説明

半導体装置の製造方法、及び基板処理装置

【課題】処理室内の付着膜を化学的反応により除去することを可能とし、基板上への均一な薄膜形成を可能とする装置を提供する。
【解決手段】基板を処理する処理室201と、処理室201内のガスをプラズマ化する活性化機構300と、処理室201と連通するように設けられ、活性化機構300を処理室201から退避させるための退避室305と、活性化機構300を移送する移送機構と、処理室201と退避室305との間のガス流通を遮断する遮断機構303と、基板を処理する際は、活性化機構300を退避室305に退避させ、処理室201と退避室305との間のガス流通を遮断させた状態で、ガス供給部から処理ガスを供給し、処理室内をクリーニングする際は、活性化機構を処理室内に移動させた状態で、ガス供給部201aからクリーニングガスを供給させ、処理室201内のクリーニングガスをプラズマ化させるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板上にガスを供給して薄膜を形成するための基板処理装置の保守、及び運用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、熱化学反応による成膜工程を実施する基板処理装置は、処理対象としての基板を加熱するための加熱機構を有している。しかしながら、この加熱機構は、基板だけでなく、その周辺部分も同時に加熱してしまうため、かかる昇温部分にも余剰な付着膜が成膜されてしまう。そして、長時間にわたり成膜処理を継続すれば、昇温部分における付着膜の膜厚が厚くなって剥がれ易くなり、パーティクルの原因となる。
【0003】
かかる基板処理装置の保守に際しては、従来は、付着膜が形成されてしまった部品のパーツ交換を行うこととしていた。しかしながら、その作業には、部品の交換作業時間に加えて、基板処理装置の冷却時間と再び成膜を開始するまでの昇温時間とが必要となることから、基板処理装置のダウンタイムが長くなり、生産性が損なわれていた。
【0004】
そのため近年、基板処理装置の保守に際して、パーツ交換によらず、化学的反応により付着膜を除去する方法が試みられている。
ただし、シリコンや金属を含む膜を生成する基板処理装置にて付着膜を熱化学反応により除去するには、一般的には処理室を400〜500℃まで昇温することが必要となる。しかし、金属で形成されている処理室を前記温度まで昇温することは困難であった。
そこで、熱化学反応ではなく、励起種を用いた化学的反応による付着膜の除去が試みられている。具体的には、処理室内に設けた活性化機構によりプラズマを生成させるという方法が試みられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板上への成膜処理は、原料ガス等の処理ガスを基板表面に対して均一に供給することにより行われる。ここで、付着膜は、処理ガスの供給経路における基板周辺の部材上に厚く付着する。したがって、かかる部分にプラズマを生成することができるように、活性化機構を、処理ガスのガス導入部と基板表面との間に設置することが有効である。しかしながら、活性化機構を処理ガスの経路上、すなわち処理ガスのガス導入部と基板表面との間に設置すると、基板上へ形成される薄膜の厚さが不均一になる場合があった。
【0006】
そこで本発明は、処理室内の付着膜を化学的反応により除去することが可能であり、基板上への均一な薄膜形成を可能とする基板処理装置、及び半導体装置の製造方法を提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、基板を処理する処理室と、前記処理室内で前記基板を支持する支持台と、前記処理室内にガスを供給するガス供給部と、前記処理室内のガスをプラズマ化する活性化機構と、前記処理室と連通するように設けられ、前記活性化機構を前記処理室から退避させる退避室と、前記活性化機構を前記処理室と前記退避室との間で移送する移送機構と、前記処理室と前記退避室との間のガス流通を遮断する遮断機構と、前記基板を処理する際は、前記活性化機構を前記退避室に退避させ、前記遮断機構により前記処理室と前記退避室との間のガス流通を遮断させた状態で、前記ガス供給部から処理ガスを
