説明

二流体ノズル、基板洗浄装置および基板洗浄方法

【課題】被処理基板に対する洗浄効果を向上させることができるとともに、洗浄液の液滴の噴霧の際における被処理基板に対するダメージを軽減することができる二流体ノズル、基板洗浄装置および基板洗浄方法を提供する。
【解決手段】二流体ノズル20は、洗浄液および液滴生成用ガスが混合することにより生成される洗浄液の液滴が流れる流路20hと、流路20hから送られる洗浄液の液滴が外部に噴霧される吐出口20jと、を備えている。流路20hの少なくとも一部分は湾曲しており、流路20hの湾曲した部分における径方向外側には排出口20iが設けられている。排出口20iは、流路20hの湾曲した部分における径方向外側を流れる洗浄液の液滴を当該流路20hから排出するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄液の液滴の噴霧を行う二流体ノズル、この二流体ノズルを備えた基板処理装置、および基板洗浄方法に関し、とりわけ、被処理基板に対する洗浄効果を向上させることができるとともに、洗浄液の液滴の噴霧の際における被処理基板に対するダメージを軽減することができる二流体ノズル、基板処理装置および基板洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において、半導体ウエハ(以下、単にウエハともいう。)に成膜処理やエッチング処理等の処理を行う際に、このウエハにパーティクルが付着する場合がある。このため、ウエハの洗浄処理を行う必要がある。
【0003】
ウエハに対して洗浄処理を行うような基板洗浄装置としては、例えばウエハをスピンチャック上で回転させながらその表面に純水や薬液からなる洗浄液をノズル等から供給することによりウエハを洗浄し、その後必要に応じてウエハに対してリンス処理を行い、最後にウエハを高速回転させることにより乾燥させるようなものが知られている。
【0004】
ここで、ウエハに洗浄液を供給するノズルとして、二流体ノズルが用いられる場合がある(例えば、特許文献1等参照)。二流体ノズルとは、一般的にガスと液体とを内部で混合させることにより微小な液滴を生成し、この微小な液滴を噴霧する方式のノズルのことをいう。二流体ノズルには純水や薬液等の洗浄液および窒素ガス等の液滴生成用ガスが別々の経路から供給され、この二流体ノズルの内部で液滴生成用ガスと洗浄液とが混合することにより洗浄液の液滴が生成され、この洗浄液の液滴がウエハの一部分に対して噴霧されるようになっている。また、二流体ノズルは、ウエハの表面に沿ってこの表面とわずかに距離を隔てて水平方向に移動するようになっている。ウエハが回転しているときに二流体ノズルがウエハの表面に沿って移動することにより当該二流体ノズルからウエハの表面にまんべんなく均一に洗浄液の液滴が噴霧され、ウエハの表面に洗浄液の液膜が生成されることになる。
【0005】
一般的な直管タイプの二流体ノズルの構成の詳細について、図7および図8を用いて具体的に説明する。図7は、従来の二流体ノズルの構成の詳細を示す縦断面図である。また、図8(a)は、図7に示すような従来の二流体ノズルの吐出口の概略を示す図であり、図8(b)は、ノズル吐出口における位置と、洗浄液の液滴の粒子径との関係を示すグラフである。
【0006】
図7に示すように、二流体ノズル80には、洗浄液供給管86から純水や薬液からなる洗浄液が供給されるとともに、窒素ガス供給管88から窒素ガスが供給されるようになっている。二流体ノズル80はノズル本体80aを有しており、このノズル本体80aの内部には、洗浄液供給管86に連通するような洗浄液流路80bと、窒素ガス供給管88に連通するような窒素ガス流路80cとがそれぞれ設けられている。これらの洗浄液流路80bおよび窒素ガス流路80cはノズル本体80a内部にある三つ又状の合流部80dで合流し、この合流部80dから二流体ノズル80の吐出口80eまで内部流路が更に形成されている。二流体ノズル80の吐出口80eの断面の形状は略円形となっている。
【0007】
このような一般的な直管タイプの二流体ノズル80においては、ノズル本体80a内において、洗浄液供給管86から洗浄液流路80bに送られた洗浄液と、窒素ガス供給管88から窒素ガス流路80cに送られた窒素ガスとが合流部80dで衝突して混合し、このことにより当該合流部80dにおいて洗浄液の液滴が形成され、ウエハWに対して吐出口80eからこの洗浄液の液滴が噴霧されるようになっている。図7において、二点鎖線で示される領域は、二流体ノズル80からウエハWに向かって噴霧される洗浄液の液滴の噴霧範囲を示している。
