説明

光電変換素子とその製造方法

【課題】光の感度を向上させた光電変換素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
半導体基板101と、半導体基板101内に形成されたウェル領域102と、ウェル領域102内に形成された受光部を有し、受光部は第一の半導体領域103と第二の半導体領域104を有し、第二の半導体領域104は第一の半導体領域103よりも半導体基板101の表面側に位置し、第二の半導体領域104の禁制帯幅は、第一の半導体領域103の禁制帯幅よりも広いことを特徴とする光電変換素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋め込み型のフォトダイオードを有する光電変換素子とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の光電変換素子の一例としての固体撮像素子は、デジタルカメラや携帯電話機等に用いられている。同素子の構成の一例を説明する。図7は、特許文献1に記載の、半導体材料にシリコン(Si)を用いた固体撮像素子10の構成を示す部分断面図である。図7に示すように、特許文献1の固体撮像素子10は、p型半導体基板1と、p型半導体基板1上に形成された絶縁膜2を含んで構成される。
【0003】
p型半導体基板1内には、当該p型半導体基板1とのpn接合によりフォトダイオードを構成するn型不純物層4が形成され、このn型不純物層4上に高濃度のp型不純物層5が形成されている。一方、n型不純物層4からp型半導体基板1の主面方向に離れた領域には、蓄積ダイオードを構成するn型不純物層6が形成されている。
【0004】
p型半導体基板1における、n型不純物層4とn型不純物層6に挟まれた領域上には、シリコン酸化膜(SiO膜)を介してゲート電極3が形成され、n型不純物層4に蓄積された電荷は、当該ゲート電極3に電圧が印加されることで、n型不純物層6に転送され、蓄積される。
【0005】
n型不純物層6上には金属配線7が形成され、金属配線7は、増幅トランジスタのゲート電極(不図示)に接続されている。
ところで、特許文献1の固体撮像素子10に入射する光は、その波長によって吸収される深さが異なる。具体的には、波長が短い光ほど、p型半導体基板1の表面に近い領域で吸収される。固体撮像素子10のように、半導体材料にシリコンを用いた固体撮像素子では、入射した赤色光の半分を吸収するために、p型半導体基板1の表面から深さ(厚み)方向に3.0μmの深さが必要であるのに対し、青色光では、p型半導体基板1の表面から深さ方向に、わずか0.3μmの深さがあれば十分であることが知られている。したがって、固体撮像素子10に入射された青色光は、赤色光に比べ、p型半導体基板1の表面付近で、より多くの電子−正孔対を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−124439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、半導体基板の表面付近で電子−正孔対が発生したとしても、発生した電子は、不純物層に蓄積される前に、当該基板の表面付近で再結合し易い。半導体基板の表面には、結晶の断絶による未結合手や当該表面に吸着した不純物が存在するためである。そのため、例えば青色光などの短波長が吸収されることにより発生した電子の一部は、光電流として取り出すことができず、その結果、固体撮像素子10における短波長光の感度が、例えば赤色光などの長波長に比べて低くなっているのが現状である。
【0008】
以上は、光電変換素子の一例として固体撮像素子について説明したが、固体撮像素子以外に、光ピックアップ装置に用いられるOEIC(Optical Electrical Integrated Circuit)についても同様の課題が生じる。
【0009】
そこで、本発明は、光の感度を向上させた光電変換素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一態様である光電変換素子は、半導体基板と、前記半導体基板内に形成されたウェル領域と、前記ウェル領域内に形成された受光部を有し、前記受光部は第一の半導体領域と第二の半導体領域を有し、前記第二の半導体領域は前記第一の半導体領域よりも前記半導体基板の表面側に位置し、前記第二の半導体領域の禁制帯幅は、前記第一の半導体領域の禁制帯幅よりも広いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様に係る光電変換素子では、前記第一の半導体領域よりも前記半導体基板の表面側の領域に位置する第二の半導体領域の禁制帯幅が、前記第一の半導体領域の禁制帯幅よりも広くなっている。
【0012】
