説明

光偏向素子、光偏向器、及び画像形成装置

【課題】回動軸方向の幅が有限な可動板に捻り梁が接合された端面においては、幅が無限な可動板における理論的な動たわみとは異なる形状の複雑な動たわみが発生する。当該動たわみを抑制することができる光偏向素子、光偏向器、及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】光偏向素子は、光束が反射される反射面が形成された反射手段が固定されており板状の形状を有する可動板と、一端が可動板の端面に接続されており、可動板を反射面に平行な回動軸回りに回動可能に支持する弾性支持梁と、弾性支持梁の一端の反対側の一端が接続されており、弾性支持梁を支持する支持枠と、可動板の側面から反射面に平行な方向に突出し、回動軸に垂直な方向において可動板の先端より回動軸に近い範囲に配設された可動板突起と、を備える。光偏向器は、当該光偏向素子を備え、画像形成装置は、当該光偏向素子又は当該光偏向器を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光偏向素子、光偏向素子を備える光偏向器、及び光偏向器を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、反射面を回動させることによって、光源から反射面に入射する光束を偏向させて、当該偏向光によって画像形成面上を走査することで画像形成面に画像を形成する光偏向器が知られている。高解像度の画像を形成するためには、より高い周波数で反射面を回動させることが必要である。MEMS(Micro Electro Mechanical System)の技術を応用して製作されたミラーデバイスは、従来から用いられているポリゴンミラーやガルバノミラーでは実現が困難な高い周波数で駆動させることが可能である。このミラーデバイスは、反射面が形成又は取り付けられた可動板と、弾性を有する捻り梁と、駆動源とを備え、捻り梁を軸にして反射面を往復回動させることによって、光源から反射面に入射する光束を偏向させる光偏向器である。
【0003】
可動板は高速かつ高精度で回動させることが必要であるが、高速で回動するために、可動板自身の慣性モーメントによって、「動たわみ」と呼ばれる変形が生じ、当該動たわみによって反射面の平坦度が損なわれ、形成される画像が劣化することがあった。
特許文献1には、ミラー基板(可動板)の厚さの分布を適切に設定することで、ミラー基板の回動中心梁から回動軸に直交する方向における、ミラー基板の剛性の分布を、動撓みを発生させる曲げモーメントの分布に対応する剛性分布とすることによって、ミラー基板の動的な撓みを低減し、ミラー基板の慣性を低減して偏向角を大きくすることができる、偏向ミラー、光走査装置および画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−300927号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Alexander Wolter、「Scanning 2D micromirror with enhanced flatness at high frequency」、Proceedings of SPIE 、USA、SPIE、23−JAN−2006、Vol.6114、61140L
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ミラー基板(可動板)における曲げモーメントの分布が特許文献1に開示されたような分布となるのは、ミラー基板(可動板)と捻り梁との接合部から充分に離れた部分であることが、理論的に知られている。例えば、ミラー基板(可動板)の回動軸方向の幅が無限大の場合であれば、中央部分における曲げモーメントの分布が特許文献1に開示されたような分布となる。
非特許文献1に開示されているように、可動板の中央においては特許文献1に開示された撓みに近い動たわみが発生するが、可動板に捻り梁が接合された端面においては、異なる形状の複雑な動たわみが発生するという課題があった。したがって、特許文献1に記載された動撓みの抑制方法だけでは、可動板の動たわみを充分抑制することは、難しいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例にかかる光偏向素子は、光束が反射される反射面が形成された反射手段が固定されており板状の形状を有する可動板と、一端が前記可動板の端面に接続されており、前記可動板を前記反射面に平行な回動軸回りに回動可能に支持する弾性支持梁と、前記弾性支持梁の前記一端の反対側の一端が接続されており、前記弾性支持梁を支持する支持枠と、前記可動板の側面から前記反射面に平行な方向に突出し、前記回動軸に垂直な方向において前記可動板の先端より前記回動軸に近い範囲に配設された可動板突起と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本適用例にかかる光偏向素子によれば、よく知られている光偏向素子と同様に、可動板を高速で往復回動させることができる。可動板は剛体ではないため、高速で回動する際には、可動板の慣性モーメントに起因して動たわみが発生するが、可動板の側面に可動板突起を設けることによって、動たわみを抑制することができる。可動板の動たわみを抑制することで、可動板上に形成された反射手段の面状態が変化することを抑制することができる。可動板から突設させた可動板突起を設けることによって、慣性モーメントが大きくなるが、可動板突起は回動軸に垂直な方向において可動板の先端より回動軸に近い範囲に配設されているため、可動板突起を設けることによる慣性モーメントの増大を小さくすることができる。
【0010】
[適用例2]上記適用例にかかる光偏向素子は、前記可動板が、前記回動軸を含み前記反射面に垂直な第一平面に関して対称な形状を有し、複数の前記可動板突起が、前記第一平面に関して対称な位置に配設されていることが好ましい。
【0011】
この光偏向素子によれば、可動板は、回動軸を含み反射面に垂直な第一平面に関して対称な形状を有している。したがって、可動板が回動軸まわりに往復回動する際は、可動板には、第一平面に関して対称な形状の動たわみが発生する可能性が高い。第一平面に関して対称な位置に可動板突起を配設することによって、可動板における可動板突起による動たわみの抑制効果が及ぶ位置を第一平面に関して対称にして、動たわみを含めた可動板の形状を、第一平面に関して対称な形状で維持し易くすることができる。可動板の形状を、第一平面に関して対称な形状で維持し易くすることで、可動板上に形成された反射手段の面状態を、第一平面に関して対称な形状で維持し易くすることができる。
【0012】
[適用例3]上記適用例にかかる光偏向素子は、前記第一平面に関して互いに対称な位置に配設されている前記可動板突起のそれぞれが、前記第一平面に関して互いに対称な形状を有することが好ましい。
【0013】
この光偏向素子によれば、第一平面に関して対称な位置に配設されている可動板突起は、第一平面に関して互いに対称な形状を有している。これにより、可動板が回動軸まわりに往復回動する際の可動板突起の慣性モーメントが第一平面に関して略対称になることから、可動板に対して可動板突起による動たわみの抑制効果が及ぶ状態を第一平面に関して対称にして、動たわみを含めた可動板の形状を、第一平面に関して対称な形状で維持し易くすることができる。可動板の形状を、第一平面に関して対称な形状で維持し易くすることで、可動板上に形成された反射手段の面状態を、第一平面に関して対称な形状で維持し易くすることができる。
【0014】
[適用例4]上記適用例にかかる光偏向素子は、前記可動板が、前記回動軸に垂直な第二平面に関して対称な形状を有し、複数の前記可動板突起が、前記第二平面に関して対称な位置に配設されていることが好ましい。
【0015】
この光偏向素子によれば、可動板は回動軸に垂直な第二平面に関して対称な形状を有している。したがって、可動板が回動軸まわりに往復回動する際は、可動板には、第二平面に関して対称な形状の動たわみが発生する可能性が高い。第二平面に関して対称な位置に可動板突起を配設することによって、可動板における可動板突起による動たわみの抑制効果が及ぶ位置を第二平面に関して対称にして、動たわみを含めた可動板の形状を、第二平面に関して対称な形状で維持し易くすることができる。可動板の形状を、第二平面に関して対称な形状で維持し易くすることで、可動板上に形成された反射手段の面状態を、第二平面に関して対称な形状で維持し易くすることができる。
【0016】
[適用例5]上記適用例にかかる光偏向素子は、前記第二平面に関して互いに対称な位置に配設されている前記可動板突起のそれぞれが、前記第二平面に関して互いに対称な形状を有することが好ましい。
【0017】
この光偏向素子によれば、第二平面に関して対称な位置に配設されている可動板突起は、第二平面に関して互いに対称な形状を有している。これにより、可動板が回動軸まわりに往復回動する際の可動板突起の慣性モーメントが第二平面に関して略対称になることから、可動板に対して可動板突起による動たわみの抑制効果が及ぶ状態を第二平面に関して対称にして、動たわみを含めた可動板の形状を、第二平面に関して対称な形状で維持し易くすることができる。可動板の形状を、第二平面に関して対称な形状で維持し易くすることで、可動板上に形成された反射手段の面状態を、第二平面に関して対称な形状で維持し易くすることができる。
