説明

光半導体装置

【課題】逆メサ方向で直線状に形成された直線導波路部と、逆メサ方向に対して傾く方向に形成された傾斜導波路部とを具備する光半導体装置であって、埋め込み導波路作製時の異常成長を抑制し、装置自体を小型化して伝搬損失を低減できる光半導体装置を提供することにある。
【解決手段】半導体レーザ11が、活性層102を具備するものであり、導波路部12が、活性層102と同じ高さで形成され、光を導波する導波路層115を具有するものであり、半導体レーザ11がメサ構造で形成され、導波路部12がメサ構造で形成されると共に、導波路部12のメサ構造が半導体レーザ11のメサ構造よりも低く形成され、半導体レーザ12のメサ構造の側部に半導体層122が積層される一方、導波路部12のメサ構造が半導体層122で埋め込まれるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ通信用光源および光計測用光源として用いられる波長可変半導体レーザである光半導体装置に関し、特に光通信における光波長(周波数)多重システム用光源、および広帯域波長帯をカバーする光計測用波長可変光源に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
通信情報量の増大に対して、光波長(周波数)多重通信システムの研究が行われているが、送信用光源および同期検波用可同調光源として広範な波長調整機能が要求されており、また、光計測の分野からも広域波長帯をカバーする波長可変光源の実現が望まれている。
【0003】
これまでに、種々の可変波長光源が研究されてきたが、それらを大別すると、1つの発振モードで連続的に波長が変わるものと、モード跳びを伴って不連続に波長が変わるものとに分けることができる。実際のシステムへの応用を考えた場合、制御性の面から、連続的に波長が変わるものの方が好ましい。また、波長変化を制御するために、温度を変化させて屈折率を制御するものと、電流注入による屈折率変化を用いるものの二つが主に使われているが、波長変化速度を考えると、電流注入による屈折率変化を用いた方が速い波長切り替えが可能である。
【0004】
電流注入による屈折率変化を用いて連続的に発振波長を変化させることができる半導体レーザとしては、分布反射型レーザ(DBRレーザ)や二重導波路レーザ(TTGレーザ)などが研究されており、連続波長可変幅としてDBRレーザでは4.4nm、TTGレーザでは7nmという値が報告されている。近年では、DBRレーザのモード跳びを抑えるために、活性層領域を短くした、いわゆる短共振器DBRレーザも研究されている。
【0005】
モード跳びをともなった不連続な波長可変幅としては、DBRレーザでは10nmという値が得られている。また、不連続ではあるが広い波長可変幅が得られる半導体レーザとして、Y分岐レーザ、超周期構造回折格子レーザなどが試作され、50nm〜100nmの波長可変幅が得られている。
【0006】
しかし、上記従来技術においては、次のような問題があった。
TTGレーザでは、光の増幅作用を行う活性導波路層に電流注入してレーザ発振動作を生じさせ、該活性導波路層のすぐ近くに形成される波長制御用非活性導波路層に独立に電流注入することにより、発振波長を変化させる。ここで、回折格子の周期をΛ、導波路の等価屈折率をnとすれば、ブラッグ波長λbは、以下に示す(1)式で表される。
λb=2nΛ ・・・(1)
【0007】
レーザは、このブラッグ波長近傍の1つの共振縦モードで発振動作する。非活性導波路層に電流注入を行うと、導波路の等価屈折率が変化し、(1)式より、ブラッグ波長もそれに比例して変化する。ここで、ブラッグ波長の変化の割合Δλb/λbは、以下の(2)式に示すように、等価屈折率の変化の割合Δn/nと等しくなる。
Δλb/λb=Δn/n ・・・(2)
【0008】
また、電流注入による等価屈折率の変化に伴い、共振縦モード波長も変化する。TTGレーザの場合、共振器全体の等価屈折率が一様に変化するので、共振縦モード波長の変化の割合Δλr/λrは等価屈折率の変化の割合Δn/nと等しくなる。すなわち、以下の(3)式となる。
Δλr/λr=Δn/n ・・・(3)
【0009】
(2)式、(3)式より、TTGレーザでは、ブラッグ波長の変化と共振縦モードの変化が等しくなるので、最初に発振したモードが保たれたまま連続的に発振波長が変化するという大きな特徴を有する。
【0010】
しかしながら、単一横モード発振動作をさせるためには二重導波路の幅は1μm〜2μmにする必要があり、さらに活性層と波長制御層との間に形成されるn型スペーサ層の厚さを1μm以下まで薄くする必要があるため、通常の半導体レーザで用いられている埋め込み構造とすることができず、それぞれの導波路層に効率良く電流を注入するための構造にすることが、製作上非常に困難であるという問題があった。また、通常の半導体レーザ構造と異なるため、半導体光増幅器などとの集積化が困難であり、多機能な集積デバイスを構成できないという問題があった。
【0011】
それに対してDBRレーザでは、光の増幅作用を行う活性導波路層と非活性導波路層とが直列に接続されている構造なので、通常の半導体レーザと同様に電流狭窄を行うための埋め込みストライプ構造を用いることができ、更に各々の導波路層に独立に電流注入を行うことは、各々の導波路層の上方に形成される電極を分離することにより容易に実現される。非活性導波路層への電流注入により、等価屈折率を変えてブラッグ波長を変化させる機構はTTGレーザと同様であるが、等価屈折率の変化する領域が共振器の一部に限られているために、ブラッグ波長の変化量と共振縦モード波長の変化量とは一致しない。共振縦モード波長の変化の割合Δλr/λrは、全共振器長さLtに対する分布反射器の実行長Leの割合分だけ等価屈折率の変化の割合Δn/nよりもすくなくなり、以下の(4)式となる。
Δλr/λr=(Le/Lt)・(Δn/n) ・・・(4)
