説明

位置検出装置、位置検出方法、位置検出プログラム及びナビゲーション装置

【課題】電源投入後に現在位置を表示できるまでの時間を短縮できるようにする。
【解決手段】ナビゲーション装置1は、静止状態であり、且つ当該ナビゲーション装置1がクレードル4に装着されているときに、環境情報処理部30により地磁気値TM、位置情報PS及び方向情報DRを記憶部13に記憶させておき、動作停止状態から電源が投入され起動した際、クレードル4に装着され、静止状態であり、且つ記憶部13に記憶している地磁気値TMと現在の地磁気値TMとの差分が所定閾値未満であれば、周囲環境が変化していないものと判定し、記憶部13に記憶している電源切断前の位置情報PS及び方向情報DRを現在の位置情報PS及び方向情報DRとして復元することにより、電源投入後直ちに現在位置を認識することができるので、当該現在位置に応じた地図画面や経路案内画面等を提示することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位置検出装置、位置検出方法、位置検出プログラム及びナビゲーション装置に関し、例えば車両に搭載されるナビゲーション装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置においては、移動する車両等に搭載され、GPS(Global Positioning System)衛星から送信されるGPS信号を基に現在位置を算出し、地図画面上に当該車両の位置や進行方向を示すようになされたものが広く普及している。
【0003】
またナビゲーション装置のなかには、車両と家庭等との間や車両と他の車両との間でユーザにより容易に持ち運び得るようになされた、いわゆるポータブル型に構成されたものがある。
【0004】
このようなポータブル型ナビゲーション装置では、当該ナビゲーション装置との着脱操作が容易化されたクレードルを用いる場合がある。この場合、当該クレードルを車両に固定的に取り付けておき、ナビゲーション装置を当該クレードルに装着し又は当該クレードルから離脱することにより、車両への取り付けや取り外しを容易に行い得るようになされている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−301789公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでかかるナビゲーション装置では、GPS信号を用いて最初に現在位置を算出する際、衛星の軌道情報を取得する処理等を行う必要があるため、現在位置を算出し画面上に地図等を表示できるまでに数分乃至十数分程度の時間を要してしまう。
【0006】
しかしながら、ナビゲーション装置がこのように現在位置を算出するまでに時間を要してしまうと、直ちに位置を知りたいユーザを待たせることになるため、使い勝手の点で未だ不十分といわざるを得ない。
【0007】
一方、車両に固定的に据え付けるナビゲーション装置(以下、据付型ナビゲーション装置と呼ぶ)では、自動車のエンジンが掛けられ移動する際、当該自動車の電気系統の起動に連動して電源が投入されるため、移動中は現在位置を算出し続けることになる。換言すれば、据付型ナビゲーション装置では、電源が切断されている間に移動される可能性は極めて低い。
【0008】
このことを利用し、据付型ナビゲーション装置では、電源切断前の現在位置を表す位置情報を不揮発性メモリ等に記憶しておき、電源が投入された際、電源切断前に記憶した位置情報を基に現在位置を設定するといった手法が広く用いられている。
【0009】
しかしながらポータブル型ナビゲーション装置では、電源が切断されている間にユーザに持ち運ばれ得るため、再度電源が投入されるときには電源切断前と異なる場所に移動されている可能性が高い。このためポータブル型ナビゲーション装置では、電源切断前に記憶した位置情報を基に現在位置を設定するといった手法をそのまま利用することができず、結果的に最初に現在位置を算出し画面上に地図等を表示できるまでに時間を要してしまうという問題があった。
【0010】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、電源投入後に現在位置を表示できるまでの時間を短縮し得る位置検出装置、位置検出方法、位置検出プログラム及びナビゲーション装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため本発明の位置検出装置においては、所定の測位手段から供給される測位情報を基に現在位置を検出し、当該現在位置に関する検出情報を生成する位置検出部と、少なくとも1軸方向の地磁気値を検出する地磁気センサと、位置検出部により検出した最新の検出情報と共に、地磁気センサにより検出した最新の地磁気値を記憶する記憶部と、動作停止状態から起動したときに、地磁気センサにより検出した地磁気値を基に、前回動作停止したときと比較して周囲の環境が変化したか否かを判定する環境変化判定部と、環境変化判定部により前回動作停止したときから周囲の環境が変化していないと判定された場合、記憶部に記憶している検出情報を初期の検出情報として設定する初期情報設定部とを設けるようにした。
【0012】
これにより、電源切断前の地磁気値と電源を再度投入後の地磁気値との比較結果を基に、周囲の環境が変化しておらず記憶部に記憶している現在位置から移動していないことが判明した場合のみ、当該記憶している位置情報を初期の位置情報として適切に設定することができる。
【0013】
また本発明の位置検出方法及び位置検出プログラムにおいては、所定の測位手段から供給される測位情報を基に現在位置を検出し、当該現在位置に関する検出情報を生成する位置検出ステップと、位置検出ステップにより検出した最新の検出情報と共に、少なくとも1軸方向の地磁気値を検出する地磁気センサにより検出した最新の地磁気値を所定の記憶部に記憶する記憶ステップと、動作停止状態から起動したときに、地磁気センサにより検出した地磁気値を基に、前回動作停止したときと比較して周囲の環境が変化したか否かを判定する環境変化判定ステップと、環境変化判定ステップにより前回動作停止したときから周囲の環境が変化していないと判定された場合、記憶部に記憶している検出情報を初期の検出情報として設定する初期情報設定ステップとを設けるようにした。
【0014】
これにより、電源切断前の地磁気値と電源を再度投入後の地磁気値との比較結果を基に、周囲の環境が変化しておらず記憶部に記憶している現在位置から移動していないことが判明した場合のみ、当該記憶している位置情報を初期の位置情報として適切に設定することができる。
【0015】
さらに本発明のナビゲーション装置においては、所定の測位手段から供給される測位情報を基に現在位置を検出し、当該現在位置に関する検出情報を生成する位置検出部と、と、位置検出部により検出した最新の検出情報と共に、少なくとも1軸方向の地磁気値を検出する地磁気センサにより検出した最新の地磁気値を記憶する記憶部と、動作停止状態から起動したときに、地磁気センサにより検出した地磁気値を基に、前回動作停止したときと比較して周囲の環境が変化したか否かを判定する環境変化判定部と、環境変化判定部により前回動作停止したときから周囲の環境が変化していないと判定された場合、記憶部に記憶している検出情報を初期の検出情報として設定する初期情報設定部と、検出情報を基に、所定の地図上における現在位置、又は当該地図上において現在位置から所定の目的地へ至るための経路を提示する提示部とを設けるようにした。
【0016】
これにより、電源切断前の地磁気値と電源を再度投入後の地磁気値との比較結果を基に、周囲の環境が変化しておらず記憶部に記憶している現在位置から移動していないことが判明した場合のみ、当該記憶している位置情報を初期の位置情報として適切に設定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電源切断前の地磁気値と電源を再度投入後の地磁気値との比較結果を基に、周囲の環境が変化しておらず記憶部に記憶している現在位置から移動していないことが判明した場合のみ、当該記憶している位置情報を初期の位置情報として適切に設定することができるので、かくして電源投入直後に現在位置を表示できるまでの時間を短縮し得る位置検出装置、位置検出方法、位置検出プログラム及びナビゲーション装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0019】
(1)ナビゲーション装置の構成
(1−1)外観構成
図1において、ナビゲーション装置1は、GPSアンテナ2によりGPS衛星(図示せず)からのGPS信号等を基に現在位置を算出し、表示部3に地図画面や所望の目的地までの経路案内画面等を表示することにより、ユーザに現在位置や周辺地図、或いは案内経路等を提示し得るようになされている。