【0018】
[適用例6]上記適用例にかかる光偏向素子は、前記回動軸の軸方向における前記可動板突起の長さが、前記回動軸の軸方向における前記可動板の長さ以下であることが好ましい。
【0019】
軸方向における可動板突起の長さが可動板の長さを超えると、可動板突起を配設したことによる慣性モーメントの増加の影響による動たわみの増加が大きくなり、相対的に動たわみを抑制する効果が小さくなることが、発明者らによるシミュレーションによって確認されている。この光偏向素子によれば、軸方向における可動板突起の長さを可動板の長さ以下にすることで、可動板突起を付加したことによる慣性モーメントの増加の影響に起因する動たわみの増加を抑制して、可動板突起を付加したことによる動たわみの増加より、可動板突起を付加したことによる動たわみを抑制する効果の方を大きくすることができる。
【0020】
[適用例7]上記適用例にかかる光偏向素子は、前記可動板と前記可動板突起とが、一体に形成されていることが好ましい。
【0021】
この光偏向素子によれば、可動板と可動板突起とを一体に形成することで、可動板突起の可動板への組み立て工程を不要にすることができる。また、組み立てる際の組み立て位置誤差がないことから、可動板に対する可動板突起の位置精度の低下を抑制することができる。
【0022】
[適用例8]上記適用例にかかる光偏向素子は、前記可動板、及び前記弾性支持梁が、単結晶シリコンで一体に形成されていることが好ましい。
【0023】
この光偏向素子によれば、可動板、及び弾性支持梁を、単結晶シリコンをエッチングすることで略同時に形成することができる。一体に形成できることで、可動板と弾性支持梁との組み立て工程を不要にすることができるとともに、接合部分において強度低下などが生ずることを抑制することができる。
【0024】
[適用例9]上記適用例にかかる光偏向素子は、前記可動板における前記反射手段が形成された表面と、前記可動板突起における前記表面と同じ側の面と、が略同一平面上に形成されていると共に、前記可動板における前記表面の反対側の裏面と、前記可動板突起における前記裏面と同じ側の面と、が略同一平面上に形成されていることが好ましい。
【0025】
この光偏向素子によれば、可動板の表面と可動板突起の同じ側の面と、及び可動板の裏面と可動板突起の同じ側の面とは略同一面であり、境目の段差がない。可動板突起は、可動板の側面に突設されており、可動板に支持されているため、可動板が回動する際に可動板突起の慣性モーメントによる応力が可動板突起と可動板の境界部分に作用する。境界部分に段差がある場合、当該段差の隅部分に応力集中が発生する。段差をなくすることで、段差部分に発生する応力集中によるたわみによって、可動板の動たわみが増加することを抑制することができる。
【0026】
[適用例10]本適用例にかかる光偏向器は、光束が反射される反射面が形成された反射手段が固定されており板状の形状を有する可動板と、一端が前記可動板の端面に接続されており、前記可動板を前記反射面に平行な回動軸回りに回動可能に支持する弾性支持梁と、前記弾性支持梁の前記一端の反対側の一端が接続されており、前記弾性支持梁を支持する支持枠と、を備える光偏向素子と、前記可動板を回動させる駆動源と、を備え、前記光偏向素子は、前記可動板の側面から前記反射面に平行な方向に突出し、前記回動軸に垂直な方向において前記可動板の先端より前記回動軸に近い範囲に配設された可動板突起をさらに備えることを特徴とする。
【0027】
本適用例にかかる光偏向器によれば、光偏向器におけるよく知られている光偏向素子と同様に、可動板を高速で往復回動させることができる。可動板は剛体ではないため、高速で回動する際には、可動板の慣性モーメントに起因して動たわみが発生するが、可動板の側面に可動板突起を設けることによって、動たわみを抑制することができる。可動板の動たわみを抑制することで、可動板上に形成された反射手段の面状態が変化することを抑制することができる。可動板から突設させた可動板突起を設けることによって、慣性モーメントが大きくなるが、可動板突起は回動軸に垂直な方向において可動板の先端より回動軸に近い範囲に配設されているため、可動板突起を設けることによる慣性モーメントの増大を小さくすることができる。
【0028】
[適用例11]上記適用例にかかる光偏向器は、前記可動板が、前記回動軸を含み前記反射面に垂直な第一平面に関して対称な形状を有し、複数の前記可動板突起が、前記第一平面に関して対称な位置に配設されていることが好ましい。
【0029】
この光偏向器によれば、可動板は、回動軸を含み反射面に垂直な第一平面に関して対称な形状を有している。したがって、可動板が回動軸まわりに往復回動する際は、可動板には、第一平面に関して対称な形状の動たわみが発生する可能性が高い。第一平面に関して対称な位置に可動板突起を配設することによって、可動板における可動板突起による動たわみの抑制効果が及ぶ位置を第一平面に関して対称にして、動たわみを含めた可動板の形状を、第一平面に関して対称な形状で維持し易くすることができる。可動板の形状を、第一平面に関して対称な形状で維持し易くすることで、可動板上に形成された反射手段の面状態を、第一平面に関して対称な形状で維持し易くすることができる。
【0030】
[適用例12]上記適用例にかかる光偏向器は、前記第一平面に関して互いに対称な位置に配設されている前記可動板突起のそれぞれが、前記第一平面に関して互いに対称な形状を有することが好ましい。
【0031】
この光偏向器によれば、第一平面に関して対称な位置に配設されている可動板突起は、第一平面に関して互いに対称な形状を有している。これにより、可動板が回動軸まわりに往復回動する際の可動板突起の慣性モーメントが第一平面に関して略対称になることから、可動板に対して可動板突起による動たわみの抑制効果が及ぶ状態を第一平面に関して対称にして、動たわみを含めた可動板の形状を、第一平面に関して対称な形状で維持し易くすることができる。可動板の形状を、第一平面に関して対称な形状で維持し易くすることで、可動板上に形成された反射手段の面状態を、第一平面に関して対称な形状で維持し易くすることができる。
【0032】
[適用例13]上記適用例にかかる光偏向器は、前記可動板が、前記回動軸に垂直な第二平面に関して対称な形状を有し、複数の前記可動板突起が、前記第二平面に関して対称な位置に配設されていることが好ましい。
【0033】
この光偏向器によれば、可動板は回動軸に垂直な第二平面に関して対称な形状を有している。したがって、可動板が回動軸まわりに往復回動する際は、可動板には、第二平面に関して対称な形状の動たわみが発生する可能性が高い。第二平面に関して対称な位置に可動板突起を配設することによって、可動板における可動板突起による動たわみの抑制効果が及ぶ位置を第二平面に関して対称にして、動たわみを含めた可動板の形状を、第二平面に関して対称な形状で維持し易くすることができる。可動板の形状を、第二平面に関して対称な形状で維持し易くすることで、可動板上に形成された反射手段の面状態を、第二平面に関して対称な形状で維持し易くすることができる。
【0034】
[適用例14]上記適用例にかかる光偏向器は、前記第二平面に関して互いに対称な位置に配設されている前記可動板突起のそれぞれが、前記第二平面に関して互いに対称な形状を有することが好ましい。
【0035】
この光偏向器によれば、第二平面に関して対称な位置に配設されている可動板突起は、第二平面に関して互いに対称な形状を有している。これにより、可動板が回動軸まわりに往復回動する際の可動板突起の慣性モーメントが第二平面に関して略対称になることから、可動板に対して可動板突起による動たわみの抑制効果が及ぶ状態を第二平面に関して対称にして、動たわみを含めた可動板の形状を、第二平面に関して対称な形状で維持し易くすることができる。可動板の形状を、第二平面に関して対称な形状で維持し易くすることで、可動板上に形成された反射手段の面状態を、第二平面に関して対称な形状で維持し易くすることができる。
【0036】
[適用例15]上記適用例にかかる光偏向器は、前記回動軸の軸方向における前記可動板突起の長さが、前記回動軸の軸方向における前記可動板の長さ以下であることが好ましい。
【0037】
軸方向における可動板突起の長さが可動板の長さを超えると、可動板突起を配設したことによる慣性モーメントの増加の影響による動たわみの増加が大きくなり、相対的に動たわみを抑制する効果が小さくなることが、発明者らによるシミュレーションによって確認されている。この光偏向器によれば、軸方向における可動板突起の長さを可動板の長さ以下にすることで、可動板突起を付加したことによる慣性モーメントの増加の影響に起因する動たわみの増加を抑制して、可動板突起を付加したことによる動たわみの増加より、可動板突起を付加したことによる動たわみを抑制する効果の方を大きくすることができる。
【0038】
[適用例16]上記適用例にかかる光偏向器は、前記可動板と前記可動板突起とが、一体に形成されていることが好ましい。
【0039】
この光偏向器によれば、可動板と可動板突起とを一体に形成することで、可動板突起の可動板への組み立て工程を不要にすることができる。また、組み立てる際の組み立て位置誤差がないことから、可動板に対する可動板突起の位置精度を向上させることができる。
