説明

分波器及びこれを備えた電子装置

【課題】送信端子と受信端子との間の電磁的な結合の影響を低減し、アイソレーション特性を向上させること。
【解決手段】本発明は、四角形の裏面を有する多層基板10と、多層基板の裏面に、四角形を構成する第1の辺58の中央部に近接して設けられたアンテナ端子50と、第1の辺に交差する第2の辺60の中央部よりもアンテナ端子から離れた側で第2の辺に近接して設けられた送信端子52と、第2の辺に対向する第3の辺62の中央部よりもアンテナ端子から離れた側で第3の辺に近接して設けられた第1受信端子54と、線路パターン/フットパッド層30に設けられ、送信端子又は第1受信端子を投影させた領域の少なくとも一方を囲む第1導体46と、第1導体の下側に位置し、送信端子と第1の辺に対向する第4の辺64との間又は第1受信端子と第4の辺との間の少なくとも一方に少なくとも設けられたグランド端子56と、を備える分波器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分波器及びこれを備えた電子装置に関し、特に複数の層が積層された多層基板を有する分波器及びこれを備えた電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報化社会の発達に伴い、携帯電話や携帯情報端末等の移動体通信機器が普及している。例えば携帯電話においては、800MHz〜1.0GHz帯、及び1.5〜2.0GHz帯といった高周波帯域が使用されている。これに対応するため、弾性波共振器や圧電薄膜共振器等の弾性波を利用した分波器が用いられている。
【0003】
近年、高周波通信用の移動体通信機器において、より高速で大容量のデータ通信が求められており、送信信号パワーが増加する傾向にある。このため、分波器の送信端子と受信端子との間のアイソレーションを向上させることが求められている。
【0004】
例えば特許文献1には、送信フィルタパターンと受信フィルタパターンとの間にシールド電極を備えることで、互いのアイソレーションを向上させる技術が開示されている。例えば特許文献2には、複数のフィルタ素子を実装するデバイスにおいて、入力外部端子と出力外部端子とを、デバイスの形状に対して対角線を結ぶように配置し、信号の干渉を防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−60747号公報
【特許文献2】特開2002−76829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
分波器の送信端子と受信端子との間のアイソレーションを向上させるには、理論的には、分波器に用いる送信フィルタ及び受信フィルタの相手帯域(送信フィルタであれば受信帯域、受信フィルタであれば送信帯域)での減衰量を増大させることで対応可能である。しかしながら、実際には、アイソレーションに影響を与える成分として、フィルタ中を流れる電流の他に、電磁的な結合の影響により空間を介して流れる電流があり、これにより、アイソレーションはある一定のレベルで飽和してしまう。
【0007】
電磁的な結合の影響を低減する方法としては、例えば特許文献1のようにフィルタ間に電極を設けて電磁的な遮蔽構造とすることや、例えば特許文献2のように送信端子と受信端子との距離を物理的に大きくとることが考えられる。しかしながら、特許文献1、2に記載の方法では、高周波通信用デバイスの小型化の傾向の中では、電磁的な結合の影響の低減が十分とは言い難くなってきている。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、送信端子と受信端子との間の電磁的な結合の影響を低減し、アイソレーション特性を向上させることが可能な分波器及びこれを備えた電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数の層が積層され、四角形の裏面を有する多層基板と、前記多層基板の前記裏面に、前記四角形を構成する4つの辺のうちの第1の辺の中央部に近接して設けられたアンテナ端子と、前記多層基板の裏面に、前記第1の辺に交差する第2の辺の中央部よりも前記アンテナ端子から離れた側で前記第2の辺に近接して設けられた送信端子と、前記多層基板の裏面に、前記第2の辺に対向する第3の辺の中央部よりも前記アンテナ端子から離れた側で前記第3の辺に近接して設けられた第1受信端子と、前記複数の層のうちの第1の層に設けられ、前記送信端子又は前記第1受信端子を前記第1の層に投影させた領域の少なくとも一方を囲む第1導体と、前記第1導体の下側に位置し、前記送信端子と前記第1の辺に対向する第4の辺との間又は前記第1受信端子と前記第4の辺との間の少なくとも一方に少なくとも設けられたグランド端子と、を備えることを特徴とする分波器である。本発明によれば、多層基板の裏面及びその上方において、送信端子又は第1受信端子の少なくとも一方が、周囲を3方向で電磁的に遮蔽された構造となり、送信端子と第1受信端子との間の電磁的な結合を低減でき、アイソレーション特性を向上できる。
【0010】
上記構成において、前記第1導体は、前記送信端子及び前記第1受信端子を前記第1の層に投影させた領域の両方を囲み、前記グランド端子は、前記送信端子と前記第4の辺との間及び前記第1受信端子と前記第4の辺との間の両方に設けられている構成とすることができる。この構成によれば、多層基板の裏面及びその上方において、送信端子及び第1受信端子の両方が、周囲を3方向で電磁的に遮蔽された構造となり、送信端子と第1受信端子との間の電磁的な結合をより低減でき、アイソレーション特性をより向上できる。
【0011】
上記構成において、前記グランド端子は、前記第1導体の下側に位置し、前記送信端子と前記第2の辺との間又は前記第1受信端子と前記第3の辺との間の少なくとも一方に更に設けられている構成とすることができる。この構成によれば、多層基板の裏面において、送信端子又は第1受信端子の少なくとも一方が、周囲を4方向で電磁的に遮蔽された構造となり、送信端子と第1受信端子との間の電磁的な結合をより低減でき、アイソレーション特性をより向上できる。
【0012】
上記構成において、前記第1導体は、前記送信端子及び前記第1受信端子を前記第1の層に投影させた領域の両方を囲み、前記グランド端子は、前記送信端子と前記第4の辺との間及び前記第1受信端子と前記第4の辺との間の両方、並びに、前記送信端子と前記第2の辺との間及び前記第1受信端子と前記第3の辺との間の両方に設けられている構成とすることができる。この構成によれば、多層基板の裏面において、送信端子及び第1受信端子の両方が、周囲を4方向で電磁的に遮蔽され、多層基板の裏面の上方において、送信端子及び第1受信端子の両方が、周囲を3方向で電磁的に遮蔽された構造となり、送信端子と第1受信端子との間の電磁的な結合を一層低減でき、アイソレーション特性を一層向上できる。
【0013】
上記構成において、前記第1導体の上側に位置し、前記複数の層のうちの前記第1の層よりも上層の第2の層に設けられ、前記送信端子又は前記第1受信端子を前記第2の層に投影させた領域の少なくとも一方を覆う第2導体を備える構成とすることができる。この構成によれば、送信端子又は第1受信端子の少なくとも一方の上方が電磁的に遮蔽された構造となり、送信端子と第1受信端子との間の電磁的な結合をより低減でき、アイソレーション特性をより向上できる。
【0014】
上記構成において、前記第2導体は、前記送信端子及び前記第1受信端子を前記第2の層に投影させた領域の両方を覆う構成とすることができる。この構成によれば、送信端子及び第1受信端子の両方の上方が電磁的に遮蔽された構造となり、送信端子と第1受信端子との間の電磁的な結合をさらに低減でき、アイソレーション特性をさらに向上できる。
【0015】
上記構成において、前記グランド端子は、前記第2の辺の中央部、前記第3の辺の中央部、及び前記第4の辺の中央部に近接して更に設けられている構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記グランド端子は、前記多層基板の裏面の中央部に更に設けられている構成とすることができる。この構成によれば、多層基板の裏面において、送信端子及び第1受信端子の電磁的な遮蔽性をより高めることができる。
【0017】
上記構成において、前記多層基板の裏面に設けられた前記グランド端子同士が接続して1つのグランド端子を構成している構成とすることができる。この構成によれば、多層基板の裏面において、送信端子及び第1受信端子の電磁的な遮蔽性をより高めることができる。
【0018】
上記構成において、前記アンテナ端子と前記送信端子との間に接続された送信フィルタと、前記アンテナ端子と前記受信端子との間に接続された受信フィルタと、を備え、前記送信フィルタ及び前記受信フィルタは、弾性波共振器を含む構成とすることができる。
