説明

信号伝送システム及び信号伝送線路

【課題】 グランドを参照する差動線路とグランドを参照しない差動線路を接続して、数十GHz帯のデジタル高速信号を差動線路を介して伝送する。
【解決手段】信号伝送線路を介して回路ブロック間でデジタル信号の伝送を行う信号伝送システムにおいて、各回路ブロックはそれぞれ機能回路と分離された構成の受送信回路を備え、受信端と送信端の間がインピーダンス整合した伝送線路115であることを基本構成とし、差動出力ドライバから導出されたグランド参照差動線路105を上記回路ブロック内でグランド110を中心にして差動信号の線路を対称に配置した構成とし、上記信号伝送線路115内ではグランド110を参照しない差動ペア線路111,112のみが前記グランド110を中心とする対称構造の線路から直接延長された構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号伝送線路を介して回路ブロック間でデジタル信号の伝送を行う信号伝送システム及びその信号伝送線路に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者等は、ドライバから出力されるデジタル信号を信号配線を介してレシーバに高速伝送するための技術として、配線基板に形成する電源配線及び接地配線をカップリング係数を大とする等長平行配線からなるペア配線構造とし、CMOS差動ドライバに供給すべき相補信号エネルギーに対して電源・接地配線ペアを電磁界がほぼ閉じた伝送線路として機能させることや(例えば特許文献1参照)、トランジスタの状態遷移に必要な電荷を強制的にポンプアップ、ポンプダウンする回路を設けることにより、該トランジスタの高速スイッチングを可能にすること(例えば特許文献2参照)などを先に提案している。
【0003】
ここで、電気エネルギを伝えるには、例えば家庭用電力線のように、基本的に2本の線路が必要である。線路は、水道パイプの太さに比例すると同様なコンダクタンスを持っている。この逆数を特性インピーダンスZと呼んでいる。
【0004】
その太さの物理は線路中の単位長さ当たりのインダクタンスLとキャパシタンスCに蓄えられるエネルギに相当するものである。周波数に応じてこのエネルギを出し入れする回数が多くなるため、交流の抵抗、すなわちインピーダンスZとなる。このインピーダンスZは、直流抵抗やペア線路間の漏洩コンダクタンスのような熱エネルギに変換する要素と異なり、エネルギを失わないで時間遅れで放出することから、虚数として取り扱う。このインピーダンスZは、次の(1)式及び(2)式にて示される。
【0005】
Z=jωL (1)式
Z=(1/jωC) (2)式
上記(1)式及び(2)式に示すように、線路中で単位長さ当たり二つの要素が同時に存在するため、その2乗平均が線路の特性インピーダンスZとなり、特性インピーダンスZは、次の(3)式にて示される。
【0006】
=√jωL/jωC=√L/C (3)式
上記(3)式に示すように、虚数jと角周波数ωと単位長さという3つの項が消えて、特性インピーダンスZは、長さの規定も周波数依存性もない実数ということになる。短い線路でも、無限に長い線路でも特性インピーダンスZは同じであるという特殊な物理概念となる。端的に言えば、特性インピーダンスZは、線路の間口の太さを決めているだけに過ぎないということになる。
【0007】
集中定数回路の世界での普遍的な誤解、線路もLCのネットであるため、LCネットを分布定数的に配慮する必要があるとして、RC遅延の問題を本質的に回避できないとしていることである。伝送線路はRC遅延とは全く異なった電磁現象物理の世界であり、RC遅延は回避できるということを理解したい。
【0008】
分布定数回路(長距離配線の長さを規定した回路)と集中定数回路(配線長さが無視できる範囲にある回路)の区分は、次の(4)式にて示される(非特許文献1参照)。
【0009】
critical=λ/40=c√με/40fclock (4)式
この(4)式は正弦波の波長λと配線長さLcriticalの関係を定義付けたものである。cはその真空中の光の速度、μは比透磁率、εは比誘電率、fclockはその配線に流れる最高クロックパルスの周波数である。
【0010】
ここで、上記(4)式における係数(1/40)の意味を図38を参照して以下に説明する。
【0011】
デジタル(パルス)信号は、図38に示すように、基本クロック周波数の基本波f及びその高調波f,f,・・・を含む複合波fcombあり、基本波fに対して、3倍の高調波fと5倍の高調波fを加算すると概略のパルスになり、さらに、7倍、9倍、11倍の高調波f,f,f11を加算すると、ほぼ完全なパルスとなる。逆の見方をすると、パルスはそのパルス周波数よりも1桁高い正弦波の高調波までを含む混合波であると言えるため、1GHzのパルスであれば、10GHzの高調波までを考慮の対象とする必要がある。共振は音叉のように(1/4)λが最小共振周波数となる。
【0012】
したがって、1GHzのパルスであれば10GHzの波長の1/4、すなわち、1/40の波長以下の長さに安全度を見た長さが従来の集中定数回路で取り扱う限界となり、これを分布定数回路と集中定数回路の区分を定義する配線長さLcriticalと定義している。(1/40)λ以上は分布定数回路、すなわち、伝送線路にしなくてはならない長さとなる。
【0013】
ここで、配線長さが無視できないグローバル配線のドライバ・レシーバの従来回路の一例として、シングルエンド型のデジタル信号伝送回路300を図39に示す。
【0014】
この図39においては、信号線は一本しか配線されていないが、電気エネルギを通すためには物理原則として、絶対に2本の線が必要で、意識されていないグランド線か電源線がこの役割を果たしている。
【0015】
このシングルエンド型のデジタル信号伝送回路300では、ドライバ310から出力される信号線311がグランド線312とペアになって信号伝送線路315を形成しており、この信号伝送線路315を介してドライバ310からレシーバ320に相補信号が伝送されることになる(非特許文献2,3参照)。
【0016】
また、差動型のデジタル信号伝送回路の従来の回路例として、CML(Current Mode Logic)型差動回路400の構成例を図40に示し、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)型差動回路500の構成例を図41に示す。
【0017】
このような構成の差動型のデジタル信号伝送回路400,500では、グランドが参照されている信号伝送線路415,515を介して、ドライバ410,510からレシーバ420,520に相補信号が伝送される。
【0018】
差動型のデジタル信号伝送回路は、高速伝送に適していると言われており、近年で多く取り入れられている差動信号を高速伝送する回路である。
【0019】
【特許文献1】特開平11−284126号公報
【特許文献2】特開2002−124635号公報
【非特許文献1】応用物理学会、「シリコンテクノロジー」、超高速多層配線技術の課題と展望特集、No.15,2000.2.18(東山、山上会館)
【非特許文献2】Otsuka, et al, “Measurement Potential Swing by Electric Field on Package Transmission Lines,” Proceedings of ICEP, pp490-495, 2001.4, Or, K. Otsuka, et. Al, “Measurement Evidence of Mirror Potential Traveling on Transmission Lines,” Technical Digest of 5th VLSI Packaging Workshop of Japan, pp27-28, 2000.12
【非特許文献3】大塚寛治、須賀唯知「スタックトペア線路」、エレクトロニクス実装学会誌、Vol.4、No.7、pp556-561、2001.11
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
ところで、GHz帯のパルスクロックを有する信号伝送システムは、その配線が抵抗損失、RC遅延・損失、誘電損失で長くできず、配線長さの制限となっている。長い配線は機能ブロック間のコミュニケーションとして、ますます重要になっている。例えばLANケーブルは、メタル配線で10Gbps、100Gbpsと高速を要求されるようになっている。距離は100m未満であるが、10Gbps以上を通そうと思うと2003年時点で光ケーブルしか対応できない。
【0021】
本発明は、上述の(4)式で定義される配線長さLcritical以上の配線とそのドライバ・レシーバ回路をセットにした信号伝送システムに関するものであり、そのクロック周波数としては数十GHzまでのGHz帯を対象とする。
【0022】
本発明は、10Gbps、100Gbpsレベルで中距離配線を主体的に取り上げた改善策を提案するものである。改善策は回路構成も同時に提供するものである。
【0023】
本発明の目的は、チップ内の長い配線を持つ回路全体に亘って伝送線路とし、エネルギ伝達に支障のない構成、比喩で表すならば河川からの取り込み経路を含む水道局のパイプ・バルブシステム(伝送線路・トランジスタシステム)を構築することにある。ここで、長い配線の定義を表1でしておく。この表1には、ν=c√μεで表される電磁波速度ν別に長い配線の定義を示してある。なお、cは真空中の光の速度、μは線路空間を囲む絶縁材料の比透磁率、εは線路空間を囲む絶縁材料の比誘電率である。
【0024】
【表1】



【0025】
ここで、回路ブロック間の伝送方式には信号をシリアルに伝えるパケット方式とパラレルに伝えるバス方式があるが、どちらの方式も本質的に高周波パルス信号エネルギを伝送するという概念は変わらない。したがって、この高速信号伝送という概念を注目し、プロトコル的な信号伝達はここでは取り上げない。すなわち、本発明は、全ての信号伝達方法に利用できる手段を提供するものである。
【0026】
ドライバは、通常CMOSインバータが基本回路として使用されている。本発明は、この最も単純なインバータやバッファを使用して構成し、何らの新しい回路や新しい製造プロセスを必要としないで、かつ技術の進歩と共に不変的に適用できるものである。
【0027】
本発明では、分布定数回路的に取り扱われる伝送線路が回路ブロック間の配線に使用される。これにより、もし電源が完全であれば、線路の長さのみが遅延時間を支配し、あるビット幅(例えば64ビット)の信号のクロックに対するスキューはほとんどない設計が可能になるだけでなく、クロック配線もHツリー伝送線路化で数ps以下のスキューで分配するが可能である。
【0028】
理想的な伝送線路は、電磁エネルギがその中に閉じ込められているため、RC遅延で現れる積分回路的な鈍りは0となる。線路の直流抵抗分と誘電損失分だけ信号エネルギの損失が起こり、最大振幅がオームの法則にしたがって低くなるが、抵抗損失は波形の鈍りがないため、その遅延はほとんど無視できるだけでなく、ビット幅の線路が同じ構造と寸法であれば事実上のスキューは0となる。
【0029】
しかし、誘電損失は周波数特性を持つため、波形は乱れるが、ビット幅の線路が同じ構造で波形の乱れが一定していれば、それなりに制御が可能である。
【0030】
問題は電源にあることが多く、電源の供給力とグランドの吸引力がそれぞれのインバータで異なっていれば、その電源能力に応じたインバータスイッチしかできず、波形が個々に違ったものになり、スキューを伴うことになるだけでなく、余分な高調波が乗り、共振による特異現象が起こることになる。GHz帯域ではデバイス構造の位置による特性ばらつきよりはるかに大きい問題である。
【0031】
本発明では、回路ブロック間の伝送配線を伝送線路にするだけではなく、ドライバトランジスタのオン抵抗を高くし、それに見合う特性インピーダンスの電源グランドをペアとする伝送線路とする。
【0032】
電磁波と閉じ込める伝送線路の構造はすでに各種提案されているが、隣接配線を有するとき、隣接のクロストークを避ける工夫について、あまり多くの有効な手段はない。
【0033】
本発明の目的は、隣接構造を持つ線路のクロストークを最小にする配線構造とコネクタ構造、従来回路との接続手段を提供することにある。
【0034】
ここで、伝送線路はパイプの太さが決められた水道パイプのようなもので不連続点においてエネルギ反射が起こる。不連続点で反射して戻ったエネルギが戻り側にある不連続点で再び反射して多重反射を繰り返し、共振などを起こすと、全く想像がつかないような波形となってしまう。
【0035】