【0008】
次に、二流体ノズル80の吐出口80eから噴霧される洗浄液の液滴の粒子径について一般的な傾向として図8を用いて説明する。ここで、二流体ノズル80の吐出口80eにおける位置によって、当該吐出口80eから噴霧される洗浄液の液滴の粒子径は異なるようになっている。図8(a)に示すように、断面が略円形である吐出口80eの中心を座標0、吐出口80eの両端部をそれぞれ座標−a、座標aとすると、図8(b)に示すように、吐出口80eの端部(座標−a、座標a)から中心(座標0)に向かって、洗浄液の液滴の粒子径は漸次的に減少するようになっている。すなわち、二流体ノズル80の吐出口80eの端部近傍から噴霧される洗浄液の液滴の粒子径は、吐出口80eの中心から噴霧される洗浄液の液滴の粒子径と比較して大きくなっている。
【0009】
【特許文献1】特開2005−251847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般的に、直管からウエハWに噴霧される洗浄液の粒子径が大きい液滴は、管路端面に近づくにつれ多く分布している。ウエハWに噴霧される洗浄液の液滴の粒子径が大きい場合には、洗浄液の液滴がウエハWに衝突する頻度が、粒子径が小さい場合に比べて小さくなるため、洗浄効果が悪くなる。また、このような粒子径が大きい洗浄液の液滴がウエハWと衝突する際にウエハWに大きなダメージを与えてしまうおそれがある。このように、二流体ノズル80の吐出口80eの端部近傍から噴霧される、粒子径が大きな液滴を小さなものとしたいという要求がある。
【0011】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、被処理基板に噴霧される洗浄液の液滴について、吐出口から吐出される液滴を全体的に粒子径の小さなものとすることができ、このため被処理基板に対する洗浄効果を向上させることができるとともに、洗浄液の液滴の噴霧の際における被処理基板に対するダメージを軽減することができる二流体ノズル、基板洗浄装置および基板洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の二流体ノズルは、外部から洗浄液および液滴生成用ガスがそれぞれ供給され、これらの洗浄液および液滴生成用ガスが内部で混合して洗浄液の液滴が内部で生成される本体部と、前記本体部の内部に設けられ、洗浄液および液滴生成用ガスが混合することにより生成される洗浄液の液滴が流れる流路であって、少なくとも一部分が湾曲した流路と、前記本体部における前記流路の下流端に設けられ、前記流路から送られる洗浄液の液滴が外部に噴霧される吐出口と、前記流路の湾曲した部分における径方向外側に設けられ、当該流路の湾曲した部分における径方向外側を流れる洗浄液の液滴を当該流路から排出する排出口と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
このような二流体ノズルにおいては、二流体ノズルの本体部の内部に設けられた流路の湾曲した部分において、様々な粒子径の洗浄液の液滴のうち、粒子径の大きな洗浄液の液滴には粒子径の小さな洗浄液の液滴よりも大きな遠心力が働くので、粒子径の大きな洗浄液の液滴はこの湾曲した部分における径方向外側を流れることとなる。そして、流路の湾曲した部分における径方向外側には排出口が設けられており、湾曲した部分における径方向外側を流れる洗浄液の液滴が排出口を介して流路から排出されるようになっているので、粒子径の大きな洗浄液の液滴が排出口を介して流路から排出される。このため、流路において排出口により排出されず吐出口に送られる洗浄液の液滴は、粒子径の小さなものとなる。このようにして、吐出口全体から被処理基板に噴霧される洗浄液の液滴を、粒子径の小さなものとすることができる。
【0014】
本発明の二流体ノズルにおいては、前記流路の湾曲した部分は螺旋形状となっていることが好ましい。このことにより、流路の湾曲した部分の距離を長くすることができるので、洗浄液の液滴に遠心力が働く時間が長くなる。このため、流路の湾曲した部分において、粒子径の大きな洗浄液の液滴は粒子径の小さな洗浄液の液滴からより一層分離させられることとなり、湾曲した部分を流れる洗浄液の液滴のうち、粒子径の大きな洗浄液の液滴は、より確実に湾曲した部分における径方向外側を流れるようになる。
【0015】
本発明の二流体ノズルにおいては、前記排出口には吸引機構が設けられており、当該吸引機構が前記流路の湾曲した部分における径方向外側を流れる洗浄液の液滴を吸引することにより、この洗浄液の液滴が前記排出口を介して前記流路から排出されることが好ましい。このことにより、流路の湾曲した部分における径方向外側を流れる洗浄液の液滴を、吸引機構による吸引によって、より確実に排出口を介して流路から排出させることができる。
