説明

低マイクロパイプの100mm炭化ケイ素ウェハ

【課題】種結晶を用いた昇華システムにおいて形成された結晶の欠陥レベルが低く、より大きく、高品質のSiC単結晶ウェハを製造する方法を提供する。
【解決手段】少なくとも約100mmの直径と、約25cm−2未満のマイクロパイプ密度とを有し、また、3C、4H、6H、2Hおよび15Rポリタイプからなる群から選択されるポリタイプを有するSiC単結晶ウェハ。なお、マイクロパイプ密度は、表面上にある全マイクロパイプの総数を、ウェハの表面積で割ったものを表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低欠陥の炭化ケイ素ウェハと、半導体用の前駆体としてのその使用に関し、さらに、高品質で大きな炭化ケイ素単結晶の種晶添加昇華成長法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な電子デバイスや目的に合った半導体材料として、炭化ケイ素が使用されてきている。炭化ケイ素は、その物理的強度と化学的侵食に対する高い耐性のため非常に有用である。炭化ケイ素はまた、耐放射性、高破壊電界、比較的広いバンドキャップ、高飽和電子ドリフト速度、高温動作、並びにスペクトルの青、紫、および紫外領域における高エネルギー光子の吸収および放出といった優れた電子特性を有する。
【0003】
種結晶を用いた昇華成長プロセスによって、単結晶炭化ケイ素が生成されることが多い。典型的な炭化ケイ素成長技術において、種結晶およびソースパウダーの両方が、ソースとわずかに温度が低い種結晶との間に熱勾配を生成するように、ソースの昇華温度に加熱される反応るつぼに配置される。熱勾配により、ソースから種結晶へ材料が気相移動した後、種結晶および結果的に得られるバルクが結晶成長すると凝縮する。この方法は、物理気相輸送法(PVT)とも呼ばれる。
【0004】
典型的な炭化ケイ素成長技術において、るつぼは、グラファイトから作られ、誘導または抵抗によって加熱され、関連するコイルおよび絶縁は、所望の熱勾配を確立および制御するように配置される。ソースパウダーは、種結晶と同様に炭化ケイ素である。るつぼは、垂直方向に配向され、ソースパウダーが下側部分に、種結晶が典型的に、種結晶ホルダ上の上部に位置付けられる。例えば、米国特許第4866005号明細書(米国再発行特許発明第34861号明細書)を参照されたい。同特許の内容全体は、本明細書の一部をなすものとする。これらのソースは、例示的なものであり、種結晶を用いた最新の昇華成長技術の記載を限定するものではない。
【0005】
本発明はまた、以下の同時係属中の本願と同一の譲受人に譲渡された米国特許出願、すなわち、米国特許出願公開第2005/0145164号明細書、同第2005/0022724号明細書、同第2005/0022727号明細書、および同第2005/0164482号明細書に関係する。
【0006】
近年、炭化ケイ素バルク結晶の構造欠陥の低密度化は進んでいるが、それでも欠陥濃度は比較的高く、なくすことは困難であることが分かっている。例えば、Nakamuraらの「Ultrahigh quality silicon carbide single crystals」,Nature,Vol.430,2004年8月26日,p.1009を参照されたい。これらの欠陥は、基板上に作られるデバイスの性能特性を制限するという深刻な問題を引き起こす可能性があり、場合によっては、有用なデバイス全体を排除してしまいかねない。炭化ケイ素の大きなバルク単結晶を生成するための種結晶を用いた現在の昇華技術では、典型的に、炭化ケイ素結晶の成長表面上での欠陥濃度が、所望の濃度より高くなってしまう。欠陥濃度が高いと、結晶上、ひいては、結晶から得られる基板上に作られるデバイスの性能特性を制限するという深刻な問題を引き起こす可能性がある。例えば、いくつかの市販されている炭化ケイ素ウェハの典型的なマイクロパイプ欠陥密度は、1平方センチメートル当たり100(cm−2)程度であろう。しかしながら、炭化ケイ素に形成されたメガワットデバイスには、0.4cm−2程度の欠陥が少ない表面が必要になる。このように、高電圧高電流の応用に表面積が大きいデバイスを作製するために使用可能な大きな単結晶を獲得することは、依然として価値のある目標である。
