説明

内燃機関及び内燃機関のEGR方法

【課題】内燃機関において、触媒を用いる後処理システムとEGRシステムの両方を含めたNOx浄化システムの中で、単純なロジックかつ低コストで、触媒のNOx浄化率とEGRによるNOx抑制効果を総合的に考慮して、最適なEGRガス量でEGRして、全体として高いNOx低減性能を発揮する内燃機関及びその制御方法を提供する。
【解決手段】排気通路に配置され、触媒を用いた排気ガス浄化装置と、EGRを制御する制御装置を備えた内燃機関において、内燃機関の始動直後で触媒温度Tcが、予め設定した第1温度T1以下の第1温度域にある場合に、目標EGRガス量を減少させ、触媒温度が、第1温度T1より高い予め設定した第2温度以下の第2温度域にある場合に、目標EGRガス量を維持し、触媒温度Tcが、第2温度T2より高い第3温度域にある場合に、目標EGRガス量を増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単純なロジックかつ低コストで、後処理システムの触媒のNOx浄化率とEGRによるNOx浄化率を総合的に考慮して、最適なEGRガス量でEGRして、全体として高いNOx低減性能を発揮することができる内燃機関及び内燃機関のEGR方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるディーゼル機関等の内燃機関においては、NOxに関する排ガス規制を満足するための処理装置として、選択還元型触媒(SCR触媒:Selective Catalytic Reduction)に代表されるNOx浄化触媒(DeNOx触媒)が一般的に使用されてきている。しかしながら、このNOx浄化触媒のNOx低減効果は、触媒の温度の影響を大きく受けるため、内燃機関の始動直後の低温状態においては、NOx低減効果が十分に得られないという問題がある。
【0003】
一方、NOxを低減する方策として排気ガスを循環させて、筒内の酸素濃度を減少させ燃焼を緩慢にしてNOxを低減させるEGR(排気再循環:Exhaust Gas Recirculation)が知られている。このEGRでは、EGR通路を排気通路から吸気通路に接続して、このEGR通路に設けたEGRバルブでEGRガス量を調整する外部EGRが採用されてきたが、この外部EGRとは別の内部EGRという方法があり、近年研究が進められ、導入が検討されている。
【0004】
この内部EGRのひとつである排気バルブ再開弁(2EVO:2nd Exhaust Valve Opening)を用いる方法では、可変動弁系を用いて、排気弁自体を再開弁させることで、又は、排気バルブとは別に設けた第2の排気弁である再開弁を吸気バルブ開弁中に再開弁させることで、筒内(シリンダ内)に排気ガスを残留させている。この排気バルブ再開弁のバルブプロファイルの一例を図2に示す。
【0005】
これに関連して、触媒が不活性状態にあるときに、可変動弁機構の動作を変更して残留ガス量(内部EGR量)を増加させて、燃焼室の空燃比をよりリッチ側に設定して排気ガス中の一酸化炭素ガスを増加させて触媒の酸化促進を行うことで、触媒の温度を上昇させる圧縮自着火運転可能なエンジンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、外部EGRでも内部EGRでも、EGRではNOxを低減させるために、筒内の酸素濃度を減少させ燃焼を緩慢にするので、筒内の燃焼温度が低下してしまう。その結果、排気通路に設けた触媒が暖機されていない状態でEGRを用いると触媒の昇温が遅れてしまうという問題がある。そのため、EGRと触媒を用いた後処理システムを併用する場合には、触媒の暖機が十分でない状態で、多量の排気ガスを再循環させるEGRを行うと、触媒の昇温が遅れ、結果としてNOx排出量が増加してしまう。
【0007】