【0016】
本発明の基板洗浄装置は、上述した二流体ノズルを備え、当該二流体ノズルの吐出口から噴霧される洗浄液の液滴により被処理基板の洗浄を行うことを特徴とする。
【0017】
本発明の基板洗浄方法は、二流体ノズルの内部で洗浄液と液滴生成用ガスとを混合して洗浄液の液滴を生成し、被処理基板に対してこの二流体ノズルから洗浄液の液滴を噴霧することにより被処理基板の洗浄を行うような基板洗浄方法であって、二流体ノズルに洗浄液および液滴生成用ガスをそれぞれ供給し、これらの洗浄液および液滴生成用ガスを二流体ノズルの内部で混合させて洗浄液の液滴を生成する工程と、少なくとも一部分が湾曲した流路に洗浄液の液滴を流し、この際に前記流路の湾曲した部分における径方向外側を流れる洗浄液の液滴を、排出口を介して前記流路から排出する工程と、前記流路において排出されなかった洗浄液の液滴を二流体ノズルの吐出口より被処理基板に噴霧する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
このような基板洗浄方法によれば、二流体ノズルの内部に設けられた流路の湾曲した部分において、様々な粒子径の洗浄液の液滴のうち、粒子径の大きな洗浄液の液滴には粒子径の小さな洗浄液の液滴よりも大きな遠心力が働くので、粒子径の大きな洗浄液の液滴はこの湾曲した部分における径方向外側を流れることとなる。そして、湾曲した部分における径方向外側を流れる洗浄液の液滴が排出口を介して流路から排出されるようになっているので、粒子径の大きな洗浄液の液滴が排出口を介して流路から排出される。このため、流路において排出口により排出されず吐出口に送られる洗浄液の液滴は、粒子径の小さなものとなる。このようにして、吐出口から被処理基板に噴霧される洗浄液の液滴を、粒子径の小さなものとすることができる。
【0019】
本発明の基板洗浄方法においては、前記流路の湾曲した部分における径方向外側を流れる洗浄液の液滴を外部から吸引することにより、この洗浄液の液滴を前記流路から排出することが好ましい。このことにより、流路の湾曲した部分における径方向外側を流れる洗浄液の液滴を、外部からの吸引によって、より確実に排出口を介して流路から排出させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の二流体ノズル、基板洗浄装置および基板洗浄方法によれば、被処理基板に対する洗浄効果を向上させることができるとともに、洗浄液の液滴の噴霧の際における被処理基板に対するダメージを軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の一の実施の形態について説明する。図1乃至図4は、本発明による二流体ノズルを備えた基板洗浄装置の一の実施の形態を示す図である。
このうち、図1は、本発明の一の実施の形態における基板洗浄装置の構成を示す概略構成図であり、図2は、図1に示す基板洗浄装置における二流体ノズルの構成の詳細を示す縦断面図であり、図3は、図2に示す二流体ノズルのA−A矢視による横断面図である。また、図4は、図2および図3に示す二流体ノズル内における洗浄液の液滴の流れを概略的に示す説明図である。
【0022】
まず、基板洗浄装置1の全体的な構成について図1を用いて説明する。この基板洗浄装置1は、被処理基板としての半導体ウエハ(以下、単にウエハともいう)Wを洗浄するためのものである。
【0023】
基板洗浄装置1は、チャンバー10と、このチャンバー10内に設置された、ウエハWを保持するためのスピンチャック12と、を備えている。また、チャンバー10内には、スピンチャック12により保持されるウエハWを覆うよう設けられた外筒16と、スピンチャック12により保持されるウエハWに洗浄液の液滴を噴霧する二流体ノズル20とが設けられている。以下、このような基板洗浄装置1の各構成要素の詳細について説明する。
【0024】
