説明

低κ誘電体付与のためのシロキサンエポキシポリマー

低κ誘電性フィルムとしてシロキサンエポキシポリマーを用いる半導体デバイスを開示する。前記デバイスは、半導体基板、1種以上の金属層又は構造及び1種以上の誘電性フィルムを含み、そこでデバイス中の少なくとも1種の誘電性フィルムがシロキサンエポキシポリマーである。シロキサンエポキシポリマーの使用は有利である。理由の一つは、ポリマーがよく金属に接着し、1.8という低い誘電定数を有するためである。従って、開示した半導体デバイスは、従来の誘電体材料を用いて製造したデバイスよりもはるかに良好な性能を提供する。更に、シロキサンエポキシポリマー誘電体は低温で十分に硬化可能であり、低い漏洩電流を示し、400℃を超える温度で安定した状態を保つ。そのことが前記誘電体の半導体産業での使用を特に魅力的にする。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスに用いる誘電体材料に関し、更に詳細には、前記デバイスにおいて低κ誘電体材料(low-κ dielectric material)として有用なシロキサンエポキシポリマーに関する。
【発明の背景】
【0002】
半導体回路の速度は、相互接続システムの抵抗(R)とキャパシタンス(C)に反比例する。R×Cの積の値が高くなるほど、ますます回路の速度が制限される。半導体デバイスの相次ぐダウンサイジングとともに、高い抵抗−キャパシタンス(RC)遅延が、IC繰り返し速度を更に増加する際の主要な障害となっている。しかしながら、金属相互接続に用いる誘電体層の全誘電定数(κ値)を低下させることにより、チップの抵抗キャパシタンス(RC)を低下させ、その性能を向上させることが見いだされた。こうして、低κ層間絶縁材料(interlayer dielectric material)に対する本質的必要性が発展してきた。同時に、熱経費は、低温で加工できる低κ誘電体材料の要件につながり、半導体産業にとって関心事である。加えて、加工した誘電性フィルムの400℃を超える高温安定性は、回路の信頼性を保証するために必要である。
【0003】
現在入手可能な低κ高分子誘電体材料は、高い加工温度>350℃を必要とするので、半導体産業の要求を満たすのに最適ではない。例えば、Dow Chemical CompanyのSiLK(商標名)は、主鎖にフェニレン基とカルボニル基を含有する芳香族炭化水素ポリマーであるが、溶媒を除去するために320℃での乾燥工程を必要とし、約400℃の温度での最終硬化工程を必要とする。
【0004】
これらの理由によって、半導体産業には、低温度で十分に加工することができるが高温度で安定した状態を保つ低κ誘電体材料に対する本質的必要性が存在する。
【発明の要約】
【0005】
本発明は、前記必要性を満たすものであり、そして、半導体デバイスであって、特に金属化平面間の層間絶縁膜として、そこに新規な低κ誘電性高分子材料を使用する半導体デバイスを思いがけなく提供するものである。特に、ここに記載するシロキサンエポキシポリマーは、3よりも低い誘電定数(κ値)を有し、特定の加工条件下では1.8という低い値になる。従って、前記材料を使用するデバイスは、例えば、従来の誘電体材料(例えば、SiO)を使用して製造したデバイスよりもずっと良い性能を提供することができる。有利なことに、シロキサンエポキシポリマー材料は、155℃もの低い温度で十分に硬化することができるが、400℃を超える高い半導体デバイス加工温度においてその安定性と誘電特性とを保持している。
【0006】
従って、本発明は、半導体基板と、その基板上に配置する1種以上の金属層又は構造と、1種以上の誘電性フィルムとを含む半導体デバイスであって、少なくとも1種の誘電性フィルムがシロキサンエポキシポリマーを含む半導体デバイスに関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の模範的なシロキサンエポキシポリマー誘電体の実施態様に対する様々な温度での電流密度対電界(J対E)のグラフである。
【0008】
【図2】本発明の模範的なシロキサンエポキシポリマー誘電体の実施態様に対する電流密度対時間(J対t)のグラフである。この図は漏洩電流(leakage current)特性が時間とともに低下しないことを表している。
【0009】
【図3】模範的なシロキサンエポキシポリマー誘電体の実施態様及び隣接する銅金属層を含むMISコンデンサーに対するキャパシタンス対電圧(C対V)のグラフである。ここで、コンデンサーを、150℃の、そして、0.5MV/cmのバイアス熱応力(Bias Temperature Stress;BTS)条件に、順々に10、20、30、40、及び100分間さらした。
【0010】
