑性熱活性化型フィルム
b)反応性熱活性化型フィルム
【0004】
熱活性化型フィルムは特に高い接着力を備えるが、熱によって活性化されなければならない。それゆえに熱活性化型フィルムは通常は金属と金属との、または金属とプラスチックとの接着に使用される。この場合は金属側が活性化に必要となる熱を供給することを可能にする。プラスチックとプラスチックとの接着の場合は、プラスチックが熱遮断剤として働き、また通常は、必要とされる熱が熱活性化型接着剤に到達する以前にまずプラスチックが変形するので、これは不可能である。
【0005】
前述の説明から明らかなように、消費財電子機器がより小さくまた幅がより狭くなり続けているため、反発力を、それも100μm未満の層厚においても吸収することができる、接着剤または接着テープがFPCの接着のために必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Roempp(オンラインヴァージョン;2008版,ドキュメント番号 RD-20-01271)
【非特許文献2】Donatas Satas 「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology(感圧接着剤技術ハンドブック)」(van Nostrand, 1989)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この従来技術に鑑みて、本発明の課題は、携帯用消費財電子商品のために、フレキシブルプリント基板をプラスチック構成部品上に固定するための接着剤フィルムを提供することであり、この接着剤フィルムは特に
a)−40℃から+85℃までの間で使用可能であり、この温度範囲内ではフレキシブルプリント基板の反発力に耐え
b)ポリイミド上で15N/cmを超える接着力に優れ、
c)接着するプラスチックの表面を損傷することなく、熱によって活性化され得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明によれば、二つのプラスチック表面を接着するために、少なくとも一つの熱活性化型接着剤を含む、一つの接着剤または一つの接着フィルムを使用することによって解決される。
【0009】
この場合、複数のプラスチック表面の少なくとも一つは、接着に必要な熱活性化型接着剤の活性化エネルギーを伝達するのに十分な大きさの熱伝導性を有する基材に属することが特に好ましい。
【0010】
この接着剤が
i)少なくとも一つの、軟化温度または溶融温度が90〜120℃の範囲にある熱可塑性材料
ii)任意に、20重量%までの、少なくとも一つの粘着性付与樹脂
および/または
iii)任意に、30重量%までの、一つのまたは複数の反応性樹脂、すなわち自己自身、他の反応性樹脂および/または熱可塑性材料と反応する能力を有する樹脂をベースとしていることが非常に好ましい。
【0011】
この接着剤は、有利な一変形実施形態においては前述の成分に限られるが、本発明によれば、接着剤がさらなる成分を含む場合も有利である可能性がある。
【0012】
複数のプラスチック表面の少なくとも一つは、接着に必要な熱活性化型接着剤の活性化エネルギーを伝達するのに十分な大きさの熱伝導性を有する基材に属するものでなければならない。
【0013】
熱可塑性材料とはRoempp(オンラインヴァージョン;2008版,ドキュメント番号RD-20-01271)(非特許文献1)に定義されているような化合物と理解される。
【0014】
接着剤は、試験方法C(実験の部を参照)で測定された交点(貯蔵弾性率と損失弾性率の一致)が、100℃より高く、また125℃より低いことが非常に好ましい。この交点で貯蔵弾性率G'と損失弾性率G”の曲線が交差し、物理的にはこれは可塑性反応から粘性反応への移行と解釈される。
【0015】
好ましい一実施形態においては、その溶融によってプラスチック表面の良好な架橋化を達成する、熱可塑性材料が使用される。ここでは特に好ましくは以下のポリマーが使用されるが、この場合この列挙が完全であるということではない。これらはポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、エチレン酢酸ビニル、コポリアミド、コポリエステル、ポリオレフィンである。
【0016】
ポリオレフィンの例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリヘキセンまたはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリヘキセンのコポリマーである。Degussa社からVestoplast(商標)の商品名で各種のポリオレフィンが提供されており、この場合プロペンに富むタイプとブテンに富むタイプが区別される。
