光電気混載基板およびその製法
【課題】光導波路ユニットのコアと電気回路ユニットの光学素子との調芯作業が不要であり、かつ、量産性に優れている光電気混載基板およびその製法を提供する。
【解決手段】光導波路ユニットWと、光学素子10が実装された電気回路ユニットEとを結合させてなる光電気混載基板であって、光導波路ユニットWは、アンダークラッド層1の表面に、コア形成材料と同材料からなる電気回路ユニット位置決め用の差し込み部4を備え、その差し込み部4は、コア2の一端面2aに対して所定位置に位置決め形成されている。電気回路ユニットEは、電気回路基板の一部分が起立状に折り曲げられ上記差し込み部4に嵌合する折り曲げ部15を備え、その折り曲げ部15は、光学素子10に対して所定位置に位置決め形成されている。そして、上記差し込み部4に折り曲げ部15が嵌合した状態で、光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとが結合している。
【解決手段】光導波路ユニットWと、光学素子10が実装された電気回路ユニットEとを結合させてなる光電気混載基板であって、光導波路ユニットWは、アンダークラッド層1の表面に、コア形成材料と同材料からなる電気回路ユニット位置決め用の差し込み部4を備え、その差し込み部4は、コア2の一端面2aに対して所定位置に位置決め形成されている。電気回路ユニットEは、電気回路基板の一部分が起立状に折り曲げられ上記差し込み部4に嵌合する折り曲げ部15を備え、その折り曲げ部15は、光学素子10に対して所定位置に位置決め形成されている。そして、上記差し込み部4に折り曲げ部15が嵌合した状態で、光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとが結合している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを備えた光電気混載基板およびその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の電子機器等では、伝送情報量の増加に伴い、電気配線に加えて、光配線が採用されている。すなわち、電気配線が形成された電気回路基板に、電気信号を光信号に変換する発光素子や光信号を電気信号に変換する受光素子等の光学素子が実装された電気回路ユニットと、上記光信号を伝送する光配線として光導波路が形成された光導波路ユニットとを備えた光電気混載基板が、上記電子機器等に組み込まれている。
【0003】
上記光電気混載基板では、上記発光素子から発光された光を、上記光導波路ユニットのコア(光配線)の一端面(光入口)に入射させ、また、上記コアの他端面(光出口)から出射した光を、上記受光素子に受光させる必要がある。そのため、上記光学素子(発光素子,受光素子)とコアとを調芯する必要がある。
【0004】
そこで、上記光学素子とコアとの調芯方法が、従来より提案されている。その一例として、光導波路ユニットを固定し、その光導波路ユニットのコアの一端面(光入口)に対して、発光素子から光を発光させた状態で、その発光素子の位置を変化させつつ、上記コアの他端面(光出口)から出射した光の強度をモニタリングし、その強度が最大となった位置を、調芯位置として決定する方法がある(特許文献1参照)。また、他の例として、位置決め用の孔部が形成されたコネクタを光導波路ユニットに取り付け、上記孔部に嵌合する位置決め用のピンを電気回路ユニットに取り付け、上記孔部とピンとを嵌合することにより、光学素子と光導波路ユニットのコアとを自動的に調芯する方法がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−196831号公報
【特許文献2】特開2009−223063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の調芯方法では、高精度な調芯が可能であるものの、手間と時間とを要し、量産性に欠ける。また、上記特許文献2の調芯方法では、孔部とピンとの嵌合という簡単な方法で位置合わせが可能であるものの、コネクタおよびピンそれぞれの作製の際の寸法誤差だけでなく、光導波路ユニットに対するコネクタの取り付け位置の位置ずれ,電気回路ユニットに対する位置決め用のピンの取り付け位置の位置ずれ等も生じるため、それら寸法誤差および位置ずれが累積することで、調芯精度が悪化する。そこで、調芯精度を高めようとすると、上記寸法誤差や位置ずれが発生しないよう、寸法精度の管理が必要となるため、コストが高くなるとともに、量産性に欠けたものとなる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、光導波路ユニットのコアと電気回路ユニットの光学素子との調芯作業が不要であり、かつ、量産性に優れている光電気混載基板およびその製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを結合させてなる光電気混載基板であって、上記光導波路ユニットが、アンダークラッド層と、このアンダークラッド層の表面に形成された光路用のコアおよびそのコア形成材料と同材料からなる電気回路ユニット位置決め用の差し込み部とを備え、上記電気回路ユニットが、電気回路基板と、この電気回路基板上の所定部分に実装された光学素子と、上記電気回路基板の一部分を起立状に折り曲げてなる、上記差し込み部嵌合用の折り曲げ部とを備え、上記光導波路ユニットの上記差し込み部が、上記コアの形成位置を基準にしその一端面に対して所定位置に位置決めされ、差し込み可能に形成され、上記電気回路ユニットの上記折り曲げ部が、上記光学素子に対して所定位置に位置決め形成され、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとの結合が、上記光導波路ユニットの上記差し込み部に、上記電気回路ユニットの上記折り曲げ部を嵌合させた状態でなされている光電気混載基板を第1の要旨とする。
【0009】
また、本発明は、光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを結合させる上記光電気混載基板の製法であって、上記光導波路ユニットの作製が、アンダークラッド層を形成する工程と、このアンダークラッド層の表面に、光路用のコアおよび電気回路ユニット位置決め用の差し込み部を形成する工程とを備え、そのコアおよび差し込み部を形成する工程において、フォトリソグラフィ法により、上記コアを形成すると同時に、そのコアの一端面に対して位置決めされた所定位置に、上記コア形成材料と同材料で電気回路ユニット位置決め用の差し込み部を形成することが行われ、上記電気回路ユニットの作製が、電気回路基板を形成する工程と、この電気回路基板上の所定部分に光学素子を実装する工程とを備え、その光学素子を実装した後、その光学素子に対して位置決めされた所定位置に、上記差し込み部に嵌合させる折り曲げ部を起立状に折り曲げ形成することが行われ、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとを結合させ光電気混載基板にすることが、上記光導波路ユニットの上記差し込み部に、上記電気回路ユニットの上記折り曲げ部を嵌合させることにより行われる光電気混載基板の製法を第2の要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光電気混載基板は、光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを、結合させたものとなっている。上記光導波路ユニットでは、アンダークラッド層の表面において、コアの一端面と、電気回路ユニット位置決め用の差し込み部とが、互いに位置決めされた位置関係になっている。また、上記電気回路ユニットでは、光学素子と、上記光導波路ユニットの差し込み部に嵌合する折り曲げ部とが、互いに位置決めされた位置関係になっている。そのため、上記光導波路ユニットの差し込み部に、上記電気回路ユニットの折り曲げ部に嵌合した状態、すなわち、光導波路ユニットと電気回路ユニットとが結合した状態では、光導波路ユニットのコアと、電気回路ユニットの光学素子とが、自動的に調芯された状態になる。しかも、上記光導波路ユニットの差し込み部は、その光導波路ユニットを構成するアンダークラッド層の表面に、上記コアの形成材料と同材料から、形成されたものであり、上記電気回路ユニットの折り曲げ部は、その電気回路ユニットを構成する電気回路基板に形成されたものであることから、上記差し込み部と上記折り曲げ部との嵌合に、コネクタ等の他の部品は設けられていない。そのため、光導波路ユニットと電気回路ユニットとの結合に、上記コネクタ等の他の部品による寸法誤差や位置ずれの累積がなく、光導波路ユニットのコアと電気回路ユニットの光学素子との調芯は、高精度になっている。本発明の光電気混載基板は、以上のように、上記光導波路ユニットの差し込み部と上記電気回路ユニットの折り曲げ部とを嵌合するという簡単な作業により、コアと光学素子とが自動的に高精度に調芯される構造となっていることから、手間と時間とを要する調芯作業が不要であるため、量産性に優れている。また、上記差し込み部と上記折り曲げ部との嵌合に、コネクタ等の他の部品が不要であることから、そのコネクタ等の寸法精度の管理も不要であるため、この点からも、量産性に優れている。
【0011】
特に、上記光導波路ユニットの上記差し込み部が、平面視略V字状の突出部に形成され、上記電気回路ユニットの上記折り曲げ部が、上記略V字状の突出部の、略V字状の相対する内壁面に挟持された状態で、その突出部に嵌合している場合には、簡単な位置決め構造で、高精度な調芯状態の光電気混載基板になっている。
【0012】
本発明の光電気混載基板の製法は、光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを、結合させることにより行われる。上記光導波路ユニットを作製する工程では、アンダークラッド層の表面において、フォトリソグラフィ法により、コアと同時に、そのコア形成材料と同材料で、電気回路ユニット位置決め用の差し込み部を形成するため、上記コアの一端面と、上記差し込み部とが、互いに位置決めされた位置関係になっている。また、上記電気回路ユニットを作製する工程では、光学素子に対して位置決めされた所定位置に、上記光導波路ユニットの差し込み部に嵌合させる折り曲げ部を形成している。そのため、上記光導波路ユニットの上記差し込み部に、上記電気回路ユニットの上記折り曲げ部を嵌合させ、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとを結合させると、光導波路ユニットのコアと、電気回路ユニットの光学素子とを、自動的に調芯することができる。しかも、上記光導波路ユニットの差し込み部は、その光導波路ユニットを構成するアンダークラッド層の表面において、フォトリソグラフィ法により、コアと同時に形成され、上記電気回路ユニットの折り曲げ部は、その電気回路ユニットを構成する電気回路基板の一部に形成されることから、上記差し込み部と上記折り曲げ部との嵌合に、コネクタ等の他の部品を要しない。そのため、光導波路ユニットと電気回路ユニットとの結合に、上記コネクタ等の他の部品による寸法誤差や位置ずれの累積が生じず、光導波路ユニットのコアと電気回路ユニットの光学素子との調芯が、高精度になる。本発明の光電気混載基板の製法は、以上のように、上記光導波路ユニットの差し込み部と上記電気回路ユニットの折り曲げ部とを嵌合するという簡単な作業により、コアと光学素子とが自動的に高精度に調芯されることから、手間と時間とを要する調芯作業が不要であるため、量産性に優れている。また、上記差し込み部と上記折り曲げ部との嵌合に、コネクタ等の他の部品を要しないことから、そのコネクタ等の寸法精度の管理も不要であるため、この点からも、量産性に優れている。
