説明

半導体レーザ装置

【課題】 放熱性がよく、ボンディング強度およびボンディング精度を損なうことのない半導体レーザ装置を提供する。
【解決手段】 半導体レーザ装置1は、少なくとも1つ以上のレーザ発光部12を含む半導体レーザ素子10と、半導体レーザ素子10が実装されるサブマウント20と、サブマウント20が搭載される搭載面31aを有するパッケージ30とを含み、サブマウント20の厚み方向Z2の一方の表面部は、半導体レーザ素子10が実装される平坦な実装面21aを有し、他方の表面部である接合側表面部21bは、その周縁の部分であって、平坦な表面を有する枠状の平坦部分25aと、平坦部分25aに囲繞される部分であって、平坦部分25aの表面よりも窪んだ凹部26を有する凹凸部分25bとから成り、接合側表面部21bを介して、サブマウント20がパッケージ30に接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ装置に関し、特に光ピックアップ装置などの光情報処理機器に用いられる半導体レーザ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、CD(Compact Disc)・DVD(Digital Versatile Disc)の2種類の光ディスクに対して情報の記録・再生が可能な光ピックアップ装置や、CD・DVD・BD(Blu-ray Disc:登録商標)の3種類の光ディスクに対して情報の記録・再生が可能な光ピックアップ装置が広く普及している。
【0003】
従来から、このような複数種類の光ディスクに対応した光ピックアップ装置では、各光ディスクに対応した波長のレーザ光を出射可能な半導体レーザ装置が搭載されている。近年の光ピックアップ装置では、高速記録を可能とするために、半導体レーザ装置の高出力化が求められており、そのためにも、半導体レーザ装置の放熱特性をいかに改善するかが課題となっている。
【0004】
このような課題を解決するための従来技術が、たとえば特許文献1に提案されている。特許文献1には、放熱性に優れたフレームタイプの半導体レーザ装置が開示されており、図8にその平面図を示す。
【0005】
図8に示す半導体レーザ装置は、金属製のリードフレーム70と、電極となる複数のリード71と、リードフレーム70および複数のリード71を一体的に保持する樹脂製の保持部72とを備え、リードフレーム70は、素子搭載部70a、リード70bおよびタイバー部70cを有している。素子搭載部70aには、ダイボンドペースト73およびサブマウント部材74を介して半導体レーザ素子75が搭載され、半導体レーザ素子75は、ワイヤ76によってリード70b、71と電気的に接続されている。
【0006】
かかる半導体レーザ装置は、素子搭載部70aの裏面が保持部72から露出するように構成されるとともに、素子搭載部70aの裏面に沿って素子搭載部70aから突出するようにタイバー部70cが設けられている。これにより、半導体レーザ素子75の動作時に、素子搭載部70aおよびタイバー部70cが放熱のために機能し、半導体レーザ装置の放熱特性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−311147号公報
【特許文献2】特開2005−259851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来から、半導体レーザ装置の実装工程においては、半導体レーザ素子とサブマウントとは、サブマウント上面に設けられた金錫(AuSn)から成るろう材によって接合され、サブマウントとパッケージとは、パッケージに塗布された銀(Ag)を主成分とするダイボンドペーストによって接合されている。
【0009】
半導体レーザ装置の高出力化を行う場合、レーザチップとサブマウント、およびサブマウントとパッケージが、それぞれ放熱性を損なうことなく接合されていることが好ましい。放熱性が低下してしまうと、半導体レーザ装置を駆動させた場合に、発熱によって半導体レーザ素子の発光効率が低減し、レーザ出力の低下が引き起こされてしまうからである。そして、半導体レーザ装置においてレーザ出力の低下してしまうと、それを備える電子機器では、機能が低下したり、誤作動が発生したりするという不具合が発生するおそれがある。
【0010】
そこで放熱性を高めるために、パッケージにおけるサブマウント搭載部に塗布するダイボンドペーストのペースト量を増やすことが考えられる。しかしながら、ペースト量を増やしてサブマウントとパッケージとを接合すると、ダイボンドペーストがサブマウント搭載部に広範囲に拡がってしまうという問題がある。これにより、サブマウント搭載部にワイヤボンディングする必要がある場合に、拡がったダイボンドペーストによってワイヤボンディング領域が侵食されてしまい、ワイヤボンディングを行ったときのボンディング強度やボンディング精度の低下が懸念される。