供給し、前記処理室内をクリーニングする際は、前記活性化機構を前記処理室内に移動させた状態で、前記ガス供給部からクリーニングガスを供給させ、前記活性化機構により前記処理室内の前記クリーニングガスをプラズマ化させる、ように制御するコントローラと、を有する基板処理装置が提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、基板を処理室内に搬入する工程と、前記処理室内のガスをプラズマ化する活性化機構を、前記処理室に連通する退避室に退避させ、前記処理室と前記退避室との間のガス流通を遮断した状態で、前記処理室内に処理ガスを供給して前記基板を処理する工程と、処理後の前記基板を前記処理室内から搬出する工程と、前記活性化機構を前記退避室から前記処理室内に移動する工程と、前記処理室内に前記クリーニングガスを供給し、前記活性化機構により前記処理室内の前記クリーニングガスをプラズマ化して前記処理室内をクリーニングする工程と、を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、処理室内の付着膜を化学的反応により除去することが可能であり、基板上への均一な薄膜形成が可能な基板処理装置、及び半導体装置の製造方法を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
上述の通り、処理ガスの供給経路上、すなわち処理ガスのガス導入部と基板との間に活性化機構を設置すると、基板上へ形成される薄膜の厚さが不均一になる場合がある。
【0011】
発明者等の研究によれば、ガス導入部と基板表面との間に活性化機構を設置すると、活性化機構が処理ガスの均一な供給を妨げてしまい、その結果、基板上へ形成される薄膜の厚さが不均一になってしまうことが判明した。例えば、ガス導入部と基板との間に、複数の電極棒が配列された活性化機構を配置すると、基板への処理ガスの供給を各電極棒が妨げ、その結果、各電極棒の裏側への処理ガスの供給が減少して、電極棒の配列跡が基板上に形成される薄膜に転写されてしまう現象が認められた。
【0012】
そこで、発明者等は、基板へ処理ガスを供給して基板を処理する際には、活性化機構を移動させて処理ガスの均一な供給を妨害させないことが、基板上への均一な薄膜形成に有効であるとの知見を得て、本発明を完成させるに至った。
【0013】
(1)本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の構成
まず、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の構成について、図3を用いて説明する。図3は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置である枚葉式処理装置の処理炉の一例を示す概略図である。
【0014】
(a)処理室
図3に示すように、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置である枚葉式処理装置の処理炉は、処理容器202を備えている。そして、処理容器202は、その内部に基板200を処理するための処理室201を構成する。ここで基板200とは、例えば、半導体ウエハや、ガラス基板等である。
【0015】
(b)基板搬入搬出口
処理容器202の側壁には、仕切弁としてのゲートバルブ244によって開閉される基板搬入搬出口247が設けられる。仕切弁としてのゲートバルブ244を開放することにより、図示しない基板移載機構を用い、処理室201内に基板200を搬入搬出し得るように構成されている。
【0016】
(c)支持台
処理室201内には、基板200を支持するための支持台206が設けられている。支持台206の上部には、基板200を支持するための支持板としてのサセプタ217が設けられている。支持台206の内部には加熱機構(加熱手段)としてのヒータ207が設けられ、ヒータ207によってサセプタ217上に支持される基板200を加熱することが可能となっている。ヒータ207は、基板200の温度が所定温度となるように、温度制御部(温度制御手段)としての温度コントローラ253により制御される。
【0017】
また、処理室201外には、回転機構(回転手段)267、及び昇降機構(昇降手段)266が設けられている。支持台206は処理容器202の底部を貫通しており、回転機構267は支持台206の下端部を下方側より支持している。また、昇降機構(昇降手段)266は、回転機構267を下方側より支持している。そして、回転機構267を作動(回転)させることにより、サセプタ217上に支持される基板200を回転させることが可能となっている。また、この昇降機構266を作動(昇降)させることにより、サセプタ217上に支持される基板200を昇降させることが可能となっている。支持台206は、基板200の搬送時には基板搬送位置に配置され、基板200の処理時には基板搬送位置よりも上方の基板処理位置に配置される。
