加工品の製造方法
【課題】被加工物に高精度のマスクパターンのマスクを形成すると共に、そのマスクを用いて被加工物を高精度にパターニングする。
【解決手段】塗布剤40の融解開始温度よりも低い温度にされた銅箔60に、ノズル50から溶融した塗布剤40を噴射して塗布すると共にその塗布剤40を凝固させ、銅箔60上にマスクを形成する。そして、凝固した塗布剤40で構成されるマスクのマスクパターンに基づいて銅箔60をエッチングしてパターニングする。この後、マスクである塗布剤40を加熱して溶融させ、銅箔60からマスクである塗布剤40を除去する。
【解決手段】塗布剤40の融解開始温度よりも低い温度にされた銅箔60に、ノズル50から溶融した塗布剤40を噴射して塗布すると共にその塗布剤40を凝固させ、銅箔60上にマスクを形成する。そして、凝固した塗布剤40で構成されるマスクのマスクパターンに基づいて銅箔60をエッチングしてパターニングする。この後、マスクである塗布剤40を加熱して溶融させ、銅箔60からマスクである塗布剤40を除去する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度に応じて融解・凝固する塗布剤で被加工物にマスクを形成し、このマスクのマスクパターンに基づいてパターニングする加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板にインキパターンを形成する方法が例えば特許文献1で提案されている。この特許文献1にも示されるように、一般に露光によって形成したいパターンを形成する方法が実施されている。以下に、一般的な露光の方法によって、プリント基板に配線パターンを形成する方法について説明する。
【0003】
まず、プリント基板上に銅箔が設置されたものを用意し、銅箔上に光感光膜(フォトレジスト膜)を均一に塗布する。この後、露光機で露光することでフォトレジスト膜をパターニングする。具体的に、銅箔のうち不要な部分のフォトレジスト膜を脆くする、もしくは銅箔のうち配線となる部分のフォトレジスト膜を硬化することでフォトレジスト膜をパターニングする。
【0004】
続いて、有機溶剤を用いて、フォトレジスト膜のうち脆い部分もしくは非硬化部分を溶解・分解する。これにより、銅箔のうちエッチングされる部分が露出する。そして、例えば塩化第二鉄溶液にて、フォトレジスト膜が開口した部分の銅箔をエッチングし、フォトレジスト膜を除去することにより、プリント基板上に配線パターンを形成する。
【0005】
以上のような工程により、一層の配線層を有するプリント基板を形成することができる。また、上記工程を繰り返すことによって、積層プリント基板を形成することができる。
【特許文献1】特開平8−34156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術では、露光によってフォトレジスト膜をパターニングした後、有機溶剤にてフォトレジスト膜のうち不要な部分を除去すると、フォトレジスト膜が除去された部分に銅箔上に残されたフォトレジスト膜が有機溶剤によって滲んでしまう(もしくは染み出してしまう)可能性がある。これにより、パターニングによって形成したフォトレジスト膜の線幅が広がってしまい、この状態で銅箔がエッチングされると、フォトレジスト膜から滲んだ(もしくは染み出した)分だけ線幅が広くなった配線が形成されてしまうこととなる。
【0007】
近年では、プリント基板における配線の幅は細くなる傾向にあり、現在では線幅が約50μmになりつつある。今後、線幅はさらに小さくなると予想される。しかしながら、上記のように、フォトレジスト膜をパターニングした際、フォトレジスト膜が滲んで線幅を広げてしまうと、プリント基板上に精度良い線幅の配線を形成することができない。
【0008】
なお、フォトレジスト膜を電子ビームで描画することによりパターニングする方法も実施されているが、有機溶剤で不要なフォトレジスト膜を除去するため、上記と同様に、精度良い線幅の配線を形成することはできない。
【0009】
本発明は、上記点に鑑み、被加工物に高精度のマスクを形成すると共に、そのマスクを用いて被加工物を高精度にパターニングすることができる加工品の製造方法を提供することを第1の目的とする。また、マスクを用いずに、被加工物に所望のパターンを直接描画することができる加工品の製造方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第1の特徴では、塗布剤(40)の融解開始温度よりも低い温度にされた被加工物(10、60、90、95)に、ノズル(50)から溶融した塗布剤を噴射して塗布すると共にその塗布剤を凝固させ、被加工物にマスクパターン状のマスクを形成する。そして、このマスクに基づいて被加工物をパターニングし、この後、マスクを加熱して溶融させて被加工物からマスクを除去する。
【0011】
このような製造方法では、溶融した塗布剤を被加工物に塗布したと同時に凝固させることができるので、塗布剤の滲みや染み出しを防止することができる。すなわち、塗布剤は、溶融して凝固する温度幅が5℃以下になっている。このため、加熱して溶融させた塗布剤は、溶融した塗布剤の温度からわずか5℃低い被加工物上に塗布されることで、塗布されると同時に凝固する。これにより、被加工物に高精度のマスクを形成することができ、このマスクに基づいて精度良く被加工物をパターニングすることができる。
【0012】
本発明の第2の特徴では、被加工物(10、60)の表面に粉末状の塗布剤(40)を敷き、被加工物の表面に敷かれた粉末状の塗布剤のうち、マスクとなる場所のものを局所的に加熱して溶融する。このとき、局所的に加熱する場所を移動していくことで加熱していた場所の塗布剤を凝固してマスクを形成する。そして、被加工物上に残された粉末状の塗布剤を除去し、マスクのマスクパターンに基づいて被加工物をパターニングした後、マスクを加熱して溶融させ、被加工物からマスクを除去する。
【0013】
このような製造方法では、マスクとなる部分の粉末状の塗布剤のみを加熱して溶融・凝固させているので、局所的に加熱された塗布剤の滲みや染み出しを防止することができる。すなわち、局所的に加熱された場所の粉末状の塗布剤が加熱されなくなると同時に凝固する。これにより、被加工物に高精度のマスクを形成することができ、このマスクに基づいて精度良く被加工物をパターニングすることができる。
【0014】
上記製造工程で用いられる塗布剤として、融解開始温度と融解終了温度との温度差が5℃以下のものを用いることができる。小さい温度差で塗布剤を融解・凝固させることが好ましく、温度差は2℃であることが好ましい。
【0015】
上記のような場合、塗布剤にはんだが添加されたはんだ剤を被加工物上にドット状に凝固させ、いわゆるリフローすることにより、被加工物上にはんだバンプ(30)を設けることができる。これにより、被加工物に対して他の電子部品やワイヤ等ではんだを介した電気的接続を行うようにすることができる。
【0016】
また、上記のような場合において、被加工物(10、60)としてプリント基板(10)を用いる場合であって、このプリント基板に貫通孔(11)が設けられている場合、溶融した塗布剤を貫通孔の開口部分に噴射して凝固することにより、貫通孔の開口部分を塞ぐことができるので、貫通孔に異物などを入り込ませないようにすることができる。また、塗布剤は、わずか5℃以下の温度差で融解・凝固するため、蓋部が不要になった場合、温度を加えるだけで蓋部を容易に取り外すことができる。
【0017】
さらに、上記のような場合において、溶融した塗布剤を貫通孔内に噴射して凝固することにより、貫通孔に塗布剤を埋めて貫通孔を塞ぐことができるので、貫通孔に異物を侵入させないようにすることができる。また、加熱するだけで、貫通孔内の凝固した塗布物を容易に取り除くことができる。
【0018】
本発明の第3の特徴では、シート部材(200)に塗布剤(40)が塗布された描画シート(100)を用意し、被加工物(60)と塗布剤とが向き合うように被加工物上に描画シートを設置する。次に、描画シートのうちシート部材のみを除去する。そして、被加工物上の塗布剤のうち、マスクとなる場所のものを局所的に加熱して溶融し、局所的に加熱する場所を移動していくことで加熱していた場所の塗布剤を凝固してマスクパターン状のマスクを形成する。この後、マスクに基づいて被加工物をパターニングし、マスクを加熱して溶融させて被加工物から除去することを特徴としている。
【0019】
これにより、塗布剤のうちマスクとなる部分のみを加熱して溶融・凝固させているので、局所的に加熱された塗布剤の滲みや染み出しを防止することができ、高精度のマスクを形成することができる。これにより、精度良く被加工物をパターニングすることができる。
【0020】
また、本発明の第4の特徴では、シート部材(200)にはんだ材料が含まれた塗布剤(42)が塗布された描画シート(110)を用意し、被加工物(20、60)と上記塗布剤とが向き合うように被加工物上に描画シートを設置する。そして、描画シートのうちシート部材のみを除去する。続いて、塗布剤のうち、はんだバンプ(30)の形成予定場所を局所的に直接加熱して溶融し、被加工物にはんだ材料が含まれた塗布剤を仮固定する。この後、被加工物上の塗布剤を熱処理することで、塗布剤に含まれたはんだ材料を被加工物に固定し、はんだバンプを形成することを特徴としている。
【0021】
このように、はんだ材料が含まれた塗布剤を直接加熱することにより、被加工物上にはんだバンプを直接描画することができる。すなわち、はんだバンプを形成するためのマスクを用いずに、高精度にはんだバンプを形成することができる。
【0022】
この場合、はんだ材料が含まれた塗布剤を仮固定する際には、はんだ材料が含まれた塗布剤のうち局所的に加熱されなかった部分を除去することができる。これにより、被加工物上から不要なものを無くし、加熱処理を行うようにすることができる。
【0023】
さらに、被加工物上にはんだバンプを形成した後、はんだ材料が含まれていない塗布剤(40)がシート部材(200)に塗布された描画シート(100)を用意し、被加工物とはんだ材料が含まれていない塗布剤とが向き合うように被加工物上に描画シートを設置して、描画シートのうちシート部材のみを除去する。そして、塗布剤のうちマスクとなる場所をはんだバンプが包み込まれるように局所的に直接加熱して溶融すると共に、局所的に加熱する場所を移動していくことで加熱していた場所の塗布剤を凝固してマスクパターン状のマスクを形成する。この後、マスクに基づいて被加工物を配線パターンにパターニングし、マスクを加熱して溶融させて被加工物から除去することができる。
【0024】
このように、被加工物上にはんだバンプを形成した後、はんだバンプを包み込むように塗布剤を仮固定して被加工物上にマスクを形成することができ、当該マスクによって被加工物をパターニングすることができる。このような方法により、はんだバンプが形成されたパターン(配線パターン等)を少ない工程数で形成することができる。
【0025】
本発明の第5の特徴では、シート部材(200)にはんだ材料が含まれた塗布剤(42)が塗布された描画シート(110)を用意し、被加工物(20、60)と塗布剤とが向き合うように被加工物上に描画シートを設置する。続いて、シート部材において塗布剤の反対側から、塗布剤のうちはんだバンプの形成予定場所を局所的に直接加熱して溶融し、被加工物にはんだ材料が含まれた塗布剤を仮固定する。そして、塗布剤を熱処理することで、塗布剤に含まれたはんだ材料を被加工物に固定してはんだバンプを形成することが特徴となっている。このような方法によっても、はんだバンプを被加工物上に直接描画することができる。
【0026】
また、本発明の第6の特徴では、上記本発明の第6の特徴において、描画シートのうち、シート部材のみを除去し、はんだバンプを形成することが特徴となっている。このようにシート部材を除去して塗布剤を直接加熱することで、塗布剤を高精度に加熱することができる。
【0027】
このような場合、シート部材を移動させることで、塗布剤のうち加熱されていない部分をはんだバンプの形成予定場所に移動させ、当該はんだバンプの形成予定場所に塗布剤を仮固定することができる。これにより、シート部材に設けられた塗布剤を有効利用することができる。
【0028】
そして、塗布剤を加熱する場合、半導体レーザ(80、82、84、86、88)から照射したレーザ光を集光レンズ(81、83、85、87、89)で塗布剤に集光することにより当該塗布剤を局所的に加熱することができる。
【0029】
この場合、塗布剤の融解開始温度と融解終了温度を、18℃〜100℃の範囲内にすることができる。
【0030】
このような温度範囲を設けることにより、加工したい被加工物の材質等に合わせて被加工物にマスクを形成することができる。このような融解開始温度または融解終了温度の範囲を実現するため、パラフィンもしくはポリエチレングリコールに、例えばアルミナ、カーボン、鉄、SUS、SiC、Si、窒化珪素などの粉末材料を混入することが好ましい。
【0031】
また、塗布剤を、パラフィンもしくはポリエチレングリコールを主成分としたもので構成できる。
【0032】
このように、塗布剤としてパラフィンもしくはポリエチレングリコールを主成分としたものを用いると共に、パラフィンもしくはポリエチレングリコールの純度を上げることにより、融解開始温度と融解終了温度との温度差を小さくすることができ、上記のように5℃以下を実現できる。なお、小さい温度差で融解・凝固を起こさせるようにするため、融解開始温度と融解終了温度との温度差は2℃であることが好ましい。
【0033】
さらに、パラフィンとしては、以下(1)〜(5)に示すノルマルパラフィンと非ノルマルパラフィンとを組み合わせたパラフィンも使用できる。なお、組成割合の%はすべて重量%である。また、パラフィンの融解開始温度と融解終了温度との温度差は後述するように5℃以下であることが好ましいが、さらに小さい温度差であることが好ましい。以下では、その温度差が小さいものについて示す。
【0034】
(1)ノルマルパラフィンの成分合計88.99%、残部非ノルマルパラフィンからなるパラフィン
『ノルマルパラフィンの組成』
炭素数18のノルマルパラフィン:0.08%
炭素数19のノルマルパラフィン:0.41%
炭素数20のノルマルパラフィン:1.76%
炭素数21のノルマルパラフィン:5.61%
炭素数22のノルマルパラフィン:10.66%
炭素数23のノルマルパラフィン:14.76%
炭素数24のノルマルパラフィン:14.50%
炭素数25のノルマルパラフィン:12.42%
炭素数26のノルマルパラフィン:9.08%
炭素数27のノルマルパラフィン:6.58%
炭素数28のノルマルパラフィン:4.04%
炭素数29のノルマルパラフィン:2.88%
炭素数30のノルマルパラフィン:2.09%
炭素数31のノルマルパラフィン:1.50%
炭素数32のノルマルパラフィン:1.02%
炭素数33のノルマルパラフィン:0.72%
炭素数34のノルマルパラフィン:0.37%
炭素数35のノルマルパラフィン:0.24%
炭素数36のノルマルパラフィン:0.14%
炭素数37のノルマルパラフィン:0.08%
炭素数38のノルマルパラフィン:0.05%
以上ノルマルパラフィンの成分合計は88.99%であり、残部が非ノルマルパラフィンである。
【0035】
このような組成(1)からなるパラフィンの平均炭素数は24.74であり、分子量分布の標準偏差は2.86であり、この標準偏差が小さいほどシャープな分子量分布を示す。また、この組成(1)のパラフィンの最大分子量は534、最小分子量は254である。従って、分子量分布幅は280となる。
【0036】
このような組成(1)のパラフィンの融解開始温度:50.4℃、融解終了温度:51.7℃である。従って、融解開始温度と融解終了温度の温度差は1.3℃と僅少値に設定できる。
【0037】
(2)ノルマルパラフィンの成分合計88.64%、残部非ノルマルパラフィンからなるパラフィン
『ノルマルパラフィンの組成』
炭素数18のノルマルパラフィン:0.07%
炭素数19のノルマルパラフィン:0.28%
炭素数20のノルマルパラフィン:1.10%
炭素数21のノルマルパラフィン:3.38%
炭素数22のノルマルパラフィン:6.92%
炭素数23のノルマルパラフィン:10.86%
炭素数24のノルマルパラフィン:12.67%
炭素数25のノルマルパラフィン:12.74%
炭素数26のノルマルパラフィン:11.17%
炭素数27のノルマルパラフィン:9.18%
炭素数28のノルマルパラフィン:6.43%
炭素数29のノルマルパラフィン:4.73%
炭素数30のノルマルパラフィン:3.01%
炭素数31のノルマルパラフィン:2.16%
炭素数32のノルマルパラフィン:1.42%
炭素数33のノルマルパラフィン:0.98%
炭素数34のノルマルパラフィン:0.55%
炭素数35のノルマルパラフィン:0.36%
炭素数36のノルマルパラフィン:0.22%
炭素数37のノルマルパラフィン:0.15%
炭素数38のノルマルパラフィン:0.11%
炭素数39のノルマルパラフィン:0.09%
炭素数40のノルマルパラフィン:0.06%
以上ノルマルパラフィン成分合計は88.64%、残部が非ノルマルパラフィンである。
【0038】
このような組成(2)からなるパラフィンの平均炭素数は25.61、分子量分布の標準偏差は3.05、最大分子量は562、最小分子量は254である。従って、分子量分布幅366となる。この組成(2)のパラフィンの融解開始温度:52.5℃、融解終了温度:53.7℃である。従って、融解開始温度と融解終了温度の温度差は1.2℃と僅少値に設定できる。
【0039】
(3)ノルマルパラフィンの成分合計89.57%、残部非ノルマルパラフィンからなるパラフィン
『ノルマルパラフィンの組成』
炭素数19のノルマルパラフィン:0.09%
炭素数20のノルマルパラフィン:0.34%
炭素数21のノルマルパラフィン:1.31%
炭素数22のノルマルパラフィン:3.50%
炭素数23のノルマルパラフィン:7.09%
炭素数24のノルマルパラフィン:10.36%
炭素数25のノルマルパラフィン:12.57%
炭素数26のノルマルパラフィン:12.68%
炭素数27のノルマルパラフィン:11.75%
炭素数28のノルマルパラフィン:8.80%
炭素数29のノルマルパラフィン:6.99%
炭素数30のノルマルパラフィン:4.74%
炭素数31のノルマルパラフィン:3.41%
炭素数32のノルマルパラフィン:2.42%
炭素数33のノルマルパラフィン:1.70%
炭素数34のノルマルパラフィン:0.93%
炭素数35のノルマルパラフィン:0.54%
炭素数36のノルマルパラフィン:0.25%
炭素数37のノルマルパラフィン:0.10%
以上ノルマルパラフィンの成分合計は89.57%、残部が非ノルマルパラフィンである。
【0040】
このような組成(3)からなるパラフィンの平均炭素数は26.56、分子量分布の標準偏差は2.94、最大分子量は520、最小分子量は268である。従って、分子量分布幅は252となる。この組成(3)のパラフィンの融解開始温度:54.6℃、融解終了温度:55.6 ℃である。従って、融解開始温度と融解終了温度の温度差は1.0℃と僅少値に設定できる。
【0041】
(4)ノルマルパラフィンの成分合計71.11%、残部非ノルマルパラフィンからなるパラフィン
『ノルマルパラフィンの組成』
炭素数23のノルマルパラフィン:0.08%
炭素数24のノルマルパラフィン:0.16%
炭素数25のノルマルパラフィン:0.39%
炭素数26のノルマルパラフィン:0.87%
炭素数27のノルマルパラフィン:1.52%
炭素数28のノルマルパラフィン:1.99%
炭素数29のノルマルパラフィン:2.68%
炭素数30のノルマルパラフィン:3.14%
炭素数31のノルマルパラフィン:3.71%
炭素数32のノルマルパラフィン:3.94%
炭素数33のノルマルパラフィン:4.07%
炭素数34のノルマルパラフィン:4.37%
炭素数35のノルマルパラフィン:4.94%
炭素数36のノルマルパラフィン:5.49%
炭素数37のノルマルパラフィン:6.00%
炭素数38のノルマルパラフィン:5.44%
炭素数39のノルマルパラフィン:4.50%
炭素数40のノルマルパラフィン:3.71%
炭素数41のノルマルパラフィン:3.01%
炭素数42のノルマルパラフィン:2.53%
炭素数43のノルマルパラフィン:1.94%
炭素数44のノルマルパラフィン:1.55%
炭素数45のノルマルパラフィン:1.06%
炭素数46のノルマルパラフィン:0.84%
炭素数47のノルマルパラフィン:0.58%
炭素数48のノルマルパラフィン:0.45%
炭素数49のノルマルパラフィン:0.33%
炭素数50のノルマルパラフィン:0.32%
炭素数51のノルマルパラフィン:0.26%
炭素数52のノルマルパラフィン:0.21%
炭素数53のノルマルパラフィン:0.19%
炭素数54のノルマルパラフィン:0.17%
炭素数55のノルマルパラフィン:0.15%
炭素数56のノルマルパラフィン:0.13%
炭素数57のノルマルパラフィン:0.11%
炭素数58のノルマルパラフィン:0.09%
炭素数59のノルマルパラフィン:0.08%
炭素数60のノルマルパラフィン:0.06%
炭素数61のノルマルパラフィン:0.05%
以上ノルマルパラフィンの成分合計は71.11%であり、残部が非ノルマルパラフィンである。
【0042】
このような組成(4)からなるパラフィンの平均炭素数は36.34、分子量分布の標準偏差は5.70、最大分子量は856、最小分子量は324である。従って、分子量分布幅は532となる。この組成(4)のパラフィンの融解開始温度:72.1℃、融解終了温度:73.4℃である。従って、融解開始温度と融解終了温度の温度差は1.3℃と僅少値に設定できる。
【0043】
(5)ノルマルパラフィンの成分合計75.78%、残部非ノルマルパラフィンからなるパラフィン
『ノルマルパラフィンの組成』
炭素数29のノルマルパラフィン:0.08%
炭素数30のノルマルパラフィン:0.23%
炭素数31のノルマルパラフィン:0.69%
炭素数32のノルマルパラフィン:1.36%
炭素数33のノルマルパラフィン:1.77%
炭素数34のノルマルパラフィン:2.02%
炭素数35のノルマルパラフィン:2.21%
