説明

内燃機関の制御装置

【課題】コンプレッサに設けられている可動ベーンの破損を抑制することが可能な内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】ベーン18を動かすことによりコンプレッサホイール12から送り出される吸気の流路の断面積を変更可能な可動ベーン機構17を有するコンプレッサ6aが吸気通路3に設けられた内燃機関1に適用される制御装置において、内燃機関1の始動時に吸気通路3、EGR通路7、及びブローバイガス通路9において水分が凍結しているか否か判定し、水分が凍結していると判定した場合は水分が凍結していないと判定した場合と比較して内燃機関の始動時にコンプレッサホイール12から送り出される吸気の流路の断面積が大きくなるように前記可動ベーン機構17の動作が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動ベーンを動かすことにより吸気の流路の断面積を変更可能な可動ベーン機構を有するコンプレッサが吸気通路に設けられた内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンプレッサホイールとスクロール流路との間の可変ディフューザに複数の可動翼が設けられ、これら複数の可動翼を回転させることにより可変ディフューザの断面積を変更することが可能なコンプレッサを有するターボチャージャが知られている(例えば、特許文献1参照)。その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−255220号公報
【特許文献2】特開2009−270472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、内燃機関の停止中に外気の温度が氷点下になると吸気通路、ブローバイガス通路、及びEGR通路内において水分が凍結して氷が発生する場合がある。このように氷が発生している状態で内燃機関が始動されると、その氷が空気とともにコンプレッサに流入するおそれがある。特許文献1のターボチャージャのようにコンプレッサ内に可動ベーンが設けられていると、コンプレッサに流入した氷が可動ベーンに衝突して可動ベーンが破損するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、コンプレッサに設けられている可動ベーンの破損を抑制することが可能な内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内燃機関の制御装置は、可動ベーンを動かすことによりコンプレッサホイールから送り出される吸気の流路の断面積を変更可能な可動ベーン機構を有するコンプレッサが吸気通路に設けられた内燃機関に適用され、前記内燃機関の始動時に前記吸気通路及び前記吸気通路に接続されている通路の少なくともいずれか1つの通路において水分が凍結しているか否かを判定する凍結判定手段と、前記凍結判定手段が水分が凍結していると判定した場合は前記凍結判定手段が水分が凍結していないと判定した場合と比較して前記内燃機関の始動時に前記流路の断面積が大きくなるように前記可動ベーン機構の動作を制御する制御手段と、を備えている(請求項1)。
【0007】
本発明の制御装置によれば、凍結判定手段によって水分が凍結している判定された場合は流路の断面積が大きくなるように可動ベーン機構の動作が制御されるので、氷等の凍結した物体(以下、凍結物と呼ぶことがある。)がコンプレッサ内に流入してもその凍結物が可動ベーンに衝突することを抑制できる。そのため、凍結物による可動ベーンの破損を抑制できる。
【0008】
本発明の制御装置の一形態において、前記凍結判定手段は、前記内燃機関の始動時に前記内燃機関の冷却水の温度が所定の水温判定値以下、前記内燃機関の始動時に外気の温度が所定の外気温判定値以下、及び前記内燃機関の始動時に前記内燃機関の吸気の温度が所定の吸気温判定値以下のうちの少なくともいずれか1つの条件が成立した場合に、前記内燃機関の始動時に前記吸気通路及び前記吸気通路に接続されている通路の少なくともいずれか1つの通路において水分が凍結していると判定してもよい(請求項2)。この場合、水分が凍結しているか否か容易に判定することができる。
【0009】
本発明の制御装置の一形態において、前記制御手段は、前記内燃機関が停止するときに前記流路の断面積が最大になるように前記可動ベーン機構の動作を制御してもよい(請求項3)。このように内燃機関が停止するときに流路の断面積が最大になるように可動ベーンを動かしておくことにより、内燃機関の始動時に可動ベーンが凍結して動かせない状態になっていても凍結物が可動ベーンに衝突することを抑制できる。
