光走査装置及び画像表示装置
【課題】周囲温度変化や経時変化によりピエゾ抵抗素子の抵抗値に変動が生じた場合であっても、ミラー部の揺動を停止することなく、ピエゾ抵抗素子による検出結果の校正を行うことができる光走査装置及び画像表示装置を提供すること。
【解決手段】所定電位間に直列接続された一対のピエゾ抵抗素子R1,R3(R2,R4)を有する検出部を有し、光走査素子4のミラー部10の揺動軸Ly回りの揺動を開始した後、一対のピエゾ抵抗素子R1,R3(R2,R4)間の接続点N1(N2)の電圧変動率に基づき、光走査素子4が共振により反射面10aと直交する方向への揺動が加わっている状態であると判定すると、当該状態において接続点N1(N2)の電圧変動率が所定範囲内になったときの接続点の電圧に基づき、接続点N1(N2)の電圧のオフセット値を判定する。
【解決手段】所定電位間に直列接続された一対のピエゾ抵抗素子R1,R3(R2,R4)を有する検出部を有し、光走査素子4のミラー部10の揺動軸Ly回りの揺動を開始した後、一対のピエゾ抵抗素子R1,R3(R2,R4)間の接続点N1(N2)の電圧変動率に基づき、光走査素子4が共振により反射面10aと直交する方向への揺動が加わっている状態であると判定すると、当該状態において接続点N1(N2)の電圧変動率が所定範囲内になったときの接続点の電圧に基づき、接続点N1(N2)の電圧のオフセット値を判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射する光束を反射面が形成されたミラー部により所定方向に走査する光走査素子を備えた光走査装置及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、入射する光束を反射面が形成されたミラー部により所定方向に走査する光走査素子と、駆動信号により光走査素子のミラー部を揺動軸回りに揺動させる制御部と、を備えた光走査装置や画像表示装置が知られている。
【0003】
光走査装置や画像表示装置に用いられる光走査素子として、図17に示すように、反射面201aが形成されたミラー部201と、一対の梁部202a,202bと、一対の支持部203a,203bと、固定部204とを有して、ミラー部201を揺動軸Ly回りに揺動させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この光走査素子200において、一対の梁部202a,202bは、揺動軸Lyに沿ってミラー部201の両側のそれぞれを弾性を持って支持し、捻れ変位によりミラー部201を揺動軸Ly回りに揺動可能とする。また、一対の支持部203a,203bは、一対の梁部202a,202bのそれぞれの他端をその中央部で弾性を持って支持すると共に両端部が固定部204a,204bに固定されている。なお、固定部204a,204bは基台205に固着されている。
【0005】
光走査素子200におけるミラー部201を揺動軸Ly回りに揺動させる方法として、例えば、電磁駆動方式や静電駆動方式などがある。電磁駆動式の揺動方法では、例えば、ミラー部201の裏面にコイルを配置すると共に、ミラー部201の揺動軸Lyに平行な2辺に近接して永久磁石を設け、コイルに駆動信号(駆動電流)を流してローレンツ力を発生させる。これにより、ミラー部201に揺動軸Lyを中心とした回転トルクが生じ、ミラー部201が揺動軸Lyを中心として揺動する。
【0006】
このような光走査素子200では、周囲温度、経年変化、個体差などにより、ミラー部201を揺動させるための駆動信号と、実際のミラー部201の揺動角との間に一定の関係が保たれない。しかし、ミラー部201によって光束を所望の方向に走査するためには、光走査素子200を駆動する制御部において、ミラー部201を揺動させるための駆動信号と実際のミラー部201の揺動角との関係を知っておく必要がある。
【0007】
そのため、従来の光走査装置や画像表示装置では、ミラー部の揺動軸Ly回りの揺動角を検出する検出手段を設けている。例えば、特許文献2では、ミラー部の揺動軸Ly回りの揺動角を検出するために、揺動角検出用の光源と検出手段とを別途設けている。そして、ミラー部が揺動状態のときに、ミラー部の反射面に揺動角検出用の光源から所定の光束を入射してミラー部の反射面で走査させ、所定の位置に配置された光検出手段による光束の検出結果に基づいてミラー部の揺動状態を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−83603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した従来の光走査素子では、所定の位置に配置された光検出手段による光束の検出タイミングの間隔などからミラー部の揺動状態を演算して検出するため、その演算プログラムの設計コストがかかり、また、演算処理による負荷も大きい。
【0010】
そこで、光走査素子の支持部上にそれぞれピエゾ抵抗素子を配置して、このピエゾ抵抗素子の抵抗変動に基づいて、ミラー部の揺動状態の検出を行うことが考えられる。
【0011】
しかしながら、ミラー部の揺動を開始した後に、ピエゾ抵抗素子の周囲温度変化や経時変化が発生した場合、ピエゾ抵抗素子の抵抗値が変動し、ミラー部の揺動状態の検出を精度良く行うことができなくなる。
【0012】
本発明は、上述したような課題に鑑みてなされたものであり、周囲温度変化や経時変化によりピエゾ抵抗素子の抵抗値に変動が生じた場合であっても、ミラー部の揺動を停止することなく、ピエゾ抵抗素子による検出結果の校正を行うことができる光走査装置及び画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、入射する光束を反射面が形成されたミラー部により所定方向に走査する光走査素子と、駆動信号により前記光走査素子のミラー部を揺動軸回りに揺動させる制御部と、を備えた光走査装置において、前記光走査素子は、前記揺動軸に沿って前記ミラー部の両側のそれぞれを弾性を持って支持し、捻れ変位により前記ミラー部を前記揺動軸回りに揺動可能とする一対の梁部と、前記一対の梁部のそれぞれの他端をその中央部で弾性を持って支持すると共に両端部が固定部に固定された一対の支持部と、前記一対の支持部のうち少なくとも一方の支持部上に前記揺動軸に対して対称配置され、所定電位間に直列接続された一対のピエゾ抵抗素子を有する検出部と、を有し、前記制御部は、前記一対のピエゾ抵抗素子間の接続点の電圧に基づき、前記ミラー部の揺動状態を検出し、前記駆動信号を生成する処理と、前記光走査素子のミラー部の揺動軸回りの揺動を開始した後、前記接続点の電圧変動率に基づき、前記光走査素子が共振により前記反射面と直交する方向への揺動が加わっている状態であると判定すると、当該状態において前記接続点の電圧変動率が所定範囲内になったときの前記接続点の電圧に基づき、前記接続点の電圧のオフセット値を判定する処理と、を実行することとした。
【0014】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の光走査装置において、前記検出部は、前記揺動軸に対して対称配置される一対のピエゾ抵抗素子を、前記一対の支持部のそれぞれに設け、これら二対のピエゾ抵抗素子間の接続点の電圧変動率に基づき、前記オフセット値を判定することとした。
【0015】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の光走査装置において、前記光走査素子は、前記反射面と平行な方向へ揺動する第1共振モードと前記反射面と直交する方向へ揺動する第2共振モードを有しており、前記制御部は、前記ミラー部の揺動軸回りの揺動を開始した後、前記第1共振モードによる前記反射面と平行な方向への揺動が所定範囲内に収束した後に、前記一対のピエゾ抵抗素子接続点の電圧のオフセット値の判定処理を実行することとした。
【0016】
また、請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光走査装置において、前記制御部は、前記反射面と直交する方向への揺動を励起する励起用信号を含む駆動信号により前記光走査素子のミラー部を揺動軸回りに揺動させて、前記反射面と直交する方向への揺動を生じさせることとした。
【0017】
また、請求項5に係る発明は、画像信号に応じた強度の光束を第1方向に相対的に高速に走査する第1の光走査素子と前記第1方向に略直交する第2方向に相対的に低速に走査する第2の光走査素子とにより2次元走査する走査部と、前記第1及び第2の光走査素子を制御する制御部と、を備えた画像表示装置において、前記第2の光走査素子は、前記揺動軸に沿って前記ミラー部の両側のそれぞれを弾性を持って支持し、捻れ変位により前記ミラー部を前記揺動軸回りに揺動可能とする一対の梁部と、前記一対の梁部のそれぞれの他端をその中央部で弾性を持って支持すると共に両端部が固定部に固定された一対の支持部と、前記一対の支持部のうち少なくとも一方の支持部上に前記揺動軸に対して対称配置され、所定電位間に直列接続された一対のピエゾ抵抗素子を有する検出部と、を有し、前記制御部は、前記一対のピエゾ抵抗素子間の接続点の電圧に基づき、前記ミラー部の揺動状態を検出し、前記駆動信号を生成する処理と、前記光走査素子のミラー部の揺動軸回りの揺動を開始した後、前記接続点の電圧変動率に基づき、前記光走査素子が共振により前記反射面と直交する方向への揺動が加わっている状態であると判定すると、当該状態において前記接続点の電圧変動率が所定範囲内になったときの前記接続点の電圧に基づき、前記接続点の電圧のオフセット値を判定する処理と、を実行することとした。
【0018】
また、請求項6に係る発明は、請求項5に記載の画像表示装置において、前記第1の光走査素子及び前記第2の光走査素子で走査された光束を利用者の眼に入射させて、前記利用者の網膜上に画像信号に応じた画像を投影することとした。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ピエゾ抵抗素子によりミラー部の揺動状態の検出を行う光走査装置及び画像表示装置において、周囲温度変化や経時変化によりピエゾ抵抗素子の抵抗値に変動が生じた場合であっても、ミラー部の揺動を停止することなく、ピエゾ抵抗素子による検出結果の校正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る光走査装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示す光走査素子を駆動する駆動信号の波形を示す図である。
【図3】図1に示す光走査素子をミラー部の角度変化を示す図である。
【図4】図1に示す光走査素子の具体的構成を示す図である。
【図5】ピエゾ抵抗素子により構成される検出部の等価回路である。
【図6】捻れ変位によるピエゾ抵抗素子の抵抗値の変化を示す図である。
【図7】ピエゾ抵抗素子により構成される検出部から出力される検出電圧のオフセットの説明図である。
【図8】検査用光源と光検出部によるミラー部の傾き検出の説明図である。
【図9】縦振動の変位によるピエゾ抵抗素子の抵抗値の変化を示す図である。
【図10】捻れ及び縦振動の変位によるピエゾ抵抗素子の抵抗値の変化を示す図である。
【図11】図10に示す状態での検出部から出力される検出電圧のオフセットの説明図である。
【図12】検出部から出力される検出電圧のオフセットの検出方法の説明図である。
【図13】制御部の具体的構成を示す図である。
【図14】制御部による光走査素子の具体的な駆動方法の流れを示す図である。
【図15】励起用信号を重畳した駆動信号の波形の例を示す図である。
【図16】本発明の一実施形態に係る画像表示装置の構成を示す図である。
【図17】従来の光走査素子の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[1.光走査装置]
以下に、本発明に好適な実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明では、まず、光走査装置について説明し、その後、画像表示装置について説明する。
【0022】
[1.1.光走査装置の概要]
まず、本実施形態に係る光走査装置について説明する。図1は光走査装置の構成を示す図、図2は駆動信号の波形を示す図、図3はミラー部の角度変化を示す図である。
【0023】
図1に示すように、光走査装置1は、当該光走査装置1全体を制御する制御部2と、この制御部2から出力される駆動信号Saに応じた強度の光束を出射する光源部3と、この光源部3から出射された光束を走査する光走査素子4とを備えている。
【0024】
制御部2は、光走査素子4のミラー部10を非共振モードで強制的に駆動する駆動電流であって、その電流振幅が鋸波状波形の駆動信号Sbを生成するものであり、生成した駆動信号Sbを光走査素子4に印加する。鋸波状の駆動信号Sbは、図2に示すように、最小レベルから最大レベルまで移行する期間に比べ、最大レベルから最小レベルへ移行する期間が十分に短い信号である。この駆動信号Sbにより、光走査素子4のミラー部10は、図3に示すように、駆動信号Sbの信号波形に基づいて後述する揺動軸Ly回りに鋸波状に揺動する。
【0025】
[1.2.光走査素子の具体的構成]
次に、光走査素子4の具体的構成について説明する。図4は光走査素子4の具体的構成を示す図である。
【0026】
