説明

半導体用接着剤および半導体用接着剤を使用して製作された半導体装置

【課題】 本発明は、内包される微小気泡を十分に取り除くことにより、少量吐出でも安定した塗布量で連続ディスペンスが可能な半導体用接着剤であり、該半導体用接着剤を用いることにより生産性、信頼性に優れる半導体装置を提供するものである。
【解決手段】 (A)熱硬化性樹脂と(B)充填剤とを含む半導体用接着剤であって、減圧下、振動処理を行うことにより作製されたことを特徴とする半導体用接着剤および該半導体用接着剤を使用して製作された半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体用接着剤および半導体用接着剤を使用して製作された半導体装置に関
するものである。
【背景技術】
【0002】
電子、電機分野における軽薄短小化に伴い、半導体装置に代表される部材の小型化もより一層求められている。このため半導体装置の組み立て工程にて使用される接着剤にも少量かつ安定吐出が要求されているが、特に充填剤(フィラー)を含有する高粘度の接着剤を使用する場合には接着剤に内包される微小気泡を十分に取り除くことが難しい。このためノズルを用いるディスペンスにおいてノズル径が細くなるにつれて、ディスペンス時に内包される微小気泡の吐出に起因する空打ち問題が顕著になり、生産性の低下、信頼性の低下の観点から改善が望まれている。ここで、空打ちとは、ディスペンス時に内包気泡が
吐出され、接着剤が吐出されない、又は接着剤の吐出量が不安定になる現象のことをいう。従来内包気泡を取り除くために半導体用接着剤の各成分を予備混合した後、3本ロールを用いて混練し、混練後、真空減圧処理する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
また、真空減圧処理のほかに回転処理、自転・公転式攪拌脱泡ミキサーを利用した処理などにより脱泡処理を行った半導体用接着剤によるディスペンスも検討され効果は上げているが、未だ微小気泡による吐出の不具合は発生しており十分満足なレベルにはいたっていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-273326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ノズルを用いるディスペンスにおいて空打ちの少ない塗布量安定性に優れた半導体用接着剤であり、該半導体用接着剤を用いることにより生産性、信頼性に優れる半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、下記[1]〜[6]に記載の本発明により達成される。
[1](A)熱硬化性樹脂と(B)充填剤とを含む半導体用接着剤であって、減圧下、振動処理を行うことにより作製されたことを特徴とする半導体用接着剤。
[2]内径が0.1mm以上、0.3mm以下のシングルニードルを用いた連続ディスペンスにおいて、1点あたりの塗布量が0.1mg以上、20mg以下で、かつ空打ちが100ppm以下である第[1]項に記載の半導体用接着剤。
[3]上記(B)充填剤が銀粉である第[1]又は[2]項記載の半導体用接着剤。
[4]E型粘度計にて3°コーンを用いて測定した25℃、2.5rpmにおける粘度が
5Pa・s以上、50Pa・s以下であり、0.5rpmと2.5rpmとの粘度比が2.5以上である第[1]〜[3]項のいずれか1項に記載の半導体用接着剤。
[5]上記(A)熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である第[1]〜[4]項のいずれか1項に記載の半導体用接着剤。
[6]第[1]〜[5]項のいずれか1項に記載の半導体用接着剤を使用して製作された半導体装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、半導体用接着剤に内包される微小気泡を十分に取り除くことにより少量吐出でも安定した塗布量で連続ディスペンスが可能となり、生産性、信頼性に優れた半導体装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、熱硬化性樹脂と充填剤とを含む半導体用接着剤であって、該半導体用接着剤
に内包される微小気泡を取り除くことにより、ノズルを用いるディスペンスの少量吐出に
おいて空うちの少ない安定した塗布が可能で信頼性の高い半導体装置が得られる。
以下詳細に説明する。
【0008】
本発明は、ディスペンス方式の半導体用接着剤の定量吐出において、減圧下、振動処理により内包される微小気泡を取り除いた半導体用接着剤である。半導体用接着剤中に内包される微小気泡が連続ディスペンス時の空打ちの原因となるので十分に取り除く必要があり、真空減圧処理、回転処理、自転・公転式攪拌脱泡ミキサーを利用した処理などによる脱泡処理では不十分で、減圧下で振動を与えることで内包される微小気泡を効果的に取り除くことが可能である。より効果的に行うためには半導体用接着剤組成物をディスペンス用のシリンジに充填した後で行うことが好ましい。