従って、最適なEGR率は、内燃機関のエンジン回転速度や負荷条件だけでなく、これらに加えて、触媒の温度も考慮して決める必要があり、更なる低エミッションと燃費向上を同時に達成するためには、後処理システムの触媒の温度の状態を含めた制御ロジックを作成する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−257331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関において、触媒を担持した排気ガス処理装置を用いる後処理システムとEGRシステムの両方を含めたNOx浄化システムの中で、単純なロジックかつ低コストで、後処理システムの触媒のNOx浄化率とEGRによるNOx抑制効果を総合的に考慮して、最適なEGRガス量でEGRして、全体として高いNOx低減効果を発揮することができる内燃機関及びその制御方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明の更なる目的は、内燃機関の後処理システムの触媒の温度が低い状態であってもNOxの大量排出を防ぎながら触媒を迅速に昇温でき、しかも、高回転、高負荷の際には触媒の過度の昇温を防ぎながら、EGRによる高いNOx抑制効果を維持することができる内燃機関及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための本発明の内燃機関は、排気通路に配置され、触媒を用いた排気ガス浄化装置と、EGRを制御する制御装置を備えた内燃機関において、前記制御装置が、内燃機関の始動直後で触媒温度が、予め設定した第1温度以下の第1温度域にある場合に、目標EGRガス量を減少させる補正を行い、前記触媒温度が、前記第1温度より高い予め設定した第2温度以下の第2温度域にある場合に、目標EGRガス量を維持し、前記触媒温度が、前記第2温度より高い第3温度域にある場合に、目標EGRガス量を増加させる補正を行う制御をするように構成される。つまり、後処理システムである排気ガス浄化装置の触媒の温度に着目し、この触媒の温度を考慮して、EGR量を制御する。
【0012】
この構成によれば、内燃機関と後処理システムの両方を含めた系の中で、単純なロジックかつ低コストで、内燃機関の後処理システムの触媒のNOx浄化率とEGRによるNOx抑制効果を総合的に考慮して、最適なEGRガス量でEGRできて、全体として高いNOx低減効果を発揮することができる。
【0013】
また、この構成によれば、触媒温度が第1温度域で、触媒が冷間状態にある場合は、目標EGRガス量を減少させて筒内の燃焼温度の低下を回避することができ、触媒温度を触媒によるNOx浄化性能が低い温度からNOx浄化性能が高くNOx浄化が効率良く行える活性化温度以上に、迅速に昇温させることができる。
【0014】
また、触媒温度が第2温度域で、触媒が最高浄化率を得ることができる状態にある場合は、目標EGRガス量を維持して最適なEGR率とし、筒内の燃焼温度を最適に維持しながら、EGRによるNOx抑制効果と触媒の高いNOx浄化性能により、高いNOx低減効果を発揮することができる。
【0015】
更に、触媒温度が第3温度域で、触媒が過度に暖機されている状態にある場合は、触媒温度が上昇し過ぎてNOx浄化性能は低下しているので、内燃機関の筒内燃焼でNOxの発生を抑制する。つまり、多量のEGRガス量でEGRを行えるように制御することで、NOxを低減することができる。更に、多量のEGRガス量によるEGRで、筒内燃焼の温度を低下することができ、触媒を通過する排気ガスの温度を低下させることができるので、触媒温度の過度な上昇を抑制することができる。
【0016】
また、上記の内燃機関において、前記制御装置が、前記触媒温度が前記第1温度域にある場合に、前記目標EGRガス量の補正によるEGRガス量の減少を外部EGRのEGRガス量の減少で行うように制御すると、内部EGRに影響を及ぼさないので、EGR制御を単純化できる。
【0017】
通常、EGRは、目標EGRガス量に対して外部EGRと内部EGRを同時に制御して行うので、言い換えれば、外部EGRのEGR弁のバルブ開度は、内部EGR率を加味した協調制御とするので、内燃機関の各運転条件、並びに触媒温度条件で外部EGRと内部EGRによって細かくEGR率を制御することになる。そのため、一般的にはEGR制御は複雑化する。
【0018】
しかし、前記目標EGRガス量の補正によるEGRガス量の減少を外部EGRのEGRガス量の減少で行うことにより、触媒昇温時間短縮のため触媒低温時にはEGR率を減少させる際に、内部EGR量はそのままにして外部EGR量を減少させて、制御の複雑化を抑制することができる。但し、EGR率の減少率はNOxが大量に排出されない程度とする。
【0019】
また、上記の内燃機関において、前記制御装置が、前記触媒温度が前記第2温度域にある場合に、前記目標EGRガス量を外部EGRと内部EGRに振り分けてEGR制御すると、よりきめ細かいEGR制御を行うことができる。
