説明

半導体装置の検査方法および装置

【課題】走査顕微鏡像の空間分解能を向上させる手段の提供
【解決手段】レーザ光として、基準信号に同期した変調信号に基づいて強度変調された変調レーザ光をICチップ110に照射し、磁束計120からの磁場信号を受け変調周波数と同じ周波数成分の信号を抽出する検波器130と、前記検波された信号から磁場分布の像を表示する手段140と、を備え、前記変調信号の周波数が100kHzよりも高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊検査装置と検査方法に関し、特に、磁場検出器を用いた顕微鏡による導体装置の故障箇所の絞込みに好適な装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ等の試料の非破壊検査として、走査レーザSQUID(Superconducting Quantum Interference Device;超伝導量子干渉素子)顕微鏡を用いた検査法が知られている。走査レーザSQUID顕微鏡は、ある種の欠陥ではレーザを欠陥部あるいはその関連箇所に照射した際に電流が流れ、電流により誘起される磁場をSQUID磁束計で検出し、レーザあるいは試料を走査することにより像を得るものである(非特許文献1)。試料としての半導体基板にレーザビームを照射すると、レーザビームの照射で発生した電子・正孔対がpn接合部等の電界により電流となり、これをOBIC(Optical Beam Induced Current)電流という。あるいは、レーザビームを照射加熱の際に、欠陥等により温度勾配の不均衡が生じ、熱電効果により流れる電流もある(非特許文献1、特許文献1等参照)。
【0003】
なお、走査レーザSQUID顕微鏡法において実用的なS/N(信号対ノイズ比)を得るためには、レーザに変調をかけ、検出される磁場信号の中から変調周波数と同じ周波数の信号だけを取り出す(検波)方法が取られている。非特許文献1では、この変調周波数の選択基準として、環境ノイズが少ない周波数を選ぶことが開示されており、具体的には8.3kHzを選んでいる。一方、非特許文献2では、走査レーザSQUID顕微鏡法像を取得する時間を短縮するために従来の最大10kHzのシステムを改良して最大100KHzまで可能なシステムを構築したことが、開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−313859号公報
【非特許文献1】二川 清、井上 彰二 ”走査レーザSQUID顕微鏡の試作・評価と故障・不良解析および工程モニタへの応用提案 −完全非接触・非破壊の新解析手法−” LSIテスティングシンポジウム/2000 会議録(H12.11.9-10)、第203-208頁
【非特許文献2】二川 清、中山 英夫 ”ウェハ裏面観察でサブミクロンの空間分解能を有する走査レーザSQUID顕微鏡の試作” LSIテスティングシンポジウム/2002 会議録(H14.11.7-8)、第275-280頁
【非特許文献3】酒井 哲哉、二川 清、”完成チップ作りこみ不良品の走査レーザSQUID顕微鏡による観察” LSIテスティングシンポジウム/2004 会議録(H16.11.10-12)、第341-345頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
走査レーザSQUID顕微鏡による検査手法で得られる像は、レーザ照射によるp−n接合等の光電流発生箇所を示すものであるが、従来の検査手法では、特別な場合を除くと、この個所(レーザ照射によるp−n接合等の光電流発生箇所)は、ぼけて見えており、光学顕微鏡の像と比べると、特段に空間分解能が劣る像しか得られていない、という課題がある。
【0006】
このため、従来の検査手法では、故障発生箇所の絞り込み精度は、例えば、非特許文献3に示されるように、高々、100マイクロメータ程度であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、レーザの変調周波数を、従来手法より高くすることで、上記課題を解決する、全く新規な手法を提供するものである。
【0008】
例えば従来は最大で100kHzであったものを100kHzより高い周波数で変調をかけ、走査レーザSQUID顕微鏡法像を得る。
【0009】
本発明に係る方法は、レーザ光として、基準信号に同期した変調信号に基づいて強度変調された変調レーザ光を生成し、前記変調レーザ光で試料を走査するステップと、
磁場検出器で前記試料からの磁場を検出するステップと、
前記磁場検出器で検出された磁場信号のうち前記変調信号と同じ周波数成分の信号を検波し、検波された信号を、像表示用信号として出力するステップを含み、前記変調信号の周波数が100kHzよりも高い、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る装置は、100kHzよりも高い変調周波数で変調された変調レーザ光を試料に対して照射し、前記試料からの磁場を検出する磁場検出器からの磁場信号を受け、前記変調周波数と同じ周波数成分の信号を抽出する検波器と、前記検波器で抽出された信号を像表示信号として用いて表示する手段と、を備えている。
