説明

半導体装置の製造方法及び半導体製造装置

【課題】Oリングをシール部材に用いた処理室で、半導体基板上の金属シリサイド形成を行う熱処理工程において、処理室に酸素等不純物ガスを引込まない半導体装置の製造方法及び半導体製造装置を提供する。
【解決手段】処理室20に連通する第1の排気管32と、第1の排気管32の排気を遮断するためのバルブ33と、第1の排気管32より排気量の小さな第2の排気管34と、を有し、第2の排気管34をバルブ33と処理室20との間に前記第1の排気管32から分岐して設け、バルブ33を閉じることにより、処理室20を大気圧より高い圧力の状態に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び半導体製造装置に係り、特にシリコン基板上に金属シリサイドを形成するための熱処理工程を有する半導体装置の製造方法及びシリコン基板上に金属シリサイドを形成するための熱処理を行う処理室を有する半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化を図るために、半導体素子の微細化が求められている。これに伴い配線の電流密度の増加及び配線遅延が問題となってきている。これらの要求を可能とするために従来のAL配線から異種金属膜との積層配線が使われ、Siとのコンタクト抵抗低減として異種金属をシリサイド化しオーミックコンタクトする配線が使われるようになった。
【0003】
前記金属シリサイドの形成工程であるが、チタン、タングステン、モリブデン等の金属を、シリコン基板全面にわたってスパッタ等により堆積した後、窒素雰囲気中で600〜700℃の条件で熱処理することで行う。
【0004】
この熱処理を行う処理装置としては、ランプヒータを具備したラピッドサーマルアニール(RTA)装置を用いることもできるが、枚葉式処理のため、生産効率に劣る。そこで、電気ヒータを具備し、バッチ式処理が可能なアニール炉が主に用いられている。
【0005】
このようなアニール炉(以下熱処理装置)は、元来半導体ウェハの製造プロセスの一つとして広く用いられてきたものである。そして近年では、外気の巻込みが少ない等の理由により、従来の横型熱処理装置に代わり、縦型熱処理装置が用いられている。
【0006】
ただし、金属シリサイドの形成工程においては、金属膜とシリコン基板との界面に酸化物が介在すると、金属膜とシリコン基板との間で、良好なオーミック接合が得られず、電気的導通不良をもたらす原因となる。そのため、金属シリサイドの形成工程においては、処理室の酸素ガスをできるだけ除去しなくてはならない。通常は、熱処理中の処理室の中には、酸素ガスを除去するため、窒素(N)等の不活性ガスを導入する。
【0007】
ところが、生産用の縦型熱処理装置においては、炉を組立てる際のシール部材としてOリングが用いられる。Oリングは、断面がO形で環状のシール部材であり、その材質としてゴムが使われる場合が多い。Oリングは金属ガスケットなど他の種類のシール部材に比べ気密を維持する能力に劣るため、処理室と大気との間でリークが発生するという問題がある。例えば、処理室が大気圧より低い圧力(以下陰圧)になると、大気又はロードロックから不純物ガスを引込む恐れがある。
【0008】
一般的な縦型熱処理装置の運用方法としては、前記処理室が陰圧になるのを防止するため、処理室の圧力を大気圧付近に調整するための圧力制御方法が提案されてきた。例えば、大気開放管と組合せる方法、排気バルブを遮断する方法、がある。
【0009】
大気開放管と組合せる方法は、処理室を大気開放する際の圧力差を、大気開放管を用いて無くす方法である。具体的には、特許文献1に、熱処理炉において熱処理炉内の圧力が所定の値に達したときに出力信号を発する圧力検出部と、大気開放管とを有し、熱処理後に処理ガスを真空排気し、不活性ガスで置換して大気開放する際、熱処理室内の圧力が大気圧付近に達したときに圧力検出部の出力信号によって排気バルブの開度を調整し、熱処理炉内を大気圧より若干高い圧力にしてから大気開放する半導体製造装置の例が開示されている。
【0010】
また、排気バルブを遮断する方法は、処理室が陰圧になったときに、その圧力を検知して真空排気を停止する方法である。具体的には、特許文献2には、処理室とロードロック室とがゲートバルブを介して接続された半導体製造装置において、処理室の排気管に圧力検出部を設け、ロードロック室の真空排気中における処理室の圧力を監視し、処理室と大気圧との差圧が所定値を越え、処理室が陰圧になったときに、真空排気手段との間に配設された排気バルブを遮断し、処理室に大気を引込まないようにする半導体製造装置の例が開示されている。
【特許文献1】特開平6−349759号公報
