半導体発光装置の製造方法及び半導体発光装置
【課題】高い発光効率を備えるとともに、降伏電圧の経時変化の抑制及び順方向電圧の低減を図ることができ、高輝度、且つ、高い信頼性を備える半導体発光装置を製造すること。
【解決手段】
本発明の半導体発光装置の製造方法によれば、成長用基板の上に第1導電型クラッド層、アンドープの活性層、平均キャリア濃度が1×1017cm-3乃至1×1018cm-3の第2導電型拡散制御層及び第2導電型クラッド層を順次成長して積層構造体を形成する工程と、積層構造体の成長温度より高い成長温度で第2導電型半導体層を成長し、第2導電型拡散制御層から活性層に第2導電型不純物を拡散させて活性層の平均キャリア濃度を2×1016cm-3乃至4×1016cm-3に制御する第2導電型半導体層形成工程と、を有すること。
【解決手段】
本発明の半導体発光装置の製造方法によれば、成長用基板の上に第1導電型クラッド層、アンドープの活性層、平均キャリア濃度が1×1017cm-3乃至1×1018cm-3の第2導電型拡散制御層及び第2導電型クラッド層を順次成長して積層構造体を形成する工程と、積層構造体の成長温度より高い成長温度で第2導電型半導体層を成長し、第2導電型拡散制御層から活性層に第2導電型不純物を拡散させて活性層の平均キャリア濃度を2×1016cm-3乃至4×1016cm-3に制御する第2導電型半導体層形成工程と、を有すること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光装置の製造方法及び半導体発光装置に関し、半導体基板上に複数の半導体層を積層する技術を用いた半導体発光装置の製造方法及びこれによって製造される半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、成長用基板として用いられるGaAs基板上に有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)によって複数の半導体層を積層し、半導体発光装置を形成する方法が知られている。例えば、GaAs基板上には、n型クラッド層、活性層、p型クラッド層及びp型電流拡散層が順次積層される。更に、GaAs基板のn型クラッド層が形成された面とは逆側(すなわち、GaAs基板の裏面側)及び電流拡散層上のそれぞれには、表面電極及び裏面電極が形成される。
【0003】
上述した半導体発光装置は、主に自動車のテールランプ、各種表示機器及び携帯電話等のモバイル機器のバックライト等に従来から用いられている。また、近年において、自動車のヘッドライト、液晶ディスプレイのバックライト及び一般照明等への需要が拡大し始めている。このような半導体発光装置の市場拡大に伴い、半導体発光装置の発光効率及び信頼性の向上が要求されている。
【0004】
発光効率の向上については、活性層とp型クラッド層との間に不純物の拡散を抑制する拡散抑制層を挿入する技術が知られている。例えば、特許文献1には、拡散抑制としてAlInPを挿入する技術が開示されている。また、信頼性の向上については、p型クラッド層にp型クラッド層よりも不純物濃度の低い低濃度不純物層又はアンドープ層を挿入することで、降伏電圧の経時変化を抑制する技術が知られている。例えば、特許文献2には、p型クラッド層にアンドープのドーパント抑制層を挿入する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−353502号公報
【特許文献2】特開2007−42751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年においては高輝度であり、且つ、高い信頼性を備える半導体発光装置の要求がより強まってきている。具体的には、高い信頼性を得るために、順方向電圧を低減することが要求されている。順方向電圧上昇の低減によって、半導体発光装置の消費電力を小さくすることができ、更には半導体発光装置ごとの消費電力のばらつきを少なくすることにもなるからである。
【0007】
本発明の目的は、以上の如き事情に鑑みてなされたものであり、高い発光効率を備えるとともに、降伏電圧の経時変化の抑制及び順方向電圧の低減を図ることができ、高輝度、且つ、高い信頼性を備える半導体発光装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の半導体発光装置の製造方法は、成長用基板の上に第1導電型クラッド層、アンドープであって(AlxGa1-x)yIn1-yP(0≦x≦1、0<y≦1)からなる活性層、平均キャリア濃度が1×1017cm-3乃至1×1018cm-3であってAlxIn1-xP(0<x<1)からなる第2導電型拡散制御層及び第2導電型クラッド層を順次成長して積層構造体を形成する工程と、積層構造体の成長温度より高い成長温度で第2導電型半導体層を成長し、第2導電型拡散制御層から活性層に第2導電型不純物を拡散させて活性層の平均キャリア濃度を2×1016cm-3乃至4×1016cm-3に制御する第2導電型半導体層形成工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、上述した課題を解決するために、本発明の半導体発光装置は、半導体基板の上に形成された第1導電型クラッド層と、第1導電型クラッド層の上に形成され、平均キャリア濃度が2×1016cm-3乃至4×1016cm-3であって(AlxGa1-x)yIn1-yP(0≦x≦1、0<y≦1)からなる活性層と、活性上の上に形成され、平均キャリア濃度が1×1017cm-3乃至1×1018cm-3であってAlxIn1-xP(0<x<1)からなる第2導電型拡散制御層と、第2導電型拡散制御層の上に形成された第2導電型クラッド層と、第2導電型クラッド層の上に形成されたGa1-xInxP(0≦x<1)からなる第2導電型半導体層と、有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の半導体発光装置の製造方法は、成長用基板の上に第1導電型クラッド層、アンドープであって(AlxGa1-x)yIn1-yP(0≦x≦1、0<y≦1)からなる活性層、平均キャリア濃度が1×1017cm-3〜1×1018cm-3であってAlxIn1-xP(0<x<1)からなる第2導電型拡散制御層及び第2導電型クラッド層を順次成長して積層構造体を形成する工程と、積層構造体の成長温度より高い成長温度で第2導電型半導体層を成長し、第2導電型拡散制御層から活性層に第2導電型不純物を拡散させて活性層の平均キャリア濃度を2×1016cm-3〜4×1016cm-3に制御する第2導電型半導体層形成工程と、を有している。
【0011】
このように活性層のキャリア濃度を抑制することによって、高い発光効率を備えるとともに、降伏電圧の経時変化の抑制及び順方向電圧の低減を図ることができ、高輝度、且つ、高い信頼性を備える半導体発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施例である半導体発光装置の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例である半導体発光装置の各製造工程における断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例である半導体発光装置におけるキャリア濃度の分布を示す図である。
【図4】半導体発光装置ごとの通電試験結果を示す図である。
【図5】半導体発光装置ごとの通電試験結果を示す図である。
【図6】活性層のキャリア濃度と発光効率との関係を示す図である。
【図7】p型拡散制御層のキャリア濃度と発光効率との関係を示す図である。
【図8】活性層のキャリア濃度とp型拡散制御層のキャリア濃度との関係を示す図である。
【図9】活性層のキャリア濃度と発光効率との関係を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施例である半導体発光装置の断面図である。
【図11】本発明の第2の実施例である半導体発光装置にけるキャリア濃度の分布を示す図である。
【図12】本発明の第3の実施例である半導体発光装置の各製造工程における断面図である。
【図13】本発明の第3の実施例である半導体発光装置の各製造工程における断面図である。
【図14】図13の破線領域300の拡大図である。
【図15】本発明の第3の実施例である半導体発光装置の各製造工程における断面図である。
【図16】本発明の第3の実施例である半導体発光装置の各製造工程における断面図である。
【図17】本発明の第3の実施例である半導体発光装置の各製造工程における断面図である。
【図18】本発明の第3の実施例である半導体発光装置の断面図である。
【図19】図18の破線領域400の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
先ず、図1乃至図3を参照しつつ、本発明の第1の実施例である半導体発光装置の構造及びその製造方法について説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施例である半導体発光装置10の断面図である。図1に示されているように、半導体発光装置10は、成長用基板であるn型GaAs基板11の表面(主面)上に、n型クラッド層12、活性層13、p型拡散制御層14、p型クラッド層15及びp型電流拡散層16が順次積層されている。更に、半導体発光装置10は、n型GaAs基板11のn型クラッド層12が形成された表面とは逆側の面(すなわち、裏面)の全面にn側電極17、p型電流拡散層16上の中央部分にp側電極18を有している。以下に、かかる構成を有する半導体発光装置10の製造方法を、図2を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
先ず、成長用基板であるn型GaAs基板11が準備される(図2(a))。本実施例では、n型GaAs基板11は、シリコン(Si)がドープされ、その主面は面方位(100)から4度(4°)傾いている。すなわち、n型GaAs基板11は4°オフの成長用基板である。
【0017】
次に、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)により、n型GaAs基板11の上にn型クラッド層12、アンドープ活性層21、p型拡散制御層14及びp型クラッド層15が順次積層される。これにより、積層構造体22が形成される(図2(b))。成長条件は、例えば、成長温度が約摂氏750度(750℃)、成長圧力が約10キロパスカル(kPa)である。有機金属(MO)ガス用の原料(III族原料)としては、例えば、トリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルインジウム(TMI)が用いられる。V族ガスとしては、例えば、アルシン(AsH3)及びフォスフィン(PH3)が用いられる。なお、V/III比は30〜200である。不純物添加用の原料としては、例えば、n型不純物としてシラン(SiH4)が用いられ、p型不純物としてジメチルジンク(DMZn)が用いられる。また、キャリアガスとしては水素が用いられる。具体的な製造工程は、以下の通りである。
【0018】