【0012】
したがって、(2)式、(4)式より、DBRレーザでは波長制御電流を注入するにつれてブラッグ波長と共振縦モード波長とが相対的に離れていくため、モード跳びを生じてしまうという欠点を持っていた。モード跳びを生じさせないためには、回折格子が形成されていない位相調整領域を設けて、そこへの電流注入により共振縦モードの変化量とブラッグ波長の変化量とを一致させる必要がある。
【0013】
しかし、この方法では2つの電極への波長制御電流を制御するための外部回路が必要になり、装置構造、および制御が複雑になるという問題があった。モード跳びを生じさせないもう一つの方法として、共振器長を短くして縦モード間隔を広げる短共振器DBRレーザが考えられるが、活性層を短くする必要があるため、大きな出力を得るのが困難であるという問題があった。
【0014】
TTGレーザおよびDBRレーザにおける連続波長可変幅は、波長制御層の屈折率変化量に制限され、その値は4nm〜7nm程度に留まっている。波長可変幅をさらに広くするには、モード跳びを許容し、波長フィルタの波長変化量が屈折率変化量よりも大きくなるような手段を用いる必要がある。Y分岐レーザや、超周期構造回折格子レーザは、いずれも屈折率変化量よりもフィルタ波長変化量が大きくなる手段を用いている。これらのレーザでは、フィルタ波長を大きく変化させ、なおかつ十分な波長選択性を得るために、2つの電極に流す電流を制御する必要があり、さらに共振縦モード波長を制御するための電極も必要となる。その結果、発振波長を調整するのに3つの電極への注入電流を制御しなければならず、制御が非常に複雑になってしまう問題があった。
【0015】
これらの問題を解決するべく、1つの電極への注入電流制御により連続的に4nm〜7nm程度発振波長を変化させることができ、なおかつ活性導波路層および非活性導波路層への電流注入も効率良く行える半導体レーザを得ることと、モード跳びを伴うけれども、2つの電極への注入電流により、50nm〜100nm程度の範囲に亘って発振波長を変化させることができる半導体レーザが開発されている。非特許文献1および特許文献1には、分布活性DFBレーザ(TDA−DFB−LD)の構造が開示されている。この構造によれば、活性層体積も十分確保できるため、高出力化を図ることが可能である。
【0016】
図7に非特許文献1において開示された分布活性DFBレーザの構造の断面を示す。
【0017】
図7に示すように、分布活性DFBレーザは、下部クラッド401上に、活性導波路層402と非活性導波路層(波長制御領域)403とをそれぞれ一定の長さLa、Ltで、交互に周期的に直列結合した構造となっている。活性導波路層402および非活性導波路層403の上には上部クラッド404が形成され、活性導波路層402および非活性導波路層403と上部クラッド404との間には凹凸、すなわち回折格子405が形成されている。更に、上部クラッド404上には、活性導波路層402、非活性導波路層403に対応して活性層電極407、波長制御電極408がそれぞれ設けられている。また、下部クラッド401の下方には共通の電極410が設けられている。この分布活性DFBレーザにおいては、活性導波路層402への電流Iaの注入により発光とともに利得が生じ、活性導波路層402と上部クラッド404との間に形成された回折格子405の周期に応じた波長のみが選択的に反射されてレーザ発振が起こる。
【0018】
一方、非活性導波路層403への電流Itの注入により、該非活性導波路層403の屈折率はキャリア密度に応じて生じるプラズマ効果により変化するため、これに伴って、非活性導波路層403と上部クラッド404との間に形成された回折格子405の光学的な周期は変化する。そして、非活性導波路層403の等価屈折率が変化し、一周期の長さに対する波長制御領域の長さの割合分だけ共振縦モード波長が短波長側にシフトする。繰り返し構造の一周期の長さをL、波長制御領域長をLtとすれば、共振縦モード波長の変化の割合は、以下に示す(5)式で表される。
Δλr/λr=(Lt/L)・(Δn/n) ・・・(5)
【0019】
一方、複数の反射ピークの各波長も、電流注入による等価屈折率の変化の結果、短波長側にシフトする。反射ピーク波長は繰り返し構造1周期内の平均等価屈折率変化に比例するので、反射ピーク波長の変化の割合Δλs/λsは、以下に示す(6)式で表される。
Δλs/λs=(Lt/L)・(Δn/n) ・・・(6)
【0020】
(5)式、(6)式より、反射ピーク波長と共振縦モード波長とは同じ量だけシフトする。従って、このレーザでは、最初に発振したモードを保ったまま連続的に波長が変化する。
【0021】
特許文献1に開示されている分布活性DFBレーザの構造の断面を図8に示す。
この分布活性DFBレーザも図7に示す分布活性DFBレーザと同様に、下部クラッド501上に、活性導波路層502と非活性導波路層503とをそれぞれ一定の長さLa、Ltで、交互に周期的に直列結合した構造を有している。活性導波路層502および非活性導波路層503の上に上部クラッド504が形成され、活性導波路層502と上部クラッド504との間には凹凸、すなわち回折格子505が形成されている。更に、上部クラッド504上には、それぞれ活性導波路層502、非活性導波路層503に対応して活性層電極507、波長制御電極508が設けられている。また、下部クラッド501の下部には共通の電極510が形成されている。この分布活性DFBレーザでは、回折格子505を一部のみに形成しているが、図7の分布活性DFBレーザと同じように連続的に波長変化する。
【0022】
また、特許文献1には、図9に示すように、図8に示す分布活性DFBレーザと同様の構造を有し、活性導波路層502と非活性導波路層503の繰り返し周期がそれぞれL1、L2である、異なる二つのレーザを直列結合した構造も開示されている。なお、図9に示した部材と実質的に同一の部材については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0023】