【図4】模範的なシロキサンエポキシポリマー誘電体の実施態様及び隣接する銅金属層を含むMISコンデンサー上の三角電圧掃引(Triangular Voltage Sweep;TVS)データを表すキャパシタンス対電圧(C対V)のグラフである。ここで、コンデンサーを、150℃の、そして、0.5MV/cmのバイアス熱応力(BTS)条件に、別々に10、20、30、40、及び100分間さらした。
【0011】
【図5】本発明による多層のシロキサンエポキシポリマー誘電体に対する電流密度対電界(J対E)のグラフである。
【0012】
【図6】層間絶縁膜として少なくとも1種のシロキサンエポキシポリマーを含む半導体金属相互接続デバイスを含んでいる本発明の実施態様の一部の断面図である。
【発明の詳細な説明】
【0013】
本発明は、半導体デバイスにおける低κ誘電体材料としてのシロキサンエポキシポリマーの使用に関する。前記ポリマーは、金属(例えば、銅)と良好な接着性を示し、そして、特定の加工条件に対して1.8という低い誘電定数を有する。前記ポリマーは、熱的及び電気的バイアスの標準的試験条件にさらした場合、その誘電特性について優れた信頼性を示す。更に、ここに記載した低κ誘電性ポリマーは、低い加工温度を必要とし、低い漏洩電流を示し、そして、400℃を超える温度で安定した状態を保つ。そのことが前記ポリマーの半導体産業での使用を特に魅力的にする。
【0014】
ここに使用する用語「低κ」材料は、真空の誘電定数の値を1とした値に基づいて、3.9未満の誘電定数を有する材料を意味する。
【0015】
本発明の半導体デバイスは、半導体基板と、その基板上の1種以上の金属層又は構造と、1種以上の誘電性フィルムとを含み、ここで少なくとも1種の誘電性フィルムがシロキサンエポキシポリマーを含むものである。更に、典型的な集積回路構造は、互いに上に積み重なった8種以上の相互接続(金属)層を有することができることに注意されたい。各金属層の間に置かれるのは誘電体層である。従って、本発明はこれら多層構造も包含し、そこでは少なくとも1種のシロキサンエポキシポリマー誘電体層が隣接する金属相互接続層を離すために使用される。
【0016】
ここに使用する用語「半導体基板」は、半導体デバイスにおいて有用であると知られている基板を指す。即ち、半導体構成要素の製造において使用することを意図している半導体デバイスであり、例えば、以下に限定されないが、焦点面アレイ、光電子デバイス、光起電力電池、光学素子、トランジスタ様デバイス、三次元デバイス、シリコン・オン・インシュレータ・デバイス、超格子デバイスなどを挙げることができる。半導体基板は好ましくは1層以上の配線層を有するウエハーステージにある集積回路も、任意の金属配線の付与前の集積回路も含む。更に、半導体基板は、半導体デバイス製造に使用する基礎ウエハーと同じ位簡単なものであることができる。現時点で使用する最も一般的なこの種の基板は、ケイ素及びヒ化ガリウムである。
【0017】
ここに記載する低κシロキサンエポキシポリマーフィルムは、任意の金属化の付与に先立って付与することができる。代わりに、前記フィルムは、集積回路の形成を完成するために、金属層を覆って、又は酸化物若しくは窒化物層などを覆って、層間絶縁膜として、又は表面不動態化コーティングとして付与することができる。
【0018】
本発明の半導体デバイスに使用するのに適した例示的な低κシリコンエポキシポリマーは、PC2000、PC2003、PC2000HVとしてPolyset Companyから市販品で入手可能なポリマーを含む。これら各ポリマーは、次の一般式(I):
【化1】

(式中、mは5〜50の整数である)
を有する。これらポリマーの分子量は、約1000〜約10,000g/moleの範囲にある。
【0019】
低κ誘電体材料として使用するのに適した別のシロキサンエポキシポリマーは、次の一般式(II):
【化2】

(式中、Xモノマー単位及びYモノマー単位は、ポリマー鎖にランダムに分布することができる)
を有するランダム及びブロック共重合体を含む。あるいは、繰り返し単位と同じように、X及びYはそれぞれ、ブロック構造中に一緒に存在することができる。一般式(II)のポリマーは、思いがけなく3未満の低い誘電定数を有するので有利である。
【0020】
好ましくは、一般式(II)において、R及びRはそれぞれ独立に、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクチル基、及びフェニル基であり、Rはメチル基又はエチル基である。加えて、pは2〜50の整数であり、qは0又は1〜50の整数である。最も好ましくは、ポリマー鎖末端の末端残基にあるRはメチル基であり、結果的に一般式(IIA):
【化3】

を有するポリマーとなる。
【0021】
一般式(IIA)を有する例示的なポリマーは、PolysetのPC2010、PC2021、PC2026、及びPC2031を含むが、それらに限定されない。PC2010において、一般式(IIA)のR及びRは、両方ともフェニル基であり、p対qの比は約8:1〜約1:1の範囲にあるが、通常は約4:1〜約2:1の範囲にある。PC2010の分子量は、約5000〜約7500g/moleの範囲にある。PC2021において、R及びRは一般式(IIB):
