説明

位置計測装置、位置計測方法及びマーカー

【課題】撮像画像における画素より小さな単位により画像中におけるマーカー位置を高精度に特定することを可能とする。
【解決手段】位置計測装置1では、マーカー画像が画像取得部10により取得され、二値化画像生成部11によりマーカー画像に基づき複数の異なる閾値ごとに二値化マーカー画像が生成され、マーカー重心座標算出部12により二値化マーカー画像におけるマーカーが捉えられた画素に基づきマーカー重心座標が算出されるので、当該二値化マーカー画像におけるマーカーの位置が特定される。また、1つのマーカーが捉えられたマーカー画像に基づき、画素の階調値に関する閾値を変えて複数の異なる二値化マーカー画像が生成され、複数の二値化マーカー画像ごとにマーカー重心座標が算出され、マーカー座標算出部13により複数のマーカー重心座標の重心の座標がマーカー座標として算出・出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置計測装置、位置計測方法及び位置計測に用いるためのマーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
対象物から離れた場所において当該対象物の位置を計測する方法として、例えばCCDやCMOSといった撮像素子を有するカメラにより対象物を捉えた画像により、対象物の位置を特定する方法が挙げられる。三角測量の原理に基づく、いわゆるステレオ法では、2台のカメラを用いてマーカーが装着された対象物を撮像する。カメラにより得られる画像は、3次元空間を2次元に投影したものであるので、撮像された画像中におけるマーカーの位置に基づき、カメラの撮像素子の位置とマーカーの位置とを結ぶ視線を求めることができる。そして、両カメラの視線の交点をマーカーの3次元空間における位置として特定することができる。
【0003】
一方、カメラの撮像素子における受光素子が一定の大きさを有することに起因して、受光素子が検出する反射光の撮像対象物における反射位置が離散的となるので、画像中における対象物の位置計測に際して誤差が生じる。以下、この誤差を量子化誤差という。
【0004】
このような量子化誤差を軽減する技術として、特許文献1には、所定の間隔で配置された3台以上のカメラのうち2台のカメラを異なる組合せで選定して、各組合せにおいて対象物までの距離を算出し、その平均値をとる距離計測方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−38718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
位置計測の精度向上のためには、撮像画像中における対象物(例えば、マーカー)の位置を特定する精度を向上させる必要がある。また、上述した特許文献1記載の距離計測方法は、量子化誤差を軽減する技術として有効であるが、更なる量子化誤差の軽減のために、撮像画像中における測定対象の位置を特定する精度の向上が望まれる。
【0007】
高解像度のカメラを使用することにより精度向上を図ることは可能であるが、高速で移動する測定対象物を撮影するための高速度撮影カメラでは高解像度化が困難である。また、移動中の測定対象物を撮像するためには、測定の安全のために対象物の移動軌跡から一定以上離れた場所にカメラを設置しなければならない。かかる状況では、位置測定の精度向上のために十分な解像度を有する撮像画像を得ることはできない。このため、位置測定のために測定対象物に付されたマーカーは、撮像画像中では、複数の画素にわたってモザイク状に表される。
【0008】
かかる事情に鑑みた上で位置測定の精度向上を図るためには、撮像画像において一定の大きさを有すると共にモザイク状に表されたマーカーの領域のうち、マーカーの位置を特定するための代表点を適切に定め、当該代表点の位置を、撮像画像を構成する最小単位である画素の大きさよりも小さな単位で求めることにより、マーカーの位置を特定する必要がある。
【0009】