【0020】
このナビゲーション装置1は、ユーザにより容易に持ち運ばれ得るようポータブル型に構成され、当該ユーザの家庭内や車両の車室内において使用されることが想定されている。
【0021】
またナビゲーション装置1は、専用のクレードル4に容易に装着され得ると共に、当該クレードル4から容易に取り外され得るようになされている。実際上、このクレードル4が車両の車室内におけるダッシュボード上等に予め取り付けられることにより、ナビゲーション装置1は、当該車両に対して容易に取り付けられ、又は容易に取り外されるようになされている。
【0022】
さらにクレードル4は、吸盤(図示せず)によって車室内のダッシュボード等に取り付けられるようになされており、ナビゲーション装置1と同様、車両に対して容易に取り付けられ、又は容易に取り外され得るようになされている。
【0023】
因みにGPSアンテナ2は、フロントガラスの下等に設置されることにより、車両のボディ等により遮断されることなく、上空の衛星軌道を周回するGPS衛星からのGPS信号を良好に受信し得るようになされている。
【0024】
(1−2)ナビゲーション装置の回路構成
図2に示すように、ナビゲーション装置1は、上述した表示部3に加え、GPS信号の受信処理等を行うGPS処理部10、GPS信号を受信し得ない際に各種センサによる検出値を基に速度を算出する自律速度算出ユニット11、GPS処理部10又は自律速度算出ユニット11からの情報を基に経路案内画面等を表す表示データを生成するナビゲーションユニット12、及び各種データ等を記憶する記憶部13等を有している。
【0025】
GPS処理部10は、GPSアンテナ2を介して複数のGPS衛星(図示せず)からのGPS信号を受信し、当該GPS信号を基に所定の位置算出処理を行うことにより位置情報PSを生成し、これを自律速度算出ユニット11及びナビゲーションユニット12等へ供給する。
【0026】
これに応じてナビゲーションユニット12は、位置情報PSに対応した範囲の地図データを所定の地図記憶部(図示せず)から読み出し、当該地図データ上に現在位置を示すマーク等を重畳して表示画面データを生成して、これを表示部3へ送出し表示画面を表示させる。
【0027】
一方、ナビゲーションユニット12は、ビルの陰やトンネル内等のようにGPSアンテナ2によってGPS信号を受信できない場合、位置情報PSが供給されないため車両の現在位置を算出することができない。
【0028】
このとき自律速度算出ユニット11は、車両の現在位置を推測するための情報として、当該車両の速度V及び水平方向の角速度φを算出するようになされている。
【0029】
この自律速度算出ユニット11には、車両の進行方向に作用する加速度を検出する加速度センサ14と、周囲の気圧を検出する気圧センサ15と、車両の垂直方向回りの回転角速度を検出するジャイロセンサ16とが接続されている。
【0030】
加速度センサ14は、車両の進行方向に作用する加速度に応じて加速度検出信号SAを生成し、これを自律速度算出ユニット11へ供給する。
【0031】
気圧センサ15は、周囲の気圧に応じて気圧検出信号SRを生成し、これを自律速度算出ユニット11へ供給する。
【0032】
ジャイロセンサ16は、車両における垂直方向回りの(すなわちヨー回転軸まわりの)角速度φを検出し、これを自律速度算出ユニット11へ供給する。
【0033】
自律速度算出ユニット11は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)から速度算出プログラム等の各種アプリケーションプログラムを読み出して実行するようになされている。
【0034】
これにより自律速度算出ユニット11は、加速度検出信号SAを車両の進行方向に作用する検出加速度αGに換算した上で速度Vを算出する速度算出部20、気圧検出信号SRを周囲の気圧を表す気圧PRに換算した上で所定期間における高度変化量を算出する高度変化量算出部21、角速度φに対して所定の補正処理を施すことにより補正角速度φcを算出する角速度補正部22、及びナビゲーション装置1が静止しているか否か、すなわち車両が停車中または走行中のいずれであるかを判定する静止判定部23といった各処理機能を実現するようになされている(詳しくは後述する)。
【0035】
因みに自律速度算出ユニット11は、速度V及び補正角速度φc等を不揮発性メモリでなる記憶部13に記憶し、また必要に応じて読み出すようになされている。
【0036】
また自律速度算出ユニット11は、静止判定部23において、加速度検出信号SAを基に車両が静止しているか否かを判定し得るようになされている。
【0037】
自律速度算出ユニット11は、このようにして算出した速度V及び補正角速度φcをナビゲーションユニット12へ送出する。これに応じてナビゲーションユニット12は、当該速度V、補正角速度φc及び直前の位置情報PS等を基に新たな車両の現在位置等を推定し、これを新たな位置情報PSとして、当該新たな位置情報PSに対応した表示画面を表示部3に表示させる。
【0038】
またナビゲーションユニット12は、最新の位置情報PSと共に、このときの進行方向を表す方向情報DRを記憶部13へ送出することにより、当該位置情報PS及び方向情報DRを記憶・更新させるようになされている。
【0039】
因みにナビゲーション装置1は、いわゆる据付型のナビゲーション装置とは異なり、車両において生成され当該車両の速度に応じて周期が変化する車速パルス信号を利用せずに済むようになされており、当該ナビゲーション装置1を当該車両に取り付ける際の配線処理を簡略化し得るようになされている。
【0040】
このようにナビゲーション装置1は、GPSアンテナ2によりGPS信号を受信し得ない場合、自律速度算出ユニット11により加速度検出信号SA、気圧検出信号SR及び角速度φを基に速度V及び補正角速度φcを算出し、これらを用いてナビゲーションユニット12により現在位置を算出し得るようになされている。
【0041】
(2)速度V及び補正角速度φcの算出
次に、ナビゲーション装置1がGPSアンテナ2により充分なGPS信号を受信し得ない場合における、自律速度算出ユニット11による速度V及び補正角速度φcの算出について説明する。
【0042】
(2−1)速度の算出
まず、自律速度算出ユニット11における速度Vの算出について説明する。ここでは、図3(A)に示すように、車両100が水平面HZに対して勾配角度θをなす斜面SLを走行していると仮定する。
【0043】
この場合、加速度センサ14(図2)により検出された加速度検出信号SAを基に得られる検出加速度αGには、車両100の移動に起因する本来の加速度(以下、これを車両加速度αPと呼ぶ)と、当該車両100に作用する重力加速度gの進行方向成分(以下、これを重力加速度成分gfと呼ぶ)とが加算された値に相当する。すなわち重力加速度成分gfは、検出加速度αGと車両加速度αPとの差分により、次に示す(1)式のように算出することができる。
【0044】
【数1】

【0045】
ナビゲーション装置1の自律速度算出ユニット11(図2)は、複数時刻における複数の位置情報PSを基に距離及び速度を算出した上で当該車両加速度αPを算出し得るようになされている。
【0046】
ところで図3(B)及び(C)に示すように、計測開始時点としてのある時刻t0から計測終了時点としての時刻t1までの計測時間mt(例えば1秒間程度)の間に車両100が斜面SLを進行した距離Dmと、当該計測時間mtにおける当該車両100の高度変化量Dhとの比(すなわちsinθ)は、重力加速度成分gfと重力加速度gとの比(すなわちsinθ)に等しい。従って、次に示す(2)式のような関係が成立する。
【0047】
【数2】

【0048】
距離Dmは、距離に関する速度及び加速度を用いた一般的な公式に従い、時刻t0における車両100の速度V0及び車両加速度αPを用いることにより、次に示す(3)式のように表すことができる。
【0049】
【数3】

【0050】
(2)式を変形して(1)式及び(3)式を代入すると、次に示す(4)式のようになる。
【0051】
【数4】

【0052】
この(4)式を車両加速度αPについて整理すると、次に示す(5)式が得られる。
【0053】
【数5】

【0054】
ここで時刻t1における速度V1は、速度Vに関する一般的な物理の公式に従い、次に示す(6)式の関係が成立する。
【0055】
【数6】

【0056】
この(6)式は、速度V1が速度V0を基に算出され得ることを表している。ここで、(6)式に(5)式を代入することにより、次に示す(7)式を得ることができる。
【0057】
【数7】

【0058】