【0013】
特に、上記光導波路ユニットの上記差し込み部を、平面視略V字状の突出部に形成し、上記電気回路ユニットの上記折り曲げ部を、上記略V字状の突出部の、略V字状の相対する内壁面に挟持させ、その突出部に嵌合させる場合には、上記差し込み部(突出部)への上記折り曲げ部の嵌合が簡単にできるため、より生産性により優れている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の光電気混載基板の一実施の形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】上記光電気混載基板を構成する光導波路ユニットを模式的に示す斜視図である。
【図3】上記光電気混載基板を構成する電気回路ユニットを模式的に示す斜視図である。
【図4】(a)〜(d)は、上記光電気混載基板の製法における光導波路ユニットの作製工程を模式的に示す説明図である。
【図5】上記作製された光導波路ユニットを模式的に示す説明図である。
【図6】(a)〜(c)は、上記光電気混載基板の製法における電気回路ユニットの作製工程を模式的に示す説明図である。
【図7】(a)〜(c)は、図6に続く、上記電気回路ユニットの作製工程を模式的に示す説明図である。
【図8】上記光電気混載基板の作製工程を模式的に示す説明図である。
【図9】本発明の光電気混載基板の他の実施の形態を模式的に示し、(a)はその斜視図であり、(b)は(a)の一端部の要部を拡大した縦断面図である。
【図10】上記他の実施の形態の光導波路ユニットの一端部の変形例を模式的に示す拡大縦断面図である。
【図11】上記光電気混載基板のさらに他の実施の形態を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0016】
図1は、本発明の光電気混載基板の一実施の形態を模式的に示す斜視図である。この光電気混載基板は、電気回路ユニット位置決め用の差し込み部4を有する光導波路ユニットWと、その差し込み部4に嵌合する折り曲げ部15を有する電気回路ユニットEとを、個別に作製し、上記光導波路ユニットWの上記差し込み部4に、上記電気回路ユニットEの上記折り曲げ部15が嵌合することにより、上記光導波路ユニットWと上記電気回路ユニットEとを結合して一体化したものとなっている。ここで、光導波路ユニットWにおいて、上記差し込み部4は、コア2の一端面(光透過面)2aに対して所定位置(両ユニットW,Eの結合時に光導波路ユニットWの一端面2aが電気回路ユニットEの光学素子10と対面するよう予め設定された位置)に位置決め形成されている。また、上記電気回路ユニットEにおいて、上記差し込み部4に嵌合する上記折り曲げ部15は、光学素子10に対して所定位置(両ユニットW,Eの結合時に電気回路ユニットEの光学素子10が光導波路ユニットWの一端面2aと対面するよう予め設定された位置)に位置決め形成されている。このため、上記光電気混載基板では、上記差し込み部4と上記折り曲げ部15との嵌合により、コア2の一端面2aと光学素子10とが、適正に位置決めされ、調芯された状態になっている。なお、図1では、光電気混載基板の一端部を図示しており、図示されていない上記光導波路ユニットWの部分は、直線状であっても屈曲状であってもよい。
【0017】
より詳しく説明すると、上記光導波路ユニットWは、その斜視図を図2に示すように、アンダークラッド層1と、このアンダークラッド層1の表面に所定パターンの線状に形成された光路用のコア2と、このコア2を被覆した状態で上記アンダークラッド層1の表面に形成されたオーバークラッド層3とを備えている。そして、この光導波路ユニットWの一端部(図2では下端部)であって、コア2の左右両側の部分は、オーバークラッド層3がいわば切欠かれた状態になっていて、そこからアンダークラッド層1が露呈しており、その露呈部の表面に、電気回路ユニット位置決め用のV字状(図2では逆V字状)の上記差し込み部4が形成されている。このV字状の差し込み部4では、そのV字状の相対向する壁部の内側部分によって差し込み凹部4aが形成されていて、そこに、上記電気回路ユニットEの上記折り曲げ部15(図1参照)が嵌合するようになっている。また、その差し込み部4は、フォトリソグラフィ法により、コア2の形成材料から、コア2と同時に形成されたものであり、コア2の一端面2aに対して所定位置に位置決め形成されている。この実施の形態では、上記差し込み部4の配置は、コア2の左右両側(2個所)に形成されている。
【0018】
一方、上記電気回路ユニットEは、その斜視図を図3に示すように、基板11と、この基板11の表面(図では下面)に形成された絶縁層(図示せず)と、この絶縁層の表面(図では下面)に形成された光学素子実装用パッドを含む電気回路(図示せず)と、上記光学素子実装用パッドに実装された光学素子10とを備えている。また、電気回路ユニットEには、上記光学素子10の光路に対応する部分(図では光学素子10の上方)に、光路用の貫通孔18が形成されている。そして、この電気回路ユニットEには、上記光導波路ユニットWの差し込み部4(図2参照)に嵌合する長方形板状の折り曲げ部15が起立形成されている。この長方形板状の折り曲げ部15は、上記基板11と絶縁層との積層部分の一部分が、コ字状に切り込まれ、そのコ字状の切り込みで囲まれる舌片状部分が、上記積層部分に対し直角に起立状に折り曲げられて形成されたものであり、上記光学素子10に対して、所定位置に位置決め形成されている。この実施の形態では、上記折り曲げ部15の配置は、上記光学素子10の左右両側(2個所)に形成されている。
【0019】
なお、上記絶縁層の表面には、上記光学素子実装用パッドを含む電気回路とともに、上記折り曲げ部15を位置決め形成する際の目印として利用される折り曲げ部位置決め用回路(図示せず)が形成されている。この折り曲げ部位置決め用回路は、上記折り曲げ部15となる上記舌片状部分を形成する上記コ字状の切り込みに沿って、形成されている。さらに、これら光学素子実装用パッド,電気回路,折り曲げ部位置決め用回路の表面には、めっき層(図示せず)が形成されている。上記光学素子10は、この実施の形態では、フリップチップタイプの素子が用いられており、その発光部または受光部は、光学素子10の実装側の面(図では上面)に形成されている。
【0020】
そして、上記光電気混載基板は、図1に示すように、上記光導波路ユニットWの上記差し込み部4の差し込み凹部4aに、上記電気回路ユニットEの上記折り曲げ部15が嵌合されている状態で、光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとが結合され一体化されている。上記嵌合状態では、上記折り曲げ部15の片側側縁が、上記差し込み凹部4a内に位置するアンダークラッド層1の表面部分に接触している。ここで、先に述べたように、光導波路ユニットWに形成された上記差し込み部4は、コア2の一端面2aに対して所定位置に位置決め形成されている。また、電気回路ユニットEに形成された折り曲げ部15は、光学素子10に対して所定位置に位置決め形成されている。そのため、上記差し込み部4と折り曲げ部15との嵌合により、コア2の一端面2aと光学素子10とは、適正に位置決めされ、自動的に調芯された状態になっている。
【0021】
さらに、この実施の形態では、光導波路ユニットWの上記差し込み部4がV字状に形成されている。そのため、その差し込み部4に上記折り曲げ部15が嵌合されている状態では、その折り曲げ部15の表裏両面が上記差し込み部(突出部)4の対面する内壁面に当接し、折り曲げ部15が上記突出部で挟持された状態になっている。その結果、上記電気回路ユニットEに対する上記光導波路ユニットWの位置ずれが、より確実に防止され、コア2と光学素子10との調芯を、より確実に維持することができる。
【0022】
上記光電気混載基板は、下記の(1)〜(3)の工程を経て製造される。
(1)上記光導波路ユニットWを作製する工程〔図4(a)〜(d),図5参照〕。
(2)上記電気回路ユニットEを作製する工程〔図6(a)〜(c),図7(a)〜(c)参照〕。
(3)上記光導波路ユニットWを上記電気回路ユニットEに結合する工程(図8参照)。
【0023】
〔(1)光導波路ユニットWの作製工程〕
上記(1)の光導波路ユニットWの作製工程について説明する。まず、アンダークラッド層1を形成する際に用いる平板状の基台20〔図4(a)参照〕を準備する。この基台20の形成材料としては、例えば、ガラス,石英,シリコン,樹脂,金属等があげられる。なかでも、ステンレス製基板が好ましい。ステンレス製基板は、熱に対する伸縮耐性に優れ、上記光導波路装置の製造過程において、様々な寸法が設計値に略維持されるからである。また、基台20の厚みは、例えば、20μm〜1mmの範囲内に設定される。
【0024】
ついで、図4(a)に示すように、上記基台20の表面の所定領域に、フォトリソグラフィ法により、アンダークラッド層1を形成する。このアンダークラッド層1の形成材料としては、感光性エポキシ樹脂等の感光性樹脂が用いられる。アンダークラッド層1の厚みは、例えば、5〜50μmの範囲内に設定される。
【0025】
つぎに、図4(b)に示すように、上記アンダークラッド層1の表面に、コアおよび差し込み部形成用の感光性樹脂層2Aを形成する。そして、コア2および平面視V字状の差し込み部4のパターンに対応する開口パターンが形成されているフォトマスクを介して、上記感光性樹脂層2Aを照射線により露光する。
【0026】
そして、図4(c)に示すように、現像液を用いて現像を行うことにより、上記感光性樹脂層2Aにおける未露光部分を溶解させて除去し、残存した感光性樹脂層2Aをコア2および平面視V字状の差し込み部4のパターンに形成する。この差し込み部4は、上記のように、1個のフォトマスクを使用したフォトリソグラフィ法により、コアと同時に形成したため、コア2の一端面2aに対して所定位置に位置決め形成されている。
【0027】