そこで、本発明は、撮像画像中におけるマーカー位置を撮像画像における画素より小さな単位により高精度に特定することにより、量子化誤差を低減可能な位置計測装置、位置計測方法及び位置計測に用いるためのマーカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の位置計測装置は、マーカーを捉えた画像であって、階調値を有する複数の画素からなる画像であるマーカー画像におけるマーカーの位置を、画素の大きさより小さい最小単位を有する座標系により特定する位置計測装置であって、マーカー画像を取得する画像取得手段と、マーカー画像における画素の階調値を所定の閾値で二値化した画像である二値化マーカー画像を、複数の異なる閾値ごとに生成する二値化画像生成手段と、二値化マーカー画像においてマーカーが捉えられた画素に基づき、マーカーの重心位置の座標であるマーカー重心座標を二値化マーカー画像ごとに算出するマーカー重心座標算出手段と、複数のマーカー重心座標の重心の座標をマーカー座標として算出するマーカー座標算出手段と、マーカー座標算出手段により算出されたマーカー座標をマーカーの位置として出力するマーカー座標出力手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明の位置計測方法は、マーカーを捉えた画像であって、階調値を有する複数の画素からなる画像であるマーカー画像におけるマーカーの位置を、画素の大きさより小さい最小単位を有する座標系により特定する位置計測装置における位置計測方法であって、マーカー画像を取得する画像取得ステップと、マーカー画像における画素の階調値を所定の閾値で二値化した画像である二値化マーカー画像を、複数の異なる閾値ごとに生成する二値化画像生成ステップと、二値化マーカー画像においてマーカーが捉えられた画素に基づき、マーカーの重心位置の座標であるマーカー重心座標を二値化マーカー画像ごとに算出するマーカー重心座標算出ステップと、複数のマーカー重心座標の重心の座標をマーカー座標として算出するマーカー座標算出ステップと、マーカー座標算出ステップにおいて算出されたマーカー座標をマーカーの位置として出力するマーカー座標出力ステップとを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の位置計測装置及び位置計測方法によれば、二値化マーカー画像におけるマーカーが捉えられた画素に基づきマーカー重心座標が算出されるので、二値化マーカー画像におけるマーカーの代表点が適切に定められると共に、当該二値化マーカー画像におけるマーカーの位置が、マーカー画像の画素の大きさより小さな単位により特定される。また、1つのマーカーが捉えられたマーカー画像に基づき、画素の階調値に関する閾値を変えて複数の異なる二値化マーカー画像が生成され、複数の二値化マーカー画像ごとにマーカー重心座標が算出され、算出された複数のマーカー重心座標の重心の座標がマーカー座標として算出・出力されるので、マーカー画像中におけるマーカーの位置を高精度に特定することが可能となる。
【0013】
なお、本発明におけるマーカーは、意図的に位置測定の対象物に付す物に限られず、対象物の構成として予め含まれている物も含む。
【0014】
また、本発明の位置計測装置では、マーカー画像は、階調値としてグレイスケール値を有し、二値化画像生成手段は、グレイスケール値に関する閾値に基づき二値化マーカー画像を生成することを特徴とする。
【0015】
この場合には、マーカー画像の二値化処理が容易であるので、好適に二値化マーカー画像が生成される。
【0016】
また、本発明の位置計測装置では、マーカー座標算出手段は、二値化マーカー画像においてマーカーが捉えられた画素の数に基づき、当該二値化マーカー画像に基づき算出されたマーカー重心座標に重み付けを行い、重み付けされた複数のマーカー重心座標に基づきマーカー座標を算出することを特徴とする。
【0017】
マーカーを捉えた画素をより多く含む二値化マーカー画像は、マーカー画像におけるマーカーの位置をより高精度に反映していると考えられる。従って、複数のマーカー重心座標の重心を算出する際に、二値化マーカー画像においてマーカーが捉えられた画素数を重み付けに用いることにより、算出されるマーカー座標の精度向上が可能となる。
【0018】
本発明のマーカーは、対象物に装着され撮像されることにより、当該対象物の位置計測に用いるためのマーカーであって、所定の階調により表される単一色が付された一定範囲の所定色領域と、所定色領域から遠ざかるに従って連続的又は離散的に階調が増加方向又は減少方向に変化するように色が付された階調変化領域とを有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の位置計測装置では、マーカーは、所定の階調により表される単一色が付された一定範囲の所定色領域と、所定色領域から遠ざかるに従って連続的又は離散的に階調が増加又は減少するように色が付された階調変化領域とを有することが好ましい。
【0020】