すなわち自律速度算出ユニット11は、高度変化量Dhを得ることができれば、速度算出部20において、検出加速度αG、計測時間mt、時刻t0における速度V0、重力加速度g及び当該高度変化量Dhを用いることにより、(7)式に従い時刻t1における速度V1を算出することができる。
【0059】
(2−2)高度変化量の算出
次に、自律速度算出ユニット11(図1)における高度変化量Dhの算出処理について説明する。自律速度算出ユニット11は、GPSアンテナ2においてGPS信号を受信できない場合、一般に気圧PRと高度hとの間に対応関係があることを利用し、気圧センサ15から取得した気圧検出信号SRを気圧PRに換算し、さらに当該気圧PRから高度hを算出するようになされている。
【0060】
実際上自律速度算出ユニット11は、一般的な気圧と高度との対応関係を予めテーブル化した気圧高度対応テーブルTBLを記憶部13に記憶させており、時刻t0における気圧PR0及び時刻t1における気圧PR1を基に、当該気圧高度対応テーブルTBLから当該気圧PR0及びPR1に対応した高度h0及びh1をそれぞれ読み出す。
【0061】
続いて自律速度算出ユニット11は、高度変化量算出部21により、時刻t0における車両100の高度h0と時刻t1における当該車両100の高度h1との差分である高度変化量Dhを次に示す(8)式に従って算出する。
【0062】
【数8】

【0063】
ところで、一般に気圧は、高度に応じて異なる値となり、同一の高度であっても低気圧や高気圧等といった天候の影響によりゆっくりと変動する。しかしながら、速度検出ユニット2が気圧PR0及びPR1を検出する際の時間差である計測時間mt(約1秒)は、天候の影響により有意な気圧変動が生じる時間よりも十分に短いため、高度hの相対的な差としての高度変化量Dhには天候等による気圧への影響が無いとみなすことができる。
【0064】
従って自律速度算出ユニット11は、気圧高度対応テーブルTBL及び(8)式により、信頼度が高い高度変化量Dhを得ることができ、このようにして算出した高度変化量Dhを(7)式に適用することができる。
【0065】
この場合自律速度算出ユニット11は、正確な車両加速度αPを算出することができないため、(1)式の関係により検出加速度αGに含まれている進行方向成分gfを直接算出することができないものの、(2)式に示した関係を利用して当該進行方向成分gfを高度変化量Dhによって相殺することができるため、結果的に当該進行方向成分gfに拘わらず(7)式によって高精度に速度Vを算出することができる。
【0066】
(2−3)角速度の補正
次に、ジャイロセンサ16から供給される角速度φを補正し補正角速度φcを算出する補正処理について説明する。ここでは、図3(A)と対応する図4(A)に示すように、車両100が進行方向FWへ向かって水平面HZに対して勾配角度θをなす斜面SLを走行していると仮定する。
【0067】
このときジャイロセンサ16により検出する角速度φは、図4(B)に示すように、斜面SL上における当該車両100の仮想的なヨー回転軸YAを中心とした回転角速度を表すことになる。しかしながら、車両100が斜面SLを走行しているため、当該ジャイロセンサ16により検出する角速度φは、実際の車両100の回転角速度がcosθ倍された値となっている。
【0068】
そこで自律速度算出ユニット11の角速度補正部22(図2)は、(8)式に従い算出された高度変化量Dhと、(7)式に従い算出された速度Vを基に得られた移動距離Dmとを用いて、次に示す(9)式を用いてsinθを算出する。因みに、この(9)式は、図3(C)に示す関係から導かれるものである。
【0069】
【数9】

【0070】
次に角速度補正部22は、この(9)式から得られるsinθを、一般的な三角関数の性質である(10)式に当てはめることにより、cosθを算出する。
【0071】
【数10】

【0072】
さらに角速度補正部22は、次に示す(11)式に従い、cosθと角速度φとを基に補正角速度φc(図4(B))を算出する。
【0073】
【数11】

【0074】
その後、自律速度算出ユニット11は、(7)式を基に算出された速度Vと共にこの補正角速度φcをナビゲーションユニット12へ送出する。
【0075】
これに応じてナビゲーションユニット12は、GPSアンテナ2によりGPS信号を受信できずGPS処理部10から位置情報PSを取得できない場合、直前の位置情報PSと共に、速度V及び補正角速度φcを用いて現在の車両100の推定位置を算出する、いわゆるデッドレコニング(推測航法)を行うようになされている。
【0076】
このときナビゲーションユニット12は、車両100が斜面SLを走行中でありジャイロセンサ16により検出した角速度φが当該車両100の本来の角速度と異なっていたとしても、当該角速度φではなく当該斜面SLの勾配角度θに応じて補正された補正角速度φcを用いることにより、当該車両100の位置情報PSを高精度に推定することができる。
【0077】
これによりナビゲーション装置1は、GPS信号を受信できず位置情報PSに基づいた正確な現在位置を認識できなかったとしても、速度V及び補正角速度φcに基づき高精度に推定された位置情報PSを基に、車両100の現在位置を表示画面の地図上に表示してユーザに視認させることができる。
【0078】
(2−4)静止状態の判定
ところで自律速度算出ユニット11は、GPS信号を受信できない場合、(6)式に示したように、時刻t0の(すなわち直前の)速度V0を用いて時刻t1の(すなわち現在の)速度V1を算出するため、速度V0が誤っていると速度V1も誤った値となる。このため自律速度算出ユニット11は、車両100に取り付けられたナビゲーション装置1における最初の速度V、すなわち静止状態における速度Vを「ゼロ」として確実に検出する必要がある。
【0079】
ここで一般に車両100が走行している場合、道路の形状や交通状況等に応じて加速度検出信号SAが絶えず変動することになるため、当該加速度検出信号SAが継続して一定の値となる可能性は極めて低く、当該加速度検出信号SAの値はある程度のばらつきを有することになる。これと反対に車両100が停車している場合、加速度検出信号SAはゼロから変動せず一定の値となり、アイドリング時におけるエンジンの振動や検出誤差等を考慮したとしても、当該加速度検出信号SAのばらつきが所定範囲内に収まることになる。
【0080】
そこで自律速度算出ユニット11は、静止判定部23(図2)によって、所定時間範囲(例えば1秒間)における加速度検出信号SAの分散SAvarを算出し、当該分散SAvarが所定範囲内に収まっていれば車両100が停車しナビゲーション装置1が静止していると判定し、このときの速度Vをゼロに補正するようになされている。
【0081】
これにより自律速度算出ユニット11は、車両100に取り付けられたナビゲーション装置1が移動状態又は静止状態のいずれにあるかを正しく判定することができ、静止状態である場合には速度Vをゼロに補正することにより、以降の速度Vを正しく算出することができる。
【0082】
(2−5)速度出力処理
次に、自律速度算出ユニット11が車両100の速度Vを算出しナビゲーションユニット12へ出力する際の速度出力処理手順について、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0083】
自律速度算出ユニット11は、ナビゲーション装置1の電源が投入されると速度出力処理手順RT1を開始してステップSP1へ移る。ステップSP1において自律速度算出ユニット11は、車両100に取り付けられたナビゲーション装置1が静止状態にあるか否かを判定するべく、静止判定部23により、過去1秒間に算出した加速度検出信号SAにおける分散SAvarを算出し、次のステップSP2へ移る。
【0084】
ステップSP2において自律速度算出ユニット11は、静止判定部23により、ステップSP1において算出した加速度検出信号SAの分散SAvarが所定の閾値未満に収まっているか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは分散SAvarが比較的小さくまとまっていることからナビゲーション装置1が静止状態にある可能性が非常に高いことを表しており、このとき自律速度算出ユニット11は次のステップSP3へ移る。
【0085】
ステップSP3において自律速度算出ユニット11は、記憶部13に記憶している直前の速度V0をゼロに補正し、次のステップSP4へ移る。
【0086】
一方、ステップSP2において否定結果が得られると、このことは加速度検出信号SAの分散SAvarがある程度大きいため、車両100に取り付けられたナビゲーション装置1が移動状態にある可能性が高いことを表しており、このとき自律速度算出ユニット11は直前の速度V0を特に補正せずに次のステップSP4へ移る。
【0087】