スピンチャック12は、ウエハWをほぼ水平に保持しながら回転するものであり、具体的には、鉛直方向に延びるよう配置された回転軸部と、この回転軸部の上端に取り付けられた円板状のスピンベースとを有している。スピンチャック12によりウエハWを保持する際に、当該ウエハWはスピンベースの上面に載置されるようになっている。回転軸部にはモータ等のスピンチャック駆動機構(図示せず)が取り付けられており、このスピンチャック駆動機構は回転軸部をその中心軸のまわりに回転させることができるようになっている。このことにより、スピンチャック12に保持されたウエハWを水平面上で回転させることができるようになっている。また、スピンチャック12はスピンチャック昇降機構(図示せず)により鉛直方向にも往復移動することができるようになっている。このことにより、ウエハWをチャンバー10内に搬入してスピンチャック12に保持させるときや、スピンチャック12上にあるウエハWをチャンバー10の外部に搬出するときには、スピンチャック12の上端を外筒16の上端よりも高くすることができる。一方、スピンチャック12に保持されたウエハWに対して二流体ノズル20から洗浄液を供給するときには、スピンチャック12に保持されたウエハWの側方に外筒16の側壁が位置するようにすることができる。
【0025】
チャンバー10内において、スピンチャック12の側方を取り囲むように略円筒状の外筒16が設けられている。外筒16の中心軸はスピンチャック12の回転軸部の中心軸と略一致しており、この外筒16は、下端に底板が設けられているとともに上端は開口している。
【0026】
外筒16の底板には洗浄液排出管50の一端が接続されている。ここで、ウエハWに対する洗浄等に用いられ外筒16の底板に送られた洗浄液は洗浄液排出管50を介して排出される。
【0027】
チャンバー10内においてスピンチャック12により保持されたときのウエハWの上方の位置に、二流体ノズル20が下向きに設けられている。この二流体ノズル20は、アーム22を介して回転軸部24に連結されている。回転軸部24には、当該回転軸部24を正逆両方向に回転させるアーム駆動機構(図示せず)が設けられている。このアーム駆動機構が、回転軸部24を中心としてアーム22を水平方向に回転させることにより、二流体ノズル20を、ウエハWの中心部の上方の位置からウエハWの周縁部の外方の位置までの範囲内で水平面に沿って往復移動させるようになっている。また、アーム駆動機構は、回転軸部24を鉛直方向に往復移動させることができるようになっている。このことにより、二流体ノズル20の先端と、スピンチャック12に保持されるウエハWとの間隔を調整することができるようになっている。
【0028】
二流体ノズル20の構成について、図2乃至図4を参照して具体的に説明する。二流体ノズルとは、前述のように、一般的にガスと液体とを混合させることにより微小な液滴を生成し、この微小な液滴を噴霧する方式のノズルのことをいう。本実施の形態においては、二流体ノズル20には、洗浄液供給管26(後述)から純水や薬液からなる洗浄液が供給されるとともに、窒素ガス供給管28(後述)から窒素ガスが供給されるようになっている。二流体ノズル20は、例えばフッ素樹脂から形成された略円柱形状のノズル上部本体20aと、ノズル上部本体20aの下方に当接して設けられ、例えばフッ素樹脂から形成された略円筒形状のノズル下部本体20eと、ノズル下部本体20eにおける中空部分に嵌合するよう設けられた略円柱形状のノズル内部本体20fと、を有している。ノズル上部本体20a、ノズル下部本体20eおよびノズル内部本体20fにより、二流体ノズル20の本体部が構成されている。
【0029】
二流体ノズル20におけるノズル上部本体20aの内部には、洗浄液供給管26に連通するような洗浄液流路20bと、窒素ガス供給管28に連通するような窒素ガス流路20cとがそれぞれ設けられている。これらの洗浄液流路20bおよび窒素ガス流路20cはノズル上部本体20aの内部にある合流部20dで合流している。合流部20dにおいて、洗浄液供給管26から洗浄液流路20bを経て送られた洗浄液と、窒素ガス供給管28から窒素ガス流路20cを経て送られた窒素ガスとが衝突して混合し、このことにより合流部20dにおいて洗浄液の液滴が生成されるようになっている。
【0030】
前述のように、略円筒形状のノズル下部本体20eにおける中空部分には、略円柱形状のノズル内部本体20fが嵌合するよう設けられている。このノズル内部本体20fには、螺旋形状の流路20hが設けられている。螺旋形状の流路20hの上流端は、ノズル上部本体20aの合流部20dに連通しており、一方、螺旋形状の流路20hの下流端には吐出口20jが設けられている。すなわち、合流部20dにおいて生成された洗浄液の液滴は、ノズル内部本体20fにおける螺旋形状の流路20hを経て吐出口20jに送られ、ウエハWに対してこの吐出口20jから洗浄液の液滴が噴霧されるようになっている。
【0031】