【0007】
低欠陥炭化ケイ素の小さなサンプルはこれまで入手可能であったが、炭化ケイ素をより広く商業的に使用するには、より大きなサンプル、特に、より大きなウェハが必要である。比較として、100mm(4”)シリコンウェハは、1975年以来市販されており、150mm(6”)シリコンウェハは、1981年以来入手可能になっている。また、ガリウムヒ素(GaAs)は、4”および6”ウェハの両方で市販されている。このように、50mm(2”)および75mm(3”)SiCウェハは、これらの他の材料に後れを取っており、より広範囲のデバイスおよび応用においてSiCの採用および使用をある程度制限してしまう。
【0008】
マイクロパイプは、種結晶を用いてSiC結晶を昇華生成している間に発展または伝播する一般的な欠陥である。他の欠陥には、貫通転位、六角形状の空隙、およびらせん転位が含まれる。これらの欠陥が、SiC結晶に残ったままであれば、結晶上に成長させた結果的に得られるデバイスは、これらの欠陥を組み込んでしまうこともある。
【0009】
特殊な欠陥の性質および説明については、結晶成長の分野において一般によく理解されている。マイクロパイプとは、バーガーズベクトルがc軸に沿った中空孔の大型らせん転位である。マイクロパイプの発生に関しては、数多くの原因の提言や特定がなされてきた。これらは、ケイ素または炭素含有物などの過剰材料、金属堆積物などの外部からの不純物、境界欠陥、および部分転位の運動またはすべりを含む。例えば、Powellらの「Growth of Low Micropipe Density SiC Wafers」,Materials Science Forum,Vols.338−340,p.437−440(2000)を参照されたい。
【0010】
六角形状の空隙とは、結晶にある平坦で六角形の小板状のキャビティのことであり、これらの下方に続く中空管を有する場合が多い。ある証拠によれば、マイクロパイプは、六角形状の空隙に関連していることが示されている。Kuhrらの「Hexagonal Voids And The Formation Of Micropipes During SiC Sublimation Growth」,Journal of Applied Physics,Volume89,No.8,p.4625(2001年4月)に、このような欠陥に関する比較的最近の議論(例示的であって、制限的ではない)が示されている。
【0011】
また、SiCのバルク単結晶に表面欠陥が存在すると、その表面欠陥が、単一ポリタイプ結晶成長を妨げてしまうこともある。SiCの150の利用可能なポリタイプは、特定の問題を生じる。これらのポリタイプの多くが非常に類似しており、わずかな熱力学差によってのみ分けられる場合が多い。結晶全体にわたって所望のポリタイプの同一性を維持することは、種結晶を用いた昇華システムにおいて、大きなサイズのSiC結晶を成長させる際非常に難しい。表面欠陥が存在すると、所望のポリタイプを維持するために層を堆積するための結晶表面に関するポリタイプ情報が十分にない。成長している結晶の表面でポリタイプ変化が生じると、さらなる表面欠陥が形成されてしまうことになる。
【0012】
最近の研究では、種結晶を用いた昇華技術において製造されたバルク結晶における問題は、種結晶そのものと、種結晶の物理的な取り扱い方とに端を発している。例えば、Sanchezらの「Formation Of Thermal Decomposition Cavities In Physical Vapor Transport Of Silicon Carbide」,Journal of Electronic Materials,Volume29,No.3,p.347(2000)を参照されたい。