【0019】
上記構成において、前記第1受信端子に隣接し、前記第3の辺の中央部に近接して設けられた第2受信端子を備える構成とすることができる。
【0020】
本発明は、請求項1から11のいずれか一項に記載の分波器と、前記分波器に備わる前記アンテナ端子、前記送信端子、前記受信端子、及び前記グランド端子が夫々接続するアンテナ用信号線、送信用信号線、受信用信号線、及びグランド配線を有するプリント基板と、を備え、前記グランド配線は、前記送信用信号線及び前記受信用信号線を囲んで設けられていることを特徴とする電子装置である。本発明によれば、多層基板の裏面及びその上方において、送信端子又は第1受信端子の少なくとも一方が、周囲を3方向で電磁的に遮蔽された構造となり、送信端子と第1受信端子との間の電磁的な結合を低減でき、アイソレーション特性を向上できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、多層基板の裏面及びその上方において、送信端子又は第1受信端子の少なくとも一方が、周囲を3方向で電磁的に遮蔽された構造となり、送信端子と第1受信端子との間の電磁的な結合を低減でき、アイソレーション特性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1(a)は実施例1に係る分波器の斜視図の例、図1(b)はキャップを外した斜視図の例、図1(c)は送信フィルタ及び受信フィルタを取り外した斜視図の例、図1(d)は図1(a)のA−A断面図の例、図1(e)は図1(a)のB−B断面図の例である。
【図2】図2(a)は送信フィルタ及び受信フィルタを説明する上面図の例、図2(b)は回路図の例である。
【図3】図3(a)は弾性波共振器を説明する上面図の例、図3(b)は図3(a)のA−A断面図の例である。
【図4】図4(a)は実施例1のキャップ搭載層及びキャビティ層、図4(b)はダイアタッチ層の上面、図4(c)は線路パターン層の上面、図4(d)は線路パターン/フットパッド層の上面、図4(e)は線路パターン/フットパッド層の裏面を示す図の例である。
【図5】図5(a)は実施例1に係る分波器の斜視図の例、図5(b)は回路図の例である。
【図6】図6(a)は比較例1のキャップ搭載層及びキャビティ層、図6(b)はダイアタッチ層の上面、図6(c)は線路パターン層の上面、図6(d)は線路パターン/フットパッド層の上面、図6(e)は線路パターン/フットパッド層の裏面を示す図の例である。
【図7】図7(a)は実施例1に係る分波器をプリント基板に実装した電子装置の斜視図の例、図7(b)は比較例1に係る分波器をプリント基板に実装した電子装置の斜視図の例である。
【図8】図8(a)は送信フィルタ及び受信フィルタの通過特性、図8(b)は送信端子と受信端子との間のアイソレーション特性のシミュレーション結果である。
【図9】図9(a)は圧電薄膜共振器を説明する上面図の例、図9(b)は図9(a)のA−A断面図の例である。
【図10】図10(a)は実施例1の変形例1に係る分波器の斜視図の例、図10(b)は樹脂を取り除いた斜視図の例、図10(c)は送信フィルタ及び受信フィルタを取り除いた斜視図の例、図10(d)は図10(a)のA−A断面図の例、図10(e)は図10(a)のB−B断面図の例である。
【図11】図11(a)は実施例1の変形例2に係る分波器の斜視図の例、図11(b)は半田膜を取り除いた斜視図の例、図11(c)は送信フィルタ及び受信フィルタを取り除いた斜視図の例、図11(d)は図11(a)のA−A断面図の例、図11(e)は図11(a)のB−B断面図の例である。
【図12】図12(a)は実施例1の変形例3に係る分波器の斜視図の例、図12(b)は樹脂を取り除いた斜視図の例、図12(c)はフィルタチップを取り除いた斜視図の例、図12(d)は図12(a)のA−A断面図の例、図12(e)は図12(a)のB−B断面図の例である。
【図13】図13(a)は多層基板の裏面中央部に更にグランド端子を設けた場合の例、図13(b)は多層基板の裏面に設けられたグランド端子同士を接続させた場合の例である。
【図14】図14は実施例2の線路パターン/フットパッド層の裏面を示す図の例である。
【図15】図15(a)は実施例2に係る分波器の斜視図の例、図15(b)は実施例2に係る分波器をプリント基板に実装した電子装置の斜視図の例である。
【図16】図16(a)は実施例3のキャップ搭載層及びキャビティ層、図16(b)はダイアタッチ層の上面、図16(c)は線路パターン層の上面、図16(d)は線路パターン/フットパッド層の上面、図16(e)は線路パターン/フットパッド層の裏面を示す図の例である。
【図17】図17(a)は実施例3に係る分波器の斜視図の例、図17(b)は実施例3に係る分波器をプリント基板に実装した電子装置の斜視図の例である。
【図18】図18(a)は多層基板の裏面中央部に更にグランド端子を設けた場合の例、図18(b)は多層基板の裏面に設けられたグランド端子同士を接続させた場合の例である。
【図19】図19(a)は実施例4の線路パターン/フットパッド層の裏面を示す図の例、図19(b)は実施例4の変形例1の線路パターン/フットパッド層の裏面を示す図の例である。
【図20】図20(a)は実施例4に係る分波器の斜視図の例、図20(b)は実施例4に係る分波器をプリント基板に実装した電子装置の斜視図の例である。
【図21】図21(a)は実施例5のキャップ搭載層及びキャビティ層、図21(b)はダイアタッチ層の上面、図21(c)は線路パターン層の上面、図21(d)は線路パターン/フットパッド層の上面、図21(e)は線路パターン/フットパッド層の裏面を示す図の例である。
【図22】図22(a)は実施例5に係る分波器の斜視図の例、図22(b)は実施例5に係る分波器をプリント基板に実装した電子装置の斜視図の例である。
【図23】図23(a)は送信フィルタ及び受信フィルタの通過特性、図23(b)は送信端子と受信端子との間のアイソレーション特性のシミュレーション結果である。
【図24】図24(a)は実施例6に係る分波器の斜視図の例、図24(b)は実施例6に係る分波器をプリント基板に実装した電子装置の斜視図の例である。
【図25】図25(a)は受信フィルタを説明する上面図の例、図25(b)は回路図の例である。
【図26】図26(a)は実施例6のキャップ搭載層及びキャビティ層、図26(b)はダイアタッチ層の上面、図26(c)は線路パターン層の上面、図26(d)は線路パターン/フットパッド層の上面、図26(e)は線路パターン/フットパッド層の裏面を示す図の例である。
【図27】図27(a)は実施例7に係る分波器の斜視図の例、図27(b)は実施例7に係る分波器をプリント基板に実装した電子装置の斜視図の例である。
【図28】図28(a)から図28(f)は、2つの受信端子が設けられた場合の、線路パターン/フットパッド層の裏面のパターンバリエーションの例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面を用いて、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0024】
図1(a)は、実施例1に係る分波器の斜視図の例、図1(b)は、図1(a)のキャップ16を外した状態の斜視図の例、図1(c)は、図1(b)の送信フィルタ12及び受信フィルタ14を取り外した状態の斜視図の例、図1(d)は、図1(a)のA−A断面図の例、図1(e)は、図1(a)のB−B断面図の例である。図1(a)から図1(c)のように、実施例1に係る分波器は、キャビティ18を有する多層基板10、キャビティ18に格納された送信フィルタ12及び受信フィルタ14、送信フィルタ12及び受信フィルタ14をキャビティ18内に封止する金属製のキャップ16を有する。多層基板10の裏面にはフットパッド36が設けられ、キャビティ18の下面にはバンプパッドや線路パターン等の導電性パターン20が設けられている。多層基板10の裏面の寸法は、例えば2.5mm×2.0mmである。
【0025】
図1(d)及び図1(e)のように、多層基板10は、複数の層が積み重なり積層された構成をしている。積層された層としては、例えばキャップ搭載層22、キャビティ層24、ダイアタッチ層26、線路パターン層28、線路パターン/フットパッド層30がある。キャップ搭載層22とキャビティ層24とにより、送信フィルタ12及び受信フィルタ14を格納するキャビティ18が形成される。キャップ16は、キャップ搭載層22の上面に設けられ、送信フィルタ12及び受信フィルタ14をキャビティ18内に封止する。ダイアタッチ層26の表面にはバンプパッド32が設けられ、送信フィルタ12及び受信フィルタ14は、バンプ34(例えば半田等)を用いバンプパッド32に実装されている。送信フィルタ12及び受信フィルタ14は、フェースダウンで実装されている。線路パターン/フットパッド層30の裏面には、アンテナ端子や送信端子、受信端子、グランド端子であるフットパッド36が設けられている。各層はセラミクスや樹脂等の絶縁体で形成され、導電性材料で形成される線路パターン38やビア39により、送信フィルタ12及び受信フィルタ14とフットパッド36とが電気的に接続する。
