説明

低収縮多官能基化SSQ樹脂

本発明は、低収縮多官能基化シルセスキオキサン(SSQ)誘導体、これらのSSQを含むナノコンポジット材料、及び生体適合材料における重合性樹脂としての該ナノコンポジット材料の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
[0001]本発明は、低収縮多官能基化シルセスキオキサン(SSQ)誘導体、これらのSSQを含むナノコンポジット材料、及び生体適合性材料における重合性樹脂としての該ナノコンポジット材料の使用に関する。
【0002】
[背景]
[0002]1960年代に臨床歯科の診療を大変革した歯科用コンポジットは、合成ポリマー、無機フィラー、開始剤、活性化剤、安定剤、及び(強化フィラーをポリマーマトリックスに結合させる)シランカップリング剤から構成される複合の、歯の色をした充填材料である。それらの導入以来、それらは、前部及び後部の修復物、間接インレー/アンレー、小窩裂溝封鎖材及び耐磨耗性義歯として広範に利用されている。それらの普及、並びに配合、原料及び硬化技術における目覚しい改良にもかかわらず、現在利用できるコンポジット材料は依然として、重合収縮及びそれに伴う応力という本来的な欠点を有する。
【0003】
[0003]公知の歯科用コンポジットの全ては、重合処理の間に2〜14%の体積収縮を示す2〜6。コンポジットが収縮するとき、コンポジット/歯の界面で応力が発生する。結合系が重合の力に耐えることができず、したがって、漏洩及び最終的に齲蝕を生じる場合、これらの収縮応力は周縁の開口を引き起こし得る。周縁適合及び結合強度を向上させた、より新しい世代の結合剤の配合の劇的な改良にもかかわらず、完全な周縁密封はまだ得られていない。クラスI及びIIの虫歯のための樹脂系コンポジット修復物について3から6年の期間行われた臨床研究でも、二次及び/又は再発齲蝕が、修復不良の主な理由であることが示され、重合収縮は、歯構造とポリマー系修復材料の間の密封に影響を与える最も重要な因子の一つとして言及されている。したがって、コンポジット系樹脂の主要で、最も重要な欠点は、重合処理の間の収縮である。
【0004】
[0004]コンポジット材料の全体収縮は、プレ−ゲル段階及びポスト−ゲル段階に分けることができる。プレ−ゲル重合の間に、コンポジットは流れることができ、その構造内の応力は緩和される。ゲル化後に、粘度は著しく増加し、収縮による応力を補償できない。したがって、ポスト−ゲル重合は、周囲の歯構造及びコンポジット歯結合においてかなりの応力をもたらし、これは、結合低下、微小漏洩、術後感受性、歯髄病変及び再発齲蝕の原因となり得る8〜11。これらの応力はまた、コンポジット/歯の界面で欠陥を生じさせ、歯に破損を起こさせ得る12。したがって、歯科用コンポジットの重合収縮の低減は、歯科のための新たなモノマーの開発において主な焦点になっている。
【0005】
[0005]重合収縮及びそれに伴う応力の問題を克服するために、いくつかの系が探索されている。例えば、重合中の二重−開環過程によって膨張するスピロ−オルトカーボネート(SOC)13などの開環モノマー、熱、イオン性及びフリーラジカル開始剤によって重合することができるスピロオルトエステルを含むアクリレート及びメタクリレート14、オキセタン15、オキシビスメタクリレート16及び高度分岐メタクリレート17が開発されている。これらのポリマーは有望ではあるが、機械的特性、水分吸着、溶解度、硬化時間及び膨張を均衡させる問題が依然として存在する。
【0006】
[0006]歯科用修復コンポジットの開発における最近の一手法は、有機−無機ハイブリッドナノコンポジット材料の分野においてであった18、19。例えば、一般に多面体オリゴマシルセスキオキサン(POSS(商標))として知られている、シルセスキオキサン(SSQ)と称される縮合環状シロキサンケージ型材料のクラスが知られている。シリカの硬い骨格と似た骨格を有するオクタマーSSQは、直径0.53nmを有する無機/有機ハイブリッド材料の独特のクラスである。そのさまざまな化学反応性は、多くの魅力的な特性をもつ広範なハイブリッド材料20〜26の開発を可能とするだけでなく、フォトレジスト、耐磨耗コーティング、液体表示要素、電子回路板上の絶縁層及び光ファイバーコーティングにおいても多く利用されてきた25、26。これらのナノサイズ分子の取り込みも、改良された溶解性、接着性、共重合性、グラフト性及びブレンド性の利点を与える18、27
【0007】
[0007]しかし、改良された安定性、架橋密度及び充填性を有するSSQ化合物を得ることを目的とする多くの開発が今もなお行われている。特に、当技術分野では、他の有利な物理的特性を犠牲にすることなく最小の収縮を示す歯科用樹脂材料に対して必要性が引き続き存在する。
【0008】
[概要]
[0008]本発明の目的は、低収縮性多官能基化シルセスキオキサン(SSQ)を合成及び提供することであった。
【0009】
[0009]第1の態様では、本発明は、式(I)で表される多官能基化SSQ誘導体を提供する。
【化1】


[式中、nは6〜14の整数であり、zは1.5n又は2.5nであり、R、R、R、及びRは、C〜C20アルケン、C〜C20アルキン、アリル、アリルグリシジルエーテル、C〜C20アルキルアルケン、アルキルアルキン、アクリレート、メタクリレート、ベンゾオキサジン、エポキシド及びオキセタンからなる重合性残基の群から独立して選択され、Rは、
【化2】


(ここで、R、RII、RIII及びRIVは、水素、C〜C20アルキル及びC〜C10アリールから独立して選択され、mは1〜10の整数であり、q、r及びsは独立して0〜10の整数である。)
から独立して選択され、a、b、c及びdは、独立して0〜nの整数であり、a+b+c+d=nである。
但し、zが1.5nである場合、R、R、R及びRの少なくとも1つは、
【化3】


ではないことを条件とする。]
【0010】
[0010]第2の態様では、本発明は、コモノマーとして少なくとも1種の本発明の多官能基化シルエスキオキサン(SSQ)誘導体を含む重合性モノマー、及び、硬化系、を含むナノコンポジット材料を提供する。
【0011】
[0011]さらなる態様では、本発明は、生体適合性材料のための重合性樹脂としての本発明のナノコンポジット材料の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】[0012]本発明のSSQ化合物の2つの一般的な調製実施例を例証する図である。
【図2】[0013]8個のSi原子をもつケージを有する本発明のSSQ化合物の一つの調製のための一般的な反応スキームの実施例を例証する図である。
【図3】[0014]8個のSi原子を有する本発明の例示的な化合物のための一般的な調製スキームのさらなる実施例を例証する図である。
【図4】[0015]アリルエーテルメタクリレート、プロパルギルメタクリレート及びビニルシクロヘキセンエポキシドの置換基を有する本発明のSSQ化合物を例証する図である。
【図5】[0016]本発明の4種のSSQ化合物を例証する図である。
【図6】[0017]光硬化の間の、本発明のSSQ化合物及び従来技術の組成物の平均収縮を示すグラフを例証する図である。
【図7】[0018]光重合後の、本発明のSSQ化合物及び従来技術の組成物の平均収縮を示すグラフを例証する図である。
【図8】[0019]本発明のSSQ化合物及び従来の組成物の平均硬さを示すグラフを例証する図である。
【図9】[0020]本発明のSSQ化合物及び従来の組成物の平均弾性率を示すグラフを例証する図である。
【図10】[0021]本発明のSSQ化合物及び従来の組成物の硬化深度を示すグラフを例証する図である。
【図11】[0022]本発明のSSQ化合物及び従来の組成物について得られた平均水分吸着を示すグラフを例証する図である。
【図12】[0023]3成分開始系を用いるエポキシ基の重合を例証する図である。
【図13】[0024](HSiMeOSiO1.5の調製のための一般的な反応スキームの実施例を例証する図である。
【0013】
[発明の詳細な説明]
[0025]以下の説明では、本発明の方法の非限定的な実施形態が説明される。
【0014】
[0026]本発明によれば、驚くべきことに、新規なクラスの多官能基化シルセスキオキサン(SSQ)誘導体を容易に合成することができ、ここで、前記化合物は、生体適合性材料、例えば、歯科用途のための低収縮モノマーとして用い得ることが見出された。本化合物は、高収率で単離されて、熱的及び/又は光化学的の両方で重合し、透明なハイブリッドポリマーを生成し得る高度に反応性の粘性液体を形成する。意外にも、本発明のSSQは、改善された耐破損性とともに、硬化後に改善された低収縮を示すことが発見された。
【0015】
[0027]本発明の文脈では、「含む(comprising)」又は「含む(comprises)」という用語は、「含む(comprising)」という語に続くいかなるものも含むことを意味するが、これに限定されない。したがって、「含む(comprising)」の用語の使用では、列挙された要素は、必要又は必須であるが、他の要素は任意選択であり、存在してもしなくてもよいことを示す。
【0016】
[0028]特に断りのない限り、以下の用語は、本発明で述べられた任意の基を指す。
【0017】
[0029]「アルキル」という用語は、単独又は組合せで、完全に飽和の脂肪族炭化水素を指す。特定の実施形態では、アルキルは場合によって置換されている。特定の実施形態では、アルキルは、1〜30個の炭素原子、例えば、1〜20個の炭素原子を含み、ここで(以下に示される定義のいずれかにおいて本明細書に現れる場合はいつでも)、数値範囲、例えば、「1〜20」又は「C〜C20」は、所定の範囲内の各整数を指し、例えば、「C〜C20アルキル」は、例えば、アルキル基が、1個のみの炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子など、最大20個(20個を含む)の炭素原子を含むことを意味する。アルキル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、tert−アミル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
[0030]「アルケン」という用語は、単独又は組合せで、1つ又は複数の炭素−炭素二重結合を有する脂肪族炭化水素を指す。特定の実施形態では、アルケン基は場合によって置換されている。アルケン基の例には、エテニル、プロペニル、ブテニル、1,4−ブタジエニル、ペンテニル、ヘキセニル、4−メチルヘキサ−1−エニル、4−エチル−2−メチルヘキサ−1−エニルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
[0031]「アルキン」という用語は、単独又は組合せで、1つ又は複数の炭素−炭素三重結合を有する脂肪族炭化水素を指す。特定の実施形態では、アルキン基は場合によって置換されている。アルキン基の例には、エチニル、プロピニル、ブチニルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
[0032]「アルキルアルケン」という用語は、アルケン基に結合したアルキル基を含む基を指す。特定の実施形態では、アリールアルケンは場合によって置換されている。アルキルアルケンの例には、(CH−CH(CH)、(CH−C(CH)(CH)(式中、wは1〜15の整数である)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
[0033]「アルキルアルキン」という用語は、アルキン基に結合したアルキル基を含む基を指す。特定の実施形態において、アリールアルキンは場合によって置換されている。アルキルアルキンの例には、(CH−C(CH)(式中、wは1〜15の整数である)などが含まれるが、これに限定されない。
【0022】
[0034]「アクリレート」という用語は、式:
【化4】


