説明

信号発生装置

【課題】信号発生装置の複数のチャンネルに供給されるクロックを停止することなく、チャンネル間の出力信号位相を制御する。
【解決手段】第1及び第2チャンネル20及び22は、クロック位相シフト回路26及び28と、メモリ、並直列変換回路、DACを有する信号発生ブロック10及び12を具えている。位相比較回路24は、信号発生ブロック10及び12内のメモリから波形データを読み出すための分周クロックを受けて、これらの位相を比較し、位相差信号を生成する。CPUは、この位相差信号を用いてクロック位相シフト回路26及び28を制御し、信号発生ブロック10及び12に供給するクロックの位相シフトを行うことで、第1及び第2チャンネル20及び22の出力信号の位相関係を所望の関係に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号発生装置に関し、特に複数チャンネルからの出力信号の位相を所望の関係に制御でき、更に必要に応じて高速な出力信号を発生させることが可能な信号発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路の設計過程では回路を試作することも多いが、ある回路を試作してもその回路の前段の回路がまだできていないこともある。こうした場合、前段の回路が出力するであろう信号を、信号発生装置にシミュレートさせて回路に供給し、回路動作の確認が行われる。また、回路の動作速度は、どんどん高速になっているので、信号発生装置の出力信号にもより高周波数のものが要求されている。
【0003】
このとき、供給する信号は1つだけでなく、複数の信号を回路の複数のポイントに供給したいという要求も多い。このため、信号発生装置には、複数のチャンネルが設けられ、これらチャンネル間で同期して信号を出力可能にしている。複数のチャンネルからの出力は、ユーザが出力開始の操作を信号発生装置に行うことによって開始される。また、信号発生装置が外部からトリガ信号を受け、このトリガ信号に応じて複数のチャンネルからの出力信号の出力が開始されるようにしたものもある。こうした複数の出力チャンネルを有する信号発生装置は、例えば、米国特許第6356224号に開示されている。
【0004】
こうした信号発生装置は、波形メモリとデジタル・アナログ変換回路(DAC)を有する信号発生ブロックを有している。波形メモリには、出力する信号の波形データが記憶されている。波形データは、ユーザが必要に応じて編集可能となっている。波形データは、DACでアナログ信号に変換されて出力される。なお、複数のチャンネルがあるときには、複数の信号発生ブロックが用いられる。ただし、波形メモリは、複数の信号発生ブロックで共有するようにしても良い。
【0005】
図1は、複数のチャンネルを有する従来の信号発生装置の一例の機能ブロック図である。これは、位相の一致したクロックに従って、複数チャンネルから同時に信号の出力を開始させる信号発生装置である。図示しないが、この回路は、周知のマイクロプロセッサ、ハードディスク、操作パネル等から構成される制御手段と接続されている。この例では、第1及び第2信号発生ブロック10及び12の動作の基準となるクロックの供給を制御することによって、第1及び第2信号発生ブロック10及び12から出力される信号の同期を取っている。即ち、クロック発振回路14からのクロックCLKは、アンド・ゲート16によって、第1及び第2信号発生ブロック10及び12へ供給及び停止が制御される。ゲート16のオン・オフは、フリップ・フロップ(FF)18へのスタート信号に応じて制御される。例えば、スタート信号がローからハイになると、その次のクロックの立ち下がりでFF18の出力Qがハイになりゲート16をオンにするので、次のクロックの立ち上がりからクロックが第1及び第2信号発生ブロック10及び12に供給されるようになる。一方、スタート信号がハイからローになると、その次のクロックの立ち下がりでFF18の出力Qがローになりゲート16をオフにするので、次のクロックの立ち上がりからクロックの第1及び第2信号発生ブロック10及び12への供給が停止する。スタート信号は、ユーザの設定に応じ、制御手段の制御に従って供給される。
【特許文献1】米国特許第6356224号
【特許文献2】米国特許第5554945号