そこで、本発明では、伝送線路は始端から終端まで同じパイプの太さ、すなわち特性インピーダンスが同じ構造であることを前提とし、直流電流を遮断しながら反射防止の工夫を施す。
【0036】
公知の反射防止には4つの方法があり、第一の方法は、基板で良く用いられているダンピング抵抗をドライバ端に挿入する方法である。第二の方法は、ドライバのオン抵抗が伝送線路の特性インピーダンスと同じに設計する方法である。第三の方法は、双方向バス構造にあって両サイドのドライバのオン抵抗が伝送線路のそれと同じにする方法である(付随的に両サイドにダンピング抵抗を挿入した構造も含む)である。第四の方法は、理想的なもので、受端終端に整合した終端抵抗を付ける方法であるが、常にオン電流が流れる欠点を有していて、従来嫌われていた方法である。
【0037】
本発明では、第五の方法として方向性カプラ又はキャパシタを介して終端抵抗を伝送線路の終端に設ける方法を提案する。
【0038】
さらに、本発明では、インバータ又はバッファから配線につながる構造をその出発点、終端点まで完全な伝送線路とするデバイス平面構造と配線層構造を規定し、その伝送線路の両端は直流的に遮断された構造とする。なお、一般に使われている差動信号のグランドの取り扱いに関する構造もこの中に含まれる。
【0039】
差動信号は本来エネルギ的にはペア線路を形成するものであるが、従来、差動型のデジタル信号伝送回路は、装置間の基準電圧レベルを合わせるためにグランドを参照した伝送線路となっており、3相交流的な配線となっているため、そのカップリング係数を意識した終端抵抗を配置しなければならないが、これがうまく守られていない場合が多い。
【0040】
また、回路動作で電源グランドが大きく揺らぎ、隣接回路に影響を与えることから、電源グランドは回路ブロック別に独立に配置することが、GHz帯での信号処理には必須の条件であり、本発明では、この問題も解決する。
【0041】
差動回路のもう一つの欠点は差動信号そのものがトランジスタ特性ばらつきのため、スキューが存在することで、遷移時にそのずれで大きなスパイク電流を伴うことになり、EMIの問題を提起する。さらに、トランジスタ数が2倍になる欠点も有する。
【0042】
本発明における、デバイス平面構造と配線層構造の設計ガイドは、先ず電磁波速度で伝送することが出来る伝送線路ありきから出発するもので、トランジスタ配置はそれに従属するものである。
【0043】
すなわち、金属は電磁波速度で信号が伝送されるが、半導体はキャリアの移動度で信号が伝わり、電磁波速度とならないので、トランジスタコンタクト部から出た線路の全てを金属で構成し、ポリシリコンや金属化合物、たとえばシリサイドなどを使用せず、必要であれば、ゲート電極も金属とすることにより、出発点、から終端点まで完全な伝送線路とする。
【0044】
このような構造の中距離配線は50mの長さに亘って数GHzの周波数を通すことができ、インバータやバッファのスイッチング能力の将来に対して十分対応できるブロック間伝送システムを構築することができる。
【0045】
また、信号伝送線路を介して回路ブロック間でデジタル信号の伝送を行う信号伝送システムでは、静電気放電(ESD:electro-static discharge)保護のため、入出力端には一般に保護ダイオード又は保護トランジスタが付いている。上記保護ダイオード又は保護トランジスタの寄生容量が信号遷移時の即応性の妨げになり、高周波に対応できないことになる。
【0046】
そこで、本発明では、ESD保護回路の見掛け容量を小さくするバラクタ回路を提案する。
【0047】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0048】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0049】
すなわち、本発明は、信号伝送線路を介して回路ブロック間でデジタル信号の伝送を行う信号伝送システムであって、各回路ブロックは、それぞれ機能回路と分離された構成の受送信回路を備え、受信端と送信端の間がインピーダンス整合した伝送線路であることを基本構成とし、差動出力ドライバから導出されたグランド参照差動線路を上記回路ブロック内でグランドを中心にして差動信号の線路を対称に配置した構成とし、上記信号伝送線路内ではグランドを参照しない差動ペア線路のみが前記グランドを中心とする対称構造の線路から直接延長された構造を特徴とする。
【0050】
また、本発明は、信号伝送線路を介して回路ブロック間でデジタル信号の伝送を行う信号伝送システムであって、各回路ブロックは、それぞれ機能回路と分離された構成の受送信回路を備え、受信端と送信端の間がインピーダンス整合した伝送線路であることを基本構成とし、各受送信回路に備えられるドライバ及び/又はレシーバは、各差動信号の線路のプルアップ保護回路とプルダウン保護回路をそれぞれ同じ導電型構造の領域内に設け、ESD保護トランジスタを相補的に動作させるようにしたESD保護回路が設けられていること特徴とする。
また、本発明は、信号伝送線路を介して回路ブロック間でデジタル信号の伝送を行う信号伝送システムであって、各回路ブロックは、それぞれ機能回路と分離された構成の受送信回路を備え、受信端と送信端の間がインピーダンス整合した伝送線路であることを基本構成とし、上記信号伝送線路は、差動構成又はシングルエンド構成の隣接ペア線路が、それが発生する電界ベクトルが並行又は直行する配列になるように構成された多芯ケーブル構造を有することを特徴とする。
【0051】
さらに、本発明は、それぞれ機能回路と分離された構成の受送信回路を備え、受信端と送信端の間がインピーダンス整合した伝送線路であることを基本構成とする各回路ブロック間を接続して回路ブロック間でデジタル信号の伝送を行うための信号伝送線路であって、差動構成又はシングルエンド構成の隣接ペア線路が、それが発生する電界ベクトルが並行又は直行する配列になるように構成された多芯ケーブル構造を有することを特徴とする。
【0052】
本発明に係る信号伝送システムにおいて、各受送信回路に備えられるドライバ及び/又はレシーバは、各差動信号の線路のプルアップ保護回路とプルダウン保護回路をそれぞれ同じ導電型構造の領域内に設け、静電気放電(ESD:electro-static discharge)保護トランジスタを相補的に動作させるようにしたESD保護回路が設けられている。
【0053】
また、本発明に係る信号伝送システムにおいて、上記信号伝送線路は、隣接ペア線路が発生する電界ベクトルが並行又は直行する配列になるように構成された多芯ケーブル構造を有する。
【0054】
また、本発明に係る信号伝送システムでは、電源グランドペア伝送線路を備える受送信回路は電源を基板より供給することを前提として、上記受送信回路を構成する受信回路又は送信回路の少なくとも一方がコネクタ部に埋め込まれている。
【0055】
また、本発明に係る信号伝送システムは、上記送受信回路はデジタル信号を出力する差動インバータ構造のドライバを備え、元電源に向かって、元電源回路又は近接バイパスキャパシタまで延長され、上記ドライバのオン抵抗と上記信号伝送線路の特性インピーダンスの合計をドライブ可能な低特性インピーダンスの電源グランドペア線路を介して上記ドライバに電源が供給され、上記ドライバの直後又は受信端の少なくとも一方に方向性カプラ又はキャパシタが挿入され、直流的に絶縁された構造を有し、その後に続く伝送線路がある場合は、上記方向性カプラ又はキャパシタの進行方向に終端がなされた信号伝送線路を介して伝送されるデジタル信号を上記方向性カプラ又はキャパシタの直後又は直前で到達信号レベルに応じたVthを有する差動レシーバで受ける。
【0056】
また、本発明に係る信号伝送システムは、差動ドライバ及びレシーバの対になっているトランジスタは同じウエル内にあり、サブストレートグランドに落とすことなく浮かした構造とされており、上記規定された伝送線路の全てが金属で構成されている。
【0057】
また、本発明に係る信号伝送システムは、電源グランドペア線路、ドライバ、信号伝送線路、レシーバからなるセットが双方向に設けられている。
【0058】
また、本発明に係る信号伝送システムにおいて、ドライバチップ直後の方向性カプラ又はキャパシタと、レシーバチップ直前あるいは直後の方向性カプラ又はキャパシタは、グランド線であってもグランドに直接接続せず、ペア線の両端ともに浮遊した開放端である。
【0059】
また、本発明に係る信号伝送システムにおいて、上記方向性カプラ又はキャパシタのエネルギ通過側の線路は、多重反射防止の終端抵抗が伝送方向の終端に挿入されている。
【0060】
また、本発明に係る信号伝送システムにおいて、上記信号伝送線路を介してデジタル信号を受信するレシーバ端において、差動ペア線路の間に電極を挿入し、この電極の電位を参照電位とする。
【0061】
また、本発明に係る信号伝送システムおいて、上記信号伝送線路を介してデジタル信号の伝送を行う一方の回路ブロックの送受信回路に電源を有しないときは電源グランドペア伝送線路が併走しており、この電源グランドペア伝送線路の特性インピーダンスはドライブする複数の信号伝送線路の並列インピーダンスと同じかそれよりより小さい。
【発明の効果】
【0062】
本発明によれば、信号伝送線路を介して回路ブロック間でデジタル信号の伝送を行う信号伝送システムにおいて、各回路ブロックはそれぞれ機能回路と分離された構成の受送信回路を備え、受信端と送信端の間がインピーダンス整合した伝送線路であることを基本構成とし、差動出力ドライバから導出されたグランド参照差動線路を上記回路ブロック内でグランドを中心にして差動信号の線路を対称に配置した構成とし、上記信号伝送線路内ではグランドを参照しない差動ペア線路のみが前記グランドを中心とする対称構造の線路から直接延長された構造とすることにより、グランドを参照する差動線路とグランドを参照しない差動線路を接続することができ、数十GHz帯のデジタル高速信号を差動線路を介して伝送することができる。
【0063】
また、本発明によれば、信号伝送線路を介して回路ブロック間でデジタル信号の伝送を行う信号伝送システムにおいて、各回路ブロックはそれぞれ機能回路と分離された構成の受送信回路を備え、受信端と送信端の間がインピーダンス整合した伝送線路であることを基本構成とし、各受送信回路に備えられるドライバ及び/又はレシーバは、プルアップ保護回路とプルダウン保護回路を同じ導電型構造の領域内に設け、ESD保護トランジスタを相補的に動作させるようにしたESD保護回路が設けられているので、ESD保護回路の見掛け容量を小さくして、信号遷移時の即応性を高め、数十GHz帯のデジタル高速信号を差動線路を介して伝送することができる。
【0064】
また、本発明によれば、信号伝送線路を介して回路ブロック間でデジタル信号の伝送を行う信号伝送システムにおいて、各回路ブロックは、それぞれ機能回路と分離された構成の受送信回路を備え、受信端と送信端の間がインピーダンス整合した伝送線路であることを基本構成とし、上記信号伝送線路は、差動構成又はシングルエンド構成の隣接ペア線路が、それが発生する電界ベクトルが並行又は直行する配列になるように構成された多芯ケーブル構造を有するので、隣接構造を持つ線路のクロストークを最小にして、数十GHz帯のデジタル高速信号を差動線路を介して伝送することができる。
【0065】
さらに、本発明によれば、それぞれ機能回路と分離された構成の受送信回路を備え、受信端と送信端の間がインピーダンス整合した伝送線路であることを基本構成とする各回路ブロック間を接続して回路ブロック間でデジタル信号の伝送を行うための信号伝送線路であって、差動構成又はシングルエンド構成の隣接ペア線路が、それが発生する電界ベクトルが並行又は直行する配列になるように構成された多芯ケーブル構造を有することによって、隣接構造を持つ線路のクロストークを最小にして、数十GHz帯のデジタル高速信号を伝送することのできる信号伝送線路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0067】
以下に説明する本発明の実施の形態では、従来のシングルエンド信号を差動で動作させる単純な構造の差動信号伝送線路を使用して2つの回路ブロック間を接続し、図1に示すような構成の回路ブロック間伝送システム100を構築する。
【0068】
この回路ブロック間伝送システム100は、2つの回路ブロック10,20が差動信号伝送線路30及び電源グランドペア伝送線路40を介して接続されてなる。各回路ブロック10,20は、それぞれ電源回路ブロック1から電源が供給される機能回路ブロック2、この機能回路ブロック2と区別された入出力回路ブロック3、この入出力回路ブロック3の入出力端に設けられたコネクタ7からなる。機能回路ブロック2と区別された入出力回路ブロック3に複数のドライバ4とレシーバ5と電源グランドペア構成6を有しており、この入出力回路ブロック3の入出力端にコネクタ7が設けられている。このコネクタ7は、そのハウジング内に入出力回路ブロック3を包含するものであってもよい。