【0040】
[適用例17]上記適用例にかかる光偏向器は、前記可動板、及び前記弾性支持梁が、単結晶シリコンで一体に形成されていることが好ましい。
【0041】
この光偏向器によれば、可動板、及び弾性支持梁を、単結晶シリコンをエッチングすることで略同時に形成することができる。一体に形成できることで、可動板と弾性支持梁との組み立て工程を不要にすることができるとともに、接合部分において強度低下などが生ずることを抑制することができる。
【0042】
[適用例18]上記適用例にかかる光偏向器は、前記可動板における前記反射手段が形成された表面と、前記可動板突起における前記表面と同じ側の面と、が略同一平面上に形成されていると共に、前記可動板における前記表面の反対側の裏面と、前記可動板突起における前記裏面と同じ側の面と、が略同一平面上に形成されていることが好ましい。
【0043】
この光偏向器によれば、可動板の表面と可動板突起の同じ側の面と、及び可動板の裏面と可動板突起の同じ側の面とは略同一面であり、境目の段差がない。可動板突起は、可動板の側面に突設されており、可動板に支持されているため、可動板が回動する際に可動板突起の慣性モーメントによる応力が可動板突起と可動板の境界部分に作用する。境界部分に段差がある場合、当該段差の隅部分に応力集中が発生する。段差をなくすることで、段差部分に発生する応力集中によるたわみによって、可動板の動たわみが増加することを抑制することができる。
【0044】
[適用例19]本適用例にかかる画像形成装置は、光源と、上記適用例のいずれかに記載の光偏向素子を備える光偏向器、又は上記適用例のいずれかに記載の光偏向器と、を備え、前記光源から射出された光束を、前記光偏向素子を備える光偏向器又は前記光偏向器によって偏向させることで画像を形成することを特徴とする。
【0045】
本適用例にかかる画像形成装置によれば、可動板の動たわみを抑制することができる光偏向素子を備える光偏向器、又は可動板の動たわみを抑制することができる光偏向器を備えることによって、可動板の動たわみに起因する画像の劣化を抑制して、品質の高い画像を安定して形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】投射型画像表示装置の主要な構成要素を示す説明図。
【図2】(a)は、光偏向素子の形状を示す平面図。(b)は、(a)にA−Aで示した断面における断面図。(c)は、(a)にB−Bで示した断面における断面図。(d)は、可動板及び弾性支持梁の斜視図。
【図3】(a)は、素子筐体の筐体本体の外形形状を示す平面図。(b)は、(a)にC−Cで示した断面における素子筐体の筐体本体及び封止蓋の断面形状を示す断面図。(c)は、(a)にD−Dで示した断面における素子筐体の筐体本体及び封止蓋の断面形状を示す断面図。
【図4】(a)は、主走査偏向器を封止蓋側から見た平面図。(b)は、(a)にE−Eで示した断面における主走査偏向器の断面図。(c)は、(a)にF−Fで示した断面における主走査偏向器の断面図。(d)は、(a)にF−Fで示した断面における可動板が回動した状態を示す断面図。
【図5】可動板の動たわみをシミュレーションした結果例を示す説明図。
【図6】(a)は、光偏向素子の形状を示す平面図。(b)は、(a)にG−Gで示した断面における断面図。(c)は、光偏向素子の形状を示す平面図。(d)は、(c)にH−Hで示した断面における断面図。
【図7】印刷装置の全体構成を模式的に示す断面図。
【図8】印刷装置が備える露光ユニットの概略構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、光偏向素子、光偏向器、及び画像形成装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態は、光偏向素子を有する光偏向器を備える画像形成装置としての、光偏向素子を有する主走査偏向器を備える投射型画像表示装置を例にして説明する。なお、以下の説明において参照する図面では、図示の便宜上、部材又は部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0048】
<投射型画像表示装置>
最初に、投射型画像表示装置1について、図1を参照して説明する。図1は、投射型画像表示装置の主要な構成要素を示す説明図である。
図1に示すように、投射型画像表示装置1は、光束LをスクリーンSの横方向(主走査方向)及び縦方向(副走査方向)に2次元的に走査することにより、スクリーンS上に画像を形成(描画)する装置である。
【0049】
投射型画像表示装置1は、光源ユニット2と、光走査ユニット3と、図示省略した表示装置制御部と、を備えている。光源ユニット2から光束Lが射出され、当該光束Lが光走査ユニット3によって2次元的に走査されてスクリーンSに投射されて、スクリーンS上に画像が形成される。
なお、スクリーンSは、投射型画像表示装置1に一体に備えられたものであっても別体であってもよい。また、スクリーンSの表面側(光Lの照射側)で画像を視認するように構成してもよいし、スクリーンSの裏面側(光Lの照射側とは反対側)から画像を視認するように構成してもよい。
【0050】
光源ユニット2は、レーザー光源21と、ダイクロイックプリズム22とを備えている。レーザー光源21は、3色の光のいずれかを射出する、レーザー光源21R、レーザー光源21G、又はレーザー光源21Bである。レーザー光源21Rは赤色の光束LRを射出し、レーザー光源21Gは緑色の光束LGを射出し、レーザー光源21Bは青色の光束LBを射出する。
【0051】
ダイクロイックプリズム22は、3色の光のいずれかを選択的に反射する、ダイクロイックプリズム22R、ダイクロイックプリズム22G、又はダイクロイックプリズム22Bである。ダイクロイックプリズム22Rは、赤色光を選択的に反射させる反射部を備えている。レーザー光源21Rから射出された赤色の光束LRは、ダイクロイックプリズム22Rに入射し、反射部で反射されてダイクロイックプリズム22Gに向けて射出される。当該光束を、光束L1と表記する。
【0052】
ダイクロイックプリズム22Gは、緑色光を選択的に反射させる反射部を備えている。レーザー光源21Gから射出された緑色の光束LGは、ダイクロイックプリズム22Gに入射し、反射部で反射されてダイクロイックプリズム22Bに向けて射出される。ダイクロイックプリズム22Rからダイクロイックプリズム22Gに向けて射出された光束L1は、ダイクロイックプリズム22Gの反射部を透過して、ダイクロイックプリズム22Bに向けて射出される。ダイクロイックプリズム22Gが、光束LGを反射し、光束L1を透過させることで、光束LGと光束L1とが合成された光束L2が、ダイクロイックプリズム22Bに向けて射出される。
【0053】
ダイクロイックプリズム22Bは、青色光を選択的に反射させる反射部を備えている。レーザー光源21Bから射出された青色の光束LBは、ダイクロイックプリズム22Bに入射し、反射部で反射されて射出される。ダイクロイックプリズム22Gからダイクロイックプリズム22Bに向けて射出された光束L2は、ダイクロイックプリズム22Bの反射部を透過して、射出される。ダイクロイックプリズム22Bが、光束LBを反射し、光束L2を透過させることで、光束LBと光束L2とが合成された光束Lが、射出される。光束Lは、3色の光束LRと、光束LGと、光束LBとが合成された光束である。
【0054】
光走査ユニット3は、主走査偏向器31と、副走査偏向器32と、固定反射鏡34とを備えている。
主走査偏向器31は、光偏向素子40を備えており、光偏向素子40は、回動軸Xを回動軸として回動する可動板41に固定された反射鏡42を備えている。
光源ユニット2のダイクロイックプリズム22Bから射出された光束Lは、反射鏡42によって反射されて、回動軸Xの軸方向に略直角な主走査方向に走査される。光源ユニット2、又はレーザー光源21が、光源に相当する。主走査偏向器31が、光偏向器に相当する。
【0055】
副走査偏向器32は、例えば、ガルバノミラーにより構成されており、主走査方向に略平行な回動軸Yを回動軸として回動する副走査反射鏡48を備えている。
主走査偏向器31の反射鏡42によって反射された光束Lは、副走査反射鏡48によって反射されて、主走査方向に略直角な副走査方向に走査される。
副走査反射鏡48によって反射された光束Lは、固定反射鏡34で反射されて、スクリーンSに照射される。主走査偏向器31による主走査方向の走査と、副走査偏向器32による副走査方向の走査とによって、スクリーンS上に、2次元の画像が形成される。
【0056】
<光偏向素子>
次に、主走査偏向器31が備える光偏向素子40について、図2を参照して説明する。図2は、光偏向素子の形状を示す図である。図2(a)は、光偏向素子の形状を示す平面図であり、図2(b)は、図2(a)にA−Aで示した断面における断面図であり、図2(c)は、図2(a)にB−Bで示した断面における断面図であり、図2(d)は、可動板及び弾性支持梁の斜視図である。
図2に示すように、光偏向素子40は、可動板41と、反射鏡42と、一対の弾性支持梁43,43と、支持枠44と、可動板突起46と、を備えている。可動板41と弾性支持梁43と支持枠44と可動板突起46とは、例えばシリコン基板をエッチングして形成され、一体に形成されている。
