説明

光ピックアップヘッドおよび情報記録再生装置

【課題】2層ディスクを用いる場合に、対物レンズをトラッキング追従させてもTE信号にオフセットが発生しない光ピックアップヘッドを提供する。
【解決手段】光源1と、複数の回折光を生成する回折手段58と、回折光を光記憶媒体上に集光する収束手段と、光記憶媒体41上で反射された複数のビーム70a、70b、70cを分岐するビーム分岐手段52と、受光したビームの光量に応じた信号を出力する光検出手段32を備え、回折手段58で生成された回折光の内の0次回折光の回折効率をηmとし、1次以上の回折光の回折効率をηsとし、10・ηs≧ηmの関係を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光記憶媒体に対して情報の記録、再生もしくは消去を行う装置に使用される、光ピックアップヘッドおよび情報記録再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高密度・大容量の記憶媒体であるピット状パターンを有する光記憶媒体を用いる光メモリ技術は、ディジタルオーディオディスク、ビデオディスク、文書ファイルディスク、さらにはデータファイルなどその応用が拡大しつつある。近年、DVDと称する高密度・大容量の光記憶媒体が実用化され、動画のような大量の情報を扱える情報媒体として脚光を浴びている。このDVD光記憶媒体は650nm付近の波長のレーザ光を発するいわゆる赤色半導体レーザを用いて記録あるいは再生が行われる。
【0003】
図22を用いて、記録再生が可能な光ディスクシステムにおける従来の光ピックアップヘッドについて説明する。
【0004】
光源である半導体レーザ光源101は、波長λ2が650nmの直線偏光の発散ビーム700を出射する。半導体レーザ光源2から出射された発散ビーム700は、回折格子510に入射され、0次および±1次回折光の3つのビームに分離される。0次回折光は情報の記録/再生を行うメインビーム700aであり、±1次回折光はサブビーム700b、700cであって、トラッキング誤差(以下TEとする)信号の検出を安定に行うためのディファレンシャルプッシュプル(以下DPPとする)法に用いられる。0次回折光と一方だけの1次回折光の回折効率の比は、通常12:1〜20:1に設定され、ここでは20:1である。このようにすることで、サブビーム700b、700cがメインビーム700aに影響を与えることを防ぎ、光記憶媒体410に不要な記録がされることを避けることができる。
【0005】
回折格子510で生成されたメインビーム700aおよびサブビーム700b、700cの3つのビームは、偏光ビームスプリッタ520を透過し、焦点距離が15mmのコリメートレンズ530で平行光に変換される。この平行光は、4分の1波長板540を透過して円偏光に変換された後、焦点距離3mmの対物レンズ560で収束ビームに変換される。対物レンズ560の開口はアパーチャ550で制限されていて、開口数NAは0.6としている。
【0006】
光記憶媒体410は、透明基板410aと情報記録面410bを備えており、透明基板410aの厚さは、0.6mmである。対物レンズ560からの収束ビームは、透明基板410aを透過して、情報記録面410b上に集光される。
【0007】
図23は、光記憶媒体上におけるトラックとビームの関係を示す図である。情報記録面410b上のビームとトラックとの関係を説明する図である。図23に示すように、光記憶媒体410には上の情報記録面、複数の連続溝であるトラックが形成されている。トラックTm-1、トラックTm、トラックTm+1は順に並んでいて、トラックTm-1とトラックTm同士およびトラックTmとトラックTm+1同士間の距離であるトラックピッチP2は0.74μmである。メインビーム700aがトラックTm上に位置するとき、サブビーム700b、700cはそれぞれトラックTmとトラックTm-1の間およびトラックTmとTm+1の間に位置するように、ビームが配置されている。したがって、トラックTmと直交する方向でのメインビーム700aとサブビーム700b、700cの間隔L2は0.37μmである。
【0008】
情報記録面410b上に集光されたメインビーム700aとサブビーム700b、700cは反射され、対物レンズ560、4分の1波長板540を透過して往路とは90度異なる直線偏光に変換された後、コリメートレンズ530を透過して収束光に変換される。この収束光は、偏光ビームスプリッタ520で反射され、円柱レンズ570を透過し、光検出器31に入射する。メインビーム700aとサブビーム700b、700cには、円柱レンズ570を透過する際に、非点収差が付与される。
【0009】
光検出器300は8つの受光部300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g、300hを有する。受光部300a、300b、300c、300dは、メインビーム700aを、受光部300e、300fはサブビーム700bを、受光部300g、300hはビーム700cを、それぞれ受光する。受光部300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g、300hは、それぞれ受光した光量に応じた電流信号を出力する。
【0010】
非点収差法によるフォーカス誤差(以下FEとする)信号、位相差法によるTE信号、プッシュプル法によるTE信号および光記憶媒体に記録された情報(以下RFとする)信号は、メインビーム700aを受光する受光部300a、300b、300c、300dから出力される各信号を用いて得られる。また、DVD−RW等の連続溝ディスクの記録/再生時には、サブビーム700bとサブビーム700cを受光する受光部300e、300f、300g、300hから出力される信号も併用することで、DPP法によるTE信号が得られる。FE信号およびTE信号は、所望のレベルに増幅および位相補償が行われた後、アクチュエータ910および920に供給されて、それをもとにフォーカスおよびトラッキング制御がなされる。
【0011】
DVDにおいては、読み出し専用のROMディスクの場合には、情報面を2面設けた2層ディスクが規格化されている。この再生専用の2層ディスクは、TE信号を位相差法で検出することで、従来の光ピックアップヘッドを用いて何ら問題なく情報を読み出すことができる。
【0012】
さらに、研究開発レベルでは、情報記録面を2面有する記録可能な2層ディスク(以下2層記録ディスクとする)の開発成果が盛んに発表されている。記録可能な2層ディスクは、初期に情報が書き込まれていないため、TE信号を位相差法で検出することができない。そのため、単層の記録可能なディスクの場合と同様に、DPP法でTE信号を検出する。
【0013】
なお、従来の光ピックアップヘッドは、例えば特許文献1等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−190125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、2層記録ディスクを、上述した従来の光ピックアップヘッドに用い、TE信号をDPP法で検出した場合であっても、対物レンズをトラッキング追従させることで、補正できないオフセットがTE信号に発生するという問題がある。
【0016】
これは、2層の内の一方の情報記録面に情報を記録再生する際(以下、このときの情報記録面を集光面とする)、集光面に焦点を結ぶビームの一部は反射され、一部が集光面を透過して他方の情報記録面(以下、このときの情報記録面を非集光面とする)に到達する。そのビームは非集光面ではデフォーカスであり、非集光面で反射されて光検出器に向かう。この非集光面で反射されたビームは、収差やビーム内の光量むら等で、DPP法でTE信号を検出する際に完全には相殺しきれない。そのため、対物レンズをトラッキング追従させることで、相殺しきれない量が変動し、TE信号に補正できないオフセットを発生させる。
【0017】
それにより、オフトラックが生じ、光記憶媒体に情報を記録する際、隣接したトラックに記録された情報を一部消去してしまい、光記憶媒体に記録された情報が忠実に読み出せなくなるという問題が生じる。
【0018】
本発明は、かかる事情に鑑みなされたものであり、2層ディスクを用いる場合に、対物レンズをトラッキング追従させてもTE信号にオフセットが発生しない光ピックアップヘッドを提供することを目的とする。さらに、本発明は、そのような光ピックアップヘッドを用いた情報記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の光ピックアップヘッドは、光ビームを出射する光源と、前記光源から出射されたビームから複数の回折光を生成する回折手段と、前記回折手段からの前記複数の回折光を、光記憶媒体上に集光する収束手段と、前記光記憶媒体上に集光された前記複数の回折光が前記光記憶媒体上で反射された複数のビームを分岐するビーム分岐手段と、前記ビーム分岐手段で分岐されたビームを受光し、前記受光したビームの光量に応じた信号を出力する光検出手段とを備え、前記光記憶媒体は、複数の情報記録面を有し、少なくとも1つの前記情報記録面には案内溝が形成されており、前記案内溝上もしくは前記案内溝間に情報が記録されており、前記回折手段で生成された前記回折光の内の0次回折光の回折光率をηmとし、1次以上の回折光の回折効率をηsとし、10・ηs≧ηmの関係を有している。それにより、光記録媒体として、2層ディスクを用いても、対物レンズをトラッキング追従させてもトラッキングエラー信号にオフセットが発生しないという効果を有する。
【0020】
また、本発明の他の光ピックアップヘッドは、光ビームを出射する光源と、前記光源から出射されたビームから複数の回折光を生成する回折手段と、前記回折手段からの前記複数の回折光を、光記憶媒体上に集光する収束手段と、前記光記憶媒体上に集光された前記複数の回折光が前記光記憶媒体上で反射された複数のビームを分岐するビーム分岐手段と、前記ビーム分岐手段で分岐されたビームを受光し、前記受光したビームの光量に応じた信号を出力する光検出手段とを備え、前記光検出手段は、前記集光された前記複数の回折光の内の0次回折光を受光するメインビーム受光部および1次以上の回折光を受光するサブビーム受光部を有し、前記光記憶媒体は、複数の情報記録面を有し、少なくとも1つの前記情報記録面には案内溝が形成され、前記収束手段で集光された0次の回折光が、前記複数の情報記録面の内の非集光面で焦点を結ばずに反射された光が、前記光検出手段上に形成する写像中に全ての前記サブビーム受光部が配置されている。それにより、光記録媒体として、2層ディスクを用いても、対物レンズをトラッキング追従させてもトラッキングエラー信号にオフセットが発生しないという効果を有する。
【0021】
また、本発明の他の光ピックアップヘッドは、光ビームを出射する光源と、前記光源から出射されたビームから複数の回折光を生成する回折手段と、前記回折手段からの前記複数の回折光を、光記憶媒体上に集光する収束手段と、前記光記憶媒体上に集光された前記複数の回折光が前記光記憶媒体上で反射された複数のビームを分岐するビーム分岐手段と、前記ビーム分岐手段で分岐されたビームを受光し、前記受光したビームの光量に応じた信号を出力する光検出手段とを備え、前記光検出手段は、前記集光された前記複数の回折光の内の0次回折光を受光するメインビーム受光部および1次以上の回折光を受光するサブビーム受光部を有し、前記光記憶媒体は、複数の情報記録面を有し、少なくとも1つの前記情報記録面には案内溝が形成されており、前記回折手段で生成された前記回折光の内の0次回折光の回折効率をηmとし、1次以上の回折光の回折効率をηsとし、前記収束手段の前記光記憶媒体側の開口数をNAとし、前記光記憶媒体から前記光検出手段に至る復路の光学系の横倍率をαとし、前記光記憶媒体の2つの情報記録面の光学的な間隔をdとし、前記サブビーム受光部の1つの面積をS1としたとき、S1≦4・π・(d・NA・α)2・ηs/ηmの関係を有する。
【0022】