上記マーカーは、所定色領域から遠ざかるに従って階調が増加方向又は減少方向に変化する階調変化領域を有するので、1つのマーカーが捉えられたマーカー画像から閾値を変更しながら複数の二値化マーカー画像を生成した場合において、二値化マーカー画像においてマーカーが捉えられた画素が複数の領域に分離する可能性が低い。従って、算出されるマーカー座標の精度向上が可能となる。
【発明の効果】
【0021】
撮像画像における画素より小さな単位でマーカー位置を高精度に特定することにより、量子化誤差を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る位置計測装置の一実施形態であり、位置計測装置を含むシステム及び位置測定の対象物であるバイクを示す図である。
【図2】位置計測の対象物に装着され撮像されることにより、当該対象物の位置計測に用いるためのマーカーの一例、及び当該マーカーを捉えた画像であるマーカー画像におけるマーカーに起因するグレイスケール値を有する画素部分を示す図である。
【図3】位置計測装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図4】マーカー画像のグレイスケール値を複数の異なる閾値により二値化して生成された二値化マーカー画像の例を示す図である。
【図5】マーカー重心座標の算出を説明するための図である。
【図6】本発明に係る位置計測方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】マーカー画像から生成される二値化マーカー画像の一例、及び当該マーカーを捉えた画像であるマーカー画像におけるマーカーに起因するグレイスケール値を有する画素部分を示す図である。
【図8】本発明に係るマーカーの一例、及び当該マーカーを捉えた画像であるマーカー画像におけるマーカーに起因するグレイスケール値を有する画素部分を示す図である。
【図9】マーカー画像から生成される二値化マーカー画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の好適な実施形態について図面を参照して説明する。なお、可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0024】
図1は、位置測定対象物及び当該位置計測対象物の位置を測定するためのシステムの一例を示す図である。図1に示されるシステムは、位置計測対象物Bの位置を、いわゆるステレオ法により測定するシステムであり、位置計測装置1、カメラ2A,2B、表示部3及び記憶部4を備える。
【0025】
カメラ2A,2Bは、例えばCCDやCMOSといった撮像素子を有し、位置計測対象物Bを捉えた撮像画像を位置計測装置1に送出する。表示部3は、カメラ2A,2Bにより撮像された画像データや位置計測装置1によって算出された結果等を表示するディスプレイ等により構成される。記憶部4は、カメラ2A,2Bにより撮像された画像データや位置計測装置1によって算出された結果等を記憶するための記憶媒体であり、例えばHDDやメモリカード等により構成される。
【0026】
位置計測対象物Bにおける所定位置には、位置測定のためのマーカーMが装着されている。図2(a)は、マーカーの一例を示す図である。図2(a)に示される例では、マーカーMは、直径数cmから十数cm程度の円形状を有し、黒色が付されている。なお、マーカーの形状、大きさ及び色は、図2(a)に示される例に限定されない。
【0027】
本実施形態の位置測定では、図1に示されるように、2台のカメラ2A,2Bは、マーカーが装着された位置計測対象物Bを撮像する。カメラにより得られる画像は、3次元空間を2次元に投影したものであるので、撮像された画像中におけるマーカーMの位置に基づき、カメラの撮像素子の位置とマーカーMの位置とを結ぶ視線を求めることができる。そして、両カメラの視線の交点をマーカーの3次元空間における位置として特定することができる。従って、3次元空間におけるマーカーの位置計測の精度向上のためには、撮像画像中におけるマーカーの位置を特定する精度を向上させる必要がある。
【0028】
カメラ2により撮像された画像は、撮像素子における受光素子の配列に対応した多数の画素により構成されている。このため、マーカーMを捉えた画像であるマーカー画像Pにおけるマーカーに起因する階調値を有する画素部分は、例えば図2(b)に示されるようなモザイク状に表される。また、本実施形態では、各画素はそれぞれ、グレイスケール値を有する。かかる画素により構成されるマーカー画像を取得することにより、マーカー画像の二値化処理が容易となる。これにより、マーカー画像を二値化した画像が好適に生成される。なお、本実施形態におけるマーカー画像の各画素はグレイスケール値を有することとしたが、これには限られず、マーカー画像の各画素が何らかの階調値を有していれば、本発明を実施可能である。
