説明

制御用情報記憶装置及びプログラム

【課題】車両走行時に車両から得られる情報であって、車両の走行制御のために用いられる制御用情報を記憶する場合に、記憶量を低減させながら有用な情報記憶を維持させる。
【解決手段】車速をセグメント単位で取得してデータベースへ記憶させるが、同じセグメントを複数回走行した場合には、その複数回の平均値(平均車速)を記憶させる。そしてさらに、所定の条件を満たす場合には(図3のS104:NO,S105:YES)、その隣接セグメントに対応する学習データ値(車速)が所定の閾値よりも小さければ(S106:YES)、データ結合を行う(S107)ようにしている。そのため、データベース23bの情報量が削減される。交差点に接続するセグメントの場合(S104:YES)及び走行回数が所定の閾値以下の場合(S105:NO)は、むしろ結合しない方が妥当であるため、学習データ値の結合対象としない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御に利用するための制御用情報を記憶する制御用情報記憶装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置の地図データを利用して道路状況に応じた車両制御を行うことが考えられている。このような車両制御を精度よく実現するためには、ナビゲーション装置の地図データが正確であることが要求されるが、現状の地図データは車両制御を行うのに十分な正確性を有しているとはいえない。
【0003】
そこで、車両の走行軌跡を車両制御に利用するための制御用情報として保存し、その制御用情報を利用して車両制御を行う技術が提案されている。例えば特許文献1には、車線を含めた実際の道路形状と、記憶している道路情報による道路の形状とを一致させることができるようにした道路情報の修正装置が開示されている。この修正装置は、記憶している道路情報を、実際の道路を走行した際の車両の走行軌跡情報に基づいて修正するものであり、道路情報が双方向通行可能な道路を一の道路形状として表現可能なものである場合、走行軌跡情報に基づいて道路情報を進行方向ごとに修正する。
【0004】
しかし、ここで扱われているものは道路形状という静的なものであり、走行するたびに変化するものではない。
一方、例えば車速のように動的に変化する走行データを履歴として残す点に関しては例えば特許文献2に開示されている。この特許文献2には、運転者に安全運転や省燃費運転の心掛けを促し得る走行データ出力装置が開示されており、車両が走行した経路の経路データ及びこの経路を走行した際の車両の走行データを取得し、この経路データ及び走行データを走行履歴データベースにより記憶する。そして、車両が現在走行している経路の経路データと一致する経路データが過去の経路データとして走行履歴データベースに既に記憶されているか否かを検索し、一致する過去の経路データが検索された場合に、現在走行している経路の走行データ及び一致した過去の経路データに対応した走行データ(燃費、所要時間、平均車速)を走行履歴データベースから抽出して表示部に表示する。
【特許文献1】特開2005−121707号公報
【特許文献2】特開2006−003147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の走行データ出力装置の場合には、同じ道路を何度も走行した場合の対処については何ら開示されていない。したがって、走行した日付ごとに走行データを記憶するようにした場合には、走行データの記憶領域が非常に大きくなってしまう。
【0006】
また、走行経路単位で走行データを記憶させるため、一部が重複する複数の走行経路に対応する走行データがあっても、その点を加味した適切な対応については検討されていなかった。
【0007】
本発明は、こうした問題にかんがみてなされたものであり、車両走行時に車両から得られる情報であって、車両の走行制御のために用いられる制御用情報を記憶する場合に、記憶量を低減させながら有用な情報記憶を維持させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明の請求項1に記載の制御用情報記憶装置は、 車両が走行中の場所を、所定の道路単位で特定可能な走行場所特定手段と、情報記憶手段と、車両走行時に車両から得られる情報であって、車両の走行制御のために用いられる制御用情報を、走行場所特定手段によって特定された所定の道路単位の走行場所に対応して情報記憶手段へ記憶させる記憶制御手段と、を備えている。
【0009】
そして記憶制御手段は、同じ走行場所における制御用情報を情報記憶手段へ記憶させる場合、走行回数に応じた平均値を記憶させる。それと共に、情報記憶手段に記憶されている制御用情報のうち、隣接する走行場所の制御用情報同士が実質的に同一であるとみなせる条件を満たしているか否か判断し、条件を満たしている制御用情報については結合し、複数の走行場所に対応して一つの制御用情報のみを記憶させる。
【0010】
