説明

光走査装置及び画像表示装置

【課題】光検出素子のミラー部の角度を検出する検出部の特性変化があった場合でも、光検出素子のミラー部の角度を精度よく検出することができる光走査装置及び画像表示装置を提供する。
【解決手段】ミラー部10を両側から支持する一対の梁部の捻れ変位によりミラー部10が揺動軸Ly回りに揺動してミラー部10により光束を走査する光走査素子と、光走査素子へ駆動信号を出力してミラー部10を揺動軸回りに揺動させる制御部と、ミラー部10の揺動軸Ly回りの角度を検出する検出部と、ミラー部10の揺動軸Ly回りの角度が、光束を走査する角度範囲外の所定角度以上となることを規制する規制部材17a,17bとを備え、制御部は、規制部材17a,17bに到達するようにミラー部10を揺動軸Ly回りに回動させ、検出部により規制部材17a,17bにミラー部が到達したと判定したときの検出部による検出結果に基づき、駆動信号の波形を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射する光束を反射面が形成されたミラー部により所定方向に走査する光走査素子を備えた光走査装置及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、入射する光束を反射面が形成されたミラー部により所定方向に走査する光走査素子と、駆動信号により光走査素子のミラー部を揺動軸回りに揺動させる制御部と、を備えた光走査装置や画像表示装置が知られている。
【0003】
光走査装置や画像表示装置に用いられる光走査素子として、梁部で支持されたミラー部を有し、梁部の捻れ変位によりミラー部を揺動軸回りに揺動させてミラー部により光束を走査する光走査素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような光走査素子では、駆動信号の信号レベルに応じた角度でミラー部が変位するが、周囲温度、経年変化、個体差などにより、駆動信号の信号レベルと実際のミラー部の角度との関係が変化する。ミラー部によって光束を所望の方向に走査するためには、光走査素子を駆動する制御部において、駆動信号の信号レベルと実際のミラー部の角度との関係を知っておく必要がある。そのため、従来の光走査装置や画像表示装置では、ミラー部の揺動軸回りの角度を検出する検出部を設けている(特許文献1〜3参照)。
【0005】
例えば、特許文献1には、検出部として光走査素子にピエゾ抵抗素子を配置し、捻れ変位に応じてピエゾ抵抗素子に発生する電圧に基づき、ミラー部の角度を検出する方法が記載されている。また、特許文献2には、検出部として光走査素子に圧電アクチュエータを配置して、捻れ変位に応じて圧電アクチュエータに発生する起電力に基づき、ミラー部の角度を検出する方法が記載されている。また、特許文献3には、検出部である静電容量の変化から、ミラー部の角度を検出する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−229517号公報
【特許文献2】特開2009−169325号公報
【特許文献2】特開2008−129069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術では、ピエゾ抵抗素子に発生する電圧とミラー部の角度との関係を、テーブルとして予め記憶部に記憶しておき、又は、直線近似式の関数から求めるようにしている。
【0008】
しかしながら、周囲温度、経年変化、個体差などによってピエゾ抵抗素子に生じる電圧が変動するため、このような場合には、予め設定したテーブルや近似式を用いると、これらにより算出した角度と実際のミラー部の角度とに差が生じる。そのため、フィードバックを用いたミラー制御の精度が低下してしまう。予め個体差毎に近似式やテーブルを設定することも考えられるが、非常に手間が掛かる。しかも、このようにした場合でも、経年変化等でピエゾ抵抗素子に変動が生じた場合には対応できない。
【0009】
また、上記特許文献2,3に記載の技術においても、検出部の検出値とミラー部の角度との関係を予め把握しておく必要があり、同様のことがいえる。
【0010】
そこで、ミラー部の反射面に光束を入射する光源とミラー部が所定角度のときに反射した光束が入射する光検出手段とを設けて、光検出手段による光束の検出結果に基づいてミラー部の角度を検出することが考えられる。しかし、この場合、光源と光検出手段が別途必要となり、小型化やコスト面から問題があった。
【0011】
本発明は、上述したような課題に鑑みてなされたものであり、光検出素子のミラー部の角度を検出する検出部の特性変化があった場合でも、光検出素子のミラー部の角度を精度よく検出することができる光走査装置及び画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、一対の梁部により両側から支持されたミラー部を有し、前記梁部の捻れ変位によりミラー部が揺動軸回りに揺動して前記ミラー部により光束を走査する光走査素子と、前記光走査素子へ駆動信号を出力して前記ミラー部を前記揺動軸回りに揺動させる制御部と、を備えた光走査装置において、前記ミラー部の前記揺動軸回りの角度を検出する検出部と、前記ミラー部の前記揺動軸回りの角度が、前記光束を走査する角度範囲外の所定角度以上となることを規制する規制部材と、を設け、前記制御部は、前記規制部材に到達するように前記ミラー部を前記揺動軸回りに回動させ、前記検出部により前記規制部材に前記ミラー部が到達したと判定したときの前記検出部による検出結果に基づき、前記駆動信号の波形を調整することを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の光走査装置において、前記規制部材は、前記ミラー部の前記揺動軸回りの角度が、前記ミラー部が揺動していない状態から前記揺動軸回りの第1方向に前記所定角度以上となることを規制する第1規制部材と、前記ミラー部の前記揺動軸回りの角度が、前記ミラー部が揺動していない状態から前記第1方向とは逆方向の第2方向に前記所定角度以上となることを規制する第2規制部材と、からなり、前記光走査素子は、前記揺動軸に直交する方向に延伸し、前記一対の梁部のそれぞれの他端をその中央部で弾性を持って支持すると共に両端部が固定部に固定された一対の支持部を有し、前記検出部は、各前記支持部上に前記揺動軸に対して対称配置された一対のピエゾ抵抗素子を有し、当該一対のピエゾ抵抗素子は直列接続されて所定電圧が印加されており、前記ピエゾ抵抗