説明

半導体圧力センサおよび半導体圧力センサの製造方法

【課題】製造コストを抑制することができ、かつ圧力測定精度を向上することができる半導体圧力センサおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体圧力センサは、主表面1aに凹部3およびアライメントマーク4を有する第1の基板1と、第1の基板1の主表面1a上に形成されており、第1の基板1の凹部3内の空間IS上を覆うように設けられたダイヤフラム5およびダイヤフラム5上に設けられたゲージ抵抗6を有する第2の基板2とを備えている。アライメントマーク4は第2の基板2から露出するように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体圧力センサおよび半導体圧力センサの製造方法に関し、特に、ゲージ抵抗を有する半導体圧力センサおよび半導体圧力センサの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、平板状のシリコン基板と凹部が形成されたシリコン基板とを貼り合わせることによって形成されたダイヤフラムおよび基準圧力室を備えた半導体圧力センサが提案されている。
【0003】
たとえば、特開2000−124466号公報(特許文献1)には、ダイヤフラムおよび基準圧力室を備えた半導体圧力センサが提案されている。この公報に記載された半導体圧力センサでは、平板状の第1のシリコン基板と凹部が形成された第2のシリコン基板とが、第1のシリコン基板の表面に形成された酸化膜を介して貼り合わされる。第1のシリコン基板によって凹部が封止されることによって基準圧力室が形成される。次に、第2のシリコン基板が研削されることによって第2のシリコン基板の凹部を覆う部分にダイヤフラムが形成される。この後、ダイヤフラムの所定の位置にゲージ抵抗が形成される。
【0004】
上記公報に記載された半導体圧力センサの一の製造方法では、第1のシリコン基板に貼り合わせられる第2のシリコン基板の第1の面に凹部と同時にアライメントマーク(第1のアライメントマーク)が形成される。第1のアライメントマークに対してIR(赤外線)アライナで位置合わせが行われて第2のシリコン基板の第1の面と反対側の第2の面にアライメントマーク用凹部(第2のアライメントマーク)が形成される。この第2のアライメントマークに対してステッパで位置合わせが行われてダイヤフラムの所定の位置にゲージ抵抗が形成される。
【0005】
また、上記公報に記載された他の製造方法では、第1のアライメントマークが第2のシリコン基板を貫通するように形成される。第1のアライメントマークに対してステッパで位置合わせが行われて第2のシリコン基板の第2の面に第2のアライメントマークが形成される。その後、上述の一の製造方法と同様にゲージ抵抗が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−124466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記公報に記載された半導体圧力センサの一の製造方法では、凹部は第1および第2ののシリコン基板によって遮蔽されているため凹部を視認することはできない。このため、凹部を覆うダイヤフラムの正確な位置も視認することはできない。そこで、アライメントマークを用いてダイヤフラムの所定の位置にゲージ抵抗が形成される。第1のアライメントマークは視認することができないので第1のアライメントマークを認識するためにIRアライナが用いられる。IRアライナとしてIRアライメント機能を有するステッパが用いられる。しかしながら、IRアライメント機能を有するステッパは非常に稀である。たとえIRアライメント機能を有するステッパを使用できる環境にあったとしても、一般的にはIRアライメント機能の使用頻度が非常に低いために、設備投資効率が悪く、工程単価が高くなってしまうという課題がある。これにより、製造コストが高くなるという問題がある。
【0008】
また、ダイヤフラムの厚さを所望の厚さに合わせ込むためには、ダイヤフラムあるいは第2シリコン基板の膜厚を光干渉測定法などによって測定しながら、第2のシリコン基板を研削する必要がある。しかしながら、第2のシリコン基板の研削量にはばらつきがある。また第2の基板には多数の凹部が形成されるが、それぞれの凹部の深さにもばらつきがある。このため、ダイヤフラムの厚さに相当なばらつきがある。したがって、歩留まりよくダイヤフラムの厚さを所望どおりに仕上げることが難しいという別の課題もある。これにより、圧力測定精度が低下するという問題がある。
【0009】