Sanchezは、同文献の347頁で「[0001]軸に平行またはほぼ平行に整列された大型らせん転位のコアに形成された0.1μm〜5μmの範囲の直径のほぼ円筒状の空隙」について記述するのに、「マイクロパイプ」という用語を使用している。Sanchezは、同文献において、「熱分解空隙」として大きな空隙(「直径が5μm〜100μm」)と呼び、マイクロパイプおよび熱分解空洞は、異なる原因から生じていると考えた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、種結晶を用いた昇華システムにおいて形成された結晶の欠陥レベルが低く、より大きく、高品質の炭化ケイ素バルク単結晶を製造することは、依然として変わらぬ技術的かつ商業的な目標である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、その一態様として、少なくとも約100mmの直径と、約25cm−2未満のマイクロパイプ密度とを有するSiCの高品質単結晶ウェハである。
【0015】
本発明は、別の態様として、少なくとも約100mmの直径と、約25cm−2未満のマイクロパイプ密度とを有するSiCの半導体前駆体ウェハである。
【0016】
本発明は、別の態様として、種結晶を用いた昇華成長システムに、少なくとも約100mmの直径と、約25cm−2未満のマイクロパイプ密度とを有するSiCの高品質単結晶ウェハを使用する方法である。
【0017】
本発明は、さらに別の態様として、少なくとも約100mmの直径と、約25cm−2未満のマイクロパイプ密度とを有するSiCの種単結晶上に形成された複数のパワーデバイスである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るSiCウェハの写真である。
【図2】本発明に係る半導体前駆体ウェハである。
【図3】本発明に係る複数の半導体前駆体デバイスである。
【図4】本発明に係る種結晶を用いた昇華システムの模式的な断面図である。
【図5】本発明に係る金属酸化膜半導体電界効果トランジスタの模式的な断面図である。
【図6】本発明に係る金属半導体電界効果トランジスタの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、高品質の炭化ケイ素ウェハに関する。特に、本発明では、種晶添加昇華を用いてこのようなウェハの成長を高めるためのいくつかの技術を取り入れている。
本発明は、その一態様として、少なくとも約100mmの直径と、約25cm−2未満、より好ましくは約20cm−2未満、最も好ましくは約10cm−2未満のマイクロパイプ密度とを有するSiCの高品質単結晶ウェハである。単結晶SiCのポリタイプは、3C、4H、6H、2H、または15Rであることが好ましい。
【0020】
種結晶の直径および厚みの比例寸法について考慮する際、パーセンテージ、分数、または比率のいずれの表記であっても、本発明により提供される改良との関連で、これらの比は、本明細書に記載するより大きな直径の種結晶との関連で進歩的な意味を有することを理解されたい。
【0021】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、一般的に、2インチ、3インチ、および100mm直径の単結晶が好ましいという直径の観点から、結晶の絶対寸法を含む方法で、関連する実施形態において本明細書に記載され請求される。
【0022】
図1は、本発明に係るウェハ2の写真である。表面上にある黒点がマイクロパイプである。これらのマイクロパイプを適切に計数すると、この例示したウェハには、1平方センチメートル当たり25個未満のマイクロパイプがある。
【0023】