また、本発明の他の光ピックアップヘッドは、光ビームを出射する光源と、前記光源から出射されたビームから複数の回折光を生成する回折手段と、前記回折手段からの前記複数の回折光を、光記憶媒体上に集光する収束手段と、前記光記憶媒体上に集光された前記複数の回折光が前記光記憶媒体上で反射された複数のビームを分岐するビーム分岐手段と、前記ビーム分岐手段で分岐されたビームを受光し、前記受光したビームの光量に応じた信号を出力する光検出手段とを備え、前記光検出手段は、前記集光された前記複数の回折光の内の0次回折光を受光するメインビーム受光部および1次以上の回折光を受光するサブビーム受光部を有し、前記光記憶媒体は、複数の情報記録面を有し、少なくとも1つの前記情報記録面には案内溝が形成されており、前記回折手段で生成された前記回折光の内の0次回折光の回折効率をηmとし、1次以上の回折光の回折効率をηsとし、前記収束手段で集光されたビームが略焦点を結ぶ情報記録面の内の集光面の実効的な反射率をRfoとし、前記複数の情報記録面の内の前記集光面以外の非集光面の実効的な反射率をRdfoとし、前記収束手段の前記光記憶媒体側の開口数をNAとし、前記光記憶媒体から前記光検出手段に至る復路の光学系の横倍率をαとし、前記光記憶媒体の2つの情報記録面の光学的な間隔をdとし、前記サブビーム受光部の1つの面積をS1としたとき、S1≦4・π・(d・NA・α)2・ηs/ηm・Rfo/Rdfoの関係を有する。
【0023】
また、本発明の他の光ピックアップヘッドは、光ビームを出射する光源と、前記光源から出射されたビームから複数の回折光を生成する回折手段と、前記回折手段からの前記複数の回折光を、光記憶媒体上に集光する収束手段と、前記光記憶媒体上に集光された前記複数の回折光が前記光記憶媒体上で反射された複数のビームを2つに分岐するビーム分岐手段と、前記ビーム分岐手段で分岐された第1のビームに非点収差を付与する非点収差付与手段と、前記ビーム分岐手段で分岐された第2のビームをさらに2つのビームに分割するビーム分割手段と、前記非点収差手段からのビームを受光し、前記受光したビームの光量に応じた信号を出力する第1光検出手段と、前記ビーム分割手段からのビームを受光し、前記受光したビームの光量に応じた信号を出力する第2光検出手段とを備え、前記光記憶媒体は、複数の情報記録面を有し、少なくとも1つの前記情報記録面には案内溝が形成され、前記ビーム分割手段は、前記第2のビームを前記案内溝と平行な方向に分割する。
【0024】
また、前記回折手段は、0次の回折光と、1次以上の回折光を生成し、前記第1のビームは、前記0次の回折光と前記1次以上の回折光で構成され、前記第1光検出手段は4つの受光部を有し、前記0次の回折光と前記1次以上の回折光とが重なって前記受光部に受光されていてもよい。
【0025】
また、前記第1光検出手段および前記第2光検出手段は、それぞれ、前記集光された前記複数の回折光を受光する受光部を有し、前記収束手段で集光された0次の回折光が、前記複数の情報記録面の内の非集光面で焦点を結ばずに反射された光が、前記第1光検出手段および前記第2光検出手段上に形成する写像中に、第1光検出手段および第2光検出手段の全ての前記受光部が配置されていてもよい。
【0026】
また、本発明の他の光ピックアップヘッドは、光ビームを出射する光源と、前記光源から出射されたビームから0次の回折光と、1次以上の回折光を生成する回折手段と、前記回折手段からの前記0次の回折光と、前記1次以上の回折光を、光記憶媒体上に集光する収束手段と、前記光記憶媒体上に集光された前記0次の回折光と、前記1次以上の回折光が前記光記憶媒体上で反射されたビームをそれぞれ2つに分割するビーム分割手段と、前記ビーム分割手段で分割されたビームを受光し、前記受光したビームの光量に応じた信号を出力する光検出手段とを備え、前記光検出手段は、一列に並べて配置された複数の受光部を有し、前記光記憶媒体は、複数の情報記録面を有し、少なくとも1つの前記情報記録面には案内溝が形成され、前記ビーム分割手段は前記案内溝と略平行な軸を分割軸としてビームを分割する。
【0027】
また、前記ビーム分割手段で分割された一方のビームの内の前記0次回折光を受光する受光部は、前記ビーム分割手段で分割された他方のビームの内の前記0次回折光を受光する受光部と、前記ビーム分割手段で分割された他方のビームの内の前記1次以上の回折光を受光する受光部とに挟まれて配置されていることとしてもよい。
【0028】
また、前記ビーム分割手段で分割されたどちらか一方のビームの内の前記0次回折光と前記1次以上の回折光とが前記光検出手段上に形成する写像同士の間隔は、前記ビーム分割手段で分割された2つの前記0次回折光が前記光検出手段上に形成する写像同士の間隔よりも広いこととしてもよい。
【0029】
また、前記ビーム分割手段が回折素子であることとしてもよい。
【0030】
また、前記ビーム分割手段がプリズムであることとしてもよい。
【0031】
また、前記光検出手段上では、ビームが略焦点に結像されることとしてもよい。
【0032】
また、前記受光部の大きさがエアリーディスクの3倍以上10倍以下であることとしてもよい。
【0033】
また、本発明の他の光ピックアップヘッドは、光ビームを出射する光源と、前記光源から出射されたビームから複数の回折光を生成する回折手段と、前記回折手段からの前記複数の回折光を、光記憶媒体上に集光する収束手段と、前記光記憶媒体上に集光された前記複数の回折光が前記光記憶媒体上で反射された複数のビームを分岐するビーム分岐手段と、前記ビーム分岐手段で分岐されたビームに非点収差を付与する非点収差付与手段と、前記非点収差付与手段で非点収差を付与されたビームを受光し、前記受光したビームの光量に応じた信号を出力する光検出手段とを備え、前記光検出手段は、前記集光された前記複数の回折光の内の0次回折光を受光するメインビーム受光部および1次以上の回折光を受光するサブビーム受光部を有し、前記光記憶媒体は、複数の情報記録面を有し、少なくとも1つの前記情報記録面には案内溝が形成されており、前記非点収差付与手段で付与される非点隔差をZ0とし、前記回折手段で生成された前記回折光の内の0次回折光の回折効率をηmとし、1次以上の回折光の回折効率をηsとし、前記収束手段で集光されたビームが略焦点を結ぶ情報記録面の内の集光面の実効的な反射率をRfoとし、前記複数の情報記録面の内の前記集光面以外の非集光面の実効的な反射率をRdfoとし、前記収束手段の前記光記憶媒体側の開口数をNAとし、前記光記憶媒体から前記光検出手段に至る復路の光学系の横倍率をαとし、前記光源が出射するビームの波長をλとし、前記光記憶媒体の2つの情報記録面の光学的な間隔をdとし、前記サブビーム受光部の1つの面積をS1としたとき、S1・ηm・Rdfo/(4・π・d2・NA2・ηs・Rfo)≦α≦(Z0/2/Δz)1/2の関係を有し、かつ、Δzはλ/2/NA2の3〜10倍の範囲である。
【0034】
また、本発明の他の光ピックアップヘッドは、光ビームを出射する光源と、前記光源から出射されたビームから複数の回折光を生成する回折手段と、前記回折手段からの前記複数の回折光を、光記憶媒体上に集光する収束手段と、前記光記憶媒体上に集光された前記複数の回折光が前記光記憶媒体上で反射されたビームを異なる焦点を有する2つのビームに分割するビーム分割手段と、前記ビーム分割手段で分割されたビームを受光し、前記受光したビームの光量に応じた信号を出力する光検出手段とを備え、前記光検出手段は、前記集光された前記複数の回折光の内の0次回折光を受光するメインビーム受光部および1次以上の回折光を受光するサブビーム受光部を有し、前記光記憶媒体は、複数の情報記録面を有し、少なくとも1つの前記情報記録面には案内溝が形成されており、前記ビーム分割手段で分割される2つのビームに付与される2つの焦点間隔をZ0とし、前記回折手段で生成された前記回折光の内の0次回折光の回折効率をηmとし、1次以上の回折光の回折効率をηsとし、前記収束手段で集光されたビームが略焦点を結ぶ情報記録面の内の集光面の実効的な反射率をRfoとし、前記複数の情報記録面の内の前記集光面以外の非集光面の実効的な反射率をRdfoとし、前記収束手段の前記光記憶媒体側の開口数をNAとし、前記光記憶媒体から前記光検出手段に至る復路の光学系の横倍率をαとし、前記光源が出射するビームの波長をλとし、前記光記憶媒体の2つの情報記録面の光学的な間隔をdとし、前記サブビーム受光部の1つの面積をS1としたとき、S1・ηm・Rdfo/(4・π・d2・NA2・ηs・Rfo)≦α≦(Z0/2/Δz)1/2の関係を有し、かつ、Δzはλ/2/NA2の3〜10倍の範囲である。
【0035】
また、本発明の他の光ピックアップヘッドは、光ビームを出射する光源と、前記光源から出射されたビームから複数の回折光を生成する回折手段と、前記回折手段からの前記複数の回折光を、光記憶媒体上に集光する収束手段と、前記光記憶媒体上に集光された前記複数の回折光が前記光記憶媒体上で反射された複数のビームを2つに分割するビーム分割手段と、前記ビーム分割手段で分割されたビームを受光し、前記受光したビームの光量に応じた信号を出力する光検出手段と、前記光記憶媒体から前記光検出手段に至る光路においてビームに非点収差を付与する非点収差付与手段とを備え、前記光検出手段は、前記集光された前記複数の回折光の内の0次回折光を受光するメインビーム受光部および1次以上の回折光を受光するサブビーム受光部を有し、前記光記憶媒体は、屈折率nの基板と複数の情報記録面を有し、少なくとも1つの前記情報記録面には案内溝が形成されており、前記非点収差付与手段で付与される非点隔差をZ0とし、前記回折手段で生成された前記回折光の内の0次回折光の回折効率をηmとし、1次以上の回折光の回折効率をηsとし、前記収束手段で集光されたビームが略焦点を結ぶ情報記録面の内の集光面の実効的な反射率をRfoとし、前記複数の情報記録面の内の前記集光面以外の非集光面の実効的な反射率をRdfoとし、前記収束手段の前記光記憶媒体側の開口数をNAとし、前記光記憶媒体から前記光検出手段に至る復路の光学系の横倍率をαとし、前記光源が出射するビームの波長をλとし、前記光記憶媒体の2つの情報記録面の光学的な間隔をdとし、前記サブビーム受光部の1つの面積をS1としたとき、S1・ηm・Rdfo/(4・π・d2・NA2・ηs・Rfo)≦α≦(Z0・n3/Δt/(n2−1)/NA21/2の関係を有し、かつ、Δtはλ/NA4の5〜30倍の範囲である。
【0036】
また、本発明の他の光ピックアップヘッドは、光ビームを出射する光源と、前記光源から出射されたビームから複数の回折光を生成する回折手段と、前記回折手段からの前記複数の回折光を、光記憶媒体上に集光する収束手段と、前記光記憶媒体上に集光された前記複数の回折光が前記光記憶媒体上で反射されたビームを2つに分割する第1ビーム分割手段と、前記第1ビーム分割手段で分割されたビームを受光し、前記受光したビームの光量に応じた信号を出力する光検出手段と、前記光記憶媒体から前記光検出手段に至る光路においてビームを異なる焦点を有する2つのビームに分割する第2ビーム分割手段とを備え、前記光検出手段は、前記集光された前記複数の回折光の内の0次回折光を受光するメインビーム受光部および1次以上の回折光を受光するサブビーム受光部を有し、前記光記憶媒体は、屈折率nの基板と複数の情報記録面を有し、少なくとも1つの前記情報記録面には案内溝が形成されており、前記第2ビーム分割手段で分割される2つのビームに付与される2つの焦点間隔をZ0とし、前記回折手段で生成された前記回折光の内の0次回折光の回折効率をηmとし、1次以上の回折光の回折効率をηsとし、前記収束手段で集光されたビームが略焦点を結ぶ情報記録面の内の集光面の実効的な反射率をRfoとし、前記複数の情報記録面の内の前記集光面以外の非集光面の実効的な反射率をRdfoとし、前記収束手段の前記光記憶媒体側の開口数をNAとし、前記光記憶媒体から前記光検出手段に至る復路の光学系の横倍率をαとし、前記光源が出射するビームの波長をλとし、前記光記憶媒体の2つの情報記録面の光学的な間隔をdとし、前記サブビーム受光部の1つの面積をS1としたとき、S1・ηm・Rdfo/(4・π・d2・NA2・ηs・Rfo)≦α≦(Z0・n3/Δt/(n2−1)/NA21/2の関係を有し、かつ、Δtはλ/NA4の5〜30倍の範囲である。