【0011】
特許文献2には、半導体レーザ素子が実装されるサブマウントと、サブマウントが搭載される搭載面を有するヒートブロックとを備える半導体レーザ装置において、サブマウントにおけるヒートブロックへの接合面に櫛歯状の溝加工を施すことによって、サブマウント上に搭載した半導体レーザ素子の湾曲の度合いを低減する技術が開示されている。しかしながら、かかる従来技術では、深さの大きな溝がサブマウントの幅方向両端に亘って形成されているため、放熱性を損なわずにサブマウントをヒートブロックへ接合しようとすると、ダイボンドペーストが搭載面に広範囲に拡がってしまうおそれがある。
【0012】
本発明の目的は、半導体レーザ素子がサブマウントを介してパッケージに実装された半導体レーザ装置において、放熱性とボンディング強度およびボンディング精度とを損なうことのない半導体レーザ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、半導体基板および該半導体基板の一表面上に形成される少なくとも1つ以上のレーザ発光部を含む半導体レーザ素子と、
前記半導体レーザ素子が実装されるサブマウントであって、
その厚み方向の一方の表面部が、前記半導体レーザ素子が実装される平坦な実装面を有し、
その厚み方向の他方の表面部が、該表面部における周縁の部分であって、平坦な表面を有する枠状の平坦部分と、該平坦部分に囲繞される部分であって、該平坦部分の表面よりも窪んだ凹部を有する凹凸部分とから成るサブマウントと、
前記サブマウントの他方の表面部を介して該サブマウントが搭載される搭載面を有する被搭載体とを含むことを特徴とする半導体レーザ装置である。
【0014】
また本発明は、前記凹凸部分には、前記凹部として前記レーザ発光部のレーザ光の出射方向に平行に延びる複数の凹溝が設けられることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記凹凸部分には、前記凹部として前記レーザ発光部のレーザ光の出射方向に垂直に延びる複数の凹溝が設けられることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記凹凸部分には、前記凹部として格子状に形成された複数の凹溝が設けられることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記凹部は、前記サブマウントの厚み方向の他方の表面部における、前記平坦部分の表面に面一な表面の面積が、前記搭載面において前記他方の表面部が臨む領域の面積の半分以上となるように形成されることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記レーザ発光部は、発振波長が互いに異なる複数のレーザ光、または発振波長が同一の複数のレーザ光を出射可能な構成にされてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、サブマウントにおいて、被搭載体であるパッケージに接合される側の表面部には、凹凸部分が設けられているので、該表面部が平坦に形成されている場合と比較して、サブマウントとパッケージとをダイボンドペーストを用いて接合するときの、サブマウントとダイボンドペーストとの接触面積を増加させることができる。これにより、放熱性を損なうことなく、サブマウントをパッケージに実装することができ、発熱による半導体レーザ素子のレーザ出力低下を抑制することができる。
【0020】
また、凹凸部分を設けることにより、サブマウントとパッケージとをダイボンドペーストを用いて接合するときに、ダイボンドペーストの表面張力によって、ダイボンドペーストをパッケージの搭載面に拡がりにくくすることができる。これにより、パッケージの搭載面上へワイヤボンディングする場合であっても、ワイヤボンディング領域へのダイボンドペーストの拡がりを防止することができ、ワイヤボンディングを不自由なく行うことができる。したがって、ワイヤボンディング領域へのワイヤボンディングにおける、ボンディング強度およびボンディング精度を損なうことを防止することができる。
【0021】
また、周縁の部分よりも内側に凹部が形成されているので、この凹部と搭載面との間に充填されるダイボンドペーストによって、サブマウントとパッケージとの接合強度を十分に保つことができ、したがって、周縁の平坦部分と搭載面との間に介在されるダイボンドペーストの分量を低減することができる。これにより、接合時に、サブマウントの周辺に、ダイボンドペーストがはみ出して拡がることを防止できる。
【0022】
さらに、凹凸部分の周囲を囲繞するように平坦部分が形成されているので、サブマウントをパッケージに実装する際に、サブマウントが搭載面に対して傾いて搭載されてしまうことを防止し、より安定した実装が可能となる。
【0023】
