説明

半導体レーザ装置および光ファイバ

【課題】装置の構成を複雑化させることなく、一方の端面から光ファイバに入射するレーザ光の結合効率を高め、光ファイバの他方の端面から出射するレーザ光の出力を向上させることができる半導体レーザ装置および光ファイバを提供する。
【解決手段】LDバー2と、LDバー2から出射した光5が、一方の端面10に入射する光ファイバ9aと、を備えた半導体レーザ装置1において、光ファイバ9aは、一方の端面10におけるクラッド33の少なくとも一部に、一方の端面10に入射した光をLDバー2へ反射する反射部41を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ファイバの端面を共振器鏡として利用する半導体レーザ装置および端面を共振器鏡として利用できる光ファイバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体レーザ装置では、一端にHRコート、他端にARコートされたレーザダイオード(以下では、略してLDと称する)と、一方の端面がフラット研磨された光ファイバを備え、LDのARコート側の端面から出射した光が、光ファイバのフラット研磨端面に入射するように構成されていた。光ファイバのフラット研磨端面に入射した光は、その一部が反射され、LDのHRコート側の端面と光ファイバのフラット研磨端面とで外部共振器が形成される。つまり、光ファイバのフラット研磨端面は、共振器の出力鏡として利用されることとなる。光ファイバのフラット研磨端面に入射した光は、コアに入射した光とクラッドに入射した光を区別することなく反射される。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−285765号公報(第5〜6頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような半導体レーザ装置にあっては、光ファイバへのレーザ光の結合効率は、レーザ光のビーム品質、即ち、集光点近くでのレーザ光の拡がり角と集光径によって限界が決まる。よって、光ファイバの他方の端面から出射するレーザ光の出力を向上させるためには、光ファイバの一方の端面に入射するレーザ光のビーム品質を向上させることまたは入射するレーザ光自体の出力を上げること、つまり半導体レーザ装置の高輝度化が必要であった。しかし、高輝度化のためには、半導体レーザ装置の構成が複雑化するという問題点があった。
【0005】
この発明は、上述のような問題を解決するためになされたもので、半導体レーザ装置の構成を複雑化させることなく、一方の端面から光ファイバに入射する光の結合効率を高め、光ファイバの他方の端面から出射するレーザ光の出力を向上させることができる半導体レーザ装置および光ファイバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る半導体レーザ装置は、半導体レーザ素子と、半導体レーザ素子から出射した光が、一方の端面に入射する光ファイバと、を備え、光ファイバは、一方の端面におけるクラッドの少なくとも一部に、一方の端面に入射した光を半導体レーザ素子へ反射する反射部を備えたものである。
【0007】
また、この発明に係る光ファイバは、一方の端面におけるクラッドの少なくとも一部に所定の波長の光を反射する反射部を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る半導体レーザ装置によれば、光ファイバが、一方の端面におけるクラッドの少なくとも一部に、一方の端面に入射した光を半導体レーザ素子へ反射する反射部を備えたことにより、簡易な構成で、一方の端面から光ファイバに入射する光の結合効率を高め、光ファイバの他方の端面から出射するレーザ光の出力を向上させることができる。
【0009】
また、この発明に係る光ファイバによれば、一方の端面におけるクラッドの少なくとも一部に所定の波長の光を反射する反射部を備えたことにより、簡易な構成で、一方の端面から光ファイバに入射する光の結合効率を高め、他方の端面から出射するレーザ光の出力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1における半導体レーザ装置を示す上面図である。
【図2】この発明の実施の形態1における半導体レーザ装置を示す側面図である。