【0018】
(d)第1原料ガス供給ライン
処理室201の外部には、液体原料である第1原料を気化して、処理ガスとしての第1原料ガスを生成するための気化器255と、気化器255へ第1原料を供給するための第1原料供給源250aと、が設けられる。
気化器255の上流側は、液体原料供給管232により、第1原料の液体供給流量を制御するための流量コントローラ(液体マスフローコントローラ)241aを介して、第1原料供給源250aと接続されている。
気化器255の下流側は、第1原料ガス供給管232aにより、処理室201の上部(天井部)と接続されている。そして、処理室201の上部と第1原料ガス供給管232aとの接続部分は、処理室201内に第1原料ガスを導入するためのガス導入口201aを形成する。なお、第1原料ガス供給管232aにはバルブ243aが設けられており、バルブ243aを開閉させることにより、ガス導入口201aから処理室201内への第1原料ガスの供給を制御することが可能となっている。
なお、第1原料としては、例えば、常温で液体である有機液体金属材料、すなわち有機金属液体原料を用いる。
【0019】
(e)不活性ガス供給ライン
また、処理室201の外部には、不活性ガスを、第1原料ガス供給管232a及び処理室201内へ供給するための不活性ガス供給源250eが設けられる。
不活性ガス供給源250eは、不活性ガス供給管232eにより、不活性ガスの供給流量を制御するためのガス流量コントローラ(マスフローコントローラ)241eを介して、第1原料ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流の部分(すなわちバルブ243aとガス導入口201aとの間)に接続されている。なお、不活性ガス供給管232eにはバルブ243eが設けられており、バルブ243eを開閉させるこにより、ガス導入口201aから処理室201内への不活性ガスの供給を制御することが可能となっている。
なお、不活性ガスとしては、例えば、Ar,He,N等を用いる。
【0020】
(f)第2原料ガス供給ライン
また、処理室201の外部には、処理ガスとしての第2原料ガスを、第1原料ガス供給管232aを介して処理室201内へ供給するための第2原料ガス供給源250bが設け
られる。
第2原料ガス供給源250bは、第2原料ガス供給管232bにより、第2原料ガスの供給流量を制御するためのガス流量コントローラ(マスフローコントローラ)241bを介して、第1原料ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流の部分に接続されている。なお、第2原料ガス供給管232bにはバルブ243bが設けられており、バルブ243bを開閉させるこにより、ガス導入口201aから処理室201内への第2原料ガスの供給を制御することが可能となっている。
なお、第2原料ガスとしては、例えば、O,O,HO等の酸素(O)を含有するガスを用いる。
【0021】
(g)クリーニングガス供給ライン
また、処理室201の外部には、処理室201内をクリーニングするためのクリーニングガスを、第1原料ガス供給管232aを介して処理室201内へ供給するためのクリーニングガス供給源250dが設けられる。
クリーニングガス供給源250dは、クリーニングガス供給管232dにより、クリーニングガスの供給流量を制御するためのガス流量コントローラ(マスフローコントローラ)241dを介して、第1原料ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流の部分に接続されている。なお、クリーニングガス供給管232dにはバルブ243dが設けられており、バルブ243dを開閉させるこにより、ガス導入口201aから処理室201内へのクリーニングガスの供給を制御することが可能となっている。
なお、クリーニングガスとしては、例えば、ClF,NF,BCl等のフッ素(F)、塩素(Cl)を含有するガスを用いる。
【0022】
(h)シャワーヘッド
処理容器202の上部、すなわち、ガス導入口201aと、サセプタ217との間には、ガス分散機構としてのシャワーヘッド234が設けられる。
シャワーヘッド234は、ガス導入口201aから導入されるガスを分散させるための分散板237と、分散板237を通過したガスをさらに均一に分散させてサセプタ217上の基板200表面に供給するためのシャワー板236と、を備える。
