説明

半導体装置の製造方法及び半導体装置

【課題】NチャネルMOSFETとPチャネルMOSFETを備える半導体装置において、PチャネルMOSFETの閾値電圧のばらつきを抑制し、製造歩留まりを上げる。
【解決手段】半導体基板103の上にゲート絶縁膜110A、110Bを形成した後、PチャネルMOSFET形成領域107に形成されたゲート絶縁膜110Bを第一マスク111で覆う。次に、NチャネルMOSFET形成領域106およびPチャネルMOSFET形成領域107に第一金属層112を形成し、PチャネルMOSFET形成領域107から第一金属層112および第一マスク111を除去することにより、PチャネルMOSFET形成領域107に形成されたゲート絶縁膜110Bを露出させる。その後、NチャネルMOSFET形成領域106およびPチャネルMOSFET形成領域に107ゲート電極を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの微細化の進展にともない、MOSFET(Metal−Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を構成するポリシリコンゲート電極の空乏化による駆動電流の劣化が問題となっている。
【0003】
そこで、金属ゲート電極を用いることにより、電極の空乏化を回避する技術が検討されている。そして、NチャネルMOSFET(以下、「NMOSFET」という)、PチャネルMOSFET(以下、「PMOSFET」という)ともに同一の金属からなる金属ゲート電極を用いる場合には、仕事関数を制御して閾値電圧を低減するため、どちらかのMOSFETのゲート絶縁膜と金属ゲート電極の間に、金属ゲート電極と異なる微量の金属を挟む技術が検討されている。
【0004】
このような所望の領域のみに金属膜を形成する技術としては、フォトリソグラフィと金属エッチングプロセスによる金属材料のパターニング法が用いられる。その他、特許文献1〜4に開示されているようなリフトオフ法を用いることもできる。
【0005】
特許文献1には、リフトオフ法により電子デバイスの金属電極を形成する技術が開示されている。リフトオフ用の溶液としては、アルコール類、ケトン類、エステル類等が使用できると記載されている。
【0006】
特許文献2には、有機半導体材料の電極形成において、リフトオフ法を用いる技術が開示されている。リフトオフには、アルカリ現像液が使用できると記載されている。
【0007】
特許文献3には、有機薄膜トランジスタのゲート電極の形成にリフトオフ法を用いる技術が開示されている。リフトオフには、レジスト剥離液が用いられている。
【0008】
特許文献4には、有機半導体材料の電極形成において、リフトオフ法を用いる技術が開示されている。リフトオフには、過酸化水素水または希硝酸が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−109039号公報
【特許文献2】特開2008−85200号公報
【特許文献3】特開2005−183782号公報
【特許文献4】特開平7−191323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、図16、17を用いて、フォトリソグラフィと金属エッチングプロセスによる金属材料のパターニング法により、NMOSFETのゲート絶縁膜510と金属ゲート電極513の間に、金属ゲート電極513と異なる金属層512を挟み込んだ半導体装置の製造方法の一例を説明する。
【0011】
まず、図16(a)に示すように、半導体基板503上に、シリコン酸化膜などの絶縁膜510を形成する。次に、図16(b)に示すように、スパッタリング法やCVD法を用い、絶縁膜510上全面に、金属層512としてランタンアルミネート(以下、「LAO」という)を堆積する。
【0012】
続いて、図16(c)に示すように、NMOSFET形成領域506に形成された金属層512のみを覆うようにレジスト520を形成する。そして、レジスト520をマスクとして、PMOSFET形成領域507において露出している金属層(LAO層)512を希塩酸でウエットエッチングした後、レジスト520を除去する。これにより、図17(a)に示すように、NMOSFET形成領域506にのみ金属層512が形成され、PMOSFET形成領域507においては絶縁膜510が露出される。
【0013】
その後、図17(b)に示すように、金属ゲート電極513、ポリシリコン電極514を形成する。さらに、サイドウォールを周知の技術により形成した後、ソース/ドレイン拡散層の不純物注入を行う(図示せず)。
【0014】
この半導体装置の製造方法の場合、PMOSFET形成領域507に形成された絶縁膜510上に金属層512を一度形成した後、それをウエットエッチングにより取り除くという処理が行われている。かかる場合、PMOSFET形成領域507に形成された絶縁膜510上の金属層512が、ウエットエッチングにより十分に取り除かれず、1.0×1012〜1.0×1013atoms/cm程度の金属材料511が残留してしまう。そして、金属材料511が残留した状態で、その上に金属ゲート電極513、及び、ポリシリコン電極514を形成すると、PMOSFETの閾値電圧のばらつきが増大するという問題が生じる。
【0015】
また、特許文献1乃至4のようなウエットエッチングによるリフトオフ法では、ウエットエッチングによるサイドエッチにより、目的とする正確なパターン形状が得られないという問題(図18)と、ウエットエッチング液によってはPMOSFET形成領域の絶縁膜が同時にエッチングされるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、半導体基板上に第一導電型MOSFETと第二導電型MOSFETを備える半導体装置の製造方法であって、前記半導体基板の第一導電型MOSFET形成領域および第二導電型MOSFET形成領域にゲート絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、前記第一導電型MOSFET形成領域に形成された前記ゲート絶縁膜を覆わず、かつ、前記第二導電型MOSFET形成領域に形成された前記ゲート絶縁膜を覆う第一マスクを形成する第一マスク形成工程と、前記第一マスク、および、前記第一導電型MOSFET形成領域に位置する前記ゲート絶縁膜の上に第一金属層を形成する第一金属層形成工程と、前記第二導電型MOSFET形成領域に形成された前記第一金属層および前記第一マスクを除去する第一除去工程と、前記第二導電型MOSFET形成領域および前記第一導電型MOSFET形成領域に、ゲート電極を形成するゲート電極形成工程と、を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0017】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、第一導電型MOSFET形成領域、及び、第二導電型MOSFET形成領域、に第一金属層を形成する処理を、前記第二導電型MOSFET形成領域のゲート絶縁膜を第一マスクで覆った状態で行う。よって、前記第二導電型MOSFET形成領域に形成されたゲート絶縁膜と、前記第一金属層が接することはない。このため、前記第二導電型MOSFET形成領域に形成された前記ゲート絶縁膜に、所定濃度以上の前記第一金属層を構成する第一金属が付着することを回避することができる。
