説明

加熱装置

【課題】被加熱材を支持する微小な突起が加熱面に形成されている加熱装置において、突起の接触部と非接触部との温度差を解消して、ウエハなどの被加熱材を均一に加熱する加熱装置を提供する。
【解決手段】加熱装置1は、セラミックス基体2とこのセラミックス基体に取り付けられた発熱体3とを備えている。セラミックス基体2は被加熱材を加熱する加熱面2aを有し、この加熱面2aに上面が平らな複数の突起21が形成されている。突起21の上面は表面粗さが中心線平均粗さRaで0.8μm以下であり、突起21が突出する加熱面2aの底面は表面粗さが中心線平均粗さRaで0.9μm以上、2.0μm以下であり、前記加熱面の底面の表面粗さのばらつきが0.2μm以下であり、前記突起の上面が、円相当の直径で0.5〜3mmであり、前記突起の底面からの高さが、5〜40μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、より詳しくは、半導体デバイスの製造工程で基板として用いられるウエハ又はその他の板状の被加熱材を加熱するための加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、半導体製造装置を用いてウエハ上へ酸化膜等を形成するために加熱処理が施される。この半導体製造装置における、ウエハを加熱するための加熱装置には、加熱面を有する円盤状のセラミックス基体中に線状の抵抗発熱体が埋設されたセラミックスヒータがある。このセラミックスヒータは、半導体製造プロセスに使用される成膜装置ばかりでなく、板状の被加熱材の表面をドライエッチングする表面処理装置等に用いられても有利に適合するものである。
【0003】
セラミックスヒータは、プロセス成膜性の向上や歩留まりの向上や製品品質の向上のために、ウエハを面内で均一に加熱すること(均熱性)が求められている。そのために、従来のセラミックスヒータには、例えば、加熱面の反対側に反射板を設け、抵抗発熱体から加熱面の反対側に放出される熱を、この反射板により反射させて効率的で均一な加熱を可能としたセラミックスヒータがある(特許文献1)。
【0004】
また、従来のセラミックスヒータは、セラミックス基体の加熱面とウエハとの密着性を高めることにより、均熱性を良好なものとしていた。そのために、セラミックス基体の加熱面は、ラッピング加工により、できるだけ平坦化、平滑化されていた。ところが、加熱面が平坦化、平滑化され、ウエハの裏面の全面がセラミックス基体の加熱面と密着するセラミックヒータでは、この加熱面上に付着しているパーティクルがウエハの裏面に付着する量が増加してしまい、ウエハ清浄性を損なってしまう。これは、製品の品質に良くない影響を及ぼす可能性がある。なお、このパーティクルは、セラミックス基体表面の剥離物、CVD法による成膜時の生成物、加熱装置の壁面の剥離物などから生じる。
【0005】
そのため、近年では、セラミックス基体の加熱面に複数の微小な突起(エンボス)を複数個形成して、この突起の先端でウエハを支持するセラミックスヒータがある。このようなセラミックスヒータでは、ウエハが突起の先端部のみで接触し、加熱面の全面とは接しないから、加熱面上に付着しているパーティクルがウエハへ付着する量を低減することができる。
【特許文献1】特開2003−151729公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、セラミックス基体の加熱面に微小な突起が形成されたセラミックスヒータでは、これらの突起と接触している部分のウエハ温度が、非接触の部分の温度よりも高くなり、ウエハの均熱性が悪いという問題があった。このような突起の接触部と非接触部との局所的なウエハ温度の相違については、上記した反射板を設けたセラミックスヒータでも十分に解消することはできなかった。
【0007】
近年、半導体ウエハの均熱性に対する要求は厳しくなる一方であり、より均熱性の高いセラミックスヒータが求められているところである。
【0008】
