説明

半導体基板加工用粘着シート

【課題】半導体装置等の樹脂組成、添加剤の種類、離型剤の種類、それらの量にかかわらず、紫外線及び/又は放射線を照射した後、安定した粘着力の低下特性を示し、また、樹脂表面への糊残りをほぼ完全に防止できる安定した粘着シートを提供することを目的とする。
【解決手段】紫外線及び/又は放射線に対し透過性を有する基材と、紫外線及び/又は放射線により重合硬化反応する粘着剤層とを備え、該粘着剤層が、2重結合を有する多官能アクリレート系オリゴマー及び/又はモノマーを用いて形成され、該多官能アクリレート系オリゴマー及び/又はモノマー配合の重量平均分子量から求めた総平均分子量が225〜8000に1つの2重結合を含有するように配合されたものである半導体基板加工用粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板加工用粘着シートに関し、より詳細には、基材と特定の成分を含む粘着剤層とを備える半導体基板加工用粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体ウエハ及び/又は基板をダイシング、エキスパンディングし、次いで半導体ウエハ及び又は基板をピックアップすると同時にマウンティングする際、半導体ウエハ及び/又は基板を固定するために、半導体ウエハ及び/又は基板加工用シートが用いられている。
【0003】
このようなシートは、紫外線及び/又は放射線に対し透過性を有する基材上に、紫外線及び/又は放射線により重合硬化反応する粘着剤層が塗布されており、ダイシング後に紫外線及び/又は放射線を粘着剤層に照射し、粘着剤層を重合硬化反応させることにより、粘着力を低下させて、半導体ウエハ、チップ又は基板等の個片をピックアップすることができる。
【0004】
例えば、このようなシートにおいて、粘着剤層がベースポリマーと、分子量15000〜50000の多官能ウレタンアクリレート系オリゴマーと、ポリエステル系可塑剤と、光重合開始剤とを含有し、ポリエステル系可塑剤の含有割合を、ベースポリマー100重量部に対して1〜50重量部とする半導体ウエハ加工用粘着シートが提案されている(例えば、特許文献1等)。また、粘着剤層に分子量3000〜10000程度の多官能ウレタンアクリレート系オリゴマーを使用することが提案されている(例えば、特許文献2等)。
【0005】
しかし、最近では、環境を考慮した製品化の流れに伴い、封止樹脂において、添加剤として、従来とは異なる種類の金属石鹸による安定化剤を用いたり、脱ハロゲン難燃剤を適用したり、これにあわせて、封止樹脂の特性を維持するためにこれまでとは異なる種類/組成等の樹脂が用いられている。
また、被着体における封止樹脂及び/又は添加剤の種類や、封止樹脂表面に一般的に塗布されている離型剤(例えば、ワックス)の量が少なすぎたり、ばらついたりと適切でない場合など、粘着剤層における粘着力が紫外線照射後に所定の値まで低下せず、ピックアップ工程において個片をピックアップできないことがあり、無理にピックアップすることにより、封止樹脂内部から剥がれが生じたり、封止樹脂表面に全面糊残りを生じるという不具合が発生し、製造での歩留まりを大幅に低下させている問題が生じている。
【0006】
【特許文献1】特開平6−49420号公報
【特許文献2】特開昭62−153376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、半導体装置等の樹脂組成、添加剤の種類、離型剤の種類、それらの量にかかわらず、紫外線及び/又は放射線を照射した後、安定した粘着力の低下特性を示し、また、樹脂表面への糊残りをほぼ完全に防止できる安定した粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これまでの粘着シートは、粘着剤層において多官能アクリレート系オリゴマー及び/又はモノマーを使用する際、一般的な半導体ウエハ等の被着体に対して、紫外線及び/又は放射線を照射した後に、粘着力を低下させるという観点から選択されており、グリーン封止樹脂を含めた広範な被着体のすべてに使用し得ることを吟味、確認し、選択するということはなされていなかった。また、使用が想定される種々の被着体に対して実際に試験を行い、粘着シートを設計することは事実上不可能である。
その一方、一般に用いられていた粘着シートを用いた場合に、被着体での樹脂組成の変更、添加物の有無、離型剤の種類及びその量によって、樹脂表面への糊残り含めた不具合が多数発生するため個々の粘着シートは極限られた封止樹脂に対してのみしか使用できず、結果として何種類もの粘着シートを使い分ける等の製造上の制約・不具合が発生してきている。
【0009】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、このような不具合を発生させやすい被着体の多くにおいて、リン化合物、シアン化合物等の反応基が表面に存在することを、精密分析において見出し、これらの反応基又は化学結合が、粘着剤層中の粘着剤成分との間で化学的に相互作用し、糊残りなどの不具合を生じさせることを突き止めた。そして、これらの反応基及び化学結合と、接着剤成分とが化学的相互作用を生じさせないようにするために、粘着剤層を構成するための多官能アクリレート系オリゴマー及び/又はモノマーにおける2重結合の数を、特定の範囲として接着剤層を形成することにより、予想外にも、上述したような不具合を発生させやすい被着体に対しても、接着剤の残存の改善と、紫外線及び/又は放射線の照射後のピックアップ工程に必要な安定した粘着力とを同時に得ることができることを突き止め、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち、本発明の半導体基板加工用粘着シートは、紫外線及び/又は放射線に対し透過性を有する基材と、紫外線及び/又は放射線により重合硬化反応する粘着剤層とを備え、