【0057】
可動板41の形状は、円形の平板である。反射鏡42は、平板形状の可動板41の可動板表面41Aに、配設されている。反射鏡42は、例えばアルミニウムの薄膜であり、平滑に仕上げられたシリコンの面である可動板表面41Aに、例えばスパッタリングによって形成される。
一対の弾性支持梁43,43は、それぞれの弾性支持梁43の一端が、可動板41の側面における円形平板形状の中心に関して略対称の位置において接続されており、回動軸Xの軸方向に沿ってそれぞれの中心軸が一直線となる方向及び位置に延在している。
【0058】
可動板突起46は、円形の平板である可動板41の側面に立設されている。円形平板形状の周方向における可動板突起46の立設位置は、弾性支持梁43の接続位置で区切られた略半円形状の周の頂部と、弾性支持梁43の接続位置との中間である。一対の弾性支持梁43,43の両側に在る2個の略半円形状の周のそれぞれに、2個の可動板突起46が立設されており、可動板41には4個の可動板突起46が立設されている。可動板突起46は、形状が四角柱であって、可動板41の厚さと略同じ厚さを有し、立設位置から弾性支持梁43と略平行に延在している。
4個の可動板突起46は、1個の可動板突起46に対して、1個の可動板突起46が、反射鏡42の面に垂直であって回動軸Xを含む面に関して対称な位置に在り、対称な形状を有している。4個の可動板突起46の、もう1個の可動板突起46が、回動軸Xに垂直であって可動板41の中心を通る面に関して対称な位置に在り、対称な形状を有しており、さらにもう1個の可動板突起46が、回動軸Xに垂直であって可動板41の中心を通る直線に関して対称な位置に在り、対称な形状を有している。反射鏡42の面に垂直であって回動軸Xを含む面が第一平面に相当し、回動軸Xに垂直であって可動板41の中心を通る面が、第二平面に相当する。
【0059】
支持枠44は、略方形の板の内側に支持枠開口45が形成された額縁状の形状を有している。可動板41(反射鏡42)と可動板41に立設された4個の可動板突起46と一対の弾性支持梁43,43とは、支持枠開口45に配設されている。弾性支持梁43の可動板41と接続された一端の反対側の一端が、支持枠44における額縁形状の対向する2辺の略中央にそれぞれ接続されている。
光偏向素子40は、例えばシリコン基板において、支持枠44の外周及び支持枠開口45の部分をエッチングして形成されており、可動板41と、弾性支持梁43と、支持枠44と、可動板突起46との一方の面はシリコン基板の一面であり、もう一方の面はシリコン基板のもう一方の一面であり、それぞれ略同一の平面である。
可動板41は、一対の弾性支持梁43,43が捩れ変形することによって、回動軸Xを軸に回動可能である。
【0060】
一対の弾性支持梁43,43が回動軸Xを中心にして捩れ変形することによって、可動板41(反射鏡42)は、回動軸Xを中心にして回動する。主走査偏向器31が投射型画像表示装置1に組み込まれた状態で、図2(a)に示した回動軸Xは、図1に示した回動軸Xと同じものである。反射鏡42が、反射手段に相当する。
【0061】
<素子筐体>
次に、主走査偏向器31が備える素子筐体50について、図3を参照して説明する。図3は、素子筐体の筐体本体及び封止蓋の外形形状を示す図である。図3(a)は、素子筐体の筐体本体の外形形状を示す平面図であり、図3(b)は、図3(a)にC−Cで示した断面における素子筐体の筐体本体及び封止蓋の断面形状を示す断面図であり、図3(c)は、図3(a)にD−Dで示した断面における素子筐体の筐体本体及び封止蓋の断面形状を示す断面図である。
【0062】
図3に示すように、素子筐体50は、筐体本体52及び封止蓋51を備えている。筐体本体52は、略直方体を有し、上面53において外面に開口する素子室54が形成されている。筐体本体52の外面における上面53の反対側の外面を外底面57と表記する。本実施形態の主走査偏向器31では、上面53側を上側と表記し、外底面57側を下側と表記する。外底面57には、駆動装置36(図4参照)の駆動コイル38(図4参照)を配設するための外底面凹部57aが形成されている。
【0063】
筐体本体52の素子室54を囲む部分を、側壁52aと表記する。素子室54における底面54aと側壁52aとの角部には、素子室54側に膨出した支持部56が形成されている。底面54aと支持部56とに囲まれた素子室54の部分を、素子室凹部54bと表記する。素子室凹部54bは、略直方体形状の空間である。素子室54の平面形状は、支持枠44の外形形状と相似形であって、支持枠44の外形形状より僅かに大きくなっており、光偏向素子40を素子室54内に配置することができる。素子室54内に配置された光偏向素子40は、支持枠44が支持部56に当接して支持される(図4参照)。素子室凹部54bの平面形状は、光偏向素子40の支持枠開口45の平面形状と略相似形状であり、支持部56は、可動板41や弾性支持梁43に接触することなく、支持枠44を支持する。
封止蓋51を上面53に載せて、封止蓋51と上面53とを接合することによって、素子室54は封止される。反射鏡42に入射する光束は、封止蓋51を透過して入射し、反射鏡42によって反射された光束は、封止蓋51を透過して主走査偏向器31から射出される。
【0064】
筐体本体52は、例えば低温焼成のセラミックスで形成する。セラミックス材料の膜を形成し、焼結することを繰り返し、積層させることによって、筐体本体52を形成する。
【0065】
<主走査偏向器>
次に、主走査偏向器31について、図4を参照して説明する。図4は、主走査偏向器の構成を示す図である。図4(a)は、主走査偏向器を封止蓋側から見た平面図であり、図4(b)は、図4(a)にE−Eで示した断面における主走査偏向器の断面図であり、図4(c)は、図4(a)にF−Fで示した断面における主走査偏向器の断面図であり、図4(d)は、図4(a)にF−Fで示した断面における可動板が回動した状態を示す断面図である。
図4に示すように、主走査偏向器31は、光偏向素子40と、素子筐体50と、駆動装置36とを備えている。
【0066】
光偏向素子40は、支持枠44が素子筐体50の筐体本体52における支持部56に固定されることによって、筐体本体52に固定されている。光偏向素子40の可動板41と反射鏡42と可動板突起46と一対の弾性支持梁43,43とは、筐体本体52における素子室凹部54bの部分に位置しており、可動板41及び可動板41と一体に形成された反射鏡42及び可動板突起46とは回動可能である。
可動板41における反射鏡42が配設された可動板表面41Aの反対側の可動板裏面41Bには、駆動装置36の磁石37が固定されている。筐体本体52の外底面凹部57aには、駆動装置36の駆動コイル38が固定されている。駆動コイル38は、筐体本体52の底部を介して可動板41と略対向する位置に配設されている。駆動装置36が、駆動源に相当する。
【0067】
周期的に変化する電流(交流)が駆動コイル38に供給されることにより、駆動コイル38は上方(可動板41側)に向く磁界と、下方に向く磁界とを交互に発生させる。この磁界により、駆動コイル38に対し磁石37の両端(主走査偏向器31においては、回動軸Xから遠い位置に位置する両端)に位置する一対の磁極のうち一方の磁極が接近し他方の磁極が離間するような力が磁石37に作用する。磁石37が固定された可動板41は一対の弾性支持梁43,43が捩れ変形することによって回動可能であって、図4(d)に示すように、回動軸X回りに回動させられる。
【0068】
上記したように、光偏向素子40は、支持枠44が筐体本体52における支持部56に固定されることによって、筐体本体52に固定されている。封止蓋51は、蓋裏の接続面と筐体本体52の上面53とを接合することによって筐体本体52に固定されており、素子室54は封止蓋51によって封止されている。
封止蓋51の筐体本体52への接合は、封止蓋51及び筐体本体52を構成する材料によって適切な方法を選択するが、金属接合、共晶結合、又は陽極接合などの接合方法を用いて接合する。
【0069】
反射鏡42に向けて射出された光束L10は、そのほとんどが封止蓋51を透過して、反射鏡42に入射する。光束が封止蓋51に入射する際や封止蓋51から射出される際には、わずかに反射されて反射光束が発生するが、本実施形態では当該反射光束は省略して説明する。また、大気と、封止蓋51と、負圧状態にした場合の素子室54と、で屈折率が異なることによって、それぞれの境界において屈折が生ずるが、本実施形態では当該屈折は省略して説明する。
図4(d)に示したように、光束L10は直進して反射鏡42に入射する。反射鏡42に入射した光束L10が反射鏡42によって反射されて、光束L20が射出される。
可動板41は回動させられて、可動板411から可動板412の範囲で往復回動する。反射された光束は、光束L21から光束L22の範囲で走査される。
【0070】
<可動板の動たわみの例>
次に、可動板41が往復回動する際に発生する動たわみに対する可動板突起46の影響について、図5を参照して説明する。図5は、可動板の動たわみをシミュレーションした結果例を示す説明図である。