また、上記公報に記載された半導体圧力センサの他の製造方法では、凹部およびダイヤフラムを含む第2のシリコン基板を貫通するような第1のアライメントマークが形成される。第2のシリコン基板は少なくとも10μm以上の厚みを有している。したがって、第1のアライメントマークを形成するためには貼り合わせ界面である第1の面から第2のシリコン基板を少なくとも10μm以上エッチングする必要があるため、時間、コストを要するという課題がある。これにより、製造コストが高くなるという問題がある。
【0010】
また、第1のアライメントマークは第2のシリコン基板の第1の面からシリコン基板を貫通するように深くエッチングする必要があるため、第2のシリコン基板の第2の面でのアライメントマークのパターン精度を確保することが難しい。このため、アライメント精度が低下するという別の課題もある。これにより、圧力測定精度が低下するという問題がある。
【0011】
また、上記公報に記載された半導体装置の一および他の製造方法とも、第1のアライメントマークに基づいて位置合わせされた第2のアライメントマークを基準にゲージ抵抗が形成される。そのため、第2のアライメントマーク介さずに第1のアライメントマークに基づいてゲージ抵抗が形成される場合と比べてゲージ抵抗の位置合わせ精度が低下するという課題がある。これにより、圧力測定精度が低下するという問題がある。
【0012】
ところで、シリコン基板をエッチングして凹部などを形成する方法としては、大別してドライエッチングとウェットエッチングとがある。いずれの方法もエッチング時あるいはエッチング後の洗浄時などに微量の金属元素などでシリコン基板が汚染されることがある。半導体圧力センサではイオン注入などによってシリコン基板中に不純物を導入することによってゲージ抵抗が形成される。上述の金属汚染はゲージ抵抗の特性ばらつきおよび信頼性低下に繋がるおそれがある。
【0013】
つまり、仮に凹部形成工程において上述の金属元素が意図せずにシリコン基板中に導入されてしまった場合、シリコン基板が後の熱処理工程において1000℃以上の高温で処理された際に、金属元素はシリコン基板中を移動する。したがって、上記公報に記載された半導体圧力センサのようにゲージ抵抗が形成される第2のシリコン基板に凹部が形成される構成では、第2のシリコン基板と第1のシリコン基板との貼り合わせ後に実施される熱処理工程において、上述の金属元素の移動が起こるため、ゲージ抵抗の内部にまで金属元素が侵入してしまう。これにより、ゲージ抵抗の特性がばらついたり、信頼性が低下したりするという課題がある。これにより、圧力測定精度が低下するという問題がある。
【0014】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、製造コストを抑制することができ、かつ圧力測定精度を向上することができる半導体圧力センサおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の半導体圧力センサは、主表面に凹部およびアライメントマークを有する第1の基板と、第1の基板の主表面上に形成されており、第1の基板の凹部内の空間上を覆うように設けられたダイヤフラムおよびダイヤフラム上に設けられたゲージ抵抗を有する第2の基板とを備えている。アライメントマークは第2の基板から露出するように設けられている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の半導体圧力センサによれば、第1の基板が凹部およびアライメントマークを有し、第2の基板がゲージ抵抗を有している。つまり、凹部およびアライメントマークを有する第1の基板とは別の第2の基板がゲージ抵抗を有している。したがって、凹部およびアライメントマークが形成される際の第1の基板での金属汚染が第2の基板のゲージ抵抗に広がることを抑制できる。このため、ゲージ抵抗の特性ばらつきおよび信頼性の低下を防止することができる。これにより、圧力測定精度を向上することができる。
【0017】
また、第1の基板が凹部を有し、第2の基板がダイヤフラムを有するため、凹部の深さのばらつきに影響されることなく第2の基板を研削してダイヤフラムを設けることができる。そのため、ダイヤフラムの厚さの精度を向上することができる。これにより、圧力測定精度を向上することができる。
【0018】
また、アライメントマークが第2の基板から露出しているため、アライメントマークを視認することができる。したがって、IRアライナが不要となる。これにより、製造コストを抑制することができる。
【0019】
また、第1の基板は主表面にアライメントマークを有するため、アライメントのパターン精度を確保することができるのでアライメント精度が低下しない。そのため、ゲージ抵抗の位置合わせ精度を向上することができる。これにより、圧力測定精度を向上することができる。