一方、波長可変レーザをアレイ化して波長可変幅を増加させる波長可変アレイ素子も開発されている。1つの波長可変レーザの波長可変幅が7nm程度であったとしても、これを6素子アレイ化し集積すれば、6倍の波長可変幅が得られる。ここで、図10にレーザアレイ集積素子の平面を示す。この図10に示すように、レーザアレイ集積素子は、同一基板601上に設けられたものであり、半導体レーザ(LD)部611と、導波路部612と、結合器613と、半導体増幅器(SOA)部614とを具備するものである。LD部611は6つの半導体レーザ611a〜fを具備するものである。これら6つの半導体レーザ611a〜fは並列に配置されている。導波路部612は、半導体レーザ611a〜fのそれぞれと結合器613とを接続する導波路612a〜fで構成される。よって、LD部611からの出力光は、導波路部612を伝搬して結合器613に導入され、この結合器613により一つの導波路に導かれている。そして、結合器613により出力が低下するため、これを補うためにSOA部614により増幅している。この図10では、結合器613として多モード干渉型(MMI)の構造を用いたが、ファネル型などの構造などとすることも提案されている。半導体レーザ611a〜fは熱的な分離や、電気的な分離を得るために、ある程度間隔をあける必要があるが、結合器613で1本の導波路にまとめるため、半導体レーザ611a〜fから結合器613までの導波路は、曲線導波路であったり、半導体レーザ611a〜fの延在方向に対して斜めに延在する斜め導波路であったりする。
【0024】
【特許文献1】特許第3237733号明細書
【非特許文献1】石井他著、「分布活性DFBレーザ(A Tunable Distributed Amplification DFB Laser Diode(TDA-DFB-LD))」、IEEE Photonics Letters、vol.10、no.1、1998年1月、p.30―32
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
一般的に半導体レーザの導波路を埋め込みヘテロ構造(BH)で作製する場合には、(100)基板の場合に<011>方向の、いわゆる逆メサ方向に導波路を形成する。これとは直交する<011−>(この1−は1の上の横棒を示す)方向の順メサ方向に導波路を形成すると、再成長時にその後のプロセスに不適切な結晶面が生成されてしまうため作製が困難である。ここで、図11に、メサ構造を作製した後に、メサ構造作製時の絶縁マスク709を、そのまま選択成長のマスクとして用いてInPにFeをドーピングした半絶縁体722で両脇を埋め込み再成長した後の断面を模式的に示す。図11(a)は、導波路を逆メサ方向に作製した場合の導波路と直交する断面図であり、図11(b)は、導波路を順メサ方向に作製した場合の導波路と直交する断面図である。この図11(b)に示すように、順メサ方向に導波路を作製した場合には、マスク(絶縁膜)709上に半絶縁体722がせりあがるように異常に結晶成長して、マスク709上に空間730が形成されてしまい、素子作製が困難になる。これは、メサ構造の高さが高いほどその脇に再成長する半導体の量が増加するため、異常成長する量も増加することになる。なお、図11にて、符号701はn型InPを示し、符号702は活性層を示し、符号704はp型InPを示し、符号706はコンタクト層を示す。
【0026】
LDアレイ集積素子では、前述のように、LDと結合器を結ぶ導波路部分で、曲線導波路、若しくは、逆メサ方向からずれた角度で導波路を形成する必要がある。ここで、図12(a)にLDを逆メサ方向に配置したアレイ素子を模式的に示す平面を示し、図12(b)に図12(a)におけるx−x’断面を示し、図12(c)に図12(a)におけるy−y’断面を示す。なお、図12(a)に示すアレイ素子は上述した図10に示すアレイ素子と同一であり、同一部材には同一符号を付記しその説明を省略する。図12(a)にて、A11は逆メサ方向を示し、A12は導波路812fの延在方向を示し、θ10は逆メサ方向A11と導波路812fの延在方向A12との角度を示す。図12(b),(c)にて、符号901はn型InPを示し、符号902は活性層を示し、符号904はp型InPを示し、符号906はコンタクト層を示し、符号909は絶縁膜を示し、符号915は導波路層を示し、符号922は半絶縁性InPを示す。
【0027】
LDと結合器を結ぶ導波路部分では、電流を注入する必要が無いためコンタクト層も埋め込まれてしまっても問題が無いため、再成長時にはエッチングマスクを剥がしてしまって再成長しても良い。しかしながら、埋め込み量が多い場合には、異常成長が生じて、空間ができたり(図11(b)参照)、図12(c)に示すように、ひさし931ができたりしてしまう。これは逆メサ方向からの角度が大きくなればなるほど顕著になる。また、メサ構造の高さが高くなればなるほど顕著になる。これにより、例えば、この上に金属配線を行う場合などには、断線するなどの諸問題が生じる可能性があった。
【0028】
この問題(コンタクト層上における空間の生成やひさしの生成といった異常成長)を解決するためには、できるだけ逆メサ方向からの角度が小さくなるようにし、異常な成長が起きないようにすれば良いが、角度を浅くするとLDと結合器の距離が長くなり、素子長の増大を招き装置自体が大型化してしまう。さらに、装置の大型化に伴って伝搬損失が増大してしまう。
【0029】
そこで、本発明の目的は、前述した問題に鑑み提案されたもので、逆メサ方向に直線状に形成された直線導波路部と、逆メサ方向に対して傾く方向に形成された傾斜導波路部とを具備する光半導体装置であって、埋め込み導波路作製時の異常成長を抑制し、装置自体を小型化して伝搬損失を低減できる光半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上述した課題を解決する第1の発明に係る光半導体装置は、