上記コア2および差し込み部4の形成材料としては、例えば、上記アンダークラッド層1と同様の感光性樹脂があげられ、上記アンダークラッド層1およびオーバークラッド層3〔図4(d)参照〕の形成材料よりも屈折率が大きい材料が用いられる。この屈折率の調整は、例えば、上記アンダークラッド層1,コア2,オーバークラッド層3の各形成材料の種類の選択や組成比率を調整して行うことができる。コアの数は、1本でも複数本でもよい〔図4(c)では1本〕。コア2のパターンは、例えば、直線状,分岐状,交差状等があげられ、それらが混在していてもよい〔図4(c)では直線状〕。コア2および差し込み部4の厚みは、例えば、20〜100μmの範囲内に設定される。コア2の幅は、例えば、20〜100μmの範囲内に設定される。差し込み部4の差し込み凹部4aの寸法は、例えば、奥行き深さが0.3〜5.0mmの範囲内、幅が30μm(V字状の奥側の最小幅)〜2.0mm(V字状の広がった開口側の最大幅)の範囲内にそれぞれ設定される。
【0028】
そして、図4(d)に示すように、上記コア2を被覆し、上記差し込み部4を被覆しないよう、上記アンダークラッド層1の表面に、フォトリソグラフィ法により、オーバークラッド層3を形成する。すなわち、このオーバークラッド層3の形成に用いるフォトマスクは、上記差し込み部4に対応する部分が未露光となるようなパターンに形成されている。上記オーバークラッド層3の形成材料としては、例えば、上記アンダークラッド層1と同様の感光性樹脂があげられる。上記オーバークラッド層3の厚み(アンダークラッド層1の表面からの厚み)は、例えば、コア2の厚みを上回り1000μm以下の範囲内に設定される。
【0029】
ついで、図5に示すように、アンダークラッド層1の裏面から基台20〔図4(d)参照〕を剥離する。これにより、アンダークラッド層1,コア2,オーバークラッド層3を備え、上記アンダークラッド層1の表面に電気回路ユニット位置決め用の差し込み部4が形成された光導波路ユニットWを得る。この光導波路ユニットWの厚みは、例えば、30〜1150μmの範囲内に設定される。このようにして、上記(1)の光導波路ユニットWの作製工程が完了する。
【0030】
〔(2)電気回路ユニットEの作製工程〕
つぎに、上記(2)の電気回路ユニットEの作製工程について、図6(a)〜(c),図7(a)〜(c)を用いて説明する。これら図6,7の各(a)〜(c)には、上下に2つの図を示しており、上側の図が平面図、下側の図がその縦断面図である。
【0031】
まず、前記基板11〔図6(a)参照〕を準備する。この基板11の形成材料としては、例えば、金属,樹脂等があげられる。なかでも、加工容易性および寸法安定性の観点から、ステンレス製基板が好ましい。また、上記基板11の厚みは、例えば、0.02〜0.1mmの範囲内に設定される。
【0032】
ついで、図6(a)に示すように、上記基板11の表面の所定領域に、絶縁層12に形成する。この絶縁層12の形成は、例えば、感光性ポリイミド樹脂等の、絶縁層形成用の感光性樹脂が溶媒に溶解しているワニスを塗布した後、必要に応じて、それを加熱処理して乾燥させ、絶縁層形成用の感光性樹脂層を形成する。そして、その感光性樹脂層を、フォトマスクを介して紫外線等の照射線により露光することにより、所定形状の絶縁層12に形成する。絶縁層12の厚みは、例えば、5〜15μmの範囲内に設定される。
【0033】
つぎに、図6(b)に示すように、上記絶縁層12の表面に、光学素子実装用パッド13を含む電気回路(図示せず)と、折り曲げ部位置決め用回路14とを、同時に形成し、電気回路基板を作製する。これら電気回路等の形成は、例えば、セミアディティブ法により行われる。
【0034】
すなわち、まず、上記絶縁層12の表面に、スパッタリングまたは無電解めっき等により金属層(厚み60〜260nm程度)を形成する。この金属層は、後の電解めっきを行う際のシード層(電解めっき層形成の素地となる層)となる。ついで、上記基板11,絶縁層12およびシード層からなる積層体の両面に、ドライフィルムレジストを貼着した後、上記シード層が形成されている側のドライフィルムレジストに、フォトリソグラフィ法により上記電気回路等のパターンの孔部を同時に形成し、その孔部の底に上記シード層の表面部分を露呈させる。つぎに、電解めっきにより、上記孔部の底に露呈した上記シード層の表面部分に、電解めっき層(厚み5〜20μm程度)を積層形成する。そして、上記ドライフィルムレジストを水酸化ナトリウム水溶液等により剥離する。その後、上記電解めっき層が形成されていないシード層部分をソフトエッチングにより除去し、残存した電解めっき層とその下のシード層とからなる積層部分を上記電気回路等に形成する。このようにして、上記基板11,絶縁層12、光学素子実装用パッド13を含む電気回路,および折り曲げ部位置決め用回路14からなる電気回路基板を得る。
【0035】
そして、その電気回路基板を露光機にセットし、表面側(電気回路側)と裏面側(基板11側)とをカメラで撮影し、その画像を基に、上記表面側の折り曲げ部位置決め用回路14を目印として、折り曲げ部形成予定部(舌片状部分15A)の裏面側の位置を適正に位置決めするとともに、上記光学素子実装用パッド13を目印として、光路用の貫通孔形成予定部の裏面側の位置を適正に位置決めする。ついで、その裏面側のうち、舌片状の上記折り曲げ部形成予定部を形成するためのコ字状の切り込み予定部および上記光路用の円形状の貫通孔形成予定部を除く部分を、ドライフィルムレジスト(図示せず)で覆う。つぎに、図6(c)に示すように、露呈している上記コ字状の切り込み予定部および上記円形状の貫通孔形成予定部の基板11の部分を、塩化第2鉄水溶液を用いてエッチングすることにより除去する。これにより、その除去部分11a,11bから上記絶縁層12の部分が露呈する。
【0036】
ついで、図7(a)に示すように、上記露呈した絶縁層12の部分を、ケミカルエッチング液を用いてエッチングすることにより除去する。これにより、上記コ字状の切り込み予定部をコ字状の切り込み16に形成する(コ字状の貫通状態にする)とともに、上記円形状の貫通孔形成予定部を円形状の貫通孔18に形成する。つぎに、電解めっき処理を施すことにより、上記光学素子実装用パッド13を含む電気回路,および折り曲げ部位置決め用回路14の表面に、めっき層(図示せず)を形成する。その後、上記ドライフィルムレジストを水酸化ナトリウム水溶液等により剥離する。なお、上記めっき層の成分としては、金,ニッケル等があげられる。また、そのめっき層の厚みは、通常、0.2〜0.5μmの範囲内に設定される。
【0037】
つぎに、図7(b)に示すように、光学素子実装用パッド13の表面に、上記めっき層を介して、上記光学素子10を実装する。その後、必要に応じて、上記光学素子10およびその周辺部を、樹脂封止(図示せず)する。
【0038】
そして、図7(c)に示すように、上記コ字状の切り込み16〔図7(a)参照〕で囲まれる舌片状部分15Aを、上記電気回路基板と直角に垂下状に折り曲げ、折り曲げ部15に形成する。これにより、折り曲げ部15を有する電気回路ユニットEを得る。この折り曲げ部15は、上記セミアディティブ法により光学素子実装用パッド13と同時に形成した折り曲げ部位置決め用回路14を基準に形成されているため、上記折り曲げ部15は、上記光学素子実装用パッド13に対して所定位置に位置決め形成される。そのため、その光学素子実装用パッド13に実装した光学素子10と上記折り曲げ部15とは、互いに位置決めされた位置関係になっている。なお、上記折り曲げ部15の高さは、その折り曲げ部15が上記光導波路ユニットの差し込み部4(図1参照)に嵌合できる高さに設定される。このようにして、上記(2)の電気回路ユニットEの作製工程が完了する。
【0039】
〔(3)光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとの結合工程〕
つぎに、光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとの結合工程について説明する。この結合は、図8〔図7(c)に示す電気回路ユニットEを上下逆に図示している)に斜視図で示すように、上記電気回路ユニットEの光路用の貫通孔18と、上記光導波路ユニットWのコア2の一端面2aとを対面させた状態で、上記光導波路ユニットWの差し込み部4に、上記電気回路ユニットEの折り曲げ部15を嵌合させ、上記光導波路ユニットWと上記電気回路ユニットEとを一体化する。このとき、上記折り曲げ部15の片側側縁を、上記差し込み部4の差し込み凹部4a内に位置するアンダークラッド層1の表面部分に接触させる。その後、必要に応じて、上記差し込み部4と折り曲げ部15との嵌合部を接着剤で固定してもよい。このようにして、上記(3)の光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとの結合工程が完了し、目的とする光電気混載基板が完成する。
【0040】
ここで、先に述べたように、上記光導波路ユニットWでは、コア2の一端面2aと電気回路ユニット位置決め用の差し込み部4とが互いに位置決めされた位置関係になっている。また、上記光学素子10が実装された電気回路ユニットEでは、光学素子10と上記差し込み部4に嵌合する折り曲げ部15とが互いに位置決めされた位置関係になっている。そのため、上記のように、上記差し込み部4に上記折り曲げ部15を嵌合させて、上記光電気混載基板を作製すると、コア2の一端面2aと光学素子10とが、自動的に調芯される。その結果、上記光電気混載基板を作製には、手間と時間とを要する調芯作業が不要となる。すなわち、上記光電気混載基板は、量産性に優れたものとなっている。
【0041】
しかも、上記光導波路ユニットWの差し込み部4は、その光導波路ユニットWを構成するアンダークラッド層1の表面に、コア2の形成材料で形成されたものである。また、上記電気回路ユニットEの折り曲げ部15は、その電気回路ユニットEを構成する電気回路基板の一部分からなるものである。すなわち、上記差し込み部4と上記折り曲げ部15との嵌合に、コネクタ等の他の部品は設けられていない。そのため、光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとの結合に、上記コネクタ等の他の部品による寸法誤差や位置ずれの累積がなく、光導波路ユニットWのコア2と電気回路ユニットEの光学素子10との調芯は、高精度になっている。また、上記差し込み部4と上記折り曲げ部15との嵌合に、コネクタ等の他の部品を要しないことから、そのコネクタ等の寸法精度の管理も不要となっており、この点からも、量産性に優れている。
【0042】
図9(a)は、本発明の光電気混載基板の他の実施の形態を模式的に示す斜視図であり、図9(b)は、その一端部の要部を示す縦断面図である。この実施の形態では、光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとが平行になった状態で、上記光導波路ユニットWの上記差し込み部4に、電気回路ユニットEの上記折り曲げ部15が嵌合している。この嵌合状態では、上記折り曲げ部15の頂端縁が、上記差し込み部4の差し込み凹部4a内に位置するアンダークラッド層1の表面部分に接触している。そして、上記光導波路ユニットWの一端部には、コア2の軸方向に対して45°傾斜した傾斜面が形成され、その傾斜面に位置するコア2の一端面2aが光反射面になっている。すなわち、コア2の一端面2aで光を反射して、コア2と光学素子10との間で光伝達が可能な状態になっている(図示の一点鎖線L参照)。上記傾斜面は、光導波路ユニットWの作製の最後の工程において、上記差し込み部4を基準とした所定位置で、回転刃による切削またはレーザ加工等により形成される。それ以外の光導波路ユニットWの部分および電気回路ユニットEは、図1に示す実施の形態と同様であり、同様の部分には、同じ符号を付している。そして、図1に示す実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0043】