素子間の電圧値を前記ミラー部の前記揺動軸回りの角度の情報として出力し、前記制御部は、前記第1規制部材に到達するように前記ミラー部を前記揺動軸回りに回動させ、前記検出部により前記第1規制部材に前記ミラー部が到達したと判定したときの前記ピエゾ抵抗素子間の電圧値と、前記第2規制部材に到達するように前記ミラー部を前記揺動軸回りに回動させ、前記検出部により前記第2規制部材に前記ミラー部が到達したと判定したときの前記ピエゾ抵抗素子間の電圧値とに基づいて、前記駆動信号の波形を調整することを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の光走査装置において、前記規制部材は、弾性を有することを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光走査装置において、前記制御部は、前記規制部材に到達するように前記ミラー部を前記揺動軸回りに回動させる際に、前記規制部材に到達する前に前記ミラー部の回動速度を減速させることを特徴とする。
【0016】
また、請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光走査装置において、前記制御部は、前記ミラー部を前記揺動軸回りに回動させ、前記ミラー部が前記規制部材に到達したと判定したとき、前記ミラー部が規制部材に到達している状態を維持するために、前記駆動信号の電圧値を、前記ミラー部が前記規制部材に到達したときの前記駆動信号の電圧値以上に維持することを特徴とする。
【0017】
また、請求項6に係る発明は、請求項5に記載の光走査装置において、前記規制部材に到達するように前記ミラー部を前記揺動軸回りに回動させ、前記検出部により前記ミラー部が前記規制部材に到達したと判定した後の所定期間の前記検出部の検出結果を平均化し、当該平均化した検出結果に基づき、前記駆動信号の波形を調整することを特徴とする。
【0018】
また、請求項7に係る発明は、請求項5に記載の光走査装置において、前記制御部は、前記規制部材に到達するように前記ミラー部を前記揺動軸回りに回動させ、前記検出部により前記ミラー部が前記規制部材に到達したと判定したときから所定期間経過後の前記検出部の検出結果に基づき、前記駆動信号の波形を調整することを特徴とする。
【0019】
また、請求項8に係る発明は、画像信号に応じた強度の光束を出射する光源と、前記光源から出射された光束を第1方向に相対的に高速に走査する第1光走査素子と、一対の梁部により両側から支持されたミラー部を有し、前記梁部の捻れ変位によりミラー部を揺動軸回りに揺動させて前記第1走査素子により走査された光束を前記ミラー部により第1方向と略直交する第2方向に相対的に低速に走査する第2光走査素子とを有する走査部と、前記走査部を制御する制御部と、を備えた画像表示装置において、前記ミラー部の前記揺動軸回りの角度を検出する検出部と、前記ミラー部の前記揺動軸回りの角度が、前記光束を走査する角度範囲外の所定角度以上となることを規制する規制部材と、を設け、前記制御部は、前記規制部材に到達するように前記ミラー部を前記揺動軸回りに回動させ、前記検出部により前記規制部材に前記ミラー部が到達したと判定したときの前記検出部による検出結果に基づき、前記ミラー部を前記揺動軸回りに揺動させる駆動信号の波形を調整することを特徴とする。
【0020】
また、請求項9に係る発明は、請求項8に記載の画像表示装置において、前記走査部で走査された光束を利用者の眼に入射させて、前記利用者の網膜上に前記画像信号に応じた画像を投影することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ミラー部の揺動軸回りの角度を検出する検出部と、ミラー部の揺動軸回りの角度が、光束を走査する角度範囲外の所定角度以上となることを規制する規制部材17a,17bとを設け、規制部材に到達するようにミラー部を揺動軸Ly回りに回動させ、検出部により規制部材にミラー部が到達したと判定したときの検出部による検出結果に基づき、駆動信号の波形を調整するので、光検出素子のミラー部の角度を検出する検出部の特性変化があった場合でも、光検出素子のミラー部の角度を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る光走査装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示す光走査素子を駆動する駆動信号の波形を示す図である。
【図3】図1に示す光走査素子をミラー部の角度変化を示す図である。
【図4】図1に示す光走査素子の具体的構成を示す図である。
【図5】ピエゾ抵抗素子により構成される検出部の等価回路である。
【図6】捻れ変位によるピエゾ抵抗素子の抵抗値の変化を示す図である。
【図7】規制部材の配置を示す図である。
【図8】他の規制部材の配置を示す図である。
【図9】さらに他の規制部材の配置を示す図である。
【図10】図1に示す制御部の構成を示す図である。
【図11】目標角度テーブルの一例を示す図である。
【図12】図10に示す波形調整部の動作を説明するための図である。
【図13】検出部の検出特性を検出する方法を示す図である。
【図14】図10に示す波形調整部が出力する駆動信号の信号レベルの遷移を示す図である。
【図15】図10に示す波形調整部が出力する駆動信号の信号レベルの他の遷移を示す図である。
【図16】規制部材にミラー部が到達したと判定したときの検出電圧を検出する方法を説明するための図である。
【図17】規制部材にミラー部が到達したと判定したときの検出電圧を検出する他の方法を説明するための図である。
【図18】本発明の一実施形態に係る画像表示装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[1.光走査装置]
以下に、本発明に好適な実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明では、まず、光走査装置について説明し、その後、画像表示装置について説明する。
【0024】
[1.1.光走査装置の概要]
まず、本実施形態に係る光走査装置について説明する。図1は光走査装置の構成を示す図、図2は駆動信号の波形を示す図、図3はミラー部の角度変化を示す図である。
【0025】
図1に示すように、光走査装置1は、当該光走査装置1全体を制御する制御部2と、この制御部2から出力される駆動信号Saに応じた強度の光束を出射する光源部3と、この光源部3から出射された光束を所定方向に走査する光走査素子4とを備えている。