【0010】
本発明の制御装置の一形態において、前記流路は、前記コンプレッサホイールの径方向外側に全周に亘って設けられ、前記可動ベーンは、前記流路に周方向に等間隔で複数設けられ、前記可動ベーン機構は、各可動ベーンに設けられた軸部を中心にそれら複数の可動ベーンを回転させて可動ベーン間の隙間の大きさを変化させることにより前記流路の断面積を変更してもよい(請求項4)。このような可動ベーン機構では、可動ベーン間の隙間を大きくして流路の断面積を大きくする。そのため、流路の断面積を大きくすることにより、凍結物が可動ベーンに衝突し難くなる。従って、可動ベーンが破損することを抑制できる。
【0011】
本発明の制御装置の一形態において、前記可動ベーンは、前記流路内に突出する突出位置とその流路を形成する壁面内に収容される格納位置との間で移動可能に設けられ、前記制御手段は、前記凍結判定手段が水分が凍結していると判定した場合に前記可動ベーンが前記格納位置に動かされるように前記可動ベーン機構の動作を制御してもよい(請求項5)。このように可動ベーンを格納位置に移動させることにより、可動ベーンに凍結物が衝突することを防止できる。そのため、可動ベーンが破損することを抑制できる。
【0012】
この形態において、前記制御手段は、前記内燃機関が停止するときに前記可動ベーンが前記格納位置に動かされるように前記可動ベーン機構の動作を制御してもよい(請求項6)。この場合、内燃機関の始動時に可動ベーンが凍結して動かせない状態になっていても可動ベーンに凍結物が衝突することを防止できる。
【0013】
本発明の制御装置の一形態において、前記内燃機関には、前記吸気通路に接続されている通路として、前記吸気通路のうち前記コンプレッサよりも上流の上流区間と前記内燃機関の排気通路とを接続するEGR通路、及び前記内燃機関の機関本体から前記上流区間にブローバイガスを導くためのブローバイガス通路の少なくともいずれか一方の通路が設けられていてもよい(請求項7)。一般にEGR通路及びブローバイガス通路には水分が溜まり易いので、このような内燃機関に本発明を適用することにより、可動ベーンの破損を適切に抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
以上に説明したように、本発明の制御装置によれば、凍結判定手段によって水分が凍結している判定された場合は流路の断面積が大きくなるように可動ベーン機構の動作が制御されるので、氷等の凍結した物体が可動ベーンに衝突することを抑制できる。そのため、凍結した物体による可動ベーンの破損を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の形態に係る制御装置が組み込まれた内燃機関を概略的に示す図。
【図2】図1のコンプレッサの断面を示す図。
【図3】コンプレッサの一部を図2の矢印III方向から見た図。
【図4】図1のECUが実行する始動制御ルーチンを示すフローチャート。
【図5】コンプレッサの特性曲線を示す図。
【図6】図1のECUが実行する可動ベーン制御ルーチンを示すフローチャート。
【図7】本発明の第2の形態に係る制御装置が組み込まれた内燃機関に設けられているターボチャージャのコンプレッサの断面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の形態)
図1は、本発明の第1の形態に係る制御装置が組み込まれた内燃機関を概略的に示している。この内燃機関(以下、エンジンと称することがある。)1は、車両に走行用動力源として搭載されるものであり、複数の気筒(不図示)を有する機関本体2を備えている。各気筒には、それぞれ吸気通路3及び排気通路4が接続されている。吸気通路3には、吸気を濾過するためのエアクリーナ5と、ターボチャージャ6のコンプレッサ6aが設けられている。排気通路4には、ターボチャージャ6のタービン6bが設けられている。エンジン1は、排気通路4と吸気通路3とを接続するEGR通路7を備えている。この図に示したようにEGR通路7は、排気通路4のうちタービン6bよりも下流の区間と吸気通路3のうちエアクリーナ5よりも下流かつコンプレッサ6aよりも上流の区間3aとを接続している。EGR通路7には、この通路7を開閉するためのEGR弁8が設けられている。また、エンジン1は、機関本体2で発生したブローバイガスを吸気通路3の区間3aに導くためのブローバイガス通路9を備えている。ブローバイガス通路9には、ブローバイガスの逆流を防止するためのPCVバルブ10が設けられている。また、エンジン1にはエンジン1を始動するためのスタータStが設けられている。なお、これらの部分は周知のエンジンと同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0017】