【0011】
本発明に係る装置は、レーザ光として、基準信号に同期した変調信号に基づいて強度変調された変調レーザ光を生成する変調ビーム生成部と、試料に変調レーザ光を照射する光学系と、磁場検出器と、前記変調レーザ光を前記試料に対して相対的に走査する走査手段と、前記磁場検出器からの磁場信号を受け前記変調周波数と同じ周波数成分の信号を抽出する検波器と、前記検波された信号から磁場分布の像を得る手段と、を備え、前記変調信号の周波数が100kHzよりも高い、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来法よりも高い空間分解能で走査像を取得することが可能となる。その理由は、後に詳述するように、変調周波数の一周期内で少数キャリアが拡散する距離は、周波数が高くなるほど短くなるためであると思料される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
上記した本発明についてさらに詳細に説述すべく添付図面を参照して以下に説明する。本発明においては、検査対象のサンプル(試料)とレーザビームの照射位置を相対的に移動させて試料を走査し、高感度磁場センサーにて磁場を検出し、磁場分布等の像を得る。図1は、本発明の検査方法を説明するための図である。
【0014】
本発明によれば、まず図1に示すように、ICチップ110の裏面から、特定の周波数で強度変調されたレーザビームを照射し、レーザビーム照射によりOBIC電流(光電流)などが流れると、磁場が誘起され、チップ主面側に配置され磁場検出器をなす磁束計(高感度磁場センサー)120にて磁束が検出される。ICチップ裏面にてレーザビームを走査し(あるいはレーザ光を固定し試料を移動させ)、磁束計120で検出された磁束の強度を、ICチップ110の走査位置情報に対応させて、表示装置上に例えば階調表示(輝度表示)することで、磁場分布に対応した2次元像を得ることができる。
【0015】
なお、磁束計120は磁場の強さに応じた出力電圧を出力し、信号処理装置(あるいはデータ処理装置)において、磁束計120から出力され検波器130でレーザの変調周波数の信号のみが選択された信号を、レーザの照射位置に対応した画素の階調データに変換して表示装置140に表示する。これにより、磁場分布の画像データ(磁場分布等の走査像)が得られる。ICチップ裏面からレーザビームを照射するのは、ICチップ110のシリコン基板111の基板表面近傍のpn接合部112にレーザビームを到達させるためである。すなわち、ICチップ110の主面側から照射すると、レーザビームが、ICチップのシリコン基板111上層のメタル配線層等で反射し、シリコン基板111表面近傍のpn接合部112に到達できない。また、ウェハやチップを検査する際、好ましくは、ウェハやチップ裏面を鏡面研磨(仕上げ)しておく。
【0016】
図1には、表示装置140において、シリコン基板111内の基板表面近傍のpn接合部112の走査像を、変調周波数に対応させて模式的に示してある。なお、図1では、表示装置140による、走査顕微鏡像の表示例として、あくまで説明のため、変調周波数の相対的に高、中、低の3つの表示画像(a)、(b)、(c)が例示されているが、3つ同時に表示することを意味するのではなく、それぞれ個別に表示してもよいことは勿論である。図1にされるように、変調周波数が高くなるほど像の空間分解能がよくなる。本実施形態では、磁束計120として、好ましくは、SQUID磁束計が用いられる。高感度磁場センサーであればよく、SQUID磁束計に制限されるものでない。
【0017】
以下、変調周波数が高くなるほど空間分解能が良くなる理由について検討する。図1では、説明を簡単にするために、一個のpn接合部112の走査顕微鏡像をとる場合を示してある。レーザに変調をかけ、pn接合を含む領域を走査する。レーザがpn接合部112にあたると光電流が発生し、pn接合の両端に接続されている電極部114を介してLSI内部配線113に電流が流れる。この電流が誘起する磁場を磁束計120で検出し磁場信号として、表示装置140での像表示に利用する。
【0018】
前述したように、磁場信号全てを像表示に用いるのではなく、検波器130にて、レーザの変調周波数と同じ周波数の成分のみを取り出し(検波)像表示用信号に用いる。
【0019】
レーザは、pn接合部112に丁度当たらなくても光電流は流れる。その理由は、キャリア拡散といわれる現象で説明できる。キャリア拡散は、キャリア密度が不均一な場合に起きる拡散で、レーザビーム照射により電子・正孔対が生成された場合の少数キャリアはこの条件に当てはまる。
【0020】
レーザがシリコン基板(Si)に照射されると、電子・正孔対が生成される。照射された場所がpn接合部である場合には、そこにある空乏層の内部電界でただちに電子と正孔は引き離されて電流となる。