また本発明によれば、サブマウントに半導体レーザ素子を実装するときに、凹凸部分におけるストライプ形状により、外形認識による位置合わせを精度良く行うことができる。つまり、レーザ出射方向と平行のストライプを認識することで、実装時における半導体レーザ素子とサブマウントとの、平行度の精度を向上させることができる。これにより、特に、複数のレーザ発光部が電気的に分離して配置されたモノリシックタイプの半導体レーザ素子をサブマウントに実装する際に、各レーザ発光部の短絡を効果的に防止することができる。
【0024】
また本発明によれば、サブマウントに半導体レーザ素子を実装するときに、凹凸部分におけるストライプ形状により、外形認識による位置合わせを精度良く行うことができる。つまり、レーザ出射方向と垂直のストライプを認識することで、実装時における半導体レーザ素子とサブマウントとの、レーザ出射方向における位置精度を向上させることができる。
【0025】
これは、レーザ発光部がサブマウントに対向するような姿勢で実装する、いわゆるジャンクションダウン方式の半導体レーザ装置を製造する際に効果的である。ジャンクションダウン方式の半導体レーザ装置では、レーザ光とサブマウントとが干渉しないように、半導体レーザ素子におけるレーザ光の出射側の端部が、サブマウントから突出した状態で実装される。このとき、半導体レーザ素子のサブマウントからの突出量が多すぎると、レーザ発光部で発生した熱を効率よく放散することができず、半導体レーザ素子の温度上昇が引き起こされてしまう。そのため、レーザ出射方向と垂直のストライプを認識することによって、レーザ出射方向における位置精度を向上させることにより、半導体レーザ素子の突出量を制御することができ、半導体レーザ素子の放熱性を損なうことなくサブマウントへ実装することができる。
【0026】
また本発明によれば、凹凸部分には、レーザ出射方向に対して平行と垂直のストライプの凹凸が形成されているので、複数のレーザ発光部を有するモノリシックタイプの半導体レーザ装置、およびジャンクションダウン方式の半導体レーザ装置の両方の実装精度向上に効果がある。また凹凸加工数が増えるものの、サブマウントの前記表面部における表面積を増加させることができるため、ダイボンドペーストとの接触面積が増え、より放熱性を高めた実装が可能となる。
【0027】
また本発明によれば、サブマウントの前記表面部において、平坦部分の表面に面一な表面の面積が、凹部が形成される領域の面積よりも広いため、パッケージとの接合面が十分に確保された状態で、放熱性を高めることができる。
【0028】
また本発明によれば、近年広く採用されている、DVDおよびCDの記録・読み込みが可能な赤色/赤外モノリシック2波長1チップ半導体レーザ素子を備える半導体レーザ装置において、放熱性を高めることができる。なお、単一波長光を出射するレーザ発光部が1つだけ備えられている場合であっても、放熱性の改善は同様に期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置1の構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る半導体レーザ装置1に備えられる半導体レーザ素子10の構成を示す斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係る半導体レーザ装置1に備えられるサブマウント20の構成を示す斜視図である。
【図4】第1の実施形態に係る半導体レーザ装置1に備えられるサブマウント20の底面図である。
【図5】図4の切断面線V−Vから見た断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る半導体レーザ装置1Aに備えられるサブマウント20Aの底面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る半導体レーザ装置1Bに備えられるサブマウント20Bの底面図である。
【図8】従来技術に係るフレームタイプの半導体レーザ装置の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置1の構成を概略的に示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る半導体レーザ装置1に備えられる半導体レーザ素子10の構成を示す斜視図である。図3は、本実施形態に係る半導体レーザ装置1に備えられるサブマウント20の構成を示す斜視図である。
【0031】
半導体レーザ装置1は、レーザ光Lを出射する半導体レーザ素子10と、半導体レーザ素子10が実装されるサブマウント20と、サブマウント20が搭載されるパッケージ30とによって構成される。
【0032】
