説明

半導体パッケージ用硬化性樹脂組成物

【課題】
トランスファー成型性などの成形加工性が良好であり、高い熱伝導性および耐熱性を有する半導体のパッケージ用硬化性樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、ヒドロシリル化触媒、及び熱伝導性フィラーを必須成分として含有する樹脂組成物を用いて半導体のパッケージとして用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体動作時の温度を均一化し、発熱中心の温度を下げる半導体パッケージ用硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、携帯電話、PDAなどの電子機器の性能向上は著しく、性能向上に伴い小型化も進み、体積あたりの発熱量が著しく増加している。特にこれらの内で発熱密度が大きい半導体として、発光ダイオードが挙げられる。
【0003】
半導体には種々のパッケージを有するタイプのものが提案されているが、発光ダイオードとしては、例えば、表面実装タイプのものが製造されている。そのパッケージ用材料としては、ポリアミド樹脂あるいはポリエステル樹脂等が主として用いられている。
半導体の寿命は動作温度の上昇により減少するが、発光ダイオードは発熱密度が大きいため、上記の材料を用いたパッケージでは発熱中心の温度は150℃にせまる高温となり、温度の低下が求められている。(特許文献1)
【0004】
また、発光ダイオードの製造にはパッケージ内にエポキシ樹脂等の封止材(モールド材)を充填することが一般的であるが、その場合、パッケージと封止材との線膨張係数の差による熱応力等が集中することにより封止材界面剥離やクラックが発生して発光ダイオードの信頼性を低下させるという問題もある。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−010081
【特許文献2】特開2005−146191
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年半導体の発熱密度の上昇が問題となっており、信頼性向上のために、発熱中心の温度低下と、封止材の界面剥離やクラックを抑制することが求められている。
本発明は、これらの問題の解決のため、半導体動作時の温度を均一化し、発熱中心の温度を下げ、かつ、意匠性の良い半導体パッケージ用硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、半導体パッケージ用硬化性樹脂として、(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)熱伝導性フィラーを必須成分として含有する、熱伝導率0.9W/mK以上の硬化性樹脂組成物を用いることで、半導体動作時の温度を均一化し、発熱中心の温度を下げること、及び、意匠性の良い半導体パッケージや光取出し効率の高い発光ダイオードを得ることを見出し、本発明にいたった。
【0008】
即ち本発明は、以下の[1]〜[4]に関する。
[1](A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)熱伝導性フィラーを必須成分として含有することを特徴とする、熱伝導率0.9W/mK以上の硬化性樹脂組成物からなる半導体のパッケージ用硬化性樹脂組成物。
[2]上記半導体が発光ダイオードであることを特徴とする[1]に記載のパッケージ用硬化性樹脂組成物。
[3](D)成分の無機フィラーがα―アルミナ、六方晶窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、から選ばれるいずれか1種以上であることを特徴とする、[1]および[2]に記載の半導体のパッケージ用硬化性樹脂組成物。
[4][1]乃至[3]のいずれか一項に記載の半導体のパッケージ用硬化性樹脂組成物を成形したことを特徴とする半導体のパッケージ。
【発明の効果】
【0009】
本発明の半導体パッケージ用硬化性樹脂組成物を用いることで、半導体動作時に発熱中心の温度を下げ、封止材の界面剥離やクラックを抑制し、意匠性の良い半導体パッケージや光取り出し効率の高い発光ダイオードを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】発光ダイオードのパッケージの例である。
【図2】実施例で用いた発光ダイオードパッケージである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<半導体パッケージ>
本発明で言う半導体のパッケージとは、半導体素子あるいは/および外部取出し電極等を支持固定あるいは/および保護するために設けられた部材である。この場合の半導体素子としては各種のものが挙げられる。例えばIC、LSI等の集積回路、トランジスター、ダイオード、発光ダイオード等の素子の他、CCD等の受光素子等を挙げることができる。これら半導体の内、例えば、発光ダイオードのように発熱の大きなものである場合により本発明の効果が顕著になり得る。また、半導体が発光ダイオード素子の場合において、好ましくは発光ダイオード素子から出た光が照射されるように設計されたものであり、さらに好ましくは発光ダイオード素子から出た光を反射させて外部に取出すように設計されたものである。その場合は本発明の白色度が80以上である効果が顕著になり得る。発光ダイオードパッケージの形状等には特に制約はない。例えば、図1に示すように、発光ダイオード素子を搭載するための凹部を有する形状のものでもよいし、単に平板状のものであってもよい。本発明の発光ダイオードのパッケージの表面は平滑であってもよいし、エンボス等のような平滑でない表面を有していてもよい。
【0012】
<発光ダイオード素子>
本発明で言う発光ダイオードの各種の発光ダイオード素子としても、特に限定なく従来公知の発光ダイオードに用いられる発光ダイオード素子を用いることができる。発光ダイオード素子のサイズ、個数についても特に限定なく用いることができる。用いる発光ダイオード素子は一種類で単色発光させても良いし、複数用いて単色或いは多色発光させても良い。
【0013】
<発光ダイオード用透明封止材>