【0020】
また、第1の基板は主表面にアライメントマークを有するため、第2の基板を貫通するようにアライメントマークを形成する場合と比較して、アライメントマークの形成に要するコストおよび時間を抑制することができる。これにより、製造コストを抑制することができる。
【0021】
また、第1の基板は主表面にアライメントマークを有するため、アライメントマークをゲージ抵抗の位置合わせ基準に用いることでゲージ抵抗の位置合わせ精度を向上することができる。これにより、圧力測定精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態における半導体圧力センサの概略断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態における第1の基板がウエハ状態の半導体圧力センサの概略平面図である。
【図3】図2のP1部を示す半導体圧力センサの拡大図である。
【図4】図2のP2部を示す半導体圧力センサの概略断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態における半導体圧力センサの製造方法の第1工程を示す概略断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態における半導体圧力センサの製造方法の第2工程を示す概略断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態における半導体圧力センサの製造方法の第3工程を示す概略断面図である。
【図8】本発明の一実施の形態における半導体圧力センサの製造方法の第4工程を示す概略断面図である。
【図9】本発明の一実施の形態における半導体圧力センサの製造方法の第5工程を示す概略断面図である。
【図10】本発明の一実施の形態における半導体圧力センサの製造方法の第6工程を示す概略断面図である。
【図11】本発明の一実施の形態における半導体圧力センサの製造方法の第7工程を示す概略断面図である。
【図12】本発明の一実施の形態における半導体圧力センサの製造方法の第8工程を示す概略断面図である。
【図13】本発明の一実施の形態における比較例1の半導体圧力センサの概略断面図である。
【図14】本発明の一実施の形態における比較例2の半導体圧力センサの概略断面図である。
【図15】本発明の一実施の形態における比較例3の半導体圧力センサの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施の形態について図に基づいて説明する。
最初に、本発明の一実施の形態の半導体圧力センサの構成について説明する。
【0024】
図1を参照して、本発明の一実施の形態の半導体圧力センサは、第1の基板1と、第2の基板2と、酸化膜7と、金属配線8とを主に有している。第1の基板1に第2の基板2が接合されている。第1の基板1および第2の基板2は、たとえばシリコン基板である。
【0025】
第1の基板1は基板本体11と酸化膜12とを有している。酸化膜12は基板本体11の周囲に形成されている。つまり、第1の基板1の表面に酸化膜12が形成されている。第1の基板1は主表面1aに凹部3およびアライメントマーク4を有している。凹部3は主表面1aの中央部に配置されている。アライメントマーク4は第2の基板2から露出するように設けられている。アライメントマーク4は主表面1aの両端部に配置されている。なお、アライメントマーク4は主表面1aの両端部のうちどちらか一方の端部に配置されていればよい。
【0026】
第2の基板2は第1の基板1の主表面1a上に形成されている。第2の基板2はダイヤフラム5を有している。ダイヤフラム5は第1の基板1の凹部3内の空間IS上を覆うように設けられている。第2の基板2の凹部3内の空間IS上を覆う部分がダイヤフラム5を構成している。ダイヤフラム5と凹部3とが基準圧力室を構成している。なお、第2の基板2には凹部およびアライメントマークは形成されていない。
【0027】
第2の基板2はゲージ抵抗6を有している。ゲージ抵抗6はダイヤフラム5上に設けられている。ゲージ抵抗6は、第1の基板1と第2の基板2とが重なる方向から見て凹部3の外縁3aと重なる位置に配置されている。ゲージ抵抗6は第2の基板2の歪みを検出可能に形成されている。ゲージ抵抗6が第2の基板2の歪みを検出することで圧力を検出するように半導体圧力センサは構成されている。たとえば第2の基板2がn型シリコン基板の場合には、ゲージ抵抗6として、n型シリコン基板に形成されたpnダイオードのp層が用いられる。
【0028】