【0069】
一方の回路ブロック10のコネクタ7から差動信号伝送線路30及び電源グランドペア伝送線路40がつながり、他方の回路ブロック20に接続される。他方の回路ブロック20も同様な構成で受けている。
【0070】
なお、回路ブロック別に基板上に構成されていることが一般的であるが、同一基板内の回路ブロック間伝送システムにもこの構成が適用できることは言うまでもない。
【0071】
さらにいうならば、回路ブロック間は遠距離で伝送線路中の信号エネルギが減衰するときは、図2のように、中継基地としての役目を果たすドライバとレシーバとからなる中継回路50として回路ブロックを構成することもできる。この回路ブロック間伝送システム100では、電源グランドペア伝送線路40を信号伝送線路30と併走させることで、上記中継基地としての役目を果たす構成を採用することが可能な構造となっている。
【0072】
次に、この回路ブロック間伝送システム100における入出力回路ブロック3に備えられるドライバ・レシーバ部分の詳細について説明する。
【0073】
シングルエンド的差動回路の各種回路構成例を方向性カプラや容量結合を含めて図3,図4,図5,図6及び図7に示す。ただし、ここでは、後述する静電気放電(ESD:electro-static discharge)保護回路は除いてある。
【0074】
まず、図3,図4,図5及び図6に示すシングルエンド方式について説明する。
【0075】
従来構造のインバータ1段のドライバから出力される信号はグランド線とセットになって伝送線路を形成し、伝送する時は非特許文献1,2にあるごとく信号線とグランドは相補信号が通ることになる。そのインピーダンスは通常の50Ωから100Ωである。また、インバータ内ではLSIのサブストレートグランド、すなわち基準グランドである。そこを出発したグランド線は、伝送中に信号線とカップリングして基準グランドとは異なる相補信号となって、独立した動きとなる。この物理は電磁波伝送に基づくものであり、集中定数回路では生まれない概念である。受端終端では差動信号であり、差動レシーバで受けることができる。
【0076】
要すれば、差動レシーバの対のMOSトランジスタは同じウエル構造の中にあって、サブストレートグランドにつながっていない構造が採用される。この構造は、本件発明者等が特願2002−22708号として先に提案している。
【0077】
伝送線路が電磁気的に閉じていれば、伝送中のノイズは防止できるが、たとえコモンモードノイズが載って基準電位からずれても同じウエル構造の中で正しい電位差を検知することが出来るため、グランドと無関係に信号を正しく受信することが出来る。ただし、大きな振動によるラッチアップを防止する必要があるとき、図3,図4,図5及び図6におけるレシーバ5Aにある点線のように差動対をなすMOSトランジスタTn21,Tn22の各ゲート下接続(バックゲート)を電流制御MOSトランジスタTn23のドレインに接続する。SOIなど、ラッチアップに関係ない構造では不要であることは言うまでもない。
【0078】
図7は従来構造のLVDS型差動回路における参照グランドを取り除き、方向性カプラ8又は容量性結合器9で終端したものである。レシーバ5Bはシングルエンド構造のレシーバであってもよいことはいうまでもない。また、ECLタイプのグランドを除去した回路は省略するが、これも同様に改良できることは容易に類推することができる。
【0079】
図3は送信端シングルカプラ方式の信号伝送システム100Aの構成例を示すもので、一方の回路ブロック10のドライバ4Aと信号伝送線路30との間に方向性カプラ8が挿入されており、他方の回路ブロック20のレシーバ5Aが信号伝送線路30に直接接続されている。
【0080】
信号伝送線路30は、RC遅延が無視できない長いペア配線を伝送線路構造にしたものであって、送端から受端にデジタル信号を伝送する。
【0081】
ドライバ4Aは、NMOSトランジスタTn11,Tn12,Tn13と抵抗R11,R12からなる。差動対を構成するNMOSトランジスタTn11,Tn12のドレイン電極は、それぞれ抵抗R11,R12を介して電源Vddに接続されている。また、電流制御用のNMOSトランジスタTn13のドレイン電極は、NMOSトランジスタTn11,Tn12のソース電極に接続されており、さらに、NMOSトランジスタTn13のソース電極は、LSIチップのサブストレートグランド(基準グランド)に接続されている。
【0082】
そして、NMOSトランジスタTn11,Tn12のゲートには、信号伝送線路30をドライブするデジタル信号が入力される。このドライバ4Aの出力すなわちNMOSトランジスタTn11,Tn12のドレイン電極は、方向性カプラ8を介して信号伝送線路30の送端に接続されている。
【0083】
電源グランドペア線路40は、ドライバ4Aから電源Vddの元電源回路又は近接したバイパスキャパシタまでに配置された伝送線路であって、ドライバ4Aに電源Vddを供給する。電源グランドペア線路40の電源側配線の両端は、一端がドライバ4AのNMOSトランジスタTn11,Tn12のドレイン電極に抵抗R11,R12を介して接続され、他端が元電源回路又はバイパスキャパシタの電源側端子に接続されている。また、電源グランドペア線路40のグランド側配線の両端は、ドライバ4Aの配置位置及び元電源回路又はバイパスキャパシタの配置位置において、それぞれLSIチップのサブストレートグランド(基準グランド)に接続されている。
【0084】
レシーバ5Aは、NMOSトランジスタTn21,Tn22,Tn23と抵抗R21,R22からなる。差動対を構成するNMOSトランジスタTn21,Tn22のドレイン電極は、それぞれ抵抗R21,R22を介して電源Vddに接続されている。また、電流制御用のNMOSトランジスタTn23のドレイン電極は、NMOSトランジスタTn21,Tn22のソース電極に接続されており、さらに、NMOSトランジスタTn23のソース電極は、LSIチップのサブストレートグランド(基準グランド)に接続されている。そして、このレシーバ5Aは、NMOSトランジスタTn21,Tn22のゲートに信号伝送線路30からデジタル信号が直接入力される。
【0085】
方向性カプラ8は、それぞれ所定長のエネルギ入力側ペア線81とエネルギ通過側ペア線82とを接近させ、それぞれのペア線81,82を誘電率の異なる材料中に配置した小型で簡単な構造のものであって、入力されたデジタル信号の直流成分を遮断し、広帯域交流成分を通過させる。この方向性カプラ8のエネルギ入力側ペア線81の始端は、上記ドライバ4Aの出力すなわちNMOSトランジスタTn11,Tn12のドレイン電極に接続されており、終端は浮遊した開放端になっている。また、この方向性カプラ8のエネルギ通過側ペア線82の終端は、信号伝送線路30の送端に接続されており、始端は浮遊した開放端になっている。
【0086】
この図3に示した送信端シングルカプラ方式の信号伝送システム100Aは、最も単純な回路構成であるが、伝送線路30にチャージする電流が流れる。しかし終端はカプラ入力端とカプラ出力端両者ともに解放であり、保持するための直流電流は流れない。カプラ出力端では移動した電気エネルギがそのまま逃げ道がなく、メモリのごとくチャージを保持する。方向性カプラ8の長さの短いときはこの回路が理想である。方向性カプラ8の長さが長いと移動した側のカプラ内での反射が起こり、再び伝送線路30にエネルギが戻るため、波長の1/40以下の長さでなければならない。したがって、後述するように、この送信端シングルカプラ方式の信号伝送システム100Aを実現するためには、方向性カプラ8は半導体チップの中で構成することが望ましい。
【0087】
図4は送信端容量結合方式の信号伝送システム100Bの構成例を示すもので、この信号伝送システム100Bは、上記方向性カプラ8の代わりに結合容量9(91,92)を直列に付加したものである。9(91,92)の構造に長さを持つときは上記条件を守るため、チップ内で構成することが望ましい。基板上で実現する場合、図4に示す構造では長くなるため、長さの短いチップキャパシタを上記結合容量9(91,92)として用いればよい。
【0088】
この信号伝送システム100Bでは、一方の回路ブロック10のドライバ4Bと信号伝送線路30との間に結合容量9(91,92)が挿入されており、他方の回路ブロック20のレシーバ5Aが信号伝送線路30に直接接続されている。
【0089】
ドライバ4Bは、PMOSトランジスタTp1とNMOSトランジスタTn1によって構成されたCMOSインバータである。電源側PMOSトランジスタTp1及びグランド側NMOSトランジスタTn1のゲートには、信号伝送線路30をドライブするデジタル信号が入力される。このドライバ4Bの出力すなわちPMOSトランジスタTp1とNMOSトランジスタTn1のドレイン電極は、結合容量9(91,92)を介して信号伝送線路30の送端に接続されている。また、NMOSトランジスタTn1のソース電極は、LSIチップのサブストレートグランド(基準グランド)に接続されている。
【0090】
電源グランドペア線路40は、ドライバ4Bから電源Vddの元電源回路又は近接したバイパスキャパシタまでに配置された伝送線路であって、ドライバ4Bに電源Vddを供給する。電源グランドペア線路40の電源側配線の両端は、ドライバの電源側PMOSトランジスタTp1のソース電極及び元電源回路又はバイパスキャパシタの電源側端子にそれぞれ接続されており、また、電源グランドペア線路40のグランド側配線の両端は、ドライバ4Bの配置位置及び元電源回路又はバイパスキャパシタの配置位置において、それぞれLSIチップのサブストレートグランド(基準グランド)に接続されている。
【0091】
図5は終端抵抗型ダブルカプラ方式の信号伝送システム100Cの構成例を示すもので、この信号伝送システム100Cは、伝送線路30の両端に方向性カプラ8,11が設けられている。方向性カプラ8,11は結合容量に置き換えることもできる。
【0092】
受端側の方向性カプラ11は、それぞれ所定長のエネルギ入力側ペア線111とエネルギ通過側ペア線112とを接近させ、それぞれのペア線111,112を誘電率の異なる材料中に配置した小型で簡単な構造のものであって、入力されたデジタル信号の直流成分を遮断し、広帯域交流成分を通過させる。この方向性カプラ11のエネルギ入力側ペア線111の始端は、信号伝送線路30の受端に接続されており、終端は浮遊した開放端になっている。また、この方向性カプラ11のエネルギ通過側ペア線112の始端は浮遊した開放端になっており、終端には終端抵抗12が接続されている。
【0093】
方向性カプラ8又は結合容量はドライバ4Bの遷移電磁エネルギのみを伝送線路30に一方向に移送する役目だけを司どり、伝送線路30内に電荷を充満することがない。レシーバ5Aは一瞬の遷移エネルギを感知し動作をするが、遷移エネルギは通過して、後段の方向性カプラ11又は結合容量9に移動し終端抵抗12で吸収されるため、レシーバ5Aの後段にはラッチ回路を付加しなければならない。遷移信号エネルギのみでレシーバ5Aを動作させ、反転信号でレシーバを反動させる方法である。
【0094】
このように、受端側の方向性カプラ11の出力端には、終端抵抗12が挿入されており、これによって電荷が瞬時放電されることから、反射エネルギはない。この方向性カプラ11を結合容量に置き換えた場合の終端抵抗12は、レシーバ端差動間を抵抗結合(放電を主目的とする)ため、50〜1MΩの値で調節し、次のクロックが来るまでに放電できればよい。
【0095】
図6に示す信号伝送システム100Dは、図5に示した信号伝送システム100Cにおける伝送線路30が高速性能に良質なときの対応例であり、受端側の方向性カプラ11を省略して、伝送線路30の受端側に終端抵抗12が直接接続されている。伝送線路30には遷移エネルギ成分だけが通り、そのエネルギでレシーバは反応し、終端抵抗12で吸収される。この場合の終端抵抗12は伝送線路30の特性インピーダンスに整合したものである。
【0096】
以上の働きの原理は後述するが、方向性カプラ8,11は、100MHzから数十GHzまでの高周波を通す平滑なハイパスフィルタである。方向性カプラ8,11に置き換えられる結合容量は10pF〜1000pF程度で十分である。
【0097】