【0017】
他の好ましい物質クラスとしては、ポリアミドおよびコポリアミドが使用される。ポリアミドまたはコポリアミドは混合物として使用することも可能である。ポリアミドまたはコポリアミドは通常、重縮合重合によって生成されるジカルボン酸およびジアミンをベースとしている。求められる溶融範囲に達するために、ジカルボン酸として、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸または二量化脂肪酸を使用することが好ましい。前述のジカルボン酸は組み合せてもよい。ジアミンとしてはエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ピペラジンまたはイソホロンジアミンを使用することが好ましい。この場合も各種のジアミンを組み合わせてもよい。例えばポリアミドおよびコポリアミドは、Arkema社の商品名Platamid(登録商標)またはEvonik Degussa社の商品名Vestamelt(登録商標)として市販されている。
【0018】
他の好ましい物質クラスとして、ポリエステルおよびコポリエステルが使用される。ポリエステルまたはコポリエステルはジカルボン酸およびジオール化合物をベースとし、これが続いて重縮合重合で変換される。好ましい活性化領域に到達するために、ジカルボン酸としてフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸またはアジピン酸を使用することが特に好ましい。前述のジカルボン酸も組み合わせてもよい。ジオール化合物としては1,2−エタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールまたはジエチレングリコールを使用することが特に好ましい。前述のジオール化合物も組み合わせてもよい。例えばコポリエステルは、Evonik社の商品名Dynapol(登録商標)Sとして市販されている。
【0019】
望まれる静的ガラス転移温度TG,Aまたは融点TS,Aを得るために、この場合も、Fox式(G1)を用いた場合において所望の温度が得られるように、使用するモノマーならびにその量を選択することが好ましい。
【0020】
ガラス転移温度を制御するために、モノマーまたはコモノマー成分の他に、分子量を変更することも可能である。低い静的ガラス転移温度TG,Aまたは融点TS,Aに調整するためには、中程度または低い分子量をもつポリマーが使用される。低分子および高分子のポリマーを相互に混合してもよい。特に好ましい実施形態ではポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリヘキセンまたはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリヘキセンのコポリマーが使用される。
【0021】
接着技術的特性および/または熱可塑性材料の活性化領域を最適にするために、接着力を上昇させる樹脂または反応性樹脂を添加することができる。
【0022】
添加する粘着性付与樹脂としては既に公知の、また文献に記載されたあらゆる接着樹脂を例外なく使用することができる。代表例にはピネン樹脂、インデン樹脂およびコロホニウム樹脂、それらの不均化した、水素化した、重合した、エステル化した誘導体およびその塩、ならびに脂肪族および芳香族炭化水素樹脂、テルペン樹脂およびテルペンフェノール樹脂ならびにC5−、C9−およびその他の炭化水素樹脂を挙げることができる。得られる接着剤の性質を所望の通りに調整するために、これらの樹脂および他の樹脂との任意の組合せも使用することができる。一般に、対応する熱可塑性材料と相容性のあるあらゆる(可溶性)樹脂が使用され、特に脂肪族、芳香族、アルキル芳香族炭化水素樹脂、純粋のモノマーをベースとする炭化水素樹脂、水素化炭化水素樹脂、官能性炭化水素樹脂および天然樹脂が挙げられる。Donatas Satasの「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology(感圧接着剤技術ハンドブック)」(van Nostrand, 1989)(非特許文献2)の従来技術の知識を特に指摘しておく。
【0023】