【0026】
制御部2は、光走査素子4のミラー部10を非共振モードで強制的に駆動する駆動電流であって、その電流波形が鋸波状波形となる駆動信号Sbを生成するものであり、生成した駆動信号Sbを光走査素子4に印加する。鋸波状の駆動信号Sbは、図2に示すように、最小レベルから最大レベルまで移行する期間に比べ、最大レベルから最小レベルへ移行する期間が十分に短い信号である。光走査素子4のミラー部10は、駆動信号Sbの信号レベルに応じた角度で揺動軸Ly回りに回動するように構成されており、光走査素子4のミラー部10は、図3に示すように、駆動信号Sbの信号波形に基づいて後述する揺動軸Ly回りに鋸波状に揺動する。
【0027】
[1.2.光走査素子4の具体的構成]
次に、光走査素子4の具体的構成について説明する。図4は光走査素子4の具体的構成を示す図である。
【0028】
図4(a)に示すように、光走査素子4は、反射面10aが形成されたミラー部10と、一対の梁部11a,11bと、一対の支持部12a,12bと、固定部13a,13bと、基台14とを有しており、ミラー部10を揺動軸Ly回りに揺動させて、光束を走査する。
【0029】
一対の梁部11a,11bは、揺動軸Lyに沿って延伸してミラー部10の両側のそれぞれを弾性を持って支持し、その捻れ変位(捻れ変形)によりミラー部10を揺動軸Ly回りに揺動可能としている。また、一対の支持部12a,12bは、一対の梁部11a,11bのそれぞれの他端をその中央部で弾性を持って支持すると共に両端部が基台14に固着された固定部13a,13bに固定されている。このように、ミラー部10は一対の梁部11a,11bと一対の支持部12a,12bとによりに揺動可能に支持されている。
【0030】
ミラー部10の揺動軸Lyに平行な2辺に近接して永久磁石15a,15bが配置されている。永久磁石15a,15bが形成する磁界の向きは、静止状態のミラー部10の反射面10aに平行で、揺動軸Lyに直交する方向である。また、図4(b)に示すように、ミラー部10の反射面10aと反対側の裏面にはコイル16が形成されている。コイル16の電極は2つの梁部11a,11bを介して制御部2に接続される。この構成により、コイル16に駆動電流を流すとコイル16にローレンツ力が働く。図面視で揺動軸Lyから下半分のコイル16には例えば紙面の表面側にローレンツ力が働き、図面視で揺動軸Lyから上半分のコイル16には紙面の裏面側にローレンツ力が働く。これにより、ミラー部10には揺動軸Lyを中心として回転トルクが生ずる。従って、制御部2から出力する駆動信号Sbの電流の大きさを制御することにより、ミラー部10の揺動軸Ly回りの角度を制御することができる。
【0031】
この光走査素子4には、さらに、ミラー部10の揺動軸Ly回りの角度を検出する検出部18として、ピエゾ抵抗素子R1〜R4が設けられる。一対のピエゾ抵抗素子R1,R3は、支持部12a上に揺動軸Lyに対して対称配置される。ピエゾ抵抗素子R1は固定部13a側の支持部12a上に配置されており、ピエゾ抵抗素子R3は固定部13b側の支持部12a上に配置されている。同様に、一対のピエゾ抵抗素子R2,R4は、支持部12b上に揺動軸Lyに対して対称配置される。ピエゾ抵抗素子R2は固定部13a側の支持部12b上に配置されており、ピエゾ抵抗素子R4は固定部13b側の支持部12b上に配置されている。
【0032】
そして、一方の一対のピエゾ抵抗素子R1,R3は、梁部11aに発生する捻れ変位に応じて揺動軸Ly近傍に発生する応力場によって各々その抵抗値が変化し、他方の一対のピエゾ抵抗素子R2,R4は、梁部11bに発生する捻れ変位に応じて揺動軸Ly近傍に発生する応力場によって各々その抵抗値が変化する。
【0033】
図4(c)に示すように、一対のピエゾ抵抗素子R1,R3は、電源電位Vcと接地電位GND間に直列に配置される。また、同様に、一対のピエゾ抵抗素子R4,R2は、電源電位Vcと接地電位GNDに直列に配置される。すなわち、ピエゾ抵抗素子R1,R4の一端が電源電位Vcの電源に接続され、他端がピエゾ抵抗素子R2,R3の一端に接続される。ピエゾ抵抗素子R2,R3の他端は、接地電位GNDのグランドに接続される。
【0034】
図5は、図4(c)に示すピエゾ抵抗素子R1〜R4により構成される検出部18の等価回路である。この検出部18は、同図に示すように、一対のピエゾ抵抗素子R1,R3の接続点を第1出力ノードN1とし、他の一対のピエゾ抵抗素子R4,R2の接続点を第2出力ノードN2としている。そして、制御部2は、第1出力ノードN1の電圧VPR+と第2出力ノードN2の電圧VPR−とを入力しており、第2出力ノードN2の電圧を基準とした第1出力ノードN1の電圧を検出電圧Vd(=[VPR+]−[VPR−])としている。なお、光走査素子4に駆動信号Sbが印加されていないとき、すなわち駆動信号Sbの電流値が0[A]のとき、ピエゾ抵抗素子R1〜R4の抵抗値は変化がなく、ピエゾ抵抗素子R1〜R4の初期抵抗値が同一の場合には、検出電圧Vdは0Vとなる。
【0035】
ここで、各ピエゾ抵抗素子R1〜R4は、圧縮応力によりその抵抗値が上昇し、引張応力によりその抵抗値が下降する特性を有するものとすると、ミラー部10の変位により以下のように抵抗値が変化する。なお、ここでは、各ピエゾ抵抗素子R1〜R4は、同一材料及び同一形状であり、その特性は同一であるものとする。
【0036】
例えば、図6に示すように、ミラー部10に揺動軸Ly回りの角度θの傾きが生じたとき、ピエゾ抵抗素子R1,R2は圧縮応力によりその抵抗値が上昇し、ピエゾ抵抗素子R3,R4はその引張応力によりその抵抗値が下降する。そのため、第1出力ノードN1の電圧VPR+は下降し、第2出力ノードN2の電圧VPR−は上昇して、検出電圧Vdは正極性となる。そして、揺動軸Ly回りのミラー部10の角度θが大きくなるほど、検出電圧Vdが大きくなる。一方、図6に示す方向とは逆方向にミラー部10が傾いたとき、検出電圧Vdは負極性となり、揺動軸Ly回りのミラー部10の角度が大きくなるほど、検出電圧Vdが大きくなる。
【0037】
このように、検出電圧Vdの極性により、図4に示す平衡状態からのミラー部10の傾き方向がわかり、検出電圧Vdの大きさによりミラー部10の傾き角度がわかる。この原理を利用して、制御部2は、揺動軸Ly回りのミラー部10の実際の傾き角を検出電圧Vdにより検出している。
【0038】