本発明は、別の態様として、高品質の半導体前駆体ウェハである。ウェハは、少なくとも約100mmの直径と、約7〜22cm−2の表面マイクロパイプ密度とを有する、4Hポリタイプの炭化ケイ素ウェハである。表面マイクロパイプ密度は、表面上の全マイクロパイプの総数をウェハの表面積で割ったものを表す。全マイクロパイプの総数は、マイクロパイプ欠陥を優先的に強調するエッチング後の表面上の全マイクロパイプの総数を表す。エッチングは、溶融水酸化カリウムエッチングであることが好ましい。本発明に係る結晶の測定可能エリアは、22cm−2未満、場合によっては7cm−2未満、さらなる他の場合において、現時点では予測であるが、ゼロのマイクロパイプ密度を示すことを理解されたい。このように、「未満」という表現を本明細書で使用する場合、この表現は、測定された態様と、予測の態様との両方を有することを理解されたい。測定された態様(例えば、図1)の他に、さらに少ない欠陥を示す結晶もあることが予測される。その結果、本明細書において使用される「未満」という語句(例えば、「7cm−2未満」)は、7〜22cm−2などの範囲も含む(が、これに限定されるものではない)。
【0024】
本発明は、さらに別の態様として、4Hポリタイプ、少なくとも約100mmの直径、およびウェハの表面上の約545〜1730個のマイクロパイプを有する高品質の炭化ケイ素半導体前駆体ウェハである。繰り返しになるが、表面マイクロパイプは、好ましくは溶融水酸化カリウムエッチング後の表面上の全マイクロパイプの総数を表す。
【0025】
本発明は、別の態様として、図2に模式的に示すように、4Hポリタイプと、少なくとも約100mmの直径と、22cm−2未満の表面上のマイクロパイプ密度とを有する、高品質の炭化ケイ素半導体前駆体ウェハ4である。ウェハは、表面上の位置にあるIII族窒化物層6をさらに有する。III族窒化物層6は、GaN、AlGaN、AlN、AlInGaN、InN、およびAlInNの1つ以上であることが好ましい。
【0026】
III族窒化物の成長および電子特性は、一般に、当技術分野でよく理解されている。炭化ケイ素基板上のIII族窒化物層は、あるタイプの発光ダイオード(LED)の基本的な特徴である。他の所望の要因の中で、III族元素(例えば、InGa1−x−y)の原子分率は、組成のバンドキャップを(制限値内で)調整することで、結果的に得られる放射周波数、ひいては、LEDの色を同様に調整する。
【0027】
図3を参照すると、本発明は、少なくとも約100mmの直径と、約7〜22cm−2のウェハの表面上のマイクロパイプ密度とを有するSiC種結晶9上にある複数の炭化ケイ素半導体デバイス前駆体8である。ウェハは、ウェハのいくつかの部分上に、複数のIII族窒化物エピタキシャル層10をそれぞれさらに有する。好ましいIII族窒化物エピタキシャル層は、GaN、AlGaN、AlN、AlInGaN、InN、およびAlInNから個々に選択される。
【0028】
本発明は、別の態様として、種結晶を用いた昇華システムで、高品質の炭化ケイ素バルク単結晶を製造する方法であり、この改良された方法は、少なくとも約100mmの直径を有し、約20cm−2未満のマイクロパイプ密度を有するSiCブールを成長させ、その後、好ましくは機械的に、SiCブールをウェハにスライシングすることを含み、各ウェハは、表面上に約20cm−2未満のマイクロパイプ密度を有する。ウェハの厚みは、約0.5mmであることが好ましい。
【0029】
次いで、SiCウェハを研磨しエッチングすることが好ましいこともある。好ましい研磨は、化学機械研磨であり、好ましいエッチングは、溶融KOHエッチングである。エッチングは、表面上の欠陥をハイライトするために実行され、種結晶を用いた昇華の先行ステップとして不要である。このように、昇華成長は、典型的に、エッチングされていない研磨された種結晶上に実行される。
【0030】
当技術分野で知られているように、SiCブール(boule)は、種結晶添加昇華システムにおいて成長されることが好ましい。ブールがウェハにスライスされた後、今度はウェハが、炭化ケイ素単結晶を種結晶添加昇華成長させる際の種結晶として使用されてもよい。
【0031】
本明細書の背景技術の部分で述べたように、種結晶を用いて炭化ケイ素を昇華成長させる一般的態様は、一般に、長年にわたって十分に確立されてきた。さらに、特に、炭化ケイ素などの困難な材料系での結晶成長に精通した人であれば、所与の技術の詳細は、一般的に意図的に、関連する状況に応じて変動し得るし、変動するであろうことを認識するであろう。したがって、本明細書の記載は、当業者であれば、必要以上の実験を行うことなく、本明細書の開示に基づいて、本発明の改良を実行することができるであろうという認識で、一般的かつ概略的な意味で最も適切に与えられたものである。