なお、「所定の道路単位」というのは、例えば、交差点間を結ぶ道路(いわゆるリンク)単位や、リンク間に存在する道路形状の変化を示すための点(いわゆる補完形状点)同士を結ぶ道路(いわゆるセグメント)単位のような単位を意味する。
【0011】
このような制御用情報記憶装置によれば、情報記憶手段に既に制御用情報が記憶されている走行場所と同じ走行場所を車両が走行した場合、制御用情報を別途記憶させるのではなく、過去の制御用情報も加味し、走行回数に応じた平均値を記憶させる。走行経路全体ではなく、所定の道路単位の走行場所毎に制御用情報を記憶できるので、例えば走行経路の一部のみが異なる場合、重複する走行場所については、平均値を記憶させることで記憶量を低減させることができる。
【0012】
そしてさらに、情報記憶手段に記憶されている制御用情報のうち、隣接する走行場所の制御用情報同士が実質的に同一であるとみなせる条件を満たしていれば、それらの制御用情報については結合し、複数の走行場所に対応して一つの制御用情報のみを記憶させている。この「制御用情報同士が実質的に同一であるとみなせる条件」とは、例えば制御用情報の値の差が所定の閾値よりも小さい場合などである。例えば制御用情報として平均車速を記憶する場合を考える。直進道路のため隣接する複数の走行場所をほぼ同じ速度で走行するようなケースでは、接する複数の走行場所での平均車速はほぼ同じである。そのため、それらは結合させてしまうことで記憶量を低減させることができる。
【0013】
したがって、車両走行時に車両から得られる情報であって、車両の走行制御のために用いられる制御用情報を記憶する場合に、記憶量を低減させながら有用な情報記憶を維持させることができる。
【0014】
ここで、制御用情報の結合に関しては、むしろ結合しない方が妥当な場合がある。その一例として、地理的な観点からの工夫と統計学的な観点からみた工夫を説明する。
地理的な観点からの工夫としては、例えば請求項2に示すように、交差点に接続する走行場所に対応する制御用情報が挙げられる。走行環境が同様の場合は制御用情報を結合するのに向いているが、交差点に接続する走行場所では、信号の有無や先行車が右左折することに起因して、自車の挙動が大きく変化する可能性が高い。そのような外因による挙動変化が激しい走行場所の制御用情報とそうでない走行場所の制御用情報とを結合してしまうと、結合後の制御用情報に対する信頼性が相対的に低下する。したがって、有用な情報記憶を維持させるためには、このような場所の制御用情報は結合しないようにすることが考えられる。
【0015】
統計学的な観点からの工夫としては、例えば請求項3に示すように、走行回数が所定回数以下の走行場所に対応する制御用情報については結合対象から外すことが考えられる。本来的には制御用情報として異なっており、ある程度の走行回数となれば自ずと結合条件を満たさないケースであっても、走行回数が少ないと偶然同様の値となってしまうことがある。したがって、走行回数が所定回数以下の走行場所に対応する制御用情報については結合対象から除外することで、そのような不都合を防止できる。なおこの場合の所定回数は、当然ながら統計学的な観点から決めればよい。
【0016】
ところで、実際の道路においては、信号機があったり、交差点にて右左折できるようになっていたりするため、それらに対する配慮があった方が好ましい。
そこで請求項4に示す制御情報記憶装置では、記憶制御手段が次のような制御を行う。つまり、車速と進行方向に基づいて、走行場所において直進したのか、右左折したのか、停止したのかを判定し、その判定結果に基づいて、同じ走行場所の制御用情報であっても、前記直進・右左折・停止に分類して情報記憶手段へ記憶する。そして、平均値を記憶させる処理、及び制御用情報の結合に関する処理を実行する場合、直進・右左折・停止の分類毎に実行するのである。
【0017】
同じ走行場所を走行しても、場合によってそのまま直進したり、右左折したり、停止することが考えられる。有用な情報記憶を維持させるためには、それらを区別した記憶制御を行った方がよいと考えられる。
【0018】
また、請求項5に記載の制御用情報記憶装置では、情報出力手段が、情報記憶手段によって記憶されている制御用情報を車両制御を行う車両制御手段へ出力する。このような構成によれば、制御用情報記憶装置に記憶されている制御用情報に基づく車両制御を車両制御手段に行わせることができる。なお、情報出力手段は、制御用情報をそのまま車両制御手段へ出力してもよいが、車両制御手段において必要となる情報に加工した上で出力してもよい。
【0019】
次に、請求項7に記載のプログラムは、請求項1〜6の何れかに記載の制御情報記憶装置が備える前記記憶制御手段としてコンピュータを機能させるものである。このようなプログラムによれば、コンピュータを用いて前述した制御用情報記憶装置を構築することができ、これにより前述した効果を得ることができる。特に、プログラムはネットワーク等を利用して流通させることも可能である上、プログラムの入れ替えは部品の入れ替えに比較して容易であるため、制御用情報記憶装置の機能向上等を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0021】