図2及び図3を参照してターボチャージャ6のコンプレッサ6aについて説明する。図2はコンプレッサ6aの断面を示し、図3はコンプレッサ6aの一部を図2の矢印III方向から見た図を示している。図2に示したようにコンプレッサ6aは、コンプレッサハウジング11と、コンプレッサハウジング11内に収容されたコンプレッサホイール12とを備えている。コンプレッサハウジング11は、コンプレッサホイール12が配置されるホイール室13と、ホイール室13の外周に設けられ、ホイール室13の出口と通じているディフューザ部14と、ディフューザ部14の外周に設けられてディフューザ部14と通じている渦巻き状のスクロール室15とを備えている。ターボチャージャ6は、軸線Ax回りに回転可能に設けられた回転軸16を備えている。コンプレッサホイール12は、回転軸16の一端にこの回転軸16と一体に回転するように取り付けられている。図示は省略したが回転軸16の他端には、タービン6bのタービンホイールが一体に回転するように設けられている。そのため、タービンホイールが排気によって駆動されると、これによりコンプレッサホイール12が駆動される。
【0018】
コンプレッサ6aには、可動ベーン機構17が設けられている。可動ベーン機構17は、ディフューザ部14に配置された複数のディフューザベーン(以下、ベーンと略称することがある。)18と、これら複数のベーン18が軸部としてのピン19を軸として回転可能なように取り付けられたベースプレート20と、ベースプレート20の裏面側に配置されたベーン操作機構21とを備えている。ベーン18は、吸気の流れを方向付ける周知の翼型形状の部品である。コンプレッサホイール12から送り出された吸気は、各ベーン18間に流入する。そのため、ベーン18間の隙間が吸気の流路となる。各ベーン18はピン19の一端部に一体回転可能に取り付けられている。図3に示したようにピン19の周方向のピッチは一定である。それらのピン19を軸としてベーン18が回転することにより、ベーン18がそれらの間の吸気の流路を開閉するように回転する。そして、これにより吸気の流路の断面積を変化させる。
【0019】
ベーン操作機構21は、出力軸22aを有するアクチュエータ22と、出力軸22aから出力された動力を各ベーン18に伝達する動力伝達機構23とを備えている。動力伝達機構23は、アクチュエータ22によって軸線Ax回りに回転駆動される不図示の駆動リングを備え、その駆動リングの回転運動を各ベーン18がピン19を軸として回転する回転運動に変換する周知の機構である。そのため、詳細な説明は省略する。アクチュエータ22は、動力伝達機構23を介して各ベーン18を図3に破線で示した閉位置P1と実線で示した開位置P2との間で駆動する。閉位置P1は各ベーン18間の隙間が最小になる位置であり、開位置P2は各ベーン18間の隙間が最大になる位置である。
【0020】
可動ベーン機構17の動作はエンジンコントロールユニット(以下、ECUと呼ぶ。)30にて制御される。ECU30は、マイクロプロセッサ及びその動作に必要なRAM、ROM等の周辺機器を含んだコンピュータユニットであり、所定の制御プログラムに従って各気筒に供給される燃料量やEGR弁8の開度等を制御することにより、エンジン1を目標とする運転状態に制御する。ECU30には、エンジン1の運転状態を判別するために吸気の流量に対応した信号を出力するエアフローメータ31、吸気の温度に対応した信号を出力する吸気温センサ32、コンプレッサ6aよりも下流の吸気の圧力、いわゆる過給圧に対応した信号を出力する過給圧センサ33、及びエンジン1の冷却水の温度に対応した信号を出力する水温センサ34等が接続されている。また、ECU30には、外気の温度に対応した信号を出力する外気温センサ35が接続されている。この他にもECU30には種々のセンサが接続されているが、それらの図示は省略した。
【0021】
