凹凸形状を抽出するための画像処理方法及び画像処理装置
【課題】縦振動を引き起こしている状況下でも、凹凸形状を精度高く読取ることができるようにする。
【解決手段】凹凸形状が施され且つ該凹凸形状の凹凸方向に沿った振動を起こしている刻印面から、凹凸形状を抽出するための画像処理方法であって、刻印面に対して一方向に走査することで、凹凸形状の高さデータを有する2次元形状データを取得する走査ステップと、高さデータの変化度合いを求めるために、2次元形状データを微分する微分ステップと、微分ステップの結果を基に、2次元形状データから高さデータの変化度合いが急峻なものを除去するスパイク除去ステップと、スパイク除去ステップの結果を積分して振動波形を推定する積分ステップと、2次元形状データから、積分ステップで推定した振動波形を減じることで凹凸形状に相当する刻印波形を算出する凹凸検出ステップとを有する。
【解決手段】凹凸形状が施され且つ該凹凸形状の凹凸方向に沿った振動を起こしている刻印面から、凹凸形状を抽出するための画像処理方法であって、刻印面に対して一方向に走査することで、凹凸形状の高さデータを有する2次元形状データを取得する走査ステップと、高さデータの変化度合いを求めるために、2次元形状データを微分する微分ステップと、微分ステップの結果を基に、2次元形状データから高さデータの変化度合いが急峻なものを除去するスパイク除去ステップと、スパイク除去ステップの結果を積分して振動波形を推定する積分ステップと、2次元形状データから、積分ステップで推定した振動波形を減じることで凹凸形状に相当する刻印波形を算出する凹凸検出ステップとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸形状が施され且つ該凹凸形状の凹凸方向に沿った振動を起こしている刻印面から凹凸形状を抽出するための画像処理方法及び画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製品の形状診断、または生産管理を目的とし、製品(検査対象)の表面の凹凸状態を計測することがしばしば行われている。凹凸状態の検出には、光切断線(ラインレーザ)を検査対象物に照射し、対象物に映った光切断線を撮像機で撮像して、凹凸情報を計測する光切断法が利用される。
このような凹凸状態の計測は、搬送ライン上で行う事ができれば好ましいが、搬送ライン自身や周辺設備の影響などにより、計測器または検査対象自体が振動を起こす事があり、そのために計測された形状データのなかに振動に起因するノイズが重畳される場合がある。
【0003】
特に、検査対象に刻印された凹凸文字を画像処理を用いて検出するに際して、凹凸文字の凹凸方向に沿った振動、すなわち縦振動は、凹凸文字の高さデータに対し近い値となることがあり、誤差要因となる。すなわち、光切断法による計測結果が、本当に凹凸文字を示しているのか縦振動による誤差なのか、その判別が難しくノイズ除去の対策が望まれている。
【0004】
縦振動による誤差の除去技術としては、特開2000−292132号公報(特許文献1)に開示されたものがある。この文献は、ワークにスリット光を照射し、同一位置におけるワークの両面(上下面)を、スリット光の照射光軸外に配置された撮像器で撮像し、撮像器により撮像して得た同一位置におけるワーク両面の各スリット画像データと、品質既知の標準ワークの両面に投影した標準スリット画像を前記撮像器で撮像して得た同一位置における標準ワーク両面の各標準スリット画像データとを比較し、当該比較結果に基づいてワークの品質を判定することを特徴とするワーク品質検査方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−292132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術を採用して、搬送ライン上で検査対象物の凹凸計測を行う場合に、以下のような不都合が生じる。
例えば、搬送ラインの上側若しくは下側に、撮像器などを設置する空間がなく、検査対象物の上側若しくは下側の画像が取得できない場合が往々にしてある。また、検査対象の下側に撮像器を設置できたとしても、検査対象の下側表面にも凹凸があり、上下の計測値の差分だけでは、上面と下面のどちら側に凹凸があるか判断できないなどの問題も発生する。
【0007】
なお、別途、振動計を設置し振動計測を行うならば、振動の影響を取り除いて凹凸の計測が可能かもしれないが、その場合は振動センサの追加が要求され、装置構成やデータ処理の複雑化は否めない。
そこで、本発明は、上記問題点を鑑み、凹凸形状の凹凸方向に沿った振動を起こしている刻印面から精度良く凹凸形状を抽出するための画像処理方法及び画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明に係る画像処理方法は、凹凸形状が施され且つ該凹凸形状の凹凸方向に沿った振動を起こしている刻印面から、凹凸形状を抽出するための画像処理方法であって、前記刻印面に対して一方向に走査することで、凹凸形状の高さデータを有する2次元形状データを取得する走査ステップと、前記高さデータの変化度合いを求めるために、前記2次元形状データを微分する微分ステップと、前記微分ステップの結果を基に、前記2次元形状データから高さデータの変化度合いが急峻なものを除去するスパイク除去ステップと、前記スパイク除去ステップの結果を積分して振動波形を推定する積分ステップと、前記2次元形状データから、積分ステップで推定した振動波形を減じることで前記凹凸形状に相当する刻印波形を算出する凹凸検出ステップと、を有する点にある。
【0009】
また、凹凸刻印があるとされた刻印波形と、凹凸刻印が無いとされた刻印波形との差から凹凸刻印の段差を求める刻印段差検出ステップを有していることが好ましい。
本発明に係る画像処理装置は、凹凸形状が刻印され且つ該凹凸形状の凹凸方向に沿った振動を起こしている刻印面から、凹凸形状を抽出するための制御処理装置を有する画像処理装置であって、前記制御処理装置は、前記刻印面に対して一方向に走査して得られた凹凸形状の高さデータを有する2次元形状データを微分して前記凹凸形状の高さデータの変化度合いを示す微分波形を算出する微分波形算出部と、前記微分波形算出部の結果を基に、前記微分波形における変化度合いが急峻なものを除去するスパイク除去部と、前記スパイク除去部の結果を積分して積分波形を推定する積分波形推定部と、前記2次元形状データから、積分波形推定部とで推定した積分波形を減じることで前記凹凸形状を含む刻印波形を算出する凹凸波形算出部とを有する点にある。