図4(a)に示すように、光走査素子4は、反射面10aが形成されたミラー部10と、一対の梁部11a、11bと、一対の支持部12a,12bと、固定部13a,13bと、基台14とを有しており、ミラー部10を揺動軸Ly回りに揺動させて、光束を走査する。
【0027】
一対の梁部11a、11bは、揺動軸Lyに沿ってミラー部10の両側のそれぞれを弾性を持って支持し、捻れ変位によりミラー部10を揺動軸Ly回りに揺動可能としている。また、一対の支持部12a,12bは、一対の梁部11a,11bのそれぞれの他端をその中央部で弾性を持って支持すると共に両端部が基台14に固着された固定部13a,13bに固定されている。つまり、ミラー部10は一対の梁部11a、11bと一対の支持部12a,12bとによりに揺動可能に支持されている。
【0028】
ミラー部10の揺動軸Lyに平行な2辺に近接して永久磁石15a,15bが配置されている。永久磁石15a,15bが形成する磁界の向きは、静止状態のミラー部10の反射面10aに平行で、揺動軸Lyに直交する方向である。また、図4(b)に示すように、ミラー部10の反射面10aと反対側の裏面にはコイル16が形成されている。コイル16の電極は2つの梁部11a,11bを介して制御部2に接続する。この構成により、コイル16に駆動電流を流すとコイル16にローレンツ力が働く。図面視で揺動軸Lyから下半分のコイル16には例えば紙面の表面側にローレンツ力が働き、図面視で揺動軸Lyから上半分のコイル16には紙面の裏面側にローレンツ力が働く。これにより、ミラー部10には揺動軸Lyを中心として回転トルクが生ずる。従って、制御部2から出力する駆動信号Sbの電流の大きさを制御することにより、ミラー部10の傾き角を制御することができる。
【0029】
この光走査素子4には、さらに、ミラー部10の揺動角を検出する検出部18として、ピエゾ抵抗素子R1〜R4が設けられる。一対のピエゾ抵抗素子R1,R3は、支持部12a上に揺動軸Lyに対して対称配置される。ピエゾ抵抗素子R1は固定部13a側の支持部12a上に配置されており、ピエゾ抵抗素子R3は固定部13b側の支持部12a上に配置されている。同様に、一対のピエゾ抵抗素子R2,R4は、支持部12b上に揺動軸Lyに対して対称配置される。ピエゾ抵抗素子R2は固定部13a側の支持部12b上に配置されており、ピエゾ抵抗素子R4は固定部13b側の支持部12b上に配置されている。
【0030】
そして、一対のピエゾ抵抗素子R1,R3は、梁部11aに発生する捻れ変位に応じてその抵抗値が変化し、一対のピエゾ抵抗素子R2,R4は、梁部11bに発生する捻れ変位に応じてその抵抗値が変化する。
【0031】
図4(c)に示すように、一対のピエゾ抵抗素子R1,R3は、電源電位Vcと接地電位GND間に直列に配置される。また、同様に、一対のピエゾ抵抗素子R2,R4は、電源電位Vcと接地電位GNDに直列に配置される。すなわち、ピエゾ抵抗素子R1,R4の一端が電源電位Vcの電源に接続され、他端がピエゾ抵抗素子R2,R3の一端に接続される。ピエゾ抵抗素子R2,R3の他端は、接地電位GNDのグランドに接続される。
【0032】
図5は、図4(c)に示すピエゾ抵抗素子R1〜R4により構成される検出部18の等価回路である。この検出部18は、同図に示すように、一対のピエゾ抵抗素子R1,R3の接続点を第1出力ノードN1とし、他の一対のピエゾ抵抗素子R2,R4の接続点を第2出力ノードN2としている。そして、制御部2は、第1出力ノードN1の電圧VPR+と第2出力ノードN2の電圧VPR−とを入力しており、第2出力ノードN2の電圧を基準とした第1出力ノードN1の電圧を検出電圧Vd(=[VPR+]−[VPR−])としている。なお、ミラー部10に駆動信号が印加されていないとき、すなわち駆動信号の電流値が0[A]のとき、ピエゾ抵抗素子R1〜R4の抵抗値は変化がなく、ピエゾ抵抗素子R1〜R4の初期抵抗値が同一の場合には、検出電圧Vdは0Vとなる。
【0033】
ここで、各ピエゾ抵抗素子R1〜R4は、圧縮応力によりその抵抗値が上昇し、引張応力によりその抵抗値が下降する特性を有するものとすると、ミラー部10の変位により以下のように抵抗値が変化する。なお、ここでは、各ピエゾ抵抗素子R1〜R4は、同一材料及び同一形状であり、特性は同一であるものとする。
【0034】
例えば、図6に示すように、ミラー部10が揺動軸Ly回りに傾いたとき、ピエゾ抵抗素子R1,R2は圧縮応力によりその抵抗値が上昇し、ピエゾ抵抗素子R3,R4はその引張応力によりその抵抗値が下降する。そのため、第1出力ノードの電圧VPR+は下降し、第2出力ノードの電圧VPR−は上昇して、検出電圧Vdは正極性となる。そして、揺動軸Ly回りのミラー部10の角度が大きくなるほど、検出電圧Vdが大きくなる。一方、図6に示す方向とは逆方向にミラー部10が揺動軸Ly回りに傾いたとき、検出電圧Vdは負極性となり、揺動軸Ly回りのミラー部10の角度が大きくなるほど、検出電圧Vdが大きくなる。
【0035】
このように、検出電圧Vdの極性により、図4に示す平衡状態からのミラー部10の傾き方向がわかり、検出電圧Vdの大きさによりミラー部10の傾き角がわかる。この原理を利用して、制御部2は、揺動軸Ly回りのミラー部10の実際の傾き角を検出電圧Vdにより検出している。
【0036】
しかし、検出電圧Vdの極性によりミラー部10の傾き方向がわかるのは、各ピエゾ抵抗素子R1〜R4が、同一材料及び同一形状であり、特性が同一であることが前提であるが、実際には個体差などがある。そのため、ミラー部10の傾きがないときでも、検出電圧Vdにおいてオフセット電圧Vfが存在し(図7参照)、検出電圧Vdによりミラー部10の傾きを検出するためには、予めこのオフセット電圧Vfを知っておく必要がある。そこで、制御部2は、駆動信号Sbを光走査素子4に印加しないとき、すなわち駆動信号Sbの電流値を0[A]としたときの検出電圧Vdをオフセット電圧Vfと判定し、検出電圧Vdがオフセット電圧Vfよりも高いか低いかでミラー部10の傾き方向を検出している。
【0037】
また、ミラー部10の傾きの大きさは、例えば、図8に示すように、ミラー部10が所定の傾き+θ2となったときに、検査用光源20から出射する光束が入射する位置に光検出部21を設けることにより、検出することが可能となる。すなわち、光検出部21で検査用光源20から出射する光束を検出したときの検出電圧Vdを電圧Vrとすると、(Vr−Vf)/θ2を求めることにより、検出電圧Vdとミラー部10の傾き角θとの関係を把握し、検出電圧Vdに対するミラー部10の傾きの大きさを検出する。
【0038】
このように、制御部2は、検出電圧Vdに基づいて、図4に示す平衡状態からのミラー部10の傾き方向やミラー部10の傾き角を検出して、駆動信号Sbによりミラー部10を精度良く制御するようしている。
【0039】
ところで、光走査素子4は、駆動信号Sbによりミラー部10を揺動しているときに、上述して求めたオフセット電圧Vfや検出電圧Vdと傾き角θとの関係がずれることがある。例えば、ミラー部10の揺動を継続することにより、梁部11a,11bや支持部12a,12bなどに応力が加わって温度上昇し、オフセット電圧Vfや検出電圧Vdと傾き角θとの関係がずれることがある。また、経年変化により、オフセット電圧Vfや検出電圧Vdと傾き角θとの関係がずれることがある。このような場合には、駆動信号Sbによりミラー部10を精度良く制御することができない場合がある。そこで、制御部2は、駆動信号Sbによる捻れ変位に加え、共振による縦変位を加えることで、駆動信号Sbを光走査素子4に印加しているときに、オフセット電圧Vfや検出電圧Vdと傾き角θとの関係を検出するようにしている。
【0040】
以下、駆動信号Sbを光走査素子4に印加しているときに、オフセット電圧Vfや検出電圧Vdと傾き角θとの関係を検出する点について、具体的に説明する。
【0041】
光走査素子4は、反射面10aと平行な方向へ揺動する横振動の共振モードに加え、図9(a)に示すように、反射面10aと直交する方向へ揺動する縦振動の共振モードを有している。この縦振動の共振モードでは、例えば、図9(b)に示すように、ミラー部10が変位したとき、ピエゾ抵抗素子R1〜R4のすべてに圧縮応力が発生してその抵抗値が一様に上昇する。そのため、検出電圧Vdは変化しない。また、図9(b)に示す方向とは逆方向にミラー部10が変位した場合には、ピエゾ抵抗素子R1〜R4のすべてに引張応力が発生してその抵抗値が一様に下降する。そのため、検出電圧Vdは変化しない。
【0042】
一方、図10に示すように、ミラー部10に捻れ変位が生じて、ミラー部10が揺動軸Ly回りに傾いている状態(図6参照)で、上述のように反射面10aと垂直な方向へ共振(図9参照)が発生したとする。このとき、捻れ変位によるピエゾ抵抗素子R1,R2への圧縮応力が図6に示す状態よりも大きくなり、その抵抗値がさらに上昇する。他方、捻れ変位によるピエゾ抵抗素子R3,R4への引張応力は図6に示す状態よりも小さくなり、その抵抗値は下降する。このときの抵抗値の初期値、すなわち梁部11a,11bが平衡状態からの変化率は、ピエゾ抵抗素子R3,R4よりもピエゾ抵抗素子R1,R2の方が大きい。その結果、図6に示す状態に比べ、検出電圧Vdがより下降する。そして、この下降度合いは、ミラー部10に生じる捻れ変位が大きいほど、大きくなる。一方、共振により図9に示す方向とは逆方向に変位する力が働くと、図6に示す状態に比べ、検出電圧Vdはより上昇する。そして、この上昇度合いは、ミラー部10に生じる捻れ変位が大きいほど、大きくなる。
【0043】
このように、捻れ変位に加え、縦変位がミラー部10に加わると、縦変位の状態に応じて、捻れ変位によるピエゾ抵抗素子R1〜R4へ加わるトータルの圧縮応力や引張応力が変動する。すなわち、駆動信号Sbで光走査素子4のミラー部10を鋸波状に駆動している状態で、共振による縦振動が発生したとき、検出電圧Vdは図11(a)に示すようになる。この検出電圧Vdを微分すると、図11(b)に示す特性となる。なお、ここでは、縦振動の共振モードの共振周波数が駆動信号Sbの周波数に比べて十分に高いものとしている。
【0044】
制御部2は、このような光走査素子4の特性を利用しており、検出電圧Vdの変動率に基づいて、縦振動の共振モードを検出することができる。検出電圧Vdの変動率として、制御部2は、検出電圧Vdを微分した値(以下、微分値ΔVdという)の変動を検出するようにしている。すなわち、駆動信号Sbで光走査素子4のミラー部10を鋸波状に駆動している状態で、共振による縦振動が発生したときには、ミラー部10の傾き角度に応じて微分値ΔVdの大きさが異なることとなり、制御部2は、この微分値ΔVdの変動により、励起された縦振動の共振モードを検出している。
【0045】
さらに、光走査素子4のミラー部10を駆動信号Sbにより鋸波状に駆動しており、かつミラー部10に縦変位が加わっている状態において、ミラー部10に傾きが小さくなってミラー部10の傾き角が0付近になると、図11(b)に示すように、検出電圧Vdに対する縦変位による影響が最も小さくなる。すなわち、このとき、捻れ変位の影響がわずかであるため、微分値ΔVdは、単に縦変位のみが加わっているときの状態に近似する。従って、このときの微分値ΔVdの変動が最も小さくなる範囲の微分値ΔVdをオフセット電圧Vfとして判定することで、ミラー部10を駆動中に、オフセット電圧Vfが変動した場合であっても、ミラー部10の傾き方向を精度良く検出することができる。なお、ミラー部10の傾き角が0になると、検出電圧Vdに対する縦変位による影響がなくなるが、縦変位が連続して加わっているため、ミラー部10の傾き角が0のときの微分値ΔVdを判定することは難しい。しかし、所定期間に微分値ΔVdの変動が最も小さくなる範囲は容易に検出することができるため、微分値ΔVdの変動が最も小さくなる範囲を検出し、このときの検出電圧Vdをオフセット電圧Vfとして判定することができる。
【0046】
制御部2は、このような特性を利用して、駆動信号Sbで光走査素子4のミラー部10を鋸波状に駆動しているときに縦変位を加え、微分値ΔVdの変動が最も小さくなる範囲の微分値ΔVdをオフセット電圧Vfとして判定するようにしている。
【0047】
例えば、図12(a),(b)に示すように、微分値ΔVdの変動が所定範囲ΔVds内になったときに、このときの検出電圧Vdの平均値をオフセット電圧Vfとして判定することができる。このとき、微分値ΔVdの変動が所定範囲ΔVds内になるときの検出電圧Vdの最大値Vd1と最小値Vd2とから以下の式を用いてオフセット電圧Vfを判定するようにしてもよい。
Vf=(Vd1+Vd2)/2
【0048】
また、図12(a),(c)に示すように、上側包絡線D1の変曲点k1となるときの検出電圧Vdや下側包絡線D2の変曲点k2となるときの検出電圧Vdをオフセット電圧Vfとすることができる。
【0049】
このように制御部2は、所定期間の微分値ΔVdの変動が所定範囲(最小範囲)になる検出電圧Vdをオフセット電圧Vfとして判定することで、ミラー部10を駆動中に、オフセット電圧Vfが変動した場合であっても、ミラー部10の傾き方向を精度良く検出することができるようにしている。
【0050】