分散板237は、ガス導入口201aと対向するように配置され、シャワー板236は、サセプタ217上の基板200と対向するように配置される。なお、処理容器202の天井壁と分散板237との間、および分散板237とシャワー板236との間にはそれぞれ空間が設けられ、かかる空間は、ガス導入口201aを通過したガスを拡散させるためのバッファ空間240a、および分散板237を通過したガスを拡散させるためのバッファ空間240として機能する。
分散板237及びシャワー板236には、複数の通気孔237a、236aが設けられている。
(i)退避室
処理室201の側面には、後述する活性化機構300を退避させるための退避室305が設けられる。退避室305は、処理室201の側面に接続された伸縮自在のベローズ305aと、ベローズ305aの反対側(すなわち、処理室201と接合しない側)の端部を封止するフランジ305bと、により構成されている。
【0023】
(j)活性化機構
上述のフランジ305bは活性化機構300を片持ち支持している。活性化機構300は、外部から高周波の電力を供給することが可能な電極棒301が同一水平面内に複数配列されてなる。活性化機構300は、図示しない移送機構によりフランジ305bを移動させ、ベローズ305aを伸縮させることにより、処理室201内と退避室305内との間で水平方向に移動する。
【0024】
図4に、処理室201に処理ガスを導入して基板200を処理する際の活性化機構の位置を示す。このとき、ベローズ305aは伸長されており、活性化機構300は処理室201から退避室305へと退避(格納)されている。この場合は、シャワーヘッド234と支持台206との間には障害物がないため、シャワーヘッド234から基板200上へ均一に処理ガスを供給することが出来る。これにより、基板200上に均一な薄膜を形成することが可能となる。
【0025】
図5に、処理室201にクリーニングガスを導入して処理室201内をクリーニングする際の活性化機構の位置を示す。このとき、ベローズ305aは収縮されており、活性化機構300はシャワーヘッド234と支持台206との間に挿入されている。クリーニング時のサセプタ217保護のためのダミー基板200aの上面は、各電極棒301により覆われる。この状態で、処理室201内にクリーニングガスを導入し、電極棒301に対して高周波の電力を供給することにより、シャワーヘッド234と支持台206との間でクリーニングガスをプラズマ化することが出来、処理室201内をクリーニングすることが出来る。
【0026】
なお、各電極棒301は、石英や窒化アルミニウム等の絶縁管302により真空封止されていることが好ましい。電極棒301が、生成したプラズマによりスパッタリングされることを防止するためである。
【0027】
(k)遮断機構
遮断機構303は、処理室201と退避室305との接合部分に設けられ、活性化機構300を退避室305内に退避させた状態でゲートバルブ304を閉めることにより、処理室201と退避室305との間のガスの流通を遮断する。これにより、処理室201内から退避室305への処理ガスの回りこみを防ぎ、処理ガスの基板200への均一な供給を促すことが可能となる。
【0028】
なお遮断機構303は、上述の構成に限らず、活性化機構300を退避室305内に退避させた状態で、処理室201と退避室305との接合部分を閉じるシャッターであってもよく、退避室305内に不活性ガスを供給することで退避室305内をパージして、処理室201と退避室305との間のガスの流通を遮断する不活性ガス導入管306であってもよい。
【0029】
(l)排気系
処理容器202の基板搬入搬出口247とは反対側の側壁には、排気口230が設けられている。排気口230には、除害装置(図示せず)に連通する排気管231が接続されている。排気管231には、処理室201内の圧力を制御する圧力制御部(圧力制御手段)としての圧力コントローラ254と、排気装置(排気手段)としての真空ポンプ246と、が設けられる。排気口230及び排気管231により排気系が構成される。
【0030】
(m)コントローラ
上述のバルブ243a,b,d,e、流量コントローラ241a,b,d,e、温度コントローラ253、圧力コントローラ254、気化器255、回転機構267、昇降機構266等の基板処理装置を構成する各部の動作は、主制御部(主制御手段)としてのメインコントローラ256により制御される。また、活性化機構300の水平移動、遮断機構303の開閉動作、電極棒301への電力供給も、メインコントローラ256により制御される。