【0026】
図2(a)及び図2(b)を用いて、送信フィルタ12及び受信フィルタ14について説明する。図2(a)は、送信フィルタ12及び受信フィルタ14を説明する上面図の例、図2(b)は、回路図の例である。図2(a)及び図2(b)のように、送信フィルタ12及び受信フィルタ14は共に、ラダー型フィルタであり、直列共振器(S11〜S14)と並列共振器(P11〜P14)とを有する。直列共振器及び並列共振器は共に、例えば弾性表面波共振器である。
【0027】
図3(a)及び図3(b)により弾性表面波共振器について詳しく説明する。図3(a)は、弾性表面波共振器を説明する上面図の例、図3(b)は、図3(a)のA−A断面図の例である。図3(a)及び図3(b)のように、弾性表面波共振器は、例えばタンタル酸リチウム(LT)からなる圧電基板40上に、一対の反射電極42とその間に設けられた櫛型電極(IDT)44とで構成される。櫛型電極44は、入力側及び出力側の2つの電極が向かい合い、それぞれの電極指が互い違いになるように配置されている。なお、圧電基板40には、LTの他に、ニオブ酸リチウム(LN)等を用いることもできる。
【0028】
次に、図4(a)から図4(e)を用い、多層基板10の各層について説明する。図4(a)のように、キャップ搭載層22及びキャビティ層24には、キャビティ18を形成する空洞が設けられ、キャビティ18に送信フィルタ12及び受信フィルタ14が格納されている。
【0029】
図4(b)のように、ダイアタッチ層26の上面には金属等の導電性材料で形成されたバンプパッド(図中の黒丸)、線路パターン(図中の黒線)、及びビア(図中の二重黒丸)からなる導電性パターン20が設けられている。導電性パターン20の厚さは、例えば15μmである。導電性パターン20は、例えばアルミニウム(Al)と銅(Cu)の合金等の導体で形成される。また、導電性パターン20は、その他のAlを主成分とする合金(例えばAl−Mg等)及びこれらの多層膜(例えばAl−Cu/Cu/Al−Cu、Al/Cu/Al、Al/Mg/Al、Al−Mg/Mg/Al−Mg等)を用いることもできる。図4(a)に示す送信フィルタ12及び受信フィルタ14のパッドA〜G2が、ダイアタッチ層26上面に示したバンプパッドA〜G2に接続する。パッドA及びCは線路パターン/フットパッド層30裏面のアンテナ端子50に電気的に接続し、パッドBは送信端子52に電気的に接続し、パッドDは第1受信端子54に電気的に接続する。パッドE1〜E3、F1〜F3、G1〜G2は線路パターン/フットパッド層30裏面のグランド端子56に電気的に接続する。ビアは、ダイアタッチ層26を貫通し、ビア内は例えばAlとCuの合金等の導体で埋め込まれている。ビアにより、ダイアタッチ層26の上面に形成された導電性パターン20と線路パターン層28の上面に形成された導電性パターン20とが電気的に接続する。ダイアタッチ層26上面に示したビアV1〜V11が、線路パターン層28上面に示したビアV1〜V11に接続する。線路パターンは、バンプパッドとビアとを接続するためのパターンである。
【0030】
図4(c)のように、線路パターン層28の上面には、線路パターン及びビアからなる導電性パターン20が設けられている。線路パターンはビア間を接続するパターンである。線路パターン層28を貫通するビアにより、線路パターン層28の上面に形成された導電性パターン20と線路パターン/フットパッド層30の上面に形成された導電性パターン20とが電気的に接続する。なお、線路パターン層28上面に示したビアV1〜V4、V11、及びW1〜W3が、線路パターン/フットパッド層30上面に示したビアV1〜V4、V11、及びW1〜W3に接続する。
【0031】
図4(d)のように、線路パターン/フットパッド層30の上面には、線路パターン及びビアからなる導電性パターン20が設けられている。また、線路パターン/フットパッド層30の裏面に設けられた送信端子を投影した領域(図5(d)中の破線領域)を囲む第1導体46が設けられている。第1導体46は、導電性パターン20と同じ材料からなり、例えばAlとCuの合金等の導体である。また、第1導体46の厚さは、導電性パターン20の厚さと同じで、例えば15μmである。第1導体46は他の導電性パターン20とは電気的に接続しておらず、浮き導体となっている。線路パターン/フットパッド層30を貫通するビアにより、線路パターン/フットパッド層30の上面に設けられた導電性パターン20と線路パターン/フットパッド層30の裏面に設けられたフッドパッド36とが電気的に接続する。なお、線路パターン/フットパッド層30上面に示したビアV1〜V3、V11、V12、及びW1〜W3が、線路パターン/フットパッド層30裏面に示したビアV1〜V3、V11、V12、W1〜W3に接続する。
【0032】
図4(e)のように、線路パターン/フットパッド層30の裏面には、例えば表面に金メッキが施されたCu等の導体からなるフットパッド36が設けられている。フットパッド36は、アンテナ端子50、送信端子52、第1受信端子54、及びグランド端子56である。アンテナ端子50は、線路パターン/フットパッド層30の長方形の裏面を構成する4つの辺のうちの長辺である第1の辺58の中央部近傍に設けられている。送信端子52は、第1の辺58に直交する第2の辺60の中央部より第1の辺58と反対側で第2の辺60に近接して設けられている。第1受信端子54は、第2の辺60に対向する第3の辺62の中央部より第1の辺58と反対側で第3の辺62に近接して設けられ、第1の辺58に対向する第4の辺64と第3の辺62との角部近傍に設けられている。グランド端子56は、第2の辺60の中央部近傍、第3の辺62の中央部近傍、第4の辺64の中央部近傍、第1の辺58と第2の辺60との角部近傍、第1の辺58と第3の辺62との角部近傍、さらに、第2の辺60と第4の辺64との角部近傍に設けられている。
【0033】
図5(a)は、実施例1に係る分波器についての斜視図の例である。なお、導電性パターン20、フットパッド36、及び第1導体46以外の構成品を透視して図示している(以下、図15(a)、図17(a)、図20(a)、図27(a)において同じ)。図5のように、グランド端子56が、送信端子52と第1受信端子54との間である第4の辺64の中央部近傍、送信端子52と第1の辺58との間である第2の辺60の中央部近傍、及び送信端子52と第4の辺64との間である第2の辺60と第4の辺64との角部近傍に設けられている。つまり、グランド端子56は、送信端子52の周りで、第1受信端子54に向かう方向及びそれに直交する2方向に配置されている。これにより、送信端子52は、多層基板10の裏面において、第1受信端子54に向かう方向及びそれに直交する2方向で電磁的に遮蔽された構造となる。
【0034】
さらに、多層基板10の内部である線路パターン/フットパッド層30上面に、送信端子52を投影した領域を囲む第1導体46が設けられている。第1導体46は、送信端子52を投影した領域の周りで、第1受信端子54に向かう方向及びそれに直交する2方向を囲んで配置されている。これにより、送信端子52は、線路パターン/フットパッド層30の上面において、第1受信端子54に向かう方向及びそれに直交する2方向で電磁的に遮断された構造となる。
【0035】
図5(b)は、実施例1に係る分波器についての回路図の例である。図5(b)のように、送信フィルタ12は、アンテナ端子50と送信端子52との間に接続されている。受信フィルタ14は、アンテナ端子50と第1受信端子54との間に接続されている。つまり、送信フィルタ12は、図4(a)から図4(e)に示した導電性パターン20を介して、アンテナ端子50と送信端子52との間に接続される。同様に、受信フィルタ14は、図4(a)から図4(e)に示した導電性パターン20を介して、アンテナ端子50と第1受信端子54との間に接続される。
【0036】
ここで、実施例1に係る分波器の効果を説明するための比較対象となる比較例1に係る分波器について説明する。比較例1に係る分波器は、実施例1に係る分波器に対して、多層基板10の線路パターン/フットパッド層30に形成されるパターンが異なるだけであり、その他の点については、図1(a)から図3(b)を用いて説明した実施例1に係る分波器と同じである。図6(a)から図6(e)に、比較例1に係る分波器の多層基板10の各層について示す。図6(d)のように、線路パターン/フットパッド層30の上面に第1導体46が設けられていない。また、図6(e)のように、線路パターン/フットパッド層30の裏面で送信端子52と第4の辺64との間にグランド端子56が設けられてなく、送信端子52は、第2の辺60と第4の辺64との角部近傍に設けられている。その他については、図4(a)から図4(e)で説明した実施例1に係る分波器と同じである。
