説明

光偏向装置

【課題】 静電駆動式の光偏向装置において、可動部を支持する支持部材の剛性を低下させることが可能な技術を提供する。
【解決手段】 本発明は基部に設けられた固定電極と可動部に設けられた可動電極の間に電圧を印加することで可動部を揺動させて、可動部に設けられたミラーを揺動させる光偏向装置として具現化される。可動部は第1支持部材と第2支持部材によって支持されている。第1支持部材は絶縁体のみから構成されている。第2支持部材は導体とその周囲を覆う絶縁体から構成されている。その光偏向装置は、第2支持部材が第1支持部材に比べて長く形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基部に設けられた固定電極と可動部に設けられた可動電極の間に電圧を印加することで可動部を揺動させて、可動部に設けられたミラーを揺動させる光偏向装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基部と可動部を備えており、可動部が基部に対して揺動可能となっている光偏向装置が開発されている。可動部の上面にはミラーが設けられており、可動部を基部に対して揺動させることによって、ミラーを所定の角度に傾けることができる。静電駆動式の光偏向装置では、可動部に設けられた可動電極と、可動電極と対向する位置で基部に設けられた固定電極との間に駆動電圧を印加し、両電極間に作用する静電引力によって可動部の一部を基部側に向けて吸引することによって、可動部を揺動させる。
【0003】
特許文献1には、可動部の両側をビームによって支持する構成の静電駆動式の光偏向装置が開示されている。この技術では、基部の固定電極と可動部の可動電極の間に駆動電圧を印加することで、可動部を揺動させるトルクが作用し、可動部を支持するビームがねじれ変形して、可動部が揺動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−12574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような光偏向装置では、可動部を支持する支持部材の剛性が低いほど、小さな駆動電圧で可動部を大きく揺動させることができる。支持部材の剛性を下げるためには、支持部材を長く形成するか、あるいは支持部材の断面形状を小さくする必要がある。支持部材を長く形成すると、可動部の基部に対する沈み込みが大きくなってしまい、可動部の揺動に悪影響を及ぼしてしまう。従って、支持部材はそれほど長くすることなく、支持部材の断面形状を小さくすることで、支持部材の剛性を下げることが好ましい。
【0006】
従来の光偏向装置では、支持部材は可動部を機械的に支持する役割だけでなく、可動部の可動電極との導通を確保する電気的な配線としての役割も担っている。このため、多くの場合、支持部材は導体とその周囲を覆う絶縁体から構成されている。支持部材をこのような構成とすると、断面形状を小さくするにも限界があり、支持部材の剛性を低下させることが困難であった。
【0007】
本願は上記課題を解決する。本願は、静電駆動式の光偏向装置において、可動部を支持する支持部材の剛性を低下させることが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は基部に設けられた固定電極と可動部に設けられた可動電極の間に電圧を印加することで可動部を揺動させて、可動部に設けられたミラーを揺動させる光偏向装置として具現化される。可動部は第1支持部材と第2支持部材によって支持されている。第1支持部材は絶縁体のみから構成されている。第2支持部材は導体とその周囲を覆う絶縁体から構成されている。その光偏向装置は、第2支持部材が第1支持部材に比べて長く形成されていることを特徴とする。
【0009】
この光偏向装置では、第1支持部材と第2支持部材の2種類の支持部材によって可動部が支持されている。この光偏向装置では、第2支持部材が第1支持部材よりも長く形成されており、可動部の揺動や沈み込みに対しては、第1支持部材の剛性の影響が支配的となり、第2支持部材の剛性はほとんど影響しない。また、可動部の可動電極との導通は第2支持部材の導体によって確保されているから、第1支持部材は絶縁体のみから構成することができ、第1支持部材の断面形状を従来よりも小さくすることが可能である。この光偏向装置によれば、第1支持部材を長く形成することなく、第1支持部材の断面形状を小さくすることで、第1支持部材の剛性を低下させることができる。可動部の揺動に対して支配的な影響を有する第1支持部材の剛性を低下させることで、小さな駆動電力で可動部を揺動させることができ、消費電力を抑制することができる。あるいは、同じ駆動電圧で、光偏向装置の応答性を高めることができる。