ステップSP4において自律速度算出ユニット11は、GPS処理部10から位置情報PSを取得できるか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことはGPS処理部10から取得できた位置情報PSを基に速度Vを算出できることを表しており、このとき演算処理ブロック10は次のステップSP5へ移る。
【0088】
ステップSP5において自律速度算出ユニット11は、この時点における時刻と対応付けて検出加速度αG、気圧PR及び位置情報PSを記憶部13に記憶させ、次のステップSP7へ移る。
【0089】
一方ステップSP4において否定結果が得られると、このことはGPS処理部10から位置情報PSを取得できないために当該位置情報PSを用いずに速度Vを算出する必要があることを表しており、このとき自律速度算出ユニット11は次のサブルーチンSRT1へ移る。
【0090】
サブルーチンSRT1において自律速度算出ユニット11は、速度算出部20により上述した(7)式に従って現在の速度V(速度V1)を算出し(詳しくは後述する)、次のステップSP6へ移る。
【0091】
ステップSP6において自律速度算出ユニット11は、速度V及び補正角速度φcをナビゲーションユニット12へ送出し、次のステップSP7へ移る。
【0092】
ステップSP7において自律速度算出ユニット11は、測定時間mtが経過するまで待機した後、再度ステップSP1へ戻り一連の処理を繰り返す。
【0093】
このように自律速度算出ユニット11は、GPS処理部10から位置情報PSを取得できない場合、速度V及び補正角速度φcを算出してナビゲーションユニット12へ送出するようになされている。
【0094】
次に、速度算出サブルーチンSRT1について、図6のフローチャートを用いて説明する。なお、ここでは現在の時刻を時刻t1とし、当該時刻t1よりも計測時間mtだけ以前の時刻を時刻t0とする。
【0095】
自律速度算出ユニット11は、速度出力処理手順RT1(図5)からの呼び出しに応じ、図6に示す速度算出サブルーチンSRT1を開始してステップSP11へ移る。ステップSP11において自律速度算出ユニット11は、加速度センサ14から現在の時刻t1における検出加速度αG1を取得すると共に気圧センサ15から気圧PR1を取得し、次のステップSP12へ移る。
【0096】
ステップSP12において自律速度算出ユニット11は、予め記憶部13に記憶させておいた時刻t0における検出加速度αG0、気圧PR0及び速度V0を読み出し、次のステップSP13へ移る。
【0097】
ステップSP13において自律速度算出ユニット11は、記憶部13に記憶している気圧高度対応テーブルTBLから気圧PR0及びPR1に対応した高度h0及びh1を読み出し、(8)式に従い高度変化量Dhを算出して、次のステップSP14へ移る。
【0098】
ステップSP14において自律速度算出ユニット11は、(7)式に従い時刻t0における検出加速度αG0及び速度V0と共に、高度変化量Dh、計測時間mt及び重力加速度gを用いて現在の時刻t1における速度V1を算出し、次のステップSP15へ移る。
【0099】
ステップSP15において自律速度算出ユニット11は、次回速度Vを算出するときのために現在の時刻t1における検出加速度αG1、気圧PR1及び速度V1を記憶部13に記憶させ、次のステップSP16へ移る。
【0100】
ステップSP16において自律速度算出ユニット11は、ステップSP13において算出された高度変化量Dhと、ステップSP14において算出された速度Vを基に得られた移動距離Dmとを用いて(9)式に従いsinθを算出し、これを基に(10)式に従いcosθを算出して次のステップSP17へ移る。
【0101】
ステップSP17において自律速度算出ユニット11は、(11)式に従い角速度φを補正した補正角速度φcを算出し、次のステップSP18へ移ってこの速度算出サブルーチンSRT1を終了し、元の速度出力処理手順RT1(図5)へ戻る。
【0102】
このように自律速度算出ユニット11は、検出加速度αG、気圧PR及び速度Vを算出して記憶部13に記憶させると共に、補正角速度φcを算出するようになされている。
【0103】
(3)電源投入時の位置設定
(3−1)地磁気センサによる環境変化の判定
ところでナビゲーション装置1(図1)には、3軸方向の地磁気を検出し得る地磁気センサ17が設けられている。
【0104】
この地磁気センサ17は、本来、設置された状態における方位角を取得するために地磁気を検出し、3次元の地磁気ベクトルとして出力するようになされている(以下、このとき出力される値を地磁気値と呼ぶ)。
【0105】
ここで、仮に地磁気センサ17が車両100に固定されていた場合、車両100が移動した前後で当該車両100の方位が完全に一致する可能性は極めて低いと考えられる。このため車両100が移動した場合、当該地磁気センサ17により検出する地磁気値は変化することになる。
【0106】
ところで地磁気センサ17は、その性質上、例えばスピーカに搭載される磁石等や車両100のボディ等のような大きな金属体等が周囲に存在する場合、漏洩磁場による磁気的な影響や金属体による地磁気の遮断等により、正しい方位角を表すような地磁気値を検出することは困難となる。
【0107】
特に車両100内の車室内では、周囲を当該車両100のボディによって囲まれるため、地磁気センサ17は、当該車両100のボディによる影響を大きく受けた地磁気値を出力することになってしまう。
【0108】
ここで、地磁気センサ17の周囲における、地磁気の検出に影響を及ぼすような物体の存在する環境(以下これを周囲環境と呼ぶ)について検討する。
【0109】
例えば地磁気センサ17は、車両100の車室内と一般の屋外とでは当該車両100のボディの有無が異なるため、同一の方位を向くよう設置されていたとしても、それぞれの周囲環境において異なる地磁気値を出力するものと予想される。また地磁気センサ17は、車両100の車室内と家庭内とでも、同様にそれぞれの周囲環境において異なる地磁気値を検出すると予想される。
【0110】
このように地磁気センサ17は、設置される方位のみでなく周囲環境によっても異なる地磁気値を検出する、といった性質を有している。
【0111】
ところでナビゲーション装置1は、例えば車両100に取り付けられたクレードル4に装着され、電源が投入され地図表示処理等を行った後、ユーザが当該車両100から降りる際、電源が切断されクレードル4から取り外されて持ち運ばれことが考えられる。また、ナビゲーション装置1と共にクレードル4も車両100から取り外され、持ち運ばれる可能性もある。
【0112】
このためナビゲーション装置1は、次回電源が投入されたとき、もとの車両100内のクレードル4に装着されている可能性もあるが、屋外や家庭内等の他の場所において、クレードル4には装着されずにユーザの手に把持され若しくは卓上等に置載されている可能性もある。
【0113】
そこでナビゲーション装置1は、地磁気センサ17の性質を利用して、地磁気値が電源切断前とほぼ同等であれば、電源切断前と同一の車両100に取り付けられており、且つ車両100が移動していない、すなわち当該車両100及び当該ナビゲーション装置1が電源切断前と同一位置且つ同一方向に設置されているものと判定するようにした。
【0114】
この場合、ナビゲーション装置1は、地磁気値を指標とすることにより、電源切断前と電源の再投入後とで周囲環境が変化したか否かを判定することになる。
【0115】
またナビゲーション装置1は、実際に当該ナビゲーション装置1が電源切断前と同一位置且つ同一方向に設置されるには、クレードル4に装着され車両100に対する相対的な位置が同一となり、且つ当該車両100及びナビゲーション装置1が移動していないこと、少なくとも静止状態であることが必要となる。
【0116】
そこでナビゲーション装置1は、電源切断前及び電源再投入後において、地磁気値がほぼ同一であることに加え、クレードル4に装着され、且つ静止状態であることも条件として、当該ナビゲーション装置1が電源切断前と同一位置且つ同一方向に設置されていると判定するようになされている。
【0117】
(3−2)ナビゲーション装置の回路構成
具体的にナビゲーション装置1(図2)は、環境情報処理部30の環境変化判定部31により、電源切断前と電源投入後との周囲環境が同一であるか否かを判定するようになされている。
【0118】
この環境情報処理部30は、CPU(図示せず)を中心に構成されており、ROM(図示せず)から環境情報記憶プログラムや検出情報復元プログラム等を読み出し、RAM(図示せず)をワークエリアとして実行ことにより、環境情報記憶処理や検出情報復元処理等(詳しくは後述する)を行うようになされている。
【0119】
地磁気センサ17は、本来の地磁気に周囲環境の影響が含まれている地磁気値TMを検出し、これを環境情報処理部30の環境変化判定部31へ供給する。