【特許文献3】米国特許第6111445号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1に示すような信号発生ブロックへのクロックの供給及び停止によって複数のチャンネル間の同期を制御しても、クロックが低速であれば安定して動作する。しかし、クロックが100MHzを超える程度まで高速になると、動作が不安定になる。これは、クロックのパルス波形が矩形から正弦波に近づき、クロック供給再開時においては、クロック・パルスのデューティー比が崩れてしまう。すると、最初のクロック・パルスをロジック回路が認識したり、しなかったりという現象が生じるためである。
【0007】
また、回路動作を高速にするために、PLL(位相ロック・ループ)やDLL(Delay Lock Loop)がしばしば使われている。DLLは、クロック位相を意図的に最大で1周期まで遅延させることで、結果的に遅延がないとの同じ状態にする処理である。しかし、これらの処理は、クロックが供給され続けていないと利用できない。
【0008】
そこで、高速になっても安定した動作を確保し、複数のチャンネル間の出力信号を同期させることが望まれている。また、チャンネル間の出力信号を同時に出力開始させるだけでなく、ユーザの意図した位相差を生じさせれれば更に好ましい。加えて、もし可能であれば、より高速の出力信号を発生できると良い。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、信号発生ブロックにクロックが常に供給されと同時に、クロックの位相を制御することで、安定動作とチャンネル間同期の両方を実現する。更に本発明では、複数のチャンネルの出力信号間の位相を制御できる点を応用し、複数チャンネルの出力信号を合成することで、1クロックにつき複数レベルを有する信号を生成できるので、実質的にクロック速度以上の時間分解能を有する出力信号の生成も可能にする。
【0010】
信号発生手段は、波形データを記憶する記憶手段と、波形データをアナログの出力信号に変換する変換手段とを有し、クロックに従って出力信号を発生する。複数の信号発生手段は、制御手段の制御に従って出力信号の出力開始が制御されるが、信号発生手段の夫々は、出力信号の出力を開始する前においてもクロックを受けて動作しており、所定の値を出力するように制御すると良い。この所定値は、例えば、次の出力信号の最初の値としておけば、出力開始を滑らかに行うことができる。
【0011】
また、本発明の信号発生装置では、クロックを受けて任意の位相シフト・クロックを生成する複数の位相シフト手段と、位相シフト・クロックを分周した読み出しクロックに従って並列データを読み出し、位相シフト・クロックに従って並直列変換して出力信号を発生する複数の信号発生手段と、複数の信号発生手段の読み出しクロック間の位相差に応じた位相差信号を生成する位相比較手段と、位相差信号に応じて位相シフト手段におけるクロックの位相シフトを制御することにより、複数の信号発生手段の出力信号間の位相を所望の関係に制御する制御手段とを具えるようにしても良い。これによって、複数のチャンネルから所望の位相関係にある複数の出力信号を得ることができる。
【0012】
更に複数の信号発生手段の出力信号を合成して出力する合成手段を設けても良い。このとき、複数の信号発生手段が、並列データを位相シフト・クロックに従って並直列変換し、デジタル・アナログ変換することによって、クロックの周期中の所望区間で所望レベルを有し、他の区間で基準レベルである出力信号を発生する。そして、制御手段が、複数の出力信号の所望レベルを互いに重複しない位相関係に制御することで、クロックの速度を変えることなく、より速いクロックで生成したのと同じ分解能の出力信号生成が可能になる。
【0013】
また、別の観点から見た本発明の信号発生装置は、クロックの周期中の所望区間で所望レベルを有し、他の区間で基準レベルであるアナログの出力信号を夫々発生する複数の信号発生手段と、複数の出力信号の所望レベルが互いに重複しない位相関係に出力信号の位相を制御する制御手段と、複数の信号発生手段の出力信号を合成して出力する合成手段とを具えるものである。このとき、制御手段は、複数の信号発生手段夫々に供給されるクロック間の位相を制御することにより、複数の出力信号の所望レベルを互いに重複しない位相関係に制御する。これによって、クロックの速度を変えることなく、より速いクロックで生成したのと同じ分解能の出力信号を生成可能になる。
【0014】