炭素数36のノルマルパラフィン:2.41%
炭素数37のノルマルパラフィン:3.02%
炭素数38のノルマルパラフィン:3.58%
炭素数39のノルマルパラフィン:3.52%
炭素数40のノルマルパラフィン:3.94%
炭素数41のノルマルパラフィン:4.13%
炭素数42のノルマルパラフィン:5.15%
炭素数43のノルマルパラフィン:4.95%
炭素数44のノルマルパラフィン:5.54%
炭素数45のノルマルパラフィン:4.55%
炭素数46のノルマルパラフィン:4.71%
炭素数47のノルマルパラフィン:3.53%
炭素数48のノルマルパラフィン:3.08%
炭素数49のノルマルパラフィン:2.38%
炭素数50のノルマルパラフィン:2.16%
炭素数51のノルマルパラフィン:1.68%
炭素数52のノルマルパラフィン:1.35%
炭素数53のノルマルパラフィン:1.21%
炭素数54のノルマルパラフィン:1.00%
炭素数55のノルマルパラフィン:0.85%
炭素数56のノルマルパラフィン:0.80%
炭素数57のノルマルパラフィン:0.63%
炭素数58のノルマルパラフィン:0.59%
炭素数59のノルマルパラフィン:0.49%
炭素数60のノルマルパラフィン:0.41%
炭素数61のノルマルパラフィン:0.34%
炭素数62のノルマルパラフィン:0.38%
炭素数63のノルマルパラフィン:0.36%
炭素数64のノルマルパラフィン:0.30%
炭素数65のノルマルパラフィン:0.23%
炭素数66のノルマルパラフィン:0.15%
以上ノルマルパラフィンの成分合計は75.78%であり、残部が非ノルマルパラフィンである。
【0044】
このような組成(5)からなるパラフィンの平均炭素数は43.69、分子量分布の標準偏差は6.81、最大分子量は926、最小分子量は408である。従って、分子量分布幅は518となる。この組成(5)のパラフィンの融解開始温度:86.2℃、 融解終了温度:87.9℃である。従って、融解開始温度と融解終了温度の温度差は1.7℃と僅少値に設定できる。
【0045】
また、ポリエチレングリコールとしては次のようなものを使用できる。例えば、平均分子量:1540のポリエチレングリコールは、融解開始温度:46℃、融解終了温度:47.2℃である。したがって、この融解開始温度と融解終了温度の温度差は1.2℃という僅少値に設定できる。
【0046】
また、平均分子量4000のポリエチレングリコールは、その分子量の最大値は5464、最小値は1689、数平均分子量Mn:2866、重量平均分子量Mw:2935、Z平均分子量Mz:3004、分子量分布分散度(1に近いほどシャープな分布を示す)Mw/Mn:1.0238、Mz/Mw:1.0237である。この平均分子量4000のポリエチレングリコールの融解開始温度:55.1℃、融解終了温度:56.4℃である。したがって、融解開始温度と融解終了温度の温度差は1.3℃という僅少値に設定できる。
【0047】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0049】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。
【0050】
図1は、本発明に係る製造方法によって形成されたプリント基板の断面図である。この図に示されるように、プリント基板10上に配線20が形成されており、この配線20上にはんだバンプ30が設けられている。本実施形態では、プリント基板10のサイズは例えば300mm×300mm(大きなものでは、1000mm×1000mmのものもある)である。また、配線20は、例えば銅箔で形成されたものであり、配線20の幅は例えば30μm〜50μm、厚さは例えば数μmである。さらに、はんだバンプ30は、プリント基板10に搭載される電子部品、外部と接続するためのワイヤやリード等と配線とを電気的に接続するために用いられるものである。
【0051】
次に、図1に示される配線20を有するプリント基板10の製造方法について、図を参照して説明する。図2は、印刷装置を用いて印刷する方法によって上記配線20のパターンを形成する製造工程を示した図である。
【0052】
本実施形態では、印刷装置を用いた方法によって配線パターンを形成するため、まず、印刷装置について説明する。本実施形態に係る印刷装置は、プリント基板10上に溶融した塗布剤40を噴射するノズル50と、ノズル50の周辺を冷たいエア等で冷却する冷却エア吹き出し口55と、ノズル50を駆動する図示しない駆動装置と、駆動装置にノズル50を駆動するデータを出力する図示しない制御装置と、を備えて構成されている。なお、図2において、図2(a)のみにノズル50の概略断面図を示してある。
【0053】
上記印刷装置では、塗布剤40としてパラフィンを主成分とするものを用いる。この塗布剤40の融解開始温度(融点)は例えば53℃であり、融解終了温度は55℃〜58℃である。すなわち、塗布剤40は、温度幅が2℃〜5℃で溶融または凝固の状態変化が完了するものになっている。このため、塗布剤40の温度をわずか2〜5℃変化させるだけで塗布剤40を容易に融解・凝固させることができる。なお、わずかな温度差で塗布剤40を融解・凝固するようにするため、塗布剤40の溶融開始温度と溶融終了温度との温度差は2℃であることが好ましい。また、パラフィンを主成分とするものとは、パラフィン単体のものも含んでいる。
【0054】
塗布剤40においては、パラフィンにアルミナ、カーボン、鉄、SUS、SiC、Si、窒化珪素などの粉末材料を混入することもできる。また、塗布剤40の融点を例えば18〜100℃の範囲で設定することができる。このようにパラフィンに添加する材料は、パターニングの対象となるものの材質に応じて設定することができる。
【0055】
例えば、(1)パラフィン材料100重量%、(2)パラフィンの含有量が40〜90重量%、はんだ材料粉末の(粒子径:ナノ粒子〜数mm)10〜60重量%、更に、松ヤニが0〜20重量%、)、(3)パラフィンの含有量が40〜100重量%でアルミナ(粒子径:ナノ粒子〜数mm)の粉末の含有量が0〜60重量%のもの、(4)パラフィンの含有量が40〜100重量%、SiC(粒子径:ナノ粒子〜数mm)の粉末の含有量が0〜60重量%のもの、(5)パラフィンの含有量が0〜100重量%、銅(粒子径:ナノ粒子〜数mm)の粉末の含有量が0〜60重量%のもの、(6)パラフィンの含有量が40〜100重量%、ガラス(粒子径:ナノ粒子〜数mm)の粉末の含有量が0〜60重量%のものなどがある。また、(7)パラフィンの含有量が40〜100重量%、カーボン・グラファイト(粒子径:ナノ粒子〜数mm)の粉末の含有量が0〜60重量%のもの、(8)パラフィンの含有量が0〜95重量%のものでシルク印刷材料の含有量が5〜100%のもの、(9)パラフィンの含有量が0〜95重量%のものでグリーンマスク印刷材料の含有量が5〜100%のもの等を使うことができる。
【0056】
上記パラフィン材料はCnHmの分子式(n、mは任意の整数)で記述され、nが小さくなると融解温度が低くなり、nが大きくなると融解温度が高くなる。したがって、nが大きいものや小さいものが混ざると、融解温度に幅ができてしまう。そこで、上記のように融解温度の幅が2℃〜5℃になるようにするため、パラフィンの純度を向上させる。具体的に、パラフィンの分子量分布幅が狭いほどパラフィンの純度は高くなる。すなわち、例えば室温付近で2℃の温度差で融解したい場合、分子量分布幅が約50〜3000のものを用いる。また、50℃付近で融解するパラフィン材料においては、分子量分布幅が100〜10000のものを用いる。さらに、90℃付近で融解するパラフィン材料においては、分子量分布幅が500〜100000の幅のものが好ましい。
【0057】
分子量分布幅を狭める方法は、パラフィン材料の精製による。したがって、精製を精度良く行うと、分子量分布幅は小さくなる。そして、分子量分布幅が狭いと純度が高くなると共に、融解温度の幅が小さくなり、狭い温度範囲で融解・凝固を起こすことができるのである。また、この材料は、融解・凝固を何度も繰り返しても使えるので、ノズル50のつまりなどを心配することがなくなる。作業の途中で中断しても、材料(塗布剤40)の加熱ができれば、品質が安定したものを作ることができる。
【0058】
このような塗布剤40が溶融した際の粘度は、例えば1mPa・s(ミリパスカル秒)〜3mPa・sである。この粘度は、水とほぼ同じ粘度であり、溶融した塗布剤40の流れ性は著しく良好であると言える。以上のような特性を有する塗布剤40として、カタメルチャック(商品名、登録商標、Thermofix、米国登録商標)を用いることができる。
【0059】
上記のような塗布剤40を噴射するノズル50は、セラミック材料(例えばアルミナの焼結品)で構成され、ノズル50のノズル穴50aの口径(噴射口の径)は約30μm〜50μmになっている。本実施形態では、ノズル50の口径が配線20の線幅と同じになるように設計されている。さらに、このノズル50は、上記塗布剤40を溶融する温度に設定されている。すなわち、ノズル50からは、溶融した塗布剤40が噴射される。なお、例えば53℃で溶融を開始し、55℃で融解が完全に完了する塗布剤40を用いる場合、ノズル50およびその周辺は例えば56℃〜58℃(最大でも融点より+20℃〜+73℃以内に保つ)に加熱されていることが好ましい。
【0060】
このノズル50の内部(より詳しくはノズル穴50aの周囲)には、ノズル50を加熱するヒータ50bが備えられている。そして、ノズル50はこのヒータ50bによって塗布剤40の融点よりも約10〜20℃高い温度で一定に加熱されるようになっている。
【0061】
駆動装置は、ノズル50からの塗布剤50の供給(例えばエア圧力や加熱ポンプでの加圧でノズル50から押し出す)、ノズル50の移動や塗布剤40の噴射を行うものであり、例えば噴射タイミングはPZT(ピエゾ)(電磁弁も用いることができる)を用いてノズル50を駆動する。このような駆動装置は、例えば数十ナノ秒〜数千ナノ秒でノズル50を駆動する能力を有しており、制御装置から入力されるデータに基づいてノズル50を駆動する。すなわち、直線を描画する場合、駆動装置はPZT(または電磁弁)を開放状態として描画し、点を描画する場合、駆動装置は必要なときのみPZTを開放して描画するようにノズル50を駆動する。
【0062】
制御装置は、CPU、ROM、RAM、ハードディスク等からなる周知のパーソナルコンピュータで構成されるものである。この制御装置には、配線パターンのデータやはんだバンプ30を形成する位置等のデータと共に、プリント基板10上に配線パターンを描画する配線パターン描画プログラムや、配線20上にはんだバンプ30を描画するはんだバンプ描画プログラムが記憶されている。さらに、制御装置には、プリント基板10に設けられた貫通孔11(図3参照)の開口部を塞ぐ閉塞描画プログラムも記憶されている。
【0063】
この場合、駆動装置は微細な線・点を描画できる図示しない微細ノズルと、面を描画できる幅が広い図示しないノズルと、貫通孔11を塞ぐ高粘度の塗布剤40(パラフィンに添加材を混合した材料であり、後述するはんだ剤70に相当)を供給する図示しないノズルと、を併用している。このような多種類のノズルの動きは、制御装置にて、微細な線・点、広い面など、幅広い異種類形状に応じて同時駆動され、お互いが補間され、協力的に作動され、論理的に素早く完成する様にプログラムされる。
【0064】
また、他種類のノズルからは、従来のグリーンの絶縁材料も、また、製品の名称を示す、印刷(一般的なシルク印刷)も同時駆動にて、作動させることができる。
【0065】
よって、従来は、グリーンマスク工程、シルク印刷工程など、多工程に亘って、それぞれが独立した工程であったものを、これらの工程の多くの部分を同時に並行的に行うことが可能になるので、大幅な工程の短縮が可能になる。なお、グリーンマスク工程、シルク印刷工程等は塗布される材料の変化があり、材料の寿命管理は注意を要する。
【0066】
以上が、印刷装置の構成である。このような印刷装置を用いて、プリント基板10上に塗布剤40で構成される配線パターン(すなわちマスクパターン)やはんだバンプ30や、ビアの孔部の開放部を塞ぐ、あるいは、孔全体を埋める機能で描画する。
【0067】
図2(a)に示す工程では、プリント基板10上に銅箔60が貼り付けられたものを用意し、印刷装置に設置する。なお、これらプリント基板10や銅箔60は、本発明の被加工物に相当するものである。
【0068】
そして、制御装置において配線パターン描画プログラムを実行することにより、駆動装置にてノズル50を駆動し、銅箔60上に例えば数μmの厚さの塗布剤40(例えばパラフィン材料100重量%)を噴射して配線パターンを描画する。
【0069】
このように、ノズル50にて塗布剤40を銅箔60上に塗布して配線パターンを描画する際、ノズル50からは溶融した塗布剤40を噴射する。また、銅箔60の温度を、塗布剤40の融点よりも例えば1℃〜5℃低い48℃〜52℃にしておく。
【0070】
そして、塗布剤40は、わずか2℃〜5℃の温度差で融解・凝固がシャープに変化するため、ノズル50から約55℃〜56℃の温度の塗布剤40を銅箔60上に噴射すると、銅箔60の熱伝導効果で、溶融した塗布剤40は瞬時に融点以下になって凝固する。すなわち、ノズル50にて描画される塗布剤40のパターンがそのまま配線パターン(マスクパターン)となる。このように、溶融した塗布剤40が銅箔60に塗布されたと同時に凝固するため、銅箔60上に塗布された塗布剤40の滲みや染み出しが起こらず、ノズル50の口径とほぼ同じ幅の配線パターンを描画することができる。さらに、ノズル50の周囲に設置した冷却エア吹き出し口55から冷却したエアを噴出して、冷却を早めることができ、滲みなどを防止することもできるのでシャープなエッジを形成することができる。
【0071】
上述のように、ノズル50の噴射口の径は30μm〜50μmであるので、この径に対して例えば±5μmの精度で塗布剤40を塗布することができる。なお、パラフィン材料は、銅箔60との密着性がきわめて良好であるので、塗布剤40が凝固すると銅箔60に強固に固定される。
【0072】
このように、ノズル50から溶融した塗布剤40を噴射すると共に、ノズル50を配線パターンの通りに駆動することで、銅箔60上に塗布剤40の配線パターンを形成する。そして、この塗布剤40の配線パターンが銅箔60に対するマスクとなるのである。
【0073】
なお、例えば300mm×300mmのサイズのプリント基板10に配線パターンを描画する場合、50μmのドットとして塗布剤40を塗布すると、ノズル50の駆動回数は約100万回〜500万回になる。ノズル50の移動時間や塗布時間を含め、配線パターンにもよるが、例えば約1時間で配線パターンを描画することができる。
【0074】
続いて、図2(b)に示す工程では、銅箔60をエッチングし、銅箔60のうち不要な部分を除去する。具体的には、塩化第二鉄の溶液に図2(a)に示されるプリント基板10を浸す。これにより、銅箔60のうち、塗布剤40が塗布されていない部分を塩化第二鉄によって溶解する。
【0075】
なお、パラフィン材料は、銅箔60をエッチングする塩化第二鉄の溶液に対し、耐酸化性が著しく良好である。したがって、塗布剤40に数μmの膜厚さがあれば、十分な耐酸化性を有する。
【0076】
図2(c)に示す工程では、銅箔60上の塗布剤40を除去する。具体的には、塗布剤40は温度によって融解・凝固が起こるので、塗布剤40の溶融終了温度(55℃〜58℃)よりも高い温度のお湯をプリント基板10に注ぐことにより、銅箔60上の塗布剤40を剥離することができる。こうして、銅箔60を配線パターンにパターニングすることができる。
【0077】
なお、お湯の中にプリント基板10を浸漬させても良い。この場合、お湯の中に界面活性剤を導入しておくと塗布剤40を水溶液中に溶解することができる。塗布剤40の比重(例えば0.8〜0.9)は水よりも小さいため、塗布剤40が温水に浮くので、プリント基板10を容易に洗浄することができる。より洗浄効果を促進する方法として、超音波洗浄や超微細気泡洗浄の他、上記のように洗浄剤を導入する方法等がある。また、お湯の中に分散剤を入れると、パラフィンを液中に分散させることができるが、お湯の中に分散剤を入れないと、お湯が融解温度以下になったとき、塗布剤40がお湯の液面に浮遊して固化し、膜を張る(再付着がおきる)ので注意を要する。
【0078】
上記のようにしてプリント基板10から剥離した塗布剤40を回収し、リサイクルまたはリユースすることにより、塗布剤40を何度でも利用することができる。
【0079】
図2(d)に示す工程では、はんだバンプ30を形成する。本工程では、はんだバンプ30を形成するためのはんだ剤70を用いる。このはんだ剤70は、パラフィン、粒子状(サブミクロン〜数十μm)のはんだ、そして松ヤニが混合したものであり、ボリューム比は、例えばパラフィンが30%〜40%、はんだが60%〜70%である。そして、このボリューム比でパラフィンおよびはんだが混合されたものに松ヤニが含まれた構成となっている。このようなはんだ剤70は、塗布剤40よりも高い粘度になっている。
【0080】
また、本工程では、配線パターンを形成したノズル50の口径よりも小さい口径を有するノズル51を用いる。これは、配線20上に噴射したはんだ剤70が配線20から流れ落ちてしまうことを防止するためである。したがって、ノズル51の噴射口の径は配線20の幅よりも小さくされたものを用いる。このようなノズル51の噴射口の径は、例えば20μmである。
【0081】
そして、制御装置においてはんだバンプ描画プログラムを実行することにより、駆動装置にてノズル51を駆動し、配線20上に例えばサイズが20μmのドット状のはんだ剤70(パラフィンの含有量が40〜90重量%、はんだ材料粉末(粒子径:ナノ粒子〜数mm)の含有量が10〜60重量%、更に、松ヤニが0〜20重量%)を塗布する。
【0082】
また、同時にパラフィンの含有量が0〜95重量%のものでシルク印刷材料の含有量が5〜100重量%のもの、パラフィンの含有量が0〜95重量%のものでグリーンマスク印刷材料の含有量が5〜100重量%のものも塗布することができる。
【0083】
すなわち、図2(a)に示す工程と同様に、ノズル51をはんだ剤70の融点以上に加熱しておき、プリント基板10をはんだ剤70の融点以下の温度にしておく。このような状態でノズル51から溶融したはんだ剤70を、はんだバンプ30を形成したい配線20上に噴射すると、溶融したはんだ剤70が瞬時に融点以下になり、ドット状に凝固する。
【0084】
この後、プリント基板10を加熱してリフロー工程を行う。具体的に、配線20上に凝固したドット状のはんだ剤70において、パラフィンおよび松ヤニを溶融したり、気化したり、洗浄にて流し落とし、配線20上にはんだのみを残すことにより、ドット状のはんだバンプ30を形成する。このようにして、図1に示すプリント基板10が完成する。
【0085】
さらにこの後、図1に示されるプリント基板10に設けられた図示しない貫通穴を塗布剤40(例えば、パラフィンの含有量が40〜100重量%でアルミナ(粒子径:ナノ粒子〜数mm)の粉末の含有量が0〜60重量%のものや、パラフィンの含有量が40〜100重量%、ガラス(粒子径:ナノ粒子〜数mm)の粉末の含有量が0〜60重量%のものなど)で塞ぐ。具体的に、図3に示す工程を参照して説明する。図3は、図2に続く製造工程を示した図である。
【0086】
図3に示す工程では、プリント基板10に設けられた貫通孔11を塗布剤40で塞ぐ。すなわち、プリント基板10に配線20を形成した後、例えばグリーンシート加工を行うような場合、プリント基板10の貫通孔11に異物等が入り込んでしまうことを防止するために貫通孔11の開口部を塞ぐのである。
【0087】
そして、制御装置において閉塞描画プログラムを実行することにより、駆動装置にてノズル52を駆動し、貫通孔11の開口部上に塗布剤40を塗布する。すなわち、図2(a)に示す工程と同様に、ノズル52から溶融した塗布剤40を貫通孔11の開口部に噴射し、貫通孔11の開口部付近を融点以下の温度にしておくことで塗布剤40を凝固する。これにより、図3に示される蓋部41を形成する。
【0088】
また、パラフィンの含有量が0〜100重量%、銅(粒子径:ナノ粒子〜数mm)の粉末の含有量が0〜60重量%のものを用い、貫通孔11を全部埋め、導電性を持たせることも可能である。
【0089】
なお、本工程では、貫通孔11の開口部に溶融した塗布剤40(例えば、パラフィンの含有量が40〜100重量%でアルミナ(粒子径:ナノ粒子〜数mm)の粉末の含有量が0〜60重量%のものや、パラフィンの含有量が40〜100重量%、ガラス(粒子径:ナノ粒子〜数mm)の粉末の含有量が0〜60重量%のものなど)を噴射するため、配線パターンを形成する際の塗布剤40の粘度よりも大きい粘度のものを用いることが好ましい。また、本工程で用いるノズル52は、配線パターンを描画したものを用いても良いし、新たに用意しても構わない。すなわち、プリント基板10に設けられた貫通孔11のサイズに適した噴射口を有するノズルを用いるようにすれば良い。
【0090】
上記のようにして形成した蓋部41が不要になった場合は、プリント基板10に蓋部41の融点以上の温度のお湯を注ぐだけで、蓋部41を溶融して剥離することができる。
【0091】
以上、説明したように、本実施形態では、溶融した塗布剤40を銅箔60に塗布したと同時に凝固させることができるので、塗布剤40の滲みや染み出しを防止することができる。すなわち、塗布剤40は、溶融して凝固する温度幅が2℃〜5℃になっているので、銅箔60の温度を溶融した塗布剤の温度からわずか2〜5℃低くしておくことで、塗布剤40を素早く凝固することができる。これにより、銅箔60上に高精度のマスクを形成することができ、このマスクのマスクパターンに基づいて精度良く被加工物をパターニングすることができる。
【0092】
また、従来のように有機溶剤を用いないため、有機溶剤の廃棄等の煩雑な工程や、有機溶剤を用いる工程を削減できる。同様に、マスク材を用いてフォトレジストを露光することはないため、露光装置やそれを用いた工程を削減できる。
【0093】
