説明

内燃機関の油路構造

【課題】簡単な構造で油路のシール性を高めると共に、油路のレイアウトの制約を低減し得る。
【解決手段】2方向弁24から各分岐路36a・37aが接続された1本のオイル供給路が大径の第6油路36と小径の第7油路37とその間の圧入部44とからなり、圧入部に圧入固定されたシールボール43により分断された2方向の独立した油路を形成する。ドリル加工とシールボールの圧入とにより2方向の油路を容易に形成することができ、加工作業の効率が向上すると共に、別個に油路を設ける必要が無いことから、油路を配管するスペースの省スペース化を促進することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の内部の複数の部位にオイルを供給するべく設けられた内燃機関の油路構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の動弁機構等に対する潤滑油や作動油をオイルポンプから供給しまたはオイルパンに回収するための油路を、シリンダブロック等の壁部分に適所で互いに連通する複数本の孔を形成して配管するようにしたものが公知である。そのように形成する孔において、外壁面から内側に向けてドリル加工する場合があり、その開口部を閉塞して油路の閉塞端とするために球状のシールボールを圧入してシールするようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−9371号公報
【特許文献2】特許第3748643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、シールボールの圧入構造では油圧が高い場合にはシールボールが抜け落ちる虞が考えられるため、上記特許文献1では大小のシールボールを用いた二重のシール構造としている。しかしながら、二重にシールしたとしても油路の上流側に位置するシールボールが抜け落ちる可能性が低くなるのではなく、加えて二重のシールが必要なため、構造が煩雑化し、作業工数が増大するという問題がある。
【0005】
また、ボルトを用いて1本の油路を分断する構造としたものがある(例えば特許文献2参照)。しかしながら、そのような構造では、そもそも吸気弁等の開弁タイミングやリフト量を可変制御する可変バルブタイミング機構等を設けた内燃機関では、複数の制御弁により油路の本数が増大する場合があり、レイアウトに制約を受けるという問題があるが、さらに外部から挿入可能な位置にボルトの挿入部を設けることが必要となり、非常に困難な上に本体のコンパクト化を阻害するため、より簡素なシール構造が臨まれることになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決して、簡単な構造で油路のシール性を高めると共に、油路のレイアウトの制約を低減し得るようにするために、本発明に於いては、内燃機関の内部の複数の部位にオイルを供給するべく当該内燃機関の壁部に設けられた内燃機関の油路構造であって、オイルを前記複数の部位に供給する油路の上流側に設けられた1本のオイル供給路(36・44・37)と、油圧発生手段(23)から送られてくるオイルを前記オイル供給路に流入させるべく前記オイル供給路に連通する第1分岐路(36a)と、前記油圧発生手段から送られてくるオイルを前記オイル供給路に流入させるべく前記第1分岐路とは異なる位置で前記オイル供給路に連通する第2分岐路(37a)とを有し、前記オイル供給路を前記第1分岐路に連通する側と前記第2分岐路に連通する側とに分断するべく、前記オイル供給路内の前記第1分岐路と前記第2分岐路との各連通位置間にシール体(43)が固設されているものとした。
【0007】
これによれば、1本のオイル供給路内に固設されたシール体により分断したことから、1本のオイル供給路を互いに異なる方向にオイルを流す独立した2本の油路として用いることができるため、2方向にオイルを供給するようにした油路構造を簡略化し得ると共に、シール体を挿入固定するための別の装着孔等を設ける必要が無いため油路の加工を容易に行うことができる。また、オイル供給路のシール体を挟んで両側にオイルが供給されることから、シール体に対して両側から圧が加わるため、シール体の圧入位置からの脱落を防止できる。ここで、シール体としては、球状のシールボールを始め、円柱状や円垂状のもの等や、油路の断面形状に合わせて角柱や角錐状のものや、いもねじ等のオイル供給路内に固設可能なものであれば良く、特に形状を限定するものではない。