本発明の半導体の封止材としては特に制限は無く、広く知られた各種熱硬化性樹脂の中から必要に応じて1種または2種以上を任意の組み合わせで選択して用いる事が可能である。一方、樹脂封止を用いず、ガラス等でカバーしてハーメチック封止により封止することも可能である。樹脂封止としては例えば従来用いられるエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シアナート樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂およびこれらの変性樹脂、等が例示されるがこれに限定されるものではない。これらのうち、透明性が高く接着性等の実用特性に優れるという観点から、透明エポキシ樹脂、分子内にケイ素を含有するケイ素系熱硬化性樹脂、透明ポリイミド樹脂、が好ましい。
【0014】
透明エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1,3−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート等のエポキシ樹脂をヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、水素化メチルナジック酸無水物等の脂肪族酸無水物で硬化させるものが挙げられる。これらのエポキシ樹脂あるいは硬化剤はそれぞれ単独で用いても、複数のものを組み合わせてもよい。透明ポリイミド樹脂としては、フッ素含有ポリイミド樹脂が挙げられる。
【0015】
上記熱硬化性樹脂の中でも、樹脂の耐候性、光透過性、耐熱性、などに優れる点から、ケイ素系熱硬化性樹脂が好ましい。ケイ素系熱硬化性樹脂としては、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ基含有シリコーン樹脂、反応性官能基を有するかご状シルセスキオキサンよりなる硬化性樹脂、などが挙げられる。
【0016】
上記ケイ素系熱硬化性樹脂の中でも、(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、よりなるシリコーン系熱硬化性樹脂であることがさらに好ましい。(A)(B)(C)各成分の詳細については、熱伝導性樹脂の項で説明する。
【0017】
<熱伝導性樹脂>
半導体パッケージに用いられる熱伝導性樹脂としては、(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)熱伝導性フィラーを必須成分として含有することを特徴とする、熱伝導率0.9W/mK以上の硬化性樹脂組成物が用いられる。
【0018】
以下で上記シリコーン系熱硬化性樹脂おける(A)成分について説明する。
(A)成分は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物であれば特に限定されない。上記有機化合物としては、ポリシロキサン−有機ブロックコポリマーやポリシロキサン−有機グラフトコポリマー等の、シロキサン単位(Si−O−Si)を含む化合物以外のものが好ましく、構成元素としてC、H、N、O、S及びハロゲン以外の元素を含まない化合物がより好ましい。シロキサン単位を含む化合物の場合は、反応性などの問題がある。SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。(A)成分は、単独で用いても良いし、2種以上のものを組み合わせて用いてもよい。
【0019】
(A)成分の化合物は、有機重合体系の化合物と有機単量体系の化合物に分類できる。
有機重合体系化合物としては特に限定されないが、例えば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、不飽和炭化水素系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)、ポリイミド系の化合物等が挙げられる。
【0020】
有機単量体系化合物としては特に限定されないが、例えば、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系;鎖状、環状等の脂肪族炭化水素系;複素環系の化合物;これらの混合物等が挙げられる。
【0021】
(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては特に限定されないが、下記一般式(1)
CH2=CR1−(1)
(式中R1は水素原子あるいはメチル基を表す。)で示される基が反応性の点から好適である。中でも原料の入手の容易さから、R1が水素原子である基が特に好ましい。
さらに、(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、下記一般式(2)
―R2C=CR2―(2)
(式中Rは水素原子あるいはメチル基を表す。2つのR2は同じであってもよいし異なっていてもよい。)で表される部分構造を環内に有する脂環式の基が、硬化物の耐熱性が高いという点から好適である。中でも原料の入手の容易さから、R2がともに水素原子である基が特に好ましい。
【0022】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合は(A)成分の骨格部分に直接結合していてもよく、2価以上の置換基を介して共有結合していてもよい。上記2価以上の置換基としては特に限定されないが、炭素数0〜10の置換基が好ましく、構成元素としてC、H、N、O、S及びハロゲン以外の元素を含まない置換基がより好ましい。
【0023】
(A)成分の骨格部分に共有結合する基の例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2−ヒドロキシ−3−(アリルオキシ)プロピル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−(アリルオキシ)フェニル基、3−(アリルオキシ)フェニル基、4−(アリルオキシ)フェニル基、2−(アリルオキシ)エチル基、2,2−ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3−アリルオキシ−2,2−ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、などが挙げられる。
【0024】
(A)成分の有機化合物としては、骨格部分と炭素−炭素二重結合を有する基とに分けて表現しがたい低分子量化合物も用いることができる。上記低分子量化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、オクタジエン、デカジエン等の脂肪族鎖状ポリエン化合物系、シクロペンタジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の脂肪族環状ポリエン化合物系、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン等の置換脂肪族環状オレフィン化合物系等が挙げられる。