【0010】
前記制御処理装置は、凹凸形状があるとされた刻印波形と、凹凸形状が無いとされた刻印波形との差から凹凸形状の段差を求める段差算出部を有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の凹凸形状抽出のための画像処理方法によれば、凹凸形状の凹凸方向に沿った振動、所謂、縦振動を引き起こしている状況下でも、凹凸形状を精度高く読取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】光切断法センサの装置構成を示した図である。
【図2】光切断法センサの装置構成を示した図である。
【図3】本発明に係る画像処理のフローチャートを示した図である。
【図4】縦振動によるノイズが加わったときの対象物のデータを示した図である。
【図5】縦振動によるノイズが加わったときの凹凸文字を除く対象物のデータを示した図である。
【図6】縦振動によるノイズを除去したときの対象物のデータを示した図である。
【図7】2次元形状データの波形を示す図である。
【図8】オフセット量が加えられていない刻印波形を示す図である。
【図9】縦振動による変位や変形を示す波形を示す図である。
【図10】刻印面を示す波形を示す図である。
【図11】オフセット量が加わった振動波形と、2次元形状データの波形とを示す図である。
【図12】オフセット量が加算された刻印波形を示す図である。
【図13】オフセット量を求める際の波形と関数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図を基に説明する。
なお、以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
図1,図2を参照して、本実施形態に係る画像処理(以降、画像処理装置)の全体システム構成について説明する。本発明は、例えば、文字や記号などの凹凸形状が対象物3に刻印されたものにおいて、その凹凸形状を精度良く抽出しようとするものである。この実施形態では、凹凸形状は凹凸文字であるとして説明を行うが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0014】
この画像処理装置は、センサ1を有している。このセンサ1は、光切断法を適用した光切断法センサであり、対象物3にライン状の光切断線(ライン状のレーザ光)を投射する投射部11と、対象物3の表面から反射してきた光切断線を撮像する撮像部12とを有している。なお、本発明の凹凸形状(凹凸文字)を抽出するための画像処理方法では、光切断法を適用した光切断法センサ1でなくても、レーザ距離計のスポットをスキャニングするようなセンサであってもよい。
【0015】
さらに、画像処理装置は、光切断法センサ1を対象物3に沿って走査するための走査用レール2を有している。これは、光切断法センサ1による1回の計測では、光切断線が当たった部分しか凹凸情報を取得できないため、当該走査用レール2を用いて光切断法センサ1を対象物3に倣う方向に走査させることにより、対象物3全体の表面形状を計測するためである。また、画像処理装置は、光切断法センサ1に接続されて光切断法センサ1からの信号を受信して処理する制御処理装置(例えば、パーソナルコンピュータなどのコンピュータ)4を有している。
【0016】
この画像処理装置は、例えば、対象物3を搬送する搬送ライン5上に設けられていて、光切断法センサ1により対象物3を走査する付近には、搬送ライン5により搬送された対象物3を搬送方向とは異なる方向(例えば、幅方向)から押さえる押さえ装置6が設けられている。押さえ装置6によって横振動(後述するx軸方向の振動)が押さえられることになる。
【0017】
このような画像処理装置では、対象物3が搬送ライン5により搬送されて光切断法センサ1による走査位置に到達し、押さえ装置6により対象物3が押さえられると、動作するようになっている。
詳しくは、対象物3の上方に配置された光切断法センサ1は、走査用レール2により対象物3に沿う方向(例えば、対象物3の長手方向)に平行移動して、所定の位置にて停止する。そして、投射部11は、対象物3の凹凸文字が施された表面(刻印面)13に対し、その刻印面13の幅方向に光切断線する。その後、撮像部12は、対象物3の刻印面13から反射してくる光切断線の画像データを取得する。
【0018】
撮像部12にて取得された画像データは、コンピュータ4内に取り込まれ、コンピュータ4は、三角測量法の原理に基づいた処理を施すことにより、対象物3の2次元形状データを取得する。
図3を参照して、コンピュータ4で実行される画像処理の概要について説明する。
本画像処理は、光切断法センサ1を、刻印面13に対して一方向(x軸方向)に走査させることによって、凹凸文字の高さデータを有する2次元形状データを取得する走査ステップ(S0)を有している。後述する図7に示すように、2次元形状データは、光切断法センサ1を1回走査させた毎に取得するデータであって、対象物(刻印面13)において所定の幅方向の位置(x座標)に対する高さ(z軸方向のz値)を示すデータである。
【0019】
さて、対象物3や光切断法センサ1の近傍に強い振動を発生させるものが存在した場合、走査ステップにて取得した2次元計測データ(z値)には、凹凸方向に沿った振動(以降、縦振動と呼ぶこともある)に起因する誤差が含まれている。そのため、本画像処理には、取得された2次元データから縦振動を除去するために、以下の処理を行っている。
本画像処理は、2次元形状データにおいて当該データ内の凹凸文字の高さデータの変化度合いを求めるために(凹凸文字のエッジを抽出するために)当該2次元形状データを微分して微分波形を算出する微分ステップ(S1)を有している。微分ステップ(S1)の処理は、コンピュータ4の微分波形算出部20により行われる。
【0020】
また、本画像処理は、微分ステップ(S1)、即ち、微分波形算出部20の結果を基に、微分波形において変化度合いが急峻なもの(スパイクノイズ状のデータ)を除去するスパイク除去ステップ(S2)を有している。スパイク除去ステップS2の処理は、コンピュータ4のスパイク除去部21により行われる。本画像処理は、スパイク除去ステップ(S2)、即ち、スパイク除去部21の結果を積分して積分波形を推定する積分ステップ(S3、S4)を有している。積分ステップ(S3、S4)の処理は、コンピュータ4の積分波形推定部22により行われる。
【0021】
