説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】歩留り良く製造可能で、かつ高い信頼性を有する半導体装置とその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、第1の層間絶縁膜1に形成された第1の配線溝内にバリアメタル3、シード膜4および配線材料膜5からなる第1の配線を形成する工程と、第1の層間絶縁膜1上に第2の層間絶縁膜7を形成した後に第2の層間絶縁膜7内にビアホール8および第2の配線溝9を形成し、配線材料膜5を露出させる工程と、半導体装置上にバリアメタル10aを形成する工程と、リスパッタリングなどにより配線材料膜5上のバリアメタル10aを除去した後、配線材料膜5上にバリアメタル21を形成する工程とを含む。リスパッタリングによって配線材料膜5上に形成されたシード膜4中の不純物金属の酸化膜13を除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝埋め込み構造の金属配線を有する半導体装置の構造及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デバイスの配線ピッチの縮小化が進み、配線の信頼性を確保することがますます重要になってきている。このために、配線材料として用いられる銅に様々な元素を添加して信頼性を向上させる検討がなされるようになってきている。
【0003】
以下、埋め込み配線を有する従来の半導体装置について説明する。図6(a)〜(i)は、従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0004】
まず、図6(a)に示すように、リソグラフィ工程とエッチング工程とを行って、基板(図示せず)上に設けられた低誘電率材料からなる第1の層間絶縁膜101に第1の配線溝102を形成する。次に、前処理として280℃の水素雰囲気中で60秒間基板(半導体装置)のアニーリングを行って半導体装置の表面に生じた酸化物の還元処理をした後、バリアメタル103として厚さ5nmの窒化タンタル膜と、厚さ10nmのタンタル膜とを第1の層間絶縁膜101上に順次形成する。ここで、バリアメタル103は、配線材料である銅がその周囲の第1の層間絶縁膜101中に拡散するのを防止するための金属膜である。
【0005】
続いて、図6(b)に示すように、バリアメタル103上に厚さ40nmのシード膜104を形成する。ここで、シード膜104の材料としては、Alを1%含有する銅を用いる。銅の中に金属を添加するのはエレクトロマイグレーション耐性やストレスマイグレーション耐性等を向上させ、半導体装置の信頼性を向上させるためである。
【0006】
次いで、第1の配線溝102を埋める銅膜105をメッキ法によりシード膜104上に形成した後、図6(c)に示すように、化学的機械的研磨(CMP)により銅膜105、シード膜104およびバリアメタル103を研磨して第1の配線溝102内にのみバリアメタル103、シード膜104および銅膜105を残す。これにより、第1の配線が形成される。
【0007】
次に、図6(d)に示すように、第1の配線を含む第1の層間絶縁膜101上に厚さ約60nmのライナー膜106を形成する。ここで、ライナー膜106は、後工程で形成される第2の層間絶縁膜に配線中の銅が拡散するのを防止するためのものであり、層間絶縁膜材料と比較して比誘電率の高い窒化シリコン膜、シリコン炭化膜等などにより構成される。
【0008】
次に、図6(e)に示すように、低誘電率材料からなる第2の層間絶縁膜107をライナー膜106上に形成する。
【0009】
次いで、図6(f)に示すように、リソグラフィ工程とエッチング工程とを繰り返すことにより、第2の層間絶縁膜107内に銅膜105に達するビアホール108と、ビアホール108が開口する第2の配線溝109とを形成する。
【0010】
次に、図6(g)に示すように、前処理として280℃の水素雰囲気中で60秒間半導体装置のアニール処理を行い、半導体装置表面に形成された酸化物の除去を行った後、バリアメタル110として厚さ5nm窒化タンタル膜と、厚さ10nmのタンタル膜とを順次ビアホール108および第2の配線溝109の内面を含む第2の層間絶縁膜107上に形成する
続いて、図6(h)に示すように、バリアメタル110上に厚さ約40nmのシード膜111を形成する。ここでもシード膜111の材料としては、シード膜104と同様にAlを1%含有する銅を用いる。銅の中に金属を添加するのはエレクトロマイグレーションやストレスマイグレーションに対する耐性を高め、半導体装置の信頼性を向上させるためである。