先ず、組成が(AlxGa1-x)yIn1-yP(0≦x≦1、0<y≦1)で、Siの濃度が約1×1018cm-3のn型クラッド層12が、n型GaAs基板11上に約3μm形成される。本実施例では、n型クラッド層12は、(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pである。
【0019】
次に、組成が(AlxGa1-x)yIn1-yP(0≦x≦1、0<y≦1)で、不純物がドープされていないアンドープ活性層21が、n型クラッド層12の上に約500nm形成される。ここで、x及びyの値は、アンドープ活性層21のバンドギャップがn型クラッド層12及びp型クラッド層15のバンドギャップよりも小さくなるように設定される。本実施例では、アンドープ活性層21は、井戸層が(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pであり、障壁層が(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pである量子井戸構造(20周期)を有している。なお、アンドープ活性層21は、単一構造(バルク構造)であっても良い。また、アンドープ活性層21は、本実施例の組成に限定されるものではなく、例えば、アルミニウムを含まないInGaP系からなる層(すなわち、x=0)であっても良い。本実施例では、InGaP系の活性層としては、In0.5Ga0.5Pがある。
【0020】
続いて、組成がAlxIn1-xP(0<x<1)で、Znがドープされたp型拡散制御層14が、アンドープ活性層21の上に約50nm形成される。このとき、p型拡散制御層14の平均Zn濃度が1×1017〜1×1018cm-3となるように、DMZnの供給量が調整される。本実施例では、p型拡散制御層14は、Al0.5In0.5Pである。
【0021】
更に、組成が(AlxGa1-x)yIn1-yP(0≦x≦1、0<y≦1)で、Znがドープされたp型クラッド層15が、p型拡散制御層14の上に約1μm形成される。このとき、p型クラッド層15の平均Zn濃度が約5×1017cm-3となるように、DMZnの供給量が調整される。本実施例では、p型クラッド層15は、(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pである。p型クラッド層15にはキャリア(電子)を閉じ込めることで発光効率を上げる役割があるので、Al組成を60%〜80%、特に70%前後(65%〜75%)に調整することが好ましい。かかる工程を経て、積層構造体22の形成が完了する。
【0022】
次に、有機金属気相成長法により、Ga1-xInxP(0≦x<1)の材料から構成され、Znがドープされたp型電流拡散層16が、積層構造体22の上に約3μm形成される(図2(c))。本実施例では、p型電流拡散層16は、GaPである。また、In組成を10%以下のGa1-xInxP(0≦x≦0.1)から構成することにより、発光波長に対し透明なp型電流拡散層16を構成することができる。成長条件は、例えば、成長温度が約830℃、成長圧力が約10kPaである。MOガス用の原料としては、例えば、TMGaが用いられる。V族ガスとしては、例えば、PH3が用いられる。V/III比は30〜200である。不純物添加用の原料としてはDMZnが用いられる。また、キャリアガスとしては水素が用いられる。本実施例において、p型電流拡散層16の成長温度は、積層構造体22の成長温度より約80℃高く設定されているが、このような成長温度の差は他の成長条件又は成長用基板のオフ角等によって異なってくる。本実施例のようなAlGaInP系の積層構造体及びGa1-xInxP(0≦x<1)からなる電流拡散層の場合においては、積層構造体22の成長温度よりも30〜100℃高い成長温度でp型電流拡散層16を形成することが好ましい。
【0023】
また、p型電流拡散層16の形成時において、p型電流拡散層16からアンドープ活性層21に向かってZnが拡散する。このようなZnの拡散により、p型拡散制御層14からアンドープ活性層21へZnが拡散し、アンドープ活性層21にZnがドープされ、アンドープ活性層21がZnをp型キャリアとして有する活性層13に変化する。
【0024】
次に、真空蒸着法により、n型GaAs基板11の裏面全体に金・ゲルマニウム・ニッケルの合金(AuGeNi)が真空蒸着され、n側電極17が形成される。続いて、p型電流拡散層16の上にレジストが塗布される。塗布されたレジストが所望の電極パターンになるように、パターンニングが施される。パターンニングされたレジストの開口部分に、真空蒸着法によって金・亜鉛の合金(AuZn)が蒸着される。その後に、レジストを除去すること(リフトオフ法)で、所望の形状のp側電極18が形成される(図2(d))。本工程の終了により、半導体発光装置10が完成する。
【0025】
次に、半導体発光装置10におけるZnの拡散状態を説明する。図3は、本実施例により製造した半導体発光装置10のZnの濃度分布を示すグラフである。なお、本実施例において、Zn濃度はp型キャリア濃度と等しいので、以下においてZn濃度を単にキャリア濃度とも称する。
【0026】
図3に示されているように、半導体発光装置10のキャリア濃度は、n型GaAs基板から離れるにつれ徐々に増加していることが判った。活性層13のキャリア濃度は1×1016〜1×1017cm-3の範囲内であり、平均キャリア濃度は3×1016cm-3であった。p型拡散制御層14のキャリア濃度は1×1017〜1.8×1017cm-3の範囲内であり、平均キャリア濃度は1.5×1017cm-3であった。p型クラッド層15のキャリア濃度は5×1017cm-3前後であり、平均キャリア濃度は5×1017cm-3であった。p型電流拡散層16のキャリア濃度は8×1017〜1.2×1018cm-3の範囲内であり、平均キャリア濃度は1×1018cm-3であった。なお、n型クラッド層12にはSiがドープされ、Znが拡散していない。
【0027】
次に、図4及び図5を参照しつつ、上述した製造方法によって信頼性に優れた半導体発光装置を製造することができることを説明する。図4は、p型拡散制御層14のキャリア濃度を変更した場合における降伏電圧の経時変化(通電試験結果)を示している。図4の横軸は通電時間であり、縦軸は降伏電圧の変化量(初期値を基準としている)である。かかる通電試験において、p型拡散制御層14の平均キャリア濃度が5×1016、1×1017、3×1017及び1×1018cm-3の4種類の半導体発光装置(サンプル)と、p型拡散制御層14を有さないサンプル(比較サンプル)とが使用された。通電試験の詳細としては、各サンプルに対して20ミリアンペア(mA)の電流を通電し、各経過時間(0、20、60、100時間)における降伏電圧を測定した。降伏電圧の測定時においては、各サンプルに対し、逆方向に10マイクロアンペア(μA)の電流を通電した。
【0028】
図4から判るように、比較サンプル以外のサンプル(すなわち、p型拡散制御層を有するサンプル)は、降伏電圧の変化がほとんどなかった。一方、比較サンプルの場合、通電時間が長くなると降伏電圧が減少し、100時間の通電後に降伏電圧が約20%減少した。このような結果から、p型拡散制御層を挿入することにより、降伏電圧の経時変化を抑制することができることが判った。また、p型拡散制御層のキャリア濃度は、降伏電圧の経時変化抑制には影響を与えないと考えられる。
【0029】
図5は、p型拡散制御層の膜厚を50nmから300nmに変更した3種類のサンプルごとの降伏電圧の経時変化(通電試験結果)を示している。なお、半導体発光装置のその他の構成は、p型拡散制御層の膜厚が50nmの場合と同じである。図5の横軸は通電時間であり、縦軸は降伏電圧の変化量である。通電試験の詳細は上述した図4の場合と同様であり、各サンプルに対して20mAの電流を通電し、各経過時間(0、20、60、100時間)における降伏電圧を測定した。降伏電圧の測定時においては、各サンプルに対し、逆方向に10μAの電流を通電した。
【0030】
図5のグラフから判るように、p型拡散制御層の膜厚を薄くしても降伏電圧の変化がほとんどなかった。このことから、高い信頼性を有する半導体発光装置を得るためには、p型拡散制御層を挿入することが重要であることが判った。なお、p型拡散制御層の膜厚及びキャリア濃度は信頼性の向上に直接的に関与していないと考えられる。
【0031】
活性層とp型クラッド層の間にアンドープの半導体層(以下、アンドープ層と称する)を挿入することにより、上述した降伏電圧の経時変化を抑制することもできるが、アンドープ層を挿入すると半導体発光装置自体の直列抵抗が増加する。かかる直列抵抗の増加が起こると、半導体発光装置自体の印加電圧が大きくなり、消費電力及び信頼性の問題が発生してしまう。しかしながら、本発明の半導体発光装置10においては、p型拡散制御層はp型不純物(Zn)がドープされたAlInP層であるので低抵抗であり、消費電力及び信頼性の問題は生じない。
【0032】
以上から、本発明の半導体発光装置10はp型拡散制御層14を有することにより、降伏電圧の経時変化の抑制及び順方向電圧の低減を図ることができ、更には半導体発光装置ごとの特性ばらつきを低減することができる。
【0033】
次に、図6乃至図9を参照しつつ、上述した製造方法によって高い発光効率を有する半導体発光装置を製造することができることを説明する。
【0034】
図6は、活性層のキャリア濃度を変化させた場合における、各半導体発光装置の発光効率を示している。図6の横軸は活性層の平均キャリア濃度であり、縦軸は発光効率である。縦軸の発光効率は任意単位であって、平均キャリア濃度が5×1016cm-3のサンプルを基準(すなわち、1.0)としている。なお、横軸は対数表示である。
【0035】
図6から判るように、活性層の平均キャリア濃度が2.0×1016cm-3未満の領域においては、平均キャリア濃度が低下すると、発光効率も急峻に減少している。また、平均キャリア濃度が4.0×1016cm-3より高い領域おいて、平均キャリア濃度が上昇すると、発光効率も急峻に減少している。更に、平均キャリア濃度が2.0×1016cm-3〜4.0×1016cm-3の領域で安定した発光効率が得られ、かかる領域内に発光効率のピークがある。このことから、半導体発光装置ごとの発光効率のばらつきを低減し、且つ、高い発光効率を得るには、活性層の平均キャリア濃度を2×1016〜4×1016cm-3に調整する必要があることが判った。以下において、高い発光効率をえるために必要な活性層のキャリア濃度範囲をRaとして示す。
【0036】
図7は、上述したキャリア濃度が異なる4種類のサンプルごとの発光効率を示している。図7の横軸はp型拡散制御層の平均キャリア濃度であり、縦軸は発光効率である。縦軸の発光効率は任意単位であって、平均キャリア濃度が5×1016cm-3の時を基準(すなわち、1.0)としている。なお、横軸は対数表示である。
【0037】
図7から判るように、p型拡散制御層の平均キャリア濃度が1×1017cm-3未満になると、半導体発光装置の発光効率が急峻に減少していた。また、p型拡散制御層の平均キャリア濃度が1×1017cm-3以上のサンプルは、平均キャリア濃度が5×1016cm-3のサンプルの発光効率に対して約2倍以上の発光効率を示した。このようなp型拡散制御層の平均キャリア濃度及び発光効率の関係から、半導体発光装置の発光効率を高くし、且つ、そのばらつきを無くすためには、p型拡散制御層の平均キャリア濃度を1.0×1017cm-3以上にする必要があることが判る。以下において、高い発光効率をえるために必要なp型拡散制御層のキャリア濃度範囲をRcとして示す。