本実施形態では、配線20上にはんだバンプ30を形成している。従来では印刷によってはんだを印刷していたため位置ずれが起こっていた。しかしながら、本実施形態では、制御装置および駆動装置にてはんだバンプ30を形成する場所にノズル51を移動させることができる。このため、配線20上に正確にはんだバンプ30を形成することができる。このようなはんだバンプ30によって、配線20に対して他の電子部品やワイヤ等との電気的接続を行うようにすることができる。
【0094】
さらに、塗布剤40がわずかな温度で凝固する性質を用いることで、プリント基板10に設けられた貫通孔11の開口部に蓋部41を形成することや、貫通孔11の内部に塗布剤40を凝固させて貫通孔11を埋めるようにすることもできる。これにより、貫通孔に異物などを入り込ませないようにすることができる。塗布剤40は、わずか2℃〜5℃の温度差で融解・凝固するため、蓋部41等が不要になった場合、温度を加えるだけで容易に除去できる。
【0095】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態では、溶融した塗布剤40(例えば、パラフィン材料100重量%の箔形状または微粉末であり、粒子径はナノ粒子〜数mm)を銅箔60上に配線パターンとして塗布するのではなく、粉末状の塗布剤40を銅箔60上で局所的に加熱して融解・凝固させることで配線パターンのマスクを形成することが特徴である。
【0096】
図4は、本発明の第2実施形態に係る製造方法によって銅箔60上に塗布剤40の配線パターンを描画する製造工程を示した図である。本実施形態では、レーザ光を用いた方法によって配線パターンを形成するため、まず、レーザ光照射装置について説明する。このレーザ光照射装置は、レーザ光を照射する半導体レーザ80と、半導体レーザ80から照射されるレーザ光を集光する集光レンズ81と、半導体レーザ80を駆動する図示しない駆動装置と、駆動装置に半導体レーザ80を駆動するデータを出力する図示しない制御装置と、を備えて構成されている。
【0097】
上記半導体レーザ80からは、一定周期のパルスレーザ光が照射される。また、レーザ光は集光レンズ81にて例えば30μm〜50μmのスポットに集光されるようになっている。すなわち、レーザ光の集光スポットが銅箔60にて形成される配線20の線幅に相当する。
【0098】
駆動装置や制御装置は、第1実施形態と同じ構成のものが採用される。本実施形態では、駆動装置は、半導体レーザ80の移動やレーザ光照射を駆動するものとして用いられる。また、制御装置には、配線パターンのデータやこのデータを用いた配線パターン描画プログラムが記憶されている。
【0099】
以上が、レーザ光照射装置の構成である。このようなレーザ光照射装置を用いて、プリント基板10上に塗布剤40で構成される配線パターンのマスクを形成する。
【0100】
すなわち、図4(a)に示す工程では、プリント基板10上に銅箔60が貼り付けられたものを用意し、レーザ光照射装置に設置する。そして、銅箔60上に粉末状の塗布剤40を均一に分布させる。
【0101】
本実施形態では、塗布剤40として第1実施形態と同じ特性のものを用いるが、本工程においては塗布剤40が固化して粉末状になったものを用いる。このような粉末状の塗布剤40のサイズは、例えば数μm〜10μmであり、この粉末状の塗布剤40を例えば50μm〜100μmの厚さで銅箔60上に均一に敷き詰める。なお、粉末状の塗布剤40を均一に敷き詰める際、ヘラやスキージを用いると良い。また、粉末状の塗布剤40は、パラフィンが凝固して固化したものであり、粉末状の塗布剤40に粘着性はない。したがって、塗布剤40が銅箔60上に敷き詰められても、塗布剤40が銅箔60に密着することはない。
【0102】
この後の工程で、粉末状の塗布剤40をレーザ光の熱によって融解するため、粉末状の塗布剤40としてパラフィンにレーザ光を吸収しやすいカーボン材料(数重量%〜50重量%)を添加したものを用いると良い。これにより、半導体レーザ80の加熱効率を向上でき、粉末状の塗布剤40を均一に、かつ、素早く融解することができる。
【0103】
なお、粉末状の塗布剤40としてパラフィンに絶縁性のアルミナ粒子(数重量%〜50重量%)を添加したものを用いても良い。このような塗布剤40を用いても、レーザの加熱効率を向上させ、粉末状の塗布剤40を均一に融解させることができる。
【0104】
また、パラフィンの含有量が40〜90重量%、はんだ材料粉末(粒子径:ナノ粒子〜数mm)の含有量が10〜60重量%、さらに松ヤニが0〜20重量%、の粉末をプリント基板10上にへらなどで敷き詰める。はんだを溶解させたい部分にレーザ光を照射し、粉末状の塗布剤40を溶融する。その他の部分は粉末のままであるので、簡単に取り除くことができる。この様にすると、プリント基板10上にはんだ接合部を簡単に作成することができる。
【0105】
そして、図4(b)に示す工程では、銅箔60のうち配線20となる部分の塗布剤40を溶融する。具体的に、制御装置にて配線パターン描画プログラムを実行することにより、駆動装置で半導体レーザ80を駆動し、銅箔60上にレーザ光を照射して粉末状の塗布剤40を加熱する。これにより、レーザ光が集光レンズ81で集光されたスポット径で粉末状の塗布剤40が融点以上に加熱されて融解する。レーザ光源の集光レンズ81の集光精度は高く、スポット径が30μm〜50μmの狙いに対し約±5μmの精度でレーザ光を照射することができる。
【0106】
上記のようにして、レーザ光によって粉末状の塗布剤40を融解した後、駆動装置によって半導体レーザ80を配線パターンに合わせて移動させる。これにより、レーザ光が照射されなくなった塗布剤40の温度は融点以下に下がり、塗布剤40は凝固する。すなわち、半導体レーザ80でレーザ光を照射しつつ、半導体レーザ80を移動させることで、銅箔60上のうちレーザ光を照射した部分の粉末状の塗布剤40を次々と溶融・凝固して配線パターンを描画することができる。
【0107】
なお、上記駆動装置にて銅箔60上で半導体レーザ80を移動させているが、半導体レーザ80を一カ所に固定しておき、半導体レーザ80から照射されるレーザ光を例えば反射ミラーで銅箔60上に走査させるようにしても構わない。これにより、反射ミラーの角度(姿勢)を変えるだけでよいので、配線パターンの描画時間を短縮できる。また、反射ミラーとプリント基板10との動きを同期させれば、さらに描画時間を短縮できる。
【0108】
図4(c)に示す工程では、図4(b)の工程で溶融されなかった粉末状の塗布剤40を銅箔60上から取り除く。粉末状の塗布剤40は銅箔60に密着していないので、プリント基板10を裏返したり風をかけたりすること等によって、銅箔60上から粉末状の塗布剤40を除去することができる。これにより、図4(c)に示されるように、銅箔60上に塗布剤40によって構成される配線パターンのマスクを形成することができる。
【0109】
この後、図2(b)、(c)に示す工程を行うことで、プリント基板10上に配線20を形成する。また、図2(d)に示す工程を行うことで、配線20上にはんだバンプ30を形成する。こうして、図1に示されるプリント基板10が完成する。さらに、図3に示す工程を行うことで、プリント基板10に設けられた貫通孔11の開口部を塞ぐことができる。
【0110】
以上、説明したように、本実施形態では、銅箔60上に敷かれた粉末状の塗布剤40のうち、マスクとなる部分の塗布剤40のみをレーザ光で加熱して溶融・凝固させている。すなわち、局所的に加熱された場所の粉末状の塗布剤40が加熱されなくなると同時に凝固する。これにより、局所的に加熱された塗布剤40の滲みや染み出しを防止することができ、銅箔60上に高精度のマスクパターンのマスクを形成することができる。
【0111】
また、本実施形態では、レーザ光で塗布剤40を溶融しているため、第1実施形態のように溶融した塗布剤40を噴射させるノズル50やノズル50を加熱する加熱手段が不要になる。
【0112】
(第3実施形態)
本実施形態では、上記第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態では、例えば3次元ブロックのような立体的なものに塗布剤40でマスクすることが特徴である。
【0113】
図5は、金属ブロックに塗布剤40をマスクして加工する様子を示した図である。この図に示されるように、被加工物である金属ブロック90を用意し(図5(a))、この金属ブロック90の表面に第1実施形態と同様の方法で溶融した塗布剤40をノズルから噴射して塗布し、金属ブロックの表面で凝固させる(図5(b))。これにより、金属ブロック90の側面を塗布剤40でマスクする。なお、金属ブロック90は立体的なものであるので、ノズルが金属ブロック90の周囲を移動することにより、金属ブロック90の側面に溶融した塗布剤40を塗布することができる。
【0114】
この後、金属ブロック90をエッチング溶液に浸すことで、金属ブロック90に塗布された塗布剤40のうち開口した部分をエッチングする(図5(c))。これにより、金属ブロック90に溝91を形成する。そして、エッチング後、金属ブロック90にお湯を注ぐことにより、金属ブロック90に塗布された塗布剤40を剥離する(図5(d))。このようにして、立体物である金属ブロック90を加工することができる。
【0115】
以上のように、平面的なものだけでなく、立体的なものに対しても塗布剤40でマスクキングすることができると共に、立体的なものをパターニングすることができる。
【0116】
(第4実施形態)
本実施形態では、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。上記各実施形態では、プリント基板10に回路パターンを形成するため、銅箔60が貼り付けられたプリント基板10上にノズル50を介して塗布剤40を噴射して配線パターンを描画することにより、当該塗布剤40をマスクとしていた。しかし、本実施形態では、プリント基板10上に塗布剤40で構成されるシートを設置し、当該シートにレーザを照射することによって、配線パターンを直接描画することが特徴となっている。以下、本実施形態に係る配線パターンの描画方法について説明する。
【0117】
したがって、本実施形態では、配線パターンを描画するための描画シートを用いる(後述する図8(a)参照)。具体的に、描画シートは、母体としてのPETシート(本発明のシート部材に相当)と、当該PETシートの片面に塗布された離形材と、当該離形材上に塗布された塗布剤40と、を備えて構成されている。
【0118】
PETシートは、例えばポリエステル等の樹脂で形成されたシート状のものである。また、耐熱性を有するイミドのシート(例えばカプトンシート)や、その他、高耐熱性シートも用いることができる。本実施形態では、PETシートはプリント基板10に対応した形状をなしている。また、PETシートの厚さは例えば100μmである。なお、PETシートは、塗布剤40を融解する温度に耐えられるものであることが好ましい。離形材は、PETシートから塗布剤40を剥がしやすくする周知のものである。
【0119】
また、塗布剤40は、上記各実施形態で用いられたものと同様のものであり、配線パターンを描画するために用いられる。すなわち、配線パターンを描画する前では、塗布剤40は、離形材を介してPETシート上に均一にシート状に塗布されて固化した状態になっている。このような塗布剤40の厚さは自由に設計可能であり、例えば数μm〜3mmである。
【0120】
次に、上記描画シートを用いた配線パターンのマスクの形成について説明する。本実施形態では、上記第2実施形態で用いられたレーザ光照射装置を用いて、配線パターンのマスクを形成する。図8は、本実施形態に係る製造方法によってプリント基板10の銅箔60上に塗布剤40の配線パターンを描画する製造工程を示した図である。
【0121】
図8(a)に示す工程では、プリント基板10上に描画シート100を設置する。具体的には、銅箔60が設けられたプリント基板10と、離形材を介して塗布された塗布剤40が設けられた描画シート100を用意する。そして、銅箔60と塗布剤40とが向き合うように銅箔60上に描画シート100を置く。
【0122】
図8(b)に示す工程では、描画シート100のうちPETシート200を剥離する。上述のように、描画シート100においてPETシート200と塗布剤40とは離形材を介しているため、塗布剤40を銅箔60上に置かれた状態でPETシート200から塗布剤40を剥がす。これにより、銅箔60上に塗布剤40が設置された状態となる。
【0123】
図8(c)に示す工程では、レーザ光照射装置を用いて、配線パターンを描画する。すなわち、図4(b)に示される工程と同様に、レーザ光照射装置にて配線パターン描画プログラムを実行することにより、駆動装置で半導体レーザ80を駆動し、銅箔60側にレーザ光を照射し、シート状の塗布剤40のうちレーザ光が集光レンズ81で集光された部分を加熱する。これにより、シート状の塗布剤40のうちレーザ光が照射された部分の塗布剤40のみを融点以上に加熱して融解する。
【0124】
そして、駆動装置によって半導体レーザ80を配線パターンに合わせて移動することで、レーザ光が照射されなくなった部分の塗布剤40の温度が融点以下に下がる。こうして、塗布剤40は銅箔60に融合し、銅箔60に強固に接合される。したがって、半導体レーザ80でレーザ光を照射しながら当該半導体レーザ80を駆動装置にて配線パターンに従って移動させることで、シート状の塗布剤40のうち配線パターン部分を銅箔60に強固に接合する。
【0125】
図8(d)に示す工程では、上記図8(c)に示される工程で、シート状の塗布剤40のうちレーザ光が照射されなかった部分を除去する。例えば、吸引、振動、重力等を利用して、物理的な方法で塗布剤40のうち未接合部を剥がし、銅箔60上に配線パターン状に描画された塗布剤40のみを残す。
【0126】
図8(e)に示す工程では、銅箔60をエッチングし、配線20を形成する。すなわち、銅箔60上に残された配線パターン状の塗布剤40をマスクとしてエッチングすることにより、配線20を形成する。こうして、希望とする回路パターンを有するプリント基板10が完成する。
【0127】
以上説明したように、一定の膜厚で形成されたシート状の塗布剤40のうち、配線パターン部分を半導体レーザ80で局所的に精度良く融解し、銅箔60に密着させているので、微細な形状を精度良く形成することができる。また、上記方法は、従来の印刷工程と比較して単純であるので、大幅に工程が短縮できるし、かつ精度良くマスク等の所望のパターンを形成することができる。
【0128】
(第5実施形態)
本実施形態では、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態では、上記描画シート100を用いて、プリント基板10上の銅箔60を配線パターンにパターニングすると共に、配線パターンのうち所望の場所にはんだバンプ30を形成することが特徴となっている。以下、本実施形態に係る配線パターンの描画方法について説明する。
【0129】
図9は、本実施形態に係る製造方法によって、プリント基板10の銅箔60上にはんだバンプ30および塗布剤40の配線パターンを描画する製造工程を示した図である。また、図10は、図9に続く製造工程を示した図である。
【0130】
図9(a)に示す工程では、描画シート110を用意し、プリント基板10の銅箔60上に設置する。本工程では、はんだ材料として鉛フリーはんだが混入された塗布剤42が設けられた描画シート110を用いる。当該はんだ材料入りの塗布剤42は、上記と同様に、離形材を介してPETシート200に塗布されている。そして、上記図8(b)に示される工程と同様に、描画シート110のうちPETシート200のみを剥がし、銅箔60上に塗布剤42を載せた状態とする。
【0131】
図9(b)に示す工程では、レーザ光照射装置を用いて、はんだバンプ30のパターンを描画する。本工程では、図8(c)に示される工程と同様に、レーザ光照射装置にてはんだバンプ30の描画プログラムを実行することにより、駆動装置で半導体レーザ80を駆動し、シート状の塗布剤42のうちはんだバンプ30に該当する部分の塗布剤42のみを融解して銅箔60に融合し、銅箔60に仮固定する。
【0132】
図9(c)に示す工程では、上記図8(c)に示される工程と同様に、シート状の塗布剤42のうち銅箔60に接合されなかった未接合部を剥がし、プリント基板10を加熱して仮固定されたはんだバンプ30を銅箔60上に強固に接合する。
【0133】
図9(d)に示す工程では、はんだバンプ30が設けられた銅箔60上に描画シート100を置き、レーザ光照射装置を用いて配線パターンを描画する。本工程では、はんだ材料が混入されていない塗布剤40で構成された描画シート100を銅箔60上に載せ、描画シート100のうちPETシートのみを剥がし、図8(c)に示される工程と同様に配線パターンを描画する。このとき、配線パターンの配線の幅がはんだバンプ30よりも広くなるように配線パターンを描画する。配線20上に、確実にはんだバンプ30を載せた状態のものを形成するためである。なお、念のため、はんだバンプ30の周辺部に、レーザ光を2度照射する方法が有効である。
【0134】
図10(a)に示す工程では、上記図8(d)に示される工程と同様に、塗布剤40のうち配線パターン以外の部分を除去する。また、図10(b)に示す工程では、図8(e)に示される工程と同様に、銅箔60をエッチングして配線20を形成する。
【0135】
図10(c)に示す工程では、図2(c)に示される工程と同様に、配線パターン状の銅箔60上の塗布剤40や、銅箔60上に設けられたはんだバンプ30を包み込むように設けられた塗布剤40を除去する。これにより、図1に示されるものと同様のものが完成する。
【0136】
このような方法によっても、プリント基板10に回路パターンを形成することができ、さらに配線20上にはんだバンプ30を形成することもできる。当該方法は、あらかじめはんだバンプ30を形成し、その後に配線パターンを形成するようにしているため、製造工程を大幅に短縮できる。
【0137】
(第6実施形態)
本実施形態では、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態では、プリント基板10に形成された配線パターンのうち所望の場所に描画シート110を用いてはんだバンプ30を形成することが特徴となっている。
【0138】
図11は、本実施形態において、配線パターン上にはんだバンプ30を形成する製造工程を示した図である。本実施形態では、上記第2実施形態で用いられたレーザ光照射装置を用いて、配線パターン上にはんだバンプ30を形成する。
【0139】
図11(a)に示す工程では、配線パターン上にはんだバンプ30のパターンを描画する。これを行うため、まず、はんだ材料が混入された塗布剤42を備えて構成される描画シート110を用意し、当該塗布剤42と配線パターンとが向き合うようにプリント基板10上に描画シート110を置く。続いて、レーザ光照射装置を用いて配線パターン上にはんだバンプ30のパターンを描画する。このとき、半導体レーザ80からレーザ光をPETシートに向けて直接照射し、PETシート200を通過させたレーザ光を塗布剤42に照射する。これにより、塗布剤42のうちレーザ光を照射した部分を配線パターン上に仮固定する。
【0140】
図11(b)に示す工程では、例えば図8(b)に示される工程と同様に、塗布剤42からPETシート200を剥離する。なお、上述のように、離形材によって塗布剤42をPETシート200から容易に剥がすことができる。また、図11(c)に示す工程では、塗布剤42のうち、仮固定以外の場所を除去する。本工程では、例えば図2(c)に示される工程と同様にお湯を用いて塗布剤42を除去する。
【0141】
図11(d)に示す工程では、塗布剤42を加熱することで、はんだ材料を配線20に固定し、はんだバンプ30を形成する。すなわち、図11(c)の工程を終えた段階では、配線パターン上に形成された塗布剤42は仮固定された状態であり、配線パターンを構成する銅箔60と強固に接合していない状態になっている。したがって、本工程において加熱処理を行うことにより、塗布剤42のうちはんだ材料を銅箔60に強固に接合する。こうして、配線20上にはんだバンプ30が形成されたものが完成する。
【0142】
以上説明したように、描画シート110を用いてはんだバンプ30のパターンを配線パターン上に直接描画することもできる。このような方法を採用しても、はんだバンプ30のパターンを形成することができる。
【0143】
(第7実施形態)
本実施形態では、上記第6実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態では、描画シート110からPETシート200を剥がした後、塗布剤42をはんだバンプ30のパターンにパターニングすることが特徴となっている。
【0144】
図12は、本実施形態において、配線パターン上にはんだバンプ30を形成する製造工程を示した図である。図12(a)に示す工程では、描画シート110を用意し、当該描画シート110に塗布された塗布剤42と配線パターンとが向き合うようにプリント基板10上に描画シート110を載せる。また、図12(b)に示す工程では、図8(b)に示される工程と同様に、シート状の塗布剤42からPETシート200を剥離する。
【0145】
図12(c)に示す工程では、レーザ光照射装置を用いて配線パターン上にはんだバンプ30のパターンを描画する。これにより、塗布剤42のうちはんだバンプ30となる部分を配線パターン上に仮固定する。
【0146】
この後、上記図11(c)に示される工程と同様に、塗布剤42のうち仮固定以外の場所を除去し、図11(d)に示される工程と同様に、塗布剤42を加熱処理してはんだ材料を配線20に強固に接合して、はんだバンプ30を形成する。
【0147】
以上説明したように、塗布剤42からPETシート200を剥離した後、塗布剤42にはんだバンプ30のパターンをパターニングすることもできる。このような方法により、レーザ光を照射するに際し、PETシート200を介在させずにレーザ光を塗布剤42に直接照射することで、レーザ光の焦点位置をより高精度にすることができ、精度の良いはんだ付けを行うことができる。
【0148】
(第8実施形態)
本実施形態では、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態では、配線パターン上の所望の場所にはんだバンプ30を形成する場合、プリント基板10上に置いた描画シート110を移動させることで、PETシート200上の塗布剤42を有効利用することが特徴となっている。以下、本実施形態に係る製造方法について説明する。