で表される基を指す。Xは、C〜C24アルキル、[(CHO]、C〜C12エーテル、ビニル基又はアリル基であってもよく、ここで、rは、1〜10の整数である。アクリレートの例には、アクリレート、プロパルギルアクリレート、アリルアクリレート、2−アリルオキシエチルアクリレート、2−プロパルギルオキシエチルアクリレート、1−ヘキセニルアクリレートなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
[0035]「メタクリレート」という用語は、式:
【化5】


で表される基を指す。Xは、C〜C24アルキル、[(CHO]、C〜C12エーテル、ビニル基又はアリル基であってもよく、ここで、rは、1〜10の整数である。メタクリレートの例には、ジ(プロピレングリコール)アリルエーテルメタクリレート、プロパルギルメタクリレート、2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、プロパルギルメタクリレート、プロパルギルアクリレートなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
[0036]「エポキシド」という用語は、1つ又は複数のエポキシド(オキシラン)官能性を有する化合物を指し、モノマー性エポキシ化合物、並びにオリゴマー又はポリマータイプのエポキシドを含み、これらは、脂肪族、脂環式、芳香族、又はヘテロ環式であり得る。エポキシドは、低分子量のモノマー物質からオリゴマーから高分子量ポリマーまで変わることができ、エポキシドの主鎖及び置換基の性質も大きく変わることができる。エポキシドの例には、
【化6】


[式中、xは1〜10の整数である]
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、4−ビニル−シクロヘキサンエポキシドなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
[0037]「場合によって置換された」という用語は、1個もない、1個、又は1個を超える水素原子が、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、カルボニル、ニトロ、シリル、及びアミノ(モノ−及びジ−置換アミノ基を含む)から独立して選択される1個又は複数の基で置き換えられている基を指す。2個以上の水素原子が置換されている実施形態では、該置換基は連結して、環を形成してもよい。
【0026】
[0038]一実施形態では、本発明は、式(I)による多官能基化シルセスキオキサン(SSQ)に関する。
【化7】


[式中、nは6〜14の整数であり、zは1.5n又は2.5nであり、R、R、R、及びRは、C〜C20アルケン、C〜C20アルキン、アリル、アリルグリシジルエーテル、C〜Cアルキルアルケン、アルキルアルキン、アクリレート、メタクリレート、ベンゾオキサジン、エポキシド及びオキセタンからなる群より独立して選択され、Rは、
【化8】


(ここで、R、RII、RIII及びRIVは、水素、C〜C20アルキル、及びC〜C10アリールから独立して選択され、mは1〜10の整数であり、q、r及びsは、独立して0〜10の整数である)
から独立して選択され、a、b、c及びdは、独立して0〜nの整数であり、a+b+c+d=nである。
但し、zが1.5nである場合、R、R、R及びRの少なくとも1つは、
【化9】


ではないことを条件とする。]
【0027】
[0039]上記式(I)では、基本のシルセスキオキサン構造は、(Si)で示される。z=1.5nの場合、シルセスキオキサン構造における各ケイ素原子は、平均1倍半(sesqui)の酸素原子に結合している。本発明の一実施形態では、追加の酸素原子は、ケージの各それぞれのSi原子に連結しており、(Si2.5n)、すなわち、上記式において、z=2.5nの一般式となる。式(Si1.5n)における後者の酸素原子、及びSi−原子に、(架橋)基Rが結合している。シルセスキオキサン分子は、剛性の熱安定性ケイ素−酸素骨格を有する。nの数によって、シルセスキオキサンは三次元のケージを形成し、その場合に、シルセスキオキサンは、それぞれのSi原子で場合によって置換されている。
【0028】
[0040]nは、6〜14の整数であり、すなわち、n=6については、6個のSi−原子を有するケージが形成され、ここで、例えば、n=8であれば、8面体のケージが得られる。nは、6〜14のいずれの整数でもよく、すなわち、nは、6、7、8、9、10、11、12、13又は14であってもよい。一実施形態では、nは、6、8、10、12又は14の偶数である。さらなる一実施形態では、n=8である。
【0029】
[0041]既に上記したとおり及び式(I)に示したとおり、SSQの各Si原子(又は、一般式(Si2.5n)の場合は、Si−O−基)は、R置換基で置換されている。Rは、重合性残基R、R、R、及びRの1つで更に置換されている架橋基(又はスペーサー基)である。Rは、
【化10】