【特許文献2】特開2004−228359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、金属シリサイドの形成工程を行う熱処理装置においては、処理中に大気より酸素ガス等を引込まないようにする必要があるが、従来の方法を用いて行う場合には、問題があった。
【0012】
特許文献1に開示される方法は、大気開放管を用いて大気を処理室内に導入し、処理室内を大気より高い圧力(以下陽圧)にする方法であるため、金属シリサイドの形成工程を行う熱処理装置においては、酸素等の金属シリサイド形成工程にとっての不純物ガスが処理室の内壁に吸着されてしまうという問題があった。
【0013】
また、特許文献2に開示される方法は、ロードロック室の真空排気工程において、処理室内の圧力が負圧になると、圧力検出部から警報を発生して真空排気手段に接続する排気バルブを遮断する方法であるため、処理室内を所定の陽圧に維持することは難しく、金属シリサイドの形成工程に適用することは不可能であるという問題があった。
【0014】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、Oリングをシール部材に用いて封止した容器を有する処理室を用い、不活性ガス雰囲気下で半導体基板上の金属シリサイド形成を行う熱処理工程において、簡便に圧力制御ができ、処理室に酸素等の不純物ガスを引込まない半導体装置の製造方法及び半導体製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0016】
第1の発明に係る半導体装置の製造方法は、
Oリング(51)をシール部材に用いて封止した容器(21)を有する処理室(20)において、不活性ガス雰囲気下でシリコン基板(27)上の金属膜(61)の熱処理を行って、前記シリコン基板(27)上に金属シリサイド(62)を形成する工程を有する半導体装置の製造方法であって、
前記処理室(20)を大気圧より高い圧力の状態で前記熱処理を行うことを特徴とする。
【0017】
第2の発明は、第1の発明に係る半導体装置の製造方法において、
前記処理室に連通する第1の排気管(32)と、
前記第1の排気管(32)の排気を遮断するためのバルブ(33)と、
前記第1の排気管(32)より排気量の小さな第2の排気管(34)と、を有し、
前記第2の排気管(34)を前記バルブ(33)と前記処理室(20)との間に前記第1の排気管(32)から分岐して設け、
前記バルブ(33)を閉じることにより、前記処理室(20)を大気圧より高い圧力の状態に維持することを特徴とする。
【0018】
第3の発明は、第1又は2の発明に係る半導体装置の製造方法において、
前記金属膜(61)は、少なくともチタン、タングステン、モリブデン、シリコンのいずれか一つ又はそれらの組合せからなる金属膜であることを特徴とする。
【0019】
第4の発明に係る半導体製造装置(10)は、
Oリング(51)をシール部材に用いて封止した容器(21)を有し、不活性ガス雰囲気下でシリコン基板(27)上の金属膜(61)の熱処理を行って、前記シリコン基板(27)上に金属シリサイド(62)を形成するための処理室(20)と、
前記熱処理を行うときに前記処理室(20)を大気圧より高い圧力の状態に維持する圧力維持手段(30)と、を有する。
【0020】
第5の発明は、第4の発明に係る半導体製造装置(10)において、
前記圧力維持手段(30)は、
前記処理室(20)に前記不活性ガスを供給する供給管(31)と、
前記処理室(20)に連通し、前記処理室(20)を排気する第1の排気管(32)と、
前記第1の排気管(32)に設けられ、前記第1の排気管(32)の排気を遮断するためのバルブ(33)と、
前記バルブ(33)と前記処理室(20)との間に前記第1の排気管(32)から分岐して設けられ、前記第1の排気管(32)より排気量の小さな第2の排気管(34)と、を有することを特徴とする。
【0021】
第6の発明は、第4又は5の発明に係る半導体製造装置(10)において、
前記金属膜(61)は、少なくともチタン、タングステン、モリブデン、シリコンのいずれか一つ又はそれらの組合せからなる金属膜であることを特徴とする。
【0022】
なお、上記の括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例に過ぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、Oリングをシール部材に用いて封止した容器を用いた金属シリサイドの形成工程において、処理室に酸素等の不純物ガスを引込むことがないため、金属膜とシリコン基板との界面に酸化物が介在せず、金属膜とシリコン基板との間で電気的導通が良好な半導体装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面と共に説明する。
【実施例】
【0025】
図1乃至図9を参照し、本発明の実施例に係る半導体製造装置を説明する。