【0037】
また、本発明の他の光ピックアップヘッドは、光ビームを出射する半導体レーザ光源と、前記半導体レーザ光源から出射されたビームから複数の回折光を生成する回折手段と、前記回折手段からの前記複数の回折光を、光記憶媒体上に集光する収束手段と、前記光記憶媒体上に集光された前記複数の回折光が前記光記憶媒体上で反射された複数のビームを分岐するビーム分岐手段と、前記ビーム分岐手段で分岐されたビームを受光し、前記受光したビームの光量に応じた信号を出力する光検出手段とを備え、前記光記憶媒体は、複数の情報記録面を有し、少なくとも1つの前記情報記録面には案内溝が形成され、前記半導体レーザ光源は、前記情報記録面に形成された前記案内溝と略平行になるように配置された基板上に形成されており、レーザビームを出射する位置とは異なる位置から自然放出光を出射する。
【0038】
また、前記半導体レーザ光源の前記基板がサファイアからなることとしてもよい。
【0039】
また、前記半導体レーザ光源の前記基板が窒化ガリウムからなることとしてもよい。
【0040】
また、本発明の他の光ピックアップヘッドは、光ビームを出射する光源と、前記光源から出射されたビームから複数の回折光を生成する回折手段と、前記回折手段からの前記複数の回折光を、光記憶媒体上に集光する収束手段と、前記光記憶媒体上に集光された前記複数の回折光が前記光記憶媒体上で反射されたビームを受光し、前記受光したビームの光量に応じた信号を出力する光検出手段とを備え、前記光検出手段は、前記集光された前記複数の回折光の内の0次回折光を受光する2つのメインビーム受光部および1次以上の回折光を受光する4つのサブビーム受光部を有し、メインビーム受光部から出力される信号をT1、T2とし、サブビーム受光部から出力される信号をT3、T4、T5、T6としたとき、(T1−T2)/(T1+T2)−k[{(T3−T4)+(T5+T6)}/(T1+T2)](kは定数)の演算によりトラッキング誤差信号を検出する。
【0041】
また、本発明の他の光ピックアップヘッドは、光ビームを出射する光源と、前記光源から出射されたビームから複数の回折光を生成する回折手段と、前記回折手段からの前記複数の回折光を、光記憶媒体上に集光する収束手段と、前記光記憶媒体上に集光された前記複数の回折光が前記光記憶媒体上で反射された複数のビームを分岐するビーム分岐手段と、前記ビーム分岐手段で分岐されたビームを受光し、前記受光したビームの光量に応じた信号を出力する光検出手段とを備え、前記光検出手段は、2つの受光部を有し、前記光記憶媒体は、第1の情報記録面と第2の情報記録面とを有し、前記第1の情報記録面には案内溝が形成され、前記収束手段で集光された回折光が前記第1の情報記録面で焦点を結び、前記第2の情報記録面では焦点を結んでいない場合に、前記第1の情報記録面で反射されたビームが前記光検出手段で受光されて、前記2つの受光部から出力される信号を、Tf1、Tf2とし、前記第2の情報記録面で反射されたビームが前記光検出手段で受光されて、前記2つの受光部から出力される信号を、Ts1、Ts2とし、(Tf1+Ts1−Tf2−Ts2)/(Tf1+Ts1+Tf2+Ts2)の演算によりトラッキング誤差信号を検出し、Tf1+Tf2≧5・(Ts1+Ts2)の関係を有する。
【0042】
また、前記光記憶媒体から前記光検出手段に至る光路中に、前記光検出手段で受光されるビームを収束させる集光手段を備え、前記集光手段は凸レンズと凹レンズとを有していることとしてもよい。
【0043】
また、本発明の情報記録再生装置は、上記光ピックアップヘッドと、前記光記憶媒体と前記光ピックアップヘッドとの相対的な位置を変化させる駆動部と、前記光ピックアップヘッドから出力される信号を受けて演算を行い所望の情報を得る電気信号処理部とを備えている。
【発明の効果】
【0044】
本発明の光ピックアップヘッドによれば、2層以上の複数層ディスクを記録および再生する場合に、対物レンズをトラッキング追従させてもTE信号にオフセットが発生しないという効果を有する。
【0045】
また、本発明の情報記録再生装置によれば、2層以上の複数層ディスクを記録および再生する場合に、対物レンズをトラッキング追従させてもTE信号にオフセットが発生しない情報記録再生装置が実現できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる光ピックアップヘッドの構成を示す図
【図2】本発明の光ピックアップヘッドにおける光記憶媒体上のトラックとビームの関係を示す図
【図3】本発明の実施の形態1にかかる光ピックアップヘッドの光検出器とビームの関係を示す図
【図4】本発明の実施の形態1にかかる光ピックアップヘッドにおける横倍率と光量比の関係を示す図
【図5】本発明の実施の形態2にかかる光ピックアップヘッドにおける光源の構成を示す斜視図
【図6】本発明の実施の形態2にかかる光ピックアップヘッドを構成する光検出器とビームの関係を示す図であって、図6(a)は対物レンズが中立位置ではない場合の図であり、図6(b)は対物レンズが中立位置にある場合の図であり、図6(c)は図6(a)の反対方向に対物レンズがずれている場合の図
【図7】本発明の実施の形態3にかかる光ピックアップヘッドの構成を示す図
【図8】本発明の実施の形態3にかかる光ピックアップヘッドを構成する光検出器とビームの関係を示す図であって、図8(a)は、光路が90度曲げられたビームが入射する光検出器を示す図、図8(b)は直進するビームが入射する光検出器を示す図
【図9】本発明の実施の形態3にかかる光ピックアップヘッドを構成するプリズムの構成を示す斜視図。
【図10】本発明の実施の形態4にかかる光ピックアップヘッドの構成を示す図。
【図11】本発明の実施の形態4にかかる光ピックアップヘッドを構成する回折格子の構成図
【図12】本発明の実施の形態4にかかる光ピックアップヘッドを構成する光検出器とビームの関係を示す図
【図13】本発明の実施の形態5にかかる光ピックアップヘッドを構成するプリズムの構成を示す図。
【図14】本発明の実施の形態6にかかる光ピックアップヘッドを構成する回折格子の構成図
【図15】本発明の実施の形態6にかかる光ピックアップヘッドを構成する光検出器とビームの関係を示す図
【図16】本発明の実施の形態7にかかる光ピックアップヘッドを構成する回折格子の構成図
【図17】本発明の実施の形態7にかかる光ピックアップヘッドを構成する光検出器とビームの関係を示す図
【図18】本発明の実施の形態8にかかる光ピックアップヘッドの構成を示す図
【図19】本発明の実施の形態8にかかる光ピックアップヘッドを構成するホログラム素子の構成を示す図
【図20】本発明の実施の形態8にかかる光ピックアップヘッドを構成する光検出器とビームの関係を示す図
【図21】本発明の実施の形態9にかかる情報記録再生装置の構成を示す図
【図22】従来の光ピックアップヘッドの構成を示す図
【図23】従来の光ピックアップヘッドにおける光記憶媒体上のトラックとビームの関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の符号は同一の構成要素または同様の作用、動作をなすものを表す。
【0048】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る光ピックアップヘッドの構成を示した図である。
【0049】
光源である半導体レーザ光源1は、波長λ1が405nmの直線偏光の発散ビーム70を出射する。半導体レーザ光源1から出射された発散ビーム70は、焦点距離f1が15mmのコリメートレンズ53で平行光に変換された後、回折格子58に入射され、0次回折光および±1次回折光の3つのビームに分離される。0次回折光は情報の記録/再生を行うメインビーム70aであり、±1次回折光はサブビーム70bおよび70cであって、サブビーム70b、70cは、TE信号の検出を安定に行うためのDPP法に用いられる。0次回折光と一方だけの1次回折光の回折効率の比は、通常12:1〜20:1に設定され、ここでは20:1である。このようにすることで、サブビーム70b、70cがメインビーム70aに影響を与えることを防ぎ、不要な記録がされることを避けることができる。
【0050】
回折格子58で生成されたメインビーム70aおよびサブビーム70b、70cの3つのビームは、偏光ビームスプリッタ52を透過し、4分の1波長板54を透過して円偏光に変換された後、焦点距離f2が2.1mmの対物レンズ56で収束ビームに変換され、光記憶媒体41に集光される。
【0051】
対物レンズ56の開口はアパーチャ55で制限され、開口数NAを0.85としている。光記憶媒体41は、透明基板41aと、2つの情報記録面である第1記録層41bと第2記録層41cを有している。第1記録層41bと第2記録層41cとの間隔α1は20μmであり、透明基板41aの厚さは0.1mmであり、透明基板41aと第1記録層41bとの間および第1記録層41bと第2記録層41cの間に位置する中間層の屈折率nは、どちらも1.6である。光記憶媒体41に集光される収束ビームは、具体的には、透明基板41aを透過し、第1記録層41b上に集光される。
【0052】
図2は、光記憶媒体41の第1記録層41b上のトラックとビームの関係を示している。第1記録層41bと第2記録層41cは、それぞれ連続した溝からなるトラックを有し、情報は溝上に記録されている。トラックTnは、周期的に複数設置され、それぞれのトラックTnとトラックTn-1同士の間隔とトラックTnトラックTnトラックTn+1同士の間隔であるトラックピッチp1は0.32μmである。メインビーム70aがトラック上に位置するとき、サブビーム70b、70cはそれぞれトラックの間に位置するようにビームが配置される。したがって、トラックTnと直交する方向でのメインビーム70aとサブビーム70b、70cの間隔Lは0.16μmである。
【0053】
第1記録層41bで反射されたメインビーム70aとサブビーム70b、70cは、対物レンズ56、4分の1波長板54を透過して往路とは90度異なる直線偏光に変換された後、偏光ビームスプリッタ52で反射される。偏光ビームスプリッタ52で反射されたメインビーム70aとサブビーム70b、70cは、焦点距離f3が30mmの検出レンズ59と円柱レンズ57を経て、光検出器31に入射される。メインビーム70aとサブビーム70b、70cには、円柱レンズ57を透過する際、非点収差が付与される。
【0054】
図3は、光検出器31とメインビーム70aとサブビーム70b、70cとの関係を模式的に示す図である。光検出器31は8つの受光部31a、31b、31c、31d、31e、31f、31g、31hを有し、各受光部31a、31b、31c、31d、31e、31f、31g、31hは、受光したそれぞれの光量に応じた電流信号I31a、I31b、I31c、I31d、I31e、I31f、I31g、I31hを出力する。
【0055】
受光部31a、31b、31c、31dはメインビーム70aを、受光部31e、31fはサブビーム70bを、受光部31g、31hはサブビーム70cを、それぞれ受光する。各受光部31a、31b、31c、31dの大きさは、それぞれ60μm×60μmである。また、各受光部31e、31f、31g、31hの大きさは、それぞれの横幅W1が120μm、縦幅W2が60μmである。したがって、メインビーム70a、サブビーム70b、70cの各ビームを受光する受光部の大きさの総和は、各々120μm×120μmである。
【0056】
メインビーム70a、サブビーム70b、70cの各ビームはそれぞれ光記憶媒体の第1記録層41bで反射されたビームであり、円柱レンズ57によって非点収差が付与されているが、光検出器32上での最小錯乱円の大きさは直径60μmとしている。したがって、検出レンズ59と円柱レンズ57を組み合わせた合成の焦点距離は、30mmと29.05mmとなっている。
【0057】
