円筒容器の清掃装置および清掃システム
【課題】円筒容器内部の底面および側面に付着したチクソトロピー性残留物を自動的に除去して、これら底面および側面を共に効率良く清掃できるようにする。
【解決手段】開口部Dhが斜め下方に指向した状態で支持され、長手方向軸線Ldを中心にして所定方向に回転させられる円筒容器Dに対して、底面用ブレード30と側面用ブレード40円筒容器D内部の所定位置まで前進させ、底面用ブレード30を円筒容器Dの内部底面Dbに押し当てた状態で円筒容器Dが所定回数回転した後に、側面用ブレード40を円筒容器Dの内部側面Dsに押し当てた状態と円筒容器Dの回転状態とを維持しながら、前記側面用ブレード40を円筒容器Dの内部側面Dsに沿って後退させることにより、円筒容器D内部の底面Dbおよび側面Dsに付着したチクソトロピー性残留物を自動的に除去する。
【解決手段】開口部Dhが斜め下方に指向した状態で支持され、長手方向軸線Ldを中心にして所定方向に回転させられる円筒容器Dに対して、底面用ブレード30と側面用ブレード40円筒容器D内部の所定位置まで前進させ、底面用ブレード30を円筒容器Dの内部底面Dbに押し当てた状態で円筒容器Dが所定回数回転した後に、側面用ブレード40を円筒容器Dの内部側面Dsに押し当てた状態と円筒容器Dの回転状態とを維持しながら、前記側面用ブレード40を円筒容器Dの内部側面Dsに沿って後退させることにより、円筒容器D内部の底面Dbおよび側面Dsに付着したチクソトロピー性残留物を自動的に除去する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒容器の清掃装置、より詳しく言えば、例えば塗料等のチクソトロピー性がある内容物を収容・保管・運搬等するためのドラム缶など、一端に開口部を有する円筒容器について、容器が空になった後に容器内面に付着したチクソトロピー性残留物を、自動的に除去して該内面を清掃する円筒容器の清掃装置、及びかかる清掃装置を組み込んだ円筒容器の清掃システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上述のような円筒容器が空になった後にその内面を清浄化する一般的な方法としては、洗浄液や溶剤を適用して容器内面に付着したチクソトロピー性残留物を除去する方法が知られている。この方法によれば、付着している残留物の除去に適応した洗浄液や溶剤を選定することにより、容易かつ効果的にチクソトロピー性残留物を除去し、容器の再利用を図ることができる。
【0003】
しかしながら、この方法では、容器内面に付着していたチクソトロピー性残留物が全て洗浄液や溶剤に混入することになるので、洗浄液や溶剤を繰り返して使用することはできない。従って、非常に少ないサイクル数で、新たな洗浄液や溶剤を用意し、また、使用済みのものを廃液として処理する必要がある。このため、コスト負担が大きくなり、また、環境への負荷の抑制を図る上でも好ましくない。
【0004】
従って、この方法を適用する場合には、洗浄液や溶剤を用いた洗浄に先立って、容器内面に付着したチクソトロピー性残留物を前工程で極力除去しておき、付着残留物ができるだけ少なくなった状態で洗浄液や溶剤を適用して清浄化することが望ましい。
【0005】
尚、チクソトロピー性がある内容物を取り扱う円筒容器の再利用を念頭に置いた他の清掃方法として、空になった円筒容器を高温で加熱し、内面に付着残留している内容物をバーンアウトし、ショットブラスト等の表面処理を行った後に洗浄・乾燥を行うことが知られているが、この場合でも、バーンアウトに要するコストの低減や環境問題への配慮の観点から、円筒容器内の残留物を前工程で極力除去しておくことが望ましい。
【0006】
かかる問題に関連して、例えば特許文献1には、使用済みのドラム缶の底部付近に溜まっているチクソトロピー性の高い残留物を掻き取って、ドラム缶の側面に再付着させることなく、ドラム缶外部へ搬送・排出させることを企図したドラム缶内部残留物除去装置が開示されている。
【特許文献1】特開2007−160197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この特許文献1に記載された先行技術では、回収ドラム缶は通常ストックヤードに立置きされるので、当初において底部より上の側面に残留物が付着していても、その残留物は時間経過と共に流下し、最終的には、その殆どがドラム缶の底部付近に溜まり、ドラム缶の側面には残留物は殆ど付着していないことを前提としている。従って、ドラム缶の側面については、底部付近で掻き取った残留物を外部へ搬送・排出させる際に再付着させないように配慮するのみで、側面自体を清掃することについては全く念頭に置かれていない。
【0008】
しかしながら、近年では、例えば、自動車の外板等の塗装に用いられる水性塗料など非常に粘性が高いもの、すなわち、高ズリ速度での粘度は小さいが低ズリ速度での粘度が非常に高くなるような高チクソトロピー性を示すもの、も珍しくない。このような高チクソトロピー性を示すものの例としては、日本ペイント株式会社製水性ベース塗料であるAR−2000シリーズがあげられる。この塗料では、B型粘度計で6rpmでの粘度η6と60rpmでの粘度η60との比η6/η60の値が2以上となるような高いチクソトロピー性が付与されている。
【0009】
ドラム缶の内容物がこのような高いチクソトロピー性を示す内容物の場合、内容物を使用した後に空になった容器(ドラム缶)を縦置きでストックしたとしても、ドラム缶の内壁に付着残留した内容物には、重力による低ズリ速度しか加わらない。このような状態では、容器内側面に付着残留した内容物はなかなか容易には流下せず、ある程度以上の長時間にわたって放置した場合には、側面に付着した状態でそのまま固化が始まることもある。このような場合、円筒容器内の底面だけでなく、側面についても付着残留物を掻き取って除去する必要がある。
【0010】
また、前記特許文献1に記載された先行技術では、容器内側面の掻き取りが不要となる程度にまで、当該側面に付着した残留物が容器底面付近へ流下する必要があり、それまでは、特許文献1に記載の装置を用いた容器内部の清掃を行うことはできない。従って、容器清掃を行うには、その待ち時間をも考慮する必要があり、工程の自由度が大きく損なわれることになる。
【0011】
そこで、本発明は、円筒容器内部の底面および側面に付着したチクソトロピー性残留物を自動的に除去して、該円筒容器内部の底面および側面を共に清掃することができる円筒容器の清掃装置、及びかかる清掃装置を組み込んだ円筒容器の清掃システムを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため、本願発明に係る円筒容器の清掃装置は、一端に開口部を有する円筒容器の内面に付着したチクソトロピー性残留物を除去して該内面を清掃する円筒容器の清掃装置であって、a)前記開口部が斜め下方に指向した状態で前記円筒容器を支持する容器支持手段と、b)該容器支持手段で支持された前記円筒容器を、その長手方向軸線を中心にして所定方向に回転させる容器回転手段と、c)前記円筒容器の内部底面に押し当てられて該底面を清掃する底面清掃具と、円筒容器の内部側面に押し当てられて該側面を清掃する側面清掃具と、を備えた内面清掃手段と、d)前記開口部を通して、前記内面清掃手段を円筒容器の内部に対して進退動させる進退動手段と、e)前記底面清掃具を円筒容器の内部底面に押し当てる底面清掃具押し当て手段と、f)前記側面清掃具を円筒容器の内部側面に押し当てる側面清掃具押し当て手段と、g)前記各手段を制御する制御手段と、を備え、h)該制御手段は、前記進退動手段が前記内面清掃手段を円筒容器内部の所定位置まで前進させ、前記底面清掃具押し当て手段が前記底面清掃具を円筒容器の内部底面に押し当てた状態で円筒容器が所定回数回転した後に、前記側面清掃具押し当て手段が前記側面清掃具を円筒容器の内部側面に押し当てた状態と円筒容器の回転状態とを維持しながら、前記進退動手段が前記側面清掃具押圧手段を円筒容器の内部側面に沿って後退させるように制御する、ことを特徴としたものである。
【0013】
この場合、前記チクソトロピー性残留物が、B型粘度計で6rpmでの粘度η6と、60rpmでの粘度η60との比η6/η60の値で2以上を示す内容物であってもよい。
【0014】
以上の場合において、前記進退動手段は、i)一端が前記円筒容器の開口部近傍に位置し斜め下方に向かって伸長するベースブームと、一端に前記内面清掃手段を備え前記ベースブームの長手方向に沿って摺動可能にベースブームに支持されたスライドブームとを備え、j)前記ベースブームは、枢支部を中心にして上下方向に回動可能に支持されると共に、前記枢支部よりも円筒容器の開口部に近い側が昇降手段で昇降可能に支持されており、k)前記昇降手段の下降動作によってベースブームが前記枢支部を中心にして下方に回動し、前記底面清掃具が円筒容器の内部底面に対して押し当てられ、前記側面清掃具が円筒容器の内部側面に対して押し当てられる、ようにすることができる。
【0015】
また、以上の場合において、前記円筒容器の開口縁部に押圧されて該開口縁部を清掃する開口縁部清掃具を更に備えている、ことがより好ましい。
【0016】
更に、以上の場合において、前記側面清掃具は弾性ブレードを備え、該弾性ブレードは、円筒容器の長手方向軸線を含む面に対して、円筒容器の開口部に近い側が当該円筒容器の回転方向における下流側に位置するように傾斜した状態で、円筒容器の内部側面に押し当てられる、ことがより一層好ましい。
【0017】
また更に、以上の場合において、前記底面清掃具は弾性ブレードを備え、該弾性ブレードは、円筒容器の底面の周縁部から中心に至る途中部までの領域を清掃する第1ブレード部と、該第1ブレード部に対して傾斜して設けられ、前記途中部から中心を越えるまでの領域を清掃する第2ブレード部とで構成されている、ことが更に好ましい。
【0018】
また更に、以上の場合において、前記円筒容器の内面に所定の洗浄剤を供給する洗浄剤供給手段を更に備えている、ようにしてもよい。
【0019】
また、本願発明に係る円筒容器の清掃システムは、一端に開口部を有する円筒容器の内面に付着したチクソトロピー性残留物を除去して該内面を清浄化する円筒容器の清掃システムであって、本願発明に係る前記円筒容器の清掃装置と、円筒容器の内面に洗浄剤を供給し、該内面をブラシで擦ることによって円筒容器の内面を洗浄するブラシ洗浄装置、及び/又は前記円筒容器の内面に洗浄液のジェット噴流を吹き付けることによって当該円筒容器の内面を洗浄するジェット洗浄装置と、を備え、前記清掃装置による清掃を終えた後に、前記ブラシ洗浄装置による洗浄及び/又は前記ジェット洗浄装置による洗浄を行う、ことを特徴としたものである。
尚、この場合において、前記ブラシ洗浄装置による洗浄と前記ジェット洗浄装置による洗浄とは、何れを先に行ってもよく、また、それらの回数も1回に限るものではなく、複数回行われてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本願発明に係る円筒容器の清掃装置によれば、開口部が斜め下方に指向した状態で支持され、長手方向軸線を中心にして所定方向に回転させられる円筒容器に対して、進退動手段が内面清掃手段を円筒容器内部の所定位置まで前進させ、底面清掃具押し当て手段が底面清掃具を円筒容器の内部底面に押し当てた状態で円筒容器が所定回数回転した後に、側面清掃具押し当て手段が側面清掃具を円筒容器の内部側面に押し当てた状態と円筒容器の回転状態とを維持しながら、前記進退動手段が前記側面清掃具押圧手段を円筒容器の内部側面に沿って後退させることにより、円筒容器内部の底面および側面に付着したチクソトロピー性残留物を自動的に除去して、該円筒容器内部の底面および側面を共に効率良く清掃することができる。
【0021】
また、本願発明に係る円筒容器の清掃システムによれば、ブラシ洗浄装置による洗浄及び/又はジェット洗浄装置による洗浄に先立って、前記円筒容器の清掃装置による円筒容器内面の清掃を行うことにより、前述のように、円筒容器内部の底面および側面を共に効率良く清掃することができる。このように、前記清掃装置を用いて円筒容器内面を清掃した後にブラシ洗浄装置による洗浄及び/又はジェット洗浄装置による洗浄を行うので、これら後工程で使用される洗浄剤に混入する残留塗料は非常に少量であり、洗浄剤を繰り返して使用することが可能になる。従って、洗浄等に係るコスト負担を大幅に低減でき、また、廃液処理に係る環境への負荷についても、有効に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を、例えば塗料を収容・保管・運搬等するための円筒容器(所謂、塗料ドラム缶)の内面を清掃する場合を例にとって、添付図面を参照しながら説明する。尚、本実施形態では、好ましくは、円筒容器を長期間にわたり繰り返して利用すべく、当該円筒容器は、強度・剛性のみならず耐食性・防錆特性にも優れた所謂オーステナイト系またはフェライト系のステンレス鋼板を素材に用いて製作されている。
【0023】
図1は本実施形態に係る円筒容器の清掃装置の全体構成を概略的に示す側面図、図2は傾斜状態で支持された前記円筒容器を拡大して示す拡大断面図、また、図3は、図1におけるY3−Y3矢印方向から見て示した矢視図である。
これらの図に示すように、清掃装置Mは、設置場所に立設されたフレーム体1(装置フレーム)に、種々の所要の部材や機器または機構を取り付けて構成されている。
【0024】
前記装置フレーム1は、図1の紙面方向(以下、この方向を清掃装置M又は装置フレーム1の幅方向と言う)に並べられた複数の前側フレーム2及び複数の後側フレーム3と、前側フレーム2と後側フレーム3とを図1における左右方向(以下、この方向を清掃装置M又は装置フレーム1の前後方向と言う)に連結する多数の前後連結フレーム4と、前側フレーム2どうし或いは後側フレーム3どうし更には前後連結フレーム4どうしをそれぞれ装置Mの幅方向に連結する多数の幅方向連結フレーム6とで構成されている。
【0025】