複数の信号発生手段が、クロックの周期中の所望区間で所望レベルを有し、他の区間で基準レベルであるアナログの出力信号を夫々発生させ、これらを合成した方が、合成したレベルを所望のレベルに正確に制御しやすい。しかし、ある程度、レベルに誤差が許される場合では、所望レベルと基準レベルのスイッチング処理を行わず、単に複数の信号発生手段夫々に供給されるクロックの位相を互いにずらす制御を行なって複数の信号発生手段の出力信号を合成して出力するようにしても良い。これによれば、所望レベルと基準レベル間のスイッチング処理がないので、この処理で生じやすいリップルが出力信号に現れにくいという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図2は、本発明の実施に適した信号発生装置の一例の機能ブロック図である。図示しないが、この回路は、周知のマイクロプロセッサ(CPU)、ハードディスク、操作パネル等から構成される制御手段と接続されている。また、制御のためのプログラムは、例えば、ハードディスクなどの記憶手段に記憶されている。信号発生装置は、ユーザが操作パネルを通して操作することにより、出力信号の出力を開始する。また、外部トリガ入力端子(図示せず)を設け、外部からのトリガ信号に応じて、出力信号の出力開始を制御する機構を従来と同様に設けても良い。以下では、従来例と対応するブロックには、同じ符号を付して説明する。
【0016】
図2には、第1及び第2チャンネル20及び22の2つのチャンネルから出力信号を出力する例を示す。しかし、チャンネル数は、n個(nは任意の自然数)としても良い。第1チャンネル20には、信号発生ブロック10とクロック位相シフト回路26が設けられる。同様に第2チャンネル22には、信号発生ブロック12とクロック位相シフト回路28が設けられる。クロック位相シフト回路26及び28には、クロック発振回路14からクロックが供給される。クロック位相シフト回路26及び28で位相シフトされたクロック(以下、位相シフト・クロックという)は、それぞれの信号発生ブロック10及び12に供給され、従来と同様に波形データを生成・出力する際のタイミングを決定する。位相比較回路24は、各チャンネルからの分周クロックDCLKを比較し、位相差に応じた位相差信号を発生する。3チャンネル以上ある場合でも、同様に隣接するチャンネル間の位相差に応じた位相差信号を発生する位相比較回路を設ければ良い。CPU(図示せず)は、位相差信号を受けて、各チャンネルのクロック位相シフト回路用にI及びQ制御信号を生成し、クロックの位相シフトを制御する。
【0017】
リレー・スイッチ29及び30は、CPUの制御に応じて、信号発生ブロック10及び12からの出力信号が不必要に出力端子に供給されないようにオン・オフする。これは、例えば、信号発生装置の電源投入時、各回路ブロックが立ち上がった後に、各信号発生ブロックから校正信号を発生させてチャンネル間の位相調整が行われるが、こうした場合に出力端子に出力信号が現れないようにするために使用される。
【0018】
図3は、クロック位相シフト回路26及び28の一例を示す。これは、具体的にはIQモジュレータを用いてクロックの位相をシフトする。クロック発振回路14からのクロックCLKは、第1乗算器31と90度位相シフタ32に供給される。第1乗算器31は、CPUからのI制御信号を受けて、I成分を生成する。90度位相シフタ32は、クロックの位相を90度位相シフトし、第2乗算器33に供給する。第2乗算器33は、Q制御信号を受けて、Q成分を生成する。加算器34はIQ成分を加算する。CPUがI及びQ制御信号の重み付けを−1〜+1の範囲で変更することで、クロック位相を360度中の任意の角度まで遅らせることができる。例えば、I及びQ制御信号それぞれの重み付け係数が−1及び0であれば、クロックの位相は180度遅れる。I及びQ制御信号それぞれの重み付け係数が0及び−1であれば、クロックの位相は270度遅れる。こうした位相シフト回路は、位相インタポレータ(Phase Interpolator)とも呼ばれ、例えば、米国特許第5554945号や米国特許第6111445号に開示されている。
【0019】
図4は、信号発生ブロック10及び12の構成例を示すブロック図である。この例では、位相シフト・クロックは、分周回路35及び36で順次2分の1に分周され、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)39には4分の1に分周された分周クロックが供給される。PLD39は、例えばFPGAであり、アドレス・カウンタ、レジスタ等の機能が予めプログラムされ、CPUからの制御に応じて、メモリ38にアドレスとリード・ライト(R/W)信号を供給し、波形データの書き込み及び読み出しを制御する。メモリ38への波形データ及びクロックの供給も、PLD39を介して行われる。PLD39は、メモリ38から4ビットの並列データ(波形データ)を10個ずつ、1/4分周クロック(DCLK)に従って読み出す。並直列変換回路(P/S)40は、PLD39から波形データを1/4分周クロックで受けて、1/2分周クロック及び位相シフト・クロックを順次適用して直列データに変換する。この並列変換処理は、メモリ38の読み出し動作が遅いことを補い、高速なデータ生成のために行われる。デジタル・アナログ変換回路(DAC)41は、並直列変換回路40からのデータを受けて、アナログの出力信号を生成する。