該粘着剤層が、2重結合を有する多官能アクリレート系オリゴマー及び/又はモノマーを用いて形成され、該多官能アクリレート系オリゴマー及び/又はモノマー配合の重量平均分子量から求めた総平均分子量が225〜8000に1つの2重結合を含有するように配合されたものであることを特徴とする。
この半導体基板加工用粘着シートにおいては、粘着剤層が、少なくともベースポリマー100重量部に対し、10重量部〜180重量部の1種以上の2重結合を有する多官能アクリレート系オリゴマー及び/又はモノマーを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の半導体基板加工用粘着シートは、被着体である半導体基板等における封止樹脂の樹脂組成、添加剤の有無、離型剤の種類及びその量にかかわらず、広範な半導体基板加工用樹脂に対し、紫外線及び/又は放射線を照射した後、安定した粘着力の低下を示す。これにより、後工程であるピックアップでの不具合をほぼ完全に防止し、かつ樹脂表面への糊残りをほぼ完全に防止することができる安定した粘着シートを得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の半導体基板加工用粘着シートは、主として、基材と粘着剤層とを備えて構成されている。
本発明において用いられる基材は、紫外線及び/又は放射線に対し透過性を有していれば、特に限定されるものではなく、例えば、紫外線、X線、電子線等の放射線の少なくとも一部を透過するものであればよく、例えば、75%程度以上、80%程度以上、90%程度以上の透過性を有しているものが好ましい。具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン;低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、フッ素樹脂、セルロース系樹脂及びこれらの架橋体などのポリマー等により形成されたものを挙げることができる。これらは、単層であっても多層構造であってもよい。基材の厚さは、通常、5〜400μm程度が適しており、20〜300μmが好ましい。
【0013】
基材上に設けられる粘着剤層は、紫外線及び/又は放射線により重合硬化反応を起こし得る粘着剤からなり、2重結合を有する多官能アクリレート系オリゴマー及び/又はモノマーを用いて形成されていることが適している。
この多官能アクリレート系オリゴマー及び/又はモノマーは、その配合の重量平均分子量から求めた総平均分子量が225〜8000に1つの2重結合を含有するように配合されたものが適しており、225〜7000に1つの2重結合を含有するように配合されたものが好ましい。この範囲内の数の2重結合が配合された場合には、広範な被着物の種類に対応することができ、接着剤残存を防止することができる。また、紫外線及び/又は放射線照射後の粘着剤の意図する硬化収縮を得ることができ、照射後に意図する粘着力に低下させることができ、後のピックアップ工程におけるピックアップミスを防止することができる。
【0014】
この多官能アクリレート系オリゴマー及び/又はモノマーは、例えば、ベースポリマー100重量部に対し、10重量部〜180重量部で含有されることが好ましい。この範囲内では、上述したように、意図する粘着剤の硬化収縮が得られ、また、粘着剤層に占めるオリゴマーの割合に起因する組成の経時変化を防止することができ、長期間安定した品質を得ることが可能になる。
【0015】
このような多官能成分としては、例えば、(メタ)アクリレート系オリゴマー/モノマー等が挙げられる。具体的には、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、ウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系など種々のオリゴマーが挙げられる。これらのオリゴマー成分の分子量は、100〜30000程度の範囲のものが適当である。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
特に、ウレタン系(メタ)アクリレート系オリゴマーは、分子内に2〜4個、好ましくは2個のアクリロイル基を有するものが好適である。このようなオリゴマーは、例えば、60〜90℃に保持した反応槽で、まず、ジイソシアネートとポリオールとを反応させ、反応が完了した後、ヒドロキシ(メタ)アクリレートを添加してさらに反応させる方法等により製造することができる。
ジイソシアネートとしては、例えば、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0017】
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。
ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドルキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドルキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