幅方向連結フレーム6のうち上下方向における略中間部で前後連結フレーム4どうしを幅方向にそれぞれ連結するフレーム6には、搬送ローラR4,R5が取り付けられている。図示しない搬送コンベアの駆動により当該清掃装置M内に搬入されて来た空の円筒容器Dは、前記搬送ローラR4,R5によって清掃装置M内の所定位置まで搬送され、また、清掃後の円筒容器Dは、搬送ローラR4,R5によって清掃装置M内の所定位置から搬送コンベア(不図示)へ搬出される。かかる搬送ローラR4,R5は、円筒容器Dの下側に対応する領域において、少なくとも前後方向に2個および幅方向に2個の計4個が配設されている。この場合、円筒容器Dの搬入・搬出は、清掃装置Mの幅方向に行われる。
【0026】
内部の塗料が無くなって空になった円筒容器Dは、その一端の開口部Dhが図1における清掃装置Mの右方(以下、この方向を清掃装置Mの後方と言い、その逆方向を清掃装置Mの前方と言う)に向けられた状態で、装置M内に搬入されて来るように設定されている。尚、前側(図1における左側)の搬送ローラR4よりも更に前方位置には、円筒容器Dの搬入・搬出動作を案内すると共に、円筒容器Dの前端下部を位置決めする前側位置決めローラR6が配置されている。
【0027】
前側フレーム2と後側フレーム3とを上下方向における略中間部で前後方向に連結する前後連結フレーム4には、前側および後側の支持ローラR1及びR2を介して円筒容器Dを傾斜した状態で支持するために、それぞれ上下昇降シリンダ機構を備えた前側リフタS1と後側リフタS2が固定されている。前側および後側の支持ローラR1及びR2は幅方向に対をなして2個ずつ配置され、2個の前側支持ローラR1及び2個の後側支持ローラR2はそれぞれ、幅方向に延びるベース板(不図示)に固定されており、これらベース板がそれぞれ前側リフタS1のピストン及び後側リフタS2のピストンに取り付けられている。
【0028】
つまり、本実施形態では、2個の前側支持ローラR1を1台の前側リフタS1で昇降させ、2個の後側支持ローラR2を1台の後側リフタS2で昇降させることができるようになっている。尚、この代わりに、前側リフタ及び後側リフタをそれぞれ2台ずつ装置Mの幅方向に対をなすように設け、各前側リフタのピストン上端に前側支持ローラを直接に取り付け、各後側リフタのピストン上端に後側支持ローラを直接に取り付けるようにしてもよい。
【0029】
清掃されるべき空の円筒容器Dは、上述のように、その一端の開口部Dhが清掃装置Mの後方に向けられた状態で装置M内に搬入されて来るので、前側リフタS1のピストン突出量を後側リフタS2のピストン突出量よりも大きく設定することにより、円筒容器Dの開口部Dhが斜め下方を指向するように傾斜した状態で、当該円筒容器Dを支持することができる。本実施形態では、この円筒容器Dの傾斜角度を約15〜30度程度の範囲内で設定した。
【0030】
尚、傾斜状態で支持された円筒容器Dの後方上部には、該円筒容器Dの後端上部を位置決めする後側位置決めローラR7が配置されている。
上述の前側および後側のリフタS1及びS2並びに前側および後側の支持ローラR1及びR2が、「開口部が斜め下方に指向した状態で円筒容器を支持する容器支持手段」の主要部を構成している。
【0031】
このように、円筒容器Dをその開口部Dhが斜め下方を指向した傾斜状態に維持することにより、容器Dが空になった後に容器内面に付着しているチクソトロピー性残留物の一部を、容器内面に沿って垂れ流して容器Dの外部に排出させることも可能である。
排出された残留塗料を収集するために、傾斜状態で支持された円筒容器Dの開口部Dhの下方には収集ホッパ14が配置され、更に、この収集ホッパ14の下方には、収集した残留塗料を貯える残留塗料タンク15が配設されている。前記収集ホッパ14は装置フレーム1に取り付けられ、また、好ましくは、残留塗料タンク15も装置フレーム1に取り付けられている。
【0032】
一方、傾斜状態で支持された円筒容器Dの上方には、当該円筒容器Dをその長手方向軸線Ldを中心にして回転させるために、装置Mの幅方向に対を成す一対の駆動ローラR3が配置されている。該駆動ローラR3は、例えば電動式のもので、装置天井部の前後連結フレーム4に固定されたシリンダ装置S3により、略上下方向へ移動可能に支持されている。
このシリンダ装置S3を駆動して、傾斜状態に支持された円筒容器Dの上側に駆動ローラR3を圧接させた状態で、該駆動ローラR3が回転することにより、円筒容器Dをその長手方向軸線Ldを中心にして所定方向に所定回転速度で回転させることができる。
【0033】
清掃装置Mは、装置フレーム1から後方に突き出すようにして配設されたベースブーム21と、該ベースブーム21に沿ってその長手方向に摺動可能に設けられたスライドブーム27とを備えている。前記ベースブーム21にはその長手方向に伸長する所謂ボールネジ機構22が備えられ、該ボールネジ機構22を駆動するために、減速機構24を付設した例えば電動式のモータ23がベースブーム21の例えば後端部に設けられている。
【0034】
前記スライドブーム27の例えば後端部には、前記ボールネジ機構22と螺合するスライドブロック28が固定されており、モータ23を駆動してボールネジ22を回転駆動することにより、スライドブロック28を介して、スライドブーム27がボールネジ機構22に沿って(つまり、ベースブーム21に沿って)所定速度で摺動するようになっている。前記モータ23を所定方向に回転駆動することにより、スライドブーム27をベースブーム21に沿って前方(図1における左方)へ摺動させ、前述のように開口部Dhが斜め下方を指向した傾斜状態に支持された円筒容器Dの内部に、開口部Dhを通してスライドブーム27の先端側を侵入(前進)させることができる。一方、モータ23の回転方向を切り換えて駆動ことにより、スライドブーム27を円筒容器Dの内部から後退させて、図1に示す待機位置に位置させることができる。
【0035】
このように、前記モータ23の回転方向を切り換えることにより、円筒容器Dの内部に対するスライドブーム27の前進動作と後退動作とを簡単に切り換えることができる。この場合、好ましくは、ボールネジ機構22を利用したことにより、非常に低摩擦でスムースなスライドブーム27の摺動動作が得られる。
【0036】
装置フレーム1の上下方向における途中部には、後方に張り出すようにして装置フレーム1に固定されたブーム支持部11が設けられ、該ブーム支持部11の後面の上部には、前記ベースブーム21の途中部を上下方向へ回動可能に支持する枢支部25が設けられている。また、ブーム支持部11の前部には、ベースブーム21の前端側を支持して上下方向位置を調整する昇降シリンダS4が配設されている。この昇降シリンダS4を駆動してそのピストンP4を上下動させることにより、ベースブーム21前端の上下方向位置が調整される。つまり、前記枢支部25を中心にしてベースブーム21が上下方向に回動し、当該ベースブーム21の傾斜角度を調整することができる。
【0037】
前記スライドブーム27の先端には、円筒容器Dの内面を清掃するための内面清掃手段が備えられている。次に、この内面清掃手段および円筒容器の開口縁部を清掃する開口縁部清掃手段について説明する。
図4は前記内面清掃手段および開口縁部清掃手段の全体構成を概略的に示す斜視図、図5は図4の要部を拡大して示す拡大斜視図、図6は前記開口縁部清掃手段の構成を概略的に示す斜視図、図7は前記内面清掃手段の底面清掃具の構成を概略的に示す斜視図、図8は前記底面清掃具を前方から見て示した説明図、図9は前記底面清掃具および円筒容器を後方から見て示した説明図、また、図10は前記内面清掃手段の側面清掃具の構成を概略的に示す斜視図である。
【0038】
図4に示されるように、スライドブーム27の先端(前端)上部にはアーム基台33が固定され、前記円筒容器Dの内部底面Dbに押し当てられて該底面Db(図2参照)を清掃する底面用ブレード30を支持するための支持アーム34が取り付けられている。この支持アーム34の先端には、底面用ブレード30を保持する円形のホルダ板35が固定されている。底面用ブレード30は一対の挟持プレート37で挟持され、該挟持プレート37がブラケット36を用いてホルダ板35に固定されている。
【0039】
このようにして、底面用ブレード30が、スライドブーム27の先端上部から斜め前上方に向かって突き出すように取り付けられている。底面用ブレード30に使用する素材としては、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)が好ましい。このとき、底面用ブレード30の先端縁部が、スライドブーム27の伸長方向に対して実質的に直交するように、底面用ブレード30の取付方位および取付姿勢が設定されている。尚、この底面用ブレード30の構造および該底面用ブレード30の挟持プレート37による挟持状態の詳細については後述する。
【0040】
また、スライドブーム27の先端には、円筒容器Dの内部側面Ds(図2参照)に押し当てられて該側面Dsを清掃する側面用ブレード40を支持するためのジョイント部41(第1ジョイント)が設けられている。図5に詳しく示されるように、この第1ジョイント41は、継手要素としての鋼製の球面体(ボール)41bを備え、スライドブーム27の先端から一体的に突出したベース板41aと押さえ板41cとで球面体41bを挟み込んだ状態で、複数のボルトを用いて押さえ板41cをベース板41aに締結固定して構成されている。
【0041】
第1ジョイント41よりも前側には、当該第1ジョイント41と同様に、ベース板43a,球面体43b,押さえ板43cを備えてなる第2ジョイント43が位置しており、この第2ジョイント43の球面体43bと前記第1ジョイント41の球面体41bとは連結ロッド42で相互に連結されている。そして、側面用ブレード40は、保持プレート44を用いて第2ジョイント43のベース板43aの前端部に取り付けられている。つまり、第2ジョイント43のベース板43aの前側部分と前記保持プレート44との間に挟持された状態で、第2ジョイント43のベース板43aの前端部に、側面用ブレード40の部が固定されている。この側面用ブレード40は、例えばゴム等の弾性に富む材料を用いて、正面視で略半円に近い板状に形成されている。本実施形態では、側面用ブレード40の材料として、好ましくは、EPDMを用いた。
【0042】
側面用ブレード40の取付位置,取付方位および取付姿勢を3次元的に所望の状態に設定した上で、第1及び第2ジョイント41,43の押さえ板41c,43cをベース板41a,43aに締結固定して各球面体41b,43bを回動不能とすることにより、底面用ブレード30の3次元的な取付位置,取付方位および取付姿勢について、所望の状態が得られる。このように、それぞれ球面体41b,43bを継手要素として備えたジョイント41,43を介して、側面用ブレード40をスライドブーム27の先端に取り付けたことにより、側面用ブレード40の取付位置,取付方位および取付姿勢を3次元的に任意に調整でき、円筒容器Dの側面Dsに対する側面用ブレード40の押し当て状態を、容易かつ精密に調整することができる。尚、この側面用ブレード40の円筒容器側面Dsに対する押し当て状態の詳細については後述する。
【0043】
更に、装置フレーム1の幅方向における一方の後側フレーム3には、円筒容器Dの開口縁部Dkに押圧されて該開口縁部Dkを清掃する開口縁部用ブレード50が支持されている。
図6に詳しく示されるように、前記後側フレーム3には、開口縁部用ブレード50を円筒容器Dの開口縁部Dkに対して進退動させるために、ブレード用シリンダS6がブラケット51を用いて固定されている。
【0044】
ブレード用シリンダS6の前方には、該シリンダS6の駆動により円筒容器Dの開口縁部Dkに対して進退動するホルダ板52が配置され、該ホルダ板52の前方には、前述の第1,第2ジョイント41,43と同様に、ベース板54a,球面体54b,押さえ板54cを備えてなるジョイント54が位置しており、このジョイント54の球面体54bと前記ホルダ板52とは連結ロッド53で相互に連結されている。そして、開口縁部用ブレード50は、保持プレート54を用いてジョイント54のベース板54aの前端部に取り付けられている。つまり、ジョイント54のベース板54aの前側部分と前記保持プレート55との間に挟持された状態で、ジョイント54のベース板54aの前端部に、開口縁部用ブレード50が取り付けられている。
【0045】
開口縁部用ブレード50の取付方位および取付姿勢を3次元的に所望の状態に設定した上で、ジョイント54の押さえ板54cをベース板54aに締結固定して球面体54bを回動不能とすることにより、開口縁部用ブレード50の3次元的な取付方位および取付姿勢について、所望の状態が得られる。
開口縁用ブレード50は、例えばゴム等の弾性に富む材料を用いて、平面視で略半円に近い板状に形成されている。本実施形態では、開口縁用ブレード50の材料として、好ましくは、EPDMを用いた。
【0046】
開口縁用ブレード50の前部の略中央には、略U字状の切欠部50kが設けられており、ブレード用シリンダS6を駆動し、ホルダ板52及びジョイント54を介して、開口縁部用ブレード50を円筒容器Dの開口縁部Dkに対し前進させることにより、開口縁用ブレード50の前記切欠部50kに開口縁部Dkが嵌り込み、ブレード前部の切欠部50kよりも内側部分50aと外側部分50bとで、開口縁部Dkを所定の弾性力をもって挟み込んだ状態となる。つまり、ブレード前部の切欠部50kよりも内側部分50aが、所定の押圧力をもって開口縁部Dkの内面側に押し当てられる。
【0047】
この押し当て状態で、円筒容器Dが矢印Yd方向に回転することにより、ブレード前部の切欠部50kよりも内側部分50aが所謂スクレーパとして作用し、円筒容器Dの開口縁部Dkの内面側に付着残留した塗料が効果的に掻き取られ、下方に位置する収集ホッパ14内に掻き落とされて収集されるようになっている。これにより、円筒容器D内部の底面Db及び側面Dsに加えて、開口縁部Dkについても、自動的に清掃を行うことができる。
円筒容器D内部の清掃が終了すると、ブレード用シリンダS6が駆動されて開口縁部用ブレード50が円筒容器Dの開口縁部Dkから後退させられ、図4に示す待機位置に維持される。
【0048】