【0120】
またクレードル着脱検出部18は、ナビゲーション装置1がクレードル4に装着されているか否かを検出し、その検出結果として着脱情報CDを環境変化判定部31へ供給する。
【0121】
環境変化判定部31は、地磁気値TM及び着脱情報CDに加え、静止判定部23からの静止情報ST及びGPS処理部10からの位置情報PSも取得するようになされている。
【0122】
実際上、環境変化判定部31は、動作中に、着脱情報CDによりナビゲーション装置1がクレードル4に装着されていると認識し、且つ車両100が停車している(すなわちナビゲーション装置1が地面に対して静止している)と認識した場合、ナビゲーション装置1の電源が切断される可能性があると判断し、このときの周囲環境を表す情報(以下これを環境情報と呼ぶ)として地磁気値TMを記憶部13に記憶させ、又は更新させる。
【0123】
因みに環境変化判定部31は、GPS処理部10から位置情報PSが供給されるときは当該位置情報PSの経時変化を基に、また当該位置情報PSが供給されないときは静止情報STを基に、ナビゲーション装置1が静止しているか否かを判定するようになされている。
【0124】
またナビゲーションユニット12は、上述したように、当該ナビゲーション装置1における最新の位置検出状態を表す情報(以下これを検出情報と呼ぶ)として位置情報PS及び方向情報DRを記憶部13に随時記憶させ、又は更新させるようになされている。
【0125】
その後、環境情報処理部30の環境変化判定部31は、ナビゲーション装置1の電源が切断され再度電源が投入されたときに、地磁気値TM、着脱情報CD及び静止情報STを取得する。
【0126】
このときGPS処理部10は、上述したように、ナビゲーション装置1の電源投入直後に最初の現在位置を算出する処理に時間を要してしまうため、位置情報PSを出力することができない。
【0127】
そこで環境変化判定部31は、着脱情報CDによりナビゲーション装置1がクレードル4に装着され、且つ車両100と共に静止していると認識した場合、記憶部13に記憶している過去の地磁気値TMと現在の地磁気値TMとを比較し、両者の誤差が所定の閾値未満であれば、周囲環境が変化しておらず同一であると判定する。
【0128】
このことは、電源切断前と現在とで当該ナビゲーション装置1の位置及び方向が同一であると推定されたことにより、電源切断前に記憶部13に記憶した過去の位置情報PS及び方向情報DRを現在の位置情報PS及び方向情報DRとみなし得ることを表している。
【0129】
このとき環境情報処理部30の初期情報設定部32は、環境変化判定部31からの判定結果に応じて記憶部13から過去の位置情報PS及び方向情報DRを読み出し、これらをそれぞれ現在の位置情報PS及び方向情報DRとしてナビゲーションユニット12及び自律速度算出ユニット11へ供給する。
【0130】
これを換言すれば、このとき環境情報処理部30の初期情報設定部32は、電源切断前におけるナビゲーション装置1の検出情報を読み出し、現時点の検出情報として復元することになる。
【0131】
これによりナビゲーションユニット12は、GPS処理部10により最初の現在位置を算出する処理が完了する前であっても、現在位置を示す位置情報PS及び進行方向を表す方向情報DRを取得することができるため、ユーザを待たせることなく、現在位置及び進行方向に応じた地図画面や経路案内画面等を表示部3に直ちに表示させることができる。
【0132】
一方、環境変化判定部31は、電源投入直後の時点で、着脱情報CDによりナビゲーション装置1がクレードル4に装着されていないか、或いは静止状態でないと認識した場合、若しくは記憶部13に記憶している過去の地磁気値TMと現在の地磁気値TMとの誤差が所定の閾値以上であれば、周囲環境が変化したものと判定する。
【0133】
このとき初期情報設定部32は、検出情報を復元するべきではないと判断し、位置情報PS及び方向情報DRを復元することなく、GPS処理部10により最初の現在位置を算出する処理が完了し位置情報PSが出力されるのを待つことになる。
【0134】
このようにナビゲーション装置1は、電源が投入された際、クレードル4に装着され、且つ車両100と共に静止しており、さらに電源切断前の地磁気値TMと現在の地磁気値TMとの誤差が所定の閾値未満であった場合、周囲環境が同一であると判定し、電源切断前の検出情報を復元することにより、直ちに地図表示や経路案内等を行い得るようになされている。
【0135】
(4)処理手順
次に、ナビゲーション装置1において環境情報処理部30により動作中に環境情報としての地磁気値TMを記憶部13に記憶させる際の環境情報記憶処理手順RT2、及び起動時の環境情報に応じ検出情報として位置情報PS及び方向情報DRを復元する際の検出情報復元処理手順RT3について、それぞれ図7及び図8のフローチャートを用いて説明する。
【0136】
因みに検出情報としての位置情報PS及び方向情報DRについては、ナビゲーションユニット12により記憶部13に随時記憶・更新される。このため環境情報処理部30は、敢えて検出情報を記憶・更新させる処理を行わないようになされている。
【0137】
(4−1)環境情報記憶処理
実際上、環境情報処理部30は、電源が投入されている間、所定の時間間隔ごとに環境情報記憶処理手順RT2(図7)を実行するようになされており、当該環境情報記憶処理手順RT2を開始するとステップSP21へ移る。
【0138】
ステップSP21において環境情報処理部30は、ナビゲーション装置1がクレードル4に装着されているか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことはナビゲーション装置1が固定されておらず、電源切断の前後において同一位置且つ同一方向に設置される可能性が極めて低いことを表しており、このとき環境情報処理部30は、次のステップSP27へ移る。
【0139】
一方ステップSP21において肯定結果が得られると、このことはナビゲーション装置1がクレードル4を介して車両100に固定されている可能性が高いことを表しており、このとき環境情報処理部30は次のステップSP22へ移る。
【0140】
ステップSP22において環境情報処理部30は、GPS処理部10から位置情報PSを取得できるか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、環境情報処理部30は、次のステップSP23へ移る。
【0141】
ステップSP23において環境情報処理部30は、位置情報PSの経時変化を基に速度Vを算出し、次のステップSP24へ移る。
【0142】
ステップSP24において環境情報処理部30は、速度Vが所定の静止判定閾値未満であるか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは車両100と共にナビゲーション装置1が静止している可能性が高いことを表しており、このとき環境情報処理部30は次のステップSP26へ移る。
【0143】
一方、ステップSP24において否定結果が得られると、このことは車両100と共にナビゲーション装置1が移動している可能性が高いことをあらわしており、環境情報処理部30は次のステップSP27へ移る。
【0144】
これに対して、ステップSP22において否定結果が得られると、このことは位置情報PSからは速度Vを算出し得ないことを表しており、このとき環境情報処理部30は、自律速度算出ユニット11において算出した速度Vを基にナビゲーション装置1が静止状態であるか否かを判定するべく、次のステップSP25へ移る。
【0145】
ステップSP25において環境情報処理部30は、静止判定部23(図2)からの静止情報STを基にナビゲーション装置1が静止状態であるか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、環境情報処理部30は次のステップSP26へ移る。
【0146】
ステップSP26において環境情報処理部30は、車両100と共にナビゲーション装置1が静止している可能性が高いため、ユーザによりナビゲーション装置1の電源が切断されてクレードル4から取り外され、又はクレードル4ごと車両100から持ち出される可能性があることを考慮し、この時点における環境情報としての地磁気値TMを記憶部13に記憶させた後、次のステップSP28へ移って環境情報記憶処理手順RT2を終了する。
【0147】
一方、ステップSP25において否定結果が得られると、このことは車両100と共にナビゲーション装置1が移動している可能性が高いため、環境情報処理部30は次のステップSP27へ移る。
【0148】