反応性樹脂として、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート官能基をもつ樹脂、または上述の樹脂の組合せが適している。反応系と組み合わせて、他の多くの樹脂、フィラー、触媒、老化防止剤なども添加することができる。
【0024】
非常に好ましい群として、エポキシ樹脂が含まれる。ポリマー化エポキシ樹脂のためのエポキシ樹脂の重量平均分子量は100g/molから最高10000g/molまで変化する。
【0025】
エポキシ樹脂は例えばビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応生成物、フェノールとホルムアルデヒド(ノボラック樹脂)との反応生成物、ならびにエピクロロヒドリン、グリシジルエステル、エピクロロヒドリンとp−アミノフェノールとの反応生成物が含まれる。
【0026】
特に有利な市販品の例には、例えばCiba Geigy社のAraldite(商標)6010、CY−281(商標)、ECN(商標)1273、ECN(商標)1280、MY720およびRD−2、Dow Chemical社のDER(商標)331、DER(商標)732、DER(商標)736、DEN(商標)432、DEN(商標)438、DEN(商標)485、Shell Chemical社のEpon(商標)812、825、826、828、830、834、836、871、872、1001、1004、1031等、ならびに同様にShell Chemical社のHPT(商標)1071、HPT(商標)1079がある。
【0027】
市販の脂肪族エポキシ樹脂の例には、ビニルシクロヘキサンジオキシド、例えばUnion Carbide社のERL−4206、ERL−4221、ERL 4201、ERL−4289またはERL−0400がある。
【0028】
ノボラック樹脂としては、例えばCelanese社のEpi−Rez(商標)5132、住友化学社のESCN−001、Ciba Geigy社のCY−281、Dow Chemical社のDEN(商標)431、DEN(商標)438、Quatrex5010、日本化薬株式会社のRE305S、大日本インキ化学社のEpiclon(商標)N673またはShell Chemical社のEpicote(商標)152が使用できる。
【0029】
さらに反応性樹脂としてメラミン樹脂、例えばCytec社のCymel(商標)327および323も使用できる。
【0030】
さらに反応性樹脂としてテルペンフェノール樹脂、例えばArizona Chemical社のNIREZ(商標)2019も使用できる。
【0031】
さらに反応性樹脂としてフェノール樹脂、例えば東都化成株式会社のYP50、Union Carbide社のPKHCおよび昭和ユニオン合成株式会社のBKR2620も使用できる。
【0032】
さらに反応性樹脂としてポリイソシアネート、例えば日本ポリウレタン工業株式会社のCoronate(商標)L、Bayer社のDesmodur(商標)N3300またはMondur(商標)489も使用できる。
【0033】
両成分間の反応を促進するために、架橋剤および促進剤を混合物に添加することも可能である。
【0034】
促進剤としては例えばイミダゾール類、市販されているものでは四国化学株式会社の2M7、2E4MN、2PZ−CN、2PZ−CNS、P0505、L07NまたはAir Products社のCurezol2MZが適している。
【0035】
さらにアミン類、特に第三級アミンも反応促進のために使用できる。
【0036】
製造方法
熱活性化型接着剤は、さらなる処理および接着のために、剥離紙または剥離フィルム上にのせて提供される。
【0037】
コーティングは、溶液または溶融物から行うことができる。溶液からのコーティングの場合は、溶液からの接着剤の処理の場合に一般的であるドクターブレード法で処理することが好ましく、この場合当業者に周知のすべてのドクターブレード法を使用してよい。溶融物からの塗布では、ポリマーが溶液状態である場合は、溶剤を好ましくは減圧下で濃縮押出機を用いて追い出し、この目的のために、例えば、好ましくは溶剤を異なるまたは同じ減圧段階で留去する、フィーダー予備加熱器を備えた一軸スクリュー式または二軸スクリュー式押出機を使用することができる。次いで溶融ノズルまたは押出ノズルを介してコーティングを行い、その際に最適な塗膜厚を達成するために、場合によっては接着フィルムを引き延ばす。樹脂の混合にはニーダーまたは二軸スクリュー式押出機を混合に使用することができる。
【0038】