【0008】
特に、前記シール体は、前記オイル供給路内に圧入されており、前記オイル供給路は、一端側から前記シール体を挿入するための大径部(36)と、前記大径部の前記一端側とは相反する側に前記シール体を圧入するための圧入部(44)と、前記圧入部の前記大径部とは相反する側に前記シール体を係止するべく前記シール体よりも小径の小径部(37)とを有すると良い。これによれば、大径部に挿入されたシール体が圧入部に圧入されて固定されるが、さらに小径部との境界で係止されることによりシール体が位置決めされるため、シール体の挿入固定の作業性が良い。また、シール体が小径部側には入り込まず、万一脱落しても、その脱落方向は大径部側であり、固定作業における挿入し始め側となることから、その回収作業が容易になる。
【0009】
あるいは、吸排気弁の少なくとも一方のバルブタイミングを可変にする可変バルブタイミング機構(10)と、前記可変バルブタイミング機構の作動を制御する第1制御弁(24)及び第2制御弁(25)と、前記第1制御弁から前記可変タイミング機構に作動油を供給するべく内燃機関の壁部に設けられた第1作動油供給路(37a・37)と、前記第1制御弁から前記第2制御弁を介して前記可変タイミング機構に作動油を供給するべく前記壁部に設けられた第2作動油供給路(36a・36)とを有する内燃機関の油路構造であって、前記第2作動油供給路の前記第1制御弁から前記第2制御弁に至る接続油路(36)と前記第1作動油供給路の一部(37)とが互いに同軸に設けられた1本のオイル供給路(36・44・37)を有し、かつ前記オイル供給路を前記接続油路側と前記第1作動油供給路側とに分断するべく、前記オイル供給路内の前記接続油路と前記第1作動油供給路との間にシール体が固設されているものとした。
【0010】
これによれば、可変バルブタイミング機構として、例えば高低のカムを切り替える第1及び第2制御弁を設ける場合があり、そのような場合に各制御弁に応じた複数の油路をそれぞれ別個に形成すると、油路の本数が増えて加工が煩雑化してしまう。それに対して、1本のオイル供給路をシール体により分断したことから、上記と同様に1本のオイル供給路を互いに異なる方向にオイルを流す油路として用いることができるため、2つの制御弁に応じて2方向にオイルを供給するようにした油路構造を簡略化し得ると共に、油路の加工を容易に行うことができると共に、同じくシール体の抜け止め効果も奏し得る。
【0011】
また、前記第1制御弁と前記第2制御弁とがシリンダヘッドの隣り合う壁に対応する位置にそれぞれ取り付けられ、前記オイル供給路が前記シリンダヘッドの壁部に形成されていると良い。これによれば、シリンダヘッドの隣り合う壁部が略直交するように形成されている場合、それぞれに対応する位置に取り付けられた各制御弁からの油路は互いに交差するようになることから、それぞれを1本のオイル供給路に接続し、その両接続間でシール体により分断することにより、1本のオイルで2方向の油路を形成することができ、油路構造を簡略化し得る。さらに、前記シール体は、前記オイル供給路内に圧入されており、前記オイル供給路は、一端側から前記シール体を挿入するための大径部(36)と、前記大径部の前記一端側とは相反する側に前記シール体を圧入するための圧入部(44)と、前記圧入部の前記大径部とは相反する側に前記シール体を係止するべく前記シール体よりも小径の小径部(37)とを有すると良く、これによれば、上記と同様にシール体が位置決めされ、シール体の挿入固定の作業性が良く、またシール体が小径部側には入り込まず、万一脱落しても、その脱落方向は大径部側であり、固定作業における挿入し始め側となることから、その回収作業が容易になる。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明によれば、1本のオイル供給路をオイル供給路内に固設されたシール体により分断することから、1本の油路の形成で2方向の独立した油路を形成することができ、複数本の油路を1本の油路から容易に形成することができ、加工作業の効率が向上すると共に、別個に油路を設ける必要が無いことから、油路を配管するスペースの省スペース化を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明が適用されたエンジンの要部概略全体側面図である。
【図2】図1の矢印II側から見た要部正面図である。