第2の基板2上に酸化膜7が形成されている。酸化膜7にはゲージ抵抗6の一部を露出するようにゲージ抵抗用コンタクトホールが形成されている。酸化膜7上にゲージ抵抗用コンタクトホールを充填するように金属配線8が形成されている。金属配線8はゲージ抵抗6と接するように形成されている。金属配線8はゲージ抵抗6と電気的に接続されている。金属配線8は、ダイヤフラム5の変形によるゲージ抵抗6の抵抗変化を電気信号として外部に取り出し可能に構成されている。
【0029】
続いて、第1の基板がウエハ状態の半導体圧力センサについて説明する。
図2および図3を参照して、ウエハ状態の第1の基板1には多数の半導体センサが形成されている。図2中P1部で示される半導体圧力センサが切り出されて図3に示される半導体圧力センサが形成されている。図3で示される半導体圧力センサが図1で示される半導体圧力センサに対応する。ウエハ状態の第1の基板1の外周縁部1bにアライメントマーク4が設けられている。アライメントマーク4は、たとえば互いに90度ずつ離れた位置に4個設けられている。図4を参照して、図2中P2部で示される半導体圧力センサは第1の基板1の外周縁部1bに設けられた1個のアライメントマーク4を有している。
【0030】
また、アライメントマーク4は、ウエハ状態の第1の基板1の外周縁部1bのみに設けられていてもよい。一般に2枚のシリコン基板を貼り合わせて製造されるSOI(Silicon On Insulator)基板においては、シリコン基板の外周縁部は貼り合わせの信頼性が低くなる。このため、薄く研削された側のシリコン基板の外周縁部が除去される。外周縁部1bはテラス部を構成している。テラス部の幅は1mm以上5mm以下程度である。
【0031】
一般にシリコン基板の外周端から5mm程度の領域は半導体ウエハプロセスにおいても有効な電気回路を形成することができないため使用されていない。つまり、シリコン基板の外周端から5mm程度の領域は有効チップが配置される有効領域を構成しない。有効領域ではないテラス部のみにアライメントマークを形成することによって有効チップ数を最大限に多く確保することができる。したがって、アライメントマーク4がウエハ状態の第1の基板1の外周縁部1bのみに設けられていることによって、アライメントマーク4が第1の基板1の主表面1aの全面に一定間隔で配置する場合に比べて有効チップ数を多く確保することができる。
【0032】
次に、本発明の一実施の形態の半導体圧力センサの製造方法について説明する。以下、説明の便宜のために1個の半導体圧力センサを例として説明するが、ウエハ上に多数の半導体圧力センサが同時に製造される。
【0033】
図5を参照して、主表面1aに凹部3およびアライメントマーク4が形成された第1の基板1が準備される。まず、第1の基板1の主表面1aにアライメントマーク4が形成される。アライメントマーク4はウエハ状態の第1の基板1の外周縁部1b(図1)に形成されてもよい。外周縁部1bの幅はウエハ状態の第1の基板1の外周縁部1bの外周端から5mm以下であってもよい。アライメントマーク4は、後でゲージ抵抗6などを形成する際の位置合わせに用いられる。アライメントマーク4の形状としては、ステッパを使用できるようにステッパで定められた形状にする。形成方法としては、好ましくはプラズマエッチング装置などを用いて、第1の基板1をエッチングすることで形成される。アライメントマーク4はステッパにて視認できればよいので、深くエッチングする必要はなく、1μm程度の深さがあれば十分である。
【0034】
アライメントマーク4を基準にステッパ等で位置合わせが行われて主表面1a上に凹部3が形成される。この凹部3は後に圧力センサとしての基準圧力室となるので、その深さは5〜100μm程度が望ましく、この範囲内で比較的任意に設定できる。凹部3の深さが浅いほど加工負荷が小さくなるが、基準圧力室の容積が小さくなるため微小なリークによる圧力変動、すなわち出力変動が増大する。凹部3の深さはこのトレードオフの関係を考慮して選定される。この凹部3の形成には、アライメントマーク4と同じくプラズマエッチング装置を用いることもできるが、深さが5μm以上とやや深いため、ボッシュプロセスによるディープRIE(Reactive Ion Etching)装置を用いても良い。あるいはプラズマエッチング装置およびディープRIE装置などを用いたドライエッチングではなく、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)などのアルカリエッチング液を用いたウェットエッチングを用いることもできる。
【0035】
また、凹部3およびアライメントマーク4は同時に形成されてもよい。凹部3およびアライメントマーク4が同時に形成される場合には、凹部3およびアライメントマーク4を同じフォトマスクを用いて同時に写真製版することができるため凹部3のアライメント精度(位置精度)を非常に高くすることができる。