図7,図8及び図9から良く分かるように、底面用ブレード30は、円筒容器Dの底面Dbの周縁部から底面Dbの中心Dcに至る途中部までの領域を清掃する第1ブレード部31と、該第1ブレード部31に対して、先端側が円筒容器Dの回転方向(図9:矢印Yd方向)における上流側に位置するように所定角度α(図9参照)だけ傾斜して設けられ、前記途中部から中心Dcを越えるまでの領域を清掃する第2ブレード部32とで構成されている。本実施形態では、これら第1,第2のブレード部31,32はそれぞれ別のブレード体として構成されている。この代わりに、両ブレード部31,32を一体に成形することもできる。第1,第2のブレード部31,32は共に、例えばゴム等の弾性に富む材料を用いて、平面視で略矩形の板状に形成されている。本実施形態では、底面用ブレード30の材料として、好ましくは、EPDMを用いた。
【0049】
第1ブレード部31の後部は、前記一対の挟持プレート37(第1挟持プレート)で挟持されており、上側の第1挟持プレートに、下側の第2挟持プレート38の一端側が、例えば溶着によって傾斜状(傾斜角:α)に固定されている。この下側の第2挟持プレート38と対をなす上側の第2挟持プレート38との間に、第2ブレード部32の後部が挟持されている。尚、本実施形態では、この第2ブレード部32の傾斜角αを、例えば約15〜60度程度の範囲内で設定した。
【0050】
ここに、円筒容器底面Dbの周縁側に対応する第1ブレード部31の端部31sは、第1挟持プレート37から所定長さだけはみ出すように設定され、端部31s全体が容易に弾性変形できるようになっている。この第1ブレード部31の端部31sが容易に弾性変形できることにより、円筒容器底面Dbの周縁のR形状Dr(図9参照)に沿うようにして前記端部31sが弾性変形し、この部分の残留塗料も余すことなく掻き落とすことができる。尚、本清掃装置Mで清掃される円筒容器Dとしては、底面Dbの周縁部に付着塗料が残留することを回避する観点から、底面Dbの周縁部のRが比較的大きい、所謂、鍋底型のものが好ましい。
【0051】
前記底面用ブレード30及び側面用ブレード40で円筒容器Dの内面(底面Db及び側面Ds)を清掃するには、前記ベースブーム21後端のモータ23を所定方向に回転駆動することにより、スライドブーム27を図1に示す待機位置から前進させ、前述の傾斜状態に支持された円筒容器Dの内部に、開口部Dhを通してスライドブーム27の先端側を侵入(前進)させる。このとき、側面用ブレード40が円筒容器Dの内側面Dsと干渉しないように、スライドブーム27の先端側は昇降シリンダS4によって所定量以上に持ち上げられている。
【0052】
そして、スライドブーム27を更に前進させて、底面用ブレード30の先端縁部が、円筒容器Dの底面Dbに近接または一部が接触する所定位置にまで達すると、モータ23の駆動が停止されてスライドブーム27の前進動作が終了する。
次に、昇降シリンダS4を駆動してピストンP4を下降させ、ベースブーム21の(つまりスライドブーム27の)先端側を所定量だけ下降させる。これにより、スライドブーム27は枢支部25を中心にして図1における反時計回り方向に回動する。
【0053】
本実施形態では、スライドブーム27が円筒容器Dの長手方向軸線Ldと実質的に平行になるまで、スライドブーム27を回動させることにより、スライドブーム27の先端側に保持された側面用ブレード40が、円筒容器Dの側面Dsに対して所定の押圧力をもって押し当てられる。また、同時に、底面用ブレード30が、円筒容器Dの底面Dbに対して実質的平行に保たれた状態で所定の押圧力をもって押し当てられる。
【0054】
昇降シリンダS4による支持がなければ、ベースブーム21及びスライドブーム27並びにそれらに取り付けられた種々の部材等の自重に基づくモーメント荷重により、底面用ブレード30及び側面用ブレード40は、非常に過剰な押圧力をもって、それぞれ底面Db及び側面Dsに押し当てられることになるのであるが、本実施形態では、前記昇降シリンダS4のピストンP4の下降により、スライドブーム27が円筒容器Dの長手方向軸線Ldと実質的に平行になるまで、スライドブーム27を回動させることにより、底面用ブレード30及び側面用ブレード40を、掻き取り機能や耐久性等の観点から好適な押圧力をもって、それぞれ底面Db及び側面Dsに押し当てることができるように設定されている。
【0055】
このように、枢支部25で上下回動可能に支持されたベースブーム21に対し前後スライド可能に支持されたスライドブーム27の先端に側面用ブレード40を取り付け、前記ベースブーム21の先端側を昇降シリンダS4で上下位置調整可能に支持したことにより、比較的簡単な構成で、底面用ブレード30及び側面用ブレード40をそれぞれ円筒容器Dの内側底面Db及び内側面Dsに対し、必要に応じて接離動作させることができる。
【0056】
このように、本実施形態では、ベースブーム21及びスライドブーム27並びに昇降シリンダS4が、「底面清掃具(底面用ブレード)を円筒容器の内部底面に押し当てる底面清掃具押し当て手段」及び「側面清掃具(側面用ブレード)を円筒容器の内部側面に押し当てる側面清掃具押し当て手段」の両方の主要部を兼ねて構成している。
尚、この代わりに、底面清掃具押し当て手段と側面清掃具押し当て手段とを別々に設け、底面用ブレードを円筒容器の底面に押し当てて底面の清掃を行った後に、側面用ブレードを円筒容器の側面に押し当てるように構成することもできる。
【0057】
上述のように、底面用ブレード30を円筒容器Dの底面Dbに対して実質的平行に保たれた状態で所定の押圧力をもって押し当てた状態で、円筒容器Dが矢印Yd方向に回転することにより、底面用ブレード30が所謂スクレーパとして作用し、円筒容器Dの底面Dbに付着残留した塗料が効果的に掻き取られる。これにより、円筒容器D内部の底面Dbを自動的に清掃することができる。
【0058】
尚、本実施形態では、前記第1ブレード部31を含むブレード体は、円筒容器Dの底面Dbの周縁部から底面Dbの中心Dcを越える長さを有しているが、本願発明者らの経験によれば、このような長さのブレード体を用いただけでは、底面Dbの中心Dc及びその付近については、付着した残留塗料を有効に掻き取って十分な清掃効果を安定して得ることが難しかった。
【0059】
そこで、本実施形態では、第1ブレード部31に加えて前記第2ブレード部32を設けることにより、底面Dbの周縁部から底面Dbの中心Dcに至る途中部から中心Dcを越えるまでの領域を清掃するようにしたものである。この第2ブレード部32を設けたことにより、底面Dbの中心Dc及びその付近についても、付着していた残留塗料を十分効果的に掻き取り、安定した清掃効果を得ることができた。
【0060】
このようにして、底面用ブレード30による円筒容器Dの底面Dbの清掃を終えると、側面用ブレード40による側面Dsの清掃が開始される。
すなわち、側面用ブレード40を円筒容器Dの側面Dsに対して所定の押圧力をもって押し当てた状態で、且つ、円筒容器Dが矢印Yd方向に継続して回転している状態で、ベースブーム21後端のモータ23を逆方向に回転駆動してスライドブーム27を所定速度で後退動作させることにより、側面用ブレード40が所謂スクレーパとして作用し、円筒容器Dの側面Dsに付着残留した塗料が掻き取られる。これにより、円筒容器D内部の側面Dsを自動的に清掃することができる。
【0061】
尚、このような側面用ブレード40で円筒容器D内部の側面Dsを清掃する場合、円筒容器Dの長手方向軸線Ldを含む面に沿うようにブレード40を保持することが考えられるが、本願発明者らの経験によれば、このように側面用ブレード40を保持して側面Dsの清掃を行ったのでは、該側面Dsに付着塗料が螺旋状に残り、十分な清掃効果を安定して得ることが難しかった。
【0062】
そこで、本実施形態では、図10に示されるように、側面用ブレード40を、円筒容器Dの長手方向軸線Ldを含む面Fdに対して、後側(円筒容器開口部Dhに近い側:図10における下側)が当該円筒容器Dの回転方向における下流側(図10における左側)に位置するように傾斜した状態で(傾斜角度:β)、円筒容器Dの内部側面Dsに押し当てるようにした。本実施形態では、この傾斜角度βを、例えば約15〜45度程度の範囲内で設定した。
【0063】
これにより、側面Dsに付着塗料が螺旋状に残ることなく、十分効果的に付着した残留塗料を掻き取り、安定した清掃効果を得ることができた。これは、側面用ブレード40で掻き取られた残留塗料が、側面用ブレード40の縁部に沿って容器開口部Dh側に流れ易くなって、ブレード40の端部において清掃済みの領域(図10におけるブレードよりも左側の領域)側に回り込んで再付着することが抑制されることによるものと考えられる。尚、図10において、円筒容器Dの回転方向を矢印Ydで示し、側面用ブレード40の後退方向を矢印Ysで示した。
【0064】
尚、以上の説明では、底面用,側面用,開口縁部用の各ブレード30,40,50の素材としては、好ましくはエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)が用いられていたが、かかるブレードの素材としては、EPDMに限られるものではなく、これ以外の種々のゴム或いは合成樹脂も好適に用いることができる。更に、条件によってはステンレス鋼や軟鋼などの金属材料も使用可能である。
ゴム材料としては、ジエン系ゴム(例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム等)或いは非ジエン系ゴム(例えば、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロスルフォン化ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、フッ素ゴム等)の何れのゴムでも好適に使用することができる。また、合成樹脂材料では、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニル、シリコン樹脂、フッ素樹脂などが好適である。
【0065】
また、具体的には図示していないが、スライドブーム27の先端側には、円筒容器Dの内面Db,Dsに付着した残留塗料の除去に適応した洗浄液や溶剤(本実施形態では、例えば、市販のアルカリ系の金属用洗剤)を、円筒容器Dの内面Db,Dsに噴射供給するために噴射ノズルが取り付けられ、該噴射ノズルは、配管チューブを介して、前記市販のアルカリ系の金属用洗剤を吐出供給するポンプ装置に繋がれている。
【0066】
このアルカリ系洗剤の供給は、付着した残留塗料の粘度が余りに高い場合や、少なくとも一部が固化している場合など、弾性ブレード30,40,50を用いた掻き取り作用だけでは容易に除去できない場合に、残留塗料の粘度を低下せしめることを目的として行われる。また、後述する仕上げ清掃工程で用いられる洗浄液や洗剤とは異なる洗浄剤を容器内面Db,Dsに付着させ、僅かに残存する塗料に浸透させることで、仕上げ清掃で用いられる洗浄剤との相乗効果により一層効果的な洗浄を行えるようにすることを目的としている。より詳しく説明すれば、後述する仕上げ清掃工程で、特にジェット洗浄を行う場合には、使用する洗浄液は泡立ちの少ないものに限定されるが、本清掃装置Mを用いた掻き取りによる清掃工程では、洗浄剤にこのような制限はなく、例えば、泡立ちが良く界面活性能の強い洗浄剤を使用することができる。このような洗浄剤を容器内面Db,Dsに付着させ残留塗料に浸透させておくことで、後工程の仕上げ清掃で用いられる洗浄剤との相乗効果によって、仕上げ清掃を非常に容易で効果的に行えるのである。
【0067】
何れを主たる目的とする場合についても、本清掃装置Mを用いた清掃工程での洗剤の使用量はごく僅かである。尚、このアルカリ系洗剤を円筒容器Dの内面Db,Dsに供給する場合、噴霧状態で供給すると装置Mの周囲にまで霧滴が飛散するおそれがあるので、かかる場合には必要に応じて、泡状に供給されるか、若しくは液滴として内面Db,Dsに噴射供給される程度の圧力条件等で行われることが好ましい。また、前記洗剤は、必要に応じて加温して供給されてもよい。
【0068】
また、具体的には図示していないが、本清掃装置Mには、その作動を好適に制御するために、例えばマイクロコンピュータを主要部として構成された制御ユニットが付設されており、前述のモータ23、駆動ローラR3、リフタS1,S2、シリンダ装置S3,S,S5、洗浄剤供給用のポンプ装置などの各種の制御要素は、この制御ユニットに信号授受可能に接続され、その命令信号に応じて制御されるようになっている。
【0069】
以上のように構成された清掃装置Mによる円筒容器Dの清掃工程の概略について、図11の工程フローチャートを参照しながら説明する。
尚、本清掃装置Mによる円筒容器Dの清掃は、洗浄液や洗剤等を用いて円筒容器Dの内面Db,Dsを洗浄した後に乾燥させる最終的な仕上げ清掃工程に先立って、その前工程として行われるものである。
【0070】
また、前記工程フローチャートは、内部の塗料が無くなって空になった円筒容器Dが、その一端の開口部Dhが装置Mの後方(図1における右方)に向けられた状態で装置M内に搬入され、円筒容器Dの前端下部が前側位置決めローラR6で位置決めされた状態を、初期状態としたものである。
【0071】
この初期状態で清掃装置Mの制御が開始されると、まず、ステップ#1で円筒容器が前述の傾斜状態とされる。つまり、前側リフタS1のピストン突出量を後側リフタS2のピストン突出量よりも大きく設定した下で両リフタS1,S2を駆動し、円筒容器Dの開口部Dhが斜め下方を指向するように傾斜した傾斜状態(傾斜角度:略15度前後)に、当該円筒容器Dを支持する。チクソトロピー性が小さい塗料の場合には、円筒容器Dをこの傾斜状態に維持するだけで、容器内面に付着していた残留塗料のかなりの部分が垂れ流されて、収集ホッパ14から残留塗料タンク15内に収集される。
【0072】
次に、ステップ#2で、モータ23を駆動してスライドブーム27の前進動作を開始させる。このとき、前述のように、各ブレードが円筒容器Dの内側面Dsと干渉しないように、スライドブーム27の先端側は昇降シリンダS4によって所定量以上に持ち上げられている。
【0073】
また、ステップ#3で円筒容器Dの回転を開始させる。つまり、シリンダ装置S3を駆動して傾斜状態の円筒容器Dの上側に、回転する駆動ローラR3を圧接させることにより、円筒容器Dをその長手方向軸線Ldを中心にして所定方向に所定の回転速度で回転させる。本実施形態では、例えば、後方から(開口部Dh側から)見て時計回り方向に約10〜20rpm程度の範囲内の一定速度で円筒容器Dを回転させた。このステップ#3の工程と前記ステップ#2の工程は、同時に行われても良く、或いは、順序を逆にして行われても良い。