【図3】この発明の実施の形態1における光ファイバの構成の基本となる一般的なステップインデックス型の光ファイバを示す斜視図である。
【図4】この発明の実施の形態1における光ファイバを示す斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態1における光ファイバの一方の端面を示す正面図である。
【図6】この発明の実施の形態2における光ファイバを示す斜視図である。
【図7】この発明の実施の形態2における光ファイバの一方の端面を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
まず、この発明の実施の形態1における半導体レーザ装置1の構成を説明する。図1は、この発明の実施の形態1における半導体レーザ装置1を示す上面図であり、図2は、この発明の実施の形態1におけるレーザ装置1を示す側面図である。
【0012】
図1および図2において、レーザダイオードバー(以下では、略してLDバーと称する)2から出射した光5は、光学素子群6によってビーム整形され、集光される。この集光点付近に光ファイバ9aの一方の端面10を配置することにより、光ファイバ9aの一方の端面10に光5が入射する。光ファイバ9aの一方の端面10に入射した光5は、光ファイバ9a中を伝搬し、光ファイバ9aの他方の端面から出射する。尚、光ファイバ9aは、その中心と光軸とが一致するように配置することが望ましい。
【0013】
次に、LDバー2について説明する。LDバー2は、例えば、長手方向の長さが10mm程度、共振器長が1〜3mm程度のチップであり、1個のチップ上に数十点の発光点が、その長手方向に並んで形成されている。LDバー2の後端面13にはLDバー2から出射する光5に対する反射コーティングが施され、LDバー2の前端面14にはLDバー2から出射する光5に対する反射防止コーティングが施されており、LDバー2の前端面14から光5が出射する。LDバー2の前端面14に反射防止コーティングが施されていることにより、LDバー2単体ではレーザ発振しないようになっている。また、LDバー2は、ヒートシンク17上に半田付けによって固定され、熱を除去するための冷却ブロック(図示せず)や給電のための電極(図示せず)などが設けられている。
【0014】
次に、LDバー2から出射した光5の光学素子群6によるビーム整形および集光について説明する。
【0015】
LDバー2から出射した光5は、速軸および遅軸を有しており、速軸方向において最大の拡がり角を有し、遅軸方向において最小の拡がり角を有する。速軸は、LDバー2のpn接合面に垂直な方向であり、図1および図2において、光軸と垂直かつLDバー2の長手方向と垂直な方向である。つまり図1においては紙面垂直方向である。遅軸は、速軸と垂直かつ光軸と垂直な方向であり、図1および図2において、LDバー2の長手方向である。光5は、速軸方向の拡がり角を抑えて集光効率を高めるために、速軸コリメータ18によって速軸方向をコリメートされる。
【0016】
また、LDバー2から出射した光5は、速軸方向と遅軸方向とでビーム品質のバランスが悪く、光軸と垂直な方向に等方的な光ファイバ9aに効率良く入射させるためには、速軸方向と遅軸方向の等方化を行う必要がある。このため、ビーム変換光学系21によってビームを90°回転させ、等方化が行われる。尚、ビーム変換光学系21は、例えば、独国LIMO社製光学素子BTSなどを用いてもよい。
【0017】
ビーム変換光学系21によってビームを90°回転させられた光5は、その後、コリメート光学系22によって、光軸と垂直かつLDバー2の長手方向と垂直な方向、即ち図2においては縦方向にコリメートされる。
【0018】
そして、光5は、第1のシリンドリカルレンズ25によってLDバー2の長手方向において集光され、第2のシリンドリカルレンズ26によって光軸と垂直かつLDバー2の長手方向と垂直な方向において集光される。このとき、直行する2方向の集光点がほぼ同じ位置になるように、第1のシリンドリカルレンズ25および第2のシリンドリカルレンズ26は配置されている。これにより、集光点付近に配置された光ファイバ9aの一方の端面10に光5が入射することとなる。
【0019】
次に、光ファイバ9aについて説明するが、まず、この発明の実施の形態1における光ファイバ9aの構成の基本となる一般的なステップインデックス型の光ファイバ29について説明する。図3は、この発明の実施の形態1における光ファイバ9aの構成の基本となる一般的なステップインデックス型の光ファイバ29を示す斜視図である。