図4は、ECU30がエンジン1を始動するために実行する始動制御ルーチンを示している。この制御ルーチンは、エンジン1の運転状態に拘わりなくECU30が動作している間は所定の周期で繰り返し実行される。また、この制御ルーチンは、ECU30が実行する他のルーチンと並行に実行される。この制御ルーチンを実行することにより、ECU30が本発明の制御手段として機能する。
【0022】
この制御ルーチンにおいてECU30は、まずステップS11でエンジン1の状態を取得する。エンジン1の状態としては冷却水温及び吸気の温度等が取得される。また、この処理では、外気の温度も取得される。なお、取得された各温度は、ECU30のROMに所定の期間、例えば数日間記憶される。次のステップS12においてECU30は、所定の始動条件が成立した否かを判定する。始動条件は、例えばイグニッションスイッチがオンの状態に切り替えられた場合に成立する。また、エンジン1の運転中に所定の停止条件が成立するとエンジン1を停止させる、いわゆるアイドルストップ制御が適用されたエンジンでは、このアイドルストップ制御によってエンジン1を停止させているときに運転者によってアクセルペダル又はシフトギアが操作されるなど所定の再始動条件が成立した場合にも始動条件が成立したと判断してもよい。始動条件が不成立と判断した場合は、今回の制御ルーチンを終了する。
【0023】
一方、始動条件が成立したと判断した場合はステップS13に進み、ECU30は吸気通路3、EGR通路7、及びブローバイガス通路9のいずれかの通路において水分が凍結して氷等の凍結物が発生しているか否か判定する。なお、この凍結物には、氷の他にスス等の異物と水との混合物が凍結したものなども含まれる。この判定は、エンジン1の冷却水の温度、外気の温度、及び吸気の温度の少なくともいずれか1つの温度に基づいて行えばよい。例えば、エンジン1の始動時におけるエンジン1の冷却水の温度が予め設定した所定の水温判定値以下の場合に凍結物が発生していると判定すればよい。なお、水温判定値には、例えば0°Cが設定される。また、例えばエンジン1の始動時における外気の温度が所定の外気温判定値以下、又はエンジン1の始動時における吸気の温度が所定の吸気温判定値以下の場合に凍結物が発生していると判定してもよい。なお、外気温判定値及び吸気温判定値には、例えば0°Cが設定される。この他、エンジン1を停止させてからエンジン1の始動が要求されるまでの間にエンジン1の冷却水の温度が0°C以下であった期間と0°Cより高かった期間とを比較し、0°C以下であった期間の方が長い場合に凍結物が発生していると判定してもよい。なお、凍結物が発生しているか否かを判定する方法はこれらの方法に限定されず、周知の種々の判定方法を適用してよい。この処理を実行することにより、ECU30が本発明の凍結判定手段として機能する。凍結物が発生していないと判断した場合はステップS14〜S16をスキップしてステップS17に進む。
【0024】
一方、凍結物が発生していると判断した場合はステップS14に進み、ECU30はベーン退避制御を実行する。このベーン退避制御では、各ベーン18が開位置P2に移動するようにアクチュエータ22の動作が制御される。これにより、ディフューザ部14における吸気の流路の断面積が最大になる。なお、既に各ベーン18が開位置P2に移動していた場合はその状態が維持される。
【0025】
続くステップS15においてECU30は、退避時始動制御を実行する。この退避時始動制御においてECU30は、エンジン1の回転数が0の場合はスタータStにてエンジン1のクランキングを開始する。また、ECU30はエンジン1の回転数がエンジン1が完爆状態を得られたときの回転数よりも大きい場合にはスタータStを停止させ、エンジン1の運転状態をアイドル運転状態に制御する。この際、エンジン1の運転状態は、吸気の流量及び過給圧に基づいてコンプレッサ6aでサージングが発生しないように制御される。図5は、コンプレッサ6aの特性曲線を示している。圧力比は、コンプレッサ6aの入口の圧力とコンプレッサ6aの出口の圧力との比である。破線S1はベーン18が閉位置P1にある場合のコンプレッサ6aのサージラインを示し、破線S2はベーン18が開位置P2にある場合のコンプレッサ6aのサージラインを示している。コンプレッサ6aのサージングは、圧力比及び空気流量で特定されるコンプレッサ6aの作動点がこの図において各サージラインよりも左側の領域にあると発生する。実線Cは、エンジン1が通常の運転状態になるように制御された場合のコンプレッサ6aの作動線を示している。この図に示したようにベーン18が開位置P2にある場合にエンジン1を通常の運転状態で運転すると、図の領域Aにおいてサージングが発生するおそれがある。そこで、ECU30は、コンプレッサ6aの作動点が破線S2よりも右側の領域になるようにエンジン1の運転状態を制御する。具体的には、例えばコンプレッサ6aに流入する空気の流量が増加するようにエンジン1の運転状態を制御する。