であり得るが、これらに限定されない。Rの例は、
【化11】


などであり得るが、これらに限定されない。
【0030】
[0042]重合性残基である、R、R、R、及びRは、Rを介してSSQケージに結合している。これらの置換基は、例えば、SSQケージに結合していない末端で、少なくとも1個の重合性官能基を有する。本発明の一実施形態では、R、R、R、及びRの例は、C〜C20アルケン、C〜C20アルキン、アリル、アリルグリシジルエーテル、C〜C20アルキルアルケン、アルキルアルキン、アクリレート、メタクリレート、ベンゾオキサジン、エポキシド、オキセタンなどであり得るが、これらに限定されない。R、R、R、及びRのそれぞれは、本発明の官能基化SSQに存在し得るが、ここで、それらは同一であっても異なっていてもよい。また、R、R、R、及びRの1個のみ、2個又は3個が官能基化SSQに存在していてもよい。R、R、R、及びRのそれぞれの実際の数は、0〜nの整数である添え字a、b、c及びd(ここで、a+b+c+d=nである)で示される。これは、SSQケージのあらゆるSi原子が、重合性残基の1個で置換されていることを意味する。例えば、一実施形態では、aはnであり得る。別の実施形態では、aはn−2であり得、bは2であり得、又はaとbは同じであり得、例えば、n=8である場合に、それぞれaとbは4であり得る。置換基R、R、R、及びRのそれぞれの可能な組合せは、本発明において好適である。
[0043]本発明の一実施形態では、a+b=n(すなわち、c+d=0)である。この場合、例えば、R及びRは、ジ(プロピレングリコール)アリルエーテルメタクリレート、4−ビニル−シクロヘキセンエポキシド及びプロパルギルメタクリレートから独立して選択され得る。
【0031】
[0044]本発明の前駆体SSQ化合物の一般的な調製方法の例は、図1〜図3を利用することができる。基本的に、2つの主な調製手順について述べることができる。方法1は、図1のスキーム1で例証される。テトラアルキルオキシシランをテトラアルキルアンモニウム塩、例えば、限定はしないが、水酸化テトラメチルアンモニウムなどと水/アルコール混合物中で反応させる。「Si」:「N」:「HO」のそれぞれ1:1:10M溶液を調製し得る。しかし、この化合物のさらなる比は、本発明において適切であり得る。反応条件に依存して、6〜14個のSi原子を有するSSQケージを得ることができ、ここで、それぞれのSi原子は、(ON(CH)基で置換されている。このSSQケージは、例えば、適切なシラン化合物と更に反応させる。例えば、ジメチルクロロシランなどの置換クロロシランを用いて、それぞれの置換SSQケージを得ることができる。
【0032】
[0045]図1のスキーム2では、前駆体SSQケージの調製のためのさらなる例が例証される。スキーム2に記載した方法は、より腐食性のモノマーを利用しており、その融点は室温の直ぐ上にあるので揮発性である。この特定の実施例では、トリクロロシラン(HSiCl)又は(HSi(OR))を、触媒系を用いて反応させ、あらゆるSi原子上に置換基として水素を有するそれぞれのSSQケージを調製する。
【0033】
[0046]図2及び図3は、上記調製経路の具体的な実施例であり、ここで、n=8である。
【0034】
[0047]図4は、重合性部分を前駆体SSQケージに連結させるための可能な合成経路を記述する。前駆体SSQケージと反応させる化合物は、二官能性でなければならない。この場合の「二官能性」は、これらの化合物が、前駆体SSQケージと反応することができる1個の官能基及び重合性であり得るもう1個の官能基を有しなければならないことを意味する。例えば、(置換)アクリレート、メタクリレート及びエポキシドは、前駆体SSQケージと反応させ得る。この反応工程では、Pt触媒などの適切な触媒を用いることができる。例えば、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン[Pt(dvs)]、白金ジシクロペンタジエン[Pt(dcp)]、ヘキサクロロ白金酸(HPtCl)などを用いることができるが、これらに限定されない。この調製方法のための例証的実施例を以下に示す。
【0035】
[0048]官能基化SSQに基づく様々な新規な低収縮性有機/無機ハイブリッド材料が成功裏に合成及び特徴づけされた。例えば、メタクリレート及びエポキシの置換基が得られている。したがって、SSQケージ当たり異なる官能基を有する化合物が本発明で可能となった。化合物は全て、高収率(>80%)で得られ、安価な出発原料に基づいて合成された。得られた化合物は、室温で粘性の液体であり、例えば、歯科用材料としてそれらを理想的とする最大約48%のマスク化シリカを含んだ。本発明によって、異なる官能基比を有する新規な低収縮性の完全官能基化SSQ樹脂が得られた。
【0036】
[0049]本発明のさらなる態様は、ナノコンポジット材料に関する。ナノコンポジット材料の定義には、明らかに異なる成分から作られ、ナノメートル尺度で混合された、一次元、二次元、三次元及び非晶質材料などの多種多様な系が包含される。これらの材料は、ナノ粒子を巨視的な試料材料に導入することによって作製され得る。ナノ粒子を巨視的な試料材料に添加後に、得られたナノコンポジットは、劇的に向上した特性を示し得る。例えば、それは、剛性及び強度などの機械的特性の向上をもたらし得る。
【0037】
[0050]本発明のナノコンポジット材料は、コモノマーとして上記多官能基化シルセスキオキサン(SSQ)誘導体の少なくとも1種を含む重合性モノマー及び硬化系を含む。
【0038】
[0051]ナノコンポジット材料の重合性モノマーは、本発明の多官能基化シルセスキオキサン(SSQ)誘導体の少なくとも1種、及び少なくとも1種のさらなるモノマー(これは、ビスフェニルグリシジルメタクリレート(Bis−GMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ウレタンジメタクリレート(UDMA)、エトキシル化ビスフェノール−A−ジメタクリレート(bis−EMA)、デカンジオールジメタクリレート(DMA)、ウレタンテトラメタクリレート(UTMA)、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヘキサンジオールメタクリレート、ドデカンジオールジメタクリレート、ビスフェノール−A−ジメタクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N,N−ジメチル−p−トルイジン又はそれらの混合物であってもよいが、これらに限定されない)を含む。
【0039】
[0052]本発明によるナノコンポジット材料は、硬化系を含み得る。硬化系は、ナノコンポジット材料の重合を補助する。硬化系には、重合開始剤、重合促進剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤及び当技術分野で知られている他の添加剤の少なくとも1種が含まれ得るが、これらに限定されない。硬化系のそれぞれの化合物の量は、全ナノコンポジット材料に対して約0.1〜約5重量%であり得るが、これに限定されない。本発明の一実施形態では、硬化系は、約0.5〜約3重量%、例えば、約1重量%の量で用いることができる。
【0040】
[0053]好適な重合開始剤は、UV−活性化硬化又は可視光線−活性化硬化組成物において用いることができる開始剤である。例えば、可視光線硬化性組成物は、限定はしないが、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、DL−カンファーキノン(CQ)、及びベンジルジケトンを含む、光−感受性化合物を用いる。UV−活性化硬化又は可視光線−活性化硬化(約230〜750nm)のいずれかが受け入れられる。光開始剤の量は、所望される硬化速度に従って選択される。最小触媒有効量は一般に、全樹脂組成物の約0.01重量%であり、より遅い硬化をもたらす。より速い速度の硬化は、全材料の約0.01パーセントを超え、約5重量%までの範囲の触媒量で達成される。
【0041】
[0054]重合促進剤は、アミン、アンモニア、酸などであり得るが、これらに限定されない。例えば、当技術分野でよく知られている様々な有機第三級アミンが用いられ得る。可視光線硬化性歯科用コンポジット材料では、第三級アミンは一般に、例えば、全材料の約0.05〜約5.0重量%の量のアクリレート誘導体である。本発明の一実施形態では、アミンは、第三級アミン、例えば、N(C、N(C、エチル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート(EDMAB)、2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エタノール、N,N−ジメチル−p−トルイジン(DMPT)、ビス(ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート(DEAEMA)などであり得るが、これらに限定されない。
【0042】
[0055]安定剤は、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルパラクレゾール、ヒドロキシルメトキシベンゾフェノンなどであり得るが、これらに限定されない。
【0043】
[0056]紫外線吸収剤は、全ナノコンポジット材料の約0.05〜約5.0重量%の量で用いられ得る。このようなUV吸収剤は、入射紫外線による樹脂の脱色を回避するために、可視光線硬化性歯科用修復材料で特に望ましい。好適なUV吸収剤は、ベンゾフェノンなどであり得る。
【0044】
[0057]一実施形態では、本発明によるナノコンポジット材料は、少なくとも1種のフィラーを更に含み得る。少なくとも1種のフィラーは、1種又は複数の無機フィラーを含み得る。例えば、フィラーには、樹脂マトリックス自体に、又は(樹脂マトリックス及びフィラーの両方に共有結合している)カップリング剤に共有結合していることができるものが含まれ得る。好適な充填物質の例には、シリカ、石英、シリカガラス、ケイ酸ストロンチウム、ホウケイ酸ストロンチウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸アルミナリチウム、非晶質シリカ、アンモニア処理又は脱アンモニア処理リン酸カルシウム、リン酸三カルシウムアルミナ、ジルコニア、酸化スズ、チタニア、アパタイト、ヒドロキシアパタイト、変性ヒドロキシアパタイト組成物、酸化ビスマス、硫酸バリウム、次炭酸ビスマスなどが含まれるが、これらに限定されない。フィラーは、約0.1〜約5.0ミクロンの範囲の粒径を有し得る。
【0045】
[0058]シリカガラスは、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、ホウ素、イットリウム、アルミノホウケイ酸塩ガラス、ストロンチウム−アルミノ−フルオロ−ケイ酸塩ガラス若しくはコロイド状ガラス、又は他のフッ化物放出性ガラスを含み得る。
【0046】
[0059]ナノコンポジット材料中の全フィラーの量は、広範に変わることができ、全組成物の約1〜約90重量%の範囲であり得る。用いられる量は、ナノコンポジット材料の特定の用途の要件によって決定される。したがって、歯科用材料、例えば、歯冠及びブリッジ材料として用いられる場合、それは一般に、約60〜約90重量%のフィラーを含み;合着セメントは、約20〜約80重量%のフィラーを含み;シーラントは一般に、約1〜約20重量%のフィラーを含み;接着剤は一般に、約1〜約30重量%のフィラーを含み;修復材料は、約50〜約90重量%のフィラーを含み、全ての場合に残部は、樹脂組成物及び硬化系である。この点において、フィラーの量は、フィラー及び樹脂の大きさ及び種類に依存し、必要に応じて当業者によって実験的に決定され得ることが留意されるべきである。一部の例証的実施形態では、フィラーは、ナノコンポジット材料の約1〜約90重量%の量、例えば、約10〜約80重量%の量で用いられ得る。一実施形態では、フィラーの量は、約25〜約70重量%、例えば、約63%であり得る。
【0047】
[0060]本発明のさらなる実施形態では、ナノコンポジット材料は、治療薬を更に含み得る。この治療薬は、歯科疾患の治癒又は治療で有益な治療効果を与えることにおいて適切である薬剤として記述され得る。例えば、治療薬は、抗菌剤及び/又は再石灰化(増強)剤であり得る。再石灰化(増強)剤の例証的な例には、カルシウム化合物(リン酸カルシウム又は水酸化カルシウムなど)、フッ素化合物(フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化スズ、フッ化カルシウム、モノフルオロリン酸ナトリウム又はカリウムなど)、又は亜鉛化合物(クエン酸亜鉛、酸化亜鉛又はステアリン酸亜鉛など)が含まれる。このような再石灰化(増強)化合物は、例えば、米国特許第7,300,645号に記載されている。抗菌剤の例証的な例には、クロロヘキシジン、若しくはハロゲン化ジフェニルエーテル、又はトリコサンなどのフェノール系抗菌化合物(米国特許第6,451,291号参照)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
[0061]本発明の多官能基化SSQは、ナノコンポジット材料の全量に対して約1〜約90重量%の量で用いられ得る。一実施形態では、SSQは、ナノコンポジット材料の全量に対して約3〜約50重量%の量、例えば、約5重量%〜約40重量%の量、例えば、ナノコンポジット材料の全量に対して約20重量%の量で用いられる。ナノコンポジット材料で実際に用いられる量は、Siケージ、すなわち、SSQ樹脂の種類に依存し得、必要に応じて当業者によって実験的に決定され得る。上記ナノコンポジット材料は低収縮性材料である。これは、重合後に、その材料の収縮が、従来技術の材料の収縮特性と比較して取るに足りない低さであることを意味する。収縮度は、線収縮率で与えられ得る。コンポジットの重合収縮は、重合中のモノマー間の結合形成によって生じる。ファンデルワールス力によるモノマー間の距離は、形成されるポリマーの共有結合の距離に変換される。収縮の大きさは、形成される共有結合の数及びモノマーの大きさによって決定される。線収縮率では、直線寸法におけるポスト−ゲル変化が測定される。
【0049】
[0062]一実施形態では、本材料は、約4.0未満、例えば、約2.0未満の線収縮率を有する。本発明の一実施形態では、線収縮率は、約0.25〜約0.5、例えば、約0.28〜約0.4であり得る。線収縮率は、例えば、Julita Jakubiak & Lars Ake Linden、Polimery(2001年)、46巻(7〜8号)、522〜528頁に記載された式を用いて体積収縮パーセントとして計算することもできる。
【0050】
[0063]ナノコンポジット材料の必須及び任意選択の原料全ては、同時又は連続的に混合され得る。進行の一様式では、重合性モノマー及びSSQ並びに任意の追加のフィラーが混合される。任意選択の硬化系がこの混合物に添加され、これは再度撹拌され、必要に応じて、保存又は使用される。硬化は、UV光線を用いて又は混合物の温度を上昇させることによって開始され得る。本発明の別の実施形態では、重合性モノマー、SSQ、光開始剤及び活性化剤が混合され、続けてフィラーが混合される。その後、硬化は、青色の可視光線硬化装置を用いて開始され得る。
【0051】
[0064]本発明のナノコンポジット材料は、生体適合性材料のための重合性樹脂として用いられ得る。生体適合性材料は、例えば、歯科用材料であり得る。歯科用材料は、病んだ又は損傷した歯に健康及び機能を回復させるために用いられる材料である。唾液の腐食性並びに温度変化による歯構造の膨張及び収縮は、歯科用材料に対する大きな要求となっている。咀嚼力による回復に耐えるべくもたらされる応力も、大きな要求となっている。歯科用材料は、生体組織に適合しなければならない。口の前部で用いられる場合、材料はまた、美的に好ましくなければならない。適応される時及び場所で用いられる歯科用材料は、歯の成功裏の修復の配置及び保存を確実にするために役立つ。
【0052】
[0065]上記特性の全ては、本発明のナノコンポジット材料で満たされる。本材料は、従来技術で知られている従来の歯科用材料と比較して改善された強度、及び特に収縮特性を有する。更に、本歯科用材料は、さらなる改善された特性、例えば、水分吸着、又は測定せん断結合で表される歯の基体への結合性を有するように配合され得る。本ナノコンポジット材料は、歯の部位に適用され、その後に任意の従来の手段で硬化され得る。本ナノコンポジット材料は、コーティング、レンズ及びプラスチックとして用いることもできる。一実施形態では、この低収縮性ナノコンポジット材料は、直接の修復材として用いることができる。
【0053】
[0066]置換基は、市販の歯科用コンポジットで用いられる現在の化学と合致するように選択されるが、SSQは、剛性の三次元の化学的基本骨格及び「マスク化シリカ」源を与えるために導入される。
【0054】
[0067]カチオン性開始剤は、ナノコンポジットに取り込ませて、エポキシ環が多官能基化SSQのために体積収縮を補償するように開環され得る二重硬化系を可能にさせ得る。SSQ上のエポキシ基は、現行の光硬化装置を用いて、例えば、CQ、ヨードニウム塩及び電子供与体(DMAEMA)を含む三成分開始系を用いて開環され得る(図12)。
【0055】
[0068]実施例で実証されるように、SSQ化合物全てと関連する重合収縮は、対照原料(ビス−GMA/TEGDMA)に比べて著しく低いことが見出された。低収縮及び比較し得る機械的特性を有する材料を得るために、コポリマーとしてのSSQ化合物の効果も評価した。室温で液体であった開発SSQ樹脂は、処理において著しい変化を必要としない。SSQ樹脂は、旧来の方法によって簡単に混合及び共重合させ得る。ポリマー配合物中に混合されるときに、それらは、相分離することなく真の分子分散液を形成する。ポリマー配合物へのSSQ樹脂の包含により、ポリマー特性の劇的な改善ももたらし得る。
【実施例】
【0056】
[0069]以下の実験実施例は、本発明を更に例証するために提供され、本発明の範囲に対して限定的であることは意図されない。
【0057】
[0070]H、13C及び29Si NMR溶液スペクトルは、5mm直径の管においてCDCl中で行い、Bruker DRX 400MHzのNMR分光計を用いて記録した。化学シフトは、内部標準として残留CHClH、13C)及びTMS(29Si)を用いて帰属させた。フーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルは、4cm−1の分解能を有するPerkin Elmer Spectrum 2000 FTIR分光光度計で記録した。液体試料は、NaClプレート上にキャスティングし、固体試料は、KBrペレットに押圧した。各試料について、最小32スキャンを収集した。
【0058】
実施例1:(HSiMeOSiO1.5の調製のための一般手順
[0071]テトラエチルオルトシリケート(SiOEt)を、メタノール/水(MeOH/HO)溶液中水酸化テトラメチルアンモニウム(メタノール中25%)(NMeOH)と反応させ、「Si」:「N」:「HO」において、それぞれ1:1:10M溶液を作製した。室温で48時間を超えて激しく撹拌した後に、定量的収率の「オクタアニオン」を得た。次いで、ヘキサン中クロロジメチルシラン(HSi(CHCl)(O当たり6当量)を含む氷冷溶液中に、この「オクタアニオン」溶液を、1時間激しく撹拌しながら滴下することによって、(HSiMeOSiO1.5の反応を行った。溶媒除去後に、約85%の収率の白色固体を得た。次いで、得られた固体を冷メタノールですすぎ洗いすることによって精製した。生成物は、ジクロロメタン(CHCl)、THF(テトラヒドロフラン)、CHCl、及び非極性溶媒(ヘキサン、ペンタン及びトルエンなど)に可溶性である。次いで、得られたシルセスキオキサン核をその後の合成に用いた。
【0059】
実施例2:ジ(プロピレングリコール)アリルエーテルメタクリレートとオクタキス(ジメチルシロキシ)シルセスキオキサンのPt−触媒による反応
【化12】