【0029】
続いて、位置計測装置1の機能を説明する。図3は、位置計測装置1の機能的構成を示すブロック図である。位置計測装置1は、マーカー画像PにおけるマーカーMの位置を、マーカー画像Pの画素の大きさより小さい最小単位を有する2次元座標系により特定する装置であり、各種演算処理を実施可能なコンピュータ等により構成される。位置計測装置1は、画像取得部10(画像取得手段)、二値化画像生成部11(二値化画像生成手段)、マーカー重心座標算出部12(マーカー重心座標算出手段)、マーカー座標算出部13(マーカー座標算出手段)、及びマーカー座標出力部14(マーカー座標出力手段)を備える。
【0030】
なお、本実施形態では、複数のカメラを用いたステレオ法による位置計測に本発明に係る位置計測装置を適用した例を説明しているが(図1参照)、これには限定されない。本発明に係る位置計測装置は、マーカー画像におけるマーカーの位置を、マーカー画像の画素の大きさより小さい最小単位を有する座標系により特定する装置であるので、1台のカメラにより撮像されたマーカー画像におけるマーカーの位置を特定する装置としてシステムに適用されることとしてもよい。引き続き、図3を参照し、位置計測装置1の各機能部について詳細に説明する。
【0031】
画像取得部10は、カメラ2からマーカー画像Pを取得する部分である。画像取得部10は、マーカー画像Pを二値化画像生成部11に送出する。
【0032】
二値化画像生成部11は、マーカー画像Pにおける画素の階調値を所定の閾値で二値化した画像である二値化マーカー画像を、複数の異なる閾値ごとに生成する部分である。図4を参照して、二値化マーカー画像の生成について詳細に説明する。
【0033】
図4は、画像取得部10から送出されたマーカー画像P、及びマーカー画像Pに基づき生成された複数の二値化マーカー画像Tを示す図である。マーカー画像Pの各画素は、マーカーMに起因する様々なグレイスケール値を有する。
【0034】
図4に示される例では、二値化画像生成部11は、グレイスケール値に関する7つの閾値を設定し、それぞれの閾値ごとに二値化マーカー画像T〜Tを生成する。より具体的には、二値化画像生成部11は、マーカー画像Pにおける各画素のグレイスケール値が閾値未満である場合には、当該画素のグレイスケール値を「0」(黒色)とし、閾値以上である場合には当該画素のグレイスケール値を最大値(白色)とすることにより、マーカー画像の各画素を二値化する。二値化マーカー画像では、グレイスケール値が「0」とされた画素が、以後の処理においてマーカーが捉えられた画素として扱われる。
【0035】
また、二値化画像生成部11は、例えば、グレイスケール値における最小値から最大値までの幅を所定数に等分に分割し、その分割点の値をグレイスケール値に関する閾値として採用することができる。二値化マーカー画像を生成するための閾値には、任意の複数の値を設定することが可能である。
【0036】
マーカー重心座標算出部12は、二値化マーカー画像Tにおいてマーカーが捉えられた画素の座標に基づき、マーカーの重心位置の座標であるマーカー重心座標を二値化マーカー画像Tごとに算出する部分である。図5を参照して、マーカー重心座標の算出処理の例を具体的に説明する。
【0037】
図5に示される二値化マーカー画像Tは、マーカーが捉えられた3画素を有している。マーカーが捉えられた3画素の画素座標はそれぞれ、(x+1,y+1)、(x+2,y+1)、(x+2,y+2)である(x及びyは整数)。従って、二値化マーカー画像Tのマーカー重心座標(Xg6,Yg6)は、式(1)及び式(2)により算出される。
g6=((x+1)+(x+2)+(x+2))/3=x+5/3 …(1)
g6=((y+1)+(y+1)+(y+2))/3=y+4/3 …(2)
【0038】
画素座標が整数で表されるのに対して、マーカー重心座標は、式(1)及び式(2)に示されるように、分数又は小数により表されることとなる。従って、マーカー重心座標は、整数を最小単位とする画素座標よりも小さな最小単位を有する。即ち、マーカー重心座標は、画素の大きさより小さい単位により構成される座標系で特定されることとなる。
【0039】
図5に示す例では、二値化マーカー画像Tに基づくマーカー重心座標の算出処理を説明したが、マーカー重心座標算出部12は、二値化画像生成部11により生成された全ての二値化マーカー画像T〜Tのそれぞれに基づき、マーカー重心座標を算出する。これにより、1つのマーカーMを捉えたマーカー画像Pに基づき、複数のマーカー重心座標を得ることが可能となる。