【0026】
次のステップS16においてECU30は、退避解除条件が成立したか否か判定する。退避解除条件は、例えば少なくとも吸気通路3、EGR通路7、及びブローバイガス通路9のいずれの通路にもガスが流れており、かつそれら通路3、7、9内にガスが流れ始めてから予め設定した所定時間が経過した場合に成立したと判断される。退避解除条件が不成立と判断した場合はステップS14に戻り、退避解除条件が成立するまでステップS14〜S16を繰り返し実行する。
【0027】
一方、退避解除条件が成立したと判断した場合はステップS17に進み、ECU30は通常始動制御を実行する。通常始動制御においてECU30は、エンジン1の回転数が0の場合は不図示のスタータStにてエンジン1のクランキングを開始する。また、ECU30はエンジン1の回転数がエンジン1が完爆状態を得られたときの回転数よりも大きい場合にはスタータStを停止させ、エンジン1の運転状態をアイドル運転状態に制御する。そして、ECU30は吸気の流量に応じてベーン18の位置を適宜に切り替える。なお、クランキング時やアイドル運転状態では吸気の流量が少ないため、ベーン18は閉位置P1の近くに動かされる。
【0028】
次のステップS18においてECU30は、エンジン1の始動が完了したか否か判断する。エンジン1の始動は、例えばエンジン1の回転数がエンジン1が完爆状態を得られたときの回転数よりも大きくなった場合に完了したと判断される。エンジン1の始動が完了していないと判断した場合はステップS17に戻り、始動が完了するまでステップS17、S18を繰り返し実行する。
【0029】
一方、エンジン1の始動が完了したと判断した場合はステップS19に進み、ECU30は運転状態移行制御を実行する。この運転状態移行制御においてECU30は、スタータStが動作していた場合はスタータStを停止させる。その後、今回の制御ルーチンを終了する。
【0030】
ECU30は、図4に示した制御ルーチンの他に図6に示した制御ルーチンを実行して可動ベーン機構17の動作を制御する。図6に示した可動ベーン制御ルーチンは、エンジン1の運転中に所定の周期で繰り返し実行される。この制御ルーチンにおいてECU30は、まずステップS21でエンジン1の運転状態を取得する。運転状態としては、例えば吸気の流量が取得される。
【0031】
次のステップS22においてECU30は、エンジン1を停止させるべき所定の停止条件が成立したか否か判断する。停止条件は、例えばイグニッションスイッチがオフに切り替えられるなど運転者からエンジン1の停止が要求された場合に成立したと判断される。また、エンジン1が所定のアイドルストップ条件が成立した場合に運転が停止されるいわゆるアイドルストップ制御の対象である場合は、その所定のアイドルストップ条件が成立した場合に停止条件が成立したと判断される。
【0032】
停止条件が不成立と判断した場合はステップS23に進み、ECU30は通常制御を実行する。この通常制御では、吸気の流量等に応じてベーン18の位置が切り替えられる。例えば、吸気の流量が増加するほどベーン18が開位置P2寄りに動かされる。その後、今回の制御ルーチンを終了する。
【0033】
一方、停止条件が成立したと判断した場合はステップS24に進み、ECU30は全開制御を実行する。この全開制御では、ベーン18が開位置P2に動かされる。なお、既にベーン18が開位置P2に動かされていた場合はその状態が維持される。その後、今回の制御ルーチンを終了する。
【0034】
第1の形態の制御装置では、エンジン1の始動時に吸気通路3、EGR通路7、及びブローバイガス通路9のいずれかの通路に凍結物が発生していると判断された場合はベーン18が開位置P2に動かされる。そのため、コンプレッサ6a内に凍結物が流入してもベーン18に凍結物が衝突することを抑制できる。従って、ベーン18が凍結物で破損することを抑制できる。また、第1の制御装置では、エンジン1の停止時にベーン18を開位置P2に動かすので、次の始動時にベーン18が凍結して動かせない状態になっていてもベーン18に凍結物が衝突することを抑制できる。
【0035】