[1.構成の説明]
図1は、本発明の制御用情報記憶装置の機能が組み込まれたナビゲーション装置10の概略構成を示すブロック図である。
【0022】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
ナビゲーション装置10は、ガソリンエンジンとモータとを動力にするハイブリッド車両に搭載された状態で用いられるものであり、GPSセンサ11と、方位センサ12と、距離センサ13と、地図データベース14と、制御部20とを備えている。
【0023】
GPSセンサ11は、GPS(Global Positioning System)用の人工衛星からの電波をGPSアンテナを介して受信し、当該ナビゲーション装置10が搭載されている車両(以下、単に「車両」という)の絶対位置(緯度、経度及び高度)を検出する。
【0024】
方位センサ12は、地磁気に基づき車両の絶対方位を検出する。
距離センサ13は、車両の走行距離を検出する。
地図データベース14には、地図に関する種々の情報からなる地図データが記憶されている。この地図データにおいて、車両が走行する道路は、実際の道路における各交差点の中央位置に設定されたノードと、ノード間を接続するリンクとにより表されている。すなわち、図4に示すように、地図データに記憶されている道路は、リンク単位に分割して管理されており、各リンクはその端点であるノード(白点)において他のリンクと接続されている。そして、各リンクには固有の識別子であるリンクID(道路識別子)が付与されており、リンクIDを用いてリンクを特定することが可能となっている。ここで、「交差点」とは、複数の道路が接続された地点全般のことであり、十字路、T字路、分岐点、合流点等が含まれる。つまり、3つ以上のリンクが接続される点がノードとなる。
【0025】
また、1本のリンクは、1本以上のセグメントにて構成されている。1本のリンクが複数のセグメントで構成される場合には、ノード間に補完形状点(黒点)が存在する。例えば図4に示すように、リンク(1)上には3つの補完形状点(黒点)が存在し、4本のセグメント(1)〜(4)によってリンク(1)が構成されている。同様に、セグメント(5),(6)によってリンク(2)が構成され、セグメント(7)〜(9)によってリンク(3)が構成されている(図4及び図5参照)。
【0026】
なお、地図データベース14は、ハードディスク装置に地図データを記憶するように構成してもよく、また、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体製メモリ等などの可搬型記憶媒体から地図データを読み出す構成とすることも可能である。
【0027】
制御部20は、CPU、ROM、RAM、SRAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどからなるマイクロコンピュータを中心に構成されており、自車位置計算部21、学習部23及び安全制御処理部24として機能する。
【0028】
自車位置計算部21は、GPSセンサ11、方位センサ12及び距離センサ13からの各検出信号に基づき車両の現在位置(絶対位置)を検出するとともに、地図データベース14に記憶されている地図データから現在位置周辺の地図を読み出して、車両の現在位置を表す自車位置マークとともに図示しない表示部(ディスプレイ)に表示させる現在位置表示処理や、現在位置から目的地までの最適な経路を検索して案内する経路案内処理等を実行する。なお、ROMには、後述する処理(図2,図3参照)を実行するためのプログラムが記憶されている。
【0029】
また、学習部23は、車両に搭載された車両情報センサ群31から入力された情報を一時的に記憶するテンポラリーメモリとしての記憶部23aと、その記憶部23aに一時的に記憶された情報に所定の処理を施した情報を記憶しておくデータベース23bとを備えている。データベース23bは例えばハードディスクやフラッシュメモリ等の不揮発性記憶媒体で構成され、電源がオフされてもデータを保持できるようにされている。学習部23は、記憶部23aやデータベース23bへの情報の書き込みや、記憶部23aに一時的に記憶された情報に対する所定の処理を実行する機能も有している。
【0030】
なお、車両情報センサ群31から入力される情報は、例えばシフト変化情報、アクセル開度情報、エンジン回転数情報、ブレーキ信号情報、車速情報、燃料噴射量情報などである。
【0031】
また、安全制御処理部24は、本実施形態のナビゲーション装置10が搭載される車両に搭載された複数の車両制御部(車両制御手段)41,42を制御する。
この車両制御部を具体的に説明すると、燃費を向上させるようにエンジン及び車両駆動モータを制御する低燃費制御部41と、先行車がいない場合には定速走行をさせ、先行車がいる場合には先行車との距離及び相対速度並びに自車の走行状態に基づき設定される目標加速度が得られるように自車両のエンジン、ギア、ブレーキ等を制御することで先行車との適正車間距離を保持するアダプティブ・クルーズ・コントロールを行うACC制御部42とである。