【0036】
その後、第1の基板1の表面に酸化膜12が形成される。凹部3およびアライメントマーク4が形成された後、第1の基板1が熱酸化されて、ウエハ表面全体に酸化膜12が形成される。酸化膜12の厚さは0.2〜1μm程度が好適である。
【0037】
続いて、図6〜図10を参照して、凹部3内の空間IS上を覆うダイヤフラム5を有し、かつアライメントマーク4を露出するように第1の基板1の主表面1a上に第2の基板2が形成される。図6を参照して、まず、凹部3を封止するように第1の基板1の主表面1aに第2の基板2が貼り合わせられる。第1の基板1と第2の基板2とが重ね合わせられ、真空排気され、かつ約1100℃の環境下に置いて熱酸化されることによって互いに接合される。これにより、基準圧力室が気密封止される。
【0038】
凹部3およびアライメントマーク4が形成される際に意図せずに金属元素が第1の基板1に導入されていた場合に、第1の基板1と第2の基板2の接合時に高温下で金属元素が移動したとしても、金属元素が酸化膜12内にトラップされて第1の基板1内に留まり、第2の基板2内に侵入しない。
【0039】
図7を参照して、その後、第2の基板2の外周縁部1bがグラインダなどで研削される。第2の基板2は厚みの全ては研削されず、若干量厚みを残すように研削される。これにより第2の基板2が研削されてさらに第1の基板1まで研削されることによってアライメントマーク4が消失してしまうことを防止できる。
【0040】
図8を参照して、第2の基板2の外周縁部1bが研削された後に、外周縁部1bに残った第2の基板2がエッチングによって完全に除去される。このエッチングではシリコンのみをエッチングし、酸化膜をエッチングしないTMAHなどのアルカリエッチング液を用いることが好ましい。これにより、アライメントマーク4は酸化膜12によって被覆されているのでエッチングされることがない。本工程により、テラス部である外周縁部1bが完成し、アライメントマーク4が露出して視認できる状態となる。
【0041】
図9を参照して、その後、第2の基板2がグラインダなどで研削されて薄肉化される。更に表面を鏡面状態に仕上げるため、CMP(Chemical Mechanical Polishing)などによる研磨が行われる。これにより、ダイヤフラム5が完成する。ダイヤフラム5のサイズおよび厚さは測定する圧力に依存するが、たとえば、1〜5気圧の圧力を測定するのであれば、サイズ100から500μm、厚さ5〜20μmに設定することができる。
【0042】
また、上記では、テラス部である外周縁部1bが形成された後に第2の基板2が所望の厚さにまで研削されてダイヤフラム5が形成されたが、第2の基板2が所望の厚さにまで研削されてダイヤフラム5が形成された後にテラス部である外周縁部1bが形成されてもよい。
【0043】
図10を参照して、その後、露出したアライメントマーク4を用いてダイヤフラム5上にゲージ抵抗6が形成される。ステッパを用いて露出したアライメントマーク4に対して位置合わせすることでダイヤフラム5の所定の位置にゲージ抵抗6が形成される。その後、第2の基板2上に酸化膜7が形成される。
【0044】
図11を参照して、その後、ステッパを用いて露出したアライメントマーク4に対して位置合わせすることで酸化膜7の所定の位置にゲージ抵抗用コンタクトホールが形成される。続いて、露出したアライメントマーク4を用いてゲージ抵抗6に電気的に接続される金属配線8が形成される。ステッパを用いて露出したアライメントマーク4を基準にして位置合わせを行って金属配線8がゲージ抵抗用コンタクトホールを充填するように所定の位置に形成される。
【0045】
図12を参照して、その後、第1の基板1の主表面1aとは反対側の裏面側が研削されて、不要な酸化膜が除去される。これにより、圧力センサウェハが完成する。さらに第1の基板1の側面の不要な酸化膜が除去されることで図1に示される半導体圧力センサが製造される。
【0046】
本発明の一実施の形態では、上述のように、アライメントマーク4に対していずれもステッパを用いて凹部3、ゲージ抵抗6を形成することができるので、凹部3を覆うように設けられたダイヤフラム5の所定の位置に高精度にゲージ抵抗6を形成することができる。
【0047】
次に、本発明の一実施の形態の作用効果について比較例と比較して説明する。
図13を参照して、本発明の一実施の形態における比較例1の半導体圧力センサでは、第2の基板2の第1の面2aに第1のアライメントマーク4aが形成されている。第1のアライメントマーク4aは第2の基板2の第1の面2aに形成されているため第2の面2b側から視認できない。そのため、第1のアライメントマーク4aを認識するためにIRアライナが用いられる。したがって、IRアライナを用いるために製造コストが高くなる。