【0040】
本発明の発明者は、多数のマーカーが装着された位置計測対象物の画像を取得し、画像中に捉えられたマーカーの重心位置の座標を算出し、算出された重心位置の座標を位置計測対象物の位置特定に用いると、1つのマーカーを用いた位置計測と比較して精度が著しく向上することを知見として得た。しかしながら、この方法では、複数のマーカーを位置計測対象物における複数の点に装着することとなるので、位置測定対象物における1点の位置及びその位置の移動を計測することは不可能である。
【0041】
本発明では、1つのマーカーMを捉えたマーカー画像Pに基づき複数のマーカー重心座標が算出され、算出された複数のマーカー重心座標に基づき位置計測対象物の位置が特定されるので、位置計測の精度が向上すると共に、位置計測対象物における1点の位置計測が可能となる。
【0042】
マーカー座標算出部13は、マーカー重心座標算出部12により算出された複数のマーカー重心座標の重心の座標をマーカー座標として算出する部分である。マーカー座標算出部13は、算出されたマーカー座標をマーカー座標出力部14に送出する。例えば、図4に示されるように、7つの二値化マーカー画像T〜Tが二値化画像生成部11により生成された場合には、二値化マーカー画像T〜Tのそれぞれに基づき7つのマーカー重心座標がマーカー重心座標算出部12により算出されるので、マーカー座標算出部13は、マーカー重心座標算出部12により算出された7つマーカー重心座標の重心の座標をマーカー座標として算出する。
【0043】
また、マーカー座標算出部13は、二値化マーカー画像Tにおいてマーカーが捉えられた画素の数に基づき、当該二値化マーカー画像Tに基づき算出されたマーカー重心座標に重み付けを行い、重み付けされた複数のマーカー重心座標に基づきマーカー座標を算出することとしてもよい。図4に示される例では、二値化マーカー画像T〜Tにおいてマーカーが捉えられた画素の数はそれぞれ、14、12、9、7、5、3、1であるので、マーカー座標算出部13は、これらの数を用いて各々のマーカー重心座標に重み付けを行い、重み付けされたマーカー重心座標に基づきマーカー座標を算出することができる。
【0044】
マーカーMを捉えた画素をより多く含む二値化マーカー画像Tは、マーカー画像PにおけるマーカーMの位置をより高精度に反映していると考えられる。従って、複数のマーカー重心座標の重心を算出する際に、二値化マーカー画像Tにおいてマーカーが捉えられた画素数を重み付けに用いることにより、算出されるマーカー座標の精度向上が可能となる。
【0045】
マーカー座標出力部14は、マーカー座標算出部13により算出されたマーカー座標をマーカーの位置として出力する部分である。マーカー座標出力部14は、例えば、表示部3にマーカー座標を表示させたり、記憶部4にマーカー座標を記憶させたりすることができる。
【0046】
続いて、図6を参照して、本実施形態の位置計測方法における位置計測装置1の動作について説明する。図6は、位置計測装置1において実施される処理内容を示すフローチャートである。
【0047】
まず、ステップS1において、画像取得部10は、カメラ2からマーカー画像Pを取得すると共に、取得したマーカー画像Pを二値化画像生成部11に送出する。
【0048】
ステップS2において、二値化画像生成部11は、グレイスケール値に関する所定の閾値を設定する。ステップ2における閾値の設定は、例えば、図4における二値化マーカー画像T〜Tのうちのいずれか1つの二値化マーカー画像Tを生成するためである。
【0049】
ステップS3において、二値化画像生成部11は、ステップS2で設定された閾値を用いて、マーカー画像Pから二値化マーカー画像Tを生成する。
【0050】
ステップS4において、マーカー重心座標算出部12は、二値化マーカー画像Tにおいてマーカーが捉えられた画素の座標に基づき、マーカー重心座標を算出する。さらに、マーカー重心座標算出部12は、算出したマーカー重心座標を記憶部4に記憶させる。
【0051】
ステップS5において、位置計測装置1における制御部(図示せず)は、予め設定された所定のループ回数を超えたか否かを判断する。ループ回数は、二値化マーカー画像Tを生成するための閾値を変更する回数である。即ち、ステップS3〜S5の処理が実施された回数は、二値化画像生成部11により生成される二値化マーカー画像Tの数に相当する。所定のループ回数を超えたと判断された場合には処理手順はステップS7に進められ、所定のループ回数を超えたと判断されなかった場合には処理手順はステップS6に進められる。
【0052】