【0020】
ステップインデックス型の光ファイバ29は、図3に示すように、導光部であるコア30およびコア30の外側のクラッド33を備え、クラッド33の外側は、クラッド33の保護および光の漏れ防止のために被覆樹脂34で覆われている。コア30とクラッド33は同心円状に形成されている。図3では、説明のため、クラッド33および被覆樹脂34の一部を省略してコア30がむき出しの様子を示しているが、実際はコア30の外側はクラッド33および被覆樹脂34で覆われている。
【0021】
コア30およびクラッド33としては、例えば石英ガラスやプラスチックが用いられ、クラッド33よりもコア30の方が、屈折率が高くなっている。具体的な寸法としては、例えば、コア30の直径が10〜400μm程度、クラッド33の直径が1mm程度のものが用いられる。入射した光がコア30中を伝搬するためには、コア30とクラッド33との屈折率差によって決まる開口数という指標が表す最大受入角θ以下の拡がり角で光が入射しなければならない。
【0022】
このため、LDバー2から出射した光5を効率良く光ファイバ29に結合させるためには、コア30の径よりも小さいビーム径で、かつ光ファイバ29の最大受入角θ以下の拡がり角で光5を入射する必要がある。しかし、コア30の径が小さい光ファイバ29を用いる場合、コア30の径よりも小さいビーム径で、かつ光ファイバ29の最大受入角θ以下の拡がり角で光5を入射することは困難であり、光ファイバ29への光5の結合効率は、光5の集光点近くでの拡がり角と集光径、即ち、ビーム品質によって限界が決まる。
【0023】
通常のレーザ発振器では、ビーム品質を向上させると出力が下がる。よって、ビーム品質を向上させて光ファイバ29の一方の端面から入射する光5の結合効率を高めても、もとの出力が下がっているため、結局、光ファイバ29の他方の端面から出射するレーザ出力は向上しない。出力を下げずにビーム品質を向上させる、即ち、高輝度化のためにはレーザ発振器の構成が複雑化するという問題があるため、光ファイバ29を用いて半導体レーザ装置を構成する場合、装置の構成が複雑化してしまう。この発明の実施の形態1における光ファイバ9aは、一方の端面10の構成を工夫することにより、この問題を解決している。
【0024】
次に、この発明の実施の形態1における光ファイバ9aについて説明する。図4は、この発明の実施の形態1における光ファイバ9aを示す斜視図であり、図5は、この発明の実施の形態1における光ファイバ9aの一方の端面10を示す正面図である。図4および図5において、図3と同じ符号を付けたものは、同一または相当の構成を示しており、その説明を省略する。
【0025】
尚、図4では、説明のため、クラッド33および被覆樹脂34の一部を省略してコア30がむき出しの様子を示しているが、実際はコア30の外側はクラッド33および被覆樹脂34で覆われている。
【0026】
図4および図5において、光ファイバ9aは、一方の端面10近傍においてクラッド33の外周にガラスブロック37を備えている。ガラスブロック37の外径はクラッド33の外径よりも大きいので、光ファイバ9aの一方の端面10の径は、クラッド33の径よりも大きくなっている。さらに、光ファイバ9aの一方の端面10は、LDバー2から出射した光5に対する反射防止コーティング部38aと反射コーティング部41を備える。
【0027】
反射コーティング部41は、図5に示すように、光ファイバ9aの一方の端面10において、ガラスブロック37およびクラッド33に設けられている。さらに、この反射コーティング部41は、コア30の外周部42にも設けられている。即ち、反射コーティング部41は、光ファイバ9aの一方の端面10において、ガラスブロック37、クラッド33およびコア30の外周部42を覆っている。反射コーティング部41としては、例えばアルミニウムや金などの金属膜、SiOやTiOなどの膜を積層した多層膜などが用いられる。尚、反射コーティング部41の反射率は、LDバー2から出射した光5の波長に対して100%に近い方が好ましい。
【0028】