【0020】
1/4分周クロックDCLKは、上述の位相比較回路24にも供給され、複数の信号発生ブロック間の位相比較にも利用される。これら分周クロック間の位相が一致することは、4ビットの並列データが複数の信号発生ブロック間で同期してメモリから読み出されることを意味する。よって、複数チャンネルからの出力信号を同期させることができる。もし複数の信号発生ブロック間で、意図的に位相をずらして信号を生成したければ、複数の信号発生ブロックからの1/4分周クロックDCLK間に所望の位相差が生じるに制御すれば良い。これは、例えば、複数の出力信号間に意図的にスキューを設けたい場合などに利用できる。所望のチャンネル間位相差に応じた位相差信号の値は、信号発生装置製造時に予めプログラムしておけば良い。
【0021】
本発明では、PLLやDLLの使用を可能とするため、各回路ブロックには常にクロックが供給される。これは出力信号の出力開始前であっても同じである。しかし、出力信号の出力開始前に出力端子に現れる値が変化しては、出力開始時の値と不一致を起こすので、各信号発生ブロックは、クロックを受けつつも波形データ中のある同じデータを並直列変換回路40に供給し続けるように制御される。好適には、PLD39がクロック毎に次に出力が予定されている信号の最初のデータだけを並直列変換回路40に供給する。これによれば、出力開始前において、出力端子には次の出力信号の最初の値が現れているので、出力開始を滑らかに行える。
【0022】
図5は、本発明によるチャンネル間位相シフト機能を応用した信号発生装置の一例を示すブロック図である。図5では、位相関係を調整した2チャンネルの出力信号を合成することによって、見かけ上、2倍のクロック(時間分解能)で生成された信号と等価の信号を出力する例を示す。しかし、3チャンネル以上でも同様である。
【0023】
各チャンネルの信号発生ブロック内には、図4に示した通常のデジタル・アナログ変換回路(DAC)41に代わって、インターリーブ・デジタル・アナログ変換回路(以下、I−DACと略す)が設けられる。図6aは従来のDACの出力波形、図6b及びcは本発明による各I−DACの出力信号波形、図6dは2チャンネルのI−DAC出力信号を合成した波形、図6e及びfは第1及び第2チャンネルに供給される位相シフト・クロックを示す。このとき、破線の間隔は、1クロックの周期を示す。図aに示す従来のDACに比較し、図6b及びcに示す本発明によるI−DACでは、1クロックの周期内で1/2周期分(もしnチャンネル(nは任意の自然数)を合成するときは、1/n周期分)だけユーザの設定に応じた所望のレベルとし、残りの周期分はゼロ・レベル(基準レベル)に落としている。第1チャンネル20の第1I−DAC42の出力は、クロック周期の内の前半の1/2周期において所望レベルを有し、一方、第2チャンネルの第2I−DAC44の出力は、クロック周期の内の後半の1/2周期において所望レベルを有する。
【0024】
もし複数nチャンネルある場合は、クロック周期がn個の区間に分けられ、各チャンネルの出力信号がこれら区間と対応させられる。そして、n個のチャンネルの信号発生手段夫々の出力信号は、クロック周期のn個の区間中の対応する区間においては所望レベルを有し、対応しない区間においてはゼロ・レベル(基準レベル)に制御される。このように、対応する区分以外において出力信号レベルをゼロにするのは、ある区間についてもし複数チャンネルで所望レベルがあると、最終的に合成したレベルを所望値に正確に制御するのが難しいためである。
【0025】
CPUは、位相比較器24が出力する位相差信号を受けて、第1及び第2I−DACの出力信号の位相関係がクロックCLKの周期の半分だけ(180度)ずれた位相関係とするように、第1及び第2チャンネルからの第1分周クロックD−CLK1と第2分周クロックD−CLK1の位相関係を調整する。この位相関係を維持するための位相差信号は、装置の製造時に予め決定しておけば良い。n個のチャンネルがある場合も同様である。
【0026】
第1及び第2チャンネルの出力信号は、電力合成回路46で合成される。これによって、図6dに示されるように、1クロック周期内に2つのレベルを有する信号を出力できる。即ち、クロックの周波数に対して、2倍の分解能を有する信号を生成できる。n個のチャンを合成すれば、n倍の分解能となる。