【0025】
(A)成分としては、耐熱性をより向上し得るという観点から、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を(A)成分1gあたり0.001mol以上含有するものが好ましく、0.005mol以上含有するものがより好ましく、0.008mol以上含有するものがさらに好ましい。
【0026】
(A)成分の具体的な例としては、上述のほか、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ジビニルベンゼン類(純度50〜100%のもの、好ましくは純度80〜100%のもの)、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、それらのオリゴマー、1,2−ポリブタジエン(1,2比率10〜100%のもの、好ましくは1,2比率50〜100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイド、エポキシ樹脂のグリシジル基の一部あるいは全部をアリル基に置き換えたもの、
【0027】
【化1】

【0028】
【化2】

【0029】
等が挙げられる。
【0030】
これらの中でも耐光性などの光学特性が良好であるという観点からは、(A)成分中における芳香環の成分重量比が50重量%以下であるものが好ましく、40重量%以下のものがより好ましく、30重量%以下のものがさらに好ましい。最も好ましいのは芳香族炭化水素環を含まないものである。
【0031】
(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の個数は、1分子当たり少なくとも2個あればよいが、耐熱性をより向上し得るという観点から、2個を越えることが好ましく、3個以上であることがより好ましく、4個以上であることが特に好ましい。ただし(A)成分が種々の化合物の混合物であり、各化合物の上記炭素−炭素二重結合の個数が同定できない場合には、上記混合物全体に関して1分子あたりの上記炭素−炭素二重結合の平均個数を求め、それを、(A)成分の上記炭素−炭素二重結合の個数とする。
【0032】
(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数が1分子内当たり1個以下の場合は、(B)成分と反応してもグラフト構造となるのみで架橋構造とならない。
【0033】
(A)成分としては、他の成分との均一な混合及び良好な作業性を得るためには、100℃以下の温度において流動性があるものが好ましい。(A)成分は、線状でも枝分かれ状でもよい。(A)成分の分子量は特に制約はないが、50〜1000の任意のものが好適に使用できる。(A)成分としては、分子量が900未満のものが好ましく、700未満のものがより好ましく、500未満のものがさらに好ましい。
【0034】
(A)成分としては、入手性、反応性の点から、ビスフェノールAジアリルエーテル、2,2’−ジアリルビスフェノールA、ノボラックフェノールのアリルエーテル、ジアリルフタレート、ビニルシクロヘキセン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、トリアリルイソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが好ましく、耐熱性・耐光性の点からトリアリルイソシアヌレートが特に好ましい。
次に上記シリコーン系熱硬化性樹脂おける(B)成分について説明する。
【0035】
(B)成分は、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物であれば特に限定されない。例えば国際公開特許WO96/15194号公報に記載される化合物で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するもの等が使用できる。
入手性の面からは、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状オルガノポリシロキサンが好ましい。なかでも、(A)成分との相溶性が良いという観点から、下記一般式(3)
【0036】
【化3】

【0037】
(式中、R3は炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサンがより好ましい。なお、一般式(3)で表される化合物中の置換基R3は、C、H及びO以外の元素を含まない置換基が好ましく、炭化水素基がより好ましい。
【0038】
(B)成分は、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状ポリオルガノシロキサンと、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する有機化合物から選ばれた1種以上の化合物(以降(E)成分と称する)との反応物も好ましい。この場合、反応物の(A)成分との相溶性をさらに高めるために、反応物から未反応のシロキサン類等を脱揮等により除去したものを用いることもできる。
【0039】
(E)成分はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1個含有する有機化合物であって、前記(A)成分と同じものも使用できる。
【0040】
(B)成分の(A)成分に対する相溶性が高くし得るという観点からは、(E)成分の好ましい具体例として、トリアリルイソシアヌレート、ノボラックフェノールのアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、2,2’−ジアリルビスフェノールA、ジアリルフタレート、フタル酸のビス(2−アリルオキシエチル)エステル、スチレン、α−メチルスチレン、アリル末端ポリプロピレンオキシド及びポリエチレンオキシド等が挙げられる。(E)成分の有機化合物は単独で用いてもよいし、2種以上のものを組み合わせて用いてもよい。(B)成分は単独で用いてもよいし、2種以上のものを組み合わせて用いてもよい。
【0041】