【0018】
よって、前記第二導電型MOSFET形成領域に形成された前記ゲート絶縁膜上に所定濃度以上の前記第一金属が付着し、また、前記ゲート絶縁膜に所定濃度以上の前記第一金属が拡散した状態で、その上にゲート電極が形成されるという不都合が生じない。その結果、前記第二導電型MOSFETの閾値電圧のばらつきを増大させるという問題を回避することが可能となる。
【0019】
また、本発明によれば、半導体基板上に第一導電型MOSFETと第二導電型MOSFETを備える半導体装置であって、前記第一導電型MOSFETは、前記半導体基板上に形成された第一ゲート絶縁膜と、前記第一ゲート絶縁膜の上に形成された第一ゲート電極と、前記第一ゲート絶縁膜と前記第1ゲート電極の間に介在する第一金属層と、を有し、前記第二導電型MOSFETは、前記半導体基板上に形成された第二ゲート絶縁膜と、前記第二ゲート絶縁膜の上に形成された第二ゲート電極と、を有し、前記第二ゲート絶縁膜と前記第二ゲート電極の間における前記第一金属の付着量は、1.0×1012atoms/cm以下の面密度である半導体装置が提供される。
【0020】
本発明の半導体装置によれば、第二導電型MOSFETの第二ゲート絶縁膜と第二ゲート電極との間における第一金属の付着量が、面密度1.0×1012atoms/cm以下と低濃度であるため、閾値電圧への影響は無視できる。その結果、第二導電型MOSFETの閾値電圧ばらつきを抑制することができる。
【0021】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、第一導電型MOSFETと第二導電型MOSFETを備える半導体装置において、第二導電型MOSFETの閾値電圧のばらつきを抑制し、製造歩留まりを上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態1の半導体装置を示す断面概略図
【図2】実施形態1の半導体装置の製造方法のフローチャート図
【図3】実施形態1の半導体装置の製造方法を説明するための断面概略図
【図4】実施形態1の半導体装置の製造方法を説明するための断面概略図
【図5】実施形態1の半導体装置の製造方法を説明するための断面概略図
【図6】実施形態1の半導体装置の製造方法を説明するための断面概略図
【図7】実施形態1の半導体装置の製造方法を説明するための断面概略図
【図8】実施形態1の半導体装置の製造方法を説明するための断面概略図
【図9】実施形態2の半導体装置の製造方法のフローチャート図
【図10】実施形態2の半導体装置の製造方法を説明するための断面概略図
【図11】実施形態3の半導体装置を示す断面概略図
【図12】実施形態3の半導体装置の製造方法のフローチャート図
【図13】実施形態3の半導体装置の製造方法のフローチャート図
【図14】実施形態3の半導体装置の製造方法を説明するための断面概略図
【図15】本実施形態の半導体装置の効果を説明するためのグラフ
【図16】半導体装置の製造方法を示す断面概略図
【図17】半導体装置の製造方法を示す断面概略図
【図18】ウエットエッチングによるリフトオフ法を用いた半導体装置の製造方法による問題を示す断面概略図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
<<実施形態1>>
<実施形態1の構成>
【0025】
図1は、本実施形態における半導体装置100を示す断面概略図である。本実施形態の半導体装置100は、半導体基板103上に、例えば、NチャネルMOSFETである第一導電型MOSFET101と、PチャネルMOSFETである第二導電型MOSFET102と、を備える。なお、第一導電型MOSFET101をPチャネルMOSFETとし、第二導電型MOSFET102をNチャネルMOSFETとすることも可能である。
【0026】
第一導電型MOSFET101は、第一導電型MOSFET形成領域106に、第一ゲート絶縁膜110Aと、第一ゲート絶縁膜110Aの上に形成された第一ゲート電極124Aと、第一ゲート絶縁膜110Aと第一ゲート電極124Aとの間に介在する第一金属層112と、を有している。
【0027】
第二導電型MOSFET102は、第二導電型MOSFET形成領域107に形成された第二ゲート絶縁膜110Bと、第二ゲート絶縁膜110Bの上に形成された第二ゲート電極124Bと、を有している。そして、第二ゲート絶縁膜110Bと、第二ゲート電極124Bとの間における、第一金属層112を構成する第一金属の付着量は、1.0×1012atoms/cm以下の面密度であり、さらに好ましくは1.0×10atoms/cm以上、かつ、1.0×1012atoms/cm以下の面密度である。
【0028】
なお、前記第一金属は、ランタン(La)、ルビジウム(Rb)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)、スカンジウム(Sc)、ルテチウム(Lu)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、の中の少なくとも一つから選択されるのが望ましい。
【0029】
以下、このような本実施形態の半導体装置の製造方法について説明する。
【0030】
本実施形態の半導体装置の製造方法は、図2のフローチャート図に示すように、絶縁膜形成工程S100と、第一マスク形成工程S200と、第一金属層形成工程S300と、第一除去工程S400と、ゲート電極形成工程S500と、を有する。
【0031】
絶縁膜形成工程S100は、図4(a)に示すように、半導体基板103の第一導電型MOSFET形成領域106、および、第二導電型MOSFET形成領域107、にゲート絶縁膜110A、110Bを形成する工程である。
【0032】
第一マスク形成工程S200は、図5(a)に示すように、第一導電型MOSFET形成領域106に形成されたゲート絶縁膜110Aを覆わず、かつ、第二導電型MOSFET形成領域107に形成されたゲート絶縁膜110Bを覆う第一マスク111を形成する工程である。
【0033】
第一金属層形成工程S300は、図5(b)に示すように、第一マスク111、および、第一導電型MOSFET形成領域106に位置するゲート絶縁膜110A、の上に第一金属層112を形成する工程である。
【0034】
第一除去工程S400は、第二導電型MOSFET形成領域107に形成された第一金属層112および第一マスク111を除去する工程である(図5(b)→図6(a))。
【0035】
ゲート電極形成工程S500は、図7(a)に示すように、第一導電型MOSFET形成領域106および第二導電型MOSFET形成領域107に、ゲート電極124A、124Bを形成する工程である。
【0036】
次に、このような工程(S100〜S500)を含む本実施形態の半導体装置の製造方法の処理の流れの一例について詳細に説明する。
【0037】