【0032】
そして、本実施形態のナビゲーション装置10は、出発地から目的地までの区間の道路で行われる車両制御に利用するための制御用情報を、セグメント単位でデータベース23b(図1参照)に記憶する。ここでは制御用情報の一例として「車速」を例にとって説明する。
【0033】
図5に示すように、同じ道路であっても往路と復路それぞれについて、セグメント単位で情報を記憶する。この情報は、平均車速直進・平均車速右左折・平均車速停止の3種類の平均車速に対して、それぞれ経過時間と走行回数をセットにして記憶する。
【0034】
なお、図5からも分かるように、交差点へ進入するセグメントについては平均車速直進・平均車速右左折・平均車速停止の3種類の平均車速全てに関して情報を記憶するが、それ以外のセグメントについては平均車速直進の1種類の平均車速のみに関して情報を記憶する。つまり、図5に示す例で言えば、往路においては、セグメント(4)(6)(9)については平均車速直進・平均車速右左折・平均車速停止の3種類の平均車速全てに関して情報を記憶し、それ以外のセグメント(1)(2)(3)(5)(7)(8)については平均車速直進の1種類の平均車速のみに関して情報を記憶する。また、復路においては、セグメント(1)(5)(7)については平均車速直進・平均車速右左折・平均車速停止の3種類の平均車速全てに関して情報を記憶し、それ以外のセグメント(2)(3)(4)(6)(8)(9)については平均車速直進の1種類の平均車速のみに関して情報を記憶する。
【0035】
このような制御用情報をデータベース23bに記憶し、制御用情報が既に記憶されている道路を走行する際に安全制御処理部24から低燃費制御部41及びACC制御部42へ制御用情報を出力する。これにより、低燃費制御部41及びACC制御部42においては、制御用情報に基づくより高精度な車両制御を実現することが可能となる。この詳細については後述する。
【0036】
[2.処理の説明]
次に、制御部20が実行する処理の具体的内容について説明する。ここでは、図4、図5に示すセグメント(1)→セグメント(2)→……と進む往路に関してのみを取り上げるので、図6〜図9では、往路のみのデータベース保存例を示す。
【0037】
[2.1 処理の概要]
制御部20は、ナビゲーション装置10へ電源供給が開始されると、図2のフローチャートに示す制御用情報保存・結合処理を開始する。
【0038】
この制御用情報保存・結合処理が開始されると、まずS10で、走行中のセグメントID(セグメント番号)を取得する。続くS20では、一つ手前のセグメントIDがあるか否か判断する。
【0039】
一つ手前のセグメントIDがあれば(S20:YES)、S30へ移行し、一つ手前のセグメントでの車速データを確認する。そして、続くS40では、走行中セグメントとの接続部分において車速データの変化があるか否か判断する。
【0040】
走行中セグメントとの接続部分において車速データの変化がなければ(S40:NO)、直進のデータとして保存する(S50)。例えば図6に示すように、セグメント(1)に対応する学習データ値として、平均車速直進10m/s、経過時間2秒、走行回数1(回)と保存する。
【0041】
一方、車速データの変化があれば(S40:YES)、走行中セグメントとの接続部分において「車速>0」且つ「方位変化がある」か否か判断する(S60)。この条件が成立しない場合は(S60:NO)、停止のデータとして保存し(S70)、条件が成立する場合は(S60:YES)、右左折のデータとして保存し(S80)。
【0042】
S50、S70、S80の何れかにおいてデータ保存した後は、S90へ移行し、目的地に到着したか否か判断する。目的地に到着するまでは(S90:NO)、S10へ戻ってS10以下の処理を繰り返し、目的地に到着したら(S90:YES)、結合処理を行う(S100)。
【0043】
[2.2 セグメント単位での車速データの保存の詳細]
ここで、図10、図11を参照して、セグメント単位での車速データの生成や、その保存に関して説明する。なお、図10及び図11はセグメント単位での車速データ生成の原理を示すものである。車速の単位は図6〜9と同様に[m/s]である。
【0044】
保存する車速データはセグメント単位でのデータであるが、制御部20の学習部23は、車両情報センサ群31からの車速データを所定のサンプリング周期で収集して、記憶部23aにバッファリングする(図10参照)。
【0045】
セグメントAを走行しながらこのようなバッファリングを続け、セグメントAを抜けたタイミングで自車位置計算部21が学習部23へ通知する。学習部23では、記憶部23aにバッファリングされたデータより、(セグメントAへの)進入時刻(図10の例では0000)から退出時刻(図10の例では0015)までの車速データを取得して、それらの平均化処理を行う。そして、セグメントIDごとに平均化した車速データを、データベース23bへ保存する。
【0046】
