説明

内燃エンジンを備えた作業機

【課題】安全性を向上するために、アイドル運転時にエンジン回転数が不用意に上昇して刃物が回転してしまうのを防止する。
【解決手段】始動時、スロットルバルブ10はファーストアイドル位置にある。起動初期のエンジン2は運転状態が不安定であるためエンジン回転数が上昇しない。運転状態が安定し始めると回転数が急激に上昇する。エンジン回転数(Ne)が4,000rpm以上になった時点で失火制御モードに入る。失火制御モードでは、エンジン回転数が4,500rpm以上になると失火処理が実行される(S4)。遠心クラッチ6は5,000rpmで係合するように設定されている。失火制御モードは、作業者がスロットルコントロールトリガ12を操作したときに解除される(S6)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェーンソーや刈り払い機などの内燃エンジンによって刃物を駆動する小型作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯して木の伐採や草刈りを行う作業機としてチェーンソーや刈り払い機が知られている。この種の小型作業機は、一部に電動モータを駆動源とするものも知られているが、多くの場合、内燃エンジン(典型的には単気筒2サイクルエンジン又は単気筒4サイクルエンジン)が搭載され、そして、一般的には遠心クラッチを介してエンジンの動力を刃物に伝達する方式が採用されている(特許文献1)。
【0003】
また、この種の作業機には、一般的に気化器が採用されている(特許文献2〜4)。特許文献2〜4は、冷間スタート時及び熱間スタート時のエンジン起動に関する技術を開示しており、特許文献2は、作業者がエンジン出力を制御するために操作するスロットルコントロールトリガ及びセレクター(実質的なチョークノブ)とスロットルバルブ及び手動チョークバルブとの間の機械的な連携機構を開示している。特許文献3は、スロットルバルブと手動チョークバルブとの間の機械的な連携機構を開示している。同様に、特許文献4もスロットルバルブと手動チョークバルブとの間の機械的な連携機構を開示している。
【0004】
冷間時にエンジンを起動するときの手順の一例を説明すると次の通りである。
(1)チョークノブを操作してチョークバルブを全閉位置にすると共に、これに連動してスロットルバルブが「ファーストアイドル位置」に位置決めされる。
(2)エンジンがその起爆装置であるリコイル・スタータを備えているときには、リコイル・スタータのスタータグリップを何回か引っ張ってシリンダ内にフュエルリッチな混合気を送り込むと共に、このスタータグリップの引っ張り操作をシリンダ内で爆発が発生するまで続ける。一般的には、この操作で送り込まれる混合気は爆発を継続するには燃料がリッチ過ぎるため、エンジン回転は継続せず、数サイクルの爆発でエンジンが停止する。
【0005】
(3)次いで、チョークノブを操作してチョークバルブを全開位置に戻す。スロットルバルブは「ファーストアイドル位置」の状態に維持される。この状態で、再度、リコイル・スタータのスタータグリップを引っ張る操作を行うと、エンジンが持続的に回転する。
(4)スロットルコントロールトリガを操作すると、スロットルバルブとチョークバルブとの連携が切断されて、スロットルバルブがスロットルコントロールトリガの操作に対応した開度になる。つまり、スロットルコントロールトリガとスロットルバルブとが機械的に連携され、スロットルコントロールトリガの操作に対応したエンジン出力が得られる。次いで、スロットルコントロールトリガを解放するとスロットルバルブは「常用アイドル位置」つまり、ほぼ全閉位置に位置決めされる。したがって、エンジン起動後のスロットルコントロールトリガの操作は、スロットルバルブとチョークバルブとの連携を切断するための操作と言うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】JP特開2006−118499号公報
【特許文献2】JP特開昭51−111999号公報
【特許文献3】JP特開平11−229966号公報
【特許文献4】JP特表2009−511801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
エンジンの起動性を高めるにはスロットルバルブをある程度開いた状態で起動操作をするのが良い、ということが知られている。この観点から上述した「ファーストアイドル位置」が設定される。具体的に説明すると、「ファーストアイドル位置」のスロットル開度として、例えば7,000rpmの回転数に相当する開度が設定される。
【0008】
他方、「常用アイドル位置」は、エンジンの動作を維持できる程度のエンジン回転数、つまりエンジンが運転を停止しない程度まで吸気有効断面積を絞り込んだスロットル開度位置が設定される。この「常用アイドル位置」は例えば2,500rpm乃至3,500rpmのエンジン回転数を維持できる程度のスロットル開度(ほぼ全閉状態)に設定される。
【0009】
エンジン起動の際には、スロットルバルブがファーストアイドル位置に設定されるため、エンジン回転数が約7,000rpmぐらいまで上昇する可能性がある。しかし、この回転数まで上昇すると、遠心クラッチが係合状態になってしまうため、作業機の取り扱い説明書には、エンジンを起動する際に、刃物の回転を強制的に停止するブレーキ操作(ブレーキレバーのON操作)を行うように注意書きが付される。ちなみに、遠心クラッチは、一般的には、約5,000rpmで係合するように設定される。
【0010】
作業者が取り扱い説明書に従ってブレーキレバーをON操作した後に、エンジンの起動操作を行ったときには、このエンジン起動に伴ってエンジン回転数が上昇しても、ブレーキが締結状態にあるため刃物が動き出すことはない。ただし、この状態では遠心クラッチの摩擦要素が擦動している状態であるため、この状態が長く続くと遠心クラッチが発熱し、また、摩擦要素が摩耗する原因になる。他方、ブレーキレバーのON操作を忘れてエンジンの起動操作を行ったときには、エンジン起動後にエンジン回転数が安定して、エンジン回転数が遠心クラッチの係合回転数よりも高くなると、遠心クラッチのONによって、作業者の意図に反して刃物が動き始める。
【0011】
このような問題点を解消するには、エンジンの起動時の制御として、エンジンを起動させようとする時点ではエンジン起動の確実性を高めることのできるスロットル位置つまりスロットルバルブがある程度開いた開度位置に設定し、エンジン起動後に安定した運転状態になったらスロットル開度を小さくする制御を行えばよい。エンジン起動時のこのようなスロットル開度の制御は、スロットルバルブにアクチュエータを組み込んでアクチュエータを電子制御すれば比較的簡単に実現することができる。しかし、携帯式の作業機では小型で且つ軽量であることが求められることから、スロットルバルブにアクチュエータを組み込むことは部品点数の増加やコストの観点から極力避けたい解決方法である。
【0012】
本願発明の目的は、エンジン起動時におけるエンジン起動の確実性の確保しつつ遠心クラッチの非係合状態を維持できる内燃エンジンを備えた作業機を提供することにある。
【0013】
本願発明の更なる目的は、作業機の刃物が作業者の意図に反して不用意に動作するのを防止することのできる内燃エンジンを備えた作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明者らは、エンジン起動時のエンジンの運転状態の変化と、遠心クラッチが係合する回転数との関係に着目して本願発明を案出するに至ったものである。起動時のエンジンの運転状態は、これを3つに大別して考えることができる。先ず、エンジンが起動し始めたごく短い時間では、動き始めたエンジンの運転状態は未だ不安定であり、平均回転数はそれほど上昇しない(起動初期)。次いで、エンジンの運転状態が安定し始めるとエンジン回転数が急激に上昇する(過渡期)。そして、最終的には、スロットルバルブのファーストアイドル位置に対応した回転数(例えば約7,000rpm)で安定化する(安定期)。
【0015】
この起動時のエンジンの運転状態の変化と、遠心クラッチが係合を開始する回転数とを対比して検討すると、エンジン起動の初期では、遠心クラッチが係合する回転数まで上昇しない。遠心クラッチが係合するのは、過渡期のエンジン回転数が急激に上昇している過程で発生する。
【0016】
上記の技術的課題は、本発明の第1の観点によれば、