まず、図3(a)に示すように、半導体基板103上に周知の技術により、STI(Shallow Trench Isolation)による素子分離領域104を形成する。半導体基板103としては、例えば、(100)面を主面とするシリコン基板などを用いることができる。なお、素子分離領域104は、LOCOS法等の他の方法で形成してもよい。
【0038】
次に、シリコン基板103の表面に犠牲酸化膜105を形成する(図3(a))。犠牲酸化膜105は、シリコン基板103の表面を熱酸化することにより得ることができる。処理条件としては、例えば、酸素雰囲気中で処理温度850℃、処理時間100秒程度とすることができる。犠牲酸化膜105の膜厚は5〜10nm程度とするのが適当である。
【0039】
続いて、公知のフォトリソグラフィ法を用いて、P型不純物をシリコン基板103の第一導電型MOSFET形成領域106上のみにイオン注入してPウェル108を形成する(図3(a))。処理条件としては、例えば、ボロンを400KeV、1.0×1013atoms/cm2以上、かつ、5.0×1013atoms/cm2以下の条件で注入を行い、さらに、あらかじめ設定された第一導電型MOSFET101の閾値電圧に応じて、ボロンを10keV、5.0×1011atoms/cm2以上、かつ、2.0×1013atoms/cm2以下の条件で注入、などとすることができる。
【0040】
次に、公知のフォトリソグラフィ法を用いて、N型不純物をシリコン基板103の第二導電型MOSFET形成領域107上のみにイオン注入してNウェル109を形成する(図3(b))。処理条件としては、例えば、リンを150KeV、1.0×1013atoms/cm2以上、かつ、5.0×1013atoms/cm2以下の条件で注入を行い、さらに、あらかじめ設定された第二導電型MOSFET102の閾値電圧に応じて、ヒ素を80keV、5.0×1011atoms/cm2以上、かつ、2.0×1013atoms/cm2以下の条件で注入、などとすることができる。
【0041】
なお、図3(a)および(b)においては、第二導電型MOSFET形成領域107および第一導電型MOSFET形成領域106がマスクで覆われていない状態でイオン注入(矢印で示す)がなされている。しかし、実際には、フォトリソグラフィ法を用いて第二導電型MOSFET形成領域107または第一導電型MOSFET形成領域106をマスクで覆った状態で、イオン注入(矢印で示す)がなされる。
【0042】
次に熱処理を行い、Pウェル108、Nウェル109に注入したチャネル不純物を活性化する。熱処理の条件は、例えば、処理温度1000℃、処理時間10秒程度とすることができる。そして、シリコン基板103上に形成されている犠牲酸化膜105を除去する。具体的には、犠牲酸化膜105を、希釈フッ酸(例えば、フッ酸:水=1:10)などを用いてエッチング除去した後、純水を用いて水洗し、窒素ブローなどにより乾燥する。
【0043】
次に、図4(a)に示すように、半導体基板103の第一導電型MOSFET形成領域106、および、第二導電型MOSFET形成領域107、にゲート絶縁膜110A、110Bを形成する(絶縁膜形成工程S100)。
【0044】
ゲート絶縁膜110A、110Bとしては、例えば、シリコン酸化膜とすることができ、その形成方法としては、例えば、酸化性雰囲気下で、高温にしたシリコンと、酸素または水と、を化学反応させる熱酸化法を用いることができる。この方法を用いた場合、図示するように、素子分離領域104上を除いた領域にゲート絶縁膜110A、110Bが形成される。なお、ゲート絶縁膜110A、110Bの信頼性向上のため、シリコン酸化膜の表面を、プラズマ窒化法等により窒化してもよい。ゲート絶縁膜110A、110Bは、シリコン酸化膜(SiO)のほか、窒化ハフニウムシリケート膜(HfSiON)、酸化ハフニウム膜(HfO)、窒化ジルコニウムシリケート膜(ZrSiON)、酸化ジルコニウム膜(ZrO)、酸化チタン膜(TiO)、などのhigh−k膜とすることもできる。
【0045】
ここで、ゲート絶縁膜110A、110Bの膜厚は、第一導電型MOSFET101及び第二導電型MOSFET102の使用電圧に応じて適宜設定することができる。例えば、使用電圧1.0Vの場合には0.5nm以上かつ2.0nm以下とするのが適切であり、例えば、1.1nmなどとすることができる。
【0046】
次に、図5(a)に示すように、第一導電型MOSFET形成領域106に形成されたゲート絶縁膜110Aを覆わず、かつ、第二導電型MOSFET形成領域107に形成されたゲート絶縁膜110Bを覆う第一マスク111を形成する(第一マスク形成工程S200)。
【0047】
具体的には、まず、図4(b)に示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法、スパッタリング法、塗布法、などの手段により、ゲート絶縁膜110A、110Bを覆うように第一マスク111を形成する。第一マスク111は、アッシング法により容易に除去が可能な材質で構成するのが好ましく、例えば、アモルファスカーボン薄膜、または、ポリイミド薄膜、または、その他の有機系薄膜、または、フォトレジスト、などとすることができる。なお、第一マスク111の膜厚は、例えば30nm程度とすることができる。
【0048】
その後、図5(a)に示すように、フォトリソグラフィ法とドライエッチング法を用いて、第一導電型MOSFET形成領域106上の第一マスク111を選択的に除去する。第一マスク111を除去するためのドライエッチング法としては、例えば、第一マスク111をアモルファスカーボン薄膜で構成する場合、塩素と酸素の混合ガスによるRFプラズマエッチングを利用することができる。これにより、第一導電型MOSFET形成領域106に形成されたゲート絶縁膜110Aが表面に露出する(図5(a))。
【0049】
次に、図5(b)に示すように、第一マスク111、および、第一導電型MOSFET形成領域106に位置するゲート絶縁膜110A、の上に第一金属層112を形成する(第一金属層形成工程S300)。
【0050】
第一金属層112は、導電性材質からなる層113A(図1参照)の仕事関数を制御することにより、第一導電型MOSFET101の閾値電圧を低減する目的で設けられる。この目的を実現するため、第一金属層112は、ランタン(La)、ルビジウム(Rb)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)、スカンジウム(Sc)、ルテチウム(Lu)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、の中の少なくとも一つからなる第一金属により構成される。また、ゲート絶縁膜110Aの表面への第一金属の付着量は、1.0×1014atoms/cm2以上、かつ、3.0×1015atoms/cm2以下の面密度とする。かかる場合、第一金属層112を形成した後の第一マスク111の表面への第一金属の付着量も、大体、1.0×1014atoms/cm2以上、かつ、3.0×1015atoms/cm2以下の面密度となる。
【0051】
金属層112の具体的形成方法としては、例えば、CVD法、スパッタリング法、ALD(Atomic Layer Deposition:原子層堆積)法、などを利用することができる。しかし、上記した第一金属の付着量を考慮すると、スパッタリング法が特に好ましい。