なお、第1の形態においてエンジン1の始動時にベーン18を動かす位置は開位置P2に限定されない。通常始動制御においてベーン18が動かされる閉位置P1寄りの位置よりも開位置P2寄りの位置を適宜に設定してよい。このようにベーン18を開位置P2寄りの位置に動かすことにより、ベーン18間の隙間が大きくなるので、ベーン18に凍結物が衝突することを抑制できる。
【0036】
(第2の形態)
次に図7を参照して本発明の第2の形態に係る制御装置について説明する。図7は、この形態のエンジン1に設けられているターボチャージャ6のコンプレッサ6aの断面を示している。なお、この形態においてもエンジン1については図1が参照される。図7において上述した形態と共通の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
図7に示したようにこの形態では、コンプレッサ6aに上述した形態で示したものとは異なる可動ベーン機構40が設けられている。この可動ベーン機構40は、軸線Ax方向に移動可能に設けられた可動部41と、可動部41を駆動するアクチュエータ42とを備えている。可動部41は、環状のベースプレート43と、そのベースプレート43に設けられた複数(図7では1つのみを示す。)のベーン44とを備えている。複数のベーン44は、同一円周上に等間隔で並ぶようにベースプレート43に設けられている。なお、ベーン44の形状は上述した形態と同様に翼型形状である。
【0038】
この図に示したようにコンプレッサハウジング11のうちディフューザ部14を形成する隔壁45には、各ベーン44に対応して貫通孔45aが設けられている。可動部41は各ベーン44がそれぞれ貫通孔45aに挿入されるように設けられている。アクチュエータ42は、その出力軸42aを軸線Ax方向に伸縮させることにより各ベーン44が隔壁45内に収容される格納位置P11と各ベーン44がディフューザ部14を横切るように隔壁45から突出する突出位置P12との間で可動部41を駆動する。
【0039】
この形態においてもECU30は、第1の形態と同様に図4及び図6の制御ルーチンをそれぞれ実行して可動ベーン機構40の動作を制御する。但し、これらの制御ルーチンにおいてステップS14、S17、S23、及びS24の処理の内容が上述した形態と異なる。この形態では、図4の制御ルーチンのステップS14においてECU30はベーン44が格納位置P11に移動するように可動ベーン機構40の動作を制御する。また、この制御ルーチンのステップS17では、ECU30は吸気の流量に応じてベーン44の位置を切り替える。具体的には、吸気の流量が所定の判定値未満の場合はベーン44が突出位置P12に移動し、吸気の流量がその判定値以上の場合はベーン44が格納位置P11に移動するように可動ベーン機構40の動作を制御する。なお、クランキング時やアイドリング運転の場合は吸気の流量が少ないため、ベーン44は突出位置P12に切り替えられる。
【0040】
図6の制御ルーチンのステップS23では、ECU30はエンジン1の運転状態に応じてベーン44の位置が変更されるように可動ベーン機構40の動作を制御する。例えば、本形態のステップS17と同様に吸気の流量が判定値未満の場合はベーン44が突出位置P12に移動し、吸気の流量がその判定値以上の場合はベーン44が格納位置P11に移動するように可動ベーン機構40の動作を制御する。また、この制御ルーチンのステップS24ではECU30は、ベーン44が格納位置P11に移動するように可動ベーン機構40の動作を制御する。
【0041】
第2の形態に係る制御装置では、エンジン1の始動時に吸気通路3、EGR通路7、及びブローバイガス通路9のいずれかの通路に凍結物が発生していると判断された場合はベーン44が格納位置P11に動かされる。そのため、コンプレッサ6a内に凍結物が流入してもベーン44に凍結物が衝突することを防止できる。従って、ベーン44が凍結物で破損することを抑制できる。また、エンジン1の停止時にはベーン44が格納位置P11に動かされるので、次の始動時にベーン44が凍結して動かせない状態になっていてもベーン44に凍結物が衝突することを防止できる。
【0042】
本発明は、上述した各形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。例えば、本発明が適用される内燃機関は、EGR通路及びブローバイガス通路の両方が吸気通路のうちコンプレッサよりも上流の区間に接続されている内燃機関に限定されない。EGR通路及びブローバイガス通路がコンプレッサよりも上流の区間に接続されていない内燃機関、及びいずれか一方の通路のみがコンプレッサよりも上流の区間に接続されている内燃機関に本発明を適用してもよい。