【0074】
更に、ステップ#4で、ブレード用シリンダS6を駆動して開口縁部用ブレード50を円筒容器Dの開口縁部Dkに押し当て、開口縁部Dkの残留塗料の掻き取を開始する。これにより、開口縁部Dkの内面側に付着した塗料が効果的に掻き取られ、下方に位置する収集ホッパ14内に掻き落とされて収集される。
【0075】
また、底面用ブレード30が、円筒容器Dの底面Dbに近接または接触する所定位置に達すると、モータ23の駆動が停止されてスライドブーム27の前進動作が終了する(ステップ#5)。このステップ#5の工程と前記ステップ#4の工程は、同時に行われても良く、或いは、順序が逆になってもよい。
【0076】
次に、ステップ#6で、昇降シリンダS4を駆動して、円筒容器Dの長手方向軸線Ldと実質的に平行になるまでスライドブーム27を回動させる。これにより、底面用ブレード30及び側面用ブレード40が、好適な押圧力をもって、それぞれ円筒容器Dの底面Db及び側面Dsに押し当てられる。これにより、底面Dbの掻き取りが始まり、底面用ブレード30を底面Dbへ押し当てた状態で少なくとも容器Dを1回転させることにより、底面Dbの掻き取りが行われる(ステップ#7)。
【0077】
底面Dbの掻き取りを終えると、側面用ブレード40が円筒容器Dの側面Dsへ押し当てられた状態で、モータ23を逆方向に回転駆動してスライドブーム27を所定速度で後退させることにより、側面用ブレード40が円筒容器Dの側面Dsに対し螺旋状に相対変位し、側面Dsに付着した残留塗料が螺旋状に掻き取られる(ステップ#8)。本実施形態では、例えば、約10〜30mm/秒程度の範囲内の一定速度でスライドブーム27を後退させるようにした。
【0078】
尚、このように円筒容器Dの内面(底面Db及び側面Ds)を清掃するに際し、必要に応じて、
円筒容器Dの内面Db,Dsに所要の洗浄剤(例えばアルカリ系洗剤)を、ごく少量だけ噴射供給することができる。
【0079】
円筒容器Dの開口部Dhにわたるまで側面Dsの掻き取りが行われて、スライドブーム27が図1に示す待機位置まで後退させられると、昇降シリンダS4が駆動されてスライドブーム27の前端側が持ち上げられ、待機状態に維持される(ステップ#9)。また、ブレード用シリンダS6が駆動されて、開口縁部用ブレード50が後退し待機状態に維持される(ステップ#10)。
【0080】
また、駆動ローラR3の回転が停止され、円筒容器Dから離隔される。これにより、円筒容器Dの回転が停止する(ステップ#11)。次いで、リフタS1,S2が駆動されて初期状態に戻され、円筒容器Dが水平に保持される(ステップ#12)。その後、図示しない搬送コンベアの駆動により、円筒容器Dが後工程のステーションに向かって搬出されるようになっている(ステップ#13)。
【0081】
前述のように、この後工程は最終的な仕上げ清掃工程であり、洗浄液や洗剤等を用いて、ブラシやジェット噴流等で円筒容器Dの内面Db,Dsを洗浄し、更に、純水等でリンスした後に乾燥が行われる。
前記清掃装置Mと後工程の最終的な仕上げ清掃を行う各種装置とで、図12の工程フローチャートに示すような一連の清掃工程を行う清掃システムが構成されている。
【0082】
すなわち、清掃装置Mによる前述の掻き取り清掃工程(工程ST1)が終了すると、工程ST2でブラシ洗浄が行われる。このブラシ洗浄工程は、円筒容器Dの内部に所定の洗浄剤をふりかけながら、主として内面Db,Dsをブラシで擦ることによって円筒容器の内面Db,Dsを洗浄する工程である。この工程で用いるブラシ洗浄装置としては、種々の公知の機構を備えたものを使用することができる。また、この工程では、例えばアルカリ系の洗浄剤で、より好ましくは、比較的泡立ちの少ないものが用いられる。
【0083】
ブラシ洗浄工程が終了すると、次に、工程ST3でジェット洗浄が行われる。このジェット洗浄工程は、高圧スプレーを用いて、円筒容器Dの内部に所定の洗浄液のジェット噴流を吹き付けることにより、円筒容器の内面Db,Dsを洗浄する工程である。このジェット洗浄工程では、より好ましくは、洗浄液を例えば60℃程度に加温してジェット噴流を吹き付ける1次ジェット洗浄と、この1次ジェット洗浄の後に常温の洗浄液をジェット噴流として吹き付ける2次ジェット洗浄とに分けて行うことで、より高い洗浄効果を得ることができる。この工程で用いるジェット洗浄装置としては、種々の公知の機構を備えたものを使用することができる。また、この工程では、例えばアルカリ系の洗浄液で、泡立ちの少ないものが用いられる。
【0084】
清掃装置Mによる前述の掻き取り清掃工程(工程ST1)で洗浄剤を適用する場合、前述のように、ブラシ洗浄やジェット洗浄とは異なり、泡立ちが良く界面活性能の強い洗浄剤を使用することができる。このような洗浄剤を容器内面Db,Dsに付着させ残留塗料に浸透させておくことで、後工程のブラシ洗浄(工程ST2)やジェット洗浄(工程ST3)で用いる洗浄剤/洗浄液との相乗効果によって、これらブラシ洗浄やジェット洗浄による仕上げ清掃を非常に容易で効果的に行えることは、前述の通りである。
【0085】
ジェット洗浄工程が終了すると、清掃した円筒容器内面Db,Dsのリンス(濯ぎ)が行われる(工程ST4)。このリンスは、例えば純水を用いて行われ、1次リンス工程と、その後に行う2次リンス工程とに分けて行うことで、より高いリンス効果を得ることができる。
【0086】
このリンス工程が終了すると、圧縮空気を用いたエアブローによる水切りが行われ(工程ST5)、更に、乾燥(工程ST6)が行われる。この乾燥工程では、清掃済みの円筒容器Dは、例えば約110℃程度の温度で約5〜10分程度保持されることで、水分が除去される。その後、円筒容器D内部の最終チェック(工程ST7)が行われ、円筒容器Dの開口端部Dhが蓋で閉じられた上で(工程ST8)、清掃済み円筒容器Dの保管エリアに向かって搬出される。
【0087】
尚、図12の例ではブラシ洗浄(工程ST2)の後にジェット洗浄(工程ST3)を行うようにしているが、これらの洗浄の工程順序は前記に限定されるものではなく、逆の順序で行われてもよい。また、ブラシ洗浄,ジェット洗浄の回数についても、それぞれ1回ずつに限られるものではなく複数回行われてもよい。
【0088】
以上のように、本実施形態に係る清掃システムでは、最終的な仕上げ清掃工程に先立って、前記清掃装置Mを用いて円筒容器Dの内面(底面Db,側面Ds)及び開口縁部Dkの残留塗料を十分効果的に掻き取られているので、後工程の仕上げ清掃工程で使用される洗浄液や洗剤等に混入する残留塗料は非常に少量であり、これら洗浄液や洗剤等を繰り返して何度も使用することが可能になる。従って、洗浄液や洗剤等に係るコスト負担を大幅に低減でき、また、廃液処理に係る環境への負荷についても、有効に抑制することができる。
【0089】
また、以上、説明したように、本実施形態に係る清掃装置Mによれば、開口部Dhが斜め下方に指向した状態で支持され、長手方向軸線Ldを中心にして所定方向に回転させられる円筒容器Dに対して、底面用ブレード30と側面用ブレード40円筒容器D内部の所定位置まで前進させ、底面用ブレード30を円筒容器Dの内部底面Dbに押し当てた状態で円筒容器Dが所定回数回転した後に、側面用ブレード40を円筒容器Dの内部側面Dsに押し当てた状態と円筒容器Dの回転状態とを維持しながら、前記側面用ブレード40を円筒容器Dの内部側面Dsに沿って後退させることにより、円筒容器D内部の底面Dbおよび側面Dsに付着したチクソトロピー性残留物を自動的に除去して、該円筒容器D内部の底面Dbおよび側面Dsを共に効率良く清掃することができるのである。
【0090】
尚、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、変更および改良等がなされるものであることは、いうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、円筒容器の清掃装置および清掃システムに関し、円筒容器内部の底面および側面に付着したチクソトロピー性残留物を自動的に除去して、これら底面および側面を共に効率良く清掃することができ、例えば、塗料やインク等のチクソトロピー性がある内容物を収容・保管・運搬等するためのドラム缶など、一端に開口部を有する円筒容器について、容器が空になった後に容器内面に付着したチクソトロピー性残留物を自動的に除去して該内面を清掃する清掃装置,清掃システムとして、有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施形態に係る円筒容器の清掃装置の全体構成を概略的に示す側面説明図である。
【図2】傾斜状態で支持された前記円筒容器を拡大して示す拡大断面図である。
【図3】前記清掃装置を、図1におけるY3−Y3矢印方向から見て示した矢視図である。
【図4】前記清掃装置の内面清掃手段および開口縁部清掃手段の全体構成を概略的に示す斜視図である。
【図5】図4の要部を拡大して示す拡大斜視図である。
【図6】前記開口縁部清掃手段の構成を概略的に示す斜視図である。
【図7】前記内面清掃手段の底面清掃具の構成を概略的に示す斜視図である。
【図8】前記底面清掃具を前方から見て示した説明図である。
【図9】前記底面清掃具および円筒容器を後方から見て示した説明図である。
【図10】前記内面清掃手段の側面清掃具の構成を概略的に示す斜視図である。
【図11】前記清掃装置による円筒容器の清掃工程を説明するための工程フローチャートである。
【図12】本発明の実施形態に係る円筒容器の清掃システムを説明するための工程フローチャートである。
【符号の説明】
【0093】
1 装置フレーム
21 ベースブーム
22 ボールネジ機構
23 モータ
25 枢支部
27 スライドブーム
28 スライドブロック
30 底面用ブレード
31 (底面用ブレードの)第1ブレード部
32 (底面用ブレードの)第2ブレード部
40 側面用ブレード
50 開口縁部用ブレード
D 円筒容器
Db (円筒容器の)底面部
Dc (円筒容器の)底面の中心
Dh (円筒容器の)開口部
Dk (円筒容器の)開口縁部
Ds (円筒容器の)側面
Fd (円筒容器の)長手方向軸線を含む面
Ld (円筒容器の)長手方向軸線
M 清掃装置
R1 前側支持ローラ
R2 後側支持ローラ
R3 駆動ローラ
S1 前側リフタ
S2 後側リフタ
S4 昇降シリンダ
S6 ブレード用シリンダ
α (底面用ブレードの)第2ブレード部の傾斜角
β 側面用ブレードの傾斜角
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒容器の清掃装置、より詳しく言えば、例えば塗料等のチクソトロピー性がある内容物を収容・保管・運搬等するためのドラム缶など、一端に開口部を有する円筒容器について、容器が空になった後に容器内面に付着したチクソトロピー性残留物を、自動的に除去して該内面を清掃する円筒容器の清掃装置、及びかかる清掃装置を組み込んだ円筒容器の清掃システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上述のような円筒容器が空になった後にその内面を清浄化する一般的な方法としては、洗浄液や溶剤を適用して容器内面に付着したチクソトロピー性残留物を除去する方法が知られている。この方法によれば、付着している残留物の除去に適応した洗浄液や溶剤を選定することにより、容易かつ効果的にチクソトロピー性残留物を除去し、容器の再利用を図ることができる。
【0003】
しかしながら、この方法では、容器内面に付着していたチクソトロピー性残留物が全て洗浄液や溶剤に混入することになるので、洗浄液や溶剤を繰り返して使用することはできない。従って、非常に少ないサイクル数で、新たな洗浄液や溶剤を用意し、また、使用済みのものを廃液として処理する必要がある。このため、コスト負担が大きくなり、また、環境への負荷の抑制を図る上でも好ましくない。
【0004】
従って、この方法を適用する場合には、洗浄液や溶剤を用いた洗浄に先立って、容器内面に付着したチクソトロピー性残留物を前工程で極力除去しておき、付着残留物ができるだけ少なくなった状態で洗浄液や溶剤を適用して清浄化することが望ましい。
【0005】
尚、チクソトロピー性がある内容物を取り扱う円筒容器の再利用を念頭に置いた他の清掃方法として、空になった円筒容器を高温で加熱し、内面に付着残留している内容物をバーンアウトし、ショットブラスト等の表面処理を行った後に洗浄・乾燥を行うことが知られているが、この場合でも、バーンアウトに要するコストの低減や環境問題への配慮の観点から、円筒容器内の残留物を前工程で極力除去しておくことが望ましい。
【0006】
かかる問題に関連して、例えば特許文献1には、使用済みのドラム缶の底部付近に溜まっているチクソトロピー性の高い残留物を掻き取って、ドラム缶の側面に再付着させることなく、ドラム缶外部へ搬送・排出させることを企図したドラム缶内部残留物除去装置が開示されている。
【特許文献1】特開2007−160197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この特許文献1に記載された先行技術では、回収ドラム缶は通常ストックヤードに立置きされるので、当初において底部より上の側面に残留物が付着していても、その残留物は時間経過と共に流下し、最終的には、その殆どがドラム缶の底部付近に溜まり、ドラム缶の側面には残留物は殆ど付着していないことを前提としている。従って、ドラム缶の側面については、底部付近で掻き取った残留物を外部へ搬送・排出させる際に再付着させないように配慮するのみで、側面自体を清掃することについては全く念頭に置かれていない。
【0008】
しかしながら、近年では、例えば、自動車の外板等の塗装に用いられる水性塗料など非常に粘性が高いもの、すなわち、高ズリ速度での粘度は小さいが低ズリ速度での粘度が非常に高くなるような高チクソトロピー性を示すもの、も珍しくない。このような高チクソトロピー性を示すものの例としては、日本ペイント株式会社製水性ベース塗料であるAR−2000シリーズがあげられる。この塗料では、B型粘度計で6rpmでの粘度η6と60rpmでの粘度η60との比η6/η60の値が2以上となるような高いチクソトロピー性が付与されている。
【0009】