【図3】ロッカアームを示す要部拡大図である。
【図4】可変バルブタイミング機構の低速域における説明図である。
【図5】可変バルブタイミング機構の中速域における説明図である。
【図6】可変バルブタイミング機構の高速域における説明図である。
【図7】2方向弁及び3方向弁の取付要領を示す斜視図である。
【図8】本発明に基づく油路構造の要部を示す斜視図である。
【図9】油路のシールボールにより分断された部分を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明が適用されたエンジンの要部概略全体側面図であり、図2は図1の矢印II線から見た要部正面図である。図示例のエンジン1は直列4気筒エンジンであるが、適用対象のエンジンの気筒配置や気筒数は任意であって良い。なお、以下の説明における上下左右は、便宜上図1・図2に示された方向に基づくものとする。
【0015】
図示例のエンジン1では、シリンダブロック2と、シリンダブロック2の上面に積層状態に組み付けられたシリンダヘッド3と、シリンダブロック2の下面に積層状態に組み付けられたロアブロック4とによりエンジン本体が構成されている。また、シリンダヘッド3の上面にはヘッドカバー5が取り付けられ、ロアブロック4の下面にはオイルパン6が取り付けられている。
【0016】
エンジン本体(シリンダブロック2・シリンダヘッド3・ロアブロック4)のクランク軸7の軸線方向の一端側には、図2に示されるように、タイミングトレーン機構としてのタイミングチェーン8が設けられている。タイミングチェーン8は、クランク軸7の軸線方向端部(エンジン本体から突出した部分)に固着されたプーリ7aと、ヘッドカバー5内に受容されているカム軸(図3の16a・16b)に固着されたプーリ(図示せず)とに亘って巻き掛けられている。なお、タイミングチェーン8をガイドするチェーンガイド9aと、タイミングチェーン8に所定の張力を付与するテンショナ9bとがエンジン本体に設けられている。
【0017】
本発明が適用された図示例のエンジンは、複数の並設されたロッカアームを選択的に連結または非連結状態にする切替機構としての可変バルブタイミング機構10を有するものであり、その構造の概略について図3〜図6を参照して説明する。図3に示されるように、シリンダヘッド3には一対の吸気弁11と一対の排気弁12とが互いに対向して配設されており、それぞれ対応する各ロッカアーム13・14を介してカム駆動されて開閉弁する。
【0018】
本図示例では、吸気弁11を3ステージ(低・中・高速)に分けてリフト量及び開弁タイミングを制御するものであり、互いに異なるカムプロフィールからなる低速カム15a・15bと高速カム15cと休止カム15dとが1本の吸気カム軸16aに一体的に設けられている。なお、排気弁12に対しては1種類のカムプロフィールからなる排気カム17が排気カム軸16bに一体的に設けられている。
【0019】
吸気弁用のロッカアーム13は、ロッカアーム軸17aに枢支されており、図4〜図6に示されるように、一方の低速カム15aによりカム駆動されかつ一方の吸気弁11の軸線方向端に当接するプライマリロッカアーム13aと、他方の低速カム15bに当接してカム駆動されるセカンダリ補助ロッカアーム13bと、高速カム15cに当接してカム駆動される高速ロッカアーム13cと、休止カム15dに当接してカム駆動されかつ他方の吸気弁11の軸線方向端に当接するセカンダリロッカアーム13dとにより構成されている。
【0020】
また、両端のロッカアーム13a・13bには互いに対向する向きに開口しかつ同一孔径の各有底筒孔18a・18bが設けられており、それらの間に配置されている2つのロッカアーム13c・13dには各有底筒孔18a・18bと同一径の各貫通孔18c・18dが設けられている。それら有底筒孔18a・18bと貫通孔18c・18dとは各ロッカアーム13a〜13dの所定の揺動角度で互いに同軸に整合し得る。
【0021】
両端のロッカアーム13a・13bの各有底筒孔18a・18bと高速ロッカアーム13cの貫通孔18cとには、それぞれの孔の軸線方向長さと同一長さの各連結ピン19a・19b・19cが軸線方向に摺動自在に設けられている。一方、セカンダリロッカアーム13dの貫通孔18dには、直列の一対の短軸ピン19dが軸線方向に摺動自在に設けられている。両短軸ピン19d間には互いに離反する向きに付勢する圧縮コイルばね20が介装されている。これら各ピン19a〜19dはそれぞれ同一径に形成されている。