【0010】
上記の光偏向装置では、前記第2支持部材が可動部の外側に配置されていることが好ましい。
【0011】
この光偏向装置によれば、可動部の外側に存在するスペースを利用して、第1支持部材に比べて長い第2支持部材を容易に形成することができる。
【0012】
上記の光偏向装置では、前記可動部が枠形状に形成されており、前記第1支持部材が可動部の内側に配置されていることが好ましい。
【0013】
上記のように、第1支持部材と第2支持部材という2種類の支持部材を用いる場合、第1支持部材は短く形成される。従って、可動部が枠形状に形成されている場合には、可動部の内側の小さなスペースを利用して第1支持部材を配置することができる。このような配置を採用することによって、光偏向装置全体の大きさを小さくすることができる。
【0014】
上記の光偏向装置では、前記可動部に設けられたミラーが、可動部と、第1支持部材と、第2支持部材を覆う大きさの平板ミラーであることが好ましい。
【0015】
上記のような平板ミラーを可動部に設けておくことで、光偏向装置全体の面積に対する光の反射面積の割合を高めて、光の反射効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、静電駆動式の光偏向装置において、可動部を支持する支持部材の剛性を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1の光偏向装置10の平面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】実施例1の光偏向装置10の製造方法を説明する図である。
【図5】実施例1の光偏向装置10の製造方法を説明する図である。
【図6】実施例1の光偏向装置10の製造方法を説明する図である。
【図7】実施例1の光偏向装置10の製造方法を説明する図である。
【図8】実施例1の光偏向装置10の製造方法を説明する図である。
【図9】実施例1の光偏向装置10の製造方法を説明する図である。
【図10】実施例1の光偏向装置10の製造方法を説明する図である。
【図11】実施例1の光偏向装置10の製造方法を説明する図である。
【図12】実施例1の光偏向装置10の製造方法を説明する図である。
【図13】実施例1の光偏向装置10の製造方法を説明する図である。
【図14】実施例1の光偏向装置10の製造方法を説明する図である。
【図15】実施例1の光偏向装置10の製造方法を説明する図である。
【図16】実施例2の光偏向装置20の平面図である。
【図17】実施例3の光偏向装置30の平面図である。
【図18】実施例4の光偏向装置40の平面図である。
【図19】実施例5の光偏向装置50の平面図である。
【図20】実施例6の光偏向装置60の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る好ましい実施形態は、例えば、下記に列挙する特徴を備えた実施例によって具現化される。
(特徴1)第1支持部材は、基部から伸びる第1支持柱と可動部の間を接続している。
(特徴2)第2支持部材は、基部から伸びる第2支持柱と可動部の間を接続している。
【実施例1】
【0019】
実施例1に係る光偏向装置について説明する。図1は、光偏向装置10の平面図であり、図2は図1のII−II線断面図であり、図3は図1のIII−III線断面図である。図2および図3に示すように、光偏向装置10は、半導体ウェハ150の上方に、基板下層100と、基板上層200と、ミラー層300が順に積層された三層構造を有している。後述するように、光偏向装置10は半導体製造プロセスを利用して製造される。なお、図1では図の明瞭化のために、ミラー層300の図示を省略している。
【0020】
基板上層200には、可動部202が形成されている。図1に示すように、可動部202は矩形の枠形状に形成されている。可動部202の内側には、基板下層100から上方に向けて伸びる第1支持柱102が設けられている。可動部202は一対の第1ビーム204、206を介して第1支持柱102に支持されている。また、可動部202の外側には、基板下層100から上方に向けて伸びる第2支持柱104が設けられている。可動部202は第2ビーム208を介して第2支持柱104に支持されている。第1ビーム204、206および第2ビーム208によって、可動部202は基板下層100から離反した高さで支持されている。