接着剤用の一時的担体材料としては、当業者に周知の通例の材料、例えばフィルム(ポリエステル、PET、PE、PP、BOPP、PVC、ポリイミド)、ならびに剥離紙(グラシン、HDPE、LDPE)が使用される。担体材料は、剥離層を有しているべきである。剥離層は本発明の非常に有利な一実施形態においては、剥離用シリコーン塗料または剥離用フッ素化塗料からなる。
【0039】
本発明の方法は、特に電子構成部品または機器のプラスチックハウジング内でのフレキシブルプリント基板の接着に極めて適している。この際にこのフレキシブルプリント基板は、接着に必要な熱活性化型接着剤の活性化エネルギーを伝達するのに十分な大きさの熱伝導性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
製品の構造:
熱活性化型フィルムは図1に示されている製品設計をもつことが好ましく、ここで
1=熱活性化型接着剤
2=担体材料
3=熱活性化型接着剤
4=一時的担体である。
【0041】
図1に示されている製品の構造は、担体材料(2)上への熱活性化型接着剤(1,3)の両面コーティングを含んでいる。熱活性化型接着剤のロールからの巻出しを可能にするために、この結合体全体を少なくとも一つの一時的担体(4)で支持することが好ましい。別の実施形態では接着剤(1,3)の両面が一時的担体で覆われる(ここには示されていない)。さらに、担体材料(2)が一つまたは複数の機能的コーティングを備えることも可能である(例えばプライマー、接着促進剤、等)。担体材料(2)の両面上の接着剤層は同一に設けてもよいが、特にその化学組成および/または厚さに関して、二つの接着剤層が異なっていてもよい。
【0042】
面ごとの接着剤塗布量は5〜250g/mであることが好ましい。
【0043】
図2に示されている製品の構造は、一時的担体の一方の面上への熱活性化型接着剤のコーティングを含んでいる。ここで、位置番号の意味は、図1の番号(1=熱活性化型接着剤,4=一時的担体)に対応する。熱活性化型接着剤(1)は、接着テープの巻出しを可能にし、ないしは型打ち反応を改善するために、少なくとも一つの一時的担体(4)で覆われることが好ましい。他の実施の形態においては両面が一時的担体で覆われる(ここには示されていない)。接着剤塗布は5と250g/mとの間にあることが好ましい。
【0044】
担体材料としては、この場合、当業者に周知の、通例の材料、例えばフィルム(ポリエステル,PET,PE,PP,BOPP,PVC,ポリイミド,ポリメタクリル酸,PEN,PVB,PVF,ポリアミド)、フリース、発泡体、織物および織物シートが使用される。
【0045】
使用:
フレキシブルプリント基板は多数の電子機器、例えば携帯電話、カーラジオ、コンピュータ等で使われている。一般的にフレキシブルプリント基板は銅またはアルミニウム(電気伝導体)層とポリイミド(電気絶縁体)層から構成されている。しかし他のプラスチック、例えばポリエチレンナフタレート(PEN)または結晶ポリマー(LCP)も電気絶縁体として使用される。柔軟な電気構成部品を相互につなぐので、これらは柔軟に形成されていなければならない。しかし、より多くの電気構成部品を相互に接続しなければならなくなっているので、フレキシブルプリント基板の計算能力は増大し、その結果、多層設計がもたらされる。したがってフレキシブルプリント基板の層厚は50μmから500μmまでの間で変化し得る。フレキシブルプリント基板は絶縁体と電気導体の結合体からなり、また両材料が異なる特性を有するので、フレキシブルプリント基板は比較的高い曲げ剛性を有する。高い曲げ剛性はまた、例えば複数のICの装着によって、または部分的な補強によってさらに強化される。制御できない動作を回避するために、または空間の必要性を最小限にするために、フレキシブルプリント基板は電子機器のハウジング内部に接着される。この場合ふつうは様々なプラスチックが接着材料として利用できる。非常にしばしば、ポリカーボネート(PC)、ABS、ABS/PCブレンド、ポリアミド、ガラス繊維強化ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリスチレンまたは類似物が使用される。
【0046】
本発明の趣旨には含まれないが、基材として、ガラスまたは金属、例えばアルミニウムまたはステンレス鋼が使用できる。
【0047】
図3に示されているLCDディスプレイのバックライト照明上へのフレキシブルプリント基板の接着は典型的な使用である。狭い湾曲のために持続的に曲げ力が生じ、これを熱活性化型接着剤は吸収しなければならない。フレキシブルプリント基板は電子部品内での使用において、通常は少なくとも90°、特に180°の湾曲角度をもつ。