逆メサ方向に直線状に形成された直線導波路部と、前記直線導波路部に接続し、逆メサ方向に対して傾く方向に形成された傾斜導波路部と、を有する光半導体装置であって、
前記直線導波路部が、活性層を具備するものであり、
前記傾斜導波路部が、前記活性層と同じ高さで形成され、光を導波する導波路層を具備するものであり、
前記直線導波路部がメサ構造で形成され、
前記傾斜導波路部がメサ構造で形成されると共に、前記傾斜導波路部のメサ構造が前記直線導波路部のメサ構造よりも低く形成され、
前記直線導波路部のメサ構造の側部に半導体層が積層される一方、前記傾斜導波路部のメサ構造が半導体層で埋め込まれる
ことを特徴とする。
【0031】
上述した課題を解決する第2の発明に係る光半導体装置は、第1の発明に係る光半導体装置であって、
前記直線導波路部のメサ高さが2.5μm以上であり、
前記傾斜導波路部のメサ高さが2.5μm未満である
ことを特徴とする。
【0032】
上述した課題を解決する第3の発明に係る光半導体装置は、第2の発明に係る光半導体装置であって、
前記傾斜導波路部のメサ構造の高さが、前記導波路層の厚さ以上である
ことを特徴とする。
【0033】
上述した課題を解決する第4の発明に係る光半導体装置は、第1乃至第3の発明の何れか一つに係る光半導体装置であって、
前記直線導波路部および前記傾斜導波路部がn型InP基板、または、半絶縁性InP基板上に形成されるものであり、
前記導波路層の上部にp−InP層が形成され、
前記p−InP層が300nm以下の厚さである
ことを特徴とする。
【0034】
上述した課題を解決する第5の発明に係る光半導体装置は、第1乃至第4の発明の何れか一つに係る光半導体装置であって、
前記半導体層が、ルテニウムをドーピングした半絶縁体を含有する層である
ことを特徴とする。
【0035】
上述した課題を解決する第6の発明に係る光半導体装置は、第1乃至第5の発明の何れか一つに係る光半導体装置であって、
前記傾斜導波路部が、前記逆メサ方向に対して5度以上傾く方向へ直線状に延在する傾斜状導波路、または曲線状に延在する曲線状導波路である
ことを特徴とする。
【0036】
上述した課題を解決する第7の発明に係る半導体レーザアレイは、第1乃至第6の発明の何れか一つに係る光半導体装置を具備する
ことを特徴とする。
【0037】
上述した課題を解決する第8の発明に係るリング共振器は、第1乃至第6の発明の何れか一つに係る光半導体装置を具備する
ことを特徴とする。
【0038】
上述した課題を解決する第9の発明に係るマッハツェンダー干渉計は、第1乃至第6の発明の何れか一つに係る光半導体装置を具備する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る光半導体装置によれば、LDアレイ素子などの傾斜導波路部を有する光半導体装置において、埋め込み導波路作製時の異常成長を抑制し、短い距離で逆メサ方向からの傾斜角の大きい導波路とし、直線導波路部と傾斜導波路部を結ぶ埋め込み導波路を作製でき、装置自体を小型化できる。これに伴って伝搬損失を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る光半導体装置の第一番目の実施形態の平面図である。
【図2】図1に示すII−II’断面図である。
【図3】図1に示すIII−III’断面図である。
【図4】本発明に係る光半導体装置の第一番目の実施形態の作製工程を示す図である。
【図5】本発明に係る光半導体装置の第二番目の実施形態を模式的に示す平面図である。
【図6】本発明に係る光半導体装置の第三番目の実施形態を模式的に示す平面図である。
【図7】従来の分布活性DFBレーザの説明図である。
【図8】従来の他の分布活性DFBレーザの断面図である。
【図9】従来の他の分布活性DFBレーザの断面図である。
【図10】従来の波長可変アレイ素子の平面図である。
【図11】従来の波長可変アレイ素子が具備する光半導体装置および導波路部の断面図である。
【図12】従来の波長可変アレイ素子の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明に係る光半導体装置の実施形態を、以下に示す実施形態において詳細に説明する。
【0042】
[第一の実施形態]
本発明に係る光半導体装置の第一の実施形態について、図1乃至図4に基づき詳細に説明する。
本実施形態では、半導体レーザアレイに適用した場合について説明する。
図1は光半導体装置を模式的に示す平面図であり、図2は図1に示すII−II’断面図であり、図3は図1に示すIII−III’断面図である。図4は光半導体装置の作製工程を示す図であり、図4(a)〜(d)は図1に示すII−II’断面構造の作製工程を示し、図4(e)〜(h)は図1に示すIII−III’断面構造の作製工程を示す。
【0043】
本実施形態に係る光半導体装置10では、図1に示すように、基板1としてn型InP(100)基板を用い、LDの導波路の方向が<011>方向の逆メサ方向A1である。光半導体装置10は、半導体レーザ(LD)部11、導波路部12、結合器13、および半導体増幅器(SOA)14を具備する。半導体レーザ部11は6つの半導体レーザ11a〜fを具備するものである。これら6つの半導体レーザ11a〜fは並列に配置される。導波路部12は、各半導体レーザ11a〜fと結合器13を接続する導波路12a〜fで構成されている。これら導波路12a〜fは、逆メサ方向A1に対して傾斜する方向に延在している。例えば、導波路12fは、逆メサ方向A1に対して角θ1傾斜した傾斜方向A2に延在して形成されている。そして、各半導体レーザ11a〜fからの出力光は、各導波路12a〜fを通って結合器13で結合している。結合した光は半導体増幅器14で増幅されて出力されている。