【0026】
図1は、本実施例に係る半導体製造装置の構成を模式的に示す断面図である。
【0027】
図1に示すように、半導体製造装置10は、処理室20と、圧力維持手段30と、ロードロック室40とを有する。
【0028】
処理室20は、反応管21、ヒータ22、ボート23を有する。反応管21は、外側の反応管24、内側の反応管25、マニホールド26を有する容器である。外側の反応管24、内側の反応管25は、例えば石英で作られており、二重構造を有する。マニホールド26は、例えば金属で作られており、内側の反応管25の下部側に配設される。
【0029】
ヒータ22は、反応管21の周囲を取り囲むように設けられる。ボート23は、例えば石英から作られており、複数枚のシリコン基板27が装填される。またボート23が処理室20に挿入されたときに、処理室20を密閉するためのキャップ28が備えられている。
【0030】
圧力維持手段30は、供給管31、第1の排気管32、第1のバルブ33、第2の排気管34、第2のバルブ35、を有する。圧力維持手段30は、処理室20で熱処理を行うときに処理室20を陽圧に維持するためのものである。
【0031】
供給管31は、処理室20に不活性ガスを供給するためのものであり、マニホールド26の側周面に、内側の反応管25の内側の空間と連通するように、周方向に配置されて接続される。ここで不活性ガスとしては、例えば窒素(N2)を用いることができる。
【0032】
第1の排気管32は、処理室20を排気するためのものであり、マニホールド26の側周面に、外側の反応管24の内側で、内側の反応管25の外側の空間と連通するように、周方向に配置されて接続される。供給管31から供給される不活性ガスは、内側の反応管25の内側に下部から供給され、内側の反応管25の内側を下から上へ向かって流れ、内側の反応管25の上端を回り込み、内側の反応管25と外側の反応管24との間の空間を上から下へ向かって流れ、第1の排気管32から排気される。その結果、不活性ガスは一方向の流れを有し、処理室20の内部における不活性ガスの偏流や滞留は防止される。
【0033】
第1のバルブ33は、第1の排気管32の排気を遮断するためのものであり、第1の排気管32に設けられる。
【0034】
第2の排気管34は、第1の排気管32の第1のバルブ33と処理室20との間において、第1の排気管32から分岐して設けられる。第2の排気管34は、第1の排気管32より排気量を小さくするためのものであり、例えば第1の排気管32より径の細い排気管を用いることができる。また、本実施例においては、第2の排気管34は、第1の排気管32に設けられた第1のバルブ33を迂回するように設けられ、第1の排気管32の第1のバルブ33から処理室20と反対側において、第1の排気管32と合流する。
【0035】
第2のバルブ35は、第2の排気管34の排気を遮断するためのものであり、第1の排気管32の第2の排気管34との分岐点と、第1の排気管32の第2の排気管34との合流点との間において、第2の排気管34に設けられる。
【0036】
ロードロック室40は、ゲートバルブ41、ロードロック室供給管42、ロードロック室排気管43、ロードロック室排気管バルブ44、ボートエレベータ45、を有する。ただし、ゲートバルブ41は、後述する図2に示される。ロードロック室40は、ウェハ27を載置したボート23を処理室20と大気との間で搬送するためのものである。
【0037】
ゲートバルブ41は、ロードロック室40と処理室20との間に設けられ、ロードロック室40と処理室20との間で、ボート23を搬入又は搬出するための搬送口である。
【0038】
ロードロック室供給管42は、ロードロック室40に不活性ガスを供給するためのものであり、ロードロック室40の側面でロードロック室40に接続される。ここで不活性ガスとしては、例えば窒素(N2)を用いることができる。
【0039】
ロードロック室排気管43は、ロードロック室40を排気するためのものであり、ロードロック室40の側面でロードロック室40に接続される。
【0040】
ロードロック室排気管バルブ44は、ロードロック室排気管43の排気を遮断するためのものであり、ロードロック室排気管43に設けられる。
【0041】
ボートエレベータ45は、ロードロック室40の中に設けられる。ボートエレベータ45は、ボート23を処理室20に搬入、搬出するためのものであり、ボート23のキャップ28に固定される。ボートエレベータ45は、モータによって上下に昇降し、ボート23を上下に昇降させる。
【0042】
次に、本実施例に係る半導体製造装置10について、処理室20の有する反応管(容器)21の封止構造を説明しながら、圧力維持手段30の動作について説明する。
【0043】