【0021】
図1に示すように、第1ビーム204、206および第2ビーム208は、何れも細長い形状に形成されており、可動部202の揺動軸Cに沿って配置されている。可動部202に揺動軸C周りのトルクが作用すると、可動部202を支持する第1ビーム204、206および第2ビーム208がねじれ変形して、可動部202は揺動軸Cの周りを揺動する。
【0022】
図2および図3に示すように、可動部202は、可動電極210と、可動電極210の周囲に形成された絶縁層212、214から構成されている。絶縁層212の上面に可動電極210が形成されており、可動電極210の上面および側面に絶縁層214が形成されている。第1ビーム204は絶縁層216のみから構成されており、第1ビーム206は絶縁層218のみから構成されている。絶縁層216、218は、それぞれ可動部202の絶縁層212および第1支持柱102の側面に形成された絶縁層106に連続している。第2ビーム208は、可動部202の可動電極210と導通する導電層220と、導電層220の周囲に形成された絶縁層222、224を備えている。絶縁層222の上面に導電層220が形成されており、導電層220の上面および側面に絶縁層224が形成されている。導電層220は、可動部202の可動電極210および第2支持柱104の内部に形成された導電層108に連続している。絶縁層222は、可動部202の絶縁層212および第2支持柱104の側面に形成された絶縁層110に連続している。絶縁層224は、可動部202の絶縁層214および第2支持柱104の上面に形成された絶縁層112に連続している。
【0023】
図1および図3に示すように、基板下層100には一対の固定電極114、116が形成されている。固定電極114、116は第1支持柱102を間に挟んで対称な位置に配置されている。固定電極114は、可動部202の一方の長辺枠部(図1の上方、図3の左方の長辺枠部)と対向するように配置されており、固定電極116は、可動部202の他方の長辺枠部(図1の下方、図3の右方の長辺枠部)と対向するように配置されている。固定電極114、116はその上面が絶縁層118によって覆われている。固定電極114は基板下層100の表面に露出して形成された端子電極120と導通しており、固定電極116は基板下層100の表面に露出して形成された端子電極122と導通している。端子電極120、122は、基板下層100の表面に露出して形成されている。さらに、図1および図2に示すように、基板下層100には導電層124が形成されている。導電層124は第2支持柱104の内部の導電層108と、基板下層100の表面に露出して形成された端子電極126の間を導通している。導電層124はその上面が絶縁層118によって覆われている。固定電極114、116、導電層124は、互いに絶縁されている。
【0024】
図2および図3に示すように、ミラー層300にはミラー302が形成されている。ミラー302は第1支持柱102、第2支持柱104、可動部202、第1ビーム204、206、第2ビーム208等を覆い隠す大きさの平板上に形成されている。ミラー302は、可動部202から上方に向けて伸びる支持脚304、306によって支持されている。支持脚304は、第1ビーム204の可動部202への接続部の近傍に配置されており、支持脚306は、第1ビーム206の可動部202への接続部の近傍に配置されている。
【0025】
光偏向装置10は、静電駆動式であり、固定電極114に印加する駆動電圧と固定電極116に印加する駆動電圧とを制御することによって、可動部202を揺動軸Cの周りに揺動させて、ミラー302を揺動させる。端子電極120、122を駆動信号生成器等に接続することによって、固定電極114、116に印加する駆動電圧等を制御することができる。
【0026】
例えば、可動電極210に導通する端子電極126を接地し、固定電極114、116に導通する端子電極120、122をそれぞれ駆動信号生成器(図示しない)に接続する。駆動信号生成器を用いて、端子電極120に駆動電圧を印加すると、接地されている可動電極210と固定電極114との間に静電引力が発生し、可動部202の固定電極114に対向する長辺枠部(図1の上方、図3の左方の長辺枠部)が基板下層100側に吸引される。逆に、端子電極122に駆動電圧を印加すると、接地されている可動電極210と固定電極116との間に静電引力が発生し、可動部202の固定電極116に対向する長辺枠部(図1の下方、図3の右方の長辺枠部)が基板下層100側に吸引される。これにより、可動部202を揺動軸C周りで揺動することができる。可動部202が揺動することで、支持脚304、306によって可動部202に支持されているミラー302も揺動する。