また、本画像処理は、2次元形状データから積分ステップ、即ち、積分波形推定部22で推定した積分波形を減じることで凹凸文字に相当する刻印波形を算出する凹凸検出ステップ(S5、S6、S7)とを備えている。凹凸検出ステップ(S5、S6、S7)の処理は、コンピュータ4の凹凸波形算出部23により行われる。
まず、走査ステップ(S0)では、図4に示すように、縦振動に伴って対象物3自体が高さ方向に変化したデータ(振動データ)と、凹凸文字により高さ方向に変化したデータ(文字高さデータ)とが加算された状態である2次元形状データを取得する。
【0022】
その後、微分ステップ(S1)によって、2次元形状データにおける高さデータの変化度合いを求めることによって、縦振動による高さ変動(振動波形)と凹凸文字による高さ変動(刻印波形)との区別が出来るようにしている。
スパイク除去ステップ(S2)によって、凹凸文字による高さ変動のみを微分波形から除去することができ、積分ステップ(S3、S4)により、図5に示すように、積分波形、つまり縦振動の振動波形ならびに刻印面の形状を推定することができる。
【0023】
そして、凹凸検出ステップ(S5、S6、S7)により、測定時の2次元データから、縦振動の振動波形ならびに刻印面の形状を減じることによって刻印波形を抽出し、これにより、図6に示すように、刻印面13に施された凹凸文字を抽出することが可能となる。
以下、各ステップ、即ち、プログラム等で構成された微分波形算出部20、スパイク除去部21、積分波形推定部22、凹凸波形算出部23について詳しく説明する。
【0024】
まず、走査ステップ(S0)においては、例えば、縦振動が発生している状況下にて、凹凸文字の刻印が施され局所的に凹凸表面形状を有する対象物3を光切断法センサ1にて走査し、当該光切断法センサ1にて走査したデータをコンピュータ4に取り込むことにより、図7に示すように、1回走査したときの対象物3の刻印面13における2次元形状データP(x)を取得する。図7のx座標は、対象物3の幅方向の座標を示しており、同図計測データ(z値)は、対象物3の垂直方向(z軸方向)における値(高さデータ)である。
【0025】
次に、微分ステップ(S1)においては、対象物3の2次元形状データP(x)内の高さデータの変化度合いを求めるために、x軸方向のデータについて微分を行う。つまり、2次元形状データP(x)を微分した後のデータ(微分波形)は、式(1)のように示すことができる。なお、式(1)に示すΔtは、2次元形状データP(x)を微分する際のx軸成分における最小単位である。
【0026】
【数1】
【0027】
スパイク除去ステップ(S2)においては、式(1)のように示された微分波形P’(x)に対して、一定値以上、即ち、高さデータの変化度合いが急峻なものを除去する。つまり、微分波形P’(x)に対して一定値βにて、スパイク状のピーク値を除去したデータh’(x)を算出する。具体的には、所定座標(xs)における値P(xs)が一定値β以上だとすると、式(2)に示すような形で2次元形状データを加工する。
【0028】
【数2】
【0029】
なお、スパイク除去ステップ(S2)において、微分波形P’(x)からスパイク部分を除去する際には、除去するための基準値(前述の一定値β)が、凹凸文字の段差量や刻印面13におけるx軸方向の変化分(例えば、撓み)を超えないようにする必要がある。刻印面(基準面)を示す波形(関数)をR(x)、縦振動による変位や変形を示す波形(関数)をS(x)としたとき、スパイクを除去するための基準となる一定値βは、式(a)を満たす必要がある。
【0030】
【数3】
【0031】
例えば、極めてなだらかな曲面(刻印面13や対象物の撓み等にほとんど変化が無い)、即ち、R’(x)+S’(x)=0となる条件に、段差が1mmとなる凹凸文字が施されている場合、一定値βを凹凸文字の段差の半分である0.5mmにすればよい。
ここで、光切断法センサ1にて刻印面13を走査したとき、その刻印面13上に凹凸文字が存在したときの波形を考えると、図8に示すように、凹凸文字を検出した時点では、凹凸文字に段差があるため、その波形は急激に立ち上がったり、立ち下がったりするステップ波形となると考えられる。
【0032】
そこで、図8に示すように、凹凸文字の段差を示す刻印波形(関数)をQ(x)とすると、光切断法センサ1にて刻印面13を走査したときの2次元形状データP(x)は、上述した刻印面波形R(x)、縦振動による変位や変形を示す波形S(x)とを合わせた式(3)に示すものとなり、上述したように凹凸文字の段差により波形が急激に変化するという前提により、刻印波形Q(x)は、式(4)に示すものとなる。
【0033】
なお、縦振動による変位や変形を示す波形S(x)は、図9に示すものとなり、刻印面を示す波形R(x)は、図10に示すものとなる。
【0034】
【数4】
【0035】
したがって、微分ステップ(S1)にて、二次元形状データP(x)を微分すると、式(5)に示すように、凹凸文字による高さ変化は残らず、微分波形P’(x)は、式(6)に示すものとなる。
【0036】
【数5】
【0037】
即ち、スパイク除去ステップ(S2)を経た微分波形P’(x)は、凹凸文字が施されていない場合の対象物の表面の計測結果(縦振動を含む)を、微分(dz/dx)して得られた結果と同じとなる。
さらに、積分ステップ(S3)においては、スパイクが除去された微分波形h’(x)をn次関数にて関数近似することにより、縦振動したときの対象物3の波形を示す振動波形F(x)を得る前の微分関数であるF’(x)を得る。
【0038】
次に、積分ステップ(S4)においては、積分定数C=0として、振動波形F(x)を得る前の微分関数であるF’(x)を積分して、振動波形のみを取り出したと推定される振動波形F(x)を求める。即ち、積分ステップ(S3、S4)において、式(7)及び式(8)により、振動波形F(x)を求める。なお、積分定数はC=0でなくても、他の値に置き換えるようにしてもよい。
【0039】
【数6】
【0040】
そして、凹凸検出ステップ(S5)にて、2次元形状データP(x)から振動波形F(x)を減算すれば、凹凸文字に相当する刻印波形Q(x)を抽出することができる。
ここで、縦振動に起因して、例えば、対象物が弾性変形したり、撓むということまでも考慮すると、縦振動等の影響によって、刻印面13には縦方向でのオフセット量αが、振動波形F(x)に加算されているとも考えられる。そこで、この実施形態では、凹凸検出ステップにおいて、刻印面13における縦方向のオフセット量αまでも考慮している。
【0041】