【0060】
[0072]Ar下で、撹拌子及び空気冷却器を備えた50mlの丸底フラスコに(HSiMeOSiO1.5(1.0g、0.98mmol)及び無水トルエン(10ml)を添加することによって、反応Aを行った(図3)。この混合物を5分間撹拌し、(HSiMeOSiO1.5を全て溶解させた。ジ(プロピレングリコール)アリルエーテルメタクリレート(2.14g、8.83mmol)、その後にPt(dvs)(無水キシレン中2mmol溶液0.01ml)をこのフラスコ中に滴下した。この混合物を55℃で24時間撹拌させた。反応終了は、FTIRを用いて2145cm−1におけるSiH吸収ピークの消失によってモニターした。高真空ポンプを用いる真空蒸発技術で少量の過剰な反応剤及び溶媒を効率的に除去した。生成物収率95%の粘性液体を得た。H NMR(400MHz,CDCl)(δ,ppm):6.08、5.52(d,16H,CH=CCH(CO))、3.20〜3.70(m,56H,OCH)、1.92(s,24H,CH=CCH)、1.0〜1.4(m,48H,CHCHO)、0.56〜0.60(m,16H,(CHSiCH)、0.12(s,48H,(CHSiCH)。13C NMR(100MHz,CDCl)(δ,ppm):166.81(C=O)、136.63(CHC=CH)、125.10(CHC=CH)、76.72〜69.77(OCH)、23.10(OCHCHCHO)、18.22(CHC=CH)、17.31〜16.20(CHCHCHO)、13.65(Si(CHCH)、−0.44(Si(CH)。29Si NMR(79MHz,CDCl)(δ,ppm):13.0(Si(CH)、−108.8(SiO)。FTIR(cm−1):1718(C=O)、1638(C=C)、1254(Si(CH)、1094(Si−O−Si)。
【0061】
実施例3:ジ(プロピレングリコール)アリルエーテルメタクリレート及び4−ビニル−シクロヘキサンエポキシドと、オクタキス(ジメチルシロキシ)シルセスキオキサンのPt−触媒による反応
【化13】

【0062】
[0073]Ar下で、撹拌子及び冷却器を備えた50mlの丸底フラスコに(HSiMeOSiO1.5(1.0g、0.98mmol)及び無水トルエン(10ml)を添加することによって、反応Bを2工程で行った。この混合物を5分間撹拌し、(HSiMeOSiO1.5を全て溶解させた。4−ビニル−シクロヘキセンエポキシド(0.24g、1.96mmol、2当量)、その後にPt(dcp)(無水キシレン中2mmol溶液0.01ml)をこのフラスコ中に滴下した。この混合物を55℃で24時間撹拌させた。次いで、ジ(プロピレングリコール)アリルエーテルメタクリレート(1.43g、5.90mmol、6当量)をこの反応物に滴下し、更に24時間撹拌させて、反応を終了させた。反応終了は、FTIRを用いて2145cm−1におけるSiH吸収ピークの消失によってモニターした。高真空ポンプを用いる真空蒸発技術で少量の過剰の反応剤及び溶媒を効率的に除去した。生成物収率88%の粘性液体を得た。化合物C及びDの合成について上記合成手順を繰り返した。化合物B:H NMR(400MHz,CDCl)(δ,ppm):6.08、5.53(d,12H,CH=CCH(CO))、3.20〜3.70(m,36H,OCH)、3.11(m,4H,CHOCH,エポキシ)、1.92(s,18H,CH=CCH)、0.95〜1.50、2.00〜2.20(m,54H,CHCHO,SiCHCHCHCHCHCHOCHCH,エポキシ)、0.49〜0.52(m,16H,(CHSiCH)、0.12、0.10(d,48H,(CHSiCH)。13C NMR(100MHz,CDCl3)(δ,ppm):166.81(C=O)、136.63(CHC=CH)、125.10(CHC=CH)、75.77〜69.76(OCH)、53.10〜51.80(CHOCH α,CHOCH β,エポキシ)、35.31〜25.34(CHCHCHCHOCHCH α,CHCHCHCHOCHCH β,エポキシ)、23.97、23.52(SiCHCHCH α,SiCHCHCH β)、23.10(OCHCHCHO)、18.22(CHC=CH)、17.31〜16.20(CHCHCHO)、14.49、14.39(SiCHCH α,SiCHCH β,エポキシ)、13.65(Si(CHCH)、−0.42(Si(CH)。29Si NMR(79MHz,CDCl)(δ,ppm):13.2(Si(CH)、−108.8(SiO)。FTIR(cm−1):1719(C=O)、1638(C=C)、1254(Si(CH)、1094(Si−O−Si)、910(C−O−C,エポキシ)。
【0063】
【化14】

【0064】
化合物C:H NMR(400MHz,CDCl)(δ,ppm):6.07、5.52(d,8H,CH=CCH(CO))、3.20〜3.70(m,24H,OCH)、3.10(m,8H,CHOCH,エポキシ)、1.92(s,12H,CH=CCH)、0.95〜1.50、2.00〜2.20(m,60H,CHCHO,SiCHCHCHCHCHCHOCHCH,エポキシ)、0.49〜0.52(m,16H,(CHSiCH)、0.12、0.10(d,48H,(CHSiCH)。13C NMR(100MHz,CDCl)(δ,ppm):166.81(C=O)、136.63(CHC=CH)、125.10(CHC=CH)、75.75〜69.76(OCH)、53.10〜51.80(CHOCH α,CHOCH β,エポキシ)、35.31〜25.34(CHCHCHCHOCHCH α,CHCHCHCHOCHCH β,エポキシ)、23.97、23.52(SiCHCHCH α,SiCHCHCH β)、23.10(OCHCHCHO)、18.22(CHC=CH)、17.31〜16.20(CHCHCHO)、14.49、14.39(SiCHCH α,SiCHCH β,エポキシ)、13.65(Si(CHCH)、−0.42(Si(CH)。29Si NMR(79MHz,CDCl)(δ,ppm):13.2(Si(CH)、−108.8(SiO)。FTIR(cm−1):1718(C=O)、1638(C=C)、1254(Si(CH)、1089(Si−O−Si)、910(C−O−C,エポキシ)。
【0065】
【化15】