ところで、ピエゾ抵抗素子R1〜R4は、その個体差や温度変化によって抵抗値が変わり、また、経年変化等によっても抵抗値が変わる。そのため、検出電圧Vdとミラー部10の角度との関係が変動することになり、フィードバックを用いたミラー制御の精度が低下してしまう恐れがある。
【0039】
そこで、本実施形態に係る光走査素子4では、図7に示すように、ミラー部10の角度を検出するための第1規制部材17aと第2規制部材17bを設けている。図7は図4(a)に示すA−A’線矢視断面の一部分を示す図である。
【0040】
光走査素子4のミラー部10は、光束を走査するときには、図7(a)に示すように+θ〜−θの角度範囲(以下、走査角度範囲という)で揺動軸Ly回りに揺動するものであり、第1規制部材17aと第2規制部材17bは、図7(b)に示すように、この走査角度範囲外の所定角度+θ,−θ以上となることを規制するものである。
【0041】
すなわち、第1規制部材17aは、ミラー部10の揺動軸Ly回りの角度が、ミラー部10が揺動していない状態から揺動軸Ly回りの第1方向に所定角度θ以上となることを規制する。また、第2規制部材17bは、ミラー部10の揺動軸Ly回りの角度が、ミラー部10が揺動していない状態から第1方向とは逆方向の第2方向に所定角度θ以上となることを規制する。
【0042】
このように、第1規制部材17aと第2規制部材17bを設けることで、後述するように、検出特性が変化した検出部18の検出電圧Vdに対するミラー部10の角度の関係を精度良く検出することができる。なお、第1規制部材17aと第2規制部材17bとを、図8に示すように、一体化して形成するようにしてもよい。
【0043】
また、図9(a),(b)に示すように、規制部材17a,17bに代えて、ミラー部10が角度+θ,−θのときに、ミラー部10の裏面が当接する平面を有する規制部材17a’,17b’や規制部材17a”,17b”を設けるようにしてもよい。このようにすることで、ミラー部10と規制部材との接触面積を増やすことができ、規制部材17a,17bのようにミラー部10の端部でミラー部10の角度を規制する場合に比べ、ミラー部10の変形が生じにくくすることが可能となる。なお、図9(a),(b)に示す例では、傾いていないときのミラー部10の反射面10aと平行な基台14表面に対してθの角度を持って傾斜させることによって、ミラー部10が角度+θ,−θのときに、ミラー部10の裏面が当接するようにしている。
【0044】
これらの規制部材17a,17b,17a’,17b’,17a”,17b”は、ゴムなどの弾性部材で構成することにより、ミラー部10の接触の衝撃によるミラー部10の変形や逆向きの力を抑制できるため、望ましい。
【0045】
[1.3 制御部2の処理]
制御部2は、上述したように、駆動信号Sbを生成して、ミラー部10を走査角度範囲で揺動させ、ミラー部10の反射面10aにより光束を反射して光束を走査するようにしており、図10に示すように構成されている。
【0046】
図10に示すように、制御部2は、目標指令生成部21、比較次元変換部22、減算部23、駆動信号生成部24を有している。
【0047】
目標指令生成部21は、光走査素子4により走査させようとする方向に応じたミラー部10の目標角度を、目標角度指令として出力する。目標指令生成部21には、1走査期間T(図3参照)のミラー部10の目標角度の情報が内部の記憶部に記憶されており、この記憶部に記憶された情報を順次読み出して目標角度指令として出力する。例えば、1走査期間のミラー部10の目標角度の情報として、1〜1000番目までの情報を有する目標角度テーブルを記憶部に記憶し、1〜1000番目までの情報を順次読み出して目標角度指令として出力する。上述したように目標角度は+θ〜−θの範囲であり、目標角度テーブルは、例えば、図11に示すようなテーブルである。なお、ミラー部10の目標角度を予め記憶しておくのではなく、逐次演算して求めるようにしてもよい。
【0048】
比較次元変換部22は、ミラー部10の目標角度と制御電圧Vctとの関係を規定する規定値α,βを記憶しており、目標指令生成部21から出力される目標角度指令に応じた制御電圧Vctを出力する。本実施形態に係る光走査素子4では、制御電圧Vctとミラー部10の角度とが比例関係にあり、目標角度θに基づき、以下の式(1)に基づき制御電圧Vctを演算している。
Vct=α×θ+β ・・・(1)
なお、比較次元変換部22において、ミラー部10の目標角度と制御電圧Vctとの関係を規定する変換テーブルを内部に記憶しておき、この変換テーブルに基づき、ミラー部10の目標角度を制御電圧Vctに変換するようにしてもよい。
【0049】
減算部23は、制御電圧Vctの電圧値から検出電圧Vdの電圧値を減算して、制御電圧Vctと検出電圧Vdとの差分電圧Vsを演算し、差分電圧Vsを出力する。
【0050】
駆動信号生成部24は、差分電圧Vsに応じて電流値を増減させた電流値の駆動信号Sbを生成し、この駆動信号Sbを光走査素子4のコイル16に出力する。すなわち、差分電圧Vsの正極性の場合には、差分電圧Vsの電圧レベルに比例する値だけ電流値を上げた駆動信号Sbを生成し、差分電圧Vsの負極性の場合には、差分電圧Vsの電圧レベルに比例する値だけ電流値を下げた駆動信号Sbを生成する。この駆動信号生成部24は、例えば、差分電圧Vsを積分する積分器により構成することができる。このように差分電圧Vsに応じた電流値の駆動信号Sbにより光走査素子4を駆動してフィードバック制御するようにしており、これによりミラー部10の制御電圧Vctに応じた揺動を精度良く行うようにしている。
【0051】
さらに、制御部2は、駆動信号Sbの波形を調整する波形調整部25を有している。
【0052】
この波形調整部25は、規制部材17に到達するようにミラー部10を揺動軸Ly回りに回動させ、検出部18により規制部材17にミラー部10が到達したと判定したときの検出部18による検出結果に基づき、駆動信号Sbの波形を調整するようにしている。この波形調整部25により、ピエゾ抵抗素子R1〜R4の個体差、経年変化、温度変化などによる検出部18の検出精度の劣化を抑制するようにしている。
【0053】
この波形調整部25は、光走査素子4の制御を開始するとき、また、光走査素子4の制御を開始してから所定期間毎に、以下のような処理を行うことによって、駆動信号Sbの波形を調整する。
【0054】