光学特性が良好であるという観点からより好ましい(B)成分としては、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとビニルシクロヘキセンの反応物、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとジシクロペンタジエンの反応物、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとトリアリルイソシアヌレートの反応物、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンと2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテルの反応物、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンと1,2,4−トリビニルシクロヘキサンの反応物が挙げられる。特に好ましい(B)成分としては、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとトリアリルイソシアヌレートの反応物、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンと2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテルの反応物、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンと1,2,4−トリビニルシクロヘキサンの反応物等が挙げられる。
【0042】
(A)成分と(B)成分の混合比率は、必要な強度を失わない限り特に限定されないが、(B)成分中のSiH基の総数(Y)の(A)成分中の炭素−炭素二重結合の総数(X)に対する比が、2.0≧Y/X≧0.9であることが好ましく、1.8≧Y/X≧1.0がより好ましい。Y/X>2.0の場合は、十分な硬化性が得られず、充分な強度が得られない場合があり、Y/X<0.9の場合は炭素−炭素二重結合が過剰となり着色の原因となり得る。
【0043】
次に上記シリコーン系熱硬化性樹脂おける(C)成分について説明する。
(C)成分であるヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、例えば、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH2=CH22(PPh32、Pt(CH2=CH22Cl2)、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt[(MeViSiO)4m)、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34)、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)34、Pt[P(OBu)34)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号公報、米国特許第3159662号公報中に記載された白金−炭化水素複合体、ラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号公報中に記載された白金アルコラート触媒等が挙げられる。さらに、モディック(Modic)の米国特許第3516946号公報中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0044】
白金化合物以外のヒドロシリル化触媒の例としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4等が挙げられる。
【0045】
これらの中では、触媒活性の点から、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。上記ヒドロシリル化触媒は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
ヒドロシリル化触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ光学材料用組成物のコストを比較的低く抑えるため、好ましい添加量の下限は、(B)成分のSiH基1モルに対して10-8モル、より好ましくは10-6モルであり、好ましい添加量の上限は(B)成分のSiH基1モルに対して10-1モル、より好ましくは10-2モルである。
【0047】
<発光ダイオードの用途>
本発明の半導体発光ダイオードは従来公知の各種の用途に用いることができる。具体的には、例えば液晶表示装置等のバックライト、照明、センサー光源、車両用計器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライト等を挙げることができる。
【0048】
<半導体の発熱中心の温度>
本発明において発熱中心とは半導体使用時の温度分布の極大値を示す部分を示す。発熱中心の温度は、半導体の信頼性の観点から、好ましくは−50℃以上300℃以下、より好ましくは−40℃以上250℃以下、さらに好ましくは5℃以上200℃以下である。温度が低すぎるとヒートサイクルによりパッケージが破壊される恐れがある。また、200℃以上になると、半導体素子の働きが鈍くなったり故障したりする場合がある。なお、電子機器によっては、半導体の耐熱温度が、120℃以下に制限される場合もある。
【0049】
<半導体の消費電力>
半導体の消費電力の一部は熱になり、劣化の要因となる。一般的に消費電力の半分以上は熱になり、半導体の消費電力が大きいほど発熱量が大きくなる。本発明の半導体の消費電力は、0W以上100W以下、好ましくは0.001W以上90W以下、さらに好ましくは0.004W以上50W以下である。半導体の消費電力が0.001Wより小さい場合は、温度上昇は小さく、従来のパッケージでも対応可能である。一方、半導体の消費電力が100Wより大きい場合は、熱を十分逃がすことが困難となるため、温度が半導体の耐熱温度以上まで上昇する場合がある。
【0050】
<半導体のリード>
本発明の半導体に用いられるリード端子としては、ボンディングワイヤー等の電気接続部材との密着性、電気伝導性等が良好なものが好ましく、リード端子の電気抵抗としては、300μΩ-cm以下が好ましく、より好ましくは3μΩ-cm以下である。これらのリード端子材料としては、例えば、鉄、銅、鉄入り銅、錫入り銅や、これらに金、銀、ニッケル、パラジウム等をメッキしたもの等が挙げられる。これらのリード端子は良好な光の広がりを得るために適宜光沢度を調整してもよい。
【0051】