即ち、縦振動に起因して対象物が弾性変形したとすると、2次元形状データP(x)から振動波形F(x)を減算したD(x)には、図11や式(9)及び式(10)に示すように、凹凸文字に相当する刻印波形Q(x)と、振動波形F(x)に含まれるオフセット量αが加わることになる。また、図12に示すように、2次元形状データP(x)から振動波形F(x)を減算することにより得られた刻印波形Q(x)にも、オフセット量α(図12より、α=9.2)が加算された状態となる。なお、上述した図8は、縦振動等の影響によって刻印面13には縦方向でのオフセット量αが加えられてないものとした波形である。
【0042】
【数7】
【0043】
そこで、凹凸検出ステップ(S6)では、下記に示す特定条件下で、上述したD(x)をy=αとして近似することによって、振動波形F(x)に加えられたオフセット量を求め、このオフセット量αも凹凸文字を抽出するために反映している。
凹凸検出ステップ(S6)では、特定条件を次のようにしている。
条件1)凹凸文字は、刻印面を示す波形R(x)から盛り上がっている(凸文字)。
【0044】
条件2)凹凸文字は、刻印面を示す波形R(x)から凹んでいる(凹文字)。
条件3)刻印面13の幅方向において、凹凸文字が存在する範囲が、凹凸文字が存在しない範囲よりも広い。
なお、これらの条件は、刻印面13に凹凸文字を刻印したときに予め分かるため既知であるものとする。
【0045】
対象物の幅方向における数値xを、離散化したものをx0、x1…xkとして、WuをD(x’)≧Ave(D(x))となるxの集合、WlをD(x’)<Ave(D(x))となるxの集合としたとき、凹凸文字の段差の上位部位における近似関数は式(11)となり、凹凸文字の段差の下位部位における近似関数は式(12)となる。Aveは、関数又は集合の平均値である。式(11)及び式(12)に示されたupper_y、lower_y、D(x)、Ave(D(x))は、図13に示すものとなる。
【0046】
【数8】
【0047】
ここで、振動波形F(x)に加えられたオフセット量αは、条件1のときは、式(13)となり、条件2のときは、式(14)となる。
また、振動波形F(x)に加えられたオフセット量αは、条件3のときは、Wuの集合の数(要素数)がWよりl多い場合は、式(13)となり、Wlの集合の数(要素数)がWuより多い場合は、式(14)となる。
【0048】
【数9】
【0049】
凹凸検出ステップ(S7)では、式(11)から式(14)に示すように求めたオフセット量αを振動波形F(x)に反映して、オフセット量αが加算されていない振動波形B(x)を求め、2次元形状データP(x)から振動波形B(x)を減算することによって、刻印波形Q(x)を抽出するようにしている。即ち、凹凸検出ステップ(S7)においては、縦振動等によって対象物が弾性変形する状況下においても、図8に示したようなオフセット量αがかかっていない波形を求めることができる。
【0050】
そして、凹凸検出ステップ(S7)では、このように、オフセット量αを考慮した刻印波形Q(x)を求め、凹凸刻印があるとされた刻印波形Q(x)の値(信号が立ち上がり後の最大値)と、凹凸刻印が無いとされた刻印波形Q(x)の値(信号が立ち上がる前の最小値)との差を求めることによって、凹凸刻印の段差を求めることも行っている(刻印段差検出ステップ)。例えば、オフセット量αを考慮された刻印波形Q(x)が図8と同様のものであるとすると、刻印段差検出ステップでは、図8に示す刻印波形Q(x)の最大値(1)から刻印波形Q(x)の最小値(0)を引くことによって、凹凸文字の段差量を取得することができる。なお、刻印段差検出ステップでは、D(x)とy=αとの差からも凹凸文字の段差量を求めることができる。なお、段差検出ステップによる処理は、コンピュータ4の段差算出部24により行われる。
【0051】
以上述べた本発明に係る画像処理及び画像処理装置を用いることで、1台の光切断法センサのみでも、又、縦振動等によって対象物が弾性変形した場合であっても、対象物もしくは光切断法センサ1の縦振動の起因してズレが発生しても、ズレ量となるノイズを除外して、正確な対象物表面の凹凸文字の情報を取得することができる。即ち、凹凸文字の凹凸方向に沿った振動(縦振動)を引き起こしている状況下でも、凹凸文字を精度高く読取ることができる。また、縦振動等によって対象物が弾性変形した場合であっても、凹凸文字の段差を正確に求めることができる。
【0052】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0053】
1 センサ(光切断法センサ)
2 走査用レール
3 対象物
4 コンピュータ(制御処理装置)
5 搬送ライン
6 押さえ装置
11 投射部
12 撮像部
13 刻印面
20 微分波形算出部
21 スパイク除去部
22 積分波形推定部
23 凹凸波形算出部
24 段差算出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸形状が施され且つ該凹凸形状の凹凸方向に沿った振動を起こしている刻印面から凹凸形状を抽出するための画像処理方法及び画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製品の形状診断、または生産管理を目的とし、製品(検査対象)の表面の凹凸状態を計測することがしばしば行われている。凹凸状態の検出には、光切断線(ラインレーザ)を検査対象物に照射し、対象物に映った光切断線を撮像機で撮像して、凹凸情報を計測する光切断法が利用される。
このような凹凸状態の計測は、搬送ライン上で行う事ができれば好ましいが、搬送ライン自身や周辺設備の影響などにより、計測器または検査対象自体が振動を起こす事があり、そのために計測された形状データのなかに振動に起因するノイズが重畳される場合がある。
【0003】
特に、検査対象に刻印された凹凸文字を画像処理を用いて検出するに際して、凹凸文字の凹凸方向に沿った振動、すなわち縦振動は、凹凸文字の高さデータに対し近い値となることがあり、誤差要因となる。すなわち、光切断法による計測結果が、本当に凹凸文字を示しているのか縦振動による誤差なのか、その判別が難しくノイズ除去の対策が望まれている。
【0004】