また、図2に示されるように、略円筒形状のノズル下部本体20eの内部には、螺旋形状の流路20hから排出される洗浄液の液滴が送られるような排出用流路20gが形成されている。そして、排出用流路20gと螺旋形状の流路20hとは、ノズル下部本体20eの内壁を貫通するよう形成された貫通孔20iにより連通している。この貫通孔20iの端部は、図3に示すように螺旋形状の流路20hにおける径方向外側部分に連通している。ここで、流路20hにおける径方向外側部分とは、流路20hにおける螺旋の中心O(図3参照)から最も遠い部分のことをいう。
【0032】
図4に、二流体ノズル20のノズル内部本体20f内における洗浄液の液滴の流れを概略的に示す。図4に示すように、二流体ノズル20のノズル内部本体20f内において、合流部20dから送られた洗浄液の液滴は螺旋形状の流路20hを流れ、最終的には吐出口20jから下方に噴霧されるが、螺旋形状の流路20hを流れる洗浄液の液滴のうち、一部の洗浄液の液滴は貫通孔20iを介して流路20hから排出される。この排出された洗浄液の液滴は、ノズル下部本体20eの内部にある排出用流路20gに送られる。
【0033】
ここで、流路20hは螺旋形状となっており、貫通孔20iは流路20hにおける径方向外側部分に連通している。このため、この流路20hを流れる様々な粒子径の洗浄液の液滴のうち、粒子径の大きな洗浄液の液滴には粒子径の小さな洗浄液の液滴よりも大きな遠心力が働き、粒子径の大きな洗浄液の液滴は流路20hにおける径方向外側を流れる。このことにより、貫通孔20iには、粒子径の大きな洗浄液の液滴が送られることとなる。
【0034】
図1に示すように、二流体ノズル20には吸引管42を介して吸引器40が接続されている。吸引器40は、吸引管42を介して二流体ノズル20の内部から洗浄液の液滴を吸引するようになっている。より具体的には、吸引管42は、ノズル下部本体20eの外壁を貫通するよう形成された貫通孔20kを介して、ノズル下部本体20eの内部にある排出用流路20gに連通している。すなわち、螺旋形状の流路20hから貫通孔20iに送られた洗浄液の液滴は、排出用流路20g、貫通孔20kを介して吸引管42に送られ、最終的には吸引器40に送られるようになっている。このような洗浄液の液滴の流れは、吸引器40による吸引によって促進される。
【0035】
また、図1に示すように、洗浄液供給管26の上流側端部には洗浄液タンク30が設けられており、この洗浄液タンク30には純水や薬液からなる洗浄液が貯留されている。そして、ポンプ等の図示しない圧送手段により、洗浄液タンク30から洗浄液が洗浄液供給管26に送られるようになっている。また、洗浄液供給管26には、開度調整が可能なバルブ34、およびパーティクル除去用のフィルタ38が介設されている。
【0036】
また、二流体ノズル20には窒素ガス供給管28が接続されており、この窒素ガス供給管28の上流側端部には窒素ガス供給機構32が設けられている。この窒素ガス供給機構32は高圧の窒素ガスを窒素ガス供給管28に供給することができるようになっている。また、窒素ガス供給管28にはバルブ36が介設されている。このバルブ36の開度を変え、二流体ノズル20に送られる窒素ガスの圧力(流量)を変えることにより、二流体ノズル20において生成される洗浄液の液滴の粒子径を変化させることができる。このことにより、洗浄液の液滴によるウエハWの洗浄処理性能を変化させることができる。
【0037】
次に、このような構成からなる基板洗浄装置1の動作について説明する。
【0038】
まず、スピンチャック昇降機構によりスピンチャック12を上方に移動させた状態においてウエハWをチャンバー10内に搬入し、このスピンチャック12にウエハWを保持させる。そして、スピンチャック12を降下させ、このスピンチャック12の側方に外筒16の側壁が位置するようにする。
【0039】
次に、チャンバー10内においてスピンチャック12に保持されて回転するウエハWに対して洗浄液を供給する。具体的には、バルブ34、36を開状態とし、二流体ノズル20に洗浄液および窒素ガスを同時に供給し、この二流体ノズル20から洗浄液の液滴を、回転するスピンチャック12上のウエハWに噴霧するようにする。
【0040】
二流体ノズル20における、洗浄液および窒素ガスが送られてからウエハWに洗浄液の液滴を噴霧するまでの動作を説明する。まず、二流体ノズル20のノズル上部本体20aの内部にある合流部20dにおいて、洗浄液供給管26から洗浄液流路20bを経て送られた洗浄液と、窒素ガス供給管28から窒素ガス流路20cを経て送られた窒素ガスとが衝突して混合し、このことにより合流部20dにおいて洗浄液の液滴が生成される。このようにして生成された洗浄液の液滴は、ノズル内部本体20fの内部にある螺旋形状の流路20hを流れ、最終的に吐出口20jまで送られる。そして、洗浄液の液滴は、吐出口20jからウエハWに向かって噴霧される。
