説明

内燃機関用駆動装置

本発明は、駆動接続(6)によって、カム軸(4、5)及び付属ユニットを、クランク軸(7)から、駆動する内燃機関(1)に取り付けられた駆動装置に関する。前記駆動接続(6)は、歯車機構(12)及びタイミングチェーン(11)を有する。歯車機構(12)は、クランク軸(7)と回転式に固定連結された駆動歯車(13)と、シリンダクランクケース(2)にそれぞれ取り付けられた1つの中間歯車(14)と1つの被駆動歯車(15)とから成る。被駆動歯車(15)は、駆動スプロケット(16)と回転可能に固定連結され、それは次に駆動されるようにカム軸(4、5)のスプロケット(17、18)にタイミングチェーン(11)を介して接続される。歯車機構(12)の被駆動歯車(15)は付属ユニットを駆動する働きをする。実質的に追加的な設置空間を必要としないような包括的な駆動装置を開発するために、駆動接続(6)が、シリンダクランクケース(2)の後部の壁(8)と駆動方向のその下流に取り付けられたフライホイール(9)との間の内燃機関(1)の出力側に配置される。中間歯車及び被駆動歯車は後部の壁(8)に取り付けられる。タイミングチェーン(11)は、フライホイール(9)の面に駆動スプロケット(16)とカム軸(4、5)のスプロケット(17、18)と一緒に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車機構及びタイミングチェーンを有する駆動接続によってクランク軸からカム軸及び付属ユニットを駆動する内燃機関の駆動装置に関し、請求項1の前段によれば、歯車機構は、クランク軸と同軸に固定接続された駆動歯車と、クランクケースにそれぞれ取り付けられた中間歯車と被駆動歯車とから成り、さらに被駆動歯車は、カム軸のスプロケットにタイミングチェーンを介して駆動接続される駆動スプロケットと同軸に固定連結され、歯車機構の被駆動歯車は付属ユニットを駆動する働きもする。
【背景技術】
【0002】
少なくとも2つのシリンダバンクを備えた内燃機関用の駆動装置が特許文献1に記載されている。この場合、全てのチェーン駆動部用及び付属ユニットの駆動用の歯車機構は、内燃機関の第1の横断面にあり、シリンダバンクのカム軸を駆動するチェーン駆動歯車は、第1の横断面に対して軸方向にずれている内燃機関の他の横断面に位置する。
【0003】
この駆動装置で達成されることは、シリンダ列のカム軸を駆動する個々のチェーン駆動歯車を内燃機関のたった1つの横断面に配置でき、その結果、必要とされる設置空間を低く抑えることができることである。
【0004】
しかしながら、実質的に追加的な設置空間を不要にするような内燃機関の構成への駆動装置の一体化がまだできていないという課題が残る。
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第198 40 659 A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、駆動装置が実質的に追加的な設置空間を不要とするような駆動装置をさらに開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、本発明に従い、請求項1の特徴部分に規定された特徴によって達成される。
【0008】
内燃機関の被駆動側に配置されている駆動装置によって、内燃機関の横断面のフライホイールで専有された設置空間に、追加的にチェーン駆動部を収容するのに都合よく利用できる。設置空間の二重利用の結果、本発明による駆動装置は、タイミングチェーン又はタイミングベルトを備えた従来形カム軸駆動部と比べて、基本的に追加的な設置空間をとらない、ゆえに基本的に設置空間を浪費しない。
【0009】
さらに、有利な点は、内燃機関の被駆動側に一体化されている駆動装置によって、クランク駆動部や内燃機関ハウジングの構造的問題についていかなる余分な費用も不要である。
【0010】
本発明の他の利点や改良形態は、従属請求項の特徴から明らかになるであろう。
【0011】
図1は、本発明の例示的な実施形態を概略的に示す内燃機関の図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1において、内燃機関1は、シリンダクランクケース2とシリンダヘッド3とを備える。シリンダヘッド3には、7で示されたクランク軸から駆動接続6を介して駆動される2つのカム軸4及び5が据え付けられている。駆動接続6は、この場合シリンダクランクケース2の後部の壁8と、一点鎖線で概略だけが示されているフライホイール9との間であって、壁に対して内燃機関1の被駆動側に収容される。
【0013】
駆動接続6は、駆動力機構10及び他の歯車手段から構成される。駆動力機構10は、ベルト駆動部又は、本発明による、タイミングチェーン11を備えたチェーン駆動部であっても良いが、他の歯車手段は、本発明によれば、歯車13、14、15を備えた歯車機構12である。
【0014】
駆動接続6内で、力の伝達が、最初クランク軸7から歯車機構12に、次に歯車機構12からチェーン駆動部11に行われ、そのチェーン駆動部11によって、カム軸4及び5が最終的に駆動される。
【0015】
この場合、歯車機構12は、クランク軸に固定接続された回転可能な駆動歯車13と、それに噛み合う中間歯車14、それに噛み合う被駆動歯車15から成る。
【0016】
被駆動歯車15に回転式に固定連結されているのは、カム軸4及び5の2つのスプロケット17及び18にタイミングチェーン11を介して駆動接続されている駆動スプロケット16である。
【0017】