なお、これらの多官能アクリレート系オリゴマー及び/又はモノマーにおいて、その配合の重量平均分子量から求めた総平均分子量が225〜8000に1つの2重結合を含有するように配合する方法としては、以下の計算式を利用して、この範囲における1つの2重結合に対する分子量を有するオリゴマー/モノマーを適宜選択及び/又はブレンドする方法が挙げられる。
1種の多官能オリゴマー及び又はモノマーの場合
M=(Mw/Ndou) (1)
2種の多官能オリゴマー及び又はモノマー(例えば、モノマーM1とオリゴマーO2)が調合されて使用される場合
M=(M1のMw/M1のNdou)×(M1のWp/M1とO2との総Wp)+(O2のMw/O2のNdou)×(O2のWp/M1とO2との総Wp) (2)
(式中、Mは1つの2重結合に対する分子量、Mwは重量平均分子量、Ndouは2重結合数(官能基数)、Wpは重量部数を表わす。)
なお、3種以上の多官能オリゴマー及び又はモノマーを配合する場合は、上述した2種の多官能オリゴマー及び又はモノマーに準じて算出することができる。
【0019】
本発明における粘着剤層は、一般に使用されている感圧性粘着剤を使用して形成することができ、炭素−炭素二重結合等の紫外線及び/又は放射線硬化性の官能基を有する化合物をベースポリマーとして含むものが適している。
ベースポリマーとしては、従来公知の粘着剤用のベースポリマーを適宜選択して使用することができる。例えば、アクリル系ポリマー又はエラストマー、具体的には、(メタ)アクリル酸又はそのエステルと、(メタ)アクリル酸又はそのエステルと共重合可能なモノマー等とを重合させてなるアクリル系ポリマー、天然又は合成ゴム等のポリマー等を好適に使用することができる。その分子量は、300000〜1500000、さらに300000〜1100000が好ましい。この範囲内の分子量とすることにより、切断時に切断ずれを生じさせることなく、また、粘着付与剤やその他の添加成分との良好な相溶性を得ることができる。。また、特許第3797601号公報、上述した特許文献1〜2等に挙げられているベースポリマー等、公知のものの全てを用いることができる。
【0020】
ベースポリマーを構成する共重合可能なモノマーは、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル(例えば、ヒドロキシエチルエステル、ヒドロキシブチルエステル、ヒドロキシヘキシルエステル等);(メタ)アクリル酸グリシジルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物モノマー;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリル酸N−ヒドロキシメチルアミド;(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート等);N−ビニルピロリドン;アクリロイルモルフォリン;酢酸ビニル;スチレン;アクリロニトリル;N,N−ジメチルアクリルアミド、側鎖にアルコキシル基を含むモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシ等、種々ものが挙げられる。これら共重合性モノマーは、1種又は2種以上の混合物として使用してもよい。
【0021】
ベースポリマーとして使用されるエラストマーとしては、例えば、天然ゴム、合成イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロックク共重合体、ブチルゴム、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリビニルエーテル、シリコーンゴム、ポリビニルイソブチルエーテル、酢酸ビニルポリマー、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、グラフトゴム、再生ゴム、スチレン・エチレン・ブチレンブロック共重合体、スチレン・プロピレン・ブチレンブロック共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・アクリル酸エステル共重合体、メチル・メタアクリレート・ブタジエン共重合体、ポリイソブチレン・エチレン・プロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、又はアクリルゴム(アクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキル・アクリル酸アルコキシアルキル共重合体)等が挙げられる。
【0022】
本発明において、特に、ベースポリマーとして、アクリル系ポリマーを用いた場合には、任意に架橋剤を添加してもよい。架橋剤は、ベースポリマーを三次元架橋させ、粘着剤層に、さらに十分な凝集力を与えることができる。架橋剤としては、ポリイソシアネート化合物、ポリグリシジル化合物、アジリジン化合物、メラミン化合物、多価金属キレート化合物等のものが使用できる。その際の配合割合は、ベースポリマー100重量部に対して0.01〜10重量部、特に0.03〜7重量部の範囲であるのが好ましい。上記化合物の配合割合とすることにより、凝集力を確保することができるとともに、過剰の架橋剤に起因する半導体基板の汚染を回避することができる。
【0023】