【0052】
なお、図5(b)に示すように、第二導電型MOSFET形成領域107においては、第一マスク111の上に第一金属層112が形成される。よって、第一金属層112と第二導電型MOSFET形成領域107に形成されたゲート絶縁膜110Bと、が接することはない。
【0053】
次に、図5(b)→図6(a)に示すように、第二導電型MOSFET形成領域107に形成された第一金属層112および第一マスク111を除去する(第一除去工程S400)。
【0054】
本実施形態では、ドライエッチング法により第一マスク111をアッシングすることで、第一マスク111と、第一マスク111の上に形成された第一金属層112と、を同一処理で除去する。ドライエッチング法としては、例えば、酸素プラズマアッシング処理、または、水素および窒素の混合ガスから成るプラズマ処理を利用することができる。なお、本実施形態では、第一金属層112は1.0×1014atoms/cm2以上、かつ、3.0×1015atoms/cm2以下という小さい面密度で第一マスク111の表面に付着している。よって、第一マスク111をアッシングするため照射されたプラズマは、第一金属層112を透過し、第一金属層112の下の層に位置する第一マスク111に到達する。その結果、第一マスク111はアッシングされ、第二導電型MOSFET形成領域107から除去される。また、第一マスク111が除去されることで、第一マスク111の上に形成されていた第一金属層112も、第二導電型MOSFET形成領域107から除去される。
【0055】
これにより、第二導電型MOSFET形成領域107に形成されたゲート絶縁膜110Bが表面に露出する(図6(a))。
【0056】
次に、図7(a)に示すように、第一導電型MOSFET形成領域106および第二導電型MOSFET形成領域107に、ゲート電極124A、124Bを形成する(ゲート電極形成工程S500)。
【0057】
ゲート電極124A、124Bは、チタン(Ti)を含む導電性材料、タンタル(Ta)を含む導電性材料、および、タングステン(W)を含む導電性材料、からなる群から選択される一つまたは二つ以上の材料からなる層113A、113Bを有する。またその層113A、113Bの上に、多結晶シリコン膜、または、アモルファスシリコン膜からなる層114A、114Bを有する。
【0058】
ゲート電極124A、124Bの具体的形成方法としては、例えば、図6(b)に示すように、第一導電型MOSFET形成領域106に形成された第一金属層112上と、第二導電型MOSFET形成領域107に形成されたゲート絶縁膜110B上に、窒化チタン膜(以下、「TiN膜」という)113を成膜し、その後、TiN膜113の上に、多結晶シリコン膜114を成膜する。TiN膜113の膜厚は10nm、多結晶シリコン膜からなる層114の膜厚は60nm程度とする。
【0059】
その後、多結晶シリコン膜114およびTiN膜113および第一金属層112およびゲート絶縁膜110を、従来技術により選択的にドライエッチングし、ゲート電極124A、124Bの形状に加工する(図7(a))。
【0060】
次に、図7(b)に示すように、トランジスタの短チャネル特性を改善するための浅接合領域であるエクステンション領域115、116を形成する。エクステンション領域115を形成する方法としては、例えば、リソグラフィ法で第一導電型MOSFET形成領域106上のみを選択的に開口したのち、ヒ素を2.0keV、1.0×1015atoms/cm2の条件でイオン注入してもよい。また、エクステンション領域116を形成する方法としては、例えば、リソグラフィ法で第二導電型MOSFET領域107上のみを選択的に開口したのち、フッ化ホウ素(BF)を2.5keV、1.0×1015atoms/cm2の条件でイオン注入してもよい。
【0061】
次に、図8に示すように、シリコン基板103上のトランジスタ形成領域全面に側壁絶縁膜117を形成する。多結晶シリコン層114A、114Bと、TiN膜113A、113Bと、ゲート絶縁膜110A、110Bと、第一導電型MOSFET101においては第一金属層112と、の側壁に側壁絶縁膜117が設けられた構成とする。その形成方法としては、例えば、多結晶シリコン膜114A、114BおよびTiN膜113A、113Bおよびゲート絶縁膜110A、110Bおよび第一導電型MOSFET101においては第一金属層112の側壁のみに側壁絶縁膜117が残るように、側壁絶縁膜117の絶縁材質を半導体基板103上全面に堆積したのち、フロロカーボンガスなどを用いて異方性エッチングを行うことで側壁絶縁膜117を形成してもよい。
【0062】
次に、ゲート電極124Aおよび側壁絶縁膜117をマスクとして、エクステンション領域115上にヒ素などのN型不純物をドープして不純物拡散領域118を形成する(図8)。これにより、N型トランジスタのソース領域およびドレイン領域が形成される。さらに、エクステンション領域116上にホウ素等のP型不純物をドープして不純物拡散領域119を形成する。これにより、P型トランジスタのソース領域およびドレイン領域が形成される。N型不純物の注入は、例えば、ヒ素を2keV、3.0×1015atoms/cm2以下の条件で注入することができる。また、P型不純物の注入は、例えば、ホウ素を2.5keV、3.0×1015atoms/cm2以下の条件で注入することができる。
【0063】
その後、非酸化雰囲気中で熱処理を行うことにより、不純物の活性化を行う。熱処理の条件としては、例えば、1000℃以上1060℃以下の範囲とすることができる。以上のプロセスにより、図1に示す本実施形態の半導体装置100が形成される。
【0064】
このような本実施形態の本半導体装置の製造方法によれば、第二導電型MOSFET形成領域107に形成されたゲート絶縁膜110Bと、第一金属層112と、が接触することなく半導体装置を製造することができる。
【0065】
このため、第二導電型MOSFET形成領域107に形成されたゲート絶縁膜110B上に、所定濃度以上の第一金属層112を構成する第一金属が付着することを回避することができる。
【0066】
よって、第二導電型MOSFET形成領域107に形成されたゲート絶縁膜110B上に所定濃度以上の前記第一金属が付着し、また、ゲート絶縁膜110Bに所定濃度以上の前記第一金属が拡散した状態で、その上にゲート電極124Bが形成されるという不都合が生じない。その結果、第二導電型MOSFET102の閾値電圧のばらつきを増大させるという問題を回避することが可能となる。
【0067】
また、本実施形態の第一除去工程S400は、上記した通りリフトオフにより、第一マスク111と、第一金属層112と、を除去するが、ドライエッチング法によりリフトオフを実現している点で、特許文献1乃至4と異なる。
【0068】
当該違いにより、本実施形態においては、第一金属層112に対して、第一マスク111に剥離液を浸透させるための切れ目などを設ける必要がない。このため、リフトオフの下地層となる第一マスク111を形成する手段として、RFプラズマエッチングなど非等方性エッチングを利用することができる。その結果、目的とする正確なパターンの第一金属層112を得ることができる。また、エッチング対象でないゲート絶縁膜110Bが、第一マスク111の剥離液などによりエッチングされるという不都合が生じることもない。