縦振動による誤差の除去技術としては、特開2000−292132号公報(特許文献1)に開示されたものがある。この文献は、ワークにスリット光を照射し、同一位置におけるワークの両面(上下面)を、スリット光の照射光軸外に配置された撮像器で撮像し、撮像器により撮像して得た同一位置におけるワーク両面の各スリット画像データと、品質既知の標準ワークの両面に投影した標準スリット画像を前記撮像器で撮像して得た同一位置における標準ワーク両面の各標準スリット画像データとを比較し、当該比較結果に基づいてワークの品質を判定することを特徴とするワーク品質検査方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−292132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術を採用して、搬送ライン上で検査対象物の凹凸計測を行う場合に、以下のような不都合が生じる。
例えば、搬送ラインの上側若しくは下側に、撮像器などを設置する空間がなく、検査対象物の上側若しくは下側の画像が取得できない場合が往々にしてある。また、検査対象の下側に撮像器を設置できたとしても、検査対象の下側表面にも凹凸があり、上下の計測値の差分だけでは、上面と下面のどちら側に凹凸があるか判断できないなどの問題も発生する。
【0007】
なお、別途、振動計を設置し振動計測を行うならば、振動の影響を取り除いて凹凸の計測が可能かもしれないが、その場合は振動センサの追加が要求され、装置構成やデータ処理の複雑化は否めない。
そこで、本発明は、上記問題点を鑑み、凹凸形状の凹凸方向に沿った振動を起こしている刻印面から精度良く凹凸形状を抽出するための画像処理方法及び画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明に係る画像処理方法は、凹凸形状が施され且つ該凹凸形状の凹凸方向に沿った振動を起こしている刻印面から、凹凸形状を抽出するための画像処理方法であって、前記刻印面に対して一方向に走査することで、凹凸形状の高さデータを有する2次元形状データを取得する走査ステップと、前記高さデータの変化度合いを求めるために、前記2次元形状データを微分する微分ステップと、前記微分ステップの結果を基に、前記2次元形状データから高さデータの変化度合いが急峻なものを除去するスパイク除去ステップと、前記スパイク除去ステップの結果を積分して振動波形を推定する積分ステップと、前記2次元形状データから、積分ステップで推定した振動波形を減じることで前記凹凸形状に相当する刻印波形を算出する凹凸検出ステップと、を有する点にある。
【0009】
また、凹凸刻印があるとされた刻印波形と、凹凸刻印が無いとされた刻印波形との差から凹凸刻印の段差を求める刻印段差検出ステップを有していることが好ましい。
本発明に係る画像処理装置は、凹凸形状が刻印され且つ該凹凸形状の凹凸方向に沿った振動を起こしている刻印面から、凹凸形状を抽出するための制御処理装置を有する画像処理装置であって、前記制御処理装置は、前記刻印面に対して一方向に走査して得られた凹凸形状の高さデータを有する2次元形状データを微分して前記凹凸形状の高さデータの変化度合いを示す微分波形を算出する微分波形算出部と、前記微分波形算出部の結果を基に、前記微分波形における変化度合いが急峻なものを除去するスパイク除去部と、前記スパイク除去部の結果を積分して積分波形を推定する積分波形推定部と、前記2次元形状データから、積分波形推定部とで推定した積分波形を減じることで前記凹凸形状を含む刻印波形を算出する凹凸波形算出部とを有する点にある。
【0010】
前記制御処理装置は、凹凸形状があるとされた刻印波形と、凹凸形状が無いとされた刻印波形との差から凹凸形状の段差を求める段差算出部を有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の凹凸形状抽出のための画像処理方法によれば、凹凸形状の凹凸方向に沿った振動、所謂、縦振動を引き起こしている状況下でも、凹凸形状を精度高く読取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】光切断法センサの装置構成を示した図である。
【図2】光切断法センサの装置構成を示した図である。
【図3】本発明に係る画像処理のフローチャートを示した図である。
【図4】縦振動によるノイズが加わったときの対象物のデータを示した図である。
【図5】縦振動によるノイズが加わったときの凹凸文字を除く対象物のデータを示した図である。
【図6】縦振動によるノイズを除去したときの対象物のデータを示した図である。
【図7】2次元形状データの波形を示す図である。
【図8】オフセット量が加えられていない刻印波形を示す図である。
【図9】縦振動による変位や変形を示す波形を示す図である。
【図10】刻印面を示す波形を示す図である。
【図11】オフセット量が加わった振動波形と、2次元形状データの波形とを示す図である。
【図12】オフセット量が加算された刻印波形を示す図である。
【図13】オフセット量を求める際の波形と関数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図を基に説明する。
なお、以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
図1,図2を参照して、本実施形態に係る画像処理(以降、画像処理装置)の全体システム構成について説明する。本発明は、例えば、文字や記号などの凹凸形状が対象物3に刻印されたものにおいて、その凹凸形状を精度良く抽出しようとするものである。この実施形態では、凹凸形状は凹凸文字であるとして説明を行うが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0014】
この画像処理装置は、センサ1を有している。このセンサ1は、光切断法を適用した光切断法センサであり、対象物3にライン状の光切断線(ライン状のレーザ光)を投射する投射部11と、対象物3の表面から反射してきた光切断線を撮像する撮像部12とを有している。なお、本発明の凹凸形状(凹凸文字)を抽出するための画像処理方法では、光切断法を適用した光切断法センサ1でなくても、レーザ距離計のスポットをスキャニングするようなセンサであってもよい。
【0015】
さらに、画像処理装置は、光切断法センサ1を対象物3に沿って走査するための走査用レール2を有している。これは、光切断法センサ1による1回の計測では、光切断線が当たった部分しか凹凸情報を取得できないため、当該走査用レール2を用いて光切断法センサ1を対象物3に倣う方向に走査させることにより、対象物3全体の表面形状を計測するためである。また、画像処理装置は、光切断法センサ1に接続されて光切断法センサ1からの信号を受信して処理する制御処理装置(例えば、パーソナルコンピュータなどのコンピュータ)4を有している。
【0016】