【0011】
次に、図6(i)に示すように、第2の配線溝109およびビアホール108とを埋める銅膜112をメッキ法によりシード膜111の上に形成した後、CMPによりバリアメタル110、シード膜111および銅膜112を研磨して、第2の配線溝109およびビアホール108の内部にのみバリアメタル110、シード膜111および銅膜112を残す。このようにしてプラグおよび第2の配線を形成する。
【非特許文献1】Thin Solid Films,25(1975)531-544
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記した従来の半導体装置の構造及び製造方法では、プラグと配線との間の抵抗値が上昇する場合があり、半導体デバイスの歩留りが低下してしまうという不具合があった。
【0013】
図7は、従来の方法により多層の埋め込み配線を形成した場合のビア抵抗値の累積度数分布を示す図である。
【0014】
設計上は、ビア抵抗値は、すべて2×107Ω以下であるべきである。しかし、図7に示す結果では、ビア抵抗値の分布がブロードになり、且つビア抵抗が上昇していることがわかる。本願発明者らはこの原因について種々の検討を加えた結果、ビア抵抗の上昇は、銅配線上に形成されたAl酸化物の除去が不十分であることに起因することを見いだした。
【0015】
図8は、従来の方法において、配線−プラグ間抵抗が上昇する推定メカニズムを示す図である。従来の製造方法を用いた場合、第1の配線を形成後に加わる熱によって、シード膜104中に含まれるAlが銅膜105中に拡散し、Cu−Al合金を形成する。特に、ビアホール108の形成後には、大気中の酸素と結合し、Cu酸化物だけでなく、Al酸化物が銅膜105の上面上およびシード膜104の上端面上に形成されているのではないかと推定される。Al酸化物はCu酸化物に比べて非常に分子間の結合エネルギーが強いので、バリアメタル110を形成する前に行う水素雰囲気中でのアニーリングでは還元できない。そのため、第1の配線上に形成されたAl酸化膜13を除去することができず、配線−プラグ間の抵抗値が上昇したものと考えられる。
【0016】
本発明はこれらの不具合を解決するもので、歩留り良く製造可能で、かつ高い信頼性を有する半導体装置とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために研究を重ねたところ、シード膜に添加された金属が配線材料膜(銅膜)の上面上で酸化物を形成し、その除去が十分に実施できていないことが判明した。そのため、本発明では、金属酸化膜を除去する工程を導入する。
【0018】
すなわち、本発明の半導体装置は、基板上に形成された第1の層間絶縁膜と、前記第1の層関絶縁膜に形成された少なくとも1種類の金属を含有する第1の配線材料膜を含む第1の配線と、前記第1の配線を含む前記第1の層間絶縁膜の上に形成され、且つ前記第1の配線材料膜を露出させる溝が形成された第2の層間絶縁膜と、前記第1の配線材料膜の上端面と前記第2の層間絶縁膜との間に形成された前記金属の酸化膜と、前記溝に形成されたバリアメタルと第2の配線材料膜を含む第2の配線とを備えている。
【0019】
このように、第1の配線材料膜上のうち、第2の層間絶縁膜と重ならない領域に金属酸化膜が形成されていなければ、ビアホールを埋めるプラグと配線との間に生じる電気抵抗の上昇を抑えることができる。なお、シード膜の上端面上に金属酸化膜が残っても、この部分は電流経路ではないため問題はない。
【0020】
本発明の第1の半導体装置の製造方法は、基板上に形成された第1の層間絶縁膜に第1の配線材料膜を形成する工程(a)と、前記第1の配線材料膜を含む前記第1の層間絶縁膜の上に第2の層間絶縁膜を形成する工程(b)と、前記第2の層間絶縁膜に第1の配線材料膜を露出させる溝を形成する工程(c)と、前記溝を覆うようにバリアメタルを形成する工程(d)と、前記バリアメタルのうち前記第1の配線材料膜上に設けられた部分と前記第1の配線材料の一部を除去して前記第1の配線材料膜の上部に凹部を形成する工程(e)と、前記溝及び前記凹部を埋めるように第2の配線材料膜を形成する工程(f)とを備え、前記第1の配線材料膜には少なくとも1種類以上の金属を含有しており、前記工程(a)及び(c)において、前記第1の配線材料膜の上面上には前記金属の酸化膜が形成されており、前記工程(e)では、前記第1の配線材料膜の上面上に形成された前記金属の酸化膜のうち露出する部分を除去する。