反射防止コーティング部38aは、図5に示すように、光ファイバ9aの一方の端面10において、反射コーティング部41が設けられた箇所よりも径方向内側にコア30と同心円状に設けられている。上述したように、反射コーティング部41はコア30の外周部42にも設けられているため、反射防止コーティング部38aの断面積はコア30の断面積よりも小さくなっている。反射防止コーティング部38aの大きさは、反射防止コーティング部38aから光ファイバ9a中に入る光5が、クラッド33などには入らずに全てコア30に入るような大きさとすることが望ましい。尚、ここでは、反射防止コーティング部38aとコア30の中心が一致するとしたが、必ずしも中心が一致していなくてもよい。
【0029】
反射防止コーティング部38aとしては、SiOやTiOなどの膜を積層した多層膜などが用いられる。尚、反射防止コーティング部38aの反射率は、LDバー2から出射した光5の波長に対して0%に近い方が好ましい。
【0030】
尚、反射防止コーティング部38aと反射コーティング部41とは互いに重なっておらず、言い換えると、光ファイバ9aの一方の端面において、反射防止コーティング部38aを除く部分が反射コーティング部41となっている。
【0031】
ガラスブロック37は、クラッド33より外径が大きく、クラッド33の外周に、コア30およびクラッド33と同心円状になるように取り付けられている。そして、光ファイバ9aの一方の端面10において反射コーティング部41が設けられている。例えばクラッド33の直径が1mm程度である場合、ガラスブロックの直径は数mm程度とするのが好ましい。その屈折率は、コア30の屈折率よりも低く、クラッド33の屈折率以下であることが好ましい。
【0032】
尚、この光ファイバ9aは、一方の端面10においてコア30の中心と光5の中心が一致するように配置されることが望ましい。
【0033】
次に、以上のような構成の光ファイバ9aの一方の端面10に光5が入射した場合について説明する。ここでは、入射する光5のビーム径が反射防止コーティング部38aの径よりも大きい、光5のビーム形状が反射防止コーティング部38aの形状と一致していない、コア30の中心と光5の中心が一致していないなどの理由により、反射防止コーティング部38aから光5がはみ出す場合について説明する。
【0034】
光ファイバ9aの一方の端面10に入射した光5のうち、最大受入角θ以下で反射防止コーティング部38aに入射した光は、コア30中に入り、コア30中を伝搬し、光ファイバ9aの他方の端面から出射する。反射防止コーティング部38aからはみ出して反射コーティング部41に入射した光は、反射されてLDバー2へ戻る。そして、反射されてLDバー2へ戻った光は、反射コーティングが施されたLDバー2の後端面13で反射され、光ファイバ9aの一方の端面10へ戻ることとなる。つまり、LDバー2の後端面13と光ファイバ9aの一方の端面10によって、不安定型の外部共振器が構成され、光ファイバ9aの一方の端面10が外部共振器の共振器鏡を構成しており、出力鏡となっている。
【0035】
このようにして、LDバー2の後端面13と光ファイバ9aの一方の端面10によって構成された外部共振器からの出力光は、全てコア30に入ることとなる。そして、コア30に入った光は、コア30中を伝搬し、光ファイバ9aの他方の端面から出力される。
【0036】
この発明の実施の形態1では、以上のような構成としたことにより、LDバー2の後端面13と光ファイバ9aの一方の端面10によって構成される外部共振器からの出力光が全てコア30に入るため、一方の端面10から光ファイバ9aに入射する光5の結合効率を高めることができる。これにより、簡易な構成によって、光ファイバ9aの他方の端面から出射するレーザ光の出力を向上させることができるという効果がある。
【0037】
また、コア30に入らなかった光5、即ち、光ファイバ9aの一方の端面10の反射防止コーティング部38aに入射しなかった光5は、反射コーティング部41によって反射され、外部共振器内のLDバー2へ戻るため、無駄になるエネルギーが小さい。
【0038】
さらに、LDバー2の複数の発光点から出射する光5を同時に光ファイバ9aの一方の端面10に集光した場合、それぞれの発光点から出射する光5について光ファイバ9aに結合する最適の集光径が存在するが、この発明の実施の形態1の構成によれば、コア30からはみ出した光5は、反射コーティング部41によって反射され、外部共振器内をLDバー2へ戻るため、無駄になるエネルギーが小さい。
【0039】
同様に、LDバー2、光学素子群6および光ファイバ9aの位置関係がずれた場合でも、コア30からはみ出した光5は、反射コーティング部41によって反射され、外部共振器内をLDバー2へ戻るため、光ファイバ9aの他方の端面からの出力の著しい低下を防ぐことができる。つまり、位置ずれに強く、装置の振動や経時変化の影響が小さいため、信頼性が向上する。