【0020】
この内部EGRのメリットとしては、排気バルブ直下の排気ポートのガスを直接筒内に戻すため、外部EGRのようなEGR流路の長さ分による応答遅れがないというメリットがある。そのため、内部EGRと外部EGRを用いるとより細かい制御が可能になる。一方、内部EGRは、吸気と排気のバルブの開弁時期をオーバーラップさせる、あるいは、吸気中に排気バルブを際開弁させることで行うため、大量のEGRガスを筒内に戻すことは不可能である。そのため、多量のEGRガスを還流することができる外部EGRとの組み合わせでEGRする。
【0021】
また、上記の内燃機関において、前記制御装置が、前記触媒温度が前記第3温度域にある場合に、前記目標EGRガス量を増加させる際に、排気ガス中の空気過剰率がスモーク発生防止のための予め設定した判定用空気過剰率よりも小さくなった時には、前記目標EGRガス量の増加量の減少又は前記目標EGRガス量の増加の停止を行うように制御すると、スモークの発生を防止することができる。
【0022】
つまり、空気過剰率が減少すると筒内(シリンダ内)の酸素量が不足し、不完全燃焼が起こり、スモークが生成される。特に触媒温度が高温との条件で、多量のEGRを行う場合には、不活性ガスである排気ガスを還流させることにより、筒内の酸素濃度が低下し、EGRの量によってはスモークが急激に発生する可能性がある。空気過剰率をモニターしてEGRガス量の増加に歯止めを掛けることにより、このスモークの発生を回避することができる。
【0023】
そして、上記の目的を達成するための本発明の内燃機関のEGR方法は、排気通路に配置された排気ガス浄化装置で、触媒を用いて排気ガス中のNOxを低減すると共に、EGRを行ってNOxを低減する内燃機関のEGR制御方法において、内燃機関の始動直後で触媒温度が予め設定した第1温度以下の第1温度域にある場合に、目標EGRガス量を減少させる補正を行い、前記触媒温度が、前記第1温度より高い予め設定した第2温度以下の第2温度域にある場合に、前記目標EGRガス量を維持し、前記触媒温度が、前記第2温度より高い第3温度域にある場合に、前記目標EGRガス量を増加させる補正を行うことを特徴とする方法である。
【0024】
また、上記の内燃機関のEGR方法において、前記触媒温度が前記第1温度域にある場合に、前記目標EGRガス量の補正によるEGRガス量の減少を外部EGRのEGRガス量の減少で行う。
【0025】
また、上記の内燃機関のEGR方法において、前記触媒温度が前記第2温度域にある場合に、前記目標EGRガス量を外部EGRと内部EGRに振り分けてEGRする。
【0026】
また、上記の内燃機関のEGR方法において、前記触媒温度が前記第3温度域にある場合に、前記目標EGRガス量を増加させる際に、排気ガス中の空気過剰率がスモーク発生防止のための予め設定した判定用空気過剰率よりも小さくなった時には、前記目標EGRガス量の増加量の減少又は前記目標EGRガス量の増加の停止を行う。
【0027】
これらの方法によれば、上記の内燃機関の作用効果と同様の効果を発揮することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の内燃機関及び内燃機関のEGR方法によれば、内燃機関において、触媒を担持した排気ガス処理装置を用いる後処理システムとEGRシステムの両方を含めたNOx浄化システムの中で、単純なロジックかつ低コストで、後処理システムの触媒のNOx浄化率とEGRによるNOx抑制効果を総合的に考慮して、最適なEGRガス量でEGRして、全体として高いNOx低減効果を発揮することができる。
【0029】
更には、触媒温度の温度域別に、EGRガス量を最適化することで、内燃機関の後処理システムの触媒の温度が低い状態であってもNOxの大量排出を防ぎながら触媒を迅速に昇温でき、しかも、高回転、高負荷の際には触媒の過度の昇温を防ぎながら、高いNOx低減効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る実施の形態の内燃機関のEGR方法を実施するための制御フローの一例を示す図である。
【図2】内部EGRにおける排気バルブ再開弁のバルブプロファイルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明に係る内燃機関及び内燃機関のEGR方法について説明する。本発明に係る内燃機関は、排気通路に配置され、触媒を用いた排気ガス浄化装置と、EGRを制御する制御装置を備えて構成される。この排気ガス浄化装置に温度センサを設置して触媒温度Tcを計測し、あるいは、排気ガス浄化装置の前後等に設けた排気ガスの温度センサで計測した排気ガスの温度から触媒温度Tcを推定し、触媒の温度状態を監視する。