スロットルバルブを含む気化器を備え、該気化器から供給される混合気を点火装置によって着火させることにより動力を発生する内燃エンジンと、
該内燃エンジンと刃物との間に介装された遠心クラッチとを備え、
該遠心クラッチが係合することで前記内燃エンジンの動力が前記刃物に伝達される携帯型の作業機において、
前記内燃エンジンが起動時であることを検出するエンジン起動検出手段と、
前記内燃エンジンのエンジン回転数を検出する回転数センサと、
作業者の操作に基づいて動作するスイッチと、
前記内燃エンジンの点火を制御する常用点火制御モードと、前記内燃エンジンの起動時において前記遠心クラッチが係合し始めるクラッチ係合回転数よりもエンジン回転数が高くなると推定できることを前提として、エンジン回転数が第1の所定の回転数よりも大きいときに前記点火装置に対して失火処理を実行する失火制御モードと、を選択的に設定して前記内燃エンジンの点火を制御する制御手段とを有し、
前記スイッチからの信号によって、作業者の前記操作が前記失火制御モードを必要としないとみなせるときに前記失火制御モードを解除して前記常用点火制御モードに切り替えることを特徴とする内燃エンジンを備えた作業機を提供することにより達成される。
【0017】
前記エンジン起動検出手段について説明すると、例えば、エンジンによって駆動される発電機構から電源の供給を受けて制御手段が動作する作業機にあっては、この制御手段の起動によってエンジンが起動時であることを間接的に検出することができる。つまり、この場合には、エンジンの起動に伴う制御手段の起動がエンジン起動時となる。バッテリを搭載した作業機であれば、エンジンの起動動作に感応する例えば補機類のON信号、手動のリコイル・スタータに内蔵されてリコイリング操作に感応する各種のセンサの信号、エンジン回転数検出手段からの信号入力、電動式のスタータであればスタータスイッチのON信号、気化器内の圧力変動、インシュレータのパルス通路内の圧力変動などによって、エンジンが起動動作に入ったことを検出することができる。
【0018】
エンジンを起動するときに、作業者が、スロットルコントロールトリガを引き絞って起動操作を行うこともあるが、チョークノブを操作して起動操作を行うのが一般的である。チョークノブの操作によって前述したように、スロットルバルブはファーストアイドル位置に位置決めされる。ここに「ファーストアイドル位置」とは、エンジンを起動するときに位置決めされるスロットルバルブの開度位置をいい、エンジン設計によって異なるが、エンジンの運転状態が安定したときのエンジン回転数で言うと7,000〜8,000rpmである。遠心クラッチが係合する回転数は、一般的には、4,000〜5,000rpmに設定される。
【0019】
エンジン回転数が、前記遠心クラッチが係合し始めるクラッチ係合回転数よりも高くなるか否かの推定に関して説明すると、この推定は、実質的に、エンジン起動時の過渡期であるか否かの推定である。したがって、エンジン回転数が、クラッチ係合回転数の近傍で且つクラッチ係合回転数よりも小さな値の閾値よりも大きくなったら、上記の過渡期であると判断して失火制御モードに入るようにしてもよいし、エンジン回転数の加速度の大小によって、加速度が所定の加速度よりも大きくなったら、上記の過渡期であると判断して失火制御モードに入るようにしてもよい。
【0020】
本願発明によれば、エンジン起動直後の起動初期は、エンジンの運転状態が不安定であり、エンジン回転数は未だそれほど上昇しない。したがって、失火制御は実行されないので、スロットルバルブの開度を比較的大きく開いた例えばファーストアイドル位置のスロットル開度の下で、従来と同様に、エンジン起動の確実性を確保することができる。
【0021】
他方、起動後にエンジンの運転状態が安定し始めてエンジン回転数が急激に上昇する過渡期では、点火制御に失火処理を加えてもエンジンが回転停止してしまう虞は殆ど無い。失火処理を実行することでエンジン回転数の上限値を規定することができる。失火処理の例として、点火装置の点火をキャンセルする処理(点火装置に対する電源供給を停止する処理)の他に、通常はピストンストロークの上死点前30°前後に設定されている点火タイミングを極端に遅延させて(例えば下死点近傍で点火するように点火タイミングを設定)シリンダ内での燃焼を実質的に無効にする処理を挙げることができる。
【0022】
このエンジン起動時のエンジン回転数に関し、その上限値を実質的に規定するのは、閾値である上記第1の所定のエンジン回転数である。この所定のエンジン回転数は、上述したように、遠心クラッチを非係合状態に維持できる回転数に設定される。これにより、エンジン起動直後にエンジンの運転状態が安定し初めてエンジン回転数が上昇しても、このエンジン回転数を、遠心クラッチが非係合状態を維持できる回転数に抑えることができる。勿論、遠心クラッチを非係合状態に維持することによって、エンジンから刃物への動力伝達を遮断した状態を維持できる。したがって、本願発明によれば、エンジン起動性の確実性の確保しつつ遠心クラッチの非係合状態を維持できる。
【0023】
なお、エンジンの起動時に、起動初期から安定期に達するまでの時間は、一般的に、0.3〜0.5秒である。1回目の起爆から0.2〜0.3秒が経過するとエンジン回転数は急激な加速度で上昇する(過渡期)。
【0024】
作業者がスロットルコントロールトリガを操作してスロットルバルブを開いた状態で起動操作したときも、遠心クラッチが係合してしまうエンジン回転数まで上昇する可能性があるが、この場合にも上述した失火処理を実行することで遠心クラッチの非係合状態を維持することができる。
【0025】
なお、上述した遠心クラッチの係合状態とは連続的に高速で刃物が動く状態を言うのであり、本願発明を把握するときに、刃物が少しずつ動いたり止まったりする瞬間的な係合状態は、遠心クラッチの非係合状態に含まれる。
【0026】
エンジン起動時に失火制御モードを実行することで、エンジン起動性の確実性の確保しつつ遠心クラッチの非係合状態を維持できるのは上述した通りであるが、これをそのままにしておくと、作業するためにスロットルコントロールトリガを引き絞ってもエンジン回転数が上昇しない。つまり、作業を開始しようとしてもエンジン回転数が上昇しないため作業を実施することができない。
【0027】
本発明にあっては、既に失火制御を必要としないとみなすことのできる操作を作業者が行ったときに、これをスイッチで検知して失火制御モードを解除するようにしてある。この操作としては、作業中に作業者が把持するハンドルを備えた作業機であれば、このハンドルを作業者が把持する操作を挙げることができる。他の例としては、スロットルコントロールトリガの操作、刃物のブレーキを解除する操作などを挙げることができる。本発明では、これらの作業者の操作を検知するスイッチを設け、このスイッチからの信号に基づいて失火制御モードの解除が行われる。
【0028】
本願発明を別の観点から見ると、作業機の刃物が作業者の意図に反して不用意に動作するのを防止する解決手段を提供する発明として把握することができる。
【0029】
第2の観点の本発明の作業機は、
スロットルバルブを含む気化器を備え、該気化器から供給される混合気を点火装置によって着火させることにより動力を発生する内燃エンジンと、
前記スロットルバルブの開閉を制御する手動のスロットルコントロールトリガと、
前記内燃エンジンと刃物との間に介装された遠心クラッチとを備え、
前記スロットルコントロールトリガを操作してエンジン出力を上昇させると前記遠心クラッチが係合して前記内燃エンジンの動力が前記刃物に伝達される携帯型の作業機において、
前記内燃エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、
前記スロットルバルブがアイドル位置にあるか否かを検出するアイドル位置検出手段と、
前記スロットルバルブが前記アイドル位置にあり且つ前記エンジン回転数が第1の所定の回転数よりも高いときに前記点火装置に対して失火処理を実行する点火制御手段とを有し、
前記アイドル位置検出手段が、前記スロットルコントロールトリガの操作を検出するトリガ操作検出手段によって構成されて、該トリガ操作検出手段により前記スロットルコントロールトリガが解放状態にあると検出されたときに、前記スロットルバルブが前記アイドル位置にあると判定され、
前記トリガ操作検出手段がスイッチ機構で構成され、
該スイッチ機構は、
前記スロットルコントロールトリガと前記スロットルバルブとを連結するスロットル操作ロッドであって、作業者が前記スロットルコントロールトリガを操作すると、該操作量に応じて変位して前記スロットルバルブの開度を制御する導電性のスロットル操作ロッドと、