【0022】
また、ロッカアーム軸17aには、図3に併せて示されるように、軸線方向に延在しかつ互いに並列な3本の油路21a・21b・21cが設けられている。1つの油路21aがプライマリロッカアーム13aの有底筒孔18aの底部側と連通し、他の1つの油路21bがセカンダリ補助ロッカアーム13bの有底筒孔18bの底部側と連通している。残りの1つ潤滑油路21cとして用いられる。
【0023】
両油路21a・21bからの油圧が対応する各ロッカアーム13a・13bに供給されない状態では、一対の短軸ピン19dが圧縮コイルばね20により互いに離反する向きにばね付勢され、両端の各連結ピン19a・19bがそれぞれの有底筒孔18a・18bの各底面に当接する。この状態では、図4に示されるように、各ピン19a〜19dがそれぞれ対応する各孔18a〜18dに埋没状態になり、各ロッカアーム13a〜13dはそれぞれ独立に揺動し得る。それに対して、各油路21a・21bを介して油圧が各有底筒孔18a・18bの底部側に選択的に供給されることにより、各連結ピン19a・19bの油圧が供給された方が押し出される向きに変位する。
【0024】
これらの各状態により上記した3つのステージが実現される。その油圧回路の概略について以下に説明する。この油圧回路により、内燃機関の内部の複数の部位にオイルを供給するものが構成されている。
【0025】
油圧発生手段してのオイルポンプ23の吐出口に第1制御弁としての2方向弁24の第1ポートPa1が接続されている。第1ポートPa1は、2方向弁24の非通電状態で第2ポートPa2と連通する。その第2ポートPa2には第2制御弁としての3方向弁25の第1ポートPb1が接続されている。2方向弁24の第3ポートPa3はドレン接続されており、2方向弁24の非通電状態で第3ポートPa3と連通する第4ポートPa4は、油路22aを介してロッカアーム軸17aの油路21aと接続されている。
【0026】
3方向弁25の第2ポートPb2は油路22bを介してロッカアーム軸17aの油路21bと接続されおり、3方向弁25の第3ポートPb3はドレン接続されている。非通電状態では第2ポートPb2と第3ポートPb3とが連通する。また、3方向弁25はパイロット弁であり、非通電状態ではパイロット圧がかからない状態となり、図4に示されるようになる。
【0027】
図4に示される状態では、各ロッカアーム13a〜13dがそれぞれ独立して揺動可能であり、一方の吸気弁11がプライマリロッカアーム13aを介して対応する低速カム15aにより駆動されるが、他方の吸気弁11はセカンダリロッカアーム13dを介して対応する休止カム15dにより駆動される。したがって1バルブ休止状態となり、このバルブ休止ステージとしてはエンジンの低速域での運転状態であって良い。
【0028】
次に、非通電状態の2方向弁24の第2ポートPa2に生じる油圧がパイロット圧として加わり、かつ3方向弁25が通電状態の場合には、図5に示されるように、3方向弁25の第1ポートPb1と第2ポートPb2とが連通状態になり、オイルポンプ23から吐出される作動油が油路21b・22bを介して有底筒孔18bに入り、連結ピン19bがセカンダリロッカアーム13d内に押し出される。このとき、反対側の連結ピン19aは有底筒孔18aの底面に当接状態であり、その連結ピン19aに連結ピン19cが当接し、その連結ピン19cに一対の短軸ピン19dの隣接する方が当接している。そして、一対の短軸ピン19dの他方(連結ピン19bに隣接している方)が圧縮コイルばね20のばね付勢力に抗して連結ピン19cに当接状態の方に当接するまで変位し、その変位量分だけ連結ピン19bがセカンダリロッカアーム13dの貫通孔18dに没入する。
【0029】
これにより、セカンダリ補助ロッカアーム13bとセカンダリロッカアーム13dとが結合状態になり、セカンダリ補助ロッカアーム13bに摺接している低速カム15bのカムプロフィールが休止カム15dよりも大きいため、上記休止状態だった吸気弁11が一体化された両ロッカアーム13b・13dを介して低速カム15bにより駆動される。一方の吸気弁11は、上記と同じくプライマリロッカアーム13aを介して低速カム15aにより駆動されるため、両吸気弁11が低速カム13a・13bにより駆動される。このステージとしてはエンジンの中速域での運転状態であって良い。
【0030】