ドラム缶の内容物がこのような高いチクソトロピー性を示す内容物の場合、内容物を使用した後に空になった容器(ドラム缶)を縦置きでストックしたとしても、ドラム缶の内壁に付着残留した内容物には、重力による低ズリ速度しか加わらない。このような状態では、容器内側面に付着残留した内容物はなかなか容易には流下せず、ある程度以上の長時間にわたって放置した場合には、側面に付着した状態でそのまま固化が始まることもある。このような場合、円筒容器内の底面だけでなく、側面についても付着残留物を掻き取って除去する必要がある。
【0010】
また、前記特許文献1に記載された先行技術では、容器内側面の掻き取りが不要となる程度にまで、当該側面に付着した残留物が容器底面付近へ流下する必要があり、それまでは、特許文献1に記載の装置を用いた容器内部の清掃を行うことはできない。従って、容器清掃を行うには、その待ち時間をも考慮する必要があり、工程の自由度が大きく損なわれることになる。
【0011】
そこで、本発明は、円筒容器内部の底面および側面に付着したチクソトロピー性残留物を自動的に除去して、該円筒容器内部の底面および側面を共に清掃することができる円筒容器の清掃装置、及びかかる清掃装置を組み込んだ円筒容器の清掃システムを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため、本願発明に係る円筒容器の清掃装置は、一端に開口部を有する円筒容器の内面に付着したチクソトロピー性残留物を除去して該内面を清掃する円筒容器の清掃装置であって、a)前記開口部が斜め下方に指向した状態で前記円筒容器を支持する容器支持手段と、b)該容器支持手段で支持された前記円筒容器を、その長手方向軸線を中心にして所定方向に回転させる容器回転手段と、c)前記円筒容器の内部底面に押し当てられて該底面を清掃する底面清掃具と、円筒容器の内部側面に押し当てられて該側面を清掃する側面清掃具と、を備えた内面清掃手段と、d)前記開口部を通して、前記内面清掃手段を円筒容器の内部に対して進退動させる進退動手段と、e)前記底面清掃具を円筒容器の内部底面に押し当てる底面清掃具押し当て手段と、f)前記側面清掃具を円筒容器の内部側面に押し当てる側面清掃具押し当て手段と、g)前記各手段を制御する制御手段と、を備え、h)該制御手段は、前記進退動手段が前記内面清掃手段を円筒容器内部の所定位置まで前進させ、前記底面清掃具押し当て手段が前記底面清掃具を円筒容器の内部底面に押し当てた状態で円筒容器が所定回数回転した後に、前記側面清掃具押し当て手段が前記側面清掃具を円筒容器の内部側面に押し当てた状態と円筒容器の回転状態とを維持しながら、前記進退動手段が前記側面清掃具押圧手段を円筒容器の内部側面に沿って後退させるように制御する、ことを特徴としたものである。
【0013】
この場合、前記チクソトロピー性残留物が、B型粘度計で6rpmでの粘度η6と、60rpmでの粘度η60との比η6/η60の値で2以上を示す内容物であってもよい。
【0014】
以上の場合において、前記進退動手段は、i)一端が前記円筒容器の開口部近傍に位置し斜め下方に向かって伸長するベースブームと、一端に前記内面清掃手段を備え前記ベースブームの長手方向に沿って摺動可能にベースブームに支持されたスライドブームとを備え、j)前記ベースブームは、枢支部を中心にして上下方向に回動可能に支持されると共に、前記枢支部よりも円筒容器の開口部に近い側が昇降手段で昇降可能に支持されており、k)前記昇降手段の下降動作によってベースブームが前記枢支部を中心にして下方に回動し、前記底面清掃具が円筒容器の内部底面に対して押し当てられ、前記側面清掃具が円筒容器の内部側面に対して押し当てられる、ようにすることができる。
【0015】
また、以上の場合において、前記円筒容器の開口縁部に押圧されて該開口縁部を清掃する開口縁部清掃具を更に備えている、ことがより好ましい。
【0016】
更に、以上の場合において、前記側面清掃具は弾性ブレードを備え、該弾性ブレードは、円筒容器の長手方向軸線を含む面に対して、円筒容器の開口部に近い側が当該円筒容器の回転方向における下流側に位置するように傾斜した状態で、円筒容器の内部側面に押し当てられる、ことがより一層好ましい。
【0017】
また更に、以上の場合において、前記底面清掃具は弾性ブレードを備え、該弾性ブレードは、円筒容器の底面の周縁部から中心に至る途中部までの領域を清掃する第1ブレード部と、該第1ブレード部に対して傾斜して設けられ、前記途中部から中心を越えるまでの領域を清掃する第2ブレード部とで構成されている、ことが更に好ましい。
【0018】
また更に、以上の場合において、前記円筒容器の内面に所定の洗浄剤を供給する洗浄剤供給手段を更に備えている、ようにしてもよい。
【0019】
また、本願発明に係る円筒容器の清掃システムは、一端に開口部を有する円筒容器の内面に付着したチクソトロピー性残留物を除去して該内面を清浄化する円筒容器の清掃システムであって、本願発明に係る前記円筒容器の清掃装置と、円筒容器の内面に洗浄剤を供給し、該内面をブラシで擦ることによって円筒容器の内面を洗浄するブラシ洗浄装置、及び/又は前記円筒容器の内面に洗浄液のジェット噴流を吹き付けることによって当該円筒容器の内面を洗浄するジェット洗浄装置と、を備え、前記清掃装置による清掃を終えた後に、前記ブラシ洗浄装置による洗浄及び/又は前記ジェット洗浄装置による洗浄を行う、ことを特徴としたものである。
尚、この場合において、前記ブラシ洗浄装置による洗浄と前記ジェット洗浄装置による洗浄とは、何れを先に行ってもよく、また、それらの回数も1回に限るものではなく、複数回行われてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本願発明に係る円筒容器の清掃装置によれば、開口部が斜め下方に指向した状態で支持され、長手方向軸線を中心にして所定方向に回転させられる円筒容器に対して、進退動手段が内面清掃手段を円筒容器内部の所定位置まで前進させ、底面清掃具押し当て手段が底面清掃具を円筒容器の内部底面に押し当てた状態で円筒容器が所定回数回転した後に、側面清掃具押し当て手段が側面清掃具を円筒容器の内部側面に押し当てた状態と円筒容器の回転状態とを維持しながら、前記進退動手段が前記側面清掃具押圧手段を円筒容器の内部側面に沿って後退させることにより、円筒容器内部の底面および側面に付着したチクソトロピー性残留物を自動的に除去して、該円筒容器内部の底面および側面を共に効率良く清掃することができる。
【0021】
また、本願発明に係る円筒容器の清掃システムによれば、ブラシ洗浄装置による洗浄及び/又はジェット洗浄装置による洗浄に先立って、前記円筒容器の清掃装置による円筒容器内面の清掃を行うことにより、前述のように、円筒容器内部の底面および側面を共に効率良く清掃することができる。このように、前記清掃装置を用いて円筒容器内面を清掃した後にブラシ洗浄装置による洗浄及び/又はジェット洗浄装置による洗浄を行うので、これら後工程で使用される洗浄剤に混入する残留塗料は非常に少量であり、洗浄剤を繰り返して使用することが可能になる。従って、洗浄等に係るコスト負担を大幅に低減でき、また、廃液処理に係る環境への負荷についても、有効に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を、例えば塗料を収容・保管・運搬等するための円筒容器(所謂、塗料ドラム缶)の内面を清掃する場合を例にとって、添付図面を参照しながら説明する。尚、本実施形態では、好ましくは、円筒容器を長期間にわたり繰り返して利用すべく、当該円筒容器は、強度・剛性のみならず耐食性・防錆特性にも優れた所謂オーステナイト系またはフェライト系のステンレス鋼板を素材に用いて製作されている。
【0023】
図1は本実施形態に係る円筒容器の清掃装置の全体構成を概略的に示す側面図、図2は傾斜状態で支持された前記円筒容器を拡大して示す拡大断面図、また、図3は、図1におけるY3−Y3矢印方向から見て示した矢視図である。
これらの図に示すように、清掃装置Mは、設置場所に立設されたフレーム体1(装置フレーム)に、種々の所要の部材や機器または機構を取り付けて構成されている。
【0024】
前記装置フレーム1は、図1の紙面方向(以下、この方向を清掃装置M又は装置フレーム1の幅方向と言う)に並べられた複数の前側フレーム2及び複数の後側フレーム3と、前側フレーム2と後側フレーム3とを図1における左右方向(以下、この方向を清掃装置M又は装置フレーム1の前後方向と言う)に連結する多数の前後連結フレーム4と、前側フレーム2どうし或いは後側フレーム3どうし更には前後連結フレーム4どうしをそれぞれ装置Mの幅方向に連結する多数の幅方向連結フレーム6とで構成されている。
【0025】
幅方向連結フレーム6のうち上下方向における略中間部で前後連結フレーム4どうしを幅方向にそれぞれ連結するフレーム6には、搬送ローラR4,R5が取り付けられている。図示しない搬送コンベアの駆動により当該清掃装置M内に搬入されて来た空の円筒容器Dは、前記搬送ローラR4,R5によって清掃装置M内の所定位置まで搬送され、また、清掃後の円筒容器Dは、搬送ローラR4,R5によって清掃装置M内の所定位置から搬送コンベア(不図示)へ搬出される。かかる搬送ローラR4,R5は、円筒容器Dの下側に対応する領域において、少なくとも前後方向に2個および幅方向に2個の計4個が配設されている。この場合、円筒容器Dの搬入・搬出は、清掃装置Mの幅方向に行われる。
【0026】
内部の塗料が無くなって空になった円筒容器Dは、その一端の開口部Dhが図1における清掃装置Mの右方(以下、この方向を清掃装置Mの後方と言い、その逆方向を清掃装置Mの前方と言う)に向けられた状態で、装置M内に搬入されて来るように設定されている。尚、前側(図1における左側)の搬送ローラR4よりも更に前方位置には、円筒容器Dの搬入・搬出動作を案内すると共に、円筒容器Dの前端下部を位置決めする前側位置決めローラR6が配置されている。
【0027】
前側フレーム2と後側フレーム3とを上下方向における略中間部で前後方向に連結する前後連結フレーム4には、前側および後側の支持ローラR1及びR2を介して円筒容器Dを傾斜した状態で支持するために、それぞれ上下昇降シリンダ機構を備えた前側リフタS1と後側リフタS2が固定されている。前側および後側の支持ローラR1及びR2は幅方向に対をなして2個ずつ配置され、2個の前側支持ローラR1及び2個の後側支持ローラR2はそれぞれ、幅方向に延びるベース板(不図示)に固定されており、これらベース板がそれぞれ前側リフタS1のピストン及び後側リフタS2のピストンに取り付けられている。
【0028】
つまり、本実施形態では、2個の前側支持ローラR1を1台の前側リフタS1で昇降させ、2個の後側支持ローラR2を1台の後側リフタS2で昇降させることができるようになっている。尚、この代わりに、前側リフタ及び後側リフタをそれぞれ2台ずつ装置Mの幅方向に対をなすように設け、各前側リフタのピストン上端に前側支持ローラを直接に取り付け、各後側リフタのピストン上端に後側支持ローラを直接に取り付けるようにしてもよい。
【0029】
清掃されるべき空の円筒容器Dは、上述のように、その一端の開口部Dhが清掃装置Mの後方に向けられた状態で装置M内に搬入されて来るので、前側リフタS1のピストン突出量を後側リフタS2のピストン突出量よりも大きく設定することにより、円筒容器Dの開口部Dhが斜め下方を指向するように傾斜した状態で、当該円筒容器Dを支持することができる。本実施形態では、この円筒容器Dの傾斜角度を約15〜30度程度の範囲内で設定した。
【0030】
尚、傾斜状態で支持された円筒容器Dの後方上部には、該円筒容器Dの後端上部を位置決めする後側位置決めローラR7が配置されている。
上述の前側および後側のリフタS1及びS2並びに前側および後側の支持ローラR1及びR2が、「開口部が斜め下方に指向した状態で円筒容器を支持する容器支持手段」の主要部を構成している。
【0031】
このように、円筒容器Dをその開口部Dhが斜め下方を指向した傾斜状態に維持することにより、容器Dが空になった後に容器内面に付着しているチクソトロピー性残留物の一部を、容器内面に沿って垂れ流して容器Dの外部に排出させることも可能である。
排出された残留塗料を収集するために、傾斜状態で支持された円筒容器Dの開口部Dhの下方には収集ホッパ14が配置され、更に、この収集ホッパ14の下方には、収集した残留塗料を貯える残留塗料タンク15が配設されている。前記収集ホッパ14は装置フレーム1に取り付けられ、また、好ましくは、残留塗料タンク15も装置フレーム1に取り付けられている。
【0032】
一方、傾斜状態で支持された円筒容器Dの上方には、当該円筒容器Dをその長手方向軸線Ldを中心にして回転させるために、装置Mの幅方向に対を成す一対の駆動ローラR3が配置されている。該駆動ローラR3は、例えば電動式のもので、装置天井部の前後連結フレーム4に固定されたシリンダ装置S3により、略上下方向へ移動可能に支持されている。
このシリンダ装置S3を駆動して、傾斜状態に支持された円筒容器Dの上側に駆動ローラR3を圧接させた状態で、該駆動ローラR3が回転することにより、円筒容器Dをその長手方向軸線Ldを中心にして所定方向に所定回転速度で回転させることができる。
【0033】
清掃装置Mは、装置フレーム1から後方に突き出すようにして配設されたベースブーム21と、該ベースブーム21に沿ってその長手方向に摺動可能に設けられたスライドブーム27とを備えている。前記ベースブーム21にはその長手方向に伸長する所謂ボールネジ機構22が備えられ、該ボールネジ機構22を駆動するために、減速機構24を付設した例えば電動式のモータ23がベースブーム21の例えば後端部に設けられている。
【0034】
前記スライドブーム27の例えば後端部には、前記ボールネジ機構22と螺合するスライドブロック28が固定されており、モータ23を駆動してボールネジ22を回転駆動することにより、スライドブロック28を介して、スライドブーム27がボールネジ機構22に沿って(つまり、ベースブーム21に沿って)所定速度で摺動するようになっている。前記モータ23を所定方向に回転駆動することにより、スライドブーム27をベースブーム21に沿って前方(図1における左方)へ摺動させ、前述のように開口部Dhが斜め下方を指向した傾斜状態に支持された円筒容器Dの内部に、開口部Dhを通してスライドブーム27の先端側を侵入(前進)させることができる。一方、モータ23の回転方向を切り換えて駆動ことにより、スライドブーム27を円筒容器Dの内部から後退させて、図1に示す待機位置に位置させることができる。