【0032】
本発明に係る実施の形態の内燃機関におけるEGRシステムは、EGR通路を排気通路から吸気通路に接続して、このEGR通路に設けたEGRバルブでEGRガス量を調整する外部EGRと、内燃機関の可変動弁系を用いて、排気弁自体を再開弁させることで、又は、排気バルブとは別に設けた第2の排気弁である再開弁を吸気バルブ開弁中に再開弁させることで、筒内(シリンダ内)に排気ガスを残留させる内部EGRとを備えて構成される。
【0033】
この制御装置は、内燃機関のEGR方法において、内燃機関の運転状態に基づいて設定される目標EGRガス量を、触媒の温度に応じて補正する制御をする。この制御は、図1に例示されるような制御フローに従って行うことができる。
【0034】
この図1の制御フローは、EGRを行う場合に、内燃機関のエンジン回転速度や負荷条件によって検出される内燃機関の運転状態に基づいて目標EGRガス量を設定した後に呼ばれて、触媒の温度に応じて補正する制御を実施する制御フローであり、この図1の制御フローが終了すると、リターンして上位の制御フローに戻り、制御装置は、この補正された目標EGRガス量に基づいて、EGRバルブの弁開度と排気バルブ再開弁のリフト量を設定して、これらを制御してEGRを行う。
【0035】
なお、このEGRバルブの弁開度と排気バルブ再開弁のリフト量に関係する目標EGRガス量の補正量の設定方法は、実験等で予め設定した値をマップデータとして制御装置に記憶させておいて、このマップデータを参照して設定する方法でも、筒内の状態量から物理式を用いて、目標EGR率となるリフト量を算出して設定する方法でもよい。
【0036】
図1の制御フローが上位の制御フローから呼ばれてスタートすると、ステップS11で、触媒温度Tcをチェックして、触媒温度Tcが、第1温度T1より低いか、否かを判定する。また、第1温度T1は実験などにより予め設定される値であり、触媒の種類にもよるが、例えば、150℃程度に設定される。
【0037】
このステップS11の触媒温度Tcのチェックで、触媒温度Tcが、第1温度T1より低い場合には(YES)、内燃機関の始動直後で触媒温度Tcが、予め設定した第1温度T1以下の第1温度域にあるとして、ステップS14に行き、目標EGRガス量を減少させる補正を行う。この場合に内部EGRは、従来の目標リフト量よりも小さいリフト量で排気バルブ再開弁が行われる。
【0038】
つまり、この触媒温度Tcが第1温度域で、触媒が冷間状態にある場合は、排気バルブ再開弁のリフト量に関して、燃焼温度を上昇させるリフト量を選択する等して、EGRガス量を少なくして筒内の燃焼温度の低下を回避する。これにより、触媒温度Tcを触媒によるNOx浄化性能が低い温度からNOx浄化性能が高くNOx浄化が効率良く行える活性化温度以上に、迅速に昇温させる。
【0039】
また、ステップS11の触媒温度Tcのチェックで、触媒温度Tcが、第1温度T1以上の場合には(NO)には、ステップS12に行き、触媒温度Tcをチェックして、触媒温度Tcが、第2温度Tcより低いか、否かを判定する。この第2温度T2は、第1温度T1より高い値で、予め設定した値であり、触媒の種類にもよるが、例えば、250℃程度に設定される。
【0040】
このステップS12の触媒温度Tcのチェックで触媒温度Tcが第2温度以下で、第1温度域より高い第2温度域にある場合には(YES)、ステップS15に行き、目標EGRガス量を補正せずに、そのまま維持する。この場合には、目標EGRガス量を外部EGRガス量と内部EGRガス量に振り分けてEGRを行う。この場合に内部EGRは、従来のリフト量と同じリフト量で排気バルブ再開弁が行われる。
【0041】
つまり、触媒温度Tcが第2温度域で、触媒が最高浄化率が得られる状態にある場合は、EGRガス量を外部EGRにおけるEGRガス量と内部EGRによるEGRガス量とに振り分けて、外部EGRのEGRバルブの弁開度と内部EGRの排気バルブ再開弁のリフト量を制御することで、最適なEGR率とし、筒内の燃焼温度を最適に維持しながら、EGRによるNOx抑制効果と触媒の高いNOx浄化性能により、高いNOx低減性能を維持する。