【0041】
一方、螺旋形状の流路20hを流れる洗浄液の液滴のうち、径が大きな洗浄液の液滴は、貫通孔20iを介して流路20hから排出される。この排出された径が大きな洗浄液の液滴は、ノズル下部本体20eの内部にある排出用流路20gに送られる。
【0042】
ここで、二流体ノズル20が洗浄液の液滴をウエハWに噴霧している間、吸引器40が作動させられており、この吸引器40は、吸引管42を介して二流体ノズル20内の排出用流路20gから洗浄液の液滴を吸引している。このことにより、螺旋形状の流路20hから排出された径が大きな洗浄液の液滴は、排出用流路20gおよび吸引管42を介して吸引器40により吸引される。
【0043】
二流体ノズル20が洗浄液の液滴をウエハWに噴霧している間、アーム駆動機構により回転軸部24を中心としてアーム22を水平方向に回転させる。そうすると、このアーム22はウエハWの上方で、ウエハWの略中心から周縁に向かって水平方向に移動することとなり、当該アーム22に取り付けられた二流体ノズル20が水平方向に移動することとなる。このように、アーム駆動機構によってウエハWの上方でアーム22を水平方向に移動させることにより、このアーム22に取り付けられた二流体ノズル20がウエハWの上面に対してまんべんなく均一に洗浄液の液滴を噴霧し、このウエハWの上面に洗浄液の液膜が形成されることとなる。
【0044】
その後、二流体ノズル20がウエハWの外方に移動し、二流体ノズル20からの洗浄液の噴霧を停止し、スピンチャック駆動機構がスピンチャック12を高速回転させる。このことにより、スピンチャック12に保持されたウエハWも高速回転させられ、ウエハWの乾燥が行われる。このようにして、基板洗浄装置1における一連の動作が終了する。
【0045】
以上のように本実施の形態による二流体ノズル20によれば、ノズル内部本体20fの内部に設けられた螺旋形状の流路20hにおいて、様々な粒子径の洗浄液の液滴のうち、粒子径の大きな洗浄液の液滴には粒子径の小さな洗浄液の液滴よりも大きな遠心力が働くので、粒子径の大きな洗浄液の液滴はこの螺旋形状の流路20hにおける径方向外側を流れることとなる。そして、螺旋形状の流路20hにおける径方向外側には貫通孔20iが設けられており、流路20hにおける径方向外側を流れる洗浄液の液滴が貫通孔20iを介して流路20hから排出されるようになっているので、粒子径の大きな洗浄液の液滴が貫通孔20iを介して流路20hから排出される。このため、流路20hにおいて貫通孔20iにより排出されず吐出口20jに送られる洗浄液の液滴は、粒子径の小さなものとなる。このようにして、二流体ノズル20の吐出口20jの端部近傍から噴霧される液滴もその粒子径を小さなものとすることができ、このため、吐出口20jからウエハWに噴霧される洗浄液の液滴を、全体的に、粒子径の小さなものとすることができる。
【0046】
また、合流部20dの下流側における流路20hが螺旋形状となっているので、この流路20hにおける湾曲した部分の距離を長くすることができる。このことにより、洗浄液の液滴に遠心力が働く時間が長くなる。このため、この流路20hにおいて、粒子径の大きな洗浄液の液滴は粒子径の小さな洗浄液の液滴からより一層分離させられることとなり、流路20hを流れる洗浄液の液滴のうち、粒子径の大きな洗浄液の液滴は、より確実に流路20hにおける径方向外側を流れるようになる。
【0047】
また、排出用流路20gには吸引管42を介して吸引器40が設けられており、この吸引器40が螺旋形状の流路20hにおける径方向外側を流れる洗浄液の液滴を吸引するようになっている。このため、この流路20hにおける径方向外側を流れる洗浄液の液滴を、吸引器40による吸引によって、より確実に貫通孔20iおよび排出用流路20gを介して流路20hから排出させることができる。
【0048】
なお、本発明による二流体ノズル、基板洗浄装置および基板洗浄方法は、上記の態様に限定されるものではなく、様々の変更を加えることができる。
【0049】
例えば、吸引器40を必ずしも二流体ノズル20に接続させる必要はなく、図1に示すような基板洗浄装置1において吸引器40を省略することもできる。この場合、吸引器40による吸引作用がなくても、二流体ノズル20における螺旋形状の流路20hにおいて、洗浄液の液滴に働く遠心力により、径の大きな洗浄液の液滴を流路20hの径方向外側部分に流すことができ、この径の大きな洗浄液の液滴を貫通孔20iにより流路20hから排出することができる。