図5では、可動板41の動たわみの形状及び大きさのシミュレーション結果を、可動板突起46に相当する突起がない可動板410と比較して示している。可動板410は、可動板突起46が突設されていないことのみが可動板41と異なっている。
動たわみ形状は、可動板の中心を原点にして、回動軸Xの軸方向をx軸方向、回動軸Xに直交し可動板表面41Aに平行な方向をy軸方向、としたときの第一象限の動たわみを示している。可動板41又は可動板410が、第一象限が可動板裏面41B側に回動している場合の動たわみを、可動板が理論上の移動位置(剛体の場合の移動位置)からのずれ量として示している。
【0071】
図5に示すように、可動板41及び可動板410外周は、y軸の近くが可動板表面41A側にたわみ、x軸の近くが可動板裏面41B側にたわんでいる。この動たわみ形状は、先行技術文献として挙げた非特許文献1(Alexander Wolter、「Scanning 2D micromirror with enhanced flatness at high frequency」、Proceedings of SPIE 、USA、SPIE、23−JAN−2006、Vol.6114、61140L)に開示された動たわみ形状と定性的に一致する形状である。図5に示したシミュレーション結果の例では、最大動たわみ量は、可動板410が130nmであるのに対して、可動板41では、110nmに軽減されている。可動板41は、可動板突起46の部分も含めると、最大動たわみ量は120nmであるが、可動板突起46の部分には、反射手段が形成されておらず、光束の反射に関わる部分の最大動たわみは110nmである。
画像品質に影響を与えない動たわみが光束の光の波長の4分の1以下であるとすると、可動板41に可動板突起46を配設することで、可動板の動たわみの影響を受けない波長を80nm短くすることができる。すなわち、可動板の動たわみの影響を受けない波長の範囲を80nm広くすることができる。
【0072】
なお、可動板の動たわみの形状は、可動板の平面形状や厚さの分布や、回動周波数などによって異なるものであり、可動板突起の効果的な配設位置や形状は、具体的な可動板の形状などに対応して、シミュレーションや実験によって求めることが好ましい。
可動板突起46の長さは、可動板41の回動軸Xの軸方向の長さより長くなると、動たわみを抑制する効果が得られ難いことが、発明者らによるシミュレーションによって確認されている。
【0073】
<他の光偏向素子の例>
次に、光偏向素子40とは一部の構成が異なる光偏向素子60及び光偏向素子80について、図6を参照して説明する。図6は、光偏向素子の形状を示す図である。図6(a)は、光偏向素子の形状を示す平面図であり、図6(b)は、図6(a)にG−Gで示した断面における断面図である。図6(c)は、光偏向素子の形状を示す平面図であり、図6(d)は、図6(c)にH−Hで示した断面における断面図である。
【0074】
図6(a)及び図6(b)に示すように、光偏向素子60は、可動板41と、反射鏡42と、一対の弾性支持梁43,43と、支持枠44と、可動板突起66と、を備えている。可動板41と弾性支持梁43と支持枠44と可動板突起66とは、例えばシリコン基板をエッチングして形成され、一体に形成されている。
光偏向素子60が備える可動板41と反射鏡42と一対の弾性支持梁43,43と支持枠44とは、光偏向素子40が備える可動板41、反射鏡42、一対の弾性支持梁43,43、又は支持枠44と、実質的に同じものである。光偏向素子60は、可動板41に立設された可動板突起66が光偏向素子40における可動板突起46とは異なることが、光偏向素子40とは異なっている。
【0075】
可動板突起66は、可動板突起66aと、可動板突起66aより長さが短い可動板突起66bとの2種類があり、光偏向素子60は、4個の可動板突起66aと、4個の可動板突起66bとを備えている。
可動板突起66は、円形の平板である可動板41の側面に立設されている。円形平板形状の周方向における可動板突起66の立設位置は、弾性支持梁43の接続位置で区切られた略半円形状の周の頂部と、弾性支持梁43の接続位置との中間である。頂部と弾性支持梁43の接続位置との間の部分4個所のそれぞれに、1個の可動板突起66aと1個の可動板突起66bとが、配設されている。可動板突起66は、形状が四角柱であって、可動板41の厚さと略同じ厚さを有し、立設位置から弾性支持梁43と略平行に延在している。可動板突起66aの方が可動板突起66bより回動軸X1から離れた位置に配設されており、可動板41の側面から片持ち梁のように突出した可動板突起66a及び可動板突起66bの先端は、回動軸X1の軸方向において略同じ位置になっている。
【0076】
4個の可動板突起66aは、1個目の可動板突起66aに対して、2個目の可動板突起66aが、反射鏡42の面に垂直であって回動軸X1を含む面に関して対称な位置に在り、対称な形状を有している。4個の可動板突起66aの、3個目の可動板突起66aが、1個目の可動板突起66aに対して、回動軸X1に垂直であって可動板41の中心を通る面に関して対称な位置に在り、対称な形状を有しており、さらに4個目の可動板突起66aが、1個目の可動板突起66aに対して、回動軸X1に垂直であって可動板41の中心を通る直線に関して対称な位置に在り、対称な形状を有している。
4個の可動板突起66bは、1個目の可動板突起66bに対して、2個目の可動板突起66bが、反射鏡42の面に垂直であって回動軸X1を含む面に関して対称な位置に在り、対称な形状を有している。4個の可動板突起66bの、3個目の可動板突起66bが、1個目の可動板突起66bに対して、回動軸X1に垂直であって可動板41の中心を通る面に関して対称な位置に在り、対称な形状を有しており、さらに4個目の可動板突起66bが、1個目の可動板突起66bに対して、回動軸X1に垂直であって可動板41の中心を通る直線に関して対称な位置に在り、対称な形状を有している。
反射鏡42の面に垂直であって回動軸X1を含む面が第一平面に相当し、回動軸X1に垂直であって可動板41の中心を通る面が、第二平面に相当する。
【0077】
光偏向素子60は、例えばシリコン基板において、支持枠44の外周及び支持枠開口45の部分をエッチングして形成されており、可動板41と、弾性支持梁43と、支持枠44と、可動板突起66との一方の面はシリコン基板の一面であり、もう一方の面はシリコン基板のもう一方の一面であり、それぞれ略同一の平面である。
可動板41は、一対の弾性支持梁43,43が捩れ変形することによって、回動軸X1を軸に回動可能である。
一対の弾性支持梁43,43が回動軸X1を中心にして捩れ変形することによって、可動板41(反射鏡42)は、回動軸X1を中心にして回動する。光偏向素子60を備える主走査偏向器が投射型画像表示装置1と同様の投射型画像表示装置に組み込まれた状態で、図6(a)に示した回動軸X1は、図1に示した回動軸Xと同じものである。
【0078】
図6(c)及び図6(d)に示すように、光偏向素子80は、可動板41と、反射鏡42と、一対の弾性支持梁43,43と、支持枠44と、可動板突起86と、を備えている。可動板41と弾性支持梁43と支持枠44と可動板突起86とは、例えばシリコン基板をエッチングして形成され、一体に形成されている。
光偏向素子80が備える可動板41と反射鏡42と一対の弾性支持梁43,43と支持枠44とは、光偏向素子40が備える可動板41、反射鏡42、一対の弾性支持梁43,43、又は支持枠44と、実質的に同じものである。光偏向素子80は、可動板41に立設された可動板突起86が光偏向素子40における可動板突起46とは異なることが、光偏向素子40とは異なっている。
【0079】
可動板突起86は、可動板突起86aと、回動軸X2に垂直な断面における断面形状が、回動軸X2を含み可動板表面41Aに垂直な面に関して対称な形状である可動板突起86bとの2種類があり、光偏向素子80は、2個の可動板突起86aと、2個の可動板突起86bとを備えている。
可動板突起86は、円形の平板である可動板41の側面に立設されている。円形平板形状の周方向における可動板突起86の立設位置は、弾性支持梁43の接続位置で区切られた略半円形状の周の頂部と、弾性支持梁43の接続位置との中間である。頂部と弾性支持梁43の接続位置との間の部分4個所のそれぞれに、1個の可動板突起86a又は可動板突起86bが、配設されている。
可動板突起86は、形状が四角柱であって、可動板41の厚さと略同じ厚さを有し、立設位置から弾性支持梁43と略平行に延在している。
【0080】
四角柱である可動板突起86aを形成する側面を、突起表面861a、突起裏面862a、突起側面863a、突起側面864aと表記する。突起表面861aは、可動板41の可動板表面41Aと同一平面上に在り、突起裏面862aは、可動板41の可動板裏面41Bと同一平面上に在る。突起側面863aと突起側面864aとは、突起表面861aと突起裏面862aとを接続する面であり、互いに平行であり、回動軸X2の軸方向に平行であり、突起表面861a及び突起裏面862aに対して傾いている。
突起表面861a、突起裏面862a、突起側面863a、又は突起側面864aと、回動軸X2を含み可動板表面41Aに垂直な面に関して対称な、可動板突起86bを形成する側面を、突起表面861b、突起裏面862b、突起側面863b、突起側面864bと表記する。