ステップSP27において環境情報処理部30は、少なくともナビゲーション装置1がクレードル4に装着されていないか、或いは車両100が走行状態であることから、このとき記憶部13に記憶している地磁気値TMを取得した場所から既に移動してしまっているため、当該地磁気値TMを記憶部13から削除した後、次のステップSP28へ移って環境情報記憶処理手順RT2を終了する。
【0149】
(4−2)検出情報復元処理
環境情報処理部30は、電源が切断された動作停止状態から起動された際、そのときの環境情報に応じて検出情報の復元を試みるようになされており、検出情報復元処理手順RT3(図8)を開始してステップSP31へ移る。
【0150】
ステップSP31において環境情報処理部30は、ナビゲーション装置1がクレードル4に装着されているか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは少なくともナビゲーション装置1が車両100に対しては固定されておらず、電源切断前に環境情報(すなわち地磁気値TM)を記憶したときとは異なる位置に設置されている可能性が極めて高いことを表しており、このとき環境情報処理部30は、次のステップSP36へ移る。
【0151】
一方ステップSP31において肯定結果が得られると、このことはナビゲーション装置1がクレードル4を介して車両100に固定されている可能性が高いことを表しており、このとき環境情報処理部30は次のステップSP32へ移る。
【0152】
ステップSP32において環境情報処理部30は、記憶部13に地磁気値TMが記憶されているか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは電源切断前に地磁気値TMが記憶されていなかったことを表しており、このとき環境情報処理部30は次のステップSP36へ移る。
【0153】
一方、ステップSP32において肯定結果が得られると、このことは記憶部13に記憶している地磁気値TMを基に周囲環境の変化を判定し得ることを表しており、このとき環境情報処理部30は次のステップSP33へ移る。
【0154】
ステップSP33において環境情報処理部30は、静止判定部23(図2)からの静止情報STを基に、ナビゲーション装置1が静止状態であるか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことはナビゲーション装置1が電源切断前に地磁気値TMを記憶した位置から車両100と共に移動してしまったために、電源切断前とは周囲環境が確実に異なっていることを表しており、このとき環境情報処理部30は次のステップSP36へ移る。
【0155】
一方、ステップSP33において肯定結果が得られると、このことはナビゲーション装置1の電源切断前に地磁気値TMを記憶した位置から車両100が移動していない可能性があることを表しており、このとき環境情報処理部30は次のステップSP34へ移る。
【0156】
ステップSP34において環境情報処理部30は、記憶部13に記憶している電源切断前の地磁気値TMと、現在の地磁気値TMとの差分を算出し、当該差分が所定の閾値未満であるか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは電源切断前と現在とで環境情報としての地磁気値TMがほぼ同一であるため、周囲環境も変化しておらず同一であると見なし得ることを表しており、このとき環境情報処理部30は次のステップSP35へ移る。
【0157】
ステップSP35において環境情報処理部30は、検出情報として記憶部13に記憶している位置情報PS及び方向情報DRを現在の位置情報PS及び方向情報DRとすることにより復元し、当該位置情報PS及び当該方向情報DRをナビゲーションユニット12へ送出した後、次のステップSP37へ移って検出情報復元処理手順RT3を終了する。
【0158】
一方、ステップSP34において否定結果が得られると、このことは電源切断前と現在とで地磁気値TMが一致しないため、周囲環境が変化している可能性が高く、例えば車両100が電源切断前とは異なる位置に停車している可能性があることを表しており、このとき環境情報処理部30は次のステップSP36へ移る。
【0159】
ステップSP36において環境情報処理部30は、記憶部13に地磁気値TMを記憶している場合、ナビゲーション装置1の周囲環境が既に変化してしまった可能性が高いことから当該地磁気値TMを削除し、次のステップSP37へ移って検出情報復元処理手順RT3を終了する。
【0160】
(5)動作及び効果
以上の構成においてナビゲーション装置1は、環境情報処理部30により、電源切断前に静止状態であり、且つ当該ナビゲーション装置1がクレードル4に装着されているときに、環境情報としての地磁気値TMを記憶させ、また随時ナビゲーションユニット12により検出情報としての位置情報PS及び方向情報DRを記憶部13に記憶・更新させておく。
【0161】
その後ナビゲーション装置1は、動作停止状態から電源が投入され起動した際、環境情報処理部30によりこのときの地磁気値TM、着脱情報CD及び静止情報STを取得する。ここで環境情報処理部30は、ナビゲーション装置1がクレードル4に装着され、静止状態であり、且つ環境情報として記憶部13に記憶している地磁気値TMと現在の地磁気値TMとの差分が所定閾値未満であれば、周囲環境が変化していないものと判定し、記憶部13に記憶している電源切断前の位置情報PS及び方向情報DRを現在の位置情報PS及び方向情報DRとして設定することにより検出情報を復元する。
【0162】
従ってナビゲーション装置1は、地磁気値TMを用いて周囲環境の変化を検出することができ、検出情報としての位置情報PS及び方向情報DRを適切に復元することができるので、周囲環境が変化していない場合には、電源投入後直ちに現在位置を認識することができ、当該現在位置に応じた地図画面や経路案内画面等を提示することができる。
【0163】
このときナビゲーション装置1の環境情報処理部30は、地磁気センサ17により検出した3軸方向の地磁気値TMを用いて周囲環境の変化を検出するため、クレードル4を介して取り付けられている車両100の方位の変化と共に、当該ナビゲーション装置1が車両100内に設置されているか否か、さらにはナビゲーション装置1の周囲における大きな金属体の配置状況、すなわち車両100の種類(形状)や車室内におけるナビゲーション装置1の設置位置についての変化をも検出することができる。
【0164】
これによりナビゲーション装置1の環境情報処理部30は、電源切断前との比較において、当該ナビゲーション装置1が同一車両100内の同一位置及び同一方向に設置されており、且つ当該車両100が同一位置・同一方向に停車しているか否か、すなわち車両100が移動されたか否かを検出することができる。
【0165】
これを換言すれば、ナビゲーション装置1では、電源切断の前後において、クレードル4に装着され且つ車両100が移動されなかった場合のみ、検出情報を引き継ぐことができる。
【0166】
またナビゲーション装置1は、地磁気センサ17により3軸方向の地磁気値TMを検出することができるため、2軸方向の地磁気センサを用いる場合と比較して、環境情報処理部30において周囲環境の変化を高精度に検出することができる。
【0167】
一方、ナビゲーション装置1の環境情報処理部30は、当該ナビゲーション装置1がクレードル4に装着されていない場合、移動されている(すなわち車両100が移動している)場合、又は電源切断前と現在とで地磁気値TMが異なる場合には、当該ナビゲーション装置1の位置又は方向若しくはその両方が電源切断前とは異なっていると判定することができるため、誤って位置情報PSを復元させることがなく、現在位置の誤認識を未然に防止することができる。
【0168】
以上の構成によれば、ナビゲーション装置1は、電源切断前に車両100と共に静止状態であり、且つ当該ナビゲーション装置1がクレードル4に装着されているときに、環境情報処理部30により環境情報としての地磁気値TM及び検出情報としての位置情報PS並びに方向情報DRを記憶部13に記憶させておき、動作停止状態から電源が投入され起動した際、クレードル4に装着され、静止状態であり、且つ記憶部13に記憶している地磁気値TMと現在の地磁気値TMとの差分が所定閾値未満であれば、周囲環境が変化していないものと判定し、記憶部13に記憶している電源切断前の位置情報PS及び方向情報DRを現在の位置情報PS及び方向情報DRとして設定することにより、電源投入後直ちに現在位置を認識することができるので、当該現在位置に応じた地図画面や経路案内画面等を提示することができる。
【0169】
(6)他の実施の形態