2方向弁24の通電状態では、第1ポートPa1と第4ポートPa4とが連通し、第2ポートPa2と第3ポートPa3とが連通する。したがって、2方向弁24の通電状態では、図6に示されるように、第4ポートPa4に油圧が生じ、その油圧は油路21a・22a介して有底筒孔18aに入り、連結ピン19aが高速ロッカアーム13c内に押し出される。
【0031】
このとき、反対側の連結ピン19bは有底筒孔18bの底面に当接状態であり、その連結ピン19bに一対の短軸ピン19dの隣接する方が当接している。そして、一対の短軸ピン19dの他方(連結ピン19cに隣接している方)が、圧縮コイルばね20のばね付勢力に抗して、一対の短軸ピン19dの連結ピン19bに当接している方に当接するまで変位し、その変位量分だけ連結ピン19aが高速ロッカアーム13cの貫通孔18cに没入すると共に連結ピン19cもセカンダリロッカアーム13dの貫通孔18dに没入する。
【0032】
これにより、プライマリロッカアーム13aとセカンダリロッカアーム13dとが高速ロッカアーム13cと結合状態になり、高速ロッカアーム13cに摺接している高速カム15cのカムプロフィールが両ロッカアーム13a・13dよりも大きいため、両吸気弁11が一体化された両ロッカアーム13a・13dを介して高速カム15cにより駆動される。このステージとしてはエンジンの高速域での運転状態であって良い。このようにして、低・中・高の各速度域で吸気弁11のリフト量及び開弁タイミングを制御することができる。
【0033】
図7に示されるように、エンジン本体(2・3・4)のタイミングチェーン8が設けられている端面には、タイミングチェーン8等を覆うチェーンカバー26が取り付けられている。チェーンカバー26は、エンジン本体(2・3・4)の幅方向(図2の左右方向)の両側縁部に沿う複数箇所でボルト止めにてエンジン本体(2・3・4)に取り付けられている。
【0034】
上記した3方向弁25はエンジン本体(2・3・4)のシリンダヘッド3の壁面の1つである左側面におけるチェーンカバー26に近接した位置に例えば3本の固定ボルト27により固設されて取り付けられている。2方向弁24は、チェーンカバー26の表面(クランク軸7の軸線方向外側から見た面)における左右両側部の一方の側部に近接した位置に例えば3本の固定ボルト28により固設されている。これにより、2方向弁24は、シリンダヘッド3の壁面の3方向弁25が取り付けられた壁面に隣り合う壁面に対応する位置に取り付けられている。なお、両弁24・25は、吸気ポート3a側(吸気側)に配設されている。
【0035】
次に、図示例のエンジンにおける油路構造の要部について図8を参照して以下に説明する。なお、以下に説明する油路はシリンダブロック2(シリンダヘッド3も含む)の壁部に形成されている。クランク軸7に連動するように設けられているオイルポンプ23の吐出口からシリンダヘッド3側に向けて立ち上がるように延出された第1油路31が設けられ、その第1油路31が接続された第2油路32がクランク軸7と平行に延在するように設けられている。第2油路32には、シリンダヘッド3側に延出された第3油路33と、シリンダブロック2の側面(2方向弁24の取り付け面)に向けて延出された第4油路34とが接続されている。また、第4油路34におけるシリンダブロック2の側面近傍から分岐してシリンダヘッド3側に立ち上がるように延出された第5油路35と、第5油路35から分岐してチェーンカバー26側に延出されて2方向弁24の第1ポートPa1と連通する流路としての分岐路35aとが設けられている。
【0036】
また、第1制御弁としての2方向弁24の第2ポートPa2と第2制御弁としての3方向弁25の第1ポートPb1とを連通する第2作動油供給路が、シリンダブロック3の側面から内部に向かう接続油路としての第6油路36と、第6油路36から分岐してL字形に曲折してチェーンカバー26側に延出された流路としての第1分岐路36aとにより構成されている。
【0037】
また、第6油路36からシリンダブロック2の内部に向けて同軸に延出されかつシリンダヘッド3側にL字形に曲折された第7油路37が設けられ、第7油路37から分岐してチェーンカバー26側に延出された流路としての第2分岐路37aが設けられている。第2分岐路37aは2方向弁24の第4ポートPa4に接続され、第7油路37はロッカアーム軸17aの油路21aと接続される。第2分岐路37aと第7油路37とにより、第1制御弁としての2方向弁24から可変バルブタイミング機構10へ作動油を供給する第1作動油供給路が構成されている。