【0021】
一方、照射された個所がpn接合部以外である場合には、発生した少数キャリアは拡散により周囲に均等に広がっていく。そして、少数キャリアは広がりながら、再結合し消滅する。少数キャリアが消滅する前に、pn接合部に行き着くと、内部電界により光電流となる。
【0022】
この説明から分かるように、レーザの変調周波数が低い場合には、レーザ照射により発生したキャリアが一周期内に行き着くことのできる領域は広がる。
【0023】
たとえば、図1の表示装置140での表示像の「低」と示した像(c)に示されるように、円状の広がった像が得られる。
【0024】
周波数をそれより高くすると「中」と示した像(b)に示されるように、広がりは減る。
【0025】
さらに周波数を上げると、「高」と示した像(a)のように、ほぼpn接合部のみの像が得られる。
【0026】
このように、変調周波数を上げることで像の空間分解能向上が図れる。上記表示像の実験、及びその考察は、本願発明者によって全く独自に見出されたものである。
【0027】
すなわち、従来、このように周波数により像の広がりが変わることは、認識されていなかった。したがって、レーザの変調周波数の選択は、前述のように、例えば非特許文献1のように、環境ノイズの小さい周波数を選んだり、非特許文献2のように走査レーザSQUID顕微鏡像取得時間短縮のために高い周波数のシステムを開発したりしていた。
【0028】
環境ノイズの小さい周波数は周波数の高低に無関係に選択可能である。また、像取得時間短縮が目的なら、100kHz程度の周波数で十分であるため、100kHzより高周波の周波数が選択できるシステムを開発することは不要であった。
【0029】
本発明によれば、変調周波数を100KHzより高くすることで、従来法での100マイクロメータ程度の空間分解能を一桁以上向上させることができる。以下、実施例に即して説明する。
【実施例】
【0030】
図2(A)は、本発明を実施するための装置構成の一実施例を示す図である。図2(B)は、図2(A)の基準信号1、変調信号2、磁場信号4のタイミング波形の一例を説明する図である。図2(A)を参照すると、この検査装置は、所定の基準信号1に同期した変調信号2により強度変調された変調光を生成し、収束して変調ビーム61を生成する変調ビーム生成部10と、サンプル70が搭載され、サンプルの所定の照射位置に変調ビーム61が照射されるように移動させる試料台71と、サンプル70に変調ビーム61が照射されたときに生成される電流によって誘起される磁場(磁束)を検出し磁場信号4を出力する磁場検出部20と、磁場の強度と、基準信号1と磁場信号4の位相差6(図2(B)参照)を抽出し、それぞれ強度信号5と位相差信号7として出力する信号抽出部30と、変調ビーム61のサンプル70への照射の制御と照射位置情報に応じて試料台71の位置決め制御を行い、強度信号5と位相差信号7を入力し照射位置情報と対応させて出力するシステム制御部(「制御部」と略記される)40と、強度信号5と位相差信号7の少なくとも1方と照射位置情報とを入力し画像表示する表示部50を備えている。
【0031】
変調ビーム生成部10は、基準信号1及び基準信号1に同期した変調信号2(図2(B)参照)を生成して出力するパルス発生器11と、変調機構を付属したファイバレーザ等で構成され、パルス発生器11から出力された変調信号2により強度変調された変調光(レーザ光)を発生するレーザ光発生器12と、レーザ光を導波する光ファイバ14と、光ファイバ14で導波された光を収束して変調ビーム61を生成する光学系ユニット13を備えている。
【0032】
磁場検出部20は、高感度磁場センサーをなすSQUID磁束計21と、SQUID磁束計21を制御しSQUID磁束計21の出力信号3(電圧出力)から磁場信号4を生成して出力する電子回路(「SQUID電子回路」ともいう)22を備えている。例えばSQUID磁束計21は、高温超伝導型SDQUID磁束計が用いられる。電子回路22は、FLL(Flux-Locked Loop)回路を用いることができる。
【0033】
特に制限されないが、信号抽出部30は、例えば2位相ロックインアンプ(不図示)から構成されており、電子回路22から磁場信号4を入力し、変調信号2と同じ周波数成分の信号を検波する。なお、信号抽出部30は、抽出した信号(変調周波数と同一周波数成分)の強度と、磁場信号4と変調信号2の位相差を出力信号5、7として出力するようにしてもよい。
【0034】
制御部40は、例えばステージ走査信号により試料台71(サンプル70)の位置を制御し、図1等において、必要に応じて、レーザ走査信号により変調ビーム生成部10の光学系ユニット13を制御し、変調ビーム61をサンプル70上で走査させながら、サンプル70に照射する。
【0035】