互いに対向して定置された2つの金属片であって、前記スロットル操作ロッドが接触することにより、該スロットル操作ロッドを介して電気的に導通する2つの金属片とで構成され、
作業者が前記スロットルコントロールトリガを操作することに伴って前記スロットル操作ロッドが前記2つの金属片の間に挟まれた状態となって、該スロットル操作ロッドを介して前記2つの金属片が電気的に導通状態となり、
作業者が前記スロットルコントロールトリガを解放したときに前記スロットル操作ロッドが前記2つの金属片の少なくともいずれか一方から離れて、前記2つの金属片が電気的に遮断された状態となることを特徴とする。
【0030】
この第2の観点による本願発明にあっては、スロットルバルブがアイドル位置にあることを前提として、エンジン回転数が所定の値よりも高いときに失火処理が実行される。この閾値の上記所定の値は、遠心クラッチの摩擦要素が係合し始めるクラッチ係合回転数を基準に設定され、この遠心クラッチの摩擦要素が係合し始めるクラッチ係合回転数の近傍で且つこれよりも低い回転数が設定される。
【0031】
スロットルバルブがアイドル位置にあるか否かを検出するアイドル位置検出手段を、2つの金属片とスロットル操作ロッドとで構成したことから、スロットルコントロールトリガの操作に対応して変位するスロットル操作ロッドが可動接点として機能することで、金属片に付着したゴミに起因する動作不良の発生頻度を低減することができる。
【0032】
上記の第2の観点の本願発明によれば、例えば作業の途中や一休みしている最中に、作業者がスロットルコントロールトリガから手を離しているにも拘わらず、何らかの原因でエンジン回転数が上昇したとしても、エンジン回転数が上記の所定の回転数以上となると失火制御が実行されるため、遠心クラッチの摩擦要素が係合して遠心クラッチが係合状態になってしまうまでエンジン回転数が上昇するのを防止できる。したがって、スロットルコントロールトリガを解放しているにも拘わらず、作業者の意図に反して不用意に刃物が動作するのを防止することができる。スロットルコントロールトリガが解放状態でありながら、エンジン回転数が急激に上昇してしまう例として、作業機を姿勢変化させた時や、気化器の中の燃料が無くなる直前などを挙げることができる。
【0033】
本発明の他の目的及び作用効果は、後の実施例の説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】チェーンバー及び鋸刃チェーンを取り外した実施例のチェーンソーの本体部分を上から見た図である。
【図2】実施例のチェーンソーの全体構成図である。
【図3】点火制御に関連した要素の系統図である。
【図4】エンジン始動直後の点火制御を説明するためのフローチャートである。
【図5】スロットルコントロールトリガとスロットルバルブとを連携するスロットル操作ロッドに関連して配設されたスロットル操作検出スイッチの具体例を示す図である。
【図6】図5に関連した図であり、スロットルコントロールトリガが解放状態のときのスロットル操作検出スイッチの状態を示す図である。
【図7】図5に関連した図であり、スロットルコントロールトリガを引き絞った状態のときのスロットル操作検出スイッチの状態を示す図である。
【図8】スロットルコントロールトリガに隣接してマイクロスイッチを設け、このマイクロスイッチによってスロットル操作検出スイッチを構成した例を示す図であり、スロットルコントロールトリガが解放状態にある。
【図9】図8に関連した図であり、スロットルコントロールトリガを引き絞った状態にある。
【図10】手動のセレクタに関連して失火制御モード解除要求を検出するスイッチ機構を説明するための図である。(I)のセレクタ位置ではスロットルバルブが「ファーストアイドル位置」に位置決めされ且つチョークバルブが「全閉位置」に位置決めされる。(II)のセレクタ位置では、スロットルバルブが「ファーストアイドル位置」を維持しつつチョークバルブが「全開位置」に位置決めされる。(III)のセレクタ位置では、点火装置への電源供給が停止されてエンジンが停止する。
【図11】ブレーキレバーの操作に関連した点火制御を説明するためのフローチャートである。
【図12】スロットルコントロールトリガの操作に関連した点火制御を説明するためのフローチャートである。
【図13】エンジン起動時だけでなく、それ以降も実行される点火制御を説明するためのフローチャートである。
【図14】図13の制御例の変形例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0035】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
【0036】
図1は、実施例の作業機であるチェーンソーの平面図である。なお、図1のチェーンソーは、刃物である鋸刃チェーンを装着する前の状態で図示してあり、また、上カバーを取り外してエンジンなどを露出させた状態で図示してある。図2は、図1のチェーンソーの基本構成図である。
【0037】
図1、図2を参照してチェーンソー1の概要を説明すると、チェーンソー1は、2サイクル単気筒エンジン2を有し、エンジン2の吸気系3は、上流端のエアクリーナ4と、エアクリーナ4とエンジン2との間に配設された気化器5とで構成されている。エンジン2の出力軸には遠心クラッチ6が連結され、そして、エンジン回転数が所定の回転数以上となったときに遠心クラッチ6を介して鋸刃チェーン7にエンジン2の動力が伝達される。
【0038】
遠心クラッチ6はエンジン2の回転数が約5,000rpmに達すると係合状態となるように設定されており、遠心クラッチ6が係合状態になることでエンジン2と鋸刃チェーン7とが機械的に連結される。なお、エンジン2の常用回転数は約8,000〜13,000rpmである。
【0039】
チェーンソー1はブレーキ8を有する。このブレーキ8は作業者が操作可能なブレーキレバー9に連結されており、作業者がブレーキレバー9を操作してブレーキ8を締結させることで鋸刃チェーン7の回転を停止状態に維持することができる。チェーンソー1に搭載されるブレーキ8及びブレーキレバー9は特開2001−47403号公報に詳しく説明されていることから、この特開2001−47403号公報の記載の全てをここに援用する。
【0040】
気化器5は、スロットルバルブ10とチョークバルブ11とを有し、スロットルバルブ10は、作業者が操作可能なスロットルコントロールトリガ12に連携されている。作業者がスロットルコントロールトリガ12を操作してスロットルバルブ10を開閉させることでエンジン2の出力を制御することができる。チョークバルブ11は、作業者が操作可能なチョークノブ13に連携されており、エンジンを起動するときに作業者がチョークノブ13を操作することでチョークバルブ11を全閉位置に位置決めすることができる。勿論、チョークバルブ11とスロットルバルブ10とが連携機構によって連動するのは従来と同じである。したがって、チョークノブ13を作業者が操作すると、チョークバルブ11が全閉位置に位置決めされると共にスロットルバルブ10がファーストアイドル位置に位置決めされる。
【0041】
エンジン2は手動のリコイル・スタータ20を有し、作業者がスタータグリップ21を引っ張ることでエンジン2を起動することができる。エンジン2は、更に、発電機構22を有する。発電機構22は、図3に示すように、発電コイル23とロータ24との組み合わせによって構成されており、ロータ24に磁極25が配設されている。ロータ24はエンジン出力によって駆動され、このロータ24の回転によって、発電コイル23は磁極25からの磁束を受けてパルス電圧を誘起する。そして、このパルス電圧のレベル及びタイミングはロータ24の回転速度つまりエンジン回転速度に対応したものとなる。勿論、発電機構22が生成した電圧を使って点火装置26の点火が行われる。
【0042】
図2に戻って、点火装置26の制御、具体的には点火装置26への電源供給のON/OFF及び点火タイミングはマイクロコンピュータからなる制御手段30によって実行される。この制御手段30は実質的にCDI型点火制御機能を発揮する。制御手段30には、発電機構22(ロータ24)からの点火タイミング信号、回転数センサ31からのエンジン回転数信号(Ne)、スロットルコントロールトリガ12の操作の有無を検出するトリガ操作検出スイッチ32が入力される。
【0043】