【0081】
2個の可動板突起86aと、2個の可動板突起86bとは、1個目の可動板突起86aに対して、1個目の可動板突起86bが、反射鏡42の面に垂直であって回動軸X2を含む面に関して対称な位置に在り、対称な形状を有している。2個目の可動板突起86bが、1個目の可動板突起86aに対して、回動軸X2に垂直であって可動板41の中心を通る面に関して対称な位置に在り、対称な形状を有している。2個目の可動板突起86aは、1個目の可動板突起86aに対して、回動軸X2に垂直であって可動板41の中心を通る直線に関して対称な位置に在り、対称な形状を有している。
反射鏡42の面に垂直であって回動軸X2を含む面が第一平面に相当し、回動軸X2に垂直であって可動板41の中心を通る面が、第二平面に相当する。
【0082】
光偏向素子80は、例えばシリコン基板において、支持枠44の外周及び支持枠開口45の部分をエッチングして形成されており、可動板41と、弾性支持梁43と、支持枠44と、可動板突起86との一方の面はシリコン基板の一面であり、もう一方の面はシリコン基板のもう一方の一面であり、それぞれ略同一の平面である。これらの面は、例えば単結晶シリコンの(100)面で構成されている。突起側面863aと突起側面864aと突起側面863bと突起側面864bとは、単結晶シリコンの(111)面で構成されている。
【0083】
可動板41は、一対の弾性支持梁43,43が捩れ変形することによって、回動軸X2を軸に回動可能である。
一対の弾性支持梁43,43が回動軸X2を中心にして捩れ変形することによって、可動板41(反射鏡42)は、回動軸X2を中心にして回動する。光偏向素子80を備える主走査偏向器が投射型画像表示装置1と同様の投射型画像表示装置に組み込まれた状態で、図6(c)に示した回動軸X2は、図1に示した回動軸Xと同じものである。
【0084】
<印刷装置>
次に、投射型画像表示装置とは異なる、光偏向器を備える画像形成装置としての印刷装置101について、図7及び図8を参照して説明する。本実施形態で説明する印刷装置101は、電子写真方式を採用する印刷装置である。図7は、印刷装置の全体構成を模式的に示す断面図である。図8は、印刷装置が備える露光ユニットの概略構成を示す説明図である。
【0085】
印刷装置101は、露光・現像・転写・定着を含む一連の画像形成プロセスによって、トナーからなる画像を紙やOHPシートなどの記録媒体に記録するものである。
図7に示すように、印刷装置101は、感光体111と、帯電ユニット112と、露光ユニット110と、現像ユニット114と、転写ユニット115と、クリーニングユニット116と、からなる画像形成ユニットを備えている。印刷を実施する際には、図7に矢印aで示した方向に感光体111が回転する。帯電ユニット112と、露光ユニット110と、現像ユニット114と、転写ユニット115と、クリーニングユニット116とは、感光体111の回転方向に沿ってこの順番で、感光体111の周囲に配設されている。
印刷装置101は、また、紙などの記録媒体Pを収容する給紙トレイ117と、定着装置118とを備えている。給紙トレイ117は画像形成ユニットの一方の側(図7では、画像形成ユニットの図における下側)に配設されており、定着装置118は画像形成ユニットを挟んで給紙トレイ117の略反対側(図7では、画像形成ユニットの図における上側)に配設されている。
【0086】
画像形成ユニットでは、帯電ユニット112によって、感光体111が帯電され、露光ユニット110によって潜像が形成され、現像ユニット114によってトナーで現像され、現像された画像が転写ユニット115に転写される。
より詳細には、まず、図示しないホストコンピューターからの指令により、感光体111、現像ユニット114に設けられた現像ローラー(図示省略)、及び転写ユニット115の中間転写ベルト151が回転を開始する。感光体111は、回転しながら、帯電ユニット112に対向する部分が帯電ユニット112により順次帯電される。
感光体111の帯電された領域は、感光体111の回転に伴って露光位置に至り、露光ユニット110によって、第1色目、例えばイエローYの画像情報に応じた潜像が前記領域に形成される。
【0087】
感光体111上に形成された潜像は、感光体111の回転に伴って、現像ユニット114に対向する現像位置に至り、イエロー現像のための現像装置、例えば現像装置144によってイエロートナーで現像される。イエロートナーで現像されることによって、感光体111上にイエロートナー像が形成される。
現像ユニット114は、軸146を軸に回転する保持体145と、現像装置141、現像装置142、現像装置143、及び現像装置144と、を備えている。現像装置141、現像装置142、現像装置143、及び現像装置144は、保持体145に保持されており、軸146のまわりに回転可能である。保持体145が回転して、例えばイエロートナーで現像する場合の現像装置144のように、現像する色に対応した現像装置141、現像装置142、現像装置143、又は現像装置144が、感光体111と対向する位置に位置される。
【0088】
感光体111上に形成されたイエロートナー像などの像は、感光体111の回転に伴って、感光体111が転写ユニット115の一次転写ローラー152と対向している一次転写位置に至る。このとき、一次転写ローラー152には、トナーの帯電極性とは逆の極性の一次転写電圧(一次転写バイアス)が印加される。一次転写電圧が印加された一次転写ローラー152によって、感光体111上に形成されたイエロートナー像などの像が中間転写ベルト151に転写(一次転写)される。中間転写ベルト151は、駆動ローラー154を回転させることで一次転写ローラー152および従動ローラー153を従動回転させながら回転する。なお、この間、二次転写ローラー155は、中間転写ベルト151から離間している。
【0089】
潜像の形成、現像、及び一次転写と同様の処理が、他の色(本実施形態では、第2色目、第3色目、及び第4色目)について繰り返して実行されることにより、各画像信号に対応した各色のトナー像が、中間転写ベルト151に重なり合って転写される。これにより、中間転写ベルト151上にはフルカラートナー像が形成される。
記録媒体Pは、給紙トレイ117から、給紙ローラー171及びレジローラー172によって、二次転写ローラー155と駆動ローラー154とが、中間転写ベルト151を間に挟んで対向している二次転写位置へ搬送される。
【0090】
中間転写ベルト151上に形成されたフルカラートナー像は、中間転写ベルト151の回転に伴って二次転写位置に至る。このとき、二次転写ローラー155は中間転写ベルト151に押圧されるとともに二次転写電圧(二次転写バイアス)が印加されている。二次転写位置に至った記録媒体P及び中間転写ベルト151におけるフルカラートナー像が形成された部分は、二次転写ローラー155と駆動ローラー154とに挟まれて互いに凹圧され、二次転写電圧が印加された二次転写ローラー155によって、フルカラートナー像が記録媒体Pに転写(二次転写)される。
【0091】
記録媒体Pに転写されたフルカラートナー像は、定着装置118によって加熱および加圧されて記録媒体Pに融着される。その後、片面プリントの場合には、記録媒体Pは、排紙ローラー対173によって露光ユニット110の外部へ排出される。
一方、感光体111は一次転写位置を経過した後に、クリーニングユニット116のクリーニングブレード161によって、その表面に付着しているトナーが掻き落とされ、次の潜像を形成するための帯電に備える。掻き落とされたトナーは、クリーニングユニット116内の残存トナー回収部に回収される。
【0092】
両面プリントの場合には、定着装置118によって一方の面に定着処理された記録媒体Pを一旦排紙ローラー対173により挟持した後に、排紙ローラー対173を反転駆動するとともに、搬送ローラー174及び搬送ローラー176からなる搬送ローラー対を駆動して、当該記録媒体Pを搬送路175を通じて表裏反転して二次転写位置へ帰還させ、前述と同様の動作により、記録媒体Pの他方の面に画像を形成する。
【0093】
印刷装置101が備える露光ユニット110は、図示省略したパーソナルコンピューターなどのホストコンピューターから画像情報及び画像形成指令を受け、一様に帯電された感光体111上に、レーザー光を選択的に照射することによって、画像情報に対応する静電的な潜像を形成する装置である。
図8に示すように、露光ユニット110は、光偏向器に相当するアクチュエーター103と、レーザー光源121と、コリメータレンズ122と、fθレンズ123とを備えている。アクチュエーター103は、回動軸X0まわりに回動可能な可動板241と、可動板241上に形成された反射鏡242とを有している。
【0094】
露光ユニット110にあっては、レーザー光源121からコリメータレンズ122を介してアクチュエーター103の反射鏡242にレーザー光L0が照射される。照射されたレーザー光L0は、反射鏡242で反射されて、fθレンズ123を介して感光体111上に照射される。