まず、反応管(容器)21であるが、外側の反応管24とマニホールド26との間は第1のOリング50により、マニホールド26とロードロック室40との間は第2のOリング51により、ロードロック室40とキャップ28との間は第3のOリング52により、封止される。従って、第1のOリング50、第2のOリング51、第3のOリング52は、ともに反応管(容器)21を封止するシール部材として用いられる。Oリングは繰返しの使用が可能であるため、頻繁に外側の反応管24、内側の反応管25の分解洗浄を行う反応管(容器)21において、Oリングがシール部材として用いられる。ただし、Oリングはシール部材としての気密性に劣る。Oリングのシール部材としての気密性に問題があった場合、処理室20においてウェハ27の熱処理を行う際、第1のOリング50、第2のOリング51の付近から、大気中の酸素等不純物ガスが処理室20に引込まれる。
【0044】
ここで、圧力維持手段30を動作させる。即ち、供給管31から不活性ガスを供給した状態で、第1のバルブ33を閉じ、第2の排気管34を通じて処理室20の排気を行う。第2の排気管34の排気量は第1の排気管32の排気量に比べ小さいので、第1のバルブ33を開いて排気を行う場合に比べ、処理室20の排気量を小さくすることができる。予め供給管31からの不活性ガスの供給量、第2の排気管34の排気量を調整することにより、供給管31からの不活性ガスの供給量に対し処理室20の排気量を小さくすることができ、処理室20を陽圧に維持することができる。ここで陽圧の大きさを、処理室20の圧力と大気圧との差圧と定義する。本実施例では、陽圧の大きさは、例えば、0〜25kPaとすることができる。
【0045】
以上のように、処理室20を陽圧に維持することにより、第2のOリング51の付近から大気中の酸素等の不純物ガスを処理室20に混入させることがない。
【0046】
なお、第1のOリング50については、供給管31から供給される不活性ガスは、内側の反応管25の内側に下部から供給され、内側の反応管25の内側を下から上へ向かって流れ、内側の反応管25の上端を回り込み、内側の反応管25と外側の反応管24の間の空間を上から下へ向かって流れ、第1の排気管32から排気されるため、第1のOリング50の付近からウェハ27まで気体が拡散することはなく、第1のOリング50の付近から処理室20への酸素等不純物ガスの混入について問題とする必要はない。
【0047】
なお、第3のOリング52については、ロードロック室40から処理室20にガスを引込む可能性はあるが、ロードロック室40にロードロック室供給管42から予め不活性ガスを供給して不活性ガス雰囲気とすることにより、第3のOリング52に起因したロードロック室40から処理室20への酸素等不純物ガスの混入を防ぐことができる。
【0048】
次に、図2乃至9を参照し、本実施例に係る半導体装置の製造方法について説明する。図2乃至5は、本実施例に係る半導体装置の製造工程における半導体製造装置10の状態を模式的に示す断面図である。図6乃至9は、本実施例に係る半導体装置の製造工程における半導体基板27の表面の構造を模式的に示す断面図である。
【0049】
始めに、図6に示すように、周知の手法により、シリコン酸化膜60で被覆されたシリコン基板27上において、シリコン基板27を被覆するシリコン酸化膜60にコンタクトホール63を開口する。本実施例においては、例えば、レジスト塗布、露光、現像、フッ硝酸を用いたウェットエッチングの一連の作業を用い、シリコン酸化膜60にコンタクトホール63を開口することができる。
【0050】
続いて、図7に示すように、周知の手法により、シリコン基板27上に金属膜61を形成する。即ち、シリコン酸化膜60にコンタクトホール63が開口されたシリコン基板27全面に金属膜61が形成される。金属膜61としては、チタン(Ti)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、シリコン(Si)のいずれか一つ又はそれらの組合せを用いることができる。本実施例においては、例えばTiWを金属として用いることができ、例えばスパッタにより金属膜61を形成することができる。
【0051】
また、半導体製造装置10であるが、処理室20は予め供給管31より不活性ガスを供給し、第1のバルブ33を閉じ、第2のバルブ35を開いた状態にし、第2の排気管34と連通した第1の排気管32から処理室20を排気することにより、陽圧の状態にしておく。本実施例では、例えば陽圧の大きさは25kPaにすることができる。また、ヒータ22は、あらかじめ熱処理温度に昇温させ、保持しておく。本実施例では、例えば650℃とすることができる。
【0052】
次に、半導体製造装置10のロードロック室40にあるボート23に、ウェハ27を載置する。このときの半導体製造装置10の状態は、図2に示す通りである。ロードロック室40に下降した状態にあるボート23に、ウェハ27を載置し、ロードロック室40を不活性ガスで置換する。その後、ゲートバルブ41を開く。