回転数センサ31はクランクシャフト(図示せず)の回転数を直接的に検出するセンサであってもよいが、上述した発電機構22のロータ24の回転数を検出するものであってもよい(ロータ24によって回転数センサ31を代用する)。また、図2に破線で示すように、遠心クラッチ6の入力軸の回転数を検出するクラッチ回転数センサ33によってエンジン回転数を間接的に検出するようにしてもよい。したがって、本発明に言うエンジン回転数センサは、クランクシャフトの回転を検出する以外にも、上記ロータ24の回転を検出する、又は、遠心クラッチ6の入力軸の回転を検出するものも含み、遠心クラッチ6の入力軸を含むその上流のエンジン2に関連した動力伝達経路の回転数を検出し、また、エンジン2に関連した補機の回転要素の回転数を検出するものを含むという意味で理解すべきである。
【0044】
図2の参照符号40はエンジン停止スイッチであり、作業者がエンジン停止スイッチ40を操作することで、点火装置26への電源供給が停止され、これによりエンジン2を停止させることができる。
【0045】
冷間時にエンジン2を起動するときの手順は、従来と同様であり、次の通りである。
(1)図1を参照して、チェーンソー本体を横断して延びる前側ハンドル45には、その前方に隣接した位置にブレーキレバー9が配設されている。このブレーキレバー9は「ハンドガード」とも呼ばれている。ブレーキレバー9は、前方に倒した制動位置と、これを後方に変位させて前側ハンドル45に接近した制動解除位置とを取ることができる。エンジン始動時には、それに先だってブレーキレバー9が制動位置にセットされる(ブレーキ8の締結)。
【0046】
(2)チョークノブ13(図1)を引き出すことでチョークバルブ11を全閉位置にすると共に、これに連動してスロットルバルブ10が「ファーストアイドル位置」に位置決めされる。
【0047】
(3)次いで、リコイル・スタータ20のスタータグリップ21を何回か引っ張ってエンジン2のシリンダ内にフュエルリッチな混合気を送り込むと共に、このスタータグリップ21の引っ張り操作をシリンダ内で爆発が発生するまで続ける。この段階では燃料がリッチ過ぎるため、一般的には、数サイクルの爆発でエンジン2が停止する。
【0048】
(4)次いで、チョークノブ13を押し戻す。これによりチョークバルブ11は全開位置に戻るものの、スロットルバルブ10は「ファーストアイドル位置」の状態に維持される。この状態で、再度、スタータグリップ21を引っ張る操作を行うと、エンジン2が持続的に回転する。
【0049】
(5)後側ハンドル42(図1)を握って、この後側ハンドル42から上方に突出するスロットルトリガーロックアウト43(図1)を押し下げると、この後側ハンドル42に配設されているスロットルコントロールトリガ12(図1では作図上の理由から現れてない)のロックが解除され、次いでスロットルコントロールトリガ12を引き絞ることで、スロットルバルブ10とチョークバルブ11との連携を切断することができる。また、スロットルコントロールトリガ12を解放するとスロットルバルブ10は「常用アイドル位置」つまり、ほぼ全閉位置に位置決めされる。したがって、エンジン起動後のスロットルコントロールトリガ12の操作は、スロットルバルブ10とチョークバルブ11との連携を切断するための操作と言うことができる。
(6)作業者は、作業を開始する前にブレーキレバー9(図1)を後方つまり本体側に変位させて前側ハンドル45に接近した制動解除位置にセットしてブレーキ8を解除し、そしてスロットルコントロールトリガ12を引き絞って作業を行う。
【0050】
図4は、エンジン始動時のエンジン制御の一例を説明するためのフローチャートである。このフローチャートは、エンジン起動と共に発電を開始する発電機構22から電源の供給を受けて制御手段30のマイクロコンピュータが起動することを前提として作成してある。エンジン2は、その起動初期から後に説明する常用点火制御モードの下で点火制御が実行され、そして、エンジン起動後にエンジン2の回転数が所定の回転数よりも高くなった時点で失火処理が実行される。
【0051】
例えばファーストアイドル位置にスロットルバルブ10を位置決めした状態でエンジン2の起動操作を行ったとき、起動初期ではエンジン回転数が低いため失火制御は実行されない。したがって、スロットルバルブ10が可成り開いた状態のバルブ開度の下でエンジン起動の確実性を確保できる。
【0052】
その一方で、エンジン2の運転状態が安定し始めてエンジン回転数が急激に上昇する過渡期に入ると失火処理が実行されるため、この失火処理によってエンジン回転数の上限値を抑え込むことができる。そして、この上限値を遠心クラッチ6が係合を開始する回転数よりも小さな回転数に設定することで、エンジン起動直後の過渡期で遠心クラッチ6が係合してしまうのを阻止することができる。
【0053】
図4のフローチャートを参照して、エンジン起動時の点火制御の一例を説明すると、前述したように、エンジンの起動操作に伴って制御手段30のマイクロコンピュータが起動する。なお、この実施例に含まれる遠心クラッチ6は、5,000rpmで係合動作を開始するように設定されている。また、スロットルバルブ10のファーストアイドル位置は、約7,000rpmのエンジン回転数を実現できるスロットル開度に設定されている。また、常用アイドル位置は、平均エンジン回転数を約2,700rpmに維持できるスロットル開度に設定されている。
【0054】
先ず、ステップS1において、起動フラグFがセットされる(F=1)。次いで、ステップS2において、失火制御モードに入る条件が成立したか否かの判定が行われる。このステップS2は、実質的に、上述したエンジン起動の際の「過渡期」を推定する処理である。このことから、ステップS2は、前記遠心クラッチが係合し始めるクラッチ係合回転数よりもエンジン回転数が高くなるか否かを推定する処理であると言い換えることができる。前述したように、「エンジン起動の過渡期」ではエンジン回転数が急激に上昇する。したがって、例えばエンジン回転数が4,000rpm以上になった時、これを放置しておいたときにはエンジン回転数がクラッチ係合回転数(5,000rpm)に達してしまうと予測できる。変形例として、エンジン回転数の加速度の大小を判定する閾値を設定して、ステップS2の判断を行うようにしてもよい。この加速度の演算は、今回の回転数と前回の回転数と間の差分値を時間で除算することによって行ってもよいし、今回のエンジン回転数と前回のエンジン回転数との間の差分値の大小によって間接的に加速度を求めるようにしてもよい。
【0055】
なお、回転数センサ31をクランクシャフト(図示せず)や発電機構22のロータ24に設置してエンジン回転数(Ne)を検出するときに、極めて短い時間間隔で回転数(Ne)を取り込むときには、所定時間の平均値を使って上記のステップS2の判定を行うのがよい。比較的長い時間間隔で回転数(Ne)を取り込むときには、この長い時間間隔の間のクランクシャフトやロータ24の実質的な平均速度を検出することになるため、上記のステップS2の判定において、回転数センサ31が取り込んだ回転数(Ne)を使ってもよい。このことは、以下の説明のエンジン回転数(Ne)においても同様である。
【0056】
失火制御モードに入る条件が成立(例えばエンジン回転数が4,000rpm以上)したときには、「YES」ということで失火制御モードに入る。
【0057】
失火制御モードについて説明すると、先ず、エンジン回転数(Ne)が4,500rpm以上であるか否かの判定が行われる(ステップS3)。ちなみに、遠心クラッチ6の係合回転数が5,000rpmに設定されているのは上述した通りである。したがって、ステップS3の閾値である4,500rpmは遠心クラッチ6の係合回転数よりも約10%低い値である。
【0058】
そして、このステップS3で「YES」(4,500rpm以上)と判定されたときにはステップS4に進んで失火処理が実行される。ここに、失火処理とは、点火装置26に対する電源供給を停止して気筒内での燃焼を阻止する処理をいうが、変形例として、通常はピストンストロークの上死点前30°前後に設定されている点火タイミングを例えば下死点に設定するというように大きく遅角させて実質的に気筒内での混合気の爆発を阻止するようにしてもよい。一般的な点火制御で行われる遅角制御から差別化するために、この大きく遅角させる制御を「失火遅角」と呼ぶことにする。この失火遅角は、気筒内での混合気の爆発を実質的に阻止することのできる遅角を言う。
【0059】