【0040】
上述のように、位置ずれに強いため、光学素子群6の配置精度を下げることができる。さらに、それぞれの光学素子に歪みなど設計値からのずれが生じても、同様に光ファイバ9aの他方の端面からの出力の著しい低下を防ぐことができる。これにより、光学素子の設計値からの公差を大きく設定することができ、装置のコストを低減できる。
【0041】
位置ずれに強いことから、より高い配置精度が必要となるコア30の径が小さい光ファイバ9aを用いる場合において、より大きな効果を発揮する。コア30の径が小さい光ファイバ9aを用いると、光ファイバ9aの他方の端面から出射するレーザ光のビーム径が小さくなり、ビーム品質が向上する。出力光のビーム品質が向上すると、半導体レーザ装置1をレーザ加工機として用いる場合、加工精度を向上させることができるという効果がある。
【0042】
また、コア30からはみ出した光5がクラッド33中を伝搬すると、光ファイバ9aの損傷や劣化の原因となるが、光ファイバ9aの一方の端面10においてクラッド33は反射コーティング部41を備えているため、クラッド33に光5が入ることを防止できる。これにより、光ファイバ9aの損傷や劣化を防ぐことができる。
【0043】
加えて、光ファイバ9aの一方の端面10を外部共振器の出力鏡として利用しているため、光5と光ファイバ9aとの位置調整と、共振器鏡の調整とを同時に行うことができる。これにより、構成の単純化とコスト削減が可能となる。
【0044】
また、ガラスブロック37を設けて光ファイバ9aの一方の端面10の径をクラッド33の径よりも大きくしたことにより、クラッド33からはみ出した光5も反射できる。これにより、無駄になるエネルギーをさらに減らすことができ、位置ずれに対してもさらに強くすることができる。尚、ガラスブロック37を設ける代わりに、光ファイバ9aの一方の端面10を含む箇所において、クラッド33の径を大きくしておいても同様の効果が得られる。
【0045】
さらに、LDバー2の前端面14に反射防止コーティングを施し、LDバー2単体ではレーザ発振しないようにしたことにより、コア30に入らない光までレーザ発振することがない。言い換えると、半導体レーザ装置1では、レーザ発振した光のほとんどがコア30に入るため、無駄になるエネルギーが少ない。
【0046】
尚、この発明の実施の形態1では、光源として、1個のチップ上に複数の発光点が1次元状に並んだLDバー2を用いた。しかし、これに限ることはなく、1個のチップ上に1個の発光点を持つシングルエミッタ型のLD、複数のLDバーを一体として構成したスタック型のLDを用いた場合においても効果が得られる。ただし、より多くの発光点を持つLDバー、スタック型のLDにおいて、より大きな効果を発揮する。
【0047】
また、この発明の実施の形態1では、反射防止コーティング部38aの大きさはコア30の断面積よりも小さくした。しかし、コア30の断面積と同等またはコア30の断面積より大きくても一定の効果が得られる。ただし、コア30の断面積よりも小さくし、反射防止コーティング部38aに入射した光5がコア30のみに入るように構成する方が、より大きな効果が得られる。
【0048】
さらに、この発明の実施の形態1では、コア30、クラッド33および被覆樹脂34からなる光ファイバ9aを用いた。しかし、クラッド33が二重になっているものや、コア30とクラッド33の間や二重になっているクラッド33同士の間にエアギャップを設けたもの、被覆樹脂34の外側を覆う保護管を設けたものなどを用いてもよい。
【0049】
クラッド33が二重になっており、コア30だけでなく内側のクラッド33にも光が伝搬するタイプの光ファイバを用いる場合、反射防止コーティング部38aの大きさは、コア30の径より大きく、内側のクラッド33の径よりも小さい程度が望ましい。反射コーティング部41は、反射防止コーティング部38aを除く箇所に設ける。
【0050】
また、光ファイバ9aの一方の端面10近傍および他方の端面近傍に所定の波長の光を反射するファイバグレーティングを形成することにより光ファイバ9aの内部において光共振器を形成し、この光共振器内のコア30にYb、Er、Tm、Ndなどの希土類元素を添加してもよい。これにより、光5の波長変換を行うファイバレーザとしての使用が可能となる。