【0053】
次に、処理室20にボート23を挿入する。このときの半導体製造装置10の状態を図3に示す。ボートエレベータ45を用いてボート23を上昇させる。処理室20が既に陽圧になっているため、ロードロック室40も陽圧に維持される。ここで、ヒータ22の温度は予め金属シリサイド形成の熱処理を行う温度である650℃に保持されている。従って、ボート23が上昇するに従って、ウェハ27を含めたボート23の温度は上昇する。ボート23が完全に上昇すると、ボート23の下部に設けられたキャップ28が第3のOリング52を介してロードロック室天井板46と当接し、ボート23が格納された状態で、処理室20がロードロック室40と隔離される。
【0054】
次に、ボート23を処理室20に挿入した状態で、ウェハ27に対し所定の時間熱処理を行う。このときの半導体製造装置10の状態を図4に示し、シリコン基板表面の構造を模式的に図8に示す。金属膜61とシリコン基板27との界面において、金属膜61とシリコン基板27が反応し、金属シリサイド62が形成される。ところで、このとき処理室20に酸素が引込まれると、図9に示すように、金属膜61とシリコン基板27との界面には、シリコン酸化物60が形成され、金属膜61とシリコン基板27との間の電気抵抗が大きくなり、良好なオーミック接合が得られない。シリコン酸化物60が形成される場合のシリコン基板表面の構造を模式的に図9に示す。しかし、本実施例においては、陽圧に維持されている処理室20に酸素等不純物ガスが引込まれないため、金属シリサイド62が形成され、金属膜61とシリコン基板27との間で、良好なオーミック接合が得られる。
【0055】
熱処理後、処理室20からボート23をロードロック室40へ移動する。このときの半導体装置製造装置10の様子を図5に示す。処理室20及びロードロック室40が不活性ガス雰囲気下で陽圧に維持されている状態で、ボートエレベータ45を用いてボート23を下降させる。ボート23の下降が開始されると、ボート23下部に設けられたキャップ28がロードロック室天井板46と離れ、処理室20とロードロック室40が通ずる。処理室20、ロードロック室40共に陽圧に維持されるため、第2のOリング51の付近からの酸素等不純物ガスの引込みはない。ロードロック室40が大気圧又は陽圧にボート23が下降するに従って、ウェハ27を含めたボート23全体の温度は下降する。
【0056】
ボート23が完全に下降した後、ゲートバルブ41を閉じ、処理室20とロードロック室40を隔離する。このときの半導体製造装置10の状態は、ボート23を処理室20に挿入する前の半導体製造装置10の状態を示す図2と同様である。その後、ボート23からウェハ27を取出す。ボート23が室温まで冷却されるのを待ち、その後大気開放し、ボート23からウェハ27を取出す。
【0057】
以上、本実施例に係る半導体製造装置10によれば、処理室20に不活性ガスを供給し、陽圧に維持しながら熱処理を行うことができ、大気から酸素等不純物ガスを引込まず、金属膜61とシリコン基板27との界面でシリコン酸化膜60を形成することなく良好なオーミック接合を保つことができ、金属膜61とシリコン基板27との間の電気的導通が良好な半導体装置を製造することができる。
【0058】
なお、本実施例においては、第2の排気管34は、第1の排気管32に設けられた第1のバルブ33を迂回するように設けられ、第1の排気管32の第1のバルブ33から処理室20と反対側において、第1の排気管32と合流するが、第2の排気管34は、第1の排気管32に合流する必要はなく、第1の排気管32から分岐した後、第1の排気管32と別に工場排気等の排気装置に接続することも可能である。
【0059】
また、本実施例においては、第2のバルブ35は、第1の排気管32の第2の排気管34との分岐点と、第1の排気管32の第2の排気管34との合流点との間において、第2の排気管34に設けられるが、第2のバルブ35は省略することも可能である。
【0060】
また、本実施例においては、金属膜61として、チタンとタングステンを組合せたTiWが用いられるが、少なくともチタン、タングステン、モリブデン、シリコンのいずれか一つ又はそれらの組合せであれば、TiW以外の任意の金属膜を用いることも可能である。
【0061】
〔実施例の第1の変形例〕
次に、図10を参照し、実施例の第1の変形例について説明する。
【0062】
図10は、本変形例に係る半導体製造装置10aの構成を模式的に示す断面図である。ただし、以下の文中では、先に説明した部分には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある(以下の変形例についても同様)。
【0063】
本変形例に係る半導体製造装置10aは、第2の排気管34が第1の排気管32と直列に接続される点で、実施例に係る半導体製造装置10と相違する。