同様に、セグメントBを走行しながらこのようなバッファリングを続け、セグメントBを抜けたタイミングで自車位置計算部21が学習部23へ通知する。学習部23では、記憶部23aにバッファリングされたデータより、(セグメントBへの)進入時刻(図10の例では0016)から退出時刻(図10の例では0030)までのデータを取得して、平均化処理を行う。そして、セグメントIDごとに平均化した車速データを、データベース23bへ保存する。
【0047】
一方、図2のS60に示す判定に関しては図11を参照して説明する。セグメントAから左折してセグメントCを走行する場合を示している。制御部20の学習部23は、車両情報センサ群31からの車速データを所定のサンプリング周期で収集して、記憶部23aにバッファリングし、セグメントAを抜けたタイミングで自車位置計算部21が学習部23へ通知する。セグメントAへの進入時刻は図11の例では0000であり、退出時刻は図11の例では0015である。そして、セグメントAの退出時刻からN秒間の走行方位をチェックする。そして、方位の変化量が所定の閾値よりも大きいか否か判断し、方位変化量>閾値の場合に右左折と判定する。
【0048】
[2.3 データベースへ学習データ値が保存されていく具体例]
ここで、データベース23bへ学習データ値が保存されていく具体例について、図6〜図8を参照して説明する。
【0049】
図6は1回目の走行例であり、セグメント(1)→(2)→(3)→(4)→(5)→(6)の順番に車両が走行し、セグメント(1)の一端から移動を開始し、セグメント(4)(5)(7)が接続する交差点において車両が一時停止し、セグメント(6)の一端で停止した場合を示している。この場合、セグメント(4)(6)に関する情報は平均車速停止に分類され、それ以外は平均車速直進に分類される。1回目の走行なので、図6に示すように、走行回数はそれぞれ1となる。
【0050】
図7は2回目の走行例であり、図6に示すものを同じ走行経路、つまりセグメント(1)→(2)→(3)→(4)→(5)→(6)の順番に車両が走行し、セグメント(1)の一端から移動を開始し、今度はセグメント(4)(5)(7)が接続する交差点においても車両は一時停止せず、セグメント(6)の一端で停止した場合を示している。
【0051】
この場合、セグメント(4)に関する情報は平均車速停止に分類され、それ以外は平均車速直進に分類される。セグメント(1)(2)(3)(5)に関しては図6の場合と同じように平均車速直進であり、セグメント(6)に関しても図6の場合と同じように平均車速停止である。したがって、図7に示すように、これらのセグメントにおいては走行回数2となる。データベース上では同じ場所に保存されるため、平均車速と経過時間に関しては1回目と2回目で平均処理された値が保存される。
【0052】
一方、セグメント(4)においては、2回目の走行では停止せずに直進しているので、平均車速直進に分類されて保存される。当然、この場合は平均車速直進としては初めての保存なので、走行回数1となる。
【0053】
図8は3回目の走行例であり、今度は、セグメント(1)→(2)→(3)→(4)→(7)→(8)→(9)の順番に車両が走行した場合を示している。セグメント(1)の一端から移動を開始し、今度はセグメント(4)(5)(7)が接続する交差点において左折してセグメント(7)側へ進み、セグメント(9)の一端で停止した場合を示している。
【0054】
この場合、セグメント(4)に関する情報は平均車速右左折に分類され、セグメント(9)は平均車速停止に分類され、それ以外は平均車速直進に分類される。
セグメント(1)(2)(3)に関しては図6、図7の場合と同じように平均車速直進であるため、図8に示すように、これらのセグメントにおいては走行回数3となる。セグメント(4)においては平均車速右左折に分類されて保存されるが、この場合は平均車速右左折としては初めての保存なので、走行回数1となる。セグメント(7)(8)(9)は初めての走行なので当然ながら走行回数1となる。なお、図8では、データベースにおけるセグメント(5)(6)の欄は省略している。
【0055】
[2.4 結合処理の詳細]
次に、図2のS100における結合処理の詳細に関して、図3のフローチャート及び図9のデータベースにおけるデータ更新例を参照して説明する。
【0056】
図3のフローチャートに示す結合処理が開始されると、まず結合処理の対象を特定する(S101)。例えば図6〜図8で示す例で言えばセグメント(1)〜(9)である。そして、結合処理対象の中の2番目のセグメント(図6〜図8の例で言えばセグメント(2))を対象とし(S102)、対象セグメントの学習データをチェックする(S102)。
【0057】
S102で結合処理対象の中の2番目のセグメントから始めているのは、1番目のセグメントはそれ以前のセグメントが存在しないため、学習データ値の結合処理自体が観念できないからである。
【0058】
まず、交差点に接続するセグメントか否か判断し(S104)、交差点に接続するセグメントであれば(S104:YES)、S107の処理を経ずにS108へ移行する。つまり交差点に接続するセグメントに対する学習データ値は結合対象とはしない。