また、制御部2は、駆動信号Sbで光走査素子4のミラー部10を鋸波状に駆動しているときに縦変位を加えてきる状態で、所定期間(例えば、図12(b)に示すタイミングt1〜t2の期間)の微分値ΔVdの平均値を検出する。制御部2は、この微分値ΔVdの平均値から検出電圧Vdとミラー部10の傾き角θとの関係を判定する。このようにすることで、オフセット電圧Vfを求めるときに、同時に、検出電圧Vdに対するミラー部10の傾きの大きさを判定することができる。このような判定ができるのは、前記所定期間の微分値ΔVdの平均値を演算することで、微分値ΔVdから共振モードの周波数成分を除去することができ、かつ、微分値ΔVdが検出信号Vdの変化度合いを示すためである。
【0051】
なお、制御部2は、駆動信号Sbで光走査素子4のミラー部10を鋸波状に駆動しているときに縦変位を加えることなく、微分値ΔVdを検出して、この微分値ΔVdから検出電圧Vdとミラー部10の傾き角θとの関係を判定することができる。すなわち、縦変位を加えないときには、微分値ΔVdには図11に示すような共振周波数成分が重畳しておらず、所定期間において、微分値ΔVdは一定の大きさとなる。そのため、微分値ΔVdは、検出電圧Vdに対するミラー部10の傾きの大きさを示すことになり、制御部2は、微分値ΔVdを検出して、この微分値ΔVdから検出電圧Vdとミラー部10の傾き角θとの関係を判定することができる。
【0052】
以上のように、本実施形態に係る光走査装置1では、光走査素子4のミラー部10を揺動中においても、検出電圧Vdのオフセットや検出電圧Vdとミラー部10の傾き角θとの関係を把握することができる。そのため、光走査素子4のミラー部10の傾き方向や傾きの大きさを二対のピエゾ抵抗素子R1〜R4に基づいて精度良く検出でき、光走査素子4のミラー部10を精度良く制御することができる。
【0053】
なお、上述では、二対のピエゾ抵抗素子R1〜R4を用いることとしたが、一対のピエゾ抵抗素子R1,R3(又は、一対のピエゾ抵抗素子R2,R4)を用いて、検出電圧Vdのオフセットや検出電圧Vdとミラー部10の傾き角θとの関係を把握するようにしてもよい。この場合、検出電圧Vdの基準を電圧Vc/2とし、この電圧Vc/2からの検出電圧Vdのオフセットを求めることになる。なお、二対のピエゾ抵抗素子R1〜R4を用いることにより、検出電圧Vdのレンジを大きくすることができるが、一対のピエゾ抵抗素子のみでは検出電圧Vdのレンジは小さいため、検出電圧Vdを電圧増幅する増幅器をピエゾ抵抗素子間の出力ノードN1(N2)と制御部2との間に設けるようにしてもよい。
【0054】
また、上述では、各ピエゾ抵抗素子R1〜R4は、圧縮応力によりその抵抗値が上昇し、引張応力によりその抵抗値が下降するものとして説明したが、圧縮応力によりその抵抗値が下降し、引張応力によりその抵抗値が上昇するものであっても同様である。
【0055】
[1.3.制御部2の具体的な構成及び処理]
次に、制御部2の具体的な構成及び処理について図面を参照して具体的に説明する。なお、ここでは、光走査素子4のミラー部の揺動処理について主に説明し、光束の出射制御などについては説明を省略する。
【0056】
図13に示すように、制御部2は、駆動信号生成部40、ΔVd−θ特性判定部41、微分回路42、オフセット電圧判定部43、ΔVd−θ関係判定部44、記憶部45などから構成される。
【0057】
駆動信号生成部40は、記憶部45に記憶されている第1駆動信号波形データ51及び第2駆動信号波形データ52のうちいずれかを読み出し、読み出した波形データに基づいた駆動信号Sbを生成して出力する。
【0058】
ΔVd−θ特性判定部41は、記憶部45に設定されているオフセット電圧値53とΔVd−θ関係テーブル54とを読み出し、このように読み出したオフセット電圧値53とΔVd−θ関係テーブル54に基づき、光走査素子4の検出部18から出力される検出電圧Vdと駆動信号生成部40から出力される駆動信号Sbとを比較する。そして、ΔVd−θ特性判定部41は、検出電圧Vdと駆動信号Sbとが、読み出したオフセット電圧値53とΔVd−θ関係テーブル54とに規定する関係になるように、駆動信号生成部40から出力する駆動信号Sbの振幅をフィードバック制御する。
【0059】
微分回路42は、光走査素子4の検出部18から出力される検出電圧Vdを微分することにより微分値ΔVdを生成して、この微分値ΔVdをオフセット電圧判定部43やΔVd−θ関係判定部44へ出力する。
【0060】
オフセット電圧判定部43は、上述したように、微分値ΔVdの変動が所定範囲(最小範囲)になる検出電圧Vdをオフセット電圧Vfとして判定する。そして、オフセット電圧判定部43は、このように判定したオフセット電圧Vfと記憶部45に記憶したオフセット電圧値53とが一致するか否かを判定する。これらが一致しないとき、オフセット電圧判定部43は、記憶部45に記憶したオフセット電圧値53を上記判定したオフセット電圧Vfの値に変更する。
【0061】
ΔVd−θ関係判定部44は、上述したように、所定期間における微分値ΔVdの平均値を求めて、検出電圧Vdとミラー部10の傾き角θとの関係を判定する。そして、ΔVd−θ関係判定部44は、このように判定した結果と記憶部45に記憶したΔVd−θ関係テーブル54とが一致するか否かを判定する。これらが一致しないとき、ΔVd−θ関係判定部44は、記憶部45に記憶したΔVd−θ関係テーブル54を上記判定結果に基づき変更する。
【0062】
以上のように構成された制御部2による光走査素子4の具体的な駆動方法の流れについて、図14を参照して具体的に説明する。
【0063】
制御部2は、図14に示すように、光走査素子4の動作を開始すると、検出部18から出力される検出電圧Vdをオフセット電圧Vfと判定して、記憶部45にオフセット電圧値53として設定する(ステップS10)。具体的には、駆動信号Sbが光走査素子4に印加されていない状態で、オフセット電圧判定部43が、微分回路42から出力される微分値ΔVdをオフセット電圧値53として記憶部45に記憶する。
【0064】
次に、駆動信号生成部40は、記憶部45に記憶されている第1駆動信号波形データ51を読み出し、このように読み出した第1駆動信号波形データ51に基づいた駆動信号Sbを生成して光走査素子4に出力し、ミラー部10の揺動軸Ly回りの揺動を開始する(ステップS11)。
【0065】
次に、ミラー部10の揺動軸Ly回りの揺動をしている状態で、駆動信号生成部40は、検査用光源20(図8参照)から光束を出射させる(ステップS12)。このとき、ΔVd−θ関係判定部44は、光検出部21で検査用光源20から出射する光束を検出したときの検出電圧Vdを基準位置電圧Vrとし、(Vr−Vf)/θ2を求める。このようにすることで、ΔVd−θ関係判定部44は、検出電圧Vdとミラー部10の傾き角θとの関係を検出して、記憶部45にΔVd−θ関係テーブルとして設定(記憶)する(ステップS13)。
【0066】
次に、駆動信号生成部40は、調整タイミングとなったか否かを判定する(ステップS14)。この調整タイミングは、所定間隔で発生するタイミングである。この処理において、調整タイミングとなったと判定すると(ステップS14:Yes)、駆動信号生成部40は、記憶部45から第2駆動信号波形データ52を読み出して、この第2駆動信号波形データ52に基づき駆動信号Sbを生成して光走査素子4へ出力する。この駆動信号Sbは、光走査素子4のミラー部10に縦共振を生じさせる周波数成分の信号である励起用信号を含む駆動信号であり、この駆動信号Sbに基づきミラー部10を揺動させる(ステップS15)。この励起用信号を含む駆動信号Sbは、例えば、図15(a)に示すように、第1駆動信号波形データ51に基づく駆動信号Sbよりも立ち下がりを急峻にしてミラー部10に縦共振を生じさせる周波数成分からなる励起用信号を含ませた信号波形とすることができる。また、図15(b)に示すように、励起用信号を含む駆動信号Sbは、第1駆動信号波形データ51に基づく信号波形に励起用信号を重畳させた信号波形とすることができる。
【0067】
制御部2は、この励起用信号を含む駆動信号Sbを光走査素子4へ印加を開始した後所定期間が経過したか否かを判定する(ステップS16)。このように、所定期間が経過するまで待つのは、ミラー部10の揺動軸回りの揺動を開始した後、横振動の共振モードによる反射面10aと平行な方向への揺動が所定範囲内に収束した後に、検出部18のオフセットなどを検出するためである。このようにすることで、検出部18のオフセットなどを精度良く検出することができる。なお、横振動の共振モードは、1次の共振モードであり、縦振動の共振モードは、2次の共振モードである。従って、横振動の共振モードは、縦振動の共振モードの共振周波数よりもその共振周波数の方が低く、ミラー部10の揺動を開始したときに発生しやすい。
【0068】
ステップS16の処理において、所定期間が経過したと判定したとき(ステップS16:Yes)、オフセット電圧判定部43は、微分値ΔVdの変動が所定範囲(最小範囲)であるか否かを判定する(ステップS17)。
【0069】
ステップS17において、微分値ΔVdの変動が所定範囲であると判定すると(ステップS17:Yes)、オフセット電圧判定部43は、検出電圧Vdをオフセット電圧Vfとして判定する。そして、オフセット電圧判定部43は、このように判定したオフセット電圧Vfと記憶部45に記憶したオフセット電圧値53とが一致するか否か、すなわちオフセット電圧Vfに変化があるか否かを判定する(ステップS18)。
【0070】
ステップS18において、オフセット電圧Vfに変化があると判定すると(ステップS18:Yes)、オフセット電圧判定部43は、記憶部45に記憶したオフセット電圧値53をステップS18において判定したオフセット電圧Vfの値に変更する(ステップS19)。一方、オフセット電圧Vfに変化がないと判定すると(ステップS18:No)、ΔVd−θ関係判定部44は、所定期間における微分値ΔVdの平均値を求める。そして、ΔVd−θ関係判定部44は、この平均値から検出電圧Vdとミラー部10の傾き角θとの関係を求めて、変動があるか否かを判定する(ステップS20)。すなわち、ΔVd−θ関係判定部44は、微分値ΔVdの平均値を求めた検出電圧Vdとミラー部10の傾き角θとの関係が、記憶部45に記憶したΔVd−θ関係テーブル54とは異なる関係になっているか否かを判定する。
【0071】
ステップS20において、微分値ΔVdの平均値に変動があると判定すると(ステップS20:Yes)、ΔVd−θ関係判定部44は、微分値ΔVdの平均値から求めた検出電圧Vdとミラー部10の傾き角θとの関係に基づき、記憶部45に記憶したΔVd−θ関係テーブル54を変更する(ステップS21)。
【0072】
ステップS19,S21の処理が終了したとき、調整タイミングとなっていないとき(ステップS14:No)、所定期間が経過していないとき(ステップS16:No)、微分値ΔVdが所定範囲外のとき(ステップS17:No)、微分値ΔVdの平均値に変動がないと判定したとき(ステップS20:No)、制御部2は、処理終了の要求がなされたか否かを判定する(ステップS22)。このとき、処理終了の要求がないときには(ステップS22:No)、制御部2は、処理をステップS16に戻す。一方、処理終了の要求があると判定したとき(ステップS22:Yes)、制御部2は、処理を終了する。
【0073】
以上のように、制御部2は、所定の調整タイミングで、捻れ変位に加え、共振による縦変位を加えるようにしており、これにより、検出電圧Vdの微分値ΔVdに基づき、オフセット電圧VfやΔVd−θ関係テーブル54を変更可能としている。このようにすることで、光走査素子4を動作させているとでも、オフセット電圧VfやΔVd−θ関係テーブル54の校正が可能となる。
【0074】
[2.画像表示装置]
次に、上述した光走査素子を備えた画像表示装置について説明する。
【0075】
図16に示すように、本実施形態に係る画像表示装置100は、制御部110、光源部120、走査部140、第2リレー光学系180、ハーフミラー185などを有している。
【0076】
制御部110は、駆動信号供給部111、主走査駆動信号生成部112、副走査駆動信号生成部113、主制御部114を有している。駆動信号供給部111は、外部から入力された画像信号S(例えば、NTSCコンポジット信号、コンポーネント信号)に基づいて、画像を形成するための要素となる三原色各色のRGB画素信号115r,115g,115bを画素単位で生成する。主走査駆動信号生成部112は、主走査部160の後述する光走査素子161が共振状態で所定走査範囲となるように、主走査部160で使用される主走査駆動信号116を生成して出力する。また、副走査駆動信号生成部113は、主走査駆動信号116の周波数に基づいて、副走査部170で使用される鋸波形状の副走査駆動信号117を生成して出力する。
【0077】
光源部120には、Rレーザドライバ121,Gレーザドライバ122,Bレーザドライバ123が設けられる。各レーザドライバ121,122,123は、それぞれ駆動信号供給部111から出力されるR,G,B駆動信号115r,115g,115bをもとに、各レーザ124,125,126へそれぞれ駆動電流を供給する。各レーザ124,125,126は、各レーザドライバ121,122,123から供給される駆動電流に応じて強度変調されたレーザ光を出射する。各レーザ124,125,126から出射したR(赤色)レーザ光Lr,G(緑色)レーザ光Lg、B(青色)レーザ光Lbは、コリメート光学系127,128,129によってそれぞれ平行光化された後に、ダイクロイックミラー130,131,132に入射される。その後、これらのダイクロイックミラー130,131,132により、3原色の各レーザ光Lr,Lg,Lbが波長選択的に反射・透過して結合光学系133に達し、合波されて光ファイバケーブル135へ出射される。このように光ファイバケーブル135へ出射されるレーザ光は、強度変調された各色のレーザ光が合波されたものである。