この画像処理装置は、例えば、対象物3を搬送する搬送ライン5上に設けられていて、光切断法センサ1により対象物3を走査する付近には、搬送ライン5により搬送された対象物3を搬送方向とは異なる方向(例えば、幅方向)から押さえる押さえ装置6が設けられている。押さえ装置6によって横振動(後述するx軸方向の振動)が押さえられることになる。
【0017】
このような画像処理装置では、対象物3が搬送ライン5により搬送されて光切断法センサ1による走査位置に到達し、押さえ装置6により対象物3が押さえられると、動作するようになっている。
詳しくは、対象物3の上方に配置された光切断法センサ1は、走査用レール2により対象物3に沿う方向(例えば、対象物3の長手方向)に平行移動して、所定の位置にて停止する。そして、投射部11は、対象物3の凹凸文字が施された表面(刻印面)13に対し、その刻印面13の幅方向に光切断線する。その後、撮像部12は、対象物3の刻印面13から反射してくる光切断線の画像データを取得する。
【0018】
撮像部12にて取得された画像データは、コンピュータ4内に取り込まれ、コンピュータ4は、三角測量法の原理に基づいた処理を施すことにより、対象物3の2次元形状データを取得する。
図3を参照して、コンピュータ4で実行される画像処理の概要について説明する。
本画像処理は、光切断法センサ1を、刻印面13に対して一方向(x軸方向)に走査させることによって、凹凸文字の高さデータを有する2次元形状データを取得する走査ステップ(S0)を有している。後述する図7に示すように、2次元形状データは、光切断法センサ1を1回走査させた毎に取得するデータであって、対象物(刻印面13)において所定の幅方向の位置(x座標)に対する高さ(z軸方向のz値)を示すデータである。
【0019】
さて、対象物3や光切断法センサ1の近傍に強い振動を発生させるものが存在した場合、走査ステップにて取得した2次元計測データ(z値)には、凹凸方向に沿った振動(以降、縦振動と呼ぶこともある)に起因する誤差が含まれている。そのため、本画像処理には、取得された2次元データから縦振動を除去するために、以下の処理を行っている。
本画像処理は、2次元形状データにおいて当該データ内の凹凸文字の高さデータの変化度合いを求めるために(凹凸文字のエッジを抽出するために)当該2次元形状データを微分して微分波形を算出する微分ステップ(S1)を有している。微分ステップ(S1)の処理は、コンピュータ4の微分波形算出部20により行われる。
【0020】
また、本画像処理は、微分ステップ(S1)、即ち、微分波形算出部20の結果を基に、微分波形において変化度合いが急峻なもの(スパイクノイズ状のデータ)を除去するスパイク除去ステップ(S2)を有している。スパイク除去ステップS2の処理は、コンピュータ4のスパイク除去部21により行われる。本画像処理は、スパイク除去ステップ(S2)、即ち、スパイク除去部21の結果を積分して積分波形を推定する積分ステップ(S3、S4)を有している。積分ステップ(S3、S4)の処理は、コンピュータ4の積分波形推定部22により行われる。
【0021】
また、本画像処理は、2次元形状データから積分ステップ、即ち、積分波形推定部22で推定した積分波形を減じることで凹凸文字に相当する刻印波形を算出する凹凸検出ステップ(S5、S6、S7)とを備えている。凹凸検出ステップ(S5、S6、S7)の処理は、コンピュータ4の凹凸波形算出部23により行われる。
まず、走査ステップ(S0)では、図4に示すように、縦振動に伴って対象物3自体が高さ方向に変化したデータ(振動データ)と、凹凸文字により高さ方向に変化したデータ(文字高さデータ)とが加算された状態である2次元形状データを取得する。
【0022】
その後、微分ステップ(S1)によって、2次元形状データにおける高さデータの変化度合いを求めることによって、縦振動による高さ変動(振動波形)と凹凸文字による高さ変動(刻印波形)との区別が出来るようにしている。
スパイク除去ステップ(S2)によって、凹凸文字による高さ変動のみを微分波形から除去することができ、積分ステップ(S3、S4)により、図5に示すように、積分波形、つまり縦振動の振動波形ならびに刻印面の形状を推定することができる。
【0023】
そして、凹凸検出ステップ(S5、S6、S7)により、測定時の2次元データから、縦振動の振動波形ならびに刻印面の形状を減じることによって刻印波形を抽出し、これにより、図6に示すように、刻印面13に施された凹凸文字を抽出することが可能となる。
以下、各ステップ、即ち、プログラム等で構成された微分波形算出部20、スパイク除去部21、積分波形推定部22、凹凸波形算出部23について詳しく説明する。
【0024】
まず、走査ステップ(S0)においては、例えば、縦振動が発生している状況下にて、凹凸文字の刻印が施され局所的に凹凸表面形状を有する対象物3を光切断法センサ1にて走査し、当該光切断法センサ1にて走査したデータをコンピュータ4に取り込むことにより、図7に示すように、1回走査したときの対象物3の刻印面13における2次元形状データP(x)を取得する。図7のx座標は、対象物3の幅方向の座標を示しており、同図計測データ(z値)は、対象物3の垂直方向(z軸方向)における値(高さデータ)である。
【0025】
次に、微分ステップ(S1)においては、対象物3の2次元形状データP(x)内の高さデータの変化度合いを求めるために、x軸方向のデータについて微分を行う。つまり、2次元形状データP(x)を微分した後のデータ(微分波形)は、式(1)のように示すことができる。なお、式(1)に示すΔtは、2次元形状データP(x)を微分する際のx軸成分における最小単位である。
【0026】
【数1】
【0027】
スパイク除去ステップ(S2)においては、式(1)のように示された微分波形P’(x)に対して、一定値以上、即ち、高さデータの変化度合いが急峻なものを除去する。つまり、微分波形P’(x)に対して一定値βにて、スパイク状のピーク値を除去したデータh’(x)を算出する。具体的には、所定座標(xs)における値P(xs)が一定値β以上だとすると、式(2)に示すような形で2次元形状データを加工する。
【0028】
【数2】
【0029】
なお、スパイク除去ステップ(S2)において、微分波形P’(x)からスパイク部分を除去する際には、除去するための基準値(前述の一定値β)が、凹凸文字の段差量や刻印面13におけるx軸方向の変化分(例えば、撓み)を超えないようにする必要がある。刻印面(基準面)を示す波形(関数)をR(x)、縦振動による変位や変形を示す波形(関数)をS(x)としたとき、スパイクを除去するための基準となる一定値βは、式(a)を満たす必要がある。