【0066】
化合物D:H NMR(400MHz,CDCl)(δ,ppm):6.07、5.52(d,4H,CH=CCH(CO))、3.20〜3.70(m,24H,OCH)、3.10(m,12H,CHOCH,エポキシ)、1.92(s,6H,CH=CCH)、0.95〜1.50、2.00〜2.20(m,66H,CHCHO,SiCHCHCHCHCHCHOCHCH,エポキシ)、0.49〜0.52(m,16H,(CHSiCH)、0.13、0.11(d,48H,(CHSiCH)。13C NMR(100MHz,CDCl)(δ,ppm):166.81(C=O)、136.63(CHC=CH)、125.10(CHC=CH)、75.70〜70.10(OCH)、53.10〜51.80(CHOCH α,CHOCH β,エポキシ)、35.31〜25.34(CHCHCHCHOCHCH α,CHCHCHCHOCHCH β,エポキシ)、23.97、23.52(SiCHCHCH α,SiCHCHCH β)、23.10(OCHCHCHO)、18.22(CHC=CH)、17.31〜16.20(CHCHCHO)、14.49、14.39(SiCHCH α,SiCHCH β,エポキシ)、13.65(Si(CHCH)、−0.42(Si(CH)。29Si NMR(79MHz,CDCl)(δ,ppm):13.0(Si(CH)、−108.9(SiO)。FTIR(cm−1):1718(C=O)、1638(C=C)、1253(Si(CH)、1087(Si−O−Si)、910(C−O−C,エポキシ)。
【0067】
実施例4:プロパルギルメタクリレートとオクタキス(ジメチルシロキシ)シルセスキオキサンのPt−触媒による反応
【化16】

【0068】
[0074]ジ(プロピレングリコール)アリルエーテルメタクリレートをプロパルギルメタクリレートで置き換えた反応Aと同様の手順で、反応E(図3)を行った。この反応混合物を50℃で24時間撹拌させた。前のとおりに、反応終了は、FTIRを用いて2145cm−1におけるSi−H吸収ピークの消失によってモニターした。高真空ポンプを用いる真空蒸発技術で少量の過剰の反応剤及び溶媒を効率的に除去した。生成物収率91%の粘性液体を得た。H NMR(400MHz,CDCl)(δ,ppm):6.16〜5.59(m,32H,CH=CHSi β−trans,CH=CCH(CO)、CH=CSi α,CH=CHSi β−trans)、4.81〜4.69(m,16H,OCHC(sp))、1.98(s,24.0H,CH=CCH)、δ 0.29〜0.25(m,48.0H,OSi(CHCH)。13C NMR(100MHz,CDCl)(δ,ppm):166.8(C=O)、144.7(SiC=CH α)、141.1(CH=CHSi β−trans)、136.2(CH=CCH(CO))、130.0(CH=CHSi β−trans)、127.0(SiC=CH α)、125.6(CH=CCH(CO))、67.3(OCHCH=CH β−trans)、66.3(OCHCSi α)、18.3(CH=CCH(CO))、−0.14(OSi(CHCH)。29Si NMR(79MHz,CDCl)(δ,ppm):1.39、1.04(Si(CH β−trans α)、−109.4(SiO)。FTIR(cm−1):1722(C=O)、1638(C=C)、1256(Si(CH)、1092(Si−O−Si)。
【0069】
実施例5:プロパルギルメタクリレート及び4−ビニル−シクロヘキセンエポキシドと、オクタキス(ジメチルシロキシ)シルセスキオキサンのPt−触媒による反応
【化17】

【0070】
[0075]工程2においてジ(プロピレングリコール)アリルエーテルメタクリレートをプロパルギルメタクリレートで置き換えた反応Eと同一の手順に従い、混合物を50℃で24時間撹拌させた。反応終了は、FTIRを用いて2145cm−1におけるSi−H吸収ピークの消失によってモニターした。高真空ポンプを用いる真空蒸発技術で少量の過剰の反応剤及び溶媒を効率的に除去した。生成物収率87%の粘性液体を得た。化合物G及びHの合成について上記合成手順を繰り返した。化合物F:H NMR(400MHz,CDCl)(δ,ppm):6.17〜5.57(m,24H,CH=CHSi β−trans,CH=CCH(CO)、CH=CSi α,CH=CHSi β−trans)、4.79〜4.66(m,12H,OCHC(sp))、3.14(m,4H,CHOCH,エポキシ)、1.96(s,18H,CH=CCH)、0.80〜1.85、2.00〜2.20(m,22H,CHCHO,SiCHCHCHCHCHCHOCHCH,エポキシ)、0.50〜0.55(m,4H,(CHSiCH)、0.27〜0.11(m,48.0H,OSi(CH,OSi(CH,エポキシ)。13C NMR(100MHz,CDCl)(δ,ppm):166.8(C=O)、144.8(SiC=CH α)、141.1(CH=CHSi β−trans)、136.2(CH=CCH(CO))、130.1(CH=CHSi β−trans)、126.9(SiC=CH α)、125.6(CH=CCH(CO))、67.3(OCHCH=CH β−trans)、66.3(OCHCSi α)、53.1〜51.8(CHOCH α,CHOCH β,エポキシ)、35.3〜25.3(CHCHCHCHOCHCH α,CHCHCHCHOCHCH β,エポキシ)、24.0、23.5(SiCHCHCH α,SiCHCHCH β,エポキシ)、18.3(CH=CCH(CO))、14.5、14.4(SiCHCH α,SiCHCH β,エポキシ)、−0.05、−0.47(Si(CH)。29Si NMR(79MHz,CDCl)(δ,ppm):13.5(Si(CH,エポキシ)、1.45、0.33(Si(CH β−trans,α)、−108.8(SiO)。FTIR(cm−1):1722(C=O)、1638(C=C)、1255(Si(CH)、1089(Si−O−Si)。
【0071】
【化18】

【0072】
化合物G:H NMR(400MHz,CDCl)(δ,ppm):6.14〜5.58(m,16H,CH=CHSi β−trans,CH=CCH(CO)、CH=CSi α,CH=CHSi β−trans)、4.79〜4.68(m,8H,OCHC(sp))、3.12(m,8H,CHOCH,エポキシ)、1.96(s,12H,CH=CCH)、0.80〜1.90、2.00〜2.20(m,44H,CHCHO,SiCHCHCHCHCHCHOCHCH,エポキシ)、0.48〜0.6(m,8H,(CHSiCH)、0.28〜0.11(m,48.0H,OSi(CH,OSi(CH,エポキシ)。13C NMR(100MHz,CDCl)(δ,ppm):166.7(C=O)、144.9(SiC=CH α)、141.2(CH=CHSi β−trans)、136.3(CH=CCH(CO))、130.2(CH=CHSi β−trans)、126.9(SiC=CH α)、125.4(CH=CCH(CO))、67.2(OCHCH=CH β−trans)、66.3(OCHCSi α)、52.9〜51.7(CHOCH α,CHOCH β,エポキシ)、35.3〜25.3(CHCHCHCHOCHCH α,CHCHCHCHOCHCH β,エポキシ)、24.0、23.5(SiCHCHCH α,SiCHCHCH β,エポキシ)、18.2(CH=CCH(CO))、14.5、14.4(SiCHCH α,SiCHCH β,エポキシ)、−0.09、−0.51(Si(CH)。29Si NMR(79MHz,CDCl)(δ,ppm):13.15(Si(CH,エポキシ)、1.05、0.64(Si(CH β−trans,α)、−109.0(SiO)。FTIR(cm−1):1722(C=O)、1638(C=C)、1254(Si(CH)、1089(Si−O−Si)。
【0073】
【化19】

【0074】
化合物H:H NMR(400MHz,CDCl)(δ,ppm):6.15〜5.59(m,8H,CH=CHSi β−trans,CH=CCH(CO)、CH=CSi α,CH=CHSi β−trans)、4.81〜4.69(m,4H,OCHC(sp))、3.16(m,12H,CHOCH,エポキシ)、1.97(s,6H,CH=CCH)、0.80〜1.90、2.03〜2.19(m,66H,CHCHO,SiCHCHCHCHCHCHOCHCH,エポキシ)、0.50〜0.60(m,12H,(CHSiCH)、0.28〜0.13(m,48.0H,OSi(CH,OSi(CH,エポキシ)、13C NMR(100MHz,CDCl)(δ,ppm):166.7(C=O)、144.9(SiC=CH α)、141.1(CH=CHSi β−trans)、136.2(CH=CCH(CO))、130.2(CH=CHSi β−trans)、126.9(SiC=CH α)、125.9(CH=CCH(CO))、67.2(OCHCH=CH β−trans)、66.3(OCHCSi α)、52.9〜51.7(CHOCH α,CHOCH β,エポキシ)、35.3〜25.3(CHCHCHCHOCHCH α,CHCHCHCHOCHCH β,エポキシ)、24.0、23.5(SiCHCHCH α,SiCHCHCH β,エポキシ)、18.2(CH=CCH(CO))、14.5、14.4(SiCHCH α,SiCHCH β,エポキシ)、−0.10、−0.50(Si(CH)。29Si NMR(79MHz,CDCl)(δ,ppm):13.15(Si(CH,エポキシ)、−1.20、−2.21(Si(CH β−trans,α)、−108.8(SiO)。FTIR(cm−1):1722(C=O)、1638(C=C)、1253(Si(CH)、1093(Si−O−Si)。
【0075】
実施例6:光−活性化実験ナノコンポジットの配合
[0076]合成したSSQ化合物を、それぞれSSQ樹脂比率5、10、20及び50重量%で対照モノマーとブレンドした。本試験における対照原料は、ビス−GMA[ビスフェノールAグリセロレート(1グリセロール/フェノール)ジメタクリレート]及びTEGDMA[トリ(エチレングリコール)ジメタクリレート]を最適特性のために1:1の比で混合することによって作製した。光−活性化実験SSQ樹脂の調製は、1モル%の可視光線開始剤(カンファーキノン、CQ)及び活性化剤(2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、DMAEMA)の両方をモノマーに添加し、その後63重量%のシラン化シリカフィラー(G018−0166、SCHOTT Electronic Packaging GmbH)を添加することを含んだ。平均粒径1.5ミクロンのフィラーを3.2%のシランカップリング剤(γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン)でシラン化した。次いで、種々のコンポジット配合物を注意深く、光を通さない容器においてハンドスパチュラで均一に混合し、混合後に気泡を捕捉していないことを確実にした。表1にそれぞれの材料の組成を示す。図5に、これらの実施例で用いられた本発明の化合物を例証する。
【0076】
【表1】