【0078】
走査部140は、コリメート光学系151、主走査部160、第1リレー光学系165、副走査部170、検査用光源182、光検出部183などを有している。
【0079】
コリメート光学系151は、光源部120で生成され、光ファイバケーブル135を介して出射されるレーザ光を平行光化する。
【0080】
主走査部160及び副走査部170は、光ファイバケーブル135から入射されたレーザ光を画像として利用者の眼190の網膜190bに投影可能な状態にするために、主走査方向と副走査方向に走査する光学系である。主走査部160は、コリメート光学系151で平行光化されて入射するレーザ光を主走査方向に相対的に高速に往復走査する光走査素子161を有する。また、副走査部170は、主走査部160で主走査方向に走査され、第1リレー光学系165を介して入射するレーザ光を副走査方向に相対的に低速に走査する光走査素子171を有する。この副走査方向は主走査方向に略直交する方向である。例えば、主走査方向を水平方向、副走査方向を垂直方向とすることができる。なお、検査用光源182及び光検出部183は、主走査部160の走査位置を検出するために設けられており、主走査部160の走査位置が所定位置となったときに、検査用光源182から出射する光束が入射する位置に光検出部183を設けている。
【0081】
主走査部160と副走査部170との間でレーザ光を中継する第1リレー光学系165は、光走査素子161によって主走査方向に走査されたレーザ光を光走査素子171のミラー部に収束させる。そして、このレーザ光が光走査素子171によって副走査方向に走査される。光走査素子171によって走査されたレーザ光は、正の屈折力を持つ2つのレンズ180a,180bが直列配置された第2リレー光学系180を介して、眼190の前方に位置させたハーフミラー185で反射されて利用者の瞳孔190aに入射する。これにより、網膜190b上に画像信号Sに応じた画像が投影され、利用者は瞳孔190aに入射するレーザ光を画像として認識する。また、ハーフミラー185は外光L2を透過して利用者の瞳孔190aに入射させるようにしており、これにより利用者は外光L2に基づく外景にレーザ光L1に基づく画像を重ねた画像を視認することができる。このように画像表示装置100は、画像信号Sに応じた画像と外景とを重ねて利用者の眼190の網膜に結像させる、シースルー型網膜走査型画像表示装置である。
【0082】
以上のように構成された画像表示装置100において、光走査素子171は、光走査素子4と同様の構成であり、副走査駆動信号生成部113は、上述した光走査装置1の制御部2と同様に、光走査素子171を駆動するようにしている。そのため、光走査素子171のミラー部の揺動中においても、検出電圧Vdのオフセットや検出電圧とミラー部の傾き角θとの関係を把握することができる。そのため、光走査素子171のミラー部の傾き方向や傾きの大きさを二対のピエゾ抵抗素子に基づいて精度良く検出でき、光走査素子171のミラー部を精度良く制御可能となる。
【0083】
なお、ここでは、光束の一例として、効率面で有利であるレーザ光を用いているが、光束はレーザ光に限られるものではない。
【0084】
本発明を、上述してきた実施形態を通して説明したが、本実施形態によれば、以下の効果が期待できる。
【0085】
(1)入射する光束を反射面10aが形成されたミラー部10により所定方向に走査する光走査素子4と、駆動信号Sbにより光走査素子4のミラー部10を揺動軸Ly回りに揺動させる制御部2と、を備えた光走査装置1において、光走査素子4は、揺動軸Lyに沿ってミラー部10の両側のそれぞれを弾性を持って支持し、捻れ変位によりミラー部10に揺動軸Ly回りの揺動を可能とする一対の梁部11a,11bと、一対の梁部11a,11bのそれぞれの他端をその中央部で弾性を持って支持すると共に両端部が固定部13a,13bに固定された一対の支持部12a,12bと、一対の支持部12a,12bのうち少なくとも一方の支持部12a,12b上に揺動軸Lyに対して対称配置され、電圧Vcとグランド間(所定電位間)に直列接続された一対のピエゾ抵抗素子R1,R3(R2,R4)を有する検出部18と、を有し、制御部2は、一対のピエゾ抵抗素子R1,R3(R2,R4)間の出力ノードN1,N2(接続点)の電圧VPR+,VPR−に基づき、ミラー部10の揺動状態を検出し、駆動信号Sbを生成する処理と、光走査素子4のミラー部10の揺動軸Ly回りの揺動を開始した後、出力ノードN1,N2の電圧変動率に基づき、光走査素子4が共振により反射面10aと直交する方向への揺動が加わっている状態であると判定すると、当該状態において出力ノードN1,N2の電圧変動率が所定範囲内になったときの出力ノードN1,N2の電圧に基づき、出力ノードN1,N2の電圧VPR+,VPR−のオフセット電圧Vfを判定する処理と、を実行するので、周囲温度変化や経時変化によりピエゾ抵抗素子の抵抗値に変動が生じた場合であっても、ミラー部の揺動を停止することなく、ピエゾ抵抗素子による検出結果の校正を行うことができる。
【0086】
(2)検出部18は、揺動軸Lyに対して対称配置される一対のピエゾ抵抗素子R1,R3(R2,R4)を、一対の支持部12a,12bのそれぞれに設け、これら二対のピエゾ抵抗素子R1,R3(R2,R4)間の出力ノードN1,N2(接続点)の電圧変動率に基づき、オフセット電圧Vfを判定するので、二対のピエゾ抵抗素子に基づいてオフセット電圧を精度良く検出でき、光走査素子のミラー部を精度良く制御することができる。
【0087】
(3)光走査素子4は、反射面10aと平行な方向へ揺動する横振動の共振モード(第1共振モード)と反射面10aと直交する方向へ揺動する縦振動の共振モード(第2共振モード)を有しており、制御部2は、ミラー部10の揺動軸Ly回りの揺動を開始した後、横振動の共振モードによる反射面10aと平行な方向への揺動が所定範囲内に収束した後に、一対のピエゾ抵抗素子R1,R3(R2,R4)間の出力ノードN1,N2(接続点)の電圧VPR+,VPR−のオフセット電圧Vfの判定処理を実行するので、オフセット電圧を精度良く検出でき、光走査素子のミラー部を精度良く制御することができる。
【0088】
(4)制御部2は、反射面10aと直交する方向への揺動を励起する励起用信号を含む駆動信号Sbにより光走査素子4のミラー部10を揺動軸Ly回りに揺動させて、反射面10aと直交する方向への揺動を生じさせるので、ミラー部に縦振動が生じていない場合であっても、ミラー部の揺動を停止することなく、ピエゾ抵抗素子による検出結果の校正を行うことができる。
【0089】
(5)画像信号Sに応じた強度の光束を主走査方向(第1方向)に相対的に高速に走査する光走査素子161(第1の光走査素子)と副走査方向(第1方向に略直交する方向)に相対的に低速に走査する光走査素子171(第2の光走査素子)とにより2次元走査する走査部140と、これらの光走査素子161,171を制御する制御部110と、を備えた画像表示装置100において、光走査素子171(第2の光走査素子)は、揺動軸Lyに沿ってミラー部10の両側のそれぞれを弾性を持って支持し、捻れ変位によりミラー部10に揺動軸回りの揺動を可能とする一対の梁部11a,11bと、一対の梁部11a,11bのそれぞれの他端をその中央部で弾性を持って支持すると共に両端部が固定部に固定された一対の支持部12a,12bと、一対の支持部12a,12bのうち少なくとも一方の支持部上に揺動軸Lyに対して対称配置され、電圧Vcとグランド間(所定電位間)に直列接続された一対のピエゾ抵抗素子R1,R3(R2,R4)を有する検出部18と、を有し、制御部110は、一対のピエゾ抵抗素子R1,R3(R2,R4)間の出力ノードN1,N2(接続点)の電圧VPR+,VPR−に基づき、ミラー部10の揺動状態を検出し、駆動信号Sbを生成する処理と、光走査素子4のミラー部10の揺動軸Ly回りの揺動を開始した後、出力ノードN1,N2の電圧変動率に基づき、光走査素子4が共振により反射面10aと直交する方向への揺動が加わっている状態であると判定すると、当該状態において出力ノードN1,N2の電圧変動率が所定範囲内になったときの出力ノードN1,N2の電圧に基づき、出力ノードN1,N2の電圧VPR+,VPR−のオフセット電圧Vfを判定する処理と、を実行するので、周囲温度変化や経時変化によりピエゾ抵抗素子の抵抗値に変動が生じた場合であっても、ミラー部の揺動を停止することなく、ピエゾ抵抗素子による検出結果の校正を行うことができる。
【0090】
(6)光走査素子161,171で走査された光束を利用者の眼190に入射させて、利用者の網膜190b上に画像信号Sに応じた画像を投影するので、周囲温度変化や経時変化によりピエゾ抵抗素子の抵抗値に変動が生じた場合であっても、ミラー部の揺動を停止することなく、ピエゾ抵抗素子による検出結果の校正を行うことができる網膜走査型の画像表示装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 光走査装置
2,110 制御部
4, 161,171 光走査素子
10 ミラー部
10a 反射面
11a,11b 一対の梁部
12a,12b 一対の支持部
13a,13b 固定部
100 画像表示装置
Sb 駆動信号
R1〜R4 ピエゾ抵抗素子
N1,N2 出力ノード(接続点)
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射する光束を反射面が形成されたミラー部により所定方向に走査する光走査素子を備えた光走査装置及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、入射する光束を反射面が形成されたミラー部により所定方向に走査する光走査素子と、駆動信号により光走査素子のミラー部を揺動軸回りに揺動させる制御部と、を備えた光走査装置や画像表示装置が知られている。
【0003】
光走査装置や画像表示装置に用いられる光走査素子として、図17に示すように、反射面201aが形成されたミラー部201と、一対の梁部202a,202bと、一対の支持部203a,203bと、固定部204とを有して、ミラー部201を揺動軸Ly回りに揺動させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この光走査素子200において、一対の梁部202a,202bは、揺動軸Lyに沿ってミラー部201の両側のそれぞれを弾性を持って支持し、捻れ変位によりミラー部201を揺動軸Ly回りに揺動可能とする。また、一対の支持部203a,203bは、一対の梁部202a,202bのそれぞれの他端をその中央部で弾性を持って支持すると共に両端部が固定部204a,204bに固定されている。なお、固定部204a,204bは基台205に固着されている。
【0005】
光走査素子200におけるミラー部201を揺動軸Ly回りに揺動させる方法として、例えば、電磁駆動方式や静電駆動方式などがある。電磁駆動式の揺動方法では、例えば、ミラー部201の裏面にコイルを配置すると共に、ミラー部201の揺動軸Lyに平行な2辺に近接して永久磁石を設け、コイルに駆動信号(駆動電流)を流してローレンツ力を発生させる。これにより、ミラー部201に揺動軸Lyを中心とした回転トルクが生じ、ミラー部201が揺動軸Lyを中心として揺動する。
【0006】
このような光走査素子200では、周囲温度、経年変化、個体差などにより、ミラー部201を揺動させるための駆動信号と、実際のミラー部201の揺動角との間に一定の関係が保たれない。しかし、ミラー部201によって光束を所望の方向に走査するためには、光走査素子200を駆動する制御部において、ミラー部201を揺動させるための駆動信号と実際のミラー部201の揺動角との関係を知っておく必要がある。
【0007】
そのため、従来の光走査装置や画像表示装置では、ミラー部の揺動軸Ly回りの揺動角を検出する検出手段を設けている。例えば、特許文献2では、ミラー部の揺動軸Ly回りの揺動角を検出するために、揺動角検出用の光源と検出手段とを別途設けている。そして、ミラー部が揺動状態のときに、ミラー部の反射面に揺動角検出用の光源から所定の光束を入射してミラー部の反射面で走査させ、所定の位置に配置された光検出手段による光束の検出結果に基づいてミラー部の揺動状態を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−83603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した従来の光走査素子では、所定の位置に配置された光検出手段による光束の検出タイミングの間隔などからミラー部の揺動状態を演算して検出するため、その演算プログラムの設計コストがかかり、また、演算処理による負荷も大きい。
【0010】
そこで、光走査素子の支持部上にそれぞれピエゾ抵抗素子を配置して、このピエゾ抵抗素子の抵抗変動に基づいて、ミラー部の揺動状態の検出を行うことが考えられる。
【0011】