半導体レーザ素子10は、略直方体形状に形成される半導体基板11と、半導体基板11の厚み方向Z1の一表面上に形成されるレーザ発光部12と、半導体基板11の厚み方向Z1の他表面の表面全体に形成される金属電極13と、レーザ発光部12において、半導体基板11とは反対側の表面上に形成される金属電極14とによって構成される。
【0033】
半導体基板11は、N型のGaAsによって略直方体形状に形成され、本実施形態では、幅方向X1の寸法が250μm、出射方向Y1の寸法が1500μm、厚み方向Z1の寸法が85μmとなるように形成されている。
【0034】
レーザ発光部12は、本実施形態では、図2に示すように、半導体基板11における厚み方向Z1の一表面上に2つ形成されている。2つのレーザ発光部12は、出射方向Y1に平行に延設され、溝底が半導体基板11に形成される分離溝15によって分離されて、ストライプ状に設けられている。各レーザ発光部12は、出射方向Y1に沿ってレーザ光Lを出射する。
【0035】
2つのレーザ発光部12は、その形状および大きさが互いに略等しくなるように形成され、本実施形態では、互いに発振波長の異なるレーザ光を出射するように構成されている。具体的には、一方のレーザ発光部12が、AlGaInP系の層構成によって、発振波長が785nmのレーザ光を出射するように構成され、他方のレーザ発光部12が、AlGaInP系の層構成によって、発振波長が660nmのレーザ光を出射するように構成されている。すなわち、本実施形態に係る半導体レーザ素子10は、2波長型のレーザチップである。また、図2に示すように、各レーザ発光部12は、リッジ導波路型に形成されている。
【0036】
2つのレーザ発光部12は、半導体基板11の厚み方向Z1の一表面に収まる範囲内で、各発光点の間隔T1が200μm以下となるように形成されるのが好ましい。本実施形態では、各発光点の間隔T1が110μmとなるように、2つのレーザ発光部12が形成されている。このように発光点の間隔T1を200μm以下にすることによって、レーザ発光部12で発生した熱を、効率よくサブマウント20へ逃がすことができる。
【0037】
各レーザ発光部12には、リッジ部12aにおけるコンタクト層を露出するように誘電体層16が積層され、該コンタクト層および誘電体層16上に、金(Au)から成るめっき電極を含む金属電極14が設けられる。各金属電極14は、互いに電気的に分離して設けられている。
【0038】
サブマウント20は、直方体形状に形成される基体21を備え、基体21の厚み方向Z2の一方の表面部は、半導体レーザ素子10が実装される実装面21aを有している。また、この実装面21a上には、接続電極22とボンディングパッド23とが設けられている。
【0039】
基体21は、たとえば、幅方向X2の寸法が600μm、長手方向Y2の寸法が1500μm、厚み方向Z2の寸法が300μmとなるように形成されている。基体21は、電気絶縁性を有し、かつ熱伝導性の良好な材料から成り、たとえば窒化アルミニウム(AlN)、窒化シリコン(SiN)およびシリコン(Si)のうちのいずれか1つから成る。
【0040】
AlN、SiNおよびSiは、熱伝導性に優れているので、これらの材料から成るサブマウント20は、実装される半導体レーザ素子10において発生する熱を、効率良く放散させることができる。
【0041】
接続電極22は、本実施形態では2つ形成され、半導体レーザ素子10に設けられる金属電極14がそれぞれ接合される。2つの接続電極22は、実装面21aにおける幅方向X2の中間部分に、長手方向Y2に平行に延び、所定の間隔T2を空けてストライプ状に設けられ、形状および大きさが互いに等しくなるようにそれぞれ形成されている。
【0042】
接続電極22は、本実施形態では、ろう材として使用するAuSnはんだから成り、いずれも幅方向X2の寸法が200μm、長手方向Y2の寸法が1500μmとなるように形成されている。
【0043】
また、各接続電極22間の間隔T2は、半導体レーザ素子10に形成される金属電極14間の間隔、すなわち分離溝15の溝幅に応じて決定される。各接続電極22は、この間隔T2が80μm以下となるように形成されるのが好ましく、本実施形態では、間隔T2が20μmとなるように形成されている。このように電極間の間隔T2を80μm以下にすることによって、レーザ発光部12で発生した熱を、効率よくサブマウント20へ逃がすことができる。
【0044】
ボンディングパッド23は、接続電極22ごとに設けられ、図1に示すように、ボンディングワイヤ33aがそれぞれ固着される。ボンディングパッド23は、本実施形態では、接続電極22の長手方向Y2の一端部から他端部に亘って、接続電極22に接触するように設けられている。
【0045】