本発明の接着剤層には、粘着付与剤、界面活性剤、軟化剤、老化防止剤、硬化剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、(光)重合開始剤等の1種以上の添加剤を適宜添加してもよい。なお、粘着付与剤、界面活性剤、軟化剤、老化防止剤、硬化剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、(光)重合開始剤剤は、単一種を単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
例えば、粘着付与剤としては、ヒドロキシル価が120〜230mg/gであるもの、さらに120〜210mg/gであるものを用いることが好ましい。ヒドロキシル価をこの値にすることにより、封止樹脂に対して紫外線照射前において十分な接着性を付与することができる。また、粘着シートの貼り付け面における封止樹脂等の種類にかかわらず、あるいはその樹脂表面に添加又は付着した離型剤の存在の多少にかかわらず、紫外線照射後に所定の値まで粘着力を低下させることができる。
【0025】
水酸基を含有し、特定のヒドロキシル価を有する粘着付与剤としては、例えば、テルペンフェノール樹脂、ロジンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂等が挙げられる。
テルペンフェノール樹脂としては、アルファーピネン・フェノール樹脂、ベーターピネンフェノール樹脂、ジペンテン・フェノール樹脂、テルペンビスフェノール樹脂等が挙げられる。テルペンフェノール樹脂を用いることにより、ベースポリマーに対する高い相溶性が得られるため、テープ保存中における粘着剤の変化が殆どなく、長期間安定した品質を維持することが可能となる。
粘着付与剤は、通常、ベースポリマーに対して分子量の低いものが用いられ、例えば、数万程度以下、1万程度以下、数千程度以下の分子量のものが挙げられる。
【0026】
粘着付与剤は、ベースポリマー100(重量)部に対し、0.1〜70部、さらに1〜50部で用いることが好ましい。これにより、粘着力を適切に上昇させることができるとともに、粘着シートの保存安定性を確保して、長期間安定した特性を得ることができる。
【0027】
界面活性剤は、イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤のいずれをも用いることができる。例えば、エステルタイプ、エーテルタイプ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、カルボン酸タイプ、スルホン酸タイプ、アミノ酸タイプ、アミンタイプ等種々のものが挙げられる。粘着剤中の相溶性の点から、分子量は2000以下、さらに1500以下であることが好ましい。ただし、粘着剤と親和性のよい分子構造を有する場合はその限りではない。特に、4級アンモニウム塩型を用いる場合には、帯電防止効果を付与することができる。これらは1種のみでも2種以上混合して用いてもよい。
【0028】
なかでも、エステルタイプ、つまりエステル化合物又はその誘導体を含むものが好ましく、その炭素数は10以上であることが好ましい。表面に離型剤の存在が少ない被着体に対して飛びとピックアップ性の双方を両立させることができる。さらに、15以上のアルキル基を有するエステル化合物であることが好ましい。この化合物のアルキル基の炭素数がこのような範囲であることにより、これを含有する粘着剤の初期粘着力を確保することができる。この炭素数の実質的な上限は、工業的な入手のしやすさ、分子量分布の広がり、耐熱性(つまり、融点の上限が約110℃)等の観点から、50〜60程度が適している。このようなエステル化合物の融点は、40℃以上であることが好ましい。高温下、長時間保存しても安定に存在できるからである。その結果、本発明の粘着組成物を粘着層に使用したシートを被着体に貼りつけて高温下、長時間保存しても、これらの間の接着性の増加が抑制される。
【0029】
このようなエステル化合物としては、例えば、炭素数10以上、好ましくは15以上のアルキル基を有する高級アルコールとカルボン酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸等の酸とのエステル化合物(モノエステル、ジエステル、トリエステル)が例示される。これらの中でも、高級アルコールとリン酸とのモノエステル、ジエステル又はトリエステルを好適に使用することができる。高級アルコールとしては、例えば、ステアリルアルコール(炭素数18)、ドコサノール−1(炭素数22)、テトラコサノール−1(炭素数24)、ヘキサコサノール−1(炭素数26)、オクタコサノール−1(炭素数28)、ノナコサノール−1(炭素数29)、ミリシルアルコール(炭素数30)、メリシルアルコール(炭素数31)、ラクセリルアルコール(炭素数32)、セロメリシルアルコール(炭素数33)、テトラトリアコタノール−1(炭素数34)、ヘプタトリアコタノール−1(炭素数35)、テトラテトラコタノール−1(炭素数44)等が挙げられる。上記の酸のうち、カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸安息香酸等のモノカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、トリカルバリル酸等の多価カルボン酸等が挙げられる。
【0030】