【0038】
また、シリンダブヘッド3の左側面における3方向弁25の第2ポートPb2に対応する位置からシリンダヘッド3の内部に向けて延出されかつヘッドカバー3側にL字形に曲折された第8油路38が設けられている。第8油路38は、ロッカアーム軸17aの油路21bと接続される。
【0039】
なお、第3油路33の下流側(図8における上側)には、シリンダヘッド3内のカム機構の潤滑に用いられる潤滑油が通るストレーナ41及び流量調整弁42が配設されている。
【0040】
オイル供給路は、互いに同軸に設けられた第6油路36と第7油路37と、2方向弁24と連通する2本の分岐路36a・37aの各連通(接続)位置間にシール体としてのシールボール43を圧入にて固設するための圧入部44とにより構成されており、その詳しい構造について、図9を参照して以下に説明する。
【0041】
図9に示されるように、オイル供給路を構成する大径部として第6油路36が形成され、第7油路37は小径部として形成され、両油路36・37間に所定の軸線方向長さの圧入部44が形成され、それぞれ同軸に設けられている。これら両油路36・37及び圧入部44は、径違いのドリルにより同軸に加工することができ、両油路36・37を別々に形成する場合に対して加工作業が容易となる。そして、圧入部44にシールボール43が圧入されて固定されており、第6油路36と第7油路37とが異なる油路として分断されている。なお、オイル供給路の加工は、上記ドリルによる孔加工に限られるものではなく、例えば鋳抜き加工も可能である。
【0042】
大径部としての第6油路36は、図の二点鎖線で示されるようにシリンダヘッド3の外方からシールボール43を挿入しかつ奥に向けて押し込むことが可能なように、シールボール43の直径よりもある程度大きな内径で形成されている。この大径部としての第6油路36の形状は、シールボール43の挿入装着作業において工具等の挿入を可能にするために工具等が挿入される部分をより大きくするようにして、全体で異なる断面形状となるように形成されていても良い。また、圧入部44は、シールボール43を公知のしまりばめとなるはめ合い公差となる内径に設定されていて良いが、例えばシリンダヘッド3がアルミニウム材で形成され、シールボール43が鉄材で形成されている場合には、両部材の弾性変形特性を考慮した内径で形成されていて良い。小径部としての第7油路37は、圧入部44よりもある程度小さな内径に形成されている。これにより、圧入部44と第7油路37との径違いによる肩面の内縁45によりシールボール43が係止され、その係止状態によりシールボール43が位置決めされる。
【0043】
このように1本の油路として形成されたオイル供給路がシールボール43により分断されていることにより、2方向弁24から、第2分岐路37aを介して第7油路37に送り込まれた作動油は図の矢印Aに示されるようにシリンダヘッド3の内方に向けて流れ、第1分岐路36aを介して第6油路36に送り込まれた作動油は図の矢印Bに示されるようにシリンダヘッド3の外方に流れる。これにより、2方向へオイルを流す2本の油路が必要な場合に、1本のオイル供給路(36・44・37)を加工するという簡単な加工を行い、かつその中間部にシールボール43を圧入固定するという簡単な作業で2方向の独立した油路を設けることができ、配管のレイアウトに制約を受ける場合等に有効である。
【0044】
また、シールボール43が圧入部44に対して緩いはめ合い状態になって圧入部44から脱落するようになっても、第7油路37側への移動を阻止するようにシールボール43と内縁45とが係止するのに十分な内径で第7油路37が形成されている。これにより、万一シールボール43が圧入部44から脱落しても、その場合には大径の第6油路36側に移動するようになるため、シールボール43の取り出し作業が容易である。
【0045】
また、第6及び第7油路36・37には高圧の作動油が流れるようになっており、これにより、シールボール43を挟んでその両側に間欠的に高油圧が作用するため、シールボール43のいずれか一方からのみ高圧油が作用するのではないため、シールボール43の脱落が好適に防止される。
【0046】