【0048】
図3は、熱活性化型接着剤を用いたフレキシブルプリント基板の接着の例を示し、この場合フレキシブルプリント基板の湾曲角度は180°である。ただし、
31=バックライト照明用のハウジング
32=LCDパネル
33=フレキシブルプリント基板
34=熱活性化型接着剤または熱活性化型接着テープ
(本発明による使用)
35=光学フィルム
である。
【0049】
さらに、電子機器はしばしば気候変化にさらされるということを考慮しなければならない。極端な場合、フレキシブルプリント基板が剥離するのを回避するために、85℃においても接着力が十分に高くなければならないことを意味する。
【0050】
さらに熱活性化型接着フィルムは比較的僅かなプロセスウインドウ内で加工可能であるべきであり、したがって、一つには85℃でも十分に高い剛性が維持されなければならず、しかし温度活性化は依然として可能でなければならない。接着する基材はしばしば130℃までしか温度安定性がない。加えてフレキシブルプリント基板にはすでに電子部品が装着されており、これも同じく温度に敏感であることを考慮しなければならない。このため、この過程が、例えばフレキシブルプリント基板の製造過程ですでに行われる、部分的な強化のための剛化材料の接着とは異なるものとなる。最後に、製造個数が多いためにプロセスウインドウが制限されること、すなわち熱を比較的迅速に提供しなければならないことも、考慮しなければならない。
【0051】
接着:
事前ラミネーション
通常は熱活性化型接着剤の型打成形物が形成され、これがプラスチック部分上に配置される。最も単純な場合は、型打成形物はプラスチック部分上に手で、例えばピンセットを使って配置される。この型打成形物はさまざまな形に成形することができる。さらにこれは構造上の理由から、全面型打成形物を使用することが必要であるかもしれない。さらなる別の実施形態では熱活性化型接着テープ型打成形物は、手による配置後に熱源で処理され、例えば最も単純な場合はアイロンを使う。これによりプラスチックへの接着性が高まる。このためには、型打成形物にさらに一時的担体が備え付けられていることはまた利点である。
【0052】
従来技術では接着は通常金属基材上へと実施される。この場合まず金属部分が熱活性化型接着テープ型打成形物上に配置される。この配置は開放側の上に行われる。背側にはまだ一時的担体が付いている。続いて熱源から熱が金属を通して熱活性化型接着テープに供給される。これにより接着テープは粘着性を持ち、また一時的担体よりも強く金属上に接着する。
【0053】
本発明の方法では、熱量を適切に調量する必要がある。熱可塑性接着剤では軟化温度に達しなければならず、これにより接着テープ打抜き体は粘着を開始する。好ましい実施形態では熱を供給するために加熱プレスを使用する。加熱プレスのスタンプは例えばアルミニウム、真鍮、または青銅で製造され、打抜き体の外形を有する。さらにこのスタンプは、例えば部分的に熱による損傷を回避するために、成形物を備えることも可能である。圧力および温度はできる限り均一に供給する。圧力、温度ならびに時間は、材料(金属、金属の厚さ、熱活性化型フィルムの種類)に合わせ、変化する。
【0054】
通常の事前ラミネーションのためのプロセスウインドウは1.5〜10秒の活性化時間、1.5bar〜5barの押圧力および100℃〜150℃の加熱スタンプ温度である。
【0055】
基材の接着
フレキシブルプリント基板とプラスチック部品との間の接着工程は加熱プレスで実施することが好ましい。このためには、通常フレキシブルプリント基板がより高い熱伝導性を有するので、フレキシブルプリント基板の側から熱を供給することが好ましい。
【0056】
通常、圧力と熱は同時に加える。これは加熱スタンプで行い、加熱スタンプは良好な熱伝導性をもつ材料から成る。通常の材料は、例えば銅、真鍮、青銅またはアルミニウムである。しかし他の合金を使用することもできる。さらに加熱プレススタンプが接着面の外形の形態度あることが好ましい。この形態はさらに2次元または3次元のものでもよい。圧力は通常圧力シリンダを介して加える。しかし加圧は必ずしも空気圧を用いて実施する必要はない。例えば油圧プレス装置または電気機械式のもの(スクリュー、サーボ装置またはアクチュエータ)でもよい。さらに、例えば並列接続または回転原理によって工程スループットを上昇させるために、重複して圧力および熱を供給することも有利となり得る。この場合、加熱プレススタンプはすべてが同じ温度および/または同じ圧力で動作しなくてもよい。さらに、常に有利であるわけではないが、接触時間が異なってもよい。さらに最後の工程ステップで、室温に冷却されたプレススタンプでまたは冷却されたプレススタンプで圧力のみを供給することも有利となり得る。
