説明

光学式変位計

【課題】簡易な構成において、対象物表面上の複数箇所の距離や変位を計測する。
【解決手段】レーザ光源14から出射されたレーザ光は、スプリッタ15で向きの異なる二つの光線に分岐され、対象物2の表面上の異なる二つの位置にそれぞれ光スポットを形成する。測定処理部16は、一次元撮像カメラ17のリニアイメージセンサ19の光検出パターンより二つの光スポットの、一次元撮像カメラ17に対する方向を算定し、算定した二つの光スポットの一次元撮像カメラ17に対する方向と、スプリッタ15からの二つの光線の出射方向と、スプリッタ15の位置と、一次元撮像カメラ17の位置とにより、対象物2の表面上の二つの光スポットの位置各々の二次元座標を、三角測量によって算定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に照射した光をイメージセンサで検出し、対象物までの距離や対象物の変位を計測する光学式変位計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
対象物に照射した光をイメージセンサで検出し、対象物までの距離や対象物の変位を計測する光学式変位計としては、図3に示すように、対象物110の表面にレーザ光を照射するレーザ光源101と、受光レンズ102とリニアイメージセンサ103とを備えた一次元撮像カメラ104とを備えた光学式変位計が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
この光学式変位計では、対象物110の表面にレーザ光により形成されたスポットの、一次元撮像カメラ104のリニアイメージセンサ103上の結像位置より求まる、一次元撮像カメラ104に対する当該スポットの方向と、レーザ光源101に対する当該スポットの方向(レーザの照射方向)とに基づいた三角測量によって、対象物110の表面のスポット形成箇所までの距離や当該スポット形成箇所の変位を測定する。
【特許文献1】特開2006-38571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献1記載の技術によれば、対象物表面上の単一箇所についての距離や変位しか計測できないために、対象物の傾きなどを計測することができない。
一方、このような光学式変位計を複数用いて、対象物表面上の複数箇所の距離や変位を計測するようにすれば、対象物の傾きなども検出することができるようになるが、このようにすると、装置の複雑化やコスト高を招くことになる。
そこで、本発明は簡易な構成において、対象物表面上の複数箇所の距離や変位を計測することのできる光学式変位計を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題達成のために、本発明は、対象物上の点の変位または当該点までの距離を測定する光学式変位計に、レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を、前記対象物に向かう相互に向きの異なる複数の光線に分岐する光分岐器と、前記対象物を撮影する1または複数のイメージセンサと、前記光分岐器によって分岐された複数の光線によって前記対象物上に各々形成された複数の光点の位置座標を、前記イメージセンサが撮影した画像中の当該光点の位置に基づいて算定する測位手段とを備えたものである。
【0006】
ここで、このような光学式変位計は、前記測位手段において、前記複数の光点の位置座標より、前記対象物の傾きを算定するように構成してもよい。
このように、本発明は、光学式変位計に、レーザ光を前記対象物に向かう相互に向きの異なる複数の光線に分岐する光分岐器を設けて、分岐された複数の光線によって前記対象物上に各々形成された複数の光点の位置座標を算定するようにしているので、単一のレーザ光源を用いた簡易な構成によって、対象物表面上の複数箇所の距離や変位を計測することができる。
【0007】
なお、以上の光学式変位計は、より具体的には、たとえば、前記光分岐器において、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を、前記対象物に向かう相互に向きの異なる三以上の光線に分岐し、前記イメージセンサをリニアイメージセンサとすると共に、前記測位手段において、前記光分岐器によって分岐された複数の光線によって前記対象物上に各々形成された複数の光点の二次元位置座標を、前記リニアイメージセンサが撮影した画像中の当該光点の位置に基づいて算定するように構成してもよい。または、たとえば、前記光分岐器において、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を、前記対象物に向かう相互に向きの異なる三以上の光線に分岐し、前記イメージセンサをエリアイメージセンサとすると共に、前記測位手段において、前記光分岐器によって分岐された三以上の光線によって前記対象物上に各々形成された三以上の光点の三次元位置座標を、前記エリアイメージセンサが撮影した画像中の当該光点の位置に基づいて算定するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、簡易な構成において、対象物表面上の複数箇所の距離や変位を計測することのできる光学式変位計を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。