被搭載体であるパッケージ30は、サブマウント20が搭載される平坦な搭載面31aを有する保持台31と、搭載面31a上に設けられるパッケージ端子32とを有する。保持台31の搭載面31aには、図1に示すように、ダイボンドペースト34を介してサブマウント20がダイボンディングされる。またこの搭載面31aは、ダイボンディングされたサブマウント20上の半導体レーザ素子10から、ボンディングワイヤ33bによってワイヤボンディングが行われる。すなわち、搭載面31aは、ワイヤボンディングされる領域(以下、「ワイヤボンディング領域」と称する)を含んでいる。
【0046】
パッケージ端子32は、ダイボンディングされたサブマウント20の実装面21aにおける各ボンディングパッド23から、ボンディングワイヤ33aによってワイヤボンディングが行われる。
【0047】
図4は、本実施形態に係る半導体レーザ装置1に備えられるサブマウント20の底面図を示し、図5は、図4の切断面線V−Vから見た断面図である。本実施形態に係るサブマウント20には、パッケージ30の搭載面31aに接合される側の表面部、すなわち基体21の厚み方向Z2において、実装面21aを有する表面部とは反対側の表面部(以下、「接合側表面部」と称する)21bにおいて、中央寄りの部分に凹凸が設けられている。
【0048】
具体的には、サブマウント20の接合側表面部21bは、その周縁の部分であって、平坦な表面を有する矩形枠状の平坦部分25aと、平坦部分25aに囲繞される部分であって、平坦部分25aの表面よりも窪んだ凹部26を有する凹凸部分25bとによって構成されている。凹凸部分25bにおいて、凹部26が形成される領域以外の領域は、平坦部分25aにおける表面と面一の表面を有している。
【0049】
凹凸部分25bには、本実施形態では、凹部26としてサブマウント20の長手方向Y2に平行に延びる複数の凹溝が設けられている。この長手方向Y2は、サブマウント20に実装される半導体レーザ素子10におけるレーザ光Lの出射方向Y1に一致する方向である。
【0050】
かかる凹溝は、マイクロブラスト加工、機械研削加工、およびプラズマ溶射による加工などの加工方法により形成することができる。本実施形態では、図4および図5に示すように、4本の凹溝が形成され、各凹溝は、幅方向X2の寸法が50μm、長手方向Y2の寸法が1000μm、厚み方向Z2の寸法(すなわち、平坦部分25aの表面からの深さ)が10μm程度となるように形成されている。
【0051】
凹溝の深さは、サブマウント20の厚み方向Z2の寸法(すなわち、板厚)や加工条件などに応じて適宜決定され、数ミクロン〜100μm程度が適当な範囲である。凹溝の深さは、あまり深くしすぎると、ダイボンドペースト34のペースト量が多く必要となってしまう、サブマウント20と保持台31との接合強度が落ちる、および、サブマウント20が不所望に反ってしまうといった問題が生じてしまう。
【0052】
本実施形態に係る半導体レーザ装置1は、ジャンクションダウン方式で、すなわち半導体レーザ素子10のレーザ発光部12がサブマウント20に対向するような姿勢で、半導体レーザ素子10をサブマウント20の実装面21aに実装するとともに、サブマウント20の接合側表面部21bを、ダイボンドペースト34によって、パッケージ30における保持台31の搭載面31aにダイボンディングすることによって作製される。
【0053】
これにより、レーザ発光部12で発生する熱は、サブマウント20によって効率よく放散され、レーザ発光部12の温度上昇が抑制される。このように構成された半導体レーザ装置1は、OA(Office Automation)機器(たとえば、レーザプリンタ)および光情報処理機器(たとえば、光ファイバ通信システム、光計測システムおよび光ディスク装置)などの電子機器に好適に用いられる。
【0054】
以下、本実施形態に係る半導体レーザ装置1の製造工程について詳細に説明する。まず、実装面21aが鉛直上方に臨むような姿勢で、サブマウント20の幅方向X2の両側を一対のヒータブロックによって保持する。一方、半導体レーザ素子10は、図示しないロボットによって、各金属電極14が鉛直下方に臨むような姿勢で吸着把持され、サブマウント20の上方まで搬送される。そして、半導体レーザ素子10は、各金属電極14が各接続電極22にそれぞれ対向するように位置合わせされる。
【0055】
この位置合わせは、一対のヒータブロックによって保持されたサブマウント20の鉛直上方および鉛直下方、ならびに、半導体レーザ素子10の出射方向Y1にそれぞれ設置されたCCD(Charge Coupled Device)カメラによって、サブマウント20の接続電極22および半導体レーザ素子10を撮像し、この撮像画像を画面上で視認しながら作業者によって行われる。
【0056】
具体的には、作業者は、まずサブマウント20の鉛直上方に設置されたCCDカメラによる撮像画像に基づいて、半導体レーザ素子10の出射方向Y1とサブマウント20の長手方向Y2とが平行になるように、前記ロボットを操作して、半導体レーザ素子10を鉛直軸線まわりに回転させる。このとき、半導体レーザ素子10の出射方向Y1とサブマウント20の長手方向Y2とが平行になっているか否かは、半導体レーザ素子10の金属電極13表面における出射方向Y1に平行な一縁辺と、接続電極22の延びる方向とが平行になっているかによって判断する。