【0035】
このように、前記モータ23の回転方向を切り換えることにより、円筒容器Dの内部に対するスライドブーム27の前進動作と後退動作とを簡単に切り換えることができる。この場合、好ましくは、ボールネジ機構22を利用したことにより、非常に低摩擦でスムースなスライドブーム27の摺動動作が得られる。
【0036】
装置フレーム1の上下方向における途中部には、後方に張り出すようにして装置フレーム1に固定されたブーム支持部11が設けられ、該ブーム支持部11の後面の上部には、前記ベースブーム21の途中部を上下方向へ回動可能に支持する枢支部25が設けられている。また、ブーム支持部11の前部には、ベースブーム21の前端側を支持して上下方向位置を調整する昇降シリンダS4が配設されている。この昇降シリンダS4を駆動してそのピストンP4を上下動させることにより、ベースブーム21前端の上下方向位置が調整される。つまり、前記枢支部25を中心にしてベースブーム21が上下方向に回動し、当該ベースブーム21の傾斜角度を調整することができる。
【0037】
前記スライドブーム27の先端には、円筒容器Dの内面を清掃するための内面清掃手段が備えられている。次に、この内面清掃手段および円筒容器の開口縁部を清掃する開口縁部清掃手段について説明する。
図4は前記内面清掃手段および開口縁部清掃手段の全体構成を概略的に示す斜視図、図5は図4の要部を拡大して示す拡大斜視図、図6は前記開口縁部清掃手段の構成を概略的に示す斜視図、図7は前記内面清掃手段の底面清掃具の構成を概略的に示す斜視図、図8は前記底面清掃具を前方から見て示した説明図、図9は前記底面清掃具および円筒容器を後方から見て示した説明図、また、図10は前記内面清掃手段の側面清掃具の構成を概略的に示す斜視図である。
【0038】
図4に示されるように、スライドブーム27の先端(前端)上部にはアーム基台33が固定され、前記円筒容器Dの内部底面Dbに押し当てられて該底面Db(図2参照)を清掃する底面用ブレード30を支持するための支持アーム34が取り付けられている。この支持アーム34の先端には、底面用ブレード30を保持する円形のホルダ板35が固定されている。底面用ブレード30は一対の挟持プレート37で挟持され、該挟持プレート37がブラケット36を用いてホルダ板35に固定されている。
【0039】
このようにして、底面用ブレード30が、スライドブーム27の先端上部から斜め前上方に向かって突き出すように取り付けられている。底面用ブレード30に使用する素材としては、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)が好ましい。このとき、底面用ブレード30の先端縁部が、スライドブーム27の伸長方向に対して実質的に直交するように、底面用ブレード30の取付方位および取付姿勢が設定されている。尚、この底面用ブレード30の構造および該底面用ブレード30の挟持プレート37による挟持状態の詳細については後述する。
【0040】
また、スライドブーム27の先端には、円筒容器Dの内部側面Ds(図2参照)に押し当てられて該側面Dsを清掃する側面用ブレード40を支持するためのジョイント部41(第1ジョイント)が設けられている。図5に詳しく示されるように、この第1ジョイント41は、継手要素としての鋼製の球面体(ボール)41bを備え、スライドブーム27の先端から一体的に突出したベース板41aと押さえ板41cとで球面体41bを挟み込んだ状態で、複数のボルトを用いて押さえ板41cをベース板41aに締結固定して構成されている。
【0041】
第1ジョイント41よりも前側には、当該第1ジョイント41と同様に、ベース板43a,球面体43b,押さえ板43cを備えてなる第2ジョイント43が位置しており、この第2ジョイント43の球面体43bと前記第1ジョイント41の球面体41bとは連結ロッド42で相互に連結されている。そして、側面用ブレード40は、保持プレート44を用いて第2ジョイント43のベース板43aの前端部に取り付けられている。つまり、第2ジョイント43のベース板43aの前側部分と前記保持プレート44との間に挟持された状態で、第2ジョイント43のベース板43aの前端部に、側面用ブレード40の部が固定されている。この側面用ブレード40は、例えばゴム等の弾性に富む材料を用いて、正面視で略半円に近い板状に形成されている。本実施形態では、側面用ブレード40の材料として、好ましくは、EPDMを用いた。
【0042】
側面用ブレード40の取付位置,取付方位および取付姿勢を3次元的に所望の状態に設定した上で、第1及び第2ジョイント41,43の押さえ板41c,43cをベース板41a,43aに締結固定して各球面体41b,43bを回動不能とすることにより、底面用ブレード30の3次元的な取付位置,取付方位および取付姿勢について、所望の状態が得られる。このように、それぞれ球面体41b,43bを継手要素として備えたジョイント41,43を介して、側面用ブレード40をスライドブーム27の先端に取り付けたことにより、側面用ブレード40の取付位置,取付方位および取付姿勢を3次元的に任意に調整でき、円筒容器Dの側面Dsに対する側面用ブレード40の押し当て状態を、容易かつ精密に調整することができる。尚、この側面用ブレード40の円筒容器側面Dsに対する押し当て状態の詳細については後述する。
【0043】
更に、装置フレーム1の幅方向における一方の後側フレーム3には、円筒容器Dの開口縁部Dkに押圧されて該開口縁部Dkを清掃する開口縁部用ブレード50が支持されている。
図6に詳しく示されるように、前記後側フレーム3には、開口縁部用ブレード50を円筒容器Dの開口縁部Dkに対して進退動させるために、ブレード用シリンダS6がブラケット51を用いて固定されている。
【0044】
ブレード用シリンダS6の前方には、該シリンダS6の駆動により円筒容器Dの開口縁部Dkに対して進退動するホルダ板52が配置され、該ホルダ板52の前方には、前述の第1,第2ジョイント41,43と同様に、ベース板54a,球面体54b,押さえ板54cを備えてなるジョイント54が位置しており、このジョイント54の球面体54bと前記ホルダ板52とは連結ロッド53で相互に連結されている。そして、開口縁部用ブレード50は、保持プレート54を用いてジョイント54のベース板54aの前端部に取り付けられている。つまり、ジョイント54のベース板54aの前側部分と前記保持プレート55との間に挟持された状態で、ジョイント54のベース板54aの前端部に、開口縁部用ブレード50が取り付けられている。
【0045】
開口縁部用ブレード50の取付方位および取付姿勢を3次元的に所望の状態に設定した上で、ジョイント54の押さえ板54cをベース板54aに締結固定して球面体54bを回動不能とすることにより、開口縁部用ブレード50の3次元的な取付方位および取付姿勢について、所望の状態が得られる。
開口縁用ブレード50は、例えばゴム等の弾性に富む材料を用いて、平面視で略半円に近い板状に形成されている。本実施形態では、開口縁用ブレード50の材料として、好ましくは、EPDMを用いた。
【0046】
開口縁用ブレード50の前部の略中央には、略U字状の切欠部50kが設けられており、ブレード用シリンダS6を駆動し、ホルダ板52及びジョイント54を介して、開口縁部用ブレード50を円筒容器Dの開口縁部Dkに対し前進させることにより、開口縁用ブレード50の前記切欠部50kに開口縁部Dkが嵌り込み、ブレード前部の切欠部50kよりも内側部分50aと外側部分50bとで、開口縁部Dkを所定の弾性力をもって挟み込んだ状態となる。つまり、ブレード前部の切欠部50kよりも内側部分50aが、所定の押圧力をもって開口縁部Dkの内面側に押し当てられる。
【0047】
この押し当て状態で、円筒容器Dが矢印Yd方向に回転することにより、ブレード前部の切欠部50kよりも内側部分50aが所謂スクレーパとして作用し、円筒容器Dの開口縁部Dkの内面側に付着残留した塗料が効果的に掻き取られ、下方に位置する収集ホッパ14内に掻き落とされて収集されるようになっている。これにより、円筒容器D内部の底面Db及び側面Dsに加えて、開口縁部Dkについても、自動的に清掃を行うことができる。
円筒容器D内部の清掃が終了すると、ブレード用シリンダS6が駆動されて開口縁部用ブレード50が円筒容器Dの開口縁部Dkから後退させられ、図4に示す待機位置に維持される。
【0048】
図7,図8及び図9から良く分かるように、底面用ブレード30は、円筒容器Dの底面Dbの周縁部から底面Dbの中心Dcに至る途中部までの領域を清掃する第1ブレード部31と、該第1ブレード部31に対して、先端側が円筒容器Dの回転方向(図9:矢印Yd方向)における上流側に位置するように所定角度α(図9参照)だけ傾斜して設けられ、前記途中部から中心Dcを越えるまでの領域を清掃する第2ブレード部32とで構成されている。本実施形態では、これら第1,第2のブレード部31,32はそれぞれ別のブレード体として構成されている。この代わりに、両ブレード部31,32を一体に成形することもできる。第1,第2のブレード部31,32は共に、例えばゴム等の弾性に富む材料を用いて、平面視で略矩形の板状に形成されている。本実施形態では、底面用ブレード30の材料として、好ましくは、EPDMを用いた。
【0049】
第1ブレード部31の後部は、前記一対の挟持プレート37(第1挟持プレート)で挟持されており、上側の第1挟持プレートに、下側の第2挟持プレート38の一端側が、例えば溶着によって傾斜状(傾斜角:α)に固定されている。この下側の第2挟持プレート38と対をなす上側の第2挟持プレート38との間に、第2ブレード部32の後部が挟持されている。尚、本実施形態では、この第2ブレード部32の傾斜角αを、例えば約15〜60度程度の範囲内で設定した。
【0050】
ここに、円筒容器底面Dbの周縁側に対応する第1ブレード部31の端部31sは、第1挟持プレート37から所定長さだけはみ出すように設定され、端部31s全体が容易に弾性変形できるようになっている。この第1ブレード部31の端部31sが容易に弾性変形できることにより、円筒容器底面Dbの周縁のR形状Dr(図9参照)に沿うようにして前記端部31sが弾性変形し、この部分の残留塗料も余すことなく掻き落とすことができる。尚、本清掃装置Mで清掃される円筒容器Dとしては、底面Dbの周縁部に付着塗料が残留することを回避する観点から、底面Dbの周縁部のRが比較的大きい、所謂、鍋底型のものが好ましい。
【0051】
前記底面用ブレード30及び側面用ブレード40で円筒容器Dの内面(底面Db及び側面Ds)を清掃するには、前記ベースブーム21後端のモータ23を所定方向に回転駆動することにより、スライドブーム27を図1に示す待機位置から前進させ、前述の傾斜状態に支持された円筒容器Dの内部に、開口部Dhを通してスライドブーム27の先端側を侵入(前進)させる。このとき、側面用ブレード40が円筒容器Dの内側面Dsと干渉しないように、スライドブーム27の先端側は昇降シリンダS4によって所定量以上に持ち上げられている。
【0052】
そして、スライドブーム27を更に前進させて、底面用ブレード30の先端縁部が、円筒容器Dの底面Dbに近接または一部が接触する所定位置にまで達すると、モータ23の駆動が停止されてスライドブーム27の前進動作が終了する。
次に、昇降シリンダS4を駆動してピストンP4を下降させ、ベースブーム21の(つまりスライドブーム27の)先端側を所定量だけ下降させる。これにより、スライドブーム27は枢支部25を中心にして図1における反時計回り方向に回動する。
【0053】
本実施形態では、スライドブーム27が円筒容器Dの長手方向軸線Ldと実質的に平行になるまで、スライドブーム27を回動させることにより、スライドブーム27の先端側に保持された側面用ブレード40が、円筒容器Dの側面Dsに対して所定の押圧力をもって押し当てられる。また、同時に、底面用ブレード30が、円筒容器Dの底面Dbに対して実質的平行に保たれた状態で所定の押圧力をもって押し当てられる。
【0054】
昇降シリンダS4による支持がなければ、ベースブーム21及びスライドブーム27並びにそれらに取り付けられた種々の部材等の自重に基づくモーメント荷重により、底面用ブレード30及び側面用ブレード40は、非常に過剰な押圧力をもって、それぞれ底面Db及び側面Dsに押し当てられることになるのであるが、本実施形態では、前記昇降シリンダS4のピストンP4の下降により、スライドブーム27が円筒容器Dの長手方向軸線Ldと実質的に平行になるまで、スライドブーム27を回動させることにより、底面用ブレード30及び側面用ブレード40を、掻き取り機能や耐久性等の観点から好適な押圧力をもって、それぞれ底面Db及び側面Dsに押し当てることができるように設定されている。
【0055】
このように、枢支部25で上下回動可能に支持されたベースブーム21に対し前後スライド可能に支持されたスライドブーム27の先端に側面用ブレード40を取り付け、前記ベースブーム21の先端側を昇降シリンダS4で上下位置調整可能に支持したことにより、比較的簡単な構成で、底面用ブレード30及び側面用ブレード40をそれぞれ円筒容器Dの内側底面Db及び内側面Dsに対し、必要に応じて接離動作させることができる。
【0056】
このように、本実施形態では、ベースブーム21及びスライドブーム27並びに昇降シリンダS4が、「底面清掃具(底面用ブレード)を円筒容器の内部底面に押し当てる底面清掃具押し当て手段」及び「側面清掃具(側面用ブレード)を円筒容器の内部側面に押し当てる側面清掃具押し当て手段」の両方の主要部を兼ねて構成している。
尚、この代わりに、底面清掃具押し当て手段と側面清掃具押し当て手段とを別々に設け、底面用ブレードを円筒容器の底面に押し当てて底面の清掃を行った後に、側面用ブレードを円筒容器の側面に押し当てるように構成することもできる。
【0057】
上述のように、底面用ブレード30を円筒容器Dの底面Dbに対して実質的平行に保たれた状態で所定の押圧力をもって押し当てた状態で、円筒容器Dが矢印Yd方向に回転することにより、底面用ブレード30が所謂スクレーパとして作用し、円筒容器Dの底面Dbに付着残留した塗料が効果的に掻き取られる。これにより、円筒容器D内部の底面Dbを自動的に清掃することができる。