【0032】
本発明について記載する際、多数の技術が開示されることを理解されたい。これらの各々は、個々に有益な点を備えており、また、他の開示された技術の1つ以上、または場合によってはすべてとともに各々が使用され得る。したがって、明確に示すために、本願の記載では、個々のステップのあらゆる可能な組み合わせを不要に繰り返すことを控えている。しかしながら、本明細書および特許請求の範囲は、このような組み合わせがすべて本発明の範囲および特許請求の範囲内のものであるという理解とともに読み取られるべきものである。
【0033】
図4は、本発明において有用であると考えられるタイプの種結晶添加昇華成長用の昇華システムの模式的な断面図である。このシステムは、符号12で示されている。ほとんどの典型的なシステムのように、システム12は、グラファイトサセプタ又はるつぼ14と、コイル16を介して電流が印加されたときにサセプタ14を加熱する複数の誘導コイル16とを含む。その他の形態として、抵抗加熱を組み込んだシステムもある。これらの結晶成長技術に精通した人であれば、システムがいくつかの状況、例えば、水冷式石英容器に封入され得ることを理解されたい。さらに、サセプタ14と連通した少なくとも1つのガス入口および出口(図示省略)が、種晶添加昇華システム12に含まれる。しかしながら、このようなさらなる封入は、本発明にはあまり関係がなく、本明細書において、図面および記述が明確になりやすいように省略している。さらに、当業者であれば、本明細書に記載するタイプの炭化ケイ素昇華システムが、商業的に、および必要または適切であり得るようにカスタム方式で作られるように入手可能であることを認識されたい。したがって、これらのシステムは、必要以上の実験を行うことなく、当業者によって選択または設計され得る。
【0034】
サセプタ14は、典型的に、絶縁体18によって取り囲まれ、そのうちのいくつかの部分を図4に示す。図4は、サイズと配置が一般に一貫するように絶縁体を示しているが、当業者であれば、絶縁体18の配置および量は、サセプタ14に沿って所望の熱勾配(軸方向および半径方向の両方)を与えるように使用され得ることを理解するであろうし、認識されたい。繰り返しになるが、簡潔に示すために、これらの可能な入れ替えについては、本明細書において説明しない。
【0035】
サセプタ14は、炭化ケイ素パウダーソース20を収容する1つ以上の部分を含む。このようなパウダーソース20は、最も一般的に、炭化ケイ素用の種結晶を用いた昇華成長技術において使用されるが、これに限定されるものではない。図4は、サセプタ14の下側部分に収容されているようなパウダーソース20を示し、これは、1つの典型的な配列である。別のよく知られている変形例として、ソースパウダーが、図4に示す配設よりもサセプタ14の内部のより広い部分を取り囲んだ垂直方向の円筒状配列にソースパウダーを分配するシステムもある。本明細書に記載する本発明は、両方のタイプの機器を使用して適切に実行され得る。
【0036】
炭化ケイ素種結晶が符号22で示され、典型的に、サセプタ14の上側部分に配置される。種結晶22は、少なくとも約100mmの直径を有し、表面上に約25cm−2未満のマイクロパイプ密度を有する単結晶SiC種結晶であることが好ましい。種結晶を用いた昇華成長中に種結晶22上に成長結晶26が堆積される。
【0037】
種結晶ホルダ24が、典型的に、サセプタ14に種結晶ホルダ24を適切に取り付けた状態にして、種結晶22を適所に保持する。これは、様々な静止またはねじ式配列を含み得る。図4に示す配向において、種結晶ホルダ24の上側部分は、典型的に、サセプタ14、好ましくは、グラファイトるつぼの最上部分にねじ山を含むことで、種結晶ホルダ24をサセプタ14の上部内に差し込んで、種結晶22を所望の位置に保持してもよい。種結晶ホルダ24は、グラファイト種結晶ホルダであることが好ましい。