波形調整部25は、まず、電流値が漸次増加する駆動信号Sc1を光走査素子4のコイル16に出力し、第1規制部材17aに到達するようにミラー部10を揺動軸Ly回りに回動させる(図12のタイミングt1〜)。波形調整部25は、検出電圧Vdを監視しており、この検出電圧Vdに基づき、第1規制部材17aにミラー部10が到達したことを検出する。すなわち、第1規制部材17aにミラー部10が到達するまでは、検出電圧Vdの電圧値が駆動信号Sc1の電流値の増加に伴って増加するが、第1規制部材17aにミラー部10が到達すると、検出電圧Vdの電圧値が駆動信号Sc1の電流値の増加に伴って増加しなくなる(図12のタイミングt2〜t3)。波形調整部25は、検出電圧Vdの電圧値が増加しなくなったとき(図12のタイミングt2)の検出電圧Vdの電圧値を第1電圧値Vd1として記憶する。
【0055】
同様に、電流値が漸次減少する駆動信号Sc2を光走査素子4のコイル16に出力し、第2規制部材17bに到達するようにミラー部10を揺動軸Ly回りに回動させる(図12のタイミングt3〜)。波形調整部25は、検出電圧Vdの電圧値が減少しなくなったとき(図12のタイミングt4)の検出電圧Vdの電圧値を第2電圧値Vd2として記憶する。
【0056】
光走査素子4においては、上述したように、検出電圧Vdの信号レベルとミラー部10の傾きは、比例関係にある。従って、ミラー部10の角度が+θから−θまで等速で変化したとき、図13に示すように、検出電圧Vdは第1電圧値Vd1から第2電圧値Vd2まで直線的に変化する。また、検出電圧Vdが第1電圧値Vd1と第2電圧値Vd2との中間電圧のときに、ミラー部10の角度が0となる。
【0057】
そこで、波形調整部25は、第1電圧値Vd1と第2電圧値Vd2とに基づき、下記式(2),(3)で規定されるα’,β’を演算する。
α’=(Vd1−Vd2)/2θ ・・・(2)
β’=(Vd1+Vd2)/2 ・・・(3)
【0058】
α’,β’を演算した後、波形調整部25は、α’,β’を比較次元変換部22へ出力する。比較次元変換部22は、α’を規定値αとして設定し、β’を規定値βとして設定し、その後の変換処理を行う。このようにすることで、ミラー部10の角度を精度良く検出して、ミラー部10を制御目標の角度となるように精度良く制御することができる。
【0059】
以上のように、光走査装置1では、規制部材17a,17bを設け、この規制部材17a,17bに到達するようにミラー部10を揺動軸Ly回りに回動させる。そして、検出部18により規制部材17a,17bにミラー部10が到達したと判定したときの検出部18の検出電圧Vdに基づき、検出部18の検出特性を検出して、駆動信号Sdの波形を調整するようにしている。そのため、光走査装置1において、温度変化や経年劣化などにより検出部18による検出結果の変動があるような場合であっても、光束の走査を精度良く行うことができる。
【0060】
なお、上述においては、第1規制部材17aと第2規制部材17bの2つを用いて、検出部18の検出特性を検出するようにしたが、いずれか一つの規制部材を用いて、検出部18の検出特性を検出するようにしてもよい。
【0061】
例えば、第1規制部材17aを用いる場合には、波形調整部25は、次のように動作する。まず、波形調整部25は、光走査素子4のコイル16に電流を流さない状態で、検出電圧Vdの信号レベルを第2電圧値Vd2’として記憶する。次に、電流値が漸次増加する駆動信号Sc1を光走査素子4のコイル16に出力し、第1規制部材17aに到達するようにミラー部10を揺動軸Ly回りに回動させる。波形調整部25は、検出電圧Vdの信号レベルが増加しなくなったときの検出電圧Vdの電圧値を第1電圧値Vd1’として記憶する。
【0062】
そして、波形調整部25は、第1電圧値Vd1’と第2電圧値Vd2’とに基づき、下記式(4),(5)で規定されるα”,β”を演算する。
α”=(Vd2’−Vd1’)/θ ・・・(4)
β”=Vd2’ ・・・(5)
【0063】
α”,β”を演算した後、波形調整部25は、α”,β”を比較次元変換部22へ出力する。比較次元変換部22は、α”を規定値αとして設定し、β”を規定値βとして設定し、その後の変換処理を行う。このようにすることで、第1規制部材17aと第2規制部材17bの2つを用いた場合に比べ、検出精度は低下するものの、1つの規制部材により、検出部18の検出特性を迅速に検出することができる。
【0064】
ところで、規制部材17a,17bに到達するようにミラー部10を揺動軸Ly回りに回動させたとき、回動する速度を一定にした場合には、規制部材17a,17bへ接触した衝撃で、回動方向とは逆方向に力が働き振動する。そのため、図12に示すように、検出電圧Vdが一定電圧とならず、検出部18の検出特性を精度良く検出することができない恐れがある。そこで、上述したように、規制部材17a,17bを、ゴムなどの弾性部材で構成することにより、ミラー部10の振動を抑制している。しかし、これによっても検出部18の検出特性を精度良く検出を十分でない場合も生じる。
【0065】
そこで、図14に示すように、波形調整部25は、規制部材17a,17bに到達するようにミラー部10を回動させる際に、規制部材17a,17bに到達する前にミラー部10の回動速度を減速させるような駆動信号Sc1,Sc2を光走査素子4に出力可能としている。このようにすることで、ミラー部10が規制部材17a,17bに接触するときの衝撃を低減して、ミラー部10の振動を抑制することが可能となる。なお、駆動信号Sc2は、駆動信号Sc1と極性が異なるだけであるため、図14では省略している。また、波形調整部25において、検出部18の検出特性のばらつきを予め記憶しておくことで、規制部材17a,17bに到達する直前で信号レベルの変化が小さくなるような駆動信号Sc1,Sc2を生成することができる。また、前回演算したα’,β’(α”,β”)に基づいて、規制部材17a,17bに到達する直前で信号レベルの変化が小さくなるような駆動信号Sc1,Sc2を生成するようにしてもよい。また、ミラー部10が規制部材17a,17bに近づくに従って信号レベルの変化が小さくなるような駆動信号Sc1,Sc2を光走査素子4に出力するようにしてもよい。このようにすることで、ミラー部10の振動をより抑制することができる。
【0066】
また、図15に示すように、波形調整部25において、駆動信号Sc1,Sc2の電圧値を、ミラー部10が規制部材17a,17bに到達したとき又はその直後の駆動信号Sc1,Sc2の電圧値に維持することもできる。このようにすることで、ミラー部10にかかる揺動軸Ly回りの力が上昇するのを抑制して、ミラー部10の振動を抑制するようにしてもよい。