【0048】
図14を参照して、本発明の一実施の形態における比較例2の半導体圧力センサでは、第1のアライメントマーク4aが第2の基板2を貫通するように形成されている。第2の基板2には凹部3およびダイヤフラム5が形成されているため、比較例1のように第2の基板2の表面に設けられた第1のアライメントマーク4aの厚みより大きい厚みを第2の基板2は有している。したがって、比較例1の半導体圧力センサように第2の基板2の表面に第1のアライメントマーク4aを形成する場合に比べて、比較例2の半導体圧力センサでは第1のアライメントマーク4aを形成するために時間、コストが多く必要となるため、製造コストが高くなる。
【0049】
また、第1のアライメントマーク4aが第2の基板2を第1の面2aから第2の面2bに向かって貫通するように形成されているため、第2の基板2を深くエッチングする必要がある。このエッチングの際、第1の面2aから第2の面2bに向かって先が細くなるように第2の基板2に貫通孔が形成される。この貫通孔に第1のアライメントマーク4aが形成されるため、第1のアライメントマーク4aの形状は第1の面2aに比べて第2の面2bでは劣化する。そのため、アライメント精度が低下する。これにより、圧力測定精度が低下する。
【0050】
また、比較例1および2とも、第2の基板2の研削量のばらつきおよび凹部3の深さのばらつきによって、ダイヤフラム5の厚さに相当なばらつきがある。したがって、歩留まりよくダイヤフラム5の厚さを所望どおりに仕上げることが難しい。これにより、圧力測定精度が低下する。
【0051】
また、比較例1および2とも、第2の基板2に凹部3およびゲージ抵抗6が形成されているため、第2の基板2に凹部3が形成される際の金属汚染によってゲージ抵抗6の特性がばらついたり、信頼性が低下したりする。
【0052】
図15を参照して、本発明の一実施の形態における比較例3の半導体圧力センサでは、第1の基板1の貼り合わせ界面とはならない面1dに第1のアライメントマーク4aが形成されている。この第1のアライメントマーク4aに対して両面アライナを用いて主表面1aに凹部3が形成される。次に、第1の基板1と第2の基板2とが凹部3を封止するように貼り合わせられる。その後、第2の基板2が研削されることによってダイヤフラム5が形成される。そして、第1のアライメントマーク4aに対して両面アライナを用いて第2の基板2の第2の面2bに第2のアライメントマーク4bが形成される。この第2のアライメントマーク4bを基準にゲージ抵抗6が形成される。
【0053】
比較例3の半導体圧力センサの製造方法では、比較例1のようにIRアライナは不要であり、比較例2のように第2の基板2を貫通するような第1のアライメントマーク4aも不要である。しかしながら、ステッパに比べて位置合わせ精度の低い両面アライナが2回使用されている。したがって、ゲージ抵抗6の位置合わせ精度は、そもそも位置合わせ精度が低い両面アライナの位置合わせを2回繰り返した精度しか得られない。これにより、圧力測定精度が低下する。
【0054】
また、比較例1〜3のいずれにおいても、第1のアライメントマーク4aに基づいて位置合わせされた第2のアライメントマーク4bを基準にゲージ抵抗6は形成される。したがって、第2のアライメントマーク4bを介さずに第1のアライメントマーク4aに基づいてゲージ抵抗6が形成される場合と比べてゲージ抵抗6の位置精度が低下する。
【0055】
本発明の一実施の形態の半導体圧力センサによれば、第1の基板1が凹部3およびアライメントマーク4を有し、第2の基板2がゲージ抵抗6を有している。つまり、凹部3およびアライメントマーク4を有する第1の基板1とは別の第2の基板2がゲージ抵抗6を有している。したがって、凹部3およびアライメントマーク4が形成される際の第1の基板1での金属汚染が第2の基板2のゲージ抵抗6に広がることを抑制できる。このため、ゲージ抵抗6の特性ばらつきおよび信頼性の低下を防止することができる。これにより、圧力測定精度を向上することができる。
【0056】
また、第1の基板1が凹部3を有し、第2の基板2がダイヤフラム5を有するため、凹部3の深さのばらつきに影響されることなく第2の基板2を研削してダイヤフラム5を設けることができる。そのため、ダイヤフラム5の厚さの精度を向上することができる。これにより、圧力測定精度を向上することができる。
【0057】
また、アライメントマーク4が第2の基板2から露出しているため、アライメントマーク4を視認することができる。したがって、IRアライナが不要となる。これにより、製造コストを抑制することができる。