【0038】
図8は、上述した4種類のサンプルごとの活性層の平均キャリア濃度を示している。図8の横軸はp型拡散制御層の平均キャリア濃度であり、縦軸は活性層の平均キャリア濃度である。なお、横軸及び縦軸は対数表示である。
【0039】
図8から判るように、図7のp型拡散制御層の平均キャリア濃度が最適な範囲Rcから外れていたサンプル(p型拡散制御層の平均キャリア濃度が5×1016cm-3)は、活性層の平均キャリア濃度も活性層の平均キャリア濃度が最適な範囲Raから外れていた。一方、平均キャリア濃度が1×1017、3×1017及び1×1018cm-3の3種類のサンプルは、活性層の平均キャリア濃度も最適な範囲Ra内であった。このことから、p型拡散制御層の平均キャリア濃度を1×1017cm-3〜1×1018cm-3の範囲内に調整することで、活性層の平均キャリア濃度が最適な範囲Ra内になり、高い発光効率を有する半導体発光装置を製造することができることが判った。なお、p型拡散制御層の平均キャリア濃度を1×1018cm-3を超える濃度にすると、活性層の平均キャリア濃度の増加に伴い、活性層の平均キャリア濃度が最適な範囲Raから外れてしまうので、高い発光効率を有する半導体発光装置を製造することができない。また、p型拡散制御層の平均キャリア濃度を1×1018cm-3を超える濃度にすると、p型拡散制御層の表面状態を悪化させる。p型拡散制御層の表面状態が悪化すると、その後に積層されるp型クラッド層及びp型電流拡散層の表面状態も悪化するので、このような高濃度ドープは好ましくない。
【0040】
図9は、上述したp型拡散制御層の膜厚を薄くした4種類のサンプルごとの発光効率を示している。図9の横軸はp型拡散制御層の平均キャリア濃度であり、縦軸は発光効率である。縦軸の発光効率は任意単位であって、平均キャリア濃度が5×1016cm-3のサンプルを基準(すなわち、1.0)としている。なお、横軸は対数表示である。
【0041】
図9から判るように、p型拡散制御層の平均キャリア濃度が1×1017cm-3未満になると、発光効率が急峻に減少していた。また、p型拡散制御層の平均キャリア濃度が1×1017cm-3以上のサンプルは、p型拡散制御層の平均キャリア濃度が5×1016cm-3であるサンプルの発光効率に対して約1.3倍以上の発光効率を示した。このようなp型拡散制御層の平均キャリア濃度と発光効率との関係は、図7に示されている結果と同様である。図7及び図9の結果から、p型拡散制御層の膜厚を変更してもp型拡散制御層及び活性層のキャリア濃度は、高い発光効率を得るためのキャリア濃度範囲内にあることが判った。従って、高い発光効率を有する半導体発光装置を得るためには、p型拡散制御層及び活性層のキャリア濃度を上述したキャリア濃度範囲内に調整することが重要であることが判った。なお、p型拡散制御層の膜厚は発光効率の向上に直接的に関与していないと考えられる。
【0042】
以上から、高い発光効率を得るためには、p型拡散制御層からアンドープ活性層に拡散するZn濃度を調整することが重要である。具体的には、p型拡散制御層の平均キャリア濃度を1×1017〜1×1018cm-3に調整し、更に活性層の平均キャリア濃度を2×1016〜4×1016cm-3に調整することが必要である。本実施例においては、平均キャリア濃度が1×1017〜1×1018cm-3に調整されたp型拡散制御層14を形成し、その後にp型拡散制御層14を含む積層構造体22の成長温度よりも30℃〜100℃高い成長温度でp型電流拡散層16を形成している。このような成長温度の変化により、p型電流拡散層16の形成に伴ったZnの拡散が生じることになる。ここで、p型電流拡散層16からのZnの拡散はp型拡散制御層14によって制御されるので、アンドープ活性層21に所望のZn拡散(平均キャリア濃度が2×1016〜4×1016cm-3になる拡散)が生じることになる。従って、本実施例における半導体発光装置の製造方法によれば、高輝度の半導体発光装置を提供することができることになる。
【0043】
以上のように、本発明の半導体発光装置の製造方法は、n型GaAs基板11の上にn型クラッド層12、アンドープ活性層21、平均キャリア濃度が1×1017cm-3〜1×1018cm-3のp型拡散制御層14及びp型クラッド層15を順次成長して積層構造体22を形成する工程と、積層構造体22の成長温度より高い成長温度でp型電流拡散層16を成長し、p型拡散制御層14からアンドープ活性層21にZnを拡散させてアンドープ活性層21の平均キャリア濃度を2×1016cm-3〜4×1016cm-3に制御する(すなわち、アンドープ活性層21をZnがドープされた活性層13に変化する)第2導電型半導体層形成工程と、を有している。このように、活性層のキャリア濃度を制御することによって、高い発光効率を備えるとともに、降伏電圧の経時変化の抑制及び順方向電圧の低減を図ることができ、高輝度、且つ、高い信頼性を備える半導体発光装置を製造することができる。
【0044】
なお、上述した半導体装置10及びその製造方法は一例にすぎず、上記内容に限られることは無い。例えば、n型及びp型を入れ替えて半導体発光装置を製造しても良い。更に、成長用基板11は4°オフに限らず、例えば15°オフのものを使用しても良い。かかる場合にも、積層構造体22の成長温度より30〜100℃高い温度で、p型電流拡散層16を成長する。また、p型電流拡散層16にインジウム(In)を添加しても良い。更に、p型電流拡散層16の平均キャリア濃度は、1×1018〜5×1018cm-3の範囲内で調整することもできる。
【実施例2】
【0045】
第1の実施例においては、p型電流拡散層16のキャリア濃度がほぼ均一になるようにZnをドープしたが、p型電流拡散層16の膜厚が3μmよりも厚くなるとp型電流拡散層の形成時間が長くなり、Znの拡散量が増加してしまう。かかるZnの拡散量の増加により、p型拡散制御層14からアンドープ活性層21へのZnの拡散量が増加し、活性層13のキャリア濃度を最適な範囲Ra内に調整することが困難になる場合がある。以下に、p型電流拡散層の膜厚が3μmより厚い場合においても高い信頼性及び高い発光効率を有する半導体発光装置を図10及び図11を参照しつつ説明する。
【0046】
図10は、本発明の第2の実施例である半導体発光装置100の断面図である。図10に示されているように、半導体発光装置100は、成長用基板であるn型GaAs基板11の表面(主面)上に、n型クラッド層12、活性層13、p型拡散制御層14、p型クラッド層15及びp型電流拡散層101が順次積層されている。更に、半導体発光装置100は、n型GaAs基板11のn型クラッド層12が形成された表面とは逆側の面(すなわち、裏面)の全面にn側電極17、p型電流拡散層16上の中央部分にp側電極18を有している。
【0047】
半導体発光装置100は、第1の実施例である半導体発光装置10と比較して、p型電流拡散層101の部分のみが異なっており、その他の構成は同一である。以下においてp型電流拡散層101のみについて詳細に説明し、その他の構成の説明は省略する。
【0048】
図10に示されているように、p型電流拡散層101は、膜厚及びキャリア濃度が異なる4つの層から構成されている。具体的には、p型クラッド層上に第1拡散部101a、第2拡散部101b、第3拡散部101c及び接合部101dが順次積層されている。第1拡散部101aの膜厚は約100nm、第2拡散部101bの膜厚は900nm、第3拡散部101cの膜厚は9500nm、接合部101dの膜厚は500nmである。
【0049】
図11は、本実施例の半導体発光装置100におけるキャリア濃度分布(すなわち、Znの拡散状態)を示すグラフである。
【0050】
図11に示されているように、活性層13からp型クラッド層15までのキャリア濃度は、第1の実施例である半導体発光装置10と同様の分布になっている。半導体発光装置10と異なる部分は、p型電流拡散層101内でのキャリア濃度である。第1拡散部101aにおける平均キャリア濃度が約1×1018cm-3、第2拡散部101bにおける平均キャリア濃度が約1.5×1018cm-3、第3拡散部101cにおける平均キャリア濃度が約2×1018cm-3、接合部101dにおける平均キャリア濃度が約1×1019cm-3であり、p型電流拡散層101における平均キャリア濃度は約3×1018cm-3である。すなわち、p型電流拡散層101のキャリア濃度は、p型電流拡散層14の表面からp型電流拡散層14とp型クラッド層12との界面に近づくにつれて徐々に減少している。
【0051】
p型電流拡散層101内のZnプロファイルを図11のようにすることで、活性層13のキャリア濃度を2×1016cm-3〜4×1016cm-3に調整することが可能になる。かかる理由を以下に説明する。一般に、膜厚の最も厚い第3拡散部101cのZnの拡散が、p型電流拡散層101からp型クラッド層15への拡散量に最も影響している。しかしながら、第3拡散部101cのZnの拡散は、第3拡散部101cよりもキャリア濃度が低い第2拡散部101bによって抑制されてしまう。かかる第3拡散部101cにおけるZn拡散の抑制により、p型電流拡散層101からp型クラッド層15へのZnの拡散量が抑制され、活性層13のキャリア濃度を2×1016cm-3〜4×1016cm-3に調整することが可能になると考えられる。従って、図11に示されているように、p型電流拡散層101におけるキャリア濃度が、p型電流拡散層14の表面からp型電流拡散層14とp型クラッド層12との界面に近づくにつれて徐々に減少するように、第1拡散部101a、第2拡散部101b及び第3拡散部101cの膜厚及びZnドープ量を調整するこが重要になる。例えば、第1拡散部101aにおける平均キャリア濃度は1×1018〜5×1018cm-3、第2拡散部101bにおける平均キャリア濃度は1×1016cm-3〜5×1018cm-3、第3拡散部101cにおける平均キャリア濃度は1×1018cm-3〜5×1018cm-3の範囲内で調整することができる。なお、接合部101dは、p側電極18とのオーミック接触を得るために形成される層であるため、Znの拡散には影響はない。また、第3拡散部101cとp側電極18との間でオーミック接触を得ることができれば、接合部101dは不要である。
【0052】
なお、本実施例における半導体発光装置100の製造方法は、第1の実施例における半導体発光装置10の製造方法とほぼ同一であるので、その製造方法については省略する。第1の実施例の製造方法と比較して異なる部分は、p型電流拡散層101を上述した4層構造になるように、Znのドープ量を調整することである。
【0053】