【0057】
この工程は通常プレススタンプステップごとに2.5〜15秒かかるが、最大5秒であることがより好ましい。さらに圧力を変化させることが必要であるかもしれない。非常に高い圧力によって熱活性化型フィルムを押し出すこともできる。通常はこれは最小限に留めたい。接着面上で計算して、適切な圧力は1.5〜10barである。ここでも材料の安定性ならびに熱活性化型フィルムの流動挙動が、選択する圧力に大きな影響を与える。
【0058】
実験の部
試験方法:
反発力試験A
フレキシブルプリント基板の代用品として、厚さ100μmのポリイミドフィルムを10cmx1cmの大きさに切り取る。次いでポリイミドフィルムの一端をポリカーボネート(厚さ3mm、幅1cm、長さ3.5cm)に接着する。接着にはtesa(登録商標)4965を使用する。続いてこのポリイミドフィルムを、ポリカーボネート板の周囲に、リング状に曲げて、端部から20mmの距離に熱活性化型フィルムで接着する。この接着用熱活性化型フィルムは、幅10mmおよび長さ3mmである。接着後、結合体全体を85℃または−40℃の乾燥庫内に入れる。ポリイミドフィルムの曲げ剛性によって接着部が確実に72時間以内には剥離しなかった場合、試験に合格したとする。
【0059】
90°接着力試験B
幅5cm、長さ20cm、厚さ3mmのポリカーボネート板上に熱活性化型フィルムを用いて幅1cm、厚さ100μm、長さ10cmのポリイミドフィルムの条片を接着する。
【0060】
続いてZwick社の引張り試験装置を用いて一定した引張り角度90°および速度50mm/分でポリイミドフィルムを引き剥がし、その力をN/cmで測定する。この測定は23℃で湿度50%で実施する。測定値を3回求め、それを平均する。
【0061】
レオロジー試験C
測定はRheometrics Dynamic Systems(RDA II)社のレオメーターで行った。試料の直径は8mm、試料の厚さは1mm〜2mmであった。プレートをプレート上に載せる構成で測定した。温度スィープ0〜150℃、角速度10rad/sで測定した。熱可塑性材料のレオロジーを測定し、交点を求めた。
【0062】
接着
熱可塑性熱活性化型フィルムの接着は加熱プレス内でスタンプ温度150℃、接触時間10秒、接着面に対する圧力5barで実施した。
【0063】
参考例1)
Dynapol(登録商標)S EP 1408(Evonik社のコポリエステル、融点80℃)をシリコーンを塗布した二枚のグラシン剥離紙の間に140℃で100μmにプレスした。試験方法Cで求めた交点は91℃にある。
【0064】
参考例2)
Dynapol(登録商標)S 361(Evonik社のコポリエステル、融点175℃)をシリコーンを塗布した二枚のグラシン剥離紙の間に230℃で100μmにプレスした。試験方法Cで求めた交点は178℃にある。
【0065】
参考例3)
tesa(登録商標)4982(厚さ100μm、12μmのPET担体、樹脂改変されたアクリル酸感圧接着剤、2x46g/m)を感圧接着剤として共に試験した。製品は23℃で、ただし5barの圧力および10秒の接着時間で塗布した。
例1
【0066】
Dynapol(登録商標)S 1218(Evonik社のコポリエステル、融点115℃)をシリコーン塗布した二枚のグラシン剥離紙の間に160℃で100μmにプレスした。試験方法Cで求めた交点は110℃にある。
例2
【0067】
Vestamelt(登録商標)470 AG(Firma Evonik Degussa社のコポリアミド、融点112℃)をシリコーン塗布した二枚のグラシン剥離紙の間に160℃で100μmにプレスした。試験方法Cで求めた交点は108℃にある。
【0068】
結果:
まずすべての例で反発力試験Aを行った。結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
この結果は、85℃および−40℃において、熱活性化型の例の1から2までで、非常に良好な反発抵抗力を達成することができることを証明している。すべての場合で接着部分は72時間以上保持された。これに対して参考例3は感圧接着剤はあまり適していないことを証明している。この場合は接着部分が85℃で早くも2時間以内に剥離してしまった。参考例2は標準条件では溶融しなかった。温度を210℃に上げた後に始めて溶融が達成された。しかし早くもこの温度以下でポリカーボネートの変形が出現し、したがって基材を損傷せずにこの熱可塑性プラスチックを塗布することはできない。参考例1は、ここでは明らかにずっと容易に溶融するが、接着部分は85℃において早くも6時間後に剥離してしまった。この熱可塑性プラスチックはこの適用分野には柔らか過ぎる。