【0037】
図7(a)は、実施例1に係る分波器をプリント基板に実装した電子装置を示す斜視図の例、図7(b)は、比較例1に係る分波器をプリント基板に実装した電子装置を示す斜視図の例である。なお、図7(a)及び図7(b)において、フットパッド36及び第1導体46以外の構成品を透視して分波器を図示している(以下、図15(b)、図17(b)、図20(b)、図27(b)において同じ)。電子装置としては、例えば携帯電話や携帯情報端末等の移動体通信機器がある。図7(a)及び図7(b)のように、プリント基板66は、アンテナ用信号線68、送信用信号線70、受信用信号線72、及びグランド配線74を有する。多層基板10の裏面に設けられたアンテナ端子50は、例えば半田等によりプリント基板66のアンテナ用信号線68に接続される。同様に、送信端子52、第1受信端子54、グランド端子56は夫々、例えば半田等により送信用信号線70、受信用信号線72、グランド配線74に接続されている。半田等により接続されたアンテナ端子50、送信端子52、第1受信端子54、及びグランド端子56の高さ(即ち、プリント基板66と多層基板10の裏面との間の距離)は、例えば30μmである。グランド配線74は、アンテナ用信号線68、送信用信号線70、受信用信号線72の周りを囲むように設けられている。
【0038】
実施例1に係る分波器は、比較例1に係る分波器に対して、送信端子52と第4の辺64との間にもグランド端子56が設けられ、且つ送信端子52を投影した領域を囲む第1導体46が設けられている点で異なる。この違いにより、実施例1に係る分波器を備えた電子装置は、グランド端子56と第1導体46とグランド配線74とが一体となって送信端子52を囲む構造となっている。
【0039】
図7(a)及び図7(b)で示した電子装置についてシミュレーションを行ない、送信フィルタ12及び受信フィルタ14の通過特性と、送信端子52と第1受信端子54との間のアイソレーション特性を測定した。図8(a)は、送信フィルタ12及び受信フィルタ14の通過特性のシミュレーション結果、図8(b)は、送信端子52と第1受信端子54との間のアイソレーション特性のシミュレーション結果である。図8(a)及び図8(b)において、横軸は規格化周波数であり、縦軸は挿入損失である。実施例1に係る分波器のシミュレーション結果を実線で、比較例1に係る分波器のシミュレーション結果を破線で示す。
【0040】
図8(a)のように、送信フィルタ12及び受信フィルタ14の通過特性は、実施例1に係る分波器と比較例1に係る分波器との間でほとんど差はない。一方、図8(b)のように、送信端子52と第1受信端子54との間のアイソレーション特性は、実施例1に係る分波器は、比較例1に係る分波器に比べて、送信帯域及び通過帯域外で10dB程度改善している。このように、実施例1に係る分波器のアイソレーション特性が改善した理由は、図5のように、送信端子52を投影させた領域を囲む第1導体46及び送信端子52と第4の辺64との間にグランド端子56を更に設けて、3次元的に送信端子52を遮蔽する構造としたためである。
【0041】
以上説明してきたように、実施例1によれば、図4(d)のように、線路パターン/フットパッド層30上面に、送信端子52を投影した領域を囲む第1導体46が設けられている。図4(e)のように、多層基板10の裏面(即ち、線路パターン/フットパッド層30裏面)に、グランド端子56が、第2の辺60の中央部及び第4の辺64の中央部に近接して設けられていることに加え、送信端子52と第4の辺64との間にも設けられている。これにより、多層基板10の裏面及びその上方である線路パターン/フットパッド層30の上面において、送信端子52は、第1受信端子54への方向及びそれに直交する2方向について、電磁的に遮蔽された構造となる。このため、送信端子52から第1受信端子54へ向かう方向及びそれに直交する2方向に輻射される電磁波を遮蔽できる。特に、プリント基板66の送信用信号線70の側方方向に電磁波は輻射され易いため、グランド端子56を、第2の辺62の中央部近傍に加えて、送信端子52と第4の辺64のとの間に設けることで、電磁波の遮蔽効果が大きくなる。これにより、送信端子52と第1受信端子54との間の電磁的な結合が低減でき、図8(b)のように、アイソレーション特性を向上できる。
【0042】
また、図4(e)のように、長方形状をした多層基板10の裏面を構成する4つの辺のうちの第1の辺58の中央部に近接してアンテナ端子50を設け、第2の辺60の中央部よりアンテナ端子50から離れた側で第2の辺60に近接して送信端子52を設け、第3の辺62の中央部よりアンテナ端子50から離れた側で第3の辺62に近接して第1受信端子54を設けている。このような配置とすることで、アンテナ端子50、送信端子52、及び第1受信端子54夫々の間の距離を物理的に大きくすることができ、各端子間の電磁的な結合をより低減できる。なお、多層基板10の裏面は長方形状の場合に限らず四角形の形状をしている場合であればよい。
【0043】
実施例1では、第1導体46が送信端子52を投影させた領域を囲んで設けられていて、送信端子52と第4の辺64との間にグランド端子56が設けられている場合を例に示したがこれに限られる訳ではない。第1導体46が第1受信端子54を投影させた領域を囲んで設けられていて、第1受信端子54と第4の辺64との間にグランド端子56が設けられている場合でもよい。即ち、第1導体46が送信端子52を投影させた領域又は第1受信端子54を投影させた領域を囲み、グランド端子56が、第1導体46の下側に位置し、送信端子52と第4の辺64との間又は第1受信端子54と第4の辺64との間に設けられている場合であればよい。この場合によれば、送信端子52と第1受信端子54との間の電磁的な結合が低減でき、アイソレーション特性を向上できる。また、分波器の小型化を踏まえると、グランド端子56は、送信端子52と第4の辺64との間又は第1受信端子54と第4の辺64との間であって、第1導体46の直下に位置する場合が好ましい。
【0044】
また、送信端子52の電磁波の遮蔽性を高めるためには、第1導体46は、送信端子52を投影させた領域を、第1受信端子54への方向及びそれに直交する2方向から完全に囲む場合が好ましいが、送信端子52を投影させた領域の一部を囲む場合でも電磁波の遮蔽性を高める効果は得られる。
【0045】
また、第1導体46は浮き導体である場合を例に示したが、第1導体46がグランドに落ちている場合でもよい。つまり、第1導体46は、アンテナ端子50、送信端子52、及び第1受信端子54に接続する信号線に非接続であればよい。また、送信端子52の電磁波の遮蔽性を高めるためには、送信端子52と第4の辺64との間に設けられたグランド端子56及び第2の辺64の中央部近傍のグランド端子56は、第4の辺64の延伸方向において、送信端子52よりも突出して設けられている場合が好ましい。つまり、送信端子52の側面全体をグランド端子56で覆う場合が好ましい。しかしながら、送信端子52の側面の少なくとも一部をグランド端子56で覆う場合でも電磁波の遮蔽性を高める効果は得られる。
【0046】
実施例1において、送信フィルタ12及び受信フィルタ14はラダー型フィルタである場合を例に示したがこれに限られず、例えば多重モード型フィルタを用いる場合でもよい。また、ラダー型フィルタを構成する共振器は、弾性表面波共振器である場合を例に示したがこれに限られず、例えば圧電薄膜共振器や弾性境界波共振器等の弾性波共振器の場合でもよいし、その他の共振器の場合でもよい。特に、高周波通信に使用可能な共振器の場合が好ましい。ここで、図9(a)及び図9(b)を用い圧電薄膜共振器について説明する。図9(a)は、圧電薄膜共振器を説明する上面図の例であり、図9(b)は、図9(a)のA−A断面図の例である。図9(a)及び図9(b)のように、圧電薄膜共振器は、基板76上に下部電極78、圧電膜80、上部電極82が順に設けられている。圧電膜80を挟み下部電極78と上部電極82とが対向する部分が共振部84である。上部電極82と対向する下部電極78の真下には、基板76にキャビティ18が設けられている。
【0047】