【0044】
半導体レーザ11fは、図2に示すように、下層側から順番に、n型InP101、活性層102、p型InP104、コンタクト層106、絶縁膜109が積層された構造である。n型InP101の上部の一部、活性層102、p型InP104でメサ構造131が形成されている。そして、n型InP101の上部、活性層102、コンタクト層106の両側に接して半絶縁性InP(半絶縁体)122が積層された構造となっている。なお、半導体レーザ11a〜eは、この半導体レーザ11fと同一の層構造となっており、その説明を省略する。
【0045】
導波路12fは、図3に示すように、下層側から順番に、n型InP101、導波路層115、p型InP104が積層された構造である。n型InP101の上部の一部、導波路層115、p型InP104でメサ構造132が形成されている。そして、n型InP101の上部、導波路層115、p型InP104が半絶縁性InP(半絶縁体)122で埋め込まれた構造となっている。導波路12fにおけるメサ構造132の高さ(メサ高さ)h2は、半導体レーザ11fにおけるメサ構造131の高さ(メサ高さ)h1よりも低く形成されている。なお、導波路12a〜eは、この導波路12fと同一の層構造となっており、その説明を省略する。
【0046】
ここで、上述した半導体レーザ(直線導波路部)および導波路(傾斜導波路部)の作製方法につき図4を参照して説明する。
【0047】
最初に、図4(a)および図4(e)に示すように、n型InP基板101上にGaInAsP活性層102若しくはGaInAsP導波路層115を成長させ、更にp型InPクラッド層104、GaInAsPコンタクト層106を成長させる。選択成長によるバッドジョイント法などにより、LDやSOAなど利得を持つ領域には活性層を、導波路や結合器を作製する領域には導波路層を成長するようにすれば良い。本実施形態では有機金属気相成長法(MOCVD法)を用いた。更にSiO2絶縁膜を堆積した後、リソグラフィーおよび反応性イオンエッチング(RIE)などの方法を用いて導波路を形成するためのエッチングマスク(導波路形状のエッチングマスク)109をGaInAsPコンタクト層106の表面に作製する(エッチングマスク形成工程)。
【0048】
続いて、図4(b)および図4(f)に示すように、SiO2絶縁膜からなるエッチングマスク109をマスクとしてドライエッチング技術により半導体をエッチングする(第一のエッチング工程)。具体的には、GaInAsPコンタクト層106、p型InPクラッド層104の一部をエッチング(除去)する。本実施形態では、誘導結合プラズマ(ICP)RIEを用いた。本実施形態では、活性層102上のp型InPクラッド104が2.0μm厚、コンタクト層106が0.2μm厚であったため、エッチング深さを2.0μmとした。
【0049】
続いて、図4(c)および図4(g)に示すように、半導体レーザ部のエッチングマスク109を残す一方、導波路部12上のエッチングマスク109のみを除去し(エッチングマスク除去工程)、再度ICP−RIEによりエッチングを行った(第二のエッチング工程)。これにより、半導体レーザ部には図に示すように2段階のエッチングにより2段分の高さのメサ構造が形成される。他方、導波路部には、導波路層115上のp型InP層104やコンタクト層106もエッチングされるため、1段目の高さのメサ構造が形成される。すなわち、導波路部では、第一のエッチング工程にて作製されたエッチングの深さ分の高さのメサ構造が形成される。2回目のエッチングでは1.5μmのエッチングを行ったため、半導体レーザ部では合計3.5μmの高さを有するメサ構造が形成され、導波路部では2.0μmの高さを有するメサ構造が形成された。
【0050】
続いて、図4(d)および図4(h)に示すように、Ruをドーピングした半絶縁性のInPによりメサ構造を埋め込み再成長した(半絶縁体再成長工程)。図4(d)では、エッチングマスクを残したまま選択成長を行ったため、メサ脇にのみ結晶が成長する。半導体レーザ部は、3.5μmの高いメサ構造であるが、逆メサ方向の導波路であるために異常成長が生じない。すなわち、半導体レーザ部11では、メサ構造の側部に半絶縁体122が積層する。他方、図4(h)では、エッチングマスクを除去しているので、全体的に結晶が成長する。メサ高さが2.0μmと比較的低いため、逆メサ方向から傾斜した導波路であるが、異常成長がなく成長する。すなわち、導波路部12では、メサ構造が半絶縁体122で埋め込まれる。
【0051】
したがって、本実施形態に係る光半導体装置10によれば、異常成長なく導波路層を再成長することが可能となったため、デバイス表面に形成した金属配線の断線が生じなくなった。本実施形態を適用する以前は、素子作製時に断線が生じないまでも、異常成長部分の上部が不規則な凹凸があり、配線が細くなったり、薄くなったりしてしまい、抵抗値が大きくなったり、電流を流している間に発熱により断線したりしていたいが、本発明の適用により、設計通りの配線が可能となり、ダイオードの電流−電圧特性からは、通常の半導体レーザで一般的な抵抗値5Ωが得られた。また、短い距離で逆メサ方向からの傾斜角の大きい導波路とし、直線導波路部と傾斜導波路部を結ぶ埋め込み導波路を作製でき、装置自体を小型化できる。これに伴って伝搬損失を低減できる。
【0052】
また、本実施形態に係る光半導体装置の作製方法によれば、エッチングマスク除去工程で導波路部12上のエッチングマスクを除去した半導体に対して第二のエッチング工程でエッチングを行うため、半導体レーザ部11のメサ構造131と導波路部12のメサ構造132とでその高さが異なる構造となる。そして、第二のエッチング工程の後に半絶縁体再成長工程を行うことで、半導体レーザ部11のメサ構造131の側部に半絶縁体122が積層される一方、導波路部12のメサ構造132が半絶縁体122で埋め込まれる。よって、埋め込み導波路作製時の異常成長を抑制し、装置自体を小型化して伝搬損失を低減できる光半導体装置10を確実に作製することができる。