【化4】

に示すように、両方ともメチル基であり、p対qの比は約8:1〜約1:1の範囲にあるが、通常は約4:1〜約2:1の範囲にある。PC2021の分子量は約2000〜約7500g/moleの範囲にある。PC2026において、Rはトリフルオロプロピル基であり、Rはメチル基である。p:qの比は典型的には約3:1である。PC2026の分子量は約5000〜約7500g/moleの範囲にある。PC2031において、Rはメチル基であり、Rはプロピル基であり、p対qの比は約8:1〜約1:1の範囲にあるが、通常は約4:1〜約2:1の範囲にある。PC2031の分子量は約2000〜約7500g/moleの範囲にある。
【0022】
モノマー単位X及びYを含有する一般式(II)のシロキサンエポキシポリマーは、アルコール溶媒存在下に、Rohm&Haas社が提供するAmberlyst A−26、Amberlite IRA−400及びAmberlite IRA−904のようなイオン交換樹脂の存在下に、0.5〜2.5当量の水を用いて、アルコキシシランモノマーを塩基触媒加水分解に続く縮合により、次いで水/溶媒混合物からシロキサンオリゴマーを分離することにより合成することができる。重合手順は、米国特許第6,069,259号及び第6,391,999号明細書並びに同一出願人により2002年10月11日に出願された同時継続の米国特許出願出願番号10/269,246に完全に記載されている。
【0023】
一般式(II)において、X単位が由来するアルコキシシランモノマーは、Witco CorporationからA−186として市販品で入手可能な2−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチル)トリメトキシシランであることができる。Y単位を与えるために使用する模範的なモノマーとしては、テトラエトキシシラン(オルトケイ酸エチル)、テトラメトキシシラン(オルトケイ酸メチル)、テトライソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、1,1,1−トリフルオロエチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン(PC2010に使用される)、2−フェニルエチルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン(PC2021に使用される)、メチルプロピルジメトキシシラン(PC2031に使用される)、ジプロピルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、メチルペンチルジメトキシシラン、ジペンチルジメトキシシラン、ジオクチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ブテニルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン(PC2026に使用される)、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、2−クロロエチルメチルジメトキシシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,3−ジメチルジシロキサン、フェニルトリメトキシシランを含む。更に、これらの混合物に有用なのは、トリメトキシシリル−末端基を有するポリジメチルシロキサン類及び対応するヒドロキシル−末端基を有するポリジメチルシロキサン類である。前記モノマーは、市販品として入手可能であるか又は技術的によく知られている反応で容易に合成される。
【0024】
本発明に使用する一つの好ましい低κ誘電体材料は、前記一般式(IIB)を有するシロキサンエポキシポリマー(PC2021)であり、それは(X単位を形成する)2−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチル)トリメトキシシラン(A−186)と、(Y単位を形成する)ジメチルジメトキシシランとから合成されることができる。ジメチルジメトキシシランはUnited Chemical Technology(UCT)社から市販品として入手可能であるか、又は、技術的によく知られている反応で容易に合成される。前記のように、p対qの比は約8:1〜約1:1の範囲にあるが、通常は約4:1〜約2:1の範囲にある。一般式(IIB)のポリマーは、約2.2〜約2.7の範囲の驚くほど低い誘電定数を有する。本発明に使用するその他の好ましい低κ誘電体材料は、Rがメチル基であり、Rがプロピル基である一般式(IIA)を有するシロキサンエポキシポリマー(PC2031)であり、それは(X単位を形成する)2−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチル)トリメトキシシラン(A−186)と、(Y単位を形成する)メチルプロピルジメトキシシランとから合成することができる。