図7に示す信号伝送システム100Eは、従来のLVDS型差動回路を改良したもので、一方の回路ブロック10のドライバ4Cの出力端を方向性カプラ8又は結合容量を介して伝送線路30に接続し、伝送線路30を介してグランド参照しない形で他方の回路ブロック20にデジタル信号を伝送し、レシーバ5Bで受けるようにしたものである。遷移エネルギのみ伝送するため、レシーバ5Bの後段にはラッチ回路が必要となる。もちろん、先に説明した図3〜図6の他の伝送線路構造のいずれに置き換えてもよく、レシーバ5Bも置き換え可能である。
【0098】
図3〜図7に電源グランドペア線路40として示してあるように、電源Vddはグランドとペア線路になっている。ドライバであるインバータのトランジスタオン抵抗を500Ωから1kΩであるとし、また、信号伝送線路30の特性インピーダンスZ0sは50Ωであるとすると、信号振幅vは、
v=Vdd(50/550)〜Vdd(50/1050)
となるため、レシーバはこのレベルを検知するセンスアンプとなり、前記した図3〜図7に示すようなに構造の差動回路が望ましい。10GHzのパルスを考えると、電圧の立ち上がり時間t、立ち下がり時間tは35psが最大であり、通常これより短い。このような高速変化では伝送線路カプラ(方向性カプラ8)を用いて、直流遮断フィルタの機能で広帯域の高調波を含むデジタル信号を伝えることができる。CAS、RAS、CSなどのイネーブルやアクナレッジの直流成分が多い制御信号でも、ある電荷量が方向性カプラ8又は結合容量を通過すればレシーバであるセンスアンプのゲートチャージに十分な電荷量となり、信号が受信でき、これに続くラッチ回路で信号を保持できる。なお、終端抵抗12が直列についていると、直流成分の多い制御信号は常に電流を消費し、集中常数回路を基本とするチップデバイス設計者の嫌う回路となる。高調波の波長が上述の表1の線路長より短くなったときは反射を防止する必要があることから終端抵抗12は必然であるが、余分な直流成分を熱エネルギにする必要はない。これが方向性カプラまたは結合容量9を挿入する理由である。
【0099】
電磁波速度で処理する必要があるため、終端側の方向性カプラ11及び終端抵抗12はいずれも金属で作られている。ポリ結晶の半導体の抵抗や線路はその電荷移動速度が飽和電界をかけたときで5×10m/s程度で電磁波速度に対して3桁も小さいことから使用できない。電源グランドペア線路40の特性インピーダンスZ0pはドライバと終端を合計した抵抗負荷R(電源から見た負荷抵抗という意味)が550Ωから1050Ωとなるため、あまり小さくしなくてもよい。すなわち、1電源グランドペアでn本の信号ドライバに電気エネルギを供給する場合、次の(5)式に示す不等式を満たせばよい。
【0100】
/n>Z0p (5)式
この(5)式に示す不等式はすでに上述の特許文献1、2で規定されているものである。
【0101】
ここで、図6に示した信号伝送システム100Dを例にして、信号伝送線路30のエネルギチャージの考え方について図8を参照して説明する。
【0102】
ドライバ4Bを構成しているPMOSトランジスタTp1及びNMOSトランジスタTn1は等価的に相補スイッチSW,SWとオン抵抗RonP,RonNの直列接続回路にて示され、ドライバの電源Vddのにつながった側のPMOSトランジスタTp1がオンした瞬間の負荷は、PMOSトランジスタTp1のオン抵抗RonPと、信号伝送線路30の特性インピーダンスZ0sの合計である。
【0103】
i=Vdd/RonP+Z0s (6)式
上記(6)式で与えられる電流iが、このトランジスタがオンしている時間tonの間流れているか、伝送遅れの時間tpdの間伝送線路に流れている。時間ton又は時間tpdの内のどちらか短い時間が律則条件になる。
【0104】
時間tpdの経過後、信号エネルギが終端抵抗12に到達したとき、信号伝送線路30というパイプに水が満杯になったごとく、Z0sという負荷は消え、終端抵抗12の抵抗値Rに取って代わる。この場合、Z0s=Rのため、電流は変わらず、結局一回のオンパルス時間tonで支配される次の(7)式で示される電荷量Qが得られる。
【0105】
Q=i×ton (7)式
信号伝送線路30では電磁波ベクトルに従った電流のため、終端抵抗12に向かっていることに注目しながらグランドにつながったトランジスタがオンしたとき、すなわち、入力信号がハイに遷移し、電源側がオフしたときを考える。信号レベルがグランドレベルになるため、i=0となるが、パイプに詰まっていた水は終端に向けて運動エネルギを持っていると同様に、信号伝送線路30内の電荷は全てそのまま進行して終端抵抗12で熱エネルギに変換される。グランドにつながったNMOSトランジスタTn1はオンするが電荷は何も流れず、見かけ上動作したことにならない。
【0106】
このように、図8の回路では、パルスオフ信号はエネルギが不要となり、図41の従来のLVDS型差動回路500に比べてエネルギが節約できる。しかしながら、図8の回路は、負荷容量Cのみが必要電荷量(エネルギ)Q=Cddである図40に示した従来回路400よりエネルギ的に劣る。
【0107】
この実施の形態では、この対応策を方向性カプラ8又は結合容量9の挿入で補うようにしている。
【0108】
次に、電源グランドペア線路40の動作について説明する。
【0109】
図40に示した従来の差動回路400はカレントスイッチになっていて、理想であれば常に直流が流れ、電源グランドの揺らぎは生じないため、特に電源・グランドを補強しなくても高速信号では理想であるといわれる理由である。しかし、スイッチングするときはトランジスタのドレイン・ソース間の全容量とドレインとサブストレート・グランド間の容量が電位変化で反転しディスチャージ・チャージがなされ、非常に急峻なスパイク電流が流れる。インダクタンスを持ったバイパスキャパシタではこれを防止することはできない。
【0110】
20GHzのパルスを考えると、立ち上がり時間t=立ち下がり時間t=17.5ps以下を実現しなければならない。例えば電源電圧Vdd=1V、Ron+R=950+50Ωとすると、i=1mA(振幅0.1V)となる。仮にバイパスキャパシタのインダクタンスをL=100pHという小さな値としても、電源電圧Vddの降下電圧Vdropは、次の(8)式に示すように5.7mVとなる。
【0111】
drop=Ldi/dt
=100pH・1mA/17.5ps
=5.7mV (8)式
このことは、10個のドライバを1本の電源で供給することはできないことを意味している。すなわち、電源の降下電圧Vdropが57mVとなるからである。これ以外に、カレントスイッチのスキューやLVDS型差動回路のようにNMOSトランジスタとPMOSトランジスタの動作特性の違いがあれば惨めな状態で、電源グランドの揺らぎは収拾がつかない状態となる。
【0112】
パラレル信号を低電圧差動のシリアル信号に変換して伝送する方式。ノイズおよび不要幅射を低減し、伝送線を削減。機器の内部接続、液晶ディスプレイやスタッカブルHUBなどのデジタルインターフェースに用いられている。
【0113】
これに対し、この実施の形態の信号伝送システム100における電源グランドは、前述のように実質的に浮遊容量やインダクタンスのない伝送線路を使用することで、図8に示すような特性インピーダンスZ0pの電源グランドペア線路40になっている。
【0114】
この特性インピーダンスZ0pの電源グランドペア線路40から供給される最大許容電流Imaxは、次の(9)式にて示される。
【0115】
max=Vdd/Z0p (9)式
したがって、例えば電源Vdd=1V、Z0p=25Ωとすると、
max=40mA
という電流が周波数特性を持たずに、瞬時に供給可能となる。
【0116】
パイプに水が詰まっている状態から、瞬時にある速度で移動することはできない現象とは異なり、電磁波速度は光の速度(1.5〜3×10m/s)であり、電荷を引き抜くトランジスタは3桁も遅いキャリア速度(電子の飽和電界速度で5×10m/s)で容量をチャージするため、瞬時供給という表現が可能である。
【0117】
しかし、それを得た瞬間に慣性が生まれる。これを無視できるようにするためには、比喩で説明すると、水道配管システムは幹線パイプの容量に対して、家庭用引込み線は非常に細いパイプで、実質的に幹線を乱さない比率となっているようにすればよい。
【0118】
図8の信号伝送システムにおいて、ドライバであるインバータのトランジスタオン抵抗をRon、信号伝送線路の特性インピーダンスをRosとして、電源から見た抵抗負荷Rは、次の(10)式にて示される。
【0119】
=Ron+Ros (10)式
したがって、例えば、電源電圧Vdd=1V、Ron+R=950+50Ωとすると、i=1mA(振幅0.1V)であって、10個のドライバを駆動するとImaxの25%の消費となり、無視できない25%の乱れとなるが、トランジスタの3桁も遅いキャリア速度の遅れが乱れを緩和し、問題がない。なぜならば、1つの電源グランドペア線路でn本の信号ドライバに電気エネルギを供給する場合、電源グランドペア線路の特性インピーダンスは、上述の(5)式に示した不等式の条件を満たせば十分である。
【0120】
次に方向性カプラ8の動作を図9を参照して説明する。
【0121】
図9(A)はType1の方向性カプラ8Aの斜視図、図9(B)はType2の方向性カプラ8Bの斜視図、図9(C)は両タイプの上面図である。
【0122】
図9において、奥行き方向が信号エネルギ伝送方向であり、差動信号の伝送線路は、信号エネルギ伝送方向に沿って上下に配置された線路がペアとして構成され(これをスタックトペア線路と呼ぶ)、スタックトペア線路81A,81Bにて構成されたエネルギ通過側ペア線82とスタックトペア線路82A,82Bにて構成されたエネルギ通過側ペア線82が非常に狭いGAP83を介して横たわっていて、エネルギ入力側ペア線81からエネルギ通過側ペア線82にエネルギが移動しやすいようになっている。
【0123】
もう一つの特徴はエネルギ入力側ペア線81とエネルギ通過側ペア線82を構成する上部配線群81A,82Aと下部配線群81B,82Bの周辺絶縁物84A,84Bが異なっていることで、図9(A)に示すType1の方向性カプラ8Aは上部配線群81A,82Aが空気層で囲まれており、下部配線群81B,82Bが酸化シリコンSiOで囲まれている。また、図9(B)に示すType2の方向性カプラ8Bは、上部配線群81A,82Aがアルミナで囲まれており、下部配線群81B,82Bが酸化シリコンSiOで囲まれている。
【0124】
そして、図9(C)の上面図から見たとき、ポート1(Port1)はドライバから来た入力端すなわちエネルギ入力側ペア線81の入力端であり、ポート2(Port2)は隣接に移送したエネルギを取り出すレシーバ端すなわちエネルギ通過側ペア線82の出力端である。それ以外の端は開放端となっている。
【0125】
ここで、電磁空間は立体的な相似縮小が成り立つので、次の表2に、3つの寸法例を示す。
【0126】
【表2】



【0127】
この表2において、Lは図9に示した方向性カプラ8A,8Bのスタックトペア線路81A,81B及びスタックトペア線路82A,82Bの信号エネルギ伝送方向の長さ、Wはスタックトペア線路81A,81B及びスタックトペア線路82A,82Bの各線路幅、GAPは線路間の距離である。また、tは上部配線群81A,82Aの厚み、Dは上部配線群81A,82Aと下部配線群81B,82Bとの間の絶縁層の厚みである。また、h1は上部配線群81A,82Aの上層の絶縁層の高さ(例えば、h1=0.4mm)、h2は下部配線群81B,82Bが配置された絶縁層の高さ(例えば、h2=0.68mm)である。
【0128】
さらに、方向性カプラ8,11の物理現象を説明する。
【0129】
進行方向に直角な空間的広がりを持つ電気力線、磁力線をTEM波(Transverse Electromagnetic wave)と呼び、伝送路内の導波モードである。電磁波の空気中にさらされていた部分では、次の(11)式で表される電磁波速度cで進行するが、絶縁材料中はその比透磁率μと比誘電率εに応じた減速条件となる。
【0130】
=1/√με=3×10m/s (11)式
ここで、μ=真空中の透磁率、ε=真空中の誘電率である。
【0131】
これをνとすると、ν=c/√μεとなり、仮にε=4、μ=1とするとν=1.5×10m/sが得られる。出発時点でTEM波であったものが進行中に空気中の電磁波速度が絶縁物中より倍の速度で進行するため、TEMモードが崩れていく、スタックトペア線路の強いカップリングで隣接への配線クロストークが無視できる範囲にあった電磁界状態が崩れたTEMに応じてカップリングが弱くなり、有効電磁空間の広がりが大きくなって、隣接のスタックトペア線路に電磁エネルギを移動しやすくなる。
【0132】