【0051】
加えて、この発明の実施の形態1では、光ファイバ9aの一方の端面10近傍においてクラッド33の外周にガラスブロック37を設けた。しかし、ガラスブロック37に限ることはなく、取り付けることによってクラッド33よりも径を大きくすることができて、かつ、反射コーティング部41を形成することができるものであれば他のものでもよく、例えば銅などの金属ブロックを用いてもよい。
【0052】
尚、この発明の実施の形態1では、LDバー2、光学素子群6、光ファイバ9aを全て一直線上に配置した。しかし、適宜ミラーを配置して光5の光路を曲げることにより、必ずしもLDバー2、光学素子群6、光ファイバ9aを全て一直線上に配置しなくともよくなる。
【0053】
また、この発明の実施の形態1では、反射コーティング部41は、光ファイバ9aの一方の端面10において、ガラスブロック37とクラッド33については全面を覆うように設けた。しかし、必ずしも全面を覆う必要はなく、ガラスブロック37についてその内周付近のみ、または、クラッド33についてその内周付近のみに反射コーティング部41を設けても一定の効果が得られる。さらに、必ずしも環状に設ける必要もなく、例えば島状に点在するように設けても一定の効果が得られる。コア30の外周部42についても同様に必ずしも環状に反射コーティング部41を設ける必要はない。反射防止コーティング部38aについても同様であり、必ずしも円状に設ける必要はない。
【0054】
実施の形態2.
図6は、この発明の実施の形態2における光ファイバ9bを示す斜視図であり、図7は、この発明の実施の形態2における光ファイバ9bの一方の端面10を示す正面図である。図6において図4と、図7において図5と同じ符号を付けたものは、同一または相当の構成を示しており、その説明を省略する。この発明の実施の形態1とは、光ファイバ9bの一方の端面10の反射防止コーティング部38bの形状を、円形ではなく長方形とした構成が相違している。
【0055】
尚、図6では、説明のため、クラッド33および被覆樹脂34の一部を省略してコア30がむき出しの様子を示しているが、実際はコア30の外側はクラッド33および被覆樹脂34で覆われている。
【0056】
反射防止コーティング部38bは、図6および図7に示すように、光ファイバ9bの一方の端面10において、コア30と中心が一致した長方形で、コア30の断面積よりも小さくなっている。反射防止コーティング部38bの大きさは、反射防止コーティング部38bから光ファイバ9b中に入る光5が、クラッド33などには入らずに全てコア30に入るような大きさとすることが望ましい。
【0057】
そして、反射コーティング部41は、図6および図7に示すように、光ファイバ9bの一方の端面10において、ガラスブロック37、クラッド33およびコア30の外周部42に設けられている。
【0058】
尚、反射防止コーティング部38bと反射コーティング部41とは互いに重なっておらず、言い換えると、光ファイバ9bの一方の端面において、反射防止コーティング部38bを除く部分が反射コーティング部41となっている。
【0059】
一般に、LDから出射するレーザ光のビーム形状は円形ではなく、長方形に近い形状となる。この発明の実施の形態2においても、LDバー2から出射する光5のビーム形状は円形ではなく、長方形に近い形状となる。よって、円形の反射防止コーティング部38aを用いた場合、光5のビーム形状と合わないため、反射防止コーティング部38aからはみ出す光が多くなってしまう。そこで、長方形の反射防止コーティング部38bを用いることにより、反射防止コーティング部38bからはみ出す光を減らすことができる。
【0060】
光ファイバ9bの一方の端面10に入射したときのビーム形状が長方形であっても、光ファイバ9bを伝搬する間にビーム形状が円形に整形されるため、光ファイバ9bの他方の端面から出射するレーザ光のビーム形状は円形となる。
【0061】
この発明の実施の形態2では、以上のような構成としたことにより、反射防止コーティング部38bからはみ出す光を減らすことができる。このため、光ファイバ9bへの光5の結合効率をさらに高めることができ、光ファイバ9の他方の端面から出射するレーザ光の出力をさらに向上させることができるという効果がある。
【0062】
尚、この発明の実施の形態2では、長方形の反射防止コーティング部38bを用いた。しかし、これに限ることはなく、例えば楕円形などでもよく、ビーム形状と合う形状を適宜選択して反射防止コーティング部38bを形成してもよい。