p対qの比は約8:1〜約1:1の範囲にあるが、通常は約4:1〜約2:1の範囲にある。更に、PC2031については1.8という低い誘電定数が測定された。模範的なその他の適当なポリマーは、R及びRがともにプロピル基である一般式(IIA)を有するポリマー((X単位を形成する)2−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチル)トリメトキシシラン(A−186)と、(Y単位を形成する)ジプロピルジメトキシシランとから合成される)を含む。一般式(IIA)のその他の実施態様において、Rはメチル基であり、Rはペンチル基である((X単位を形成する)2−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチル)トリメトキシシラン(A−186)と、(Y単位を形成する)メチルペンチルジメトキシシランとから合成される)。一般式(IIA)の更にその他の実施態様において、R及びRはともにペンチル基である((X単位を形成する)2−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチル)トリメトキシシラン(A−186)と、(Y単位を形成する)ジペンチルジメトキシシランとから合成される)。これらの各実施態様において、p対qの比は約8:1〜約1:1の範囲にあるが、通常は約4:1〜約2:1の範囲にあり、分子量は約2000〜約7500g/moleの範囲にある。
【0025】
シロキサンエポキシポリマー誘電性フィルムの付与は、例えばスピンキャスティング(ここでは「スピンコーティング」とも呼ぶ)、ディップコーティング、ローラーコーティング、又はドクターブレーディングの任意の公知の方法によって、ここに記載するシロキサンエポキシポリマーを約0.02μm〜約2μm、好ましくは約0.1μm〜約0.7μmの範囲の厚さまで堆積させることにより行なわれる。
【0026】
堆積後、一般式(I)又は(II)を有するシロキサンエポキシポリマーを、例えば、熱的に、又は、例えば、紫外線若しくは電子ビームの化学線を使用することによる技術的に認められた手法で硬化することができる。しかしながら、硬化に先立ち、約80℃〜約120℃の温度で、約0.5〜約2時間の間、通常約100℃で約1時間、ポリマーを真空下に乾燥させて、溶媒を除去することができる。
【0027】
ポリマーの硬化は、例えば、ジアゾニウム、スルホニウム、ホスホニウム、又はヨードニウム塩、より好ましくはジアリールヨードニウム、ジアルキルフェナシルスルホニウム、トリアリールスルホニウム、又はフェロセニウム塩光開始剤のカチオン重合開始剤の存在下に達成される。
【0028】
好ましいカチオン重合開始剤は、一般式(III)、(IV)、(V)、(VI)、及び(VII):
【化5】

(式中、各R11は独立に、水素原子、C〜C20アルキル基、C〜C20アルコキシル基、C〜C20ヒドロキシアルコキシル基、ハロゲン原子、及びニトロ基であり;R12は、C〜C30アルキル基又はC〜C30シクロアルキル基であり;y及びzはそれぞれ独立して、少なくとも5の値を有する整数であり;[A]は、非求核アニオンであり、一般に[BF、[PF、[AsF、[SbF、[B(C、又は[Ga(Cである)
を有する群から選択されるジアリールヨードニウム塩を含む。これらジアリールヨードニウム塩硬化剤は、米国特許第4,842,800号、第5,015,675号、第5,095,053号、及び第5,073,643号、及び第6,632,960号明細書に記載されている。
【0029】
好ましくは、カチオン重合開始剤を3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ジシクロペンタジエンジオキサイド、又はビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペートに溶解して触媒溶液を形成する。触媒溶液は約20〜約60重量部の選択されたカチオン開始剤と、約40〜80重量部の3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ジシクロペンタジエンジオキサイド、又はビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペートとを含む。カチオン重合開始剤がジアリールヨードニウム塩であるとき、触媒溶液は好ましくは、約40重量部のジアリールヨードニウム塩硬化剤と、約60重量部の3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ジシクロペンタジエンジオキサイド、又はビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペートとを含む。