<安定剤>
本発明の硬化性樹脂組成物をより高性能なものにするため、フェノール系安定剤、イオウ系安定剤、リン系安定剤等の熱安定剤等を、単独又は2種類以上を組合せて添加することが好ましい。更に必要に応じて、一般に良く知られている、熱安定剤、安定化助剤、滑剤、離型剤、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、染料、帯電防止剤、導電性付与剤、分散剤、相溶化剤、抗菌剤等を、単独又は2種類以上を組合せて、本発明の効果を奏する範囲で添加しても良い。
【0052】
<熱伝導性充填材>
本発明の硬化性樹脂組成物で用いられる熱伝導性充填材(B)としては、市販されている一般的な良熱伝導性充填材を用いることが出来る。なかでも、熱伝導率、入手性、絶縁性や電磁波シールド性や電磁波吸収性などの電気特性を付与可能、充填性、毒性、等種々の観点から、グラファイト、ダイヤモンド、等の炭素化合物;酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物;窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の金属窒化物;炭化ホウ素、炭化アルミニウム、炭化ケイ素等の金属炭化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩;結晶性シリカ:アクリロニトリル系ポリマー焼成物、フラン樹脂焼成物、クレゾール樹脂焼成物、ポリ塩化ビニル焼成物、砂糖の焼成物、木炭の焼成物等の有機性ポリマー焼成物;Znフェライトとの複合フェライト;Fe−Al−Si系三元合金;カルボニル鉄、鉄ニッケル合金(パーマロイ)等の金属粉末、が好ましく挙げられる。
【0053】
さらに、入手性や熱伝導性の観点から、グラファイト、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、結晶化シリカがより好ましい。これらのなかでも、耐熱性、電気絶縁性に優れ、かつ熱伝導率も高くなることから、α―アルミナ、六方晶窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、が特に好ましい。
【0054】
樹脂組成物の成形流動性を高める必要がある場合には、樹脂に熱伝導性と同時に滑剤効果を付与することも可能であるため六方晶窒化ホウ素を用いるのが最も好ましい。
また、これらの熱伝導性充填材は、樹脂に対する分散性が向上する点から、シランカップリング剤(ビニルシラン、エポキシシラン、(メタ)アクリルシラン、イソシアナートシラン、クロロシラン、アミノシラン等)やチタネートカップリング剤(アルコキシチタネート、アミノチタネート等)、又は、脂肪酸(カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の飽和脂肪酸、ソルビン酸、エライジン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等の不飽和脂肪酸等)や樹脂酸(アビエチン酸、ピマル酸、レボピマール酸、ネオアピチン酸、パラストリン酸、デヒドロアビエチン酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、コルム酸、セコデヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸等)等により、表面が処理されたものであってもよい。
【0055】
<熱伝導性充填材の使用量>
熱伝導性充填材の使用量としては、本発明の硬化性樹脂組成物の熱伝導率を高くすることができる点から、熱伝導性充填材の容積率(%)が全組成物中の15容量%以上90容量%以下となることが好ましい。15容量%よりも少ない場合は、熱伝導性が十分でなくなる傾向がある。90容量%以上とすることは材料の強度が著しく低下する傾向がある。熱伝導性充填材の使用量が少ないほど、得られる成形体の耐衝撃性、表面性、成形加工性が向上し、溶融混練が容易になる傾向があり好ましいという観点、及び熱伝導性充填材の使用量が多いほど熱伝導率が向上する傾向があり好ましい、という観点から、さらに高い熱伝導率を望む場合は、熱伝導性充填材の使用量を、全組成物中の20容量%以上85容量%以下とすることがより好ましい。より好ましくは25容量%以上80容量%以下、更に好ましくは30容量%以上75容量%以下、最も好ましくは40容量%以上65容量%以下である。
【0056】
ここで熱伝導性充填材の容積率(%)とは、樹脂分及び熱伝導性充填材のそれぞれの重量分率と比重から算出されるものであり、次式により求められる。なお、次式においては、熱伝導性充填材を単に「充填材」と記載した。
充填材容積率(容量%)=(充填材重量比率/充填材比重)÷[(樹脂分重量比率/樹脂分比重)+(充填材重量比率/充填材比重)]×100
ここで、樹脂分とは、熱伝導性充填材を除いた全成分を指す。
【0057】
また、樹脂に対する熱伝導性充填材の充填率を高める1手法として、粒子径の異なる熱伝導性充填材を2種類以上併用することが好適である。この場合、粒子径の大きい熱伝導性充填材と、粒子径の小さい熱伝導性充填材との粒径比を10/1程度とすることが好ましい。
【0058】
熱伝導性充填剤の形状には特に制限はなく、種々の形状を用いることができる。熱伝導性充填剤をより高充填させたい場合や等方的に熱を伝えたい場合には、球状あるいは球状に近い丸み状の充填剤を用いることが好ましい。一方で面方向に高熱伝導性を付与したい場合などには、鱗片状や板状などの充填剤を用いるのが好ましい。
【0059】
またこれら熱伝導性充填材は、同一種類の熱伝導性充填材だけでなく、種類の異なる2種以上を併用することもできる。また本発明の効果を妨げない程度に、熱伝導性充填材以外の各種充填材を必要に応じて用いても良い。熱伝導性充填材以外の各種充填材としては、特に限定されないが、木粉、パルプ、木綿チップ、アスベスト、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、クルミ殻粉、もみ殻粉、ケイソウ土、白土、シリカ(ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸、非晶質球形シリカ等)、カーボンブラックのような補強性充填材;ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、アルミニウム微粉末、フリント粉末、活性亜鉛華、亜鉛末、炭酸亜鉛およびシラスバルーン、ガラスミクロバルーン、フェノール樹脂や塩化ビニリデン樹脂の有機ミクロバルーン、PVC粉末、PMMA粉末など樹脂粉末などの充填材;石綿、ガラス繊維およびガラスフィラメント、炭素繊維、ケブラー繊維、ポリエチレンファイバー等の繊維状充填材等が挙げられる。これら充填材のうちでは沈降性シリカ、ヒュームドシリカ、溶融シリカ、ドロマイト、カーボンブラック、酸化チタン、タルクなどが好ましい。なおこれら充填材の中には、わずかに熱伝導性充填材としての機能を有しているものもあり、また炭素繊維、各種金属粉、各種金属酸化物、各種有機繊維のように、組成、合成方法、結晶化度、結晶構造によっては優れた熱伝導性充填材として使用可能となるものもある。