【0031】
(2)従来の基板処理装置の構成
続いて、本発明の一実施形態と比較するため、従来の基板処理装置の構成について、図
1、図2を用いて説明する。図1は、従来の基板処理装置である枚葉式処理装置の処理炉の一例を示す概略図であり、図2は、基板の上方を活性化機構が覆う様子を示す概略図である。
【0032】
従来の基板処理装置では、処理室内の活性化機構が固定されている点が本発明の一実施形態の基板処理装置と異なる。すなわち、従来の基板処理装置における活性化機構300は、図1に示す通り、シャワーヘッド234と支持台206の基板処理位置との間に設けられており、また、かかる活性化機構300は、基板処理中であっても常に固定されている。
【0033】
このとき、基板200の上面は、図1に示すとおり活性化機構300により格子状に覆われている。したがって、シャワーヘッド234から基板200に対して処理ガスを供給すると、活性化機構300が障害物となり、基板200上への処理ガスの供給が不均一になる場合がある。
【0034】
(3)基板処理工程
続いて、上述した図3のような構成の処理炉により実施される本発明の一実施形態にかかる半導体装置の製造工程の一工程としての基板処理工程について、図6を用いて説明する。
本発明の一実施形態としては、第1原料として常温で液体である有機金属液体原料を用い、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、特にMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、またはALD(Atomic Layer Deposition)法により、基板上に金属膜や金属酸化膜等の薄膜を形成する方法について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作は、メインコントローラ256により制御される。
【0035】
(a)退避工程から遮断工程まで
まず、図示しない移送機構によりフランジ305bを移動させ、ベローズ305aを伸長させ、活性化機構300を退避室305内に退避させる(S1)。その後、遮断機構303のゲートバルブ304を閉めて、処理室201と退避室305との間のガス流通を遮断する(S2)。
【0036】
(b)基板搬入工程から基板載置工程まで
続いて、昇降機構266を作動させ、支持台206を下降させる。その結果、サセプタ217の表面からは図示しない突き上げピンが突出する。そして、ゲートバルブ244を開いて基板搬入搬出口247を開放し、図示しない基板移載機構を用いて、基板200を処理室201内へと搬入する(S3)。搬入された基板200は、突き上げピンの上端部に支持される。図4はこの状態を示している。
【0037】
その後、ゲートバルブ244を閉じ、さらに昇降機構266を作動させて、支持台206を基板搬送位置よりも上方の基板処理位置まで上昇させる。その結果、突き上げピンはサセプタ217の表面より没入し、基板200はサセプタ217により支持される(S4)。
【0038】
支持台206を基板処理位置まで上昇させた後、回転機構267を作動させて基板200を回転させる。このように、基板200を回転させることにより、後述する第1原料ガス供給工程及び第2原料ガス供給工程において、基板200の表面に対してより均一に第1原料ガス及び第2原料ガスを供給することが可能となる。
【0039】
なお、上述の、基板搬入工程(S3)及び基板載置工程(S4)を実施中は、バルブ243a、243b、243dを閉め、バルブ243eを開けて不活性ガスを処理室201内へ供給し、さらに排気口230から排気することにより、処理室201内を不活性ガスで充満させておくことが好ましい。これにより、基板200の表面に、パーティクルや金属汚染物が付着することを防止することが出来るからである。
【0040】
(c)基板昇温工程および圧力調整工程
その後、ヒータ207に電力を供給して、基板200が所定の処理温度となるように加熱する(S5)。同時に、圧力コントローラ254により、処理室201内が所定の処理圧力となるように制御する(S6)。
【0041】
なお、基板昇温工程(S5)及び圧力調整工程(S6)の完了までに、液体原料としての第1原料を、第1原料供給源250aから気化器255へと供給して気化させ、気化器255にて第1原料ガスを生成させておく。ここで、第1原料ガスの流量は、流量コントローラ241aを用いて制御する。
【0042】
(d)第1原料ガス供給工程