なお上述した実施の形態においては、自律速度算出ユニット11が加速度検出信号SA、気圧検出信号SR、角速度φを用いて速度V及び補正角速度φcを算出し出力するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば角速度φを補正することなくそのままナビゲーションユニット12へ供給するようにし、又は3軸方向の加速度を検出して所定の演算処理により速度Vを算出するようにする等、他の種々の手法により速度V及び補正角速度φc(又は角速度φ)を算出し出力するようにしても良く、要はGPS処理部10から位置情報PSを取得し得ないときにナビゲーションユニット12により現在位置を算出できれば良い。さらには、速度V及び補正角速度φc(又は角速度φ)を算出しないことにより、現在位置を推定しないようにして構成を簡略化しても良い。
【0170】
また上述した実施の形態においては、検出情報として位置情報PS及び方向情報DRを記憶しておくようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば位置情報PSのみを記憶しておくようにし、又は自律速度算出ユニット11において、車両100に対するクレードル4の取付角度に起因する加速度センサ14のオフセット補正値を算出し学習する場合に、当該オフセット補正値も検出情報として記憶しておき、電源を再投入した際に周囲環境が変化していなかったときに当該オフセット補正値も復元する等、ナビゲーション装置1の状態を表す他の種々の値を検出情報として記憶し、復元するようにしても良い。
【0171】
さらに上述した実施の形態においては、ナビゲーション装置1がクレードル4に装着されていることを条件に、電源切断前に地磁気値TMを記憶し、また電源を再投入した際に周囲環境の変化を判定するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばナビゲーション装置1がクレードル4に装着されているか否かに拘わらず、電源切断前に地磁気値TMを記憶し、また電源を再投入した際に周囲環境の変化を判定するようにしても良い。
【0172】
さらに上述した実施の形態においては、ナビゲーション装置1が静止状態であることを条件に、電源切断前に地磁気値TMを記憶し、また電源を再投入した際に周囲環境の変化を判定するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばナビゲーション装置1が静止状態であるか否かに拘わらず、電源切断前に地磁気値TMを記憶し、また電源を再投入した際に周囲環境の変化を判定するようにしても良い。
【0173】
さらに上述した実施の形態においては、環境情報復元処理手順RT3(図8)のステップSP36において、電源切断前と電源再投入後とで周囲環境が変化していると判断された際、地磁気値TMを記憶部13から削除するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば環境情報としての地磁気値TMと検出情報としての位置情報PS及び方向情報DRを対応付け、この組み合わせを記憶部13に複数組記憶させておくようにし、電源切断前と電源再投入後とで周囲環境が変化していると判断された際にも削除しないようにしても良い。
【0174】
この場合、仮に電源再投入後に周囲環境が変化しており位置情報PS及び方向情報DRを復元し得なかったとしても、その次に電源が投入された際にはいずれかの周辺環境が一致する可能性があり、このとき一致した周辺環境に対応付けられている位置情報PS及び方向情報DRを復元すればよい。
【0175】
これにより、例えばナビゲーション装置1が車両100のクレードル4から取り外される直前に地磁気値TM、位置情報PS及び方向情報DRを記憶部13に記憶しておき、次に当該ナビゲーション装置1がユーザの家庭内等で電源を投入された際には、地磁気値TMが一致しないために位置情報PS及び方向情報DRを復元しないものの、その次に当該ナビゲーション装置1が車両100のクレードル4に装着された状態で電源が投入されれば、地磁気値TMが一致するために位置情報PS及び方向情報DRを復元でき、直ちに現在位置に応じた地図画面等を提示することができる。
【0176】
さらに上述した実施の形態においては、記憶部13に記憶している地磁気値TMと新たに取得した地磁気値TMとの差分が所定の閾値未満であるか否かを基に周囲環境が変化したか否かを判定するようにした場合について述べたが(検出情報復元処理手順RT3のステップSP34)、本発明はこれに限らず、例えば両者の比が所定の範囲(例えば0.9以上1.1以下等)に含まれるか否かを基に周囲環境が変化したか否かを判定する等、種々の比較手法により地磁気値TMを比較して周囲環境が変化したか否かを判定するようにしても良い。
【0177】
またナビゲーション装置1では、地磁気値TMの差分を算出する際に比較する閾値(検出情報復元処理手順RT3のステップSP34)を敢えて大きめに設定することにより、周囲環境を同一と見なす可能性を高めるようにしても良い。
【0178】
これにより、例えばナビゲーション装置1の電源切断の前後において、実際には車両100が移動されたものの、当該車両100の位置及び方向の変化量が僅かであり、実質的に同一の位置・方向であると見なし得るような場合にも、周囲環境を同一と見なして検出情報を復元することができる。この場合、復元した位置情報PS及び方向情報DRがこの時点における正しい位置情報PS及び方向情報DRに対する誤差を有していたとしても、この誤差は微少となるため、その後GPS処理部10により生成される位置情報PS等により修正することができる。
【0179】
さらに上述した実施の形態においては、3軸方向の地磁気センサ17を用いて3軸方向の地磁気値TMを検出するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば2軸方向や1軸方向の地磁気センサを用いて2軸方向や1軸方向の地磁気値を検出し、これを環境情報として用いるようにしても良い。この場合、3軸方向の地磁気センサ17を用いる場合よりも地磁気値の検出精度が低下するものの、ナビゲーション装置1の構成を簡素化でき、また地磁気値同士の差分算出処理を簡略化することができる。
【0180】
さらに上述した実施の形態においては、静止判定部23において加速度検出信号SAの分散SAvarを基にナビゲーション装置1が静止状態であるか否かを判定するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば角速度φの分散φvarを算出して当該分散φvarを基にナビゲーション装置1が静止状態であるか否かを判定するようにし、或いは加速度検出信号SAの標準偏差を算出して当該標準偏差を基にナビゲーション装置1が静止状態であるか否かを判定をする等、種々の値に対する種々の統計的演算手法を用いるようにしても良い。
【0181】
さらに上述した実施の形態においては、GPSアンテナ2により受信したGPS信号を基にGPS処理部10により位置情報PSを生成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば準天頂衛星システム、グローナス(GLONASS:Global Navigation Satellite System)やガリレオ(GALILEO)等の種々の衛星測位システムを利用し、それぞれの測位信号を受信して測位処理を行い位置情報PSを生成するようにしても良い。
【0182】
さらに上述した実施の形態においては、ポータブル型のナビゲーション装置1に本発明を適用するようにした場合について述べたが、これに限らず、例えばナビゲーション機能を有するPDA(Personal Digital Assistant)、携帯電話機、パーソナルコンピュータ等、車速パルス信号又はこれに類する信号を利用せずにナビゲーション機能を実現する種々の電子機器に本発明を適用するようにしても良い。この場合、当該電子機器は車両100に限らず、船舶や航空機等に搭載されても良い。
【0183】
さらに上述の実施の形態においては、位置検出部としてのGPS処理部10及びナビゲーションユニット12と、地磁気センサとしての地磁気センサ17と、記憶部としての記憶部13と、環境変化判定部としての環境変化判定部31と、初期情報設定部としての初期情報設定部32とによって位置検出装置としてのナビゲーション装置1を構成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の回路構成でなる位置情報算出部と、地磁気センサと、記憶部と、環境変化判定部と、初期情報設定部とによって位置検出装置を構成するようにしても良い。
【0184】