【0027】
図1に示すように、可動部202を支持している第1ビーム204、206と第2ビーム208を比較すると、第2ビーム208は第1ビーム204、206に比べて非常に長く形成されている。従って、可動部202が揺動する際には、第1ビーム204、206の剛性が支配的な影響を及ぼし、第2ビーム208の剛性はほとんど影響を及ぼさない。従って、第1ビーム204、206の断面形状を小さくすることで、第1ビーム204、206の剛性を下げることができる。これによって、小さな駆動電力で可動部202を揺動させることが可能となり、消費電力を抑制することができる。あるいは、同じ駆動電圧で、光偏向装置10の応答性を高めることができる。
【0028】
光偏向装置10では、可動部202の可動電極210と端子電極126を導通するための導電層220を有する第2ビーム208を別途設けているため、第1ビーム204、206に導電層を設ける必要がない。従って、第1ビーム204、206を絶縁層216、218のみから構成することができる。従来のように、導電層とその周囲を覆う絶縁層から構成されたビームのみを用いて可動部202を支持する構成に比べて、可動部202の揺動において支配的な役割を果たす第1ビーム204、206の断面形状を小さくすることができる。可動部202の揺動において支配的な役割を果たす第1ビーム204、206の剛性をより小さくして、小さな駆動電力で可動部202を揺動させることができる。
【0029】
次に、光偏向装置10の製造方法について、図4から図15を用いて説明する。なお図4から図15は、図1のIII−III線断面図、すなわち図3の断面図と対応している。
【0030】
まず図4に示すように、材料ウェハ130を準備する。材料ウェハ130の材料には、例えば単結晶シリコンを用いることができる。次に、図5に示すように、熱酸化処理を行い、材料ウェハ130の上面に絶縁膜である酸化膜132を成膜する。そして、図6に示すように、LPCVD(Low Pressure CVD)法により酸化膜132の上面にポリシリコンを積層して、イオン注入処理により導電性を付与して、フォトエッチング処理を行って、ポリシリコン層134を形成する。ここで形成されるポリシリコン層134は、固定電極114、116、導電層124に相当する。次に、図7に示すように、熱酸化処理を行い、ポリシリコン層134の上面および側面に絶縁膜である酸化膜136を成膜して、フォトエッチング処理を行う。ここで形成される酸化膜136が、絶縁層118に対応する。
【0031】
次に、図8に示すように、LPCVD法によりポリシリコンを積層し、イオン注入処理により導電性を付与して、その上面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)によって平坦化して、第1犠牲層138を形成する。そして、図9に示すように、第1支持柱102および第2支持柱104の外形形状に対応して、フォトエッチング処理によって第1犠牲層138にトレンチを形成する。そして、図10に示すように、熱酸化処理を行って、絶縁膜である酸化膜140を成膜した後、フォトエッチング処理を行う。ここで形成される酸化膜140が、第1支持柱102の側面の絶縁層106、第2支持柱102の側面の絶縁層110、第1ビーム204、206の絶縁層216、218、第2ビーム208の絶縁層222、可動部202の絶縁層212に相当する。
【0032】
次に、図11に示すように、LPCVD法によりポリシリコンを積層し、イオン注入処理により導電性を付与して、その上面をCMPによって平坦化して、フォトエッチング処理を行って、ポリシリコン層142を形成する。ここで形成されるポリシリコン層142が、可動部202の可動電極210、第2ビーム208の導電層220に相当する。そして、図12に示すように、熱酸化処理を行い、ポリシリコン層142の上面と側面に絶縁膜である酸化膜144を成膜して、フォトエッチング処理を行う。ここで形成される酸化膜144が、第2支持柱104の上面の絶縁層112、可動部202の絶縁層214、第2ビームの絶縁層224に相当する。
【0033】