【0058】
また、第1の基板1は主表面1aにアライメントマーク4を有するため、アライメントマーク4のパターン精度を確保することができるのでアライメント精度が低下しない。そのため、ゲージ抵抗6の位置合わせ精度を向上することができる。これにより、圧力測定精度を向上することができる。
【0059】
また、第1の基板1は主表面1aにアライメントマーク4を有するため、第2の基板2を貫通するようにアライメントマーク4を形成する場合と比較して、アライメントマーク4の形成に要するコストおよび時間を抑制することができる。これにより、製造コストを抑制することができる。
【0060】
また、第1の基板1は主表面1aにアライメントマーク4を有するため、アライメントマーク4をゲージ抵抗6の位置合わせ基準に用いることでゲージ抵抗6の位置合わせ精度を向上することができる。これにより、圧力測定精度を向上することができる。特に、ダイヤフラム5に対するゲージ抵抗6の位置精度を向上させることによって、圧力ゼロ時のセンサ出力(いわゆるオフセット出力)のばらつきを小さくすることができる。
【0061】
また、本発明の一実施の形態の半導体圧力センサによれば、ウエハ状態の第1の基板1の外周縁部1bにアライメントマーク4が設けられている。そのため、有効領域でない外周縁部1bにアライメントマーク4が設けられることで、有効チップ数を多く確保することができる。
【0062】
また、本発明の一実施の形態の半導体圧力センサによれば、第1の基板1と第2の基板2とが重なる方向から見て凹部3の外縁3aと重なる位置にゲージ抵抗6が配置されている。そのため、応力が大きくなる領域にゲージ抵抗6が配置されることで、ゲージ抵抗6の抵抗変化を大きくすることができる。これにより、圧力測定精度を向上することができる。
【0063】
本発明の一実施の形態の半導体圧力センサの製造方法によれば、第1の基板1に凹部3およびアライメントマーク4が形成されており、第2の基板2にゲージ抵抗6が形成されるため、凹部3およびアライメントマーク4が形成される際の金属汚染によるゲージ抵抗6の特性ばらつきおよび信頼性の低下を防止することができる。これにより、圧力測定精度を向上することができる。
【0064】
また、第1の基板1に凹部3が形成されており、第2の基板2にダイヤフラム5が形成されるため、凹部3の深さのばらつきに影響されることなく第2の基板2を研削してダイヤフラム5を形成することができる。そのため、ダイヤフラム5の厚さの精度を向上することができる。これにより、圧力測定精度を向上することができる。
【0065】
また、アライメントマーク4を露出するように第2の基板2が設けられているため、アライメントマーク4を視認することができる。したがって、IRアライナが不要となる。これにより、製造コストを抑制することができる。
【0066】
また、第1の基板1の主表面1aにアライメントマーク4が形成されているため、アライメントのパターン精度を確保することができるのでアライメント精度が低下しない。そのため、ゲージ抵抗6の位置合わせ精度を向上することができる。これにより、圧力測定精度を向上することができる。
【0067】
また、第1の基板1の主表面1aにアライメントマーク4が形成されているため、第2の基板2を貫通するようにアライメントマーク4が形成されている場合と比較して、アライメントマーク4の形成に要するコストおよび時間を抑制することができる。これにより、製造コストを抑制することができる。
【0068】
また、第1の基板1は主表面1aにアライメントマーク4が形成されているため、アライメントマーク4をゲージ抵抗6の位置合わせ基準に用いることでゲージ抵抗6の位置合わせ精度を向上することができる。これにより、圧力測定精度を向上することができる。特に、ダイヤフラム5に対するゲージ抵抗6の位置精度を向上させることによって、圧力ゼロ時のセンサ出力(いわゆるオフセット出力)のばらつきを小さくすることができる。
【0069】
また、本発明の一実施の形態の半導体圧力センサの製造方法によれば、露出したアライメントマークを用いてゲージ抵抗に電気的に接続される金属配線を形成する工程をさらに備えている。これにより、金属配線の位置合わせ精度を向上することができる。金属配線の位置合わせ精度を向上することによって金属配線の位置ずれによる圧力測定誤差を抑制することができる。これにより、圧力測定精度を向上することができる。
【0070】
また、本発明の一実施の形態の半導体圧力センサの製造方法によれば、アライメントマーク4は、ウエハ状態の第1の基板1の外周縁部1bに形成される。有効領域でない外周縁部1bにアライメントマーク4が設けられることで、有効チップ数を多く確保することができる。