【0009】
このような減圧下、振動処理は、減圧下で電気駆動式の振動器を用いると安全上問題がある為、圧縮空気を動力として振動を得る事が出来る装置であれば、特に制限はない。コンプレッサーで得られる圧縮空気をエアー駆動式振動器に供給して振動を発生させる。供給する圧縮空気はコンプレッサーの能力、処理する半導体用接着剤の量に応じて調節が必要であるが、供給する圧縮空気が低い場合には静止摩擦力などにより振動器が始動せず、供給する圧縮空気が高い場合には振動器の耐圧力性を超えてしまうため好ましくない。こ
の振動器から得られる振動は、振動数で100Hz以上、500Hz以下である。この振動器は振動板に固定されており、さらに半導体用接着剤組成物が充填されたシリンジをセットするためのシリンジ立ても振動板に固定されている。減圧下、振動処理をする際は、各々のシリンジはシリンジ立てに固定してもよく、または固定せずに上下左右に自由に動く事が出来る様にもできる。振動付加時は各々のシリンジは振動され、半導体用接着剤組成物中に残留する微小気泡の上昇と気泡の破泡を促進している。減圧しながら、振動を付
与すると20mmHg程度の真空度から気泡の破泡が観察されるが、より短時間でより強い脱泡効果を得る為には10mmHg以下が好ましく、処理時間は1分以上、60分以下処理することが好ましい。ここでいう処理時間とは、真空度が20mmHg以下になってからの時間である。また真空度が10mmHg以上の場合には内包される微小気泡を取り除く効果が不十分で、与える振動の周波数についても上記範囲外では有効に内包される微小気泡を取り除くことができない。さらに内包される微小気泡の量にもよるが、処理時間が下限値より短い場合にも内包される微小気泡を取り除く効果が不十分で、上限値より長
い場合には生産性が悪化するとともに、場合により半導体用接着剤の粘度が高くなるため好ましくない。より好ましい条件は真空度10mmHg以下、100Hz以上、250Hz以下にて5分以上、30分以下である。
【0010】
内包される微小気泡を十分に取り除いた半導体用接着剤であれば、空打ちが起こることなく好適に使用できるが、ディスペンス時の作業性を考慮すると半導体用接着剤の粘度はE型粘度計で3°コーンを用いて測定した25℃、2.5rpmでの値が5Pa・s以上、50Pa・s以下および0.5rpmと2.5rpmの粘度比が2.5以上の半導体用接着剤を使用することが好ましい。粘度がこれより低いとノズルの先から半導体用接着剤が滴下(以下、たれという。)するため好ましくなく、これより高いとディスペンス後の切れが悪く糸を引き(以下、糸引きという。)塗布量が安定しないため好ましくない。よ
り好ましくは8Pa・s以上、25Pa・s以下のものが使用される。粘度比がこれより低い場合にもたれ、糸引き等の問題が発生しやすく塗布量が不安定になるので好ましくない。より好ましい粘度比は3.2以上である。このような半導体用接着剤を使用すれば少量吐出を行うために、内径が0.1mm以上、0.3mm以下のシングルニードルを用いても空打ちが観察されず良好な連続塗布性を示す。このときの1点あたりの塗布量は0.1mg以上、20mg以下である。
【0011】
このような半導体用接着剤の例としては、(A)熱硬化性樹脂に(B)充填剤を分散させた半導体用接着剤が挙げられる。(A)熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、マレイミド樹脂、およびフェノール樹脂などが挙げられ、これらはいずれも1種類あるいは複数種併用することができ、特に限定されるものではない。好ましくは、エポキシ樹脂が挙げられ、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルアミン型の液状エポキシ樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック類とエピクロルヒドリンとの反応により得られるポリグリシジルエーテル、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型(フェニレン、ジフェニレン骨格を含む)エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を含むエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0012】