本実施例における半導体発光装置100について、第1の実施例と同一の実験(通電試験、キャリア濃度と発光効率の関係調査)を実施したが、本実施例における半導体発光装置100においても第1の実施例と同一の効果が得られた。かかる理由を以下に説明する。本実施例における半導体発光装置100は、p型電流拡散層101内のキャリア濃度がp型電流拡散層101の表面からp型電流拡散層101とp型クラッド層15との界面に近づくにつれて減少し、更にp型拡散制御層14の平均キャリア濃度が1×1017cm-3〜1×1018cm-3の範囲内に調整されているので、活性層13の平均キャリア濃度を2×1016cm-3〜4×1016cm-3にすることが可能になる。従って、p型電流拡散層101の膜厚が3μmより厚い場合においても、半導体発光装置100は高い発光効率を有することになる。また、半導体発光装置100にはp型拡散制御層が含まれているので、半導体発光装置100は高い信頼性も有している。以上のことから、本実施例における半導体発光装置100も高輝度で、且つ高い信頼性を有している。
【実施例3】
【0054】
第1及び第2の実施例においては、成長用基板として用いたn型GaAs基板11を半導体発光装置の構成部材として残していたが、n型GaAs基板11を除去して異なる支持基板に積層構造体を貼り合わせても良い。このような場合の半導体発光装置及びその製造方法を第3の実施例とし、図12乃至18を参照しつつ、以下に説明する。
【0055】
先ず、ホウ素(B)が添加されたシリコン(Si)からなる支持基板121が準備される(図12(a))。次に、電子線加熱蒸着法によって支持基板121の両面に、金属層として第1の白金(Pt)層(表面白金族金属層)122及び第2のPt層(裏面白金族金属層)123が形成される(図12(b))。
【0056】
次に、電子線加熱蒸着法によって第2のPt層123上に、チタン(Ti)層124が形成される。更に、電子線加熱蒸着法によってTi層124上に、第1のNi層125が形成される(図12(c))。
【0057】
次に、電子線加熱蒸着法によって第1のNi層125上にAuSn半田層126が形成される(図12(d))。AuSn半田層126のAuとSnとの組成比は、重量比で約8:2、原子数比で約7:3である。本実施例においては、第1のNi層125とAuSn半田層126とから第1の接合金属層が形成されている。本工程の終了により、支持体部130の形成が完了する。
【0058】
次に、成長用基板としてn型GaAs基板11が準備される(図13(a))。続いて、n型GaAs基板11上にMOCVDにより、n型クラッド層12、活性層13、p型拡散制御層14、p型クラッド層15及びp型コンタクト層131が順次積層され、n型GaAs基板11上に発光動作層132が形成される(図13(b)、図14)。図14は、図13(b)の破線領域300の拡大図である。ここで、半導体成長層132は、第1の実施例の構造(図1参照)と同一であり、第1の実施例と同様の方法でn型GaAs基板11上に形成されるので、その説明は省略する。なお、第1の実施例のp型クラッド層15上に形成される層と、本実施例のp型クラッド層15上に形成される層とは名称が異なっているが、両層ともGa1-xInxP(0≦x<1)の材料から構成されている。これは、本実施例において、p型クラッド層15上に形成される層は、電極とのオーミック接触を得るために用いられた層だからである。
【0059】
次に、スパッタリングにより、半導体成長層132上に反射電極層として金−亜鉛(AuZn)層133が堆積される(図13(c))。AuZn層133は、半導体成長層132において発生した光を光取り出し面側に反射する。これにより、半導体発光素子の光取り出し効率を向上させることができる。
【0060】
次に、反応性スパッタリングにより、AuZn層133上に第1の窒化タンタル(TaN)層134が形成される。続いて、反応性スパッタリングにより、第1のTaN層134上にチタン−タングステン(TiW)層135が形成される。更に、反応性スパッタリングにより、TiW層135上に第2のTaN層136が形成される(図13(d))。第1のTaN層134、TiW層135及び、第2のTaN層136は、後述する接合部材(共晶材料)が拡散によってAuZn層133に侵入すること防止する
次に、電子線加熱蒸着法によって第2のTaN層136上に、第2のNi層137が形成される。更に、電子線加熱蒸着法によって第2のNi層137上に、Au層138が形成される(図13(e))。本実施例においては、第2のNi層137とAu層138とから第2の接合金属層が形成されている。本工程の終了により、発光体部140の形成が完了する。
【0061】
次に、支持体部130のAuSn半田層126と、発光体部140のAu層138と、が対向した状態で、支持体部130及び発光体部140が密着される。その後、密着した支持体部130及び発光体部140が窒素雰囲気下で熱圧着される(図15)。熱圧着の条件は、例えば、圧力が約1メガパスカル(MPa)、温度が約340℃、圧着時間が約10分間である。この熱圧着によって、AuSn半田層126が溶融し、第2のNi層137及びAu層138が、溶融しているAuSn半田層126に溶解する。更に、AuSn半田層126のAu及びSn及びAu層138のAuが、第1のNi層125及び第2のNi層137に拡散して吸収される。更に、溶融したAuSn半田層126が固化することにより、AuSnNiからなる接合層161が形成される。これにより支持体部130と発光体部140とが接合され、接合体170が形成される(図16)。
【0062】
次に、アンモニア水と過酸化水素水との混合液を用いたウエットエッチングにより、接合体170からn型GaAs基板11が除去される。n型GaAs基板11が除去されることにより、半導体成長層132の表面(が露出する(図17)。なお、n型GaAs基板11の除去は、ドライエッチング、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)、機械的研削など、又はこれらを組み合わせた方法によって行われても良い。
【0063】
次に、半導体成長層132上にレジストが塗布される。塗布されたレジストが所望の電極パターンになるように、パターンニングが施される。パターンニングされたレジストの開口部分に、電子線加熱蒸着法によって金・ゲルマニウム・ ニッケル(AuGeNi)が蒸着される。その後に、レジストを除去すること(リフトオフ法)で、所望の形状のAuGeNiが形成される。更に、AuGeNi及び接合体170に対して、窒素雰囲気下で約400℃の加熱処理が施される。これによってAuGeNiと半導体成長層132との合金化が図られ、半導体成長層132と良好なオーミック接合した外部接続電極181が形成される。本工程の終了により、半導体発光装置200が完成する(図18)。
【0064】
図18の破線領域400の拡大図を図19に示す。図19に示されているように、AuZn層133上にp型コンタクト層131、p型クラッド層15、p型拡散制御層14、活性層13及びn型クラッド層12がこの順序で積層されている。
【0065】
本実施例における製造方法によって製造される半導体発光装置200について、第1の実施例と同一の実験(通電試験、キャリア濃度と発光効率の関係調査)を実施したが、本実施例における半導体発光装置200においても第1の実施例と同一の効果が得られた。これは、貼り合わせ工程前におけるn型GaAs基板11上に半導体成長層132を形成する方法が、第1及び第2の実施例と同一だからである。すなわち、半導体成長層132の形成後に、n型GaAs基板11を除去する工程及び新たな支持基板(半導体基板)に貼り合わせる工程を経由しても、高輝度、且つ、高い信頼性を有す半導体発光装置を製造することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 半導体発光装置
11 n型GaAs基板
12 n型クラッド層
13 活性層
14 p型拡散制御層
15 p型クラッド層
16 p型電流拡散層
17 n側電極
18 p側電極
21 アンドープ活性層
22 積層構造体
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光装置の製造方法及び半導体発光装置に関し、半導体基板上に複数の半導体層を積層する技術を用いた半導体発光装置の製造方法及びこれによって製造される半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、成長用基板として用いられるGaAs基板上に有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)によって複数の半導体層を積層し、半導体発光装置を形成する方法が知られている。例えば、GaAs基板上には、n型クラッド層、活性層、p型クラッド層及びp型電流拡散層が順次積層される。更に、GaAs基板のn型クラッド層が形成された面とは逆側(すなわち、GaAs基板の裏面側)及び電流拡散層上のそれぞれには、表面電極及び裏面電極が形成される。
【0003】
上述した半導体発光装置は、主に自動車のテールランプ、各種表示機器及び携帯電話等のモバイル機器のバックライト等に従来から用いられている。また、近年において、自動車のヘッドライト、液晶ディスプレイのバックライト及び一般照明等への需要が拡大し始めている。このような半導体発光装置の市場拡大に伴い、半導体発光装置の発光効率及び信頼性の向上が要求されている。
【0004】
発光効率の向上については、活性層とp型クラッド層との間に不純物の拡散を抑制する拡散抑制層を挿入する技術が知られている。例えば、特許文献1には、拡散抑制としてAlInPを挿入する技術が開示されている。また、信頼性の向上については、p型クラッド層にp型クラッド層よりも不純物濃度の低い低濃度不純物層又はアンドープ層を挿入することで、降伏電圧の経時変化を抑制する技術が知られている。例えば、特許文献2には、p型クラッド層にアンドープのドーパント抑制層を挿入する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−353502号公報
【特許文献2】特開2007−42751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年においては高輝度であり、且つ、高い信頼性を備える半導体発光装置の要求がより強まってきている。具体的には、高い信頼性を得るために、順方向電圧を低減することが要求されている。順方向電圧上昇の低減によって、半導体発光装置の消費電力を小さくすることができ、更には半導体発光装置ごとの消費電力のばらつきを少なくすることにもなるからである。
【0007】