【0042】
このステップS12の触媒温度Tcのチェックで触媒温度Tcが第2温度よりも高く、第2温度域より高い第3温度域にある場合には(NO)、ステップS13に行き、排気ガス中の空燃比λをチェックし、空燃比λがスモーク発生防止のための予め設定した判定用空気過剰率λcよりも小さくなった場合には、ステップS16、目標EGRガス量を減少させる補正を行う。この場合に内部EGRは、従来の目標リフト量よりも小さいリフト量で排気バルブ再開弁が行われる。
【0043】
ステップS13の排気ガス中の空燃比λのチェックで、空燃比λが判定用空気過剰率λcより大きい場合には、ステップS17で、目標EGRガス量を増加させる補正を行う。この場合に内部EGRは、従来の目標リフト量よりも大きなリフト量で排気バルブ再開弁が行われる。この判定用空気過剰率λcは、予め実験などによって設定される値であり、例えば、1.2等であるが、エンジンに運転状態によって変化する値であり、ステップS13の判定の前に、エンジンの運転状態とマップデータを比較して算出される。
【0044】
つまり、触媒温度Tcが第3温度域で、触媒が過度に暖機されている状態にある場合は、触媒温度Tcが上昇し過ぎてNOx浄化性能は低下しているので、多量のEGRガス量でEGRを行えるように外部EGRのEGRバルブの弁開度と内部EGRの排気バルブ再開弁のリフト量を制御することで、内燃機関の筒内燃焼でNOxの発生を抑制して、NOxを低減する。更に、多量のEGRガス量によるEGRで、筒内燃焼の温度を低下させて、触媒を通過する排気ガスの温度を低下させる。これにより、触媒温度Tcの上昇を抑制する。
【0045】
上記のように、触媒温度Tcの場合分けにより、ステップS14〜S17のいずれかのステップを実施したのち、リターンして、上位の制御フローに戻り、この図1の制御フローで補正された目標EGRガス量で、EGRを行う。そして、上位の制御フローと図1の制御フローを繰り返しながら、内燃機関の運転状態に基づく目標EGRガス量の設定、この設定された目標EGRガス量の触媒の温度に応じた補正、補正された目標EGRガス量でのEGRの実施を繰り返して、内燃機関の運転停止と共に、図1の制御フローは上位の制御フローと共に停止する。
【0046】
この制御により、排気通路に配置された排気ガス浄化装置で、触媒を用いて排気ガス中のNOxを低減すると共に、EGRを行ってNOxを低減する内燃機関のEGR制御方法において、前記触媒の温度に応じて、内燃機関の運転状態に基づいて設定される目標EGRガス量を補正して、EGRを行うことができ、更に、内燃機関の始動直後で触媒温度Tcが予め設定した第1温度T1以下の第1温度域にある場合に、目標EGRガス量を減少させる補正を行い、触媒温度Tcが、第1温度T1より高い予め設定した第2温度T2以下の第2温度域にある場合に、目標EGRガス量を維持し、外部EGRガス量と内部EGRガス量に振り分けてEGRを行い、触媒温度Tcが、第2温度T2より高い第3温度域にある場合に、目標EGRガス量を増加させる補正を行うことができる。
【0047】
なお、実際の現象を考えるとNOx浄化触媒を用いた排気ガス浄化装置には熱容量が存在するため、一度昇温されると、触媒温度が低下することは少なく、触媒温度が第1温度域〜第3温度域の間で頻繁に移動を繰り返すことは考え難いので、制御が煩雑に変化することはない。
【0048】
以上のように、本発明では、後処理システムの排気ガス浄化装置の触媒温度Tcに着目し、この触媒の温度を考慮して、制御装置では、触媒の温度に応じて目標EGR量を補正して、外部EGRのEGRバルブの弁開度と、内部EGRの排気バルブ再開弁のリフト量を制御する。また、触媒温度Tcに応じてEGR制御することで、エンジン始動直後の触媒が冷間状態であれば、NOxが大量に排出されてしまわない程度に目標EGR率を低下させて、触媒温度Tcの昇温に適したEGRを行うことができる。
【0049】