【0021】
この方法により、第1の配線材料膜上に形成された金属酸化膜が除去されるので、プラグ−配線間の抵抗値を従来に比べて低減することが可能となる。
【0022】
本発明の第2の半導体装置の製造方法は、基板上に形成された第1の層間絶縁膜に第1の配線材料膜を形成する工程(a)と、前記第1の配線材料膜を含む前記第1の層間絶縁膜の上に第2の層間絶縁膜を形成する工程(b)と、前記第2の層間絶縁膜に第1の配線材料膜を露出させる溝を形成する工程(c)と、前記第1の配線材料膜に対して水素プラズマ処理を行う工程(d)と、前記工程(d)の後に前記溝を覆うようにバリアメタルを形成する工程(e)と、前記工程(e)の後に、前記溝を埋めるように第2の配線材料膜を形成する工程(f)とを備え、前記第1の配線材料膜には少なくとも1種類以上の金属を含有しており、前記工程(a)及び(c)において、前記第1の配線材料膜の上面上には前記金属の酸化膜が形成されており、前記工程(d)では、前記第1の配線材料膜の上面上に形成された前記金属の酸化膜のうち露出する部分を除去する。
【0023】
このように、金属の酸化膜が第1の配線材料膜から除去された上でバリアメタルが形成されることにより、プラグ−配線間の抵抗値を従来に比べて低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明の半導体装置の製造方法によれば、配線用金属に比べて酸素との結合エネルギーが強い金属をシード膜に添加してもプラグ−配線間の抵抗値の上昇を抑制できるので、信頼性の高い半導体装置を歩留まり良く生産することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1の実施形態)
図1(a)〜(f)および図2(a)〜(e)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0026】
まず、図1(a)に示すように、リソグラフィ工程によってレジストを形成し、そのレジストをマスクとしてエッチングを行うことにより、基板(図示せず)上に設けられた低誘電率材料からなる第1の層間絶縁膜1に第1の配線溝2を形成する。次に、前処理として280℃の水素雰囲気中で60秒間基板(半導体装置)のアニーリングを行って半導体装置の表面に生じた酸化物の還元処理をした後、バリアメタル3として厚さ5nmの窒化タンタル膜と、厚さ10nmのタンタル膜とをスパッタリング等により形成する。ここで、バリアメタル3は、配線材料である銅がその周囲の第1の層間絶縁膜1中に拡散するのを防止するための金属膜である。
【0027】
次に、図1(b)に示すように、バリアメタル3上に厚さ40nmのシード膜4をスパッタリング等により形成する。ここで、シード膜4の材料としては、Alを1%含有する銅を用いる。銅の中に金属を添加するのはエレクトロマイグレーション耐性やストレスマイグレーション耐性等を強化し、半導体装置の信頼性を向上させるためである。
【0028】
次いで、第1の配線溝2を埋める銅膜5をメッキ法によりシード膜4上に形成した後、図1(c)に示すように、CMPにより銅膜5、シード膜4およびバリアメタル3を研磨して第1の配線溝2内にのみバリアメタル3、シード膜4および銅膜5を残す。これにより、第1の配線が形成される。ここで、本工程においてシード膜4に含まれるAlが銅膜5に拡散し、大気中の酸素によって酸化されるため、シード膜4の上端面上に薄いAl23膜からなるAl酸化膜13が形成される。
【0029】
次に、図1(d)に示すように、第1の配線および第1の層間絶縁膜1上に厚さ約60nmのライナー膜6をCVD法などにより形成する。ここで、ライナー膜6は、後工程で形成される第2の層間絶縁膜に第1の配線中の銅が拡散するのを防止するためのものであり、層間絶縁膜材料と比較して比誘電率の高い窒化シリコン膜、シリコン炭化膜により構成される。なお、ライナー膜6を形成する際に熱が加わるため、シード膜4中のAlは銅膜5の上面付近にまで拡散する。そのため、銅膜5の上面上にも薄いAl酸化膜13が形成される。
【0030】
次いで、図1(e)に示すように、低誘電率材料からなる第2の層間絶縁膜7をCVD法などによりライナー膜6上に形成する。第2の層間絶縁膜7を形成する際に加わる熱によっても銅膜5中にAlが拡散する。
【0031】
次に、図1(f)に示すように、リソグラフィ工程とエッチング工程とを繰り返すことにより、第2の層間絶縁膜7内に銅膜5に達するビアホール8と、ビアホール8が開口する第2の配線溝9とを形成する。また、ライナー膜6に開口部18を形成する。本工程において、銅膜5の上面は露出することになるので、銅膜5の上面上に形成されるAl酸化膜13はさらに厚くなる。ここでは、他の工程よりも多量のAl酸化物が形成される。