本発明の目的は、以上の如き事情に鑑みてなされたものであり、高い発光効率を備えるとともに、降伏電圧の経時変化の抑制及び順方向電圧の低減を図ることができ、高輝度、且つ、高い信頼性を備える半導体発光装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の半導体発光装置の製造方法は、成長用基板の上に第1導電型クラッド層、アンドープであって(AlxGa1-x)yIn1-yP(0≦x≦1、0<y≦1)からなる活性層、平均キャリア濃度が1×1017cm-3乃至1×1018cm-3であってAlxIn1-xP(0<x<1)からなる第2導電型拡散制御層及び第2導電型クラッド層を順次成長して積層構造体を形成する工程と、積層構造体の成長温度より高い成長温度で第2導電型半導体層を成長し、第2導電型拡散制御層から活性層に第2導電型不純物を拡散させて活性層の平均キャリア濃度を2×1016cm-3乃至4×1016cm-3に制御する第2導電型半導体層形成工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、上述した課題を解決するために、本発明の半導体発光装置は、半導体基板の上に形成された第1導電型クラッド層と、第1導電型クラッド層の上に形成され、平均キャリア濃度が2×1016cm-3乃至4×1016cm-3であって(AlxGa1-x)yIn1-yP(0≦x≦1、0<y≦1)からなる活性層と、活性上の上に形成され、平均キャリア濃度が1×1017cm-3乃至1×1018cm-3であってAlxIn1-xP(0<x<1)からなる第2導電型拡散制御層と、第2導電型拡散制御層の上に形成された第2導電型クラッド層と、第2導電型クラッド層の上に形成されたGa1-xInxP(0≦x<1)からなる第2導電型半導体層と、有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の半導体発光装置の製造方法は、成長用基板の上に第1導電型クラッド層、アンドープであって(AlxGa1-x)yIn1-yP(0≦x≦1、0<y≦1)からなる活性層、平均キャリア濃度が1×1017cm-3〜1×1018cm-3であってAlxIn1-xP(0<x<1)からなる第2導電型拡散制御層及び第2導電型クラッド層を順次成長して積層構造体を形成する工程と、積層構造体の成長温度より高い成長温度で第2導電型半導体層を成長し、第2導電型拡散制御層から活性層に第2導電型不純物を拡散させて活性層の平均キャリア濃度を2×1016cm-3〜4×1016cm-3に制御する第2導電型半導体層形成工程と、を有している。
【0011】
このように活性層のキャリア濃度を抑制することによって、高い発光効率を備えるとともに、降伏電圧の経時変化の抑制及び順方向電圧の低減を図ることができ、高輝度、且つ、高い信頼性を備える半導体発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施例である半導体発光装置の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例である半導体発光装置の各製造工程における断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例である半導体発光装置におけるキャリア濃度の分布を示す図である。
【図4】半導体発光装置ごとの通電試験結果を示す図である。
【図5】半導体発光装置ごとの通電試験結果を示す図である。
【図6】活性層のキャリア濃度と発光効率との関係を示す図である。
【図7】p型拡散制御層のキャリア濃度と発光効率との関係を示す図である。
【図8】活性層のキャリア濃度とp型拡散制御層のキャリア濃度との関係を示す図である。
【図9】活性層のキャリア濃度と発光効率との関係を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施例である半導体発光装置の断面図である。
【図11】本発明の第2の実施例である半導体発光装置にけるキャリア濃度の分布を示す図である。
【図12】本発明の第3の実施例である半導体発光装置の各製造工程における断面図である。
【図13】本発明の第3の実施例である半導体発光装置の各製造工程における断面図である。
【図14】図13の破線領域300の拡大図である。
【図15】本発明の第3の実施例である半導体発光装置の各製造工程における断面図である。
【図16】本発明の第3の実施例である半導体発光装置の各製造工程における断面図である。
【図17】本発明の第3の実施例である半導体発光装置の各製造工程における断面図である。
【図18】本発明の第3の実施例である半導体発光装置の断面図である。
【図19】図18の破線領域400の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
先ず、図1乃至図3を参照しつつ、本発明の第1の実施例である半導体発光装置の構造及びその製造方法について説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施例である半導体発光装置10の断面図である。図1に示されているように、半導体発光装置10は、成長用基板であるn型GaAs基板11の表面(主面)上に、n型クラッド層12、活性層13、p型拡散制御層14、p型クラッド層15及びp型電流拡散層16が順次積層されている。更に、半導体発光装置10は、n型GaAs基板11のn型クラッド層12が形成された表面とは逆側の面(すなわち、裏面)の全面にn側電極17、p型電流拡散層16上の中央部分にp側電極18を有している。以下に、かかる構成を有する半導体発光装置10の製造方法を、図2を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
先ず、成長用基板であるn型GaAs基板11が準備される(図2(a))。本実施例では、n型GaAs基板11は、シリコン(Si)がドープされ、その主面は面方位(100)から4度(4°)傾いている。すなわち、n型GaAs基板11は4°オフの成長用基板である。
【0017】
次に、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)により、n型GaAs基板11の上にn型クラッド層12、アンドープ活性層21、p型拡散制御層14及びp型クラッド層15が順次積層される。これにより、積層構造体22が形成される(図2(b))。成長条件は、例えば、成長温度が約摂氏750度(750℃)、成長圧力が約10キロパスカル(kPa)である。有機金属(MO)ガス用の原料(III族原料)としては、例えば、トリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルインジウム(TMI)が用いられる。V族ガスとしては、例えば、アルシン(AsH3)及びフォスフィン(PH3)が用いられる。なお、V/III比は30〜200である。不純物添加用の原料としては、例えば、n型不純物としてシラン(SiH4)が用いられ、p型不純物としてジメチルジンク(DMZn)が用いられる。また、キャリアガスとしては水素が用いられる。具体的な製造工程は、以下の通りである。
【0018】
先ず、組成が(AlxGa1-x)yIn1-yP(0≦x≦1、0<y≦1)で、Siの濃度が約1×1018cm-3のn型クラッド層12が、n型GaAs基板11上に約3μm形成される。本実施例では、n型クラッド層12は、(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pである。
【0019】
次に、組成が(AlxGa1-x)yIn1-yP(0≦x≦1、0<y≦1)で、不純物がドープされていないアンドープ活性層21が、n型クラッド層12の上に約500nm形成される。ここで、x及びyの値は、アンドープ活性層21のバンドギャップがn型クラッド層12及びp型クラッド層15のバンドギャップよりも小さくなるように設定される。本実施例では、アンドープ活性層21は、井戸層が(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pであり、障壁層が(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pである量子井戸構造(20周期)を有している。なお、アンドープ活性層21は、単一構造(バルク構造)であっても良い。また、アンドープ活性層21は、本実施例の組成に限定されるものではなく、例えば、アルミニウムを含まないInGaP系からなる層(すなわち、x=0)であっても良い。本実施例では、InGaP系の活性層としては、In0.5Ga0.5Pがある。
【0020】
続いて、組成がAlxIn1-xP(0<x<1)で、Znがドープされたp型拡散制御層14が、アンドープ活性層21の上に約50nm形成される。このとき、p型拡散制御層14の平均Zn濃度が1×1017〜1×1018cm-3となるように、DMZnの供給量が調整される。本実施例では、p型拡散制御層14は、Al0.5In0.5Pである。
【0021】
更に、組成が(AlxGa1-x)yIn1-yP(0≦x≦1、0<y≦1)で、Znがドープされたp型クラッド層15が、p型拡散制御層14の上に約1μm形成される。このとき、p型クラッド層15の平均Zn濃度が約5×1017cm-3となるように、DMZnの供給量が調整される。本実施例では、p型クラッド層15は、(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pである。p型クラッド層15にはキャリア(電子)を閉じ込めることで発光効率を上げる役割があるので、Al組成を60%〜80%、特に70%前後(65%〜75%)に調整することが好ましい。かかる工程を経て、積層構造体22の形成が完了する。
【0022】
次に、有機金属気相成長法により、Ga1-xInxP(0≦x<1)の材料から構成され、Znがドープされたp型電流拡散層16が、積層構造体22の上に約3μm形成される(図2(c))。本実施例では、p型電流拡散層16は、GaPである。また、In組成を10%以下のGa1-xInxP(0≦x≦0.1)から構成することにより、発光波長に対し透明なp型電流拡散層16を構成することができる。成長条件は、例えば、成長温度が約830℃、成長圧力が約10kPaである。MOガス用の原料としては、例えば、TMGaが用いられる。V族ガスとしては、例えば、PH3が用いられる。V/III比は30〜200である。不純物添加用の原料としてはDMZnが用いられる。また、キャリアガスとしては水素が用いられる。本実施例において、p型電流拡散層16の成長温度は、積層構造体22の成長温度より約80℃高く設定されているが、このような成長温度の差は他の成長条件又は成長用基板のオフ角等によって異なってくる。本実施例のようなAlGaInP系の積層構造体及びGa1-xInxP(0≦x<1)からなる電流拡散層の場合においては、積層構造体22の成長温度よりも30〜100℃高い成長温度でp型電流拡散層16を形成することが好ましい。
【0023】
また、p型電流拡散層16の形成時において、p型電流拡散層16からアンドープ活性層21に向かってZnが拡散する。このようなZnの拡散により、p型拡散制御層14からアンドープ活性層21へZnが拡散し、アンドープ活性層21にZnがドープされ、アンドープ活性層21がZnをp型キャリアとして有する活性層13に変化する。
【0024】
次に、真空蒸着法により、n型GaAs基板11の裏面全体に金・ゲルマニウム・ニッケルの合金(AuGeNi)が真空蒸着され、n側電極17が形成される。続いて、p型電流拡散層16の上にレジストが塗布される。塗布されたレジストが所望の電極パターンになるように、パターンニングが施される。パターンニングされたレジストの開口部分に、真空蒸着法によって金・亜鉛の合金(AuZn)が蒸着される。その後に、レジストを除去すること(リフトオフ法)で、所望の形状のp側電極18が形成される(図2(d))。本工程の終了により、半導体発光装置10が完成する。
【0025】