上記の内燃機関及び内燃機関のEGR方法によれば、EGRシステムと後処理システムの両方を含めた系の中で、単純なロジックかつ低コストで、冷間始動時の触媒の昇温期間を短縮させることができると共に、後処理システムの触媒のNOx浄化性能とEGRによるNOx抑制効果を総合的に考慮して、最適なEGRガス量でEGRできて、全体として高いNOx低減性能を発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の内燃機関及び内燃機関のEGR方法によれば、触媒を担持した排気ガス処理装置を用いる後処理システムとEGRシステムの両方を含めたNOx浄化システムの中で、単純なロジックかつ低コストで、後処理システムの触媒のNOx浄化率とEGRによるNOx抑制効果を総合的に考慮して、最適なEGRガス量でEGRして、全体として高いNOx低減性能を発揮することができるので、車両搭載のディーゼル機関等の内燃機関及び内燃機関のEGR方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
T1 第1温度
T2 第2温度
Tc 触媒温度
λ 空気過剰率
λc 判定用空気過剰率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路に配置され、触媒を用いた排気ガス浄化装置と、EGRを制御する制御装置を備えた内燃機関において、
前記制御装置が、内燃機関の始動直後で触媒温度が、予め設定した第1温度以下の第1温度域にある場合に、目標EGRガス量を減少させる補正を行い、
前記触媒温度が、前記第1温度より高い予め設定した第2温度以下の第2温度域にある場合に、目標EGRガス量を維持し、
前記触媒温度が、前記第2温度より高い第3温度域にある場合に、目標EGRガス量を増加させる補正を行う制御をすることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記制御装置が、前記触媒温度が前記第1温度域にある場合に、前記目標EGRガス量の補正によるEGRガス量の減少を外部EGRのEGRガス量の減少で行うように制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記制御装置が、前記触媒温度が前記第2温度域にある場合に、前記目標EGRガス量を外部EGRと内部EGRに振り分けてEGR制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記制御装置が、前記触媒温度が前記第3温度域にある場合に、前記目標EGRガス量を増加させる際に、排気ガス中の空気過剰率がスモーク発生防止のための予め設定した判定用空気過剰率よりも小さくなった時には、前記目標EGRガス量の増加量の減少又は前記目標EGRガス量の増加の停止を行うように制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関。
【請求項5】
排気通路に配置された排気ガス浄化装置で、触媒を用いて排気ガス中のNOxを低減すると共に、EGRを行ってNOxを低減する内燃機関のEGR制御方法において、
内燃機関の始動直後で触媒温度が予め設定した第1温度以下の第1温度域にある場合に、目標EGRガス量を減少させる補正を行い、
前記触媒温度が、前記第1温度より高い予め設定した第2温度以下の第2温度域にある場合に、前記目標EGRガス量を維持し、
前記触媒温度が、前記第2温度より高い第3温度域にある場合に、前記目標EGRガス量を増加させる補正を行うことを特徴とする内燃機関のEGR方法。
【請求項6】
前記触媒温度が前記第1温度域にある場合に、前記目標EGRガス量の補正によるEGRガス量の減少を外部EGRのEGRガス量の減少で行うことを特徴とする請求項5に記載の内燃機関のEGR方法。
【請求項7】
前記触媒温度が前記第2温度域にある場合に、前記目標EGRガス量を外部EGRと内部EGRに振り分けてEGRすることを特徴とする請求項5又は6に記載の内燃機関のEGR方法。
【請求項8】
前記触媒温度が前記第3温度域にある場合に、前記目標EGRガス量を増加させる際に、排気ガス中の空気過剰率がスモーク発生防止のための予め設定した判定用空気過剰率よりも小さくなった時には、前記目標EGRガス量の増加量の減少又は前記目標EGRガス量の増加の停止を行うことを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の内燃機関のEGR方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−19321(P2013−19321A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153268(P2011−153268)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】