【0067】
上述のように、上述したようなミラー部10の振動を抑制するための構成を採用した場合であっても、ミラー部10の振動を十分に抑制できない場合があり、このような場合には、検出部18から出力される検出電圧Vdに微小な変動が生じる。そのため、ミラー部10が規制部材17a,17bに到達したときの検出電圧Vdを精度よく取得することができない。
【0068】
そこで、波形調整部25において、図16に示すように、検出電圧Vdの信号レベルが駆動信号Sc1,Sc2の信号レベルの変化に伴った変化をしなくなったとき(タイミングt11)から所定期間Ta経過したときの検出電圧Vdを第1電圧値Vd1及び第2電圧値Vd2とする。このように、検出部18によりミラー部10が規制部材17a,17bに到達したと判定したときから所定期間Ta経過後の検出部18の検出結果を利用するため、ミラー部10の振動による影響を抑制して、検出部18の検出特性を精度よく検出することができる。
【0069】
また、検出電圧Vdの変動が収束するのに時間がかかる場合には、ミラー部10が規制部材17a,17bに到達したと判定したときから所定期間Taの検出電圧Vdを平均化し、当該平均化した結果を第1電圧値Vd1及び第2電圧値Vd2とする。このようにすることで、ミラー部10の振動による影響を抑制するようにしてもよい。
【0070】
また、上述のように、検出電圧Vdを平均化するのではなく、検出部18から出力される検出電圧Vdをローパスフィルタにより濾波した結果を、第1電圧値Vd1及び第2電圧値Vd2としてもよい。
【0071】
また、検出電圧Vdの平均化処理やフィルタリング処理は、ミラー部10が規制部材17a,17bに到達したと判定した直後からの所定期間の検出電圧Vdを用いるのではなく、図17に示すように、ミラー部10が規制部材17a,17bに到達したと判定してから所定期間Tbを経過した後から所定期間Tcの検出電圧Vdを用いてもよい。ミラー部10が規制部材17a,17bに到達した直後は、ミラー部10の振動のノイズが大きいため、ミラー部10の振動が大きな期間の検出電圧Vdを用いないことで、第1電圧値Vd1及び第2電圧値Vd2を精度良く検出することができる。
【0072】
以上のように、本実施形態に係る光走査装置1では、規制部材17a,17bを設け、検出部18により規制部材17a,17bにミラー部10が到達したときの検出電圧Vdに基づき、検出部18の検出特性を検出して、駆動信号Sdの波形を調整する。そのため、温度変化や経年劣化などにより検出部18による検出結果の変動があるような場合であっても、光束の走査を精度良く行うことができる。
【0073】
なお、上述では、検出部18を。二対のピエゾ抵抗素子R1〜R4により構成したが、一対のピエゾ抵抗素子R1,R3(又は、一対のピエゾ抵抗素子R2,R4)間の電圧を検出電圧Vdとしてもよい。
【0074】
[2.画像表示装置]
次に、上述した光走査素子を備えた画像表示装置について説明する。
【0075】
図18に示すように、本実施形態に係る画像表示装置100は、制御部110、光源部120、走査部140、第2リレー光学系180、ハーフミラー185などを有している。
【0076】
制御部110は、駆動信号供給部111、主走査駆動信号生成部112、副走査駆動信号生成部113、主制御部114を有している。駆動信号供給部111は、外部から入力された画像信号S(例えば、NTSCコンポジット信号、コンポーネント信号)に基づいて、画像を形成するための要素となる三原色各色のRGB画素信号115r,115g,115bを画素単位で生成する。主走査駆動信号生成部112は、主走査部160の後述する光走査素子161が共振状態で所定走査範囲となるように、主走査部160で使用される主走査駆動信号116を生成して出力する。また、副走査駆動信号生成部113は、主走査駆動信号116に同期して、副走査部170で使用される鋸波形状の副走査駆動信号117を生成して出力する。
【0077】
光源部120には、Rレーザドライバ121,Gレーザドライバ122,Bレーザドライバ123が設けられる。各レーザドライバ121,122,123は、それぞれ駆動信号供給部111から出力されるR,G,B駆動信号115r,115g,115bをもとに、各レーザ124,125,126へそれぞれ駆動電流を供給する。各レーザ124,125,126は、各レーザドライバ121,122,123から供給される駆動電流に応じて強度変調されたレーザ光を出射する。各レーザ124,125,126から出射したR(赤色)レーザ光Lr,G(緑色)レーザ光Lg、B(青色)レーザ光Lbは、コリメート光学系127,128,129によってそれぞれ平行光化された後に、ダイクロイックミラー130,131,132に入射される。その後、これらのダイクロイックミラー130,131,132により、3原色の各レーザ光Lr,Lg,Lbが波長選択的に反射・透過して結合光学系133に達し、合波されて光ファイバケーブル135へ出射される。このように光ファイバケーブル135へ出射されるレーザ光は、強度変調された各色のレーザ光が合波されたものである。
【0078】
走査部140は、コリメート光学系151、主走査部160、第1リレー光学系165、副走査部170などを有している。
【0079】
コリメート光学系151は、光源部120で生成され、光ファイバケーブル135を介して出射されるレーザ光を平行光化する。
【0080】
主走査部160及び副走査部170は、光ファイバケーブル135から入射されたレーザ光を画像として利用者の眼190の網膜190bに投影可能な状態にするために、主走査方向と副走査方向に走査する光学系である。主走査部160は、コリメート光学系151で平行光化されて入射するレーザ光を主走査方向に相対的に高速に往復走査する光走査素子161を有する。また、副走査部170は、主走査部160で主走査方向に走査され、第1リレー光学系165を介して入射するレーザ光を副走査方向に相対的に低速に走査する光走査素子171を有する。この副走査方向は主走査方向に略直交する方向である。例えば、主走査方向を水平方向、副走査方向を垂直方向とすることができる。
【0081】