【0071】
さらなる試験では接着強度を試験方法Bに従って求めた。結果を表2にまとめる。
【0072】
【表2】

【0073】
表2内の数値は、本発明のすべての例1から2までで、非常に高い接着強度を得ることができ、したがってポリイミドおよびポリカーボネート上への良好な接着が得られたことを証明している。参考例3は、感圧接着剤では明らかにより低い接着強度が得られることを明確に示している。
【0074】
参考例2は標準条件では溶融しなかった。温度を210℃に上げた後に始めて溶融が達成された。しかし早くもこの温度以下でポリカーボネートの変形が出現し、したがって基材を損傷せずにこの熱可塑性プラスチックを塗布することはできない。
【0075】
測定値から、本発明のすべての例がフレキシブルプリント基板の接着にとって最も重要な判定基準を満たすことを読み取ることができる。したがって、本発明の例は非常に良好にこの適用分野に適している。
【符号の説明】
【0076】
1=熱活性化型接着剤
2=担体材料
3=熱活性化型接着剤
4=一時的担体
31=バックライト照明用のハウジング
32=LCDパネル
33=フレキシブルプリント基板
34=熱活性化型接着剤または熱活性化型接着テープ

【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つのプラスチック表面を互いに接着するための方法であって、前記接着が一つの熱活性化型接着剤によって行われ、
i)少なくとも一つの、軟化温度または溶融温度が90〜120℃の範囲にある熱可塑性材料が使用され、その際、
接着すべき複数のプラスチック表面の少なくとも一つが、接着に必要な前記熱活性化型接着剤の活性化エネルギーを伝達するのに十分な大きさの熱伝導性を有する基材に属することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記接着剤が
ii)20重量%までの、一つまたは複数の粘着性付与樹脂および/または
iii)30重量%までの、一つまたは複数の反応性樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接着すべき複数のプラスチック表面の一つが、フレキシブルプリント基板に属することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記フレキシブルプリント基板が、少なくとも90°、特に180°の湾曲角度を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一つの前記熱可塑性材料が、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、エチレン酢酸ビニル、コポリアミド、コポリエステル、ポリオレフィンを含む群から選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
少なくとも一つの前記反応性樹脂成分が、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ノボラック樹脂を含む反応性樹脂の群から選択されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
接着するための活性化エネルギーの前記伝達および前記接着が、最大15秒以内で、特に最大5秒以内で実現されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法によって得ることができる接着複合体。

【公表番号】特表2012−502153(P2012−502153A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526453(P2011−526453)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060992
【国際公開番号】WO2010/028950
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(509120403)テーザ・ソシエタス・ヨーロピア (118)
【Fターム(参考)】