そこで本発明は、加熱面に微小な突起が形成されている加熱装置において、突起の接触部と非接触部との温度差を有利に解消することができ、ウエハなどの被加熱材を均一に加熱することができる加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の加熱装置は、被加熱材を加熱する加熱面を有し、この加熱面に、前記被加熱材に対向する上面が平らな複数の突起が形成されたセラミックス基体と、このセラミックス基体に取り付けられた発熱体とを備え、前記突起の上面は表面粗さが中心線平均粗さRaで0.8μm以下であり、前記突起が突出する加熱面の底面は表面粗さが中心線平均粗さRaで0.9μm以上、2.0μm以下であり、前記加熱面の底面の表面粗さのばらつきが0.2μm以下であり、前記突起の上面が、円相当の直径で0.5〜3mmであり、前記突起の底面からの高さが、5〜40μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の加熱装置によれば、セラミックス基体の加熱面について、突起の上面の表面粗さと加熱面の底面の表面粗さを異ならせたことにより、被加熱材に対する熱放射率を異ならせ、これにより被加熱材の突起接触部と非接触部との温度の相違を解消することができ、よって均熱性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0012】
図1は、本発明に係るセラミックスヒータの一実施例の模式的な縦断面図である。同図において、加熱装置1は、円盤状のセラミックス基体2を備えている。このセラミックス基体2の内部には、抵抗発熱体3が埋設されている。この円盤状のセラミックス基体2の一方の面には、このセラミックス基体2により加熱される被加熱材、例えばウエハを加熱するための加熱面2aを有している。図1に示したセラミックス基体2では、セラミックス基体2上に載置されて加熱されるウエハの直径に合わせた凹部(ポケット)が形成されていて、この凹部の底面が加熱面2aになる。この加熱面2aには、その底面から突出する微小な突起21が複数個形成されている。なお、図1においては、突起21が加熱面2aに形成されていることの理解を容易にするために、実際の突起の高さ、直径よりも突起21を大きく図示している。すなわち、本発明の加熱装置における突起21の大きさは、図1に示された寸法、比率に基づいて解釈されるものではない。
【0013】
円盤状のセラミックス基体2の他方の面には、中空なシャフト4が固着されている。このシャフト4の内側には、リード線(給電棒)5が配設されている。このリード線5の先端部は、発熱体3の電極と接続している。
【0014】
図2は、図1に示すセラミックス基体2の加熱面2a近傍の拡大図である。なお、図2においても、理解の容易のため、突起21を実際の高さ、直径よりも大きく図示している。図2に示されるように、被加熱材であるウエハWは、セラミックス基体2の加熱面側に形成された凹部に位置合わせして載置され、この加熱面の底面から突出して形成された突起21の上面に接した状態で突起21により支持される。そして、セラミックス基体2内に埋設された発熱体を、図示しない電源からリード線5を介して通電することにより発熱させてウエハWの加熱を行う。このとき、従来の加熱装置では、ウエハWにおける突起21の上面に接した部分(接触部)と接していない部分(非接触部)とでは、加熱温度に差が生じることは既に述べたとおりである。
【0015】
そして、このような接触部と非接触部との加熱温度の相違による均熱性の低下は、従来の加熱装置の均熱手段、例えば、反射板を設けたり、セラミックス基体2の加熱面とは反対側の面の伝熱状態や放熱状態を調整したり、発熱体3の配置方法を変更したりしても、十分に改善されるものではなかった。
【0016】
これに対して、本実施形態の加熱装置1では、ウエハWと接触する突起21の上面の表面粗さを中心線平均粗さRaで0.8μm以下とするとともに、セラミックス基体2の加熱面2aにおける突起21が突出している底面、換言すれば、加熱面2aにおける突起21以外の部分の表面粗さを中心線平均粗さRaで0.9μm以上、2.0μm以下とする。
【0017】
発明者らの知見によれば、本発明に係る加熱装置1の使用条件である400℃以上の真空下では、セラミックス基体2の加熱面からの放熱は、輻射が支配的となる。そして、加熱面2aの表面粗さと輻射による熱放射率とには関係があり、加熱面2aの表面粗さを表面加工等によって調整することにより、輻射によるウエハWの加熱の程度を制御することが可能になる。
【0018】