【0032】
続いて、図2(a)に示すように、前処理として280℃の水素雰囲気中で60秒間半導体装置のアニーリングを行い、半導体装置表面に生じた酸化物の還元処理を行う。ここで、Al酸化物はCu酸化物に比べて分子間の結合エネルギーが非常に強いので、アニーリングによってはAl酸化膜13を十分に還元することはできない。その後、バリアメタル10aとして厚さ5nmの窒化タンタル膜と、厚さ10nmのタンタル膜とを順次形成する。
【0033】
これに引き続き、図2(b)に示すように、バリアメタル10aの形成と同一反応室内にて、Arによるリスパッタリングを行いバリアメタル10aのうち銅膜5の上方に設けられた部分と、Al酸化膜13のうちバリアメタル10aと接していた部分(ビアホール8の直下方に設けられた部分)とを除去する。この際に、銅膜5の一部も削られて下に凸な形状の凹部20が形成される。
【0034】
次に、図2(c)に示すように、銅膜5の露出部分(すわわち凹部20の内面)およびバリアメタル10a上にバリアメタル21として厚さ5nmのタンタル膜をスパッタリング等により形成する。
【0035】
続いて、図2(d)に示すように、スパッタリング等によってバリアメタル10a、21上に厚さ40nmのシード膜11を形成する。ここでもシード膜11の材料としては、シード膜4と同様にAlを1%含有する銅を用いる。銅の中に金属を添加するのはエレクトロマイグレーション耐性やストレスマイグレーション耐性等を強化して半導体装置の信頼性を向上させるためである。
【0036】
次に、図2(e)に示すように、第2の配線溝9、ビアホール8および開口部18および凹部20を埋める銅膜12をメッキ法によりシード膜11の上に形成した後、CMPにより第2の層間絶縁膜7の上面が露出するまでバリアメタル10a、シード膜11および銅膜12を研磨して第2の配線溝9、開口部18、ビアホール8および凹部20の内面上に設けられたバリアメタル10、シード膜11および銅膜12からなるプラグおよび第2の配線を形成する。ここで、図2(e)に示すバリアメタル10は、バリアメタル10aのうち第2の配線溝9およびビアホール8の内面上に設けられた部分とバリアメタル21とを合わせた部分を指している。以上のようにして、本実施形態の埋め込み配線は形成される。
【0037】
本実施形態の方法によって作製される半導体装置は、図2(e)に示すように、シリコンなどからなる基板上に設けられ、第1の配線溝2が形成された低誘電率材料からなる第1の層間絶縁膜1と、第1の配線溝2の内面上に設けられ、例えば窒化タンタル膜とタンタル膜とにより構成されるバリアメタル3と、バリアメタル3上に設けられ、例えば1wt%のAlを含む銅(配線用金属)からなるシード膜4と、シード膜4上に設けられ、第1の配線溝2に埋め込まれ、上面部に凹部20が形成された銅膜(第1の配線材料膜)5と、第1の層間絶縁膜1上に設けられ、凹部20の直上に位置する領域に開口部18が形成された絶縁膜からなるライナー膜6と、シード膜4および銅膜5の上端面とライナー膜6との間に形成されたAl酸化膜13とを備えている。また、本実施形態の半導体装置は、ライナー膜6の開口部18に向かって一端が開口するビアホール8と、ビアホール8の他端が開口する第2の配線溝9とが形成された低誘電率材料からなる第2の層間絶縁膜7と、第2の配線溝9、ビアホール8、開口部18および凹部20の内面上に設けられ、例えば窒化タンタル膜とタンタル膜とにより構成されるバリアメタル10と、バリアメタル10上に設けられ、例えば1wt%のAlを含む銅からなるシード膜11と、シード膜11上に設けられ、第2の配線溝9、ビアホール8、開口部18および凹部20に埋め込まれた銅膜(第2の配線材料膜)12とを備えている。第2の配線溝の幅は例えば0.1μmであり、深さは例えば0.15μmである。
【0038】
上述のように、従来の配線形成方法では、銅配線上に形成されたAl酸化物の除去が不十分であったため、配線−プラグ間抵抗が上昇していた。
【0039】