【0063】
以上、この発明の実施の形態1および2について説明した。これらの、この発明の実施の形態1および2で説明した構成は互いに組合せることができる。
【符号の説明】
【0064】
1 レーザ装置
2 レーザダイオードバー
5 レーザ光
9a、9b 光ファイバ
10 光ファイバの一方の端面
14 レーザダイオードバーの前端面
30 コア
33 クラッド
37 ガラスブロック
38a、38b 反射防止コーティング部
41 反射コーティング部
42 コアの外周部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザ素子と、
前記半導体レーザ素子から出射した光が、一方の端面に入射する光ファイバと、
を備えた半導体レーザ装置において、
前記光ファイバは、前記一方の端面におけるクラッドの少なくとも一部に、前記一方の端面に入射した光を前記半導体レーザ素子へ反射する反射部を備えたことを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項2】
反射部は、光ファイバの一方の端面におけるコアの外周部の少なくとも一部にも設けられたことを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ装置。
【請求項3】
光ファイバは、一方の端面における反射部よりも径方向内側のコアの少なくとも一部に、前記一方の端面に入射した光の反射を防止する反射防止部を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の半導体レーザ装置。
【請求項4】
光ファイバは、外径がクラッドよりも大きいブロックをクラッドの外周に備え、一方の端面におけるブロックの少なくとも一部にも反射部が設けられたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項5】
ブロックは、ガラスブロックであることを特徴とする請求項4記載の半導体レーザ装置。
【請求項6】
反射部は、反射コーティング部であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項7】
反射防止部は、反射防止コーティング部であることを特徴とする請求項3ないし請求項6のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項8】
半導体レーザ素子は、光が出射する面に、出射する光の反射を防止する反射防止コーティング部を備え、前記半導体レーザ素子単体ではレーザ発振しないことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項9】
光ファイバは、所定の波長の光を反射するファイバグレーティングを備えたことにより、前記光ファイバの内部において光共振器を構成し、前記光共振器内においてコアに希土類元素が添加されたことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項10】
一方の端面におけるクラッドの少なくとも一部に所定の波長の光を反射する反射部を備えたことを特徴とする光ファイバ。
【請求項11】
反射部は、一方の端面におけるコアの外周部の少なくとも一部にも設けられたことを特徴とする請求項10記載の光ファイバ。
【請求項12】
一方の端面における反射部よりも径方向内側のコアの少なくとも一部に、所定の波長の光の反射を防止する反射防止部を備えたことを特徴とする請求項10または請求項11のいずれかに記載の光ファイバ。
【請求項13】
反射部は、反射コーティング部であることを特徴とする請求項10ないし請求項12のいずれか1項に記載の光ファイバ。
【請求項14】
反射防止部は、反射防止コーティング部であることを特徴とする請求項12または請求項13のいずれかに記載の光ファイバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−155194(P2011−155194A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16794(P2010−16794)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】