その後、バルブ243aを開け、排気口230から処理室201内を排気する。これにより、第1原料ガスをガス導入口201aから処理室201内へと導入する(S7)。導入された第1原料ガスは、シャワーヘッド234により均一に分散され、基板200上へシャワー状に供給される。このとき、バルブ243eは開けたままの状態とし、処理室201内へは第1原料ガスと不活性ガスとを同時に供給する。第1原料ガスを不活性ガスで希釈させることにより、第1原料ガスが分散されやすくなる。
【0043】
(e)第1パージ工程
処理室201内への第1原料ガスの供給を所定時間実施した後、バルブ243eを開いたまま、バルブ243aのみを閉じることにより、処理室201への第1原料ガスの供給を停止する。ただし不活性ガスの供給と排気口230からの処理室201内の排気は継続しており、これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換する(S8)。
【0044】
(f)第2原料ガス供給工程
その後、バルブ243bを開け、排気口230から処理室201内を排気する。これにより、第2原料ガスが、ガス導入口201aから処理室201内へと導入され、シャワーヘッド234により均一に分散されて、基板200上へシャワー状に供給される(S9)。このときも、バルブ243eは開けたままの状態とし、処理室201内への不活性ガスの供給を継続する。
【0045】
(g)第2パージ工程
処理室201内への第2原料ガスの供給を所定時間実施した後、バルブ243eを開いたまま、バルブ243bのみを閉じることにより、処理室201への第2原料ガスの供給を停止する。ただし、不活性ガスの供給と排気口230からの処理室201内の排気は継続しており、これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換する(S10)。
【0046】
(h)繰り返し工程
その後、以上に述べたS7〜S10までの各工程を1サイクルとして、このサイクルを複数回繰り返すことにより、基板200上に所定膜厚の薄膜を形成する(S11)。
【0047】
(i)基板搬出工程
基板200へ所定膜厚の薄膜を形成後、回転機構267による基板200の回転を停止する。その後、処理済の基板200を、基板搬入工程と逆の手順で処理室201外へ搬出し、本発明の一実施形態にかかる半導体装置の製造工程の一工程としての基板処理工程を完了する(S12)。
【0048】
なお、上記において、薄膜形成工程をCVD法により実施する場合には、処理温度を、第1原料ガスのガス分子が熱分解する程度の温度帯となるように制御する。この場合、第1原料ガス供給工程(S7)を実施すると、基板200上で第1原料ガスのガス分子が熱分解し、数〜数十原子層程度の薄膜が形成される。この間、基板200は回転しながら所定温度に保たれているので、基板200面内にわたり均一な膜を形成できる。
また、第2原料ガス供給工程(S9)を実施すると、第2原料ガスに含まれる反応種の作用により、基板200上に形成された数〜数十原子層程度の薄膜からC,H等の不純物が除去される。そして、この間も基板200は回転しながら所定温度に保たれているので、薄膜から不純物を素早く均一に除去することが出来る。
【0049】
なお、CVD法により基板200上にHfSiO膜を形成する場合の処理条件としては、例えば、処理温度:450℃、処理圧力:50〜200Pa、第1原料ガス:Hf−(MMP)とSi−(MMP)との混合原料ガス、その供給流量:0.01〜0.2g/min、第2原料ガス:O、その供給流量:0.5〜2slmが例示される。
【0050】
また、上記において、薄膜形成工程をALD法により実施する場合には、処理温度を、第1原料ガスのガス分子が熱分解しない程度の温度帯となるように制御する。この場合、第1原料ガス供給工程(S7)を実施すると、基板200上に第1原料ガスのガス分子が熱分解することなく吸着する。この間、基板200は回転しながら所定温度に保たれているので、基板200全体にわたり均一な膜を形成することができる。
また、第2原料ガス供給工程(S9)を実施すると、第2原料ガスに含まれる反応種の作用により、基板200上に1〜数原子層程度の薄膜が形成される。この間、基板200は回転しながら所定温度に保たれているので、基板200面内にわたり均一な膜を形成できる。さらに、第2原料ガスに含まれる反応種の作用により、薄膜中に混入するC,H等の不純物を脱離させることが出来る。
【0051】