実施例1では、図1(a)から図1(e)のように、多層基板10のキャビティ18に送信フィルタ12及び受信フィルタ14を格納し、キャップ16により送信フィルタ12及び受信フィルタ14をキャビティ18内に封止する構造を例に示したがこれに限られる訳ではない。例えば図10(a)から図10(e)に示す実施例1の変形例1に係る分波器や、図11(a)から図11(e)に示す実施例1の変形例2に係る分波器や、図12(a)から図12(e)に示す実施例1の変形例3に係る分波器の場合等、その他の構造の分波器の場合でもよい。以下に、変形例1から変形例3について説明する。
【0048】
図10(a)から図10(c)は、実施例1の変形例1に係る分波器の斜視図の例、図10(d)は、図10(a)のA−A断面図の例、図10(e)は、図10(a)のB−B断面図の例である。図10(a)から図10(e)のように、多層基板10は、ダイアタッチ層26、線路パターン層28、及び線路パターン/フットパッド層30からなり、キャビティ18は形成されていない。ダイアタッチ層26の上面に送信フィルタ12及び受信フィルタ14が実装され、送信フィルタ12及び受信フィルタ14を、トランスファーモールド法により樹脂86で封止した構造をしている。その他については、図1(a)から図1(e)で説明した実施例1に係る分波器と同じである。
【0049】
図11(a)から図11(c)は、実施例1の変形例2に係る分波器の斜視図の例、図11(d)は、図11(a)のA−A断面図の例、図11(e)は、図11(a)のB−B断面図の例である。図11(a)から図11(e)のように、多層基板10は、ダイアタッチ層26、線路パターン層28、及び線路パターン/フットパッド層30からなり、キャビティ18は形成されていない。ダイアタッチ層26の上面に送信フィルタ12及び受信フィルタ14が実装され、送信フィルタ12及び受信フィルタ14を囲むように、ダイアタッチ層26の上面周辺に例えば金属等のシールリング88が設けられている。シールリング88に接続して、送信フィルタ12及び受信フィルタ14を覆い封止する半田膜90が設けられている。半田膜90がシールリング88に接して設けられることで、送信フィルタ12及び受信フィルタ14を封止した気密性を高くできる。その他については、図1(a)から図1(e)で説明した実施例1に係る分波器と同じである。
【0050】
図12(a)から図12(c)は、実施例1の変形例3に係る分波器の斜視図の例、図12(d)は、図12(a)のA−A断面図の例、図12(e)は、図12(a)のB−B断面図の例である。図12(a)から図12(e)のように、多層基板10は、ダイアタッチ層26、線路パターン層28、及び線路パターン/フットパッド層30からなり、キャビティ18は形成されていない。ダイアタッチ層26の上面に、送信フィルタと受信フィルタとが1つのチップに形成されたフィルタチップ92が実装され、フィルタチップ92の周囲には、ダイアタッチ層26の上面周辺にシールリング88が設けられている。フィルタチップ92を、シート状の樹脂を用いたラミネート法により樹脂94で封止した構造をしている。樹脂94がシールリング88に接して設けられることで、フィルタチップ92を封止した気密性が高くできる。その他については、図1(a)から図1(e)で説明した実施例1に係る分波器と同じである。
【0051】
実施例1では、図4(e)のように、多層基板10の裏面に設けられたグランド端子56は、第2の辺60の中央部近傍、第3の辺62の中央部近傍、第4の辺64の中央部近傍、第1の辺58と第2の辺60との角部近傍、第1の辺58と第3の辺62との角部近傍、及び送信端子52と第4の辺64との間に設けられている場合を例に示したがこれに限られる訳ではない。例えば、図13(a)のように、グランド端子56が、多層基板10の裏面中央部に更に設けられている場合でもよい。また、図13(b)のように、グランド端子56同士を接続させて、アンテナ端子50、送信端子52、及び第1受信端子54を囲むように、多層基板10の裏面全体に1つのグランド端子56として設けられている場合でもよい。図13(a)及び図13(b)では、図4(e)に比べて、送信端子52の周囲をグランド端子56で取り囲む領域が大きくなるため、送信端子52と第1受信端子54との間の電磁的な結合の影響をより低減できる。
【実施例2】
【0052】
実施例2に係る分波器は、送信端子52の周囲4方向を囲むようにグランド端子56が設けられた場合の例である。実施例2に係る分波器は、多層基板10のうちの線路パターン/フットパッド層30の裏面に形成されるフットパッド36のパターンが実施例1に係る分波器と異なる点以外は、図1(a)から図5に示した実施例1に係る分波器と同じであるため、ここでは、線路パターン/フットパッド層30の裏面について説明する。
【0053】
図14は、線路パターン/フットパッド層30の裏面を示す図の例である。図14のように、グランド端子56が、第2の辺60の中央部近傍、第4の辺64の中央部近傍であって送信端子52と第1受信端子54との間、送信端子52と第4の辺64との間に加えて、送信端子52と第2の辺60との間にも設けられている。これにより、送信端子52の周囲4方向がグランド端子56で囲まれている。
【0054】
図15(a)は、実施例2に係る分波器の斜視図の例、図15(b)は、実施例2に係る分波器をプリント基板に実装した電子装置の斜視図の例である。図15(a)のように、グランド端子56が、送信端子52と第2の辺60との間にも更に設けられ、送信端子52の周囲4方向を囲んでいる。その他については、実施例1と同じであり図5に示しているのでここでは説明を省略する。図15(b)のように、送信端子52と第2の辺60との間にもグランド端子56が設けられているため、プリント基板66に備わるグランド配線74は、送信端子52が接続する部分の送信用信号線70の周囲を囲むように設けられている。このため、送信端子52が接続する部分以外の送信用信号線70は、プリント基板66の内部に設けられている。その他については、実施例1と同じであり図7(a)に示しているのでここでは説明を省略する。
【0055】
このように、実施例2に係る分波器によれば、グランド端子56が、第2の辺60の中央部近傍、第4の辺64の中央部近傍であって送信端子52と第1受信端子54との間、送信端子52と第4の辺64との間に加えて、送信端子52と第2の辺60との間にも更に設けられている。これにより、送信端子52は、線路パターン/フットパッド層30裏面において、第1受信端子54への方向、それに直交する2方向、及び第1受信端子54とは反対の方向について電磁的に遮蔽された構造となる。このため、送信端子52から第1受信端子54に向かう方向、それに直交する2方向、及び第1受信端子54とは反対の方向に輻射される電磁波を遮蔽でき、送信端子52の遮蔽性をより高めることができる。よって、送信端子52と第1受信端子54との間の電磁的な結合をより低減でき、アイソレーション特性をより向上できる。
【0056】
第1導体46は、図15(a)のように、送信端子52を投影させた領域を、第1受信端子54への方向及びそれに直交する2方向から囲む場合でもよいが、送信端子52と第2の辺60との間のグランド端子56の直上にも設けて、送信端子52を投影させた領域を第1受信端子54への方向、それに直交する2方向、及び第1受信端子54とは反対の方向の4方向から囲む場合が好ましい。これにより、送信端子52の遮蔽性をさらに高めることができ、送信端子52と第1受信端子54との間の電磁的な結合をさらに低減できる。
【0057】
実施例2では、第1導体46が送信端子52を投影させた領域を囲むと共に、グランド端子56が、送信端子52と第4の辺64との間に加えて、送信端子52と第2の辺60との間にも更に設けられた場合を例に説明したがこれに限られる訳ではない。例えば、第1導体46が第1受信端子54を投影させた領域を囲んでいる場合は、グランド端子56は、第1受信端子54と第4の辺64との間に加えて、第1受信端子54と第3の辺62との間にも更に設けられている場合が好ましい。これにより、第1受信端子54の周囲4方向がグランド端子56で囲まれるため、送信端子52と第1受信端子54との間の電磁的な結合をより低減でき、アイソレーション特性をより向上できる。このように、第1導体46が、送信端子52を投影させた領域又は第1受信端子54を投影させた領域を囲み、グランド端子56は、第1導体46の下側に位置し、送信端子52と第2の辺60との間又は第1受信端子54と第4の辺64との間に更に設けられている場合が好ましい。
【0058】
また、実施例2では、第2の辺60の中央部近傍のグランド端子56と、送信端子52と第2の辺60との間のグランド端子56と、送信端子52と第4の辺64との間のグランド端子56と、が接続して一体となっている場合を例に示したが、夫々が互いに分離して別々に設けられている場合でもよい。しかしながら、送信端子52の周囲をグランド端子56で囲んで遮蔽性を高める観点からは、接続して一体となっている場合が好ましい。
【0059】