なお、この実施の形態では、光導波路ユニットWの一端面の傾斜面において、その傾斜面に位置するコア2の一端面2aを光反射面に形成したが、図10に一端部の要部を縦断面図で示すように、オーバークラッド層3の一端部に傾斜面を形成し、その傾斜面に位置するオーバークラッド層3の部分3aを光反射面とし、コア2と光学素子10との間で光伝達が可能な状態にしてもよい(図示の一点鎖線L参照)。すなわち、この場合も、コア2の一端面2aは、上記差し込み部4〔図9(a)参照〕と互いに位置決めされた位置関係になっており、光学素子10と調芯された状態になっている。
【0044】
また、上記各実施の形態では、光学素子10として、フリップチップタイプの素子を用いたが、ワイヤーボンディングタイプの素子を用いてもよい。このワイヤーボンディングタイプの素子を用いる場合は、発光部または受光部が、光学素子10の上面(表面)に形成されているため、図11に示すように、光導波路ユニットWは、光学素子10が実装されている側から電気回路ユニットEに嵌合される。
【0045】
さらに、上記各実施の形態では、光電気混載基板の一端部について説明したが、他端部においても、上記各実施の形態と同様の構成としてもよい。この場合は、上記光学素子10として、例えば、一端部側に発光素子、他端部側に受光素子を実装することにより、その発光素子からの光を、コア2を介して、上記受光素子で受光するようにすることができる。
【0046】
そして、上記各実施の形態では、光導波路ユニットWの上記差し込み部4の形状をV字状としたが、他でもよい。例えば、光導波路ユニットWの上記差し込み部4をY字状(このY字状も略V字状に含まれる)としてもよいし、コ字状としてもよい。
【0047】
また、上記各実施の形態では、上記光導波路ユニットWのオーバークラッド層3をフォトリソグラフィ法により形成したが、型成形により形成してもよい。なお、上記各実施の形態では、上記光導波路ユニットWにオーバークラッド層3を形成したが、必要に応じて、オーバークラッド層3を形成することなく、コア2を露呈した状態にしてもよい。
【0048】
さらに、上記各実施の形態では、電気回路ユニットEの作製工程において、光学素子実装用パッド13,電気回路,折り曲げ部位置決め用回路14の表面に、めっき層を形成したが、このめっき層は、必要に応じて形成されるものであり、不要な場合は、形成しなくてもよい。
【0049】
つぎに、実施例について説明する。但し、本発明は、実施例に限定されるわけではない。
【実施例】
【0050】
〔アンダークラッド層,オーバークラッド層の形成材料〕
成分A:脂環骨格を含むエポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製、EHPE3150)100重量部。
成分B:光酸発生剤(サンアプロ社製、CPI−200K)2重量部。
これら成分A,Bをシクロヘキサノンに溶解することにより、アンダークラッド層およびオーバークラッド層の形成材料(感光性樹脂)を調製した。
【0051】
〔コアの形成材料〕
成分C:O−クレゾールノボラックグリシジルエーテル(新日鐡化学社製、YDCN−700−10)100重量部。
この成分Cと上記成分B1重量部とを乳酸エチルに溶解することにより、コアの形成材料(感光性樹脂)を調製した。
【0052】
〔実施例1〕
〔光導波路ユニットの作製〕
上記アンダークラッド層,コア,オーバークラッド層の各形成材料を用い、図1に示す実施の形態と同様にして、電気回路ユニット位置決め用のV字状の差し込み部を有する光導波路ユニットを作製した。上記V字状の差し込み凹部の寸法は、奥行き深さを1.98mm、V字状の奥側の最小幅を80μm、V字状の広がった開口側の最大幅を820μm、隣り合う差し込み部の中心間距離を6.0mmとした。
【0053】
〔電気回路ユニットの作製〕
上記図1に示す実施の形態と同様にして、上記電気回路ユニット位置決め用の差し込み部に嵌合する長方形状の折り曲げ部を有する電気回路ユニットを作製した。その折り曲げ部の寸法は、幅を3.0mm、高さを2.0mm、対面する折り曲げ部の中心間距離を6.0mmとした。なお、光学素子として、フリップチップタイプの発光素子(ULM Photonics社製、ULM850−10−TT−C0104U)を実装した。
【0054】
〔光電気混載基板の製造〕
上記光導波路ユニットの差し込み部に、上記電気回路ユニットの折り曲げ部を嵌合させ、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとを一体化した。そして、その嵌合部を接着剤で固定した。
【0055】
〔実施例2〕
〔光導波路ユニットの作製〕
上記実施例1の光導波路ユニットの一端部を、図9(a),(b)に示す実施の形態と同様にして、傾斜面に形成した。それ以外の部分は、上記実施例1と同様とした。
【0056】
〔電気回路ユニットの作製〕
上記実施例1の電気回路ユニットを準備した。
【0057】
〔光電気混載基板の製造〕
上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとを平行にした状態で、上記光導波路ユニットの差し込み部に、上記電気回路ユニットの折り曲げ部を嵌合させ、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとを一体化した。そして、その嵌合部を接着剤で固定した。
【0058】
〔光伝播試験〕
上記実施例1,2の光電気混載基板の発光素子に電流を流し、発光素子から光を出射させた。そして、光電気混載基板のコアの他端部から光が出射されることを確認した。
【0059】
〔実施例3〕
〔光導波路ユニットの作製〕
上記実施例1の光導波路ユニットにおいて、他端部も、一端部と同様に、電気回路ユニット位置決め用のV字状の差し込み部を有する光導波路ユニットを作製した。それ以外は、上記実施例1と同様にした。
【0060】
〔電気回路ユニットの作製〕
上記実施例1と同様の電気回路ユニットを作製した。さらに、上記実施例1の電気回路ユニットにおいて、発光素子に代えて、フリップチップタイプの受光素子(Albis社製、PDCA04−70−GS)を実装したものを作製した。
【0061】
〔光電気混載基板の製造〕
上記実施例1と同様にして、光導波路ユニットの一端部に、上記発光素子が実装された電気回路ユニットを固定し、他端部に、上記受光素子が実装された電気回路ユニットを固定した。
【0062】
〔実施例4〕
〔光導波路ユニットの作製〕
上記実施例2の光導波路ユニットにおいて、他端部も、一端部と同様に、傾斜面に形成した。それ以外の部分は、上記実施例2と同様とした。
【0063】
〔電気回路ユニットの作製〕
上記実施例3の、上記発光素子が実装された電気回路ユニットと、上記受光素子が実装された電気回路ユニットとを準備した。
【0064】
〔光電気混載基板の製造〕
上記実施例2と同様にして、光導波路ユニットの一端部に、上記発光素子が実装された電気回路ユニットを固定し、他端部に、上記受光素子が実装された電気回路ユニットを固定した。
【0065】
〔信号伝送試験〕
上記実施例3,4の光電気混載基板の発光素子に電流を流し、発光素子から光を出射させた。そして、その光が受光素子で受光されていることを確認した。
【0066】
上記実施例1〜4の結果から、上記製法では、光導波路ユニットのコアと電気回路ユニットの光学素子(発光素子,受光素子)との調芯作業をしなくても、得られた光電気混載基板は、適正に光伝播することがわかる。
【0067】
なお、上記差し込み部を、Y字状,コ字状に形成した光電気混載基板でも、調芯作業をしなくても、適正に光伝播するという結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の光電気混載基板は、音声や画像等のデジタル信号を高速で伝送,処理する情報通信機器,信号処理装置等に用いることができる。
【符号の説明】
【0069】
W 光導波路ユニット
E 電気回路ユニット
1 アンダークラッド層
2 コア
2a 一端面
4 差し込み部
10 光学素子
15 折り曲げ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを備えた光電気混載基板およびその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の電子機器等では、伝送情報量の増加に伴い、電気配線に加えて、光配線が採用されている。すなわち、電気配線が形成された電気回路基板に、電気信号を光信号に変換する発光素子や光信号を電気信号に変換する受光素子等の光学素子が実装された電気回路ユニットと、上記光信号を伝送する光配線として光導波路が形成された光導波路ユニットとを備えた光電気混載基板が、上記電子機器等に組み込まれている。
【0003】
上記光電気混載基板では、上記発光素子から発光された光を、上記光導波路ユニットのコア(光配線)の一端面(光入口)に入射させ、また、上記コアの他端面(光出口)から出射した光を、上記受光素子に受光させる必要がある。そのため、上記光学素子(発光素子,受光素子)とコアとを調芯する必要がある。
【0004】
そこで、上記光学素子とコアとの調芯方法が、従来より提案されている。その一例として、光導波路ユニットを固定し、その光導波路ユニットのコアの一端面(光入口)に対して、発光素子から光を発光させた状態で、その発光素子の位置を変化させつつ、上記コアの他端面(光出口)から出射した光の強度をモニタリングし、その強度が最大となった位置を、調芯位置として決定する方法がある(特許文献1参照)。また、他の例として、位置決め用の孔部が形成されたコネクタを光導波路ユニットに取り付け、上記孔部に嵌合する位置決め用のピンを電気回路ユニットに取り付け、上記孔部とピンとを嵌合することにより、光学素子と光導波路ユニットのコアとを自動的に調芯する方法がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−196831号公報