次に、半導体発光装置10におけるZnの拡散状態を説明する。図3は、本実施例により製造した半導体発光装置10のZnの濃度分布を示すグラフである。なお、本実施例において、Zn濃度はp型キャリア濃度と等しいので、以下においてZn濃度を単にキャリア濃度とも称する。
【0026】
図3に示されているように、半導体発光装置10のキャリア濃度は、n型GaAs基板から離れるにつれ徐々に増加していることが判った。活性層13のキャリア濃度は1×1016〜1×1017cm-3の範囲内であり、平均キャリア濃度は3×1016cm-3であった。p型拡散制御層14のキャリア濃度は1×1017〜1.8×1017cm-3の範囲内であり、平均キャリア濃度は1.5×1017cm-3であった。p型クラッド層15のキャリア濃度は5×1017cm-3前後であり、平均キャリア濃度は5×1017cm-3であった。p型電流拡散層16のキャリア濃度は8×1017〜1.2×1018cm-3の範囲内であり、平均キャリア濃度は1×1018cm-3であった。なお、n型クラッド層12にはSiがドープされ、Znが拡散していない。
【0027】
次に、図4及び図5を参照しつつ、上述した製造方法によって信頼性に優れた半導体発光装置を製造することができることを説明する。図4は、p型拡散制御層14のキャリア濃度を変更した場合における降伏電圧の経時変化(通電試験結果)を示している。図4の横軸は通電時間であり、縦軸は降伏電圧の変化量(初期値を基準としている)である。かかる通電試験において、p型拡散制御層14の平均キャリア濃度が5×1016、1×1017、3×1017及び1×1018cm-3の4種類の半導体発光装置(サンプル)と、p型拡散制御層14を有さないサンプル(比較サンプル)とが使用された。通電試験の詳細としては、各サンプルに対して20ミリアンペア(mA)の電流を通電し、各経過時間(0、20、60、100時間)における降伏電圧を測定した。降伏電圧の測定時においては、各サンプルに対し、逆方向に10マイクロアンペア(μA)の電流を通電した。
【0028】
図4から判るように、比較サンプル以外のサンプル(すなわち、p型拡散制御層を有するサンプル)は、降伏電圧の変化がほとんどなかった。一方、比較サンプルの場合、通電時間が長くなると降伏電圧が減少し、100時間の通電後に降伏電圧が約20%減少した。このような結果から、p型拡散制御層を挿入することにより、降伏電圧の経時変化を抑制することができることが判った。また、p型拡散制御層のキャリア濃度は、降伏電圧の経時変化抑制には影響を与えないと考えられる。
【0029】
図5は、p型拡散制御層の膜厚を50nmから300nmに変更した3種類のサンプルごとの降伏電圧の経時変化(通電試験結果)を示している。なお、半導体発光装置のその他の構成は、p型拡散制御層の膜厚が50nmの場合と同じである。図5の横軸は通電時間であり、縦軸は降伏電圧の変化量である。通電試験の詳細は上述した図4の場合と同様であり、各サンプルに対して20mAの電流を通電し、各経過時間(0、20、60、100時間)における降伏電圧を測定した。降伏電圧の測定時においては、各サンプルに対し、逆方向に10μAの電流を通電した。
【0030】
図5のグラフから判るように、p型拡散制御層の膜厚を薄くしても降伏電圧の変化がほとんどなかった。このことから、高い信頼性を有する半導体発光装置を得るためには、p型拡散制御層を挿入することが重要であることが判った。なお、p型拡散制御層の膜厚及びキャリア濃度は信頼性の向上に直接的に関与していないと考えられる。
【0031】
活性層とp型クラッド層の間にアンドープの半導体層(以下、アンドープ層と称する)を挿入することにより、上述した降伏電圧の経時変化を抑制することもできるが、アンドープ層を挿入すると半導体発光装置自体の直列抵抗が増加する。かかる直列抵抗の増加が起こると、半導体発光装置自体の印加電圧が大きくなり、消費電力及び信頼性の問題が発生してしまう。しかしながら、本発明の半導体発光装置10においては、p型拡散制御層はp型不純物(Zn)がドープされたAlInP層であるので低抵抗であり、消費電力及び信頼性の問題は生じない。
【0032】
以上から、本発明の半導体発光装置10はp型拡散制御層14を有することにより、降伏電圧の経時変化の抑制及び順方向電圧の低減を図ることができ、更には半導体発光装置ごとの特性ばらつきを低減することができる。
【0033】
次に、図6乃至図9を参照しつつ、上述した製造方法によって高い発光効率を有する半導体発光装置を製造することができることを説明する。
【0034】
図6は、活性層のキャリア濃度を変化させた場合における、各半導体発光装置の発光効率を示している。図6の横軸は活性層の平均キャリア濃度であり、縦軸は発光効率である。縦軸の発光効率は任意単位であって、平均キャリア濃度が5×1016cm-3のサンプルを基準(すなわち、1.0)としている。なお、横軸は対数表示である。
【0035】
図6から判るように、活性層の平均キャリア濃度が2.0×1016cm-3未満の領域においては、平均キャリア濃度が低下すると、発光効率も急峻に減少している。また、平均キャリア濃度が4.0×1016cm-3より高い領域おいて、平均キャリア濃度が上昇すると、発光効率も急峻に減少している。更に、平均キャリア濃度が2.0×1016cm-3〜4.0×1016cm-3の領域で安定した発光効率が得られ、かかる領域内に発光効率のピークがある。このことから、半導体発光装置ごとの発光効率のばらつきを低減し、且つ、高い発光効率を得るには、活性層の平均キャリア濃度を2×1016〜4×1016cm-3に調整する必要があることが判った。以下において、高い発光効率をえるために必要な活性層のキャリア濃度範囲をRaとして示す。
【0036】
図7は、上述したキャリア濃度が異なる4種類のサンプルごとの発光効率を示している。図7の横軸はp型拡散制御層の平均キャリア濃度であり、縦軸は発光効率である。縦軸の発光効率は任意単位であって、平均キャリア濃度が5×1016cm-3の時を基準(すなわち、1.0)としている。なお、横軸は対数表示である。
【0037】
図7から判るように、p型拡散制御層の平均キャリア濃度が1×1017cm-3未満になると、半導体発光装置の発光効率が急峻に減少していた。また、p型拡散制御層の平均キャリア濃度が1×1017cm-3以上のサンプルは、平均キャリア濃度が5×1016cm-3のサンプルの発光効率に対して約2倍以上の発光効率を示した。このようなp型拡散制御層の平均キャリア濃度及び発光効率の関係から、半導体発光装置の発光効率を高くし、且つ、そのばらつきを無くすためには、p型拡散制御層の平均キャリア濃度を1.0×1017cm-3以上にする必要があることが判る。以下において、高い発光効率をえるために必要なp型拡散制御層のキャリア濃度範囲をRcとして示す。
【0038】
図8は、上述した4種類のサンプルごとの活性層の平均キャリア濃度を示している。図8の横軸はp型拡散制御層の平均キャリア濃度であり、縦軸は活性層の平均キャリア濃度である。なお、横軸及び縦軸は対数表示である。
【0039】
図8から判るように、図7のp型拡散制御層の平均キャリア濃度が最適な範囲Rcから外れていたサンプル(p型拡散制御層の平均キャリア濃度が5×1016cm-3)は、活性層の平均キャリア濃度も活性層の平均キャリア濃度が最適な範囲Raから外れていた。一方、平均キャリア濃度が1×1017、3×1017及び1×1018cm-3の3種類のサンプルは、活性層の平均キャリア濃度も最適な範囲Ra内であった。このことから、p型拡散制御層の平均キャリア濃度を1×1017cm-3〜1×1018cm-3の範囲内に調整することで、活性層の平均キャリア濃度が最適な範囲Ra内になり、高い発光効率を有する半導体発光装置を製造することができることが判った。なお、p型拡散制御層の平均キャリア濃度を1×1018cm-3を超える濃度にすると、活性層の平均キャリア濃度の増加に伴い、活性層の平均キャリア濃度が最適な範囲Raから外れてしまうので、高い発光効率を有する半導体発光装置を製造することができない。また、p型拡散制御層の平均キャリア濃度を1×1018cm-3を超える濃度にすると、p型拡散制御層の表面状態を悪化させる。p型拡散制御層の表面状態が悪化すると、その後に積層されるp型クラッド層及びp型電流拡散層の表面状態も悪化するので、このような高濃度ドープは好ましくない。
【0040】
図9は、上述したp型拡散制御層の膜厚を薄くした4種類のサンプルごとの発光効率を示している。図9の横軸はp型拡散制御層の平均キャリア濃度であり、縦軸は発光効率である。縦軸の発光効率は任意単位であって、平均キャリア濃度が5×1016cm-3のサンプルを基準(すなわち、1.0)としている。なお、横軸は対数表示である。
【0041】
図9から判るように、p型拡散制御層の平均キャリア濃度が1×1017cm-3未満になると、発光効率が急峻に減少していた。また、p型拡散制御層の平均キャリア濃度が1×1017cm-3以上のサンプルは、p型拡散制御層の平均キャリア濃度が5×1016cm-3であるサンプルの発光効率に対して約1.3倍以上の発光効率を示した。このようなp型拡散制御層の平均キャリア濃度と発光効率との関係は、図7に示されている結果と同様である。図7及び図9の結果から、p型拡散制御層の膜厚を変更してもp型拡散制御層及び活性層のキャリア濃度は、高い発光効率を得るためのキャリア濃度範囲内にあることが判った。従って、高い発光効率を有する半導体発光装置を得るためには、p型拡散制御層及び活性層のキャリア濃度を上述したキャリア濃度範囲内に調整することが重要であることが判った。なお、p型拡散制御層の膜厚は発光効率の向上に直接的に関与していないと考えられる。
【0042】
以上から、高い発光効率を得るためには、p型拡散制御層からアンドープ活性層に拡散するZn濃度を調整することが重要である。具体的には、p型拡散制御層の平均キャリア濃度を1×1017〜1×1018cm-3に調整し、更に活性層の平均キャリア濃度を2×1016〜4×1016cm-3に調整することが必要である。本実施例においては、平均キャリア濃度が1×1017〜1×1018cm-3に調整されたp型拡散制御層14を形成し、その後にp型拡散制御層14を含む積層構造体22の成長温度よりも30℃〜100℃高い成長温度でp型電流拡散層16を形成している。このような成長温度の変化により、p型電流拡散層16の形成に伴ったZnの拡散が生じることになる。ここで、p型電流拡散層16からのZnの拡散はp型拡散制御層14によって制御されるので、アンドープ活性層21に所望のZn拡散(平均キャリア濃度が2×1016〜4×1016cm-3になる拡散)が生じることになる。従って、本実施例における半導体発光装置の製造方法によれば、高輝度の半導体発光装置を提供することができることになる。
【0043】
以上のように、本発明の半導体発光装置の製造方法は、n型GaAs基板11の上にn型クラッド層12、アンドープ活性層21、平均キャリア濃度が1×1017cm-3〜1×1018cm-3のp型拡散制御層14及びp型クラッド層15を順次成長して積層構造体22を形成する工程と、積層構造体22の成長温度より高い成長温度でp型電流拡散層16を成長し、p型拡散制御層14からアンドープ活性層21にZnを拡散させてアンドープ活性層21の平均キャリア濃度を2×1016cm-3〜4×1016cm-3に制御する(すなわち、アンドープ活性層21をZnがドープされた活性層13に変化する)第2導電型半導体層形成工程と、を有している。このように、活性層のキャリア濃度を制御することによって、高い発光効率を備えるとともに、降伏電圧の経時変化の抑制及び順方向電圧の低減を図ることができ、高輝度、且つ、高い信頼性を備える半導体発光装置を製造することができる。