【0064】
図10を参照するに、実施例において、第2の排気管34が、第1の排気管32の第1のバルブ33と処理室20との間において、第1の排気管32から分岐して設けられるのと相違し、本変形例に係る半導体製造装置10aは、第2の排気管34が、第1の排気管32から分岐するのではなく、第1の排気管32と直列に接続されることが特徴である。
【0065】
なお、以下の説明では、特に説明しない部分は実施例に示した半導体製造装置10と同様の構造を有するものとする。
【0066】
第1の排気管32は、処理室20を排気するためのものであり、マニホールド26の側周面に、外側の反応管24の内側で、内側の反応管25の外側の空間と連通するように、周方向に配置されて接続される。
【0067】
第1のバルブ33は、第1の排気管32の排気を遮断するためのものであり、第1の排気管32に設けられる。第2の排気管34は、第1の排気管32より排気量を小さくするためのものであり、第1の排気管32の途中の一部を細くすることにより、第1の排気管32に直列に挿入される。本変形例では、第1の排気管32の途中に第1の排気管32より径の細い第2の排気管34が挿入される。また、第1のバルブ33と第2の排気管34とは、第1の排気管32の経路上にあれば、どちらが処理室20に近い配置をとってもよく、本実施例では、第1のバルブ33は、第2の排気管34が挿入される部分よりも処理室20側に設けられる。
【0068】
ここで、第1のバルブ33を開き、第1の排気管32で処理室20を排気すると、第1の排気管32の途中の一部が細い第2の排気管34になっているため、排気量が小さく、供給管31からの不活性ガスの供給量とのバランスを調整し、処理室20を陽圧に維持することができる。即ち、半導体製造装置10のように、第1のバルブ33を閉め、第2のバルブ35を開け、第2の排気管34を通じて排気されるように切替えることなく、常に排気量の少ない第2の排気管34を通じて排気をすることにより、処理室20を陽圧に維持することができる。
【0069】
以上、本変形例に係る半導体製造装置10aによれば、第1の排気管32から第2の排気管34を分岐させ、第1のバルブ33を迂回するような配管を行わなくても、第2の排気管34を直列に第1の排気管32に接続するだけで、処理室20を陽圧に維持しながら熱処理を行うことができ、大気から酸素等不純物ガスを引込まず、金属膜61とシリコン基板27との界面でシリコン酸化膜60を形成することなく良好なオーミック接合を保つことができ、金属膜61とシリコン基板27との間の電気的導通が良好な半導体装置を製造することができる。
【0070】
なお、本実施例においては、処理室20から配管された第1の排気管32の途中で細くなり第2の排気管34とした後、再び第1の排気管32の太さに戻らない構成の配管を行うことも可能である。
【0071】
また、本実施例においては、第1のバルブ33と第2の排気管34とは、第1の排気管32の経路上にあれば、任意の配置関係を構成してもよく、第1のバルブ33が第2の排気管34に設けられるような配管を行うことも可能である。
【0072】
〔実施例の第2の変形例〕
次に、図11を参照し、実施例の第2の変形例について説明する。
【0073】
図11は、本変形例に係る半導体製造装置10bの構成を模式的に示す断面図である。
【0074】
本変形例に係る半導体製造装置10bは、第2の排気管34が第1の排気管32と別に設けられる点で、実施例に係る半導体製造装置10と相違する。
【0075】
図11を参照するに、実施例において、第2の排気管34が、第1の排気管32の第1のバルブ33と処理室20との間において、第1の排気管32から分岐して設けられるのと相違し、本変形例に係る半導体製造装置10bは、第2の排気管34が、処理室20に直接連通するように設けられることが特徴である。
【0076】
なお、以下の説明では、特に説明しない部分は実施例に示した半導体製造装置10と同様の構造を有するものとする。
【0077】
第1の排気管32は、処理室20を排気するためのものであり、マニホールド26の側周面に、外側の反応管24の内側で、内側の反応管25の外側の空間と連通するように、周方向に配置されて接続される。実施例と同様に、不活性ガスは一方向への流れを有するため、処理室20の内部における不活性ガスの偏流や滞留を防止することができる。第1のバルブ33は、第1の排気管32の排気を遮断するためのものであり、第1の排気管32に設けられる。
【0078】