その様子を3次元電磁解析ソフトでシミュレーションした結果として、Type1の方向性カプラ8A及びType2の方向性カプラ8BのSパラメータのシミュレーション結果を図10、図11に示す。
【0133】
図10(A)は、Type1の方向性カプラ8Aの透過係数を表すS21パラメータの周波数特性のシミュレーション結果を示すもので、GAPを0.002、0.006、0.01と変化させたときのポート1(Port1)からポート2(Port2)へ伝わるエネルギの周波数特性(正弦波0〜70GHz)を示している。また、図10(B)は、Type1の方向性カプラ8Aの反射係数を表すS11パラメータの周波数特性のシミュレーション結果を示すもので、ポート1(Port1)に跳ね返ったエネルギの値を示している。周波数に対してできるだけ平滑に通過し、反射エネルギの小さな条件がよく、このシミュレーションではGAP=0.002が最善となっている。
【0134】
図11(A)は、Type2の方向性カプラ8Bの透過係数を表すS21パラメータの周波数特性のシミュレーション結果を示すもので、GAPを0.002、0.006、0.01と変化させたときのポート1(Port1)からポート2(Port2)へ伝わるエネルギの周波数特性(正弦波0〜70GHz)を示している。また、図11(B)は、Type2の方向性カプラ8Bの反射係数を表すS11パラメータの周波数特性のシミュレーション結果を示すもので、ポート1(Port1)に跳ね返ったエネルギの値を示している。周波数に対してできるだけ平滑に通過し、反射エネルギの小さな条件がよく、このシミュレーションではGAP=0.002が最善となっている。
【0135】
なお、図10(A),(B)及び図11(A),(B)では、GAP=0.006の場合の周波数特性を一点鎖線にて示し、GAP=0.002の場合の周波数特性を実線にて示し、GAP=0.01の場合の周波数特性を破線にて示している。
【0136】
Type2の方向性カプラ8Bでは、Type1の方向性カプラ8Aより低い周波数からの通過特性がよく、ハンチングがなく、方向性結合器としてより優れていると解釈できる。Sパラメータでは実際の信号波形の伝わる状態を想像することが難しいため、Type2の方向性カプラ8Bについて、ポート2(Port2)にレシーバトランジスタの負荷に相当する2pFの素子と1MΩの素子を並列に付けて、パルス波形を入力した結果を図12に示す。
【0137】
図12(A)は入力パルスの波形を示し、図12(B)は上記入力パルスに対するポート2(Port2)における出力電圧波形を示し、図12(C)は上記入力パルスに対するポート2(Port2)における出力電流波形を示している。
【0138】
この図12から明らかなように、Type2の方向性カプラ8Bでは、入力パルス波形に対してきれいな出力が得られていることがわかる。入力の立ち上がり時間立ち下がり時間は25psであり、実効パルス周波数は14GHzの実力を持つ波形であるが出力は50ps以下の立ち上がり時間が得られていて、7GHzを通せることが分かる。出力波形が保持時間中にわずかに減衰しているのは、直流エネルギの供給がないためで、1MΩの電流リークに相当するものである。
【0139】
適切に方向性カプラの条件設定をすれば、信号伝送線路の終端は方向性カプラの開放端であり、直流電力消費はしないが、交流成分は方向性カプラを通して隣接配線に全エネルギが逃げ、ここでエネルギが蓄積され漏洩抵抗で移動全エネルギが消費され、複雑な反射で悩むことなく、間接終端できることになる。そして直流電流による電力消費が抑えられるという大きな利点が生まれる。また、信号振幅も長周期でオン・オフするような制御信号に対しては電源電圧Vddと同じレベルまで得られることになる。
【0140】
また、本発明の実施の形態において、負荷を想定した伝送信号波形のモデルを示すと図13のようになる。
【0141】
図13では、入力信号Vinを細い実線にて示し、入力信号Vinに対する出力信号Voutとして、図5及び図6に示した信号伝送システム100C,100Dのように終端抵抗12を設けた場合における受信信号の変化を太い実線にて示し、また、図3、図4及び図7に示した信号伝送システム100A,100B,100Eのように終端抵抗12を設けない場合における受信信号の変化を破線にて示してある。
【0142】
電源電圧Vddに対し、信号振幅はトランジスタオン抵抗で決まる低い値となる。クロックのような波形ではそのままの波形が得られるが、保持時間の長い波形は、方向性カプラを通らないこと、また、通過した高調波は抵抗でエネルギ消費されることの2点により、受信信号波形は、方向性カプラのRC積分減衰特性に従った減衰曲線で0Vになる。この受信信号波形は、緩やかな減衰のため、アンダーシュートはなく、レシーバの差動アンプは反転しない。信号がオフになるときはマイナスに振れることになり、差動センスアンプは基準電位が不要なため、レシーバの差動アンプは反転する。差動センスアンプの下段にラッチ回路が設けられていれば、保持時間に関係なく正しい信号を検知することができる。
【0143】
もし、伝送線路が長いと、上述の如く伝送遅れ時間tpdの間、直流電流が流れる。上述の図5及び図6に示した信号伝送システム100C,100Dでは、その電荷量はそのまま終端抵抗12に吸収される。しかし、図3、図4及び図7に示した信号伝送システム100A,100B,100Eでは、信号伝送線路30に電荷が充満した後、負荷の直流コンダクタンスに従った減衰をすることになる。レシーバ直前にしか方向性カプラ11がないときは伝送線路30に電荷がたまっていて、放電はドライバ反転までできずに残るため、ドライバ端に方向性カプラ8の付いていることがエネルギ消費に有利となる。
【0144】
上述の図4〜図6に示した信号伝送システム100B〜100Dでは、ドライバ4BのNMOSトランジスタTn1がオンしてグランドにつながったとき、逆流してグランドに吐き出される。これは、図39に示した従来回路300における負荷容量のディスチャージとは異なり、パルス的な流れで伝送遅れ時間tpdの間行われる。1/2クロック周期より伝送遅れ時間tpdが長いとディスチャージが完了しない間にチャージが始まり、信号が多重反射のように乱れる。従って、図3の信号伝送システム100Aは、次の(12)式の条件に適用できる回路となる。そして、長い伝送線路30のときはドライバ端に方向性カプラ8の付いた構成を選ぶべきである。
【0145】
1/2クロック周期>tpd (12)式
次に図4に示された信号伝送システム100Bにおけ容量結合器9の例として、比誘電率εが4.8のガラスエポキシ樹脂製の誘電体基板(FR−4)上に形成した線路長50mmのペア線路(特性インピーダンス50Ω)による容量結合線路のモデルを図14に示す。
【0146】
図14(A)は容量結合線路のモデルの上面図であり、 図14(B)は容量結合線路のPort1側の構造を示す拡大斜視図であり、図14(C)は容量結合線路のPort2側の構造を示す拡大斜視図である。
【0147】
この容量結合線路のモデルでは、特性インピーダンス50Ωのペア線路90の端(Port1)から3mm経たところにチップキャパシタ91,92をそれぞれ付け、Port1から差動信号を入力させ、ビアホール93,95で内層配線94を50mm這わせたその端(Port2)に伝わる信号エネルギをシミュレーションした。
【0148】
チップキャパシタ91,92の容量を0.1μFとした場合のSパラメータと信号波形のシミュレーション結果を図15(A),(B)に示す。
【0149】
また、キャパシタの容量を100pFとした場合と10pFとした場合の信号波形のシミュレーション結果を図16(A),(B)に示す。
【0150】
入力信号波形の立ち上がり、立ち下がり時間は25psで、実効周波数は14GHzとなる。キャパシタの寄生インダクタンスは0である。図15(A)はtanδ=0の線路であるが、ビアホールなどの影響で、Sパラメータは図10や図11に示した通過特性に比べ余りよくない。しかし、パルス波形は立ち上がり、立ち下がり50psが得られ、100pF以上で十分な伝送特性を示している。10pFでは容量が小さく、十分なエネルギ通過をさせることはできないため、容量はある程度大きくする必要がある。
【0151】
また、伝送線路のtanδを0.015としたときのSパラメータとパルス波形伝送状態を図17(A),(B)に示す。パルス波形はほぼ同様な通過特性を持っている。この理由は、次の(13)式にあるように、周波数fが大きくなるほどに比例的にエネルギ損失が多くなるが、立ち上がりの高周波成分に対してtanδが効くだけであり、立ち上がりがなまってくると好調は成分の周波数が低くなる結果tanδの効き方が小さくなり、振幅がほぼ同じになる。
【0152】
【数1】



【0153】
ここで、Pは電力損失、wは配線の幅、dは配線間隔、lは配線長さ、Vddは電源電圧、Cは配線全体の容量である。
【0154】
正弦波15GHzのときの減衰がtanδ=0では−2dBであるのに対してtanδ=0.015では−3dBであり、2dB/100mmの減衰となり、大きな減衰量であることが分かる。
【0155】
図18に示すようなツイストペア線路130で同様なシミュレーションを行うと誘電角損失tanδ別の伝送特性は図19(A),(B),(C)に示すような結果になり、さらに悪い結果となっている。
【0156】
長距離配線に対して最も重要なことは誘電角損失tanδを小さくすることであり、tanδ=0.0001で1mの距離を数GHz(正弦波で15GHz)信号を−3dBの許容減衰で伝えることができる。
【0157】
パルス波形で数GHz(正弦波15GHz)の信号をtanδ=0.0001で10m伝えると−20dBの減衰となり、エネルギは1/10となる。tanδを小さくする方法として、米国特許第6476330号などの技術を利用するのも一例であるが、クロストークおよび電磁放射のない良好な伝送線路であれば、信号波形の変形は少なく、レシーバはそのレベルを検出することができる。バラクタや容量結合器9で通過するキャリア量とレシーバの負荷容量の関係で決まることになる。2GHzのパルスを考えると、立ち上がりtr=立ち下がり時間tf=175ps以下を実現しなければならない。この遷移領域のエネルギのみがバラクタあるいは容量結合器9で通過するものとする。前述の計算例の条件、すなわち、電源電圧Vdd=1V、Ron+R=950+50Ωとすると、i=1mA(振幅0.1V)となり、電荷量Qは、
Q=175ps×1mA=0.175pC
となる。減衰量が−20dBとなり、17.5fCしかレシーバ端に伝わらないとして考える。レシーバのゲート容量を大きめに見積もって15fFとし、寄生容量を100fF(ゲートの直前まで伝送線路とすることで到達可能)としてもQ=115fF×0.1V=11.5fCであり、レシーバを正規の電圧に上昇させ、スイッチ可能にするエネルギとして十分なキャリアが到達することになる。
【0158】
重要なことは伝送線路中の反射エネルギとクロストークノイズの合計がこのエネルギレベル(17.5fC)に対してさらに−20dB以下であれば、問題はないということである。反射エネルギをほとんど0にするには、ドライバからレシーバまでの接続配線の特性インピーダンスはコネクタや基板ビアホールまでを含めて完全に整合した構造でなければならない。
【0159】
まず、伝送線路の構造としては、図18に示したツイストペア線路130の他に、図20(A)に示すような構造のペアコプレーナ線路130A、図20(B)に示すような構造の両端をコモンとしたガードコプレーナ線路130B、図20(C)に示すような構造のスタックトペア線路130C、図20(D)に示すような構造の上下をコモンとしたガードスタックトペア線路130D等を採用することができる。この図20に示す例では、これらの線路130A,130B,130C,130Dが同じ誘電率を持つ均質な絶縁物135内に2対ずつ配線されている。これらはチップ上と基板上で可能な構造である。
【0160】
伝送線路構造において、一番目に重要なことはペア線路として明確に規定された構造であること、二番目にTEM構造を崩すことなく伝播させるため、同じ誘電率を持つ絶縁物内に配線されていることである。
【0161】
ここでは、図20に示すように、ペア線路の対抗面間隔をd、対抗面導体幅をw、隣接対抗面の導体厚みをt、隣接間距離をsとして、次の(14)式の条件を満たす構造のものを上記明確に規定された構造のペア線路とする。
【0162】
3.3wd<ts (14)式
ペア線路のカップリングの強さは(1/wd)2であり、隣接線路のカップリングの強さは(1/ts)2となる。上記(14)式に示した不等式は、ペア線路のカップリングは隣接線路のカップリングよりも10倍強いということを意味している。10%のエネルギがクロストークであり、無視できない関係のように見えるが、円柱のような等方性がなく,対抗面のカップリングにより支配される異方性が強いため、実験的には5%以下のクロストークである。