また制御部40は、信号抽出部30で検波された、変調周波数と同一周波数成分の信号を像表示信号に用い、表示部50に供給する。特に制限されないが、制御部40は、信号抽出部30からの強度信号5と位相差信号7を取り込み、ステージ走査、レーザ光照射位置、あるいはSQUID磁束計の走査と同期させて、走査レーザSQUID顕微鏡像として表示するための制御を行う。制御部40は、変調ビーム61の照射位置情報と当該照射位置情報に対応する強度信号5や位相差信号7の組合わせで、画像表示信号8を出力する。
【0036】
表示部50は、PC(パソコン)51とディスプレイ52を備え、制御部40からの画像表示信号8を受けて、レーザビーム走査位置での磁場に対応する磁場信号4の強度像81あるいは、位相差に対応した位相差像82を出力する。なお、図1の上記説明では、説明を簡単にするために、磁場分布の画像は一種類として示したが、図2(A)に示すように、好ましくは、強度像81と位相差像82が用いられる。
【0037】
次に、図2に示した本実施例の装置の動作の一例を説明する。本実施例において、サンプル70として、ICチップ、Siウェハ等が用いられる。化合物半導体ウェハ、TFT基板等であってもよいことは勿論である。サンプル70を試料台71に搭載し、パルス発生器11で基準信号1とこれに同期した変調信号2を生成し、基準信号を信号抽出部30に出力し、変調信号2を変調機能を内蔵したファイバレーザ(例えば波長は1065nm)で構成したレーザ光発生器12に出力し、強度変調を施したレーザ光を発生させ、光ファイバ14で光学系ユニット13に導きサンプル70上に変調ビーム(レーザビーム)を絞り込む。
【0038】
変調ビーム61を最初の照射点に照射し、サンプル70からの磁気をSQUID磁束計21で検出し、電子回路22から磁場信号4として出力する。この磁場信号4を信号抽出部30に入力し、信号抽出部30は、変調信号2と同一周波数の磁場信号4に関する強度信号5と位相差信号7を制御部40に出力する。
【0039】
制御部40は、強度信号5と位相差信号7を変調ビーム61の照射位置と対応させて画像表示信号8としてPC51に出力し、PC51は、PC51内の記憶部(不図示)に、強度信号5と位相差信号7を記憶する。
【0040】
ステージ走査信号による試料台71のX−Y走査、必要に応じてレーザ走査信号による変調ビーム61の走査を組合わせて、サンプル70の所望の被検査領域の各照射点を順次選択し、変調ビーム61を照射し、強度信号5と位相差信号7を当該照射点の位置情報と対応させて画像表示信号8としてPC51の記憶部に記憶する処理を行う。
【0041】
PC51は、ディスプレイ52に強度信号5又は位相差信号7に応じた階調(輝度)で表示し(カラー表示であってもよい)、図1では、サンプル70のレーザ照射点に対応させて表示する。この場合、強度信号5に対応した強度像81と位相差信号7に対応した位相差像82の一方を表示するようにしてもよい。走査点に対応させて磁場の像をリアルタイムで表示していくようにしてもよいし、1つのサンプルの各走査位置における強度信号5と位相差信号7に応じた階調(輝度)を、記憶部に該走査位置に対応して記憶しておき、1つのサンプルの全ての走査が終了した時点で、あるいは、その後、任意の時点で、オフラインで、記憶部に走査位置に対応して記憶されている強度信号5と位相差信号7に応じた階調(輝度)の像をディスプレイ52に表示するようにしてもよい。出力装置として、ディスプレイ以外にも、プリンタあるいはファイル装置等に出力してもよいことは勿論である。
【0042】
本実施例では、レーザ光発生器12として変調機構を付属したファイバレーザを用いることにより、変調信号2の周波数を、例えば最大1MHzまで任意の値に設定することができる。変調周波数の選択において、磁場信号が微弱でS/N(信号対雑音比)が悪い場合、ノイズの少ない周波数を選択する必要があるが、これは前述のとおり、周波数を大きく変える必要をせまるものではない。本実施例では、波長1065nmのレーザ光を用いているので、サンプル70がSiウェハの場合、その裏面からレーザ光を照射し、Si基板を透過し、Siウェハ表面近傍のpn接合部近傍へ変調ビームを到達させることができる。Siウェハ裏面を鏡面研磨しておくことが好ましい。Siウェハ裏面から照射された変調ビーム61が効率よくpn接合部近傍に到達させることができる。
【0043】
SQUID磁束計21として、HTS(高温超伝導)のSQUID磁束計を用い、1pT以下の微小な磁束密度Bを検出することが可能である。なお、磁気シールド65を備えている。SQUID磁束計は、通常サンプル70と垂直方向に磁束を検出する。
【0044】
電子回路22から出力される磁場信号4には、通常、ノイズが混入しているため、変調周波数と同じ周波数成分のみを、2位相ロックインアンプ(信号抽出部30)で取り出すことでS/N比を改善している。信号抽出部30として、2位相ロックインアンプを用いることで、変調信号2と同じ周波数成分のみを取り出せるだけでなく、その成分の位相差信号7と強度信号5を分離して出力することができる。チップの大きさを例えば6mmx10mmとし、変調ビーム61のビーム径を10μmに絞り、セラミックステージで構成した試料台71をX−Y走査することで、磁場分布像が得られる。変調周波数は例えば100KHzよりも高い周波数としている。チップの強度像81と位相差像82が得られる。