【0038】
種結晶22に最小のねじり力をかけながら、種結晶22をるつぼ14に配置することが好ましいこともあり、このようにすることで、種結晶22に望ましくない熱的な差をもたらしてしまうこともある結晶の反りや撓みをねじり力が生じさせなくなる。
【0039】
いくつかの実施形態において、種結晶22を取り付ける前に、種結晶ホルダ24をアニールすることが望ましい場合もある。昇華成長前に種結晶ホルダ24をアニールすることで、種結晶ホルダ24は、SiC昇華温度での結晶成長中に著しい歪みを受けなくなる。また、種結晶ホルダ24をアニールすることで、種結晶22にわたった温度差が最小限に抑えられるか、またはなくなり、このような温度差には、成長している結晶にある欠陥を引き起こし伝播してしまう傾向がある。種結晶ホルダ24をアニールする好ましいプロセスは、少なくとも約30分間、2500℃程度の温度でアニールすることを含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、昇華システム12にドーパント原子を含むことが好ましい場合もある。種結晶を用いた昇華システム12にドーパントガスを導入することで、成長結晶にドーパント原子が取り込まれる。ドーパントは、アクセプタまたはドナーの能力に合わせて選択される。ドナードーパントは、n型導電性を備えたものであり、アクセプタドーパントは、p型導電性を備えたものである。好ましいドーパント原子は、n型およびp型のドーパント原子を含む。特に好ましいn型ドーパントは、N、P、As、Sb、Bi、およびそれらの混合物を含む。特に好ましいp型ドーパントは、B、Al、Ga、In、Tl、およびそれらの混合物を含む。
【0041】
昇華成長の一般的なスキームは、本明細書の背景技術の部分とともに、当業者に周知の他のソースにも簡潔に示されている。典型的に、サセプタ14が応答する周波数を有する電流が、誘導コイル16を流れて、グラファイトサセプタ14を加熱する。絶縁体18の量および配置は、サセプタ14が、典型的に、約2000℃を超える昇華温度までパウダーソース20を加熱すると、パウダーソース20と成長結晶26との間に熱勾配を生じるように選択される。熱勾配は、種結晶22、その後、成長結晶の温度を炭化ケイ素ソースの温度付近であるが、それよりも低い温度に維持するように確立されることで、炭化ケイ素が昇華して(Si、SiC、およびSiC)、最初に種結晶の上に、その後、成長結晶の上に凝縮すると生成される蒸発した化学種を熱力学的に促進させる。例えば、米国特許第4866005号明細書を参照されたい。
【0042】
所望の結晶サイズに達した後は、システムの温度を約1900℃より低くした後、圧力を約400torrより高い圧力まで上昇させることによって、成長を終了させる。
【0043】
昇華成長プロセスの完了後、結晶をアニールすることがさらに望ましいこともある。結晶は、約30分よりも長い期間、成長温度以上の温度でアニールされてもよい。
【0044】
明確にするために、「熱勾配」という単数形の用語を本明細書において使用するが、当業者であれば、サセプタ14にはいくつかの勾配が共存することが望ましい場合もあり、軸方向と半径方向の勾配として、または複数の等温線として細かく分類することもできることを理解されたい。
【0045】
温度勾配および他の条件(圧力、キャリアガスなど)が適切に維持されれば、全体的な熱力学的現象により、蒸発した化学種が、最初に種結晶22上に凝縮し、その後、種結晶22として同じポリタイプにある成長結晶26上に凝縮するように促進される。
【0046】
背景技術に一般に述べたように、電子デバイスの性能特性は、典型的に、様々なデバイス部分の結晶品質が高まるにつれ向上する。このように、本発明のウェハの欠陥低減特性により、同様に、改良されたデバイスが得られる。特に、マイクロパイプ密度が20cm−2以下まで下がると、高出力高電流デバイスをより一層利用できるようになる。
【0047】