第2の排気管34も、処理室20を排気するためのものであるが、第1の排気管32とは別に、マニホールド26の側周面に、外側の反応管24の内側で、内側の反応管25の外側の空間と連通するように、周方向に配置されて接続される。第2の排気管34は、第1の排気管32より排気量を小さくするためのものであり、例えば第1の排気管32より径の細い排気管を用いることができる。また、本変形例では、第1の排気管32から分岐するのではなく、処理室20に直接連通するように設けられる。第2のバルブ35は、第2の排気管34の排気を遮断するためのものであり、第2の排気管34に設けられる。
【0079】
ここで、供給管31から不活性ガスを供給した状態で、第1のバルブ33を閉じ、第2のバルブ35を開き、第2の排気管34に切替え、処理室20の排気を行う。第2の排気管34の排気量は第1の排気管32の排気量より小さいので、第1のバルブ33を開いて排気を行う場合に比べ、処理室20の排気量を小さくすることができる。その結果、供給管31からの不活性ガスの供給量に対し、処理室20の排気量を小さくすることができ、処理室20を陽圧に維持することができる。
【0080】
以上、本変形例に係る半導体製造装置10bによれば、第1の排気管32の途中で第2の排気管34を分岐させる配管を行わなくても、第2の排気管34を第1の排気管32と別に処理室20に接続することで、処理室20を陽圧に維持しながら熱処理を行うことができ、大気から酸素等不純物ガスを引込まず、金属膜61とシリコン基板27との界面でシリコン酸化膜60を形成することなく良好なオーミック接合を保つことができ、金属膜61とシリコン基板27との間での電気的導通が良好な半導体装置を製造することができる。
【0081】
〔実施例の第3の変形例〕
次に、図12を参照し、実施例の第3の変形例について説明する。
【0082】
図12は、本変形例に係る半導体製造装置10cの構成を模式的に示す断面図である。
【0083】
本変形例に係る半導体製造装置10cは、ロードロック室40を設けない点で、実施例に係る半導体製造装置10と相違する。
【0084】
図12を参照するに、実施例において、ウェハ27を載置したボート23を処理室20と大気との間で搬送するために、大気から真空又は不活性ガス雰囲気下に雰囲気を制御できるロードロック室40を設けるのと相違し、本変形例に係る半導体製造装置10cは、ロードロック室40を設けず、ボート23を直接大気との間で搬送することが特徴である。
【0085】
なお、以下の説明では、特に説明しない部分は実施例に示した半導体製造装置10と同様の構造を有するものとする。
【0086】
図12に示すように、半導体製造装置10cは、処理室20と、圧力維持手段30と、を有する。
【0087】
処理室20は、反応管(容器)21、ヒータ22、ボート23からなり、半導体製造装置10と同様の構造を有する。ただし、ボート23が処理室20に挿入されたときに処理室20を密閉するためのキャップ28は、本変形例においては、ロードロック室40がないため、大気と処理室20とを隔離する機能を有する。
【0088】
圧力維持手段30は、半導体製造装置10と同様の構造を有する。
【0089】
次に、本変形例に係る半導体製造装置10cについて、処理室20の有する反応管(容器)21の封止構造を説明しながら、圧力維持手段30の動作について説明する。
【0090】
反応管(容器)21を封止する第1のOリング50は半導体製造装置10と同様の構成である。一方、ロードロック室がないため、第2のOリング51はマニホールド26とキャップ28との間を封止する。従って、第1のOリング50、第2のOリング51は、ともに反応管(容器)21を大気から封止するシール部材として機能する。
【0091】
第1のOリング50、第2のOリング51の周辺からの大気中の酸素等不純物ガスの引込みについては、半導体製造装置10と同様の圧力維持の動作を行うことにより、防止することができる。即ち、供給管31から不活性ガスを供給した状態で、第1のバルブ33を閉じ、第1の排気管32より排気量の小さな第2の排気管34を通じて処理室20の排気を行うことにより、処理室20を陽圧に維持することができる。本変形例でも、半導体製造装置10と同様に、陽圧の大きさは、例えば、0〜25kPaとすることができる。
【0092】
以上、本変形例に係る半導体製造装置10cによれば、ロードロック室40を設けない処理室20だけの構成においても、処理室20を陽圧に維持しながら熱処理を行うことができ、大気から酸素を引込まず、金属膜61とシリコン基板27との界面でシリコン酸化膜60を形成することなく良好なオーミック接合を保つことができ、金属膜61とシリコン基板27との間の電気的導通が良好な半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施例に係る半導体製造装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る半導体装置の製造工程における半導体製造装置の状態を模式的に示す断面図(その1)である。