【0163】
次に、トランジスタとのつなぎ部分について説明する。
【0164】
上述の図3に示した信号伝送システム100Aにおけるドライバ4Aの平面構造を図21に示す。
【0165】
まず、電源配線40A及びグランド配線40Bは、コプレーナ線路で伝送線路となっており、この電源グランドペア伝送線路40は、ドライバ4AのNMOSトランジスタTn11,Tn12の直上まで配置されている。ゲート配線gw11,gw12で構成される入力信号の配線もスタックトペア線路で伝送線路となっており、ゲート電極g11,g12の直前まで伸びている。
【0166】
ソース配線sw11,sw12及びグランド配線で構成されるドライバ4Aの出力配線は、差動のスタックトペア線路になっていて、方向性カプラ8のエネルギ入力側ペア線81に即接続されている。方向性カプラ8のエネルギ通過側ペア線82が接続されたスタックトペア線路の信号伝送線路30がレシーバ5にまで延びている。
【0167】
ここで、電源配線40A、グランド配線40B、ドレインコンタクト部dc11,dc12、ソースコンタクト部sc11,sc12、ドレイン配線dw11,dw12、ソース配線sw11,sw12、ゲート配線gw11,gw12、電源コンタクト部pc11,pc12、グランドコンタクト部gc11,gc12、方向性カプラ8及び信号伝送線路30は、すべて金属で構成されている。
【0168】
このように、トランジスタTn11,Tn12の電極部分を除いて全ての線が伝送線路になっていることが重要な要素であり、数十GHzのパルス信号を伝送できる機能となる。さらに、好ましくは、ゲート電極g11,g12も金属で構成される。
【0169】
このドライバ4Aの断面構造の一例を図22に示す。
【0170】
ドライバ4Aを構成するNMOSトランジスタTn11,Tn12は、バラクタを兼ねており、半導体基板のN型層又はN型半導体基板に形成されたp拡散ウエル領域(Pウエル)p1内に設けられ、電荷のポンプダウン・ポンプアップが図れるようになっている。ただし、バラクタを兼ねたNMOSトランジスタTn11,Tn12は、図21では縦方向に配列されているが、図22では横方向に配列されている。
【0171】
バラクタを兼ねたNMOSトランジスタTn11,Tn12は、同じp拡散ウエル領域(Pウエル)p1内にバラクタを兼ねたNMOSトランジスタTn11,Tn12を構成するn型ドレイン拡散領域d11,d12及びn型ソース拡散領域s11,s12が設けられ、上記n型ドレイン拡散領域d11,d12に接続されたドレインコンタクト部dc11,dc12、上記n型ソース拡散領域s11,s12に接続されたソースコンタクト部sc11,sc12及びゲート電極g11,g12を有する。各ドレインコンタクト部dc11,dc12は、それぞれドレイン配線dw11,dw12を介して各抵抗R11,R12及び方向性カプラ8に接続されている。各抵抗R11,R12は、各一端が上記ドレイン配線に接続され、各他端が電源コンタクト部pc11,pc12を介して電源配線40Aに接続されている。また、各抵抗R11,R12には、例えばモリブデン抵抗が用いられている。また、各ソースコンタクト部sc11,sc12は、それぞれソース配線sw11,sw12に接続されグランドコンタクト部gc11,gc12を介してグランド配線40Bに接続されている。さらに、ゲート電極g11,g12はゲート配線gw11,gw12すなわち信号入力用の伝送線路に接続されている。
【0172】
この場合、上部電源グランドペア伝送線路40は、コプレーナ構造になっているが、この構造でなくとも良い。また、ゲート電極g11,g12は、伝送線路までのアプローチは短いため、ポリシリコンでも良いが、キャリア速度の速い金属電極が望ましいことは言うまでもない。断面方向でも隣接関係は上述のように3.3wd<tsという関係で絶縁層の厚みや配線幅、配線厚みを設定する。電源グランドペア伝送線路40の特性インピーダンスは出力信号の伝送線路30の特性インピーダンスの信号伝送線路本数分の1以下の特性インピーダンスとすることはすでに述べたとおりである。
【0173】
また、基板のビアホール113の構造も重要である。すでに図14に示したようにコプレーナ伝送線路では、配線幅と同じ直径を持つビアホールは構造的連続性があり、伝送特性がよく、53mmの配線を含んでも図15のような特性で、数GHzのパルス信号を通すことができる。
【0174】
ここで、べたグランド110を介したビアホール113の構造例を図32(A),(B)に透視図で示してあり、図32(A)は全体を示し、図32(B)はビアホール部分を拡大して示している。この図32(A),(B)に示すように、べたグランド110を内層で介したビアホール(長さ0.2mm)113の構造(配線長さ、全長50mmを含む)におけるビアホール半径rとべたグランド110の逃げ穴(アンチビアホール114)半径Rの関係は、アンチビアホール半径Rを0.25mm,0.3mm,0.35mmとした場合におけるビアホール113の透過係数を表すS21パラメータの周波数特性のシミュレーション結果を図33に示してあるように、半径比R/r=2.0〜2.5のときに最適になり、これにより数GHzのパルス信号は十分に通すことができる。
【0175】
さらに、伝送線路中の反射エネルギとクロストークノイズの合計が問題になるため、引き続きクロストークについて説明する。
【0176】
図23(A),(B)に示すように、比誘電率εが4.8のガラスエポキシ樹脂製の誘電体基板(FR−4)150中に、配線長50mm、10μm角の導体151により導体間隔10μmの格子状に線路を配列し、隣接線路をペア構成にした2つのパターンを作り、立ち上がり時間t、立ち下がり時間tがともに5psで周波数が10GHzの図24に示すような波形の高周波パルスを入力し、隣接ペア線路のクロストークを測定した結果を図25(A),(B)に示す。この例においては、入力は紙面表面側から行い、50mm進行し、紙面裏面側の出力1と出力2のクロストークを測定した。この測定結果から、図25(A)に示すような垂直配列では、図25(B)に示すような直交配列に対して、上下方向のペア線路のクロストークは大きいことが判る。
【0177】
隣接ペア線路が3.3wd<tsであることを特徴とする本発明に係る情報伝達システムにおいては、この構造はクロストークを見るための例題となることはいうまでもない。
【0178】
その理由について、図26を参照して説明する。
【0179】
図26(A),(B)は、断面を円形にした電界の広がりを示したもので、電界の向きEを矢印にて示し、誘電体の境界面BSを破線にて示している。隣接ペア線路に電界がもれやすいのは、その部分の電界方向が隣接ペア線路の並びの方向と直交する電界並行配列の場合(図26(A))よりも、その部分の電界方向が隣接ペア線路の並びの方向と同じになった場合(図26(B))であり、電界エネルギが通路ができたようにもれている。磁界は電流線に対して切片がないため、このような現象が起こりにくく、これが図25に示したクロストークの結果として現れている。
【0180】
前述の3.3wd<ts条件を守れば、問題は少ないが、さらにクロストークを少なくするには、図27(A)〜(F)に示すような構造を採用するとよい。
【0181】
図27(A)は、基本形であり、厚さt、幅Wの導体151A,151Bによりペア線路152を構成し、ペア線路152を構成する導体151A,151B間の間隔をd、ペア線路152間の間隔をsとして、それぞれのペア線路152を電界方向に対して直角に配列した電界並行配置構造を示している。3.3wd<tsは必ずしも守らなくてもよいが、2wd<tsの係数2より大きいことが望ましい。
【0182】
図27(B)は、電界方向が直交するようにそれぞれのペア線路152を配列した電界直交配置構造を示している。
【0183】
図27(C)は、製造方法を考えて、電線でペア線路152を構成したもので、t≒wという条件で配置した電界並行配置構造を示している。特性インピーダンス調整はd寸法を変化させればよい。1層でも2層以上でも可能な構成である。
【0184】
図27(D)は、配列の自由度が高い電線でぺア線路152を構成したもので、対抗する45°配置で電界方向が直交状態を保つようにした電界直交配置構造を示している。フラットケーブルとして準備可能である。
【0185】
図27(E)は、図27(B)の電界直交配置構造を積み重ねた多段電界直交配置構造を示している。
【0186】
図27(F)は、図27(E)の多段電界直交配置構造を正方形の導体151A,151Bによるペア線路152で構成したものである。もちろん、図27(B)の電界直交配構造を正方形の導体151A,151Bによるペア線路152で構成することもできる。
【0187】
図27(A)〜(F)に示したすべての構造にいえることは、ぺア線路152が導体151A,151Bの最表面からd以上の厚みを持った均質な絶縁層150で覆われていることである。これは電磁界のTEM伝送モードを保つための重要な構造である。
【0188】
次に、コネクタ7の構造について、図28を参照して説明する。
【0189】
この図28には、ペア線路をできるだけ実現し、特性インピーダンスの乱れを防止するようにしたコネクタ7の構造を示してある。この例では、信号伝送路30としてツイストペア線路130を使用し、図29に示すように、上下に絶縁層161を備える3層構造の誘電体基板160に形成したスタックトペア線路165にスルーホール163部分でツイストペア線路130がコネクタ7を介して接続される。この場合、クランプばねのところだけは多少特性インピーダンスが小さいが、3mm程度の長さのため、λ/40=3mmからパルス1.25GHz以上が問題なく通り、特性インピーダンス減少分が10%のため、12.5GHzは通る。図28に示したコネクタ7はスルーホール実装構造であるが、表面実装でも可能である。
【0190】
さらに、機能ブロック2のべたグランドと入出力回路ブロック3の差動回路へのつなぎ方について説明する。
【0191】
従来の差動伝送線路は図41に見られるようにグランドが参照されている。それを実現する配線例として、図30(A)に示す差動伝送線路105では、差動信号の線路101,102間の特性インピーダンスは100Ω、差動信号の線路101,102とグランド110との間の特性インピーダンスは50Ωとなっている。この実施の形態における信号伝送システム100では、図30(B)に示すように、差動信号の線路111,112と間にグランド110を挿入した構造を採用し、差動信号の線路111,112とグランド110の間の特性インピーダンスは50Ω、差動信号の線路111,112は100Ωと従来の構成と整合するように設定した差動伝送線路115を用いる。
【0192】
そして、この差動伝送線路115では、図31に示すように、差動信号の線路111,112をy型に広げ、下層配線すなわち線路112をビアホール113で最上層まで引き上げて従来型の差動伝送線路105とする。従来型の差動伝送線路105のグランド110はグランド接続部107に接続されているが、この差動伝送線路115のグランド110は接続有り無しを問わない。
【0193】
すなわち、図31に示すように、このような構造の差動伝送線路115では、差動信号の線路111,112で構成されるスタックトペア線路の接続部のグランド110は任意に切断してもよく、例えばLANケーブルのツイストペア線路130にコネクタを通じて自由に接続し、差動信号の線路111,112間の特性インピーダンスが同じであれば、いかなる終端抵抗(対グランド)も付けなくともよい。このような構造の差動伝送線路115では、電磁界が対称に分布していて、グランドは常に0V電位となっているために、このような処置ができる。
【0194】
このような構造の差動伝送線路115を採用することにより、例えば図34のように、ドライバ4の出力はグランドを参照していないスタックトペア伝送線路で行われているが、レシーバ5はレシーバ電源系が完全に独立にできるだけでなく、直流成分を遮断することができる。伝送線路内反射を防止するためには送端終端ができるようにドライバトランジスタのオン抵抗が全て100Ωとなっていることが重要である。もちろん従来よく用いられているダンピング抵抗で調節することは可能である。レシーバ信号受端の差動信号は振幅が1/2になるが、ゲート容量が小さくほとんど全反射するため、2倍の振幅が得られることから、0レベル参照のない差動信号と同じ電圧を得ることができる。
【0195】