【0071】
また、本発明の一実施の形態の半導体圧力センサの製造方法によれば、外周縁部1bの幅がウエハ状態の第1の基板1の外周端1cから5mm以下である。これにより、ステッパによるアライメントマーク4の認識性と有効チップ領域の最大化とを両立できるという効果が得られる。これは次の理由による。まず、アライメントマーク4のステッパによる視認性は、アライメントマーク4を第1の基板1の内周側へ配置するほど問題なく認識できるようになる。一方で、アライメントマークを露出させるためにはその上にある第2の基板2を除去することになるので、アライメントマーク4を第1の基板1の内周側へ配置するほど、有効チップ領域は減少する。その上、第2の基板2を除去した部分が急峻かつ大きな段差となるために、後に形成するゲージ抵抗6、酸化膜7、金属配線8などのカバレッジ形状が低下したり、剥離したりするという問題を惹起してしまうおそれがある。発明者らは鋭意実験した結果、アライメントマーク4が所謂テラス部に配置され、外周縁部1bの幅の寸法が第1の基板1の外周端から5mm以内の範囲であれば、ステッパによるアライメントマーク4の認識性と有効チップ領域の最大化とを両立できることを見出した。
【0072】
また、本発明の一実施の形態の半導体圧力センサの製造方法によれば、第2の基板2を研削した後に、第2の基板2をエッチングすることによってアライメントマーク4が露出される。これにより、第2の基板2が研削されて、さらに第1の基板1まで研削されることによってアライメントマーク4が消失してしまうことを防止することができる。また、処理時間の長いエッチングだけでなく、砥石を用いたグラインダなどで切削することで処理時間を短縮することによって製造効率を向上することができる。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
1 第1の基板、1a 主表面、1b 外周縁部、1c 外周端、2 第2の基板、3 凹部、3a 外縁、4 アライメントマーク、5 ダイヤフラム、6 ゲージ抵抗、7 酸化膜、8 金属配線、11 基板本体、12 酸化膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主表面に凹部およびアライメントマークを有する第1の基板と、
前記第1の基板の前記主表面上に形成されており、前記第1の基板の前記凹部内の空間上を覆うように設けられたダイヤフラムおよび前記ダイヤフラム上に設けられたゲージ抵抗を有する第2の基板とを備え、
前記アライメントマークは前記第2の基板から露出するように設けられている、半導体圧力センサ。
【請求項2】
前記第1の基板はウエハ状態であって、
前記ウエハ状態の前記第1の基板の外周縁部に前記アライメントマークが設けられている、請求項1に記載の半導体圧力センサ。
【請求項3】
前記第1の基板と前記第2の基板とが重なる方向から見て前記凹部の外縁と重なる位置に前記ゲージ抵抗が配置されている、請求項1または2に記載の半導体圧力センサ。
【請求項4】
主表面に凹部およびアライメントマークが形成された第1の基板を準備する工程と、
前記凹部内の空間上を覆うダイヤフラムを有し、かつ前記アライメントマークを露出するように前記第1の基板の前記主表面上に第2の基板を形成する工程と、
前記露出した前記アライメントマークを用いて前記ダイヤフラム上にゲージ抵抗を形成する工程とを備えた、半導体圧力センサの製造方法。
【請求項5】
前記露出した前記アライメントマークを用いて前記ゲージ抵抗に電気的に接続される金属配線を形成する工程をさらに備えた、請求項4に記載の半導体圧力センサの製造方法。
【請求項6】
前記アライメントマークは、ウエハ状態の前記第1の基板の外周縁部に形成される、請求項4または5に記載の半導体圧力センサの製造方法。
【請求項7】
前記外周縁部の幅が前記ウエハ状態の前記第1の基板の外周端から5mm以下である、請求項6に記載の半導体圧力センサの製造方法。
【請求項8】
前記第2の基板を形成する工程は、
前記第2の基板を研削する工程と、
前記第2の基板を研削した後に、前記第2の基板をエッチングすることによって前記アライメントマークを露出させる工程とを含む、請求項4〜7のいずれかに記載の半導体圧力センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−96747(P2013−96747A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237485(P2011−237485)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】