【0050】
また、二流体ノズルにおける合流部と吐出口との間に設けられる流路は、螺旋形状のものに限定されることはない。図5および図6に、二流体ノズルの合流部と吐出口との間に設けられる流路の他の構成を示す。図5は、図1に示す基板洗浄装置における二流体ノズルの他の構成の詳細を示す横断面図であり、図6は、図5に示す二流体ノズル内における洗浄液の液滴の流れを概略的に示す説明図である。
【0051】
図5および図6に示すように、基板洗浄装置に設けられる他の構成の二流体ノズル21において、ノズル上部本体は、図2および図3に示すような二流体ノズル20のノズル上部本体20aと略同一の構成となっている。一方、二流体ノズル21のノズル内部本体21bに設けられる流路21dは、螺旋形状の流路ではなく、直線部分と湾曲した部分とを有するような流路となっている(図6参照)。二流体ノズル21の合流部(図示せず)において生成された洗浄液の液滴は、この流路21dを経て二流体ノズル21の吐出口21gに送られるようになっている。
【0052】
また、図5に示すように二流体ノズル21のノズル内部本体21bの外方には略円筒形状のノズル下部本体21aが設けられている。ノズル下部本体21aの内部には、流路21dにおける湾曲した部分から排出される洗浄液の液滴が送られるような排出用流路21cが形成されている。そして、流路21dにおける湾曲した部分と、排出用流路21cとは、ノズル下部本体21aの内壁を貫通するよう形成された貫通孔21eにより連通している。この貫通孔21eの端部は、図5に示すように流路21dの湾曲した部分における径方向外側部分に連通している。ここで、流路21dの湾曲した部分における径方向外側部分とは、この湾曲した部分における円弧の中心O(図5参照)から最も遠い部分のことをいう。
【0053】
ノズル下部本体21aの内部に設けられた排出用流路21cは、貫通孔21fを介して吸引管42に連通しており、流路21dの湾曲した部分から貫通孔21eに送られた洗浄液の液滴は、排出用流路21c、貫通孔21fを介して吸引管42に送られ、最終的には図1に示すような吸引器40に送られるようになっている。このような洗浄液の液滴の流れは、吸引器40による吸引によって促進される。
【0054】
図6に、二流体ノズル21のノズル内部本体21b内における洗浄液の液滴の流れを概略的に示す。図6に示すように、二流体ノズル21のノズル内部本体21b内において、合流部から送られた洗浄液の液滴は流路21dにおける直線部分および湾曲した部分を流れ、最終的には吐出口21gから下方に噴霧されるが、流路21dの湾曲した部分を流れる洗浄液の液滴のうち、一部の洗浄液の液滴は貫通孔21eを介して流路21dから排出される。この排出された洗浄液の液滴は、ノズル下部本体21aの内部にある排出用流路21cに送られる。
【0055】
ここで、流路21dの一部分は湾曲した形状となっており、貫通孔21eは流路21dの湾曲した部分における径方向外側部分に連通している。このため、流路21dの湾曲した部分を流れる様々な粒子径の洗浄液の液滴のうち、粒子径の大きな洗浄液の液滴には粒子径の小さな洗浄液の液滴よりも大きな遠心力が働き、粒子径の大きな洗浄液の液滴は流路21dの湾曲した部分における径方向外側を流れる。このことにより、貫通孔21eには、粒子径の大きな洗浄液の液滴が送られることとなる。
【0056】
図5および図6に示すような二流体ノズル21によれば、図2乃至図4に示すような二流体ノズル20と同様に、流路21dの湾曲した部分における径方向外側には貫通孔21eが設けられており、この湾曲した部分における径方向外側を流れる洗浄液の液滴が貫通孔21eを介して流路21dから排出されるようになっているので、粒子径の大きな洗浄液の液滴が貫通孔21eを介して流路21dから排出される。このため、流路21dにおいて貫通孔21eにより排出されず吐出口21gに送られる洗浄液の液滴は、粒子径の小さなものとなる。このようにして、吐出口21gからウエハWに噴霧される洗浄液の液滴を、粒子径の小さなものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一の実施の形態における基板洗浄装置の構成を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す基板洗浄装置における二流体ノズルの構成の詳細を示す縦断面図である。
【図3】図2に示す二流体ノズルのA−A矢視による横断面図である。
【図4】図2および図3に示す二流体ノズル内における洗浄液の液滴の流れを概略的に示す説明図である。