しかしながら、ミラー部の揺動を開始した後に、ピエゾ抵抗素子の周囲温度変化や経時変化が発生した場合、ピエゾ抵抗素子の抵抗値が変動し、ミラー部の揺動状態の検出を精度良く行うことができなくなる。
【0012】
本発明は、上述したような課題に鑑みてなされたものであり、周囲温度変化や経時変化によりピエゾ抵抗素子の抵抗値に変動が生じた場合であっても、ミラー部の揺動を停止することなく、ピエゾ抵抗素子による検出結果の校正を行うことができる光走査装置及び画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、入射する光束を反射面が形成されたミラー部により所定方向に走査する光走査素子と、駆動信号により前記光走査素子のミラー部を揺動軸回りに揺動させる制御部と、を備えた光走査装置において、前記光走査素子は、前記揺動軸に沿って前記ミラー部の両側のそれぞれを弾性を持って支持し、捻れ変位により前記ミラー部を前記揺動軸回りに揺動可能とする一対の梁部と、前記一対の梁部のそれぞれの他端をその中央部で弾性を持って支持すると共に両端部が固定部に固定された一対の支持部と、前記一対の支持部のうち少なくとも一方の支持部上に前記揺動軸に対して対称配置され、所定電位間に直列接続された一対のピエゾ抵抗素子を有する検出部と、を有し、前記制御部は、前記一対のピエゾ抵抗素子間の接続点の電圧に基づき、前記ミラー部の揺動状態を検出し、前記駆動信号を生成する処理と、前記光走査素子のミラー部の揺動軸回りの揺動を開始した後、前記接続点の電圧変動率に基づき、前記光走査素子が共振により前記反射面と直交する方向への揺動が加わっている状態であると判定すると、当該状態において前記接続点の電圧変動率が所定範囲内になったときの前記接続点の電圧に基づき、前記接続点の電圧のオフセット値を判定する処理と、を実行することとした。
【0014】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の光走査装置において、前記検出部は、前記揺動軸に対して対称配置される一対のピエゾ抵抗素子を、前記一対の支持部のそれぞれに設け、これら二対のピエゾ抵抗素子間の接続点の電圧変動率に基づき、前記オフセット値を判定することとした。
【0015】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の光走査装置において、前記光走査素子は、前記反射面と平行な方向へ揺動する第1共振モードと前記反射面と直交する方向へ揺動する第2共振モードを有しており、前記制御部は、前記ミラー部の揺動軸回りの揺動を開始した後、前記第1共振モードによる前記反射面と平行な方向への揺動が所定範囲内に収束した後に、前記一対のピエゾ抵抗素子接続点の電圧のオフセット値の判定処理を実行することとした。
【0016】
また、請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光走査装置において、前記制御部は、前記反射面と直交する方向への揺動を励起する励起用信号を含む駆動信号により前記光走査素子のミラー部を揺動軸回りに揺動させて、前記反射面と直交する方向への揺動を生じさせることとした。
【0017】
また、請求項5に係る発明は、画像信号に応じた強度の光束を第1方向に相対的に高速に走査する第1の光走査素子と前記第1方向に略直交する第2方向に相対的に低速に走査する第2の光走査素子とにより2次元走査する走査部と、前記第1及び第2の光走査素子を制御する制御部と、を備えた画像表示装置において、前記第2の光走査素子は、前記揺動軸に沿って前記ミラー部の両側のそれぞれを弾性を持って支持し、捻れ変位により前記ミラー部を前記揺動軸回りに揺動可能とする一対の梁部と、前記一対の梁部のそれぞれの他端をその中央部で弾性を持って支持すると共に両端部が固定部に固定された一対の支持部と、前記一対の支持部のうち少なくとも一方の支持部上に前記揺動軸に対して対称配置され、所定電位間に直列接続された一対のピエゾ抵抗素子を有する検出部と、を有し、前記制御部は、前記一対のピエゾ抵抗素子間の接続点の電圧に基づき、前記ミラー部の揺動状態を検出し、前記駆動信号を生成する処理と、前記光走査素子のミラー部の揺動軸回りの揺動を開始した後、前記接続点の電圧変動率に基づき、前記光走査素子が共振により前記反射面と直交する方向への揺動が加わっている状態であると判定すると、当該状態において前記接続点の電圧変動率が所定範囲内になったときの前記接続点の電圧に基づき、前記接続点の電圧のオフセット値を判定する処理と、を実行することとした。
【0018】
また、請求項6に係る発明は、請求項5に記載の画像表示装置において、前記第1の光走査素子及び前記第2の光走査素子で走査された光束を利用者の眼に入射させて、前記利用者の網膜上に画像信号に応じた画像を投影することとした。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ピエゾ抵抗素子によりミラー部の揺動状態の検出を行う光走査装置及び画像表示装置において、周囲温度変化や経時変化によりピエゾ抵抗素子の抵抗値に変動が生じた場合であっても、ミラー部の揺動を停止することなく、ピエゾ抵抗素子による検出結果の校正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る光走査装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示す光走査素子を駆動する駆動信号の波形を示す図である。
【図3】図1に示す光走査素子をミラー部の角度変化を示す図である。
【図4】図1に示す光走査素子の具体的構成を示す図である。
【図5】ピエゾ抵抗素子により構成される検出部の等価回路である。
【図6】捻れ変位によるピエゾ抵抗素子の抵抗値の変化を示す図である。
【図7】ピエゾ抵抗素子により構成される検出部から出力される検出電圧のオフセットの説明図である。
【図8】検査用光源と光検出部によるミラー部の傾き検出の説明図である。
【図9】縦振動の変位によるピエゾ抵抗素子の抵抗値の変化を示す図である。
【図10】捻れ及び縦振動の変位によるピエゾ抵抗素子の抵抗値の変化を示す図である。
【図11】図10に示す状態での検出部から出力される検出電圧のオフセットの説明図である。
【図12】検出部から出力される検出電圧のオフセットの検出方法の説明図である。
【図13】制御部の具体的構成を示す図である。
【図14】制御部による光走査素子の具体的な駆動方法の流れを示す図である。
【図15】励起用信号を重畳した駆動信号の波形の例を示す図である。
【図16】本発明の一実施形態に係る画像表示装置の構成を示す図である。
【図17】従来の光走査素子の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[1.光走査装置]
以下に、本発明に好適な実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明では、まず、光走査装置について説明し、その後、画像表示装置について説明する。
【0022】
[1.1.光走査装置の概要]
まず、本実施形態に係る光走査装置について説明する。図1は光走査装置の構成を示す図、図2は駆動信号の波形を示す図、図3はミラー部の角度変化を示す図である。
【0023】
図1に示すように、光走査装置1は、当該光走査装置1全体を制御する制御部2と、この制御部2から出力される駆動信号Saに応じた強度の光束を出射する光源部3と、この光源部3から出射された光束を走査する光走査素子4とを備えている。
【0024】
制御部2は、光走査素子4のミラー部10を非共振モードで強制的に駆動する駆動電流であって、その電流振幅が鋸波状波形の駆動信号Sbを生成するものであり、生成した駆動信号Sbを光走査素子4に印加する。鋸波状の駆動信号Sbは、図2に示すように、最小レベルから最大レベルまで移行する期間に比べ、最大レベルから最小レベルへ移行する期間が十分に短い信号である。この駆動信号Sbにより、光走査素子4のミラー部10は、図3に示すように、駆動信号Sbの信号波形に基づいて後述する揺動軸Ly回りに鋸波状に揺動する。
【0025】
[1.2.光走査素子の具体的構成]
次に、光走査素子4の具体的構成について説明する。図4は光走査素子4の具体的構成を示す図である。
【0026】
図4(a)に示すように、光走査素子4は、反射面10aが形成されたミラー部10と、一対の梁部11a、11bと、一対の支持部12a,12bと、固定部13a,13bと、基台14とを有しており、ミラー部10を揺動軸Ly回りに揺動させて、光束を走査する。
【0027】
一対の梁部11a、11bは、揺動軸Lyに沿ってミラー部10の両側のそれぞれを弾性を持って支持し、捻れ変位によりミラー部10を揺動軸Ly回りに揺動可能としている。また、一対の支持部12a,12bは、一対の梁部11a,11bのそれぞれの他端をその中央部で弾性を持って支持すると共に両端部が基台14に固着された固定部13a,13bに固定されている。つまり、ミラー部10は一対の梁部11a、11bと一対の支持部12a,12bとによりに揺動可能に支持されている。
【0028】
ミラー部10の揺動軸Lyに平行な2辺に近接して永久磁石15a,15bが配置されている。永久磁石15a,15bが形成する磁界の向きは、静止状態のミラー部10の反射面10aに平行で、揺動軸Lyに直交する方向である。また、図4(b)に示すように、ミラー部10の反射面10aと反対側の裏面にはコイル16が形成されている。コイル16の電極は2つの梁部11a,11bを介して制御部2に接続する。この構成により、コイル16に駆動電流を流すとコイル16にローレンツ力が働く。図面視で揺動軸Lyから下半分のコイル16には例えば紙面の表面側にローレンツ力が働き、図面視で揺動軸Lyから上半分のコイル16には紙面の裏面側にローレンツ力が働く。これにより、ミラー部10には揺動軸Lyを中心として回転トルクが生ずる。従って、制御部2から出力する駆動信号Sbの電流の大きさを制御することにより、ミラー部10の傾き角を制御することができる。
【0029】
この光走査素子4には、さらに、ミラー部10の揺動角を検出する検出部18として、ピエゾ抵抗素子R1〜R4が設けられる。一対のピエゾ抵抗素子R1,R3は、支持部12a上に揺動軸Lyに対して対称配置される。ピエゾ抵抗素子R1は固定部13a側の支持部12a上に配置されており、ピエゾ抵抗素子R3は固定部13b側の支持部12a上に配置されている。同様に、一対のピエゾ抵抗素子R2,R4は、支持部12b上に揺動軸Lyに対して対称配置される。ピエゾ抵抗素子R2は固定部13a側の支持部12b上に配置されており、ピエゾ抵抗素子R4は固定部13b側の支持部12b上に配置されている。
【0030】
そして、一対のピエゾ抵抗素子R1,R3は、梁部11aに発生する捻れ変位に応じてその抵抗値が変化し、一対のピエゾ抵抗素子R2,R4は、梁部11bに発生する捻れ変位に応じてその抵抗値が変化する。
【0031】
図4(c)に示すように、一対のピエゾ抵抗素子R1,R3は、電源電位Vcと接地電位GND間に直列に配置される。また、同様に、一対のピエゾ抵抗素子R2,R4は、電源電位Vcと接地電位GNDに直列に配置される。すなわち、ピエゾ抵抗素子R1,R4の一端が電源電位Vcの電源に接続され、他端がピエゾ抵抗素子R2,R3の一端に接続される。ピエゾ抵抗素子R2,R3の他端は、接地電位GNDのグランドに接続される。
【0032】
図5は、図4(c)に示すピエゾ抵抗素子R1〜R4により構成される検出部18の等価回路である。この検出部18は、同図に示すように、一対のピエゾ抵抗素子R1,R3の接続点を第1出力ノードN1とし、他の一対のピエゾ抵抗素子R2,R4の接続点を第2出力ノードN2としている。そして、制御部2は、第1出力ノードN1の電圧VPR+と第2出力ノードN2の電圧VPR−とを入力しており、第2出力ノードN2の電圧を基準とした第1出力ノードN1の電圧を検出電圧Vd(=[VPR+]−[VPR−])としている。なお、ミラー部10に駆動信号が印加されていないとき、すなわち駆動信号の電流値が0[A]のとき、ピエゾ抵抗素子R1〜R4の抵抗値は変化がなく、ピエゾ抵抗素子R1〜R4の初期抵抗値が同一の場合には、検出電圧Vdは0Vとなる。
【0033】
ここで、各ピエゾ抵抗素子R1〜R4は、圧縮応力によりその抵抗値が上昇し、引張応力によりその抵抗値が下降する特性を有するものとすると、ミラー部10の変位により以下のように抵抗値が変化する。なお、ここでは、各ピエゾ抵抗素子R1〜R4は、同一材料及び同一形状であり、特性は同一であるものとする。
【0034】
例えば、図6に示すように、ミラー部10が揺動軸Ly回りに傾いたとき、ピエゾ抵抗素子R1,R2は圧縮応力によりその抵抗値が上昇し、ピエゾ抵抗素子R3,R4はその引張応力によりその抵抗値が下降する。そのため、第1出力ノードの電圧VPR+は下降し、第2出力ノードの電圧VPR−は上昇して、検出電圧Vdは正極性となる。そして、揺動軸Ly回りのミラー部10の角度が大きくなるほど、検出電圧Vdが大きくなる。一方、図6に示す方向とは逆方向にミラー部10が揺動軸Ly回りに傾いたとき、検出電圧Vdは負極性となり、揺動軸Ly回りのミラー部10の角度が大きくなるほど、検出電圧Vdが大きくなる。
【0035】
このように、検出電圧Vdの極性により、図4に示す平衡状態からのミラー部10の傾き方向がわかり、検出電圧Vdの大きさによりミラー部10の傾き角がわかる。この原理を利用して、制御部2は、揺動軸Ly回りのミラー部10の実際の傾き角を検出電圧Vdにより検出している。