まず、第1の実施形態について説明する。
図1に、本第1実施形態に係る光学式変位計1の構成を示す。
図示するように、光学式変位計1は、操作部11、表示部12、制御部13、レーザ光源14、スプリッタ15、測定処理部16、一次元撮像カメラ17とを有する。また、一次元撮像カメラ17は、受光レンズ18とリニアイメージセンサ19とを有する。
このような構成において、制御部13は、操作部11でユーザからの測定開始操作を受け付けたならば、レーザ光源14を駆動し、レーザ光を出射させる。レーザ光源14から出射されたレーザ光は、スプリッタ15で向きの異なる二つの光線に分岐され、それぞれ対象物に出射され、対象物2の表面上の異なる二つの位置にそれぞれ光スポットを形成する。
【0010】
ここで、スプリッタ15としては、光回折格子を用いた光スプリッタや、プリズム型やプレート型のビームスプリッタや、ハーフミラーなどを用いることができる。
さて、一次元撮像カメラ17において、対象物2の表面上に形成された二つの光スポットの像は受光レンズ18によって、リニアイメージセンサ19の受光面に結像される。
そして、測定処理部16は、リニアイメージセンサ19の光検出パターンより、リニアイメージセンサ19の受光面上の二つの光スポットの結像位置を算定し、算定した結像位置より、対象物2の表面上の二つの光スポットの、一次元撮像カメラ17に対する方向を算定する。そして、二つの光スポットの、一次元撮像カメラ17に対する方向と、スプリッタ15からの二つの光線の出射方向と、スプリッタ15の位置と、一次元撮像カメラ17の位置とにより、対象物2の表面上の二つの光スポットの位置各々の二次元座標を、三角測量によって算定する。ここでは、図中に示したx、z方向の座標(x1,z1),(x2,z2)を、光スポットの二次元座標として算定する。また、算定した対象物2の表面上の二つの光スポットの位置各々の二次元座標(x1,z1),(x2,z2)より、対象物2のx方向についての傾斜(z2-z1)/(x2-x1)を算定する。ただし、常にx1<x2となることが保証されるように、対象物2の最大傾きに対して、スプリッタ15で分岐する二つの光線の方向は設定する。
【0011】
そして、算定した対象物2の表面上の二つの光スポットの位置各々の二次元座標と、対象物2のx方向についての傾斜とを表示装置に表示する。
以上、本発明の第1実施形態について説明した。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図2に、本第2実施形態に係る光学式変位計1の構成を示す。
図示するように、本第2実施形態に係る光学式変位計1は、図1に示した第1実施形態に係る光学式変位計1の一次元撮像カメラ17に代えて、二つの二次元撮像カメラ109を備えると共に、スプリッタ15において、レーザ光源14から出射されたレーザ光を、向きの異なる三つの光線に分岐し、それぞれ対象物2に出射するようにしたものである。なお、このような三つの光線にレーザ光を分岐するスプリッタ15は、たとえば、レーザ光を二つの光線に分岐するスプリッタ15を複数段設けることなどにより実現できる。また、二次元撮像カメラ109は、受光レンズ18と、エリアイメージセンサ110とにより構成されるものである。
【0012】
さて、一次元撮像カメラ17において、対象物2の表面上に形成された三つの光スポットの像は受光レンズ18によって、エリアイメージセンサ110の受光面に結像される。
そして、測定処理部16は、エリアイメージセンサ110の二次元光検出パターンより、エリアイメージセンサ110の受光面上の三つの光スポットの結像位置を算定し、算定した結像位置より、対象物2の表面上の三つの光スポットの、二つの二次元撮像カメラ109に対する方向を算定する。そして、三つの光スポットの、二つの二次元撮像カメラ109に対する方向と、二つの二次元撮像カメラ109の位置とにより、三角測量によって、対象物2の表面上の三つの光スポットの位置各々の三次元座標を算定する。ここでは、図中に示したx、z、z方向の三つの光スポットの座標(x1,y1,z1),(x2,y2,z2),(x3,y3,z3)を、当該三つの光スポットの三次元座標として算定する。ただし、二つの二次元撮像カメラ109間における、三つの光スポットの同定のために、たとえば、常にx1<x2<x3となることが保証されるように、対象物2の最大傾きに対して、スプリッタ15で分岐する三つの光線の方向は設定するようにする。また、三つの光スポットが常に直線上に並ばないようにスプリッタ15で分岐する三つの光線の方向は設定する。
【0013】