エポキシ樹脂を用いる場合の硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂、脂肪族アミン、芳香族アミン、ジシアンジアミド、ジカルボン酸ジヒドラジド化合物、カルボン酸無水物等が挙げられる。
さらに、エポキシ樹脂を用いる場合の硬化促進剤兼硬化剤としては、例えば、各種のイミダゾール化合物として、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-C11H23-イミダゾール等の一般的なイミダゾール、トリアジンやイソシアヌル酸を付加した2,4-ジアミノ-6-{2-メチルイミダゾール-(1)}-エチル-S-トリアジン、またそのイソシアネート付加物等があり、これらは何れも1種類あるいは複数種併用して使うことが可能である。
【0013】
(B)充填剤としては、銀粉、金粉、銅粉、アルミニウム粉等の金属粉、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミニウム、タングステン、ニッケル、タンタル、ビスマス、インジウム、錫、亜鉛、チタンなどおよびこれらの合金といった金属粒子、シリカ、ボロンナイトライド、アルミナ、アルミニウムナイトライド、窒化珪素などの無機粒子、アクリル系重合体、ジビニルベンゼン重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、フェノール樹脂などの有機粒子を使用することができ、特に限定されるものではない。好ましくは、導電性や熱伝導性を付与するために用いられる金属粉であり、粒径や形
状等の種類が多く、かつ入手が安易であることから銀粉が特に好ましい。また必要に応じて、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、界面活性剤、低応力化剤、顔料、染料、消泡剤、溶剤等を添加することも可能である。
【0014】
本発明の半導体用接着剤は、熱水抽出塩素イオン濃度が100ppm以下であることが
好ましい。熱水抽出塩素イオン濃度の測定は、200℃60分硬化処理した半導体用接着剤の粉砕物2gを40mlの純水とともに125℃20時間処理し得られた抽出水をイオンクロマトグラフにて測定するなどがあげられる。塩素イオン濃度の値は測定により得られた溶液濃度を対試料濃度に換算した値である。塩素イオン濃度=溶液濃度/試料重量(2g)×純水重量(40g):但し、純水の比重は1として計算した。
【0015】
本発明の半導体用接着剤は、例えば各成分を予備混合した後、3本ロールを用いて混練し真空脱泡した後、さらに減圧下、振動処理することにより製造することができる。
本発明の半導体用接着剤を用いて半導体装置を製作する方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、市販のダイボンダーを用いて、リードフレームの所定の部位に半導体用接着剤をディスペンス塗布した後、チップをマウントし、ポットプレート上で加熱硬化する。その後、ワイヤーボンディングして、エポキシ樹脂を用いてトランスファー成形することによって半導体装置を製作する。
【実施例】
【0016】
以下に、本発明についてさらに詳細に説明するため実施例を示すが、本発明がこれらに限定されるものではない。
[実施例1、2、3]
ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応により得られるジグリシジルビスフェノールA(エポキシ当量180、室温で液体、全塩素量500ppm、以下ビスAエポキシ)、クレジルグリシジルエーテル(エポキシ当量185、以下CGE)、フェノールノボラック樹脂(水酸基当量104、軟化点85℃、以下PN)、ジシアンジアミド、キュアゾール2MZ-A(四国化成工業(株)製、以下2MZ-A)、グリシジル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業(株)製、KBM-403E、以下エポキシシラン)、平均粒径5μm、最大粒径30μmのフレーク状銀粉(以下銀粉)を表1のように配合し、3本ロールを用いて混練し、混練時の巻き込み気泡を取り除くために5mmHg、30分間真空減圧脱泡を実施した。その後100メッシュでろ過してシリンジ充填し、表1記載の条件にて減圧下、振動処理することで半導体用接着剤を得て、以下の方法で評価した。配合割合は重量部である。
【0017】
実施例1,2,3では減圧下、振動処理のみを実施した。実施例では供給する圧縮空気圧は0.2MPaで、エアー駆動式振動器から得られる振動数は約160Hzであった。
また、振動板上で得られた振動を汎用振動計(リオン社製、VM-82)にて測定したところ振幅0.15mm、加速度50m/s2であった。また減圧条件は5mmHgにて実施した。
【0018】
[比較例1、2]