<<実施形態2>>
<実施形態2の構成>
【0069】
本実施形態の半導体装置100の構成は、実施形態1と同様であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0070】
以下、本実施形態の半導体装置の製造方法について説明する。
【0071】
本実施形態の半導体装置の製造方法は、図9のフローチャート図に示すように、絶縁膜形成工程S100と、第一マスク形成工程S200と、第一金属層形成工程S300と、第二マスク形成工程S310と、第一除去工程S400と、ゲート電極形成工程S500と、を有し、第一除去工程S400は、第一金属層除去工程S401と、第一マスク除去工程S402と、を有する。
【0072】
絶縁膜形成工程S100と、第一マスク形成工程S200と、第一金属層形成工程S300と、ゲート電極形成工程S500と、については、実施形態1と同様であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0073】
第二マスク形成工程S310は、第一金属層形成工程S300の後、かつ、第一除去工程S400の前に、図10(a)に示すように、第二導電型MOSFET形成領域107に形成された第一金属層112を覆わず、かつ、第一導電型MOSFET形成領域106に形成された第一金属層112を覆う第二マスク120を形成する工程である(図5(b)→図10(a))。
【0074】
第二マスク120は、以下で説明する第一除去工程S400の第一金属層除去工程S401が行われる際、第一導電型MOSFET形成領域106に形成された第一金属層112を保護する役目を果たす。よって、その材質としては、第一金属層除去工程S401により除去されないものである必要がある。また、第二マスク120は、第一金属層除去工程S401の後、不要となり除去される。この第二マスク120の除去を、以下で説明する第一除去工程S400の第一マスク除去工程S402により、第一マスクと同一の処理で実現すると、処理量を減らすことが可能となり、製造効率を上げることが可能となる。以上より、第二マスク120は、例えば、アモルファスカーボン薄膜、または、ポリイミド薄膜、または、その他の有機系薄膜、または、フォトレジスト、などとするのが望ましい。このような第二マスクの具体的形成方法は、上記した第一マスク形成工程S200における第一マスクの形成工程に準じて実現することができる。
【0075】
第一除去工程S400の第一金属層除去工程S401は、図10(a)に示す状態から、ウエットエッチング法により、第二導電型MOSFET形成領域107に形成された第一金属層112を除去する工程である。第一金属層112のウエットエッチングは、第一金属層112を構成する金属の種類に応じ、希塩酸、希フッ酸、その他の酸性溶液、純水、からなる群から選択される一つを用いて行うことができる。例えば、第一金属層112としてLa層が形成されている場合には、希塩酸(例、HCl:HO=1:20)を用いてエッチングをすることができる。なお、この時、第一導電型MOSFET形成領域106に形成された第一金属層112は、第二マスク120によって覆われているので、エッチングされずに残る。
【0076】
第一除去工程S400の第一マスク除去工程S402は、図10(b)に示すように、ドライエッチング法により、第一マスク111を除去する工程である。ドライエッチング法としては、例えば、酸素プラズマアッシング処理、または、水素および窒素の混合ガスから成るプラズマ処理を利用することができる。
【0077】
なお、第二マスク120が、アモルファスカーボン薄膜、または、ポリイミド薄膜、または、その他の有機系薄膜、または、フォトレジスト、などである場合には、第一除去工程S400は第一マスク111と第二マスク120を同一処理により除去する工程であってもよい。このようにした場合、半導体装置の製造における処理量を減らすことが可能となり、製造効率を上げることが可能となる。
【0078】
このような本実施形態の本半導体装置の製造方法によれば、第二導電型MOSFET形成領域107に形成されたゲート絶縁膜110Bと、第一金属層112と、が接触することなく半導体装置を製造することができる。
【0079】
このため、第二導電型MOSFET形成領域107に形成されたゲート絶縁膜110B上に、所定濃度以上の第一金属層112を構成する第一金属が付着することを回避することができる。
【0080】
よって、第二導電型MOSFET形成領域107に形成されたゲート絶縁膜110B上に所定濃度以上の前記第一金属が付着し、また、ゲート絶縁膜110Bに所定濃度以上の前記第一金属が拡散した状態で、その上にゲート電極124Bが形成されるという不都合が生じない。その結果、第二導電型MOSFET102の閾値電圧のばらつきを増大させるという問題を回避することが可能となる。
【0081】
また、本実施形態の半導体装置の製造方法は、第二導電型MOSFET形成領域107に形成された第一マスク111と、第一マスク111の上に形成された第一金属層112と、をドライエッチング法により同時に除去する実施形態1と異なり、ウエットエッチング法により第一金属層112を除去した後、ドライエッチング法により第一マスク111を除去する。
【0082】
当該違いにより、第一マスク111の上に形成された第一金属層112が取り除かれた後、第一マスク111をアッシングすることになるので、第一マスク111をアッシングするためのプラズマを効率的に第一マスク111に照射することが可能となる。
<<実施形態3>>
<実施形態3の構成>
【0083】
本実施形態の半導体装置100の構成は、実施形態1と同様であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0084】
以下、本実施形態の半導体装置の製造方法について説明する。
【0085】
本実施形態の半導体装置の製造方法は、図2又は図3で示す半導体装置の製造方法における第一除去工程S400の後、かつ、ゲート電極形成工程S500の前に、図12に示す、第三マスク形成工程S410と、第二金属層形成工程S420と、第二除去工程S430と、を有する。なお、図13に示すように、第二金属層形成工程S420と、第二除去工程S430と、の間に第四マスク形成工程S421を有し、第二除去工程S430は、第二金属層除去工程S431と第三マスク除去工程S432と、を有してもよい。
【0086】
絶縁膜形成工程S100と、第一マスク形成工程S200と、第一金属層形成工程S300と、第二マスク形成工程S310と、第一除去工程S400と、ゲート電極形成工程S500と、については、実施形態1または2における説明と同様であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0087】
第三マスク形成工程S410は、図14(a)に示すように、第二導電型MOSFET形成領域107に形成されたゲート絶縁膜110Bを覆わず、かつ、第一導電型MOSFET形成領域106に形成された第一金属層112を覆う第三マスク121を形成する工程である。図14(a)は、第三マスク形成工程S410の後に、以下で説明する第二金属層形成工程S420が実行され、第三マスク121の上に第二金属層122が形成された状態を示すものである。