【特許文献2】特開2009−223063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の調芯方法では、高精度な調芯が可能であるものの、手間と時間とを要し、量産性に欠ける。また、上記特許文献2の調芯方法では、孔部とピンとの嵌合という簡単な方法で位置合わせが可能であるものの、コネクタおよびピンそれぞれの作製の際の寸法誤差だけでなく、光導波路ユニットに対するコネクタの取り付け位置の位置ずれ,電気回路ユニットに対する位置決め用のピンの取り付け位置の位置ずれ等も生じるため、それら寸法誤差および位置ずれが累積することで、調芯精度が悪化する。そこで、調芯精度を高めようとすると、上記寸法誤差や位置ずれが発生しないよう、寸法精度の管理が必要となるため、コストが高くなるとともに、量産性に欠けたものとなる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、光導波路ユニットのコアと電気回路ユニットの光学素子との調芯作業が不要であり、かつ、量産性に優れている光電気混載基板およびその製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを結合させてなる光電気混載基板であって、上記光導波路ユニットが、アンダークラッド層と、このアンダークラッド層の表面に形成された光路用のコアおよびそのコア形成材料と同材料からなる電気回路ユニット位置決め用の差し込み部とを備え、上記電気回路ユニットが、電気回路基板と、この電気回路基板上の所定部分に実装された光学素子と、上記電気回路基板の一部分を起立状に折り曲げてなる、上記差し込み部嵌合用の折り曲げ部とを備え、上記光導波路ユニットの上記差し込み部が、上記コアの形成位置を基準にしその一端面に対して所定位置に位置決めされ、差し込み可能に形成され、上記電気回路ユニットの上記折り曲げ部が、上記光学素子に対して所定位置に位置決め形成され、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとの結合が、上記光導波路ユニットの上記差し込み部に、上記電気回路ユニットの上記折り曲げ部を嵌合させた状態でなされている光電気混載基板を第1の要旨とする。
【0009】
また、本発明は、光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを結合させる上記光電気混載基板の製法であって、上記光導波路ユニットの作製が、アンダークラッド層を形成する工程と、このアンダークラッド層の表面に、光路用のコアおよび電気回路ユニット位置決め用の差し込み部を形成する工程とを備え、そのコアおよび差し込み部を形成する工程において、フォトリソグラフィ法により、上記コアを形成すると同時に、そのコアの一端面に対して位置決めされた所定位置に、上記コア形成材料と同材料で電気回路ユニット位置決め用の差し込み部を形成することが行われ、上記電気回路ユニットの作製が、電気回路基板を形成する工程と、この電気回路基板上の所定部分に光学素子を実装する工程とを備え、その光学素子を実装した後、その光学素子に対して位置決めされた所定位置に、上記差し込み部に嵌合させる折り曲げ部を起立状に折り曲げ形成することが行われ、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとを結合させ光電気混載基板にすることが、上記光導波路ユニットの上記差し込み部に、上記電気回路ユニットの上記折り曲げ部を嵌合させることにより行われる光電気混載基板の製法を第2の要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光電気混載基板は、光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを、結合させたものとなっている。上記光導波路ユニットでは、アンダークラッド層の表面において、コアの一端面と、電気回路ユニット位置決め用の差し込み部とが、互いに位置決めされた位置関係になっている。また、上記電気回路ユニットでは、光学素子と、上記光導波路ユニットの差し込み部に嵌合する折り曲げ部とが、互いに位置決めされた位置関係になっている。そのため、上記光導波路ユニットの差し込み部に、上記電気回路ユニットの折り曲げ部に嵌合した状態、すなわち、光導波路ユニットと電気回路ユニットとが結合した状態では、光導波路ユニットのコアと、電気回路ユニットの光学素子とが、自動的に調芯された状態になる。しかも、上記光導波路ユニットの差し込み部は、その光導波路ユニットを構成するアンダークラッド層の表面に、上記コアの形成材料と同材料から、形成されたものであり、上記電気回路ユニットの折り曲げ部は、その電気回路ユニットを構成する電気回路基板に形成されたものであることから、上記差し込み部と上記折り曲げ部との嵌合に、コネクタ等の他の部品は設けられていない。そのため、光導波路ユニットと電気回路ユニットとの結合に、上記コネクタ等の他の部品による寸法誤差や位置ずれの累積がなく、光導波路ユニットのコアと電気回路ユニットの光学素子との調芯は、高精度になっている。本発明の光電気混載基板は、以上のように、上記光導波路ユニットの差し込み部と上記電気回路ユニットの折り曲げ部とを嵌合するという簡単な作業により、コアと光学素子とが自動的に高精度に調芯される構造となっていることから、手間と時間とを要する調芯作業が不要であるため、量産性に優れている。また、上記差し込み部と上記折り曲げ部との嵌合に、コネクタ等の他の部品が不要であることから、そのコネクタ等の寸法精度の管理も不要であるため、この点からも、量産性に優れている。
【0011】
特に、上記光導波路ユニットの上記差し込み部が、平面視略V字状の突出部に形成され、上記電気回路ユニットの上記折り曲げ部が、上記略V字状の突出部の、略V字状の相対する内壁面に挟持された状態で、その突出部に嵌合している場合には、簡単な位置決め構造で、高精度な調芯状態の光電気混載基板になっている。
【0012】
本発明の光電気混載基板の製法は、光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを、結合させることにより行われる。上記光導波路ユニットを作製する工程では、アンダークラッド層の表面において、フォトリソグラフィ法により、コアと同時に、そのコア形成材料と同材料で、電気回路ユニット位置決め用の差し込み部を形成するため、上記コアの一端面と、上記差し込み部とが、互いに位置決めされた位置関係になっている。また、上記電気回路ユニットを作製する工程では、光学素子に対して位置決めされた所定位置に、上記光導波路ユニットの差し込み部に嵌合させる折り曲げ部を形成している。そのため、上記光導波路ユニットの上記差し込み部に、上記電気回路ユニットの上記折り曲げ部を嵌合させ、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとを結合させると、光導波路ユニットのコアと、電気回路ユニットの光学素子とを、自動的に調芯することができる。しかも、上記光導波路ユニットの差し込み部は、その光導波路ユニットを構成するアンダークラッド層の表面において、フォトリソグラフィ法により、コアと同時に形成され、上記電気回路ユニットの折り曲げ部は、その電気回路ユニットを構成する電気回路基板の一部に形成されることから、上記差し込み部と上記折り曲げ部との嵌合に、コネクタ等の他の部品を要しない。そのため、光導波路ユニットと電気回路ユニットとの結合に、上記コネクタ等の他の部品による寸法誤差や位置ずれの累積が生じず、光導波路ユニットのコアと電気回路ユニットの光学素子との調芯が、高精度になる。本発明の光電気混載基板の製法は、以上のように、上記光導波路ユニットの差し込み部と上記電気回路ユニットの折り曲げ部とを嵌合するという簡単な作業により、コアと光学素子とが自動的に高精度に調芯されることから、手間と時間とを要する調芯作業が不要であるため、量産性に優れている。また、上記差し込み部と上記折り曲げ部との嵌合に、コネクタ等の他の部品を要しないことから、そのコネクタ等の寸法精度の管理も不要であるため、この点からも、量産性に優れている。
【0013】
特に、上記光導波路ユニットの上記差し込み部を、平面視略V字状の突出部に形成し、上記電気回路ユニットの上記折り曲げ部を、上記略V字状の突出部の、略V字状の相対する内壁面に挟持させ、その突出部に嵌合させる場合には、上記差し込み部(突出部)への上記折り曲げ部の嵌合が簡単にできるため、より生産性により優れている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の光電気混載基板の一実施の形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】上記光電気混載基板を構成する光導波路ユニットを模式的に示す斜視図である。
【図3】上記光電気混載基板を構成する電気回路ユニットを模式的に示す斜視図である。
【図4】(a)〜(d)は、上記光電気混載基板の製法における光導波路ユニットの作製工程を模式的に示す説明図である。
【図5】上記作製された光導波路ユニットを模式的に示す説明図である。
【図6】(a)〜(c)は、上記光電気混載基板の製法における電気回路ユニットの作製工程を模式的に示す説明図である。
【図7】(a)〜(c)は、図6に続く、上記電気回路ユニットの作製工程を模式的に示す説明図である。
【図8】上記光電気混載基板の作製工程を模式的に示す説明図である。
【図9】本発明の光電気混載基板の他の実施の形態を模式的に示し、(a)はその斜視図であり、(b)は(a)の一端部の要部を拡大した縦断面図である。
【図10】上記他の実施の形態の光導波路ユニットの一端部の変形例を模式的に示す拡大縦断面図である。
【図11】上記光電気混載基板のさらに他の実施の形態を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0016】
図1は、本発明の光電気混載基板の一実施の形態を模式的に示す斜視図である。この光電気混載基板は、電気回路ユニット位置決め用の差し込み部4を有する光導波路ユニットWと、その差し込み部4に嵌合する折り曲げ部15を有する電気回路ユニットEとを、個別に作製し、上記光導波路ユニットWの上記差し込み部4に、上記電気回路ユニットEの上記折り曲げ部15が嵌合することにより、上記光導波路ユニットWと上記電気回路ユニットEとを結合して一体化したものとなっている。ここで、光導波路ユニットWにおいて、上記差し込み部4は、コア2の一端面(光透過面)2aに対して所定位置(両ユニットW,Eの結合時に光導波路ユニットWの一端面2aが電気回路ユニットEの光学素子10と対面するよう予め設定された位置)に位置決め形成されている。また、上記電気回路ユニットEにおいて、上記差し込み部4に嵌合する上記折り曲げ部15は、光学素子10に対して所定位置(両ユニットW,Eの結合時に電気回路ユニットEの光学素子10が光導波路ユニットWの一端面2aと対面するよう予め設定された位置)に位置決め形成されている。このため、上記光電気混載基板では、上記差し込み部4と上記折り曲げ部15との嵌合により、コア2の一端面2aと光学素子10とが、適正に位置決めされ、調芯された状態になっている。なお、図1では、光電気混載基板の一端部を図示しており、図示されていない上記光導波路ユニットWの部分は、直線状であっても屈曲状であってもよい。
【0017】