高級アルコールのエステル化合物は、高級アルコールと、カルボン酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸等の酸とを、有機溶媒中、塩酸等の酸触媒の存在下で、加熱還流して生成する水を脱水することにより製造される。また、エステル化合物又はその誘導体として、炭素数10以上、好ましくは15以上のアルキル基を有するカルボン酸とアルコールとのエステル化合物を用いてもよい。
他のタイプの界面活性剤として、市販されており、半導体プロセス等において汚染をもたらさないものを適宜選択して使用することができる。
【0031】
本発明において、界面活性剤、例えば、エステル化合物又はその誘導体は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.02〜8重量部、さらに0.05〜2重量部配合されることが好ましい。この範囲とすることにより、界面活性剤の添加による効果を得ることができるとともに、紫外線照射前の初期接着力を確保することができる。また、粘着剤との相溶性を確保することができ、剥離後の被着体表面の汚染を防止することができる。
【0032】
軟化剤としては、例えば、可塑剤、ポリブテン、液状粘着付与剤樹脂、ポリイソブチレン低重合物、ポリビニルイソブチルエーテル低重合物、ラノリン、解重合ゴム、プロセスオイル又は加流オイル等が挙げられる。
【0033】
老化防止剤としては、フェノール系老化防止剤(例えば、2,6ジ・ターシヤリブチル−4−メチルフェノール、1,1ビス(4ヒドロキシフェノール)シクロヘキサン等)、アミン系老化防止剤(例えば、フエニールベーターナフチルアミン等)、ベンズイミダゾール系老化防止剤等(例えば、メルカプトベンゾイダゾール等)、2,5ジ・ターシヤリブチルハイドロキノン等が挙げられる。
【0034】
ゴム系粘着剤の硬化剤としては、イソシアネート、硫黄及び加硫促進剤、ポリアルキルフェノール、有機過酸化物等が挙げられる。イソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフエニルメタジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート又はシクロヘキサンジイソシアネートが挙げられる。硫黄及び加硫促進剤としては、例えば、チアゾール系加硫促進剤、スルフエンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、ジチオ酸塩系加硫促進剤等が挙げられる。ポリアルキルフェノールとしては、例えば、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等が挙げられる。有機過酸化物としては、例えば、ジクロミルパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル又はパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0035】
充填剤としては、例えば、亜鉛華、酸化チタン、シリカ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、澱粉、クレー又はタルク等が挙げられる。
【0036】
光重合開始剤は、紫外線を照射することにより励起、活性化してラジカルを生成し、多官能オリゴマーをラジカル重合により硬化させる作用を有する。具体的には、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチルジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1等のアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等のベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン、2−クロルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤、α−アシロキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2−エチルアントラキノン、4’,4”−ジエチルイソフタロフェノン等の特殊光重合開始剤等を挙げることができる。
【0037】
光重合開始剤の配合割合は、ベースポリマー100重量部に対して、0.1〜15重量部、特に0.5〜10重量部の範囲であるのが好ましい。この範囲とすることにより、紫外線及び/又は放射線照射における多官能オリゴマー又はモノマーに対する硬化作用を確保することができ、良好な粘着力を得ることができるとともに、熱又は蛍光灯下での安定性を得ることができる。
【0038】
重合開始剤としては、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキサイドなどの過酸化物系が挙げられる。単独で用いるのが望ましいが、還元剤と組み合わせてレドックス系重合開始剤として使用してもよい。還元剤としては、例えば、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、鉄、銅、コバルト塩などのイオン化の塩、トリエタノールアミン等のアミン類、アルドース、ケトース等の還元糖などが挙げられる。また、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオアミジン酸塩、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド等のアゾ化合物を使用してもよい。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上併用して使用してもよい。