【0060】
<製造方法>
本発明の脂組成物の製造方法としては、特に限定されるものではない。例えば、前述した成分や添加剤等を乾燥させた後、単軸、二軸等の押出機のような溶融混練機にて溶融混練することにより製造することができる。また、配合成分が液体である場合は、液体供給ポンプ等を用いて溶融混練機に途中添加して製造することもできる。その他、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダー等に所定の各成分を供給し、混練することにより製造することもできる。各成分の供給方法は特に限定されず、各々の成分を一括配合して混練しても良く、多段、分割配合して混練しても良い。
【0061】
<Bステージ化>
本発明の組成物は、各成分および添加剤等の配合物をそのまま用いてもよいし、加熱等により部分的に反応(Bステージ化)させてから使用してもよい。Bステージ化することにより粘度調整が可能であり、トランスファー成形性を調整することもできる。
【0062】
<組成物性状>
本発明の組成物としては上記したように各種組み合わせのものが使用できるが、トランスファー成形による成形性が良好であるという点においては、組成物としては150℃以下の温度で流動性を有するものが好ましい。
【0063】
組成物の硬化性については、任意に設定できるが、成形サイクルが短くできるという点においては120℃におけるゲル化時間が120秒以内であることが好ましく、60秒以内であることがより好ましい。また、150℃におけるゲル化時間が60秒以内であることが好ましく、30秒以内であることがより好ましい。また、100℃におけるゲル化時間が180秒以内であることが好ましく、120秒以内であることがより好ましい。
この場合のゲル化時間は、以下のようにして調べられる。設定温度に調整したホットプレート上に厚み50μmのアルミ箔を置き、その上に組成物100mgを置いてゲル化するまでの時間を測定してゲル化時間とする。
【0064】
<硬化>
本発明の組成物は、あらかじめ混合し組成物中のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合とSiH基の一部または全部およびを反応させることによって硬化させて用いることができる。組成物を反応させて硬化させる場合において、(A)(B)(C)(D)各成分の必要量を一度に混合して反応させてもよいが、一部を混合して反応させた後残量を混合してさらに反応させる方法や、混合した後反応条件の制御や置換基の反応性の差の利用により組成物中の官能基の一部のみを反応(Bステージ化)させてから成形等の処理を行いさらに硬化させる方法をとることもできる。これらの方法によれば成形時の粘度調整が容易となる。
【0065】
硬化させる方法としては、単に混合するだけで反応させることもできるし、加熱して反応させることもできる。反応が速く、一般に耐熱性の高い材料が得られやすいという観点から加熱して反応させる方法が好ましい。
【0066】
硬化温度としては種々設定できるが、好ましい温度の下限は30℃、より好ましくは100℃であり、好ましい温度の上限は300℃、より好ましくは200℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなり、反応温度が高いと成形加工が困難となりやすい。
【0067】
硬化は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。一定の温度で行うより多段階的あるいは連続的に温度を上昇させながら反応させた方が歪のない均一な硬化物が得られやすいという点において好ましい。また、一定温度で行う方が成形サイクルを短くできるという点において好ましい。
【0068】
硬化時間も種々設定できるが、高温短時間で反応させるより、比較的低温長時間で反応させた方が歪のない均一な硬化物が得られやすいという点において好ましい。逆に、高温短時間で反応させる方が成形サイクルを短くできるという点において好ましい。反応時の圧力も必要に応じ種々設定でき、常圧、高圧、あるいは減圧状態で反応させることもできる。場合によって発生する揮発分を除きやすいという点においては、減圧状態で硬化させることが好ましい。成形体へのクラックを防止できるという点においては、加圧状態で硬化させることが好ましい。
【0069】
組成物が使用される製造工程において、組成物中へのボイドの発生および組成物からのアウトガスによる工程上の問題が生じ難いという観点においては、硬化中の重量減少が5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。硬化中の重量減少は以下のように調べられる。熱重量分析装置を用いて封止剤10mgを室温から150℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して、減少した重量の初期重量の割合として求めることができる。また、電子材料等として用いた場合にシリコーン汚染の問題を起こし難いという点においては、この場合の揮発成分中のSi原子の含有量が1%以下であるものが好ましい。
【0070】
<硬化物性状>
耐熱性が良好であるという観点からは、組成物を硬化させて得られる硬化物のTgが100℃以上となるものが好ましく、150℃以上となるものがより好ましい。この場合、Tgは以下のようにして調べられる。3mmx5mmx30mmの角柱状試験片を用いて引張りモード、測定周波数10Hz、歪0.1%、静/動力比1.5、昇温側度5℃/分の条件にて測定した動的粘弾性測定(アイティー計測制御社製DVA−200使用)のtanδのピーク温度をTgとする。
【0071】
また、リードフレーム等にイオンマイグレーション等の問題が生じ難く信頼性が高くなるという点においては、硬化物からの抽出イオン含有量が10ppm未満であることが好ましく、5ppm未満であることがより好ましく、1ppm未満であることがさらに好ましい。