【0077】
物理的/機械的特徴づけ
重合収縮
[0077]ポスト−ゲル重合収縮は、わずかな修正を加えてYapら28、29により使用された実験装置を用いて決定した。内側長7.0mm、幅4.0mm及び高さ2.0mmの白色テフロン型を用いて、歪みゲージリード線のための窓枠を除いて合成材料を閉じ込めた。長さ2mm、電気抵抗120Ω及びゲージ率2.00の箔電気抵抗歪みゲージ(Foil Strain Gauge、RS Components Ltd、Singapore)をテフロン型の平面上に配置した。所定の位置に歪みゲージを取り付けて、合成材料をテフロン型のキャビティに入れた。確実にキャビティを完全に充填させるように注意して、過剰の材料をガラススライドによってかけた圧力を用いて押出した。歪みゲージからのリード線を、初期にゼロでバランスさせた歪み−モニタリング装置(Strain Gauge Recorder、Cole Parmer Instruments、IL 60061)に接続した。歪み−モニタリング装置は、検知電圧を信号電圧に分配し、それをアナログ出力に変換することで機能するチャート式記録計から構成された。したがって、寸法変化は、ゲージに有効に伝達され、抵抗に換算して測定される。
【0078】
[0078]次いで、試験試料を500mW/cmで40秒間光重合させた。合計で3つの試験片を各材料について作製した。光重合中及び後の寸法変化を、空中で、室温(25±1℃)でモニターした。光重合後の収縮測定値は、硬化光線を取り除いた後に0(光重合直後)、1、10、30及び60分で取得した。線収縮率は、以下の式(1):
【数1】


[ここで、ΔL=長さの変化、L=元の長さ、ΔR=抵抗変化、R=元の抵抗、及びK=ゲージ率(すなわち、2)]
から得た。
【0079】
押込み硬さ(indentation hardness)及び弾性率
[0079]押込み硬さ及び弾性率は両方、Yapら30によって用いられた深さ−検知マイクロインデンテーション技術を用いて決定した。合成材料を、特製アクリル製型の正方形凹部(長さ3mm、幅3mm及び高さ2mm)に入れ、ガラススライドによってかけた圧力を用いて過剰の材料を押出した。次いで、合成材料を500mW/cmで40秒間光重合させた。硬さ及び弾性率の両方を、0日目(硬化直後)、1日目及び7日目に決定し、試験片は蒸留水中37℃で調整した。合計で7つの試験片を各合成材料について作製した。
【0080】
[0080]硬さ及び弾性率の両方のための深さ検知マイクロインデンテーションは、Instron Micro−Testシステム(Model5848、Instron Corporation、Canton、USA)に取り付けた特注設計の押込みヘッドユニットを用いて行った。試験片をビッカースインデンター(Vickers indenter)によって、最大負荷10Nが得られるまで0.0005mm/秒の速度で押し込んだ。次いで、ピーク負荷を10秒間保持し、0.0002mm/秒の速度で完全に除荷した。負荷−除荷サイクルの間に、押込み負荷(P)及び対応するインデンターの変位(h)を連続的に記録した。硬さ(H)データは、ピーク負荷(Pmax)を最大投影接触面積(Amax)で除することによって得(式2)、一方弾性率(Ein)は、Oliver及びPharrによる除荷接触剛性解析(S)によって計算する(式3)31
【数2】


【数3】


[ここで、
【数4】


=ダイヤモンドビッカースインデンターの弾性率、1141GPa
υ=インデンターのポアッソン比、0.07
υin=試験材料のポアッソン比、0.24
max=最大負荷における押込み深さ]
【0081】
変換度
[0081]変換度は、PCA(Photocalorimetric Accessory)装置を備えたTA instruments DSC Q100を用いて決定した。約(10±2)mgの試験片(n=3)を秤量し、密封DSCアルミニウム製鍋に入れた。次いで、試料を可視光線(水銀ランプ)にN下37℃で、500mW/cmで40秒間曝露させた。次いで、重合進行度を、本試験における重合熱の標準値としてメタクリレート二重結合32についての13.1kcal/モルの理論反応エンタルピーを用いて、微分温度曲線のピーク下の面積から計算した光重合熱(ΔH)から得た。次いで、変換度は、以下の式(3):
【数5】


から得た。
【0082】
硬化深度
[0082]硬化深度の試験方法論は、ISO4049(2000年)に基づくかき取り技術(scraping technique)によって行った。コンポジットを、深さ6.7mm及び幅/長さ4mmの正方形キャビティを有する黒色テフロン型に入れ、2つの対向するアセテート細片(Hawe−Neos Dental、Bioggio、スイス国)間に閉じ込めた。型の下に白色デルリンベースを用いた。次いで、ガラススライド(1mm厚)を型の上に置き、圧力をかけて過剰な材料を押出した。次いで、このコンポジットを、VIP光硬化装置によってガラススライド及びアセテート細片を通して上部から500mW/cmで40秒間照射した。光重合直後に、アセテート細片、続けて型中の試験片を取り除いた。次いで、未硬化材料をプラスチック製スパチュラで取り出した。硬化材料の高さをデジマチックキャリパー(Mitutoyo Corporation、日本国)で測定した。硬化深度は、残存長さの50パーセントとして表にした。5つの試験片を各コンポジットについて調製した。
【0083】
水分吸着
[0083]コンポジット全てに対する水分吸着試験は、ISO4049(2000年)で規定された技術を用いて測定した。コンポジットを直径10mm及び厚さ1mmの白色テフロン型に入れ、2つの対向するアセテート細片(Hawe−Neos Dental、Bioggio、スイス国)間に閉じ込めた。型の下に白色デルリンベースを用いた。次いで、ガラススライド(1mm厚)を型の上に置き、圧力をかけて過剰な材料を押出した。次いで、このコンポジットを、VIP光硬化装置によってガラススライド及びアセテート細片を通して上部から500mW/cmで40秒間照射した。光重合直後に、アセテート細片、続けて型中の試験片を取り出した。取り出した後で、試験片を(37±1)℃で維持した新たに乾燥したシリカゲルが入っているデシケータ中に置いた。次いで、試験片を24時間後に取り出し、(23±1)℃で維持した第2のデシケータに2時間保存し、0.1mgの精度で秤量した。このサイクルを恒量(m)が得られるまで繰り返した。最終調整後に、各試験片の直径及び厚さの両方を、デジマチックキャリパー(Mitutoyo Corporation、日本国)を用いて測定し、試験片体積(V)を、mm単位で計算した。試験片を全て20mlの蒸留水に(37±1)℃で7日間浸漬させ、次いで、取り出し、拭き取って乾燥させ、秤量した(m)。この秤量後に、上記サイクルを用いて、試験片をデシケータ中で恒量(m)まで再調整した。5つの試験片を各材料について調製した。立方ミリメートル当たりマイクログラムの水分吸着、Wspは、以下の式(4):
【数6】