主走査部160と副走査部170との間でレーザ光を中継する第1リレー光学系165は、光走査素子161によって主走査方向に走査されたレーザ光を光走査素子171のミラー部に収束させる。そして、このレーザ光が光走査素子171によって副走査方向に走査される。光走査素子171によって走査されたレーザ光は、正の屈折力を持つ2つのレンズ180a,180bが直列配置された第2リレー光学系180を介して、眼190の前方に位置させたハーフミラー185で反射されて利用者の瞳孔190aに入射する。これにより、網膜190b上に画像信号Sに応じた画像が投影され、利用者は瞳孔190aに入射するレーザ光を画像として認識する。また、ハーフミラー185は外光L2を透過して利用者の瞳孔190aに入射させるようにしており、これにより利用者は外光L2に基づく外景にレーザ光L1に基づく画像を重ねた画像を視認することができる。このように画像表示装置100は、画像信号Sに応じた画像と外景とを重ねて利用者の眼190の網膜に結像させる、シースルー型網膜走査型画像表示装置である。
【0082】
以上のように構成された画像表示装置100において、光走査素子171は、光走査素子4と同様の構成であり、副走査駆動信号生成部113は、上述した光走査装置1の制御部2と同様に、光走査素子4と同様の構成の光走査素子171を駆動するようにしている。すなわち、光走査素子171に、規制部材を設けると共に光走査素子171のミラー部の角度を検出する検出部を設けている。そして、副走査駆動信号生成部113は、規制部材にミラー部が到達したときの検出部の検出電圧Vdに基づき、検出部の検出特性を検出して、副走査駆動信号117の波形を調整する。そのため、温度変化や経年劣化などにより検出部18による検出結果の変動があるような場合であっても、レーザ光の走査を精度良く行うことができる。
【0083】
なお、ここでは、光束の一例として、効率面で有利であるレーザ光を用いているが、光束はレーザ光に限られるものではない。
【0084】
また、光走査素子のミラー部の角度を検出する検出部を、ピエゾ抵抗素子により構成しているが、圧電素子による検出方法や静電容量の変化による検出方法を用いてもよい。
【0085】
本発明を、上述してきた実施形態を通して説明したが、本実施形態によれば、以下の効果が期待できる。
【0086】
(1)一対の梁部11a,11bにより両側から支持されたミラー部10を有し、梁部11a,11bの捻れ変位によりミラー部10が揺動軸Ly回りに揺動してミラー部10により光束を走査する光走査素子4(171)と、光走査素子4(171)へ駆動信号Sd(117)を出力してミラー部10を揺動軸Ly回りに揺動させる制御部2(110)と、ミラー部10の揺動軸Ly回りの角度を検出する検出部18と、ミラー部10の揺動軸Ly回りの角度が、光束を走査する角度範囲(+θ〜−θ)外の所定角度+θ,−θ以上となることを規制する規制部材17a,17bとを設けている。そして、制御部2(110)は、規制部材17a,17bに到達するようにミラー部10を揺動軸Ly回りに回動させ、検出部18により規制部材17a,17bにミラー部10が到達したと判定したときの検出部18の検出電圧Vd(検出結果)に基づき、駆動信号Sd(117)の波形を調整するので、温度変化や経年劣化などにより検出部18による検出結果の変動があるような場合であっても、光束の走査を精度良く行うことができる。
【0087】
(2)規制部材17a,17bは、ミラー部10の揺動軸Ly回りの角度が、ミラー部10が揺動していない状態から揺動軸Ly回りの第1方向に所定角度θ(+θ)以上となることを規制する第1規制部材17aと、ミラー部10の揺動軸Ly回りの角度が、ミラー部10が揺動していない状態から第1方向とは逆方向の第2方向に所定角度θ(−θ)以上となることを規制する第2規制部材17bと、からなり、光走査素子4(171)は、揺動軸Lyに直交する方向に延伸し、一対の梁部11a,11bのそれぞれの他端をその中央部で弾性を持って支持すると共に両端部が固定部13a,13bに固定された一対の支持部を有し、検出部は、各支持部12a,12b上に揺動軸Lyに対して対称配置された一対のピエゾ抵抗素子R1,R3(R4,R2)を有し、当該一対のピエゾ抵抗素子R1,R3(R4,R2)は直列接続されて所定電圧が印加されており、ピエゾ抵抗素子R1,R3(R4,R2)間の電圧値をミラー部10の揺動軸Ly回りの角度の情報である検出電圧Vdとして出力し、制御部2(110)は、第1規制部材17aに到達するようにミラー部10を揺動軸Ly回りに回動させ、検出部18により第1規制部材17aにミラー部10が到達したと判定したときのピエゾ抵抗素子R1,R3(R4,R2)間の電圧値と、第2規制部材17bに到達するようにミラー部10を揺動軸Ly回りに回動させ、検出部18により第2規制部材17bにミラー部が到達したと判定したときのピエゾ抵抗素子R1,R3(R4,R2)間の電圧値とに基づいて、駆動信号Sd(117)の波形を調整するので、少ない部品点数かつ省スペースでミラー部10の角度を検出することが可能となる。
【0088】
(3)規制部材17a,17bは、弾性を有するので、ミラー部10が規制部材17a,17bに接触するときの衝撃を低減して、ミラー部10の振動を抑制することができる。
【0089】
(4)制御部2(110)は、規制部材17a,17bに到達するようにミラー部10を揺動軸Ly回りに回動させる際に、規制部材17a,17bに到達する前にミラー部10の回動速度を減速させるので、ミラー部10が規制部材17a,17bに接触するときの衝撃を低減して、ミラー部10の振動を抑制することができる。
【0090】
(5)制御部2(110)は、ミラー部10を揺動軸Ly回りに回動させ、ミラー部10が規制部材17a,17bに到達したと判定したとき、ミラー部10が規制部材17a,17bに到達している状態を維持するために、駆動信号Sd(117)の電圧値を、ミラー部10が規制部材17a,17bに到達したときの駆動信号Sd(117)の電圧値以上に維持するので、ミラー部10にかかる搖動軸Ly回りの力が上昇するのを抑制して、ミラー部10の振動を抑制することができる。
【0091】
(6)規制部材17a,17bに到達するようにミラー部10を揺動軸Ly回りに回動させ、検出部18によりミラー部10が規制部材17a,17bに到達したと判定した後の所定期間Ta、Tcの検出部18の検出電圧Vd(検出結果)を平均化し、当該平均化した検出結果に基づき、駆動信号Sd(117)の波形を調整するので、ミラー部10の振動による影響を抑制することができ、駆動信号Sd(117)の波形の調整を精度よく行うことができる。
【0092】