【0149】
図13は、本実施形態において、配線パターン上にはんだバンプを形成する製造工程を示した図である。図13(a)に示す工程では、配線パターンのうち1カ所にはんだバンプ30を仮固定する。このため、まず、描画シート110を用意し、描画シート110をプリント基板10上で移動させることができる図示しない移動装置に設置する。当該移動装置には、あらかじめ描画シート110の塗布剤42のサイズや座標等の位置を示すパラメータを入力しておく。
【0150】
そして、描画シート110に塗布された塗布剤42と配線パターンとが向き合うように、詳しくはPETシート200上の塗布剤42の端が配線パターンのうちはんだバンプ30の形成予定場所に位置するようにプリント基板10上に描画シート110を載せる。この後、半導体レーザ80からレーザ光を照射して、塗布剤42を配線パターン上に仮固定する。
【0151】
図13(b)に示す工程では、配線パターンのうち、図13(a)に示される工程で塗布剤42が仮固定された場所とは異なる場所に塗布剤42を仮固定する。具体的には、移動装置により、PETシート200上の塗布剤42の端が配線パターンのうち次のはんだバンプ30の形成予定場所に位置するように描画シート110を移動させる。そして、半導体レーザ80からレーザ光を照射し、配線パターン上に塗布剤42を仮固定する。
【0152】
図13(c)に示す工程では、移動装置によって描画シート110を移動させ、図13(b)に示される工程と同様に配線パターン上に塗布剤42を仮固定する。
【0153】
以後、配線パターン上にはんだバンプ30を形成する場所に、PETシート200上の塗布剤42の端が位置するように移動装置によって描画シート110を移動させ、上記図13(a)〜図13(c)に示される工程を繰り返すことにより、配線パターン上にはんだバンプ30となる塗布剤42をパターニングする。
【0154】
この後、図11(d)に示される工程と同様に、塗布剤42に対する加熱処理を行うことにより、塗布剤42のうちはんだ材料を銅箔60に強固に接合する。このようにして、はんだバンプ30を形成することもできる。
【0155】
以上説明したように、本実施形態では、描画シート110を移動させて塗布剤42の端にレーザ光を照射し、配線パターン上にはんだバンプ30となる塗布剤42を仮固定することが特徴となっている。これにより、PETシート200上の塗布剤42を有効利用することができる。
【0156】
(第9実施形態)
本実施形態では、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。上記のように、配線20に対するはんだ付けは、シート状の塗布剤42にレーザ光を照射し、塗布剤42を仮固定した後、熱処理することで行っている。しかしながら、プリント基板10には微細回路や大きな電流を流す配線など、様々な配線パターンが形成される。このため、各配線のタイプに応じたはんだバンプ30を形成することが好ましい。
【0157】
そこで、本実施形態では、塗布剤42のうちはんだバンプ30となる部分を配線パターン上に仮固定するに際し、形成するはんだバンプ30のサイズに応じて出力が異なる半導体レーザを用いることが特徴となっている。用いる電流量が異なる回路を複数備えた混在型のプリント基板10に対して適用することができる。
【0158】
図14は、異なる半導体レーザを用いて塗布剤42を仮固定する様子を示した図である。このうち、図14(a)は、微細な配線パターンに塗布剤42のうちはんだバンプ30となる部分を仮固定する様子を示した図である。
【0159】
この図に示されるように、微細な配線パターンに対しては、当該微細な配線パターンに応じたはんだバンプ30を形成できる厚さの塗布剤42を備えた描画シート110を用意し、さらに出力パワーが小さい半導体レーザ82を用いて塗布剤42にレーザ光を照射する。また、微細なはんだバンプ30をパターニングするため、上記半導体レーザ82に対応した微細な集光レンズ83を用いることが好ましい。
【0160】
また、微細ではないが、バスバー21ほど大きな電流を流さない配線に対しては、上記半導体レーザ82よりも出力が大きい半導体レーザ84を用いて塗布剤42にレーザ光を照射する。この場合、半導体レーザ84に対応した集光レンズ85を用いることが好ましい。
【0161】
このように、微細回路や中程度の回路の配線パターンに対しては、上記の半導体レーザ82、84を組み合わせて用いることで塗布剤42を配線パターン上に仮固定し、その後熱処理することで、はんだバンプ30を形成することができる。
【0162】
図14(b)は、バスバー21に塗布剤42のうちはんだバンプ30となる部分を仮固定する様子を示した図である。バスバー21は、例えば上記微細な回路の配線パターンよりも厚い銅箔により形成されたものである。
【0163】
図14(b)に示されるように、バスバー21に対しては、当該バスバー21に応じたはんだバンプ30を形成できる厚さ、すなわち図14(a)に示された塗布剤42よりも厚い塗布剤42を備えた描画シート110を用意し、さらに上記半導体レーザ82、84よりも出力パワーが大きい半導体レーザ86を用いて塗布剤42にレーザ光を照射する。この場合においても、半導体レーザ86に対応した集光レンズ87を用いることが好ましい。
【0164】
このように、配線パターンの種類に応じたはんだバンプ30を形成する場合においては、形成したいはんだバンプ30のサイズに応じたシート状の塗布剤42にそれぞれ対応した半導体レーザ82、84、86からレーザ光を照射する。
【0165】
また、図14(c)は、バスバー21の広範囲に塗布剤42のうちはんだバンプ30となる部分を仮固定する様子を示した図である。この場合、レーザ光照射装置の駆動装置によって半導体レーザ86を移動させることで、バスバー21上の広範囲に塗布剤42を仮固定することができる。
【0166】
以上説明したように、プリント基板10上の回路のタイプに応じた配線パターンに対応させて厚みの異なる塗布剤42を用いると共に、配線パターンに対応した半導体レーザ82、84、86を用いることで、配線パターン上に精度良くはんだバンプ30を形成することができる。
【0167】
(第10実施形態)
本実施形態では、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。上記第9実施形態では、バスバー21等のサイズが大きい配線に対しては、半導体レーザ86を移動させて塗布剤42をバスバー21上に仮固定していたが、本実施形態では、大型の半導体レーザを用いると共に、当該大型の半導体レーザを移動させずに塗布剤42を仮固定することが特徴となっている。
【0168】
図15は、本実施形態において、大型の半導体レーザを用いてはんだバンプ30を形成する製造工程を示した図である。図15(a)に示す工程では、バスバー21上に塗布剤42を仮固定する。具体的には、まず、バスバー21のサイズに応じたはんだバンプ30を形成できる厚さの塗布剤42を備えた描画シート110を用意する。また、バスバー21を移動しなくてもレーザ光を照射するのみでバスバー21上に塗布剤42を仮固定できる大型の半導体レーザ88を備えたレーザ光照射装置を用意する。
【0169】
そして、半導体レーザ88をプリント基板10のバスバー21上に配置し、半導体レーザ88からレーザ光を照射して集光レンズ89で集光して塗布剤42に照射する。これにより、塗布剤42をバスバー21上に仮固定する。バスバー21において図15(a)に示される場所以外の場所についても同様に塗布剤42を仮固定する。
【0170】
この後、図15(b)に示す工程では、図11(d)に示される工程と同様に、バスバー21上の仮固定された塗布剤42を加熱処理することで、バスバー21上にはんだバンプ30を形成する。
【0171】
以上説明したように、はんだバンプ30を形成したい場所に応じて、大型の半導体レーザ88を用いることにより、レーザ光を照射しながら半導体レーザ88を移動させなくても塗布剤42を仮固定することができる。
【0172】
(他の実施形態)
上記塗布剤40もしくははんだ剤70は、パラフィンを主成分とするもので構成されているが、ポリエチレングリコールを主成分とするもので構成されていても構わない。
【0173】
第1、第2実施形態では、プリント基板10の貫通孔11を塞ぐ工程までを行っているが、配線パターンの描画によって配線20を形成する工程までを行うようにしても構わない。同様に、はんだバンプ30を形成する工程までを行うようにしても構わない。また、はんだバンプ30を形成せずに蓋部41を形成する工程を行っても良い。
【0174】
第1、第2実施形態では、プリント基板10上に1層の配線20の層のみを形成しているが、上記方法によって多層の配線層を形成するようにしても構わない。
【0175】
上記第1実施形態では、プリント基板10の貫通孔11の開口部に蓋部41を形成しているが、この貫通孔11に塗布剤40を埋めるようにしても構わない。図6は、プリント基板10の貫通孔11に塗布剤40を埋める工程を示した図である。この図に示されるように、プリント基板10に設けられた貫通孔11に溶融した塗布剤40をノズル52から噴射する。プリント基板10は融点以下にされているので、貫通孔11に塗布された塗布剤40は貫通孔11の内部で凝固する。こうして塗布剤40で貫通孔11を埋めることができる。
【0176】
上記各実施形態では、制御装置にプリント基板やパターニングするもの(被加工物)のサイズや位置情報をあらかじめデータとして記憶しておくことの他に、プリント基板10や被加工物をカメラで撮影し、画像処理することによって配線20や貫通孔11の位置を正確に検出するようにしても良い。
【0177】
上記第1、第2実施形態では、銅箔60上に塗布剤40を描画してエッチングすることにより、配線20を形成する実施例について説明しているが、加工品をパターニングする場合、加工品にドットを形成する場合、加工品に絵を描画する場合等に上記各実施形態の方法を適用することができる。また、加工品として、紙、布、金属箔、金属シート等などを用いることができる。
【0178】
第3実施形態では、ブロック状のものにマスクを形成していたが、図7に示されるように、球体の球面に塗布剤40を形成し、例えばエッチングする等の加工を行うようにしても良い。図7は、球体に塗布剤40をマスキングして加工する様子を示した図である。この図に示されるように、被加工物として球体95を用意し(図7(a))、球体95の球面を塗布剤40でマスキングする(図7(b))。そして、球体95をエッチング溶液に浸してエッチングし、溝96を形成する(図7(c))。この後、球体95にお湯を注ぎ、球体95の側面に凝固した塗布剤40を溶融して除去する(図7(d))。このように、球体95の球面に塗布剤40をマスクしてパターニングするようにしても良い。
【0179】
第8実施形態では、PETシート200に塗布された塗布剤42のうち端の部分にレーザ光照射を照射しているが、移動装置によって描画シート110を移動させることで、塗布剤42のうちレーザ光が照射されていない場所をはんだバンプ30の形成予定場所に移動させ、レーザ光を照射して塗布剤42を仮固定するようにしても構わない。
【0180】
第9実施形態では、第8実施形態と同様に、描画シート110を移動させることで塗布剤42を有効利用するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】本発明に係る製造方法によって形成されたプリント基板の断面図である。
【図2】印刷装置を用いて印刷する方法によって上記配線のパターンを形成する製造工程を示した図である。
【図3】図2に続く製造工程を示した図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る製造方法によって銅箔上に塗布剤の配線パターンを描画する製造工程を示した図である。
【図5】金属ブロックに塗布剤をマスクして加工する様子を示した図である。
【図6】プリント基板の貫通孔に塗布剤を埋める様子を示した図である。
【図7】球体に塗布剤をマスクして加工する様子を示した図である。
【図8】第4実施形態に係る製造方法によってプリント基板の銅箔上に塗布剤の配線パターンを描画する製造工程を示した図である。
【図9】第5実施形態に係る製造方法によってプリント基板の銅箔上にはんだバンプおよび塗布剤の配線パターンを描画する製造工程を示した図である。
【図10】図9に続く製造工程を示した図である。
【図11】第6実施形態において、配線パターン上にはんだバンプを形成する製造工程を示した図である。
【図12】第7実施形態において、配線パターン上にはんだバンプを形成する製造工程を示した図である。
【図13】第8実施形態において、配線パターン上にはんだバンプを形成する製造工程を示した図である。
【図14】第9実施形態において、異なる半導体レーザを用いて塗布剤42を仮固定する様子を示した図であり、(a)は微細な配線パターンに対して、(b)はバスバーに対して、(c)はバスバーの広範囲に対して塗布剤のうちはんだバンプとなる部分を仮固定する様子をそれぞれ示した図である。
【図15】第10実施形態において、大型の半導体レーザを用いてはんだバンプを形成する製造工程を示した図である。
【符号の説明】
【0182】
10…プリント基板、20…配線、30…はんだバンプ、40、41…塗布剤、50…ノズル、60…銅箔、70…はんだ剤、80、82、84、86、88…半導体レーザ、81、83、85、87、89…集光レンズ、100、110…描画シート、200…PETシート。
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度に応じて融解・凝固する塗布剤で被加工物にマスクを形成し、このマスクのマスクパターンに基づいてパターニングする加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板にインキパターンを形成する方法が例えば特許文献1で提案されている。この特許文献1にも示されるように、一般に露光によって形成したいパターンを形成する方法が実施されている。以下に、一般的な露光の方法によって、プリント基板に配線パターンを形成する方法について説明する。
【0003】
まず、プリント基板上に銅箔が設置されたものを用意し、銅箔上に光感光膜(フォトレジスト膜)を均一に塗布する。この後、露光機で露光することでフォトレジスト膜をパターニングする。具体的に、銅箔のうち不要な部分のフォトレジスト膜を脆くする、もしくは銅箔のうち配線となる部分のフォトレジスト膜を硬化することでフォトレジスト膜をパターニングする。
【0004】
続いて、有機溶剤を用いて、フォトレジスト膜のうち脆い部分もしくは非硬化部分を溶解・分解する。これにより、銅箔のうちエッチングされる部分が露出する。そして、例えば塩化第二鉄溶液にて、フォトレジスト膜が開口した部分の銅箔をエッチングし、フォトレジスト膜を除去することにより、プリント基板上に配線パターンを形成する。
【0005】
以上のような工程により、一層の配線層を有するプリント基板を形成することができる。また、上記工程を繰り返すことによって、積層プリント基板を形成することができる。
【特許文献1】特開平8−34156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術では、露光によってフォトレジスト膜をパターニングした後、有機溶剤にてフォトレジスト膜のうち不要な部分を除去すると、フォトレジスト膜が除去された部分に銅箔上に残されたフォトレジスト膜が有機溶剤によって滲んでしまう(もしくは染み出してしまう)可能性がある。これにより、パターニングによって形成したフォトレジスト膜の線幅が広がってしまい、この状態で銅箔がエッチングされると、フォトレジスト膜から滲んだ(もしくは染み出した)分だけ線幅が広くなった配線が形成されてしまうこととなる。
【0007】
近年では、プリント基板における配線の幅は細くなる傾向にあり、現在では線幅が約50μmになりつつある。今後、線幅はさらに小さくなると予想される。しかしながら、上記のように、フォトレジスト膜をパターニングした際、フォトレジスト膜が滲んで線幅を広げてしまうと、プリント基板上に精度良い線幅の配線を形成することができない。
【0008】
なお、フォトレジスト膜を電子ビームで描画することによりパターニングする方法も実施されているが、有機溶剤で不要なフォトレジスト膜を除去するため、上記と同様に、精度良い線幅の配線を形成することはできない。
【0009】
本発明は、上記点に鑑み、被加工物に高精度のマスクを形成すると共に、そのマスクを用いて被加工物を高精度にパターニングすることができる加工品の製造方法を提供することを第1の目的とする。また、マスクを用いずに、被加工物に所望のパターンを直接描画することができる加工品の製造方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第1の特徴では、塗布剤(40)の融解開始温度よりも低い温度にされた被加工物(10、60、90、95)に、ノズル(50)から溶融した塗布剤を噴射して塗布すると共にその塗布剤を凝固させ、被加工物にマスクパターン状のマスクを形成する。そして、このマスクに基づいて被加工物をパターニングし、この後、マスクを加熱して溶融させて被加工物からマスクを除去する。
【0011】
このような製造方法では、溶融した塗布剤を被加工物に塗布したと同時に凝固させることができるので、塗布剤の滲みや染み出しを防止することができる。すなわち、塗布剤は、溶融して凝固する温度幅が5℃以下になっている。このため、加熱して溶融させた塗布剤は、溶融した塗布剤の温度からわずか5℃低い被加工物上に塗布されることで、塗布されると同時に凝固する。これにより、被加工物に高精度のマスクを形成することができ、このマスクに基づいて精度良く被加工物をパターニングすることができる。
【0012】
本発明の第2の特徴では、被加工物(10、60)の表面に粉末状の塗布剤(40)を敷き、被加工物の表面に敷かれた粉末状の塗布剤のうち、マスクとなる場所のものを局所的に加熱して溶融する。このとき、局所的に加熱する場所を移動していくことで加熱していた場所の塗布剤を凝固してマスクを形成する。そして、被加工物上に残された粉末状の塗布剤を除去し、マスクのマスクパターンに基づいて被加工物をパターニングした後、マスクを加熱して溶融させ、被加工物からマスクを除去する。
【0013】
このような製造方法では、マスクとなる部分の粉末状の塗布剤のみを加熱して溶融・凝固させているので、局所的に加熱された塗布剤の滲みや染み出しを防止することができる。すなわち、局所的に加熱された場所の粉末状の塗布剤が加熱されなくなると同時に凝固する。これにより、被加工物に高精度のマスクを形成することができ、このマスクに基づいて精度良く被加工物をパターニングすることができる。
【0014】
上記製造工程で用いられる塗布剤として、融解開始温度と融解終了温度との温度差が5℃以下のものを用いることができる。小さい温度差で塗布剤を融解・凝固させることが好ましく、温度差は2℃であることが好ましい。
【0015】
上記のような場合、塗布剤にはんだが添加されたはんだ剤を被加工物上にドット状に凝固させ、いわゆるリフローすることにより、被加工物上にはんだバンプ(30)を設けることができる。これにより、被加工物に対して他の電子部品やワイヤ等ではんだを介した電気的接続を行うようにすることができる。
【0016】
また、上記のような場合において、被加工物(10、60)としてプリント基板(10)を用いる場合であって、このプリント基板に貫通孔(11)が設けられている場合、溶融した塗布剤を貫通孔の開口部分に噴射して凝固することにより、貫通孔の開口部分を塞ぐことができるので、貫通孔に異物などを入り込ませないようにすることができる。また、塗布剤は、わずか5℃以下の温度差で融解・凝固するため、蓋部が不要になった場合、温度を加えるだけで蓋部を容易に取り外すことができる。
【0017】
さらに、上記のような場合において、溶融した塗布剤を貫通孔内に噴射して凝固することにより、貫通孔に塗布剤を埋めて貫通孔を塞ぐことができるので、貫通孔に異物を侵入させないようにすることができる。また、加熱するだけで、貫通孔内の凝固した塗布物を容易に取り除くことができる。
【0018】
本発明の第3の特徴では、シート部材(200)に塗布剤(40)が塗布された描画シート(100)を用意し、被加工物(60)と塗布剤とが向き合うように被加工物上に描画シートを設置する。次に、描画シートのうちシート部材のみを除去する。そして、被加工物上の塗布剤のうち、マスクとなる場所のものを局所的に加熱して溶融し、局所的に加熱する場所を移動していくことで加熱していた場所の塗布剤を凝固してマスクパターン状のマスクを形成する。この後、マスクに基づいて被加工物をパターニングし、マスクを加熱して溶融させて被加工物から除去することを特徴としている。
【0019】
これにより、塗布剤のうちマスクとなる部分のみを加熱して溶融・凝固させているので、局所的に加熱された塗布剤の滲みや染み出しを防止することができ、高精度のマスクを形成することができる。これにより、精度良く被加工物をパターニングすることができる。
【0020】
また、本発明の第4の特徴では、シート部材(200)にはんだ材料が含まれた塗布剤(42)が塗布された描画シート(110)を用意し、被加工物(20、60)と上記塗布剤とが向き合うように被加工物上に描画シートを設置する。そして、描画シートのうちシート部材のみを除去する。続いて、塗布剤のうち、はんだバンプ(30)の形成予定場所を局所的に直接加熱して溶融し、被加工物にはんだ材料が含まれた塗布剤を仮固定する。この後、被加工物上の塗布剤を熱処理することで、塗布剤に含まれたはんだ材料を被加工物に固定し、はんだバンプを形成することを特徴としている。
【0021】
このように、はんだ材料が含まれた塗布剤を直接加熱することにより、被加工物上にはんだバンプを直接描画することができる。すなわち、はんだバンプを形成するためのマスクを用いずに、高精度にはんだバンプを形成することができる。
【0022】
この場合、はんだ材料が含まれた塗布剤を仮固定する際には、はんだ材料が含まれた塗布剤のうち局所的に加熱されなかった部分を除去することができる。これにより、被加工物上から不要なものを無くし、加熱処理を行うようにすることができる。