したがって、第二の半導体領域では、第一の半導体領域よりも光が吸収されにくい。そのため、半導体基板の表面に近い第二の半導体領域における光の吸収が抑制され、当該光が半導体基板内部、すなわち前記第一の半導体領域で吸収され易くなる。その結果、半導体基板の表面付近での電荷の再結合が抑制されるため、光の感度が向上する。
【0013】
また、第二の半導体領域の禁制帯幅が、前記第一の半導体領域の禁制帯幅よりも広いため、半導体基板表面への電荷の拡散を抑制するとともに、熱励起による電子−正孔対の発生を低減することができる。その結果、低雑音特性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態1の光電変換素子100の構成を示す部分断面図である。
【図2】青色光が吸収される深さをSi結晶とSiC混晶で比較した図である。
【図3】光電変換素子100の製造工程の一部分を示す図である。
【図4】光電変換素子100の製造工程のうち図3で示す部分に後続する部分を示す図である。
【図5】光電変換素子100の製造工程のうち図4で示す部分に後続する部分を示す図である。
【図6】光電変換素子100の製造工程の一部分を示す図である。
【図7】特許文献1の固体撮像素子10の構成を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、光電変換素子としてCCD型の固体撮像素子を例に挙げて説明する。
<実施の形態1>
1−1.光電変換素子の構成
−概略構成−
図1は、実施の形態1の光電変換素子100の構成を示す部分断面図である。光電変換素子100は、図1に示すように、半導体基板としてシリコン基板101と、シリコン基板101上に形成されたゲート絶縁膜109と、ゲート絶縁膜109上に選択的に形成された転送電極110と、転送電極110上に形成された遮光膜111と、遮光膜111を覆うようにゲート絶縁膜109上に形成された、シリコン酸化膜からなる層間絶縁膜112を含んで構成される。
【0016】
ゲート絶縁膜109は例えばシリコン酸化膜からなり、転送電極110は例えばポリシリコンからなり、遮光膜111は例えば金属からなるとしてよい。
シリコン基板101は例えばn型のシリコン基板である。シリコン基板101内には、ウェル領域102が形成されている。以下、ウェル領域102について説明する。
【0017】
−ウェル領域102−
ウェル領域102は例えばp型のウェル領域である。ウェル領域102内における、上方に遮光膜111が形成されていない部分(以下、「受光部102b」とも記す。)には、当該ウェル領域102とのpn接合によりフォトダイオードを構成する、第一の半導体領域として半導体領域103が形成され、この半導体領域103上に、第二の半導体領域として半導体領域104が形成されている。すなわち、半導体領域103は、ウェル領域102内における、シリコン基板101の表面から離れた内部領域に形成され(所謂、埋め込み型フォトダイオード。)、当該半導体領域103よりもシリコン基板101の表面側に半導体領域104が形成されている。
【0018】
なお、ここでは、ウェル領域102内にpn接合によるフォトダイオードが形成された例を示しているが、pn接合界面に絶縁体を挿入するpin接合によるフォトダイオードが形成された構成であってもよい。
【0019】
半導体領域103は例えばn型の半導体領域、半導体領域104は例えばp型の半導体領域であり、半導体領域104は高濃度のp型の半導体領域としてもよい。
一方、半導体領域103からシリコン基板101の主面方向に離れた領域には、半導体領域105が形成され、この半導体領域105上に半導体領域106が形成されている。
【0020】
半導体領域103と半導体領域104の界面付近には、半導体領域106側に、素子分離領域107が、半導体領域106側とは反対側に、素子分離領域108がそれぞれ形成されている。
【0021】
半導体領域105は例えばp型の半導体領域、半導体領域106は例えばn型の半導体領域である。また、素子分離領域107および素子分離領域108は例えばp型の素子分離領域であり、素子分離領域108は高濃度のp型の素子分離領域としてもよい。
【0022】
このような光電変換素子100において、光電変換により発生した電子は、n型の半導体領域103で蓄積され、転送電極106に読み出し電圧が印加されることで、n型の半導体領域106に読み出され、転送される。
【0023】
続いて、半導体領域104の詳細について説明する。
−半導体領域104−