ステップS6では、二値化画像生成部11は、グレイスケール値に関する所定の閾値を予め設定された値に変更する。この後に、処理手順はステップS3に戻る。グレイスケール値に関する所定の閾値が変更されながら、ステップS3〜S4の処理が実施されることにより、例えば、図4における複数の二値化マーカー画像Tが生成されると共に、二値化マーカー画像Tごとのマーカー重心座標が算出される。
【0053】
ステップS7において、マーカー座標算出部13は、ステップS4でマーカー重心座標算出部12により算出された複数のマーカー重心座標の重心の座標をマーカー座標として算出する。
【0054】
そして、ステップS8において、マーカー座標出力部14は、マーカー座標算出部13により算出されたマーカー座標を出力する。こうして、本実施形態の処理を終了する。
【0055】
(マーカーについて)
次に、本実施形態において、位置計測対象物Bに付されるマーカーMについて説明する。図2(a)に示されるような一様な黒色が付された円形状のマーカーMをカメラ2により撮像した場合であっても、マーカー画像Pにおけるマーカーを捉えた各画素は、図2(b)に示されるように、様々なグレイスケール値を持つ。このようなマーカー画像Pの濃淡は、撮像時の光源の位置や、マーカーMの表面における光の反射状態のむら等、様々な事象に起因して発生する。
【0056】
かかるマーカー画像Pに基づき、ある閾値により二値化マーカー画像Tを生成すると、図7に示されるような二値化マーカー画像TA1が生成される場合がある。二値化マーカー画像TA1では、二値化処理の際にグレイスケール値が「0」とされた画素の領域が分離している。かかる二値化マーカー画像TA1に基づいてマーカー重心座標を算出することは可能ではあるものの、算出されたマーカー重心座標がマーカーの真の重心位置を指し示す精度は低い。
【0057】
マーカー重心座標の算出精度向上のために、本実施形態では、図8(a)に示されるようなマーカーMを位置計測に用いることができる。マーカーMは、所定の階調により表される単一色が付された一定範囲の所定色領域Cと、所定色領域Cから遠ざかるに従って連続的又は離散的に階調が増加又は減少するように色が付された階調変化領域Cとを有する。具体的には、マーカーMは、黒色が付された円形状の所定色領域Cを有する。また、階調変化領域Cは、所定色領域Cと同一の中心位置を有する複数の円環状の領域を含む。複数の円環状の領域の各々のグレイスケール値は、所定色領域Cから遠ざかるにつれて段階的に大きくなっている。マーカーMをカメラ2により撮像した画像は、例えば図8(b)に示されるマーカー画像Pのようになる。そして、マーカー画像Pに基づき生成される二値化マーカー画像は、図9の二値化マーカー画像TB1,TB2に例示される。図9の二値化マーカー画像TB1,TB2に示されるように、二値化処理の際にグレイスケール値が「0」とされた画素の領域は分離されない。
【0058】
マーカーMは、意図的に変えられたグレイスケール値を有する領域である階調変化領域Cを有するので、1つのマーカーが捉えられたマーカー画像から閾値を変更しながら複数の二値化マーカー画像を生成した場合において、二値化マーカー画像においてマーカーが捉えられた画素が複数の領域に分離する可能性が低い。従って、算出されるマーカー座標の精度向上が可能となる。
【0059】
なお、本実施形態のマーカーMは、一例として、黒色の所定色領域C及びグレイスケール値が段階的に変化する階調変化領域Cを有することとしたが、このような例には限定されない。例えば、マーカーMは、複数の次元の階調値がそれぞれ連続的又は離散的に変化するように色が付された階調変化領域Cを有することとしてもよい。
【0060】
以上説明した本実施形態の位置計測装置1及び位置計測方法によれば、二値化マーカー画像Tにおけるマーカーが捉えられた画素に基づきマーカー重心座標が算出されるので、二値化マーカー画像Tにおけるマーカーの代表点が適切に定められると共に、当該二値化マーカー画像Tにおけるマーカーの位置が、マーカー画像の画素の大きさより小さな単位により特定される。また、1つのマーカーが捉えられたマーカー画像に基づき、画素のグレイスケール値に関する閾値を変えて複数の異なる二値化マーカー画像Tが生成され、複数の二値化マーカー画像Tごとにマーカー重心座標が算出され、算出された複数のマーカー重心座標の重心の座標がマーカー座標として算出・出力されるので、マーカー画像中におけるマーカーの位置を高精度に特定することが可能となる。