また、光記憶媒体41の第1記録層41b(集光面)に対して情報を記録再生する際、第1記録層41bに焦点を結ぶビームの一部は反射され、一部が第1記録層41bを透過して第2記録層41c(非集光面)にデフォーカスしたビームで到達し、第2記録層41cで反射されている。図3に示しているビーム71a、71b、71cはそれぞれ第2記録層41c(非集光面)で反射されたビームであり、光検出器31上で大きくデフォーカスしている。各ビーム71a、71b、71cの光検出器31上での半径rは、概略、r≒2・d・NA・αで与えられる。dは光記憶媒体の光学的な反射面の間隔でありd=d1/n、αは光記憶媒体から光検出器に至る光学系の横倍率であり、α=f3/f2で与えられる。実施の形態1においては、d1=20μm、n=1.60、NA=0.85、f2=2.1mm、f3=30mmとしたので、r≒300μmとなる。
【0058】
ビーム71aは、光検出器31上での半径が約300μmであり、光検出器31の受光部31e、31f、31g、31hは、その中に位置するように配置されている。このように配置されることで、トラッキング追従時に対物レンズ56が移動することで光検出器31上の非集光面で反射されたビームが移動しても、受光部31e、31f、31g、31hで受光されるビーム71aの光量は殆ど変化することはなく、その結果TE信号にオフセットが発生しない。
【0059】
また、FE信号は、光検出器31から出力される信号I31a、I31b、I31c、I31dを用いて非点収差法により、すなわち(I31a+I31c)−(I31b+I31d)の演算で得られる。また、TE信号は、DPP法により、すなわち{(I31a+I31d)−(I31b+I31c)}−K・{(I31e+I31g)−(I31f+I31h)}の演算でそれぞれ得られる。ここでKは、回折格子58の0次回折光の回折効率と1次回折光の回折効率との比によって決まる係数である。
【0060】
FE信号およびTE信号は、所望のレベルに増幅および位相補償が行われた後、対物レンズ56を動かすためのアクチュエータ91、92に供給されて、フォーカスおよびトラッキング制御がなされる。
【0061】
図4は、実施の形態1における光学条件で、検出レンズ59の焦点距離f3を変えることで、光学系の横倍率αを変化させた場合の、受光部31eと受光部31fに入射するサブビーム70bの光量I70bと、メインビーム70aの内の第2記録層(非集光面)41cで反射されたビーム71aの光量I71a(以下、迷光とする)の関係を示している。この関係は、サブビーム70cが入射される受光部31gと受光部31hの光量I70cと迷光量I71aについても同様である。αを大きくすれば迷光量I71aは減少し、αを小さくすれば迷光量I71aは増加する。αが10倍のとき、I71aとI70bの光量が等しくなり、実施の形態1においては、横倍率αが10倍になるように設定している。迷光量I71aの値が大きいと、TE信号のオフセット変動の要因となるので、横倍率αを大きくして迷光量I71aを低減することが望ましい。実質的には、迷光量I71aがサブビームの光量I70bと同量以下であれば、トラッキング追従する時や光記憶媒体にチルトが生じた時等においてもTE信号に殆どオフセットは発生しない。
【0062】
理想的には、DPP法は、差動演算を行うことで迷光成分を相殺するため、オフセットは発生しないはずであるが、現実には、収差やビーム内の光量むら等で、完全には相殺しきれない場合がある。現実的な収差や光量むらを考慮した場合、迷光量I71aがサブビーム光量I70bと同量以下であれば、残存するオフセット量は大きくても受光部に入射する光量の数%であり、そのオフセットに起因するオフトラック量は無視しても良い程小さい。迷光量I71aがサブビーム光量I70bと等しいとき、サブビーム70bを受光する受光部31eと受光部31fの面積S1は、近似的に4・π・(d・NA・α)2・ηs/ηmに等しく、迷光量I71aをサブビーム光量I70b以下の量にするには、1つのサブビーム70b(もしくは70c)を受光する受光部31eと31fの面積S1を4・π・(d・NA・α)2・ηs/ηm以下の面積にすればよい。ここでηmは回折格子58のメインビーム70aの回折効率、ηsは回折格子58の1つのサブビーム70bの回折効率である。したがって、実施の形態1における光ピックアップを用いた情報記録再生装置は、記録可能な2層ディスクを媒体に用いた場合でも、隣接したトラックに記録された情報を消去することなく、光記憶媒体に記録された情報を忠実に読み出すことができる。
【0063】
なお、ビーム70a、70b、70cが集光される面である第1記録層41bの実効的な反射率Rfoと、ビーム70a、70b、70cがデフォーカスして反射される第2記録層41cの実効的な反射率Rdfoが異なる場合には、受光部32eと受光部32fの面積S1を4・π・(d・NA・α)2・ηs/ηm・Rfo/Rdfo以下の面積にすれば、同様な効果が得られる。ここで、第1記録層41bの反射率をR41b、透過率をT41b、第2記録層41cの反射率をR41cとしたとき、第1記録層41bの実効的な反射率Rfoは、R41b、第2記録層41cの実効的な反射率Rdfoは、T41b・T41b・R41cである。
【0064】
また、検出レンズ59を凸レンズと凹レンズを組み合わせて構成することにより、光学的に等価な焦点距離は長く、物理的な距離を短くすることが可能であり、焦点距離f3を長くしても、光ピックアップヘッドが大きくなることがない。それにより、オフセットが少なく小型の光ピックアップヘッドを実現することができる。
【0065】
なお、第1記録層41bが集光面で、第2記録層41cが非集光面として説明したが、第2記録層41cに情報を記録再生する際には、第2記録層41cが集光面、第1記録層41bが非集光面となるだけで、上述と同様な効果が得られる。
【0066】
また、光記憶媒体41が情報を溝上もしくは溝間のどちらか一方にしか記録しないタイプである場合、情報を記録もしくは消去する際、メインビームはトラック上に位置するが、2つのサブビームはいずれもトラック上ではなく、トラックとトラックの間に位置するので、トラック上に記録された情報を消しにくくなる。したがって、このときには回折効率の比を10:1にしても何ら問題ない。ビーム70bもしくは70cの1つを受光する受光部の面積S1を4・π・(d・NA・α)2・ηs/ηm以下とするとき、サブビーム70bもしくは70cの光量が大きくなると、その分、光学系の横倍率αを小さくできる。対物レンズ56の焦点距離f2を一定とすれば、横倍率αが小さくできることから、検出レンズ59の焦点距離f3を小さくすることができ、その分、光ピックアップヘッドの大きさは小さくなり、小型の情報記録再生装置を提供することができる。また、光学系の横倍率αを同じにした場合には、サブビーム70bもしくは70cの光量が大きくなる分、迷光の影響は小さくなるので、より安定なトラッキング制御が可能な光ピックアップヘッドとなる。
【0067】
また、フォーカス検出法を非点収差法からスポットサイズディテクション法に変えることや、光利用効率を高めるために、ビームを整形するプリズムを用いる等、本発明の光ピックアップヘッドは、趣旨を逸脱しない範囲で、様々な変形が可能であり、光源の波長や対物レンズのNAに制限は無く、様々な光学条件に適用可能である。
【0068】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2にかかる光ピックアップ装置の構成は、実施の形態1の光ピックアップ装置における半導体レーザ光源の構成およびその配置が異なり、それ以外の構成は、実施の形態1の光ピックアップと同様である。
【0069】
実施の形態2は、光源に波長450nm以下のビームを発する半導体レーザを用いる場合であり、このような場合には、光源を構成する基板と、光記憶媒体上のトラックとを光学的に平行に配置することが好ましい。
【0070】
窒化ガリウムやセレン化亜鉛等、450nm以下の波長のレーザビームを出射するレーザを構成するために用いられる材料は格子欠陥が多く、また、自己補償効果により、活性層内における電流および光の閉じ込めが弱くなり、発光点以外の場所から自然放出光を出射し易く、この自然放出光がトラッキング追従によるオフセット変動の原因となる可能性がある。
【0071】
図5は、実施の形態2における半導体レーザ光源の構成を示す斜視図である。光ピックアップヘッドを構成するビームを発する半導体レーザ光源2からは、発光点10からレーザビームが出射される。また、図5に示すように、レーザビームの他に、増幅された自然放出光であるビーム75が窒化ガリウムからなる活性層11から出射される。このビーム75も光記憶媒体41の情報記録面上に集光されて反射された後、光検出器31に入射する。また、図示していないが、基板12が光記憶媒体のトラックに対して、光学的に平行となるように半導体レーザ光源2を配置している。
【0072】
図6は、実施の形態2における光検出器31とメインビーム70a、サブビーム70b、70cおよびビーム75の関係を示す図であり、図6(b)は対物レンズ56が中立位置にある場合で、図6(a)および図6(c)は対物レンズ56が中立位置ではない場合であり、図6(a)と図6(c)は対物レンズ56の移動方向が、それぞれ反対である。
【0073】
光記憶媒体41の情報記録面で反射されたビーム75も光検出器31に入射されるが、光源を構成する基板12と、光記憶媒体上のトラックとを光学的に平行に配置しているので、ビーム75は、図6に示すように、各受光部31a、31b、31c、31d、31e、31f、31g、31hを並べた方向に大きく拡がって入射する。したがって、トラッキング追従で対物レンズ56の位置が動いた場合にそれに応じて、光検出器32に対するメインビーム70a、サブビーム70b、70cおよびビーム75の位置が動いても、ビーム75が光検出器31の受光部31a、31b、31c、31d、31e、31f、31g、31hに入射する光量の変化は殆ど無い。そのため、オフセット変動のない安定なトラッキング動作が可能な光ピックアップヘッドとなる。
【0074】
なお、実施の形態2では、メインビーム70a、サブビーム70b、70cの3つのビームを用いてTE信号を検出する光ピックアップヘッドの構成について示したが、例えば、1つのビームを用いてプッシュプル法によりTE信号を検出する装置であっても同様の構成とすれば、同様の効果が得られる。また、光記憶媒体が1つの情報記録面しか有さない場合にも同様の効果が得られる。
【0075】
なお、ここでは、半導体レーザ光源2を構成する基板12にサファイアを、活性層に窒化ガリウムを用いたが、基板12に窒化ガリウムを、活性層にインジウムを添加した窒化ガリウムを用いた場合等、自然放出光を発生し易い窒化ガリウムを材料とした半導体レーザや、セレン化亜鉛等の2族と6族の化合物半導体を材料とした半導体レーザ光源2を用いても同様の効果が得られる。
【0076】
なお、半導体レーザ光源2を構成する基板12を光記憶媒体のトラックと光学的に平行に配置すれば、以上に述べた効果を同様に得ることができ、光ピックアップヘッドの光学構成に制約はない。
【0077】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3にかかる光ピックアップヘッドの構成を図7を用いて説明する。
【0078】
半導体レーザ光源1から出射された波長405nmのビーム70は、コリメートレンズ53、回折格子58、複合ビーム整形プリズム4、立ち上げミラー5を介して、対物レンズ56で光記憶媒体41上に集光される。光記憶媒体41には、記録/再生に対応したメインビーム70aおよびサブビーム70bとサブビーム70cが集光される。光記憶媒体41で反射されたメインビーム70aおよびサブビーム70b、70cは、複合ビーム整形プリズム4で光路を変更され、検出レンズ59を介して、ビームスプリッタ16に入射される。
【0079】
ビームスプリッタ16は、入射されたメインビーム70aおよびサブビーム70b、70cを2つに分離する。ビームスプリッタ16で分離されたビームの内の一つは、ビームスプリッタ16を直進し、従来の光ピックアップ装置と同様に、円柱レンズ18を経て非点収差が付与され、光検出器32に入射する。また、ビームスプリッタ16で分離されたもう一方のビームは、光路を略90度曲げられ、プッシュプル信号生成用のブレーズ化された2つの領域を有するホログラム素子17で、光記憶媒体41のトラック方向に平行な方向にビームが分割され、光検出器33に入射する。