【0057】
本実施形態に係るサブマウント20の接合側表面部21bには、図4に示されるように、凹部26として、複数の凹溝がストライプ状に形成されている。したがって、サブマウント20の鉛直下方に設置したCCDカメラによる撮像画像に基づいてストライプ形状を認識させることで、半導体レーザ素子10とサブマウント20との平行度の精度を向上させて位置合わせを行うことができる。
【0058】
このようにして平行度についての位置合わせが行われると、次に作業者は、半導体レーザ素子10の出射方向Y1に設置されたCCDカメラによる撮像画像に基づいて、接続電極22の位置と金属電極14の位置とが、半導体レーザ装置1の幅方向X1において一致するように、前記ロボットを操作して、半導体レーザ素子10を水平移動させる。
【0059】
半導体レーザ素子10を搬送および位置合わせしている間に、一対のヒータブロックを、ろう材から成る接続電極22を溶融するための予め定める温度に加熱しておく。予め定める温度とは、たとえば300℃である。各接続電極22が溶融したところで、位置合わせされた半導体レーザ素子10を鉛直下方に降下させて、溶融した各接続電極22に各金属電極14を押し付け、接続電極22と金属電極14におけるめっき電極とを合金化させて、急冷固着させる。急冷に際しては、一対のヒータブロックの加熱を停止すると共に、エアー噴出装置によってめっき電極と接続電極22との接合部分に、局所的にエアーを当てて空冷する。
【0060】
半導体レーザ素子10をサブマウント20に実装する際、サブマウント20の接合側表面部21bには平坦部分25aが設けられているので、ヒータブロックに対して傾くことなく安定して接することができ、サブマウント20の表面上の温度斑や、個々の半導体レーザ装置1の実装温度差の発生を防ぐことができる。サブマウント20の表面上の温度斑の防止によって、半導体レーザ素子10を面内で均一の状態で実装できるため、信頼性の低下を抑止できる。また、個々の半導体レーザ装置1の実装温度差を防ぐことによって、半導体レーザ装置1の特性ばらつきを抑えることができる。
【0061】
次に、半導体レーザ素子10が実装されたサブマウント20を一対のヒータブロックから取り出して、ロボットなどの搬送装置によって、半導体レーザ素子10が実装されたサブマウント20を収容すべきパッケージ30まで搬送し、このパッケージ30の搭載面31a上に、銀ペーストから成るダイボンドペースト34を用いて固着する。このパッケージ30は銅、鉄などの材料によって構成され、特に、熱伝導性に優れかつ絶縁性を有する材料である銅によって形成されることが好ましい。
【0062】
サブマウント20の接合側表面部21bには、前述するように凹凸部分25bが設けられているので、サブマウント20の接合側表面部21bが平坦な表面により構成される場合と比較して、サブマウント20の接合側表面部21bにおける表面積が増加し、ダイボンドペースト34との接触面積を増加させることができる。
【0063】
これにより、サブマウント20とパッケージ30とは放熱性を損なうことなくダイボンディングすることができ、半導体レーザ素子10の発熱によるレーザ出力低下を抑えることができる。また、接合側表面部21bの周縁には、凹凸が形成されていない平坦部分25aが設けられているので、サブマウント20がパッケージ30の搭載面31aに対して傾いて設置されることを防止し、安定した実装が可能となる。
【0064】
次に、サブマウント20上の各ボンディングパッド23と、パッケージ30に設けられるパッケージ端子32とをボンディングワイヤ(金線)33aによって個別にワイヤボンディングすると共に、半導体レーザ素子10の金属電極13と搭載面31aに規定したワイヤボンディング領域とを、ボンディングワイヤ33bによってワイヤボンディングする。
【0065】
サブマウント20の接合側表面部21bには、前述するように凹凸部分25bが設けられているので、サブマウント20とパッケージ30とをダイボンドペースト34を用いて接合するときに、ダイボンドペースト34の表面張力によって、ダイボンドペースト34をパッケージ30の搭載面31aに拡がりにくくすることができる。これにより、パッケージ30の搭載面31a上にワイヤボンディング領域が存在したとしても、ワイヤボンディング領域へのダイボンドペースト34の拡がりが小さく抑えられ、ワイヤボンディングを不自由なく行うことができる。
【0066】
以上の工程を経て半導体レーザ装置1の製造工程が終了し、独立駆動の可能な発光点の間隔が110μmである2波長型の半導体レーザ素子10を備える半導体レーザ装置1を製造することができる。なお、最後にサブマウント20および半導体レーザ素子10を、透光性を有する合成樹脂材料などによって封止しても構わない。