なお、ALD法により基板200上にHfSiO膜を形成する場合の処理条件としては、例えば、処理温度:250〜315℃、処理圧力:50〜200Pa、第1原料ガス:Hf−(MMP)とSi−(MMP)との混合原料ガス、その供給流量:0.01〜0.2g/min、第2原料ガス:O、その供給流量0.5〜2slmが例示される。
【0052】
(4)クリーニング工程
上述した基板処理工程を繰り返すと、処理室201の内壁、支持台206、サセプタ217等に付着膜が形成される。この付着膜の膜厚が所定の厚さに到達した時点で、処理室201内のクリーニングを行う。
以下に、上述した図3のような構成の処理炉により実施される本発明の一実施形態にかかる半導体装置の製造工程の一工程としてのクリーニング工程について、図6を用いて説明する。
【0053】
(a)挿入工程
まず、遮断機構303を作動させてゲートバルブ304を開放する。そして、図示しない移送機構によりフランジ305bを移動させ、ベローズ305aを伸縮させて、活性化機構300を処理室201内に挿入(移動)させる(S13)。図5はこの状態を示している。
【0054】
(b)温度調整工程
続いて、ヒータ207に電力を供給し、処理室201内を所定のクリーニング温度となるように均一に加熱する(S14)。
【0055】
(c)圧力調整工程
その後、圧力コントローラ254により、処理室201内が所定のクリーニング圧力となるように制御する(S15)。
【0056】
(d)クリーニングガス供給工程
処理室201内の温度が、それぞれ所定のクリーニング温度に到達して安定したら、ガス導入口201aから処理室201内にクリーニングガスを供給する(S16)。
【0057】
(e)プラズマ生成工程
処理室201内の圧力が、所定のクリーニング圧力に到達して安定したら、活性化機構300の電極棒301に高周波の交流電力を供給して、活性化機構300の周辺にあるクリーニングガスをプラズマ化する(S17)。プラズマ化されたクリーニングガスは、処理室201の内壁、支持台206、サセプタ217等に付着した付着膜を、プラズマ化学反応により除去する。
【0058】
その後、所定時間が経過した後、活性化機構300の電極棒301への電力供給を停止する。さらに、バルブ243eを開いたまま、バルブ243dを閉じてクリーニングガスの供給を停止する。その結果、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され、クリーニング工程が終了する。なお、図5に示すように、クリーニング時にサセプタ217表面の基板載置領域を保護するために、サセプタ217上にダミー基板200aを載置するようにしてもよい。
【0059】
(5)本発明の一実施形態における効果
本発明の一実施形態によれば、処理室201内の活性化機構300によりクリーニングガスをプラズマ化することで、プラズマ化学反応により処理室201内の付着膜を除去することが可能となる。そのため、基板処理装置の保守に際してパーツ交換を行う場合に比べ、基板処理装置のダウンタイムを短縮でき、生産性低下を防止することが出来る。
【0060】
また、本発明の一実施形態によれば、処理室201内に処理ガスを供給して基板200を処理する際は、活性化機構300を退避室305に退避させる。その結果、シャワーヘッド234と支持台206との間の障害物がなくなり、シャワーヘッド234から基板200上へ均一に処理ガスを供給することが出来る。これにより、基板200上に均一な薄膜を形成することが可能となる。
【0061】
<本発明の好ましい態様>
第1の態様は、基板を処理する処理室と、前記処理室内で前記基板を支持する支持台と、前記処理室内にガスを供給するガス供給部と、前記処理室内のガスをプラズマ化する活性化機構と、前記処理室と連通するように設けられ、前記活性化機構を前記処理室から退避させる退避室と、前記活性化機構を前記処理室と前記退避室との間で搬送する移送機構と、前記処理室と前記退避室との間のガス流通を遮断する遮断機構と、前記基板を処理する際は、前記活性化機構を前記退避室に退避させ、前記遮断機構により前記処理室と前記退避室との間のガス流通を遮断させた状態で、前記ガス供給部から処理ガスを供給し、前記処理室内をクリーニングする際は、前記活性化機構を前記処理室内に移動させた状態で、前記ガス供給部からクリーニングガスを供給させ、前記活性化機構により前記処理室内の前記クリーニングガスをプラズマ化させる、ように制御するコントローラと、を有する基板処理装置である。
第1の態様によれば、処理室内の付着膜を化学的反応により除去することができ、基板上に均一な薄膜を形成することが可能となる。