本発明に係る加熱装置1においては、加熱面2aの底面と突起21の上面との表面粗さが異なり、突起21の上面の表面粗さが小さく、加熱面2aの底面の表面粗さが大きい構成とすることにより、突起21の上面からの熱放射率を相対的に減らし、加熱面2aの底面からの熱放射率を相対的に増やす。これにより、固体接触熱伝導と放射熱伝導の相違を小さくし、ウエハに対する放熱量を均一にすることができるので、突起21との接触部のみでウエハW温度が局所的に高くなることを抑制し、ウエハWの均熱性を著しく向上させることができる。更には、表面粗度の管理により、セラミックス基体2の加熱面2aとウエハとの接触面積低減の効果と相俟って、加熱面2aからウエハに付着するパーティクルの数を最小限とすることが可能となり、半導体製造プロセスをより清浄に保つ事ができるようになる。
【0019】
このような本発明に係る加熱装置の構成は、従来の加熱装置が、ウエハの均熱性を高めるために、セラミックス基体2の加熱面2aをできるだけ均一に加熱できるようにする構成とは顕著に異なる。
【0020】
突起21の上面の表面粗さは、中心線平均粗さで0.8μmを超えると、加熱面2aの底面の表面粗さとの差が小さくなり、ウエハWにおける突起21との接触部と非接触部との温度差を解消する効果が小さくなるので、本発明で所期した効果を得るのが難しくなる。したがって、突起21の上面の表面粗さは、中心線平均粗さRaで0.8μm以下とする。
【0021】
また、加熱面2aの底面の表面粗さがRaで0.9μmに満たないと、突起21の上面の表面粗さとの関係で、両者の表面粗さの差が小さくなり、ウエハWにおける突起21との接触部と非接触部との温度差を解消する効果が小さくなる。一方、2.0μmを超えると、加熱面2a上に付着したパーティクルが除去され難くなり、製品の品質に悪影響を及ぼすおそれがある。したがって、加熱面2aの底面の表面粗さは、中心線平均粗さRaで0.9μm以上、2.0μm以下の範囲とする。
【0022】
突起21の上面の表面粗さ及び加熱面2aの底面の表面粗さについて、より好ましい範囲は、突起21の上面の表面粗さが中心線平均粗さRaで0.6μm以下であり、また、加熱面2aの底面の表面粗さが中心線平均粗さRaで1.2μm以上、1.6μm以下である。これらの範囲に表面粗さを調整することにより、均熱性をいっそう向上させることができる。
【0023】
また、加熱面2aの底面の表面については、上述したように中心線平均粗さで表される表面粗さのばらつきが、加熱面2a内において0.2μm以下とする。加熱面2aの底面の表面粗さのばらつきを0.2μm以下にすることにより、放射熱伝導の分布を小さくすることが可能になるため、加熱面の底面からの放熱量を、加熱面内でいっそう均一にすることができ、均熱性を向上させることができる。
【0024】
なお、加熱面2aの底面の表面粗さ、及び表面粗さのばらつきについては、加熱面2aの底面の任意の複数点で中心線平均粗さを測定し、その複数点の平均値及びその平均値と各測定点における値との差の最大値として求めることができる。測定点は、加熱面2aの全面から均等に測定点を定めることが、全体の分布を反映する観点から好ましいが、これは突起21の配置デザインを制限しない。300mmウエハを加熱するためのセラミックス基体2の加熱面2aの場合の測定点は、例えば、加熱面2aの中心から三重の同心円状の測定点を合計25点で定め、これらの測定点で表面粗さを測定することにより求めることができる。
【0025】
セラミックス基体2の加熱面2a以外の表面粗さは、突起21上面の表面粗度以下とすることが好ましい。そうすることで、加熱面2a以外からの放熱量が減り、ウエハの均熱性をより向上させることができる。
【0026】
突起21は、ウエハWに対向する先端部に平らな上面を有する形状になる。この突起21の上面の平面形状は、例えば円形にすることができる。もっとも、平面形状は円形なものに限定されず、種々の平面形状とすることができる。図3は、突起21の平面形状の例を示す模式図である。同図(a)は、突起21Aの上面が真円形状である例、同図(b)は突起21Bの上面が長円形状である例、同図(c)は、突起21Aの上面が概略弓形である例である。突起21の平面形状は、図3に図示した例に限られないことはいうまでもない。
【0027】