半導体領域104は、Siよりも禁制帯幅が大きい、例えばSiと炭素(C)との混晶(以下、「SiC混晶」と記す。)であり、不純物をドープして例えばp型としている。同領域104のSiC混晶は、半導体領域103と半導体領域104の界面(以下、「Si−SiC界面」とも記す。)から、半導体基板101の表面にかけて、Siに対するCの割合(ここで、Cの割合とは、SiC混晶における、Si原子に対するC原子の組成比である)を変化させてもよい。例えば、半導体基板101の表面から浅い位置におけるSiに対するCの割合のほうが、半導体基板101の表面から深い位置におけるSiに対するCの割合よりも高くなるよう変化させてもよい。これは、半導体基板101の表面付近で広い禁制帯幅を実現しつつ、Si−SiC界面における、格子定数ミスマッチによる電荷の再結合を抑制するためである。通常、Siの方がSiC混晶よりも格子定数は大きいので、半導体領域104におけるCの割合は、具体的には、0〜10%程度の範囲であることが好ましく、Si−SiC界面ではほぼ0%、半導体領域104とゲート絶縁膜109の界面(以下、「Si−SiO界面」とも記す。)では10%程度となるように連続的に変化させることがより好ましい。
【0024】
なお、Si−SiC界面におけるCの濃度は、Si−SiC界面における電荷の再結合を抑制できるのでれば、格子定数ミスマッチが起こりにくい低C濃度、例えば5%以下でSi−SiC界面を形成してもよい。この場合、Si−SiC界面では、Siに対して、格子定数が縮まる方向に力が働くため、Siの禁制帯幅を広げる効果がある。その結果、シリコン基板101の表面における光の吸収が抑制され、感度が向上するとともに、熱励起起因の暗電流による雑音も低減することができる。
【0025】
また、Si結晶の禁制帯幅が1.1eVであるのに対し、SiC混晶の禁制帯幅は、例えば、3C‐SiCの場合は2.23eV、4H‐SiCの場合は3.26eV、6H‐SiCの場合は2.93eVである。したがって、Si結晶とSiC混晶では、光が吸収される深さが異なる。図2は、青色光である波長450nmの光が吸収される深さをSi結晶とSiC混晶(6H‐SiC)で比較した図である。縦軸は、青色光の光強度I/Ioを示す。Iは、透過光の強度であり、Ioは、表面における光(すなわち入射光)の強度である。ただし、表面における光の反射を無視する。横軸は、基板表面からの深さ(μm)を示す。
【0026】
図2に示すように、青色光である波長450nmの光では、Si結晶に対しては、基板表面からわずか約0.3μmで、その光強度が略半分になっている。一方、SiC混晶に対しては、基板表面から約3μmまではほとんど光強度が変化せず、その後、10μmまでに若干低下する程度である。つまり、SiC混晶よりもSi結晶の方が、はるかに、基板表面で青色光が吸収されやすいことを示している。
【0027】
そのため、SiC混晶からなる半導体領域104では、当該領域104がSi結晶からなる場合に比べ、電子が励起されにくいと言える。よって、半導体領域104での光電変換が抑制され、入射光が当該領域104を透過し易くなる。そして、半導体領域104を透過した光は、当該半導体領域103で主に吸収されることになる。半導体領域103の禁制帯幅が1.1eVであるのに対し、波長450nmの光のフォトンエネルギーは2.75eVであり、当該フォトンエネルギーが半導体領域103の禁制帯幅より大きいためである。
【0028】
このように、半導体領域103よりもシリコン基板101表面に近い半導体領域104を、SiC混晶から構成することにより、シリコン基板101の表面付近での光電変換を抑制することができるので、当該表面付近での電子の再結合を抑制することができる。その結果、入射光は、半導体領域103で主に吸収されることになる。赤色光など比較的長波長の光は、青色光など短波長の光に比べて物質への光の進入長が長く、特に短波長ほど表面で吸収されやすいので、本実施例のような構成とすることで、特に短波長の光の感度を向上させることができる。
【0029】
加えて、半導体領域104をSiC混晶から構成することにより、低雑音特性が得られる。これには、次の二つの理由が挙げられる。まず第1に、SiC混晶の禁制帯幅がSi結晶の禁制帯幅より広いために、シリコン基板101表面への電荷の拡散が抑制されるためである。第2に、SiC混晶の禁制帯幅がSi結晶の禁制帯幅より広いために、シリコン基板101の表面付近において、雑音の原因となる、熱励起による電子−正孔対の発生が低減されるためである。
【0030】
また、半導体領域104には、例えばボロンがドーピングされており、そのドーピング濃度は、1×1018〜1×1019cm−3とするのが好ましい。空乏層が半導体領域104側に拡がるのを抑制するためである。
【0031】
続いて、半導体領域104がSiC混晶からなることで得られる反射防止機能について説明する。
−反射防止機能−
光電変換素子100では、Si結晶からなる半導体領域103上に、SiC混晶からなる半導体領域104が形成され、当該半導体領域104上に、SiOからなるゲート絶縁膜109および層間絶縁膜112が形成されている。
【0032】