これに対し、本実施形態の製造方法においては、図2(b)に示す工程でバリアメタル10aの形成後にリスパッタリングを行ってバリアメタル10aの一部とともに銅膜5の上に形成されたAl酸化物を除去する。そのため、配線とプラグとの間の電流伝達経路に形成された絶縁性のAl酸化物が除去されるので、配線とプラグとの間の抵抗を低減することができる。なお、図3に示すように、銅膜5およびシード膜4の上端面とライナー膜6との間にはAl酸化膜が残されているが、この部分は電流伝達経路ではないので問題はない。このように、本実施形態の方法によれば、配線−プラグ間の抵抗値の上昇を抑え、且つエレクトロマイグレーションやストレスマイグレーションの発生が抑制された半導体装置を歩留まり良く製造することが可能となる。
【0040】
なお、本実施形態の半導体装置においては、シード膜4、11の材料としてAlを1%添加した銅を用いた例を示したが、Alの添加量がいかなる場合でもAl酸化物を除去することにより配線−プラグ間での電気抵抗の低減を達成できる。また、シード膜4、11に添加される金属はAlに限らず、銅に比べて酸素との結合エネルギーが大きい金属であればよい。例えば、Mg、Zn、Fe、Sn、Ti等がシード膜4、11に添加され得る。また、銅よりも酸素との結合エネルギーが大きい金属が2種類以上シード膜材料(銅など)に添加されていてもよい。
【0041】
また、本実施形態の製造方法は、第2の配線においてシード膜11が銅のみで構成されている場合にも有効である。
【0042】
また、上述の説明では2つの埋め込み配線を形成する例を挙げたが、同様の配線形成工程を繰り返すことによってさらに多層の配線を形成することができる。
【0043】
なお、本実施形態の半導体装置では、層間絶縁膜の材料としてSiOCなどからなる低誘電率材料が用いられたが、通常の酸化シリコンで用いられる場合にも本実施形態の方法は適用できる。
【0044】
また、配線材料は銅を用いることが最も好ましいが、電気抵抗が小さい金属であれば銅以外を用いてもよい。
【0045】
(第2の実施形態)
図4(a)〜(i)は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。本実施形態の製造方法においては、第1の実施形態の製造方法と第1の配線上に形成されたAl酸化物を除去する方法が異なっている。
【0046】
まず、図4(a)に示すように、リソグラフィ工程によってレジストを形成し、そのレジストをマスクとしてエッチングを行うことにより、基板(図示せず)上に設けられた低誘電率材料からなる第1の層間絶縁膜1に第1の配線溝2を形成する。次に、前処理として280℃の水素雰囲気中で60秒間基板(半導体装置)のアニーリングを行って半導体装置の表面に生じた酸化物の還元処理をした後、バリアメタル3として厚さ5nmの窒化タンタル膜と、厚さ10nmのタンタル膜とをスパッタリング等により形成する。ここで、バリアメタル3は、配線材料である銅がその周囲の第1の層間絶縁膜1中に拡散するのを防止するための金属膜である。
次に、図4(b)に示すように、バリアメタル3上に厚さ40nmのシード膜4をスパッタリング等により形成する。ここで、シード膜4の材料としては、Alを1wt%含有する銅を用いる。銅の中に金属を添加するのはエレクトロマイグレーション耐性やストレスマイグレーション耐性等を強化し、半導体装置の信頼性を向上させるためである。
【0047】
次いで、第1の配線溝2を埋める銅膜5をメッキ法によりシード膜4上に形成した後、図4(c)に示すように、CMPにより銅膜5、シード膜4およびバリアメタル3を研磨して第1の配線溝2内にのみバリアメタル3、シード膜4および銅膜5を残す。これにより、第1の配線が形成される。ここで、本工程においてシード膜4に含まれるAlが銅膜5に拡散し、大気中の酸素によって酸化されるため、シード膜4の上端面上に薄いAl23膜からなるAl酸化膜13が形成される。
【0048】
次に、図4(d)に示すように、第1の配線および第1の層間絶縁膜1上に厚さ約60nmのライナー膜6をCVD法などにより形成する。ここで、ライナー膜6は、後工程で形成される第2の層間絶縁膜に第1の配線中の銅が拡散するのを防止するためのものであり、層間絶縁膜材料と比較して比誘電率の高い窒化シリコン膜、シリコン炭化膜等などにより構成される。また、ライナー膜6を形成する際に熱が加わるため、シード膜4中のAlが銅膜5の上面付近にまで拡散する。そのため、銅膜5の上面上にも薄いAl酸化膜13が形成される。
【0049】
次いで、図4(e)に示すように、低誘電率材料からなる第2の層間絶縁膜7をCVD法などによりライナー膜6上に形成する。第2の層間絶縁膜7を形成する際に加わる熱によっても銅膜5中にAlが拡散する。
【0050】