【0045】
なお、図2(A)に示した構成は、磁場検出部からの磁場信号より強度信号と、磁場信号と基準信号の位相差を示す位相差信号を別々に出力する例に即して説明したが、強度信号のみを出力する構成にも適用できることは勿論である。また、高感度磁場センサーとしてSQUID磁束計21を用いた例に即して説明したが、本発明は、SQUID磁束計を用いた走査SQUID顕微鏡法に限定されず、高感度磁場センサーを用いた走査顕微鏡法に適用することができる。
【0046】
以上本発明を上記実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例の構成にのみ限定されるものでなく、本発明の範囲内で当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態を説明するための図である。
【図2】(A)は、本発明の一実施例の装置構成を示す図であり、(B)は磁場信号、基準信号、変調信号のタイミング波形を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 基準信号
2 変調信号
3 SQUID出力信号
4 磁場信号
5 強度信号
6 位相差
7 位相差信号
8 画像表示信号
10 変調ビーム生成部
11 パルス発生器
12 レーザ光発生器
13 光学系ユニット
14 光ファイバ
20 磁気検出部
21 SQUID磁束計
22 電子回路(SQUID電子回路)
30 信号抽出部
40 システム制御部(制御部)
50 表示部
51 PC(パーソナルコンピュータ)
52 ディスプレイ
61 変調ビーム
63 磁場(磁束)
65 磁気シールド
70 サンプル
71 試料台
81 強度像
82 位相差像
100 非破壊解析装置
110 ICチップ
111 シリコン基板
112 pn接合部
113 配線(LSI内部配線)
114 電極部
120 磁束計
130 検波器
140 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光として、変調信号に基づいて強度変調された変調レーザ光を生成し、前記変調レーザ光にて試料を相対的に走査するステップと、
磁場検出器で前記試料からの磁場を検出するステップと、
前記磁場検出器にて検出された磁場信号のうち、前記変調信号と同じ周波数成分の信号を検波するステップと、
検波された信号を像表示用信号として出力するステップと、
を含み、
前記変調信号の周波数は、100kHzよりも高い、ことを特徴とする検査方法。
【請求項2】
前記磁場検出器は、高感度磁場センサを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
前記磁場検出器は、SQUID(超伝導量子干渉器)磁束計を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の検査方法。
【請求項4】
100kHzよりも高い変調周波数で変調された変調レーザ光を試料に対して照射し、前記試料からの磁場を検出する磁場検出器からの磁場信号を受け、前記変調周波数と同じ周波数成分の信号を抽出する検波器と、
前記検波器で抽出された信号を像表示信号として用いて表示する手段と、
を備えたことを特徴とする検査装置。
【請求項5】
レーザ光として、変調信号に基づいて強度変調された変調レーザ光を生成する変調ビーム生成部と、
試料に変調レーザ光を照射する光学系と、
磁場検出器と、
前記変調レーザ光を前記試料に対して相対的に走査する走査手段と、
前記磁場検出器からの磁場信号を受け、前記変調周波数と同じ周波数成分の信号を抽出する検波器と、
前記検波器で抽出された信号を像表示信号として用いて表示する手段と、
を備え、
前記変調信号の周波数が100kHzよりも高い、ことを特徴とする検査装置。
【請求項6】
前記磁場検出器は、高感度磁場センサを含む、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の検査装置。
【請求項7】
前記磁場検出器が、SQUID(超伝導量子干渉器)磁束計を含む、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の検査装置。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2007−127590(P2007−127590A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322166(P2005−322166)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】