【0023】
さらに、被加工物上にはんだバンプを形成した後、はんだ材料が含まれていない塗布剤(40)がシート部材(200)に塗布された描画シート(100)を用意し、被加工物とはんだ材料が含まれていない塗布剤とが向き合うように被加工物上に描画シートを設置して、描画シートのうちシート部材のみを除去する。そして、塗布剤のうちマスクとなる場所をはんだバンプが包み込まれるように局所的に直接加熱して溶融すると共に、局所的に加熱する場所を移動していくことで加熱していた場所の塗布剤を凝固してマスクパターン状のマスクを形成する。この後、マスクに基づいて被加工物を配線パターンにパターニングし、マスクを加熱して溶融させて被加工物から除去することができる。
【0024】
このように、被加工物上にはんだバンプを形成した後、はんだバンプを包み込むように塗布剤を仮固定して被加工物上にマスクを形成することができ、当該マスクによって被加工物をパターニングすることができる。このような方法により、はんだバンプが形成されたパターン(配線パターン等)を少ない工程数で形成することができる。
【0025】
本発明の第5の特徴では、シート部材(200)にはんだ材料が含まれた塗布剤(42)が塗布された描画シート(110)を用意し、被加工物(20、60)と塗布剤とが向き合うように被加工物上に描画シートを設置する。続いて、シート部材において塗布剤の反対側から、塗布剤のうちはんだバンプの形成予定場所を局所的に直接加熱して溶融し、被加工物にはんだ材料が含まれた塗布剤を仮固定する。そして、塗布剤を熱処理することで、塗布剤に含まれたはんだ材料を被加工物に固定してはんだバンプを形成することが特徴となっている。このような方法によっても、はんだバンプを被加工物上に直接描画することができる。
【0026】
また、本発明の第6の特徴では、上記本発明の第6の特徴において、描画シートのうち、シート部材のみを除去し、はんだバンプを形成することが特徴となっている。このようにシート部材を除去して塗布剤を直接加熱することで、塗布剤を高精度に加熱することができる。
【0027】
このような場合、シート部材を移動させることで、塗布剤のうち加熱されていない部分をはんだバンプの形成予定場所に移動させ、当該はんだバンプの形成予定場所に塗布剤を仮固定することができる。これにより、シート部材に設けられた塗布剤を有効利用することができる。
【0028】
そして、塗布剤を加熱する場合、半導体レーザ(80、82、84、86、88)から照射したレーザ光を集光レンズ(81、83、85、87、89)で塗布剤に集光することにより当該塗布剤を局所的に加熱することができる。
【0029】
この場合、塗布剤の融解開始温度と融解終了温度を、18℃〜100℃の範囲内にすることができる。
【0030】
このような温度範囲を設けることにより、加工したい被加工物の材質等に合わせて被加工物にマスクを形成することができる。このような融解開始温度または融解終了温度の範囲を実現するため、パラフィンもしくはポリエチレングリコールに、例えばアルミナ、カーボン、鉄、SUS、SiC、Si、窒化珪素などの粉末材料を混入することが好ましい。
【0031】
また、塗布剤を、パラフィンもしくはポリエチレングリコールを主成分としたもので構成できる。
【0032】
このように、塗布剤としてパラフィンもしくはポリエチレングリコールを主成分としたものを用いると共に、パラフィンもしくはポリエチレングリコールの純度を上げることにより、融解開始温度と融解終了温度との温度差を小さくすることができ、上記のように5℃以下を実現できる。なお、小さい温度差で融解・凝固を起こさせるようにするため、融解開始温度と融解終了温度との温度差は2℃であることが好ましい。
【0033】
さらに、パラフィンとしては、以下(1)〜(5)に示すノルマルパラフィンと非ノルマルパラフィンとを組み合わせたパラフィンも使用できる。なお、組成割合の%はすべて重量%である。また、パラフィンの融解開始温度と融解終了温度との温度差は後述するように5℃以下であることが好ましいが、さらに小さい温度差であることが好ましい。以下では、その温度差が小さいものについて示す。
【0034】
(1)ノルマルパラフィンの成分合計88.99%、残部非ノルマルパラフィンからなるパラフィン
『ノルマルパラフィンの組成』
炭素数18のノルマルパラフィン:0.08%
炭素数19のノルマルパラフィン:0.41%
炭素数20のノルマルパラフィン:1.76%
炭素数21のノルマルパラフィン:5.61%
炭素数22のノルマルパラフィン:10.66%
炭素数23のノルマルパラフィン:14.76%
炭素数24のノルマルパラフィン:14.50%
炭素数25のノルマルパラフィン:12.42%
炭素数26のノルマルパラフィン:9.08%
炭素数27のノルマルパラフィン:6.58%
炭素数28のノルマルパラフィン:4.04%
炭素数29のノルマルパラフィン:2.88%
炭素数30のノルマルパラフィン:2.09%
炭素数31のノルマルパラフィン:1.50%
炭素数32のノルマルパラフィン:1.02%
炭素数33のノルマルパラフィン:0.72%
炭素数34のノルマルパラフィン:0.37%
炭素数35のノルマルパラフィン:0.24%
炭素数36のノルマルパラフィン:0.14%
炭素数37のノルマルパラフィン:0.08%
炭素数38のノルマルパラフィン:0.05%
以上ノルマルパラフィンの成分合計は88.99%であり、残部が非ノルマルパラフィンである。
【0035】
このような組成(1)からなるパラフィンの平均炭素数は24.74であり、分子量分布の標準偏差は2.86であり、この標準偏差が小さいほどシャープな分子量分布を示す。また、この組成(1)のパラフィンの最大分子量は534、最小分子量は254である。従って、分子量分布幅は280となる。
【0036】
このような組成(1)のパラフィンの融解開始温度:50.4℃、融解終了温度:51.7℃である。従って、融解開始温度と融解終了温度の温度差は1.3℃と僅少値に設定できる。
【0037】
(2)ノルマルパラフィンの成分合計88.64%、残部非ノルマルパラフィンからなるパラフィン
『ノルマルパラフィンの組成』
炭素数18のノルマルパラフィン:0.07%
炭素数19のノルマルパラフィン:0.28%
炭素数20のノルマルパラフィン:1.10%
炭素数21のノルマルパラフィン:3.38%
炭素数22のノルマルパラフィン:6.92%
炭素数23のノルマルパラフィン:10.86%
炭素数24のノルマルパラフィン:12.67%
炭素数25のノルマルパラフィン:12.74%
炭素数26のノルマルパラフィン:11.17%
炭素数27のノルマルパラフィン:9.18%
炭素数28のノルマルパラフィン:6.43%
炭素数29のノルマルパラフィン:4.73%
炭素数30のノルマルパラフィン:3.01%
炭素数31のノルマルパラフィン:2.16%
炭素数32のノルマルパラフィン:1.42%
炭素数33のノルマルパラフィン:0.98%
炭素数34のノルマルパラフィン:0.55%
炭素数35のノルマルパラフィン:0.36%
炭素数36のノルマルパラフィン:0.22%
炭素数37のノルマルパラフィン:0.15%
炭素数38のノルマルパラフィン:0.11%
炭素数39のノルマルパラフィン:0.09%
炭素数40のノルマルパラフィン:0.06%
以上ノルマルパラフィン成分合計は88.64%、残部が非ノルマルパラフィンである。
【0038】
このような組成(2)からなるパラフィンの平均炭素数は25.61、分子量分布の標準偏差は3.05、最大分子量は562、最小分子量は254である。従って、分子量分布幅366となる。この組成(2)のパラフィンの融解開始温度:52.5℃、融解終了温度:53.7℃である。従って、融解開始温度と融解終了温度の温度差は1.2℃と僅少値に設定できる。
【0039】
(3)ノルマルパラフィンの成分合計89.57%、残部非ノルマルパラフィンからなるパラフィン
『ノルマルパラフィンの組成』
炭素数19のノルマルパラフィン:0.09%
炭素数20のノルマルパラフィン:0.34%
炭素数21のノルマルパラフィン:1.31%
炭素数22のノルマルパラフィン:3.50%
炭素数23のノルマルパラフィン:7.09%
炭素数24のノルマルパラフィン:10.36%
炭素数25のノルマルパラフィン:12.57%
炭素数26のノルマルパラフィン:12.68%
炭素数27のノルマルパラフィン:11.75%
炭素数28のノルマルパラフィン:8.80%
炭素数29のノルマルパラフィン:6.99%
炭素数30のノルマルパラフィン:4.74%
炭素数31のノルマルパラフィン:3.41%
炭素数32のノルマルパラフィン:2.42%
炭素数33のノルマルパラフィン:1.70%
炭素数34のノルマルパラフィン:0.93%
炭素数35のノルマルパラフィン:0.54%
炭素数36のノルマルパラフィン:0.25%
炭素数37のノルマルパラフィン:0.10%
以上ノルマルパラフィンの成分合計は89.57%、残部が非ノルマルパラフィンである。
【0040】
このような組成(3)からなるパラフィンの平均炭素数は26.56、分子量分布の標準偏差は2.94、最大分子量は520、最小分子量は268である。従って、分子量分布幅は252となる。この組成(3)のパラフィンの融解開始温度:54.6℃、融解終了温度:55.6 ℃である。従って、融解開始温度と融解終了温度の温度差は1.0℃と僅少値に設定できる。
【0041】
(4)ノルマルパラフィンの成分合計71.11%、残部非ノルマルパラフィンからなるパラフィン
『ノルマルパラフィンの組成』
炭素数23のノルマルパラフィン:0.08%
炭素数24のノルマルパラフィン:0.16%
炭素数25のノルマルパラフィン:0.39%
炭素数26のノルマルパラフィン:0.87%
炭素数27のノルマルパラフィン:1.52%
炭素数28のノルマルパラフィン:1.99%
炭素数29のノルマルパラフィン:2.68%
炭素数30のノルマルパラフィン:3.14%
炭素数31のノルマルパラフィン:3.71%
炭素数32のノルマルパラフィン:3.94%
炭素数33のノルマルパラフィン:4.07%
炭素数34のノルマルパラフィン:4.37%
炭素数35のノルマルパラフィン:4.94%
炭素数36のノルマルパラフィン:5.49%
炭素数37のノルマルパラフィン:6.00%
炭素数38のノルマルパラフィン:5.44%
炭素数39のノルマルパラフィン:4.50%
炭素数40のノルマルパラフィン:3.71%
炭素数41のノルマルパラフィン:3.01%
炭素数42のノルマルパラフィン:2.53%
炭素数43のノルマルパラフィン:1.94%
炭素数44のノルマルパラフィン:1.55%
炭素数45のノルマルパラフィン:1.06%
炭素数46のノルマルパラフィン:0.84%
炭素数47のノルマルパラフィン:0.58%
炭素数48のノルマルパラフィン:0.45%
炭素数49のノルマルパラフィン:0.33%
炭素数50のノルマルパラフィン:0.32%
炭素数51のノルマルパラフィン:0.26%
炭素数52のノルマルパラフィン:0.21%
炭素数53のノルマルパラフィン:0.19%
炭素数54のノルマルパラフィン:0.17%
炭素数55のノルマルパラフィン:0.15%
炭素数56のノルマルパラフィン:0.13%
炭素数57のノルマルパラフィン:0.11%
炭素数58のノルマルパラフィン:0.09%
炭素数59のノルマルパラフィン:0.08%
炭素数60のノルマルパラフィン:0.06%
炭素数61のノルマルパラフィン:0.05%
以上ノルマルパラフィンの成分合計は71.11%であり、残部が非ノルマルパラフィンである。
【0042】
このような組成(4)からなるパラフィンの平均炭素数は36.34、分子量分布の標準偏差は5.70、最大分子量は856、最小分子量は324である。従って、分子量分布幅は532となる。この組成(4)のパラフィンの融解開始温度:72.1℃、融解終了温度:73.4℃である。従って、融解開始温度と融解終了温度の温度差は1.3℃と僅少値に設定できる。
【0043】
(5)ノルマルパラフィンの成分合計75.78%、残部非ノルマルパラフィンからなるパラフィン
『ノルマルパラフィンの組成』
炭素数29のノルマルパラフィン:0.08%
炭素数30のノルマルパラフィン:0.23%
炭素数31のノルマルパラフィン:0.69%
炭素数32のノルマルパラフィン:1.36%
炭素数33のノルマルパラフィン:1.77%
炭素数34のノルマルパラフィン:2.02%
炭素数35のノルマルパラフィン:2.21%
炭素数36のノルマルパラフィン:2.41%
炭素数37のノルマルパラフィン:3.02%
炭素数38のノルマルパラフィン:3.58%
炭素数39のノルマルパラフィン:3.52%
炭素数40のノルマルパラフィン:3.94%
炭素数41のノルマルパラフィン:4.13%
炭素数42のノルマルパラフィン:5.15%
炭素数43のノルマルパラフィン:4.95%
炭素数44のノルマルパラフィン:5.54%
炭素数45のノルマルパラフィン:4.55%
炭素数46のノルマルパラフィン:4.71%
炭素数47のノルマルパラフィン:3.53%
炭素数48のノルマルパラフィン:3.08%
炭素数49のノルマルパラフィン:2.38%
炭素数50のノルマルパラフィン:2.16%
炭素数51のノルマルパラフィン:1.68%
炭素数52のノルマルパラフィン:1.35%
炭素数53のノルマルパラフィン:1.21%
炭素数54のノルマルパラフィン:1.00%
炭素数55のノルマルパラフィン:0.85%
炭素数56のノルマルパラフィン:0.80%
炭素数57のノルマルパラフィン:0.63%
炭素数58のノルマルパラフィン:0.59%
炭素数59のノルマルパラフィン:0.49%
炭素数60のノルマルパラフィン:0.41%
炭素数61のノルマルパラフィン:0.34%
炭素数62のノルマルパラフィン:0.38%
炭素数63のノルマルパラフィン:0.36%
炭素数64のノルマルパラフィン:0.30%
炭素数65のノルマルパラフィン:0.23%
炭素数66のノルマルパラフィン:0.15%
以上ノルマルパラフィンの成分合計は75.78%であり、残部が非ノルマルパラフィンである。
【0044】
このような組成(5)からなるパラフィンの平均炭素数は43.69、分子量分布の標準偏差は6.81、最大分子量は926、最小分子量は408である。従って、分子量分布幅は518となる。この組成(5)のパラフィンの融解開始温度:86.2℃、 融解終了温度:87.9℃である。従って、融解開始温度と融解終了温度の温度差は1.7℃と僅少値に設定できる。
【0045】
また、ポリエチレングリコールとしては次のようなものを使用できる。例えば、平均分子量:1540のポリエチレングリコールは、融解開始温度:46℃、融解終了温度:47.2℃である。したがって、この融解開始温度と融解終了温度の温度差は1.2℃という僅少値に設定できる。
【0046】
また、平均分子量4000のポリエチレングリコールは、その分子量の最大値は5464、最小値は1689、数平均分子量Mn:2866、重量平均分子量Mw:2935、Z平均分子量Mz:3004、分子量分布分散度(1に近いほどシャープな分布を示す)Mw/Mn:1.0238、Mz/Mw:1.0237である。この平均分子量4000のポリエチレングリコールの融解開始温度:55.1℃、融解終了温度:56.4℃である。したがって、融解開始温度と融解終了温度の温度差は1.3℃という僅少値に設定できる。
【0047】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0049】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。
【0050】
図1は、本発明に係る製造方法によって形成されたプリント基板の断面図である。この図に示されるように、プリント基板10上に配線20が形成されており、この配線20上にはんだバンプ30が設けられている。本実施形態では、プリント基板10のサイズは例えば300mm×300mm(大きなものでは、1000mm×1000mmのものもある)である。また、配線20は、例えば銅箔で形成されたものであり、配線20の幅は例えば30μm〜50μm、厚さは例えば数μmである。さらに、はんだバンプ30は、プリント基板10に搭載される電子部品、外部と接続するためのワイヤやリード等と配線とを電気的に接続するために用いられるものである。
【0051】
次に、図1に示される配線20を有するプリント基板10の製造方法について、図を参照して説明する。図2は、印刷装置を用いて印刷する方法によって上記配線20のパターンを形成する製造工程を示した図である。
【0052】
本実施形態では、印刷装置を用いた方法によって配線パターンを形成するため、まず、印刷装置について説明する。本実施形態に係る印刷装置は、プリント基板10上に溶融した塗布剤40を噴射するノズル50と、ノズル50の周辺を冷たいエア等で冷却する冷却エア吹き出し口55と、ノズル50を駆動する図示しない駆動装置と、駆動装置にノズル50を駆動するデータを出力する図示しない制御装置と、を備えて構成されている。なお、図2において、図2(a)のみにノズル50の概略断面図を示してある。
【0053】
上記印刷装置では、塗布剤40としてパラフィンを主成分とするものを用いる。この塗布剤40の融解開始温度(融点)は例えば53℃であり、融解終了温度は55℃〜58℃である。すなわち、塗布剤40は、温度幅が2℃〜5℃で溶融または凝固の状態変化が完了するものになっている。このため、塗布剤40の温度をわずか2〜5℃変化させるだけで塗布剤40を容易に融解・凝固させることができる。なお、わずかな温度差で塗布剤40を融解・凝固するようにするため、塗布剤40の溶融開始温度と溶融終了温度との温度差は2℃であることが好ましい。また、パラフィンを主成分とするものとは、パラフィン単体のものも含んでいる。
【0054】
塗布剤40においては、パラフィンにアルミナ、カーボン、鉄、SUS、SiC、Si、窒化珪素などの粉末材料を混入することもできる。また、塗布剤40の融点を例えば18〜100℃の範囲で設定することができる。このようにパラフィンに添加する材料は、パターニングの対象となるものの材質に応じて設定することができる。
【0055】
例えば、(1)パラフィン材料100重量%、(2)パラフィンの含有量が40〜90重量%、はんだ材料粉末の(粒子径:ナノ粒子〜数mm)10〜60重量%、更に、松ヤニが0〜20重量%、)、(3)パラフィンの含有量が40〜100重量%でアルミナ(粒子径:ナノ粒子〜数mm)の粉末の含有量が0〜60重量%のもの、(4)パラフィンの含有量が40〜100重量%、SiC(粒子径:ナノ粒子〜数mm)の粉末の含有量が0〜60重量%のもの、(5)パラフィンの含有量が0〜100重量%、銅(粒子径:ナノ粒子〜数mm)の粉末の含有量が0〜60重量%のもの、(6)パラフィンの含有量が40〜100重量%、ガラス(粒子径:ナノ粒子〜数mm)の粉末の含有量が0〜60重量%のものなどがある。また、(7)パラフィンの含有量が40〜100重量%、カーボン・グラファイト(粒子径:ナノ粒子〜数mm)の粉末の含有量が0〜60重量%のもの、(8)パラフィンの含有量が0〜95重量%のものでシルク印刷材料の含有量が5〜100%のもの、(9)パラフィンの含有量が0〜95重量%のものでグリーンマスク印刷材料の含有量が5〜100%のもの等を使うことができる。
【0056】
上記パラフィン材料はCnHmの分子式(n、mは任意の整数)で記述され、nが小さくなると融解温度が低くなり、nが大きくなると融解温度が高くなる。したがって、nが大きいものや小さいものが混ざると、融解温度に幅ができてしまう。そこで、上記のように融解温度の幅が2℃〜5℃になるようにするため、パラフィンの純度を向上させる。具体的に、パラフィンの分子量分布幅が狭いほどパラフィンの純度は高くなる。すなわち、例えば室温付近で2℃の温度差で融解したい場合、分子量分布幅が約50〜3000のものを用いる。また、50℃付近で融解するパラフィン材料においては、分子量分布幅が100〜10000のものを用いる。さらに、90℃付近で融解するパラフィン材料においては、分子量分布幅が500〜100000の幅のものが好ましい。
【0057】
分子量分布幅を狭める方法は、パラフィン材料の精製による。したがって、精製を精度良く行うと、分子量分布幅は小さくなる。そして、分子量分布幅が狭いと純度が高くなると共に、融解温度の幅が小さくなり、狭い温度範囲で融解・凝固を起こすことができるのである。また、この材料は、融解・凝固を何度も繰り返しても使えるので、ノズル50のつまりなどを心配することがなくなる。作業の途中で中断しても、材料(塗布剤40)の加熱ができれば、品質が安定したものを作ることができる。
【0058】
このような塗布剤40が溶融した際の粘度は、例えば1mPa・s(ミリパスカル秒)〜3mPa・sである。この粘度は、水とほぼ同じ粘度であり、溶融した塗布剤40の流れ性は著しく良好であると言える。以上のような特性を有する塗布剤40として、カタメルチャック(商品名、登録商標、Thermofix、米国登録商標)を用いることができる。
【0059】
上記のような塗布剤40を噴射するノズル50は、セラミック材料(例えばアルミナの焼結品)で構成され、ノズル50のノズル穴50aの口径(噴射口の径)は約30μm〜50μmになっている。本実施形態では、ノズル50の口径が配線20の線幅と同じになるように設計されている。さらに、このノズル50は、上記塗布剤40を溶融する温度に設定されている。すなわち、ノズル50からは、溶融した塗布剤40が噴射される。なお、例えば53℃で溶融を開始し、55℃で融解が完全に完了する塗布剤40を用いる場合、ノズル50およびその周辺は例えば56℃〜58℃(最大でも融点より+20℃〜+73℃以内に保つ)に加熱されていることが好ましい。
【0060】
このノズル50の内部(より詳しくはノズル穴50aの周囲)には、ノズル50を加熱するヒータ50bが備えられている。そして、ノズル50はこのヒータ50bによって塗布剤40の融点よりも約10〜20℃高い温度で一定に加熱されるようになっている。
【0061】