【0080】
なお、プッシュプル信号生成用のビームを2つに分割する素子としては、ホログラム素子17の代わりに、図9に示しているルーフプリズム22を用いてもよく、DPP信号を得ることは可能である。
【0081】
図8は、実施の形態3にかかる光検出器とビームの関係を示す図である。図8(a)は直進するビームが入射する光検出器32とビームの関係を示している。FE信号検出用の光検出器32は4つの受光部32a、32b、32c、32dを有し、それらに入射される光量に応じて、出力信号F1、F2、F3、F4を出力する。これら出力信号F1、F2、F3、F4をもとに、非点収差法によりFE信号を得ることができる。具体的には、式1の様に演算する事により、FE信号が得られる。
【0082】
FE信号=(F1+F3)−(F2+F4) (式1)
また、図8(b)は光路が90度曲げられたビームが入射する光検出器33とビームの関係を示している。TE信号検出用の光検出器33は6つの受光部33a、33b、33c、33d、33e、33fを有している。受光部33aと受光部33bとが一組でメインビーム70aを受光するメインビーム用受光部34aであり、受光部33cと受光部33dとが一組でサブビーム70bを受光するサブビーム用受光部34bであり、受光部33eと受光部33fとが一組でサブビーム70cを受光するサブビーム用受光部34cである。
【0083】
また、メインビーム用受光部34aとサブビーム用受光部34bとの間には、ダミー用受光部34gが設置され、メインビーム用受光部34aとサブビーム用受光部34cとの間には、ダミー用受光部34hが設置されている。
【0084】
一般的に光検出器の各受光部間では、受光した光から発生した電流の漏れだし、つまり受光部と受光部の間でクロストークが発生する。特にDPP法を用いたトラッキング方式の場合、光量が大きなメインビーム用の受光部から光量が小さいサブビーム用の受光部へのクロストークは無視できないものとなる。ダミー受光部34g、34hが設けられたため、メインビーム用受光部34aからの漏れ出し電流がダミー受光部34g、34hに流れ込み、サブビーム用受光部34b、34cには混入しない。また、図示はしていないが、ダミー受光部34gとダミー受光部34hは適切な電位に接続されている。それにより、メインビーム用受光部34aからダミー受光部34gとダミー受光部34hに混入した電流が再びサブビーム用受光部34b、34cに流れ出ない。したがって、メインビーム用受光部34aとサブビーム用受光部34b、34c間のクロストークを低減する事が可能となり、メインビーム70aとサブビーム70bもしくは70cは光検出器34において、光学的にも、電気的にも高いアイソレーションを保つことができる。そのため、サブビーム用受光部34b、34cにメインビーム70aの光量が混入する割合が少ない。
【0085】
受光部33a、33b、33c、33d、33e、33fは、それらに入射される光量に応じて、出力信号T1、T2、T3、T4、T5、T6を出力する。これらの出力信号をもとに、DPP方により、TE信号を得ることができる。具体的には、式2のように演算することにより、TE信号が得られる。(kは定数)
TE信号=(T1−T2)−k{(T3−T4)+(T5−T6)} (式2)
ただし、TE信号は光記憶媒体の反射率等の変化により信号振幅が変化するため、実用上は光記憶媒体の反射率の変化が生じてもトラッキング制御のゲインを一定に保つようにするため、TE信号の全光量信号で割算をするオートマチックゲインコントロール(以下AGCとする)回路を設けるのが一般的である。つまり、メインビーム70aから得られるプッシュプル信号はメインビーム70aを受光する受光部33aおよび受光部33bから出力される信号T1、T2の和信号で除算し、サブビーム70bおよびサブビーム70cから得られるプッシュプル信号はサブビームを受光する受光部33c、受光部33d、受光部33e、受光部33fから出力される信号T3、T4、T5、T6の和信号で除算することでTE信号を得ることが望ましい。具体的には、式3で示す演算でTE信号を得ることが望ましい。
【0086】
TE信号=(T1−T2)/(T1+T2)−k[{(T3−T4)+(T5+T6)}/(T3+T4+T5+T6)] (式3)
ただし、2層記録ディスクの記録再生も考慮して、メインビーム70aから得られるプッシュプル信号も、サブビーム70b、70cから得られるプッシュプル信号も、メインビーム70aを受光する受光部33aおよび受光部33bから出力される信号T1、T2で除算してTE信号を得てもよい。これは2層記録ディスクに情報を記録もしくは再生する時、メインビーム70aの一部が記録再生していない他層(非集光面)で反射して、サブビーム70b、70cを受光する受光部33c、33d、33e、34fへ迷光として入射し、AGCの動作が不安定になることを回避することができる。
【0087】
AGCは、記録再生中の記録層の反射率の変化によるTE信号の振幅変動を抑圧するためのものであるが、2層記録再生時のサブビーム70b、70cを受光する受光部33c、33d、33e、34fから出力される信号T3、T4、T5、T6の和信号は、記録再生中の層(集光面)で反射されたサブビーム70b、70cの光量に対して、非集光面で反射されたメインビーム70aの一部である迷光の光量が無視できない程多く含んでいるため、本来のAGC動作とはかけ離れた不安定な動作を引き起こし、結果としてDPPによるTE信号のAGC動作に悪影響をあたえることになる。これを防ぐため、2層記録ディスクを用いる場合には、メインビームから得るプッシュプル信号、サブビームから得るプッシュプル信号ともメインビームを受光する受光部から出力される信号の和信号でAGCを行うことでAGCの動作が不安定になることを回避することができる。具体的には、式4で示す演算でTE信号を得ることが望ましい。
【0088】
TE信号=(T1−T2)/(T1+T2)−k[{(T3−T4)+(T5+T6)}/(T1+T2)] (式4)
上述したように、DPP法によりTE信号を検出する以外にも、メインビーム70aの光量による出力信号のみを用いる単純なプッシュプル法を用いてTE信号を検出しても構わない。また、単純なプッシュプル法によりTE信号を検出する場合、DPP法による検出と同様に、和信号で除算する。すなわち、次式で示す演算によりTE信号を得る。
【0089】
TE信号=(T1−T2)/(T1+T2
この式によりTE信号を得た場合には、光記憶媒体の情報記録面の反射率に変化があってもサーボゲインを一定に保つことができる。
【0090】
ここで、集光面で反射されたビームが受光部33a、33bに入射することにより出力される信号をTf1、Tf2とし、非集光面で反射されたビームが受光部33a、33bに入射することにより出力される信号をTs1、Ts2としたとき、先に述べた演算は、
TE信号=(Tf1+Ts1−Tf2−Ts2)/(Tf1+Ts1+Tf2+Ts2
となる。この演算からわかるように非集光面で反射されたビームが受光部33a、33bに多く入射する程、トラッキング制御のゲインが小さくなってしまう。そこで、
f1+Tf2≧5・(Ts1+Ts2
となるようにすれば、トラッキング制御のゲインの変化は2割以下となり、実用上問題のない、安定なトラッキング制御が可能となる。
【0091】
また、メインビーム70aの光量は、サブビーム70b、70cの光量よりも多いので、単純なプッシュプル法の方がDPP法よりも迷光の影響は小さく、その分、光学系の横倍率αを小さくできる。したがって、TE信号の検出に単純なプッシュプル法を用いることで、より小さな光ピックアップヘッドを提供することができる。
【0092】
光記憶媒体41に記録された情報信号RFは、受光部33aと33bから出力される信号T1とT2を式5のように演算することにより得ることが可能である。
【0093】
RF=T1+T2 (式5)
また、実施の形態3の光ピックアップ装置において、FE信号検出用の光検出器32の各受光部32a、32b、32c、32dから出力される信号F1、F2、F3、F4を用いて、式6の演算により、いわゆる位相差法によるTE信号を得ることも可能である。
【0094】
TE信号=(F1+F3)<位相比較>(F2+F4) (式6)
式6における<位相比較>とは、信号F1と信号F3の和信号A1の位相と信号F2とF4の和信号A2の位相差を計算し、その位相差の極性(信号A1が信号A2より進んでいるか遅れているか)および位相差量の絶対値に応じた信号を得るものである。
【0095】
つまり、実施の形態3の光ピックアップ装置は、連続的な溝が形成された記録再生用光記憶媒体の場合にはDPP法によりTE信号を得てトラッキングの制御を行い、ピット列が形成された再生専用光記憶媒体の場合には、位相差法によりTE信号を得てトラッキングの制御を行うということが可能な構成となっている。
【0096】
また、光記憶媒体41が、0.32μmの狭いトラックピッチのものであっても、光記憶媒体41に数十μmの偏心が存在してもトラッキングゲインが殆ど低下しないようにするため、光記憶媒体41の情報記録面上のメインビーム70aとサブビーム70bもしくはサブビーム70cの光の距離を4μmに設定している。そのため、FE信号検出用の光検出器32上でのメインビーム70aとサブビーム70bおよび70cは重なった状態で受光部32a、32b、32c、32dに入射する。このため、メインビーム70aに対するサブビーム70bと70cの光量が多い程、位相差法により得られるTE信号の振幅は、低下する。例えば、メインビーム70aに対するサブビーム70bおよびサブビーム70cの光量の比が9:1のとき、TE信号の振幅は約1割低下する程度であり、この程度では全く問題とならない。光記憶媒体に記録された信号を消去してしまわないようメインビーム70aの光量に対してサブビーム70bと70cの光量は、通常1/9よりも小さく設定するので、実施の形態3の光ピックアップヘッドの構成において、位相差法によるTE信号を問題なく得ることができる。勿論、DPP法によるTE信号を検出するための光検出器34上では、メインビーム70a、サブビーム70bおよび70c共、収差の少ない極めて小さな径のスポットに集光されるため、メインビーム70aとサブビーム70bもしくはサブビーム70cの分離は容易である。
【0097】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4にかかる光ピックアップ装置について、図を用いて説明する。
【0098】
図10は、本発明の実施の形態4にかかる光ピックアップヘッドの構成を示す図である。実施の形態1の光ピックアップヘッドと異なる点は、偏光ビームスプリッタ52で反射された後に経る光学系であって、具体的には、ビームスプリッタ60、ホログラム素子61、回折格子62を備え、光検出器32の代りに、光検出器35、36を備えている点である。
【0099】
偏光ビームスプリッタ52で反射された方のメインビーム70a、サブビーム70b、70cは、焦点距離f3が30mmの検出レンズ59で収束ビームとなり、ビームスプリッタ60では、入射光量の10%が透過し、残りの90%が反射して入射光が2分割される。ビームスプリッタ60を透過したビームは、ホログラム素子61に入射し、±1次回折光72b、72cが生成され、±1次回折光72b、72cは光検出器35で受光される。ホログラム素子61には、FE信号をスポットサイズディテクション法で検出することを可能にする軸外れのゾーンプレートがパターンとして記録されている。
【0100】
一方、ビームスプリッタ60で反射された方のビームは、回折格子62に入射して2つの+1次回折光が生成され、光検出器36で受光される。図11は、実施の形態4における回折格子62の構成図である。回折格子62には、2種類の単純格子のパターン62aと62bが形成されており、それぞれ鋸歯形状であって、−1次回折光を抑圧する構造である。鋸歯状パターンは、斜めイオンビームエッチングで形成する、複数のマスクを組み合わせたエッチングで形成する等、一般的なブレーズパターンを形成することができる。