【0058】
尚、本実施形態では、前記第1ブレード部31を含むブレード体は、円筒容器Dの底面Dbの周縁部から底面Dbの中心Dcを越える長さを有しているが、本願発明者らの経験によれば、このような長さのブレード体を用いただけでは、底面Dbの中心Dc及びその付近については、付着した残留塗料を有効に掻き取って十分な清掃効果を安定して得ることが難しかった。
【0059】
そこで、本実施形態では、第1ブレード部31に加えて前記第2ブレード部32を設けることにより、底面Dbの周縁部から底面Dbの中心Dcに至る途中部から中心Dcを越えるまでの領域を清掃するようにしたものである。この第2ブレード部32を設けたことにより、底面Dbの中心Dc及びその付近についても、付着していた残留塗料を十分効果的に掻き取り、安定した清掃効果を得ることができた。
【0060】
このようにして、底面用ブレード30による円筒容器Dの底面Dbの清掃を終えると、側面用ブレード40による側面Dsの清掃が開始される。
すなわち、側面用ブレード40を円筒容器Dの側面Dsに対して所定の押圧力をもって押し当てた状態で、且つ、円筒容器Dが矢印Yd方向に継続して回転している状態で、ベースブーム21後端のモータ23を逆方向に回転駆動してスライドブーム27を所定速度で後退動作させることにより、側面用ブレード40が所謂スクレーパとして作用し、円筒容器Dの側面Dsに付着残留した塗料が掻き取られる。これにより、円筒容器D内部の側面Dsを自動的に清掃することができる。
【0061】
尚、このような側面用ブレード40で円筒容器D内部の側面Dsを清掃する場合、円筒容器Dの長手方向軸線Ldを含む面に沿うようにブレード40を保持することが考えられるが、本願発明者らの経験によれば、このように側面用ブレード40を保持して側面Dsの清掃を行ったのでは、該側面Dsに付着塗料が螺旋状に残り、十分な清掃効果を安定して得ることが難しかった。
【0062】
そこで、本実施形態では、図10に示されるように、側面用ブレード40を、円筒容器Dの長手方向軸線Ldを含む面Fdに対して、後側(円筒容器開口部Dhに近い側:図10における下側)が当該円筒容器Dの回転方向における下流側(図10における左側)に位置するように傾斜した状態で(傾斜角度:β)、円筒容器Dの内部側面Dsに押し当てるようにした。本実施形態では、この傾斜角度βを、例えば約15〜45度程度の範囲内で設定した。
【0063】
これにより、側面Dsに付着塗料が螺旋状に残ることなく、十分効果的に付着した残留塗料を掻き取り、安定した清掃効果を得ることができた。これは、側面用ブレード40で掻き取られた残留塗料が、側面用ブレード40の縁部に沿って容器開口部Dh側に流れ易くなって、ブレード40の端部において清掃済みの領域(図10におけるブレードよりも左側の領域)側に回り込んで再付着することが抑制されることによるものと考えられる。尚、図10において、円筒容器Dの回転方向を矢印Ydで示し、側面用ブレード40の後退方向を矢印Ysで示した。
【0064】
尚、以上の説明では、底面用,側面用,開口縁部用の各ブレード30,40,50の素材としては、好ましくはエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)が用いられていたが、かかるブレードの素材としては、EPDMに限られるものではなく、これ以外の種々のゴム或いは合成樹脂も好適に用いることができる。更に、条件によってはステンレス鋼や軟鋼などの金属材料も使用可能である。
ゴム材料としては、ジエン系ゴム(例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム等)或いは非ジエン系ゴム(例えば、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロスルフォン化ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、フッ素ゴム等)の何れのゴムでも好適に使用することができる。また、合成樹脂材料では、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニル、シリコン樹脂、フッ素樹脂などが好適である。
【0065】
また、具体的には図示していないが、スライドブーム27の先端側には、円筒容器Dの内面Db,Dsに付着した残留塗料の除去に適応した洗浄液や溶剤(本実施形態では、例えば、市販のアルカリ系の金属用洗剤)を、円筒容器Dの内面Db,Dsに噴射供給するために噴射ノズルが取り付けられ、該噴射ノズルは、配管チューブを介して、前記市販のアルカリ系の金属用洗剤を吐出供給するポンプ装置に繋がれている。
【0066】
このアルカリ系洗剤の供給は、付着した残留塗料の粘度が余りに高い場合や、少なくとも一部が固化している場合など、弾性ブレード30,40,50を用いた掻き取り作用だけでは容易に除去できない場合に、残留塗料の粘度を低下せしめることを目的として行われる。また、後述する仕上げ清掃工程で用いられる洗浄液や洗剤とは異なる洗浄剤を容器内面Db,Dsに付着させ、僅かに残存する塗料に浸透させることで、仕上げ清掃で用いられる洗浄剤との相乗効果により一層効果的な洗浄を行えるようにすることを目的としている。より詳しく説明すれば、後述する仕上げ清掃工程で、特にジェット洗浄を行う場合には、使用する洗浄液は泡立ちの少ないものに限定されるが、本清掃装置Mを用いた掻き取りによる清掃工程では、洗浄剤にこのような制限はなく、例えば、泡立ちが良く界面活性能の強い洗浄剤を使用することができる。このような洗浄剤を容器内面Db,Dsに付着させ残留塗料に浸透させておくことで、後工程の仕上げ清掃で用いられる洗浄剤との相乗効果によって、仕上げ清掃を非常に容易で効果的に行えるのである。
【0067】
何れを主たる目的とする場合についても、本清掃装置Mを用いた清掃工程での洗剤の使用量はごく僅かである。尚、このアルカリ系洗剤を円筒容器Dの内面Db,Dsに供給する場合、噴霧状態で供給すると装置Mの周囲にまで霧滴が飛散するおそれがあるので、かかる場合には必要に応じて、泡状に供給されるか、若しくは液滴として内面Db,Dsに噴射供給される程度の圧力条件等で行われることが好ましい。また、前記洗剤は、必要に応じて加温して供給されてもよい。
【0068】
また、具体的には図示していないが、本清掃装置Mには、その作動を好適に制御するために、例えばマイクロコンピュータを主要部として構成された制御ユニットが付設されており、前述のモータ23、駆動ローラR3、リフタS1,S2、シリンダ装置S3,S,S5、洗浄剤供給用のポンプ装置などの各種の制御要素は、この制御ユニットに信号授受可能に接続され、その命令信号に応じて制御されるようになっている。
【0069】
以上のように構成された清掃装置Mによる円筒容器Dの清掃工程の概略について、図11の工程フローチャートを参照しながら説明する。
尚、本清掃装置Mによる円筒容器Dの清掃は、洗浄液や洗剤等を用いて円筒容器Dの内面Db,Dsを洗浄した後に乾燥させる最終的な仕上げ清掃工程に先立って、その前工程として行われるものである。
【0070】
また、前記工程フローチャートは、内部の塗料が無くなって空になった円筒容器Dが、その一端の開口部Dhが装置Mの後方(図1における右方)に向けられた状態で装置M内に搬入され、円筒容器Dの前端下部が前側位置決めローラR6で位置決めされた状態を、初期状態としたものである。
【0071】
この初期状態で清掃装置Mの制御が開始されると、まず、ステップ#1で円筒容器が前述の傾斜状態とされる。つまり、前側リフタS1のピストン突出量を後側リフタS2のピストン突出量よりも大きく設定した下で両リフタS1,S2を駆動し、円筒容器Dの開口部Dhが斜め下方を指向するように傾斜した傾斜状態(傾斜角度:略15度前後)に、当該円筒容器Dを支持する。チクソトロピー性が小さい塗料の場合には、円筒容器Dをこの傾斜状態に維持するだけで、容器内面に付着していた残留塗料のかなりの部分が垂れ流されて、収集ホッパ14から残留塗料タンク15内に収集される。
【0072】
次に、ステップ#2で、モータ23を駆動してスライドブーム27の前進動作を開始させる。このとき、前述のように、各ブレードが円筒容器Dの内側面Dsと干渉しないように、スライドブーム27の先端側は昇降シリンダS4によって所定量以上に持ち上げられている。
【0073】
また、ステップ#3で円筒容器Dの回転を開始させる。つまり、シリンダ装置S3を駆動して傾斜状態の円筒容器Dの上側に、回転する駆動ローラR3を圧接させることにより、円筒容器Dをその長手方向軸線Ldを中心にして所定方向に所定の回転速度で回転させる。本実施形態では、例えば、後方から(開口部Dh側から)見て時計回り方向に約10〜20rpm程度の範囲内の一定速度で円筒容器Dを回転させた。このステップ#3の工程と前記ステップ#2の工程は、同時に行われても良く、或いは、順序を逆にして行われても良い。
【0074】
更に、ステップ#4で、ブレード用シリンダS6を駆動して開口縁部用ブレード50を円筒容器Dの開口縁部Dkに押し当て、開口縁部Dkの残留塗料の掻き取を開始する。これにより、開口縁部Dkの内面側に付着した塗料が効果的に掻き取られ、下方に位置する収集ホッパ14内に掻き落とされて収集される。
【0075】
また、底面用ブレード30が、円筒容器Dの底面Dbに近接または接触する所定位置に達すると、モータ23の駆動が停止されてスライドブーム27の前進動作が終了する(ステップ#5)。このステップ#5の工程と前記ステップ#4の工程は、同時に行われても良く、或いは、順序が逆になってもよい。
【0076】
次に、ステップ#6で、昇降シリンダS4を駆動して、円筒容器Dの長手方向軸線Ldと実質的に平行になるまでスライドブーム27を回動させる。これにより、底面用ブレード30及び側面用ブレード40が、好適な押圧力をもって、それぞれ円筒容器Dの底面Db及び側面Dsに押し当てられる。これにより、底面Dbの掻き取りが始まり、底面用ブレード30を底面Dbへ押し当てた状態で少なくとも容器Dを1回転させることにより、底面Dbの掻き取りが行われる(ステップ#7)。
【0077】
底面Dbの掻き取りを終えると、側面用ブレード40が円筒容器Dの側面Dsへ押し当てられた状態で、モータ23を逆方向に回転駆動してスライドブーム27を所定速度で後退させることにより、側面用ブレード40が円筒容器Dの側面Dsに対し螺旋状に相対変位し、側面Dsに付着した残留塗料が螺旋状に掻き取られる(ステップ#8)。本実施形態では、例えば、約10〜30mm/秒程度の範囲内の一定速度でスライドブーム27を後退させるようにした。
【0078】
尚、このように円筒容器Dの内面(底面Db及び側面Ds)を清掃するに際し、必要に応じて、
円筒容器Dの内面Db,Dsに所要の洗浄剤(例えばアルカリ系洗剤)を、ごく少量だけ噴射供給することができる。
【0079】
円筒容器Dの開口部Dhにわたるまで側面Dsの掻き取りが行われて、スライドブーム27が図1に示す待機位置まで後退させられると、昇降シリンダS4が駆動されてスライドブーム27の前端側が持ち上げられ、待機状態に維持される(ステップ#9)。また、ブレード用シリンダS6が駆動されて、開口縁部用ブレード50が後退し待機状態に維持される(ステップ#10)。
【0080】
また、駆動ローラR3の回転が停止され、円筒容器Dから離隔される。これにより、円筒容器Dの回転が停止する(ステップ#11)。次いで、リフタS1,S2が駆動されて初期状態に戻され、円筒容器Dが水平に保持される(ステップ#12)。その後、図示しない搬送コンベアの駆動により、円筒容器Dが後工程のステーションに向かって搬出されるようになっている(ステップ#13)。
【0081】
前述のように、この後工程は最終的な仕上げ清掃工程であり、洗浄液や洗剤等を用いて、ブラシやジェット噴流等で円筒容器Dの内面Db,Dsを洗浄し、更に、純水等でリンスした後に乾燥が行われる。
前記清掃装置Mと後工程の最終的な仕上げ清掃を行う各種装置とで、図12の工程フローチャートに示すような一連の清掃工程を行う清掃システムが構成されている。
【0082】
すなわち、清掃装置Mによる前述の掻き取り清掃工程(工程ST1)が終了すると、工程ST2でブラシ洗浄が行われる。このブラシ洗浄工程は、円筒容器Dの内部に所定の洗浄剤をふりかけながら、主として内面Db,Dsをブラシで擦ることによって円筒容器の内面Db,Dsを洗浄する工程である。この工程で用いるブラシ洗浄装置としては、種々の公知の機構を備えたものを使用することができる。また、この工程では、例えばアルカリ系の洗浄剤で、より好ましくは、比較的泡立ちの少ないものが用いられる。
【0083】
ブラシ洗浄工程が終了すると、次に、工程ST3でジェット洗浄が行われる。このジェット洗浄工程は、高圧スプレーを用いて、円筒容器Dの内部に所定の洗浄液のジェット噴流を吹き付けることにより、円筒容器の内面Db,Dsを洗浄する工程である。このジェット洗浄工程では、より好ましくは、洗浄液を例えば60℃程度に加温してジェット噴流を吹き付ける1次ジェット洗浄と、この1次ジェット洗浄の後に常温の洗浄液をジェット噴流として吹き付ける2次ジェット洗浄とに分けて行うことで、より高い洗浄効果を得ることができる。この工程で用いるジェット洗浄装置としては、種々の公知の機構を備えたものを使用することができる。また、この工程では、例えばアルカリ系の洗浄液で、泡立ちの少ないものが用いられる。
【0084】
清掃装置Mによる前述の掻き取り清掃工程(工程ST1)で洗浄剤を適用する場合、前述のように、ブラシ洗浄やジェット洗浄とは異なり、泡立ちが良く界面活性能の強い洗浄剤を使用することができる。このような洗浄剤を容器内面Db,Dsに付着させ残留塗料に浸透させておくことで、後工程のブラシ洗浄(工程ST2)やジェット洗浄(工程ST3)で用いる洗浄剤/洗浄液との相乗効果によって、これらブラシ洗浄やジェット洗浄による仕上げ清掃を非常に容易で効果的に行えることは、前述の通りである。
【0085】
ジェット洗浄工程が終了すると、清掃した円筒容器内面Db,Dsのリンス(濯ぎ)が行われる(工程ST4)。このリンスは、例えば純水を用いて行われ、1次リンス工程と、その後に行う2次リンス工程とに分けて行うことで、より高いリンス効果を得ることができる。
【0086】