ここで、SiO、SiC、Siの屈折率をそれぞれ、n1、n2、n3とすると、n1=1.45、n2=2.65、n3=3.85であり、n1<n2<n3の関係が成立する。したがって、光が、SiO→SiC→Siと進む場合、SiO表面とSiO−SiC界面で反射する。そこで、振幅が同一で、かつ、位相が180度異なる2つの反射光を、互いに干渉させるよう、ゲート絶縁膜109および層間絶縁膜112の膜厚を調整することで、反射を防止することができる。
【0033】
このように、SiCはSiよりも低屈折率であり、かつ、SiOよりも高屈折率であるため、半導体領域104を反射防止膜として機能させることができる。
また、SiCの上に更に反射防止膜として例えばSiNを形成すると、さらに高い反射防止機能を発揮することができる。
【0034】
なお、Siよりも広い禁制帯幅を有する半導体材料として、SiCを例に挙げて説明したが、Si上に成長可能で、かつ、Siよりも広い禁制帯幅を有する半導体材料、例えば、GaP、GaAs、InP、GaN等であっても、同様の効果を得ることができる。このうち、GaPの格子定数は、5.45Åであり、Siの格子定数5.43Åとほぼ同一である。そのため、Si上にGaPを形成しても、格子定数ミスマッチが発生しにくく、GaP−Siの界面再結合速度を低く抑えることができるため有用である。
1−2.光電変換素子の製造方法
続いて、光電変換素子100の製造方法について説明する。図3〜6は、光電変換素子100の製造工程を示す図である。
【0035】
まず、図3(a)に示すように、n型のシリコン基板101内に、p型のウェル領域102をイオン注入(不純物を、例えばボロンとする。)等により形成した後、図3(b)に示すように、p型のウェル領域102内に、n型の半導体領域103をイオン注入(不純物を、例えばリンとする。)等により形成する。
【0036】
次に、図3(c)に示すように、シリコン基板101を熱酸化し、シリコン基板101表面にSiO膜101aを形成する。SiO膜101aの膜厚は、50nm以下である。
【0037】
SiO膜101aの形成後、図3(d)に示すように、SiO膜101aにおける、半導体領域103の上方に当たる部分をドライエッチングで取り除く。これにより、半導体領域103の上方に当たる部分が露出し、シリコン基板101表面には、SiO膜101bが残存する。そして、図4(a)に示すように、SiO膜101aの一部が除去されたことで露出した半導体領域103をドライエッチングし、ウェル領域102に溝102aを形成する。溝102aの深さは、形成すべき半導体領域104の膜厚を考慮して適宜決定する。
【0038】
次に、溝102a内に、SiC混晶を選択エピタキシャル成長させる。この際、成長温度は、500°C程度とし、SiC混晶の成長膜厚の増加とともに、SiC混晶におけるCの濃度を0〜10%の範囲で調整する。具体例を挙げると、SiC混晶におけるCの濃度を0から徐々に増やし、シリコン基板101表面で、Cの濃度が10%になるように調整する。
【0039】
SiC混晶の厚さに関しては、当該厚さが薄すぎると、成膜時の膜厚制御が困難となる一方、SiC混晶の厚さが厚すぎると、光の吸収抑制効果が低下してしまう。そこで、SiC混晶の厚さは、0.1μm〜0.3μmとすることが好ましく、より好ましくは、0.2μmである。これにより、光の吸収を抑制しつつ、膜厚制御も容易に行うことができる。
【0040】
また、SiC混晶は、母体基板材料のSiをベースに作られるため、母体基板材料との間で不具合が生じ難い。加えて、全く異なる材料を一から作るよりも、プロセスがシンプルになり、余計な汚染も少なくすることができるという効果を有する。
【0041】
続いて、SiC混晶のp型半導体化のため、エピタキシャル成長中に、例えばボロンを含有させる。ドーピング濃度は、上述のように、1×1018〜1×1019cm−3である。この濃度では、SiC混晶内に広がる空乏層幅は、0.1μmより狭くなり、空乏層は基板表面までは到達しない。加えて、ボロンは、SiCに拡散しにくい性質があるため、光の吸収を抑制するために効果的な薄膜のp型のSiC混晶を形成するのに有利である。
【0042】
以上により、図4(b)に示すように、溝102a内に、高濃度のp型の半導体領域104を形成することができる。すなわち、半導体領域103と接するように、半導体基板101の表面側に半導体領域104を形成することができる。
【0043】
なお、ここでは、SiC混晶を選択エピタキシャル法で成長させたが、シリコン基板101全面にSiC混晶をエピタキシャル成長させた後、SiO膜101a上のSiC混晶を取り除く方法も適用可能である。
【0044】
次に、図4(c)に示すように、SiO膜101bを除去した後、図4(d)に示すように、ウェル領域102内に、p型の半導体領域105、n型の半導体領域106、p型の素子分離領域107、および高濃度のp型の素子分離領域108を、それぞれイオン注入等により形成する。その後、シリコン基板101を再び熱酸化することで、SiO膜からなるゲート絶縁膜109を形成し、ゲート絶縁膜109上における、n型の半導体領域106およびp型の素子分離領域107、108に当たる部分に、例えばポリシリコンからなる転送電極110を形成する(図5(a))。図5(b)に示すように、転送電極110上に遮光膜111を形成した後、図5(c)に示すように、当該遮光膜111を覆うようにゲート絶縁膜109上に層間絶縁膜112を形成する。