【0039】
本発明において、粘着剤層を基材上に形成し、半導体ウエハ又は半導体基板加工用粘着シートを製造する方法は、粘着剤層を構成する成分をそのまま又は適当な有機溶剤により溶解し、塗布又は散布等により基材上に塗工し、例えば、80〜100℃、30秒〜10分間程度加熱処理等することにより乾燥させる方法が挙げられる。
本発明の粘着シートは、粘着剤層の厚さが3〜150μm程度が適しており、3〜100μm、5〜100μmがより好ましい。この範囲とすることにより、表面粗さの大きい被着物に対しても、表面の凹凸に追従することができ、接触面積を確保して、切断時にチップの飛びを防止することができるとともに、製造コストを低減させることができる。
【0040】
本発明の半導体基板加工用粘着シートは、通常、用いられている方法で使用することができる。例えば、半導体基板を貼り付けて固定した後、回転丸刃で半導体基板を素子小片(チップ)に切断する。その後、加工用粘着シートの基材側から紫外線及び/又は放射線を照射し、次いで、専用治具を用いて基板加工用粘着シートを放射状にエキスパンディグ(拡大)し、素子小片間隔を一定間隔に広げ、その後、素子小片をニードル等で突き上げると共に、エアピンセット等で吸着すること等によりピックアップするか、同時にマウンティングする方法が挙げられる。
なお、本発明の粘着シートは、半導体ウエハ、半導体基板、単数又は複数のチップ等をリード及び封止樹脂等で個々に又は一体的に封止した封止樹脂基板など、種々の被着体に対して用いることができる。また、被着体の貼り付け面は、半導体に限らず、金属、プラスチック、硝子、セラミック等の無機物など、種々の材料とすることができる。
本発明の粘着シートは、特に表面に、リン化合物、シアン化合物、その他の反応基を有する材料に対して良好に利用することができる。
【0041】
以下に、本発明の半導体基板加工用粘着シートの実施例及び比較例をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、1つの2重結合を含む多官能アクリレート系オリゴマー及び/又はモノマーの分子量は、上記の式(1)又は式(2)により算出した。
【0042】
実施例1
アクリル酸メチル40重量部とアクリル酸10重量部とアクリル酸2エチルヘキシル50部とを共重合して得られた重量平均分子量70万の共重合体(固型分35%)100重量部、多官能アクリレート系オリゴマーとして日本合成製紫光UV-3000B(重量平均分子量:18000、2重結合数:2)を140重量部、紫光UV-1700B(重量平均分子量:2000、2重結合数:10)を40重量部(調合した多官能オリゴマー溶液の1つの2重結合あたりの分子量:7044)、粘着付与剤としてテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル社製YSポリスターN125)を20重量部、架橋剤としてメラミン化合物(商品名「J-820-60N」、大日本インキ化学工業製)0.08重量部、光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ製、イルガキュア651)を5重量部を配合した粘着剤層となる樹脂溶液を配合・調製した。
この溶液を、シリコーン剥離処理した厚さ38μmのポリエステルフィルムに、乾燥後の厚さが20μmになるように塗工し、150℃にて5分間乾燥した。
その後、基材となる150μのポリエチレンフィルムをラミネートし、半導体加工用シートを作製した。
得られた半導体基板加工用粘着シートを50℃加温にて、4日以上熟成し、下記に示す評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0043】
実施例2
実施例1の粘着剤溶液の調製時に、多官能アクリレート系オリゴマーとして日本合成製 紫光UV-7600B(重量平均分子量:1400、2重結合数:6、多官能オリゴマー溶液の1つの2重結合あたりの分子量:233)を180重量部加えた以外、実施例1と同様の操作にて粘着シートを作製し、後に示す評価を実施した。
【0044】
実施例3
実施例2の粘着剤溶液の調製時に、UV−7600Bの添加部数を10重量部に変更した以外、実施例2と同様の操作にて粘着シートを作製し、後に示す評価を実施した。
【0045】
実施例4
実施例1の粘着剤溶液調製時に、紫光UV-3000B(重量平均分子量:18000、2重結合数:2)を7.78重量部、紫光UV-1700B(重量平均分子量:2000、2重結合数:10)を2.2重量部(調合した多官能オリゴマー溶液の1つの2重結合あたりの分子量:7046)加えて粘着組成物を調製した以外、実施例1と同様の操作にて粘着シートを作製し、後に示す評価を実施した。
【0046】
実施例5
実施例2の粘着剤溶液調製時に、紫光UV-7600Bの代わりに紫光UV−2000B(重量平均分子量:13000、2重結合数:2)(多官能オリゴマー溶液の1つの2重結合あたりの分子量:6500)を110重量部加えて粘着組成物を調製した以外、実施例2と同様の操作にて粘着シートを作製し、後に示す評価を実施した。
【0047】
実施例6