なお、図示例ではシールボール43を用いたが、球状に限られるものではなく、例えば円柱状や円垂状のもの等や、油路の断面形状が多角形の場合にはその断面形状に合わせて角柱や角錐状のもの等が適用可能であり、オイル供給路内の固設も圧入に限られず、例えば接着による固設も可能である。また、いもねじ等をねじ込んで固設することもでき、シール体としては、オイル供給路内に固設可能なものであれば良く、特に形状を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明にかかる内燃機関の油路構造は、種々のエンジンに適用可能であり、例えばクランク軸を鉛直方向とした船外機などのような船舶推進機用エンジンにも適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 可変バルブタイミング機構(切換機構)
23 オイルポンプ(油圧発生手段)
36 第6油路(オイル供給路・第2作動油供給路)
36a 第1分岐路
37 第7油路(オイル供給路・第1作動油供給路)
37a 第2分岐路
43 シールボール(シール体)
44 圧入部(オイル供給路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の内部の複数の部位にオイルを供給するべく当該内燃機関の壁部に設けられた内燃機関の油路構造であって、
オイルを前記複数の部位に供給する油路の上流側に設けられた1本のオイル供給路と、油圧発生手段から送られてくるオイルを前記オイル供給路に流入させるべく前記オイル供給路に連通する第1分岐路と、前記油圧発生手段から送られてくるオイルを前記オイル供給路に流入させるべく前記第1分岐路とは異なる位置で前記オイル供給路に連通する第2分岐路とを有し、
前記オイル供給路を前記第1分岐路に連通する側と前記第2分岐路に連通する側とに分断するべく、前記オイル供給路内の前記第1分岐路と前記第2分岐路との各連通位置間にシール体が固設されていることを特徴とする内燃機関の油路構造。
【請求項2】
前記シール体は、前記オイル供給路内に圧入されており、
前記オイル供給路は、一端側から前記シール体を挿入するための大径部と、前記大径部の前記一端側とは相反する側に前記シール体を圧入するための圧入部と、前記圧入部の前記大径部とは相反する側に前記シール体を係止するべく前記シール体よりも小径の小径部とを有することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の油路構造。
【請求項3】
吸排気弁の少なくとも一方のバルブタイミングを可変にする可変バルブタイミング機構と、前記可変バルブタイミング機構の作動を制御する第1制御弁及び第2制御弁と、前記第1制御弁から前記可変タイミング機構に作動油を供給するべく内燃機関の壁部に設けられた第1作動油供給路と、前記第1制御弁から前記第2制御弁を介して前記可変タイミング機構に作動油を供給するべく前記壁部に設けられた第2作動油供給路とを有する内燃機関の油路構造であって、
前記第2作動油供給路の前記第1制御弁から前記第2制御弁に至る接続油路と前記第1作動油供給路の一部とが互いに同軸に設けられた1本のオイル供給路を有し、かつ前記オイル供給路を前記接続油路側と前記第1作動油供給路側とに分断するべく、前記オイル供給路内の前記接続油路と前記第1作動油供給路との間にシール体が固設されていることを特徴とする内燃機関の油路構造。
【請求項4】
前記第1制御弁と前記第2制御弁とがシリンダヘッドの隣り合う壁に対応する位置にそれぞれ取り付けられ、
前記オイル供給路が前記シリンダヘッドの壁部に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の油路構造。
【請求項5】
前記シール体は、前記オイル供給路内に圧入されており、
前記オイル供給路は、一端側から前記シール体を挿入するための大径部と、前記大径部の前記一端側とは相反する側に前記シール体を圧入するための圧入部と、前記圧入部の前記大径部とは相反する側に前記シール体を係止するべく前記シール体よりも小径の小径部とを有することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の内燃機関の油路構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−87647(P2012−87647A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233588(P2010−233588)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】