失火処理(ステップS4)は、上述したように、エンジン回転数(Ne)が4,500rpm以上であることを条件に実行されるが、この4,500rpmは遠心クラッチ6が係合状態となる5,000rpmよりも低い回転数であることから、この失火処理により、エンジン回転数(Ne)の上限値を、遠心クラッチ6が係合回転数よりも低い値に抑えることができる。
【0060】
ステップS4の失火処理は、所定の作業者の操作が検知されるまで継続される(S5)。なお、ステップS4の失火処理が連続して所定回数実行されたときに、それ以降は通常の遅角処理に切り替えてもよい。例えば5回連続してステップS4で失火処理を実行したにも拘わらずエンジン回転数が4,500rpmを下回らなかったときには、通常のエンジン制御での遅角制御のうち最大の遅角量を設定してエンジン出力を低下させるようにしてもよい。
【0061】
上記ステップS5の失火制御モード解除条件として作業者の所定の操作を採用したときには、この作業者の所定の操作に反応して、これを検知するスイッチ機構からの信号の有無に基づいてステップS5の判定を行うようにしてもよい。このスイッチ機構を例示すると次の通りである。
【0062】
(1)スロットルコントロールトリガ12の操作を検知するスイッチを設ける;
(2)ブレーキレバー9のブレーキ解除を検知するスイッチを設ける;
(3)作業者が前側ハンドル42及び/又は後側ハンドル45(図1)を把持したのを検知するスイッチを設ける;
(4)スロットルコントロールトリガ12のロックを解除するスロットルトリガーロックアウト43(図1)の操作を検知するスイッチを設ける;
(5)失火制御モードと常用点火制御モードとを相互に切り替えるマニュアルスイッチを設ける。
【0063】
上記の例示から分かるように、例えば作業者が前後のハンドル42、45を握るという行為は、これから作業を開始する行為とみることができる。したがって、上述した所定の作業者の操作は、失火制御モードを実行することが逆に邪魔になる運転状態に移行する可能性のある操作ということができる。また、別の見方をすれば、上述した所定の作業者の操作は、作業者が鋸刃チェーン7の動きに注意を払う状況になったとみなすことのできる操作ということができる。
【0064】
上記(1)〜(5)に例示のスイッチの具体的な構成は任意であり、例えば感圧スイッチセンサ、磁気スイッチセンサ、光スイッチセンサ、超音波スイッチセンサなどの既知のスイッチセンサを採用することができる。
【0065】
図5〜図7は、スロットルコントロールトリガ12とスロットルバルブ10とを連携するスロットル操作ロッド50に関連したスイッチ機構52を示す。このスイッチ機構52は、前述したトリガ操作検出スイッチ32に該当する。
【0066】
スロットル操作ロッド50は、エンジン2やエアクリーナ4などを包囲する本体アウターケース54の後端壁54aの後側ハンドル42と合流する部分を貫通して延びており(図1)、スロットル操作ロッド50の後端部が後側ハンドル42の内部に延在している。スロットル操作ロッド50は、その前端がスロットルバルブ10に連結され、他方、L字状に屈曲した後端50aがスロットルコントロールトリガ12に係合される。作業者がスロットルコントロールトリガ12を引き絞ると、このスロットルコントロールトリガ12の動作によってスロットル操作ロッド50が前方に向けて変位し、そして、このスロットル前方変位によってスロットルバルブ10が開く(エンジン出力増大)。
【0067】
スロットル操作ロッド50は、前述した、上カバーで覆われる絶縁性のプラスチック材料からなる本体アウターケース54の内部において、その後端壁54aに隣接する部分がクランク状に屈曲した形状を有し(図5)、このクランク部分50b、つまりスロットル操作ロッド50の変位方向と略直交して延びる部分は、本体アウターケース54の後端壁54aから前方に延びる上下一対の長辺突起56a、56bの間に収容されている。
【0068】
上方の長辺突起56aと、下方の長辺突起56bの前端部には、その互いに対向した面に独立した金属片58、60が装着されている。この上下の金属片58、60は前述したスイッチ機構52の一部を構成するものである。
【0069】
図6を参照して、上方の金属片58は屈曲した形状に形作られており、この屈曲形状によってバネ性が付与されている。下方の金属片60は、扁平な形状を有しているが、上方の金属片60と同様に屈曲した形状を備えていてもよい。
【0070】
上下の金属片58、60は導電性を備えている部材であれば任意の材料を採用することができる。この実施例では、上下の金属片58、60が共にステンレス鋼の薄板で構成され、そして、上方の金属片58が制御手段30に接続され、他方、下方の金属片60が接地されている。なお、図5の参照符号66はエアクリーナが着座するベースプレートである。
【0071】
図6は、スロットルコントロールトリガ12が解放された状態にあり、スロットル操作ロッド50の前後の移動ストロークの後端位置に位置している状態を示す。この状態では、スロットル操作ロッド50のクランク部分50bが上下の金属片58、60から後方に離間した位置に位置している。
【0072】
図7は、スロットルコントロールトリガ12を作業者が引き絞った状態にあり、スロットル操作ロッド50の前後の移動ストロークの後端位置から前方に変位した状態を示す。この状態では、スロットル操作ロッド50のクランク部分50bが上下の金属片58、60に挟まれた位置に位置しており、上方の金属片58はクランク部分50bによって上方に押し上げられた状態にあり、上下の金属片58、60はクランク部分50bによって電気的に導通した状態になる。
【0073】
上述した図15と図16とを対比すると分かるように、上下の金属片58、60とクランク部分50bはスイッチ機構52を構成し、このスイッチ機構52は、クランク部分50bの変位方向つまり前後方向に対して、これを横断する方向に延びるクランク部分50bが可動接点であり、上下の金属片58、60が固定接点である。そして、このスイッチ機構52は、スロットルコントロールトリガ12を作業者が引き絞ったときに、この操作に反応してスイッチ機構52からのON信号が制御手段30に入力されることになるが、このトリガ操作を作業者がもはや失火処理を必要としない操作つまり、失火制御モードを解除したいという作業者の意志表示の操作とみなすことができることから、このスイッチ機構52のON信号を受けて、図4においてステップS5からS6に進んで起動フラグのリセット(F=0)を行った後に失火制御モードが解除される。つまり、その後は、通常の点火動作(CDIやTCIなど)を実行する常用点火制御モードに従う点火タイミングで点火装置26の点火が実行される(S7)。
【0074】
他方、スロットルコントロールトリガ12が解放された状態ではOFF信号が制御手段30に入力され、この状態は作業者が失火制御モードの継続を希望しているとして、ステップS3に戻って失火制御モードが継続される。
【0075】
上記図5〜図7を参照して説明したスイッチ機構52は、上カバーで覆われる本体アウターケース54の内部に配設され、しかも、スロットル操作ロッド50の前後の移動によって前後に変位するクランク部分50bと、これが擦接する金属片58、60とによって構成されているためゴミの付着による動作不良の発生頻度を低減することができる。また、上カバーを取り外すだけで、金属片58、60にアクセスすることができるため、スイッチ機構52のメンテナンスも容易である。
【0076】
スロットルコントロールトリガ12の操作を検出するスイッチ機構の変形例を図8、図9を参照して説明する。図8、図9において、参照符号62は、スロットルコントロールトリガ12の回動中心軸を示す。スロットルコントロールトリガ12の後方にはマイクロスイッチ64が配設されている。他方、スロットルコントロールトリガ12には突起12aが形成され、この突起12aはマイクロスイッチ64に向けて突出している。
【0077】
図8は、スロットルコントロールトリガ12の解放状態を示す。図9は、スロットルコントロールトリガ12を引き絞った状態を示す。スロットルコントロールトリガ12の解放状態を示す図8を参照して、この状態では、トリガ12と一体の突起12aが可動接点64aを押し付けて可動接点64aを固定接点64bに接触させる。
【0078】
スロットルコントロールトリガ12を引き絞った状態を示す図9を参照して、この状態では、突起12aが、スロットルコントロールトリガ12と共に上方に変位して可動接点64aの押し付けを止めた状態になり、可動接点64aは固定接点64bから離れた状態にある。
【0079】