【0101】
パターン62aとパターン62bの境界線62cはメインビーム70aとサブビーム70b、70cにおける光記憶媒体41上のトラックの写像と平行な関係を有している。パターン62aと62bは同じピッチであるが、鋸歯形状の方向が異なっている。パターン62aによって回折光73a、73b、73cが、パターン62bによって回折光74a、74b、74cがそれぞれ生成される。回折光73aと74aはメインビーム70a、回折光73bと74bはサブビーム70b、回折光73cと74cはサブビーム70cからそれぞれ生成されたものである。また、回折光71dと71eは、非集光面で反射されたメインビームから生成されたものである。
【0102】
図12は、光検出器36と受光される回折光73a、73b、73c、74a、74b、74cの関係を示している。光検出器36は、6つの受光部36a、36b、36c、36d、36e、36fを有し、それぞれ回折光73a、73b、73c、74a、74b、74cを受光する。したがって、回折格子62で生成された回折光73a、73b、73c、74a、74b、74cは光検出器36の受光部を形成した面上に焦点を結ぶように配置している。光検出器36上における隣接する各ビーム同士の間隔d3(例えば、73aと73b間もしくは73aと74a間等の間隔)は、それぞれ80μmである。
【0103】
一般に、集光されたガウシアンビームのエアリーディスク直径wは、w=1.22×光源波長/レンズ開口数で与えられる。実施の形態4においては、メインビーム70aおよびサブビーム70b、70cを回折格子62で2分割しているために、光検出器36上では、分割していない方向の径は13μm、分割している方向の径は26μmとなる。
【0104】
また、サブビーム70b、70cを受光する受光部36b、36c、36e、36fにメインビーム70aが混入して起こるクロストークが、光記憶媒体が傾いたり、デフォーカスが生じたときに変動し、トラッキングが不安定となる場合がある。また、2つに分割したビームが、他方の受光部に混入すると、TE信号の振幅が低下する。いずれの場合にも、それらのビームの間隔をエアリーディスク直径の3倍以上にすることにより、影響は無視できる程軽微となり、安定なトラッキング制御が可能となる。
【0105】
さらに、情報記録面を2つ有する2層記録ディスクを光記憶媒体を用いた場合には、実施の形態4の光ピックアップヘッドにおいても、非集光面で反射されたビーム74d、74eの光検出器36直径d5が、光検出器36の各受光部36a、36b、36cの幅d4よりも大きくなるようにすることにより、トラッキング追従や光記憶媒体にチルトが生じた時等においてもTE信号に殆どオフセットは発生しない。それにより、実施の形態4の光ピックアップヘッドを用いることで、信頼性の高い情報記録再生装置が実現できる。なお、非集光面で反射されたサブビームは省略している。
【0106】
また、実施の形態2と同様に、光源を構成する基板と、光記憶媒体上のトラックとを光学的に平行に配置してもよく、自然放出光であるビーム700の影響を除去でき、TE信号にオフセット変動のない光ピックアップヘッドが実現できる。
【0107】
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5にかかる光ピックアップヘッドについて図を用いて説明する。
【0108】
図13は、本発明の実施の形態5にかかるプリズムの構成図である。実施の形態5の光ピックアップヘッドは、実施の形態4の光ピックアップヘッドでビーム分割素子として用いていた回折格子62の代りに、プリズム63を用いている点である。
【0109】
プリズム63を用いて、ビームを分割することで、回折素子62を用いる場合のように、不要な回折光が発生しない。それにより、光利用効率を高くすることができ、検出した信号の信号対雑音比も大きくでき、より忠実に光記憶媒体に記録された情報を再生することができる。
【0110】
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6にかかる光ピックアップヘッドについて図を用いて説明する。実施の形態6の光ピックアップヘッドは、実施の形態4の光ピックアップヘッドと同様の構成であって、異なる点は、回折格子62の代りに回折格子64を、光検出器36の代りに光検出器37を備えていることである。
【0111】
図14は、実施の形態6における回折格子64の構成図である。また、図15は、光検出器37とビームの関係を示す図である。
【0112】
回折格子64は、2種類の鋸歯状パターン領域64aと64bを有している。パターン64aと64bの境界線64cはメインビーム70a、サブビーム70b、70cにおける光記憶媒体41上のトラックの写像と平行な関係を有している。実施の形態4の回折格子62と実施の形態6の回折格子64の異なる点は、格子の向きと周期である。パターン64aによって回折光75a、75b、75cが、パターン64bによって回折光76a、76b、76cがそれぞれ生成される。回折光75aと76aはメインビーム70a、回折光75bと76bはサブビーム70b、回折光75cと76cはサブビーム70cからそれぞれ生成されたものである。
【0113】
図15に示すように、光検出器37は、順に一列に並んだ受光部37a、37b、37c、37d、37e、37fを有していて、回折光75a、75b、75c、76a、76b、76cをそれぞれ受光している。各受光部37a、37b、37c、37d、37e、37fの大きさは、実施の形態4の光検出器36の各受光部36a、36b、36c、36d、36e、36fと同じ大きさである。また、回折格子64で生成された回折光75a、75b、75c、76a、76b、76cが光検出器37上で焦点を結ぶように配置している。
【0114】
ビーム76dと76eは、非集光面で反射されたメインビームが回折格子64に入射することにより生成された回折光である。ここでは、分かり易くするために非集光面で反射されたサブビームは省略している。トラッキング追従の際に対物レンズが移動することで、光検出器37上での非集光面で反射されたビーム76d、76eの像は移動する。しかし、実施の形態6の光ピックアップヘッドは、各受光部37a、37b、37c、37d、37e、37fが一列に並んでいる構造であるために、受光部にもビーム76d、76eは一様に入射するので、TE信号を検出する演算を行う際には相殺され、TE信号にオフセットは発生しない。そのため、トラッキング追従する時や光記憶媒体にチルトが生じた時等においてもTE信号にほとんどオフセットは発生しない。それにより、信頼性の高い情報記録再生装置が実現できる。
【0115】
(実施の形態7)
本発明の実施の形態7にかかる光ピックアップヘッドについて図を用いて説明する。実施の形態7の光ピックアップヘッドは、実施の形態6の光ピックアップヘッドと同様の構成であって、異なる点は、回折格子64の代りに回折格子65を、光検出器37の代りに光検出器38を備えていることである。
【0116】
図16は、実施の形態7における回折格子65の構成図である。また、図17は、光検出器38とビームの関係を示す図である。
【0117】
回折格子65は、実施の形態6の回折格子64と同様に2種類の鋸歯状パターン領域65aと65bを有している。パターン65aと65bの境界線65cはビーム70a〜70cにおける光記憶媒体41上のトラックの写像と平行な関係を有している。回折格子65と回折格子64の異なる点は、格子の周期であって、回折格子65の方が、回折格子64に比べて目が粗い鋸歯形状である。
【0118】
パターン65aによって回折光77a、77b、77cが、パターン65bによって回折光78a、78b、78cがそれぞれ生成される。回折光77aと78aはメインビーム70a、回折光77bと78bはサブビーム70b、回折光77cと77cはサブビーム70cをそれぞれ用いて生成されたものである。
【0119】
図17に示しているように、光検出器38は、一列に並んだ受光部38a、38b、38c、38d、38e、38fを有していて、回折光77a、77b、77c、78a、78b、78cをそれぞれ受光している。各受光部38a、38b、38c、38d、38e、38fの大きさは、それぞれ実施の形態6の光検出器の各受光部37a、37b、37c、37d、37e、37fと同じ大きさである。また、回折格子65で生成された回折光77a、77b、77c、78a、78b、78cが光検出器38上で焦点を結ぶように配置している。回折光77aが回折光78aと回折光78bとの間に、回折光78aが回折光77aと回折光77cとの間に配置されている。
【0120】
ビーム78dと78eは、非集光面で反射されたメインビーム70aが回折格子65に入射することにより生成された回折光である。ここでは、分かり易くするために非集光面で反射されたサブビームは省略している。光記憶媒体に2層記録ディスクを用いた場合、2つの情報記録面の間隔と対物レンズの開口数の設定によっては、非集光面で反射されたビームには大きな球面収差が付与される。例えば、2つの情報記録面の間隔を40μm、対物レンズの開口数を0.85としたとき、非集光面で反射されたビームは光検出器38上で大きく歪んだスポットを形成し、その歪みは、トラッキング追従で対物レンズの位置が動いたときに増大するが、上述したように回折光が配置されているので、TE信号に残留するオフセットは大幅に低減する。
【0121】
実施の形態7においては、例えば、受光部38cと受光部38fとが隣接しているように、差動演算を行う信号を出力する受光部同士はいずれも隣接するように配置されているために、非集光面で反射されたビームが光検出器で歪んだ形となっても、隣接した受光部はほぼ均等に受光される。そのため、トラッキング追従する時や光記憶媒体にチルトが生じた時等においてもTE信号にほとんどオフセットは発生せず、実施の形態7の光ピックアップヘッドを用いることで、より信頼性の高い情報記録再生装置を得ることができる。
【0122】
また、メインビーム70aとサブビーム70b、70cの間隔を広く設計し、受光部38aと38eの間、および受光部38dと38cの間にスペースを設ける構造としてもよい。このようにすることで、光検出器38上でメインビーム70aから生成された回折光77aと回折光78aとの間隔に比べて、メインビーム70aから生成された回折光77aとサブビーム70bから生成された回折光78bとの間隔もしくは、メインビーム70aから生成された回折光78aとサブビーム70cから生成された回折光77cとの間隔が広くなる。したがって、集光面上のメインビームとサブビームの間隔は広くなるので、光記憶媒体の偏心等に対してトラッキング誤差信号の振幅の低下は生じやすくなる反面、集光面に集光されるビームにデフォーカスが生じたときや、光ピックアップヘッドを組み立てる際の公差や使用する部品の残留収差のために、集光面で反射されてから光検出器に至るまでの光路で大きな収差が集光面で反射されたビームに対して付加されたときでも、メインビームがサブビームを受光する受光部に混入するクロストークを小さくできる。それにより、よりオフセットの少ないトラッキング誤差信号を得ることができる。また、光ピックアップヘッドを組み立てる際の公差を大きくできるので、安価な光ピックアップヘッドを提供することができる。
【0123】
なお、上述した実施の形態3〜7におけるビームを2つに分割するための回折格子やプリズムは、樹脂成形により安価に作製可能である。また、光記憶媒体はディスク状に限る必要はなく、カード状等、用途に応じて様々な形状のものでも構わない。さらに、情報記録層を3面以上有する光記憶媒体に対しても本発明の光ピックアップヘッドは、問題なく適用できる。
【0124】
(実施の形態8)
本発明の実施の形態8にかかる光ピックアップヘッドについて図を用いて説明する。
【0125】
図18は、本発明の実施の形態8にかかる光ピックアップヘッドの構成を示す図である。以下に、光記憶媒体からの反射光をホログラム素子により内周ビームと外周ビームの2つに分け、ホログラム素子の1次回折光からは球面収差誤差(以下SAEとする)信号を得、ホログラム素子の0次回折光からRF信号を得る方法について述べる。