実施例2の粘着剤溶液調製時に、紫光UV-7600Bの代わりに紫光UV−6300B(重量平均分子量:3700、2重結合数:7)(多官能オリゴマー溶液の1つの2重結合あたりの分子量:528)を80重量部加えて粘着組成物を調製した以外、実施例2と同様の操作にて粘着シートを作製し、後に示す評価を実施した。
【0048】
実施例7
実施例1の粘着剤溶液調製時に、紫光UV-3000B(重量平均分子量:18000、2重結合数:2)を163.3重量部、紫光UV-1700B(重量平均分子量:2000、2重結合数:10)を46.7重量部(調合した多官能オリゴマー溶液の1つの2重結合あたりの分子量:7043)を加えて粘着組成物を調製した以外、実施例1と同様の操作にて粘着シートを作製し、後に示す評価を実施した。
【0049】
実施例8
実施例2の粘着剤溶液の調製時に、UV−7600Bの添加部数を210重量部に変更した以外、実施例2と同様の操作にて粘着シートを作製し、後に示す評価を実施した。
【0050】
実施例9
実施例1の粘着剤溶液調製時に、紫光UV-1700B(重量平均分子量:2000、2重結合数:10)を30重量部、紫光UV-7600B(重量平均分子量:1400、2重結合数:6)を150重量部(調合した多官能オリゴマー溶液の1つの2重結合あたりの分子量:228)を加えて粘着組成物を調製した以外、実施例1と同様の操作にて粘着シートを作成し、後に示す評価を実施した。
【0051】
実施例10
実施例9の粘着剤溶液調製時に、紫光UV-1700B(重量平均分子量:2000、2重結合数:10)を1.6重量部、紫光UV-7600B(重量平均分子量:1400、2重結合数:6)を8.3重量部(調合した多官能オリゴマー溶液の1つの2重結合あたりの分子量:225)を加えて粘着組成物を調製した以外、実施例9と同様の操作にて粘着シートを作製し、後に示す評価を実施した。
【0052】
実施例11
実施例2の粘着剤溶液の調製時に、UV−7600Bの添加部数を8重量部に変更した以外、実施例2と同様の操作にて粘着シートを作製し、後に示す評価を実施した。
【0053】
実施例12
実施例1の粘着剤溶液調製時に、紫光UV-3000B(重量平均分子量:18000、2重結合数:2)を6.2重量部、紫光UV-1700B(重量平均分子量:2000、2重結合数:10)を1.8重量部(調合した多官能オリゴマー溶液の1つの2重結合あたりの分子量:7020)を加えて粘着組成物を調製した以外、実施例1と同様の操作にて粘着シートを作製し、後に示す評価を実施した。
【0054】
実施例13
実施例1の粘着剤溶液調製時に、紫光UV-3000B(重量平均分子量:18000、2重結合数:2)を7重量部、紫光UV-1700B(重量平均分子量:2000、2重結合数:10)を1重量部(調合した多官能オリゴマー溶液の1つの2重結合あたりの分子量:7900)を加えて粘着組成物を調製した以外、実施例1と同様の操作にて粘着シートを作成し、後に示す評価を実施した。
【0055】
実施例14
実施例1の粘着剤溶液調製時に、紫光UV-3000B(重量平均分子量:18000、2重結合数:2)を157.5重量部、紫光UV-1700B(重量平均分子量:2000、2重結合数:10)を22.5重量部(調合した多官能オリゴマー溶液の1つの2重結合あたりの分子量:7900)を加えて粘着組成物を調製した以外、実施例1と同様の操作にて粘着シートを作成し、後に示す評価を実施した。
【0056】
実施例15
実施例1の粘着剤溶液調製時に、紫光UV-3000B(重量平均分子量:18000、2重結合数:2)を186.6重量部、紫光UV-1700B(重量平均分子量:2000、2重結合数:10)を53.4重量部(調合した多官能オリゴマー溶液の1つの2重結合あたりの分子量:7042)を加えて粘着組成物を調製した以外、実施例1と同様の操作にて粘着シートを作製し、後に示す評価を実施した。
【0057】
実施例16
実施例1の粘着剤溶液調製時に、紫光UV-3000B(重量平均分子量:18000、2重結合数:2)を3.9重量部、紫光UV-1700B(重量平均分子量:2000、2重結合数:10)を1.1重量部(調合した多官能オリゴマー溶液の1つの2重結合あたりの分子量:7066)を加えて粘着組成物を調製した以外、実施例1と同様の操作にて粘着シートを作製し、後に示す評価を実施した。
【0058】
比較例1
実施例2の粘着剤溶液の調製時に、UV−7600Bの添加部数を240重量部に変更した以外は、すべて実施例2と同様の操作にて粘着シートを作製し、後に示す評価を実施した。
【0059】
比較例2
実施例1の粘着剤溶液調製時に、紫光UV-1700B(重量平均分子量:2000、2重結合数:10)を90重量部、紫光UV-7600B(重量平均分子量:1400、2重結合数:6)を90重量部(調合した多官能オリゴマー溶液の1つの2重結合あたりの分子量:217)を加えて粘着組成物を調製した以外、実施例1と同様の操作にて粘着シートを作製し、後に示す評価を実施した。
【0060】
比較例3
比較例2の粘着剤溶液調製時に、紫光UV-1700B(重量平均分子量:2000、2重結合数:10)を5重量部、紫光UV-7600B(重量平均分子量:1400、2重結合数:6)を5重量部(調合した多官能オリゴマー溶液の1つの2重結合あたりの分子量:217)を加えて粘着組成物を調製した以外、実施例1と同様の操作にて粘着シートを作製し、後に示す評価を実施した。
【0061】
比較例4
実施例2の粘着剤溶液の調製時に、UV−7600Bの添加部数を5重量部に変更した以外、実施例2と同様の操作にて粘着シートを作製し、後に示す評価を実施した。