より詳しく説明すると、上記光導波路ユニットWは、その斜視図を図2に示すように、アンダークラッド層1と、このアンダークラッド層1の表面に所定パターンの線状に形成された光路用のコア2と、このコア2を被覆した状態で上記アンダークラッド層1の表面に形成されたオーバークラッド層3とを備えている。そして、この光導波路ユニットWの一端部(図2では下端部)であって、コア2の左右両側の部分は、オーバークラッド層3がいわば切欠かれた状態になっていて、そこからアンダークラッド層1が露呈しており、その露呈部の表面に、電気回路ユニット位置決め用のV字状(図2では逆V字状)の上記差し込み部4が形成されている。このV字状の差し込み部4では、そのV字状の相対向する壁部の内側部分によって差し込み凹部4aが形成されていて、そこに、上記電気回路ユニットEの上記折り曲げ部15(図1参照)が嵌合するようになっている。また、その差し込み部4は、フォトリソグラフィ法により、コア2の形成材料から、コア2と同時に形成されたものであり、コア2の一端面2aに対して所定位置に位置決め形成されている。この実施の形態では、上記差し込み部4の配置は、コア2の左右両側(2個所)に形成されている。
【0018】
一方、上記電気回路ユニットEは、その斜視図を図3に示すように、基板11と、この基板11の表面(図では下面)に形成された絶縁層(図示せず)と、この絶縁層の表面(図では下面)に形成された光学素子実装用パッドを含む電気回路(図示せず)と、上記光学素子実装用パッドに実装された光学素子10とを備えている。また、電気回路ユニットEには、上記光学素子10の光路に対応する部分(図では光学素子10の上方)に、光路用の貫通孔18が形成されている。そして、この電気回路ユニットEには、上記光導波路ユニットWの差し込み部4(図2参照)に嵌合する長方形板状の折り曲げ部15が起立形成されている。この長方形板状の折り曲げ部15は、上記基板11と絶縁層との積層部分の一部分が、コ字状に切り込まれ、そのコ字状の切り込みで囲まれる舌片状部分が、上記積層部分に対し直角に起立状に折り曲げられて形成されたものであり、上記光学素子10に対して、所定位置に位置決め形成されている。この実施の形態では、上記折り曲げ部15の配置は、上記光学素子10の左右両側(2個所)に形成されている。
【0019】
なお、上記絶縁層の表面には、上記光学素子実装用パッドを含む電気回路とともに、上記折り曲げ部15を位置決め形成する際の目印として利用される折り曲げ部位置決め用回路(図示せず)が形成されている。この折り曲げ部位置決め用回路は、上記折り曲げ部15となる上記舌片状部分を形成する上記コ字状の切り込みに沿って、形成されている。さらに、これら光学素子実装用パッド,電気回路,折り曲げ部位置決め用回路の表面には、めっき層(図示せず)が形成されている。上記光学素子10は、この実施の形態では、フリップチップタイプの素子が用いられており、その発光部または受光部は、光学素子10の実装側の面(図では上面)に形成されている。
【0020】
そして、上記光電気混載基板は、図1に示すように、上記光導波路ユニットWの上記差し込み部4の差し込み凹部4aに、上記電気回路ユニットEの上記折り曲げ部15が嵌合されている状態で、光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとが結合され一体化されている。上記嵌合状態では、上記折り曲げ部15の片側側縁が、上記差し込み凹部4a内に位置するアンダークラッド層1の表面部分に接触している。ここで、先に述べたように、光導波路ユニットWに形成された上記差し込み部4は、コア2の一端面2aに対して所定位置に位置決め形成されている。また、電気回路ユニットEに形成された折り曲げ部15は、光学素子10に対して所定位置に位置決め形成されている。そのため、上記差し込み部4と折り曲げ部15との嵌合により、コア2の一端面2aと光学素子10とは、適正に位置決めされ、自動的に調芯された状態になっている。
【0021】
さらに、この実施の形態では、光導波路ユニットWの上記差し込み部4がV字状に形成されている。そのため、その差し込み部4に上記折り曲げ部15が嵌合されている状態では、その折り曲げ部15の表裏両面が上記差し込み部(突出部)4の対面する内壁面に当接し、折り曲げ部15が上記突出部で挟持された状態になっている。その結果、上記電気回路ユニットEに対する上記光導波路ユニットWの位置ずれが、より確実に防止され、コア2と光学素子10との調芯を、より確実に維持することができる。
【0022】
上記光電気混載基板は、下記の(1)〜(3)の工程を経て製造される。
(1)上記光導波路ユニットWを作製する工程〔図4(a)〜(d),図5参照〕。
(2)上記電気回路ユニットEを作製する工程〔図6(a)〜(c),図7(a)〜(c)参照〕。
(3)上記光導波路ユニットWを上記電気回路ユニットEに結合する工程(図8参照)。
【0023】
〔(1)光導波路ユニットWの作製工程〕
上記(1)の光導波路ユニットWの作製工程について説明する。まず、アンダークラッド層1を形成する際に用いる平板状の基台20〔図4(a)参照〕を準備する。この基台20の形成材料としては、例えば、ガラス,石英,シリコン,樹脂,金属等があげられる。なかでも、ステンレス製基板が好ましい。ステンレス製基板は、熱に対する伸縮耐性に優れ、上記光導波路装置の製造過程において、様々な寸法が設計値に略維持されるからである。また、基台20の厚みは、例えば、20μm〜1mmの範囲内に設定される。
【0024】
ついで、図4(a)に示すように、上記基台20の表面の所定領域に、フォトリソグラフィ法により、アンダークラッド層1を形成する。このアンダークラッド層1の形成材料としては、感光性エポキシ樹脂等の感光性樹脂が用いられる。アンダークラッド層1の厚みは、例えば、5〜50μmの範囲内に設定される。
【0025】
つぎに、図4(b)に示すように、上記アンダークラッド層1の表面に、コアおよび差し込み部形成用の感光性樹脂層2Aを形成する。そして、コア2および平面視V字状の差し込み部4のパターンに対応する開口パターンが形成されているフォトマスクを介して、上記感光性樹脂層2Aを照射線により露光する。
【0026】
そして、図4(c)に示すように、現像液を用いて現像を行うことにより、上記感光性樹脂層2Aにおける未露光部分を溶解させて除去し、残存した感光性樹脂層2Aをコア2および平面視V字状の差し込み部4のパターンに形成する。この差し込み部4は、上記のように、1個のフォトマスクを使用したフォトリソグラフィ法により、コアと同時に形成したため、コア2の一端面2aに対して所定位置に位置決め形成されている。
【0027】
上記コア2および差し込み部4の形成材料としては、例えば、上記アンダークラッド層1と同様の感光性樹脂があげられ、上記アンダークラッド層1およびオーバークラッド層3〔図4(d)参照〕の形成材料よりも屈折率が大きい材料が用いられる。この屈折率の調整は、例えば、上記アンダークラッド層1,コア2,オーバークラッド層3の各形成材料の種類の選択や組成比率を調整して行うことができる。コアの数は、1本でも複数本でもよい〔図4(c)では1本〕。コア2のパターンは、例えば、直線状,分岐状,交差状等があげられ、それらが混在していてもよい〔図4(c)では直線状〕。コア2および差し込み部4の厚みは、例えば、20〜100μmの範囲内に設定される。コア2の幅は、例えば、20〜100μmの範囲内に設定される。差し込み部4の差し込み凹部4aの寸法は、例えば、奥行き深さが0.3〜5.0mmの範囲内、幅が30μm(V字状の奥側の最小幅)〜2.0mm(V字状の広がった開口側の最大幅)の範囲内にそれぞれ設定される。
【0028】
そして、図4(d)に示すように、上記コア2を被覆し、上記差し込み部4を被覆しないよう、上記アンダークラッド層1の表面に、フォトリソグラフィ法により、オーバークラッド層3を形成する。すなわち、このオーバークラッド層3の形成に用いるフォトマスクは、上記差し込み部4に対応する部分が未露光となるようなパターンに形成されている。上記オーバークラッド層3の形成材料としては、例えば、上記アンダークラッド層1と同様の感光性樹脂があげられる。上記オーバークラッド層3の厚み(アンダークラッド層1の表面からの厚み)は、例えば、コア2の厚みを上回り1000μm以下の範囲内に設定される。
【0029】
ついで、図5に示すように、アンダークラッド層1の裏面から基台20〔図4(d)参照〕を剥離する。これにより、アンダークラッド層1,コア2,オーバークラッド層3を備え、上記アンダークラッド層1の表面に電気回路ユニット位置決め用の差し込み部4が形成された光導波路ユニットWを得る。この光導波路ユニットWの厚みは、例えば、30〜1150μmの範囲内に設定される。このようにして、上記(1)の光導波路ユニットWの作製工程が完了する。
【0030】
〔(2)電気回路ユニットEの作製工程〕
つぎに、上記(2)の電気回路ユニットEの作製工程について、図6(a)〜(c),図7(a)〜(c)を用いて説明する。これら図6,7の各(a)〜(c)には、上下に2つの図を示しており、上側の図が平面図、下側の図がその縦断面図である。
【0031】
まず、前記基板11〔図6(a)参照〕を準備する。この基板11の形成材料としては、例えば、金属,樹脂等があげられる。なかでも、加工容易性および寸法安定性の観点から、ステンレス製基板が好ましい。また、上記基板11の厚みは、例えば、0.02〜0.1mmの範囲内に設定される。
【0032】
ついで、図6(a)に示すように、上記基板11の表面の所定領域に、絶縁層12に形成する。この絶縁層12の形成は、例えば、感光性ポリイミド樹脂等の、絶縁層形成用の感光性樹脂が溶媒に溶解しているワニスを塗布した後、必要に応じて、それを加熱処理して乾燥させ、絶縁層形成用の感光性樹脂層を形成する。そして、その感光性樹脂層を、フォトマスクを介して紫外線等の照射線により露光することにより、所定形状の絶縁層12に形成する。絶縁層12の厚みは、例えば、5〜15μmの範囲内に設定される。
【0033】
つぎに、図6(b)に示すように、上記絶縁層12の表面に、光学素子実装用パッド13を含む電気回路(図示せず)と、折り曲げ部位置決め用回路14とを、同時に形成し、電気回路基板を作製する。これら電気回路等の形成は、例えば、セミアディティブ法により行われる。
【0034】
すなわち、まず、上記絶縁層12の表面に、スパッタリングまたは無電解めっき等により金属層(厚み60〜260nm程度)を形成する。この金属層は、後の電解めっきを行う際のシード層(電解めっき層形成の素地となる層)となる。ついで、上記基板11,絶縁層12およびシード層からなる積層体の両面に、ドライフィルムレジストを貼着した後、上記シード層が形成されている側のドライフィルムレジストに、フォトリソグラフィ法により上記電気回路等のパターンの孔部を同時に形成し、その孔部の底に上記シード層の表面部分を露呈させる。つぎに、電解めっきにより、上記孔部の底に露呈した上記シード層の表面部分に、電解めっき層(厚み5〜20μm程度)を積層形成する。そして、上記ドライフィルムレジストを水酸化ナトリウム水溶液等により剥離する。その後、上記電解めっき層が形成されていないシード層部分をソフトエッチングにより除去し、残存した電解めっき層とその下のシード層とからなる積層部分を上記電気回路等に形成する。このようにして、上記基板11,絶縁層12、光学素子実装用パッド13を含む電気回路,および折り曲げ部位置決め用回路14からなる電気回路基板を得る。