このように、本発明は、別の態様として、低欠陥100mm炭化ケイ素ウェハ上に形成された複数の電界効果トランジスタである。各電界効果トランジスタは、少なくとも100mm直径と、約7〜22cm−2のマイクロパイプ密度を有するバルク単結晶炭化ケイ素基板ウェハを含む。
【0048】
本発明は、別の態様として、低欠陥100mm炭化ケイ素基板44上に形成された複数の金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)42である。図5は、基本的なMOSFET構造を模式的に示した断面図である。各MOSFET42は、少なくとも約100mm直径と、22cm−2、場合によっては約7〜22cm−2、さらなる他の場合において、現時点では予測であるが7cm−2未満のマイクロパイプ密度のバルク単結晶炭化ケイ素基板ウェハ44を含む。バルク単結晶基板44は、第1の表面48と第2の表面50を互いに対向するように有している。基板上のエピタキシャル層が、ソース52、チャネル56、およびドレイン54の各部分を有し、チャネル56は、酸化物層62を通ってゲートコンタクト64によって制御される。ソースコンタクト58およびドレインコンタクト60はそれぞれ、ソース部分52およびドレイン部分54上にある。MOSFETおよびMOSFETの組み合わせ並びにそれらの変形例の構造および動作は、当技術分野においてよく理解されているものであり、したがって、図5およびその記載は、特許請求された本発明を制限するものではなく、例示的なものである。
【0049】
図6を参照すると、本発明は、別の態様として、低欠陥100mm炭化ケイ素上に形成された複数の金属半導体電界効果トランジスタ(MESFET)66である。各MESFET66は、少なくとも約100mmおよび約7〜22cm−2の間のマイクロパイプ密度を有するバルク単結晶炭化ケイ素基板ウェハ68を含む。基板68は、第1の表面70と第2の表面72を互いに対向するように有している。基板68の第1の表面70上に、導電チャネル74が位置する。オームソースコンタクト76およびドレインコンタクト78が、導電チャネル74上に位置する。ソース76とドレイン78の間の導電チャネル74上に金属ゲートコンタクト80が位置する。この金属ゲートコンタクト80は、バイアスがかけられると、アクティブチャネルを形成する。
【0050】
当技術分野で知られているように、本発明に係る炭化ケイ素ウェハ上に、2つ以上のタイプのデバイスが配置されてもよい。含まれてもよいさらなるデバイスは、接合電界効果トランジスタ、ヘテロ電界効果トランジスタ、ダイオード、および当技術分野で公知の他のデバイスである。これら(および他の)デバイスの構造および動作は、当技術分野でよく理解されているものであり、必要以上の実験を行うことなく、本明細書に記載され請求されている基板を使用して実施され得る。
【実施例】
【0051】
本発明に係る一連のSiCブールを形成した。表1に、上述した計数方法によって測定したマイクロパイプ密度を、これらのブールの各々に対して示す。
【0052】
【表1】




【0053】
本明細書および図面に、本発明の典型的な実施形態を開示してきた。特定の用語は、一般的かつ説明的な意味でのみ使用したにすぎず、限定的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲において示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約100mmの直径と、約25cm−2未満のマイクロパイプ密度とを有する高品質のSiC単結晶ウェハ。
【請求項2】
前記マイクロパイプ密度が約20cm−2未満である請求項1に記載のSiC結晶ウェハ。
【請求項3】
前記マイクロパイプ密度が約7cm−2未満である請求項1に記載のSiC結晶ウェハ。
【請求項4】
前記結晶が、3C、4H、6H、2Hおよび15Rポリタイプからなる群から選択されるポリタイプを有する請求項1に記載のSiC結晶ウェハ。
【請求項5】
4Hポリタイプと、7〜22cm−2の表面上にマイクロパイプ密度とを有する請求項1に記載のSiC結晶ウェハ。
【請求項6】