突起21の上面の大きさは、図3(a)に示した真円形状の場合にはその直径にて、また、同図(b)や同図(c)に示されるような真円形以外の形状の場合には、その形状の上面の面積と同一面積になる真円の直径(以下、これらを総称して「円相当の直径」という。)にて、0.5〜3mmの範囲とする。円相当の直径が0.5mmに満たないと、突起21の形状が崩れて突起21の上面が平らとなるのが難しくなり、ウエハWを支持するために必要な表面積を得ることが困難となる。また、円相当の直径が3mmを超えると、ウエハWの加熱は、突起21とウエハとの接触による熱伝達が支配的となり、熱放射率の調整によって突起21の上面と接する部分のウエハWにおける高温部との温度差を是正するという本発明の効果を得るのが困難になる。したがって、突起21の上面の大きさは、円相当の直径で、0.5〜3mmの範囲とする。
【0028】
本発明に従う加熱装置1のセラミックス基体2の加熱面2aに形成された突起の縦断面形状は、図4(a)に示すように矩形断面形状の突起21とすることができるし、また、図4(b)に示されるように、台形断面形状の突起22とすることもできる。いずれにせよ、本発明に係る加熱装置のセラミックス基体の加熱面に形成される突起は、被加熱材と接する上面が平らである。
【0029】
これに対して、図5に比較例として示す縦断面図で示される三角形断面形状の突起102は、本発明に係る加熱装置のセラミックス基体の加熱面に形成される突起には含まれない。このような上端部が鋭利な点状であり、平面を有していない突起や、加熱面の底面の表面粗さに由来する表面の凹凸の凸部は、上面が平らではないので本発明の加熱装置のセラミックス基体の加熱面に形成される突起には包含されない。要するに本発明の加熱装置において形成されている突起は、被加熱材を支持する所定の面積を有する平らな上面を有することが必要である。
【0030】
突起21、突起22の高さhは、5〜40μmの範囲とする。突起の高さが5μmに満たないと、均熱性が劣化し、また、加熱面2aに付着しているパーティクルがウエハWに付着する量が増えるおそれがある。突起の高さが40μmを超える場合もまた、均熱性が劣化する。この突起の高さは、5〜40μmの範囲内で、被加熱材の均熱性が良好になる値として適宜選択する。
【0031】
突起21の配置、個数及び加熱面全体に対する面積割合については特に限定しないが、接触部が集中してウエハWに高温部が発生することを防ぐため、各突起21を等間隔となるように配置することが好ましい。そして、ウエハを専ら突起21により支持する目的から、突起21の個数は5個以上とすることが好ましい。また、ウエハWへのパーティクル付着量をより低減するためには、突起21の上面の総面積(ウエハとの接触面積)は、支持するウエハ面積の10%以下とすることがより好ましい。
【0032】
セラミックス基体2における加熱面2aの底面と突起21の上面との表面粗さの相違は、突起21の上面に相当する表面の仕上げ加工と、底面に相当する表面の仕上げ加工とを異ならせることにより得ることができる。例えば、加熱装置1の製造時における加熱面2aの表面加工の際に、突起21の上面に相当する表面をラッピング加工等により研磨し、次いで突起21に相当する部分にマスキングをした後、ブラスト加工によりマスキング部分以外の部分を表面研削を行って突起21及び底面を形成し、その後に突起21の上面に残存するマスキング材を取り除くことにより、加熱面2aの底面と突起21の上面とを所定の表面粗さとすることができる。その他、研削砥石を用いた突起形成によっても、所定の表面粗さとすることが可能である。
【0033】
本発明に係る加熱装置1において、セラミックス基体2の構成は特に限定されない。例えば、セラミックス基体2は、図1に示したような盤状体内に抵抗発熱体を埋設したものであってよく、あるいはセラミックス基体2の背面側に発熱体を設置するものであってよい。セラミックス基体2の材料としては、好ましくは、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素及びサイアロンなどの窒化物セラミックス、アルミナ−炭化ケイ素複合材料などがあり、またこれらに限らず公知のセラミックス材料であってもよい。加熱装置の使用時の雰囲気中に含まれるハロゲン系ガスなどの腐食性ガスに対して高い耐腐食性を付与するためには、窒化アルミニウムやアルミナが特に好ましい。また、いわゆるシースヒータであってもよい。
【0034】
セラミックス基体2の形状は特に限定されないが、円板形状が好ましい。加熱面2aの表面形状は、ポケット形状、エンボス形状、溝形状が施される場合もある。セラミックス基体2の製法は限定されないが、ホットプレス製法、ホットアイソスタティックプレス製法が好ましい。
【0035】