【0036】
しかし、検出電圧Vdの極性によりミラー部10の傾き方向がわかるのは、各ピエゾ抵抗素子R1〜R4が、同一材料及び同一形状であり、特性が同一であることが前提であるが、実際には個体差などがある。そのため、ミラー部10の傾きがないときでも、検出電圧Vdにおいてオフセット電圧Vfが存在し(図7参照)、検出電圧Vdによりミラー部10の傾きを検出するためには、予めこのオフセット電圧Vfを知っておく必要がある。そこで、制御部2は、駆動信号Sbを光走査素子4に印加しないとき、すなわち駆動信号Sbの電流値を0[A]としたときの検出電圧Vdをオフセット電圧Vfと判定し、検出電圧Vdがオフセット電圧Vfよりも高いか低いかでミラー部10の傾き方向を検出している。
【0037】
また、ミラー部10の傾きの大きさは、例えば、図8に示すように、ミラー部10が所定の傾き+θ2となったときに、検査用光源20から出射する光束が入射する位置に光検出部21を設けることにより、検出することが可能となる。すなわち、光検出部21で検査用光源20から出射する光束を検出したときの検出電圧Vdを電圧Vrとすると、(Vr−Vf)/θ2を求めることにより、検出電圧Vdとミラー部10の傾き角θとの関係を把握し、検出電圧Vdに対するミラー部10の傾きの大きさを検出する。
【0038】
このように、制御部2は、検出電圧Vdに基づいて、図4に示す平衡状態からのミラー部10の傾き方向やミラー部10の傾き角を検出して、駆動信号Sbによりミラー部10を精度良く制御するようしている。
【0039】
ところで、光走査素子4は、駆動信号Sbによりミラー部10を揺動しているときに、上述して求めたオフセット電圧Vfや検出電圧Vdと傾き角θとの関係がずれることがある。例えば、ミラー部10の揺動を継続することにより、梁部11a,11bや支持部12a,12bなどに応力が加わって温度上昇し、オフセット電圧Vfや検出電圧Vdと傾き角θとの関係がずれることがある。また、経年変化により、オフセット電圧Vfや検出電圧Vdと傾き角θとの関係がずれることがある。このような場合には、駆動信号Sbによりミラー部10を精度良く制御することができない場合がある。そこで、制御部2は、駆動信号Sbによる捻れ変位に加え、共振による縦変位を加えることで、駆動信号Sbを光走査素子4に印加しているときに、オフセット電圧Vfや検出電圧Vdと傾き角θとの関係を検出するようにしている。
【0040】
以下、駆動信号Sbを光走査素子4に印加しているときに、オフセット電圧Vfや検出電圧Vdと傾き角θとの関係を検出する点について、具体的に説明する。
【0041】
光走査素子4は、反射面10aと平行な方向へ揺動する横振動の共振モードに加え、図9(a)に示すように、反射面10aと直交する方向へ揺動する縦振動の共振モードを有している。この縦振動の共振モードでは、例えば、図9(b)に示すように、ミラー部10が変位したとき、ピエゾ抵抗素子R1〜R4のすべてに圧縮応力が発生してその抵抗値が一様に上昇する。そのため、検出電圧Vdは変化しない。また、図9(b)に示す方向とは逆方向にミラー部10が変位した場合には、ピエゾ抵抗素子R1〜R4のすべてに引張応力が発生してその抵抗値が一様に下降する。そのため、検出電圧Vdは変化しない。
【0042】
一方、図10に示すように、ミラー部10に捻れ変位が生じて、ミラー部10が揺動軸Ly回りに傾いている状態(図6参照)で、上述のように反射面10aと垂直な方向へ共振(図9参照)が発生したとする。このとき、捻れ変位によるピエゾ抵抗素子R1,R2への圧縮応力が図6に示す状態よりも大きくなり、その抵抗値がさらに上昇する。他方、捻れ変位によるピエゾ抵抗素子R3,R4への引張応力は図6に示す状態よりも小さくなり、その抵抗値は下降する。このときの抵抗値の初期値、すなわち梁部11a,11bが平衡状態からの変化率は、ピエゾ抵抗素子R3,R4よりもピエゾ抵抗素子R1,R2の方が大きい。その結果、図6に示す状態に比べ、検出電圧Vdがより下降する。そして、この下降度合いは、ミラー部10に生じる捻れ変位が大きいほど、大きくなる。一方、共振により図9に示す方向とは逆方向に変位する力が働くと、図6に示す状態に比べ、検出電圧Vdはより上昇する。そして、この上昇度合いは、ミラー部10に生じる捻れ変位が大きいほど、大きくなる。
【0043】
このように、捻れ変位に加え、縦変位がミラー部10に加わると、縦変位の状態に応じて、捻れ変位によるピエゾ抵抗素子R1〜R4へ加わるトータルの圧縮応力や引張応力が変動する。すなわち、駆動信号Sbで光走査素子4のミラー部10を鋸波状に駆動している状態で、共振による縦振動が発生したとき、検出電圧Vdは図11(a)に示すようになる。この検出電圧Vdを微分すると、図11(b)に示す特性となる。なお、ここでは、縦振動の共振モードの共振周波数が駆動信号Sbの周波数に比べて十分に高いものとしている。
【0044】
制御部2は、このような光走査素子4の特性を利用しており、検出電圧Vdの変動率に基づいて、縦振動の共振モードを検出することができる。検出電圧Vdの変動率として、制御部2は、検出電圧Vdを微分した値(以下、微分値ΔVdという)の変動を検出するようにしている。すなわち、駆動信号Sbで光走査素子4のミラー部10を鋸波状に駆動している状態で、共振による縦振動が発生したときには、ミラー部10の傾き角度に応じて微分値ΔVdの大きさが異なることとなり、制御部2は、この微分値ΔVdの変動により、励起された縦振動の共振モードを検出している。
【0045】
さらに、光走査素子4のミラー部10を駆動信号Sbにより鋸波状に駆動しており、かつミラー部10に縦変位が加わっている状態において、ミラー部10に傾きが小さくなってミラー部10の傾き角が0付近になると、図11(b)に示すように、検出電圧Vdに対する縦変位による影響が最も小さくなる。すなわち、このとき、捻れ変位の影響がわずかであるため、微分値ΔVdは、単に縦変位のみが加わっているときの状態に近似する。従って、このときの微分値ΔVdの変動が最も小さくなる範囲の微分値ΔVdをオフセット電圧Vfとして判定することで、ミラー部10を駆動中に、オフセット電圧Vfが変動した場合であっても、ミラー部10の傾き方向を精度良く検出することができる。なお、ミラー部10の傾き角が0になると、検出電圧Vdに対する縦変位による影響がなくなるが、縦変位が連続して加わっているため、ミラー部10の傾き角が0のときの微分値ΔVdを判定することは難しい。しかし、所定期間に微分値ΔVdの変動が最も小さくなる範囲は容易に検出することができるため、微分値ΔVdの変動が最も小さくなる範囲を検出し、このときの検出電圧Vdをオフセット電圧Vfとして判定することができる。
【0046】
制御部2は、このような特性を利用して、駆動信号Sbで光走査素子4のミラー部10を鋸波状に駆動しているときに縦変位を加え、微分値ΔVdの変動が最も小さくなる範囲の微分値ΔVdをオフセット電圧Vfとして判定するようにしている。
【0047】
例えば、図12(a),(b)に示すように、微分値ΔVdの変動が所定範囲ΔVds内になったときに、このときの検出電圧Vdの平均値をオフセット電圧Vfとして判定することができる。このとき、微分値ΔVdの変動が所定範囲ΔVds内になるときの検出電圧Vdの最大値Vd1と最小値Vd2とから以下の式を用いてオフセット電圧Vfを判定するようにしてもよい。
Vf=(Vd1+Vd2)/2
【0048】
また、図12(a),(c)に示すように、上側包絡線D1の変曲点k1となるときの検出電圧Vdや下側包絡線D2の変曲点k2となるときの検出電圧Vdをオフセット電圧Vfとすることができる。
【0049】
このように制御部2は、所定期間の微分値ΔVdの変動が所定範囲(最小範囲)になる検出電圧Vdをオフセット電圧Vfとして判定することで、ミラー部10を駆動中に、オフセット電圧Vfが変動した場合であっても、ミラー部10の傾き方向を精度良く検出することができるようにしている。
【0050】
また、制御部2は、駆動信号Sbで光走査素子4のミラー部10を鋸波状に駆動しているときに縦変位を加えてきる状態で、所定期間(例えば、図12(b)に示すタイミングt1〜t2の期間)の微分値ΔVdの平均値を検出する。制御部2は、この微分値ΔVdの平均値から検出電圧Vdとミラー部10の傾き角θとの関係を判定する。このようにすることで、オフセット電圧Vfを求めるときに、同時に、検出電圧Vdに対するミラー部10の傾きの大きさを判定することができる。このような判定ができるのは、前記所定期間の微分値ΔVdの平均値を演算することで、微分値ΔVdから共振モードの周波数成分を除去することができ、かつ、微分値ΔVdが検出信号Vdの変化度合いを示すためである。
【0051】
なお、制御部2は、駆動信号Sbで光走査素子4のミラー部10を鋸波状に駆動しているときに縦変位を加えることなく、微分値ΔVdを検出して、この微分値ΔVdから検出電圧Vdとミラー部10の傾き角θとの関係を判定することができる。すなわち、縦変位を加えないときには、微分値ΔVdには図11に示すような共振周波数成分が重畳しておらず、所定期間において、微分値ΔVdは一定の大きさとなる。そのため、微分値ΔVdは、検出電圧Vdに対するミラー部10の傾きの大きさを示すことになり、制御部2は、微分値ΔVdを検出して、この微分値ΔVdから検出電圧Vdとミラー部10の傾き角θとの関係を判定することができる。
【0052】
以上のように、本実施形態に係る光走査装置1では、光走査素子4のミラー部10を揺動中においても、検出電圧Vdのオフセットや検出電圧Vdとミラー部10の傾き角θとの関係を把握することができる。そのため、光走査素子4のミラー部10の傾き方向や傾きの大きさを二対のピエゾ抵抗素子R1〜R4に基づいて精度良く検出でき、光走査素子4のミラー部10を精度良く制御することができる。
【0053】
なお、上述では、二対のピエゾ抵抗素子R1〜R4を用いることとしたが、一対のピエゾ抵抗素子R1,R3(又は、一対のピエゾ抵抗素子R2,R4)を用いて、検出電圧Vdのオフセットや検出電圧Vdとミラー部10の傾き角θとの関係を把握するようにしてもよい。この場合、検出電圧Vdの基準を電圧Vc/2とし、この電圧Vc/2からの検出電圧Vdのオフセットを求めることになる。なお、二対のピエゾ抵抗素子R1〜R4を用いることにより、検出電圧Vdのレンジを大きくすることができるが、一対のピエゾ抵抗素子のみでは検出電圧Vdのレンジは小さいため、検出電圧Vdを電圧増幅する増幅器をピエゾ抵抗素子間の出力ノードN1(N2)と制御部2との間に設けるようにしてもよい。
【0054】
また、上述では、各ピエゾ抵抗素子R1〜R4は、圧縮応力によりその抵抗値が上昇し、引張応力によりその抵抗値が下降するものとして説明したが、圧縮応力によりその抵抗値が下降し、引張応力によりその抵抗値が上昇するものであっても同様である。
【0055】
[1.3.制御部2の具体的な構成及び処理]
次に、制御部2の具体的な構成及び処理について図面を参照して具体的に説明する。なお、ここでは、光走査素子4のミラー部の揺動処理について主に説明し、光束の出射制御などについては説明を省略する。
【0056】
図13に示すように、制御部2は、駆動信号生成部40、ΔVd−θ特性判定部41、微分回路42、オフセット電圧判定部43、ΔVd−θ関係判定部44、記憶部45などから構成される。
【0057】
駆動信号生成部40は、記憶部45に記憶されている第1駆動信号波形データ51及び第2駆動信号波形データ52のうちいずれかを読み出し、読み出した波形データに基づいた駆動信号Sbを生成して出力する。
【0058】
ΔVd−θ特性判定部41は、記憶部45に設定されているオフセット電圧値53とΔVd−θ関係テーブル54とを読み出し、このように読み出したオフセット電圧値53とΔVd−θ関係テーブル54に基づき、光走査素子4の検出部18から出力される検出電圧Vdと駆動信号生成部40から出力される駆動信号Sbとを比較する。そして、ΔVd−θ特性判定部41は、検出電圧Vdと駆動信号Sbとが、読み出したオフセット電圧値53とΔVd−θ関係テーブル54とに規定する関係になるように、駆動信号生成部40から出力する駆動信号Sbの振幅をフィードバック制御する。
【0059】
微分回路42は、光走査素子4の検出部18から出力される検出電圧Vdを微分することにより微分値ΔVdを生成して、この微分値ΔVdをオフセット電圧判定部43やΔVd−θ関係判定部44へ出力する。
【0060】
オフセット電圧判定部43は、上述したように、微分値ΔVdの変動が所定範囲(最小範囲)になる検出電圧Vdをオフセット電圧Vfとして判定する。そして、オフセット電圧判定部43は、このように判定したオフセット電圧Vfと記憶部45に記憶したオフセット電圧値53とが一致するか否かを判定する。これらが一致しないとき、オフセット電圧判定部43は、記憶部45に記憶したオフセット電圧値53を上記判定したオフセット電圧Vfの値に変更する。
【0061】
ΔVd−θ関係判定部44は、上述したように、所定期間における微分値ΔVdの平均値を求めて、検出電圧Vdとミラー部10の傾き角θとの関係を判定する。そして、ΔVd−θ関係判定部44は、このように判定した結果と記憶部45に記憶したΔVd−θ関係テーブル54とが一致するか否かを判定する。これらが一致しないとき、ΔVd−θ関係判定部44は、記憶部45に記憶したΔVd−θ関係テーブル54を上記判定結果に基づき変更する。