【0067】
以上のように本実施形態に係る半導体レーザ装置1は、サブマウント20における接合側表面部21bに、複数の平行に延びる凹溝によってストライプ状に凹凸部分25bが形成されているので、半導体レーザ素子10とサブマウント20との平行度の精度を向上させて、半導体レーザ素子10をサブマウント20に実装することができる。また、凹凸部分25bが形成されているので、サブマウント20の接合側表面部21bにおける表面積が増加することによって、ダイボンドペースト34との接触面積が増加し、放熱性を損なうことなくサブマウント20をパッケージ30に搭載することができる。また、凹凸部分25bによるサブマウント20の接合側表面部21bにおける表面積の増加により、ダイボンドペースト34が表面張力によって搭載面31aに拡がりにくくなり、ダイボンドペースト34の拡がりを抑え、ワイヤボンディングを不自由なく行うことが可能となる。したがって、ワイヤボンディング領域へのワイヤボンディングにおける、ボンディング強度およびボンディング精度を損なうことを防止することができる。
【0068】
さらに、サブマウント20における接合側表面部21bの周縁に平坦部分25aが設けられているので、半導体レーザ素子10が実装されたサブマウント20において、サブマウント20表面上の温度斑や、個々の半導体レーザ装置1の実装温度差の発生を防ぐことができる。これにより、半導体レーザ装置1の信頼性の低下や、特性ばらつきを抑えることができる。また、パッケージ30への実装時には、サブマウント20がパッケージ30の搭載面31aに対して傾いて設置されることを防止し、安定した実装が可能となる。
【0069】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る半導体レーザ装置1Aに備えられるサブマウント20Aの底面図である。本実施形態に係る半導体レーザ装置1Aは、サブマウント20Aを除く残余の構成については、第1の実施形態に係る半導体レーザ装置1と同様に構成される。本実施形態に係るサブマウント20Aは、接合側表面部21bの構成を除く残余の構成については、第1の実施形態におけるサブマウント20と同様に構成されており、同一の構成については同じ参照符を付して説明を省略する。
【0070】
本実施形態に係るサブマウント20Aは、凹凸部分25bには、凹部26Aとしてサブマウント20Aの長手方向Y2に垂直に延びる複数の凹溝が設けられている。本実施形態では、図6に示すように、5本の凹溝が形成され、各凹溝は、幅方向X2の寸法が500μm、長手方向Y2の寸法が100μm、厚み方向Z2の寸法が10μm程度となるように形成されている。
【0071】
したがって本実施形態では、半導体レーザ装置1Aの製造工程において、サブマウント20Aの鉛直下方に設置したCCDカメラによる撮像画像に基づいてストライプ形状を認識させることで、半導体レーザ素子10とサブマウント20とのレーザ出射方向における位置精度を向上させることができる。
【0072】
ジャンクションダウン方式で半導体レーザ素子10を実装する際には、レーザ光Lとサブマウント20Aとが干渉しないように、半導体レーザ素子10のレーザ光出射側の端部が、サブマウント20Aの長手方向Y2の一端部から突出した状態で実装される。このとき、半導体レーザ素子10のサブマウント20Aからの突出量が多すぎると、レーザ発光部12で発生した熱を効率よく放散することができず、半導体レーザ素子10の温度上昇が引き起こされてしまう。本実施形態では、レーザ出射方向と垂直のストライプ形状を認識させることによって、半導体レーザ素子10とサブマウント20Aとの位置合わせを行う際に、幅方向X2に垂直な長手方向Y2の位置精度を向上できる。その結果、半導体レーザ素子10の突出量を精度良く調整することができ、半導体レーザ素子10の放熱性を損なうことなくサブマウント20Aへ実装することができる。
【0073】
図7は、本発明の第3の実施形態に係る半導体レーザ装置1Bに備えられるサブマウント20Bの底面図である。本実施形態に係る半導体レーザ装置1Bは、サブマウント20Bを除く残余の構成については、第1の実施形態に係る半導体レーザ装置1と同様に構成される。本実施形態に係るサブマウント20Bは、接合側表面部21bの構成を除く残余の構成については、第1の実施形態におけるサブマウント20と同様に構成されており、同一の構成については同じ参照符を付して説明を省略する。
【0074】
本実施形態に係るサブマウント20Bは、凹凸部分25bには、凹部26Bとして格子状に形成された複数の凹溝が設けられている。したがって、本実施形態では、半導体レーザ装置1Bの製造工程において、第1の実施形態におけるサブマウント20と同様に、半導体レーザ素子10とサブマウント20Bとの、平行度の精度を向上させて位置合わせを行うことができるとともに、第2の実施形態におけるサブマウント20Aと同様に、半導体レーザ素子10とサブマウント20Bとの、レーザ出射方向における位置精度を向上させることができる。