更に、セラミックス基体2に設置された発熱体3は、シングルゾーン制御であってよく、マルチゾーン(例えばデュアルゾーン)制御であってよい。
【0036】
発熱体3の形状は、線状なものに限られず、コイル形状、リボン形状、メッシュ形状、板状、膜状であってよい。また、発熱体の材質は、タングステン、モリブデン等の高融点金属や、SUS、インコロイ、ハステロイ等のNi基合金であってよい。
【0037】
本発明の加熱装置は、半導体製造装置一般に好適に適用できる。ここで半導体製造装置とは、幅広い半導体製造プロセスにおいて使用される装置のことを意味している。これには、成膜装置の他、エッチング装置、ベーキング装置、キュアリング装置、クリーニング装置、検査装置が含まれる。
【実施例】
【0038】
[実施例1]
AlN原料粉末をスプレードライヤにて造粒粉として、RF電極(Moメッシュ)及び発熱体(Moコイル)を造粒粉内に埋設して一軸プレス成形した後、ホットプレスにて、1900℃、100kg/cm、Nガス雰囲気中にて焼成した、セラミックス基体の焼成体を得た。
【0039】
この焼成体に外形加工及び各部の穴(熱電対用穴、端子穴など)形成の一次加工をした後、AlN製のシャフトを固相接合してシャフト接合体とした後、外形の仕上げ加工をして、洗浄した。
【0040】
このシャフト接合体のセラミックス基体部の寸法は、直径330mm、厚さ15mmである。端子穴は直径7mm、深さ7mm、ザグリ穴はインサートとの隙間が0.2mmとなるように、適宜、インサートの形状に合わせて開けた。シャフトの寸法は外径55mm、肉厚3mmである。
【0041】
その後、ロウ材、応力緩和用インサート材、雰囲気保護管、給電棒をセットし、真空炉にて1×10−3Paの真空度で約1000℃まで昇温してセラミックス基体に埋設された発熱体の電極と給電棒とをロウ接合した。ロウ材は直径が3mm、厚さが0.3mm、応力緩和用インサート材としてのTi箔は直径が3mm、厚さが0.01mm、給電棒は直径が4mm、長さが300mmであった。
【0042】
このようにして発熱体埋設型のAlN製セラミックスヒータを作成した。
【0043】
次に、このセラミックスヒータの表面の300mmウエハを戴置させる部分に、深さ1mmのポケットを形成し、その表面を研磨した。その表面について研磨後の表面粗度を測定したところ、中心線平均粗さRaで0.8μmであった。研磨後の表面に直径φ1.0mmのマスクを互いの間隔が等分となるように35点配置してから、サンドブラストによって、マスクが配置された表面以外の表面のAlNを研削除去した。ブラスト後、マスクを剥がし取ることにより、突起(エンボス)を形成した。エンボスの高さ及びエンボスが突出する底面の表面粗さの調整は、ブラスト粒度、ブラスト圧力、ブラスト時間の調整で行った。なお、エンボスの形成は、本実施例で用いられたブラスト処理に限られず、その他、研削砥石でも可能である。なお、セラミックス基体の加熱面以外の表面粗度は、Raで1.0μmであった。
【0044】
次に、エンボス底面の表面粗度分布を次の方法によって測定した。図6に表面粗度測定位置を示す。測定位置は、中心、半径Rが50mm、Rが100mm及びRが140mmの同心円上に中心から周方向に8等分となるように直線を延ばし、これらの直線と円との交点の25点とした。各測定位置において、中心からから外周へ向かう径方向のプロファイルを形状測定機にて取得し、測定距離5mmでRaを測定した。測定方法はJIS B0601に準拠した。これら25点の測定点の平均値をエンボス底面の表面粗度とした。
【0045】
次に、セラミックスヒータを半導体製造装置の加熱チャンバーに設置し、加熱面にベアウエハを戴置した。セラミックスヒータを窒素ガス中で450℃まで昇温し、ベアウエハの温度均一性(均熱性)を放射温度計によって測定した。ここで温度均一性とは、300mmのウエハの外周3mmを除く面内の最高温度と最低温度の差分ΔTで定義することができる。この測定結果を表1に示す。
【表1】

【0046】
表1から分かるように、突起の上面の表面粗さ及び加熱面の底面の表面粗さが本発明の範囲を満たし、更に、突起の高さ及び加熱面の底面の表面粗さのばらつきが、好適な範囲になる実施例は、ウエハの温度均一性について特に良好な結果が得られている。
【0047】
[実施例2]
実施例1と同様にして作成したセラミックスヒータについて、エンボス形成前のポケット面の表面粗度(エンボス上面の表面粗度に当たる)をRaで0.6μm、及び0.4μmの2条件とし、更にはエンボス底面表面粗度をRaで1.0μm、1.2μm及び1.6μmの3条件として、同様にヒータサンプルを作成した。その結果を表2に示す。