【0088】
なお、第三マスク121は、アモルファスカーボン薄膜、ポリイミド薄膜およびその他の有機系薄膜、および、フォトレジスト、からなる群から選択することができる。その形成方法は、第一マスク形成工程S200で説明した第一マスク111の形成方法と同様にすることができる。よって、ここでの詳細な説明は省略する。
【0089】
第二金属層形成工程S420は、図14(a)に示すように、第二導電型MOSFET形成領域107に位置するゲート絶縁膜110B、および、第三マスク121、の上に第二金属層122を形成する工程である。
【0090】
第二金属層122は、ゲート電極124Bを構成する一つの層である導電性材質からなる層113B(図1参照)の仕事関数を制御することにより、第二導電型MOSFET102の閾値電圧を低減する目的で設けられる。この目的を実現するため、第二金属層122は、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、タンタル(Ta)、イットリウム(Y)、ルテニウム(Ru)、アンチモン(Sb)、ルテチウム(Lu)、テルル(Te)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)からなる群から、第一金属層112を構成する第一金属とは異なるよう選択された少なくとも一つの金属からなる第二金属により構成される。
【0091】
また、第二導電型MOSFET形成領域107に位置するゲート絶縁膜110Bの表面への第二金属の付着量は、1.0×1014atoms/cm2以上、かつ、3.0×1015atoms/cm2以下の面密度である。かかる場合、大体、第二金属層122を形成した後の第三マスク121の表面への第二金属の付着量も、1.0×1014atoms/cm2以上、かつ、3.0×1015atoms/cm2以下の面密度となる。第二金属層122の形成方法は、実施形態1で説明した第一金属層形成工程S300の第一金属層112の形成方法と同様の手段により実現することができる。
【0092】
ここで、図14(a)に示すように、第一導電型MOSFET形成領域106においては、第三マスク121の上に第二金属層122が形成される。よって、第二金属層122と、表面に低濃度の第一金属層112を形成されたゲート絶縁膜110Aと、が接することはない。
【0093】
第二除去工程S430は、図14(b)に示すように第一導電型MOSFET形成領域106に形成された第二金属層122および第三マスク121を除去する工程である。例えば、第二除去工程S430は、ドライエッチング法により第三マスク121をアッシングすることで、第二金属層122および第三マスク121を同一処理で除去する工程であってもよい。
【0094】
なお、第二金属層形成工程S420と、第二除去工程S430と、の間に以下で説明する第四マスク形成工程S421が行われる場合、第二除去工程S430は、第二金属層除去工程S431と第三マスク除去工程S432と、を有する。
【0095】
第二金属層除去工程S431は、ウエットエッチング法により、第一導電型MOSFET形成領域106に形成された第二金属層122を除去する工程である。ウエットエッチング法は、例えば、希塩酸、希フッ酸、その他の酸性溶液、純水、からなる群から選択した一つを用いて実現することができる。
【0096】
また、第三マスク除去工程S432は、ドライエッチング法により、第三マスク121を除去する工程である。ドライエッチング法としては、例えば、酸素プラズマアッシング処理、または、水素および窒素の混合ガスから成るプラズマ処理を用いて実現することができる。
【0097】
なお、第二除去工程S430、第二金属層除去工程S431、第三マスク除去工程S432は、それぞれ、実施形態1または2で説明した第一除去工程S400、第一金属層除去工程S401、第一マスク除去工程S402、に準じて実現することができる。よって、ここでの詳細な説明は省略する。
【0098】
第四マスク形成工程S421は、第二金属層形成工程S420の後(図14(a)に示す状態の後)、かつ、第二除去工程S430の前に、第一導電型MOSFET形成領域106に形成された第二金属層122を覆わず、かつ、第二導電型MOSFET形成領域107に形成された第二金属層122を覆う第四マスク(図示せず)を形成する工程である。
【0099】
第四マスクは、アモルファスカーボン薄膜、ポリイミド薄膜およびその他の有機系薄膜、および、フォトレジスト、からなる群から選択することができる。その形成方法は、実施形態2で説明した第二マスク形成工程S310に準じて実現することができる。よって、ここでの詳細な説明は省略する。
【0100】
なお、第四マスクが、アモルファスカーボン薄膜、または、ポリイミド薄膜、または、その他の有機系薄膜、または、フォトレジスト、などである場合には、第二除去工程S430は第三マスク121と第四マスクを同一処理により除去する工程であってもよい。このようにした場合、半導体装置の製造における処理量を減らすことが可能となり、製造効率を上げることが可能となる。
【0101】
このような本実施形態の本半導体装置の製造方法によれば、第一導電型MOSFET形成領域106に形成されたゲート絶縁膜110Aと、第二金属層122と、が接触することなく半導体装置を製造することができる。
【0102】
このため、第一導電型MOSFET形成領域106に形成されたゲート絶縁膜110A上に、所定濃度以上の第二金属層122を構成する第二金属が付着することを回避することができる。
【0103】
よって、第一導電型MOSFET形成領域106に形成されたゲート絶縁膜110A上に所定濃度以上の前記第二金属が付着し、また、ゲート絶縁膜110Aに所定濃度以上の前記第二金属が拡散した状態で、その上にゲート電極124Aが形成されるという不都合が生じない。その結果、第一導電型MOSFET101の閾値電圧のばらつきを増大させるという問題を回避することが可能となる。
【0104】
ここで、実施形態1〜3で説明した半導体装置の製造方法などを用いて製造することができる半導体装置100(以下、「本半導体装置100」という)(図1参照)の作用効果について説明する。
【0105】
図15は、ゲート絶縁膜110A(例:シリコン酸化膜)と、ゲート電極124A(例:多結晶シリコン膜114AおよびTiN膜113A)と、の間に第一金属層112(例:La層)を介在した第一導電型MOSFET101(NMOSFET)の、ゲート絶縁膜110Aとゲート電極124Aとの間におけるLa量に応じた閾値電圧(Vth)のシフト量の実験結果である。
【0106】
図示するグラフより、ゲート絶縁膜110Aとゲート電極124Aの間におけるLa付着量を面密度1.0×1014〜3.0×1015atoms/cmの範囲で制御することにより、閾値電圧を200mV〜500mVの範囲で直線的に制御できることがわかる。
【0107】