【0126】
半導体レーザ光源1から出射されたビームは、コリメートレンズ53により平行光とされて、回折格子58により0次および±1次回折光が生成されて3つのビームに分かれる。ビームは、凹レンズと凸レンズからなる球面収差補正手段としての組レンズ104を透過して、波面が変換され、対物レンズ56により情報記憶媒体41上に集光される。光記憶媒体41に集光された3つのビームは、光記憶媒体41により反射・回折され、再び対物レンズ56、組レンズ104と4分の1波長板54を通り、ビームスプリッター52により反射される。
【0127】
ビームスプリッター52により反射された3つのビームは分岐手段としてのホログラム素子108を透過し、1次回折光と0次回折光に分岐される。ホログラム素子108透過後の0次回折光と1つの1次回折光の回折効率の比は20:1としているので、RF信号のS/Nは良好である。ホログラム素子108を素通りした0次回折光である3つのビームは検出レンズ59により集光され、円柱レンズ57によりトラックに対して45度方向の非点収差を与えられて光検出器39に受光される。光検出器39から出力される信号はRF信号・FE信号・TE信号生成回路201に入力される。
【0128】
RF信号・FE信号・TE信号生成回路201によって生成されて出力されたRF信号は光記憶媒体に記録された情報を再生するために使用され、FE信号とTE信号は制御・駆動回路204に入力される。制御・駆動回路204は入力されたFE信号とTE信号をもとに対物レンズ56のアクチュエータ91、92を駆動させる。
【0129】
一方、ホログラム素子108で回折されたメインビームの+1次光と−1次光も検出レンズ59で集光され円柱レンズ57によりトラックに対して45度方向の非点収差を与えられて光検出器39に受光される。
【0130】
これらの光によって光検出器39から出力される信号が、SAE信号生成回路202に入力され、その信号をもとに、SAE信号生成回路202はSAE信号を出力する。SAE信号は制御・駆動回路203で増幅、位相補償がなされた後、アクチュエータ93に供給され、アクチュエータ93は球面収差補正手段としての組レンズ104の凹レンズおよび凸レンズの2つのレンズ間の距離を変化させ、光記憶媒体41上に集光されるビームの球面収差が最小となるように制御する。ホログラム素子108とSAE信号生成回路202とで球面収差検出手段を構成する。
【0131】
図19は、ホログラム素子108の構成を示す図である。半径R1の円の外側の領域109および半径R1の円の内側の領域110にはそれぞれ格子間隔の異なる回折格子が作製されている。光記憶媒体41で反射・回折され対物レンズ56を通過したビームのホログラム素子108上への投影図は半径Rbの円形(図19中の破線の円)に相当する。R1/Rbは0.75程度とすると、ビームのうち外側の領域にかかる面積と内側の領域にかかる面積はほぼ等しくなるため、信号強度もほぼ等しくなる。このとき光記憶媒体41の厚さ誤差等による球面収差に対するSAE信号の変化の度合いである検出感度は最も高くなる。したがって、R1/Rbは0.75前後が最適である。
【0132】
図20に実施の形態8における光検出器39とビームとの関係を示している。なお、図20には、各受光部の配置とRF信号・TE信号・FE信号生成回路、SAE信号生成回路等の詳細の構成例も示している。光検出器39は、受光部153a、153b、153c、153dからなるメインビーム用受光部153と、受光部152a、152b、154a、154bからなるサブビーム用受光部152と、受光部151a、151b、151c、151d、151e、151f、155a、155b、155c、155d、155e、155fからなるSAE信号受光部151の大きく分けて3つの受光部を持つ。メインビームのうちホログラム素子108を透過した0次光がビーム121であり、サブビームのうちホログラム素子108を透過した0次光がビーム124aと124bであり、メインビームのうちホログラム素子108の領域109で回折された+1次光のビームが122a、−1次光のビームが122b、領域110で回折された+1次光のビームが123a、−1次光のビームが123bである。受光部153a、153b、153c、153dはビーム121を受光し、その光量に応じた電流信号を出力する。
【0133】
電流電圧変換回路241は電流信号を電圧信号に変換して出力する。加算器228は田の字状の受光部の対角に配置された受光部153aと受光部153cから出力された信号を加算する。加算器229は田の字状の受光部の別の対角に配置された受光部153bと153dから出力された信号を加算する。
【0134】
差動回路230は加算器228から出力された信号と加算器229から出力された信号との差信号、つまりFE信号を出力する。位相差TE生成回路231は加算器228と加算器229の出力信号を受け、それらの信号の位相を比較し位相差TE信号を出力する。加算器232は田の字状の受光部の片側に配置された受光部153aと153bから出力された信号を加算し、加算器233は田の字状の受光部の別の片側に配置された受光部153cと153dから出力された信号を加算する。差動回路234は加算器232から出力された信号と加算器233から出力された信号との差信号、つまり、プッシュプル法によるTE信号(PP−TE)を出力する。
【0135】
また加算器235は加算器232と加算器233の信号をとの和信号つまり、光記憶媒体に記録された情報を再生するためのRF信号を出力する。また、受光部152a、152bと受光部154a、154bはサブビーム124a、124bを受光し、その光量に応じた電流信号を出力する。電流電圧変換回路240は電流信号を受けて電圧信号を出力する。差動回路236は受光部152aと受光部154aとの和信号と、受光部152bと受光部154bの和信号との差信号、つまり、サブビームのTE信号(SUB−TE)を出力する。
【0136】
差動回路237は差動回路234と差動回路236の出力信号を受けその差信号を出力する。これがDPP法によるTE信号TEDPPとなる。加算器228、229、232、233、235、差動回路230、234、236、237、位相差TE生成回路231でRF信号・FE信号・TE信号生成回路201を構成する。受光部151a、151b、151c、151d、151e、151fはビーム122a、123aを受け受光した光量に応じた電流信号を出力する。また受光部155a、155b、155c、155d、155e、155fはビーム122b、123bを受けて受光した光量に応じた電流信号を出力する。電流電圧変換回路240は電流信号を受けて電圧信号を出力する。加算器221は受光部151b、151d、151f、受光部155a、155c、155eから出力された信号を加算する。また加算器222は受光部151a、151c、151e、受光部155b、155d、155fから出力された信号を加算する。差動回路223は加算器221から出力された信号と加算器222から出力された信号と受け、その差信号を出力する。これがSAE信号となる。2つの加算器221と222および差動回路223でSAE信号生成回路202を構成する。一方、加算器224は受光部151a、151b、151c、受光部155d、155e、155fから出力された信号を加算する。また加算器225は受光部151d、151e、151f、受光部155a、155b、155cから出力された信号を加算する。差動回路226は加算器224から出力された信号と加算器225から出力された信号と受け、その差信号を出力する。これはビーム122a、122b、ビーム123a、123bと受光部151a、151b、151c、151d、151e、151fおよび受光部155a、155b、155c、155d、155e、155fとの回転ずれをあらわす回転誤差(以下、ROTという)信号となる。ROT信号はヘッド調整時に球面収差用ビームを生成するホログラム素子108と光検出器39の回転方向の角度を調整するために用いる。この値がゼロになるように調整すれば、ホログラム素子108は光検出器39に正しく位置にセットされる。
【0137】
DPP法によるTE信号とSAE信号の検出を行う場合は、図20に示すように、光検出器39上でDPP法用のサブビーム124a、124bとSAE信号検出用のビーム122a、122b、123a、123bはメインビーム121に対して略直交した方向に配置する。これによりDPP法用のサブビーム124a、124bとSAE信号検出用のビーム122a、122b、123a、123bとの干渉を最小することができる。尚、ここではサブビームはDPP法に用いる例を示したが、3ビーム法のトラッキングに用いるためのサブビームであってもこの配置を用いることにより干渉を最小にする効果が得られる。
【0138】
さらに、内周領域の光と外周領域の光を並べて検出することで、内周領域の光を検出する受光部の外側の2つと外周領域の光を検出する受光部の内側の2つを共用することができる。それにより、受光部を減らすことができるため、受光部の簡略化、小型化が実現できる。そのため、光ヘッド装置を小型化することができる。
【0139】
また、メインビームの0次光の非集光面での反射光の広がりは略円形でその半径Rsは、ディスクの2つの層の光学的間隔をd、集光光学系の情報記憶媒体側の開口数をNA、集光光学系から検出器にいたる復路の横倍率をαとして、Rs=2・d・NA・αで表される。
【0140】
非集光面で反射した光は場所による光量むらを持っており、レンズシフトやディスクのチルト等で光検出器上でこの光が位置を変えると、SAE信号に誤差を与える。このむらは全体の光量の数%程度であるので、非集光面での反射光と本来の検出のための集光面での光の光量がほぼ同じであれば、SAE信号に与える影響も数%程度となる。したがってSAE信号を得るための光検出器の受光部の面積S2を、S2=2PDx・PDyとして、S2≦π・Rs・Rs・ηs/ηmが成り立てばよい。すなわち、S2≦4・π・(d・NA・α)2・ηs/ηmである。
【0141】
ここで、ηsはSAE検出に用いる光の光量、ηmはメインビームの0次光の光量である。この関係式の成り立つ光学系では非集光面からの反射光があってもSAE信号の誤差が小さく、集光面での情報を正しく読み取ったり、記録することができる。また、横倍率αが大きい程、迷光量が低減できることは、TE信号を検出する場合と同様である。
【0142】
一方、検出レンズと円柱レンズの組み合わせにより集光されるビームの非点隔差(前側焦線と後ろ側焦線の距離)をZ0、基板もしくは中間層の屈折率をnとしたとき、FE信号の光記憶媒体の変位に対する検出範囲Δzは、
Δz=Z0/2/α2
SAE信号の基板もしくは中間層の厚み誤差に対する検出範囲Δtは、
Δt=Z0・n3/α2/(n2−1)/NA2
でそれぞれ与えられる。横倍率αを大きくすると、Δz、Δtは共に小さくなるので、横倍率αを大きくし過ぎると、FE信号もしくはSAE信号の検出範囲が狭くなり、フォーカスサーボおよび球面収差補正サーボが不安定になってしまう。したがって、所望の検出範囲をΔzおよびΔtとしたとき、横倍率αは、DPP法によるTE信号とSAE信号を同じ検出レンズと円柱レンズを用いて検出する場合は、
1・ηm・Rdfo/(4・π・d2・NA2・ηs・Rfo)≦α≦(Z0・n3/Δt/(n2−1)/NA21/2
の式を満たし、DPP法によるTE信号とFE信号を同じ検出レンズと円柱レンズを用いて検出する場合は、
1・ηm・Rdfo/(4・π・d2・NA2・ηs・Rfo)≦α≦(Z0/2/Δz)1/2
の式を満たすようにすれば、フォーカス、トラッキングおよび球面収差補正を制御するサーボ動作が安定に行われる。
【0143】
ここで、光源の波長をλとしたとき、Δzはλ/2/NA2の3〜10倍に、Δtはλ/NA4の5〜30倍にする。
【0144】
なお、実施の形態8の光ピックアップヘッドにおけるSAE信号の検出方式については、何ら制約を受けることはなく、特開2002−190125号公報に記載されている何れの方式等、様々な方式を用いることができることは言うまでもない。
【0145】