【0062】
以上のように構成された制御部2による光走査素子4の具体的な駆動方法の流れについて、図14を参照して具体的に説明する。
【0063】
制御部2は、図14に示すように、光走査素子4の動作を開始すると、検出部18から出力される検出電圧Vdをオフセット電圧Vfと判定して、記憶部45にオフセット電圧値53として設定する(ステップS10)。具体的には、駆動信号Sbが光走査素子4に印加されていない状態で、オフセット電圧判定部43が、微分回路42から出力される微分値ΔVdをオフセット電圧値53として記憶部45に記憶する。
【0064】
次に、駆動信号生成部40は、記憶部45に記憶されている第1駆動信号波形データ51を読み出し、このように読み出した第1駆動信号波形データ51に基づいた駆動信号Sbを生成して光走査素子4に出力し、ミラー部10の揺動軸Ly回りの揺動を開始する(ステップS11)。
【0065】
次に、ミラー部10の揺動軸Ly回りの揺動をしている状態で、駆動信号生成部40は、検査用光源20(図8参照)から光束を出射させる(ステップS12)。このとき、ΔVd−θ関係判定部44は、光検出部21で検査用光源20から出射する光束を検出したときの検出電圧Vdを基準位置電圧Vrとし、(Vr−Vf)/θ2を求める。このようにすることで、ΔVd−θ関係判定部44は、検出電圧Vdとミラー部10の傾き角θとの関係を検出して、記憶部45にΔVd−θ関係テーブルとして設定(記憶)する(ステップS13)。
【0066】
次に、駆動信号生成部40は、調整タイミングとなったか否かを判定する(ステップS14)。この調整タイミングは、所定間隔で発生するタイミングである。この処理において、調整タイミングとなったと判定すると(ステップS14:Yes)、駆動信号生成部40は、記憶部45から第2駆動信号波形データ52を読み出して、この第2駆動信号波形データ52に基づき駆動信号Sbを生成して光走査素子4へ出力する。この駆動信号Sbは、光走査素子4のミラー部10に縦共振を生じさせる周波数成分の信号である励起用信号を含む駆動信号であり、この駆動信号Sbに基づきミラー部10を揺動させる(ステップS15)。この励起用信号を含む駆動信号Sbは、例えば、図15(a)に示すように、第1駆動信号波形データ51に基づく駆動信号Sbよりも立ち下がりを急峻にしてミラー部10に縦共振を生じさせる周波数成分からなる励起用信号を含ませた信号波形とすることができる。また、図15(b)に示すように、励起用信号を含む駆動信号Sbは、第1駆動信号波形データ51に基づく信号波形に励起用信号を重畳させた信号波形とすることができる。
【0067】
制御部2は、この励起用信号を含む駆動信号Sbを光走査素子4へ印加を開始した後所定期間が経過したか否かを判定する(ステップS16)。このように、所定期間が経過するまで待つのは、ミラー部10の揺動軸回りの揺動を開始した後、横振動の共振モードによる反射面10aと平行な方向への揺動が所定範囲内に収束した後に、検出部18のオフセットなどを検出するためである。このようにすることで、検出部18のオフセットなどを精度良く検出することができる。なお、横振動の共振モードは、1次の共振モードであり、縦振動の共振モードは、2次の共振モードである。従って、横振動の共振モードは、縦振動の共振モードの共振周波数よりもその共振周波数の方が低く、ミラー部10の揺動を開始したときに発生しやすい。
【0068】
ステップS16の処理において、所定期間が経過したと判定したとき(ステップS16:Yes)、オフセット電圧判定部43は、微分値ΔVdの変動が所定範囲(最小範囲)であるか否かを判定する(ステップS17)。
【0069】
ステップS17において、微分値ΔVdの変動が所定範囲であると判定すると(ステップS17:Yes)、オフセット電圧判定部43は、検出電圧Vdをオフセット電圧Vfとして判定する。そして、オフセット電圧判定部43は、このように判定したオフセット電圧Vfと記憶部45に記憶したオフセット電圧値53とが一致するか否か、すなわちオフセット電圧Vfに変化があるか否かを判定する(ステップS18)。
【0070】
ステップS18において、オフセット電圧Vfに変化があると判定すると(ステップS18:Yes)、オフセット電圧判定部43は、記憶部45に記憶したオフセット電圧値53をステップS18において判定したオフセット電圧Vfの値に変更する(ステップS19)。一方、オフセット電圧Vfに変化がないと判定すると(ステップS18:No)、ΔVd−θ関係判定部44は、所定期間における微分値ΔVdの平均値を求める。そして、ΔVd−θ関係判定部44は、この平均値から検出電圧Vdとミラー部10の傾き角θとの関係を求めて、変動があるか否かを判定する(ステップS20)。すなわち、ΔVd−θ関係判定部44は、微分値ΔVdの平均値を求めた検出電圧Vdとミラー部10の傾き角θとの関係が、記憶部45に記憶したΔVd−θ関係テーブル54とは異なる関係になっているか否かを判定する。
【0071】
ステップS20において、微分値ΔVdの平均値に変動があると判定すると(ステップS20:Yes)、ΔVd−θ関係判定部44は、微分値ΔVdの平均値から求めた検出電圧Vdとミラー部10の傾き角θとの関係に基づき、記憶部45に記憶したΔVd−θ関係テーブル54を変更する(ステップS21)。
【0072】
ステップS19,S21の処理が終了したとき、調整タイミングとなっていないとき(ステップS14:No)、所定期間が経過していないとき(ステップS16:No)、微分値ΔVdが所定範囲外のとき(ステップS17:No)、微分値ΔVdの平均値に変動がないと判定したとき(ステップS20:No)、制御部2は、処理終了の要求がなされたか否かを判定する(ステップS22)。このとき、処理終了の要求がないときには(ステップS22:No)、制御部2は、処理をステップS16に戻す。一方、処理終了の要求があると判定したとき(ステップS22:Yes)、制御部2は、処理を終了する。
【0073】
以上のように、制御部2は、所定の調整タイミングで、捻れ変位に加え、共振による縦変位を加えるようにしており、これにより、検出電圧Vdの微分値ΔVdに基づき、オフセット電圧VfやΔVd−θ関係テーブル54を変更可能としている。このようにすることで、光走査素子4を動作させているとでも、オフセット電圧VfやΔVd−θ関係テーブル54の校正が可能となる。
【0074】
[2.画像表示装置]
次に、上述した光走査素子を備えた画像表示装置について説明する。
【0075】
図16に示すように、本実施形態に係る画像表示装置100は、制御部110、光源部120、走査部140、第2リレー光学系180、ハーフミラー185などを有している。
【0076】
制御部110は、駆動信号供給部111、主走査駆動信号生成部112、副走査駆動信号生成部113、主制御部114を有している。駆動信号供給部111は、外部から入力された画像信号S(例えば、NTSCコンポジット信号、コンポーネント信号)に基づいて、画像を形成するための要素となる三原色各色のRGB画素信号115r,115g,115bを画素単位で生成する。主走査駆動信号生成部112は、主走査部160の後述する光走査素子161が共振状態で所定走査範囲となるように、主走査部160で使用される主走査駆動信号116を生成して出力する。また、副走査駆動信号生成部113は、主走査駆動信号116の周波数に基づいて、副走査部170で使用される鋸波形状の副走査駆動信号117を生成して出力する。
【0077】
光源部120には、Rレーザドライバ121,Gレーザドライバ122,Bレーザドライバ123が設けられる。各レーザドライバ121,122,123は、それぞれ駆動信号供給部111から出力されるR,G,B駆動信号115r,115g,115bをもとに、各レーザ124,125,126へそれぞれ駆動電流を供給する。各レーザ124,125,126は、各レーザドライバ121,122,123から供給される駆動電流に応じて強度変調されたレーザ光を出射する。各レーザ124,125,126から出射したR(赤色)レーザ光Lr,G(緑色)レーザ光Lg、B(青色)レーザ光Lbは、コリメート光学系127,128,129によってそれぞれ平行光化された後に、ダイクロイックミラー130,131,132に入射される。その後、これらのダイクロイックミラー130,131,132により、3原色の各レーザ光Lr,Lg,Lbが波長選択的に反射・透過して結合光学系133に達し、合波されて光ファイバケーブル135へ出射される。このように光ファイバケーブル135へ出射されるレーザ光は、強度変調された各色のレーザ光が合波されたものである。
【0078】
走査部140は、コリメート光学系151、主走査部160、第1リレー光学系165、副走査部170、検査用光源182、光検出部183などを有している。
【0079】
コリメート光学系151は、光源部120で生成され、光ファイバケーブル135を介して出射されるレーザ光を平行光化する。
【0080】
主走査部160及び副走査部170は、光ファイバケーブル135から入射されたレーザ光を画像として利用者の眼190の網膜190bに投影可能な状態にするために、主走査方向と副走査方向に走査する光学系である。主走査部160は、コリメート光学系151で平行光化されて入射するレーザ光を主走査方向に相対的に高速に往復走査する光走査素子161を有する。また、副走査部170は、主走査部160で主走査方向に走査され、第1リレー光学系165を介して入射するレーザ光を副走査方向に相対的に低速に走査する光走査素子171を有する。この副走査方向は主走査方向に略直交する方向である。例えば、主走査方向を水平方向、副走査方向を垂直方向とすることができる。なお、検査用光源182及び光検出部183は、主走査部160の走査位置を検出するために設けられており、主走査部160の走査位置が所定位置となったときに、検査用光源182から出射する光束が入射する位置に光検出部183を設けている。
【0081】
主走査部160と副走査部170との間でレーザ光を中継する第1リレー光学系165は、光走査素子161によって主走査方向に走査されたレーザ光を光走査素子171のミラー部に収束させる。そして、このレーザ光が光走査素子171によって副走査方向に走査される。光走査素子171によって走査されたレーザ光は、正の屈折力を持つ2つのレンズ180a,180bが直列配置された第2リレー光学系180を介して、眼190の前方に位置させたハーフミラー185で反射されて利用者の瞳孔190aに入射する。これにより、網膜190b上に画像信号Sに応じた画像が投影され、利用者は瞳孔190aに入射するレーザ光を画像として認識する。また、ハーフミラー185は外光L2を透過して利用者の瞳孔190aに入射させるようにしており、これにより利用者は外光L2に基づく外景にレーザ光L1に基づく画像を重ねた画像を視認することができる。このように画像表示装置100は、画像信号Sに応じた画像と外景とを重ねて利用者の眼190の網膜に結像させる、シースルー型網膜走査型画像表示装置である。
【0082】
以上のように構成された画像表示装置100において、光走査素子171は、光走査素子4と同様の構成であり、副走査駆動信号生成部113は、上述した光走査装置1の制御部2と同様に、光走査素子171を駆動するようにしている。そのため、光走査素子171のミラー部の揺動中においても、検出電圧Vdのオフセットや検出電圧とミラー部の傾き角θとの関係を把握することができる。そのため、光走査素子171のミラー部の傾き方向や傾きの大きさを二対のピエゾ抵抗素子に基づいて精度良く検出でき、光走査素子171のミラー部を精度良く制御可能となる。
【0083】
なお、ここでは、光束の一例として、効率面で有利であるレーザ光を用いているが、光束はレーザ光に限られるものではない。
【0084】
本発明を、上述してきた実施形態を通して説明したが、本実施形態によれば、以下の効果が期待できる。
【0085】
(1)入射する光束を反射面10aが形成されたミラー部10により所定方向に走査する光走査素子4と、駆動信号Sbにより光走査素子4のミラー部10を揺動軸Ly回りに揺動させる制御部2と、を備えた光走査装置1において、光走査素子4は、揺動軸Lyに沿ってミラー部10の両側のそれぞれを弾性を持って支持し、捻れ変位によりミラー部10に揺動軸Ly回りの揺動を可能とする一対の梁部11a,11bと、一対の梁部11a,11bのそれぞれの他端をその中央部で弾性を持って支持すると共に両端部が固定部13a,13bに固定された一対の支持部12a,12bと、一対の支持部12a,12bのうち少なくとも一方の支持部12a,12b上に揺動軸Lyに対して対称配置され、電圧Vcとグランド間(所定電位間)に直列接続された一対のピエゾ抵抗素子R1,R3(R2,R4)を有する検出部18と、を有し、制御部2は、一対のピエゾ抵抗素子R1,R3(R2,R4)間の出力ノードN1,N2(接続点)の電圧VPR+,VPR−に基づき、ミラー部10の揺動状態を検出し、駆動信号Sbを生成する処理と、光走査素子4のミラー部10の揺動軸Ly回りの揺動を開始した後、出力ノードN1,N2の電圧変動率に基づき、光走査素子4が共振により反射面10aと直交する方向への揺動が加わっている状態であると判定すると、当該状態において出力ノードN1,N2の電圧変動率が所定範囲内になったときの出力ノードN1,N2の電圧に基づき、出力ノードN1,N2の電圧VPR+,VPR−のオフセット電圧Vfを判定する処理と、を実行するので、周囲温度変化や経時変化によりピエゾ抵抗素子の抵抗値に変動が生じた場合であっても、ミラー部の揺動を停止することなく、ピエゾ抵抗素子による検出結果の校正を行うことができる。