【0059】
このS104は、地理的な観点からの条件判定であり、交差点に接続するセグメントに対応する学習データ値は結合対象から除外している。走行環境が同様の場合は学習データ値を結合するのに向いているが、交差点に接続する走行場所では、信号の有無や先行車が右左折することに起因して、車速が大きく変化する可能性が高い。そのような外因による車速変化が激しい走行場所の学習データ値とそうでないセグメントの学習データ値とを結合してしまうと、結合後の学習データ値に対する信頼性が相対的に低下する。したがって、有用な情報記憶を維持させるために、このようなセグメントの学習データ値は結合しないようにした。
【0060】
一方、交差点に接続するセグメントでなければ(S104:NO)、S105へ移行する。S105では、走行回数が閾値よりも大きいか否か判断する。この閾値は、例えば統計学的な観点から定められる値であり、S107での学習データ値の結合を行った場合の値に対する信頼性を確保するための値である。例えば2回走行しただけで学習データ値の結合をしてしまうと信頼性を確保しにくいのであれば、閾値を2以上として、3回以上走行した場合に学習データ値の結合を許容するという趣旨である。もちろん、信頼性が確保できるならば閾値を1としてもよい。
【0061】
走行回数が閾値以下であれば(S105:NO)、S107の処理を経ずにS108へ移行する。つまり走行回数が閾値以下のセグメントに対する学習データ値は結合対象とはしない。走行回数が閾値よりも大きければ(S105:YES)、S106へ移行する。
【0062】
S106では、学習データ値の差が閾値よりも小さいか否か判断する。この閾値は次の観点から定められる。つまり、データベース23bの学習データ値は、低燃費制御部41やACC制御部42における制御用情報として用いられる。そのため、これらの制御内容が要求している精度に基づいて、どの程度の車速変化であれば結合しても問題ないかを考慮して、合目的的に閾値を決めることとなる。例えば閾値=2m/sとか3m/sといった値である。
【0063】
学習データ値の差が閾値以上であれば(S106:NO)、S107の処理を経ずにS108へ移行する。つまり学習データ値の差が閾値以上のセグメントに対する学習データ値は結合対象とはしない。学習データ値の差が閾値よりも小さければ(S106:YES)、S107へ移行し、学習データ値を結合する。S107での学習データ値の結合が済むと、S108へ移行する。
【0064】
S108では、S101で特定した処理対象の最後まで処理が済んだか否か判断する。処理対象の最後まで済んでなければ(S108:NO)、次のセグメントを対象セグメントとして(S109)、S103へ戻る。このようにして、結合処理対象の中の2番目のセグメントに対する学習データ値から順番に、S103以下の処理を実行することとなる。
【0065】
一方、結合処理対象の最後のセグメントまで処理が済んだ場合は(S108:YES)、本結合処理を終了する。この場合、図2に示す処理を終了する。
ここで、図9も参照して具体的な例を用いて説明する。
【0066】
図6に示すデータベース、図7に示すデータベースがそれぞれ作成された場合にも、図2のS90で肯定判断となってS100の結合処理が実行される。しかし、図3のS105での閾値が2であるとすると、走行回数が2以下の場合には結合対象とならない。また、交差点に接続するセグメントに対する学習データ値はS104によって元々結合対象ではないため、結果的には、図6に示すデータベース、図7に示すデータベースがそれぞれ作成された場合には、どのセグメントに対する学習データ値も結合されることはない。
【0067】
これに対して、図8のようなデータベースが作成された場合には、まずセグメント(2)の学習データをチェックすると、交差点に接続するセグメントでもなく(S104:NO)、走行回数(=3)>閾値(=2)であるが(S105:YES)、学習データは10m/sと20m/sなので、閾値=3m/sとするとS106にて否定判断となる。したがって、S107の結合処理は実行されない。
【0068】
次に、セグメント(3)の学習データをチェックすると、交差点に接続するセグメントでもなく(S104:NO)、走行回数(=3)>閾値(=2)であり(S105:YES)、さらに学習データが20m/sと同一なのでS106にて肯定判断となる。したがって、S107の結合処理が実行される。セグメント(4)以降に対する学習データ値については、結果的に結合処理はされない。その結果、最終的には、図9に示すように、セグメント(2)(3)に対応する部分の学習データ値が共通となったデータベースが構築されることとなる。
【0069】
[3.制御用情報を用いた制御の説明]
例えばナビゲーション装置10において案内経路が設定されている場合、安全制御処理部24は、学習部23のデータベース23bから当該案内経路を構成するセグメントに対応する平均車速(制御用情報)を車両制御部41,42へ出力する。
【0070】