次に、図4(f)に示すように、リソグラフィ工程とエッチング工程とを繰り返すことにより、第2の層間絶縁膜7内に銅膜5に達するビアホール8と、ビアホール8が開口する第2の配線溝9とを形成する。また、ライナー膜6に開口部18を形成する。本工程において、銅膜5の上面は露出することになるので、銅膜5の上面上に形成されるAl酸化膜13はさらに厚くなる。ここでは、他の工程よりも多量のAl酸化物が形成される。その後、前処理として、半導体装置を280℃の水素プラズマ雰囲気中で60秒間処理し、半導体装置の表面に形成されたAl酸化物13を含む酸化物を除去する。これにより、銅膜5の上面上およびシード膜4の上端面上に形成されたAl酸化膜13のうち、ライナー膜6と接する部分、すなわち露出していない部分のみが残される。
【0051】
次に、図4(g)に示すように、バリアメタル10として厚さ5nmの窒化タンタル膜と厚さ10nmのタンタル膜とを順次形成する。なお、水素プラズマを用いた前処理と本工程とは真空中で連続して行われる。
【0052】
次いで、図4(h)に示すように、スパッタリングなどを用いてバリアメタル10の上に厚さ約40nmのシード膜11を形成する。ここでもシード膜11の材料として1wt%のAlを含む銅を用いる。
【0053】
次に、図4(i)に示すように、第2の配線溝9、ビアホール8および開口部18を埋める銅膜をメッキ法によりシード膜11aの上に形成した後、CMPにより第2の層間絶縁膜7の上面が露出するまでバリアメタル10、シード膜11および銅膜を研磨して第2の配線溝9、ビアホール8および開口部18の内面上に設けられたバリアメタル10、シード膜11および銅膜12からなる第2の配線を形成する。以上のようにして、本実施形態の埋め込み配線は形成される。
【0054】
本実施形態の方法によって作製される半導体装置は、図4(i)に示すように、シリコンなどからなる基板上に設けられ、第1の配線溝2が形成された低誘電率材料からなる第1の層間絶縁膜1と、第1の配線溝2の内面上に設けられ、例えば窒化タンタル膜とタンタル膜とにより構成されるバリアメタル3と、バリアメタル3上に設けられ、例えば1wt%のAlを含む銅からなるシード膜4と、シード膜4上に設けられ、第1の配線溝2に埋め込まれた銅膜5と、第1の層間絶縁膜1上に設けられ、平面的に見て銅膜5と重なる部分に開口部18が形成された絶縁膜からなるライナー膜6と、シード膜4および銅膜5の上端面とライナー膜6との間に形成されたAl酸化膜13とを備えている。また、本実施形態の半導体装置は、ライナー膜6の開口部18に向かって一端が開口するビアホール8と、ビアホール8の他端が開口する第2の配線溝9とが形成された低誘電率材料からなる第2の層間絶縁膜7と、第2の配線溝9、ビアホール8および開口部18の内面上に設けられ、例えば窒化タンタル膜とタンタル膜とにより構成されるバリアメタル10と、バリアメタル10上に設けられ、例えば1wt%のAlを含む銅からなるシード膜11と、シード膜11上に設けられ、第2の配線溝9、ビアホール8、開口部18に埋め込まれた銅膜12とを備えている。第2の配線溝の幅は例えば0.1μmであり、深さは例えば0.15μmである。
【0055】
次に、本実施形態の製造方法において、第2の配線のバリアメタル形成前に水素プラズマで処理を行った理由について説明する。
【0056】
図5は、本実施形態の半導体装置の製造方法の特徴を説明するための断面図である。従来の半導体装置の製造方法において配線−プラグ間の抵抗値が上昇する原因は、図8を用いて説明したとおり、銅膜の上面上に生じたAl酸化膜13であると推定される。従って、このAl酸化膜13を除去することが必要となる。
【0057】
【表1】

【0058】
表1に金属酸化物の除去速度を比較した結果を示す。従来の製造方法では、第2の配線のバリアメタル10a(図4(g)参照)形成前の前処理として水素アニールを用いたが、その方法ではCu酸化物は相応の除去速度を有しているのに対し、Al酸化物は約6分の1程度の除去速度しかなかった。これに対し、本実施形態の製造方法では水素プラズマを用いる。水素プラズマは酸化物を還元する能力が非常に強いので、Al酸化膜13を還元して除去することができると考えられる。現に、本実施形態の半導体装置では、配線−プラグ間の抵抗値の上昇を来さず、抵抗値も全て2×1017Ω以下で良好な抵抗値分布を示すことが確認されている。
【0059】
なお、本実施形態の半導体装置においては、シード膜4、11の材料としてAlを1%添加した銅を用いた例を示したが、Alの添加量がいかなる場合でもAl酸化物を除去することにより配線−プラグ間での電気抵抗の低減を達成できる。また、シード膜4、11に添加される金属はAlに限らず、銅に比べて酸素との結合エネルギーが大きい金属であればよい。例えば、Mg、Zn、Fe、Sn、Ti等がシード膜4、11に添加され得る。