次に、図16、17を用いて説明した半導体装置の製造方法により、NMOSFETのゲート絶縁膜510とゲート電極513の間におけるLa付着量を面密度1.0×1014〜3.0×1015atoms/cmの範囲に制御して半導体装置を製造し、PMOSFETのゲート絶縁膜510とゲート電極513の間におけるLa付着量を検出した。検出方法は、XPS(X−ray photoelectron spectroscopy)法を用い、LaによるXPSスペクトル強度の標準試料との比較からLa量を決定した。本検出方法における分析下限の測定限界値は、1.0×10atoms/cmである。
【0108】
検出の結果、PMOSFETのゲート絶縁膜510とゲート電極513の間に、1.0×1012〜1.0×1013atms/cm程度の残留Laが検出された。Laの残留量1.0×1012atoms/cm程度の場合、図15を用いて閾値電圧のシフト量に換算すると、Vth約10mVの変動量に相当する。つまり、図16、17を用いて説明した方法で製造された半導体装置は、PMOSFETの閾値電圧が10mV以上ばらついてしまう。
【0109】
これに対し本半導体装置100は、上記した半導体装置の製造方法と異なり、第二導電型MOSFET形成領域107に形成されたゲート絶縁膜110Bと、第一金属層(La層)112と、が接触することなく半導体装置を製造することができる。
【0110】
このため、第二導電型MOSFET102(PMOSFET)のゲート絶縁膜110Bとゲート電極124Bとの間における第一金属(La)付着量を、図16、17を用いて説明した半導体装置の製造方法より小さくすることができる。すなわち、1.0×1012atoms/cm以下の面密度とすることができる。
【0111】
これにより、第二導電型MOSFET形成領域107に形成されたゲート絶縁膜110B上に所定濃度(1.0×1012atoms/cm)以上の第一金属(例:La)が付着し、また、ゲート絶縁膜110Bに所定濃度(1.0×1012atoms/cm)以上の第一金属(例:La)が拡散した状態で、その上にゲート電極124Bが形成されるという不都合が生じない。
【0112】
その結果、第二導電型MOSFET102(PMOSFET)の閾値電圧のばらつきを10mV以下という問題にならないレベルまで低減することができる。
【0113】
ここで、前述したように、XPS法によるLaの分析下限は、1.0×10atoms/cmである。つまり、本半導体装置100では、第二導電型MOSFET102のゲート絶縁膜110Bとゲート電極124Bとの間におけるLa付着量を1.0×10atoms/cm以上、かつ、1.0×1012atoms/cm以下の範囲に低減することができる。
【0114】
なお、図15を用いた上記説明は、図1に示すように、第一導電型MOSFET101に第一金属層112を形成する場合における第二導電型MOSFET102のゲート絶縁膜110Bとゲート電極124Bの間の残留第一金属量に着目した作用効果である。同様に、図11に示すように、第二導電型MOSFET102に第二金属層122を形成する場合における第一導電型MOSFET101のゲート絶縁膜110Aとゲート電極124Aの間の残留第二金属量に着目しても同一の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0115】
100 半導体装置
101 第一導電型MOSFET
102 第二導電型MOSFET
103 半導体基板
104 素子分離領域
105 犠牲酸化膜
106 第一導電型MOSFET形成領域
107 第二導電型MOSFET形成領域
108 Pウェル
109 Nウェル
110A ゲート絶縁膜
110B ゲート絶縁膜
111 第一マスク
112 第一金属層
113A Ti、Ta、Wの一つ以上を含む導電性材料からなる層
113B Ti、Ta、Wの一つ以上を含む導電性材料からなる層
114A 多結晶シリコン膜、または、アモルファスシリコン膜からなる層
114B 多結晶シリコン膜、または、アモルファスシリコン膜からなる層
115 エクステンション領域
116 エクステンション領域
117 側壁絶縁膜
118 N型不純物拡散層
119 P型不純物拡散層
120 第二マスク
121 第三マスク
122 第二金属層
124A ゲート電極
124B ゲート電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に第一導電型MOSFETと第二導電型MOSFETを備える半導体装置の製造方法であって、
前記半導体基板の第一導電型MOSFET形成領域および第二導電型MOSFET形成領域にゲート絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記第一導電型MOSFET形成領域に形成された前記ゲート絶縁膜を覆わず、かつ、前記第二導電型MOSFET形成領域に形成された前記ゲート絶縁膜を覆う第一マスクを形成する第一マスク形成工程と、
前記第一マスク、および、前記第一導電型MOSFET形成領域に位置する前記ゲート絶縁膜の上に第一金属層を形成する第一金属層形成工程と、
前記第二導電型MOSFET形成領域に形成された前記第一金属層および前記第一マスクを除去する第一除去工程と、
前記第一導電型MOSFET形成領域および前記第二導電型MOSFET形成領域に、ゲート電極を形成するゲート電極形成工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第一除去工程は、
ドライエッチング法により前記第一マスクをアッシングすることで、前記第一金属層および前記第一マスクを同一処理で除去する工程である請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第一金属層形成工程の後、かつ、前記第一除去工程の前に、
前記第二導電型MOSFET形成領域に形成された前記第一金属層を覆わず、かつ、前記第一導電型MOSFET形成領域に形成された前記第一金属層を覆う第二マスクを形成する第二マスク形成工程をさらに有し、
前記第一除去工程は、
ウエットエッチング法により、前記第二導電型MOSFET形成領域に形成された前記第一金属層を除去する第一金属層除去工程と、
ドライエッチング法により、前記第一マスクを除去する第一マスク除去工程と、
を有する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第一除去工程の前記第一マスク除去工程は、
ドライエッチング法により、前記第一マスクと前記第二マスクとを同一処理により除去する工程である請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第二マスクは、
アモルファスカーボン薄膜、ポリイミド薄膜およびその他の有機系薄膜、および、フォトレジスト、からなる群から選択される一つである請求項3または4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第一金属層を構成する第一金属の前記ゲート絶縁膜の表面および前記第一マスクの表面への付着量は、
1.0×1014atoms/cm2以上、かつ、3.0×1015atoms/cm2以下の面密度である請求項1から5のいずれか一に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第一除去工程における前記ドライエッチング法は、