なお、図35に示すようにシングルエンド構造のドライバ4とレシーバ5の間でも同様なことができ、グランドが参照されているシングルエンド構造のドライバ4と0レベル参照のレシーバ5を接続する信号伝送路30として上述の如き構造の伝送線路115を用いることができる。
【0196】
さらに、静電気放電(ESD:electro-static discharge)保護回路の構成について、図36及び図37を参照して説明する。
【0197】
この実施の形態における信号伝送システム100では、図36及び図37に示すような構造のESD保護回路180がドライバ4とレシーバ5に設けられている。
【0198】
このESD保護回路180は、図36のように通常のESD保護回路であるが、差動線路の保護回路同士をペアにして、図37に示す断面構造にあるように、同じ導電型構造の領域内に隣接接近配置し、ドレイン拡散層とサブストレート間のpn接合空乏層による容量に貯まっているキャリアを相補利用する構造が採用されている。
【0199】
すなわち、このESD保護回路180は、差動線路のプルアップ保護回路を構成するpMOSトランジスタ181,182をペアにしてnウエル185中に隣接接近配置し、また、プルダウン保護回路を構成するnMOSトランジスタ183,184をペアにして、p型サブストレート186中に隣接接近配置してなる。
【0200】
差動線路のプルアップ保護回路を構成するpMOSトランジスタ181,182は、同じnウエル185の構造の中にあり、nウエル185の構造の中にn拡散領域187とともに形成されたp型ドレイン拡散領域181d,182d及びp型ソース拡散領域181s,182sにつながるドレイン及びソース、酸化膜を挟んだゲート181g,182gから構成される。そして、それぞれVddにゲート及びドレインが共通接続され、各ソースが差動信号伝送線路に接続されている。このような構成のプルアップ保護回路では、差動信号伝送線路から各ソースに供給される差動信号のオン・オフにより、p型ソース拡散領域181s,182sの周囲に形成される空乏層181de,182deの厚みが相補的に変化する。
また、差動線路のプルダウン保護回路を構成するnMOSトランジスタ183,184は、同じp型サブストレート186の構造の中にあり、p型サブストレート186の構造の中にp拡散領域188とともに形成されたn型ドレイン拡散領域183d,184d及びn型方ソース拡散領域183s,184sにつながるドレイン及びソース、酸化膜を挟んだゲート183g,184gから構成される。そして、それぞれVddにゲート及びソースが共通接続され、各ドレインが差動信号伝送線路に接続されている。そして、それぞれVddにゲート及びドレインが共通接続され、各ソースが差動信号伝送線路に接続されている。このような構成のプルダウン保護回路では、差動信号伝送線路から各ドレインに供給される差動信号のオン・オフにより、n型ドレイン拡散領域183d,184dの周囲に形成される空乏層183de,184deの厚みが補的に変化する。
【0201】
このような構造を採用したESD保護回路180は、差動信号がオン・オフするたびに空乏層が電界関係でその厚みを増したり(容量が小さくなり、電荷を放出する)、縮小したり(容量が増大し電荷を吸収する:0.6V拡散電位)することを利用して、ESD保護回路180の容量を実質的に見えなくして、信号のなまりを防止する手段であり、差動伝送線路を構成した利点である。
【0202】
図36にはレシーバ5が示されているが、ドライバ4であっても同様であることはいうまでもない。
【0203】
以上の構成をとると、隣接へのエネルギ移動(クロストーク)が最小限になり、方向性カプラ8や結合容量9で高周波成分を通過させるため、反射エネルギも最小化でき、中距離配線における周辺絶縁物のtanδに起因する熱エネルギ減衰と直流抵抗による熱エネルギ減衰のみとなり、電磁放射のない理想的な伝送システムが完成する。
【0204】
この実施の形態における信号伝送システム100では、いろいろな要素を組み合わせているが、十数GHz対の信号伝送では各種構成要素を総合設計する必要があり、この総合設計に関与する組み合わせ要素が重要である。
【0205】
なお、この実施の形態における信号伝送システム100では、伝送線路の本数は複数ということに規定しているが、単線であってもよく、また、バス構成で64本、128本など多数の本数を並列することも可能である。さらに、絶縁物のtanδを0.0001レベルに小さくする材料として、気泡の包含している絶縁物所謂フォーム材料などが採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1】本発明を適用した回路ブロック間伝送システムの構成を示すブロック図である。
【図2】ドライバとレシーバとからなる中継回路として役目を果たす回路ブロックの構成を示すブロック図である。
【図3】送信端シングルカプラ方式の信号伝送システムの構成例を示すブロック図である。
【図4】送信端容量結合方式の信号伝送システムの構成例を示すブロック図である。
【図5】終端抵抗型ダブルカプラ方式の信号伝送システムの構成例を示すブロック図である。
【図6】図5に示した信号伝送システムにおける伝送線路が高速性能に良質なときの対応例を示すブロック図である。
【図7】LVDS型差動回路の構成例を示すブロック図である。
【図8】信号伝送線路の電気エネルギの移動機構を説明する図である。
【図9】方向性カプラの構造例を示す図であり、(A)はType1の方向性カプラの外観斜視図、(B)はType2の方向性カプラの外観斜視図、(C)は両タイプの方向性カプラの平面図である。
【図10】Type1の方向性カプラのシミュレーション結果を示す特性図であり、(A)は透過係数を表すS21パラメータの周波数特性のシミュレーション結果を示し、(B)は反射係数を表すS11パラメータの周波数特性のシミュレーション結果を示している。
【図11】Type2の方向性カプラのシミュレーション結果を示す特性図であり、(A)は透過係数を表すS21パラメータの周波数特性のシミュレーション結果を示し、(B)は反射係数を表すS11パラメータの周波数特性のシミュレーション結果を示している。
【図12】Type2の方向性カプラについて、ポート2(Port2)にレシーバトランジスタの負荷に相当する2pFの素子と1MΩの素子を並列に付けて、パルス波形を入力した結果を示す波形図であり、(A)は入力パルスの波形を示し、(B)は上記入力パルスに対するポート2(Port2)における出力電圧波形を示し、(C)は上記入力パルスに対するポート2(Port2)における出力電流波形を示している。
【図13】また、本発明の実施の形態において負荷を想定した伝送信号波形のモデルを示す図である。
【図14】図4に示された信号伝送システムにおけ容量結合器の例として、容量結合線路のモデルを示す図であり、(A)は容量結合線路のモデルの上面図であり、(B)は容量結合線路のPort1側の構造を示す拡大斜視図であり、(C)は容量結合線路のPort2側の構造を示す拡大斜視図である
【図15】上記容量結合線路のモデルにおけるチップキャパシタの容量を0.1μFとした場合のシミュレーション結果を示す特性図であり、(A)はSパラメータを示し、(B)は信号波形のシミュレーション結果を示している。
【図16】上記容量結合線路のモデルにおけるチップキャパシタの容量を変えた場合のシミュレーション結果を示す特性図であり、(A)はキャパシタの容量を100pFとした場合の信号波形のシミュレーション結果を示し、(B)はキャパシタの容量を100pFとした場合の信号波形のシミュレーション結果を示している。
【図17】伝送線路のtanδを0.015としたときのシミュレーション結果を示す特性図であり、(A)はSパラメータを示し、(B)はパルス波形伝送状態を示している。
【図18】ツイストペア線路を示す斜視図である。
【図19】ツイストペア線路でのシミュレーション結果を示す特性図であり、(A)は誘電角損失tanδ別のS21パラメータを示し、(B)は誘電角損失tanδ別のS41パラメータを示し、(C)は誘電角損失tanδ別のS61パラメータを示している。
【図20】伝送線路の構造例を示す斜視図であり、(A)はペアコプレーナ線路、(B)はガードコプレーナ線路、(C)はスタックトペア線路、(D)はガードスタックトペア線路をそれぞれ示している。
【図21】図3に示した信号伝送システムにおけるドライバの平面構造を示す図である。
【図22】上記ドライバの断面構造の一例を示す図である。
【図23】隣接ペア線路のクロストークを見るために格子状に配列した線路をペアとした模式的な構成例を示す図であり、(A)は下段垂直配線の例を示し、(B)は下段T型配線の例を示している。
【図24】隣接ペア線路のクロストークを見るために使用した高周波パルスの波形図である。
【図25】図24に示すような波形の高周波パルスを入力し、隣接ペア線路のクロストークを測定した結果を示す特性図であり、(A)は図23(A)に示した垂直配列の場合、(B)は図23(B)に示した直交配列の場合を示している。
【図26】隣接ペア線路のクロストークの発生理由を説明するために断面を円形にした電界の広がりを示した図であり、(A)は電界方向が隣接ペア線路の並びの方向と直交する電界並行配列の場合を示し、(B)は電界方向が隣接ペア線路の並びの方向と同じになった場合を示している。
【図27】クロストークを少なくするための構造例を示す図であり、(A)は基本形を示し、(B)は電界直交配置構造を示し、(C)は電界並行配置構造を示し、(D)は電界直交配置構造を示し、(E)は多段電界直交配置構造を示し、(F)は正方形電界直交配置構造を示している。
【図28】コネクタの構造を示す模式的な分解斜視図である。
【図29】上記コネクタにおいてツイストペア線路が接続されるスタックトペア線路を有する誘電体基板の斜視図である。
【図30】差動伝送線路及びスタックトペア線路の接続方法を示す図であり、(A)はグランドが参照されている差動伝送線路を示し、差動信号の線路と間にグランドを挿入した構造の線路を示している。
【図31】グランドが参照されている差動伝送線路にグランドがないスタックトペア線路を接続した構造を示す図である。
【図32】べたグランドを介したビアホールの構造例を示す透視図であり、(A)は全体を示し、(B)はビアホール部分を拡大して示している。
【図33】ビアホールの透過係数を表すS21パラメータの周波数特性のシミュレーション結果を示す図である。
【図34】グランドを参照していないスタックトペア伝送線路を介してドライバとレシーバを接続した構造を示す図である。
【図35】シングルエンド型伝送路を介してドライバとレシーバを接続した構造を示す図である。
【図36】ESD保護回路の構成例を示す回路図である。
【図37】上記ESD保護回路を構成した半導体集積回路の断面構造を示す図である。
【図38】パルス波形の分解(Fourier級数)の説明図である。
【図39】従来のシングルエンド型のデジタル信号伝送回路の構成例を示す図である。
【図40】従来のCML型差動回路の構成例を示す図である。
【図41】従来のLVDS型差動回路の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0207】
1 電源回路ブロック、2 機能回路ブロック、3 入出力回路ブロック、4,4A〜4C ドライバ、5,5A,5B レシーバ、6 電源グランドペア構成、7 コネクタ、8,8A,8B,11 方向性カプラ、9(91,92) 結合容量、10,20 回路ブロック、12 終端抵抗、30 信号伝送線路、40 電源グランドペア伝送線路、40A 電源配線、40B グランド配線、50 中継回路、81 エネルギ入力側ペア線、82 エネルギ通過側ペア線、81A,81B タックトペア線路、82 エネルギ通過側ペア線、82A,82B スタックトペア線路、83 GAP、84A,84B 周辺絶縁物、90 ペア線路、91,92 チップキャパシタ、93,95 ビアホール、100,100A〜100 E信号伝送システム、101,102 線路、105 差動伝送線路、107 グランド接続部、110 グランド、111 エネルギ入力側ペア線、112 エネルギ通過側ペア線、113 ビアホール、115 差動伝送線路、130 ツイストペア線路、130A ペアコプレーナ線路、130B ガードコプレーナ線路、130C スタックトペア線路、130D ガードスタックトペア線路、135,150 均質な絶縁物、151,151A,151B 導体、152 ペア線路、160 誘電体基板、161 上下絶縁層、163 スルーホール、165 スタックトペア線路、180 ESD保護回路、181,182 pMOSトランジスタ、181d,182d p型ドレイン拡散領域、181s,182s p型ソース拡散領域、181g,182g ゲート、181de,182de 空乏層、183,184 nMOSトランジスタ、183d,184d n型ドレイン拡散領域、183s,184s n型方ソース拡散領域、183g,184g ゲート、185 nウエル、186 p型サブストレート、187 n拡散領域、188 p拡散領域、Vdd 電源、Tn11,Tn12,Tn13 NMOSトランジスタ、Tn21,Tn22,Tn23 NMOSトランジスタ、R11,R12,R21,R22 抵抗、Tp1 PMOSトランジスタ、Tn1 NMOSトランジスタ、SW,SW 相補スイッチ、RonP,RonN オン抵抗、d11,d12 n型ドレイン拡散領域、dc11,dc12 ドレインコンタクト部、dw11,dw12 ドレイン配線、s11,s12 n型ソース拡散領域、sc11,sc12 ソースコンタクト部、sw11,sw12 ソース配線、gw11,gw12 ゲート配線、g11,g12 ゲート電極、p1 p拡散ウエル領域(Pウエル)、pc11,pc12 電源コンタクト部、gc11,gc12 グランドコンタクト部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号伝送線路を介して回路ブロック間でデジタル信号の伝送を行う信号伝送システムであって、