その際、アクチュエーター103が駆動されて、可動板241が回動軸X0まわりに回動することにより、可動板241上に形成された反射鏡242で反射されたレーザー光L0は、感光体111の軸線方向に走査(主走査)される。同時に、感光体111が回転することにより、反射鏡242で反射されたレーザー光L0は、感光体111の周方向に走査(副走査)される。レーザー光L0が感光体111上を主走査方向及び副走査方向に走査されることによって、感光体111上に面状の画像が形成される。レーザー光源121が、光源に相当する。アクチュエーター103が、光偏向器に相当し、反射鏡242が、反射手段に相当する。
【0095】
レーザー光源121から射出されるレーザー光L0の強度は、図示しないホストコンピューターから受けた画像情報に応じて変化する。感光体111に照射されるレーザー光L0の強度によって、照射された部分におけるトナー像の濃度が定まり、同じ部分における各色の濃度の組み合わせによって、当該部分の色調や濃度が定まる。
このようにして露光ユニット110は、感光体111上を選択的に露光して画像形成(描画)を行う。
【0096】
以下、実施形態による効果を記載する。本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)光偏向素子40、光偏向素子60、及び光偏向素子80は、板状の形状を有する可動板41の側面に立設された可動板突起46、可動板突起66、又は可動板突起86を備えている。シミュレーション結果によれば、可動板突起46、可動板突起66、又は可動板突起86を設けることによって、可動板41の動たわみの量を軽減することができる。
【0097】
(2)光偏向素子60は、可動板41の側面に立設された8個の可動板突起66を備えている。8個の可動板突起66を備えることで、可動板突起を4個備える光偏向素子にくらべて、可動板突起の配設位置や可動板突起の形状や大きさなどを変えられる範囲が広くなるため、動たわみの軽減効果が大きい可動板突起の配設位置や可動板突起の形状を実現し易くすることができる。
【0098】
(3)光偏向素子80が備える可動板突起86は、突起表面861a又は突起表面861bに対して傾いた突起側面863a及び突起側面864a、又は突起側面863b及び突起側面864bを備えている。側面が傾いた面であることによって、例えば、突起表面861aを単結晶シリコンの(100)面で構成し、突起側面863aと突起側面864aと突起側面863bと突起側面864bとは、単結晶シリコンの(111)面で構成することができる。これにより、可動板突起の外面を容易に滑らかにすることができると共に、形状を正確に形成することができる。
【0099】
(4)光偏向素子40において、可動板41と、弾性支持梁43と、支持枠44と、可動板突起46との一方の面と、もう一方の面とは、それぞれ略同一の平面である。これにより、可動板41と弾性支持梁43、又は可動板41と可動板突起46の接続部分において、段差部分の隅の部分における応力集中に起因して、応力によるたわみが発生し、当該たわみによって可動板41の動たわみが大きくなることを抑制することができる。
【0100】
(5)4個の可動板突起46は、反射鏡42の面に垂直であって回動軸Xを含む面の両側にそれぞれ2個が配設されており、それぞれ2個の可動板突起46は、当該面に関して互いに対称な位置に立設されている。反射鏡42の面に垂直であって回動軸Xを含む面に関して対称な位置に可動板突起46を配設することによって、可動板41における可動板突起46による動たわみの抑制効果が及ぶ位置を当該平面に関して対称にして、動たわみを含めた可動板41の形状を、当該平面に関して対称な形状で維持し易くすることができる。
【0101】
(6)4個の可動板突起46は、反射鏡42の面に垂直であって回動軸Xを含む面の両側にそれぞれ2個が配設されている。それぞれ2個の可動板突起46は、当該面に関して互いに対称な位置に立設されており、当該面に関して互いに対称な形状を有している。反射鏡42の面に垂直であって回動軸Xを含む面に関して対称な位置に可動板突起46を配設し、可動板突起46は当該面に関して互いに対称な形状を有していることによって、可動板41における可動板突起46による動たわみの抑制効果が及ぶ状態を当該平面に関して対称にして、動たわみを含めた可動板41の形状を、当該平面に関して対称な形状で維持し易くすることができる。
【0102】
(7)4個の可動板突起46は、回動軸Xに垂直であって可動板41の中心を通る面の両側にそれぞれ2個が配設されており、それぞれ2個の可動板突起46は、当該面に関して互いに対称な位置に立設されている。回動軸Xに垂直であって可動板41の中心を通る面に関して対称な位置に可動板突起46を配設することによって、可動板41における可動板突起46による動たわみの抑制効果が及ぶ位置を当該平面に関して対称にして、動たわみを含めた可動板41の形状を、当該平面に関して対称な形状で維持し易くすることができる。
【0103】
(8)4個の可動板突起46は、回動軸Xに垂直であって可動板41の中心を通る面の両側にそれぞれ2個が配設されている。それぞれ2個の可動板突起46は、当該面に関して互いに対称な位置に立設されており、当該面に関して互いに対称な形状を有している。回動軸Xに垂直であって可動板41の中心を通る面に関して対称な位置に可動板突起46を配設し、可動板突起46は当該面に関して互いに対称な形状を有していることによって、可動板41における可動板突起46による動たわみの抑制効果が及ぶ状態を当該平面に関して対称にして、動たわみを含めた可動板41の形状を、当該平面に関して対称な形状で維持し易くすることができる。
【0104】
(9)可動板41と弾性支持梁43と支持枠44と可動板突起46とは、例えばシリコン基板をエッチングして形成され、一体に形成されている。可動板41と可動板突起46とを一体に形成することで、可動板41に可動板突起46を組み込む工程をなくすることができる。また、組み込み工程における組み込み誤差を排除して、可動板41に対する可動板突起46の位置精度が損なわれることを抑制することができる。
【0105】
(10)可動板41と弾性支持梁43と支持枠44と可動板突起46とは、例えばシリコン基板をエッチングして形成され、一体に形成されている。可動板41と弾性支持梁43とをシリコン基板をエッチングすることで略同時に形成することができる。可動板41と弾性支持梁43とを一体に形成できることで、可動板41と弾性支持梁43との組み立て工程を不要にすることができるとともに、接合部分において強度低下などが生ずることを抑制することができる。
【0106】
以上、添付図面を参照しながら好適な実施形態について説明したが、好適な実施形態は、前記実施形態に限らない。実施形態は、要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論であり、以下のように実施することもできる。
【0107】
(変形例1)前記実施形態においては、可動板41は、円形の平板形状であったが、可動板が円形であることは必須ではない。可動板の平板形状は、長円形状や、楕円形状や、多角形形状や、多角形の角部の一部又は全部が円弧となった形状などの形状、であってもよい。
【0108】
(変形例2)前記実施形態においては、可動板41は、円形の平板形状であって、反射鏡42の面に垂直であって回動軸Xを含む面、及び反射鏡42の面に垂直であって回動軸Xの軸方向における可動板41の中心位置を含む面に関して対称形状であったが、可動板がこれらの面に関して対称形状であることは必須ではない。可動板は、高速の往復回動の実施が可能であり、反射手段や、駆動源の構成部材などを配設可能であれば、上記2面のいずれか、又は両方に関して非対称の形状であってもよい。
【0109】
(変形例3)前記実施形態においては、可動板突起46、可動板突起66、及び可動板突起86は、4個又は8個の可動板突起46、可動板突起66、又は可動板突起86が、反射鏡42の面に垂直であって回動軸Xなどの回動軸を含む面、及び反射鏡42の面に垂直であって回動軸Xなどの回動軸の軸方向における可動板41の中心位置を含む面に関して対称な位置に配設されていた。しかし、可動板突起がこれらの面に関して対称な位置に配設されていることは必須ではない。可動板突起の配設位置は、可動板の動たわみを抑制できる位置であれば、上記2面のいずれか、又は両方に関して非対称の位置であってもよい。可動板の動たわみを抑制するために適切な位置を、シミュレーションや実験などによって求めることが好ましい。
【0110】
(変形例4)前記実施形態においては、可動板突起46、可動板突起66、及び可動板突起86は、反射鏡42の面に垂直であって回動軸Xなどの回動軸を含む面、及び反射鏡42の面に垂直であって回動軸Xなどの回動軸の軸方向における可動板41の中心位置を含む面に関して互いに対称な形状を有する4個又は8個の可動板突起46、可動板突起66、又は可動板突起86が配設されていた。しかし、複数の可動板突起のそれぞれがこれらの面に関して互いに対称な形状を有することは必須ではない。可動板突起の形状は、可動板の動たわみを抑制できる形状であれば、上記2面のいずれか、又は両方に関して非対称の形状であってもよい。可動板の動たわみを抑制するために適切な形状を、シミュレーションや実験などによって求めることが好ましい。
【0111】