【0072】
この場合、抽出イオン含有量は以下のようにして調べられる。裁断した硬化物1gを超純水50mlとともにテフロン(登録商標)製容器に入れて密閉し、121℃、2気圧、20時間の条件で処理する。得られた抽出液をICP質量分析法(横河アナリティカルシステムズ社製HP−4500使用)によって分析し、得られたNaおよびKの含有量の値を、用いた硬化物中の濃度に換算して求める。一方同じ抽出液をイオンクロマト法(ダイオネクス社製DX−500使用、カラム:AS12−SC)によって分析し、得られたClおよびBrの含有量の値を、用いた硬化物中の濃度に換算して求める。以上のように得られたNa、K、Cl、Brの硬化物中の含有量を合計して抽出イオン含有量とする。
硬化物の色としては、各種のものが用いられるが、発光ダイオードの光取り出し効率が高くなりやすいという点においては白色が好ましく、発光ダイオードをディスプレイ装置に用いた場合にコントラストが高くなりやすいという点においては黒色が好ましい。
【0073】
硬化物の線膨張係数としては、特に制約はないが、リードフレーム等の金属やセラミック等との接着性が良好になりやすいという点においては、線膨張係数は100℃において50ppm以下であることが好ましく、30ppm以下であることがより好ましい。また、封止樹脂等の有機材料との接着性が良好になりやすいという点においては、線膨張係数は100℃において70ppm以上であることが好ましく、100ppm以上であることがより好ましい。また、硬化時、硬化後、熱試験時にパッケージと封止剤との間に応力が発生しにくく信頼性が高くなりやすいという点においては、封止剤と近い線膨張係数および線膨張係数の温度依存性を有することが好ましい。
【0074】
<成形方法>
本発明で言う半導体パッケージの成形方法としては各種の方法が用いられる。例えば、射出成形、トランスファー成形、RIM成形、キャスティング成形、プレス成形等、熱硬化性樹脂に一般に用いられる各種成形方法が用いられる。これらの内、成形サイクルが短く成形性が良好であるという点においてはトランスファー成形が好ましい。成形条件も任意に設定可能であり、例えば成形温度についても任意であるが、硬化が速く成形サイクルが短く成形性が良好になりやすいという点においては100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上の温度が好ましい。上記のような各種方法によって成形した後、必要に応じて後硬化(アフターキュア)することも任意である。後硬化した方が耐熱性が高くなり易い。
【0075】
<硬化性樹脂組成物の色>
硬化性樹脂組成物の色としては、各種のものが用いられるが、本発明の硬化性樹脂組成物から得られるパッケージの反射率が高い色であることが、光取り出し効率に優れるため好ましい。
【0076】
<硬化性樹脂組成物の熱伝導率>
硬化性樹脂組成物は、熱を効率的に伝える必要があることから、高熱伝導性の材料を用いる必要がある。熱伝導率は具体的には0.9W/mK以上10000W/mK以下、好ましくは1.0W/mK以上9000W/mK以下、さらに好ましくは1.2W/mK以上8000W/mK以下であるとよい。このような高熱伝導性材料を用いることにより、発熱部の温度が均一化し、発熱中心の温度が下がる。
【実施例】
【0077】
以下に実施例により発明の実施態様、効果を示すが、本発明はこれに限られるものではない。
【0078】
(合成例1)
5Lの四つ口フラスコに、攪拌装置、滴下漏斗、冷却管をセットした。このフラスコにトルエン1800g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン1440gを入れ、120℃のオイルバス中で加熱、攪拌した。トリアリルイソシアヌレート200g、トルエン200g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)1.44mlの混合液を50分かけて滴下した。得られた溶液をそのまま6時間加温、攪拌した後、未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去した。1H−NMRによりこのものは1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応したものであることがわかった(反応物Aと称する)。また、1,2−ジブロモメタンを内部標準に用いて1H−NMRによりSiH基の含有量を求めたところ、8.08mmol/gのSiH基を含有していることがわかった。生成物は混合物であるが、本発明の(B)成分である下記のものを主成分として含有している。また、本発明の(C)成分である白金ビニルシロキサン錯体を含有している。
【0079】
【化4】

【0080】
(合成例2)
[封止材製造例]
5Lのセパラブルフラスコに1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン1.44kg、トリアリルイソシアヌレート200g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)1.44mLを入れ混ぜた未硬化の封止材用配合物1を得た。
【0081】
(実施例1)
本発明の(A)成分としてトリアリルイソシアヌレート20.00g、本発明の(B)成分として合成例1で得た生成物29.78g、本発明の(C)成分として白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0251g、1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.147gを混合して硬化性組成物とした。このものに本発明の(D)成分として丸み状アルミナ(昭和電工株式会社製、AS−40)499.6gおよび酸化チタン(石原産業株式会社製、タイペークR820)24.98g、を添加し、セラミック製の3本ロールを用いて3回混練し、本発明の半導体のパッケージ用硬化性樹脂組成物とした。このものは室温では固いペースト状であるが、少量を150℃に加熱した熱板上に置くと一旦低粘度化して流動状態となり40秒後にゲル化した。この半導体のパッケージ用硬化性樹脂組成物を、株式会社丸七鉄工所製MF−0型トランスファー成形機を用いてトランスファー成形を行った。10x10x3mmの試験片6個取りの金型を用いて、原料ポット温度:室温、金型温度:150℃、成形圧力:70kgf/cm2、成形時間:60秒の条件で成形を行ったところ、バリ、クラック、ボイド等のない良好な成形体を得た。また、21mmφx6.4mmの円柱状試験片4個取りの金型を用いて、原料ポット温度:室温、金型温度:140℃、成形圧力:70kgf/cm2、成形時間:120秒の条件で成形を行ったところ、バリ、クラック、ボイド等のない良好な成形体を得た。得られた成形体を空気下150℃の熱風循環オーブン中で1時間加熱して後硬化させ、白色の硬化物を得た。本硬化物の熱伝導率を測定したところ1.4W/mKであった。