また、実施例2においても、実施例1と同様に、多層基板10の裏面中央部にグランド端子56を更に設けてもよく、グランド端子同士を接続して多層基板10の裏面全体に1つのグランド端子56として設けてもよい。
【実施例3】
【0060】
実施例3に係る分波器は、第1導体46が、送信端子52を投影させた領域と第1受信端子54を投影させた領域の両方を囲む場合の例である。実施例3に係る分波器は、多層基板10のうちの線路パターン/フットパッド層30の上面に形成される第1導体46のパターン及び裏面に形成されるフットパッド36のパターンが異なる点以外は、図1(a)から図5に示した実施例1に係る分波器と同じである。
【0061】
図16(a)から図16(e)を用いて、実施例3の多層基板10について説明する。図16(d)のように、第1導体46は、線路パターン/フットパッド層30の上面に、送信端子52を線路パターン/フットパッド層30に投影させた領域(図16(d)中の破線領域)及び第1受信端子54を線路パターン/フットパッド層30に投影させた領域(図16(d)中の破線領域)の両方を囲んで設けられている。
【0062】
図16(e)のように、グランド端子56は、線路パターン/フットパッド層30の裏面に、送信端子52と第4の辺64との間及び第1受信端子54と第4の辺64との間の両方に設けられている。なお、図16(e)では、送信端子52と第4の辺64との間に設けられたグランド端子56と、第1受信端子54と第4の辺64との間に設けられたグランド端子56と、は接続して一体となっている場合を例に示しているが、互いに分離して別々に設けられている場合でもよい。
【0063】
図17(a)は、実施例3に係る分波器の斜視図の例、図17(b)は、実施例3に係る分波器をプリント基板に実装した電子装置の斜視図の例である。図17(a)のように、多層基板10の内部である線路パターン/フットパッド層30の上面に、送信端子52を投影させた領域と第1受信端子54を投影させた領域の両方を囲んで第1導体46が設けられている。そして、グランド端子56は、送信端子52と第4の辺64との間及び第1受信端子54と第4の辺64との間の両方に設けられている。図17(b)のように、図7(a)に示した実施例1と同じように、プリント基板66に実施例4に係る分波器が実装されている。
【0064】
このように、実施例3に係る分波器によれば、第1導体46は、送信端子52を線路パターン/フットパッド層30に投影させた領域及び第1受信端子54を線路パターン/フットパッド層30に投影させた領域の両方を囲んでいる。そして、多層基板10の裏面において、送信端子52と第4の辺64との間及び第1受信端子54と第4の辺64との間の両方にグランド端子56が設けられている。これにより、送信端子52は、多層基板10の裏面及びその上方である線路パターン/フットパッド層30の上面において、第1受信端子54に向かう方向及びそれに直交する2方向について電磁的に遮蔽された構造となる。このため、送信端子52から第1受信端子54に向かう方向及びそれに直交する2方向に輻射される電磁波を遮蔽できる。さらに、第1受信端子54は、多層基板10の裏面及びその上方である線路パターン/フットパッド層30の上面において、送信端子52に向かう方向及びそれに直交する2方向について電磁的に遮蔽された構造となる。このため、第1受信端子54から送信端子52に向かう方向及びそれに直交する2方向で、送信端子52から輻射された電磁波が第1受信端子54に到達する前に遮蔽できる。これにより、送信端子52と第1受信端子54との間の電磁的な結合を一層低減できる。
【0065】
実施例3においても、実施例1と同様に、多層基板10の裏面中央部にグランド端子56を更に設けてもよく、グランド端子同士を接続して多層基板10の裏面全体に1つのグランド端子56として設けてもよい。図18(a)に、多層基板10の裏面中央部に更にグランド端子56を設けた場合の例を、図18(b)に、グランド端子同士を接続して、多層基板10の裏面全体に1つのグランド端子56として設けた場合の例を示す。
【実施例4】
【0066】
実施例4に係る分波器は、第1導体46が、送信端子52及び第1受信端子54を投影させた領域の両方を囲んで設けられていることに加え、グランド端子56が、送信端子52及び第1受信端子54夫々の周囲4方向を囲んで設けられている場合の例である。実施例4に係る分波器は、多層基板10のうちの線路パターン/フットパッド層30の裏面に形成されるフットパッド36のパターンが異なる点以外は、図16(a)から図16(e)に示した実施例3に係る分波器と同じであるため、ここでは、線路パターン/フットパッド層30の裏面について説明する。
【0067】
図19(a)は、実施例4の線路パターン/フットパッド層30の裏面を示す図の例である。図19(a)のように、グランド端子56は、送信端子52と第4の辺64との間及び第1受信端子54と第4の辺64との間の両方に設けられ、更に、送信端子52と第2の辺60との間及び第1受信端子54と第3の辺62との間の両方にも設けられている。これにより、送信端子52及び第1受信端子54の周囲4方向がグランド端子56で囲まれている。なお、図19(a)では、第2の辺60の中央部近傍のグランド端子と、送信端子52と第2の辺60との間のグランド端子と、送信端子52と第4の辺64との間のグランド端子と、第1受信端子54と第4の辺64との間のグランド端子と、第1受信端子54と第3の辺62との間のグランド端子と、第3の辺62の中央部近傍のグランド端子と、が接続して一体となっている場合を例に示したが、夫々が互いに分離して別々に設けられている場合でもよい。しかしながら、送信端子52及び第1受信端子54の周囲を囲んで遮蔽性を高める観点からは、接続して一体となっている場合が好ましい。また、線路パターン/フットパッド層30裏面中央部のグランド端子56は設けられていない場合でもよいが、送信端子52及び第1受信端子54の遮蔽性を高めるためには設けられている場合が好ましい。また、図19(b)に示す実施例4の変形例1のように、送信端子52及び第1受信端子54の周囲を完全に囲むように、グランド端子56同士を接続して、線路パターン/フットパッド層30の裏面全体に1つのグランド端子56として設けて、遮蔽性を高めてもよい。
【0068】
図20(a)は、実施例4に係る分波器の斜視図の例、図20(b)は、実施例4に係る分波器をプリント基板に実装した電子装置の斜視図の例である。図20(a)のように、多層基板10の内部である線路パターン/フットパッド層30の上面に、第1導体46が、送信端子52を投影させた領域及び第1受信端子54を投影させた領域の両方を囲んで設けられている。グランド端子56は、送信端子52と第4の辺64との間及び第1受信端子54と第4の辺64との間に加えて、送信端子52と第2の辺60との間及び第1受信端子54と第3の辺62との間に更に設けられている。図20(b)のように、送信端子52と第2の辺60との間及び第1受信端子54と第3の辺62との間にグランド端子56が設けられているため、プリント基板66に備わるグランド配線74は、送信端子52が接続する部分の送信用信号線70及び第1受信端子54が接続する部分の受信用信号線72の周囲を囲むように設けられている。このため、送信端子52が接続する部分以外の送信用信号線70及び第1受信端子54が接続する部分以外の受信用信号線72は、プリント基板66の内部に設けられている。その他については、実施例1と同じであり図7(a)に示しているのでここでは説明を省略する。
【0069】
このように、実施例4に係る分波器によれば、第1導体46が、送信端子52及び第1受信端子54を線路パターン/フットパッド層30に投影させた領域の両方を囲むと共に、グランド端子56が、送信端子52と第4の辺64との間及び第1受信端子54と第4の辺64との間に加えて、送信端子52と第2の辺60との間及び第1受信端子54と第3の辺62との間の両方にも設けられている。これにより、送信端子52は、線路パターン/フットパッド層30上面において第1受信端子54への方向及びそれに直交する2方向について電磁的に遮蔽された構造となり、多層基板10の裏面において第1受信端子54への方向、それに直交する2方向、及び第1受信端子54とは反対の方向で電磁的に遮蔽された構造となる。同様に、第1受信端子54は、線路パターン/フットパッド層30の上面において送信端子52への方向及びそれに直交する2方向で電磁的に遮蔽された構造となり、多層基板10の裏面において送信端子52への方向、それに直交する2方向、及び送信端子52とは反対の方向で電磁的に遮蔽された構造となる。これにより、送信端子52及び第1受信端子54の遮蔽性を一層高めることができるため、送信端子52と第1受信端子54との間の電磁的な結合を一層低減でき、アイソレーション特性を一層向上できる。
【実施例5】