【0030】
典型的には、約0.1〜約5重量部の触媒溶液を、適当量のシロキサンエポキシポリマー樹脂(約95〜約99.9重量部の範囲にあるシロキサンエポキシポリマー)に添加する。
【0031】
好ましいジアリールヨードニウム塩は、[A]が[SbFであり、R12がC1225である一般式(VI)を有する[4−(2−ヒドロキシ−1−テトラデシルオキシ)−フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート(Polyset CompanyからPC−2506として入手可能);一般式(VI)において[A]が[PFであり、R12がC1225である[4−(2−ヒドロキシ−1−テトラデシルオキシ)−フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(Polyset CompanyからPC−2508として入手可能);一般式(VII)において、[A]が[SbFであり、R12がC1225である[4−(2−ヒドロキシ−1−テトラデシルオキシ)−フェニル]4−メチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート(Polyset CompanyからPC−2509として入手可能)、及び、一般式(VII)において、[A]が[PFであり、R12がC1225である[4−(2−ヒドロキシ−1−テトラデシルオキシ)−フェニル]4−メチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(Polyset CompanyからPC−2519として入手可能)を含む。一般式(VII)を有するカチオン開始剤の製造は、前記米国特許第6,632,960号明細書に記載されている。
【0032】
誘電性フィルムの厚さによって決まるが、熱硬化は一般に、堆積したポリマー溶液を、約155℃〜約360℃の温度まで、好ましくは約165℃まで、約0.5〜約2時間の間、加熱することにより行なう。紫外線で硬化可能な処方においては、フィルムを紫外線により大量照射することができる(>300mJ/cm@250〜380nm)。E−ビーム放射線による硬化は多くの場合、約3〜約12Mradの被爆量で行なわれる。紫外線又はE−ビーム放射線による硬化と熱焼成(thermal bake)を組み合わせて使用することが多い。E−ビーム硬化は米国特許第5,260,349号及び第4,654,379号明細書に記載されている。当業者なら知っているように、詳細なポリマー処方は、どの硬化方法を使用すべきかを決定するものである。硬化に続き、窒素又は他の不活性ガス下に、約200℃〜約300℃の温度で、好ましくは約250℃で、約1〜約3時間の間、好ましくは約2時間、熱アニールを用いることができる。
【0033】
更に、ポリマーの処方を変えることにより、ポリマー濃度及び堆積したフィルムの厚さを変えることにより、開始硬化温度及び硬化速度は広い許容範囲内で調整することができる。
【0034】
典型的には、シロキサンエポキシポリマーフィルムを熱的に硬化する場合、触媒量は、化学線により誘導される硬化を達成するのに必要な光触媒の量に対して劇的に減少させることができる。例えば、熱処理において、模範的なシロキサンエポキシ樹脂組成物は、約0.1wt.%のカチオン重合開始剤を含有する(即ち、0.1重量部の触媒溶液、及び、約99.9重量部のシロキサンエポキシポリマー、ここで、模範的な触媒溶液は、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(Union Carbide ERL−4221E)に溶解した[4−(2−ヒドロキシ−1−テトラデシルオキシ)−フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート(Polyset PC−2506)の40wt.%溶液である)。それに対して、硬化処理を光照射によって行なうとき、触媒量は一般に約4wt.%である(即ち、4重量部の触媒溶液及び96部のポリマー)。
【0035】
以下の実施例は、説明の目的で本明細書中にあり、本発明を限定することを意図しない。実施例に使用される試薬及び他の材料は、容易に入手可能な材料であり、従来の製造方法に従って便利に製造できるか又は商業の供給元から得ることができる。
【0036】
《実施例1》
MIM(金属−絶縁層−金属)構造用の抵抗率0〜0.02Ω−cmを有するN型、4インチのシリコンウエハーを半導体基板として使用した。標準RCA清浄化後、接着促進剤(HMDS)を各ウエハー上に3000rpmで40秒間スピンコーティングをした。その後ウエハーを100℃で10分間空気中においてアニールした。p対qの比が約2:1である一般式(IIB)を有するシロキサンエポキシポリマー溶液を各ウエハー上に3000rpmで100秒間、厚さ0.5μmまでスピンコーティングをした。ポリマーフィルム/ウエハーを10−3torrの真空下に100℃で1時間乾燥した。その後ポリマーフィルムを窒素気流下に165℃で2時間硬化してポリマーを架橋した。