表1に示す割合で配合し実施例と同様に混練した後真空減圧脱泡を実施し、その後100メッシュでろ過してシリンジ充填し、表1記載の条件にて脱泡処理を行った。比較例1ではシリンジ充填後の減圧下、振動処理を実施しなかった。比較例2では自転・公転式攪拌脱泡ミキサー((株)EME製、あわとり完太郎 VMX-360)にて自転600rpm、公転2000rpm、処理時間1分を実施した。
【0019】
評価方法
粘度:E型粘度計(3°コーン)を用い25℃、0.5rpmおよび2.5rpmでの値を測定した。粘度の単位はPa・s。2.5rpmの粘度に対する0.5rpmの粘度を粘度比とした。
熱水抽出塩素含有率:上記半導体用接着剤を200℃60分硬化させ、粉砕した半導体用接着剤の硬化物2gおよび純水40mlを抽出釜にいれ125℃20時間抽出を行った。
冷却、遠心分離後の上澄み液を検体としイオンクロマトグラフにて塩素イオン濃度を測定した。得られた抽出液濃度と以下の式により対試料濃度に換算した。ただし純水の比重は1として計算した。
塩素イオン濃度(対試料)
=塩素イオン濃度(抽出液)/硬化物重量(2g)×純水重量(40g)
打点試験:上記シリンジ充填した半導体用接着剤を打点試験機(武蔵エンジニアリング(株)製、SHOTMASTER-300)にて金属ニードル25Gシングルノズル(内径0.26mm、長さ15mm)を用い70,000点塗布(塗布量20mg/1点)し、空打ちを測定した。空打ちが7点以下(100ppm以下)の場合を合格とした。
耐リフロー性:上記半導体用接着剤を用いて、下記のフレームにディスペンスし、チップをマウントし150℃60分間硬化接着し、さらに封止材料(スミコンEME-6300SL、住友ベークライト(株)製)を用いて封止し、パッケージを作製した。このパッケージを30℃、相対湿度60%、168時間吸湿処理した後、IRリフロー処理(260℃、10秒、3回リフロー)を行った。処理後のパッケージを超音波探傷装置(反射型)によりチップ上、ダイパッド裏の剥離面積が10%以下でパッケージクラックが発生していないことを確認した。剥離面積が10%以下でパッケージクラックのないものを○、剥離面積が10%以下でパッケージクラックのあるものを×とした。
パッケージ :SOT23(2×1.5×1mm)
フレーム :銅フレーム
チップサイズ:0.5×0.5mm
【0020】
【表1】


【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明により、空打ちの少ない塗布量安定性に優れた半導体用接着剤を提供することが可能となり、生産性、信頼性に優れる半導体装置を提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にディスペンスにより半導体用接着剤を塗布する工程と、
半導体素子を金属フレーム上に前記半導体用接着剤を介して載置する工程とを有する半導体装置の製造方法であって、
前記半導体用接着剤が下記の点打試験において空打ちが100ppm以下となるものである半導体装置の製造方法。
[点打試験:シリンジ充填にした半導体用接着剤を打点試験機にて金属ニードル25Gシングルノズル(内径0.26mm、長さ15mm)を用い70,000点塗布(塗布量20mg/1点)することにより空打ち発生率を測定した。]
【請求項2】
前記半導体用接着剤が(A)熱硬化性樹脂と(B)充填剤とを含むものであり、減圧か、振動処理を行うことにより得られたものである請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記(B)充填剤が銀粉である請求項2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記半導体用接着剤のE型粘度計にて3°コーンを用いて測定した25℃、2.5rpmにおける粘度が5Pa・s以上、50Pa・s以下であり、0.5rpmと2.5rpmとの粘度比が2.5以上である請求項1乃至3いずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記(A)熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である請求項2または3に記載の半導
体装置の製造方法。

【公開番号】特開2010−135807(P2010−135807A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296852(P2009−296852)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【分割の表示】特願2005−105165(P2005−105165)の分割
【原出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】