例えば低燃費制御部41は、受け取ったセグメント毎の平均車速に基づいてエンジン及び車両駆動モータによる駆動力の制御を行い、効率的な充放電を行う。ハイブリッド車両の場合は、蓄電手段に蓄電された電力を用いてモータを回して走行動力を得るとともに、その一方で、減速時や下り坂等で得られる回生エネルギーを電力に変換し、蓄電手段に電力を蓄えさせている。
【0071】
このような、エンジンの回転エネルギーや、減速時等の回生エネルギーは、走行状況の影響を多大に受けるため、蓄電手段に電力を蓄えさせることができるタイミングや蓄電量も、走行状況の影響を多大に受ける。したがって、走行状況に合わせて効率よく蓄電手段に電力を蓄えさせることが大変重要である。このように走行経路における平均車速は充放電計画を立案する際に有効な情報となり得るため、この平均車速に基づくことで、結果としてエネルギー利用効率の向上につながる。
【0072】
また、ACC制御部42は、受け取った平均車速に基づいて(先行車がいない場合に行う)定速走行制御を行う。例えば左折する場合に自動的に適正速度まで落とす、といった速度制御を行う。
【0073】
このような速度制御をしない場合には運転者が自分の判断でブレーキを踏むなどして減速させる必要があったが、平均車速に基づく定速走行制御を実行することで、より運転者の負担を軽減させることができる。

なお、上述の説明で、車両情報センサ群31から入力される情報は、例えばシフト変化情報、アクセル開度情報、エンジン回転数情報、ブレーキ信号情報、車速情報、燃料噴射量情報などであることを述べた。この内の車速についてのみ説明したが、他の情報も制御用情報になり得る。ただし、用途に応じて使用される情報は異なる。
【0074】
例えば低燃費制御部41では、車速以外には燃料噴射量を制御用情報として用いることができる。一方、ACC制御部42では、車速以外にも、シフト変化、アクセル開度、エンジン回転数、ブレーキ信号を制御用情報として用いることができる。
【0075】
[4.効果]
(1)本実施形態のナビゲーション装置10では、車速をセグメント単位で取得してデータベース23bへ記憶させるのであるが、同じセグメントを複数回走行した場合には、その複数回の平均値(平均車速)を記憶させるようにしている。
【0076】
そしてさらに、所定の条件を満たす場合には(図3のS104:NO,S105:YES)、その隣接セグメントに対応する学習データ値(車速)が所定の閾値よりも小さければ(S106:YES)、データ結合を行う(S107)ようにしている。そのため、データベース23bの情報量が削減される。学習データ値の結合を行う前提条件として、図3のS104,S105を設けた。これは、むしろ結合しない方が妥当な場合があることを鑑みたものである。
【0077】
(2)このデータベース23bに記憶された平均車速は、制御用情報として車両制御部41,42へ出力され、低燃費制御部41による効率的な充放電制御やACC制御部42による効率的な定速走行制御に寄与する。ここで、データベース23bの情報量が、結合しない場合に比べて削減されているので、低燃費制御部41やACC制御部42における制御に際しての処理負荷が軽減される。
【0078】
(3)図2に示すように、学習データ値の記憶に際しては、車速と方位変化に基づいて、車両が当該セグメントにおいて直進したのか、右左折したのか、停止したのかを判定し、その判定結果に基づいて、同じ走行場所の学習データ値であっても、直進・右左折・停止に分類してデータベース23bへ記憶している。そして、複数回の走行による平均車速の記憶処理、及び学習データ値の結合処理を実行する場合、直進・右左折・停止の分類毎に実行している。
【0079】
実際の道路においては、信号機があったり、交差点にて右左折できるようになっている。有用な学習データ値の記憶を維持させるためには、それらを区別した記憶制御を行っている。
【0080】
[5.特許請求の範囲との対応]
本実施形態のナビゲーション装置10では、GPSセンサ11と、方位センサ12と、距離センサ13と、地図データベース14と、制御部20内の自車位置計算部21とが、本発明の走行場所特定出手段に相当する。
【0081】
また、学習部23の中のデータベース23bが情報記憶手段に相当し、そのデータベース23bを除いた学習部23が記憶制御手段に相当する。
また、安全制御処理部24が道路情報通知処理(図13)におけるS402の処理を実行することにより安全制御処理部24が、本発明の情報出力手段に相当する。
【0082】
また、低燃費制御部41及びACC制御部42が、本発明の車両制御手段に相当する。
また、セグメントが、本発明の所定の道路単位に相当する。
[6.他の形態]
(1)上記実施形態では、セグメント単位で制御用情報である車速を記憶するようにしたが、リンク単位で記憶することを排除するものではない。ただし、リンク単位の制御用情報の場合には、結合しにくくなることが想定されるため、セグメント単位の方が好ましいと言える。
【0083】
(2)上記実施形態では、ガソリンエンジンとモータとを動力にするハイブリッド車両に搭載された例を示したが、ガソリンエンジン自動車や電気自動車であっても適用可能である。