【0035】
そして、その電気回路基板を露光機にセットし、表面側(電気回路側)と裏面側(基板11側)とをカメラで撮影し、その画像を基に、上記表面側の折り曲げ部位置決め用回路14を目印として、折り曲げ部形成予定部(舌片状部分15A)の裏面側の位置を適正に位置決めするとともに、上記光学素子実装用パッド13を目印として、光路用の貫通孔形成予定部の裏面側の位置を適正に位置決めする。ついで、その裏面側のうち、舌片状の上記折り曲げ部形成予定部を形成するためのコ字状の切り込み予定部および上記光路用の円形状の貫通孔形成予定部を除く部分を、ドライフィルムレジスト(図示せず)で覆う。つぎに、図6(c)に示すように、露呈している上記コ字状の切り込み予定部および上記円形状の貫通孔形成予定部の基板11の部分を、塩化第2鉄水溶液を用いてエッチングすることにより除去する。これにより、その除去部分11a,11bから上記絶縁層12の部分が露呈する。
【0036】
ついで、図7(a)に示すように、上記露呈した絶縁層12の部分を、ケミカルエッチング液を用いてエッチングすることにより除去する。これにより、上記コ字状の切り込み予定部をコ字状の切り込み16に形成する(コ字状の貫通状態にする)とともに、上記円形状の貫通孔形成予定部を円形状の貫通孔18に形成する。つぎに、電解めっき処理を施すことにより、上記光学素子実装用パッド13を含む電気回路,および折り曲げ部位置決め用回路14の表面に、めっき層(図示せず)を形成する。その後、上記ドライフィルムレジストを水酸化ナトリウム水溶液等により剥離する。なお、上記めっき層の成分としては、金,ニッケル等があげられる。また、そのめっき層の厚みは、通常、0.2〜0.5μmの範囲内に設定される。
【0037】
つぎに、図7(b)に示すように、光学素子実装用パッド13の表面に、上記めっき層を介して、上記光学素子10を実装する。その後、必要に応じて、上記光学素子10およびその周辺部を、樹脂封止(図示せず)する。
【0038】
そして、図7(c)に示すように、上記コ字状の切り込み16〔図7(a)参照〕で囲まれる舌片状部分15Aを、上記電気回路基板と直角に垂下状に折り曲げ、折り曲げ部15に形成する。これにより、折り曲げ部15を有する電気回路ユニットEを得る。この折り曲げ部15は、上記セミアディティブ法により光学素子実装用パッド13と同時に形成した折り曲げ部位置決め用回路14を基準に形成されているため、上記折り曲げ部15は、上記光学素子実装用パッド13に対して所定位置に位置決め形成される。そのため、その光学素子実装用パッド13に実装した光学素子10と上記折り曲げ部15とは、互いに位置決めされた位置関係になっている。なお、上記折り曲げ部15の高さは、その折り曲げ部15が上記光導波路ユニットの差し込み部4(図1参照)に嵌合できる高さに設定される。このようにして、上記(2)の電気回路ユニットEの作製工程が完了する。
【0039】
〔(3)光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとの結合工程〕
つぎに、光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとの結合工程について説明する。この結合は、図8〔図7(c)に示す電気回路ユニットEを上下逆に図示している)に斜視図で示すように、上記電気回路ユニットEの光路用の貫通孔18と、上記光導波路ユニットWのコア2の一端面2aとを対面させた状態で、上記光導波路ユニットWの差し込み部4に、上記電気回路ユニットEの折り曲げ部15を嵌合させ、上記光導波路ユニットWと上記電気回路ユニットEとを一体化する。このとき、上記折り曲げ部15の片側側縁を、上記差し込み部4の差し込み凹部4a内に位置するアンダークラッド層1の表面部分に接触させる。その後、必要に応じて、上記差し込み部4と折り曲げ部15との嵌合部を接着剤で固定してもよい。このようにして、上記(3)の光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとの結合工程が完了し、目的とする光電気混載基板が完成する。
【0040】
ここで、先に述べたように、上記光導波路ユニットWでは、コア2の一端面2aと電気回路ユニット位置決め用の差し込み部4とが互いに位置決めされた位置関係になっている。また、上記光学素子10が実装された電気回路ユニットEでは、光学素子10と上記差し込み部4に嵌合する折り曲げ部15とが互いに位置決めされた位置関係になっている。そのため、上記のように、上記差し込み部4に上記折り曲げ部15を嵌合させて、上記光電気混載基板を作製すると、コア2の一端面2aと光学素子10とが、自動的に調芯される。その結果、上記光電気混載基板を作製には、手間と時間とを要する調芯作業が不要となる。すなわち、上記光電気混載基板は、量産性に優れたものとなっている。
【0041】
しかも、上記光導波路ユニットWの差し込み部4は、その光導波路ユニットWを構成するアンダークラッド層1の表面に、コア2の形成材料で形成されたものである。また、上記電気回路ユニットEの折り曲げ部15は、その電気回路ユニットEを構成する電気回路基板の一部分からなるものである。すなわち、上記差し込み部4と上記折り曲げ部15との嵌合に、コネクタ等の他の部品は設けられていない。そのため、光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとの結合に、上記コネクタ等の他の部品による寸法誤差や位置ずれの累積がなく、光導波路ユニットWのコア2と電気回路ユニットEの光学素子10との調芯は、高精度になっている。また、上記差し込み部4と上記折り曲げ部15との嵌合に、コネクタ等の他の部品を要しないことから、そのコネクタ等の寸法精度の管理も不要となっており、この点からも、量産性に優れている。
【0042】
図9(a)は、本発明の光電気混載基板の他の実施の形態を模式的に示す斜視図であり、図9(b)は、その一端部の要部を示す縦断面図である。この実施の形態では、光導波路ユニットWと電気回路ユニットEとが平行になった状態で、上記光導波路ユニットWの上記差し込み部4に、電気回路ユニットEの上記折り曲げ部15が嵌合している。この嵌合状態では、上記折り曲げ部15の頂端縁が、上記差し込み部4の差し込み凹部4a内に位置するアンダークラッド層1の表面部分に接触している。そして、上記光導波路ユニットWの一端部には、コア2の軸方向に対して45°傾斜した傾斜面が形成され、その傾斜面に位置するコア2の一端面2aが光反射面になっている。すなわち、コア2の一端面2aで光を反射して、コア2と光学素子10との間で光伝達が可能な状態になっている(図示の一点鎖線L参照)。上記傾斜面は、光導波路ユニットWの作製の最後の工程において、上記差し込み部4を基準とした所定位置で、回転刃による切削またはレーザ加工等により形成される。それ以外の光導波路ユニットWの部分および電気回路ユニットEは、図1に示す実施の形態と同様であり、同様の部分には、同じ符号を付している。そして、図1に示す実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0043】
なお、この実施の形態では、光導波路ユニットWの一端面の傾斜面において、その傾斜面に位置するコア2の一端面2aを光反射面に形成したが、図10に一端部の要部を縦断面図で示すように、オーバークラッド層3の一端部に傾斜面を形成し、その傾斜面に位置するオーバークラッド層3の部分3aを光反射面とし、コア2と光学素子10との間で光伝達が可能な状態にしてもよい(図示の一点鎖線L参照)。すなわち、この場合も、コア2の一端面2aは、上記差し込み部4〔図9(a)参照〕と互いに位置決めされた位置関係になっており、光学素子10と調芯された状態になっている。
【0044】
また、上記各実施の形態では、光学素子10として、フリップチップタイプの素子を用いたが、ワイヤーボンディングタイプの素子を用いてもよい。このワイヤーボンディングタイプの素子を用いる場合は、発光部または受光部が、光学素子10の上面(表面)に形成されているため、図11に示すように、光導波路ユニットWは、光学素子10が実装されている側から電気回路ユニットEに嵌合される。
【0045】
さらに、上記各実施の形態では、光電気混載基板の一端部について説明したが、他端部においても、上記各実施の形態と同様の構成としてもよい。この場合は、上記光学素子10として、例えば、一端部側に発光素子、他端部側に受光素子を実装することにより、その発光素子からの光を、コア2を介して、上記受光素子で受光するようにすることができる。
【0046】
そして、上記各実施の形態では、光導波路ユニットWの上記差し込み部4の形状をV字状としたが、他でもよい。例えば、光導波路ユニットWの上記差し込み部4をY字状(このY字状も略V字状に含まれる)としてもよいし、コ字状としてもよい。
【0047】
また、上記各実施の形態では、上記光導波路ユニットWのオーバークラッド層3をフォトリソグラフィ法により形成したが、型成形により形成してもよい。なお、上記各実施の形態では、上記光導波路ユニットWにオーバークラッド層3を形成したが、必要に応じて、オーバークラッド層3を形成することなく、コア2を露呈した状態にしてもよい。
【0048】
さらに、上記各実施の形態では、電気回路ユニットEの作製工程において、光学素子実装用パッド13,電気回路,折り曲げ部位置決め用回路14の表面に、めっき層を形成したが、このめっき層は、必要に応じて形成されるものであり、不要な場合は、形成しなくてもよい。
【0049】
つぎに、実施例について説明する。但し、本発明は、実施例に限定されるわけではない。
【実施例】
【0050】
〔アンダークラッド層,オーバークラッド層の形成材料〕
成分A:脂環骨格を含むエポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製、EHPE3150)100重量部。
成分B:光酸発生剤(サンアプロ社製、CPI−200K)2重量部。
これら成分A,Bをシクロヘキサノンに溶解することにより、アンダークラッド層およびオーバークラッド層の形成材料(感光性樹脂)を調製した。
【0051】
〔コアの形成材料〕
成分C:O−クレゾールノボラックグリシジルエーテル(新日鐡化学社製、YDCN−700−10)100重量部。
この成分Cと上記成分B1重量部とを乳酸エチルに溶解することにより、コアの形成材料(感光性樹脂)を調製した。
【0052】
〔実施例1〕
〔光導波路ユニットの作製〕