【図5】図1に示す基板洗浄装置における二流体ノズルの他の構成の詳細を示す横断面図である。
【図6】図5に示す二流体ノズル内における洗浄液の液滴の流れを概略的に示す説明図である。
【図7】従来の二流体ノズルの構成の詳細を示す縦断面図である。
【図8】(a)は、図7に示すような従来の二流体ノズルの吐出口の概略を示す図であり、(b)は、ノズル吐出口における位置と、洗浄液の液滴の粒子径との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0058】
1 基板処理装置
10 チャンバー
12 スピンチャック
16 外筒
20 二流体ノズル
20a ノズル上部本体
20b 洗浄液流路
20c 窒素ガス流路
20d 合流部
20e ノズル下部本体
20f ノズル内部本体
20g 排出用流路
20h 螺旋形状の流路
20i 貫通孔
20j 吐出口
20k 貫通孔
21 二流体ノズル
21a ノズル下部本体
21b ノズル内部本体
21c 排出用流路
21d 流路
21e 貫通孔
21f 貫通孔
21g 吐出口
22 アーム
24 回転軸部
26 洗浄液供給管
28 窒素ガス供給管
30 洗浄液タンク
32 窒素ガス供給機構
34 バルブ
36 バルブ
38 フィルタ
40 吸引器
42 吸引管
50 洗浄液排出管
80 二流体ノズル
80a ノズル本体
80b 洗浄液流路
80c 窒素ガス流路
80d 合流部
80e 吐出口
86 洗浄液供給管
88 窒素ガス供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から洗浄液および液滴生成用ガスがそれぞれ供給され、これらの洗浄液および液滴生成用ガスが内部で混合して洗浄液の液滴が内部で生成される本体部と、
前記本体部の内部に設けられ、洗浄液および液滴生成用ガスが混合することにより生成される洗浄液の液滴が流れる流路であって、少なくとも一部分が湾曲した流路と、
前記本体部における前記流路の下流端に設けられ、前記流路から送られる洗浄液の液滴が外部に噴霧される吐出口と、
前記流路の湾曲した部分における径方向外側に設けられ、当該流路の湾曲した部分における径方向外側を流れる洗浄液の液滴を当該流路から排出する排出口と、
を備えたことを特徴とする二流体ノズル。
【請求項2】
前記流路の湾曲した部分は螺旋形状となっていることを特徴とする請求項1記載の二流体ノズル。
【請求項3】
前記排出口には吸引機構が設けられており、当該吸引機構が前記流路の湾曲した部分における径方向外側を流れる洗浄液の液滴を吸引することにより、この洗浄液の液滴が前記排出口を介して前記流路から排出されることを特徴とする請求項1または2に記載の二流体ノズル。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の二流体ノズルを備え、
当該二流体ノズルの吐出口から噴霧される洗浄液の液滴により被処理基板の洗浄を行うことを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項5】
二流体ノズルの内部で洗浄液と液滴生成用ガスとを混合して洗浄液の液滴を生成し、被処理基板に対してこの二流体ノズルから洗浄液の液滴を噴霧することにより被処理基板の洗浄を行うような基板洗浄方法であって、
二流体ノズルに洗浄液および液滴生成用ガスをそれぞれ供給し、これらの洗浄液および液滴生成用ガスを二流体ノズルの内部で混合させて洗浄液の液滴を生成する工程と、
少なくとも一部分が湾曲した流路に洗浄液の液滴を流し、この際に前記流路の湾曲した部分における径方向外側を流れる洗浄液の液滴を、排出口を介して前記流路から排出する工程と、
前記流路において排出されなかった洗浄液の液滴を二流体ノズルの吐出口より被処理基板に噴霧する工程と、
を備えたことを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項6】
前記流路の湾曲した部分における径方向外側を流れる洗浄液の液滴を外部から吸引することにより、この洗浄液の液滴を前記流路から排出することを特徴とする請求項5記載の基板洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−158703(P2009−158703A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334492(P2007−334492)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】