【0062】
比較例5
実施例1の粘着剤溶液調製時に、紫光UV-3000B(重量平均分子量:18000、2重結合数:2)を240重量部 (多官能オリゴマー溶液の1つの2重結合あたりの分子量:9000)を加えて粘着組成物を調製した以外、実施例1と同様の操作にて粘着シートを作製し、後に示す評価を実施した。
【0063】
比較例6
比較例5の粘着剤溶液調製時に、紫光UV-3000B(重量平均分子量:18000、2重結合数:2)を180重量部 (多官能オリゴマー溶液の1つの2重結合あたりの分子量:9000)を加えて粘着組成物を調整した以外、実施例1と同様の操作にて粘着シートを作製し、後に示す評価を実施した。
【0064】
比較例7
比較例6の粘着剤溶液調製時に、紫光UV-3000B(重量平均分子量:18000、2重結合数:2)を5重量部(多官能オリゴマー溶液の1つの2重結合あたりの分子量:9000)を加えて粘着組成物を調製した以外、実施例1と同様の操作にて粘着シートを作製し、後に示す評価を実施した。
【0065】
比較例8
比較例6の粘着剤溶液調製時に、紫光UV-3000Bの代わりに紫光UV-1700B(重量平均分子量:2000、2重結合数:10)を110重量部 (多官能オリゴマー溶液の1つの2重結合あたりの分子量:200)を加えて粘着組成物を調製した以外、実施例1と同様の操作にて粘着シートを作製し、後に示す評価を実施した。
【0066】
比較例9
比較例8の粘着剤溶液調製時に、紫光UV-1700Bの代わりに新中村化学社製NKエステル4G(重量平均分子量:330、2重結合数:4)を110重量部(多官能オリゴマー溶液の1つの2重結合あたりの分子量:83)を加えて粘着組成物を調整した以外は全て実施例1と同様の操作にて粘着シートを作製し、後に示す評価を実施した。
【0067】
テープ貼り付け
半導体チップがうめこまれた基板の封止樹脂面(樹脂面に深さ15μmのレーザ印字があるタイプ、1チップの大きさは5mm□)に日東精機製M−286Nの貼り付け装置を用い、速度20mm/sec、テーブル温度55℃にて、実施例及び比較例で製造した粘着シートを貼り合せた。
【0068】
接着剤残存の有無の評価
DISCO製DFG−651のダイサーを用い、回転数:38000rpm、刃厚:300μmのレジンブレードを用いて、粘着剤層及び基材の切り込みの総量を90μmとし、速度40mm/sec、切断時水量:1.5L/分の条件で切断を実施した。その後、UV照射機(日東UM-810)にて照度30mW/cm、積算光量500mJ/cmの条件にて処理した後、チップをピンセットで剥離し、光学顕微鏡にて糊残り発生の有無を確認した。確認した数量は5000チップである。
【0069】
剥離性の確認
剥離性の確認は、上記と同様のUV処理した後、ピンセットで実施した。ピンセットで剥離可能なものを二重丸、剥離がやや重いが、ピンセットで剥離可能なものを丸、通常のダイボンダーでのピックアップが難しいと思われるものを×とした。確認した数量は5000チップである。
【0070】
粘着力の安定性確認
粘着剤層の経時安定性の確認を、以下の方法で実施した。
すなわち、初期値を100%とした時、60℃で1週間、40℃・相対湿度92%で1週間、10℃で1週間保存した後の粘着力値がすべて100±20%であった場合に安定性良好(◎)とし、1条件でも80%より小さい場合あるいは120%より大きい場合には安定性不良(×)とした。
【0071】
これらの結果を表1及び表2に示す。
【表1】

【0072】
なお、実施例15及び実施例16においては、接着剤の残存はなく、通常の使用において許容されるものであるが、それぞれ、粘着力安定性及び剥離性において、若干の特性の低下の傾向が見られた。これは、2重結合を有する多官能アクリレート系オリゴマー及び/又はモノマーの配合量が、それぞれ240重量部及び5重量部と、若干多め又は少なめに配合したためであると考えられる。
【0073】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、半導体ウエハ、例えば、シリコンウエハ、ゲルマニウムウエハ、ガリウム・ヒ素ウエハ、回路基板、セラミック基板、金属基板及びこれら封止樹脂で封止した封止樹脂基板等の広範囲の加工の全てに対して利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線及び/又は放射線に対し透過性を有する基材と、紫外線及び/又は放射線により重合硬化反応する粘着剤層とを備え、
該粘着剤層が、2重結合を有する多官能アクリレート系オリゴマー及び/又はモノマーを用いて形成され、該多官能アクリレート系オリゴマー及び/又はモノマー配合の重量平均分子量から求めた総平均分子量が225〜8000に1つの2重結合を含有するように配合されたものであることを特徴とする半導体基板加工用粘着シート。
【請求項2】
該粘着剤層が、少なくともベースポリマー100重量部に対し、10重量部〜180重量部の1種以上の2重結合を有する多官能アクリレート系オリゴマー及び/又はモノマーを有する請求項1に記載の半導体基板加工用粘着シート。


【公開番号】特開2008−166651(P2008−166651A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−359(P2007−359)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】