【0053】
本実施形態では、半導体レーザ部11として分布活性DFBレーザを用いて説明したが、その他の波長可変レーザなどを用いることも可能である。また、結合器13としてMMIを用いて説明したが、ファネル型や多段のY分岐など他の結合器などを用いることも可能である。本発明の重要な点は、集積素子である光半導体装置を構成する一つ一つで素子の種類ではなく、逆メサ方向から傾斜した角度を持つ導波路のメサ構造の高さを低くすることである。
【0054】
本実施形態では、InPとGaInAsPの組み合わせによる層構造を用いて説明したが、この半導体材料だけでなく、GaAs、AlGaAs、AlGaAsP、GaInNAsなど、その他の半導体材料を用いることも可能である。また、活性層および導波路層としては、バルクだけでなく、量子井戸構造や、量子細線、量子ドットなどの低次元量子井戸構造などとすることも可能である。また、活性層や導波路層のコア層の上下に、コア層とクラッド層の中間の屈折率を持つ光閉じ込めのための層を設け、分離ヘテロ構造(SCH)などとすることも可能である。
【0055】
結晶成長の方法としては、MOCVD法だけではなく、分子線エピタキシャル成長法(MBE)などほかの成長方法を用いることも可能である。
【0056】
エッチングマスクおよび選択成長時のマスクとしては、SiO2のみでなくSiNやその他膜、もしくはそれらの混合膜などとすることも可能である。
【0057】
半導体のエッチングとしては、ICP−RIEだけでなく、並行平板RIEやECR−RIBEなどその他のエッチング方法とすることも可能であり、本実施形態に係る光半導体装置の形状を作製できる方法であれば使用することが可能である。
【0058】
また、エッチングの方法によっては、メサ構造の脇(側部)のエッチング深さと、メサ構造から離れた場所のエッチングの深さが異なる場合があるが、メサ構造の脇のエッチング深さが所望の深さとなることが重要である。
【0059】
本実施形態では、半導体レーザ部11のメサ構造の高さを3.5μm、導波路部12のメサ構造の高さを2.0μmとしたが、メサ構造の高さを変えて検討した結果、導波路部のメサ構造の高さを2.5μm未満とすることにより、異常成長が抑制できる。また、本実施形態では、1段目のエッチングを2.0μm、2段目のエッチングを1.5μmとしたが、導波路部のメサ構造の高さを2.5μm未満になる範囲で1段目と2段目のエッチング量を変更しても良い。半導体レーザ部のような逆メサ方向に延在する導波路のメサ構造の高さに制限は無い。
【0060】
通常、波長1.5μm波長帯の半導体レーザの場合、単一モード条件などを考慮して、導波路層の厚さは0.1μm〜0.5μm程度に設計される。本発明では、導波路の曲線部のメサ構造の高さを低くするが、導波路層が消失してしまうと光を導波させることが不可能となる。また、導波路の横方向の光閉じ込めを行う必要があることから、導波路部のメサ構造の高さは少なくとも導波路層の厚さ以上は必要である。
【0061】
また、本実施形態では、直線導波路部である半導体レーザ11部は全て高いメサ構造としたが、少なくとも傾斜導波路部、具体的には、逆メサ方向に対して所定の角度で傾斜した方向に直線状に延在する傾斜状導波路、もしくは曲線状に延在する曲線状導波路のメサ構造の高さを低くすれば良く、直線導波路部の一部が低いメサ構造とすることも可能である。すなわち、直線導波路部であっても、電流を注入する一部を高いメサ構造とし、その他を低いメサ構造とすることも可能である。
【0062】
本実施形態では、メサ構造を埋め込む材料である半絶縁体として、RuをドーピングしたInPを用いて説明したが、FeをドーピングしたInPを用いることも可能である。但し、Ruをドーピングすることにより、p型を形成するためのドーパントであるZnとFeとの相互拡散を抑制することができるため、より設計通りの絶縁特体を得ることが可能となる。このため本実施形態のように電流で波長を変化させることができる分布活性DFBレーザなどでは、高速な波長切り替えのための高周波信号に対しても動作することが可能となる。
【0063】
本実施形態では、(100)基板を用い、LDの方向を<011>逆メサ方向としたが、基板の面方位が異なる場合には、LDの方向を<011>方向と等価な結晶方向で考えることが可能である。
【0064】
本実施形態では、導波路部12の逆メサ方向からの傾きは、およそ40度であった。メサ構造の高さが3.5μm程度である場合、逆メサ方向からの傾きが10度程度であっても異常成長が生じるが、本発明により更に逆メサ方向から大きな傾きを持った導波路であっても問題なく埋め込み再成長が可能である。これにより、半導体レーザ部と結合器の距離を短縮することが可能となり、素子長の短縮化が可能となり装置自体を小型化することができる。これに伴って、伝搬損失の低減が可能となる。
【0065】
さらに、傾斜導波路部としては、逆メサ方向に対して5度以上傾斜した傾斜導波路を具備する光半導体装置に適用することが可能である。このような形状の導波路を具備する光半導体装置に適用することで、マスクの上方にひさしが形成したり、マスクの上方が半導体で覆われて当該マスクと半導体との間に空間が形成したりすることを防止することができ、マスクの上方に電極を容易に作製できるようになる。よって、製造時間の増加を抑制できると共に、そのコスト増を抑制できる。
【0066】