(変形例5)前記実施形態においては、可動板突起66や可動板突起86の長さについては特に規定していない。しかし、可動板突起46や可動板突起86と同様の形状を有する可動板突起を備える光偏向素子に関するシミュレーション結果によれば、可動板突起の長さが可動板の回動軸の軸方向の長さより長くなると、動たわみを抑制する効果が得られ難いことが、発明者らによるシミュレーションによって確認されている。したがって、可動板突起の長さは、可動板の回動軸の軸方向の長さ以下であることが好ましい。
【0112】
(変形例6)前記実施形態においては、光偏向素子40及び光偏向素子80はそれぞれ4個の可動板突起46又は可動板突起86を備え、光偏向素子60は8個の可動板突起66を備えていたが、光偏向素子が備える可動板突起は4個又は8個に限らない。可動板の動たわみを抑制するための適切な配設位置及び形状を設定できれば、光偏向素子が備える可動板突起の数は何個であってもよい。
【0113】
(変形例7)前記実施形態においては、可動板突起46、可動板突起66、又は可動板突起86と、可動板41と、の一方の面はシリコン基板の一面であり、もう一方の面はシリコン基板のもう一方の一面であり、それぞれ略同一の平面であった。しかし、可動板突起の一面が可動板の一面と同一面であり、反対側の一面も可動板の反対側の一面と同一面であることは必須ではない。可動板突起の外形の面は、可動板の面と段差がある面であってもよいし、回動軸の軸方向において可動板の面に対して傾いた面であってもよい。
【0114】
(変形例8)前記実施形態においては、可動板41と、弾性支持梁43との一方の面はシリコン基板の一面であり、もう一方の面はシリコン基板のもう一方の一面であり、それぞれ略同一の平面であった。しかし、弾性支持梁の表裏の面が可動板の表裏の面と同一平面であることは必須ではない。弾性支持梁の表裏の面の何れか一方又は両方が、可動板の表裏の面と同一平面ではない構成であってもよい。
【0115】
(変形例9)前記実施形態においては、副走査偏向器32は、ガルバノミラーにより構成されていたが、副走査偏向器32のように使用される光偏向器にも、主走査偏向器31のような光偏向素子を用いた光偏向器を採用できる。
【0116】
(変形例10)前記実施形態においては、支持枠44は、略方形の板の内側に支持枠開口45が形成された額縁状の形状を有していたが、支持枠44などの支持枠が額縁状の形状であることは必須ではない。弾性支持梁を支持することができる充分な強度を実現できれば、支持枠の形状はどのような形状であってもよい。
【符号の説明】
【0117】
1…投射型画像表示装置、2…光源ユニット、3…光走査ユニット、31…主走査偏向器、36…駆動装置、37…磁石、38…駆動コイル、40…光偏向素子、41…可動板、41A…可動板表面、41B…可動板裏面、42…反射鏡、43…弾性支持梁、44…支持枠、46…可動板突起、50…素子筐体、51…封止蓋、52…筐体本体、60…光偏向素子、66,66a,66b…可動板突起、80…光偏向素子、86,86a,86b…可動板突起、101…印刷装置、103…アクチュエーター、121…レーザー光源、241…可動板、242…反射鏡、410…可動板、411,412…可動板、861a,861b…突起表面、862a,862b…突起裏面、863a,863b,864a,864b…突起側面、X,X1,X2…回動軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光束が反射される反射面が形成された反射手段が固定されており板状の形状を有する可動板と、
一端が前記可動板の端面に接続されており、前記可動板を前記反射面に平行な回動軸回りに回動可能に支持する弾性支持梁と、
前記弾性支持梁の前記一端の反対側の一端が接続されており、前記弾性支持梁を支持する支持枠と、
前記可動板の側面から前記反射面に平行な方向に突出し、前記回動軸に垂直な方向において前記可動板の先端より前記回動軸に近い範囲に配設された可動板突起と、を備えることを特徴とする光偏向素子。
【請求項2】
前記可動板は、前記回動軸を含み前記反射面に垂直な第一平面に関して対称な形状を有し、
複数の前記可動板突起が、前記第一平面に関して対称な位置に配設されていることを特徴とする、請求項1に記載の光偏向素子。
【請求項3】
前記第一平面に関して互いに対称な位置に配設されている前記可動板突起のそれぞれは、前記第一平面に関して互いに対称な形状を有することを特徴とする、請求項2に記載の光偏向素子。
【請求項4】
前記可動板は、前記回動軸に垂直な第二平面に関して対称な形状を有し、
複数の前記可動板突起が、前記第二平面に関して対称な位置に配設されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光偏向素子。
【請求項5】
前記第二平面に関して互いに対称な位置に配設されている前記可動板突起のそれぞれは、前記第二平面に関して互いに対称な形状を有することを特徴とする、請求項4に記載の光偏向素子。
【請求項6】
前記回動軸の軸方向における前記可動板突起の長さは、前記回動軸の軸方向における前記可動板の長さ以下であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光偏向素子。
【請求項7】
前記可動板と前記可動板突起とは、一体に形成されていることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光偏向素子。
【請求項8】
前記可動板、及び前記弾性支持梁は、単結晶シリコンで一体に形成されていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の光偏向素子。
【請求項9】
前記可動板における前記反射手段が形成された表面と、前記可動板突起における前記表面と同じ側の面と、が略同一平面上に形成されていると共に、前記可動板における前記表面の反対側の裏面と、前記可動板突起における前記裏面と同じ側の面と、が略同一平面上に形成されていることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光偏向素子。
【請求項10】
光束が反射される反射面が形成された反射手段が固定されており板状の形状を有する可動板と、一端が前記可動板の端面に接続されており、前記可動板を前記反射面に平行な回動軸回りに回動可能に支持する弾性支持梁と、前記弾性支持梁の前記一端の反対側の一端が接続されており、前記弾性支持梁を支持する支持枠と、を備える光偏向素子と、
前記可動板を前記回動させる駆動源と、を備え、
前記光偏向素子は、前記可動板の側面から前記反射面に平行な方向に突出し、前記回動軸に垂直な方向において前記可動板の先端より前記回動軸に近い範囲に配設された可動板突起をさらに備えることを特徴とする光偏向器。
【請求項11】
前記可動板は、前記回動軸を含み前記反射面に垂直な第一平面に関して対称な形状を有し、
複数の前記可動板突起が、前記第一平面に関して対称な位置に配設されていることを特徴とする、請求項10に記載の光偏向器。
【請求項12】
前記第一平面に関して互いに対称な位置に配設されている前記可動板突起のそれぞれは、前記第一平面に関して互いに対称な形状を有することを特徴とする、請求項11に記載の光偏向器。
【請求項13】
前記可動板は、前記回動軸に垂直な第二平面に関して対称な形状を有し、
複数の前記可動板突起が、前記第二平面に関して対称な位置に配設されていることを特徴とする、請求項10乃至12のいずれか一項に記載の光偏向器。
【請求項14】
前記第二平面に関して互いに対称な位置に配設されている前記可動板突起のそれぞれは、前記第二平面に関して互いに対称な形状を有することを特徴とする、請求項13に記載の光偏向器。
【請求項15】
前記回動軸の軸方向における前記可動板突起の長さは、前記回動軸の軸方向における前記可動板の長さ以下であることを特徴とする、請求項10乃至14のいずれか一項に記載の光偏向器。
【請求項16】
前記可動板と前記可動板突起とは、一体に形成されていることを特徴とする、請求項10乃至15のいずれか一項に記載の光偏向器。
【請求項17】
前記可動板、及び前記弾性支持梁は、単結晶シリコンで一体に形成されていることを特徴とする、請求項10乃至16のいずれか一項に記載の光偏向器。
【請求項18】
前記可動板における前記反射手段が形成された表面と、前記可動板突起における前記表面と同じ側の面と、が略同一平面上に形成されていると共に、前記可動板における前記表面の反対側の裏面と、前記可動板突起における前記裏面と同じ側の面と、が略同一平面上に形成されていることを特徴とする、請求項10乃至17のいずれか一項に記載の光偏向器。
【請求項19】
光源と、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の光偏向素子を備える光偏向器、又は請求項10乃至18のいずれか一項に記載の光偏向器と、を備え、
前記光源から射出された光束を、前記光偏向素子を備える光偏向器又は前記光偏向器によって偏向させることで画像を形成することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−95290(P2011−95290A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246205(P2009−246205)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】