酸素プラズマアッシング処理、または、水素および窒素の混合ガスから成るプラズマ処理である請求項2から6のいずれか一に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第一マスクは、
アモルファスカーボン薄膜、ポリイミド薄膜およびその他の有機系薄膜、および、フォトレジスト、からなる群から選択される一つである請求項1から7のいずれか一に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第一除去工程の前記ウエットエッチング法は、
希塩酸、希フッ酸、その他の酸性溶液、純水、からなる群から選択される一つを用いる請求項3から8のいずれか一に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第一除去工程の後、かつ、前記ゲート電極形成工程の前に、
前記第二導電型MOSFET形成領域に形成された前記ゲート絶縁膜を覆わず、かつ、前記第一導電型MOSFET形成領域に形成された前記第一金属層を覆う第三マスクを形成する第三マスク形成工程と、
前記第二導電型MOSFET形成領域に位置する前記ゲート絶縁膜、および、前記第三マスク、の上に第二金属層を形成する第二金属層形成工程と、
前記第一導電型MOSFET形成領域に形成された前記第二金属層および前記第三マスクを除去する第二除去工程と、
をさらに有する請求項1から9のいずれか一に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第二除去工程は、
ドライエッチング法により前記第三マスクをアッシングすることで、前記第二金属層および前記第三マスクを同一処理で除去する工程である請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第二金属層形成工程の後、かつ、前記第二除去工程の前に、
前記第一導電型MOSFET形成領域に形成された前記第二金属層を覆わず、かつ、前記第二導電型MOSFET形成領域に形成された前記第二金属層を覆う第四マスクを形成する第四マスク形成工程をさらに有し、
前記第二除去工程は、
ウエットエッチング法により、前記第一導電型MOSFET形成領域に形成された前記第二金属層を除去する第二金属層除去工程と、
ドライエッチング法により、前記第三マスクを除去する第三マスク除去工程と、
を有する請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第二除去工程の第三マスク除去工程は、
ドライエッチング法により、前記第三マスクと前記第四マスクを同一処理で除去する工程である請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記第四マスクは、
アモルファスカーボン薄膜、ポリイミド薄膜およびその他の有機系薄膜、および、フォトレジスト、からなる群から選択される一つである請求項12または13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記第二金属層を構成する第二金属の前記ゲート絶縁膜の表面および前記第三マスクの表面への付着量は、
1.0×1014atoms/cm2以上、かつ、3.0×1015atoms/cm2以下の面密度である請求項10から14のいずれか一に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記第二除去工程における前記ドライエッチング法は、
酸素プラズマアッシング処理、または、水素および窒素の混合ガスから成るプラズマ処理である請求項11から15のいずれか一に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記第三マスクは、
アモルファスカーボン薄膜、ポリイミド薄膜およびその他の有機系薄膜、および、フォトレジスト、からなる群から選択される一つである請求項10から16のいずれか一に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記第二除去工程の前記ウエットエッチング法は、
希塩酸、希フッ酸、その他の酸性溶液、純水、からなる群から選択される一つを用いる請求項12から17のいずれか一に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記第二金属層を構成する第二金属は、
前記第一金属と異なる種類の金属であって、
Al、Mn、Ta、Y、Ru、Sb、Lu、Te、Re、Irからなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項10から18のいずれか一に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
前記第一金属層を構成する第一金属は、
La、Rb、Sr、Y、Nd、Sc、Lu、Mg、Tiからなる群から選択される少なくとも一つである請求項1から19のいずれか一に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項21】
前記ゲート電極は、
Tiを含む導電性材料、Taを含む導電性材料、および、Wを含む導電性材料、からなる群から選択される一つまたは二つ以上の材料からなる層を有する請求項1から20のいずれか一に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項22】
半導体基板上に第一導電型MOSFETと第二導電型MOSFETを備える半導体装置であって、
前記第一導電型MOSFETは、
前記半導体基板上に形成された第一ゲート絶縁膜と、
前記第一ゲート絶縁膜の上に形成された第一ゲート電極と、
前記第一ゲート絶縁膜と前記第1ゲート電極の間に介在する第一金属層と、
を有し、
前記第二導電型MOSFETは、
前記半導体基板上に形成された第二ゲート絶縁膜と、
前記第二ゲート絶縁膜の上に形成された第二ゲート電極と、
を有し、
前記第二ゲート絶縁膜と前記第二ゲート電極の間における前記第一金属の付着量は、1.0×1012atoms/cm以下の面密度である半導体装置。
【請求項23】
請求項22に記載の半導体装置であって、
前記第二ゲート絶縁膜と前記第二ゲート電極の間における前記第一金属の付着量は、1.0×10atoms/cm以上、かつ、1.0×1012atoms/cm以下の面密度である半導体装置。
【請求項24】
請求項22または23に記載の半導体装置であって、
前記第一金属は、La、Rb、Sr、Y、Nd、Sc、Lu、Mg、Tiからなる群から選択される少なくとも一つである半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−251626(P2010−251626A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101608(P2009−101608)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】