前記ウェハが、4Hポリタイプを有し、その表面上に約545〜1730個のマイクロパイプを有する請求項1に記載のSiC結晶ウェハ。
【請求項7】
前記表面マイクロパイプ密度が、前記表面上にある全マイクロパイプの総数を、前記ウェハの表面積で割ったものを表す請求項1〜6のいずれか一項に記載のSiC結晶ウェハ。
【請求項8】
前記表面マイクロパイプ密度が、マイクロパイプ欠陥を優先的に強調するエッチングの後の前記表面上の全マイクロパイプの総数を表す請求項7に記載のSiC結晶ウェハ。
【請求項9】
前記表面マイクロパイプ密度が、溶融水酸化カリウムで表面のエッチングの後の前記表面の全マイクロパイプの総数を表す請求項8に記載のSiC結晶ウェハ。
【請求項10】
4Hポリタイプと、25cm−2未満の表面上のマイクロパイプ密度と、前記炭化ケイ素ウェハの前記表面上のIII族窒化物層とを有する請求項1に記載のSiC結晶ウェハ。
【請求項11】
前記III群窒化物層が、GaN、AlGaN、AlN、AlInGaN、InN、AlInNおよびそれらの混合物からなる群から選択される請求項10に記載のSiC結晶ウェハ。
【請求項12】
請求項1に記載の炭化ケイ素ウェハと、前記ウェハのいくつかの部分上にある複数のそれぞれのIII族窒化物エピタキシャル層とを備える複数の半導体デバイス前駆体。
【請求項13】
第1の表面と第2の表面が互いに対向したバルク単結晶炭化ケイ素基板と、
前記炭化ケイ素基板上の複数のデバイスと
を備えた請求項1に記載のSiC結晶ウェハであって、
前記デバイスの各々が、
前記基板上に位置したエピタキシャル層であって、このエピタキシャル層を第1の導電型のソース部分、チャネル部分、およびドレイン部分にするための適切なドーパント原子の濃度を有するエピタキシャル層と、
前記チャネル部分上の金属酸化物層と、
前記金属酸化物層上の金属ゲートコンタクトであって、この金属ゲートコンタクトにバイアスがかけられたときにアクティブチャネルを形成する金属ゲートコンタクトと
を備えた請求項1に記載のSiC結晶ウェハ。
【請求項14】
第1の表面と第2の表面が互いに対向したバルク単結晶炭化ケイ素基板と、
前記炭化ケイ素基板上の複数のデバイスと
を備えた請求項1に記載のSiC結晶ウェハであって、
前記デバイスの各々が、
前記基板上の導電チャネルと、
前記導電チャネル上のソースおよびドレインと、
前記ソースと前記ドレインの間の前記導電チャネル上の金属ゲートコンタクトであって、この金属ゲートコンタクトにバイアスがかけられたときにアクティブチャネルを形成する金属ゲートコンタクトと
を備えた請求項1に記載のSiC結晶ウェハ。
【請求項15】
第1の表面と第2の表面が互いに対向したバルク単結晶炭化ケイ素基板と、
前記単結晶炭化ケイ素基板上に位置する複数の接合電界効果トランジスタと
を備えた請求項1に記載のSiC結晶ウェハ。
【請求項16】
第1の表面と第2の表面が互いに対向したバルク単結晶炭化ケイ素基板と、
前記単結晶炭化ケイ素基板上に位置する複数のヘテロ電界効果トランジスタと
を備えた請求項1に記載のSiC結晶ウェハ。
【請求項17】
第1の表面と第2の表面が互いに対向したバルク単結晶炭化ケイ素基板と、
前記単結晶炭化ケイ素基板上に位置する複数のダイオードと
を備えた請求項1に記載のSiC結晶ウェハ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−18704(P2013−18704A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−193298(P2012−193298)
【出願日】平成24年9月3日(2012.9.3)
【分割の表示】特願2008−244459(P2008−244459)の分割
【原出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(592054856)クリー インコーポレイテッド (468)
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.
【Fターム(参考)】