【0061】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1…位置計測装置、2,2A,2B…カメラ、3…表示部、4…記憶部、10…画像取得部、11…二値化画像生成部、12…マーカー重心座標算出部、13…マーカー座標算出部、14…マーカー座標出力部、B…位置計測対象物、C…所定色領域、C…階調変化領域、M,M,M…マーカー、P,P,P…マーカー画像、T,T-T,TA1,TB1,TB2…二値化マーカー画像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マーカーを捉えた画像であって、階調値を有する複数の画素からなる画像であるマーカー画像における前記マーカーの位置を、前記画素の大きさより小さい最小単位を有する座標系により特定する位置計測装置であって、
前記マーカー画像を取得する画像取得手段と、
前記マーカー画像における前記画素の前記階調値を所定の閾値で二値化した画像である二値化マーカー画像を、複数の異なる閾値ごとに生成する二値化画像生成手段と、
前記二値化マーカー画像において前記マーカーが捉えられた画素に基づき、前記マーカーの重心位置の座標であるマーカー重心座標を前記二値化マーカー画像ごとに算出するマーカー重心座標算出手段と、
複数の前記マーカー重心座標の重心の座標をマーカー座標として算出するマーカー座標算出手段と、
前記マーカー座標算出手段により算出された前記マーカー座標を前記マーカーの位置として出力するマーカー座標出力手段と
を備えることを特徴とする位置計測装置。
【請求項2】
前記マーカー画像は、前記階調値としてグレイスケール値を有し、
前記二値化画像生成手段は、グレイスケール値に関する閾値に基づき前記二値化マーカー画像を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の位置計測装置。
【請求項3】
前記マーカー座標算出手段は、前記二値化マーカー画像において前記マーカーが捉えられた画素の数に基づき、当該二値化マーカー画像に基づき算出された前記マーカー重心座標に重み付けを行い、重み付けされた複数の前記マーカー重心座標に基づき前記マーカー座標を算出する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の位置計測装置。
【請求項4】
前記マーカーは、
所定の階調により表される単一色が付された一定範囲の所定色領域と、
前記所定色領域から遠ざかるに従って連続的又は離散的に前記階調が増加又は減少するように色が付された階調変化領域と
を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の位置計測装置。
【請求項5】
マーカーを捉えた画像であって、階調値を有する複数の画素からなる画像であるマーカー画像における前記マーカーの位置を、前記画素の大きさより小さい最小単位を有する座標系により特定する位置計測装置における位置計測方法であって、
前記マーカー画像を取得する画像取得ステップと、
前記マーカー画像における前記画素の前記階調値を所定の閾値で二値化した画像である二値化マーカー画像を、複数の異なる閾値ごとに生成する二値化画像生成ステップと、
前記二値化マーカー画像において前記マーカーが捉えられた画素に基づき、前記マーカーの重心位置の座標であるマーカー重心座標を前記二値化マーカー画像ごとに算出するマーカー重心座標算出ステップと、
複数の前記マーカー重心座標の重心の座標をマーカー座標として算出するマーカー座標算出ステップと、
前記マーカー座標算出ステップにおいて算出された前記マーカー座標を前記マーカーの位置として出力するマーカー座標出力ステップと
を有することを特徴とする位置計測方法。
【請求項6】
対象物に装着され撮像されることにより、当該対象物の位置計測に用いるためのマーカーであって、
所定の階調により表される単一色が付された一定範囲の所定色領域と、
前記所定色領域から遠ざかるに従って連続的又は離散的に前記階調が増加方向又は減少方向に変化するように色が付された階調変化領域と
を有することを特徴とするマーカー。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図6】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−98207(P2012−98207A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247492(P2010−247492)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】