図8、図9に示す変形例では、マイクロスイッチ64は、作業者がスロットルコントロールトリガ12を引き絞ったときにマイクロスイッチ64からOFF信号が制御手段30に入力されることになるが、この操作を作業者がもはや失火処理を必要としない操作つまり、失火制御モードを解除したいという作業者の意志に基づく操作とみなすことができることから、このマイクロスイッチ64のOFF信号を受けて、図4においてステップS5からS6に進んで起動フラグのリセット(F=0)を行った後に失火制御モードが解除される。
【0080】
他方、スロットルコントロールトリガ12が解放状態ではマイクロスイッチ64からON信号が制御手段30に入力され、この状態は作業者が失火制御モードの解除を求めていないとして、ステップS3に戻って失火制御モードが継続される。この失火制御モードから常用点火制御モードに移行する途中で、又は、失火制御モードを実行中に、後に図14を参照して説明する進角処理を実行してもよい(図14のS61)。
【0081】
勿論、マイクロスイッチ64からのON、OFF信号は、これを反転させて出力させることができることから、スロットルコントロールトリガ12を作業者が引き絞ったときにマイクロスイッチ64からON信号を出力させ、スロットルコントロールトリガ12を解放したときにマイクロスイッチ64からOFF信号を出力させるようにしてもよい。この場合には、マイクロスイッチ64からON信号が制御手段30に入力されたときに、失火制御モードを解除したいという作業者の意志表示の操作とみなして失火制御モードが解除される。
【0082】
図10は、従来から既知の手動式のセレクタを、本発明にいう所定の作業者の操作を検知するスイッチ機構に改変する例を示す。図10を参照して、セレクタ70は、回動中心軸72を中心にして揺動可能であり、作業者の操作によって、従来と同様に図10の(I)〜(IV)の4つの位置を取ることができる。
【0083】
図10の(I)に示す位置にセレクタ70を位置決めすると、スロットルバルブ10が「ファーストアイドル位置」に位置決めされ、チョークバルブ11が「全閉位置」に位置決めされる。
【0084】
図10の(II)に示す位置は、上記(I)からセレクタ70を少し持ち上げた位置である。この(II)に示す位置にセレクタ70を位置決めすると、スロットルバルブ10は「ファーストアイドル位置」の状態を維持しつつチョークバルブ11が「全閉位置」から「全開位置」に変化する。
【0085】
図10の(III)に示す位置は、上記(II)からセレクタ70を少し持ち上げた位置である。この(III)に示す位置にセレクタ70を位置決めすると、スロットルバルブ10は「ファーストアイドル位置」から「常用アイドル位置」に変わる。なお、チョークバルブ11は「全開位置」に位置決めされたままである。
【0086】
図10の(IV)に示す位置は、上記(III)からセレクタ70を更に持ち上げた位置である。この(IV)に示す位置にセレクタ70を位置決めすると点火装置26への電源供給が停止され、これによりエンジン2が停止する。
【0087】
セレクタ70は、このセレクタ70と一体に揺動する側面視L字状の作動片74を有し、作動片74は絶縁性の材料から作られたプラスチック成型品である。
【0088】
作動片74は、第1、第2の2つの固定接点76、78を有する。また、作動片74は、好ましくは、第1〜第3の3つの突起74a〜74cが一体成形されるのがよく、これにより各ポジションにおいて、バネ性の接点端子80の動作の節度を確保することができる。
【0089】
図10の(I)を参照して、接点端子80の先端が作動片74の起立した先端面に当接した状態にある。次の(II)を参照して、作動片74の図示時計方向への回動によって、バネ性の接点端子80は第1の突起74aを乗り越えて第1の固定接点76と当接した状態になる。次の(III)を参照して、作動片74の更なる時計方向への回動によって、接点端子80は第2の突起74bを乗り越えて、この第2の突起74bとこれに隣接した第3の突起74cとの間に位置決めされた状態になり、接点端子80は上記第1の固定接点76から離れた状態になる。次の(IV)を参照して、作動片74の更なる時計方向への回動によって、接点端子80は第3の突起74cを乗り越えて、作動片74の基端側端面に当接した状態となり、この基端側端面に配設された第2の固定端子78と当接した状態となる。
【0090】
接点端子80が第2の固定接点78と当接する(IV)の状態(図10)は、前述したように、点火装置26への電源供給が停止され、これによりエンジン2が停止する。つまり、第2の固定接点78は、図2を参照して説明したエンジン停止スイッチ40の一部を構成する。
【0091】
バネ性の接点端子80が第1の固定接点76と当接する(II)の状態(図10)では、前述したように、スロットルバルブ10は「ファーストアイドル位置」にあり、チョークバルブ11が「全開位置」にある。接点端子80が第1の固定接点76と導通することにより生成されるON信号が制御手段30に入力されると、制御手段30は失火制御モードに入る(図4のステップS2からS3に移行)。したがって、セレクタ70を図10の(II)の位置に位置決めすることで失火制御モードを設定することができる。
【0092】
次に作業者がセレクタ70を図10の(III)の位置に位置決めすると、このセレクタ70の操作は作業者が失火制御モード解除を要求する操作であると判断できることから、接点端子80が第1の固定接点76から離れて接点端子80と第1の固定接点76で構成される回路が切断され、このOFF信号が制御手段30に入力されると制御手段30は失火制御モードを解除する(図4のステップS5からS6に移行)。したがって、セレクタ70を図10の(III)の位置に位置決めすることで、このセレクタ70の操作は作業者が失火制御モードの解除を要求する操作であるとして、失火制御モードが解除される。
【0093】
上記図4はエンジン起動時の点火制御に関するものであったが、図11〜図14は、図4のエンジン起動時の点火制御が完了した後の点火時期制御に関する。
【0094】
図11は、ブレーキ8が締結された状態でありながら、何らかの原因でエンジン回転数が上昇した場合に失火制御を実行する手順を説明するためのフローチャートである。なお、この図11のフローチャートは、ブレーキレバー9の操作によってON/OFFするブレーキ操作検出スイッチがブレーキレバー9に関連して配設されていることを前提とする。
【0095】
図11を参照して、ステップS21でブレーキ8が締結状態であるか否かの判定が行われる。この判定は、制御手段30に入力されるブレーキ操作検出スイッチからのON信号(ブレーキ締結信号)に基づいて行われる。
【0096】
ステップS21で「YES」のとき、つまり、ブレーキレバー9がON状態にあり、ブレーキ8が締結状態にあるとみなせるときには、ステップS22に進んで失火制御モードが設定される。この失火制御モードは、実質的に図4を参照して説明したのと同じであり、エンジン回転数が4,500rpm以上であるときに失火処理が実行される。したがって、ブレーキレバー9がON状態にある限り、失火制御によって、エンジン回転数(Ne)を、遠心クラッチ6が非係合状態に維持できる回転数に抑え込むことができる。これにより、遠心クラッチ6の摩擦要素が摩耗するのを防止することができる。
【0097】
ステップS21において、「NO」と判定されたときには、ブレーキレバー9がOFF状態にあることから、常用点火制御モードが設定され、通常のCDI動作に基づく点火が実行される(S23)。したがって、作業者がスロットルコントロールトリガ12を操作すると、エンジン2は、スロットルコントロールトリガ12の操作量に応じた動力を出力する。勿論、ブレーキ8が解放状態にあることから、エンジン回転数(Ne)が5,000rpmを超えると遠心クラッチ6が係合状態となってエンジン2の出力が鋸刃チェーン7に伝達される。
【0098】
以上、起動時の点火制御(図4)を前提に図11の制御例を説明したが、起動時の点火制御(図4)とは別に、図11の制御例だけで実施するようにしてもよい。このことは、下記の図12の制御例についても同様である。
【0099】
図12は、上記図11の制御の変形例である。上記の図11の制御では、ブレーキレバー9がON操作されていることをブレーキ操作検出スイッチで検出するようにしたが、この図12の例では、スロットルコントロールトリガ12の操作を検出するトリガ操作検出スイッチ32(図2:図5〜図7のスイッチ機構52)の信号によって失火制御モードと常用点火制御モードの切り替えが実行される。これによれば、スロットルコントロールトリガ12から手を離しているにも拘わらず、何らかの原因でエンジン回転数が上昇して鋸刃チェーン7が動き出すのを防止することができる。