(7)制御部2(110)は、規制部材17a,17bに到達するようにミラー部10を揺動軸Ly回りに回動させ、検出部18によりミラー部10が規制部材17a,17bに到達したと判定したときから所定期間Ta経過後の検出部18の検出電圧Vd(検出結果)に基づき、駆動信号Sd(117)の波形を調整するので、ミラー部10の振動による影響を抑制することができ、駆動信号Sd(117)の波形の調整を精度よく行うことができる。
【符号の説明】
【0093】
1 光走査装置
2 制御部
3 光源部
4,171 光走査素子
10 ミラー部
10a 反射面
11a,11b 梁部
12a,12b 支持部
13a,13b 固定部
14 基台
17a 第1規制部材
17b 第2規制部材
18 検出部
21 目標指令生成部
22 比較次元変換部
23 減算部
24 駆動信号生成部
25 波形調整部
100 画像表示装置
113 副走査駆動信号生成部
117 副走査駆動信号
Sd 駆動信号
Vd 検出電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の梁部により両側から支持されたミラー部を有し、前記梁部の捻れ変位によりミラー部が揺動軸回りに揺動して前記ミラー部により光束を走査する光走査素子と、前記光走査素子へ駆動信号を出力して前記ミラー部を前記揺動軸回りに揺動させる制御部と、を備えた光走査装置において、
前記ミラー部の前記揺動軸回りの角度を検出する検出部と、
前記ミラー部の前記揺動軸回りの角度が、前記光束を走査する角度範囲外の所定角度以上となることを規制する規制部材と、を設け、
前記制御部は、
前記規制部材に到達するように前記ミラー部を前記揺動軸回りに回動させ、前記検出部により前記規制部材に前記ミラー部が到達したと判定したときの前記検出部による検出結果に基づき、前記駆動信号の波形を調整する
ことを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記規制部材は、
前記ミラー部の前記揺動軸回りの角度が、前記ミラー部が揺動していない状態から前記揺動軸回りの第1方向に前記所定角度以上となることを規制する第1規制部材と、
前記ミラー部の前記揺動軸回りの角度が、前記ミラー部が揺動していない状態から前記第1方向とは逆方向の第2方向に前記所定角度以上となることを規制する第2規制部材と、からなり、
前記光走査素子は、
前記揺動軸に直交する方向に延伸し、前記一対の梁部のそれぞれの他端をその中央部で弾性を持って支持すると共に両端部が固定部に固定された一対の支持部を有し、
前記検出部は、
各前記支持部上に前記揺動軸に対して対称配置された一対のピエゾ抵抗素子を有し、当該一対のピエゾ抵抗素子は直列接続されて所定電圧が印加されており、前記ピエゾ抵抗素子間の電圧値を前記ミラー部の前記揺動軸回りの角度の情報として出力し、
前記制御部は、
前記第1規制部材に到達するように前記ミラー部を前記揺動軸回りに回動させ、前記検出部により前記第1規制部材に前記ミラー部が到達したと判定したときの前記ピエゾ抵抗素子間の電圧値と、前記第2規制部材に到達するように前記ミラー部を前記揺動軸回りに回動させ、前記検出部により前記第2規制部材に前記ミラー部が到達したと判定したときの前記ピエゾ抵抗素子間の電圧値とに基づいて、前記駆動信号の波形を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記規制部材は、弾性を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記規制部材に到達するように前記ミラー部を前記揺動軸回りに回動させる際に、前記規制部材に到達する前に前記ミラー部の回動速度を減速させる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記ミラー部を前記揺動軸回りに回動させ、前記ミラー部が前記規制部材に到達したと判定したとき、前記ミラー部が規制部材に到達している状態を維持するために、前記駆動信号の電圧値を、前記ミラー部が前記規制部材に到達したときの前記駆動信号の電圧値以上に維持する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記規制部材に到達するように前記ミラー部を前記揺動軸回りに回動させ、前記検出部により前記ミラー部が前記規制部材に到達したと判定した後の所定期間の前記検出部の検出結果を平均化し、当該平均化した検出結果に基づき、前記駆動信号の波形を調整する
ことを特徴とする請求項5に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記規制部材に到達するように前記ミラー部を前記揺動軸回りに回動させ、前記検出部により前記ミラー部が前記規制部材に到達したと判定したときから所定期間経過後の前記検出部の検出結果に基づき、前記駆動信号の波形を調整する
ことを特徴とする請求項5に記載の光走査装置。
【請求項8】
画像信号に応じた強度の光束を出射する光源と、
前記光源から出射された光束を第1方向に相対的に高速に走査する第1光走査素子と、
一対の梁部により両側から支持されたミラー部を有し、前記梁部の捻れ変位によりミラー部を揺動軸回りに揺動させて前記第1走査素子により走査された光束を前記ミラー部により第1方向と略直交する第2方向に相対的に低速に走査する第2光走査素子とを有する走査部と、
前記走査部を制御する制御部と、を備えた画像表示装置において、
前記ミラー部の前記揺動軸回りの角度を検出する検出部と、
前記ミラー部の前記揺動軸回りの角度が、前記光束を走査する角度範囲外の所定角度以上となることを規制する規制部材と、を設け、
前記制御部は、
前記規制部材に到達するように前記ミラー部を前記揺動軸回りに回動させ、前記検出部により前記規制部材に前記ミラー部が到達したと判定したときの前記検出部による検出結果に基づき、前記ミラー部を前記揺動軸回りに揺動させる駆動信号の波形を調整する
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項9】
前記走査部で走査された光束を利用者の眼に入射させて、前記利用者の網膜上に前記画像信号に応じた画像を投影することを特徴とする請求項8に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−215326(P2011−215326A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82617(P2010−82617)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】