【0070】
実施例5に係る分波器は、送信端子52を投影させた領域を覆う第2導体を有する場合の例である。実施例5に係る分波器は、多層基板10のうちの線路パターン層28の上面に形成されるパターンが異なる点以外は、図1(a)から図5に示した実施例1に係る分波器と同じである。
【0071】
図21(a)から図21(e)を用いて、実施例5の多層基板10について説明する。図21(c)のように、線路パターン層28の上面に、送信端子52を線路パターン層28に投影させた領域を覆う第2導体96が設けられている。第2導体96は、導電性パターン20と同じ材料からなり、例えばAlとCuの合金等の導体である。第2導体96は他の導電性パターン20とは電気的に接続しておらず、浮き導体となっている。第2導体96の厚さは、導電性パターン20の厚さと同じで、例えば15μmである。
【0072】
図22(a)は、実施例5に係る分波器の斜視図の例、図22(b)は、実施例5に係る分波器をプリント基板に実装した電子装置の斜視図の例である。なお、図22(a)において、導電性パターン20、フットパッド36、第1導体46、及び第2導体96以外の構成品を透視して分波器を図示しており(以下、図24(a)において同じ)、図22(b)において、フットパッド36、第1導体46、及び第2導体96以外の構成品を透視して分波器を図示している(以下、図24(b)において同じ)。図22(a)のように、多層基板10の内部であって、線路パターン/フットパッド層30の上層である線路パターン層28の上面に、送信端子52を線路パターン層28の上面に投影させた領域を覆う第2導体96が更に設けられている。図22(b)のように、図7(a)に示した実施例1と同じように、プリント基板66に実施例5に係る分波器が実装されている。
【0073】
図22(b)で示した電子装置についてシミュレーションを行ない、送信フィルタ12及び受信フィルタ14の通過特性と、送信端子52と第1受信端子54との間のアイソレーション特性を測定した。また、比較のために、図7(b)で示した電子装置についてのシミュレーション結果も図示する。図23(a)は、送信フィルタ12及び受信フィルタ14の通過特性、図23(b)は、送信端子52と第1受信端子54との間のアイソレーション特性のシミュレーション結果である。実施例5に係る分波器のシミュレーション結果を実線で、比較例1に係る分波器のシミュレーション結果を破線で示す。
【0074】
図23(a)のように、送信フィルタ12及び受信フィルタ14の通過特性は、実施例5に係る分波器と比較例1に係る分波器との間でほとんど差がない。一方、図23(b)のように、送信端子52と第1受信端子54との間のアイソレーション特性は、実施例5に係る分波器は、比較例1に係る分波器に比べて、送信帯域及び通過帯域外で向上している。
【0075】
このように、実施例5に係る分波器によれば、送信端子52を線路パターン/フットパッド層30の上面に投影させた領域を囲む第1導体46と、送信端子52と第4の辺64との間にグランド端子56を設けることに加え、線路パターン/フットパッド層30の上層である線路パターン層28上面に、送信端子52を線路パターン/フットパッド層30に投影させた領域を覆う第2導体96を設けている。これにより、送信端子52の上方も電磁的に遮蔽された構造となり、送信端子52から上方に輻射される電磁波についても遮蔽することができ、送信端子52の電磁波の遮蔽性をより高めることができる。このため、送信端子52と第1受信端子54との間の電磁的な結合をより低減でき、図23(b)のように、アイソレーション特性をより向上できる。
【0076】
第2導体96は、送信端子52の電磁波の遮蔽性を高めるためには、送信端子52を投影した領域を完全に覆う場合が好ましいが、送信端子52を投影した領域の一部を覆う場合でも電磁波の遮蔽性を高める効果は得られる。
【0077】
実施例5では、第2導体96は、送信端子52を投影させた領域を覆って設けられている場合を例に示したがこれに限られる訳ではない。例えば、第1導体46が第1受信端子54を投影させた領域を囲んで設けられている場合には、第2導体96は第1受信端子54を投影させた領域を覆って設けられている場合が好ましい。この場合でも、送信端子52と第1受信端子54との間の電磁的な結合をより低減できる。即ち、第2導体96は、第1導体46の上側に位置し、送信端子52又は第1受信端子54を線路パターン層28に投影させた領域を覆って設けられている場合が好ましい。
【0078】
また、実施例2のような、第1導体46が送信端子52を投影させた領域を囲んで設けられ、グランド端子56が送信端子52と第2の辺60との間及び送信端子52と第4の辺64との間に設けられている場合に、送信端子52を投影させた領域を覆って第2導体96が設けられている場合でもよい。同様に、第1導体46が第1受信端子54を投影させた領域を囲んで設けられ、グランド端子56が第1受信端子54と第3の辺62との間及び第1受信端子54と第4の辺64との間に設けられている場合に、第1受信端子54を投影させた領域を覆って第2導体96が設けられている場合でもよい。これらの場合、送信端子52と第1受信端子54との間の電磁的な結合をより一層低減できる。
【0079】
第2導体96は浮き導体である場合を例に示したが、第2導体96がグランドに落ちている場合でもよい。つまり、第2導体96は、アンテナ端子50、送信端子52、及び第1受信端子54に接続する信号線に非接続であればよい。
【実施例6】
【0080】
実施例6に係る分波器は、送信端子52を投影させた領域及び第1受信端子54を投影させた領域の両方を覆うように第2導体96が設けられている場合の例である。図24(a)は、実施例6に係る分波器の斜視図の例、図24(b)は、実施例6に係る分波器がプリント基板に実装された電子装置の斜視図の例である。図24(a)のように、送信端子52を線路パターン/フットパッド層30の上面に投影した領域及び第1受信端子54を線路パターン/フットパッド層30の上面に投影した領域の両方を囲むように第1導体46が設けられている。また、送信端子52を線路パターン層28の上面に投影した領域及び第1受信端子54を線路パターン層28の上面に投影した領域の両方を覆うように第2導体96が設けられている。そして、多層基板10の裏面に、送信端子52と第4の辺64との間及び第1受信端子54と第4の辺64との間の両方にグランド端子56が設けられている。図24(b)のように、図7(a)に示した実施例1と同じように、実施例6に係る分波器がプリント基板66に実装されている。
【0081】
このように、実施例6に係る分波器によれば、第1導体46が送信端子52及び第1受信端子54を投影させた領域の両方を囲んで設けられ、且つ、第2導体96は送信端子52及び第1受信端子54を投影させた領域の両方を覆って設けられている。これにより、送信端子52及び第1受信端子54の両方の上方が電磁的に遮蔽された構造となり、送信端子52から上方に輻射される電磁波についても遮蔽できると共に、送信端子52から輻射された電磁波を、第1受信端子54の上方から第1受信端子54に到達する前に遮蔽できる。よって、送信端子52と第1受信端子54との間の電磁的な結合を一層低減でき、アイソレーション特性を一層向上できる。
【0082】
実施例4で説明したような、グランド端子56が送信端子52と第2の辺60との間及び第1受信端子54と第3の辺62との間に更に設けられている構造の場合でも、送信端子52及び第1受信端子54を投影させた領域を覆って第2導体96が設けられる構造としてもよい。この場合には、送信端子52と第1受信端子54との間の電磁的な結合をさらに低減できる。
【実施例7】
【0083】
実施例7に係る分波器は、送信フィルタ12は、実施例1と同様にラダー型フィルタを用い、受信フィルタ14は、ダブルモード型フィルタを用いた場合の例である。図25(a)及び図25(b)を用いて、受信フィルタ14について説明する。図25(a)は、受信フィルタ14を説明する上面図の例、図25(b)は、回路図の例である。図25(a)及び図25(b)のように、ダブルモード型フィルタである受信フィルタ14は、一対の反射電極の間に3つの櫛型電極が設けられたダブルモード型弾性表面波共振器(DMS1、DMS2)が、互いに並列に設けられている。ダブルモード型弾性表面波共振器(DMS1、DMS2)夫々の中央に位置する櫛型電極は、共振子S21を介して1つのアンテナ端子52に接続する。ダブルモード型弾性表面波共振器(DMS1、DMS2)夫々の中央の櫛型電極の両隣に位置する櫛型電極は、共振子S22、S23を介して2つの受信端子(第1受信端子54及び第2受信端子55)に夫々接続する。即ち、実施例7に係る分波器は、2つの受信端子(第1受信端子54及び第2受信端子55)が設けられた不平衡−平衡型の分波器である。