ここで、2段目のエッチングにより導波路層上に残すInP層の厚さにつき検討する。一般的に、再成長の境界面は結晶欠陥が発生し易く、意図しない再結晶が発生することになるため、半導体レーザなどの電流を注入して用いるデバイスの場合には、できるだけ再成長界面を活性層から離すようにした方が特性の向上が望める。一方で、p型のInPは光の吸収損失が多いことが知られている。本実施形態の場合には、電流を注入しない導波路の曲線部に2段エッチングを適用していることから、再成長界面の結晶欠陥の影響よりも、p型InPの吸収損失を低減するために、導波路層上のp−InP層の厚さをできるだけ減らし、p−InP層にかかる光フィールドの割合を低減した方が良い。導波する光のフィールドが導波路層上のp−InPにかかる割合は、p−InPの厚さが1μmの時に比べて、300nmのときに80%、200nmのときに63%、100nmのときに41%に低減できる。したがって、導波路層上のp−InP層を300nm以下にすることで、p型InP層による吸収損失を低減する効果も得ることができる。
【0067】
また、本実施形態では、半導体レーザ部11や導波路部12などの各素子が形成される基板1をn型InPとしたが、この基板をp型InP、または、半絶縁性InP、例えばFeをドープしたInPとすることも可能である。基板をp型InPとし、この基板上に上記各素子が形成された光半導体装置とする場合には、半導体レーザ部における活性層の上部、導波路部における導波路層の上部にp型InP104の代わりにn型InPを積層すれば良い。基板を半絶縁性InPとし、この基板上に上記各素子が形成された光半導体装置とする場合、半絶縁性基板上にn型InP層を積層し、活性層などの層を積層した後にp型InP層を積層すれば良い。このような光半導体装置であっても、活性層などの層上のp−InP層を300nm以下にすることで、p型InP層による吸収損失を低減する効果も得ることができる。また、半絶縁性基板を用いた光半導体装置とする場合、半絶縁性基板上にp型InP層を積層し、活性層などの層を積層した後にn型InP層を積層することも可能である。
【0068】
[第二の実施形態]
本発明に係る光半導体装置の第二の実施形態について、図5に基づき詳細に説明する。
図5は光半導体装置を模式的に示す平面図である。
本実施形態に係る光半導体装置は、上述した第一の実施形態に係る光半導体装置をリング共振器に適用した場合の装置である。
【0069】
本実施形態に係る光半導体装置200は、図5に示すように、リング共振器250と入出力導波路260とを具備する装置である。リング共振器250と入出力導波路260は、方向性結合器により光学的に結合している。なお、リング共振器250および入出力導波路260は、同一基板201上に作製されている。
【0070】
具体的には、リング共振器250は、第一の曲線導波路部210と、第二の曲線導波路部220と、直線導波路部230とで構成される機器である。第一の曲線導波路部210は、図中左側へ向けて凸状をなし、曲線状に延在する第一の曲線状導波路211で構成されている。第二の曲線導波路部220は、図中右側へ向けて凸状をなし、曲線状に延在する第二の曲線状導波路221で構成されている。直線導波路部230は、第一の曲線状導波路211の一方の入出力部と第二の曲線状導波路221の一方の入出力部とを接続する第一の直線導波路231と、第一の曲線状導波路211の他方の入出力部と第二の曲線状導波路221の他方の入出力部とを接続する第二の直線導波路232とを具備するものである。
【0071】
リング共振器250に利得を持たせたレーザとするためには、活性層を備え、電流を注入することが必要である。そのため、直線部分に活性層を備え、この部分を高いメサ構造で形成する。他方、曲線部分を低いメサ構造で形成して、埋め込み再成長時に異常成長が起きないようにする。
【0072】
本実施形態で用いた層構造は、第一の実施形態と同一であり、本実施形態の直線部分が第一の実施形態のレーザ部11に相当し、曲線部分が第一の実施形態の導波路部12に相当する。
【0073】
本実施形態では、第一の実施形態で説明した2段エッチングを用いて、1段目のエッチングにより1.5μm、2段目のエッチングにより1.5μmエッチングし、高いメサ構造の高さを3.0μm、低いメサ構造の高さを1.5μmとした。
【0074】
本実施形態に係る光半導体装置200によれば、第一の実施形態に係る光半導体装置10と比べて、逆メサ方向からの角度が大きい導波路部分を再成長するため、第一の実施形態の場合よりも低いメサ構造の高さを低くすることにより、異常成長の無い再成長を行うことができた。
【0075】
[第三の実施形態]
本発明に係る光半導体装置の第三の実施形態について、図6に基づき詳細に説明する。
図6は光半導体装置を模式的に示す平面図である。
本実施形態に係る光半導体装置は、上述した第一の実施形態に係る光半導体装置をマッハツエンダー干渉計に適用した場合の装置である。
【0076】
本実施形態に係る光半導体装置300は、図6に示すように、第一の曲線導波路部310と、第二の曲線導波路部320と、直線導波路部330とを具備する装置である。
【0077】
具体的には、第一の曲線導波路部310は、2つの入力部311,312と2つの出力部313,314を有する第一の2×2のMMIカプラ(合分波器)315を具備するものである。第二の曲線導波路部320は、2つの入力部321,322と2つの出力部323,324を有する第二の2×2のMMIカプラ(合分波器)325を具備するものである。
【0078】
直線導波路部330は、第一の2×2のMMIカプラ315における一方の出力部313と第二の2×2のMMIカプラ325の一方の入力部321とを接続する第一の光導波路331と、第一の2×2のMMIカプラ315における他方の出力部314と第二の2×2のMMIカプラ325の他方の入力部322とを接続する第二の光導波路332とを具備するものである。
【0079】