【0037】
《実施例2》
実施例1の手順に従った。硬化後、ポリマーフィルムを窒素気流下に250℃で2時間熱アニールにかけた。
【0038】
実施例1及び2で得たポリマーフィルムの誘電定数は、ポリマーフィルムのキャパシタンスを測定することにより決定した(即ち、金属−絶縁層−半導体(MIS)コンデンサーデバイス、金属−絶縁層−金属(MIM)コンデンサーデバイス、及びC−V技術)。ポリマーは規則的に2.65より低い誘電定数を有することを示した。しかしながら、2.2という低い誘電定数は、約0.02μm〜約0.09μmの範囲にある、より薄い方のフィルムについて測定された。
【0039】
《実施例3》
金属−絶縁層−半導体(MIS)コンデンサー構造は、実施例1の試料から、乾燥と硬化に先立ち、銅金属フィルムを直接各試料のポリマー層上に堆積させることにより製造した。銅は前記構造において電極として使用された。銅金属の薄いフィルムは、スパッタリング又はe−ビーム蒸着(e-beam evaporation)を使用して厚さ0.3μmまで堆積させた。実施例1に記載したように、乾燥と硬化の後に、試料を窒素気流下に250℃で1時間アニールした。
【0040】
実施例3のコンデンサーに使用したシロキサンエポキシポリマー(IIB)の電気的安定性は、25℃以上の温度でフィルムについてI−V測定をすることにより試験した。測定した電流(I)を電極面積で除して電流密度(J)を得て、そして、電圧(V)をフィルム厚さ(0.5μm)で除して印加電界(E)を得た。ポリマーに対するJ(A/cm)対E(MV/cm)のプロットを図1に示す。そのプロットは、150℃までの温度で誘電体を通る漏洩電流密度が室温での漏洩電流密度と非常によく似ていることを示している。200℃では、シロキサンエポキシ誘電体はわずかにより高い電流密度を示すが、それでもなお±2MV/cmの印加電界に対して10−9A/cmの範囲にある。
【0041】
実施例3の試料について第2の試験を実施して、MISコンデンサーに使用したシロキサンエポキシポリマーフィルム(IIB)の電気的安定性を実証した。試験はI−tであった。それによって、(A/cm単位でJに変換した)電流を、バイアス熱応力(BTS)時間とともにモニターした。1MV/cmのBTS条件と150℃の温度でのシロキサンエポキシ誘電体とに対する電流密度データを図2に示す。グラフは、誘電体が少なくとも7時間の間、10−11Å/cmの範囲で低い漏洩電流密度を維持していることを示す。
【0042】
図3は、実施例3のMISコンデンサーの様々なC−V(キャパシタンス対電圧)プロットを示す。前記コンデンサーを150℃及び0.5MV/cmで順々に10、20、30、40、及び100分間バイアス熱応力(BTS)条件にさらしたときのプロットである。10分間のBTS後に左側への〜2Vの平坦バンド電圧シフトが観察された。コンデンサー試料を更になおBTS処理にかけたけれども著しい平坦バンド電圧シフトは観察されなかった。これはC−V曲線が平衡状態に達したことを示唆している。C−V曲線の平坦バンド電圧の連続的なシフトにより、誘電性フィルムにおける連続的な銅イオン注入が現れたものであろう。観察された平坦バンド電圧シフトは著しくないので、シロキサンエポキシ誘電体においてCuの拡散が、もしあったとしても、無視し得る程度であり、デバイスに対して無害であると解釈することができる。
【0043】
図4は、実施例3のMISコンデンサー構造の三角電圧掃引(TVS)データを表すプロット(C対V)を示す。前記コンデンサー構造を150℃及び0.5MV/cmのBTS条件に、別々に10、20、30、40、及び100分間さらしたときのデータである。もし誘電性フィルムにおいて何らかの電荷注入があるならば、それは負の電圧に中心があるピークとしてTVS曲線に現れるであろう。TVS曲線にピークがないことは、前記BTS条件で誘電体において著しいCu拡散がないことを示している。
【0044】
《実施例4》
実施例1の手順に従った後、p対qの比が約2:1である一般式(IIB)を有するシロキサンエポキシポリマーの多層誘電体層を堆積させた。より詳細には、実施例1に記載したように、最初の誘電体層を乾燥し硬化した後に、その上に一般式(IIB)を含むその他の誘電体層を3000rpmで100秒間スピンコーティングして厚さ0.5までにした。次いで実施例1に記載したように乾燥し硬化した。しかしながら、その後の各誘電体層の堆積に先立ち、その下にある硬化した誘電性ポリマーを表面処理にかけ、そして、その後のポリマー誘電体層の濡れと接着性を高めた。表面処理は、代理人事件整理番号(Atty Dkt.No.)0665.019、発明の名称「CHEMICAL TREATMENT OF MATERIAL SURFACES」で本出願と同時に出願した前記の関連米国特許出願に記載されている。