上記アンダークラッド層,コア,オーバークラッド層の各形成材料を用い、図1に示す実施の形態と同様にして、電気回路ユニット位置決め用のV字状の差し込み部を有する光導波路ユニットを作製した。上記V字状の差し込み凹部の寸法は、奥行き深さを1.98mm、V字状の奥側の最小幅を80μm、V字状の広がった開口側の最大幅を820μm、隣り合う差し込み部の中心間距離を6.0mmとした。
【0053】
〔電気回路ユニットの作製〕
上記図1に示す実施の形態と同様にして、上記電気回路ユニット位置決め用の差し込み部に嵌合する長方形状の折り曲げ部を有する電気回路ユニットを作製した。その折り曲げ部の寸法は、幅を3.0mm、高さを2.0mm、対面する折り曲げ部の中心間距離を6.0mmとした。なお、光学素子として、フリップチップタイプの発光素子(ULM Photonics社製、ULM850−10−TT−C0104U)を実装した。
【0054】
〔光電気混載基板の製造〕
上記光導波路ユニットの差し込み部に、上記電気回路ユニットの折り曲げ部を嵌合させ、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとを一体化した。そして、その嵌合部を接着剤で固定した。
【0055】
〔実施例2〕
〔光導波路ユニットの作製〕
上記実施例1の光導波路ユニットの一端部を、図9(a),(b)に示す実施の形態と同様にして、傾斜面に形成した。それ以外の部分は、上記実施例1と同様とした。
【0056】
〔電気回路ユニットの作製〕
上記実施例1の電気回路ユニットを準備した。
【0057】
〔光電気混載基板の製造〕
上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとを平行にした状態で、上記光導波路ユニットの差し込み部に、上記電気回路ユニットの折り曲げ部を嵌合させ、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとを一体化した。そして、その嵌合部を接着剤で固定した。
【0058】
〔光伝播試験〕
上記実施例1,2の光電気混載基板の発光素子に電流を流し、発光素子から光を出射させた。そして、光電気混載基板のコアの他端部から光が出射されることを確認した。
【0059】
〔実施例3〕
〔光導波路ユニットの作製〕
上記実施例1の光導波路ユニットにおいて、他端部も、一端部と同様に、電気回路ユニット位置決め用のV字状の差し込み部を有する光導波路ユニットを作製した。それ以外は、上記実施例1と同様にした。
【0060】
〔電気回路ユニットの作製〕
上記実施例1と同様の電気回路ユニットを作製した。さらに、上記実施例1の電気回路ユニットにおいて、発光素子に代えて、フリップチップタイプの受光素子(Albis社製、PDCA04−70−GS)を実装したものを作製した。
【0061】
〔光電気混載基板の製造〕
上記実施例1と同様にして、光導波路ユニットの一端部に、上記発光素子が実装された電気回路ユニットを固定し、他端部に、上記受光素子が実装された電気回路ユニットを固定した。
【0062】
〔実施例4〕
〔光導波路ユニットの作製〕
上記実施例2の光導波路ユニットにおいて、他端部も、一端部と同様に、傾斜面に形成した。それ以外の部分は、上記実施例2と同様とした。
【0063】
〔電気回路ユニットの作製〕
上記実施例3の、上記発光素子が実装された電気回路ユニットと、上記受光素子が実装された電気回路ユニットとを準備した。
【0064】
〔光電気混載基板の製造〕
上記実施例2と同様にして、光導波路ユニットの一端部に、上記発光素子が実装された電気回路ユニットを固定し、他端部に、上記受光素子が実装された電気回路ユニットを固定した。
【0065】
〔信号伝送試験〕
上記実施例3,4の光電気混載基板の発光素子に電流を流し、発光素子から光を出射させた。そして、その光が受光素子で受光されていることを確認した。
【0066】
上記実施例1〜4の結果から、上記製法では、光導波路ユニットのコアと電気回路ユニットの光学素子(発光素子,受光素子)との調芯作業をしなくても、得られた光電気混載基板は、適正に光伝播することがわかる。
【0067】
なお、上記差し込み部を、Y字状,コ字状に形成した光電気混載基板でも、調芯作業をしなくても、適正に光伝播するという結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の光電気混載基板は、音声や画像等のデジタル信号を高速で伝送,処理する情報通信機器,信号処理装置等に用いることができる。
【符号の説明】
【0069】
W 光導波路ユニット
E 電気回路ユニット
1 アンダークラッド層
2 コア
2a 一端面
4 差し込み部
10 光学素子
15 折り曲げ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを結合させてなる光電気混載基板であって、上記光導波路ユニットが、アンダークラッド層と、このアンダークラッド層の表面に形成された光路用のコアおよびそのコア形成材料と同材料からなる電気回路ユニット位置決め用の差し込み部とを備え、上記電気回路ユニットが、電気回路基板と、この電気回路基板上の所定部分に実装された光学素子と、上記電気回路基板の一部分を起立状に折り曲げてなる、上記差し込み部嵌合用の折り曲げ部とを備え、上記光導波路ユニットの上記差し込み部が、上記コアの形成位置を基準にしその一端面に対して所定位置に位置決めされ、差し込み可能に形成され、上記電気回路ユニットの上記折り曲げ部が、上記光学素子に対して所定位置に位置決め形成され、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとの結合が、上記光導波路ユニットの上記差し込み部に、上記電気回路ユニットの上記折り曲げ部を嵌合させた状態でなされていることを特徴とする光電気混載基板。
【請求項2】
上記光導波路ユニットの上記差し込み部が、平面視略V字状の突出部に形成され、上記電気回路ユニットの上記折り曲げ部が、上記略V字状の突出部の、略V字状の相対向する内壁面に挟持された状態で、その突出部に嵌合している請求項1記載の光電気混載基板。
【請求項3】
光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを結合させる請求項1記載の光電気混載基板の製法であって、上記光導波路ユニットの作製が、アンダークラッド層を形成する工程と、このアンダークラッド層の表面に、光路用のコアおよび電気回路ユニット位置決め用の差し込み部を形成する工程とを備え、そのコアおよび差し込み部を形成する工程において、フォトリソグラフィ法により、上記コアを形成すると同時に、そのコアの一端面に対して位置決めされた所定位置に、上記コア形成材料と同材料で電気回路ユニット位置決め用の差し込み部を形成することが行われ、上記電気回路ユニットの作製が、電気回路基板を形成する工程と、この電気回路基板上の所定部分に光学素子を実装する工程とを備え、その光学素子を実装した後、その光学素子に対して位置決めされた所定位置に、上記差し込み部に嵌合させる折り曲げ部を起立状に折り曲げ形成することが行われ、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとを結合させ光電気混載基板にすることが、上記光導波路ユニットの上記差し込み部に、上記電気回路ユニットの上記折り曲げ部を嵌合させることにより行われることを特徴とする光電気混載基板の製法。
【請求項4】
上記光導波路ユニットの上記差し込み部を、平面視略V字状の突出部に形成し、上記電気回路ユニットの上記折り曲げ部を、上記略V字状の突出部の、略V字状の相対向する内壁面に挟持させ、その突出部に嵌合させる請求項3記載の光電気混載基板の製法。
【請求項1】
光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを結合させてなる光電気混載基板であって、上記光導波路ユニットが、アンダークラッド層と、このアンダークラッド層の表面に形成された光路用のコアおよびそのコア形成材料と同材料からなる電気回路ユニット位置決め用の差し込み部とを備え、上記電気回路ユニットが、電気回路基板と、この電気回路基板上の所定部分に実装された光学素子と、上記電気回路基板の一部分を起立状に折り曲げてなる、上記差し込み部嵌合用の折り曲げ部とを備え、上記光導波路ユニットの上記差し込み部が、上記コアの形成位置を基準にしその一端面に対して所定位置に位置決めされ、差し込み可能に形成され、上記電気回路ユニットの上記折り曲げ部が、上記光学素子に対して所定位置に位置決め形成され、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとの結合が、上記光導波路ユニットの上記差し込み部に、上記電気回路ユニットの上記折り曲げ部を嵌合させた状態でなされていることを特徴とする光電気混載基板。
【請求項2】
上記光導波路ユニットの上記差し込み部が、平面視略V字状の突出部に形成され、上記電気回路ユニットの上記折り曲げ部が、上記略V字状の突出部の、略V字状の相対向する内壁面に挟持された状態で、その突出部に嵌合している請求項1記載の光電気混載基板。
【請求項3】
光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを結合させる請求項1記載の光電気混載基板の製法であって、上記光導波路ユニットの作製が、アンダークラッド層を形成する工程と、このアンダークラッド層の表面に、光路用のコアおよび電気回路ユニット位置決め用の差し込み部を形成する工程とを備え、そのコアおよび差し込み部を形成する工程において、フォトリソグラフィ法により、上記コアを形成すると同時に、そのコアの一端面に対して位置決めされた所定位置に、上記コア形成材料と同材料で電気回路ユニット位置決め用の差し込み部を形成することが行われ、上記電気回路ユニットの作製が、電気回路基板を形成する工程と、この電気回路基板上の所定部分に光学素子を実装する工程とを備え、その光学素子を実装した後、その光学素子に対して位置決めされた所定位置に、上記差し込み部に嵌合させる折り曲げ部を起立状に折り曲げ形成することが行われ、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとを結合させ光電気混載基板にすることが、上記光導波路ユニットの上記差し込み部に、上記電気回路ユニットの上記折り曲げ部を嵌合させることにより行われることを特徴とする光電気混載基板の製法。
【請求項4】
上記光導波路ユニットの上記差し込み部を、平面視略V字状の突出部に形成し、上記電気回路ユニットの上記折り曲げ部を、上記略V字状の突出部の、略V字状の相対向する内壁面に挟持させ、その突出部に嵌合させる請求項3記載の光電気混載基板の製法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−203376(P2012−203376A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71078(P2011−71078)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]