【0027】
図7は、本発明によるゼロイング(Zeroing)ステージの例を示し、これが通常のDACの並列データの入力端子の夫々に設けられることで、I−DACが構成される。波形データ(並列データ)の各ビットは、フリップ・フロップ(FF)48のD入力端子に入力され、各チャンネルに供給される位相シフト・クロックの立ち上がりで、その値がFF48に保持されQ出力端子からマルチプレクサ50に供給される。位相シフト・クロックは、デューティー変更回路52に供給され、必要に応じてデューティーが変更される。マルチプレクサ50は、デューティー変更回路52の出力がハイ(論理1)の時は、グランド側を選択し、ロー(論理0)の時はFF48のQ出力の値を選択し、出力する。
【0028】
最初に信号発生装置のチャンネル数が2個の例を説明すると、デューティー変更回路52は、位相シフト・クロックのデュティー比を変更せず、そのまま出力する。ここで、位相シフト・クロックのデュティーは50%としている。位相シフト・クロックが、その1周期の後半でローとなる場合では、マルチプレクサ50は、位相シフト・クロックの1周期の前半でグランドを選択してゼロ・レベルを出力し、後半でFF48からのビット・データを出力する。よって、このデータを受けたI−DACは、図6cに示すようにクロック周期の後半において所望レベルを有する信号を出力する。同様に、位相シフト・クロックが、その1周期の前半でローとなる場合では、図6bに示す波形が得られる。
【0029】
次に信号発生装置のチャンネル数が4個の例を説明すると、デューティー変更回路52は、位相シフト・クロックのデュティー比を75%に変更する。図8は、位相シフト・クロックと4チャンネルにおけるデューティー変更回路52の出力信号のタイミング関係の一例を示す波形図である。マルチプレクサ50は、デューティー変更回路52の出力信号がローになるクロック周期の1/4(25%)の期間だけ、FF48のQ出力をDACに供給し、他の期間ではゼロを供給する。4チャンネル夫々に供給される位相シフト・クロックは、位相シフト回路によって位相が90度ずつずらされているので、4つのチャンネルの出力信号の所望レベルのある部分は重なることがない。同様に、チャンネル数がnの場合では、ゼロイング・ステージは、クロック周期の1/nだけFF48のQ出力をDACに供給する。
【0030】
図9は、本発明によるゼロイング・ステージの他の例のブロック図である。図7と異なるのは、マルチプレクサ50の代わりにアンド・ゲート54を用いている点である。入力端子58が反転入力であるため、デューティー変更回路52の出力がローと時のみ、入力端子56に入力されるデータを通過させる。結果として、図7のマルチプレクサ50と同じ動作をする。
【0031】
上述したゼロイング・ステージを用いた複数チャンネル出力信号の合成は、合成レベルを正確に所望レベルとしたい場合に特に有効である。しかし、合成レベルが所望値よりも若干異なっていても許容できるのであれば、ゼロイング・ステージを用いなくても良い。ゼロイング・ステージを用いた場合、スイッチング動作時のリンギングにより不要なリップルが生じやすい。この点では、チャンネル間で位相差を設けて合成するだけの方が、リップルのない合成信号を生成しやすい。この場合のチャンネル間の位相差は、nチャンネルある場合では、1周期の1/nずつとし、互いに重複しないようにすれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上、本発明によれば、複数チャンネルを有する信号発生装置において、チャンネル間の位相を所望の関係に制御して出力できる。また、本発明の応用として、クロックの周期中の所望区間で所望レベルを有し、他の区間で基準レベルである出力信号を発生し、複数の出力信号の所望レベルが互いに重複しない関係に位相シフト・クロックの位相を制御して、これら出力信号を合成することで、1クロックにつき複数レベルを有する信号を生成するようにしても良い。これによって、クロックの周波数よりも時間分解能の高い出力信号を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】複数のチャンネルを有する従来の信号発生装置の一例の機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施に適した信号発生装置の一例の機能ブロック図である。
【図3】本発明による位相シフト回路の一例のブロック図である。