また、算定した対象物2の表面上の二つの光スポットの位置各々の三次元座標(x1,y1,z1),(x2,y2,z2),(x3,y3,z3)より、対象物2のx 、y方向それぞれについての傾斜を、たとえば、(x1,y1,z1),(x2,y2,z2),(x3,y3,z3)の3点を含む平面の法線ベクトルm
m=((y2-y1)(z3-z1)-(y3-y1)(z2-z1), (z2-z1)(x3-x1)-(z3-z1)(x2-x1), (x2-x1)(y3-y1)-(x3-x1)(y2-y1))
を求めることにより算出する。
【0014】
そして、算定した対象物2の表面上の3つの光スポットの位置各々の三次元座標と、対象物2のx、y方向それぞれについての傾斜とを表示装置に表示する。
以上、本発明の第2の実施形態について説明した。
なお、本第2実施形態は、二次元撮像カメラ109を一つだけ設け、三つの光スポットの、二次元撮像カメラ109に対する方向と、スプリッタ15からの三つの光線の出射方向と、スプリッタ15の位置と、二次元撮像カメラ109の位置とにより、対象物2の表面上の3つの光スポットの位置各々の三次元座標を、三角測量によって算定するように構成してもよい。
【0015】
以上、本発明の実施形態について説明した。
以上のように、本実施形態に係る光学式変位計1によれば、レーザ光を前記対象物2に向かう相互に向きの異なる複数の光線に分岐するスプリッタ15を設け、分岐された複数の光線によって前記対象物2上に各々形成された複数の光点の座標を算定するようにしたので、単一のレーザ光源14を用いた簡易な構成によって、対象物表面上の複数箇所の距離や変位や対象物2の傾きを計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光学式変位計の構成を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る光学式変位計の構成を示す図である。
【図3】従来の光学式変位計の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0017】
1…光学式変位計、2…対象物、11…操作部、12…表示部、13…制御部、14…レーザ光源、15…スプリッタ、16…測定処理部、17…一次元撮像カメラ、18…受光レンズ、19…リニアイメージセンサ、101…レーザ光源、109…二次元撮像カメラ、110…エリアイメージセンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物上の点の変位または当該点までの距離を測定する光学式変位計であって、
レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されたレーザ光を、前記対象物に向かう相互に向きの異なる複数の光線に分岐する光分岐器と、
前記対象物を撮影する1または複数のイメージセンサと、
前記光分岐器によって分岐された複数の光線によって前記対象物上に各々形成された複数の光点の位置座標を、前記イメージセンサが撮影した画像中の当該光点の位置に基づいて算定する測位手段とを有することを特徴とする光学式変位計。
【請求項2】
請求項1記載の光学式変位計であって、
前記測位手段は、前記複数の光点の位置座標より、前記対象物の傾きを算定することを特徴とする光学式変位計。
【請求項3】
請求項1または2記載の光学式変位計であって、
前記光分岐器は、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を、前記対象物に向かう相互に向きの異なる三以上の光線に分岐し、
前記イメージセンサはリニアイメージセンサであって、
前記測位手段は、前記光分岐器によって分岐された複数の光線によって前記対象物上に各々形成された複数の光点の二次元位置座標を、前記リニアイメージセンサが撮影した画像中の当該光点の位置に基づいて算定することを特徴とする光学式変位計。
【請求項4】
請求項1または2記載の光学式変位計であって、
前記光分岐器は、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を、前記対象物に向かう相互に向きの異なる三以上の光線に分岐し、
前記イメージセンサはエリアイメージセンサであって、
前記測位手段は、前記光分岐器によって分岐された三以上の光線によって前記対象物上に各々形成された三以上の光点の三次元位置座標を、前記エリアイメージセンサが撮影した画像中の当該光点の位置に基づいて算定することを特徴とする光学式変位計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−92535(P2009−92535A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264092(P2007−264092)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000145806)株式会社小野測器 (230)
【Fターム(参考)】