【図3】本発明の実施例に係る半導体装置の製造工程における半導体製造装置の状態を模式的に示す断面図(その2)である。
【図4】本発明の実施例に係る半導体装置の製造工程における半導体製造装置の状態を模式的に示す断面図(その3)である。
【図5】本発明の実施例に係る半導体装置の製造工程における半導体製造装置の状態を模式的に示す断面図(その4)である。
【図6】本発明の実施例に係る半導体装置の製造工程における半導体基板を模式的に示す断面図(その1)である。
【図7】本発明の実施例に係る半導体装置の製造工程における半導体基板を模式的に示す断面図(その2)である。
【図8】本発明の実施例に係る半導体装置の製造工程における半導体基板を模式的に示す断面図(その3)である。
【図9】本発明の実施例に係る半導体装置の製造工程における半導体基板を模式的に示す断面図(その4)である。
【図10】本発明の実施例の第1の変形例に係る半導体製造装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図11】本発明の実施例の第2の変形例に係る半導体製造装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図12】本発明の実施例の第3の変形例に係る半導体製造装置の構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0094】
10、10a、10b、10c 半導体製造装置
20 処理室
21 反応管(容器)
22 ヒータ
23 ボート
24 外側の反応管
25 内側の反応管
26 マニホールド
27 ウェハ(シリコン基板)
28 キャップ
30 圧力維持手段
31 供給管
32 第1の排気管
33 第1のバルブ
34 第2の排気管
35 第2のバルブ
40 ロードロック室
41 ゲートバルブ
42 ロードロック室供給管
43 ロードロック室排気管
44 ロードロック室排気管バルブ
45 ボートエレベータ
46 ロードロック室天井板
50 第1のOリング
51 第2のOリング
52 第3のOリング
60 シリコン酸化膜
61 金属膜
62 金属シリサイド
63 コンタクトホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Oリングをシール部材に用いて封止した容器を有する処理室において、不活性ガス雰囲気下でシリコン基板上の金属膜の熱処理を行って、前記シリコン基板上に金属シリサイドを形成する工程を有する半導体装置の製造方法であって、
前記処理室を大気圧より高い圧力の状態で前記熱処理を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記処理室に連通する第1の排気管と、
前記第1の排気管の排気を遮断するためのバルブと、
前記第1の排気管より排気量の小さな第2の排気管と、を有し、
前記第2の排気管を前記バルブと前記処理室との間に前記第1の排気管から分岐して設け、
前記バルブを閉じることにより、前記処理室を大気圧より高い圧力の状態に維持することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記金属膜は、少なくともチタン、タングステン、モリブデン、シリコンのいずれか一つ又はそれらの組合せからなる金属膜であることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
Oリングをシール部材に用いて封止した容器を有し、不活性ガス雰囲気下でシリコン基板上の金属膜の熱処理を行って、前記シリコン基板上に金属シリサイドを形成するための処理室と、
前記熱処理を行うときに前記処理室を大気圧より高い圧力の状態に維持する圧力維持手段と、を有する半導体製造装置。
【請求項5】
前記圧力維持手段は、
前記処理室に前記不活性ガスを供給する供給管と、
前記処理室に連通し、前記処理室を排気する第1の排気管と、
前記第1の排気管に設けられ、前記第1の排気管の排気を遮断するためのバルブと、
前記バルブと前記処理室との間に前記第1の排気管から分岐して設けられ、前記第1の排気管より排気量の小さな第2の排気管と、を有することを特徴とする請求項4記載の半導体製造装置。
【請求項6】
前記金属膜は、少なくともチタン、タングステン、モリブデン、シリコンのいずれか一つ又はそれらの組合せからなる金属膜であることを特徴とする請求項4又は5記載の半導体製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−158820(P2009−158820A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337546(P2007−337546)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】