また、ここでは、非点収差をビームに付与する構成について述べたが、スポットシズディテクション法等、他のFE信号検出方式を適用することができる。なお、スポットサイズディテクション法の場合、2つのビームの焦点の間隔が、非点収差法における非点隔差と等価であり、2つのビームの焦点の間隔をZ0として設計すればよい。
【0146】
なお、3層以上の記録層を有する光記憶媒体においても同様に用いることができる。
【0147】
光記憶媒体が3層以上の記録層を有する場合には、メインビームがそれぞれの非集光面(記録層の数−1)で反射されて、サブビームを受光する受光部に入射する光量の総和がサブビームの光量に対して先に述べた関係を有していればよい。
【0148】
(実施の形態9)
本発明の実施の形態9にかかる情報記録再生装置について図を用いて説明する。図21は、実施の形態9の情報記録再生装置光ピックアップヘッドの構成を示す図である。情報記録再生装置は、光ピックアップヘッド80、光記録媒体駆動部81、光ピックアップヘッド駆動装置部82、電気回路83および電源部84から構成されている。光ピックアップヘッド80には、実施の形態1〜実施の形態8で説明した光ピックアップヘッドを用いればよい。
【0149】
光記録媒体駆動部81は記録媒体41を回転させるものである。光ピックアップヘッド80と記録媒体41との位置関係に対応する信号は、電気回路部83へ送られている。電気回路部83はこの位置関係に対応する信号を増幅または演算して、それをもとに、光ピックアップヘッド80または光ピックアップヘッド80内の対物レンズ(図示せず)を微動させる。
【0150】
また、光ピックアップヘッド80は、記録媒体41に記録されている情報を読み出し、その信号を電気回路部83へ送る。電気回路部83では送られてきた信号より、記録媒体41に記録された情報の復調を行う。アクチュエータ91、92は光ピックアップヘッド内の対物レンズを駆動するものである。前記信号と光ピックアップヘッドの駆動部82もしくはアクチュエータ91、92によって、記録媒体41に対してフォーカスサーボとトラッキングサーボが行われ、情報の読み出しもしくは書き込みまたは消去を行う。電源または外部電源等の電源部84から電気回路部83、光ピックアップヘッドの駆動部82、光記録媒体駆動部81およびアクチュエータ91、92へ電源が供給される。なお、電源もしくは外部電源との接続端子は各駆動回路にそれぞれ設けられてもよい。
【符号の説明】
【0151】
1、2 半導体レーザ光源
4、22、63 プリズム
5 ミラー
10 発光点
11 活性層
12 基板
16、60 ビームスプリッタ
17、61、108 ホログラム素子
18、57 円柱レンズ
31、32、33、36、37、38、39 光検出器
31a〜31h、32a〜32d、33a〜33f、36a〜36f、37a〜37f、38a〜38f、151a〜151f、152a〜152b、153a〜153d、154a〜154b、155a〜155f 受光部
34a、153 メインビーム用受光部
34b、34c、154 サブビーム用受光部
34g、34h ダミー受光部
41 光記憶媒体
41a 透明基板
41b、41c 情報記録面
52 偏光ビームスプリッタ
53 コリメートレンズ
54 波長板
55 アパーチャ
56 対物レンズ
58、62、64、65 回折格子
59 検出レンズ
62a、62b、64a、64b、65a、65b パターン
62c、64c、65c 分割線
70、71a、71b、71c、75、121、122a、122b、123a、123b ビーム
70a メインビーム
70b、70c サブビーム
72b、72c、73a、73b、73c、74a、74b、74c、71d、71e、76d、76e、78d、78e 回折光
80 光ピックアップヘッド
81 記録媒体駆動部
82 光ピックアップヘッド駆動部
83 電気回路
84 電源部
91、92 アクチュエータ
104 レンズ
108 ホログラム素子
109、110 領域
151 SAE信号受光部
201 RF信号・FE信号・TE信号生成回路
202 SAE信号生成回路
203、204 制御・駆動回路
211 ROT信号生成回路
212 回転調整機構
221、222、224、225、228、229、232、233 加算器
223、226、230、234、235、236、237 差動回路
231 位相差TE生成回路
240、241 電流電圧変換回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを出射する半導体レーザ光源と、
前記半導体レーザ光源から出射されたビームから複数の回折光を生成する回折手段と、
前記回折手段からの前記複数の回折光を、光記憶媒体上に集光する収束手段と、
前記光記憶媒体上に集光された前記複数の回折光が前記光記憶媒体上で反射された複数のビームを分岐するビーム分岐手段と、
前記ビーム分岐手段で分岐されたビームを受光し、前記受光したビームの光量に応じた信号を出力する光検出手段とを備え、
前記光記憶媒体は、複数の情報記録面を有し、少なくとも1つの前記情報記録面には案内溝が形成され、
前記半導体レーザ光源は、前記情報記録面に形成された前記案内溝と略平行になるように配置された基板上に形成されており、レーザビームを出射する位置とは異なる位置から自然放出光を出射することを特徴とする光ピックアップヘッド。
【請求項2】
前記半導体レーザ光源の前記基板がサファイアからなることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップヘッド。
【請求項3】
前記半導体レーザ光源の前記基板が窒化ガリウムからなることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップヘッド。
【請求項4】
光ビームを出射する光源と、
前記光源から出射されたビームから複数の回折光を生成する回折手段と、
前記回折手段からの前記複数の回折光を、光記憶媒体上に集光する収束手段と、
前記光記憶媒体上に集光された前記複数の回折光が前記光記憶媒体上で反射されたビームを受光し、前記受光したビームの光量に応じた信号を出力する光検出手段とを備え、
前記光検出手段は、前記集光された前記複数の回折光の内の0次回折光を受光する2つのメインビーム受光部および1次以上の回折光を受光する4つのサブビーム受光部を有し、
メインビーム受光部から出力される信号をT1、T2とし、サブビーム受光部から出力される信号をT3、T4、T5、T6としたとき、
(T1−T2)/(T1+T2)−k[{(T3−T4)+(T5+T6)}/(T1+T2)](kは定数)の演算によりトラッキング誤差信号を検出することを特徴とする光ピックアップヘッド。
【請求項5】
光ビームを出射する光源と、
前記光源から出射されたビームから複数の回折光を生成する回折手段と、
前記回折手段からの前記複数の回折光を、光記憶媒体上に集光する収束手段と、
前記光記憶媒体上に集光された前記複数の回折光が前記光記憶媒体上で反射された複数のビームを分岐するビーム分岐手段と、
前記ビーム分岐手段で分岐されたビームを受光し、前記受光したビームの光量に応じた信号を出力する光検出手段とを備え、
前記光検出手段は、2つの受光部を有し、
前記光記憶媒体は、第1の情報記録面と第2の情報記録面とを有し、前記第1の情報記録面には案内溝が形成され、
前記収束手段で集光された回折光が前記第1の情報記録面で焦点を結び、前記第2の情報記録面では焦点を結んでいない場合に、
前記第1の情報記録面で反射されたビームが前記光検出手段で受光されて、前記2つの受光部から出力される信号を、Tf1、Tf2とし、
前記第2の情報記録面で反射されたビームが前記光検出手段で受光されて、前記2つの受光部から出力される信号を、Ts1、Ts2とし、
(Tf1+Ts1−Tf2−Ts2)/(Tf1+Ts1+Tf2+Ts2)の演算によりトラッキング誤差信号を検出し、Tf1+Tf2≧5・(Ts1+Ts2)の関係を有する光ピックアップヘッド。
【請求項6】
光ビームを出射する光源と、
前記光源から出射されたビームから複数の回折光を生成する回折手段と、
前記回折手段からの前記複数の回折光を、光記憶媒体上に集光する収束手段と、
前記光記憶媒体上に集光された前記複数の回折光が前記光記憶媒体上で反射された複数のビームを2つに分岐するビーム分岐手段と、
前記ビーム分岐手段で分岐された第1のビームに非点収差を付与する非点収差付与手段と、
前記ビーム分岐手段で分岐された第2のビームをさらに2つのビームに分割するビーム分割手段と、
前記非点収差手段からのビームを受光し、前記受光したビームの光量に応じた信号を出力する第1光検出手段と、
前記ビーム分割手段からのビームを受光し、前記受光したビームの光量に応じた信号を出力する第2光検出手段とを備え、
前記光記憶媒体は、複数の情報記録面を有し、少なくとも1つの前記情報記録面には案内溝が形成され、
前記ビーム分割手段は、前記第2のビームを前記案内溝と平行な方向に分割することを特徴とする光ピックアップヘッド。
【請求項7】
光ビームを出射する光源と、
前記光源から出射されたビームから複数の回折光を生成する回折手段と、
前記回折手段からの前記複数の回折光を、光記憶媒体上に集光する収束手段と、
前記光記憶媒体上に集光された前記複数の回折光が前記光記憶媒体上で反射された複数のビームを分岐するビーム分岐手段と、
前記ビーム分岐手段で分岐されたビームに非点収差を付与する非点収差付与手段と、
前記非点収差付与手段で非点収差を付与されたビームを受光し、前記受光したビームの光量に応じた信号を出力する光検出手段とを備え、
前記光検出手段は、前記集光された前記複数の回折光の内の0次回折光を受光するメインビーム受光部および1次以上の回折光を受光するサブビーム受光部を有し、
前記光記憶媒体は、複数の情報記録面を有し、少なくとも1つの前記情報記録面には案内溝が形成されており、
前記非点収差付与手段で付与される非点隔差をZ0とし、
前記回折手段で生成された前記回折光の内の0次回折光の回折効率をηmとし、1次以上の回折光の回折効率をηsとし、
前記収束手段で集光されたビームが略焦点を結ぶ情報記録面の内の集光面の実効的な反射率をRfoとし、前記複数の情報記録面の内の前記集光面以外の非集光面の実効的な反射率をRdfoとし、
前記収束手段の前記光記憶媒体側の開口数をNAとし、前記光記憶媒体から前記光検出手段に至る復路の光学系の横倍率をαとし、前記光源が出射するビームの波長をλとし、前記光記憶媒体の2つの情報記録面の光学的な間隔をdとし、前記サブビーム受光部の1つの面積をS1としたとき、S1・ηm・Rdfo/(4・π・d2・NA2・ηs・Rfo)≦α≦(Z0/2/Δz)1/2の関係を有し、かつ、Δzはλ/2/NA2の3〜10倍の範囲であることを特徴とする光ピックアップヘッド。
【請求項8】
前記光記憶媒体から前記光検出手段に至る光路中に、前記光検出手段で受光されるビームを収束させる集光手段を備え、
前記集光手段は凸レンズと凹レンズとを有していることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の光ピックアップヘッド。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の光ピックアップヘッドと、前記光記憶媒体と前記光ピックアップヘッドとの相対的な位置を変化させる駆動部と、
前記光ピックアップヘッドから出力される信号を受けて演算を行い所望の情報を得る電気信号処理部とを備えたことを特徴とする情報記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−44859(P2010−44859A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265096(P2009−265096)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【分割の表示】特願2007−240119(P2007−240119)の分割
【原出願日】平成14年4月5日(2002.4.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】