【図4】本発明による信号発生ブロックの一例のブロック図である。
【図5】本発明によるチャンネル間位相シフト機能を応用した信号発生装置の一例を示すブロック図である。
【図6】各信号のタイミングを示す信号波形図である。
【図7】本発明によるゼロイング・ステージの一例のブロック図である。
【図8】位相シフト・クロックと4チャンネルにおけるデューティー変更回路の出力信号のタイミング関係の一例を示す波形図である。
【図9】本発明によるゼロイング・ステージの他の例のブロック図である。
【符号の説明】
【0034】
12 信号発生ブロック
14 クロック発振回路
16 アンド・ゲート
18 フリップ・フロップ
20 第1チャンネル
22 第2チャンネル
24 位相比較回路
26 第1クロック位相シフト回路
28 第2クロック位相シフト回路
29 スイッチ
30 スイッチ
31 第1乗算器
32 90度位相シフタ
33 第2乗算器
34 加算器
35 分周回路
36 分周回路
38 メモリ
39 プログラマブル・ロジック・デバイス
40 並直列変換回路
41 デジタル・アナログ変換回路
42 インターリーブ・デジタル・アナログ変換回路
44 インターリーブ・デジタル・アナログ変換回路
46 合成回路
48 フリップ・フロップ
50 マルチプレクサ
52 デューティー変更回路
54 アンド・ゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波形データを記憶する記憶手段と、上記波形データをアナログの出力信号に変換する変換手段とを有し、クロックに従って上記出力信号を発生する複数の信号発生手段と、
複数の信号発生手段からの上記出力信号の出力開始を制御する制御手段とを具え、
上記信号発生手段の夫々は、上記出力信号の出力を開始する前においても上記クロックを受けて動作し、所定の値を出力していることを特徴とする信号発生装置。
【請求項2】
クロックを受けて複数の位相シフト・クロックを生成する位相シフト手段と、
上記位相シフト・クロックを分周した読み出しクロックに従って並列データを読み出し、上記位相シフト・クロックに従って並直列変換して出力信号を発生する複数の信号発生手段と、
上記複数の信号発生手段の上記読み出しクロック間の位相差に応じた位相差信号を生成する位相比較手段と、
上記位相差信号に応じて上記位相シフト手段における上記クロックの位相シフトを制御することにより、上記複数の信号発生手段の上記出力信号間の位相を所望の関係に制御する制御手段とを具える信号発生装置。
【請求項3】
複数の上記信号発生手段の上記出力信号を合成して出力する合成手段を更に具え、
複数の上記信号発生手段は、上記並列データを上記位相シフト・クロックに従って並直列変換し、デジタル・アナログ変換することによって、上記クロックの周期中の所望区間で所望レベルを有し、他の区間で基準レベルである出力信号を発生し、
上記制御手段は、複数の上記信号発生手段の上記出力信号の上記所望レベルを互いに重複しない位相関係に制御することを特徴とする請求項2記載の信号発生装置。
【請求項4】
複数の上記信号発生手段の上記出力信号を合成して出力する合成手段を更に具え、
上記制御手段は、上記複数の信号発生手段夫々に供給されるクロックの位相を互いにずらす制御を行なうことにより、上記複数の信号発生手段の上記出力信号の位相を互いにずらすことを特徴とする請求項2記載の信号発生装置。
【請求項5】
クロックの周期中の所望区間で所望レベルを有し、他の区間で基準レベルであるアナログの出力信号を夫々発生する複数の信号発生手段と、
複数の上記信号発生手段の上記出力信号の上記所望レベルが互いに重複しない位相関係に上記出力信号の位相を制御する制御手段と、
複数の上記信号発生手段の上記出力信号を合成して出力する合成手段とを具える信号発生装置。
【請求項6】
上記制御手段は、複数の上記信号発生手段夫々に供給されるクロック間の位相を制御することにより、複数の上記信号発生手段の上記出力信号の上記所望レベルを互いに重複しない位相関係に制御することを特徴とする請求項5記載の信号発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−60497(P2007−60497A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245788(P2005−245788)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000108409)日本テクトロニクス株式会社 (32)
【Fターム(参考)】