【0044】
なお、上述した半導体装置10及びその製造方法は一例にすぎず、上記内容に限られることは無い。例えば、n型及びp型を入れ替えて半導体発光装置を製造しても良い。更に、成長用基板11は4°オフに限らず、例えば15°オフのものを使用しても良い。かかる場合にも、積層構造体22の成長温度より30〜100℃高い温度で、p型電流拡散層16を成長する。また、p型電流拡散層16にインジウム(In)を添加しても良い。更に、p型電流拡散層16の平均キャリア濃度は、1×1018〜5×1018cm-3の範囲内で調整することもできる。
【実施例2】
【0045】
第1の実施例においては、p型電流拡散層16のキャリア濃度がほぼ均一になるようにZnをドープしたが、p型電流拡散層16の膜厚が3μmよりも厚くなるとp型電流拡散層の形成時間が長くなり、Znの拡散量が増加してしまう。かかるZnの拡散量の増加により、p型拡散制御層14からアンドープ活性層21へのZnの拡散量が増加し、活性層13のキャリア濃度を最適な範囲Ra内に調整することが困難になる場合がある。以下に、p型電流拡散層の膜厚が3μmより厚い場合においても高い信頼性及び高い発光効率を有する半導体発光装置を図10及び図11を参照しつつ説明する。
【0046】
図10は、本発明の第2の実施例である半導体発光装置100の断面図である。図10に示されているように、半導体発光装置100は、成長用基板であるn型GaAs基板11の表面(主面)上に、n型クラッド層12、活性層13、p型拡散制御層14、p型クラッド層15及びp型電流拡散層101が順次積層されている。更に、半導体発光装置100は、n型GaAs基板11のn型クラッド層12が形成された表面とは逆側の面(すなわち、裏面)の全面にn側電極17、p型電流拡散層16上の中央部分にp側電極18を有している。
【0047】
半導体発光装置100は、第1の実施例である半導体発光装置10と比較して、p型電流拡散層101の部分のみが異なっており、その他の構成は同一である。以下においてp型電流拡散層101のみについて詳細に説明し、その他の構成の説明は省略する。
【0048】
図10に示されているように、p型電流拡散層101は、膜厚及びキャリア濃度が異なる4つの層から構成されている。具体的には、p型クラッド層上に第1拡散部101a、第2拡散部101b、第3拡散部101c及び接合部101dが順次積層されている。第1拡散部101aの膜厚は約100nm、第2拡散部101bの膜厚は900nm、第3拡散部101cの膜厚は9500nm、接合部101dの膜厚は500nmである。
【0049】
図11は、本実施例の半導体発光装置100におけるキャリア濃度分布(すなわち、Znの拡散状態)を示すグラフである。
【0050】
図11に示されているように、活性層13からp型クラッド層15までのキャリア濃度は、第1の実施例である半導体発光装置10と同様の分布になっている。半導体発光装置10と異なる部分は、p型電流拡散層101内でのキャリア濃度である。第1拡散部101aにおける平均キャリア濃度が約1×1018cm-3、第2拡散部101bにおける平均キャリア濃度が約1.5×1018cm-3、第3拡散部101cにおける平均キャリア濃度が約2×1018cm-3、接合部101dにおける平均キャリア濃度が約1×1019cm-3であり、p型電流拡散層101における平均キャリア濃度は約3×1018cm-3である。すなわち、p型電流拡散層101のキャリア濃度は、p型電流拡散層14の表面からp型電流拡散層14とp型クラッド層12との界面に近づくにつれて徐々に減少している。
【0051】
p型電流拡散層101内のZnプロファイルを図11のようにすることで、活性層13のキャリア濃度を2×1016cm-3〜4×1016cm-3に調整することが可能になる。かかる理由を以下に説明する。一般に、膜厚の最も厚い第3拡散部101cのZnの拡散が、p型電流拡散層101からp型クラッド層15への拡散量に最も影響している。しかしながら、第3拡散部101cのZnの拡散は、第3拡散部101cよりもキャリア濃度が低い第2拡散部101bによって抑制されてしまう。かかる第3拡散部101cにおけるZn拡散の抑制により、p型電流拡散層101からp型クラッド層15へのZnの拡散量が抑制され、活性層13のキャリア濃度を2×1016cm-3〜4×1016cm-3に調整することが可能になると考えられる。従って、図11に示されているように、p型電流拡散層101におけるキャリア濃度が、p型電流拡散層14の表面からp型電流拡散層14とp型クラッド層12との界面に近づくにつれて徐々に減少するように、第1拡散部101a、第2拡散部101b及び第3拡散部101cの膜厚及びZnドープ量を調整するこが重要になる。例えば、第1拡散部101aにおける平均キャリア濃度は1×1018〜5×1018cm-3、第2拡散部101bにおける平均キャリア濃度は1×1016cm-3〜5×1018cm-3、第3拡散部101cにおける平均キャリア濃度は1×1018cm-3〜5×1018cm-3の範囲内で調整することができる。なお、接合部101dは、p側電極18とのオーミック接触を得るために形成される層であるため、Znの拡散には影響はない。また、第3拡散部101cとp側電極18との間でオーミック接触を得ることができれば、接合部101dは不要である。
【0052】
なお、本実施例における半導体発光装置100の製造方法は、第1の実施例における半導体発光装置10の製造方法とほぼ同一であるので、その製造方法については省略する。第1の実施例の製造方法と比較して異なる部分は、p型電流拡散層101を上述した4層構造になるように、Znのドープ量を調整することである。
【0053】
本実施例における半導体発光装置100について、第1の実施例と同一の実験(通電試験、キャリア濃度と発光効率の関係調査)を実施したが、本実施例における半導体発光装置100においても第1の実施例と同一の効果が得られた。かかる理由を以下に説明する。本実施例における半導体発光装置100は、p型電流拡散層101内のキャリア濃度がp型電流拡散層101の表面からp型電流拡散層101とp型クラッド層15との界面に近づくにつれて減少し、更にp型拡散制御層14の平均キャリア濃度が1×1017cm-3〜1×1018cm-3の範囲内に調整されているので、活性層13の平均キャリア濃度を2×1016cm-3〜4×1016cm-3にすることが可能になる。従って、p型電流拡散層101の膜厚が3μmより厚い場合においても、半導体発光装置100は高い発光効率を有することになる。また、半導体発光装置100にはp型拡散制御層が含まれているので、半導体発光装置100は高い信頼性も有している。以上のことから、本実施例における半導体発光装置100も高輝度で、且つ高い信頼性を有している。
【実施例3】
【0054】
第1及び第2の実施例においては、成長用基板として用いたn型GaAs基板11を半導体発光装置の構成部材として残していたが、n型GaAs基板11を除去して異なる支持基板に積層構造体を貼り合わせても良い。このような場合の半導体発光装置及びその製造方法を第3の実施例とし、図12乃至18を参照しつつ、以下に説明する。
【0055】
先ず、ホウ素(B)が添加されたシリコン(Si)からなる支持基板121が準備される(図12(a))。次に、電子線加熱蒸着法によって支持基板121の両面に、金属層として第1の白金(Pt)層(表面白金族金属層)122及び第2のPt層(裏面白金族金属層)123が形成される(図12(b))。
【0056】
次に、電子線加熱蒸着法によって第2のPt層123上に、チタン(Ti)層124が形成される。更に、電子線加熱蒸着法によってTi層124上に、第1のNi層125が形成される(図12(c))。
【0057】
次に、電子線加熱蒸着法によって第1のNi層125上にAuSn半田層126が形成される(図12(d))。AuSn半田層126のAuとSnとの組成比は、重量比で約8:2、原子数比で約7:3である。本実施例においては、第1のNi層125とAuSn半田層126とから第1の接合金属層が形成されている。本工程の終了により、支持体部130の形成が完了する。
【0058】
次に、成長用基板としてn型GaAs基板11が準備される(図13(a))。続いて、n型GaAs基板11上にMOCVDにより、n型クラッド層12、活性層13、p型拡散制御層14、p型クラッド層15及びp型コンタクト層131が順次積層され、n型GaAs基板11上に発光動作層132が形成される(図13(b)、図14)。図14は、図13(b)の破線領域300の拡大図である。ここで、半導体成長層132は、第1の実施例の構造(図1参照)と同一であり、第1の実施例と同様の方法でn型GaAs基板11上に形成されるので、その説明は省略する。なお、第1の実施例のp型クラッド層15上に形成される層と、本実施例のp型クラッド層15上に形成される層とは名称が異なっているが、両層ともGa1-xInxP(0≦x<1)の材料から構成されている。これは、本実施例において、p型クラッド層15上に形成される層は、電極とのオーミック接触を得るために用いられた層だからである。
【0059】
次に、スパッタリングにより、半導体成長層132上に反射電極層として金−亜鉛(AuZn)層133が堆積される(図13(c))。AuZn層133は、半導体成長層132において発生した光を光取り出し面側に反射する。これにより、半導体発光素子の光取り出し効率を向上させることができる。
【0060】
次に、反応性スパッタリングにより、AuZn層133上に第1の窒化タンタル(TaN)層134が形成される。続いて、反応性スパッタリングにより、第1のTaN層134上にチタン−タングステン(TiW)層135が形成される。更に、反応性スパッタリングにより、TiW層135上に第2のTaN層136が形成される(図13(d))。第1のTaN層134、TiW層135及び、第2のTaN層136は、後述する接合部材(共晶材料)が拡散によってAuZn層133に侵入すること防止する
次に、電子線加熱蒸着法によって第2のTaN層136上に、第2のNi層137が形成される。更に、電子線加熱蒸着法によって第2のNi層137上に、Au層138が形成される(図13(e))。本実施例においては、第2のNi層137とAu層138とから第2の接合金属層が形成されている。本工程の終了により、発光体部140の形成が完了する。
【0061】
次に、支持体部130のAuSn半田層126と、発光体部140のAu層138と、が対向した状態で、支持体部130及び発光体部140が密着される。その後、密着した支持体部130及び発光体部140が窒素雰囲気下で熱圧着される(図15)。熱圧着の条件は、例えば、圧力が約1メガパスカル(MPa)、温度が約340℃、圧着時間が約10分間である。この熱圧着によって、AuSn半田層126が溶融し、第2のNi層137及びAu層138が、溶融しているAuSn半田層126に溶解する。更に、AuSn半田層126のAu及びSn及びAu層138のAuが、第1のNi層125及び第2のNi層137に拡散して吸収される。更に、溶融したAuSn半田層126が固化することにより、AuSnNiからなる接合層161が形成される。これにより支持体部130と発光体部140とが接合され、接合体170が形成される(図16)。