各回路ブロックは、それぞれ機能回路と分離された構成の受送信回路を備え、受信端と送信端の間がインピーダンス整合した伝送線路であることを基本構成とし、
差動出力ドライバから導出されたグランド参照差動線路を上記回路ブロック内でグランドを中心にして差動信号の線路を対称に配置した構成とし、
上記信号伝送線路内ではグランドを参照しない差動ペア線路のみが前記グランドを中心とする対称構造の線路から直接延長された構造を特徴とする信号伝送システム。
【請求項2】
各受送信回路に備えられるドライバ及び/又はレシーバは、各差動信号の線路のプルアップ保護回路とプルダウン保護回路をそれぞれ同じ導電型構造の領域内に設け、静電気放電(ESD:electro-static discharge)保護トランジスタを相補的に動作させるようにしたESD保護回路が設けられていること特徴とする請求項1記載の信号伝送システム。
【請求項3】
上記信号伝送線路は、隣接ペア線路が発生する電界ベクトルが並行又は直行する配列になるように構成された多芯ケーブル構造を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の信号伝送システム。
【請求項4】
電源グランドペア伝送線路を備える受送信回路は電源を基板より供給することを前提として、上記受送信回路を構成する受信回路又は送信回路の少なくとも一方がコネクタ部に埋め込まれていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の信号伝送システム。
【請求項5】
上記送受信回路はデジタル信号を出力する差動インバータ構造のドライバを備え、
元電源に向かって、元電源回路又は近接バイパスキャパシタまで延長され、上記ドライバのオン抵抗と上記信号伝送線路の特性インピーダンスの合計をドライブ可能な低特性インピーダンスの電源グランドペア線路を介して上記ドライバに電源が供給され、
上記ドライバの直後又は受信端の少なくとも一方に方向性カプラ又はキャパシタが挿入され、直流的に絶縁された構造を有し、その後に続く伝送線路がある場合は、上記方向性カプラ又はキャパシタの進行方向に終端がなされた信号伝送線路を介して伝送されるデジタル信号を上記方向性カプラ又はキャパシタの直後又は直前で到達信号レベルに応じたVthを有する差動レシーバで受けることを特徴とする請求項1記載の信号伝送システム。
【請求項6】
差動ドライバ及びレシーバの対になっているトランジスタは同じウエル内にあり、サブストレートグランドに落とすことなく浮かした構造とされており、上記規定された伝送線路の全てが金属で構成されていることを特徴とする請求項1記載の信号伝送システム。
【請求項7】
電源グランドペア線路、ドライバ、信号伝送線路、レシーバからなるセットが双方向に設けられていることを特徴とする請求項1記載の信号伝送システム。
【請求項8】
ドライバチップ直後の方向性カプラ又はキャパシタと、レシーバチップ直前あるいは直後の方向性カプラ又はキャパシタは、グランド線であってもグランドに直接接続せず、ペア線の両端ともに浮遊した開放端であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の信号伝送システム。
【請求項9】
上記方向性カプラ又はキャパシタのエネルギ通過側の線路は多重反射防止の終端抵抗が伝送方向の終端に挿入されていることを特徴とする請求項5記載の信号伝送システム。
【請求項10】
上記信号伝送線路を介してデジタル信号を受信するレシーバ端において、差動ペア線路の間に電極を挿入し、この電極の電位を参照電位とすることを特徴とする請求項1記載の信号伝送システム。
【請求項11】
上記信号伝送線路を介してデジタル信号の伝送を行う一方の回路ブロックの送受信回路に電源を有しないときは、電源グランドペア伝送線路が併走しており、
この電源グランドペア伝送線路の特性インピーダンスはドライブする複数の信号伝送線路の並列インピーダンスと同じかそれよりより小さいことを特徴とする請求項1記載の信号伝送システム。
【請求項12】
信号伝送線路を介して回路ブロック間でデジタル信号の伝送を行う信号伝送システムであって、
各回路ブロックは、それぞれ機能回路と分離された構成の受送信回路を備え、受信端と送信端の間がインピーダンス整合した伝送線路であることを基本構成とし、
各受送信回路に備えられるドライバ及び/又はレシーバは、各差動信号の線路のプルアップ保護回路とプルダウン保護回路をそれぞれ同じ導電型構造の領域内に設け、ESD保護トランジスタを相補的に動作させるようにしたESD保護回路が設けられていること特徴とする信号伝送システム。
【請求項13】
上記信号伝送線路は、差動構成又はシングルエンド構成の隣接ペア線路が、それが発生する電界ベクトルが並行又は直行する配列になるように構成された多芯ケーブル構造を有することを特徴とする請求項12記載の信号伝送システム。
【請求項14】
電源グランドペア伝送線路を備える受送信回路は電源を基板より供給することを前提として、上記受送信回路を構成する受信回路又は送信回路の少なくとも一方がコネクタ部に埋め込まれていることを特徴とする請求項12記載の信号伝送システム。
【請求項15】
上記送受信回路はデジタル信号を出力する差動インバータ構造のドライバを備え、
元電源に向かって、元電源回路又は近接バイパスキャパシタまで延長され、上記ドライバのオン抵抗と上記信号伝送線路の特性インピーダンスの合計をドライブ可能な低特性インピーダンスの電源グランドペア線路を介して上記ドライバに電源が供給され、
上記ドライバの直後又は受信端の少なくとも一方に方向性カプラ又はキャパシタが挿入され、直流的に絶縁された構造を有し、その後に続く伝送線路がある場合は、上記方向性カプラ又はキャパシタの進行方向に終端がなされた信号伝送線路を介して伝送されるデジタル信号を上記方向性カプラ又はキャパシタの直後又は直前で到達信号レベルに応じたVthを有する差動レシーバで受けることを特徴とする請求項12記載の信号伝送システム。
【請求項16】
差動ドライバ及びレシーバの対になっているトランジスタは同じウエル内にあり、サブストレートグランドに落とさすことなく浮かした構造とされており、上記規定された伝送線路の全てが金属で構成されていることを特徴とする請求項12記載の信号伝送システム。
【請求項17】
電源グランドペア線路、ドライバ、信号伝送線路、レシーバからなるセットが双方向に設けられていることを特徴とする請求項12記載の信号伝送システム。
【請求項18】
ドライバチップ直後の方向性カプラ又はキャパシタと、レシーバチップ直前あるいは直後の方向性カプラ又はキャパシタは、グランド線であってもグランドに直接接続せず、ペア線の両端ともに浮遊した開放端であることを特徴とする請求項12記載の信号伝送システム。
【請求項19】
上記方向性カプラ又はキャパシタのエネルギ通過側の線路は多重反射防止の終端抵抗が伝送方向の終端に挿入されていることを特徴とする請求項15記載の信号伝送システム。
【請求項20】
上記信号伝送線路を介してデジタル信号の伝送を行う一方の回路ブロックの送受信回路に電源を有しないときは、電源グランドペア伝送線路が併走しており、
この電源グランドペア伝送線路の特性インピーダンスはドライブする複数の信号伝送線路の並列インピーダンスと同じかそれよりより小さいことを特徴とする請求項12記載の信号伝送システム。
【請求項21】
信号伝送線路を介して回路ブロック間でデジタル信号の伝送を行う信号伝送システムであって、
各回路ブロックは、それぞれ機能回路と分離された構成の受送信回路を備え、受信端と送信端の間がインピーダンス整合した伝送線路であることを基本構成とし、
上記信号伝送線路は、差動構成又はシングルエンド構成の隣接ペア線路が、それが発生する電界ベクトルが並行又は直行する配列になるように構成された多芯ケーブル構造を有することを特徴とする信号伝送システム。
【請求項22】
電源グランドペア伝送線路を備える受送信回路は電源を基板より供給することを前提として、上記受送信回路を構成する受信回路又は送信回路の少なくとも一方がコネクタ部に埋め込まれていることを特徴とする請求項21記載の信号伝送システム。
【請求項23】
上記送受信回路はデジタル信号を出力する差動インバータ構造のドライバを備え、
元電源に向かって、元電源回路又は近接バイパスキャパシタまで延長され、上記ドライバのオン抵抗と上記信号伝送線路の特性インピーダンスの合計をドライブ可能な低特性インピーダンスの電源グランドペア線路を介して上記ドライバに電源が供給され、
上記ドライバの直後又は受信端の少なくとも一方に方向性カプラ又はキャパシタが挿入され、直流的に絶縁された構造を有し、その後に続く伝送線路がある場合は、上記方向性カプラ又はキャパシタの進行方向に終端がなされた信号伝送線路を介して伝送されるデジタル信号を上記方向性カプラ又はキャパシタの直後又は直前で到達信号レベルに応じたVthを有する差動レシーバで受けることを特徴とする請求項21記載の信号伝送システム。
【請求項24】
差動ドライバ及びレシーバの対になっているトランジスタは同じウエル内にあり、サブストレートグランドに落とさすことなく浮かした構造とされており、上記規定された伝送線路の全てが金属で構成されていることを特徴とする請求項21記載の信号伝送システム。
【請求項25】
電源グランドペア線路、ドライバ、信号伝送線路、レシーバからなるセットが双方向に設けられていることを特徴とする請求項21記載の信号伝送システム。
【請求項26】
ドライバチップ直後の方向性カプラ又はキャパシタと、レシーバチップ直前あるいは直後の方向性カプラ又はキャパシタは、グランド線であってもグランドに直接接続せず、ペア線の両端ともに浮遊した開放端であることを特徴とする請求項21記載の信号伝送システム。
【請求項27】
上記方向性カプラ又はキャパシタのエネルギ通過側の線路は多重反射防止の終端抵抗が伝送方向の終端に挿入されていることを特徴とする請求項23記載の信号伝送システム。
【請求項28】
上記信号伝送線路を介してデジタル信号の伝送を行う一方の回路ブロックの送受信回路に電源を有しないときは、電源グランドペア伝送線路が併走しており、
この電源グランドペア伝送線路の特性インピーダンスはドライブする複数の信号伝送線路の並列インピーダンスと同じかそれよりより小さいことを特徴とする請求項21記載の信号伝送システム。
【請求項29】
それぞれ機能回路と分離された構成の受送信回路を備え、受信端と送信端の間がインピーダンス整合した伝送線路であることを基本構成とする各回路ブロック間を接続して回路ブロック間でデジタル信号の伝送を行うための信号伝送線路であって、
差動構成又はシングルエンド構成の隣接ペア線路が、それが発生する電界ベクトルが並行又は直行する配列になるように構成された多芯ケーブル構造を有することを特徴とする信号伝送線路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2005−51496(P2005−51496A)
【公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−281188(P2003−281188)
【出願日】平成15年7月28日(2003.7.28)
【出願人】(598042633)
【出願人】(598168807)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】