【0062】
ここで、第1の態様における基板処理装置の前記活性化機構は、前記ガス供給部と前記支持台との間に挿入されることが好ましい。これにより、前記ガス供給部及び前記支持台の周辺部分について局所的にプラズマを生成することができ、付着膜の厚い領域を重点的にクリーニングすることが可能となる。
【0063】
第2の態様は、基板を処理室内に搬入する工程と、前記処理室内のガスをプラズマ化する活性化機構を、前記処理室に連通する退避室に退避させ、前記処理室と前記退避室との間のガス流通を遮断した状態で、前記処理室内に処理ガスを供給して前記基板を処理する工程と、処理後の前記基板を前記処理室内から搬出する工程と、前記活性化機構を前記退避室から前記処理室内に移動する工程と、前記処理室内に前記クリーニングガスを供給し、前記活性化機構により前記処理室内の前記クリーニングガスをプラズマ化して前記処理室内をクリーニングする工程と、を有する半導体装置の製造方法である。
第2の態様によれば、処理室内の付着膜を化学的反応により除去することができ、基板上に均一な薄膜を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】従来の基板処理装置である枚葉式処理装置の処理炉の一例を示す概略図である。
【図2】従来の基板処理装置である枚葉式処理装置の処理炉において、基板の上方を活性化機構が覆う様子を示す概略図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置である枚葉式処理装置の処理炉の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置である枚葉式処理装置の処理炉において、活性化機構を退避室に退避させた状態を示す概略図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置である枚葉式処理装置の処理炉において、活性化機構を処理室内に挿入させた状態を示す概略図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかる半導体装置の製造工程の一工程としての基板処理工程を示す。
【符号の説明】
【0065】
200 基板
201 処理室
201a ガス導入口(ガス供給部)
206 支持台
256 メインコントローラ
300 活性化機構
303 遮断機構
305 退避室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内で前記基板を支持する支持台と、
前記処理室内にガスを供給するガス供給部と、
前記処理室内のガスをプラズマ化する活性化機構と、
前記処理室と連通するように設けられ、前記活性化機構を前記処理室から退避させる退避室と、
前記活性化機構を前記処理室と前記退避室との間で移送する移送機構と、
前記処理室と前記退避室との間のガス流通を遮断する遮断機構と、
前記基板を処理する際は、前記活性化機構を前記退避室に退避させ、前記遮断機構により前記処理室と前記退避室との間のガス流通を遮断させた状態で、前記ガス供給部から処理ガスを供給し、前記処理室内をクリーニングする際は、前記活性化機構を前記処理室内に移動させた状態で、前記ガス供給部からクリーニングガスを供給させ、前記活性化機構により前記処理室内の前記クリーニングガスをプラズマ化させる、ように制御するコントローラと、
を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
基板を処理室内に搬入する工程と、
前記処理室内のガスをプラズマ化する活性化機構を、前記処理室に連通する退避室に退避させ、前記処理室と前記退避室との間のガス流通を遮断した状態で、前記処理室内に処理ガスを供給して前記基板を処理する工程と、
処理後の前記基板を前記処理室内から搬出する工程と、
前記活性化機構を前記退避室から前記処理室内に移動する工程と、
前記処理室内に前記クリーニングガスを供給し、前記活性化機構により前記処理室内の前記クリーニングガスをプラズマ化して前記処理室内をクリーニングする工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−258452(P2008−258452A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99977(P2007−99977)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】