を用いて計算した。
【0084】
実験結果:
重合収縮
[0084]光重合の間に評価した種々の歯科用コンポジットの平均線収縮率は図6に示す。様々な光重合後の時間間隔での平均線収縮率は図7に示す。全ての材料について、収縮率は、光重合反応中に最大であり、光源を取り除いた後も継続した(図6)。ゲル化前に生じる収縮歪みは、単に粘性であるが、自由な流動が関与したので、応力の原因とはならない。流動は、収縮応力が弾性限界を超えるその量と定義され、生成ポリマー内の分子が、架橋によって拘束される前に新しい位置に入り込む能力であると考えられた。光活性化コンポジットでは、速い反応速度は粘性流動を可能とさせる時間を実際に無くさせ、しかもポリマーマトリックスは、比較的低い変換度後に数秒以内で硬くなる。樹脂マトリックスの重合は、修復材料が粘性プラスチックから硬い弾性相に変換されるゲル化過程を含む。流動がゲル化後に止まり、収縮応力をもはや補償し得ない場合に、ポスト−ゲル重合収縮が発生する。この重合処理は、ポリマー内に応力を誘発し、それを境界層に分散させる、弾性率の急速な増加を伴う。このポスト−ゲル収縮は、コンポジット樹脂と歯構造の間の結合強度に影響し、これはコンポジット−歯結合において欠陥から生じる結合不良をもたらし得る。
【0085】
[0085]時間間隔の全てで、流動性コンポジット、FFに関連したポスト−ゲル収縮は、評価した他の歯科用コンポジットの全てよりかなり大きいことが見出された。この低粘度樹脂コンポジットは、配置及び取扱いの容易さのために開発された。コンポジット中のポリマーマトリックスの体積分率及び用いられるポリマーの種類は、重合収縮に影響する主要な材料要因であるので、FFで得られた高収縮は、用いられた独自仕様のジメタクリレートポリマーに起因させ得る。
【0086】
[0086]実験ナノコンポジットに関連するポスト−ゲル収縮は、S1を除いてA110よりかなり低いことが見出された。S1に関連する収縮値は低かったが、S1及びA110の間で有意な差は見られなかった。実験ナノコンポジットの全てで得られた低収縮特性は、合成SSQ化合物の存在に起因させ得る。ポスト−ゲル収縮は、添加したSSQ化合物を増加させるとともに減少する。これは、S1及びS2の間の収縮値の差を説明するものであった。S2と比べた場合、10重量%だけの化合物Cが取り込まれたS1は、コンポジット系により多くのビス−GMA/TEGDMAモノマーを有する。より柔軟であり、単位重量当たりより多くの二重結合を有する低分子量TEGDMAは、S1の比較的高い重合収縮を説明するものであった。
【0087】
[0087]異なるナノコンポジットS2、S3及びS4にわたって比較すると、ポスト−ゲル収縮は一般に、S4を除いて、SSQに結合したメタクリレート鎖の数の減少に伴って減少する。SSQ核に結合した、メタクリレート基の2つの長鎖及びエポキシ基の6つの短鎖を有するS4は、より利用しやすく、対照モノマーとより良い相互作用を有することがわかった。これは、収縮値におけるわずかの差を説明するものであった。
【0088】
押込み弾性率及び硬さ
[0088]FS、A110、FF及び全ての実験ナノコンポジット(S1〜S4)の平均硬さ及び弾性率は、それぞれ、図8及び図9に示す。歯科用コンポジットの機械的特性の理解は、「歯様」修復材料の開発にとって重要である。理想的な修復材料は、エナメル質及び象牙質に匹敵する機械的特性を有するものである。硬さ及び弾性率の両方は、本試験で評価したいくつかの機械的特性の中にあって、咬合力に対する抵抗性を決定する。硬さは、押込み又は貫入に対する材料の抵抗性を指す。それはまた、材料の強度、比例限界及び延性にも関連してきており、及び材料の耐摩耗性、及び対向する歯構造と材料とによってすり減らす又はすり減らされるその能力を予測するために用いられてきた。他方、弾性率は、材料の剛比を指す。接着性とともに、弾性率は、微小漏洩、二次齲蝕及び/又は充填離脱の防止において重要な役割を果す。
【0089】
[0089]図8及び図9で得られた結果から、0日目(硬化直後)、1日目及び7日目のFSに関連した押込み硬さ及び弾性率は、評価した材料全てよりかなり高いことが見出された。これは、このコンポジット系に存在しているフィラーの量に起因させ得る。ナノシリカ及びジルコニア/シリカナノクラスターの両方からなるFSは、78.5重量%のフィラー負荷を有する。ナノサイズ粒子とナノクラスターの組合せは、フィラー粒子の隙間間隔を減少させ、したがって、より高いフィラー負荷及びより良い機械的特性をもたらす。
【0090】
[0090]全ての時間間隔で、一般にS1、A110及びFF間の硬さにおける有意な差は見られなかったが、S1の弾性率は、A110及びFFよりかなり高いことが見出された。S1の高い硬さ及び弾性率の値は、10重量%の化合物Cの添加に起因させ得る。SSQ化合物の添加はしばしば、無機セラミックと有機ポリマーの間の間隙を架橋する能力のためにポリマー特性の劇的な改善をもたらす。FFについて得られた結果は、それらの流動能力増加のために、従来のハイブリッド材料より、FFがより収縮する傾向があり、剛性が少ないことを示した重合収縮の結果を十分裏付けるものであった。
【0091】
変換度
[0091]評価した種々の材料の平均変換度を、表2に示す。市販の歯科用コンポジットに関連した変換度は、S4を除く実験ナノコンポジット全てよりかなり大きいことが見出された。S4は、A110より高い変化度を有することが見出された。
【0092】
【表2】

【0093】
[0092]架橋ポリマー系の変換度は、本材料の最終的な物理的及び機械的特性の決定において潜在的に重要な役割を果す。不適当な重合は、磨耗に対する耐性不足、色安定性不良、二次齲蝕及び組織拒絶反応、水分吸着率増加、溶解度及び早期修復不良などの劣った物理−機械的特性をもたらす。一方、歯科用コンポジット樹脂が、高い変換レベルを達成することが望ましいが、通常、硬化するとき、樹脂中に残存するかなりの濃度の未反応炭素二重結合が存在する。これは、架橋ポリマー網状組織の急速な形成によって課せられた反応性種の移動性に対する制限による。更に、高い変換レベルは、重合中のより高い収縮歪み率ももたらした。これは通常、空洞縁部の周囲に間隙を生じ、微小漏洩、歯髄刺激、温度感受性、再発性齲蝕及び内部応力をもたらす。
【0094】
[0093]
変換度の測定のために用いられる種々の技術には、フーリエ変換赤外分光分析(FTIR)、レーザーラマン、マイクロ−ラマン分光分析、MIR(多重内部反射)、NIR(近赤外)、ATR及びマイクロ−全反射減衰赤外分光分析(micro−ATR)、示差熱分析(DTA)並びに示差走査熱量測定(DSC)が含まれる。以下では、その簡単さのために変換度の測定に光重合装置を有するDSC技術を選択した。これは、発熱重合のエンタルピーに基づくメタクリレート変換の測定を与える便利な手段である。
【0095】
[0094]表2から、FFに関連した変換度は、評価した他の材料全てよりかなり大きいことが見出された。この現象は、より粘性な材料は反応性種の移動性を制限し、ランダムな遭遇の頻度及び確率を減少させ易く、これは重合成長の低下をもたらすとして、コンポジットの流動性で説明され得る。
【0096】
[0095]開発した実験ナノコンポジットの変換度について、S4は、S1、S2及びS3より大きい変換度を有することが見出された。S4、FS及びA110の変換度間に有意な差は見られなかった。これは、より柔軟性で、接近しやすい化合物Dの添加により得る。化合物Dのメタクリレート基が重合で対照と反応をし始めると、それらはそれらとともに結合SSQ立方体をもたらす。最初のカップリング反応後に、SSQ立方体は、架橋網状組織中に固定される。かさばったSSQ立方体によって設けられた拘束によって、網状組織の分子構造は固定された。さらなる反応は、小分子及び固定メタクリレート基の両方の運動のみに伴って生じた。化合物2は結合した、2本の長鎖のみのメタクリレート基を有するので、S2及びS3と比べて最初のカップリング後に網状組織中により多くの隙間空間が存在した。この隙間空間は、さらなる反応でより小さいビス−GMA及びTEGDMA分子により充填され得る。したがって、これにより、S4について得られた高い変換度及び低収縮特性が説明され得る。
【0097】
[0096]本試験では、異なる材料の得られた変換度は、先の試験をよく裏付け、変換度が43.5〜73.8%の範囲に及ぶことが見出され、最も希釈した樹脂について最も高かった。しかし、変換度は、ビス−GMA又はTEGDMA自体の重合度を示さず、メチルメタクリレート基中の脂肪族C=C結合のC−C結合への変換率を示すことに留意しなければならない。変換度51%は、その49%のモノマーが残存することを意味せず、その49%のC=C結合が残存することを示す。変換度は、樹脂中に高率(40〜50%)の希釈剤を含ませることによって最大化されるが、硬化は、大部分の市販の材料については有意な重合収縮(2〜14体積%)を伴う。
【0098】
硬化深度
[0097]重合収縮、硬さ、弾性率及び変換度に加えて、硬化深度は、決定されるべき別の重要な特性である。図10に、FS、A110、FF及びS1〜S4の平均硬化深度を示す。光線がコンポジットの大半を通過して重合を開始させるときに、吸収及び散乱される。これらの要因は、光線が修復部体積を通過するとき光度の減衰をもたらす。この減衰の結果は、表面上の硬化が、材料の深部内にあるよりも非常に大きいことである。より大きい深度では、さらなる重合に必要な光線の一部がコンポジット樹脂の既に重合した層により吸収される。したがって、硬化深度は、コンポジット修復部の表面から下方へ深い品質樹脂硬化の程度として定義することができ、フィラーの大きさ、光源強さ、曝露期間及び樹脂色調によって影響される。前述のように、修復部の深さにわたる不適切な重合の存在は、修復部の間隙形成、周縁漏洩、再発性齲蝕、歯髄副作用及び最終的な修復不良などの望ましくない硬化効果をもたらし得る。
【0099】
[0098]コンポジットの硬化深度の決定に用いられる種々の技術には、光硬化コンポジット樹脂の透光性の変化が検出される光学顕微鏡、ISO4049のスクレーピング技術(scraping technique)、ヌープ硬度試験、デジタルペネトロメータ試験法、染着量、触覚試験及び核磁気共鳴マイクロイメージングが含まれる。本試験では、その相対的な簡単さ及び最小の器具類要件により、硬化深度の決定のためにISOスクレーピング技術を選択した。これは、硬化深度の相対比較を可能とし、実施する臨床医にとって好適である簡単な方法である。
【0100】
水分吸着
[0099]異なる材料について評価した平均水分吸着の結果を、図11に示す。水環境におけるコンポジット材料による水分吸着は、水分吸収が樹脂マトリックス中で主に起こる拡散−制御過程と定義される。ポリマー網状組織による水分吸着は、応力減少に寄与するが、その効果は、コンポジット樹脂による水分吸収が非常に遅い速度で行われ、飽和に達する時間を要する場合に最小になる。更に、ポリマーマトリックスにより吸着される水分は、フィラー−マトリックスの脱結合又は更にフィラーの加水分解による劣化を引き起こすこともあり得、機械的特性及び耐摩耗性を低下させることでコンポジット材料に影響し得る。
【0101】
[00100]図10で得られた結果から、評価した全ての材料は、40μg/mm未満のISOの水分吸着要件を満たした。市販のコンポジット、FF、FS及びA110に関連した水分吸着は、全ての実験ナノコンポジットS1〜S4よりも大きいことが見出された。S1〜S4に比べて、FF、FS及びA110で得られたより高い水分吸着値は、異なる化学構造及びフィラー負荷に起因させ得る。試験では、水分吸着は、モノマーの化学に非常に依存していることが示された。種々のモノマーの水分吸着は、以下のとおりであることがわかった:TEGDMA>ビス−GMA>UDMA>ビス−EMA。TEGDMA中の親水性エーテル連鎖、ビス−GMAのヒドロキシル基及びUDMA中のウレタン連鎖の存在により、水分吸着の差が説明された。したがって、親水性TEGDMA/ビス−GMA、及びA110の低いフィラー負荷(56重量%)の両方の存在により、得られた高水分吸着が説明された。
【0102】
結論
[00101]本インビトロ試験の制限内で、S1〜S4に関連したポスト−ゲル収縮は、評価した全ての市販のコンポジットよりもかなり低いことがわかった。S1、A110及びFFについて、硬さの有意な差は見られなかった。S1及びS4に関連した弾性率は、A110及びFFと等しくはないが、より高いことがわかった。S4の変換度も、A110より高いこともわかった。硬化深度及び水分吸着について評価した全ての材料は、ISO要件を満たした。したがって、実験ナノコンポジット、例えば、S4の開発は、一部の市販の歯科用コンポジットに匹敵する物理−機械的特性を有する低収縮性歯科用修復物としての使用のための潜在性を示す。用いられるフィラー粒子に対するさらなる改変及び最適化によって、重合収縮及び物理−機械的特性は更に強化させ得ると考えられた。
【0103】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される多官能基化シルセスキオキサン(SSQ)誘導体。
【化1】