【0045】
なお、半導体領域103上に、SiC混晶からなる半導体領域104を形成しているため、ここでは、フォトダイオードの受光面に反射防止膜を形成していないが、別途、反射防止膜を形成してもよいことは言うまでもない。反射防止膜の材料としては、例えば、SiNが挙げられる。層間絶縁膜112後、配線工程、オンチップフィルター形成工程等を経る。
【0046】
以上のように、本実施の形態における光電変換素子100の製造方法では、SiC混晶からなる半導体領域104を半導体領域103上に形成しているので、反射防止膜を省略することができ、工程削減によるコスト削減を実現できる。
【0047】
以上、本発明に係る光電変換素子について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限られないことは勿論である。
<変形例1>
SiC混晶の製造方法を替えた一変形例について説明する。
【0048】
上記製造方法では、SiC混晶を選択エピタキシャル成長により形成したが、Si結晶に炭素とボロンをイオン注入することにより、高濃度のp型の半導体領域104を形成してもよい。図6は、製造方法における各工程での光電変換素子100の構成を示す断面図である。図6(a)、(b)は、図3(a)、(b)と同様であるので説明を省略する。
【0049】
n型の半導体領域103を形成後、図6(c)に示すように、半導体領域103上に、SiC混晶113をSiにCイオンを注入することにより形成する。その際、SiC混晶113におけるCの濃度が0〜10%程度の範囲となるように調整する。具体例を挙げると、SiC混晶113におけるCの濃度を0から徐々に増やし、シリコン基板101表面で、Cの濃度がほぼ10%になるように調整する。
【0050】
SiC混晶113の厚さに関しては、当該厚さが薄すぎると、成膜時の膜厚制御が困難となる一方、SiC混晶113の厚さが厚すぎると、光の吸収抑制効果が低下してしまう。そこで、SiC混晶113の厚さに関しては、アニール後の厚さが、0.1μm〜0.3μmであることが好ましく、より好ましくは、0.2μmである。これにより、光の吸収を抑制しつつ、膜厚制御も容易に行うことができる。
【0051】
次に、図6(d)に示すように、SiC混晶113に、当該SiC混晶113をp型にするための不純物としてボロンをイオン注入により添加する。ドーピング濃度は、例えば1×1018〜1×1019cm−3である。これにより、SiC混晶からなる高濃度のp型の半導体領域104が形成される。なお、SiC混晶をイオン注入により形成する場合には、イオン注入後にアニールを必要とするため、半導体領域106形成前に、半導体領域103、104を形成しておく必要がある。
【0052】
図6(d)以降の処理については、図4(d)以降の処理と同様であるので、ここでは説明を省略する。
<その他の変形例>
(1)光電変換素子としてCCD型の固体撮像素子を例に挙げて説明したが、光電変換素子は、これに限らず、例えばCMOS型の固体撮像素子であってもよいし、CCD型やMOS型の固体撮像素子の他に、例えば青色光を利用した光ピックアップ装置に用いられるOEICであってもよい。CMOS型の固体撮像素子やOEICであっても、ウェル領域とのpn接合によりフォトダイオードを構成する半導体領域上に、SiC混晶、GaP、GaAs、InP、GaNの何れかからなる半導体領域を形成することで、半導体基板の表面付近での光の吸収が抑制され、光の感度が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、CCD型やMOS型の固体撮像素子、および光ピックアップ装置に用いられるOEIC等に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
101 シリコン基板
102 ウェル領域
103 半導体領域
104 混晶の半導体領域
105 半導体領域
106 半導体領域
107 素子分離領域
108 素子分離領域
109 ゲート絶縁膜
110 転送電極
111 遮光膜
112 層間絶縁膜
113 SiC混晶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板内に形成されたウェル領域と、
前記ウェル領域内に形成された受光部を有し、
前記受光部は第一の半導体領域と第二の半導体領域を有し、
前記第二の半導体領域は前記第一の半導体領域よりも前記半導体基板の表面側に位置し、
前記第二の半導体領域の禁制帯幅は、前記第一の半導体領域の禁制帯幅よりも広い