【0030】
【数3】
【0031】
例えば、極めてなだらかな曲面(刻印面13や対象物の撓み等にほとんど変化が無い)、即ち、R’(x)+S’(x)=0となる条件に、段差が1mmとなる凹凸文字が施されている場合、一定値βを凹凸文字の段差の半分である0.5mmにすればよい。
ここで、光切断法センサ1にて刻印面13を走査したとき、その刻印面13上に凹凸文字が存在したときの波形を考えると、図8に示すように、凹凸文字を検出した時点では、凹凸文字に段差があるため、その波形は急激に立ち上がったり、立ち下がったりするステップ波形となると考えられる。
【0032】
そこで、図8に示すように、凹凸文字の段差を示す刻印波形(関数)をQ(x)とすると、光切断法センサ1にて刻印面13を走査したときの2次元形状データP(x)は、上述した刻印面波形R(x)、縦振動による変位や変形を示す波形S(x)とを合わせた式(3)に示すものとなり、上述したように凹凸文字の段差により波形が急激に変化するという前提により、刻印波形Q(x)は、式(4)に示すものとなる。
【0033】
なお、縦振動による変位や変形を示す波形S(x)は、図9に示すものとなり、刻印面を示す波形R(x)は、図10に示すものとなる。
【0034】
【数4】
【0035】
したがって、微分ステップ(S1)にて、二次元形状データP(x)を微分すると、式(5)に示すように、凹凸文字による高さ変化は残らず、微分波形P’(x)は、式(6)に示すものとなる。
【0036】
【数5】
【0037】
即ち、スパイク除去ステップ(S2)を経た微分波形P’(x)は、凹凸文字が施されていない場合の対象物の表面の計測結果(縦振動を含む)を、微分(dz/dx)して得られた結果と同じとなる。
さらに、積分ステップ(S3)においては、スパイクが除去された微分波形h’(x)をn次関数にて関数近似することにより、縦振動したときの対象物3の波形を示す振動波形F(x)を得る前の微分関数であるF’(x)を得る。
【0038】
次に、積分ステップ(S4)においては、積分定数C=0として、振動波形F(x)を得る前の微分関数であるF’(x)を積分して、振動波形のみを取り出したと推定される振動波形F(x)を求める。即ち、積分ステップ(S3、S4)において、式(7)及び式(8)により、振動波形F(x)を求める。なお、積分定数はC=0でなくても、他の値に置き換えるようにしてもよい。
【0039】
【数6】
【0040】
そして、凹凸検出ステップ(S5)にて、2次元形状データP(x)から振動波形F(x)を減算すれば、凹凸文字に相当する刻印波形Q(x)を抽出することができる。
ここで、縦振動に起因して、例えば、対象物が弾性変形したり、撓むということまでも考慮すると、縦振動等の影響によって、刻印面13には縦方向でのオフセット量αが、振動波形F(x)に加算されているとも考えられる。そこで、この実施形態では、凹凸検出ステップにおいて、刻印面13における縦方向のオフセット量αまでも考慮している。
【0041】
即ち、縦振動に起因して対象物が弾性変形したとすると、2次元形状データP(x)から振動波形F(x)を減算したD(x)には、図11や式(9)及び式(10)に示すように、凹凸文字に相当する刻印波形Q(x)と、振動波形F(x)に含まれるオフセット量αが加わることになる。また、図12に示すように、2次元形状データP(x)から振動波形F(x)を減算することにより得られた刻印波形Q(x)にも、オフセット量α(図12より、α=9.2)が加算された状態となる。なお、上述した図8は、縦振動等の影響によって刻印面13には縦方向でのオフセット量αが加えられてないものとした波形である。
【0042】
【数7】
【0043】
そこで、凹凸検出ステップ(S6)では、下記に示す特定条件下で、上述したD(x)をy=αとして近似することによって、振動波形F(x)に加えられたオフセット量を求め、このオフセット量αも凹凸文字を抽出するために反映している。
凹凸検出ステップ(S6)では、特定条件を次のようにしている。
条件1)凹凸文字は、刻印面を示す波形R(x)から盛り上がっている(凸文字)。
【0044】
条件2)凹凸文字は、刻印面を示す波形R(x)から凹んでいる(凹文字)。
条件3)刻印面13の幅方向において、凹凸文字が存在する範囲が、凹凸文字が存在しない範囲よりも広い。
なお、これらの条件は、刻印面13に凹凸文字を刻印したときに予め分かるため既知であるものとする。
【0045】
対象物の幅方向における数値xを、離散化したものをx0、x1…xkとして、WuをD(x’)≧Ave(D(x))となるxの集合、WlをD(x’)<Ave(D(x))となるxの集合としたとき、凹凸文字の段差の上位部位における近似関数は式(11)となり、凹凸文字の段差の下位部位における近似関数は式(12)となる。Aveは、関数又は集合の平均値である。式(11)及び式(12)に示されたupper_y、lower_y、D(x)、Ave(D(x))は、図13に示すものとなる。
【0046】
【数8】
【0047】
ここで、振動波形F(x)に加えられたオフセット量αは、条件1のときは、式(13)となり、条件2のときは、式(14)となる。
また、振動波形F(x)に加えられたオフセット量αは、条件3のときは、Wuの集合の数(要素数)がWよりl多い場合は、式(13)となり、Wlの集合の数(要素数)がWuより多い場合は、式(14)となる。
【0048】
【数9】
【0049】
凹凸検出ステップ(S7)では、式(11)から式(14)に示すように求めたオフセット量αを振動波形F(x)に反映して、オフセット量αが加算されていない振動波形B(x)を求め、2次元形状データP(x)から振動波形B(x)を減算することによって、刻印波形Q(x)を抽出するようにしている。即ち、凹凸検出ステップ(S7)においては、縦振動等によって対象物が弾性変形する状況下においても、図8に示したようなオフセット量αがかかっていない波形を求めることができる。
【0050】
そして、凹凸検出ステップ(S7)では、このように、オフセット量αを考慮した刻印波形Q(x)を求め、凹凸刻印があるとされた刻印波形Q(x)の値(信号が立ち上がり後の最大値)と、凹凸刻印が無いとされた刻印波形Q(x)の値(信号が立ち上がる前の最小値)との差を求めることによって、凹凸刻印の段差を求めることも行っている(刻印段差検出ステップ)。例えば、オフセット量αを考慮された刻印波形Q(x)が図8と同様のものであるとすると、刻印段差検出ステップでは、図8に示す刻印波形Q(x)の最大値(1)から刻印波形Q(x)の最小値(0)を引くことによって、凹凸文字の段差量を取得することができる。なお、刻印段差検出ステップでは、D(x)とy=αとの差からも凹凸文字の段差量を求めることができる。なお、段差検出ステップによる処理は、コンピュータ4の段差算出部24により行われる。