【0060】
本実施形態では、第2の配線のバリアメタルを形成した後にリスパッタを行わない例について説明したが、バリアメタル形成前の水素プラズマ処理と第1の実施形態で説明した第1の配線の銅膜上に形成されたAl酸化膜13をリスパッタリングにより除去する処理とを組み合わせてもよい。このリスパッタリングにより、ビアホール8内面上のバリアメタルの膜厚を厚くしてエレクトロマイグレーション耐性やストレスマイグレーション耐性を向上させることもできる。
【0061】
また、本実施形態の製造方法は、第2の配線においてシード膜11が銅のみで構成されている場合にも有効である。
【0062】
また、上述の説明では2つの埋め込み配線を形成する例を挙げたが、同様の配線形成工程を繰り返すことによってさらに多層の配線を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の埋め込み配線構造は、一般的な半導体集積回路などに利用される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】(a)〜(f)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図2】(a)〜(e)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図3】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の特徴を説明するための断面図である。
【図4】(a)〜(i)は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図5】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の特徴を説明するための断面図である。
【図6】(a)〜(i)は、従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図7】従来の方法により多層の埋め込み配線を形成した場合のビア抵抗値の累積度数分布を示す図である。
【図8】従来の方法において、ビア抵抗が上昇する推定メカニズムを示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 第1の層間絶縁膜
2 第1の配線溝
3 バリアメタル
4、11、14 シード膜
5、12 銅膜
6 ライナー膜
7 第2の層間絶縁膜
8 ビアホール
9 第2の配線溝
10、10a、21 バリアメタル
13 Al酸化膜
18 開口部
20 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された第1の層間絶縁膜と、
前記第1の層関絶縁膜に形成された少なくとも1種類の金属を含有する第1の配線材料膜を含む第1の配線と、
前記第1の配線を含む前記第1の層間絶縁膜の上に形成され、且つ前記第1の配線材料膜を露出させる溝が形成された第2の層間絶縁膜と、
前記第1の配線材料膜の上端面と前記第2の層間絶縁膜との間に形成された前記金属の酸化膜と、
前記溝に形成されたバリアメタルと第2の配線材料膜を含む第2の配線とを備えていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記溝は、前記第1の配線材料膜に達するビアホールと、前記ビアホールに達する配線溝とからなることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の配線材料膜の上部には凹部が形成されており、
前記バリアメタルは前記凹部を覆っており、
前記前記第2の配線材料膜は前記凹部にも埋め込まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1の配線材料膜の上面は平坦であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1の層間絶縁膜と前記第2の層間絶縁膜の間に設けられ、前記第1の配線材料膜上に設けられた部分に開口部が形成されたライナー絶縁膜をさらに備え、
前記金属の酸化膜は、前記シード膜の上端面および前記第1の配線材料膜の上面と前記ライナー絶縁膜の下面との間に形成されており、
前記バリアメタルは前記開口部を覆っており、