【表2】

【0048】
表2から分かるように、エンボス上面の表面粗度及びエンボス底面表面粗度が好適な範囲になる実施例は、ウエハの温度均一性(均熱性)についてよりいっそう向上した結果が得られている。
【0049】
[実施例3]
次に同様にして、セラミックス基体の加熱面以外の表面粗度をエンボス上面と同じRaで0.8μmとした。このときの他の条件は上記実施例1と同じである。その結果、ΔTは1.8℃となり、より均熱性が向上することが分かった。なお、均熱性はΔTが小さくなればなるほど、さらに小さくするのが非常に困難になる。したがって、例えば、ΔT=2.5℃とΔT=1.5℃の違いは,加熱装置の効果からすると極めて大きく、かつ、最近の半導体製造装置において要求される均熱性は、ますます小さくなってきているため、ΔTで1℃の均熱性向上は、実質的に非常に有意義である。
【0050】
[実施例4]
次に研削面に貼るマスクの大きさをそれぞれ変えて、サンドブラストにてエンボスを形成し、エンボス直径の異なるヒータサンプルを得た。このヒータについて、同様にして温度測定実施した結果を表3に示す。
【表3】

【0051】
表3から分かるように、エンボスの直径が3.0mmを超えると、ΔTが著しく増大した。また、表3には示していないが、エンボス直径を0.5mm未満とした場合には、エンボスの形状が崩れてしまい、断面が矩形状とならず、ウエハを支持するために十分な表面積を得られなかった。
【0052】
[実施例5]
次にエンボス高さを変更し、エンボス底面をさらに粗くしたヒータを作成した。これらのヒータサンプルの加熱面にベアウエハを戴置して、ヒータを窒素ガス中で450℃まで昇温した後、前記ウエハの裏面(ヒータに接触した面)に付着しているパーティクルの個数をパーティクルカウンタにて計数した。結果を表4に示す。
【表4】

【0053】
この結果から、底面の表面粗さがRaで2μmを超える場合、及び、エンボス高さが5μm未満の場合には、ウエハ裏面へのパーティクル付着が著しく増大し、実質的に半導体製造装置に適用しがたいことが判明した。したがって、エンボス底面の粗さはRa2μm以下とし、更にエンボス高さは5μm以上とすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係るセラミックスヒータの一実施例の模式的な縦断面図である。
【図2】セラミックス基体の加熱面近傍の拡大図である。
【図3】突起の平面形状の例を示す模式図でである。
【図4】突起の断面形状の例を示す模式図である。
【図5】比較例の突起の断面形状の例を示す模式図である。
【図6】表面粗度測定位置の説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 加熱装置
2 セラミックス基体
2a 加熱面
3 発熱体
21 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱材を加熱する加熱面を有し、この加熱面に、前記被加熱材に対向する上面が平らな複数の突起が形成されたセラミックス基体と、このセラミックス基体に取り付けられた発熱体とを備え、
前記突起の上面は表面粗さが中心線平均粗さRaで0.8μm以下であり、前記突起が突出する加熱面の底面は表面粗さが中心線平均粗さRaで0.9μm以上、2.0μm以下であり、前記加熱面の底面の表面粗さのばらつきが0.2μm以下であり、前記突起の上面が、円相当の直径で0.5〜3mmであり、前記突起の底面からの高さが、5〜40μmであることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記突起の上面は表面粗さが中心線平均粗さRaで0.6μm以下であり、前記加熱面の底面は表面粗さが中心線平均粗さRaで1.2μm以上、1.6μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−234425(P2007−234425A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55313(P2006−55313)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】