【0043】
また、本発明が適用される内燃機関は、ターボチャージャが設けられている内燃機関に限定されない。本発明は、可動ベーン機構を有するコンプレッサが吸気通路に設けられている種々の内燃機関に適用してよい。この内燃機関においてコンプレッサは電動モータやエンジン1のクランク軸によって回転駆動されてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 内燃機関
2 機関本体
3 吸気通路
3a コンプレッサよりも上流の区間
6a コンプレッサ
7 EGR通路
9 ブローバイガス通路
12 コンプレッサホイール
17 可動ベーン機構
18 ベーン
19 ピン(軸部)
30 エンジンコントロールユニット(凍結判定手段、制御手段)
40 可動ベーン機構
44 ベーン
P11 格納位置
P12 突出位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動ベーンを動かすことによりコンプレッサホイールから送り出される吸気の流路の断面積を変更可能な可動ベーン機構を有するコンプレッサが吸気通路に設けられた内燃機関に適用され、
前記内燃機関の始動時に前記吸気通路及び前記吸気通路に接続されている通路の少なくともいずれか1つの通路において水分が凍結しているか否かを判定する凍結判定手段と、前記凍結判定手段が水分が凍結していると判定した場合は前記凍結判定手段が水分が凍結していないと判定した場合と比較して前記内燃機関の始動時に前記流路の断面積が大きくなるように前記可動ベーン機構の動作を制御する制御手段と、を備えている内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記凍結判定手段は、前記内燃機関の始動時に前記内燃機関の冷却水の温度が所定の水温判定値以下、前記内燃機関の始動時に外気の温度が所定の外気温判定値以下、及び前記内燃機関の始動時に前記内燃機関の吸気の温度が所定の吸気温判定値以下のうちの少なくともいずれか1つの条件が成立した場合に、前記内燃機関の始動時に前記吸気通路及び前記吸気通路に接続されている通路の少なくともいずれか1つの通路において水分が凍結していると判定する請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記内燃機関が停止するときに前記流路の断面積が最大になるように前記可動ベーン機構の動作を制御する請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記流路は、前記コンプレッサホイールの径方向外側に全周に亘って設けられ、
前記可動ベーンは、前記流路に周方向に等間隔で複数設けられ、
前記可動ベーン機構は、各可動ベーンに設けられた軸部を中心にそれら複数の可動ベーンを回転させて可動ベーン間の隙間の大きさを変化させることにより前記流路の断面積を変更する請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記可動ベーンは、前記流路内に突出する突出位置とその流路を形成する壁面内に収容される格納位置との間で移動可能に設けられ、
前記制御手段は、前記凍結判定手段が水分が凍結していると判定した場合に前記可動ベーンが前記格納位置に動かされるように前記可動ベーン機構の動作を制御する請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記内燃機関が停止するときに前記可動ベーンが前記格納位置に動かされるように前記可動ベーン機構の動作を制御する請求項5に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記内燃機関には、前記吸気通路に接続されている通路として、前記吸気通路のうち前記コンプレッサよりも上流の上流区間と前記内燃機関の排気通路とを接続するEGR通路、及び前記内燃機関の機関本体から前記上流区間にブローバイガスを導くためのブローバイガス通路の少なくともいずれか一方の通路が設けられている請求項1〜6のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−179477(P2011−179477A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47119(P2010−47119)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】