詳細には、硬化したポリマー誘電体の表面を硫酸水溶液(50重量%)と室温で30秒間接触させた後、脱イオン水を用いて室温で30秒間すすぎ洗いして乾燥することにより酸溶液を除去した。このようにして、1−スピン、2−スピン及び3−スピンフィルムを処理した。次に、構造全体を窒素気流下に250℃で2時間熱アニールにかけた。これらのフィルムについてのJ対Eプロットを図5に示す。この図は、複数スピン誘電性フィルムにおける漏洩電流密度が、単一スピン誘電体のそれに非常に類似していることを示している。これが示唆するのは、異なるスピン間の境界面が電気的特性に影響しないこと、及び、シロキサンエポキシ誘電体が層をなして堆積している場合でさえ、それでもなおシロキサンエポキシ誘電体について低い漏洩電流を維持できることである。従って、シロキサンエポキシポリマーの厚い複数の層が堆積している場合でさえ、それでもなお材料はそれらの良好な電気的特性を保持している。
【0045】
ここに記載するシロキサンエポキシポリマー誘電体における漏洩電流を多様な電界、温度、及び時間で測定し、試験結果を要約した。200℃までの温度で±2MV/cmの電界にかけた場合、誘電体における漏洩電流密度は6x10−9A/cmよりも低かった。更に、フィルムを150℃で7時間まで1MV/cmのバイアス熱応力(BTS)条件にさらしたとき、誘電体における漏洩電流は6x10−11A/cmでほぼ一定であった。スピン・オン・ポリマーの複数層構造は、単一スピンポリマーと類似した漏洩電流特性を有することを示した。BTS、C−V及びTVS試験を用いるフィルムにおいて著しいCu拡散は見られなかった。すべてのこれらの特性は、一般式(I)及び(II)を有するシロキサンエポキシポリマーを半導体産業用の優れた低κ誘電体材料選択の対象とするものである。
【0046】
図6は、層間絶縁膜としてここに記載する低κシロキサンエポキシポリマーを使用する模範的な半導体デバイスの一部10の断面図である。しかしながら、当業者なら知っているように、低κシロキサンエポキシ誘電体は、多数の他の半導体デバイスに付与することができる。この実施態様において、デバイスはダマシーンプロセスを用いて製造される従来の半導体金属相互接続構造である。そこでは、溝(配線;図示せず)及びビア(ホール)20が層間絶縁膜30にエッチングされる。誘電体30は、ここに定義するように、半導体基板15の上に約0.5μm〜約0.8μmの範囲にある厚さまで配置する。導電性金属50(それに限定されないが典型的には銅)をビア20に配置し、平坦化して金属層55を形成する。この実施態様において、タンタル、TaN、又はTaSiN製のTaベースのライナー40は、金属50の堆積と平坦化に先立ち、側壁21a及び21bと、並びに、ビア20の底22(及びいずれかの溝;図示せず)との上に等角に堆積する。金属50の上に約0.03μm〜約0.05μmの厚さまで堆積している、もともとはSiN、SiC、SiCH、又はSiCN製の任意のバリア60は、金属拡散バリアとして、そして、その後の第2の誘電体70のパターニングのためのエッチング停止層としても働く。第2の誘電体は、バリア60の上に約0.5μm〜約0.8μmの厚さまで堆積される。誘電体30又は70のうち少なくとも一つは、ここに記載する構造式(I)又は(II)を有する低κシロキサンエポキシポリマーである。バリア60は、同一所有権者による2004年4月27日に出願した同時継続の米国特許出願出願番号10/832,844、発明の名称「SILOXANE EPOXY POLYMERS AS METAL DIFFUSION BARRIERS TO REDUCE ELECTROMIGRATION」に十分に記載するように、構造式(I)又は(II)を有するシロキサンエポキシポリマーであることもできる。
【0047】
ここに記載する各特許及び特許出願はその全体において参照することによりここに含まれる。
【0048】
本発明をその好ましい実施態様の詳細な参照とともに詳細に記載したが、変形形態及び修正形態を本発明の精神と範囲以内にもたらすことができることは当業者により理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板、前記基板上に配置される1種以上の金属層又は構造、及び1種以上の誘電性フィルムを含む半導体デバイスであって、一般式(I)及び(II):
【化1】

(式中、mは5〜50の整数である);
【化2】

(式中、X及びYはランダムに分布するか、又は、一緒に存在するモノマー単位であり、R及びRは、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクチル基、及びフェニル基からそれぞれ独立に選択され;Rはメチル基又はエチル基であり;pは2〜50の整数であり;qは0又は1〜50の整数である)
を有するポリマーからなる群から選択されるシロキサンエポキシポリマーを少なくとも1種の誘電性フィルムが含む、前記半導体デバイス。