【0051】
以上述べた本発明に係る画像処理及び画像処理装置を用いることで、1台の光切断法センサのみでも、又、縦振動等によって対象物が弾性変形した場合であっても、対象物もしくは光切断法センサ1の縦振動の起因してズレが発生しても、ズレ量となるノイズを除外して、正確な対象物表面の凹凸文字の情報を取得することができる。即ち、凹凸文字の凹凸方向に沿った振動(縦振動)を引き起こしている状況下でも、凹凸文字を精度高く読取ることができる。また、縦振動等によって対象物が弾性変形した場合であっても、凹凸文字の段差を正確に求めることができる。
【0052】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0053】
1 センサ(光切断法センサ)
2 走査用レール
3 対象物
4 コンピュータ(制御処理装置)
5 搬送ライン
6 押さえ装置
11 投射部
12 撮像部
13 刻印面
20 微分波形算出部
21 スパイク除去部
22 積分波形推定部
23 凹凸波形算出部
24 段差算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸形状が刻印され且つ該凹凸形状の凹凸方向に沿った振動を起こしている刻印面から、凹凸形状を抽出するための画像処理方法であって、
前記刻印面に対して一方向に走査することで、凹凸形状の高さデータを有する2次元形状データを取得する走査ステップと、
前記凹凸形状の高さデータの変化度合いを求めるために、前記2次元形状データを微分して微分波形を算出する微分ステップと、
前記微分ステップの結果を基に、前記微分波形における変化度合いが急峻なものを除去するスパイク除去ステップと、
前記スパイク除去ステップの結果を積分して積分波形を推定する積分ステップと、
前記2次元形状データから、積分ステップで推定した積分波形を減じることで前記凹凸形状を含む刻印波形を算出する凹凸検出ステップと、
を有することを特徴とする凹凸形状を抽出するための画像処理方法。
【請求項2】
凹凸形状があるとされた刻印波形と、凹凸形状が無いとされた刻印波形との差から凹凸形状の段差を求める段差検出ステップを有していることを特徴とする請求項1に記載の凹凸形状を抽出するための画像処理方法。
【請求項3】
凹凸形状が刻印され且つ該凹凸形状の凹凸方向に沿った振動を起こしている刻印面から、凹凸形状を抽出するための制御処理装置を有する画像処理装置であって、
前記制御処理装置は、前記刻印面に対して一方向に走査して得られた凹凸形状の高さデータを有する2次元形状データを微分して前記凹凸形状の高さデータの変化度合いを示す微分波形を算出する微分波形算出部と、
前記微分波形算出部の結果を基に、前記微分波形における変化度合いが急峻なものを除去するスパイク除去部と、
前記スパイク除去部の結果を積分して積分波形を推定する積分波形推定部と、
前記2次元形状データから、積分波形推定部とで推定した積分波形を減じることで前記凹凸形状を含む刻印波形を算出する凹凸波形算出部と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
前記制御処理装置は、凹凸形状があるとされた刻印波形と、凹凸形状が無いとされた刻印波形との差から凹凸形状の段差を求める段差算出部を有していることを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項1】
凹凸形状が刻印され且つ該凹凸形状の凹凸方向に沿った振動を起こしている刻印面から、凹凸形状を抽出するための画像処理方法であって、
前記刻印面に対して一方向に走査することで、凹凸形状の高さデータを有する2次元形状データを取得する走査ステップと、
前記凹凸形状の高さデータの変化度合いを求めるために、前記2次元形状データを微分して微分波形を算出する微分ステップと、
前記微分ステップの結果を基に、前記微分波形における変化度合いが急峻なものを除去するスパイク除去ステップと、
前記スパイク除去ステップの結果を積分して積分波形を推定する積分ステップと、
前記2次元形状データから、積分ステップで推定した積分波形を減じることで前記凹凸形状を含む刻印波形を算出する凹凸検出ステップと、
を有することを特徴とする凹凸形状を抽出するための画像処理方法。
【請求項2】
凹凸形状があるとされた刻印波形と、凹凸形状が無いとされた刻印波形との差から凹凸形状の段差を求める段差検出ステップを有していることを特徴とする請求項1に記載の凹凸形状を抽出するための画像処理方法。
【請求項3】
凹凸形状が刻印され且つ該凹凸形状の凹凸方向に沿った振動を起こしている刻印面から、凹凸形状を抽出するための制御処理装置を有する画像処理装置であって、
前記制御処理装置は、前記刻印面に対して一方向に走査して得られた凹凸形状の高さデータを有する2次元形状データを微分して前記凹凸形状の高さデータの変化度合いを示す微分波形を算出する微分波形算出部と、
前記微分波形算出部の結果を基に、前記微分波形における変化度合いが急峻なものを除去するスパイク除去部と、
前記スパイク除去部の結果を積分して積分波形を推定する積分波形推定部と、
前記2次元形状データから、積分波形推定部とで推定した積分波形を減じることで前記凹凸形状を含む刻印波形を算出する凹凸波形算出部と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
前記制御処理装置は、凹凸形状があるとされた刻印波形と、凹凸形状が無いとされた刻印波形との差から凹凸形状の段差を求める段差算出部を有していることを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【図3】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2011−33392(P2011−33392A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177777(P2009−177777)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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