【0082】
この半導体のパッケージ用硬化性樹脂組成物を用いて、図2に示す形状の発光ダイオード1を作成したのち、封止材用配合物1を流し込み120℃10分加熱硬化させ発光ダイオードを作成、評価した。発光ダイオード1の端子に電圧を印加し、消費電力0.3Wで30分使用した。発光ダイオード1の表面部分(点1)及びパッケージ端(点2)に細線熱電対を設置し30分使用後の温度を測定したところ、点1では162℃、点2では143℃となり、温度差は19℃であった。また、消費電力0.3Wで30分使用し、30分放冷するサイクルを100回繰り返しても、剥離やクラックは見られなかった。なお図2の発光ダイオードの縦・横・高さは、全てミリメートル単位で示されている。
【0083】
(実施例2)
本発明の(A)成分としてトリアリルイソシアヌレート10.00g、本発明の(B)成分として日本ユニカー株式会社製FZ3772(αメチルスチレン変性ポリメチルハイドロジェンシロキサン)32.42g、本発明の(C)成分として白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.128g、1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.127gを混合して硬化性組成物とした。このものに本発明の(D)成分として球状化六方晶窒化ホウ素(電気化学工業株式会社製、SGPS)341.2g、および酸化チタン(石原産業株式会社製、タイペークR820)21.34gを添加し、セラミック製の3本ロールを用いて3回混練し、本発明の半導体のパッケージ用硬化性樹脂組成物とした。このものは室温では固いペースト状であるが、少量を150℃に加熱した熱板上に置くと一旦低粘度化して流動状態となり35秒後にゲル化した。
【0084】
この半導体のパッケージ用硬化性樹脂組成物を120℃の熱板上で3分間加熱処理した。この間に組成物は増粘し、Bステージ化されたことを示した。このBステージ化組成物を株式会社丸七鉄工所製MF−0型トランスファー成形機を用いてトランスファー成形を行った。21mmφx6.4mmの円柱状試験片4個取りの金型を用いて、原料ポット温度:室温、金型温度:140℃、成形圧力:150kgf/cm2、成形時間:120秒の条件で成形を行ったところ、バリ、クラック、ボイド等のない良好な成形体を得た。得られた成形体を空気下150℃の熱風循環オーブン中で1時間加熱して後硬化させ、白色の硬化物を得た。本硬化物の熱伝導率を測定したところ3.9W/mKであった。
【0085】
この半導体のパッケージ用硬化性樹脂組成物を用いて、図2に示す形状の発光ダイオード2を作成したのち、封止材用配合物1を流し込み120℃10分加熱硬化させ発光ダイオードを作成、評価した。発光ダイオード2の端子に電圧を印加し、消費電力0.3Wで30分使用した。発光ダイオード2の表面部分(点1)及びパッケージ端(点2)に細線熱電対を設置し30分使用後の温度を測定したところ、点1では156℃、点2では150℃となり、温度差は6℃であった。また、消費電力0.3Wで30分使用し、30分放冷するサイクルを100回繰り返しても、剥離やクラックは見られなかった。
【0086】
(比較例1)
比較例1として従来半導体のパッケージ用に用いられているソルベイアドバンストポリマーズ株式会社製アモデルA−4122(ガラス繊維充填ポリアミド樹脂)を用いて、図2に示す形状の発光ダイオード3を作成したのち、封止材用配合物1を流し込み120℃10分加熱硬化させ発光ダイオードを作成、評価した。別途試験片を作成して熱伝導率を測定したところ、アモデルA−4122の熱伝導率は0.3W/mKであった。発光ダイオード3の端子に電圧を印加し、消費電力0.3Wで30分使用した。発光ダイオード3の表面部分(点1)及びパッケージ端(点2)に細線熱電対を設置し30分使用後の温度を測定したところ、点1では164℃、点2では134℃となり、温度差は30℃であった。また、消費電力0.3Wで30分使用し、30分放冷するサイクルを100回繰り返したところ、パッケージ−封止材界面にクラックが発生した。
【0087】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0088】
図1の1 発光ダイオードのパッケージ
図1の2 発光ダイオード素子
図1の3 ボンディングワイヤー
図1の4 リード
図2の1 発光ダイオード表面部分の温度測定点1
図2の2 パッケージ端の温度測定点2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)熱伝導性フィラーを必須成分として含有することを特徴とする、熱伝導率0.9W/mK以上の硬化性樹脂組成物からなる半導体のパッケージ用硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
上記半導体が発光ダイオードであることを特徴とする請求項1に記載のパッケージ用硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(D)成分の無機フィラーがα―アルミナ、六方晶窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、から選ばれるいずれか1種以上であることを特徴とする、請求項1および2に記載の半導体のパッケージ用硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半導体のパッケージ用硬化性樹脂組成物を成形したことを特徴とする半導体のパッケージ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−32344(P2011−32344A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178926(P2009−178926)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】