【請求項2】
前記シロキサンエポキシポリマーが、一般式(II)(式中、Rがメチル基である)を有するポリマーである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
構造式(II)において、R及びRが両方ともメチル基であり、p対qの比が約8:1〜約1:1の範囲にある、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
p対qの比が、約4:1〜約2:1の範囲にある、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
構造式(II)において、Rがメチル基であり、Rがプロピル基であり、p対qの比が約8:1〜約1:1の範囲にある、請求項2に記載のデバイス。
【請求項6】
構造式(II)において、R及びRが両方ともプロピル基であり、p対qの比が約8:1〜約1:1の範囲にある、請求項2に記載のデバイス。
【請求項7】
構造式(II)において、Rがメチル基であり、Rがペンチル基であり、p対qの比が約8:1〜約1:1の範囲にある、請求項2に記載のデバイス。
【請求項8】
構造式(II)において、R及びRが両方ともペンチル基であり、p対qの比が約8:1〜約1:1の範囲にある、請求項2に記載のデバイス。
【請求項9】
前記シロキサンエポキシポリマーが、一般式(I)を有するポリマーである請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記シロキサンエポキシポリマーを含む少なくとも1種の前記誘電性フィルムの各々が、約0.02μm〜約2μmの範囲の厚さを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記シロキサンエポキシポリマーを含む前記少なくとも1種の誘電性フィルムの各々が、約0.1μm〜約0.7μmの範囲の厚さを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
カチオン重合開始剤が前記シロキサンエポキシポリマーとともに存在し、前記カチオン重合開始剤がジアゾニウム、スルホニウム、ホスホニウム、及びヨードニウム塩からなる群から選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記カチオン重合開始剤が、一般式(III)、(IV)、(V)、(VI)、及び(VII):
【化3】

(式中、各R11は独立に、水素原子、C〜C20アルキル基、C〜C20アルコキシル基、C〜C20ヒドロキシアルコキシル基、ハロゲン原子、及びニトロ基であり;R12は、C〜C30アルキル基又はC〜C30シクロアルキル基であり;y及びzは各独立に、少なくとも5の値を有する整数であり;[A]は、[BF、[PF、[AsF、[SbF、[B(C、及び[Ga(Cからなる群から選択される非求核アニオンである)
を有するジアリールヨードニウム塩からなる群から選択されるヨードニウム塩である、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記選択されたカチオン重合開始剤が、約20〜約60重量部の前記選択されたカチオン重合開始剤、及び、約40〜約80重量部の3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ジシクロペンタジエンジオキサイド、又はビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペートを含む触媒溶液中に存在する、請求項13に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−535177(P2007−535177A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510854(P2007−510854)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/014085
【国際公開番号】WO2005/105894
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(506361753)ポリセット カンパニー インコーポレーテッド (1)
【出願人】(502263411)レンセラール ポリテクニック インスティチュート (14)
【出願人】(506361764)
【氏名又は名称原語表記】GHOSHAL Ramkrishna
【出願人】(506361775)
【氏名又は名称原語表記】WANG Pei−I
【出願人】(506361786)
【氏名又は名称原語表記】LU Toh−Ming
【出願人】(506361797)
【氏名又は名称原語表記】MURARKA Shyam P.
【Fターム(参考)】