駆動装置は、ノズル50からの塗布剤50の供給(例えばエア圧力や加熱ポンプでの加圧でノズル50から押し出す)、ノズル50の移動や塗布剤40の噴射を行うものであり、例えば噴射タイミングはPZT(ピエゾ)(電磁弁も用いることができる)を用いてノズル50を駆動する。このような駆動装置は、例えば数十ナノ秒〜数千ナノ秒でノズル50を駆動する能力を有しており、制御装置から入力されるデータに基づいてノズル50を駆動する。すなわち、直線を描画する場合、駆動装置はPZT(または電磁弁)を開放状態として描画し、点を描画する場合、駆動装置は必要なときのみPZTを開放して描画するようにノズル50を駆動する。
【0062】
制御装置は、CPU、ROM、RAM、ハードディスク等からなる周知のパーソナルコンピュータで構成されるものである。この制御装置には、配線パターンのデータやはんだバンプ30を形成する位置等のデータと共に、プリント基板10上に配線パターンを描画する配線パターン描画プログラムや、配線20上にはんだバンプ30を描画するはんだバンプ描画プログラムが記憶されている。さらに、制御装置には、プリント基板10に設けられた貫通孔11(図3参照)の開口部を塞ぐ閉塞描画プログラムも記憶されている。
【0063】
この場合、駆動装置は微細な線・点を描画できる図示しない微細ノズルと、面を描画できる幅が広い図示しないノズルと、貫通孔11を塞ぐ高粘度の塗布剤40(パラフィンに添加材を混合した材料であり、後述するはんだ剤70に相当)を供給する図示しないノズルと、を併用している。このような多種類のノズルの動きは、制御装置にて、微細な線・点、広い面など、幅広い異種類形状に応じて同時駆動され、お互いが補間され、協力的に作動され、論理的に素早く完成する様にプログラムされる。
【0064】
また、他種類のノズルからは、従来のグリーンの絶縁材料も、また、製品の名称を示す、印刷(一般的なシルク印刷)も同時駆動にて、作動させることができる。
【0065】
よって、従来は、グリーンマスク工程、シルク印刷工程など、多工程に亘って、それぞれが独立した工程であったものを、これらの工程の多くの部分を同時に並行的に行うことが可能になるので、大幅な工程の短縮が可能になる。なお、グリーンマスク工程、シルク印刷工程等は塗布される材料の変化があり、材料の寿命管理は注意を要する。
【0066】
以上が、印刷装置の構成である。このような印刷装置を用いて、プリント基板10上に塗布剤40で構成される配線パターン(すなわちマスクパターン)やはんだバンプ30や、ビアの孔部の開放部を塞ぐ、あるいは、孔全体を埋める機能で描画する。
【0067】
図2(a)に示す工程では、プリント基板10上に銅箔60が貼り付けられたものを用意し、印刷装置に設置する。なお、これらプリント基板10や銅箔60は、本発明の被加工物に相当するものである。
【0068】
そして、制御装置において配線パターン描画プログラムを実行することにより、駆動装置にてノズル50を駆動し、銅箔60上に例えば数μmの厚さの塗布剤40(例えばパラフィン材料100重量%)を噴射して配線パターンを描画する。
【0069】
このように、ノズル50にて塗布剤40を銅箔60上に塗布して配線パターンを描画する際、ノズル50からは溶融した塗布剤40を噴射する。また、銅箔60の温度を、塗布剤40の融点よりも例えば1℃〜5℃低い48℃〜52℃にしておく。
【0070】
そして、塗布剤40は、わずか2℃〜5℃の温度差で融解・凝固がシャープに変化するため、ノズル50から約55℃〜56℃の温度の塗布剤40を銅箔60上に噴射すると、銅箔60の熱伝導効果で、溶融した塗布剤40は瞬時に融点以下になって凝固する。すなわち、ノズル50にて描画される塗布剤40のパターンがそのまま配線パターン(マスクパターン)となる。このように、溶融した塗布剤40が銅箔60に塗布されたと同時に凝固するため、銅箔60上に塗布された塗布剤40の滲みや染み出しが起こらず、ノズル50の口径とほぼ同じ幅の配線パターンを描画することができる。さらに、ノズル50の周囲に設置した冷却エア吹き出し口55から冷却したエアを噴出して、冷却を早めることができ、滲みなどを防止することもできるのでシャープなエッジを形成することができる。
【0071】
上述のように、ノズル50の噴射口の径は30μm〜50μmであるので、この径に対して例えば±5μmの精度で塗布剤40を塗布することができる。なお、パラフィン材料は、銅箔60との密着性がきわめて良好であるので、塗布剤40が凝固すると銅箔60に強固に固定される。
【0072】
このように、ノズル50から溶融した塗布剤40を噴射すると共に、ノズル50を配線パターンの通りに駆動することで、銅箔60上に塗布剤40の配線パターンを形成する。そして、この塗布剤40の配線パターンが銅箔60に対するマスクとなるのである。
【0073】
なお、例えば300mm×300mmのサイズのプリント基板10に配線パターンを描画する場合、50μmのドットとして塗布剤40を塗布すると、ノズル50の駆動回数は約100万回〜500万回になる。ノズル50の移動時間や塗布時間を含め、配線パターンにもよるが、例えば約1時間で配線パターンを描画することができる。
【0074】
続いて、図2(b)に示す工程では、銅箔60をエッチングし、銅箔60のうち不要な部分を除去する。具体的には、塩化第二鉄の溶液に図2(a)に示されるプリント基板10を浸す。これにより、銅箔60のうち、塗布剤40が塗布されていない部分を塩化第二鉄によって溶解する。
【0075】
なお、パラフィン材料は、銅箔60をエッチングする塩化第二鉄の溶液に対し、耐酸化性が著しく良好である。したがって、塗布剤40に数μmの膜厚さがあれば、十分な耐酸化性を有する。
【0076】
図2(c)に示す工程では、銅箔60上の塗布剤40を除去する。具体的には、塗布剤40は温度によって融解・凝固が起こるので、塗布剤40の溶融終了温度(55℃〜58℃)よりも高い温度のお湯をプリント基板10に注ぐことにより、銅箔60上の塗布剤40を剥離することができる。こうして、銅箔60を配線パターンにパターニングすることができる。
【0077】
なお、お湯の中にプリント基板10を浸漬させても良い。この場合、お湯の中に界面活性剤を導入しておくと塗布剤40を水溶液中に溶解することができる。塗布剤40の比重(例えば0.8〜0.9)は水よりも小さいため、塗布剤40が温水に浮くので、プリント基板10を容易に洗浄することができる。より洗浄効果を促進する方法として、超音波洗浄や超微細気泡洗浄の他、上記のように洗浄剤を導入する方法等がある。また、お湯の中に分散剤を入れると、パラフィンを液中に分散させることができるが、お湯の中に分散剤を入れないと、お湯が融解温度以下になったとき、塗布剤40がお湯の液面に浮遊して固化し、膜を張る(再付着がおきる)ので注意を要する。
【0078】
上記のようにしてプリント基板10から剥離した塗布剤40を回収し、リサイクルまたはリユースすることにより、塗布剤40を何度でも利用することができる。
【0079】
図2(d)に示す工程では、はんだバンプ30を形成する。本工程では、はんだバンプ30を形成するためのはんだ剤70を用いる。このはんだ剤70は、パラフィン、粒子状(サブミクロン〜数十μm)のはんだ、そして松ヤニが混合したものであり、ボリューム比は、例えばパラフィンが30%〜40%、はんだが60%〜70%である。そして、このボリューム比でパラフィンおよびはんだが混合されたものに松ヤニが含まれた構成となっている。このようなはんだ剤70は、塗布剤40よりも高い粘度になっている。
【0080】
また、本工程では、配線パターンを形成したノズル50の口径よりも小さい口径を有するノズル51を用いる。これは、配線20上に噴射したはんだ剤70が配線20から流れ落ちてしまうことを防止するためである。したがって、ノズル51の噴射口の径は配線20の幅よりも小さくされたものを用いる。このようなノズル51の噴射口の径は、例えば20μmである。
【0081】
そして、制御装置においてはんだバンプ描画プログラムを実行することにより、駆動装置にてノズル51を駆動し、配線20上に例えばサイズが20μmのドット状のはんだ剤70(パラフィンの含有量が40〜90重量%、はんだ材料粉末(粒子径:ナノ粒子〜数mm)の含有量が10〜60重量%、更に、松ヤニが0〜20重量%)を塗布する。
【0082】
また、同時にパラフィンの含有量が0〜95重量%のものでシルク印刷材料の含有量が5〜100重量%のもの、パラフィンの含有量が0〜95重量%のものでグリーンマスク印刷材料の含有量が5〜100重量%のものも塗布することができる。
【0083】
すなわち、図2(a)に示す工程と同様に、ノズル51をはんだ剤70の融点以上に加熱しておき、プリント基板10をはんだ剤70の融点以下の温度にしておく。このような状態でノズル51から溶融したはんだ剤70を、はんだバンプ30を形成したい配線20上に噴射すると、溶融したはんだ剤70が瞬時に融点以下になり、ドット状に凝固する。
【0084】
この後、プリント基板10を加熱してリフロー工程を行う。具体的に、配線20上に凝固したドット状のはんだ剤70において、パラフィンおよび松ヤニを溶融したり、気化したり、洗浄にて流し落とし、配線20上にはんだのみを残すことにより、ドット状のはんだバンプ30を形成する。このようにして、図1に示すプリント基板10が完成する。
【0085】
さらにこの後、図1に示されるプリント基板10に設けられた図示しない貫通穴を塗布剤40(例えば、パラフィンの含有量が40〜100重量%でアルミナ(粒子径:ナノ粒子〜数mm)の粉末の含有量が0〜60重量%のものや、パラフィンの含有量が40〜100重量%、ガラス(粒子径:ナノ粒子〜数mm)の粉末の含有量が0〜60重量%のものなど)で塞ぐ。具体的に、図3に示す工程を参照して説明する。図3は、図2に続く製造工程を示した図である。
【0086】
図3に示す工程では、プリント基板10に設けられた貫通孔11を塗布剤40で塞ぐ。すなわち、プリント基板10に配線20を形成した後、例えばグリーンシート加工を行うような場合、プリント基板10の貫通孔11に異物等が入り込んでしまうことを防止するために貫通孔11の開口部を塞ぐのである。
【0087】
そして、制御装置において閉塞描画プログラムを実行することにより、駆動装置にてノズル52を駆動し、貫通孔11の開口部上に塗布剤40を塗布する。すなわち、図2(a)に示す工程と同様に、ノズル52から溶融した塗布剤40を貫通孔11の開口部に噴射し、貫通孔11の開口部付近を融点以下の温度にしておくことで塗布剤40を凝固する。これにより、図3に示される蓋部41を形成する。
【0088】
また、パラフィンの含有量が0〜100重量%、銅(粒子径:ナノ粒子〜数mm)の粉末の含有量が0〜60重量%のものを用い、貫通孔11を全部埋め、導電性を持たせることも可能である。
【0089】
なお、本工程では、貫通孔11の開口部に溶融した塗布剤40(例えば、パラフィンの含有量が40〜100重量%でアルミナ(粒子径:ナノ粒子〜数mm)の粉末の含有量が0〜60重量%のものや、パラフィンの含有量が40〜100重量%、ガラス(粒子径:ナノ粒子〜数mm)の粉末の含有量が0〜60重量%のものなど)を噴射するため、配線パターンを形成する際の塗布剤40の粘度よりも大きい粘度のものを用いることが好ましい。また、本工程で用いるノズル52は、配線パターンを描画したものを用いても良いし、新たに用意しても構わない。すなわち、プリント基板10に設けられた貫通孔11のサイズに適した噴射口を有するノズルを用いるようにすれば良い。
【0090】
上記のようにして形成した蓋部41が不要になった場合は、プリント基板10に蓋部41の融点以上の温度のお湯を注ぐだけで、蓋部41を溶融して剥離することができる。
【0091】
以上、説明したように、本実施形態では、溶融した塗布剤40を銅箔60に塗布したと同時に凝固させることができるので、塗布剤40の滲みや染み出しを防止することができる。すなわち、塗布剤40は、溶融して凝固する温度幅が2℃〜5℃になっているので、銅箔60の温度を溶融した塗布剤の温度からわずか2〜5℃低くしておくことで、塗布剤40を素早く凝固することができる。これにより、銅箔60上に高精度のマスクを形成することができ、このマスクのマスクパターンに基づいて精度良く被加工物をパターニングすることができる。
【0092】
また、従来のように有機溶剤を用いないため、有機溶剤の廃棄等の煩雑な工程や、有機溶剤を用いる工程を削減できる。同様に、マスク材を用いてフォトレジストを露光することはないため、露光装置やそれを用いた工程を削減できる。
【0093】
本実施形態では、配線20上にはんだバンプ30を形成している。従来では印刷によってはんだを印刷していたため位置ずれが起こっていた。しかしながら、本実施形態では、制御装置および駆動装置にてはんだバンプ30を形成する場所にノズル51を移動させることができる。このため、配線20上に正確にはんだバンプ30を形成することができる。このようなはんだバンプ30によって、配線20に対して他の電子部品やワイヤ等との電気的接続を行うようにすることができる。
【0094】
さらに、塗布剤40がわずかな温度で凝固する性質を用いることで、プリント基板10に設けられた貫通孔11の開口部に蓋部41を形成することや、貫通孔11の内部に塗布剤40を凝固させて貫通孔11を埋めるようにすることもできる。これにより、貫通孔に異物などを入り込ませないようにすることができる。塗布剤40は、わずか2℃〜5℃の温度差で融解・凝固するため、蓋部41等が不要になった場合、温度を加えるだけで容易に除去できる。
【0095】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態では、溶融した塗布剤40(例えば、パラフィン材料100重量%の箔形状または微粉末であり、粒子径はナノ粒子〜数mm)を銅箔60上に配線パターンとして塗布するのではなく、粉末状の塗布剤40を銅箔60上で局所的に加熱して融解・凝固させることで配線パターンのマスクを形成することが特徴である。
【0096】
図4は、本発明の第2実施形態に係る製造方法によって銅箔60上に塗布剤40の配線パターンを描画する製造工程を示した図である。本実施形態では、レーザ光を用いた方法によって配線パターンを形成するため、まず、レーザ光照射装置について説明する。このレーザ光照射装置は、レーザ光を照射する半導体レーザ80と、半導体レーザ80から照射されるレーザ光を集光する集光レンズ81と、半導体レーザ80を駆動する図示しない駆動装置と、駆動装置に半導体レーザ80を駆動するデータを出力する図示しない制御装置と、を備えて構成されている。
【0097】
上記半導体レーザ80からは、一定周期のパルスレーザ光が照射される。また、レーザ光は集光レンズ81にて例えば30μm〜50μmのスポットに集光されるようになっている。すなわち、レーザ光の集光スポットが銅箔60にて形成される配線20の線幅に相当する。
【0098】
駆動装置や制御装置は、第1実施形態と同じ構成のものが採用される。本実施形態では、駆動装置は、半導体レーザ80の移動やレーザ光照射を駆動するものとして用いられる。また、制御装置には、配線パターンのデータやこのデータを用いた配線パターン描画プログラムが記憶されている。
【0099】
以上が、レーザ光照射装置の構成である。このようなレーザ光照射装置を用いて、プリント基板10上に塗布剤40で構成される配線パターンのマスクを形成する。
【0100】
すなわち、図4(a)に示す工程では、プリント基板10上に銅箔60が貼り付けられたものを用意し、レーザ光照射装置に設置する。そして、銅箔60上に粉末状の塗布剤40を均一に分布させる。
【0101】
本実施形態では、塗布剤40として第1実施形態と同じ特性のものを用いるが、本工程においては塗布剤40が固化して粉末状になったものを用いる。このような粉末状の塗布剤40のサイズは、例えば数μm〜10μmであり、この粉末状の塗布剤40を例えば50μm〜100μmの厚さで銅箔60上に均一に敷き詰める。なお、粉末状の塗布剤40を均一に敷き詰める際、ヘラやスキージを用いると良い。また、粉末状の塗布剤40は、パラフィンが凝固して固化したものであり、粉末状の塗布剤40に粘着性はない。したがって、塗布剤40が銅箔60上に敷き詰められても、塗布剤40が銅箔60に密着することはない。
【0102】
この後の工程で、粉末状の塗布剤40をレーザ光の熱によって融解するため、粉末状の塗布剤40としてパラフィンにレーザ光を吸収しやすいカーボン材料(数重量%〜50重量%)を添加したものを用いると良い。これにより、半導体レーザ80の加熱効率を向上でき、粉末状の塗布剤40を均一に、かつ、素早く融解することができる。
【0103】
なお、粉末状の塗布剤40としてパラフィンに絶縁性のアルミナ粒子(数重量%〜50重量%)を添加したものを用いても良い。このような塗布剤40を用いても、レーザの加熱効率を向上させ、粉末状の塗布剤40を均一に融解させることができる。
【0104】
また、パラフィンの含有量が40〜90重量%、はんだ材料粉末(粒子径:ナノ粒子〜数mm)の含有量が10〜60重量%、さらに松ヤニが0〜20重量%、の粉末をプリント基板10上にへらなどで敷き詰める。はんだを溶解させたい部分にレーザ光を照射し、粉末状の塗布剤40を溶融する。その他の部分は粉末のままであるので、簡単に取り除くことができる。この様にすると、プリント基板10上にはんだ接合部を簡単に作成することができる。
【0105】
そして、図4(b)に示す工程では、銅箔60のうち配線20となる部分の塗布剤40を溶融する。具体的に、制御装置にて配線パターン描画プログラムを実行することにより、駆動装置で半導体レーザ80を駆動し、銅箔60上にレーザ光を照射して粉末状の塗布剤40を加熱する。これにより、レーザ光が集光レンズ81で集光されたスポット径で粉末状の塗布剤40が融点以上に加熱されて融解する。レーザ光源の集光レンズ81の集光精度は高く、スポット径が30μm〜50μmの狙いに対し約±5μmの精度でレーザ光を照射することができる。
【0106】
上記のようにして、レーザ光によって粉末状の塗布剤40を融解した後、駆動装置によって半導体レーザ80を配線パターンに合わせて移動させる。これにより、レーザ光が照射されなくなった塗布剤40の温度は融点以下に下がり、塗布剤40は凝固する。すなわち、半導体レーザ80でレーザ光を照射しつつ、半導体レーザ80を移動させることで、銅箔60上のうちレーザ光を照射した部分の粉末状の塗布剤40を次々と溶融・凝固して配線パターンを描画することができる。
【0107】
なお、上記駆動装置にて銅箔60上で半導体レーザ80を移動させているが、半導体レーザ80を一カ所に固定しておき、半導体レーザ80から照射されるレーザ光を例えば反射ミラーで銅箔60上に走査させるようにしても構わない。これにより、反射ミラーの角度(姿勢)を変えるだけでよいので、配線パターンの描画時間を短縮できる。また、反射ミラーとプリント基板10との動きを同期させれば、さらに描画時間を短縮できる。
【0108】
図4(c)に示す工程では、図4(b)の工程で溶融されなかった粉末状の塗布剤40を銅箔60上から取り除く。粉末状の塗布剤40は銅箔60に密着していないので、プリント基板10を裏返したり風をかけたりすること等によって、銅箔60上から粉末状の塗布剤40を除去することができる。これにより、図4(c)に示されるように、銅箔60上に塗布剤40によって構成される配線パターンのマスクを形成することができる。
【0109】
この後、図2(b)、(c)に示す工程を行うことで、プリント基板10上に配線20を形成する。また、図2(d)に示す工程を行うことで、配線20上にはんだバンプ30を形成する。こうして、図1に示されるプリント基板10が完成する。さらに、図3に示す工程を行うことで、プリント基板10に設けられた貫通孔11の開口部を塞ぐことができる。
【0110】
以上、説明したように、本実施形態では、銅箔60上に敷かれた粉末状の塗布剤40のうち、マスクとなる部分の塗布剤40のみをレーザ光で加熱して溶融・凝固させている。すなわち、局所的に加熱された場所の粉末状の塗布剤40が加熱されなくなると同時に凝固する。これにより、局所的に加熱された塗布剤40の滲みや染み出しを防止することができ、銅箔60上に高精度のマスクパターンのマスクを形成することができる。
【0111】
また、本実施形態では、レーザ光で塗布剤40を溶融しているため、第1実施形態のように溶融した塗布剤40を噴射させるノズル50やノズル50を加熱する加熱手段が不要になる。
【0112】
(第3実施形態)
本実施形態では、上記第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態では、例えば3次元ブロックのような立体的なものに塗布剤40でマスクすることが特徴である。
【0113】
図5は、金属ブロックに塗布剤40をマスクして加工する様子を示した図である。この図に示されるように、被加工物である金属ブロック90を用意し(図5(a))、この金属ブロック90の表面に第1実施形態と同様の方法で溶融した塗布剤40をノズルから噴射して塗布し、金属ブロックの表面で凝固させる(図5(b))。これにより、金属ブロック90の側面を塗布剤40でマスクする。なお、金属ブロック90は立体的なものであるので、ノズルが金属ブロック90の周囲を移動することにより、金属ブロック90の側面に溶融した塗布剤40を塗布することができる。
【0114】
この後、金属ブロック90をエッチング溶液に浸すことで、金属ブロック90に塗布された塗布剤40のうち開口した部分をエッチングする(図5(c))。これにより、金属ブロック90に溝91を形成する。そして、エッチング後、金属ブロック90にお湯を注ぐことにより、金属ブロック90に塗布された塗布剤40を剥離する(図5(d))。このようにして、立体物である金属ブロック90を加工することができる。
【0115】
以上のように、平面的なものだけでなく、立体的なものに対しても塗布剤40でマスクキングすることができると共に、立体的なものをパターニングすることができる。
【0116】
(第4実施形態)
本実施形態では、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。上記各実施形態では、プリント基板10に回路パターンを形成するため、銅箔60が貼り付けられたプリント基板10上にノズル50を介して塗布剤40を噴射して配線パターンを描画することにより、当該塗布剤40をマスクとしていた。しかし、本実施形態では、プリント基板10上に塗布剤40で構成されるシートを設置し、当該シートにレーザを照射することによって、配線パターンを直接描画することが特徴となっている。以下、本実施形態に係る配線パターンの描画方法について説明する。