次に、図13に示すように、LPCVD法によりポリシリコンを積層し、その上面をCMPによって平坦化して、第2犠牲層146を形成する。そして、図14に示すように、支持脚304、306の外形形状に対応して、フォトエッチング処理によって第2犠牲層146にトレンチを形成する。そして、図15に示すように、スパッタリングによってAlを積層し、その上面をCMPによって平坦化し、フォトエッチング処理を行うことで、Al層148を形成する。ここで形成されるAl層148がミラー302に相当する。その後、XeFガス等を用いた等方性エッチング処理によって第1犠牲層138および第2犠牲層146を除去し、端子電極120、122、126の形成処理を行うことで、図1から図3に示す光偏向装置10が完成する。
【実施例2】
【0034】
以下の実施例2から実施例6の説明においては、実施例1の光偏向装置10と同様の構成については同一の参照符号を付して詳細な説明を省略し、実施例1の光偏向装置10と相違する構成についてのみ詳細に説明する。図16は実施例2に係る光偏向装置20の平面図である。図1に示す実施例1の光偏向装置10では、第2ビーム208は可動部202と第2支持柱104の間を直線状に伸びる形状に形成されているが、図16に示す本実施例の光偏向装置20では、第2ビーム402は可動部202と第2支持柱104の間を蛇行しながら伸びる形状に形成されている。このような構成とすることによって、第2ビーム402の剛性をさらに低下させることができる。可動部202の揺動に対する第2ビーム402の剛性の影響を極めて小さくすることができる。
【実施例3】
【0035】
図17は実施例3に係る光偏向装置30の平面図である。図1に示す実施例1の光偏向装置10では、第2ビーム208と第2支持柱104はそれぞれ1つずつ形成されているが、図17に示す本実施例の光偏向装置30では、可動部202の外側に一対の第2支持柱104、404がそれぞれ形成されており、一対の第2ビーム208、406によって可動部202と第2支持柱104、404がそれぞれ接続されている。第2支持柱104と第2支持柱404は、可動部202を挟んで対称となるように形成されており、第2ビーム208と第2ビーム406は可動部202を挟んで対称となるように形成されている。
【0036】
図1に示す実施例1の光偏向装置10では、第2ビーム208は第1ビーム204、206に比べて非常に長く形成されているので、可動部202の揺動において第2ビーム208の剛性はほとんど影響を及ぼさない。しかしながら、第2ビーム208の剛性もわずかではあるが可動部202の揺動に影響を及ぼしており、可動部202が揺動する際の対称性がわずかに乱されている。これに対して、図17に示す本実施例の光偏向装置30では、第2ビーム208、406が可動部202に対して対称に形成されているので、可動部202の揺動する際の対称性が維持される。可動部202の動作をより安定なものにすることができる。
【0037】
なお本実施例の光偏向装置10では、可動部202の可動電極210と導通する導電層124および端子電極126は、図17に示すように第2支持柱104側に設けても良いし、これとは反対に、第2支持柱404側に設けても良い。
【実施例4】
【0038】
図18は実施例4に係る光偏向装置40の平面図である。本実施例の光偏向装置40では、可動部202の外側に一対の第1支持柱408、410が配置されており、可動部202と第1支持柱408、410はそれぞれ第1ビーム414、416によって接続されている。また、可動部202の内側に第2支持柱412が配置されており、可動部202と第2支持柱412は、一対の第2ビーム418、420によって接続されている。本実施例の光偏向装置40においても、可動部202の可動電極210に導通する導電層を有する第2ビーム418、420が、絶縁層のみから構成される第1ビーム414、416に比べて非常に長く形成されているから、可動部202が揺動する際には、第1ビーム418、420の剛性が支配的な影響を及ぼし、第2ビーム418、420の剛性はほとんど影響を及ぼさない。第1ビーム418、420の断面形状を小さくすることで、第1ビーム418、420の剛性を下げることができる。これによって、小さな駆動電力で可動部202を揺動させることができる。
【実施例5】
【0039】