さらに上述の実施の形態においては、位置検出部としてのGPS処理部10及びナビゲーションユニット12と、記憶部としての記憶部13と、環境変化判定部としての環境変化判定部31と、初期情報設定部としての初期情報設定部32と、提示部としてのナビゲーションユニット12及び表示部3によってナビゲーション装置としてのナビゲーション装置1を構成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の回路構成でなる位置情報算出部と、記憶部と、環境変化判定部と、初期情報設定部と、提示部とによってナビゲーション装置を構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0185】
本発明は、車速パルス信号等の信号の供給を受けない種々のナビゲーション装置でも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】ナビゲーション装置及びクレードルの構成を示す略線的斜視図である。
【図2】ナビゲーション装置の回路構成を示すブロック図である。
【図3】高度変化量の算出原理の説明に供する略線図である。
【図4】角速度の補正の説明に供する略線図である。
【図5】速度出力処理手順を示すフローチャートである。
【図6】速度算出処理手順を示すフローチャートである。
【図7】環境情報記憶処理手順を示すフローチャートである。
【図8】検出情報復元処理手順示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0187】
1……ナビゲーション装置、2……GPSアンテナ、3……表示部、4……クレードル、10……GPS処理部、11……自律速度算出ユニット、12……ナビゲーションユニット、13……記憶部、17……地磁気センサ、18……クレードル着脱検出部、23……静止判定部、30……環境情報処理部、31……環境変化判定部、32……初期情報設定部、V……速度、PS……位置情報、DR……方向情報、MT……地磁気値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の測位手段から供給される測位情報を基に現在位置を検出し、当該現在位置に関する検出情報を生成する位置検出部と、
少なくとも1軸方向の地磁気値を検出する地磁気センサと、
上記位置検出部により検出した最新の上記検出情報と共に、上記地磁気センサにより検出した最新の上記地磁気値を記憶する記憶部と、
動作停止状態から起動したときに、上記地磁気センサにより検出した上記地磁気値を基に、前回動作停止したときと比較して周囲の環境が変化したか否かを判定する環境変化判定部と、
上記環境変化判定部により前回動作停止したときから上記周囲の環境が変化していないと判定された場合、上記記憶部に記憶している上記検出情報を初期の検出情報として設定する初期情報設定部と
を具えることを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
上記環境変化判定部は、
上記動作停止状態から起動した際に上記地磁気センサにより検出した上記地磁気値と上記記憶部に記憶している上記地磁気値との差分が所定の閾値未満であるか否かを基に、上記周囲の環境が変化したか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
上記地磁気センサは、
3軸方向の上記地磁気値を検出し、
上記記憶部は、
上記3軸方向の上記地磁気値を記憶し、
上記環境変化判定部は、
上記地磁気センサにより検出した上記3軸方向の地磁気値と、上記記憶部に記憶している上記3軸方向の地磁気値との誤差が所定の閾値未満であるか否かを基に、上記周囲の環境が変化したか否かを判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
上記位置検出部は、
上記現在位置を表す位置情報と上記位置検出装置の進行方向を表す方向情報とを検出し、
上記記憶部は、
上記最新の位置情報及び最新の上記方向情報並びに上記最新の地磁気値を記憶し、
上記初期情報設定部は、
上記環境変化判定部により上記周囲の環境が変化していないと判定された場合、上記記憶部に記憶している上記位置情報及び上記方向情報を初期の位置情報及び初期の方向情報として設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項5】
上記位置検出装置と対応した台座部に対して上記位置検出装置が装着されているか否かを検出する装着検出子と
を具え、
上記記憶部は、
上記装着検出子により上記位置検出装置が上記台座部に装着されていると検出された場合に、上記最新の位置情報と共に上記最新の地磁気値を記憶し、
上記環境変化検出部は、
非動作状態から起動した際に上記装着検出子により上記位置検出装置が上記台座部に装着されていると検出された場合に、上記周囲の環境が変化したか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項6】
上記位置検出装置が静止状態にあるか否かを検出する静止状態検出部と、
を具え、
上記記憶部は、
上記静止状態検出部により上記静止状態にあると検出された場合に、上記最新の位置情報と共に上記最新の地磁気値を記憶し、
上記環境変化検出部は、
動作停止状態から起動した際に上記静止状態検出部により上記静止状態にあると検出された場合に、上記周囲の環境が変化したか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項7】
上記静止状態検出部は、
上記測位情報を基に上記位置検出装置が静止状態にあるか否かを検出する
ことを特徴とする請求項6に記載の位置検出装置。
【請求項8】
加速度を検出する加速度センサと
を具え、
上記静止状態検出部は、
上記加速度センサにより検出した加速度から算出した速度の所定時間範囲における統計的なばらつきの大きさを基に、上記位置検出装置が静止状態にあるか否かを検出する
ことを特徴とする請求項6に記載の位置検出装置。
【請求項9】
所定の測位手段から供給される測位情報を基に現在位置を検出し、当該現在位置に関する検出情報を生成する位置検出ステップと、
上記位置検出ステップにより検出した最新の検出情報と共に、少なくとも1軸方向の地磁気値を検出する地磁気センサにより検出した最新の地磁気値を所定の記憶部に記憶する記憶ステップと、
動作停止状態から起動したときに、上記地磁気センサにより検出した上記地磁気値を基に、前回動作停止したときと比較して周囲の環境が変化したか否かを判定する環境変化判定ステップと、
上記環境変化判定ステップにより前回動作停止したときから上記周囲の環境が変化していないと判定された場合、上記記憶部に記憶している上記検出情報を初期の検出情報として設定する初期情報設定ステップと
を具えることを特徴とする位置検出方法。
【請求項10】
位置検出装置に対して、
所定の測位手段から供給される測位情報を基に現在位置を検出し、当該現在位置に関する検出情報を生成する位置検出ステップと、
上記位置検出ステップにより検出した最新の検出情報と共に、少なくとも1軸方向の地磁気値を検出する地磁気センサにより検出した最新の地磁気値を所定の記憶部に記憶する記憶ステップと、
動作停止状態から起動したときに、上記地磁気センサにより検出した上記地磁気値を基に、前回動作停止したときと比較して周囲の環境が変化したか否かを判定する環境変化判定ステップと、
上記環境変化判定ステップにより前回動作停止したときから上記周囲の環境が変化していないと判定された場合、上記記憶部に記憶している上記検出情報を初期の検出情報として設定する初期情報設定ステップと
を実行させることを特徴とする位置検出プログラム。
【請求項11】
所定の測位手段から供給される測位情報を基に現在位置を検出し、当該現在位置に関する検出情報を生成する位置検出部と、
上記位置検出部により検出した最新の検出情報と共に、少なくとも1軸方向の地磁気値を検出する地磁気センサにより検出した最新の地磁気値を記憶する記憶部と、
動作停止状態から起動したときに、上記地磁気センサにより検出した地磁気値を基に、前回動作停止したときと比較して周囲の環境が変化したか否かを判定する環境変化判定部と、
上記環境変化判定部により前回動作停止したときから上記周囲の環境が変化していないと判定された場合、上記記憶部に記憶している上記検出情報を初期の検出情報として設定する初期情報設定部と、
上記検出情報を基に、所定の地図上における上記現在位置、又は当該地図上において上記現在位置から所定の目的地へ至るための経路を提示する提示部と
を具えることを特徴とするナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−76374(P2008−76374A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289997(P2006−289997)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】