【0117】
したがって、本実施形態では、配線パターンを描画するための描画シートを用いる(後述する図8(a)参照)。具体的に、描画シートは、母体としてのPETシート(本発明のシート部材に相当)と、当該PETシートの片面に塗布された離形材と、当該離形材上に塗布された塗布剤40と、を備えて構成されている。
【0118】
PETシートは、例えばポリエステル等の樹脂で形成されたシート状のものである。また、耐熱性を有するイミドのシート(例えばカプトンシート)や、その他、高耐熱性シートも用いることができる。本実施形態では、PETシートはプリント基板10に対応した形状をなしている。また、PETシートの厚さは例えば100μmである。なお、PETシートは、塗布剤40を融解する温度に耐えられるものであることが好ましい。離形材は、PETシートから塗布剤40を剥がしやすくする周知のものである。
【0119】
また、塗布剤40は、上記各実施形態で用いられたものと同様のものであり、配線パターンを描画するために用いられる。すなわち、配線パターンを描画する前では、塗布剤40は、離形材を介してPETシート上に均一にシート状に塗布されて固化した状態になっている。このような塗布剤40の厚さは自由に設計可能であり、例えば数μm〜3mmである。
【0120】
次に、上記描画シートを用いた配線パターンのマスクの形成について説明する。本実施形態では、上記第2実施形態で用いられたレーザ光照射装置を用いて、配線パターンのマスクを形成する。図8は、本実施形態に係る製造方法によってプリント基板10の銅箔60上に塗布剤40の配線パターンを描画する製造工程を示した図である。
【0121】
図8(a)に示す工程では、プリント基板10上に描画シート100を設置する。具体的には、銅箔60が設けられたプリント基板10と、離形材を介して塗布された塗布剤40が設けられた描画シート100を用意する。そして、銅箔60と塗布剤40とが向き合うように銅箔60上に描画シート100を置く。
【0122】
図8(b)に示す工程では、描画シート100のうちPETシート200を剥離する。上述のように、描画シート100においてPETシート200と塗布剤40とは離形材を介しているため、塗布剤40を銅箔60上に置かれた状態でPETシート200から塗布剤40を剥がす。これにより、銅箔60上に塗布剤40が設置された状態となる。
【0123】
図8(c)に示す工程では、レーザ光照射装置を用いて、配線パターンを描画する。すなわち、図4(b)に示される工程と同様に、レーザ光照射装置にて配線パターン描画プログラムを実行することにより、駆動装置で半導体レーザ80を駆動し、銅箔60側にレーザ光を照射し、シート状の塗布剤40のうちレーザ光が集光レンズ81で集光された部分を加熱する。これにより、シート状の塗布剤40のうちレーザ光が照射された部分の塗布剤40のみを融点以上に加熱して融解する。
【0124】
そして、駆動装置によって半導体レーザ80を配線パターンに合わせて移動することで、レーザ光が照射されなくなった部分の塗布剤40の温度が融点以下に下がる。こうして、塗布剤40は銅箔60に融合し、銅箔60に強固に接合される。したがって、半導体レーザ80でレーザ光を照射しながら当該半導体レーザ80を駆動装置にて配線パターンに従って移動させることで、シート状の塗布剤40のうち配線パターン部分を銅箔60に強固に接合する。
【0125】
図8(d)に示す工程では、上記図8(c)に示される工程で、シート状の塗布剤40のうちレーザ光が照射されなかった部分を除去する。例えば、吸引、振動、重力等を利用して、物理的な方法で塗布剤40のうち未接合部を剥がし、銅箔60上に配線パターン状に描画された塗布剤40のみを残す。
【0126】
図8(e)に示す工程では、銅箔60をエッチングし、配線20を形成する。すなわち、銅箔60上に残された配線パターン状の塗布剤40をマスクとしてエッチングすることにより、配線20を形成する。こうして、希望とする回路パターンを有するプリント基板10が完成する。
【0127】
以上説明したように、一定の膜厚で形成されたシート状の塗布剤40のうち、配線パターン部分を半導体レーザ80で局所的に精度良く融解し、銅箔60に密着させているので、微細な形状を精度良く形成することができる。また、上記方法は、従来の印刷工程と比較して単純であるので、大幅に工程が短縮できるし、かつ精度良くマスク等の所望のパターンを形成することができる。
【0128】
(第5実施形態)
本実施形態では、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態では、上記描画シート100を用いて、プリント基板10上の銅箔60を配線パターンにパターニングすると共に、配線パターンのうち所望の場所にはんだバンプ30を形成することが特徴となっている。以下、本実施形態に係る配線パターンの描画方法について説明する。
【0129】
図9は、本実施形態に係る製造方法によって、プリント基板10の銅箔60上にはんだバンプ30および塗布剤40の配線パターンを描画する製造工程を示した図である。また、図10は、図9に続く製造工程を示した図である。
【0130】
図9(a)に示す工程では、描画シート110を用意し、プリント基板10の銅箔60上に設置する。本工程では、はんだ材料として鉛フリーはんだが混入された塗布剤42が設けられた描画シート110を用いる。当該はんだ材料入りの塗布剤42は、上記と同様に、離形材を介してPETシート200に塗布されている。そして、上記図8(b)に示される工程と同様に、描画シート110のうちPETシート200のみを剥がし、銅箔60上に塗布剤42を載せた状態とする。
【0131】
図9(b)に示す工程では、レーザ光照射装置を用いて、はんだバンプ30のパターンを描画する。本工程では、図8(c)に示される工程と同様に、レーザ光照射装置にてはんだバンプ30の描画プログラムを実行することにより、駆動装置で半導体レーザ80を駆動し、シート状の塗布剤42のうちはんだバンプ30に該当する部分の塗布剤42のみを融解して銅箔60に融合し、銅箔60に仮固定する。
【0132】
図9(c)に示す工程では、上記図8(c)に示される工程と同様に、シート状の塗布剤42のうち銅箔60に接合されなかった未接合部を剥がし、プリント基板10を加熱して仮固定されたはんだバンプ30を銅箔60上に強固に接合する。
【0133】
図9(d)に示す工程では、はんだバンプ30が設けられた銅箔60上に描画シート100を置き、レーザ光照射装置を用いて配線パターンを描画する。本工程では、はんだ材料が混入されていない塗布剤40で構成された描画シート100を銅箔60上に載せ、描画シート100のうちPETシートのみを剥がし、図8(c)に示される工程と同様に配線パターンを描画する。このとき、配線パターンの配線の幅がはんだバンプ30よりも広くなるように配線パターンを描画する。配線20上に、確実にはんだバンプ30を載せた状態のものを形成するためである。なお、念のため、はんだバンプ30の周辺部に、レーザ光を2度照射する方法が有効である。
【0134】
図10(a)に示す工程では、上記図8(d)に示される工程と同様に、塗布剤40のうち配線パターン以外の部分を除去する。また、図10(b)に示す工程では、図8(e)に示される工程と同様に、銅箔60をエッチングして配線20を形成する。
【0135】
図10(c)に示す工程では、図2(c)に示される工程と同様に、配線パターン状の銅箔60上の塗布剤40や、銅箔60上に設けられたはんだバンプ30を包み込むように設けられた塗布剤40を除去する。これにより、図1に示されるものと同様のものが完成する。
【0136】
このような方法によっても、プリント基板10に回路パターンを形成することができ、さらに配線20上にはんだバンプ30を形成することもできる。当該方法は、あらかじめはんだバンプ30を形成し、その後に配線パターンを形成するようにしているため、製造工程を大幅に短縮できる。
【0137】
(第6実施形態)
本実施形態では、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態では、プリント基板10に形成された配線パターンのうち所望の場所に描画シート110を用いてはんだバンプ30を形成することが特徴となっている。
【0138】
図11は、本実施形態において、配線パターン上にはんだバンプ30を形成する製造工程を示した図である。本実施形態では、上記第2実施形態で用いられたレーザ光照射装置を用いて、配線パターン上にはんだバンプ30を形成する。
【0139】
図11(a)に示す工程では、配線パターン上にはんだバンプ30のパターンを描画する。これを行うため、まず、はんだ材料が混入された塗布剤42を備えて構成される描画シート110を用意し、当該塗布剤42と配線パターンとが向き合うようにプリント基板10上に描画シート110を置く。続いて、レーザ光照射装置を用いて配線パターン上にはんだバンプ30のパターンを描画する。このとき、半導体レーザ80からレーザ光をPETシートに向けて直接照射し、PETシート200を通過させたレーザ光を塗布剤42に照射する。これにより、塗布剤42のうちレーザ光を照射した部分を配線パターン上に仮固定する。
【0140】
図11(b)に示す工程では、例えば図8(b)に示される工程と同様に、塗布剤42からPETシート200を剥離する。なお、上述のように、離形材によって塗布剤42をPETシート200から容易に剥がすことができる。また、図11(c)に示す工程では、塗布剤42のうち、仮固定以外の場所を除去する。本工程では、例えば図2(c)に示される工程と同様にお湯を用いて塗布剤42を除去する。
【0141】
図11(d)に示す工程では、塗布剤42を加熱することで、はんだ材料を配線20に固定し、はんだバンプ30を形成する。すなわち、図11(c)の工程を終えた段階では、配線パターン上に形成された塗布剤42は仮固定された状態であり、配線パターンを構成する銅箔60と強固に接合していない状態になっている。したがって、本工程において加熱処理を行うことにより、塗布剤42のうちはんだ材料を銅箔60に強固に接合する。こうして、配線20上にはんだバンプ30が形成されたものが完成する。
【0142】
以上説明したように、描画シート110を用いてはんだバンプ30のパターンを配線パターン上に直接描画することもできる。このような方法を採用しても、はんだバンプ30のパターンを形成することができる。
【0143】
(第7実施形態)
本実施形態では、上記第6実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態では、描画シート110からPETシート200を剥がした後、塗布剤42をはんだバンプ30のパターンにパターニングすることが特徴となっている。
【0144】
図12は、本実施形態において、配線パターン上にはんだバンプ30を形成する製造工程を示した図である。図12(a)に示す工程では、描画シート110を用意し、当該描画シート110に塗布された塗布剤42と配線パターンとが向き合うようにプリント基板10上に描画シート110を載せる。また、図12(b)に示す工程では、図8(b)に示される工程と同様に、シート状の塗布剤42からPETシート200を剥離する。
【0145】
図12(c)に示す工程では、レーザ光照射装置を用いて配線パターン上にはんだバンプ30のパターンを描画する。これにより、塗布剤42のうちはんだバンプ30となる部分を配線パターン上に仮固定する。
【0146】
この後、上記図11(c)に示される工程と同様に、塗布剤42のうち仮固定以外の場所を除去し、図11(d)に示される工程と同様に、塗布剤42を加熱処理してはんだ材料を配線20に強固に接合して、はんだバンプ30を形成する。
【0147】
以上説明したように、塗布剤42からPETシート200を剥離した後、塗布剤42にはんだバンプ30のパターンをパターニングすることもできる。このような方法により、レーザ光を照射するに際し、PETシート200を介在させずにレーザ光を塗布剤42に直接照射することで、レーザ光の焦点位置をより高精度にすることができ、精度の良いはんだ付けを行うことができる。
【0148】
(第8実施形態)
本実施形態では、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態では、配線パターン上の所望の場所にはんだバンプ30を形成する場合、プリント基板10上に置いた描画シート110を移動させることで、PETシート200上の塗布剤42を有効利用することが特徴となっている。以下、本実施形態に係る製造方法について説明する。
【0149】
図13は、本実施形態において、配線パターン上にはんだバンプを形成する製造工程を示した図である。図13(a)に示す工程では、配線パターンのうち1カ所にはんだバンプ30を仮固定する。このため、まず、描画シート110を用意し、描画シート110をプリント基板10上で移動させることができる図示しない移動装置に設置する。当該移動装置には、あらかじめ描画シート110の塗布剤42のサイズや座標等の位置を示すパラメータを入力しておく。
【0150】
そして、描画シート110に塗布された塗布剤42と配線パターンとが向き合うように、詳しくはPETシート200上の塗布剤42の端が配線パターンのうちはんだバンプ30の形成予定場所に位置するようにプリント基板10上に描画シート110を載せる。この後、半導体レーザ80からレーザ光を照射して、塗布剤42を配線パターン上に仮固定する。
【0151】
図13(b)に示す工程では、配線パターンのうち、図13(a)に示される工程で塗布剤42が仮固定された場所とは異なる場所に塗布剤42を仮固定する。具体的には、移動装置により、PETシート200上の塗布剤42の端が配線パターンのうち次のはんだバンプ30の形成予定場所に位置するように描画シート110を移動させる。そして、半導体レーザ80からレーザ光を照射し、配線パターン上に塗布剤42を仮固定する。
【0152】
図13(c)に示す工程では、移動装置によって描画シート110を移動させ、図13(b)に示される工程と同様に配線パターン上に塗布剤42を仮固定する。
【0153】
以後、配線パターン上にはんだバンプ30を形成する場所に、PETシート200上の塗布剤42の端が位置するように移動装置によって描画シート110を移動させ、上記図13(a)〜図13(c)に示される工程を繰り返すことにより、配線パターン上にはんだバンプ30となる塗布剤42をパターニングする。
【0154】
この後、図11(d)に示される工程と同様に、塗布剤42に対する加熱処理を行うことにより、塗布剤42のうちはんだ材料を銅箔60に強固に接合する。このようにして、はんだバンプ30を形成することもできる。
【0155】
以上説明したように、本実施形態では、描画シート110を移動させて塗布剤42の端にレーザ光を照射し、配線パターン上にはんだバンプ30となる塗布剤42を仮固定することが特徴となっている。これにより、PETシート200上の塗布剤42を有効利用することができる。
【0156】
(第9実施形態)
本実施形態では、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。上記のように、配線20に対するはんだ付けは、シート状の塗布剤42にレーザ光を照射し、塗布剤42を仮固定した後、熱処理することで行っている。しかしながら、プリント基板10には微細回路や大きな電流を流す配線など、様々な配線パターンが形成される。このため、各配線のタイプに応じたはんだバンプ30を形成することが好ましい。
【0157】
そこで、本実施形態では、塗布剤42のうちはんだバンプ30となる部分を配線パターン上に仮固定するに際し、形成するはんだバンプ30のサイズに応じて出力が異なる半導体レーザを用いることが特徴となっている。用いる電流量が異なる回路を複数備えた混在型のプリント基板10に対して適用することができる。
【0158】
図14は、異なる半導体レーザを用いて塗布剤42を仮固定する様子を示した図である。このうち、図14(a)は、微細な配線パターンに塗布剤42のうちはんだバンプ30となる部分を仮固定する様子を示した図である。
【0159】
この図に示されるように、微細な配線パターンに対しては、当該微細な配線パターンに応じたはんだバンプ30を形成できる厚さの塗布剤42を備えた描画シート110を用意し、さらに出力パワーが小さい半導体レーザ82を用いて塗布剤42にレーザ光を照射する。また、微細なはんだバンプ30をパターニングするため、上記半導体レーザ82に対応した微細な集光レンズ83を用いることが好ましい。
【0160】
また、微細ではないが、バスバー21ほど大きな電流を流さない配線に対しては、上記半導体レーザ82よりも出力が大きい半導体レーザ84を用いて塗布剤42にレーザ光を照射する。この場合、半導体レーザ84に対応した集光レンズ85を用いることが好ましい。
【0161】
このように、微細回路や中程度の回路の配線パターンに対しては、上記の半導体レーザ82、84を組み合わせて用いることで塗布剤42を配線パターン上に仮固定し、その後熱処理することで、はんだバンプ30を形成することができる。
【0162】
図14(b)は、バスバー21に塗布剤42のうちはんだバンプ30となる部分を仮固定する様子を示した図である。バスバー21は、例えば上記微細な回路の配線パターンよりも厚い銅箔により形成されたものである。
【0163】
図14(b)に示されるように、バスバー21に対しては、当該バスバー21に応じたはんだバンプ30を形成できる厚さ、すなわち図14(a)に示された塗布剤42よりも厚い塗布剤42を備えた描画シート110を用意し、さらに上記半導体レーザ82、84よりも出力パワーが大きい半導体レーザ86を用いて塗布剤42にレーザ光を照射する。この場合においても、半導体レーザ86に対応した集光レンズ87を用いることが好ましい。
【0164】
このように、配線パターンの種類に応じたはんだバンプ30を形成する場合においては、形成したいはんだバンプ30のサイズに応じたシート状の塗布剤42にそれぞれ対応した半導体レーザ82、84、86からレーザ光を照射する。
【0165】
また、図14(c)は、バスバー21の広範囲に塗布剤42のうちはんだバンプ30となる部分を仮固定する様子を示した図である。この場合、レーザ光照射装置の駆動装置によって半導体レーザ86を移動させることで、バスバー21上の広範囲に塗布剤42を仮固定することができる。
【0166】
以上説明したように、プリント基板10上の回路のタイプに応じた配線パターンに対応させて厚みの異なる塗布剤42を用いると共に、配線パターンに対応した半導体レーザ82、84、86を用いることで、配線パターン上に精度良くはんだバンプ30を形成することができる。
【0167】
(第10実施形態)
本実施形態では、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。上記第9実施形態では、バスバー21等のサイズが大きい配線に対しては、半導体レーザ86を移動させて塗布剤42をバスバー21上に仮固定していたが、本実施形態では、大型の半導体レーザを用いると共に、当該大型の半導体レーザを移動させずに塗布剤42を仮固定することが特徴となっている。
【0168】
図15は、本実施形態において、大型の半導体レーザを用いてはんだバンプ30を形成する製造工程を示した図である。図15(a)に示す工程では、バスバー21上に塗布剤42を仮固定する。具体的には、まず、バスバー21のサイズに応じたはんだバンプ30を形成できる厚さの塗布剤42を備えた描画シート110を用意する。また、バスバー21を移動しなくてもレーザ光を照射するのみでバスバー21上に塗布剤42を仮固定できる大型の半導体レーザ88を備えたレーザ光照射装置を用意する。
【0169】
そして、半導体レーザ88をプリント基板10のバスバー21上に配置し、半導体レーザ88からレーザ光を照射して集光レンズ89で集光して塗布剤42に照射する。これにより、塗布剤42をバスバー21上に仮固定する。バスバー21において図15(a)に示される場所以外の場所についても同様に塗布剤42を仮固定する。
【0170】
この後、図15(b)に示す工程では、図11(d)に示される工程と同様に、バスバー21上の仮固定された塗布剤42を加熱処理することで、バスバー21上にはんだバンプ30を形成する。
【0171】
以上説明したように、はんだバンプ30を形成したい場所に応じて、大型の半導体レーザ88を用いることにより、レーザ光を照射しながら半導体レーザ88を移動させなくても塗布剤42を仮固定することができる。
【0172】
(他の実施形態)
上記塗布剤40もしくははんだ剤70は、パラフィンを主成分とするもので構成されているが、ポリエチレングリコールを主成分とするもので構成されていても構わない。
【0173】
第1、第2実施形態では、プリント基板10の貫通孔11を塞ぐ工程までを行っているが、配線パターンの描画によって配線20を形成する工程までを行うようにしても構わない。同様に、はんだバンプ30を形成する工程までを行うようにしても構わない。また、はんだバンプ30を形成せずに蓋部41を形成する工程を行っても良い。
【0174】
第1、第2実施形態では、プリント基板10上に1層の配線20の層のみを形成しているが、上記方法によって多層の配線層を形成するようにしても構わない。
【0175】
上記第1実施形態では、プリント基板10の貫通孔11の開口部に蓋部41を形成しているが、この貫通孔11に塗布剤40を埋めるようにしても構わない。図6は、プリント基板10の貫通孔11に塗布剤40を埋める工程を示した図である。この図に示されるように、プリント基板10に設けられた貫通孔11に溶融した塗布剤40をノズル52から噴射する。プリント基板10は融点以下にされているので、貫通孔11に塗布された塗布剤40は貫通孔11の内部で凝固する。こうして塗布剤40で貫通孔11を埋めることができる。
【0176】
上記各実施形態では、制御装置にプリント基板やパターニングするもの(被加工物)のサイズや位置情報をあらかじめデータとして記憶しておくことの他に、プリント基板10や被加工物をカメラで撮影し、画像処理することによって配線20や貫通孔11の位置を正確に検出するようにしても良い。