このリンス工程が終了すると、圧縮空気を用いたエアブローによる水切りが行われ(工程ST5)、更に、乾燥(工程ST6)が行われる。この乾燥工程では、清掃済みの円筒容器Dは、例えば約110℃程度の温度で約5〜10分程度保持されることで、水分が除去される。その後、円筒容器D内部の最終チェック(工程ST7)が行われ、円筒容器Dの開口端部Dhが蓋で閉じられた上で(工程ST8)、清掃済み円筒容器Dの保管エリアに向かって搬出される。
【0087】
尚、図12の例ではブラシ洗浄(工程ST2)の後にジェット洗浄(工程ST3)を行うようにしているが、これらの洗浄の工程順序は前記に限定されるものではなく、逆の順序で行われてもよい。また、ブラシ洗浄,ジェット洗浄の回数についても、それぞれ1回ずつに限られるものではなく複数回行われてもよい。
【0088】
以上のように、本実施形態に係る清掃システムでは、最終的な仕上げ清掃工程に先立って、前記清掃装置Mを用いて円筒容器Dの内面(底面Db,側面Ds)及び開口縁部Dkの残留塗料を十分効果的に掻き取られているので、後工程の仕上げ清掃工程で使用される洗浄液や洗剤等に混入する残留塗料は非常に少量であり、これら洗浄液や洗剤等を繰り返して何度も使用することが可能になる。従って、洗浄液や洗剤等に係るコスト負担を大幅に低減でき、また、廃液処理に係る環境への負荷についても、有効に抑制することができる。
【0089】
また、以上、説明したように、本実施形態に係る清掃装置Mによれば、開口部Dhが斜め下方に指向した状態で支持され、長手方向軸線Ldを中心にして所定方向に回転させられる円筒容器Dに対して、底面用ブレード30と側面用ブレード40円筒容器D内部の所定位置まで前進させ、底面用ブレード30を円筒容器Dの内部底面Dbに押し当てた状態で円筒容器Dが所定回数回転した後に、側面用ブレード40を円筒容器Dの内部側面Dsに押し当てた状態と円筒容器Dの回転状態とを維持しながら、前記側面用ブレード40を円筒容器Dの内部側面Dsに沿って後退させることにより、円筒容器D内部の底面Dbおよび側面Dsに付着したチクソトロピー性残留物を自動的に除去して、該円筒容器D内部の底面Dbおよび側面Dsを共に効率良く清掃することができるのである。
【0090】
尚、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、変更および改良等がなされるものであることは、いうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、円筒容器の清掃装置および清掃システムに関し、円筒容器内部の底面および側面に付着したチクソトロピー性残留物を自動的に除去して、これら底面および側面を共に効率良く清掃することができ、例えば、塗料やインク等のチクソトロピー性がある内容物を収容・保管・運搬等するためのドラム缶など、一端に開口部を有する円筒容器について、容器が空になった後に容器内面に付着したチクソトロピー性残留物を自動的に除去して該内面を清掃する清掃装置,清掃システムとして、有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施形態に係る円筒容器の清掃装置の全体構成を概略的に示す側面説明図である。
【図2】傾斜状態で支持された前記円筒容器を拡大して示す拡大断面図である。
【図3】前記清掃装置を、図1におけるY3−Y3矢印方向から見て示した矢視図である。
【図4】前記清掃装置の内面清掃手段および開口縁部清掃手段の全体構成を概略的に示す斜視図である。
【図5】図4の要部を拡大して示す拡大斜視図である。
【図6】前記開口縁部清掃手段の構成を概略的に示す斜視図である。
【図7】前記内面清掃手段の底面清掃具の構成を概略的に示す斜視図である。
【図8】前記底面清掃具を前方から見て示した説明図である。
【図9】前記底面清掃具および円筒容器を後方から見て示した説明図である。
【図10】前記内面清掃手段の側面清掃具の構成を概略的に示す斜視図である。
【図11】前記清掃装置による円筒容器の清掃工程を説明するための工程フローチャートである。
【図12】本発明の実施形態に係る円筒容器の清掃システムを説明するための工程フローチャートである。
【符号の説明】
【0093】
1 装置フレーム
21 ベースブーム
22 ボールネジ機構
23 モータ
25 枢支部
27 スライドブーム
28 スライドブロック
30 底面用ブレード
31 (底面用ブレードの)第1ブレード部
32 (底面用ブレードの)第2ブレード部
40 側面用ブレード
50 開口縁部用ブレード
D 円筒容器
Db (円筒容器の)底面部
Dc (円筒容器の)底面の中心
Dh (円筒容器の)開口部
Dk (円筒容器の)開口縁部
Ds (円筒容器の)側面
Fd (円筒容器の)長手方向軸線を含む面
Ld (円筒容器の)長手方向軸線
M 清掃装置
R1 前側支持ローラ
R2 後側支持ローラ
R3 駆動ローラ
S1 前側リフタ
S2 後側リフタ
S4 昇降シリンダ
S6 ブレード用シリンダ
α (底面用ブレードの)第2ブレード部の傾斜角
β 側面用ブレードの傾斜角
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口部を有する円筒容器の内面に付着したチクソトロピー性残留物を除去して該内面を清掃する円筒容器の清掃装置であって、
前記開口部が斜め下方に指向した状態で前記円筒容器を支持する容器支持手段と、
該容器支持手段で支持された前記円筒容器を、その長手方向軸線を中心にして所定方向に回転させる容器回転手段と、
前記円筒容器の内部底面に押し当てられて該底面を清掃する底面清掃具と、円筒容器の内部側面に押し当てられて該側面を清掃する側面清掃具と、を備えた内面清掃手段と、
前記開口部を通して、前記内面清掃手段を円筒容器の内部に対して進退動させる進退動手段と、
前記底面清掃具を円筒容器の内部底面に押し当てる底面清掃具押し当て手段と、
前記側面清掃具を円筒容器の内部側面に押し当てる側面清掃具押し当て手段と、
前記各手段を制御する制御手段と、を備え、
該制御手段は、前記進退動手段が前記内面清掃手段を円筒容器内部の所定位置まで前進させ、前記底面清掃具押し当て手段が前記底面清掃具を円筒容器の内部底面に押し当てた状態で円筒容器が所定回数回転した後に、前記側面清掃具押し当て手段が前記側面清掃具を円筒容器の内部側面に押し当てた状態と円筒容器の回転状態とを維持しながら、前記進退動手段が前記側面清掃具押圧手段を円筒容器の内部側面に沿って後退させるように制御する、
ことを特徴とする円筒容器の清掃装置。
【請求項2】
前記チクソトロピー性残留物が、B型粘度計で6rpmでの粘度η6と、60rpmでの粘度η60との比η6/η60の値で2以上を示す内容物であることを特徴とする
請求項1に記載の円筒容器の清掃装置。
【請求項3】
前記進退動手段は、一端が前記円筒容器の開口部近傍に位置し斜め下方に向かって伸長するベースブームと、一端に前記内面清掃手段を備え前記ベースブームの長手方向に沿って摺動可能にベースブームに支持されたスライドブームとを備え、
前記ベースブームは、枢支部を中心にして上下方向に回動可能に支持されると共に、前記枢支部よりも円筒容器の開口部に近い側が昇降手段で昇降可能に支持されており、
前記昇降手段の下降動作によってベースブームが前記枢支部を中心にして下方に回動し、前記底面清掃具が円筒容器の内部底面に対して押し当てられ、前記側面清掃具が円筒容器の内部側面に対して押し当てられる、
ことを特徴とする請求項1あるいは2に記載の円筒容器の清掃装置。
【請求項4】
前記円筒容器の開口縁部に押圧されて該開口縁部を清掃する開口縁部清掃具を更に備えている、ことを特徴とする請求項1から3の何れか一に記載の円筒容器の清掃装置。
【請求項5】
前記側面清掃具は弾性ブレードを備え、該弾性ブレードは、円筒容器の長手方向軸線を含む面に対して、円筒容器の開口部に近い側が当該円筒容器の回転方向における下流側に位置するように傾斜した状態で、円筒容器の内部側面に押し当てられる、ことを特徴とする請求項1から4の何れか一に記載の円筒容器の清掃装置。
【請求項6】
前記底面清掃具は弾性ブレードを備え、該弾性ブレードは、円筒容器の底面の周縁部から中心に至る途中部までの領域を清掃する第1ブレード部と、該第1ブレード部に対して傾斜して設けられ、前記途中部から中心を越えるまでの領域を清掃する第2ブレード部とで構成されている、ことを特徴とする請求項1から5の何れか一に記載の円筒容器の清掃装置。
【請求項7】
前記円筒容器の内面に所定の洗浄剤を噴射供給する洗浄剤供給手段を更に備えている、ことを特徴とする請求項1から6の何れか一に記載の円筒容器の清掃装置。
【請求項8】
一端に開口部を有する円筒容器の内面に付着したチクソトロピー性残留物を除去して該内面を清掃する円筒容器の清掃システムであって、
請求項1から7の何れか一に記載された円筒容器の清掃装置と、
前記円筒容器の内面に洗浄剤を供給し該内面をブラシで擦ることによって円筒容器の内面を洗浄するブラシ洗浄装置、及び/又は前記円筒容器の内面に洗浄液のジェット噴流を吹き付けることによって当該円筒容器の内面を洗浄するジェット洗浄装置と、を備え、
前記清掃装置による清掃を終えた後に、前記ブラシ洗浄装置による洗浄及び/又は前記ジェット洗浄装置による洗浄を行う、
ことを特徴とする円筒容器の清掃システム。
【請求項1】
一端に開口部を有する円筒容器の内面に付着したチクソトロピー性残留物を除去して該内面を清掃する円筒容器の清掃装置であって、
前記開口部が斜め下方に指向した状態で前記円筒容器を支持する容器支持手段と、
該容器支持手段で支持された前記円筒容器を、その長手方向軸線を中心にして所定方向に回転させる容器回転手段と、
前記円筒容器の内部底面に押し当てられて該底面を清掃する底面清掃具と、円筒容器の内部側面に押し当てられて該側面を清掃する側面清掃具と、を備えた内面清掃手段と、
前記開口部を通して、前記内面清掃手段を円筒容器の内部に対して進退動させる進退動手段と、
前記底面清掃具を円筒容器の内部底面に押し当てる底面清掃具押し当て手段と、
前記側面清掃具を円筒容器の内部側面に押し当てる側面清掃具押し当て手段と、
前記各手段を制御する制御手段と、を備え、
該制御手段は、前記進退動手段が前記内面清掃手段を円筒容器内部の所定位置まで前進させ、前記底面清掃具押し当て手段が前記底面清掃具を円筒容器の内部底面に押し当てた状態で円筒容器が所定回数回転した後に、前記側面清掃具押し当て手段が前記側面清掃具を円筒容器の内部側面に押し当てた状態と円筒容器の回転状態とを維持しながら、前記進退動手段が前記側面清掃具押圧手段を円筒容器の内部側面に沿って後退させるように制御する、
ことを特徴とする円筒容器の清掃装置。
【請求項2】
前記チクソトロピー性残留物が、B型粘度計で6rpmでの粘度η6と、60rpmでの粘度η60との比η6/η60の値で2以上を示す内容物であることを特徴とする
請求項1に記載の円筒容器の清掃装置。
【請求項3】
前記進退動手段は、一端が前記円筒容器の開口部近傍に位置し斜め下方に向かって伸長するベースブームと、一端に前記内面清掃手段を備え前記ベースブームの長手方向に沿って摺動可能にベースブームに支持されたスライドブームとを備え、
前記ベースブームは、枢支部を中心にして上下方向に回動可能に支持されると共に、前記枢支部よりも円筒容器の開口部に近い側が昇降手段で昇降可能に支持されており、
前記昇降手段の下降動作によってベースブームが前記枢支部を中心にして下方に回動し、前記底面清掃具が円筒容器の内部底面に対して押し当てられ、前記側面清掃具が円筒容器の内部側面に対して押し当てられる、
ことを特徴とする請求項1あるいは2に記載の円筒容器の清掃装置。
【請求項4】
前記円筒容器の開口縁部に押圧されて該開口縁部を清掃する開口縁部清掃具を更に備えている、ことを特徴とする請求項1から3の何れか一に記載の円筒容器の清掃装置。
【請求項5】
前記側面清掃具は弾性ブレードを備え、該弾性ブレードは、円筒容器の長手方向軸線を含む面に対して、円筒容器の開口部に近い側が当該円筒容器の回転方向における下流側に位置するように傾斜した状態で、円筒容器の内部側面に押し当てられる、ことを特徴とする請求項1から4の何れか一に記載の円筒容器の清掃装置。
【請求項6】
前記底面清掃具は弾性ブレードを備え、該弾性ブレードは、円筒容器の底面の周縁部から中心に至る途中部までの領域を清掃する第1ブレード部と、該第1ブレード部に対して傾斜して設けられ、前記途中部から中心を越えるまでの領域を清掃する第2ブレード部とで構成されている、ことを特徴とする請求項1から5の何れか一に記載の円筒容器の清掃装置。
【請求項7】
前記円筒容器の内面に所定の洗浄剤を噴射供給する洗浄剤供給手段を更に備えている、ことを特徴とする請求項1から6の何れか一に記載の円筒容器の清掃装置。
【請求項8】
一端に開口部を有する円筒容器の内面に付着したチクソトロピー性残留物を除去して該内面を清掃する円筒容器の清掃システムであって、
請求項1から7の何れか一に記載された円筒容器の清掃装置と、
前記円筒容器の内面に洗浄剤を供給し該内面をブラシで擦ることによって円筒容器の内面を洗浄するブラシ洗浄装置、及び/又は前記円筒容器の内面に洗浄液のジェット噴流を吹き付けることによって当該円筒容器の内面を洗浄するジェット洗浄装置と、を備え、
前記清掃装置による清掃を終えた後に、前記ブラシ洗浄装置による洗浄及び/又は前記ジェット洗浄装置による洗浄を行う、
ことを特徴とする円筒容器の清掃システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−291763(P2009−291763A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150595(P2008−150595)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【出願人】(390018924)東光技研工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【出願人】(390018924)東光技研工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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