【0086】
(2)検出部18は、揺動軸Lyに対して対称配置される一対のピエゾ抵抗素子R1,R3(R2,R4)を、一対の支持部12a,12bのそれぞれに設け、これら二対のピエゾ抵抗素子R1,R3(R2,R4)間の出力ノードN1,N2(接続点)の電圧変動率に基づき、オフセット電圧Vfを判定するので、二対のピエゾ抵抗素子に基づいてオフセット電圧を精度良く検出でき、光走査素子のミラー部を精度良く制御することができる。
【0087】
(3)光走査素子4は、反射面10aと平行な方向へ揺動する横振動の共振モード(第1共振モード)と反射面10aと直交する方向へ揺動する縦振動の共振モード(第2共振モード)を有しており、制御部2は、ミラー部10の揺動軸Ly回りの揺動を開始した後、横振動の共振モードによる反射面10aと平行な方向への揺動が所定範囲内に収束した後に、一対のピエゾ抵抗素子R1,R3(R2,R4)間の出力ノードN1,N2(接続点)の電圧VPR+,VPR−のオフセット電圧Vfの判定処理を実行するので、オフセット電圧を精度良く検出でき、光走査素子のミラー部を精度良く制御することができる。
【0088】
(4)制御部2は、反射面10aと直交する方向への揺動を励起する励起用信号を含む駆動信号Sbにより光走査素子4のミラー部10を揺動軸Ly回りに揺動させて、反射面10aと直交する方向への揺動を生じさせるので、ミラー部に縦振動が生じていない場合であっても、ミラー部の揺動を停止することなく、ピエゾ抵抗素子による検出結果の校正を行うことができる。
【0089】
(5)画像信号Sに応じた強度の光束を主走査方向(第1方向)に相対的に高速に走査する光走査素子161(第1の光走査素子)と副走査方向(第1方向に略直交する方向)に相対的に低速に走査する光走査素子171(第2の光走査素子)とにより2次元走査する走査部140と、これらの光走査素子161,171を制御する制御部110と、を備えた画像表示装置100において、光走査素子171(第2の光走査素子)は、揺動軸Lyに沿ってミラー部10の両側のそれぞれを弾性を持って支持し、捻れ変位によりミラー部10に揺動軸回りの揺動を可能とする一対の梁部11a,11bと、一対の梁部11a,11bのそれぞれの他端をその中央部で弾性を持って支持すると共に両端部が固定部に固定された一対の支持部12a,12bと、一対の支持部12a,12bのうち少なくとも一方の支持部上に揺動軸Lyに対して対称配置され、電圧Vcとグランド間(所定電位間)に直列接続された一対のピエゾ抵抗素子R1,R3(R2,R4)を有する検出部18と、を有し、制御部110は、一対のピエゾ抵抗素子R1,R3(R2,R4)間の出力ノードN1,N2(接続点)の電圧VPR+,VPR−に基づき、ミラー部10の揺動状態を検出し、駆動信号Sbを生成する処理と、光走査素子4のミラー部10の揺動軸Ly回りの揺動を開始した後、出力ノードN1,N2の電圧変動率に基づき、光走査素子4が共振により反射面10aと直交する方向への揺動が加わっている状態であると判定すると、当該状態において出力ノードN1,N2の電圧変動率が所定範囲内になったときの出力ノードN1,N2の電圧に基づき、出力ノードN1,N2の電圧VPR+,VPR−のオフセット電圧Vfを判定する処理と、を実行するので、周囲温度変化や経時変化によりピエゾ抵抗素子の抵抗値に変動が生じた場合であっても、ミラー部の揺動を停止することなく、ピエゾ抵抗素子による検出結果の校正を行うことができる。
【0090】
(6)光走査素子161,171で走査された光束を利用者の眼190に入射させて、利用者の網膜190b上に画像信号Sに応じた画像を投影するので、周囲温度変化や経時変化によりピエゾ抵抗素子の抵抗値に変動が生じた場合であっても、ミラー部の揺動を停止することなく、ピエゾ抵抗素子による検出結果の校正を行うことができる網膜走査型の画像表示装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 光走査装置
2,110 制御部
4, 161,171 光走査素子
10 ミラー部
10a 反射面
11a,11b 一対の梁部
12a,12b 一対の支持部
13a,13b 固定部
100 画像表示装置
Sb 駆動信号
R1〜R4 ピエゾ抵抗素子
N1,N2 出力ノード(接続点)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射する光束を反射面が形成されたミラー部により所定方向に走査する光走査素子と、駆動信号により前記光走査素子のミラー部を揺動軸回りに揺動させる制御部と、を備えた光走査装置において、
前記光走査素子は、
前記揺動軸に沿って前記ミラー部の両側のそれぞれを弾性を持って支持し、捻れ変位により前記ミラー部を前記揺動軸回りに揺動可能とする一対の梁部と、
前記一対の梁部のそれぞれの他端をその中央部で弾性を持って支持すると共に両端部が固定部に固定された一対の支持部と、
前記一対の支持部のうち少なくとも一方の支持部上に前記揺動軸に対して対称配置され、所定電位間に直列接続された一対のピエゾ抵抗素子を有する検出部と、を有し、
前記制御部は、
前記一対のピエゾ抵抗素子間の接続点の電圧に基づき、前記ミラー部の揺動状態を検出し、前記駆動信号を生成する処理と、
前記光走査素子のミラー部の揺動軸回りの揺動を開始した後、前記接続点の電圧変動率に基づき、前記光走査素子が共振により前記反射面と直交する方向への揺動が加わっている状態であると判定すると、当該状態において前記接続点の電圧変動率が所定範囲内になったときの前記接続点の電圧に基づき、前記接続点の電圧のオフセット値を判定する処理と、を実行することを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記揺動軸に対して対称配置される一対のピエゾ抵抗素子を、前記一対の支持部のそれぞれに設け、これら二対のピエゾ抵抗素子間の接続点の電圧変動率に基づき、前記オフセット値を判定することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記光走査素子は、前記反射面と平行な方向へ揺動する第1共振モードと前記反射面と直交する方向へ揺動する第2共振モードを有しており、
前記制御部は、前記ミラー部の揺動軸回りの揺動を開始した後、前記第1共振モードによる前記反射面と平行な方向への揺動が所定範囲内に収束した後に、前記一対のピエゾ抵抗素子接続点の電圧のオフセット値の判定処理を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記反射面と直交する方向への揺動を励起する励起用信号を含む駆動信号により前記光走査素子のミラー部を揺動軸回りに揺動させて、前記反射面と直交する方向への揺動を生じさせることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項5】
画像信号に応じた強度の光束を第1方向に相対的に高速に走査する第1の光走査素子と前記第1方向に略直交する方向に相対的に低速に走査する第2の光走査素子とにより2次元走査する走査部と、前記第1及び第2の光走査素子を制御する制御部と、を備えた画像表示装置において、
前記第2の光走査素子は、
前記揺動軸に沿って前記ミラー部の両側のそれぞれを弾性を持って支持し、捻れ変位により前記ミラー部を前記揺動軸回りに揺動可能とする一対の梁部と、
前記一対の梁部のそれぞれの他端をその中央部で弾性を持って支持すると共に両端部が固定部に固定された一対の支持部と、
前記一対の支持部のうち少なくとも一方の支持部上に前記揺動軸に対して対称配置され、所定電位間に直列接続された一対のピエゾ抵抗素子を有する検出部と、を有し、
前記制御部は、
前記一対のピエゾ抵抗素子間の接続点の電圧に基づき、前記ミラー部の揺動状態を検出し、前記駆動信号を生成する処理と、
前記光走査素子のミラー部の揺動軸回りの揺動を開始した後、前記接続点の電圧変動率に基づき、前記光走査素子が共振により前記反射面と直交する方向への揺動が加わっている状態であると判定すると、当該状態において前記接続点の電圧変動率が所定範囲内になったときの前記接続点の電圧に基づき、前記接続点の電圧のオフセット値を判定する処理と、を実行することを特徴とする画像表示装置。
【請求項6】
前記第1の光走査素子及び前記第2の光走査素子で走査された光束を利用者の眼に入射させて、前記利用者の網膜上に画像信号に応じた画像を投影することを特徴とする請求項5に記載の画像表示装置。
【請求項1】
入射する光束を反射面が形成されたミラー部により所定方向に走査する光走査素子と、駆動信号により前記光走査素子のミラー部を揺動軸回りに揺動させる制御部と、を備えた光走査装置において、
前記光走査素子は、
前記揺動軸に沿って前記ミラー部の両側のそれぞれを弾性を持って支持し、捻れ変位により前記ミラー部を前記揺動軸回りに揺動可能とする一対の梁部と、
前記一対の梁部のそれぞれの他端をその中央部で弾性を持って支持すると共に両端部が固定部に固定された一対の支持部と、
前記一対の支持部のうち少なくとも一方の支持部上に前記揺動軸に対して対称配置され、所定電位間に直列接続された一対のピエゾ抵抗素子を有する検出部と、を有し、
前記制御部は、
前記一対のピエゾ抵抗素子間の接続点の電圧に基づき、前記ミラー部の揺動状態を検出し、前記駆動信号を生成する処理と、
前記光走査素子のミラー部の揺動軸回りの揺動を開始した後、前記接続点の電圧変動率に基づき、前記光走査素子が共振により前記反射面と直交する方向への揺動が加わっている状態であると判定すると、当該状態において前記接続点の電圧変動率が所定範囲内になったときの前記接続点の電圧に基づき、前記接続点の電圧のオフセット値を判定する処理と、を実行することを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記揺動軸に対して対称配置される一対のピエゾ抵抗素子を、前記一対の支持部のそれぞれに設け、これら二対のピエゾ抵抗素子間の接続点の電圧変動率に基づき、前記オフセット値を判定することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記光走査素子は、前記反射面と平行な方向へ揺動する第1共振モードと前記反射面と直交する方向へ揺動する第2共振モードを有しており、
前記制御部は、前記ミラー部の揺動軸回りの揺動を開始した後、前記第1共振モードによる前記反射面と平行な方向への揺動が所定範囲内に収束した後に、前記一対のピエゾ抵抗素子接続点の電圧のオフセット値の判定処理を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記反射面と直交する方向への揺動を励起する励起用信号を含む駆動信号により前記光走査素子のミラー部を揺動軸回りに揺動させて、前記反射面と直交する方向への揺動を生じさせることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項5】
画像信号に応じた強度の光束を第1方向に相対的に高速に走査する第1の光走査素子と前記第1方向に略直交する方向に相対的に低速に走査する第2の光走査素子とにより2次元走査する走査部と、前記第1及び第2の光走査素子を制御する制御部と、を備えた画像表示装置において、
前記第2の光走査素子は、
前記揺動軸に沿って前記ミラー部の両側のそれぞれを弾性を持って支持し、捻れ変位により前記ミラー部を前記揺動軸回りに揺動可能とする一対の梁部と、
前記一対の梁部のそれぞれの他端をその中央部で弾性を持って支持すると共に両端部が固定部に固定された一対の支持部と、
前記一対の支持部のうち少なくとも一方の支持部上に前記揺動軸に対して対称配置され、所定電位間に直列接続された一対のピエゾ抵抗素子を有する検出部と、を有し、
前記制御部は、
前記一対のピエゾ抵抗素子間の接続点の電圧に基づき、前記ミラー部の揺動状態を検出し、前記駆動信号を生成する処理と、
前記光走査素子のミラー部の揺動軸回りの揺動を開始した後、前記接続点の電圧変動率に基づき、前記光走査素子が共振により前記反射面と直交する方向への揺動が加わっている状態であると判定すると、当該状態において前記接続点の電圧変動率が所定範囲内になったときの前記接続点の電圧に基づき、前記接続点の電圧のオフセット値を判定する処理と、を実行することを特徴とする画像表示装置。
【請求項6】
前記第1の光走査素子及び前記第2の光走査素子で走査された光束を利用者の眼に入射させて、前記利用者の網膜上に画像信号に応じた画像を投影することを特徴とする請求項5に記載の画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−215323(P2011−215323A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82614(P2010−82614)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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