【0075】
以上の各実施形態において、サブマウント20,20A,20Bに凹部26,26A,26Bを形成する際には、平坦部分25aの表面に面一な表面の面積が、保持台31の搭載面31aにおいて接合側表面部21bが臨む矩形領域の面積の半分以上となるように形成するのが好ましい。これにより、平坦部分25aの表面に面一な表面を有する領域が、凹部26が形成される領域よりも広くなるため、サブマウント20,20A,20Bとパッケージ30との接合面が十分に確保された状態で、放熱性を高めることができる。
【0076】
以上の各実施形態では、互いに発振波長の異なるレーザ光を出射するように構成された2波長型の半導体レーザ素子10を備えた半導体レーザ装置1,1A,1Bを例示したが、それぞれ発振波長が同一のレーザ光を出射するように構成されていてもよい。また、半導体レーザ素子10としては、レーザ発光部12を2つ備えるものに限らず、少なくとも1つ以上のレーザ発光部12を備えるものであればよい。また半導体レーザ素子10におけるレーザ発光部12は、リッジ構造を有するものに限定されず、埋め込み型であってもよい。
【0077】
また半導体レーザ素子10を構成する各層の厚さ、材料、発光点の間隔などについても前述の構成に限定されるものではなく、必要とする半導体レーザ装置1,1A,1Bの特性に応じて適宜設計変更することができる。たとえば半導体レーザ素子10としては、特定の材料系に限定されるものではなく、GaAs系、AlGaAs系、GaInAs系、GaInAsP系、AlGaInP系、GaN系のいずれの材料系であっても適用可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 半導体レーザ装置
10 半導体レーザ素子
11 半導体基板
12 レーザ発光部
20 サブマウント
21a 実装面
21b 接合側表面部
25a 平坦部分
25b 凹凸部分
30 パッケージ
31a 搭載面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板および該半導体基板の一表面上に形成される少なくとも1つ以上のレーザ発光部を含む半導体レーザ素子と、
前記半導体レーザ素子が実装されるサブマウントであって、
その厚み方向の一方の表面部が、前記半導体レーザ素子が実装される平坦な実装面を有し、
その厚み方向の他方の表面部が、該表面部における周縁の部分であって、平坦な表面を有する枠状の平坦部分と、該平坦部分に囲繞される部分であって、該平坦部分の表面よりも窪んだ凹部を有する凹凸部分とから成るサブマウントと、
前記サブマウントの他方の表面部を介して該サブマウントが搭載される搭載面を有する被搭載体とを含むことを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項2】
前記凹凸部分には、前記凹部として前記レーザ発光部のレーザ光の出射方向に平行に延びる複数の凹溝が設けられることを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ装置。
【請求項3】
前記凹凸部分には、前記凹部として前記レーザ発光部のレーザ光の出射方向に垂直に延びる複数の凹溝が設けられることを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ装置。
【請求項4】
前記凹凸部分には、前記凹部として格子状に形成された複数の凹溝が設けられることを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ装置。
【請求項5】
前記凹部は、前記サブマウントの厚み方向の他方の表面部における、前記平坦部分の表面に面一な表面の面積が、前記搭載面において前記他方の表面部が臨む領域の面積の半分以上となるように形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体レーザ装置。
【請求項6】
前記レーザ発光部は、発振波長が互いに異なる複数のレーザ光、または発振波長が同一の複数のレーザ光を出射可能な構成にされてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体レーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−243960(P2012−243960A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112873(P2011−112873)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】