例示的な実施形態によれば、タイミングチェーン11は駆動スプロケット16とカム軸4及び5の2つのスプロケット17及び18との周りに円形ループを形成する。タイミングチェーン11が一方のスプロケット17又は18だけの周りに円形ループを形成するようにしても良いが、その場合2つのカム軸4、5はそれで特定の歯車接続を介して互いに駆動接続すると良い。
【0018】
被駆動歯車15は、フライホイール9で画定された外周円よりもさらに外部に、クランク軸に対して横方向に所定の距離を置いてその回転軸が位置するように、歯車機構12は、個々の歯車の歯数や後部の壁8へのそれらの設置を考慮して構造的に寸法決めされる。したがって、駆動スプロケット16とタイミングチェーン11は、クランクケース2の軸方向に対して、歯車機構12の直後に配置できる。タイミングチェーンは、ゆえに、大部分がフライホイールの横断する面内にあるので、全体のエンジン長は、それによって損なわれず、全長に関係する大部分のパーツに対しての影響が中立的なものとなる。
【0019】
後部の壁8は、2つのクランクケース側壁を越えて横方向に引き延ばされるように設計され、突出した壁の部分8a及び8bには、ここに付属ユニットを設置するか、又は歯車機構12の歯車を取り付けることができる。
【0020】
したがって、例えば、被駆動歯車15によって駆動される高圧ポンプ19は、歯車機構12と反対側(裏側)の壁部分8aにフランジ止めされる。高圧ポンプに加えて、例えば、空調コンプレッサ又はパワーステアリングポンプのような、他の付属ユニットも、壁部分の一方にフランジ止めされ、同時に歯車機構12によって駆動されることが可能である。
【0021】
本発明による駆動接続6によって、使用に関し最適に提供される伝動手段を設計することも可能となる。したがって、歯車機構12は、付属ユニットを駆動するように最適化でき、駆動力機構10は、特にカム軸4及び5を駆動するように設計でき、例えば、単純な単列チェーンとして製造される。これは、例えば、付属ユニットやカム軸用の駆動部としての二重チェーンのような従来形の駆動手段よりも幅を占めない造りの、全体的に、狭域構造の駆動接続を達成する。さらに、本発明による駆動接続において、歯車機構12は、歯車用の硬質軸受ハウジングとしてシリンダクランクケース2の壁8に固定される。
【0022】
それに反して、そこに配置されたカム軸駆動用のシリンダクランクケース2とシリンダヘッド3との間の合わせ面の架橋は、シリンダクランクケース2とシリンダヘッド3との間の位置及び長さの変動を補正できる、例えば、タイミングチェーン11のような駆動力機構によって行われる。この場合、タイミングチェーン11の確実な案内用に、チェーン軌道内にあるガイドレール20、21、22が提供され、それらの設置位置によって、シリンダヘッド3又はハウジングの壁8に取り付けられる。タイミングチェーン11の張りの調整は、ガイドレール22と係合し、簡素化のため矢印で示されているチェーンテンショナ23を介して行われる。
【0023】
図1の例示的な実施形態によれば、歯車機構12は、付属ユニット及びカム軸4及び5を駆動し、同時に2つのバランスシャフトを駆動する働きをし、それらの補正軸についてそれらを駆動する歯車24及び25だけが示されている。このバランスシャフトは、シリンダクランクケース2内に、クランク軸7と同等の高さ付近に取り付けられ、歯車24に接続されたバランスシャフトは、中間歯車14と反転歯車26とによって駆動歯車13から駆動され、歯車25に接続されたバランスシャフトは、単一反転歯車27を介して駆動歯車13から駆動される。
【0024】
図で明示していないが、後部の壁8がカム軸及び付属ユニット用の完全な駆動装置とフライホイール9とを収容するフライホイールハウジングをその上にフランジ止めしている。歯車ユニットがその次にフライホイールハウジングに搭載される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】概略的に示された内燃機関を参照して本発明の例示的な実施形態を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車機構(12)とタイミングチェーン(11)とを有する駆動接続(6)によってクランク軸(7)からカム軸(4、5)及び付属ユニットを駆動する内燃機関(1)の駆動装置であり、前記歯車機構(12)は前記クランク軸(7)に回転式に固定接続された駆動歯車(13)及びシリンダクランクケース(2)にそれぞれ取り付けられた中間歯車(14)及び被駆動歯車(15)から成り、前記被駆動歯車(15)は、タイミングチェーン(11)を介して前記カム軸(4、5)のスプロケット(17、18)に駆動接続される駆動スプロケット(16)に回転可能に固定連結され、前記歯車機構(12)の前記被駆動歯車(15)は前記付属ユニットを駆動する、駆動装置であって、
前記駆動接続(6)は、前記シリンダクランクケース(2)の後部の壁(8)と被駆動方向に続くフライホイール(9)との間、前記内燃機関(1)の被駆動側に配置され、
前記中間歯車及び前記被駆動歯車は前記後部の壁(8)に取り付けられ、
前記タイミングチェーン(11)は、前記駆動スプロケット(16)及び前記スプロケット(17、18)と共に、前記フライホイール(9)の横断面内において、前記カム軸(4、5)に作用するように配置されることを特徴とする内燃機関用駆動装置。
【請求項2】
前記被駆動歯車(15)は、その回転軸が前記フライホイール(9)によって画定される円よりも外周側で、横方向に所定の距離を置くように前記後部の壁(8)に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用駆動装置。