【0100】
図12の制御例を具体的に説明すると、トリガ操作検出スイッチ32からの信号に基づいて、スロットルコントロールトリガ12が解放状態にあるか否かを判定し(S41)、「YES」つまりスロットルコントロールトリガ12が解放状態であるときには失火制御モードが設定される。
【0101】
この失火制御モード22は、エンジン回転数(Ne)が4,500rpm以上になると失火処理が実行される。したがって、エンジン回転数(Ne)が上昇して遠心クラッチ6が係合状態になってしまうのを防止することができる。これにより、作業者がスロットルコントロールトリガ12から手を離しているにも拘わらず鋸刃チェーン7が動き出すのを防止することができる。
【0102】
なお、ステップS41で「NO」、つまりスロットルコントロールトリガ12が作業者によって操作されているときには、常用点火制御モードが設定され(S23)、通常の点火動作に基づく点火が実行される。したがって、スロットルコントロールトリガ12の操作量に応じた動力がエンジン2から出力される。
【0103】
図13は、エンジン起動時から作業中の一連の過程での安全性を向上するための制御例を説明するためのフローチャートである。
【0104】
エンジンの起動操作が開始される(S50)と、先ずステップS51でスロットルバルブ10がアイドル位置にあるか否かの判定が行われる。スロットルバルブ10のアイドル位置の判定は、トリガ操作検出スイッチ32(図2)からの信号に基づいて行われる。すなわち、エンジンが起動してスロットルコントロールトリガ12が操作される前では、スロットルバルブ10がファーストアイドル位置にある。他方、エンジンが起動した後にスロットルコントロールトリガ12の操作が行われると、スロットルバルブ10のファーストアイドル位置の位置決めが解除され、スロットルコントロールトリガ12の解放によってスロットルバルブ10は常用アイドル位置に位置決めされる。したがって、ステップS51での判定におけるアイドル位置は、前述した「常用アイドル位置」と「ファーストアイドル位置」とを含む。
【0105】
一般的には、エンジン起動はスロットルバルブ10をファーストアイドル位置に位置決めした状態で行われることから上記ステップS50から移行した段階では、このステップS51でスロットルバルブ10がファーストアイドル位置に位置しているか否かの判定が行われ、「YES」ということで、ステップS52に進む。
【0106】
ステップS52では、エンジンが減速中か否かの判定が行われるが、今は起動直後で減速中でないので、「NO」ということで次のステップS53に進んで失火制御モードに入る。失火制御モードでは、先ず、エンジン回転数(Ne)が4,500rpm以上であるか否かの判定が行われる。初めてこのステップS53に来たときには、未だエンジン起動の初期であることからエンジン回転数(Ne)は4,500rpmよりも低いのが通常であると考えられることから、「NO」ということで失火制御モードが解除されて、ステップS54に進んで通常の点火動作による常用点火制御モードが実行される。
【0107】
以上の流れを続けていくと、エンジン起動の過渡期に入ってエンジン回転数が急激に上昇し、4,500rpmに達すると、ステップS53で「YES」と判定されて、ステップS55で失火処理が実行される。この失火処理によってもエンジン回転数(Ne)が4,000rpmを下回らなければ、ステップS56から再度ステップS55に戻って失火処理が実行される。そして、エンジン回転数(Ne)が4,000rpmよりも低い回転数になると、失火制御モードが解除されて、ステップS56から上記のステップS54に移行して通常の点火動作による常用点火制御モードが実行される。
【0108】
作業者が作業を行うためにスロットルコントロールトリガ12を操作するときは、チェーンソー1の場合には、一般的には、トリガ12を一杯に引き絞ったフルスロットルで作業することから、作業中はステップS54の通常の点火動作により点火が実行され、トリガ12を操作した量に応じたエンジン動力が出力される。
【0109】
作業に一区切りついて、作業者がスロットルコントロールトリガ12を解放すると、スロットルバルブ10は常用アイドル位置に位置決めされた状態となる。このときには、ステップS51からステップS52に移行して、減速状態にあるか否かの判定が行われる(S52)。この減速判定は、スロットルバルブ10の開度の変化をトリガ操作検出スイッチ32からの信号に基づいて判断してもよいし、スロットルコントロールトリガ12のトリガ操作信号に基づいて判断してもよい。勿論、エンジン回転数の変化に基づいて減速判定してもよい。
【0110】
今は減速状態にあることから、減速判定のステップ52で「YES」と判定され、ステップS57に進む。ステップS57で一定の遅れ時間(Δt)をおいてエンジン回転数が低くなるのを待ってステップS53に進む。このステップS53では上述したようにエンジン回転数(Ne)が4,500rpm以上であるか否かの判定が行われる。通常であれば、エンジン回転数(Ne)は常用アイドル位置のスロットルバルブ10の開度に対応した例えば2,700rpmに低下しているため、「NO」ということでステップS54に進んで、通常の点火動作により点火が実行され、常用アイドル回転数である平均2,700rpmの回転数が維持される。
【0111】
上記のステップS57の遅れ時間(Δt)が経過しても、何らかの原因でエンジン回転数が予定するほど低下しないでステップS53で「YES」、つまり4,500rpm以上であると判定されたときには、ステップS55に進んで失火処理が実行される。この失火処理は、エンジン回転数(Ne)が4,500rpm以上であると判定される毎に実行されるため、スロットルバルブ10が常用アイドル位置にあるにも拘わらず、何らかの原因でエンジン回転数が4,500rpm以上になろうとするときには失火処理(S55)によって、遠心クラッチ6を非係合状態にさせて刃物7の回転を休止させることができる。
【0112】
図14は、上述した図13の制御の変形例である。したがって、上記図13のステップと同じステップには同じステップ番号を付すことにより、その説明を省略する。この変形例の制御では、失火処理の後にステップS60が挿入されている。ステップS60では、エンジン回転数(Ne)が常用アイドル回転数又はそれよりも若干低い回転数であるか否かの判定が行われる。すなわち、失火処理(S55)によってエンジン回転数が低下しすぎてエンジン回転が停止する虞があるか否かの判定がステップS60で行われ、「YES」、つまりエンジン回転数(Ne)が低下し過ぎたときにはステップS61に進んで点火タイミングを進角させてエンジンの運転状態が復活する方向の制御が実行される。
【0113】
上記ステップS61において、失火制御モードから常用点火制御モードに移行する途中で上記の進角処理を加えることにより、失火制御に伴ってエンジン回転数が低下し過ぎてエンジン停止してしまう可能性を低減することができる。この進角処理に関し、図4の始動時の点火制御においても、この進角処理を加えるようにしてもよい。
【0114】
以上、本発明の実施例をチェーンソー1に基づいて説明したが、本発明は刈り払い機やヘッジトリマーなどの他の携帯式の作業機に対しても同様に適用可能であるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、典型的には単気筒小型エンジンを搭載した作業機の常用アイドル運転、エンジン起動直後のファーストアイドル運転のエンジン制御に好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0116】
1 チェーンソー
2 エンジン
5 気化器
6 遠心クラッチ
7 鋸刃チェーン
8 ブレーキ
9 ブレーキレバー
10 スロットルバルブ
11 チョークバルブ
12 スロットルコントロールトリガ
13 チョークノブ
20 リコイル・スタータ
30 制御手段(マイコン)
31 エンジン回転数センサ
32 トリガ操作検出スイッチ
50 導電性スロットル操作ロッド
50b スロットル操作ロッドのクランク部分(可動接点)
58 上方の金属片(一方の固定接点)
60 下方の金属片(他方の固定接点)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットルバルブを含む気化器を備え、該気化器から供給される混合気を点火装置によって着火させることにより動力を発生する内燃エンジンと、