前記第2の配線材料膜は前記開口部にも埋め込まれていることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1の配線材料膜及び第2の配線材料膜は銅であり、
前記金属は、前記第1の配線材料膜及び第2の配線材料膜よりも酸素との結合力が大きい金属であることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記金属は、Al、Mg、Zn、Fe、Sn、Tiのうちから選ばれた1つ以上の金属であることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
基板上に形成された第1の層間絶縁膜に第1の配線材料膜を形成する工程(a)と、
前記第1の配線材料膜を含む前記第1の層間絶縁膜の上に第2の層間絶縁膜を形成する工程(b)と、
前記第2の層間絶縁膜に第1の配線材料膜を露出させる溝を形成する工程(c)と、
前記溝を覆うようにバリアメタルを形成する工程(d)と、
前記バリアメタルのうち前記第1の配線材料膜上に設けられた部分と前記第1の配線材料の一部を除去して前記第1の配線材料膜の上部に凹部を形成する工程(e)と、
前記溝及び前記凹部を埋めるように第2の配線材料膜を形成する工程(f)とを備え、
前記第1の配線材料膜には少なくとも1種類以上の金属を含有しており、
前記工程(a)及び(c)において、前記第1の配線材料膜の上面上には前記金属の酸化膜が形成されており、
前記工程(e)では、前記第1の配線材料膜の上面上に形成された前記金属の酸化膜のうち露出する部分を除去することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記工程(e)は、リスパッタにより行うことを特徴とする請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
基板上に形成された第1の層間絶縁膜に第1の配線材料膜を形成する工程(a)と、
前記第1の配線材料膜を含む前記第1の層間絶縁膜の上に第2の層間絶縁膜を形成する工程(b)と、
前記第2の層間絶縁膜に第1の配線材料膜を露出させる溝を形成する工程(c)と、
前記第1の配線材料膜に対して水素プラズマ処理を行う工程(d)と、
前記工程(d)の後に前記溝を覆うようにバリアメタルを形成する工程(e)と、
前記工程(e)の後に、前記溝を埋めるように第2の配線材料膜を形成する工程(f)とを備え、
前記第1の配線材料膜には少なくとも1種類以上の金属を含有しており、
前記工程(a)及び(c)において、前記第1の配線材料膜の上面上には前記金属の酸化膜が形成されており、
前記工程(d)では、前記第1の配線材料膜の上面上に形成された前記金属の酸化膜のうち露出する部分を除去することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記工程(c)は、前記第1の配線材料膜に達するビアホールを形成する工程(c1)と、前記ビアホールに達する配線溝を形成する工程(c2)とからなることを特徴とする請求項8〜10のうちいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項12】
前記工程(a)の後、前記工程(b)の前に、前記第1の層間絶縁膜の上にライナー絶縁膜を形成する工程をさらに備え、
前記工程(b)では、前記ライナー絶縁膜の上に前記第2の層間絶縁膜を形成し、
前記工程(c)では、前記ライナー絶縁膜のうち前記第1の配線材料膜上に設けられた部分に開口部を形成することを特徴とする請求項8〜11のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1の配線材料膜及び第2の配線材料膜は銅であり、
前記金属は、前記第1の配線材料膜及び第2の配線材料膜よりも酸素との結合力が大きい金属であることを特徴とする請求項8〜12のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記金属は、Al、Mg、Zn、Fe、Sn、Tiのうちから選ばれた1つ以上の金属であることを特徴とする請求項13に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−180407(P2007−180407A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−379311(P2005−379311)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】