【0177】
上記第1、第2実施形態では、銅箔60上に塗布剤40を描画してエッチングすることにより、配線20を形成する実施例について説明しているが、加工品をパターニングする場合、加工品にドットを形成する場合、加工品に絵を描画する場合等に上記各実施形態の方法を適用することができる。また、加工品として、紙、布、金属箔、金属シート等などを用いることができる。
【0178】
第3実施形態では、ブロック状のものにマスクを形成していたが、図7に示されるように、球体の球面に塗布剤40を形成し、例えばエッチングする等の加工を行うようにしても良い。図7は、球体に塗布剤40をマスキングして加工する様子を示した図である。この図に示されるように、被加工物として球体95を用意し(図7(a))、球体95の球面を塗布剤40でマスキングする(図7(b))。そして、球体95をエッチング溶液に浸してエッチングし、溝96を形成する(図7(c))。この後、球体95にお湯を注ぎ、球体95の側面に凝固した塗布剤40を溶融して除去する(図7(d))。このように、球体95の球面に塗布剤40をマスクしてパターニングするようにしても良い。
【0179】
第8実施形態では、PETシート200に塗布された塗布剤42のうち端の部分にレーザ光照射を照射しているが、移動装置によって描画シート110を移動させることで、塗布剤42のうちレーザ光が照射されていない場所をはんだバンプ30の形成予定場所に移動させ、レーザ光を照射して塗布剤42を仮固定するようにしても構わない。
【0180】
第9実施形態では、第8実施形態と同様に、描画シート110を移動させることで塗布剤42を有効利用するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】本発明に係る製造方法によって形成されたプリント基板の断面図である。
【図2】印刷装置を用いて印刷する方法によって上記配線のパターンを形成する製造工程を示した図である。
【図3】図2に続く製造工程を示した図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る製造方法によって銅箔上に塗布剤の配線パターンを描画する製造工程を示した図である。
【図5】金属ブロックに塗布剤をマスクして加工する様子を示した図である。
【図6】プリント基板の貫通孔に塗布剤を埋める様子を示した図である。
【図7】球体に塗布剤をマスクして加工する様子を示した図である。
【図8】第4実施形態に係る製造方法によってプリント基板の銅箔上に塗布剤の配線パターンを描画する製造工程を示した図である。
【図9】第5実施形態に係る製造方法によってプリント基板の銅箔上にはんだバンプおよび塗布剤の配線パターンを描画する製造工程を示した図である。
【図10】図9に続く製造工程を示した図である。
【図11】第6実施形態において、配線パターン上にはんだバンプを形成する製造工程を示した図である。
【図12】第7実施形態において、配線パターン上にはんだバンプを形成する製造工程を示した図である。
【図13】第8実施形態において、配線パターン上にはんだバンプを形成する製造工程を示した図である。
【図14】第9実施形態において、異なる半導体レーザを用いて塗布剤42を仮固定する様子を示した図であり、(a)は微細な配線パターンに対して、(b)はバスバーに対して、(c)はバスバーの広範囲に対して塗布剤のうちはんだバンプとなる部分を仮固定する様子をそれぞれ示した図である。
【図15】第10実施形態において、大型の半導体レーザを用いてはんだバンプを形成する製造工程を示した図である。
【符号の説明】
【0182】
10…プリント基板、20…配線、30…はんだバンプ、40、41…塗布剤、50…ノズル、60…銅箔、70…はんだ剤、80、82、84、86、88…半導体レーザ、81、83、85、87、89…集光レンズ、100、110…描画シート、200…PETシート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布剤(40)を用いて被加工物(10、60、90、95)にマスクを形成すると共に、そのマスクを用いて前記被加工物を加工する加工品の製造方法であって、
前記塗布剤の融解開始温度よりも低い温度にされた前記被加工物に、ノズル(50)から溶融した塗布剤を噴射して塗布すると共にその塗布剤を凝固させ、前記被加工物にマスクパターン状のマスクを形成する工程と、
前記マスクに基づいて前記被加工物をパターニングする工程と、
前記マスクを加熱して溶融させ、前記被加工物から前記マスクを除去する工程と、を含んでいることを特徴とする加工品の製造方法。
【請求項2】
粉末状の塗布剤(40)を用いて被加工物(10、60)にマスクを形成すると共に、そのマスクを用いて前記被加工物を加工する加工品の製造方法であって、
前記被加工物の表面に前記粉末状の塗布剤を敷く工程と、
前記被加工物の表面に敷かれた前記粉末状の塗布剤のうち、前記マスクとなる場所のものを局所的に加熱して溶融すると共に、局所的に加熱する場所を移動していくことで加熱していた場所の塗布剤を凝固してマスクパターン状のマスクを形成する工程と、
前記被加工物上に残された粉末状の塗布剤を除去する工程と、
前記マスクに基づいて前記被加工物をパターニングする工程と、
前記マスクを加熱して溶融させ、前記被加工物から前記マスクを除去する工程と、を含んでいることを特徴とする加工品の製造方法。
【請求項3】
前記塗布剤として、融解開始温度と融解終了温度との温度差が5℃以下のものを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の加工品の製造方法。
【請求項4】
前記マスクを除去する工程を終えた後、
前記塗布剤にはんだが添加されたはんだ剤(70)を用意すると共に、前記パターニングされた被加工物上に溶融したはんだ剤をドット状に塗布して凝固する工程と、
前記被加工物を加熱して前記はんだ剤のうち塗布剤を溶融すると共に、前記はんだ剤に含まれるはんだを前記被加工物上に接合する工程と、を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の加工品の製造方法。
【請求項5】
前記マスクを除去する工程を終えた後、
前記被加工物に貫通孔(11)が設けられている場合、ノズル(52)から溶融した塗布剤を前記貫通孔の開口部分に噴射して凝固することにより、前記貫通孔の開口部を塗布剤による蓋部(41)で塞ぐ工程を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の加工品の製造方法。
【請求項6】
前記マスクを除去する工程を終えた後、
前記被加工物に貫通孔(11)が設けられている場合、ノズル(52)から溶融した塗布剤を前記貫通孔内に噴射して凝固することにより前記貫通孔を塗布剤で埋める工程を行うことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の加工品の製造方法。
【請求項7】
塗布剤(40)を用いて被加工物(60)にマスクを形成すると共に、そのマスクを用いて前記被加工物を加工する加工品の製造方法であって、
シート部材(200)に前記塗布剤が塗布された描画シート(100)を用意する工程と、
前記被加工物と前記塗布剤とが向き合うように前記被加工物上に前記描画シートを設置する工程と、
前記被加工物上に設置された前記描画シートのうち、前記シート部材のみを除去する工程と、
前記被加工物の表面に設置された前記塗布剤のうち、前記マスクとなる場所のものを局所的に加熱して溶融すると共に、局所的に加熱する場所を移動していくことで加熱していた場所の塗布剤を凝固してマスクパターン状のマスクを形成する工程と、
前記マスクに基づいて前記被加工物をパターニングする工程と、
前記マスクを加熱して溶融させ、前記被加工物から前記マスクを除去する工程と、を含んでいることを特徴とする加工品の製造方法。
【請求項8】
はんだ材料が含まれた塗布剤(42)を用いて被加工物(20、60)上にはんだバンプ(30)を直接描画する加工品の製造方法であって、
シート部材(200)に前記はんだ材料が含まれた塗布剤が塗布された描画シート(110)を用意する工程と、
前記被加工物と前記はんだ材料が含まれた塗布剤とが向き合うように前記被加工物上に前記描画シートを設置する工程と、
前記被加工物上に設置された前記描画シートのうち、前記シート部材のみを除去する工程と、
前記被加工物の表面に設置された前記はんだ材料が含まれた塗布剤のうち、前記はんだバンプの形成予定場所を局所的に直接加熱して溶融し、前記被加工物に前記はんだ材料が含まれた塗布剤を仮固定する工程と、
前記被加工物上の前記はんだ材料が含まれた塗布剤を熱処理することで、前記塗布剤に含まれたはんだ材料を前記被加工物に固定して前記はんだバンプを形成する工程と、を含んでいることを特徴とする加工品の製造方法。
【請求項9】
前記はんだ材料が含まれた塗布剤を仮固定する工程では、前記はんだ材料が含まれた塗布剤のうち局所的に加熱されなかった部分を除去する工程が含まれていることを特徴とする請求項8に記載の加工品の製造方法。
【請求項10】
前記被加工物上に前記はんだバンプを形成した後に、
前記はんだ材料が含まれていない塗布剤(40)がシート部材(200)に塗布された描画シート(100)を用意する工程と、
前記被加工物と前記はんだ材料が含まれていない塗布剤とが向き合うように前記被加工物上に前記描画シートを設置し、前記描画シートのうち前記シート部材のみを除去する工程と、
前記はんだ材料が含まれていない塗布剤のうちマスクとなる場所を前記はんだバンプが包み込まれるように局所的に直接加熱して溶融すると共に、局所的に加熱する場所を移動していくことで加熱していた場所の前記はんだ材料が含まれていない塗布剤を凝固して配線パターン状のマスクを形成する工程と、
前記マスクに基づいて前記被加工物をマスクパターン状にパターニングする工程と、
前記マスクを加熱して溶融させ、前記被加工物から前記マスクを除去する工程と、を含んでいることを特徴とする請求項8または9に記載の加工品の製造方法。
【請求項11】
はんだ材料が含まれた塗布剤(42)を用いて被加工物(20、60)上にはんだバンプ(30)を直接描画する加工品の製造方法であって、
シート部材(200)に前記塗布剤が塗布された描画シート(110)を用意する工程と、
前記被加工物と前記塗布剤とが向き合うように前記被加工物上に前記描画シートを設置する工程と、
前記シート部材において前記塗布剤の反対側から、前記塗布剤のうち前記はんだバンプの形成予定場所を局所的に直接加熱して溶融し、前記被加工物に前記はんだ材料が含まれた塗布剤を仮固定する工程と、
前記被加工物上の前記はんだ材料が含まれた塗布剤を熱処理することで、前記塗布剤に含まれたはんだ材料を前記被加工物に固定して前記はんだバンプを形成する工程と、を含んでいることを特徴とする加工品の製造方法。
【請求項12】
はんだ材料が含まれた塗布剤(42)を用いて被加工物(20、60)上にはんだバンプ(30)を直接描画する加工品の製造方法であって、
シート部材(200)に前記塗布剤が塗布された描画シート(110)を用意する工程と、
前記被加工物と前記塗布剤とが向き合うように前記被加工物上に前記描画シートを設置する工程と、
前記被加工物上に設置された前記描画シートのうち、前記シート部材のみを除去する工程と、
前記塗布剤のうち前記はんだバンプの形成予定場所を局所的に直接加熱して溶融し、前記被加工物に前記はんだ材料が含まれた塗布剤を仮固定する工程と、
前記被加工物上の前記はんだ材料が含まれた塗布剤を熱処理することで、前記塗布剤に含まれたはんだ材料を前記被加工物に固定して前記はんだバンプを形成する工程と、を含んでいることを特徴とする加工品の製造方法。
【請求項13】
前記被加工物に前記はんだ材料が含まれた塗布剤を仮固定する工程では、前記シート部材を移動させることで、前記塗布剤のうち加熱されていない部分を前記はんだバンプの形成予定場所に移動させ、当該はんだバンプの形成予定場所に前記塗布剤を仮固定する工程が含まれていることを特徴とする請求項12に記載の加工品の製造方法。
【請求項14】
前記塗布剤を加熱する工程では、半導体レーザ(80、82、84、86、88)から照射したレーザ光を集光レンズ(81、83、85、87、89)で前記塗布剤に集光することにより当該塗布剤を局所的に加熱することを特徴とする請求項2ないし13のいずれか1つに記載の加工品の製造方法。
【請求項15】
前記塗布剤の前記融解開始温度と前記融解終了温度は、18℃〜100℃の範囲内にあることを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1つに記載の加工品の製造方法。
【請求項16】
前記塗布剤として、パラフィンもしくはポリエチレングリコールを主成分としたものを用いることを特徴とする請求項1ないし15のいずれか1つに記載の加工品の製造方法。
【請求項1】
塗布剤(40)を用いて被加工物(10、60、90、95)にマスクを形成すると共に、そのマスクを用いて前記被加工物を加工する加工品の製造方法であって、
前記塗布剤の融解開始温度よりも低い温度にされた前記被加工物に、ノズル(50)から溶融した塗布剤を噴射して塗布すると共にその塗布剤を凝固させ、前記被加工物にマスクパターン状のマスクを形成する工程と、
前記マスクに基づいて前記被加工物をパターニングする工程と、
前記マスクを加熱して溶融させ、前記被加工物から前記マスクを除去する工程と、を含んでいることを特徴とする加工品の製造方法。
【請求項2】
粉末状の塗布剤(40)を用いて被加工物(10、60)にマスクを形成すると共に、そのマスクを用いて前記被加工物を加工する加工品の製造方法であって、
前記被加工物の表面に前記粉末状の塗布剤を敷く工程と、
前記被加工物の表面に敷かれた前記粉末状の塗布剤のうち、前記マスクとなる場所のものを局所的に加熱して溶融すると共に、局所的に加熱する場所を移動していくことで加熱していた場所の塗布剤を凝固してマスクパターン状のマスクを形成する工程と、
前記被加工物上に残された粉末状の塗布剤を除去する工程と、
前記マスクに基づいて前記被加工物をパターニングする工程と、
前記マスクを加熱して溶融させ、前記被加工物から前記マスクを除去する工程と、を含んでいることを特徴とする加工品の製造方法。
【請求項3】
前記塗布剤として、融解開始温度と融解終了温度との温度差が5℃以下のものを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の加工品の製造方法。
【請求項4】
前記マスクを除去する工程を終えた後、
前記塗布剤にはんだが添加されたはんだ剤(70)を用意すると共に、前記パターニングされた被加工物上に溶融したはんだ剤をドット状に塗布して凝固する工程と、
前記被加工物を加熱して前記はんだ剤のうち塗布剤を溶融すると共に、前記はんだ剤に含まれるはんだを前記被加工物上に接合する工程と、を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の加工品の製造方法。
【請求項5】
前記マスクを除去する工程を終えた後、
前記被加工物に貫通孔(11)が設けられている場合、ノズル(52)から溶融した塗布剤を前記貫通孔の開口部分に噴射して凝固することにより、前記貫通孔の開口部を塗布剤による蓋部(41)で塞ぐ工程を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の加工品の製造方法。
【請求項6】
前記マスクを除去する工程を終えた後、
前記被加工物に貫通孔(11)が設けられている場合、ノズル(52)から溶融した塗布剤を前記貫通孔内に噴射して凝固することにより前記貫通孔を塗布剤で埋める工程を行うことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の加工品の製造方法。
【請求項7】
塗布剤(40)を用いて被加工物(60)にマスクを形成すると共に、そのマスクを用いて前記被加工物を加工する加工品の製造方法であって、
シート部材(200)に前記塗布剤が塗布された描画シート(100)を用意する工程と、
前記被加工物と前記塗布剤とが向き合うように前記被加工物上に前記描画シートを設置する工程と、
前記被加工物上に設置された前記描画シートのうち、前記シート部材のみを除去する工程と、
前記被加工物の表面に設置された前記塗布剤のうち、前記マスクとなる場所のものを局所的に加熱して溶融すると共に、局所的に加熱する場所を移動していくことで加熱していた場所の塗布剤を凝固してマスクパターン状のマスクを形成する工程と、
前記マスクに基づいて前記被加工物をパターニングする工程と、
前記マスクを加熱して溶融させ、前記被加工物から前記マスクを除去する工程と、を含んでいることを特徴とする加工品の製造方法。
【請求項8】
はんだ材料が含まれた塗布剤(42)を用いて被加工物(20、60)上にはんだバンプ(30)を直接描画する加工品の製造方法であって、
シート部材(200)に前記はんだ材料が含まれた塗布剤が塗布された描画シート(110)を用意する工程と、
前記被加工物と前記はんだ材料が含まれた塗布剤とが向き合うように前記被加工物上に前記描画シートを設置する工程と、
前記被加工物上に設置された前記描画シートのうち、前記シート部材のみを除去する工程と、
前記被加工物の表面に設置された前記はんだ材料が含まれた塗布剤のうち、前記はんだバンプの形成予定場所を局所的に直接加熱して溶融し、前記被加工物に前記はんだ材料が含まれた塗布剤を仮固定する工程と、
前記被加工物上の前記はんだ材料が含まれた塗布剤を熱処理することで、前記塗布剤に含まれたはんだ材料を前記被加工物に固定して前記はんだバンプを形成する工程と、を含んでいることを特徴とする加工品の製造方法。
【請求項9】
前記はんだ材料が含まれた塗布剤を仮固定する工程では、前記はんだ材料が含まれた塗布剤のうち局所的に加熱されなかった部分を除去する工程が含まれていることを特徴とする請求項8に記載の加工品の製造方法。
【請求項10】
前記被加工物上に前記はんだバンプを形成した後に、
前記はんだ材料が含まれていない塗布剤(40)がシート部材(200)に塗布された描画シート(100)を用意する工程と、
前記被加工物と前記はんだ材料が含まれていない塗布剤とが向き合うように前記被加工物上に前記描画シートを設置し、前記描画シートのうち前記シート部材のみを除去する工程と、
前記はんだ材料が含まれていない塗布剤のうちマスクとなる場所を前記はんだバンプが包み込まれるように局所的に直接加熱して溶融すると共に、局所的に加熱する場所を移動していくことで加熱していた場所の前記はんだ材料が含まれていない塗布剤を凝固して配線パターン状のマスクを形成する工程と、
前記マスクに基づいて前記被加工物をマスクパターン状にパターニングする工程と、
前記マスクを加熱して溶融させ、前記被加工物から前記マスクを除去する工程と、を含んでいることを特徴とする請求項8または9に記載の加工品の製造方法。
【請求項11】
はんだ材料が含まれた塗布剤(42)を用いて被加工物(20、60)上にはんだバンプ(30)を直接描画する加工品の製造方法であって、
シート部材(200)に前記塗布剤が塗布された描画シート(110)を用意する工程と、
前記被加工物と前記塗布剤とが向き合うように前記被加工物上に前記描画シートを設置する工程と、
前記シート部材において前記塗布剤の反対側から、前記塗布剤のうち前記はんだバンプの形成予定場所を局所的に直接加熱して溶融し、前記被加工物に前記はんだ材料が含まれた塗布剤を仮固定する工程と、
前記被加工物上の前記はんだ材料が含まれた塗布剤を熱処理することで、前記塗布剤に含まれたはんだ材料を前記被加工物に固定して前記はんだバンプを形成する工程と、を含んでいることを特徴とする加工品の製造方法。
【請求項12】
はんだ材料が含まれた塗布剤(42)を用いて被加工物(20、60)上にはんだバンプ(30)を直接描画する加工品の製造方法であって、
シート部材(200)に前記塗布剤が塗布された描画シート(110)を用意する工程と、
前記被加工物と前記塗布剤とが向き合うように前記被加工物上に前記描画シートを設置する工程と、
前記被加工物上に設置された前記描画シートのうち、前記シート部材のみを除去する工程と、
前記塗布剤のうち前記はんだバンプの形成予定場所を局所的に直接加熱して溶融し、前記被加工物に前記はんだ材料が含まれた塗布剤を仮固定する工程と、
前記被加工物上の前記はんだ材料が含まれた塗布剤を熱処理することで、前記塗布剤に含まれたはんだ材料を前記被加工物に固定して前記はんだバンプを形成する工程と、を含んでいることを特徴とする加工品の製造方法。
【請求項13】
前記被加工物に前記はんだ材料が含まれた塗布剤を仮固定する工程では、前記シート部材を移動させることで、前記塗布剤のうち加熱されていない部分を前記はんだバンプの形成予定場所に移動させ、当該はんだバンプの形成予定場所に前記塗布剤を仮固定する工程が含まれていることを特徴とする請求項12に記載の加工品の製造方法。
【請求項14】
前記塗布剤を加熱する工程では、半導体レーザ(80、82、84、86、88)から照射したレーザ光を集光レンズ(81、83、85、87、89)で前記塗布剤に集光することにより当該塗布剤を局所的に加熱することを特徴とする請求項2ないし13のいずれか1つに記載の加工品の製造方法。
【請求項15】
前記塗布剤の前記融解開始温度と前記融解終了温度は、18℃〜100℃の範囲内にあることを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1つに記載の加工品の製造方法。
【請求項16】
前記塗布剤として、パラフィンもしくはポリエチレングリコールを主成分としたものを用いることを特徴とする請求項1ないし15のいずれか1つに記載の加工品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−184539(P2007−184539A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282529(P2006−282529)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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