該内燃エンジンと刃物との間に介装された遠心クラッチとを備え、
該遠心クラッチが係合することで前記内燃エンジンの動力が前記刃物に伝達される携帯型の作業機において、
前記内燃エンジンが起動時であることを検出するエンジン起動検出手段と、
前記内燃エンジンのエンジン回転数を検出する回転数センサと、
作業者の操作に基づいて動作するスイッチと、
前記内燃エンジンの点火を制御する常用点火制御モードと、前記内燃エンジンの起動時において前記エンジン回転数からの信号に基づいて、前記遠心クラッチが係合し始めるクラッチ係合回転数よりもエンジン回転数が高くなると推定できることを前提として、エンジン回転数が第1の所定の回転数よりも大きいときに前記点火装置に対して失火処理を実行する失火制御モードと、を選択的に設定して前記内燃エンジンの点火を制御する制御手段とを有し、
前記スイッチからの信号によって、作業者の前記操作が前記失火制御モードを必要としないと判断したときに前記失火制御モードを解除して前記常用点火制御モードに切り替えることを特徴とする内燃エンジンを備えた作業機。
【請求項2】
前記スイッチが、前記スロットルバルブの開閉を操作するスロットルコントロールトリガの操作を検出することのできるトリガ操作検出スイッチからなり、
該トリガ操作検出スイッチによって作業者が前記スロットルコントロールトリガを操作したことを検知したときに前記失火制御モードが解除される、請求項1に記載の内燃エンジンを備えた作業機。
【請求項3】
前記トリガ操作検出スイッチが、
前記スロットルコントロールトリガと前記スロットルバルブとを連結するスロットル操作ロッドであって、作業者が前記スロットルコントロールトリガを操作すると、該操作量に応じて変位して前記スロットルバルブの開度を制御する導電性のスロットル操作ロッドと、
互いに対向して定置された2つの金属片であって、前記スロットル操作ロッドが接触することにより、該スロットル操作ロッドを介して電気的に導通する2つの金属片とで構成され、
作業者が前記スロットルコントロールトリガを操作することに伴って前記スロットル操作ロッドが前記2つの金属片の間に挟まれた状態となって、該スロットル操作ロッドを介して前記2つの金属片が電気的に導通状態となり、
作業者が前記スロットルコントロールトリガを解放したときに前記スロットル操作ロッドが前記2つの金属片の少なくともいずれか一方から離れて、前記2つの金属片が電気的に遮断された状態となる、請求項1に記載の内燃エンジンを備えた作業機。
【請求項4】
前記作業機が、前記刃物の回転を制動するブレーキと、該ブレーキを操作するブレーキ操作手段とを有し、
前記スイッチが、前記ブレーキ操作手段の操作を検出するブレーキ操作検出スイッチからなり、
該ブレーキ操作検出スイッチによって作業者が前記ブレーキを解放する操作したことを検知したときに前記失火制御モードが解除される、請求項1に記載の内燃エンジンを備えた作業機。
【請求項5】
作業者の所定の操作を検出するスイッチが前記作業機のハンドルに設けられ、
前記スイッチによって、前記ハンドルを作業者が把持したことを検知したときに前記失火制御モードが解除される、請求項1に記載の内燃エンジンを備えた作業機。
【請求項6】
前記気化器に設けられたチョークバルブと、
該チョークバルブを全閉状態と全開状態に切り替える手動のセレクタと、
該セレクタに固設された固定接点と、該固定接点と当接可能な接点端子とで構成され且つ前記スイッチを構成するスイッチ機構とを更に有し、
該セレクタが、第1位置から第3位置の少なくとも3つの位置を取ることができ、
前記第1の位置では、前記チョークバルブが全閉状態に位置決めされると共に該チョークバルブの全閉位置への変位に連動して前記スロットルバルブがファーストアイドル位置に位置決めされ、
前記第2の位置では、前記チョークバルブが全開状態に維持される一方で前記スロットルバルブがほぼ全閉の常用アイドル位置に位置決めされ、
該セレクタが前記第1位置に位置決めされたときに、前記固定接点と前記接点端子が当接して前記スイッチ機構が導通状態となり、前記セレクタが前記第2位置に位置決めされたときに、前記固定接点と前記接点端子とが離れて前記スイッチ機構が非導通状態となり、
前記セレクタが前記第1の位置に位置して前記スイッチ機構が導通状態のときに前記失火制御モードが設定され、
前記セレクタが前記第2の位置に位置して前記スイッチ機構が非導通状態のときに、前記失火制御モードが解除されて前記常用点火制御モードが設定される、請求項1に記載の内燃エンジンを備えた作業機。
【請求項7】
前記失火制御モードの実行中に、エンジン回転数が、前記第1の所定の回転数よりも小さな値の第2の所定の回転数よりも低くなったときに進角処理が実行される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の内燃エンジンを備えた作業機。
【請求項8】
スロットルバルブを含む気化器を備え、該気化器から供給される混合気を点火装置によって着火させることにより動力を発生する内燃エンジンと、
前記スロットルバルブの開閉を制御する手動のスロットルコントロールトリガと、
前記内燃エンジンと刃物との間に介装された遠心クラッチとを備え、
前記スロットルコントロールトリガを操作してエンジン出力を上昇させると前記遠心クラッチが係合して前記内燃エンジンの動力が前記刃物に伝達される携帯型の作業機において、
前記内燃エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、
前記スロットルバルブがアイドル位置にあるか否かを検出するアイドル位置検出手段と、
前記スロットルバルブが前記アイドル位置にあり且つ前記エンジン回転数が第1の所定の回転数よりも高いときに前記点火装置に対して失火処理を実行する点火制御手段とを有し、
前記アイドル位置検出手段が、前記スロットルコントロールトリガの操作を検出するトリガ操作検出手段によって構成されて、該トリガ操作検出手段により前記スロットルコントロールトリガが解放状態にあると検出されたときに、前記スロットルバルブが前記アイドル位置にあると判断され、
前記トリガ操作検出手段がスイッチ機構で構成され、
該スイッチ機構は、
前記スロットルコントロールトリガと前記スロットルバルブとを連結するスロットル操作ロッドであって、作業者が前記スロットルコントロールトリガを操作すると、該操作量に応じて変位して前記スロットルバルブの開度を制御する導電性のスロットル操作ロッドと、
互いに対向して定置された2つの金属片であって、前記スロットル操作ロッドが接触することにより、該スロットル操作ロッドを介して電気的に導通する2つの金属片とで構成され、
作業者が前記スロットルコントロールトリガを操作することに伴って前記スロットル操作ロッドが前記2つの金属片の間に挟まれた状態となって、該スロットル操作ロッドを介して前記2つの金属片が電気的に導通状態となり、
作業者が前記スロットルコントロールトリガを解放したときに前記スロットル操作ロッドが前記2つの金属片の少なくともいずれか一方から離れて、前記2つの金属片が電気的に遮断された状態となることを特徴とする内燃エンジンを備えた作業機。
【請求項9】
前記内燃エンジンの回転数が低下する減速状態を判定する減速判定手段を更に有し、
前記点火制御手段は、前記スロットルバルブが前記アイドル位置にあることを前提として、前記減速判定手段より前記内燃エンジンが減速状態を検知した後、所定時間経過した後の前記エンジン回転数が前記第1の所定の回転数よりも高いときに前記点火装置に対して失火処理を実行する、請求項8に記載の内燃エンジンを備えた作業機。
【請求項10】
前記点火制御手段は、前記失火処理を実行した後に、前記第1の所定の回転数よりも小さな値の第2の所定の回転数よりも前記エンジン回転数が低くなったときに進角処理を実行する、請求項9に記載の内燃エンジンを備えた作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−151124(P2010−151124A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264959(P2009−264959)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000215187)追浜工業株式会社 (30)
【出願人】(509264132)株式会社やまびこ (65)
【Fターム(参考)】