【0062】
次に、アンモニア水と過酸化水素水との混合液を用いたウエットエッチングにより、接合体170からn型GaAs基板11が除去される。n型GaAs基板11が除去されることにより、半導体成長層132の表面(が露出する(図17)。なお、n型GaAs基板11の除去は、ドライエッチング、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)、機械的研削など、又はこれらを組み合わせた方法によって行われても良い。
【0063】
次に、半導体成長層132上にレジストが塗布される。塗布されたレジストが所望の電極パターンになるように、パターンニングが施される。パターンニングされたレジストの開口部分に、電子線加熱蒸着法によって金・ゲルマニウム・ ニッケル(AuGeNi)が蒸着される。その後に、レジストを除去すること(リフトオフ法)で、所望の形状のAuGeNiが形成される。更に、AuGeNi及び接合体170に対して、窒素雰囲気下で約400℃の加熱処理が施される。これによってAuGeNiと半導体成長層132との合金化が図られ、半導体成長層132と良好なオーミック接合した外部接続電極181が形成される。本工程の終了により、半導体発光装置200が完成する(図18)。
【0064】
図18の破線領域400の拡大図を図19に示す。図19に示されているように、AuZn層133上にp型コンタクト層131、p型クラッド層15、p型拡散制御層14、活性層13及びn型クラッド層12がこの順序で積層されている。
【0065】
本実施例における製造方法によって製造される半導体発光装置200について、第1の実施例と同一の実験(通電試験、キャリア濃度と発光効率の関係調査)を実施したが、本実施例における半導体発光装置200においても第1の実施例と同一の効果が得られた。これは、貼り合わせ工程前におけるn型GaAs基板11上に半導体成長層132を形成する方法が、第1及び第2の実施例と同一だからである。すなわち、半導体成長層132の形成後に、n型GaAs基板11を除去する工程及び新たな支持基板(半導体基板)に貼り合わせる工程を経由しても、高輝度、且つ、高い信頼性を有す半導体発光装置を製造することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 半導体発光装置
11 n型GaAs基板
12 n型クラッド層
13 活性層
14 p型拡散制御層
15 p型クラッド層
16 p型電流拡散層
17 n側電極
18 p側電極
21 アンドープ活性層
22 積層構造体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光装置の製造方法であって、
成長用基板の上に第1導電型クラッド層、アンドープであって(AlxGa1-x)yIn1-yP(0≦x≦1、0<y≦1)からなる活性層、平均キャリア濃度が1×1017cm-3乃至1×1018cm-3であってAlxIn1-xP(0<x<1)からなる第2導電型拡散制御層及び第2導電型クラッド層を順次成長して積層構造体を形成する工程と、
前記積層構造体の成長温度より高い成長温度で第2導電型半導体層を成長し、前記第2導電型拡散制御層から前記活性層に第2導電型不純物を拡散させて前記活性層の平均キャリア濃度を2×1016cm-3乃至4×1016cm-3に制御する第2導電型半導体層形成工程と、を有することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記第2導電型半導体層の成長温度は、前記積層構造体の成長温度より30乃至100℃高いことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第2導電型半導体層は、Ga1-xInxP(0≦x<1)からなることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第2導電型半導体層の膜厚は3μm以下であって前記第2導電型半導体層の平均キャリア濃度が1×1018cm-3乃至5×1018cm-3であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第2導電型半導体層は3μmを超える膜厚を有し、前記第2導電型半導体層のキャリア濃度が前記第2導電型半導体層の表面から前記第2導電型半導体層と前記第2導電型クラッド層との界面に近づくにつれて減少し、且つ、前記第2導電型半導体層の平均キャリア濃度が1×1018cm-3乃至5×1018cm-3であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第2導電型半導体層上に接合部材を介して支持基板を貼り合わせるとともに、前記積層構造体から前記成長用基板を除去する工程を更に有することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1に記載の製造方法。
【請求項7】
半導体基板の上に形成された第1導電型クラッド層と、
前記第1導電型クラッド層の上に形成され、平均キャリア濃度が2×1016cm-3乃至4×1016cm-3であって(AlxGa1-x)yIn1-yP(0≦x≦1、0<y≦1)からなる活性層と、
前記活性上の上に形成され、平均キャリア濃度が1×1017cm-3乃至1×1018cm-3であってAlxIn1-xP(0<x<1)からなる第2導電型拡散制御層と、
前記第2導電型拡散制御層の上に形成された第2導電型クラッド層と、
前記第2導電型クラッド層の上に形成されたGa1-xInxP(0≦x<1)からなる第2導電型半導体層と、有することを特徴とする半導体発光装置。
【請求項8】
前記活性層、前記第2導電型拡散制御層、前記第2導電型クラッド層及び前記第2導電型半導体層におけるキャリア濃度は、前記第2導電型半導体層から前記活性層に向かうにつれて減少していることを特徴とする請求項7に記載の半導体発光装置。
【請求項9】
前記第2導電型半導体層の膜厚は3μm以下であって、前記第2導電型半導体層の平均キャリア濃度が1×1018cm-3乃至5×1018cm-3であることを特徴とする請求項8に記載の半導体発光装置。
【請求項10】
前記第2導電型半導体層は3μmを超える膜厚を有し、前記第2導電型半導体層のキャリア濃度が前記第2導電型半導体層の表面から前記第2導電型半導体層と前記第2導電型クラッド層との界面に近づくにつれて減少し、且つ、前記第2導電型半導体層の平均キャリア濃度が1×1018cm-3乃至5×1018cm-3であることを特徴とする請求項8に記載の半導体発光装置。
【請求項1】
半導体発光装置の製造方法であって、
成長用基板の上に第1導電型クラッド層、アンドープであって(AlxGa1-x)yIn1-yP(0≦x≦1、0<y≦1)からなる活性層、平均キャリア濃度が1×1017cm-3乃至1×1018cm-3であってAlxIn1-xP(0<x<1)からなる第2導電型拡散制御層及び第2導電型クラッド層を順次成長して積層構造体を形成する工程と、
前記積層構造体の成長温度より高い成長温度で第2導電型半導体層を成長し、前記第2導電型拡散制御層から前記活性層に第2導電型不純物を拡散させて前記活性層の平均キャリア濃度を2×1016cm-3乃至4×1016cm-3に制御する第2導電型半導体層形成工程と、を有することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記第2導電型半導体層の成長温度は、前記積層構造体の成長温度より30乃至100℃高いことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第2導電型半導体層は、Ga1-xInxP(0≦x<1)からなることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第2導電型半導体層の膜厚は3μm以下であって前記第2導電型半導体層の平均キャリア濃度が1×1018cm-3乃至5×1018cm-3であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第2導電型半導体層は3μmを超える膜厚を有し、前記第2導電型半導体層のキャリア濃度が前記第2導電型半導体層の表面から前記第2導電型半導体層と前記第2導電型クラッド層との界面に近づくにつれて減少し、且つ、前記第2導電型半導体層の平均キャリア濃度が1×1018cm-3乃至5×1018cm-3であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第2導電型半導体層上に接合部材を介して支持基板を貼り合わせるとともに、前記積層構造体から前記成長用基板を除去する工程を更に有することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1に記載の製造方法。
【請求項7】
半導体基板の上に形成された第1導電型クラッド層と、
前記第1導電型クラッド層の上に形成され、平均キャリア濃度が2×1016cm-3乃至4×1016cm-3であって(AlxGa1-x)yIn1-yP(0≦x≦1、0<y≦1)からなる活性層と、
前記活性上の上に形成され、平均キャリア濃度が1×1017cm-3乃至1×1018cm-3であってAlxIn1-xP(0<x<1)からなる第2導電型拡散制御層と、
前記第2導電型拡散制御層の上に形成された第2導電型クラッド層と、
前記第2導電型クラッド層の上に形成されたGa1-xInxP(0≦x<1)からなる第2導電型半導体層と、有することを特徴とする半導体発光装置。
【請求項8】
前記活性層、前記第2導電型拡散制御層、前記第2導電型クラッド層及び前記第2導電型半導体層におけるキャリア濃度は、前記第2導電型半導体層から前記活性層に向かうにつれて減少していることを特徴とする請求項7に記載の半導体発光装置。
【請求項9】
前記第2導電型半導体層の膜厚は3μm以下であって、前記第2導電型半導体層の平均キャリア濃度が1×1018cm-3乃至5×1018cm-3であることを特徴とする請求項8に記載の半導体発光装置。
【請求項10】
前記第2導電型半導体層は3μmを超える膜厚を有し、前記第2導電型半導体層のキャリア濃度が前記第2導電型半導体層の表面から前記第2導電型半導体層と前記第2導電型クラッド層との界面に近づくにつれて減少し、且つ、前記第2導電型半導体層の平均キャリア濃度が1×1018cm-3乃至5×1018cm-3であることを特徴とする請求項8に記載の半導体発光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−199381(P2010−199381A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43859(P2009−43859)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
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