ただし、本実施形態に係る光半導体装置300は、活性層がなく、何れの領域も導波路層を有する層構造とした装置である。直線部分である直線導波路部330では、電気的に屈折率を変える必要があるため、高いメサ構造として元の層構造を残した。合分波器を含む曲線導波路部310,320は、2段エッチングにより低いメサ構造とした。すなわち、2段エッチングを適用した場合には、1段目のエッチングを行った後に曲線導波路部310,320上のエッチングマスクを除去する一方、直線導波路部330上のエッチングマスクを残し、この状態にて2段目のエッチング行って、直線導波路部330を曲線導波路部310,320よりも高いメサ構造とした。
【0080】
そして、本実施形態に係る光半導体装置300では、導波路層の上部のp型InPクラッド層を2.5μmとしたので、一段目のエッチングを2.5μm、二段目のエッチングを2.0μmとした。これにより、高いメサ構造の高さ(メサ高)が4.5μmとなり、低いメサ構造の高さ(メサ高)が2.5μmとなった。このように本実施形態では、メサ高が4.5μmと高いために、メサの方向が逆メサ方向から5度程度傾いていても異常成長が生じたが、本発明の適用により、異常成長がなく埋め込み再成長が可能となった。
【0081】
このように、半導体レーザだけでなく、その他の光素子に対しても本発明を適用可能である。
【0082】
したがって、本実施形態に係る光半導体装置300によれば、上述した第一の実施形態に係る光半導体装置10と同様、短い距離で逆メサ方向からの傾斜角の大きい導波路とし、直線導波路部と傾斜導波路部を結ぶ埋め込み導波路を作製でき、装置自体を小型化できる。これに伴って伝搬損失を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明に係る光半導体装置は、光ファイバ通信用光源および光計測用光源として用いられる波長可変半導体レーザに利用可能であり、例えば、光通信における光波長(周波数)多重システム用光源、広帯域波長帯をカバーする光計測用光源に利用可能である。
【符号の説明】
【0084】
10,200,300 光半導体装置
11 半導体レーザ部
12 傾斜導波路部
101 下部クラッド
102 活性層
104 上部クラッド層
106 コンタクト層
109 絶縁膜
115 導波路層
122 半絶縁体
250 リング共振器
315,325 2×2 MMIカプラ
h1 半導体レーザのメサ高さ
h2 導波路部のメサ高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆メサ方向に直線状に形成された直線導波路部と、前記直線導波路部に接続し、逆メサ方向に対して傾く方向に形成された傾斜導波路部と、を有する光半導体装置であって、
前記直線導波路部が、活性層を具備するものであり、
前記傾斜導波路部が、前記活性層と同じ高さで形成され、光を導波する導波路層を具備するものであり、
前記直線導波路部がメサ構造で形成され、
前記傾斜導波路部がメサ構造で形成されると共に、前記傾斜導波路部のメサ構造が前記直線導波路部のメサ構造よりも低く形成され、
前記直線導波路部のメサ構造の側部に半導体層が積層される一方、前記傾斜導波路部のメサ構造が半導体層で埋め込まれる
ことを特徴とする光半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載された光半導体装置であって、
前記直線導波路部のメサ構造の高さが2.5μm以上であり、
前記傾斜導波路部のメサ構造の高さが2.5μm未満である
ことを特徴とする光半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載された光半導体装置であって、
前記傾斜導波路部のメサ構造の高さが、前記導波路層の厚さ以上である
ことを特徴とする光半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載された光半導体装置であって、
前記直線導波路部および前記傾斜導波路部がn型InP基板、または、半絶縁性InP基板上に形成されるものであり、
前記導波路層の上部にp−InP層が形成され、
前記p−InP層が300nm以下の厚さである
ことを特徴とする光半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載された光半導体装置であって、
前記半導体層が、ルテニウムをドーピングした半絶縁体を含有する層である
ことを特徴とする光半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載された光半導体装置であって、
前記傾斜導波路部が、前記逆メサ方向に対して5度以上傾く方向へ直線状に延在する傾斜状導波路、または曲線状に延在する曲線状導波路である
ことを特徴とする光半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載された光半導体装置を具備する
ことを特徴とする半導体レーザアレイ。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載された光半導体装置を具備する
ことを特徴とするリング共振器。
【請求項9】
請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載された光半導体装置を具備する
ことを特徴とするマッハツェンダー干渉計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−60158(P2012−60158A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−265510(P2011−265510)
【出願日】平成23年12月5日(2011.12.5)
【分割の表示】特願2008−63800(P2008−63800)の分割
【原出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】