【請求項3】
前記後部の壁(8)は、2枚のシリンダクランクケース側壁を越えて横方向に延ばされた突出部分を有し、前記突出部分(8a、8b)に前記歯車機構(12)の歯車が取り付けられることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の内燃機関用駆動装置。
【請求項4】
前記突出部分(8a、8b)に、付属ユニットが取り付けられることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の内燃機関用駆動装置。
【請求項5】
前記被駆動歯車(15)で駆動される高圧ポンプ(19)は、前記突出部分(8a)の付属ユニットとしてフランジ止めされることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関用駆動装置。
【請求項6】
歯車(24、25)によって駆動される2本のバランスシャフトは、前記シリンダクランクケース(2)に取り付けられ、前記歯車(24)に接続された前記バランスシャフトは、前記中間歯車(14)と反転歯車(26)とによって前記駆動歯車(13)から駆動され、前記歯車(25)に接続された前記バランスシャフトは、単一反転歯車(27)を介して駆動歯車(13)から駆動されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関用駆動装置。
【請求項7】
前記カム軸(4、5)及び前記付属ユニットの全駆動装置を収容するフライホイールハウジングは、前記シリンダクランクケース(2)の前記後部の壁(8)にフランジ止めされることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の内燃機関用駆動装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダクランクケース(2)の後部の壁(8)と被駆動方向に続くフライホイール(9)との間の内燃機関(1)の被駆動側に配置され、歯車機構(12)とタイミングチェーン(11)とを有する駆動接続(6)によってクランク軸(7)からカム軸(4、5)及び付属ユニットを駆動する内燃機関前記(1)の駆動装置であり、前記歯車機構(12)は前記クランク軸(7)に回転式に固定接続された駆動歯車(13)、前記シリンダクランクケース(2)の前記後部の壁(8)に取り付けられた少なくとも1つの中間歯車(14)及び被駆動歯車(15)を有し、前記被駆動歯車(15)は、その回転軸がフライホイール(9)によって画定された外周円外部に所定の距離を置くように前記後部壁(8)に取り付けられ、さらに前記被駆動歯車(15)は、前記タイミングチェーン(11)を介して前記カム軸(4、5)のスプロケット(17、18)に駆動接続される駆動スプロケット(16)に回転可能に固定連結され、前記歯車機構(12)の被駆動歯車(15)は前記付属ユニットを駆動する、駆動装置であって、
前記歯車機構(12)は、前記駆動歯車(13)と前記被駆動歯車(15)との間にたった1つの中間歯車(14)を有し、
前記タイミングチェーン(11)は、前記駆動スプロケット(16)及び前記スプロケット(17、18)と共に、前記フライホイール(9)の横断面内になるように、前記歯車機構(12)の軸方向にずらせて、カム軸(4、5)に作用するように配置されることを特徴とする内燃機関用駆動装置。
【請求項2】
前記後部の壁(8)は、2枚のシリンダクランクケース側壁を越えて横方向に延ばされた突出部分を有し、前記突出部分(8a、8b)は前記歯車機構(12)の歯車を取り付ける働きをすることを特徴とする請求項に記載の内燃機関用駆動装置。
【請求項3】
前記突出部分(8a、8b)に、付属ユニットが取り付けられることを特徴とする請求項に記載の内燃機関用駆動装置。
【請求項4】
前記被駆動歯車(15)で駆動される高圧ポンプ(19)は、前記突出部分(8a)の付属ユニットとしてフランジ止めされることを特徴とする請求項に記載の内燃機関用駆動装置。
【請求項5】
歯車(24、25)によって駆動される2本のバランスシャフトは、前記シリンダクランクケース(2)に取り付けられ、前記歯車(24)に接続された前記バランスシャフトは、前記中間歯車(14)と反転歯車(26)とによって前記駆動歯車(13)から駆動され、前記歯車(25)に接続された前記バランスシャフトは、単一反転歯車(27)を介して駆動歯車(13)から駆動されることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の内燃機関用駆動装置。
【請求項6】
前記カム軸(4、5)及び前記付属ユニットの全駆動装置を収容するフライホイールハウジングは、前記シリンダクランクケース(2)の前記後部の壁(8)にフランジ止めされることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の内燃機関用駆動装置。

【公表番号】特表2006−522258(P2006−522258A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504619(P2006−504619)
【出願日】平成16年3月10日(2004.3.10)
【国際出願番号】PCT/EP2004/002446
【国際公開番号】WO2004/088095
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(598051819)ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【Fターム(参考)】