【0084】
図26(a)から図26(e)を用い、多層基板10の各層について説明する。図26(a)のように、キャップ搭載層22とキャビティ層24とには、キャビティ18を形成する空洞が設けられ、キャビティ18に、ラダー型フィルタである送信フィルタ12とダブルモード型フィルタである受信フィルタ14が格納されている。
【0085】
図26(b)及び図26(c)のように、ダイアタッチ層26の上面及び線路パターン層28の上面には、実施例1に係る分波器と同様に、導電性パターン20が設けられている。
【0086】
図26(d)のように、線路パターン/フットパッド層30の上面には、導電性パターン20に加えて、送信端子52を投影させた領域と、2つの受信端子のうちの送信端子52に近い方の第1受信端子54を投影させた領域と、を囲んで第1導体46が設けられている。
【0087】
図26(e)のように、第1受信端子54が、第3の辺62の中央部よりもアンテナ端子50から離れた側で第3の辺62に近接して設けられていることに加え、第2受信端子55が、第1受信端子54に隣接して、第3の辺62の中央部近傍に設けられている。このため、図4(e)や図16(e)等に示したような、第3の辺62の中央部近傍にグランド端子56は設けられていない。その他については、実施例3の図16(e)と同じであるため説明は省略する。
【0088】
図27(a)は、実施例7に係る分波器の斜視図の例、図27(b)は、実施例7に係る分波器をプリント基板に実装した電子装置の斜視図の例である。図27(a)のように、受信端子が2つ設けられていて、第1受信端子54が第3の辺62の中央部よりもアンテナ端子50から離れた側で第3の辺62に近接して設けられ、第2受信端子55が第3の辺62の中央部近傍に設けられている。第1導体46は、送信端子52及び第1受信端子54を投影させた領域を囲んで設けられている。図27(b)のように、第1受信端子54と第2受信端子55との2つの受信端子が設けられているため、受信用信号線72も2つ設けられている。
【0089】
実施例7に係る分波器のように、受信フィルタ14にダブルモード型フィルタを用いて2つの受信端子が設けられ、第1受信端子54に隣接して、第3の辺62の中央部に近接して第2受信端子55が設けられている場合でも、送信端子52を投影させた領域及び2つの受信端子のうちの送信端子52に近い側の第1受信端子54を投影させた領域を第1導体46で囲み、且つ、送信端子52及び第1受信端子54夫々の周囲3方向をグランド端子56で囲む構造とすることで、送信端子52と第1受信端子54との間の電磁的な結合を低減でき、アイソレーション特性を向上できる。
【0090】
実施例7のように、第1導体46は、送信端子52に近い側の第1受信端子54を投影させた領域を囲むように少なくとも設けられていればよいが、アイソレーション特性をより向上させるには、第1受信端子54及び第2受信端子55を投影させた領域の両方を囲むように第1導体46が設けられている場合が好ましい。
【0091】
図28(a)から図28(f)は、第1受信端子54と第2受信端子55の2つの受信端子が設けられた場合の、線路パターン/フットパッド層30の裏面のパターンバリエーションの例である。受信端子が2つ設けられた場合であっても、グランド端子56を、図28(a)から図28(f)のように設けることで、アイソレーション特性を向上できる。
【0092】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0093】
10 多層基板
12 送信フィルタ
14 受信フィルタ
16 キャップ
18 キャビティ
20 導電性パターン
22 キャップ搭載層
24 キャビティ層
26 ダイアタッチ層
28 線路パターン層
30 線路パターン/フットパッド層
36 フットパッド
40 圧電基板
46 第1導体
50 アンテナ端子
52 送信端子
54 第1受信端子
55 第2受信端子
56 グランド端子
58 第1の辺
60 第2の辺
62 第3の辺
64 第4の辺
66 プリント基板
68 アンテナ用信号線
70 送信用信号線
72 受信用信号線
74 グランド配線
96 第2導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層が積層され、四角形の裏面を有する多層基板と、
前記多層基板の前記裏面に、前記四角形を構成する4つの辺のうちの第1の辺の中央部に近接して設けられたアンテナ端子と、
前記多層基板の裏面に、前記第1の辺に交差する第2の辺の中央部よりも前記アンテナ端子から離れた側で前記第2の辺に近接して設けられた送信端子と、
前記多層基板の裏面に、前記第2の辺に対向する第3の辺の中央部よりも前記アンテナ端子から離れた側で前記第3の辺に近接して設けられた第1受信端子と、
前記複数の層のうちの第1の層に設けられ、前記送信端子又は前記第1受信端子を前記第1の層に投影させた領域の少なくとも一方を囲む第1導体と、
前記第1導体の下側に位置し、前記送信端子と前記第1の辺に対向する第4の辺との間又は前記第1受信端子と前記第4の辺との間の少なくとも一方に少なくとも設けられたグランド端子と、を備えることを特徴とする分波器。
【請求項2】
前記第1導体は、前記送信端子及び前記第1受信端子を前記第1の層に投影させた領域の両方を囲み、
前記グランド端子は、前記送信端子と前記第4の辺との間及び前記第1受信端子と前記第4の辺との間の両方に設けられていることを特徴とする請求項1記載の分波器。
【請求項3】
前記グランド端子は、前記第1導体の下側に位置し、前記送信端子と前記第2の辺との間又は前記第1受信端子と前記第3の辺との間の少なくとも一方に更に設けられていることを特徴とする請求項1記載の分波器。
【請求項4】
前記第1導体は、前記送信端子及び前記第1受信端子を前記第1の層に投影させた領域の両方を囲み、
前記グランド端子は、前記送信端子と前記第4の辺との間及び前記第1受信端子と前記第4の辺との間の両方、並びに、前記送信端子と前記第2の辺との間及び前記第1受信端子と前記第3の辺との間の両方に設けられていることを特徴とする請求項3記載の分波器。
【請求項5】
前記第1導体の上側に位置し、前記複数の層のうちの前記第1の層よりも上層の第2の層に設けられ、前記送信端子又は前記第1受信端子を前記第2の層に投影させた領域の少なくとも一方を覆う第2導体を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の分波器。
【請求項6】
前記第2導体は、前記送信端子及び前記第1受信端子を前記第2の層に投影させた領域の両方を覆うことを特徴とする請求項5記載の分波器。
【請求項7】
前記グランド端子は、前記第2の辺の中央部、前記第3の辺の中央部、及び前記第4の辺の中央部に近接して更に設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の分波器。
【請求項8】
前記グランド端子は、前記多層基板の裏面の中央部に更に設けられていることを特徴とする請求項7記載の分波器。
【請求項9】
前記多層基板の裏面に設けられた前記グランド端子同士が接続して1つのグランド端子を構成していることを特徴とする請求項8記載の分波器。
【請求項10】
前記アンテナ端子と前記送信端子との間に接続された送信フィルタと、
前記アンテナ端子と前記受信端子との間に接続された受信フィルタと、を備え、
前記送信フィルタ及び前記受信フィルタは、弾性波共振器を含むことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項記載の分波器。
【請求項11】
前記第1受信端子に隣接し、前記第3の辺の中央部に近接して設けられた第2受信端子を備えることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項記載の分波器。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の分波器と、
前記分波器に備わる前記アンテナ端子、前記送信端子、前記第1受信端子、及び前記グランド端子が夫々接続するアンテナ用信号線、送信用信号線、受信用信号線、及びグランド配線を有するプリント基板と、を備え、
前記グランド配線は、前記送信用信号線及び前記受信用信号線を囲んで設けられていることを特徴とする電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−105097(P2012−105097A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252268(P2010−252268)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】