[式中、nは6〜14の整数であり、zは1.5n又は2.5nであり、R、R、R及びRは、C〜C20アルケン、C〜C20アルキン、アリル、アリルグリシジルエーテル、C〜C20アルキルアルケン、アルキルアルキン、アクリレート、メタクリレート、ベンゾオキサジン、エポキシド及びオキセタンからなる重合性残基の群から独立して選択され、Rは、
【化2】


(ここで、R、RII、RIII及びRIVは、水素、C〜C20アルキル及びC〜C10アリールから独立して選択され、mは1〜10の整数であり、q、r及びsは独立して0〜10の整数である。)
から独立して選択され、a、b、c及びdは、独立して0〜nの整数であり、a+b+c+d=nである。
但し、zが1.5nである場合、R、R、R及びRの少なくとも1つは、
【化3】


ではないことを条件とする。]
【請求項2】
zが2.5nである、請求項1に記載の多官能基化シルセスキオキサン。
【請求項3】
前記C〜C20アルケンが、エテニル、プロペニル、ブテニル、1,4−ブタジエニル、ペンテニル、ヘキセニル、4−メチルヘキサ−1−エニル、及び4−エチル−2−メチルヘキサ−1−エニルからなる群より選択される、請求項1又は2に記載の多官能基化シルセスキオキサン。
【請求項4】
前記C〜C20アルキルアルケンが、
【化4】


[式中、wは1〜15の整数である。]
からなる群より選択される、請求項1又は2に記載の多官能基化シルセスキオキサン。
【請求項5】
前記メタクリレートが、下記式(II)を有する、請求項1又は2に記載の多官能基化シルセスキオキサン。
【化5】


[式中、Xは、C〜C24アルキル、[(CHO]、C〜C12アルケニル、ビニル又はアリルからなる群より選択される。ここで、rは1〜10の整数である。]
【請求項6】
前記メタクリレートが、ジ(プロピレングリコール)アリルエーテルメタクリレート、プロパルギルメタクリレート、2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、プロパルギルメタクリレート及びプロパルギルアクリレートからなる群より選択される、請求項5に記載の多官能基化シルセスキオキサン。
【請求項7】
前記アクリレートが、下記式(III)を有する、請求項1又は2に記載の多官能基化シルセスキオキサン。
【化6】


[式中、Xは、C〜C24アルキル、[(CHO]、C〜C12アルケニル、ビニル及びアリルからなる群より選択される。ここで、rは1〜10の整数である。]
【請求項8】
前記アクリレートが、アクリレート、プロパルギルアクリレート、アリルアクリレート、2−アリルオキシエチルアクリレート、2−プロパルギルオキシエチルアクリレート及び1−ヘキセニルアクリレートからなる群より選択される、請求項7に記載の多官能基化シルセスキオキサン。
【請求項9】
前記エポキシドが、
【化7】


[式中、xは1〜10の整数である。]
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、4−ビニル−シクロヘキサンエポキシドからなる群より選択される、請求項1又は2に記載の多官能基化シルセスキオキサン。
【請求項10】
aがnである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の多官能基化シルセスキオキサン。
【請求項11】
aがn−2であり、bが2である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の多官能基化シルセスキオキサン。
【請求項12】
a及びbが同じである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の多官能基化シルセスキオキサン。
【請求項13】
nが8である、請求項10又は11に記載の多官能基化シルセスキオキサン。
【請求項14】
及びRが、ジ(プロピレングリコール)アリルエーテルメタクリレート、4−ビニル−シクロヘキセンエポキシド及びプロパルギルメタクリレートから独立して選択される、請求項10〜13のいずれか一項に記載の多官能基化シルセスキオキサン。
【請求項15】
コモノマーとして少なくとも1種の請求項1〜14のいずれか一項に記載の多官能基化シルセスキオキサン(SSQ)誘導体を含む重合性モノマー、及び、硬化系、を含むナノコンポジット材料。
【請求項16】
前記重合性モノマーが、ビスフェニルグリシジルメタクリレート(Bis−GMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ウレタンジメタクリレート(UDMA)、エトキシル化ビスフェノール−A−ジメタクリレート(bis−EMA)、デカンジオールジメタクリレート(DMA)、ウレタンテトラメタクリレート(UTMA)、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヘキサンジオールメタクリレート、ドデカンジオールジメタクリレート、ビスフェノール−A−ジメタクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N,N−ジメチル−p−トルイジン又はそれらの混合物を更に含む、請求項15に記載のナノコンポジット材料。
【請求項17】
前記硬化系が、重合開始剤、重合促進剤、安定剤、紫外線吸収剤、カチオン性開始剤及び酸化防止剤からなる群より選択される、請求項15又は16に記載のナノコンポジット材料。
【請求項18】
前記重合促進剤が、アミン、アンモニア及び酸からなる群より選択される、請求項17に記載のナノコンポジット材料。
【請求項19】
前記アミンが、N(C、N(C、エチル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート(EDMAB)、2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エタノール、N,N−ジメチル−p−トルイジン(DMPT)、ビス(ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート及びジエチルアミノエチルメタクリレート(DEAEMA)からなる群より選択される第三級アミンである、請求項18に記載のナノコンポジット材料。
【請求項20】
少なくとも1種のフィラーを更に含む、請求項15〜19のいずれか一項に記載のナノコンポジット材料。
【請求項21】
前記少なくとも1種のフィラーが、シリカ、石英、シリカガラス、ケイ酸ストロンチウム、ホウケイ酸ストロンチウム、ケイ酸リチウム、アルミナケイ酸リチウム、非晶質シリカ、アンモニア処理又は脱アンモニア処理リン酸カルシウム、リン酸三カルシウムアルミナ、ジルコニア、酸化スズ、チタニア、アパタイト、ヒドロキシアパタイト、変性ヒドロキシアパタイト組成物、酸化ビスマス、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス又はそれらの混合物からなる群より選択される、請求項20に記載のナノコンポジット材料。
【請求項22】
前記シリカガラスが、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、ホウ素、イットリウム、アルミノホウケイ酸塩ガラス、ストロンチウム−アルミノ−フルオロ−ケイ酸塩ガラス、コロイド状ガラス、又は他のフッ化物放出性ガラスを含む、請求項21に記載のナノコンポジット材料。
【請求項23】
治療薬を更に含む、請求項15〜22のいずれか一項に記載のナノコンポジット材料。
【請求項24】
前記治療薬が、抗菌剤及び/又は再石灰化剤である、請求項23に記載のナノコンポジット材料。
【請求項25】
前記治療薬が、カルシウム化合物、フッ化物、モノフルオロリン酸ナトリウム及びカリウム、亜鉛化合物、クロロヘキシジン、ハロゲン化ジフェニルエーテル及びフェノール系抗菌化合物からなる群より選択される、請求項23又は24に記載のナノコンポジット材料。
【請求項26】
前記SSQが、ナノコンポジット材料の全量に対して約1〜約90重量%の量で用いられる、請求項15〜25のいずれか一項に記載のナノコンポジット材料。
【請求項27】
前記SSQが、ナノコンポジット材料の全量に対して約3〜約50重量%の量で用いられる、請求項26に記載のナノコンポジット材料。
【請求項28】
前記SSQが、ナノコンポジット材料の全量に対して約5重量%〜約40重量%の量で用いられる、請求項27に記載のナノコンポジット材料。
【請求項29】
前記SSQが、ナノコンポジット材料の全量に対して約20重量%の量で用いられる、請求項28に記載のナノコンポジット材料。
【請求項30】
低収縮性材料である、請求項15〜29のいずれか一項に記載のナノコンポジット材料。
【請求項31】
約4.0未満の線収縮率を有する、請求項30に記載のナノコンポジット材料。
【請求項32】
約2.0未満の線収縮率を有する、請求項31に記載のナノコンポジット材料。
【請求項33】
約0.25〜約0.5の範囲の線収縮率を有する、請求項32に記載のナノコンポジット材料。
【請求項34】
生体適合材料用のための重合性樹脂としての請求項15〜33のいずれか一項に記載のナノコンポジット材料の使用。
【請求項35】
前記ナノコンポジット材料が、歯の部位に適用され、その後硬化される、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
前記ナノコンポジット材料が、コーティング、レンズ及びプラスチックとして使用される、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
前記カチオン性開始剤が、二重硬化系を可能にさせるようにナノコンポジットに取り込まれ、ここで、エポキシ環が開環され、多官能基化SSQの体積収縮を補償し得る、請求項15に記載のナノコンポジット材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−515513(P2011−515513A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−549613(P2010−549613)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【国際出願番号】PCT/SG2008/000073
【国際公開番号】WO2009/110848
【国際公開日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】