図19は実施例5に係る光偏向装置50の平面図である。図1に示す実施例1の光偏向装置10では可動部202は矩形の枠形状に形成されているが、図19に示す本実施例の光偏向装置50では可動部422は中実の矩形形状に形成されている。可動部422の外側に一対の第1支持柱424、426が配置されており、さらにその外側に一対の第2支持柱428、430が配置されている。可動部422と第1支持柱424、426はそれぞれ第1ビーム432、434によって接続されている。可動部422と第2支持柱428、430はそれぞれ第2ビーム436、438によって接続されている。固定電極114は可動部422の一方の長辺部(図19の上方の長辺部)に対向して配置され、固定電極116は可動部422の他方の長辺部(図19の下方の長辺部)に対向して配置されている。本実施例の光偏向装置50においても、可動部422の可動電極210に導通する導電層を有する第2ビーム436、438が、絶縁層のみから構成される第1ビーム432、434に比べて非常に長く形成されているから、可動部422が揺動する際には、第1ビーム432、434の剛性が支配的な影響を及ぼし、第2ビーム436、438の剛性はほとんど影響を及ぼさない。第1ビーム432、434の断面形状を小さくすることで、第1ビーム432、434の剛性を下げることができる。これによって、小さな駆動電力で可動部422を揺動させることができる。
【実施例6】
【0040】
図20は実施例6に係る光偏向装置60の平面図である。本実施例の光偏向装置60では、可動部202の内側に一対の第1支持柱440、442が配置されており、さらにその内側に第2支持柱444が配置されている。可動部202と第1支持柱440、442はそれぞれ第1ビーム446、448によって接続されている。可動部202と第2支持柱444は一対の第2ビーム450、452によって接続されている。本実施例の光偏向装置60においても、可動部202の可動電極210に導通する導電層を有する第2ビーム450、452が、絶縁層のみから構成される第1ビーム446、448に比べて非常に長く形成されているから、可動部202が揺動する際には、第1ビーム446、448の剛性が支配的な影響を及ぼし、第2ビーム450、452の剛性はほとんど影響を及ぼさない。第1ビーム446、448の断面形状を小さくすることで、第1ビーム446、448の剛性を下げることができる。これによって、小さな駆動電力で可動部202を揺動させることができる。
【0041】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0042】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0043】
10、20、30、40、50、60 光偏向装置
100 基板下層
102、408、410、424、426、440、442 第1支持柱
104、404、412、428、430、444 第2支持柱
106、110、112、118、212、214、216、218、222、224 絶縁層
108、124、220 導電層
114、116 固定電極
120、122、126 端子電極
130 材料ウェハ
132、136、140、144 酸化膜
134、142 ポリシリコン層
138 第1犠牲層
146 第2犠牲層
148 Al層
150 半導体ウェハ
200 基板上層
202、422 可動部
204、206、414、416、432、434、446、448 第1ビーム
208、402、406、418、420、436、438、450、452 第2ビーム
210 可動電極
300 ミラー層
302 ミラー
304、306 支持脚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部に設けられた固定電極と可動部に設けられた可動電極の間に電圧を印加することで可動部を揺動させて、可動部に設けられたミラーを揺動させる光偏向装置であって、
可動部は第1支持部材と第2支持部材によって支持されており、
第1支持部材は絶縁体のみから構成されており、
第2支持部材は導体とその周囲を覆う絶縁体から構成されており、
前記第2支持部材が前記第1支持部材に比べて長く形成されていることを特徴とする光偏向装置。
【請求項2】
前記第2支持部材が可動部の外側に配置されていることを特徴とする請求項1の光偏向装置。
【請求項3】
前記可動部が枠形状に形成されており、
前記第1支持部材が可動部の内側に配置されていることを特徴とする請求項1または2の光偏向装置。
【請求項4】
前記可動部に設けられたミラーが、可動部と、第1支持部材と、第2支持部材を覆う大きさの平板ミラーであることを特徴とする請求項1から3の何れか一項の光偏向装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−47910(P2012−47910A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188743(P2010−188743)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】