ことを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
前記半導体基板はSiから成り、
前記第二の半導体領域はSiC混晶から成る
ことを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記第二の半導体領域に形成されるSiC混晶は、前記半導体基板の表面から浅い位置におけるSiに対するCの割合のほうが、前記半導体基板の表面から深い位置におけるSiに対するCの割合よりも高い
ことを特徴とする請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記第二の半導体領域におけるCの割合は、10パーセント以下である
ことを特徴とする請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記半導体基板はSiから成り、
前記第二の半導体領域は、GaP、GaAs、InP、GaNのいずれかの混晶から成る
ことを特徴とする請求項1記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記第二の半導体領域は0.1μm以上の深さを有する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記第一の半導体領域の導電型はn型であり、前記第二の半導体領域の導電型はp型である
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項8】
半導体基板内に、ウェル領域を形成する第一工程と、
前記ウェル領域内に、受光部である第一の半導体領域を形成する第二工程と、
前記ウェル領域内における前記第一の半導体領域と接するように、前記半導体基板の表面側に前記第一の半導体領域の禁制帯幅よりも禁制帯幅が広い第二の半導体領域を形成する第三工程と
を有することを特徴とする光電変換素子の製造方法。
【請求項9】
前記第三工程は、前記第一の半導体領域よりも禁制帯幅が広い第二の半導体領域を形成する工程と、
前記第二の半導体領域を前記第一の半導体領域の導電型とは異なる導電型にする工程を含む
ことを特徴とする請求項8に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項10】
前記半導体基板は、Siからなり、
前記第三工程では、前記第二の半導体領域としてSiC混晶を形成する
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項11】
前記第三工程において、前記半導体基板の表面から浅い位置におけるSiに対するCの割合のほうが、深い位置におけるSiに対するCの割合よりも高くなるように、前記SiC混晶を形成する
ことを特徴とする請求項10に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項12】
前記第三工程において、Cの割合が、10パーセント以下となるように、前記SiC混晶を形成する
ことを特徴とする請求項10に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項13】
前記第三工程において、前記SiC混晶をエピタキシャル成長によって形成する
ことを特徴とする請求項10〜12のうちいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項14】
前記第三工程において、前記SiC混晶をイオン注入によって形成する
ことを特徴とする請求項10〜12のうちいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項15】
前記半導体基板は、Siからなり、
前記第三工程では、前記第二の半導体領域としてGaP、GaAs、InP、GaNのいずれかの混晶を形成する
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項16】
前記第二の半導体領域は0.1μm以上の深さを有する
ことを特徴とする請求項8〜15のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項17】
前記第一の半導体領域の導電型はn型であり、前記第二の半導体領域の導電型はp型である
ことを特徴とする請求項8〜16のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−129250(P2012−129250A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277285(P2010−277285)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】