【0084】
(3)上記実施形態では、本発明の制御用情報記憶装置の機能が組み込まれたナビゲーション装置10として実現した例について説明したが、これに限定されるものではなく、ナビゲーション装置とは別の装置として構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】実施形態のナビゲーション装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】制御用情報保存・結合処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】結合処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】リンクとセグメントの説明図である。
【図5】学習部23内のデータベース23bの説明図である。
【図6】データベース23bへ学習データ値が保存されていく具体例の説明図である。
【図7】データベース23bへ学習データ値が保存されていく具体例の説明図である。
【図8】データベース23bへ学習データ値が保存されていく具体例の説明図である。
【図9】データベース23bにおいて学習データ値が結合された状態の説明図である。
【図10】セグメント単位での車速データ生成の原理を示す説明図である。
【図11】セグメント単位での車速データ生成の原理を示す説明図である。
【符号の説明】
【0086】
10…ナビゲーション装置、11…GPSセンサ、12…方位センサ、13…距離センサ、14…地図データベース、20…制御部、21…自車位置計算部、23…学習部、23a…記憶部、23b…データベース、24…安全制御処理部、41…低燃費制御部、42…ACC制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行中の場所を、所定の道路単位で特定可能な走行場所特定手段と、
情報記憶手段と、
車両走行時に車両から得られる情報であって、車両の走行制御のために用いられる制御用情報を、前記走行場所特定手段によって特定された所定の道路単位の走行場所に対応して前記情報記憶手段へ記憶させる記憶制御手段と、
を備え、
前記記憶制御手段は、
同じ走行場所における制御用情報を前記情報記憶手段へ記憶させる場合、走行回数に応じた平均値を記憶させると共に、
前記情報記憶手段に記憶されている制御用情報のうち、隣接する走行場所の制御用情報同士が実質的に同一であるとみなせる条件を満たしているか否か判断し、前記条件を満たしている制御用情報については結合し、複数の走行場所に対応して一つの制御用情報のみを記憶させること
を特徴とする制御用情報記憶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御用情報記憶装置において、
前記記憶制御手段は、交差点に接続する走行場所に対応する制御用情報については、前記結合対象から外すこと
を特徴とする制御用情報記憶装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の制御用情報記憶装置において、
前記記憶制御手段は、走行回数が所定回数以下の走行場所に対応する制御用情報については、前記結合対象から外すこと
を特徴とする制御用情報記憶装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の制御用情報記憶装置において、
前記記憶制御手段は、
車速と進行方向に基づいて、走行場所において直進したのか、右左折したのか、停止したのかを判定し、
その判定結果に基づいて、同じ走行場所の制御用情報であっても、前記直進・右左折・停止に分類して前記情報記憶手段へ記憶し、
前記平均値を記憶させる処理、及び制御用情報の結合に関する処理を実行する場合、前記直進・右左折・停止の分類毎に実行すること
を特徴とする制御用情報記憶装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の制御用情報記憶装置において、
前記情報記憶手段によって記憶されている前記制御用情報を、車両制御を行う車両制御手段へ出力する情報出力手段を備えたこと
を特徴とする制御用情報記憶装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の制御用情報記憶装置において、
前記制御用情報は、少なくとも車速を含むことを特徴とする制御用情報記憶装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の制御用情報記憶装置が備える前記記憶制御手段としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−197015(P2008−197015A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33988(P2007−33988)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】